【003】 ○ 牧野 昇/武藤 泰明 『新・雇用革命―人材流動化時代の新しい労働形態とプロ人材の条件』 (1999/11 経済界) ★★★☆

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「社長レースからだれも降りない理由」など、雇用マネジメントに冷静な洞察。

新・雇用革命.jpg Makino.gif 牧野 昇 氏 (略歴下記)
新・雇用革命―人材流動化時代の新しい労働形態(SOHOアウトソーシングナレッジマネジメント)とプロ人材の条件

営業.jpg 本書は'99年の出版ですが、終身雇用・年功序列の崩壊、失業率の上昇、転職・独立の気運、雇用の流動化により変化していく会社と社員の関係、多様化するだろう就業形態を見据え、そうした中で企業はどうすれば良いのか、また個人は「プロ人材」としてどう生きていくかを提唱したものでした。 

 著者の1人である牧野昇氏は工学系の出身ですが、三菱総合研究所の会長として経済と技術開発にその精通ぶりを発揮し、本書の随所にあるように雇用マネジメントにも深く冷静な洞察を示しています。

 例えば本書の中で、日本のサラリーマンが「社長レースからだれも降りない理由」は「負けても失うものが意外に少ないから」としています。

 「ゼネラリストとして成功しないより、スペシャリストとして成功した方が、それは幸福だろう。しかし、ゼネラリストとして成功しないことと、スペシャリストとして成功しないことの間には、大きな格差がある。だからスペシャリストを志向することはリスクなのである。少なくとも今まではそうであった。」
Business Man.jpg これを読み、なるほど、わかりやすく的確な指摘だと思った記憶があります。
 
 これからは変わっていくかもしれない、というのが本書の見方だったのですが、確かにこの頃から、日本企業における長期雇用は揺らぎを見せ、大企業を中心に「キャリアプランニング研修」などが行われ始めたのもこの頃からです。 

 しかし、少なくとも中高年に関しては、外部労働市場はその後もそれほど整備されず、自ら企業を飛び出してスペシャリストとして何かやるという人の数は限られていたのではないか、つまりは「社長レースからだれも降りない理由」というのが、「自ら会社を飛び出さない理由」に置き換えられて、根強く生き続けたと思われます。 
 
 結局のところ長期化する不況の中で、企業は、強制力を持った人的リストラというやり方で"余剰な"人員を外部へ押しやるという傾向が続いたのではないでしょうか。
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牧野 昇 (株式会社 三菱総合研究所 特別顧問)
1949年 東京大学大学院卒業。専門は経済及び産業政策・技術開発。著書「製造業は不滅です」(経済界)「環境ビジネス新時代「静脈産業」が巨大市場を切り拓く」(経済界)「オ-プン・リソ-セス経営勝ち残る企業像-バ-チャル・コ-ポレ-ション」(経済界)「総予測21世紀の技術革新」(工業調査会)「手にとるように経済用語がわかる本 新時代のキ-ワ-ド集」(かんき出版)「ITで世の中が変わる「iモ-ド」が創る新世紀」(PHP研究所)など。

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牧野昇(三菱総合研究所特別顧問)2007年3月2日、呼吸不全で死去。86歳。

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【002】 ○ 日本経営者団体連盟 『新時代の「日本的経営」―挑戦すべき方向とその具体策』 (1995/05 日本経営者団体連盟) ★★★☆ was the previous entry in this blog.

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