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他の監督の作品には見られない、この監督だけの独自の世界が味わえる。

散歩する惑星 2000.jpg 散歩する惑星o.jpg  さよなら、人類  2014.jpg さよなら、人類s.jpg
散歩する惑星 愛蔵版 [DVD]」ラース・ノルド 「さよなら、人類 [DVD]」ホルガー・アンダーソン/ニルス・ウェストブロム
散歩する惑a6.jpg ここはとある惑星のとある町。30年間会社を無欠勤だった男が、リストラで解雇を宣告され泣きわめき、社長にすがりついて廊下を引き摺られていく。社屋の一階では、道に迷った男が訳もなく若者たちに殴られて倒れている。社長のペレ(トルビョーン・ファルトロム)は会社のことより、折れてしまったゴルフクラブを気にしている。ディナーショーでマジシャン(ルチオ・ブチーナ)は人体切断マジックに失敗して、協力者の腹をのこぎりで切ってしまう。保険金欲しさに自分の店に火をつけた家具屋経営のカール(ラース・ノルド)が、煤だらけで満員の地下鉄に乗っていると、どこからともなく音楽が聞こえてきて、乗客らが歌い始める。焼けた家具店の表通りは渋滞していて、デモ隊が鞭打ちをしながら車の間を行く。タクシー運転手をしていたカールの長男は、人々の悩みを聞かされるうちに自分が精神を病んでしまい、誰とも話せなくなって精神病院に入院中である。今は次男シュテファン(シュテファン・ラーソン)がタクシーを運転手をしている。そのタクシーに軍人が一人乗り込んできて、今日が総司令官(ハッセ・ソーデルホルム)の100歳の誕生日で自分がその祝辞の草稿を作った言う。将軍の100歳の誕生日を祝う式典が病院内で行われ、将軍はナチ式の敬礼をする。カールが同業者を訪ねると、彼は不況下で大聖年という理由で、十字架を売って儲けしようとしていて、カールも十字架を一つ買う。駅に行くと、自殺したはずのスヴェンが自分の後ろをついてくる。不条理な出来事が次々起きて、やがて町全体が異様な雰囲気に包まれていく―。

 CF界出身でカンヌの国際広告祭で8度のグランプリに輝いているロイ・アンダーソンの2000年の作品で、同年のカンヌ国際映画祭「審査員特別賞」受賞作です(勿論CFではなく映画として)。構想に20年、撮影に4年を費やしたという不条理映画で、どこかの惑星で展開するブラックでシュールな出来事の数々(上記に書き並べた分で半分足らずか)を、CGを使わずアナログ感たっぷり描いています。たまにはこんな映画を観るのもいいかなあという感じです。

 ロイ・アンダーソン監督はこの作品が長編としては「スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー」('69年)以来何と31年ぶりですが、この作品で、不条理な小劇で繋いでいきながら無理にストーリーを構築しようとはせず、ブラック且つシュールな雰囲気を醸す独特のスタイルを確立したという印象で、その後も、「愛おしき隣人」('07年)、「さよなら、人類」('14年)と寡作ながらも(7年に1作かあ)このスタイルを守っているようです。

ロイ・アンダーソン.jpgさよなら、人類 3.jpg 2014年・第71回ベネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞した最近作「さよなら、人類」は(これも構想に15年、撮影に4年を費やしたという)、吸血鬼のお面や笑い袋といった面白グッズを売り歩く冴えないセールスマン・コンビのとサム(ニルス・ウェストブロム)とヨナタン(ホルガー・アンダーソン)を軸に話が展開し(これもストーリーにさほどさよなら、人類8_A04.jpg脈絡はないのだが)、2人がグッズがまるで売れずに散々な日々を送る中、フラメンコの女教師(ロッテ・トルノス)はレッスンを受けに来るお気に入りの若い男さよなら、人類ド.jpgの子の身体を指導のフリをして触りまくり、フェリーの船長(オラ・ステンソン)は船酔いが耐えられずに理容師に転職し、バーになぜか18世紀のスウェーデン国王カール12世(ヴィクトル・ギュレンバリ)が騎馬隊を率いて現われ...と、こちらも不条理の小劇のオンパレード。全39シーンというから、だんだんシーン数が多くなってきているのではないでしょうか。

さよなら、人類 2.jpg それらのシーンを主に繋いでいるのが、サムとヨナタンのセールスマン・コンビですが、この2人が面白グッズを売り歩いているのに滅茶苦茶にクラいというのがブッラクで可笑しいです。16世紀の画家ブリューゲルの「雪中の狩人」など様々な絵画からインスピレーションを受けて作られているとのことですが、低彩色のトーンは「散さよなら、人類 5.jpg歩する惑星」の時と同じであるものの、「散歩する惑星」よりも死のイメージが濃くなっているような気がしました。黒人たちがが回転する大きなドラムのようなものの中に入れられ、そのドラムが火で炙られるシーンなど、政治的なメッセージともとれるメタファーも前作よりグロテスクで直截的になっていますが、個人的には「散歩する惑星」の方がやや好みだったしょうか。

 何れの作品も、ストーリーを追い過ぎて観てしまっては楽しめないと思います。1シーン1シーンを、美術館にある絵を1枚1枚観るつもりで観たらいいのではないでしょうか。クロード・ルルーシュ、リドリー・スコット、大林宣彦、山崎貴とCMディレクター出身の映画監督は多いですが、これだけ尖がった方向で自らのスタイルを強固に貫いている監督は珍しいと思います。他の監督の作品には見られない、この監督だけの独自の世界が味わえます。

Sånger från andra våningen (2000)
Sånger från andra våningen (2000).jpg
散歩する惑星j.jpeg「散歩する惑星」●原題:SANGER FRAN ANDRA VANINGEN/SONGS FROM THE SECOND FLOOR●制作年:2000年●制作国:スウェーデン・フランス●監督・脚本:ロイ・アンダーソン●製作:フィリップ・ボバー●撮影:イストヴァン・ボルバス/イェスパー・クレーヴェンオース●音楽:ベニー・アンダーソン●時間:98分●出演:ラース・ノルド/シュテファン・ラーソン/ハッセ・ソーデルホルム/トルビョーン・ファルトロム/ルチオ・ブチーナ●日本公開:2003/05●配給:ビターズ・エンド●最初に観た場所:恵比寿ガーデンシネマ(初代)(03-05-16)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ(17-03-07)(評価★★★★)
恵比寿ガーデンテラス弐番館.jpg恵比寿ガーデンシネマ.jpg旧・恵比寿ガーデンシネマ 1994年(平成6年)10月8日、恵比寿ガーデンテラス弐番館内にオープン(2スクリーン)。2011年1月28日休館。2015年3月28日「YEBISU GARDEN CINEMA(正式名称「恵比寿ガーデンシネマ」)」として再オープン。


「さよなら、人類」●原題:EN DUVA SATT P A EN GREN OCH FUNDERADE PA TILLVARON/A PIGEON SAT ON A BRANCH REFLECTING ON EXISTENCE(「実存を省みる枝の上の鳩」)●制作年:2014年●制作国:スウェーデン・ノルウェー・フランス・ドイツ●監督・脚本:ロイ・アンダーソン●製作:ペニラ・サンドストロム●撮影:イストヴァン・ボルバス●音楽:Gorm Sundberg/Hani Jazzar●時間:100分●出演:ホルガー・アンダーソン/ニルス・ウェストブロム/カルロッタ・ラーソン/ヴィクトル・ギュレンバリ/ロッテ・トルノス/オラ・ステンソン●日本公開:2015/08●配給:ビターズ・エンド●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(17-02-04)(評価★★★☆)

