【3202】 ○ アラン・レネ 「薔薇のスタビスキー」 (74年/仏) (1975/05 エデン) ★★★☆ (△ フィリップ・ラブロ 「相続人」 (73年/仏・伊) (1973/11 20世紀フォックス) ★★☆)

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47年ぶりの劇場公開。ベルモンドが野心溢れるスタビスキーを熱演。

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薔薇のスタビスキー HDマスターDVD」ジャン=ポール・ベルモンド/アニー・デュプレー

「薔薇のスタビスキー」1974.jpg「薔薇のスタビスキー」01.jpg 1930年のはじめの、アレクサンドル・スタビスキー(ジャン=ポール・ベルモンド)は、クラリッジ・ホテルの一室で、友人であり共同の事業経営者であるラオール男爵(シャルル・ボワイエ)、弁護士のボレリ(フランソワ・ペリエ)と共にお茶を飲んでいた。実は彼は生まれながらの野心家で、詐欺のような行為で大金を稼いでいたのだ。彼は政財界の大物と仲良くなり、妻アルレッテ(アニー・デュプレー)と優雅な生活「薔薇のスタビスキー」02.jpgを送っていた。その彼女に献身的な愛を捧げる男がいた。スペイン人のモンタルボ(ロベルト・ビサッコ)だ。モンタルボはフランコ側につく地主の息子で、人民戦線を叩きつぶす目的でムッソリーニから武器を買いつけるためにマルセーユに来ていた。その頃、スタビスキーの身辺が騒がしくなる。彼の前歴を怪しんだボニー(クロード・リッシュ)という検察官の調べで、スタビスキーが偽公債を発行していたことがばれてしまい、スタビスキーはスイスの山荘へ逃亡することになる―。
  
「薔薇のスタビスキー」vhs.jpg アラン・レネ監督の1974年5月公開作で(日本公開は1975年5月)、ジャン=ポール・ベルモンドを主演に迎え、1930年代にフランス政財界を揺るがした「スタビスキー事件」を映画化した実録サスペンス。シャルル・ボワイエがラオール男爵を演じ、1974年・第27回「カンヌ国際映画祭」で特別表彰を受けたほか、「ニューヨーク映画批評家協会賞」の最優秀助演俳優賞を受賞しています(若き日のジェラール・ドパルデューが少しだけ出ている)。今月['22年9月]、ベルモンド主演作をリマスター版で上映する「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選3」(東京・新宿武蔵野館ほか)で47年ぶりに劇場公開されました。
  
「相続人」1973.jpg「相続人」1.jpg 本作の前年のフィリップ・ラブロ監督「相続人」('73年/仏・伊)で、ベルモンドは、ダンディな三つ揃いをりゅうと着こなすコンツェルンのサラブレッドにして、全ヨーロッパの資産家20位に入るセレブの後継者を演じています。ベルモンドの半分つぶれたような鼻が、どういうわけかハーバード大卒という、主人公のインテリジェンスに相応しく見えるのが不思議。ただし、「相続人」は、後にベルモンド主演で「危険を買う男」('76年/仏)を撮るフィリップ・ラブロ監督なのにアクションが無くてイマイチでした。ベルモンドに美女を絡ませれば何とかなる―みたいな感じ。フィリップ・ド・ブロカ 監督、ジュール・ヴェルヌ原作の 「カトマンズの男」('65年/伊・仏)などもそのきらいはありましたが、まだあっちは派手なアクションがあった...。

 一方、この「薔薇のスタビスキー」は、あの難解な作品で知られるアラン・レネ監督の「去年マリエンバードで」('61年/仏・伊)などに比べればまだ解りやすいです(笑)。当「傑作選」プロデューサーの江戸木純氏がトークショーで「『怪盗二十面相』と『薔薇のスタビスキー』はベルモンドが全編嘘をつきまくる嘘とホラ吹きのスペクタクル」と言っていましたが確かに。

「「薔薇のスタビスキー」5.jpg ただし、主人公のスタビスキーは次第に追い詰められていき、実際には一文無し同然であるのに、それでもスイスの銀行口座があると言って当面を凌ぎ、政界の汚職スキャンダルにも巻き込まれていきます。従って、実際のスタビスキーも、パリを脱出後、警察による捜索の結果、スイス国境のシャモニーにある別荘にて、頭に銃弾を受けて倒れているのを発見され、病院に搬送されたが2時間後に死亡したそうで、警察当局は「警官隊に包囲され逃げられないと悟ったスタビスキーが、自ら命を絶った」と発表したそうですが、射殺説もあるようです(映画もどちらともとれる終わり方になっていた)。

「薔薇のスタビスキー」ボ.jpg ベルモンドは野心溢れるスタビスキーの栄枯盛衰を熱演(自分がやりたかった役のようだ)していたように思います。また彼に騙され財産を失う男爵役のシャルル・ボワイエがハマリ役で、人生の深みを感じさせる演技をしていました。さらには、美術は豪勢で、最近の映画には「「薔薇のスタビスキー」1.jpg無い"本物感"がありました。ただ難点を言えば、アラン・レネ監督の他の作品に比べればわかり易いですが、それでも展開が複雑で(疑獄事件を扱った作品にありがち。この間観たダニエル・シュミット 監督の「ベレジーナ」('99年/スイス・独・墺)もそうだった)、カットバックで時空が飛ぶのでなおさら分かりづらくなったように思います。

「ベルモンド特集3」.jpg[薔薇のスタビスキ.jpg「薔薇のスタビスキー」●原題:STAVISKY●制作年:1974年●制作国:フランス●監督:アラン・レネ●製作:ジャン=ポール・ベルモンド●脚本:ホルヘ・センプラン●撮影:サ「「薔薇のスタビスキー」アニー・デュプレー.jpgッシャ・ヴィエルニー●音楽:ステファン・ソンダイム●時間:118分●出演:ジャン=ポール・ベルモンド/シャルル・ボワイエ/フランソワ・ペリエ/アニー・デュプレー/クロード・リッシュ/ジジ・バーリスタ/ジェラール・ドパルデュー●日本公開:1975/05●配給:エデン●最初に観た場所:新宿武蔵野館(22-09-14)(評価:★★★☆)

ジャン=リュック・ゴダール監督「彼女について私が知っている二、三の事柄」('66年/仏・伊)マリナ・ヴラディ/アニー・デュプレー
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「相続人」2.jpg「相続人」d.jpg「相続人」●原題:L'HÉRITIER●制作年:1973年●制作国:フランス・イタリア●監督:フィリップ・ラブロ●製作:ジャック=エリック・ストラウス●脚本:フィリップ・ラブロ/ジャック・ランツマン●撮影:ジャン・パンゼ●音楽:ミシェル・コロンビエ●●時間:112分●出演:ジャン=ポール・ベルモンド/モーリーン・カーウィン/カルラ・グラヴィーナ/ジャン・ロシュフォール/シャルル・デネ●日本公開:1973/11●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:新宿武蔵野館(21-05-25)(評価:★★☆)
相続人 DVD

ジョゼ・ジョヴァンニ監督「ブーメランのように」('76年/仏)/アンリ・ヴェルヌイユ監督「恐怖に襲われた街」('75年/伊・仏)
ブーメランのように 40.jpg恐怖に襲われた街 aibo.jpg

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