【967】 ○ ロベール・ドアノー 『パリ―ドアノー写真集(1)』 (1992/09 リブロポート) ★★★★ (○ ロベール・ドアノー 『パリ遊歩―1932-1982』 (1998/02 岩波書店) ★★★☆)

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今もパリの片隅で写真の人物たちがこうして息づいているような...。

Robert Doisneau1.jpgパリ ドアノー写真集.jpg   ドアノー写真集 パリ遊歩.jpg パリ遊歩 1932-1982.jpg
パリ ドアノー写真集 (1)』(30 x 22.6 x 1.4 cm)['92年]『パリ遊歩―1932-1982』 (20.8 x 15.6 x 5.2 cm) ['98年]

 『パリ』は、リブロポート刊行のロベール・ドアノー(Robert Doisneau 1912-1994)の写真集の1冊で、この人の作品で最も知られているのは、表紙にもある、ライフ誌の"パリの恋人"という企画で発表された「市庁舎前のキス」('50年)でしょう。

 同じくパリをよく題材にした写真家アンリ・カルチェ=ブレッソンは裕福な家庭の出身ですが、ドアノーは貧しい家庭の出身です。広告業界からフォトジャーナリズムの世界に進み、戦場写真なども撮っていますが、やがて、カルティエ=ブレッソン流の所謂「決定的瞬間」を掴まえる名手との評判が次第に高まっていきました。しかし、この写真が有名になると、実は彼に頼まれてモデルを務めたという多くの人からモデル代やネガの要求があり、実際には多くの人に自ら声かけして何枚もこうした写真を撮っていたことが後に判明、この写真の女性も女優であり、後にドアノーからネガを贈られています。

Robert DOISNEAU2.jpgROBERT DOISNEAU.jpg そうであってもいい写真には違いない、但し、この写真は、この人の作品に「お洒落」というイメージが主として伴う一因になっているように思え、このパリ写真集を見ると、むしろ「お洒落」というより「エスプリ」に満ちた楽しい写真が多いような気がします(ヌード写真を街角にかざして、通りがかりの人の反応を撮るといったようなこともやっている)。

Robert Doisneau2.jpg 但し、一方で、パリの暗い部分もモチーフにしていて、浮浪者やアル中っぽい感じの人も多く撮っており、これらの哀感が漂う写真も、ある種"攻撃的"なエスプリと言えなくもなく、また、この人が撮る夜の居酒屋など写真には、喧騒と退廃に満ちた何とも言えないシズル感があります。

 個人的には、この写真集の後半に出てくる、あまりドアノーの代表作として通常は前面に出てこないような、無頼の"マドロス"風の男や(これもモデル?)、公園で力技を披露する"ストロングマン"、サーカスの"軽業師"、ストリップ小屋の"ダンサー"や、肉屋のいかにも"ブッチャー"という感じの親爺さんなどの写真から、何となく、今もパリの片隅で彼らがそうして息づいているような印象を受け(自分自身がタイムスリップしたような感じ)、心に残りました。

 ドアノーのパリ写真集は、この後『パリ遊歩 1932‐1982』('98年/岩波書店)というのが出ていて、大判ではないですが665ページもあり、各ページに大体1葉、キッチリ作品が収められており、量的には圧倒されるとともに、これを見ても、やっぱりこの人の持ち味は「エスプリ」だなあと思わされるものでした。

パリ遊歩ド.jpgパリ遊歩 00.jpg その約600葉の写真のほぼ全てに、撮影場所と撮影年が記されているのが親切ですが、ページ数が多い割にはソフトカバー(但し、函入り)、且つ絶版で価格がプレミア価格になっているのがやや難であるといった感じで、今回は図書館でたまたま見つけることができて幸運でした。

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