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関係性が"再生"される物語。原題タイトル「BEGIN AGAIN」の「AGAIN」に意味がある。

はじまりのうた01.jpgはじまりのうた02.jpg はじまりのうた98.jpg ジョン・カーニー監督.jpg
はじまりのうた BEGIN AGAIN [DVD]」 キーラ・ナイトレイ(Keira Knightley)/ジョン・カーニー(John Carney)監督
はじまりのうた15.jpg ミュージシャンの恋人デイヴ(アダム・レヴィーン)と共作した曲が映画の主題歌に採用されたのを機に、イギリスからニューヨークへやってきて彼とニューヨークで暮らすことにしたシンガーソングライターのグレタ(キーラ・ナイトレイ)だったが、デイヴがスターとなって二人の関係の歯車に狂いが生じ始め、デイヴの浮気により彼と別れて、旧友の売れないミュージシャンのスティーブ(ジェームズ・コーデン)の家に居候する。スティーブは失意のグレタを励まそうとライブ・バーに連れていき、彼女を無理やりステージに上げる。歌い終わると、音楽プロデューサーを名乗るダン(マーク・ラファロ)にアルバムを作ろうと持ち掛けられる―。

 2013年にトロント国際映画祭で上映、2014年に一般公開のアメリカの音楽映画ですが、監督および脚本のジョン・カーニーは「ONCE ダブリンの街角で」('07年/アイルランド)の監督でアイルランド出身、主演のキーラ・ナイトレイはジェーン・オースティン原作の「プライドと偏見」('05年/英)など時代物の出演作が多いイングランド出身の女優であり(アメリカや日本ではむしろ「パイレーツ・オブ・ キーラ・ナイトレイ パイレーツ・オブ・カリビアン.jpgカリビアン」シリーズの第1作('03年)から第3作('07年)に出ていたことで知られているが)、ダン役のマーク・ラファロは米国俳優、デイヴ役のアダム・レヴィーンは米国のシンガーソングライター、ギタリストでロックバンド「マルーン5」のボーカル、ということで、英国的雰囲気と米国的雰囲気が入り交じったような映画だったでしょうか(グレタのことを励ます旧友スティーブ役の ジェームズ・コーデンもイングランド出身の俳優・コメディアン)。ジョン・カーニー監督の前作「ONCE ダブリンの街角で」もそうですが、最初は公開館数が非常に少なかったのが、口コミでその良さが伝わり大ヒットを記録したようです。

キーラ・ナイトレイ in「パイレーツ・オブ・カリビアン」

はじまりのうた86.jpg 冒頭のライブ会場の場面で、スティーブがグレタを無理矢理ライブのステージに上げて歌わせ、それにダンが聞き入ってしまうところから始まって、そこからフラッシュバックしてグレタの失意に至る道のりを振り返り、今度はダンの失意への道のりを振り返るという映画の前半部分の構成が、「倒叙法」とでも言うか、「長い導入部」とでも言うか実に巧みであり、しかも、技巧が勝ちすぎることなく、前半部分だけでもしっかり感動させてくれます(誰かが「開始3分で泣ける」と言っていたが確かに。しかも同じ場面で3回泣ける(?)というのはスゴイ)。

はじまりのうた4.jpg ここまでしっかり作られてしまうと、後半はもう予定調和でメデタシメデタシしかないのではないかと思ってしまいましたが、物語がグレタの"再生"に止まらずダンの"再生"も描いていて、これがグレタの"再生"だけだと単なる敏腕プロデューサーの話になってしまうところを、途中からダンの"再生"も描くことでバランスが良くなっています。

はじまりのうた53.jpg しかも、グレタは、ダン〈個人〉を"再生"させると言うよりは、過去の出来事によりダンとそれまでうまくいっていなかった彼の妻や娘との〈関係性〉を再生させます(それによってダン自身も再生する)。これはスゴいなあと思って観ていたら、今度はグレタと別れた恋人デイヴの〈関係性〉が"再生"されるのです。相互に関係性が"再生"される物語なんだなあと(原題タイトル'BEGIN AGAIN'の'AGAIN'に意味がある)。
 
はじまりのうた89.jpg 従って、グレタとダンはあくまで仕事上のパートナーに止まり、再会を約して「爽やかに」別れることになるわけですが、観ていていいなあという感じでした。やや出来過ぎた話との印象もありますが、ダンがバックバンドのメンバーを集めるところなどはコミカルで面白かったし、路上でのゲリラ・ライブはシズル感満点だったし(タイムズ・スクエアやエンパイア・ステート・ビルなどマンハッタンの名所巡りも味わえる)、「プライドと偏見」でアカデミー主演女優賞にノミネートされたキーラ・ナイトレイの演技力は、この現代劇でも発揮されていたように思います。

 エンディング・タイトルバックと共に映し出されるエピローグの、レーベル契約を結ばずにネットで曲を1ドルで曲を売るというアイデアも洒落ていて楽しかったです。

シング・ストリート 未来へのう3.jpgシング・ストリート 未来へのうた2.jpg 今月 ['16年7月]9日からは渋谷・シネクイントで、カーニー監督の最新作「シング・ストリート 未来へのうた」('15年/アイルランド・英・米)の上映が始まります。80年代半ばのダブリンが舞台のカーニー監督の自伝的要素も含んだ作品のようですが、シネクイントが「パルコ・パート3」の建て替えに伴う一時休業(?)で8月7日をもって最終上映となるため、シネクイントの実質ラストショーになるのではないだろうか。(実際その通りになった。ジョン・カーニーに着眼したシネクイントらしいラストショーか)

「シング・ストリート 未来へのうた」('15年/アイルランド・英・米)
    

はじまりのうた66.jpg「はじまりのうた」●原題:BEGIN AGAIN●制作年:2014年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ジョン・カーニー●製作:アンソニー・ブレグマン/トビン・アームブラはじまりのうた88.jpgスト(英語版)/ジャド・アパトー●撮影:ヤーロン・オーバック●音楽:グレッグ・アレキサンダー●104分●出演:キーラ・ナイトレイ/マーク・ラファロ/ヘイリー・スタインフェルド/アダム・レヴィーン/ジェームズ・コーデン/ヤシーン・ベイ/シーロー・グリーン/キャサリン・キーナー●日本公開:2015/02●配給:ポニーキャニオン●最初に観た場所:渋谷・CINE QUINTO(シネパルコスペース Part3.jpg渋谷シネクイント劇場内.jpgCINE QUINTO tizu.jpgクイント)(15-02-28)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ(16-06-27)(評価:★★★★)
CINE QUINTO(シネクイント) 1981(昭和56)年9月22日、演劇、映画、ライヴパフォーマンスなどの多目的スペースとして、「PARCO PART3」8階に「PARCO SPACE PART3」オープン。1999年7月~映画館「CINE QUINTO(シネクイント)」。 2016(平成28)年8月7日閉館。

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当時としては新鮮だったハリソン・フォードの役作り。

フランティック ちらし.jpgフランティック dvd.jpgフランティック [DVD]「フランティック」1988年5.jpg
映画チラシ 「フランティック」監督 ロマン・ポランスキー 出演 ハリソン・フォード

フランティック05.jpg 米国人外科医リチャード・ウォーカー(ハリソン・フォード)は、学会で講演するために妻サンドラ(ベティ・バックリー)と共にパリを訪れていた。新婚旅行以来のパリに心を弾ませていた彼だったが、ホテルにチェックインした後、「フランティック」1988年 4.jpgスーツケースが空港で誰かのものと取り違えてしまったことに気づく。明日にでも取り替えてもらうよう妻に言ってシャワーを浴びるが、その間に妻はホテルの部屋から忽然と姿を消してしまう。幾つかの関係先に問い合わせるも本気で取り合ってもらえず、逆に妻の浮気を疑われるという不本意な状況の中、ある目撃情報から妻の装身具を路上で発見、彼は妻は誘拐されたと確信し単身で捜索に乗り出す―。

