【726】 ○ 久野 万太郎 『年金の常識 (1996/05 講談社現代新書) ★★★☆ (○ 河村 健吉 『娘に語る年金の話 (2001/05 中公新書) ★★★★)

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年金制度のアウトラインをつかむうえで参考になった。

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年金の常識』 講談社現代新書   河村健吉 『娘に語る年金の話 (中公新書)』 〔01年〕

 年金とはそもそもどのようなものであり、保険料の納付から受給までの仕組みはどのようになっているのか、年金制度はどのような問題を抱えているのか、厚生年金や国民年金の仕組みはどうなっているかなどをわかりやすく説いた入門書で、自分がまだ年金の知識がさほどない時期に読んで、公的年金制度のアウトラインをつかむうえで参考になりました。

 今後の保険料の逓増と給付の逓減のスケジュールがわかりやすく示されていますが、それでも少子高齢化が進行する状況においては、相当の経済成長がない限り一定給付水準の維持は難しいとし、社会保障制度の横断的見直しを訴えています。

 著者は毎日新聞社の経済部長、論説委員などを経てフリーになった方ですが(本書刊行直後に亡くなった)、新書本で200ページ、表現も平易で図表もふんだんに生かされており、法改正により、一部の記述は現在ではあてはまらなくなっているため、必ずしも今読む本としてはお薦めできませんが、個人的には、年金制度の基礎を理解するうえでたいへんお世話になった本です。

 本書の最後に示された"リッチ老人"問題-老人に対する過剰投資の問題は考えさせられ、当時読んでやや憤りを覚えましたが、この部分では、高齢者の所得に応じた給付調整などの法改正が行われる一方で、そのお金が今までは次世代に回流していたという見方もあり(結局のところ現役世代の負担は変わらないことになる)、なかなか一筋縄ではいかない問題だと、今になって思います。

 このほかの年金問題を扱ったものとしては、信託銀行出身の年金コンサルタント・河村健吉氏の『娘に語る年金の話』('01年/中公新書)が、年金制度の歴史(生成・発展・変質)を知る上で参考になり、また、社会政策の観点から広く年金問題を分析していて、とりわけ雇用問題・雇用政策との関連について述べているのが興味深かったです(少子化問題の背後には女性などの雇用条件の問題があるという論点)。 

 片や制度に関する入門書、片や年金問題を扱ったものとしての色合いが強いですが、社会保障制度全体の横断的見直しが急務であるという点では論点が一致しています。

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This page contains a single entry by wada published on 2007年8月26日 13:16.

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