「●世界史」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【752】 木村 尚三郎 『世界戦史99の謎』
「●講談社現代新書」の インデックッスへ
独自視点でヨーロッパ史中心の世界史を批判した原子物理学者の著書。
謝世輝 氏(元東海大学文明史教授)
『新しい世界史の見方 (講談社現代新書)』『新版 新しい世界史の見方―ユーラシア文明の視点から』
本書ではヨーロッパ史中心の世界史を批判し、ユーラシア史こそ世界史の中心であるとしています。
その証拠に四大文明はすべてユーラシア大陸に起源を持ち、その後も騎馬民族文化、インド文明、中国文明、イスラム文明の4つが世界文明をリードしてきたのであって、"ユーラシアの片田舎に過ぎない"ヨーロッパを世界史の中心に据えるのは偏向であると。
そして、インド、中国、イスラムの文明の特質とそれらの豊かさ、高度さを検証し、文明史区分の見直しをしています。
インド数学における零の発見、中国での木版印刷や火薬の発明、イスラム文明における天文学や医学の先駆性などの技術面だけでなく、イスラムの道徳、インドの悟性、中国の思考法など、その人間観・世界観における優越性にも言及し、
それらにはかなりの説得力を感じました。
著者はもともと原子物理学者で、以後、科学技術史から文明史、世界史などに研究対象を広げ、さらにその後は、成功哲学の啓蒙書を多く著述・翻訳しています。
著者の近著にはスピリチュアリズムの色合いが強いものが多いのですが、'70年代に出版された本書は、既成の文明史観に対する斬新な批判と優れた示唆に富むものであり(ほぼ同じ主張内容で文庫化されている著書もある)、現在でも一読の価値があると思います。
『30ポイントで理解する世界史の新しい読み方―脱「ヨーロッパ中心史観」で考えよう(PHP文庫)』('03年)
《読書MEMO》
●中国文化の特徴→決定的な宗教が無いため現実主義/四大文明で唯一、再生を繰り返す(漢民族は不死鳥)(32p)
●ウパニシャッド哲学...宇宙の根源ブラフマンと人間の本体アートマンの合一(梵我一如)(85p)
●零の発見とインド数字(→アラビア)(89p)
●11世紀トレドに集まるイスラム天文学者→ポルトガルへ(113p)