「●自閉症・アスペルガー症候群」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【391】 酒木 保 『自閉症の子どもたち』
是非多くの人に味わってもらいたい「てる君の連続画」の衝撃。
杉山登志郎・静岡大学教授(児童精神科医)
『発達障害の豊かな世界』 ['00年/日本評論社]
本書を読み始めて先ず驚かされるのは、18歳になった自閉者が、幼稚園時代のある1日を千数百枚の連続画として描き続けた「てる君の連続画」です。
自閉症児の特徴の1つ、タイムスリップ現象の如実な具体例ですが、人生において記憶とは何か、ということを思わざるを得ません。
著者はこれを「障害を生き抜いてきて証し」と捉えています。
本書を一般向けでありながらも自らのライフワークと位置づける著者にとって、われわれに人間の持つ未知の可能性を示すことさえある自閉症児の「豊かな世界」の一例として、是非紹介しておきたい事例だったのだと思うし、実際その訴求力は感動的と言ってよいかと思います。
内容的にも、自閉症、アスペルガー症候群、ダウン症候群、ADHD、トゥーレット症候群など広範囲の発達障害について、それぞれに臨床例を示し、その特徴と治療・対応を述べ、就労の問題についても事例をあげて言及しています。
入門書として読みやすいうえに、療育に携わる関係者には大いに役立つものと思います。
《読書MEMO》
●てる君の連続画(就職して1年後、10年間にわたり幼稚園での1日を描く)
●時間が横すべりする(普通高校の授業中に、保育園で自分だけに過配保母がついていたことを思い出して泣き出す(24p)
●ADHDに対するリタリンの効用(167p)