Frantic 1988.jpg ロマン・ポランスキー監督(左写真)の1988年作品で、タイトルの「フランティック」(frantic)とは、「気が狂ったような」という意味であり、妻の誘拐事件にパニックになる主人公の姿を指しています。ハリソン・フォードはプライベートで妊娠中の当時の妻メッリサ・マシスンとパリ旅行に行った際にポランスキー監督と出会い、その時にこの作品の企画を打ち明けられ、異郷のパリで主人公の心情に近い立場だったこともあって喜んで出演をOKしたという裏話があります。

「フランティック」1988年 ミシェル.jpg 主人公が誤って持ち帰ったスーツケースは、運び屋の女ミシェル(エマニュエル・セニエ)が米国から持ち込んだ核兵器の起爆装置が隠されたもので、彼女に行き着いた主人公は、その起爆装置の争奪に躍起になるアラブ人グループとそれを阻止せんとするイスラエル側の攻防の中、ミシェルを救ったりしながら自らも妻の捜索にあたる―。

フランティック07.jpg この映画は、公開時に結構評価が割れたような気がします。ロマン・ポランスキーにしてはクセが無いオーソドックスなサスペンスですが、ストレートにサスペンスとして見「フランティック」1988年 Hフォード.jpgるとやや盛り上がりに欠け、ヒッチコック作品ほどの完成度にも至っていないといのがマイナス評価の理由でしょうか。大掛かりな仕掛けが出てこないこともあって、TVのミステリードラマを見ているような印象もあります。しかしながら、パリの街の雰囲気を自らがエトランゼになった気分で味わえ、ハリソン・フォードの好演もあって、個人的評価としては「○」です。特にハリソン・フォードが、主人公の医師が不測の事態にキリキリ舞いさせられる様を見事に演じていたように思います。

Frantic 1988 06.jpg ハリソン・フォードは当時、「インディ・ジョーンズ」シリーズからのイメージ・チェンジを図っており、既に「刑事ジョン・ブック 目撃者」('85年)といったサスペンスに出演したりもしていましたが、やはり、この「フランティック」が1つエポックになったのではないかと思われます。後の主演作品で、愛人殺害容疑をかけられた地方検事補ラスティ・サビッチを演じたスコット・トゥロー原作の「推定無罪」('90年)や、妻殺害容疑をかけられた医師チャード・キンブルを演じた「推定無罪」「逃亡者」「目撃者」.jpg古典的TVシリーズのリメイク「逃亡者」('93年)といった作品におけるキャラクター造型は、この「フランティック」の時の役作りがベースになっているように思います。「推定無罪」や「逃亡者」におけるハリソン・フォードの演技を知った上でこの作品における彼の演技に接すると、そう目新しい感じではないかも知れないけれど、リアルタイムで初めてこの作品を観た時の彼の演技は新鮮に映ったものでした(役者が自身の新境地を開拓した作品というのはやはり注目に値する)。

「フランティック」1988年.jpg「フランティック」●原題:FRANTIC●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:ロマン・ポランスキー●製作:ティム・ハンプトン/トム・マウント●脚本:ロマン・ポランスキー/ジェラール・ブラッシュ/ロバート・タウン/ジェフ・グロスン●撮影:ヴィトルド・ソボチンスキ●音楽:エンニオ・モリコーネ●時間:120分●出演:ハリソン・フォード/エマニュエル・セニエ/ベティ・バックリー/ジョン・マホーニー/ジミー・レイ・ウィークス/ジェラール・クライン/パトリス・メレネク/イヴ・レニエ/リシャール・デュー/ドミニク・ピノン/ジャック・シロン//パトリック・フラールシェン/新宿ミラノ座内2.jpg新宿ミラノ座 1959.jpgマルセル・ブリュワル/デヴィッド・ハドルストン/アレクサンドラ・スチュワート/トーマス・M・ポラード/アルトゥ・ドゥ・ペンゲルン●日本公開:1988/07●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場ミラノ座 1983年.jpg新宿ミラノ.jpg新宿ミラノ座 内部.jpg所:新宿ミラノ座(88-07-10)(評価:★★★★) [上写真:「新宿ミラノ座」オープン当初 (1959年)]
新宿ミラノ座 1956年12月、歌舞伎町「東急文化会館(後に「東急ミラノビル」)」1Fにオープン(1,288席)、2006年6月1日~「新宿ミラノ1」(1,064席)2014(平成26)年12月31日閉館。

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重くのしかかってくる作品ではあるが、"謎"の残る作品でもあった。

ヒトラー暗殺、13分の誤算ps.jpg ヒトラー暗殺、13分の誤算 .jpg ヒトラー暗殺、13分の誤算0.jpg
「ヒトラー暗殺、13分の誤算」('15年/独)
ヒトラー暗殺、13分の誤算es.jpgヒトラー暗殺、13分の誤算 cast.jpg 1939年11月8日、ミュンヘンのビアホールで恒例の記念演説を行っていたヒトラーは、いつもより早く退席するが、その僅か13分後ホールに仕掛けられていた爆弾が爆発する。当日のヒトラーの予定を徹底的に調べあげたその計画は緻密かつ大胆、更に時限装置付きの爆弾は精密かつ確実なものだった。ドイツ秘密警察ゲシュタポは、単独犯はあり得ないと考え、英国諜報部の関与を疑うが、逮捕されたのはゲオルク・エルザー(クリスティアン・フリーデル)という36歳の平凡な家具職人だった。彼はスパイどころか所属する政党もなく、すべて自分一人で実行したと供述。それを知ったヒトラーは、犯行日までの彼の人生を徹底的に調べるよう命じる。やがて、人妻エルザ(カタリーナ・シュットラー)との恋、音楽、そして自由を謳歌していた"普通の男"の信念が明らかになっていく―。

 監督は、「ヒトラー~最期の12日間~」('04年/独・墺・伊)でアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたオリヴァー・ヒルシュビーゲル監督で、ヒトラーの暗殺計画は幾つもあったゲオルク・エルザー.jpgようですが、この作品の中で取り上げられているものはその中でもマイナーなもののようであり、このゲオルク・エルザーは、小林信彦氏によれば、戦後ドイツが東西に分断されていた時は、西ドイツでは共産主義者と見做され、東ドイツでは無視されて、彼が見直されたのは1990年のドイツ再統一以降のことであり、復権署名運動が始まったのは1993年になってとのことだそうです。
ゲオルク・エルザー

ヒトラー暗殺、13分の誤算11.jpg そうした意味では、戦後70年を迎え、ドイツにおいても過去を振り返る戦争映画が多く作られている、その流れの中で作られた作品であるとも言えるし、裏を返せば、エルザーのことはまだドイツでも詳しくは知られてはおらず、彼の復権運動は現在進行形であるとも言え、ドイツ国民に彼のことを知らしめる目的で作られた、何よりも先ず国内向け映画であるとも言えます。

ブルクハルト・クラウスナー(アルトゥール・ネーベ)/ヨハン・フォン・ビュロー(ハインリッヒ・ミュラー)/クリスティアン・フリーデル(ゲオルク・エルザー)

