【3399】 ◎ アメリカ海軍協会 (武田文男/ 野中郁次郎:訳) 『リーダーシップ―アメリカ海軍士官候補生読本』 (1981/10 生産性出版) 《[新装版](2009/04 生産性出版)》 ★★★★☆

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リーダーシップ行動のあり方が具体的・実践的に書かれていて、軍隊を超えた普遍性も高い。

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リーダーシップ―アメリカ海軍士官候補生読本』['81年]『リーダーシップ 新装版―アメリカ海軍士官候補生読本』['09年]
 
 本書は、アメリカ海軍兵学校の生徒、幹部候補生、見習士官のリーダーシップ教育のために作成されたものであり、原書は1959年に発行され、本邦では、野中郁次郎氏らの共訳で1981年に訳書が刊行され、35刷を重ねています(2009年に新装版が刊行された)。

 2部構成の第Ⅰ部「基礎編」では、まず第1章で、リーダーシップとは「一人の人間がほかの人間の心からの服従、信頼、尊敬、忠実な協力を与えるようなやり方で、人間の思考、計画、行為を指揮できかつそのような栄誉を与えうる技術、科学、ないし天分」であると定義し、このリーダーシップを理解し、身につけるうえで、フォロアーシップを身につけることが必要であり、フォロアーシップとは、チームメンバーとして必要となる要素であり、フォロアーシップとして習得すべき態度は、リーダーに対して服従、信頼、尊敬、忠実な協力の4つであるとしています。

 そして、リーダーシップを理解するためには、心理学、行動分析学の要素を理解しておく必要があるとし、第2章で、心理学的研究の歴史的背景を述べています。そして、第3章では、人間行動の科学的研究について述べ、科学的行動は、健全な懐疑主義、客観性、変化への即応性の3つを基本的なアプローチとするとしています。さらに、第4章では、集団の構造と機能について書かれており、リーダーが集団の成員に配慮すべきこととして、集団における安定した満足すべき社会的関係、集団内部における身分感情、集団内のメンバーシップによる地位感情、現時点で重要かつ多様な個人的欲求の充足の4つを挙げています。

 第Ⅱ部「実践編」では、第5章で、道義的リーダーシップとは何かを説き、それは、第一は、リーダーが自己を誠実にするのに必要な高い水準の徳性を伸ばすことであり、第二は、リーダーが道徳的価値を部下に率先垂範によって分け与えることであるとし、与えられた使命を達成するための責任を受け入れる覚悟が求められるとしています。第6章では、士官の役割や、リーダーとしての品位を保った言動、立ち居振る舞いと話し方などについて述べています。

 第7章では、バーク大将がリーダーの人格的特性として①自信、②知識、③熱意、④力強く明確に表現する能力、⑤無能な不適任者をふるいにかける道義的勇気、⑥大義のために何かをしようとする意思の6つを挙げたことを引き、有能なリーダーの人格的特性として組織に対する「忠誠」や行動・判断する「勇気」、「謙虚」「自信」など挙げて、それぞれ解説しています。第8章では、リーダーシップを日々行使することで得られるダイナミックな(体得可能な)特性(目標設定、熱意と快活、配慮、専門知識など)を挙げ、さらに第9章では、その他重要なリーダーシップを増強する特性、リーダーとしての成功要因(部下を名前で呼ぶ能力、寛容、話し振りなど)を挙げて、それぞれ解説しています。

 第10章では、リーダーとして人間関係をうまくやっていく際の13の落とし穴を列挙し、どうすればリーダーとしてよい人間関係をフォロワーとの間に築けるか、また、組織化された制度上のリーダーシップの概念においては、フォロワーの役割が一番大切であることを脳裡に刻むべきであるとし、よいフォロワーの特性とは何かを述べています。

 第11章では、部下との人間関係を維持し、部下を認めてあげるための効果的な技術としては、個人面接とカウンセリングに勝る方法はないとして、よいカウンセリング(面接)の一般原則を説き、第12章では、規律の重要性と、部下の士気を高める方法を説いています。第13章では、組織、管理、および指揮リーダーシップは、相互に結びついて切り離せないものであるとし、最後の第14章にアメリカ合衆国の戦闘要員の行動要領(部分訳)を付けています。

 興味深いのは、リーダーシップの基礎として「人間心理を客観的に分析する」という科学的方法を重視していること(本書第Ⅰ部)と、科学的合理主義のみならず、それと同時に、リーダーたり得るかどうかの基準である部下や上司、同僚の信頼をいかに獲得するかということについて、自分の視点ではなく、他者の評価が重要であると強調されている点です。

 さらに、リーダーシップ行動のあり方が、きわめて具体的かつ実践的に書かれているのが本書の特徴であり、例えば、飲酒に関する注意点について、①絶対な一人飲みをするな、②絶対に就業中および勤務時間中に飲むな、③絶対に空腹時に飲むな、④とくに、疲労時に飲みすぎに注意せよ、⑤絶対に早飲みするな、⑥絶対に毎日飲む習慣をつけるな、⑦飲みすぎの気がしたら、たえず動いたり、ダンスをしたり、食事したり、談話したりすること―そして、次回にはひと飲み減らすこと―といった具合です。

