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「ポリティカル・スキル」を習得することで「組織で自由に働く人」になれると説く。
マリー・マッキンタイヤー(ワークプレイス心理学者・キャリアコーチ)
『ポリティカル・スキル 人と組織を思い通りに動かす技術』['24年]
本書は、20年以上のコンサル経験を持つ組織心理・組織力学のプロである著者が、「組織で自由に働く人」というキーワードのもと、「ポリティカル・スキル」を習得することで、思い通りに人と組織を動かし、仕事の自由度を上げることができるとし、その方法を明かしたものです。
三部構成のPART1では、「組織で自由に働く人」の極意とは何かを分析しています。まず、組織に生息する人間には、「成功者」「殉教者」「背徳者」「愚か者」の4タイプがあるとし、自分のタイプを把握して問題行動を改め、抱えている倫理的なジレンマを整理することを説いています(第1章)。
また、「組織で自由に働く人」は、職場に理想を求めず、現実だけを見るとしています。組織とはもともと民主的なものではなく、最も大きな力を持つ者が勝つのであり、「公平さ」へのこだわりは捨てるべきだとしています(第2章)。
さらに、「組織で自由に働く人」は、相手との力関係を見極めているとし、組織スキルを高める力を7つの力を「レバレッジ・ブースター」として挙げていますが、この中に「距離を置く力」というのがあるのが興味深いです(第3章)。
このPARTの最後では、「組織で自由に働く人」は敵と味方を見分けて利用するとし、その際に「友人」「パートナー」「人脈」という3つの仲間を取り込むとし、また、敵への対処法の「法則」を示しています(第4章)。
PART2では、「組織の力学」の落とし穴にはまらないためにどうすればよいかを説いています。まず、リーダーとは「組織内ゲームの勝者」であるとし、組織のゲームには「パワーゲーム」「エコゲーム」「回避ゲーム」の3つのカテゴリーがあるとして、それぞれのゲームに勝つ方法を説いています(第5章)。
また、人は「怒り」か「不安」によって自滅していくとして、「私は犠牲者だ」という感情にとらわれていたら要注意であるとしています。その上で、習慣になっている態度や行動を変えるカギとなる5つのステップ(「気づき」「モチベーション」「特定」「代替」「習慣の置き換え」)を挙げています(第6章)。
さらに、「個人の力」とは、肩書や役職ではなく、自身の性格や能力がその源泉であるとして、自分の力量や自分に影響を与えている要素の分析方法を示しています(第7章)。
PART3では、組織において主導権を手にするにはどうすればよいかを説いています。まず、どんな目標であれ、達成するには十分な力が必要であり、真の力は貢献から生まれるが、見えない貢献は組織内での力を高める効果はまったくないので、貢献の重要性だけでなく「露出度」も意識せよとしています(第8章)。
さらに、誰かに影響を与えるには、自分の言動を意識することが必要で、セルフマネジメント能力を磨き、改善すべき影響力のスキルを検討することを説いています(第9章)。
また、組織内の力関係を全方位的に掌握し、上・横・下に影響力を持つべきであるとし、上司に対するマネジメント法や同僚との付き合い方、部下の引っぱり方を説いています(第10章)。
そして最後に、組織で自由に働くためには"ゲームプラン"が必要であるとし、「やめること」「始めること」「続けること」をリストアップし、それらを定期的に見直しことを勧めています(第11章)。
別に権謀術数をめぐらすことを推奨しているわけではなく、どれほど才能があっても、社内政治を軽んじてしまえば、得たい結果は得られないという趣旨の本です。
ジェフリー・フェファーの『「権力」を握る人の法則』(2014年/日経ビジネス人文庫)や、ロバート・B・チャルディーニの『影響力の武器[新版]―人を動かす七つの原理』(2023年/誠信書房)などにも通じる内容であり、それらに読み進むのもいいのではないかと思います。
《読書MEMO》
●目次
Introduction―はじめに
PART1「組織スキル」の極意
第1章 「組織で自由に働く人」だけが知っている組織で生きるためのスキル
第2章 「組織で自由に働く人」は職場に理想を求めず、現実だけを見る
第3章 「組織で自由に働く人」は相手との力関係を見きわめる
第4章 「組織で自由に働く人」は敵と味方を見分けて利用する
PART2「組織の力学」の落とし穴にはまらないために
第5章 リーダーとは「組織内ゲームの勝者」である
第6章 「組織で自由に働く人」が絶対にしないこと
第7章 「組織で自由に働く人」は権力に逆らわない
PART3 組織において主導権を手にする
第8章 「組織で自由に働く人」は正しいプランを立てる
第9章 「組織で自由に働く人」には影響力という武器がある
第10章 「組織で自由に働く人」は全方位で力関係を掌握する
第11章 組織で自由に働くために必須のゲームプラン
Epilogue―おわりに