 そのことは、ドイツ国民が知っているようなことは説明が端折られている点にも現れており、例えば、エルザーを尋問していた秘密警察のアルトゥール・ネーベ(ブルクハルト・クラウスナー)が終盤では自らが処刑されてしまうシーンがありますが、これはヒトラー暗殺計画の中でも最も有名な1944年7月20日の暗殺計画が失敗に終わった後、その首謀者らと通じていたネーベの謀反も発覚し(映画でその誘因が仄めかされているように彼は途中からゲシュタポのやり方に疑問を感じて反ヒトラーに転じた)、ネーベは逃亡するも1945年1月にゲシュタポに捕まって死刑を宣告され、その年の3月にヒトラー自身の望みによりピアノ線による絞首刑が行わヒトラー 〜最期の12日間〜b.jpgれたことに符合しています。そして、この(大掛かりな方の)暗殺未遂事件の関係者の摘発と逮捕を担当しヒトラー暗殺、13分の誤算FJ.jpgたのが、映画でヨハン・フォン・ビュローが演じているハインリッヒ・ミュラーです(ナチ党指導者で逮捕されず、死亡も確認されていない唯一の人物でもある)。但し、そうした事実をある程度知らないと、なぜネーベがミュラーの目の前で絞首刑に処されるのか、また、なぜ、そうした処刑方法がとられるのかが解らない。因みに、この作アルトゥール・ネーベ.jpg品では、ネーベは根はいい人だったようにもとれますが、彼は1941年にアインザッツグルッペンが組織された際のB隊司令官となり、モスクワ戦線への進軍中、ユダヤ人やパルチザンと目される人々大勢の殺害を指揮命令した人物で、ネーベのB隊だけで4万5,467人の処刑が報告されています。
アルトゥール・ネーベ

ヒトラー暗殺、13分の誤算02.jpg 一方、エルザーの回想として描かれる彼の私生活の部分は、一部フィクションが混ざっているそうですが、どの程度なのか。人妻に恋をし(件の人妻が夫のDVに遭っているといった設定は何となくフィクションっぽいが)、友を思い遣り、音楽を愛するヒトラー暗殺、13分の誤算01.jpg彼のキャラクターはなかなか人間味があっていいし、そうした自由な雰囲気が少しずつ奪われていく中で彼がヒトラーの暗殺計画を思い立つという流れは解らなくもないですが、他の人の中にもヒトラーに盲目的に追従する人ばかりではなく、そうした風潮に危惧を抱いていた人はいたはずであるのに(実際この映画にもパルチザンが登場するが)、なぜ彼だけが、こうした勇気と根気、大胆さと綿密さを要する計画をその実施にまで漕ぎ着けることが出来たのか、その辺りが今一つ見えにくく、"あの時代にこんな人もいたんだよ"的なところで終わってしまっているようにも思えなくもありませんでした。

ヒトラー暗殺、13分の誤算12.jpg ゲオルク・エルザーの背後に英国諜報部の関与があると疑ったのは、映画にある通りヒトラー自身であり、その背後関係を調べるよう命を受けたハインリヒ・ヒムラーが直接エルザーを取り調べ、エルザーに罵声を浴びせながら足蹴にし、ゲシュタポの一人にエルザーを鞭で苦痛で悲鳴をあげるまで打ちすえたというから、映画ではヒムラーの人物像がミュラーに置き換えられていると見ることもできますが、そんなことより、エルザーがそうした拷問に耐え抜いたことが不思議な気も。彼は1945年4月9日にダッハウ強制収容所内で処刑されますが、ヒットラーが自殺を遂げたのはその3週間後。ネーベなどが既に処刑されているのに、その5年前に事件を起こしたエルザーがそこまで生かされていたというのも不思議。ドイツ人に非ずとも重くのしかかってくる作品ではありますが、個人的には、"謎"の残る作品でもありました。
Elser (2015)
Elser (2015).jpgヒトラー暗殺、13分の誤算 es.jpgヒトラー暗殺、13分の誤算s.jpg「ヒトラー暗殺、13分の誤算」●原題:ELSER/13 MINUTES●制作年:2015年●制作国:ドイツ●監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル●製作:ボリス・アウサラー/オリバー・シュンドラー/フレート・ブライナースドーファー●脚本:レオニー=クレア・ブライナースドファー●撮影:ユーディット・カウフマン●音楽:デヴィッド・ホームズ●114分●出演:クリスティアン・フリーデル/カタリーナ・シュットラー/ブルクハルト・クラウスナー/ヨハン・フォン・ビュロー●日本公開:2015/10●配給:ギャガ●最初に観た場所:渋谷・シネマライズ(15-11-26)(評価:★★★☆)

シネマライス31.JPGシネマライス9.JPGシナマライズ 地図.jpgシネマライズ 1986年6月、渋谷 スペイン坂上「ライズビル」地下1階に1スクリーン(220席)で「シネマライズ渋谷」オープン。1996年、2階の飲食店となっていた場所(1986年6月から1991年6月まで「渋谷ピカデリー」だった)に2スクリーン目を増設。「シネマライズシネマライズ220.jpgBF館」「シネマライズシアター1(2階)(303席)(後のシネマライズ)」になる。2004年、3スクリーン目、デジタル上映劇場「ライズX(38席)」を地下のバースペースに増設。地下1階スクリーン「シネマライズBF館(旧シネマライズ渋谷)」2010年6月20日閉館(地下2階「ライズⅩ」2010年6月18日閉館)。2011年、編成をパルコエンタテインメントに業務委託。地上2階「シネマライズ」2016年1月7日閉館。[写真:2015年11月26日/ラストショー「黄金のアデーレ 名画の帰還」封切前日]

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ジョン・ネトルズが主役を演じた最後のエピソード。長らくの間お疲れ様でした。

第81話「安らぎのスパ殺人」dvd.jpg 第81話「安らぎのスパ殺人」.jpg Midsomer Murders Fit for Murder 2.jpg
"Midsomer Murders" Fit for Murder(安らぎのスパ殺人)

Midsomer Murders Fit for Murder 1.jpg ルーク・アーチボルド(ジェイソン・デュール)の経営するスパ&ホテルに、ジョイスとバーナビーは休みを利用して滞在することにする。バーナビーは、性に合わないので、文句を言い続けるばかりだった。やがて来るバーナビーの誕生日も何やら気掛かりな様子だった―。

Midsomer Murders Fit for Murder 0.jpg シーズン13の第8話(最終話)で、これまで通算81話に渡ってトム・バーナビー警部をを演じてきたジョン・ネトルズの最後の主演作ということで、本筋のミステリと併せて、バーナビーが引退を決意するという図太いサイドストーリーがあります。

 でも、ミステリの方も、いつもながらにジョイスの行くところに事件ありで、スパの客の女性キティが殺害され、スパの経営者ルーク・アーチボルドが殺害され、更に、先に殺された女性客の夫ケニーは行方不明で...と、相変わらずの複数殺人やら行方不明者やらで、一応は手を抜かず展開されていたように思います。

第81話「安らぎのスパ殺人」02.png 並行して、バーナビーの気掛かりの元が少しずつ明かされてきて、それは誕生日と同じ日に亡くなった父親に対する思いと(その日に限って、いつもの父親の誕生日と同じように一緒に釣りに行くことをしなかった自分に対する悔恨)、自分も父親と同じ年齢の誕生日、つまり間近に迫っている次の誕生日に死ぬのではないかという不安であったようです(既に誕生日が近づくつれて体調に変調をきたしていた)。

第81話「安らぎのスパ殺人」01.jpg ミステリの方は、サイドストーリーに圧迫されて、スパ経営者の妻と小説を書いているという女性の2人とそれを取り巻く男達の確執の経緯や、犯人の犯行動機とかが分かりにくかったかな。一応、このシリーズではここのところ、犯人が捕まった後、自らの殺人を丁寧に振り返ってくれる傾向にはあるのだけれど。

