【084】 × 田中 章二 『社会保険料を安くする法 (1999/09 WAVE出版) ☆

「●年金・社会保険」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【085】 佐竹 康男/井村 丈夫 『年金相談標準ハンドブック

疑問を感じる部分が多々ある。お薦めできないし、世間からの社労士への誤解を招く。

社会保険料を安くする法.jpg 『社会保険料を安くする法―厚生年金・健康保険・雇用保険・労災保険』 2004年版

 年金・社会保険の専門家が、主に中小・零細企業の事業主に向けた書いた社会保険料の"節約"指南書らしいですが、疑問を感じる部分が多々ありました。お薦めできないし、世間からの社労士への誤解を招く本でもあります。

 例えば、社員を月末退職ではなく末日1日前に退職させれば、確かに会社にも社員にもその月の社会保険料負担は無いのですが、仮にその社員が翌月すぐ別の会社で勤務するとしても、辞めた月の国民年金保険料の納付義務は発生し、社員に保険料と手続きの負担を負わせることになり(手続きしなければ"空白の1ヶ月"となり給付に影響する)、医療保険についても空白期間が発生することになる―そうしたことを社員に説明しなければならないはずだけれど、そのことについては触れられていません。

 本書で紹介している、妻子で業務を営む法人会社の社長が60歳になったら個人会社を設立して報酬を分割したり、逆に個人会社が法人会社を設立して事業所得を分割して社会保険料を安くする方法は、法人所得税税との兼ね合いにおいてそれがトータルで得かどうかは、かなり複雑かつ不確定な話になってくるでしょう。

 定年社員や退任役員を個人事業主化する方法は一般にも行われていることですが、報酬や経費負担の取り決めの明確化および契約書作成などの労務コストをも考慮しておく必要があります。

 本書は1年から2年ごとに改訂版が出されていて、いかに事業主が社会保険料の負担を重圧と感じているかが窺えますが、本書は、本来はきちんと収めるべきものであるところの社会保険料までを節減しようとしていて、近視眼的と言うより、もっと言えば脱法行為的になっており、本書を読んだ事業主さんまで脱法行為的にならなければよいと危惧します。

 また、世間から社労士というものが事業主さんに対してこうした指導ばかりしているのかと思われるのも心外です。このブログは原則として星1つの評価のものは単独では取り上げないことにしていますが、注意喚起を促すために敢えて取り上げ、星1つ評価にしました。

About this Entry

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1