【2619】 ○ アン・リー(李安) (原作:ジェーン・オースティン) 「いつか晴れた日に」 (95年/米・英) (1996/06 コロンビア・ピクチャーズ) ★★★★

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ハーレクイン・ロマンスみたいでも、演じる役者が上手ならば、王道を行く恋愛劇作品に。
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いつか晴れた日に[DVD]」「いつか晴れた日に[DVD]」ケイト・ウィンスレット/エマ・トンプソン アン・リー監督  

いつか晴れた日に_1.jpg 貴族のダッシュウッド氏(トム・ウィルキンソン)が亡くなった後、ダッシュウッド夫人と3人の娘、エリノア(エマ・トンプソン)、マリアンヌ(ケイト・ウィンスレット)、マーガレットは、年500ポンドの遺産しか残されなかったことに愕然とする。ダッシュウッド氏は妻と娘たちの身を案じ、死ぬ間際に彼女たちを頼むと先妻との間の息子ジョン(ジェームズ・フリート)に頼んでいたにもかかわらず、ジョンの妻ファニー(ハリエット・ウォルター)がそれを阻止してしまったのだった。ジョンとファニーは母娘が住んでいたノーランド・パーク邸に乗り込み、彼女たちを邪険に扱うようになる。エリノアは、屋敷を訪れたファニーの弟エドワード(ヒュー・グラント)と互いに好感を抱く。ダッシュウッド母娘はミドルトン卿(ロバート・ハーディ)の厚意でバートン・コテージへ移り住む。マリアンヌは年の離れたブランドン大佐(アラン・リックマン)から愛情を寄せられるが、彼女は青年貴族ウィロビー(グレッグ・ワイズ)と恋仲になってしまう。しかし、ウィロビーは理由も告げずにロンドンへ去り、マリアンヌは悲しみに沈む。一方、エリノアはエドワードの秘密の婚約者ルーシー(イモジェン・スタッブス)の存在に大きな衝撃を受ける。ジェニングス夫人(エリザベス・スプリッグス)の招待で、失意のエリノアとマリアンヌ姉妹、そしてルーシーはロンドンを訪れるが、そこでは思いがけない事態が待っていた―。

Alan Rickman with Ang Lee's Goldener Bär.jpg 1995年製作のアン・リー(李安)監督による米・英合作映画で、アン・リー監督にとっては、本格的にハリウッド進出を果たした第1作。ジェーン・オースティンの『分別と多感』が原作であり、原題は原作と同じです(Sense and Sensibility)。1996年・第46回ベルリン国際映画祭で、アン・リー監督としては「ウェディング・バンケット」('93年/台湾・米)に次ぐ2度目の「金熊賞」を獲得したほか(複数回の金熊賞受賞は2017年現在アン・リー監督のみ)、主演のエマ・トンプソンが脚本を担当しており、第68回アカデミー賞にて脚色賞を受賞しています。

Alan Rickman with Ang Lee's Goldener Bär (Berlinale, 1996)
 
いつか晴れた日に  03.jpg ジェーン・オースティン作品では『高慢と偏見』が2005年にジョー・ライト監督によるイギリス映画としてキーラ・ナイトレイ主演で映画化されていますが(「プライドと偏見」)、文学全集などによく収められているのは『高慢と偏見』の方だけれども(或いは『エマ』か)、この「いつか晴れた日に」の原作『分別と多感』もなかなか面白いのではないでしょうか(個人的には未読だが、2009年に英国ガーディアン紙が発表した「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」に『高慢と偏見』と共に入っている)。『高慢と偏見』の最初の映画化作品は、ローレンス・オリヴィエ主演の「高慢と偏見」('40年/米)で、当時ハリウッドで流行したスクリューボール・コメディの影響を受けた作りになっているそうですが、ジェーン・オースティンの小説に登場する姉妹(『高慢と偏見』の場合は5人姉妹)は、いい男が現われる度にどんどん恋にいつか晴れた日に1.jpg陥っていくので、何となく分かる気がします。

 この「いつか晴れた日に」も、原作はハーレクイン・ロマンスかと思ってしまうくらい、エリノア、マリアンヌ姉妹の前にエドワード、ブランドン大佐、ウィロビーいい男が次々と3人現れ、そこから紆余曲折の恋愛模様が展開されていきます。たとえハーレクイン・ロマンスみたいでも、演じる役者がしっかりしていて上手に演じていれば、王道を行く恋愛劇作品となり、さすがオースティン原作ということになる―ということではないでしょうか。
 