 突然、瞑想用の庭の噴水が噴き出して、びっくりして逃げ帰るトレーナーと、そこから行方不明者を突き止めるバーナビー(重傷を負ったままバルブに寄り掛かっていたわけか)、バーナビーが瞑想トレーナーの娘の透視術のインチキを見破ったかと思ったら、誰にも話していない自分の不安の源を言い当てられ、彼女の透視能力はホンモノだったとか、細部に見所はありました。

第81話「安らぎのスパ殺人」引退発表.jpg 事件解決後のエピローグに多い目に時間を割き、無事に誕生日を迎えたバーナビーが誕生パーティの席で突然の引退発表、唖然とするジョーンズも、事件現場からの呼び出し電話に当地に転任してきた従兄弟のジョン・バーナビー警部(ニール・ダジョン Neil Dudgeon)を電話口に出させる彼の姿を見て上司の引退を既定の事実として受け入れたのか、事件現場へ向かうために辞去する前に思わずバーナビーにハグ(いい場面!)、残されたジョイスのほっとしたような表情から、バーナビーの引退決意の理由はここにあったのだなあと。

第81話/安らぎのスパ殺人 誕生パーティー.jpg 引退はちょっと勿体ない気もしましたが(ジョーンズは今回も思い込みから誤認逮捕Midsomer Murders Fit for Murder 3.jpgしそうな感じでやや頼りなかったし)、あちらでは自分で引退をする時期を決め、後はリタイア後の人生を楽しむというのがむしろ普通なのかも。バーナビー警部を演じるジョン・ネトルズは1943年生まれで、1997年(54歳)から13年間主役張っており、67歳と言えばかなりいい歳ではありますが。

 ジョン・ネトルズ自身は「(引退するのは)とても悲しいが、(バーナビーは)約200件もの事件を解決した。目標は達成したと思う」と話しているそうです。正確には15シーズンで208件の殺人事件があったそうで、1話当たり概ね2.5人殺害されているわけか)。バーナビーもジョン・ネトルズも長らくの間お疲れ様でした。

アイソレーションタンク2.jpgアイソレーションタンク1.jpg 因みに、このエピソードの中でジョイスがスパで試そうとしたしたフローティングタンクは「アイソレーションタンク」と呼ばれるもので、都内にも利用可能なエステや「癒しのスペース」のようなものがあるみたいですが、装置は外国製のものを使っているようです。海外では、複数人数で浸かれるような大きなタンクもあるようです。アルタード・ステーツ tirasi.jpgアルタード・ステーツ2.jpg一度利用してみたい気もするけれど、このタンク見ると、ケン・ラッセル監督の「アルタード・ステーツ 未知への挑戦」('79年/米)を思い出して、ちょっと怖い気もしないでもない(少なくとも閉所恐怖症の気がある人は無理だろうなあ)。パディ・チャイエフスキーのSFが原案の映画では、感覚遮断実験のための装置として使われていましたが、タンクそのものの原理はほぼ同じだろうなあ(当時アメリカで、「タンキング」と呼ばれるこの種の瞑想法が流行っていた)。ウィリアム・ハート演じる科学者が、タンクを使って自らを実験台にし、人類進化の過程を意識面で遡っていくが、それが身体にまで影響を及ぼすというものでした(まあ、映画を観ていても、いくら何でもこれはあり得ないとは思いましたが)。

Church End seen in 'Fit for Murder'.jpg「バーナビー警部(第81話)/安らぎのスパ殺人」●原題:MIDSOMER MURDERS:FIT FOR MURDER●制作年:2011年●制作国:イギリス●本国上映:2011/11/15●監督:レニー・ライ●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:アンドリュー・ペイン●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジェイソン・ヒューズ/ジェーン・ワイマーク/バリー・ジャクソン/カースティ•ディロン/ローラ・ハワード/ニール・ダジョン/ジェイソン・デュール●日本放映:2013/10/25●放映局:AXNミステリー(評価:★★★☆)
Church End seen in 'Fit for Murder'

ALTERED STATES.jpgアルタード・ステーツa.gif「アルタード・ステーツ 未知への挑戦」●原題:ALTERD STATES●制作年:1979年(米国公開1980年)●制作国:アメリカ●アルタード・ステーツ b.gif監督:ケン・ラッセル●製作:ハワード・ゴットフリード●脚本:シドニー・アーロン●撮影:ジョーダン・クローネンウェス●音楽:ジョン・コリリアーノアルタード・ステーツ dvd.png●原作:パディ・チャイエフスキー●時間:101分●出演:ウィリアム・ハート/ドリュー・バリモア/ブレア・ブラウン/ボブ・バラバン/チャールズ・ヘイド●日本公開:1981/04●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場所:新宿・京王地下(81-05-17)(評価:★★★)「アルタード・ステーツ 未知への挑戦 [DVD]

1977年8月6日 新宿京王 京王地下.jpg京王新宿ビル3.jpg京王三丁目ビル - 2.jpg 新宿京王・京王地下(京王2)新宿3丁目伊勢丹はす向い京王新宿ビル(現・京王三丁目ビルの場所)。1980年代後半に閉館。

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このシリーズ第1作が一番面白く、その後はどんどん大味になっていく。

ダイハード 1988 ちらし.jpg ダイハード 1988 02.jpg ダイハード 1988 05.jpg
「ダイ・ハード」チラシ
ダイハード 1988 01.pngダイハード dvd.jpgダイハード 1988 04.jpg 「ダイ・ハード シリーズ」の中で一番面白かったのはやはり第1作の「ダイ・ハード」('88年)であり、「テロ集団に襲われたロサンゼルスの高層ビル」という設定を生かして、縦のアクションに徹したのが成功した1つの要因だったと思います。
ダイ・ハード [DVD]

ダイ・ハード-04.jpgダイハード 1988 03.jpg ブルース・ウィリス演じるニューヨーク市警マックレーン刑事は、これまでに無かった新たなヒーロー像を産み出した言えるし(その"嘆き節"も受けた)、マックレーンが高層ビル内で孤軍奮闘する状況の中、外部から無線の声だけでサポートする黒人刑官(レジナルド・ヴェルジョンソン)との男同士の見えない絆なども、観客を熱くさせるものがあったと思います。

ダイハード 1988 アラン・リックマン.jpgダイハード 1988 リックマン.jpg また、英ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー出身のアラン・リックマン(1946-2016/享年69)演じるテロリストも良かったです。アラン・リックマンは「ロビン・フッド」('91年)でもケビン・コスナー演じるロビンの敵役の悪役を演じましたが、半ばコメディ仕立てということもあってか、「ダイ・ハード」で見せたほどの凄味や演技のキレはありませんでした(但し「ロビン・フッド」の演技で英国アカデミー賞助演男優賞を受賞している)。「ダイ・ハード」での好演は、リックマンの落下シーンで事前に打ち合わせていたタイミングより早く彼を落下させ、"素"の驚きの表情を撮るなどした、ジョン・マクティアナン監督の演出の妙にあるのでしょうか(撮影は、後に「スピード」('94年)を監督することになるヤン・デ・ボン)。

