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バカは歴史書を読め!? 読書案内であると同時に反「ニューアカデミズム」の教養論。
『バカのための読書術』 『グロテスクな教養』 『学者の値打ち』
インパクトのあるタイトルでそれなりに売れた本ですが、本書で言うところの「バカ」とは「学校出た後も勉強はしたいけど、哲学のような抽象的なことは苦手」という人のことで、著者は、そういう「難しい本」がわからない人は「歴史書」を読めと言っています。「教養」を身につけようとして、哲学書や心理学・社会学系の本を読み漁り、カオスに陥って時間を無駄にするという事態を避けるための逆説的提言として、「事実」に立脚したものを読めということのようです。
巻末近くに「歴史入門ブックガイド」「小説ガイド」がありますが意外と平凡で、むしろ中程の「読んではいけない本」ブックガイドが面白い(小林秀雄、ユング、中沢新一あたりは、ほとんど全部ダメとのこと)。世間で名著とされているものに疑念を呈するだけでなく、入門書にも入門書として不向きなものがあることを教えてくれます。ただし、「自然科学」書を「バカ」には荷が重いと最初から排除しているのはどうかなあ。なんで歴史書に限定されてしまうのだろうか。
背景には著者の「若者の歴史についての無知」に対する危惧があるようですが、さらには、「ニューアカデミズム」に対する「旧教養主義」という構図の中での「歴史書」推奨という構図になっているようです。ですから本書は、読書案内であると同時に「教養」に関する本と言えます。
同じ「ちくま新書」で、他にも「教養(またはアカデミズム)」をテーマにしたものを何冊か読みましたが―、
『グロテスクな教養』(高田里惠子/'05年)は旧制高校的教養主義の伝統を確認しているだけのようにしか思えず、評価★★☆(低評価の理由には、着眼点は面白いが、自分にとってイメージしにくい世界の話だったということもある。この本を高く評価する人もいる。テーマとの相性の問題か?)、『学者の値打ち』(鷲田小彌太/'04年)に至っては、あまりに恣意的で主観に偏った内容であったため評価★。
これらに比べると、まあ参考になった部分もあるし、「許せるかな」という内容でした(元々が、目くじら立てて読むような内容の本ではないのですが)。