【3386】 ◎ 大内 伸哉 『労働法で企業に革新を (2021/05 商事法務) ★★★★☆

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ストーリー仕立てで読みやすい。初学者に限らず、人事パーソンにお薦め。

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労働法で企業に革新を』['21年]

 日本酒の取次・販売をメインとする豊夢商事は、正社員150名、臨時社員55名が働く中堅商社。東京本社のほかに、東京近郊に4つと神戸、新潟に支店がある。社長の中上は、「働き方改革」に向けた改革・変革に意欲的で、彼を外部からサポートするのが、元同社の社員で現在は社会保険労務士でコンサルタントの戸川美智香。社内では、新卒入社で人事部に配属になった東畑も改革に意欲的だが、彼の上司である人事部長の磯谷はやや消極的。それでも社長の一声でDX室が立ち上がり、プロ人材の深谷が室長として入社してくる―。

 本書は、労働法の基本を押さえながら、同一労働同一賃金やDX、テレワークや働き方改革といった「新しい働き方」をめぐる様々なトピックについて、豊夢商事という架空の会社を舞台に、ストーリー仕立てで解説したものです(本書は『労働法で人事に新風を』('16年)のアップデート版とも言える)。

 第1章は2018年12月から始まり、豊夢商事の働き方改革に向けた課題が示される一方、同社の社員から退職して顧問となった戸川美智香のことから、「社員」とは何かということが話題になっており、このあたりは雇用契約の基本でもあります。

 第2章では、2019年3月、新たにDX室長を迎え入れるにあたり、残業代を業務手当で支払うことは可能かという問いから始まって、同一労働同一賃金とは何かという話になり、臨時社員の手当の問題など、同一労働同一賃金関する具体的なテーマに踏み込んでいます。

 第3章は、2020年1月のコロナ禍直前期で、ある事業の子会社化をめぐって、子会社への出向命令に社員はイヤと言えるか? といった、これもまた人事の基本でありながらも、ケースによって微妙な要素の絡む問題を扱っています。

 第4章では、2020年4月のウィズコロナ第1期において、テレワークを導入するにあたり、労働時間管理をどうするか、事業場外みなし労働制は適用できるかといった問題などを扱っています。

 第5章は、2020年7月のウィズコロナ第2期において、テレワークの影響を概観するとともに、ジョブ型、パラレルキャリア、ボランティア休暇、ワーケーションなど、「働き方のニューノーマル」をめぐる様々なトピックについて述べられています。そして、第6章では、2022年のアフターコロナ時代の豊夢商事がどうなっているかを描いています。

 「新しい働き方」をめぐる様々なトピックについて、労働法の基本を解説しながら、ストーリー仕立て話を進めていて、初学者には読みやすいと思います。また、人事パーソンである読者が、近時において経験してきたであろうと思われることも多く含まれているので(会話シチュエーション自体が途中からオンライン会議になっている)、シズル感を持って読めるのではないでしょうか。

 人事として、これからの時代に考えていかなければならないことのいくつかを示してくれるとともに、自分が自覚のないうちに守旧派になってしまうこともあり得るとの危機感も抱かせてくれます。ラストは人事部改革のような話であり、さらにはエンタメ系企業小説のようなエンディングが待ち受けているので、どうぞお楽しみに。

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