 その後「ダイ・ハード2」、「ダイ・ハード3」、「ダイ・ハード4.0」と作られましたが、だんだん質が落ちていったような...。

エルム街の悪夢4.jpg 「ダイハード2」('90年)は、スイス出身で、「エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター最後の反撃」('88年)を撮ったレニー・ハーリンの監督作です。「エルム街の悪夢」シリーズは'84年から'97年までの間に7作作られいて、ライバルシリーズであった「13日の金曜日」シリーズは'88年から'02年までの間に10作作られています('03年には「フレディ vs ジェイソン」が作られている)。「エルム街の悪夢4」は「フレディ対超能力少女」で、その前に観た「13日の金曜日 PART6/ジェイソンは生きていた!」('86年)が、"ジェイソン"はコメディアンだったのか?と思えるほど怖くなかったのですが、「エルム街の悪夢4」ダイ・ハード2 1990.jpgにおけダイハード2   .jpgる"フレディ"のコメディアン化は、ジェイソンのそれを上回っているように思えました。そんなこともあって、「ダイハード2」も劇場に行くのをためらわれたのですが、劇場で観たらまあまあの出来だったでしょうか。但し、雪のワシントン・ダレス空港を舞台に(原作はウォルター・ウェイジャー『ケネディ空港/着陸不能』)、旅客機ダイハード2 03.jpgの爆発、滑走路の大火災とスペクタル・シーンが大掛かりになった分だけ主人公のマックレーン刑事がスーパーマン化し、「1」と比べると大味な印象を受けました。レニー・ハーリンは、この後、シルヴェスター・スタローン主演の「クリフハンガー」('93年)を撮っています(「ダイハード2」の終盤のクライマックスシーンでのマックレーン刑事が懐からライターを取り出すところから、彼がまだ喫煙者であったころが窺える)。
ダイ・ハード2 [DVD]」('90年)

ダイ・ハード3.jpg 「ダイハード3」('95年)で監督をマクティアナン、舞台をニューヨークに戻して原点回帰? ニューヨーク市内で突如爆弾テロが発生し、「サイモン」と名乗る犯人は警察に電話し、ジョン・マクレーンを指名する。嫌がらせの様に、黒人達が多く住むハーレムのど真ん中で、「黒ん坊は嫌いだ(I hate Niggers)」というカードを下げさせられたマクレーンは、自身が白人である事も災いし、当然それを見た黒人ギャング達に半殺しにされかける。しかし、その近くで店を経営する黒人の男・ゼウス(サミュエル・L・ジャクソン)に助けられ、それを知り、面白くなかったサイモンの指示によって、2人は行動を共にする事になるというあらすじ。
ダイ・ハード3 [DVD]」('95年)

ダイハード3 ジェレミー・アイアンズ.jpg マクレーンに協力する黒人ゼウスを演じたサミュエル・L・ジャクソン(前年の「パルプ・フィクション」('94年/米)で一気に知名度をアップさせていた)、敵役サイモンを演じたジェレミー・アイアンズと(個人的には「運命の逆転」('90年/米)以来だったなあ)、共に演技達者で、途中まではそれなりに楽しませてくれましたが、途中から主人公のスーパーマン化は前作より更に進行し、最終的には一層大味な作品になってしまいました。

ダイ・ハード4.0 01.jpg その12年後に作られた「ダイハード4.0(フォー)」('07年)では(いきなりマクレーンの娘が出てきた)、不正にネットワークへアクセスするハッカーを利用して、政府機関・公益企業・金融機関への侵入コードを入手したテロリストがライフラインから防衛システムまでを掌握し、サイバーテロによって全米を揺るがすという設定で、それでもテロリストとまともに戦っていダイ・ハード4.0 3.jpgるのは(若いハッカーを従えた)マクレーンただ1人という不思議な設定で、彼の娘は例のごとくテロリストの人質に。一部にサイバー合戦も見られますが、遂には国防省から最新鋭戦闘機F-35まで出てきてしまって、これが結構間抜けな役回りで、通信システムを掌握するテロリストのミスリードでマクレーンを攻撃(いくら命令とは言え、街中のハイウェイで戦闘機が機銃を乱射するかなあ)、これはもう、カネをかければいいものが出来ると勘違いしているのではないかと思わざるを得ません。マクレーンはトラックから戦闘機に飛び乗り、戦闘機からハイウェイに舞い降りと、殆ど人間ではあり得ない超絶アクションで、これまた更に大味に。まあ、自分の中では既に「3」でこのシリーズは終わったという印象ではありましたが...。

ダイ・ハード/ラスト・デイdvd.jpgダイ・ハード/ラスト・デイ1.jpg 最近作のシーリズ第5作となる「ダイ・ハード/ラスト・デイ」('13年)は、舞台をシリーズ初の海外であるロシアに移しての展開でしたが(今度はいきなりマクレーンの息子が出てきた)、周囲の迷惑を顧みない滅茶苦茶なカーチェイスから始まって(巻き添えの死傷者が何十人と出てもおかしくない)、ラストでは女性敵役がマックレーンに対する怨みからヘリコプターで突っ込んでくるという、殆ど盲目的自爆の様相。彼女イリーナ(ユーリヤ・スニギル)はそれまで何のためにマックレーンを欺こうとしていたのか。もう完全にリアリティとはサヨナラした上に、ストーリーまでも破綻気味―「3」以降「5(ラスト・デイ)」まであまり評価する気にならないのですが、「5」はこれまでの中で最も劣るように思いました。 「ダイ・ハード/ラスト・デイ [DVD]」('13年)

 これでホントに終わりにするのかと思ったら「6」を作る予定があるらしく、ブルース・ウィリスの当シリーズへの思い入れは解らなくもないけれど、どうなんだろうか。

ダイハード 1988 00.jpg「ダイ・ハード」●原題:DIE HARD●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・マクティアナン●製作:ローレンス・ゴードン/ジョエル・シルバー●脚本:スティーヴン・E・デ・スーザ/ジェブ・スチュアート●撮影:ヤン・デ・ボン●音楽:マイケル・ケイメン●原作:ロデリック・ソープ「ダイ・ハード」●時間:131分●出演:ブルース・ウィリス/アラン・リックマン/アレクサンダー・ゴドノフ/ボニー・ベデリア/レジナルド・ヴェルジョンソン/アート・エヴァンス/ウィリアム・サドラー●日本公開:1989/02●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:渋谷東宝(89-02-12)●2回目:三軒茶屋映劇(89-07-01)(渋谷 東横映画劇場(1936年).jpg渋谷東宝.jpg評価:★★★★)●併映(2回目):「レッド・スコルピオン」(ジョセフ・シドー)
渋谷東宝 1936年「東横映画劇場」として開場(座席数1,401席)。1944年「渋谷東宝映画劇場」に改称、後に渋谷東宝(渋谷東宝会館1階)、渋谷スカラ座(同4階)、渋谷文化劇場(同地階)の3館体制に。1989(平成元)年2月26日閉館(閉館時座席数1,026席)。1991年7月6日、跡地に渋東シネタワーが開館。(右写真:「渋谷東宝会館」(渋谷東宝劇場・渋谷スカラ座/地階・渋谷文化劇場)
三軒茶屋映劇 2.jpg三軒茶屋シネマ/中央劇場.jpg三軒茶屋付近.png三軒茶屋映画劇場 1925年オープン(国道246号沿い現サンタワービル辺り)。1992(平成4)年3月13日閉館(左写真)。菅野 正 写真展 「平成ラストショー hp」より 同系列の三軒茶屋中央劇場(右写真中央)は1952年、世田谷通りの裏通り「なかみち街」にオープン。(「三軒茶屋中央劇場」も2013年2月14日閉館)  ①三軒茶屋東映(→三軒茶屋シネマ) ②三軒茶屋映劇(映画劇場)(現サンタワービル辺り) ③三軒茶屋中劇(中央劇場)