いつか晴れた日に エマ・トンプソン.jpg 長女エリノア役のエマ・トンプソンはイングランド出身で、ジェームズ・アイヴォリー監督の「ハワーズ・エンド」('92年/英・日)でアカデミー主演女優賞を受賞済み、同じくエマ・トンプソン グレッグ・ワイズ2.jpgジェームズ・アイヴォリー監督の「日の名残り」('93年/英)の演技でもアカデミー主演女優賞ノミネートされています(この「いつか晴れた日に」では英国アカデミー賞主演女優賞を受賞)。因みに、エマ・トンプソンは私生活では、1995年にケネス・ブラナーと離婚した後、同年この「いつか晴れた日に」で共演した、次女マリアンヌの想い人ウィロビー役のグレッグ・ワイズと交際を始め、2003年に再婚しています。

いつか晴れた日に    09.jpgいつか晴れた日に ケイト・ウィンスレット.jpg 次女マリアンヌ役のケイト・ウィンスレットもイングランド出身で、この作品の後、ジェームズ・キャメロン監督の「タイタニック」('97年/米)でレオナルド・ディカプリオと共演し、スティーブン・ダルドリー監督の「愛を読むひと」('08年/米・独)でアカデミー主演女優賞を受賞することになります。レオナルド・デカプリオより1歳年下ですが、若い頃から演技の天才などと呼ばれたレオナルド・デカプリオよりも、彼女の方が受賞は7年早かったことになります。(この「いつか晴れた日に」では英国アカデミー賞主演女優賞を受賞)。

いつか晴れた日に ヒュー・グラントSense-and-Sensibility-emma-thompson-.jpgいつか晴れた日に ヒュー・グラント.jpg エドワード役のヒュー・グラントは、こうした英国風映画には欠かせないイングランド出身の俳優で(個人的には ジェームズ・アイヴォリー監督の「モーリス」('87年/米)の演技が印象的だった)、英国アカデミー賞主演男優賞を受賞した「フォー・ウェディング」('94年/英)の時もそうでしたが、この映画でもちょっと優柔不断なところがある"いい人"が似合っています。
    
いつか晴れた日に アラン・リックマン.jpg ブランドン大佐役のアラン・リックマンは、この人もイングランド出身で、映画初出演だった「ダイ・ハード」('88アラン・リックマン .jpgダイハード 1988 アラン・リックマン2.jpg年/米)の冷酷無比なテロリスト集団のリーダー・ハンス役で一気に有名になりましたが、元々は英ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー出身の舞台俳優であり、この映画を観ているとそのことが感じられます。「ハリー・ポッター」シリーズのセブルス・スネイプ役も印象的でしたが、2016年に膵臓癌により69歳で死去したのが惜しまれます。

ヒュー・グラント/エマ・トンプソン    ケイト・ウィンスレット/アラン・リックマン
いつか晴れた日に l1.jpgいつか晴れた日に l2.jpg 脇役もいいですが、やはりこの4人の演技力が映画の完成度に寄与している部分が大きいです。ハリウッド映画ですが、グレッグ・ワイズまで含めて主要な配役の5人ともイングランド出身で、彼らの演技力を引き出したのが、台湾出身のアン・リー監督であるというのが興味深いです。
Sense and Sensibility (1995)
いつか晴れた日に_0.jpgSense and Sensibility (1995).jpg
「いつか晴れた日に」●原題:SENSE AND SENSIBILITY●制作年:1995年●制作国:アメリカ・イギリス●監督:アン・リー(李安)●製作:リンゼイ・ドーラン●製作総指揮:シドニー・ポラック●脚本:エマ・トンプソン●撮影:マイケル・コールター●音楽:パトリック・ドイル●原作:ジェーン・オースティン「分別と多感」●時間:136分●出演:エマ・トンプソン/ケイト・ウィンスレット/ヒュー・グラント/アラン・リックマン/グレッグ・ワイズ/ジェマ・ジョーンズ/エミリー・フランソワ/ジェームズ・フリート/ハリエット・ウォルター/トム・ウィルキンソン/ロバート・ハーディ/エリザベス・スプリッグス/イモジェン・スタッブス/イメルダ・スタウントン/ヒュー・ローリー/リチャード・ラムズデン●日本公開:1996/06●配給:コロンビア・ピクチャーズ(評価:★★★★)

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