【3415】 ◎ ウィリアム・ブリッジズ (倉光 修/小林哲郎:訳) 『トランジション―人生の転機を活かすために』 (2014/03 パンローリング)《トランジション―人生の転機』 (1994/11 創元社)》 ★★★★★

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企業内でキャリア研修に携わる人だけでなく、人事パーソン全般にお薦め。

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トランジション ――人生の転機を活かすために (フェニックスシリーズ) 』['00年]/『トランジション: 人生の転機』['94年]

 人生で訪れる転機をどのように乗り越え、変化に適応していくか―本書では、キャリアや生涯での節目をトランジションと呼び、キャリアや生涯での節目にあたるトランジションには、何かが終わるとき(終わり)、混乱や苦悩のとき(ニュートラルゾーン)、新しい何かが始まるとき(始まり)の3つの段階があるとし、人生で訪れる転機をどのように乗り越えるかを説いています。第Ⅰ部(第1章~第4章)では、人生の発達過程としてのトランジションが、人間関係や職業生活にどう影響するかを考察し、第Ⅱ部(第5章~第7章)では、トランジションの3つ段階についてそれぞれ解説しています。

 第1章では、すべてのトランジションは何かの「終わり」から始まり、「終わり」の後に「始まり」があるが、その間に重要な空白ないし休養期間が入るとしています。そして、トランジションの過程で、人は「死と再生」を経験するとしています。

 第2章では、人生はトランジションの連続であり、それは人生の発達過程としてとらえることができるとし、子ども時代の終わり、30代、「中年の危機」、それ以降のヒンドゥー教で言うところの「林住期」のそれぞれにおけるトランジションについて述べています。

 第3章では、人間関係にもトランジションがあり、たとえば夫婦関係とは、相手の物語に組み込まれた役割を演じることであり、危機の中で二人の関係をどう育むかが大切であるとし、人間関係がトランジションを迎えている人が留意すべきチェックリストを示しています。

 第4章では、トランジションは「終わり」から始まり、「ニュートラルゾーン」「始まり」という3つの局面があるが、人間関係と同様に、職業生活にも人生のステージごとにトランジションのリズムがあるとし、トランジションに直面した際にその意味を見い出し、自分自身のために「もはやふさわしいとは言えなくなった」ことが何であるかとしっかりと捉える必要があると説いています。

 第5章では、トランジションの最初の局面としての「終わり」には、離脱・解体・アイデンティティの喪失・覚醒・方向感覚の喪失の5つの側面があるとし、また、トランジションが変化と異なる点は、自分にふさわしくなくなったものを手放すことから始めることにあるとしています。

 第6章では、「ニュートラルゾーン」は経験したことのない不思議な体験であり、深刻な虚無感を伴うものであるが、そこに意味を見い出し、この時期をできるだけ短く切り上げるにはどうすればよいか、そのヒントを挙げています。

 第7章では、「始まり」について、それは印象に残らない形で生じるが、「始まり」を知らせるヒントはどのように現れるか、また、「始まり」において留意すべきことは何かを述べています。

 人材不足の時代、企業は、社員のトランジションをサポートする仕組み作りをすることが、人材定着率の中長期的な向上に繋がるのではないでしょうか。キャリア研修の担当者に限らず、広く人事パーソンにお薦めです。もちろん、自分自身に引き寄せて読んでみるのもいいと思います。

《読書MEMO》
●ニュートラルゾーンの中で、その意味を見いだすためのヒント(第6章・207p)
 (1) ニュートラルゾーンで過ごす時間の必要性を認める
 (2) 一人になれる特定の時間と場所を確保する
 (3) ニュートラルゾーンの体験を記録する
 (4) 自叙伝を書くために、ひと休みする
 (5) この機会に、本当にしたいことを見いだす
 (6) もし今死んだら、心残りは何かを考える
     人生を後悔しないための重要な質問が「今自分の人生が終わったら心残りになることは何か?」。
     日々この質問を自分にすることで、やり残すことがないように生きる。
 (7) 数日間、あなたなりの通過儀礼を体験する
●「始まり」において留意すべきこと(第7章:244p)
 第一:あまり準備せずに行動する
 第二:「始まり」がもたらした結果を確認する
 第三:目標よりもプロセスを重視する
     大切なのは何か目標を達成するのではなく、人生の過程そのもの。
     何を得たのではなく、何を経験し、どのように生きたか?本当に大切にすべきなのは生きていく過程そのもの。
     目標が達成された or 失敗したで物事の価値を決めてはいけない。行動したことは間違いではないから。

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