ダイ・ハード2-38.jpgダイ・ハード2.jpg「ダイ・ハード2」●原題:DIE HARD 2: DIE HARDER●制作年:1990年●制作国:アメリカ●監督:レニー・ハーリン●製作:ローレンス・ゴードン/ジョエル・シルバー/チャールズ・ゴードン●脚本:スティーヴン・E・デ・スーザ/ダグ・リチャードソン●撮影:オリヴァー・ウッド●音楽:マイケル・ケイメン●原作:ウォルター・ウェイジャー「ケネディ空港/着陸不能」●時間:124分●出演:ブルース・ウィリス/デニス・フランツ/ウィリアム・サドラー/フランコ・ネロ/ジョン・エイモス/ボニー・ベデリア/ウィリアム・アザートン/レジナルド・ヴェルジョンソン/フレッド・トンプソン●日本公開:1990/09●配給:20世紀フォックス(評価:★★★)
ダイ・ハード2 [DVD]

スマイルBEST エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター 最後の反撃 [DVD]
エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター.jpg「エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター最後の反撃」●原題:A NIGHTMARE OF ELM STREET 4 THE DREAM MASTER●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:レニー・ハーリン●製作:ロバート・シェイ/レイチェル・タラレイ●脚新宿オデヲン座0.jpg本:スコット・ピアース/ ブライアン・ヘルゲランド●撮影:スティーヴン・ファイアーバーグ●音楽:クレイグ・セイファン●時間:94分●出演:ロバート・イングランド/リサ・ウィルコックス/チューズデイ・ナイト/アンドラス・ジョーンズ/ダニー・ハッセル/ブルック・ゼイス/トイ・ニューカーク/ニコラス・メレ/ブルック・バンディ/ロドニー・イーストマン/ケン・サゴーズ●日本公開:1989/04●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:新宿オデヲン座(89-04-30)(評価:★★)
新宿オデヲン座 1951(昭和26)年11月、現在の歌舞伎町「第二東亜会館」の場所に開館。1959年4月「グランドビル」(後の「第一東亜会館」)地下1階に移転。2009(平成21)年11月30日閉館。(写真:歌舞伎町「第一東亜会館」(左から新宿オスカー・新宿オデヲン座・新宿アカデミー)

13日の金曜日 PART6 ジェイソンは生きていた! [DVD]」/チラシ
13日の金曜日 PART6ジェイソンは生きていた.jpg13日の金曜日 PART6/ジェイソンは生きていた! tirasi.jpg「13日の金曜日 PART6/ジェイソンは生きていた!」●原題:FRIDAY THE 13TH PART6:JASON LIVES●制作年:1986年●制作国:アメリカ●監督・脚本:トム・マクローリン●製作:ドン・ビーンズ●撮影:ジョン・R・クランハウス●音楽:ハリー・マンフレディーニ●時間:87分●出演:トム・マシューズ/ジェニファー・クック/デヴィッド・ケーガン/トム・フリドリー/レネー・ジョーンズ/ケリー・ヌーナン/トニー・ゴールドウィン/ナンシー・マクローリン/ヴィンセント・ガスタフェッロ/ロン・パリロ●日本公開:1986/10●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:東急レックス(89-04-30)(評価:★★)
東急レックス.jpg東急レックス2.jpg
東急レックス(渋谷東急3) 1956年開館東急文化会館の地下1階(地下東急ストア隣り)。当初はニュース映画館「東急ジャーナル」。1990(平成2年)10月、東急レックスから「渋谷東急3」に改称。2003(平成15)年6月30日閉館。

(モノクロ写真:東急レックス(1977(昭和52)年)/カラー写真:「東急文化会館」(左から渋谷東急2(旧東急名画座)・渋谷東急・渋谷パンテオン・東急レックス(後の渋谷東急3)

ダイ・ハード3-47.jpgダイ・ハード3 ps.jpg「ダイ・ハード3」●原題:DIE HARD: WITH A VENGEANCE●制作年:1995年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・マクティアナン●製作:ジョン・マクティアナン/マイケル・タッドロス●脚本:ジョナサン・ヘンズリー●撮影:ピーター・メンジース・ジュニア●音楽:マイケル・ケイメン●時間:128分●出演:ブルース・ウィリス/サミュエル・L・ジャクソン/ジェレミー・アイアンズ/グラハム・グリーン/コリーン・キャンプ/ラリー・ブリッグマン/アンソニー・ペック/ニック・ワイマン/サム・フィリップス/ケヴィン・チェンバーリン/シャロン・ワシントン/スティーヴン・パールマン/マイケル・アレクサンダー・ジャクソン/アルディス・ホッジ●日本公開:1995/07●配給:20世紀フォックス(評価:★★☆)
ダイ・ハード3 [DVD]

ダイ・ハード4.0 02.jpgダイ・ハード4.0 [DVD].jpg「ダイハード4.0(フォー)」●原題:DIE HARD 4.0: LIVE FREE OR DIE HARD●制作年:2007年●制作国:アメリカ●監督:レン・ワイズマン●製作:マイケル・フォトレル●脚本:マーク・ボンバック●原案:マーク・ボンバック/デヴィッド・マルコーニ●撮影:サイモン・ダガン●音楽:マルコ・ベルトラミ●時間:129分●出演:ブルース・ウィリス/ジャスティン・ロング/メアリー・エリザベス・ウィンステッド/ティモシー・オリファント/マギー・Q/シリル・ラファエリ/エドアルド・コスタ/ジョナサン・サドウスキー/クリフ・カーティス/ケヴィン・スミス/ヤンシー・アリアス●日本公開:2007/07●配給:20世紀フォックス(評価:★★☆)
ダイ・ハード4.0 [DVD]

ダイ・ハード/ラスト・デイw.jpg「ダイ・ハード/ラスA GOOD DAY TO DIE HARD 01.jpgト・デイ」●原題:A GOOD DAY TO DIE HARD●制作A GOOD DAY TO DIE HARD 02.jpg年:2013年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ムーア●製作:アレックス・ヤング●脚本:スキップ・ウッズ●撮影:ジョナサン・セラ●音楽:マルコ・ベルトラミ●キャラクター創造:ロデリック・ソープ●時間:98分(劇場公開版)・102分(最強無敵ロング・バージョン)●出演:ブルース・ウィリス/ ジェイ・コートニー/セバスチャン・コッホ/メアリー・エリザベス・ウィンステッド/ユーリヤ・スニギル/ラシャ・ブコヴィッチ●日本公開:2013/02●配給:20世紀フォックス(評価:★★)
Yuliya Snigir

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ニューヨークという大都会を舞台にしたダスティン・ホフマン主演'69年作品2作。

ジョンとメリー [VHS].jpgジョンとメリー [DVD].jpg 真夜中のカーボーイ dvd.jpg 卒業 [DVD] L.jpg
ジョンとメリー [DVD]」「真夜中のカーボーイ [DVD]」「卒業 [DVD]

ジョンとメリー 1.jpg マンハッタンに住む建築技師ジョン(ダスティン・ホフマン)のマンションで目覚めたメリー(ミア・ファロー)は、自分がどこにいるのか暫くの間分からなかった。昨晩、独身男女が集まるバーで2人は出会い、互いの名前も聞かないまま一夜を共にしたのだった。メリーは、整頓されたジョンの家を見て女の影を感じる。ジョンはかつてファッションモデルと同棲していた過去があり、メリーはある有力政治家と愛人関係にあった。朝食を食べ、昼食まで共にした2人は、とりとめのない会話をしながらも、次第に惹かれ合っていくが、ちょっとした出来事のためメリーは帰ってしまう―。