 アメリカ海軍兵学校の士官候補生を対象としたリーダーシップの教科書でありながら、軍事組織の範囲を超えて、リーダーシップ一般に共通する(敷衍できる)視点を展開していることが、60年以上前に書かれて、いまだに読みつがれている理由ではないかと思います(勿論アメリカ海軍の理想的なリーダー像も見えてくるわけだが、同時に現代ビジネス社会に応用可能な普遍的要素を多く含むということ)。

《読書MEMO》
●集団に関する要素(第4章:49p~70p)
・集団の性質:規模・構造・密度・集団となった経緯によって決定される
・集団の特徴:排他性・一体感・ポテンシャル・目的の統一性・安定性によって決定される
・個人と集団:集団との一体感・組織内の位置づけ・参加の度合い・リーダーへの依存度により関係性が決定される
・集団の構成員の欲求:集団との関係性の安全、集団内での地位、集団による地位、評価、報酬、組織の士気により変化する
●バーク大将の「海軍のリーダーシップの実践」における有能なリーダーの人格的特性(第7章:115p)
(1) 自信
(2) 知識
(3) 熱意
(4) 力強く明確に表現する能力
(5) 無能な不適任者をふるいにかける道義的勇気
(6) 大義のために何かをしようとする意思
●リーダーに必要な特性(第7章)
・組織に対する「忠誠」
・行動・判断する「勇気」
・名誉・正直・真実
・信義
・宗教的信仰
・謙虚
・自信
・常識とよい判断
・健康、エネルギー、楽観主義
●リーダーのダイナミックな特性(第8章)
・目標の設定
・熱意と快活
・協力
・敏速、信頼性
・如才なさ
・配慮
・公正
・自制
・専門知識、準備、余暇の利用
・率先。計画能力、想像力
・決断力
・勝つ意志
●その他重要な成功要因(第9章)
・部下を名前で呼ぶ能力
・寛容
・よい聞き手であれ
・節制
・弁説の力
・話し振り
・口頭による命令
・集団の前で話すこと
・会話
・書き言葉対話し言葉
・有効な文書
●人間関係をうまくやっていく際の13の落とし穴(第10章:160p)
(1) 自分勝手な善意の規準を設けようとすること。
(2) 他人の楽しみを自分自身の物差しで測ろうとすること。
(3) 世間の意見の画一性を期待すること。
(4) 無経験を酌量しないこと。
(5) すべての気質を同じ型につくり上げようとすること。
(6) 重要でない、ささいなことがらについて譲歩しないこと。
(7) 自分自身の行動に完全を求めること。
(8) つまらぬことに自分自身また他人についてくよくよ思い悩むこと
(9) 場所のいかんを問わず、助けることができるときにだれも助けないこと。
(10) 自分自身が実行できないことを不可能と考えること。
(11) われわれ有限の心で捉えうるものだけしか信じないこと。
(12) 他人の弱点を斟酌しないこと。
(13) その人をつくり上げるのが内部の質的基準であるのに、外部の質的基準で評価すること。
●フォロワーのリーダーに対する責任(第10章:178p)
(1)自己の仕事とそれがいかに部隊の使命達成に寄与しているかを知っている。
(2)リーダーの特性を知っている。
(3)インスピレーションを与える能力をもっている。
(4)上司および部下に対して忠誠をつくす。
(5)能力に見合うイニシアチブを発揮する。
(6)権限と責任の委譲を容易に受諾し、かつまた受諾する用意がある。
(7)リーダーの決定を受諾し、全幅的にこの決定を実施するために最善をつくす。
(8)リーダーの部下のために配慮する能力と限界を十分に知り、不当な期待をかけることによって、上司のリーダーシップの負担をふやさない
●団結心の達成と維持のためにリーダーが克服すべきこと(第12章:212p)
(1)リーダーに対する信頼の欠如
(2)チームメンバーの葛藤
(3)成果に対する非協力者の存在
(4)リーダー・チームメンバーの急な異動
(5)正当な評価の欠如
●組織を成果に向かわせるために(第13章:212p)
・成果に必要なミッションを組織内に全て割り当てる
・チームメンバーが自分の責任・ミッションを明確に理解できるようにする(簡潔に整理し、何をすべきかを明確にする)
・チームメンバーの特性・職位にあったミッションを与え、必要な権限を最大限委譲する(責任に相応)
・矛盾や重複した責任・ミッションの分担は行わない
・組織全体の構造に一貫性と正当性を持たせる
・複数のリーダーを一つのチーム、または一人の個人に置かない(上長1に対し、チームメンバーNとする)
・リーダーがコントロールできないチームメンバーをおかない
・指揮系統の安定を図る(他による侵食を防ぐ)
・上位にいるリーダー(複数のチームリーダーをまとめるリーダー、会社で言う部長など)は、方針によって組織を統制する
・組織内で相互に監視が行われ、統制機能が働く関係性を作る

【2713】 ○ 日本経済新聞社 (編) 『リーダーシップの名著を読む』 (2015/05 日経文庫)

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