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論壇が俯瞰できる「21世紀の論壇エンターテインメント読本」。
『批評の事情―不良のための論壇案内』 (2001/08 原書房)
'90年代にデビューまたはブレイクした批評家を中心に論じていますが、全否定しているケースは稀で、全体に個々の良いところを探ろうという感じでしょうか。論客の力量を素直に認める姿勢は後味悪くはないけれど、こんな人まで褒めてしまっていいの?みたいなのも個人的にはありました。
軽めのノリで批評としては弱い感じですが、ヒステリニックでないのが「案内」としては良く、内容的にも1人1人まとまっているように思えます。
'80年代の浅田彰・中沢新一・四方田犬彦らのニューアカブームの後、'90年代の論壇はどうであったかを俯瞰し(社会・思想・芸術・文芸といった分野が主で、やはりサブカルチャー論の広範な浸透を感じる)、今後の読書等の指針にするには手頃な「21世紀の論壇エンターテインメント読本」(本書帯より)だと思います。
登場する論客の多くが著者の生まれ年('58年)に比較的近い人たちで(例えば、'57年生まれ...山田昌弘・森永卓郎、'58年生まれ...日垣隆・大塚英志・岡田斗司夫・武田徹・松沢呉一・坪内祐三、'59年生まれ...宮台真司など。中島義道('46年)とか東浩紀('71年)も入っていますが...)、今後もマス・メディアなどを通じてこの人たちの言説に触れることは多々あるでしょう。
著者は編集者兼フリーライターですが、本人に会った時の印象とかを大事にしている感じで(『インタビュー術!』('02年/ 講談社現代新書)という著書もある)、また、批評活動の領域はむしろ文芸評論ですが、論客の本の読み込みにそうしたものが窺える気がし、それが自分の肌には合いました。
【2004年文庫化[ちくま文庫]】
《読書MEMO》
●取り上げている批評家
◆1.社会はどうなる?
宮台真司-90年代がはじまった/宮崎哲弥-アカデミズムとジャーナリズムのあいだで/上野俊哉-グルーヴの社会学/山形浩生-OSとしての教養/田中康夫-イデオロギーなき時代の指標/小林よしのり-「わかりやすさ」は正義か?/山田昌弘-社会学的手法の問題/森永卓郎-構造改革ラテン系/日垣隆-怒れ!笑え!虚構を突け!
◆2,時代の思考回路
大塚英志-物語の生産と消費をにらんで/岡田斗司夫-オタク批評の真価/切通理作-それでも「生きて」いくために/武田徹-「遅れてきた世代」の危険な思想家/春日武彦-「狂気」というものの仮面/斎藤環-虚構・現実・コミュニケーション/鷲田清一-ひととひとのあいだに充ちるもの/中島義道-哲学は闘いである/東浩紀-哲学ビルドゥングスロマン
◆3,芸術が表わすもの
椹木野衣-ポップカルチャーを生きるニヒリズム/港千尋-世界を再構築する眼/佐々木敦・中原昌也・阿部和重-セゾン系/樋口泰人・安井豊ー蓮實ズチルドレン/小沼純一-音楽を越境して/五十嵐太郎-建築界からのスーパーフラット宣言
◆4,ライフスタイルとサブカルチャー
伏見憲明-男制・女制/松沢呉一-ばかばかしいもので撃つ快感/リリー・フランキー-美女と批評/夏目房之介-面白さの正体/近田春夫-見たてが命!/柳下毅一郎-バッドテイストの作法/田中長徳-スペックでは語り得ぬもの/下野康史-評論の生まれるところ/斎藤薫・かづきれいこ-美容評論の夜明けは遠い
◆5,文芸は何を語る
福田和也-小林秀雄への道/斎藤美奈子-あなたの固定観念/小谷真理-ガイネーシスの可能性/小谷野敦-自虐的恋愛観/豊崎由美-書評の立場/石川忠志-ぶっとい文芸批評/坪内祐三-活字でしか味わえない世界を求めて