【1801】 ○ 佐々木 正美/梅永 雄二 (監修) 『大人のアスペルガー症候群 (こころライブラリー イラスト版)』 (2008/08 講談社) ★★★★

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大人のアスペルガー症候群について分かり易く解説した入門書。

大人のアスペルガー症候群.jpg 『大人のアスペルガー症候群 (こころライブラリー イラスト版)』(2008/08 講談社)

 自分では一生懸命頑張っているつもりなのに、上司や同僚から「仕事ができない」「常識や礼儀が身についていない」と批判されるのが、アスペルガー症候群の人に多い悩みであり、職場で良好な人間関係が構築できず、勤め先を転々として自信喪失になりケースも多いとのことですが、本書は、こうした大人のアスペルガー症候群について分かり易く解説した入門書です。

 最初にアスペルガー症候群の3つの特性(コミュニケーションの特性、社会性の時性、想像性の特性)を「会話ができているようで、できていない」「社会性がなく、失礼な言動をする」「想像力に乏しく、応用がきかない」と解説したうえで、大人になってからの問題点として、「人にあわせられない疎外感」「職場に定着できない無力感」「誤解と非難がもたらす劣等感」というように展開して、それぞれを丁寧に解説しています。

 「疎外感」「無力感」「劣等感」と並ぶと何だかネガティブな印象を受ける人もいるかもしれませんが、自分が大人になるまでアスペルガー症候群であることに気付かない人もいるわけで、アスペルガー症候群の「サバン症候群」的傾向ばかりを強調した本よりも、現実対応にウェイトを置いている点で信頼でき、また実際的でもあります。

 また、そうした自分が大人になるまでアスペルガー症候群であることに気付かない人のために、「疎外感」のところでは、子ども時代は、「少数の友達とだけ仲が良かった」「いじめにあい、人間関係に悩んだ」、「無力感」のところでは、学生時代「天才肌で、得意科目に自信があった」「言葉使いの悪さをよく注意された」などといった振り返りチェックもあります。

 「劣等感」のところの冒頭に「家族が障害を認めないことに苦しむ」とありますが、アスペルガー症候群の疑いが持たれる人が家族や身近な周囲にいる人にも参考になるかと思います。

 そのうえで、アスペルガー症候群は支援を受けると安定するものであり、そのためにはどうしたらよいかが書かれていますが、本書が全体として、アスペルガー症候群をよく知らない一般の人も含めて読者ターゲットにしているためか、この部分に割いているページ数はさほど多くなく、「障害手帳や福祉手帳は取得できるのか」といった手続き的な内容に終始してしまったのが(監修者の一人が支援・療育において日本の第一人者である佐々木正美氏であるとを思うと)若干もの足りませんでしたが、まず、本人や周囲の人のアスペルガー症候群に対する自己認識や理解を深めることを狙いとした本と見るべきなのでしょう。イラスト等も多く、平易に書かれています。

 解説で、概念図として、「発達障害」という概念の中に「AD/HD」、「LD」、その他として「広範性発達障害」を置き、その「広範性発達障害」の中に「自閉症」と「アスペルガー症候群」を置いていますが、これが現在のオーソドクッスな捉え方なのだろなあ(アスペルガー症候群は関連する発達障害の特性を併せ持つことが付記されている)。

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