【1629】 △ 内藤 耕 『「最強のサービス」の教科書 (2010/09 講談社現代新書) ★★★

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冒頭の旅館とホテルの事例は良かった。だんだん、ビジネス誌の連載みたいになってくる。

「最強のサービス」の教科書.jpg「最強のサービス」の教科書 (講談社現代新書)

 いかにも編集サイドがつけたようなタイトルですが、「最強のサービス」とは何かということよりも、工学的アプローチにより無駄な部分を廃し、本当に顧客が望むサービスの強化に経営リソースを投下することで、そうして顧客満足を効率的に実現するという「サービス工学」という視点を、事例を通して訴えたかった本のようです。

加賀屋.jpg 社会の状況や顧客の要望、嗜好に合わせ、サービスの内容や提供方法を変化させることで成功し、今も成長を続ける企業8社の事例が紹介されていますが、最初に登場する「加賀屋」の事例が(すでに台湾進出などで、マスコミで取り上げられることも多いが)際立っているように思えました。

「BIGLOBE みんなで選ぶ 温泉大賞」温泉宿部門 総合1位(3年連続)「加賀屋」(石川県・和倉温泉)

 本当の意味での「おもてなし」とは何かを顧客目線で考え、顧客にとって価値を生まないサービスは省力化し、客室係が接客に注力できるようにする一方で、人的サービスが「良質」であるのはいいが、人によってサービスに「ムラ」が出ないように、顧客の要望や意見などをデータベースしている―とりわけこのデータベースの力が大きいように思いました(客室まで客を案内する間に、旅館の様々な情報を教えてくれる宿というのは、最近は少ないなあ)。

 続いてのビジネスホテルチェーン「スーパーホテル」の事例は、チェックイン・アウトの機械化されていて、現金や鍵の収受などフロント業務も行っておらず、ちょうど一見「加賀屋」の対極にあるようにも見えますが、部屋置きの電話機やドリンク入り冷蔵庫など、顧客がメリットをさほど感じていないサービスは廃止し、ユニットバスも無く、代わりに温泉大浴場があって、これが顧客に好評を博しているとのこと、顧客目線に立ったサービスとは何かということを考え、従来の既定のサービスの見直しを行ったという意味では、やはり「加賀屋」に通じるものがあると思いました。

 ベッドの脚を無くして床に直置きにしたのは従業員のアイデアだそうですが、こうなると、経営者や(現場のことをよく知っている)従業員の、常日頃の意識の問題と言うか、「サービス工学」という理論は、後から説明的についてくるような気がしなくもありません。
 
 実際に本書に出てくる企業は何れも、従業員満足(ES)ということに非常に力を注いでおり、そうしたことが、従業員の変革のモチベーションに繋がっているのではないかと思われ、そこへ現場を知らないコンサルタントが入ってきて、「サービス工学」とか振り回しても、あまりに効果はないのではないかというのは、後ろ向きの考え方ということになるのでしょうか。

 「サービス工学」というものへの懐疑もあり、読み進むにつれて、何だかビジネス書で連載されて成功事例集のように思えてきて、う~ん、新書で出すような本なのかなあとも。

 グローバルな視点みて、顧客の創造というものを行っているのは、やはり台湾に進出した「加賀屋」でしょう。
テレビの特番で、現地採用の新米仲居を躾けるベテラン従業員を見ましたが、今後どうなるか注目したいところです。


《読書MEMO》
●加賀屋
野村芳太郎監督(松本清張原作) 「ゼロの焦点」('61年) のロケで使われた(原作執筆時の松本清張も宿泊)。
加賀屋 .jpg ゼロの焦点 1961年.jpg

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