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「●か 香山 リカ」の インデックッスへ
せっかくのとり合せなのに、両者の話が噛み合わず、中身がやや薄い。
『「愛国」問答―これは「ぷちナショナリズム」なのか 中公新書ラクレ87』 香山 リカ 『ぷちナショナリズム症候群―若者たちのニッポン主義 (中公新書ラクレ)』
『ぷちナショナリズム症候群』('02年/中公新書ラクレ)の著者で精神科医の香山リカ氏と、『作家の値うち』('00年/飛鳥新社)などの著作がある文芸評論家の福田和也氏の対談です。
福田氏は保守派論客とも目されていていますが、主義としてテレビには出ないそうです(と言いつつ、最近は出ている。香山氏の方は以前からよく出ていますが)。
とり合わせの面白さで本書を手にしたものの、読んでみて中身はやや薄いという感じがしました。
若者の右傾化現象を扱った『ぷちナショ』の内容を受け、またイラクへの武力行使開始の時期でもあり、主にアメリカの「世界支配」に対する日本人のアイデンティティのようなものがテーマになっていますが、両者の対談が噛み合っていない感じがしました。
香山氏の若者の右傾化現象の分析は、感受性としてはいいと思うのですがあくまでも印象レベルにとどまっていて、"対談者"どころか"質問者"としても心もとない感じもありました。
一方、福田氏はサブカルチャーを含めた博識ぶりを披露するかと思えば論壇ネタに終始したりで、香山氏の日本の独自の道はあるのかという問いかけに、必ずしもマトモに答えていません。
福田氏があとがきで、対談中にコーヒー1杯しか出ず、終った後一緒の食事もなく、これで新書1冊が出来上がってしまうことを「貧しさ」と揶揄しているのが彼らしいと思いました。
彼自身も、「こんなんでいいのか」みたいな気持ちがあったのではないでしょうか。