【912】 ○ 朝日新聞医療グループ 『うつを生きる (2007/06 朝日新聞社) ★★★☆

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様々な「うつ」との闘いを取材。医療機関、行政、NPO、企業などの取り組みも。

うつを生きる2.gif 『うつを生きる』 (2007/06 朝日新聞社) やまない雨はない.jpg 倉嶋 厚 『やまない雨はない―妻の死、うつ病、それから...』 (2002/08 文藝春秋)

 '06年から'07年にかけて朝日新聞に断続的に連載された「うつ」関連の特集コラムを再編集したもので、複数の記者が「うつ」で悩む様々な人を取材し、彼らがそれをどう克服したか、また、医療機関や行政、NPO、企業などがどのような対応や対策を講じているかが記されています。

高島忠夫.jpg 冒頭に高島忠夫氏のことが事例として紹介されていますが(新聞なので、有名人でアイキャッチを狙った部分もあるかと思うが)、本書を読むと、26年間続いた料理番組の司会を代わった2年後に発病したとのことで、長く続けた仕事を辞めた時は、危ない時期なのだろうか。この人は、治ったと言うより、まだ闘病中でしょう。今でも毎日、抗うつ剤を服用しているとのこと。

倉嶋厚.jpg 元・気象キャスターの倉嶋厚氏も「うつ」に罹患経験者の1人として紹介されていますが、発症したのが妻が癌で亡くなった73歳の時で、この人のように伴侶の死が発症の契機となることも、やはり多いのかも(倉嶋氏のうつ病の発症と闘病の記録は、自著『やまない雨はない―妻の死、うつ病、それから...』('02年/文藝春秋)に詳しい)。

 ワイドショー「小川宏ショー」の司会を通算17年務めた小川宏氏もうつ病に罹患しているから、やはり長寿番組を終えた後の虚脱感は大きいのかなあ(妻が癌になった点では、本書の倉嶋厚氏と同じ)。

 高齢者のうつだけでなく、女性特有のうつ(中高年齢者は更年期障害と見分けにくく、また、それより下の年齢では"産後うつ"などといったものもある)や、エリート・サラリーマン、医師などがうつになった例なども取材していて、その治癒方法も、薬物療法だけでなく、認知療法や磁気療法など様々で、こうして見ると、どの療法がその人に合っているかということの見極めが難しいなあと思わざるを得ませんでした。

 うつ病から回復して職場復帰を目指す人のために、相手を人事担当者に見立てた模擬面接訓練をやっている組織もあることを知り、それだけ、復職の壁は厚いということなのでしょうか(ただ、企業側が積極的に、職場復帰支援プログラムを策定している例も紹介されてはいるが)。

 この職場復帰支援組織の人がうつ病患者の家族に説いている、本人との接し方には「温かな無関心」 という姿勢が必要という話と、同じく職場復帰支援に力を入れている不知火病院(大牟田市)の院長が退院患者に渡したメモにある、「7割の力、3割の余力」 という言葉が印象的でした。

 本書によれば、'04年に、精神科医の島悟・京都文教大教授が全国ネットのメンタルヘルスコンサルティング機構を立ち上げ、主として、社員を復職させるかどうかなどに迷う上司や人事担当者への助言を行っているそうですが、これからは、企業側からも積極的にこうした外部機関との連携・活用を進めていく必要があるように思いました。

《読書MEMO》
「やまない雨はない」...2010年3月6日単発スペシャルのテレビドラマとしてテレビ朝日系列にて放映。
ドラマ やまない雨はない.jpgキャスト
倉嶋 厚:渡瀬恒彦(青年期:内田朝陽)
倉嶋泰子:黒木 瞳(青年期:星野真里)

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This page contains a single entry by wada published on 2008年5月31日 23:10.

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