 ピーター・イエーツ(1929-2011/享年81)監督の「ジョンとメリー」('69年)は、行きずりの一夜を共にした男女の翌朝からの1日を描いたもので、男女の出会いを描いた何とはない話であり、しかも基本的に密室劇なのですが、2人のそれぞれの回想と現在の気持ちを表す独白を挟みながらストーリーが巧みに展開していき、2人の関係はどうなるのだろうかと引き込まれて観てしまう作品でした。

ジョンとメリー 4.jpg 脚本は「シャレード」('63年)の原作者ジョン・モーティマーですが、構成の巧みさもさることながら、演じているダスティン・ホフマンとミア・ファローがそもそも演技達者、とりわけダスティン・ホフマン演じるジョンの、そのままメリーに居ついて欲しいような欲しくないようなその辺りの微妙に揺れる心情が可笑しく(ジョンの方に感情移入して観たというのもあるが)ホントにこの人上手いなあと思いました(でも、ミア・ファローも良かった)。

ジョンとメリー 2.jpg 最後に互いの気持ちを理解し合えた2人が、そこで初めて「ぼくはジョンだ」「私はメリーよ」という名乗り合う終わり方もお洒落(その時大方の観客は初めて、そっか、2人はまだ名前も教え合っていなかったのかと気づいたのでは)。観た当時は、これが日本映画だったら、もっとウェットな感じになってしまうのだろうなあと思って、ニューヨークでの一人暮らしに憧れたりもしましたが、逆に、ニューヨークのような大都会で恋人も無く一人で暮らすということになると、(日本以上に)とことん"孤独"に陥るのかも知れないなあとも思ったりして。

真夜中のカーボーイ1.jpg そうした大都会での孤独をより端的に描いた作品が、ダスティン・ホフマンがこの作品の前に出演した同年公開のジョン・シュレシンジャー(1926-2003/享年77)監督の「真夜中のカーボーイ」('69年)であり、ジョン・ヴォイトが、"いい男ぶり"で名を挙げようとテキサスからニューヨークに出てきて娼婦に金を巻き上げられてしまう青年ジョーを演じ、一方のダスティン・ホフマンは、スラム街に住む怪しいホームレスのリコ(一旦は、こちらもジョーから金を巻き上げる)役という、その前のダスティン・ホフマンの卒業 ダスティン・ホフマン .jpg主演作であり、彼自身の主演第1作だったマイク・ニコルズ監督の「卒業」('67年)の優等生役とはうって変った役柄を演じました(「卒業」で主人公が通うコロンビア大学もニューヨーク・マンハッタンにある)。

卒業 ダスティン・ホフマン/キャサリン・ロス.jpg 映画デビューした年に「卒業」でアカデミー主演男優賞ノミネートを受け(この作品、今観ると「サウンド・オブ・サイレンス」をはじめ「スカボロ・フェアー」「ミセス・ロビンソン」等々、サイモン&ガー卒業(1967).jpgファンクルのヒット曲のオン・パレードで、そちらの懐かしさの方が先に立つ)、主演第2作・第3作が「真夜中のカーボーイ」(これもアカデミー主演男優賞ノミネート)と「ジョンとメリー」であるというのもスゴイですが、ゴールデングローブ卒業 1967 2.jpg賞新人賞を受賞した「卒業」の、その演技スタイルとは全く異なる演技をその後次々にみせているところがまたスゴイです(「卒業」で英国アカデミー賞新人賞を受賞し、「真夜中のカーボーイ」と「ジョンとメリー」で同賞主演男優賞を受賞している)。

真夜中のカーボーイQ.jpg 3作品共にアメリカン・ニュー・シネマと呼ばれる作品ですが、その代表作として最も挙げられるのは「真夜中のカーボーイ」でしょう。ニューヨークを逃れ南国のフロリダへ旅立つ乗り合いバスの中でリコが息を引き取るという終わり方も、その系譜を強く打ち出しているように思われます。「真夜中のカーボーイ」も「ジョンとメ真夜中のカーボーイs.jpgリー」も傑作であり、ダスティン・ホフマンはこの主演第2作と第3作で演技派としての名声を確立してしまったわけですが、個人的には「ジョンとメリー」の方が、ラストの明るさもあってかしっくりきました。一方の「真夜中のカーボーイ」の方は、ジョーとリコの奇妙な友情関係にホモセクシュアルの臭いが感じられ、当時としてはやや引いた印象を個人的には抱きましたが、2人の関係を精神的なホモセクシュアルと見る見方は今や当たり前のものとなっており、その分だけ、今観ると逆に抵抗は感じられないかも。

ミスター・グッドバーを探して [VHS].jpg 「ジョンとメリー」に出てくる"Singles Bar"(独身者専門バー)を舞台としたものでは、リチャード・ブルックス(1912-1992/享年72)監督・脚本、ダイアン・キートン主演の「ミスター・グッドバーを探して」('77年)があり、こちらはジュディス・ロスナーが1975年に発表したベストセラー小説の映画化作品です。
ミスター・グッドバーを探して [VHS]

ミスター・グッドバーを探して1.jpg ダイアン・キートン演じる主人公の教師はセックスでしか自己の存在を確認できない女性で、原作は1973年にニューヨーク聾唖学校の28歳の女性教師がバーで知り合った男に殺害された「ロズアン・クイン殺人事件」という、日本における「東電OL殺人事件」(1997年)と同じように、当時のアメリカ国内で、殺人事件そのものよりも被害者の二面的なライフスタイルが話題となった事件を基にしており、当然のことながら結末は「ジョンとメリー」とは裏腹に暗いものでした。主人公の女教師は最後バーで拾った男(トム・ベレンジャー)に殺害されますが、その前に女教師に絡むチンピラ役を、当時全く無名のリチャード・ギアが演じています(殺害犯役のトム・ベレンジャーも当時未だマイナーだった)。

恋におちて 1984.jpg 何れもニューヨークを舞台にそこに生きる人間の孤独を描いたものですが、ニューヨークを舞台に男女の出会いを描いた作品がその後は暗いものばかりなっているかと言えばそうでもなく、ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープの演技派2人が共演した「恋におちて」('84年)や、メグ・ライアンとトム・ハンクスによるマンハッタンのアッパーウエストを舞台にしたラブコメディ「ユー・ガット・メール」('98年)など、明るいラブストーリーの系譜は生きています(「ユー・ガット・メール」は1940年に製作されたエルンスト・ルビッチ監督の「街角/桃色(ピンク)の店」のリメイク)。
「恋におちて」('84年)

ユー・ガット・メール 01.jpg 「恋におちて」はグランド・セントラル駅の書店での出会いと通勤電車での再会、「ユー・ガット・メール」はインターネット上での出会いと、両作の間にも時の流れを感じますが、前者はクリスマス・プレゼントとして買った本を2人が取り違えてしまうという偶然に端を発し、後者は、メグ・ライアン演じる主人公は絵本書店主、トム・ハンクス演じる男は安売り書店チェーンの御曹司と、実は2人は商売敵だったという偶然のオマケ付き。そのことに起因するバッドエンドの原作を、ハッピーエンドに改変しています。
「ユー・ガット・メール」('98年)

めぐり逢えたら 映画 1.jpg トム・ハンクスとメグ・ライアンは「めぐり逢えたら」('93年)の時と同じ顔合わせで、こちらもレオ・マッケリー監督、ケーリー・グラント、デボラ・カー主演の「めぐり逢い」('57年)にヒントを得ている作品ですが(「めぐり逢い」そのものが同じくレオ・マッケリー監督、アイリーン・ダン、シャルル・ボワイエ主演の「邂逅」('39年)のリメイク作品)、エンパイア・ステート・ビルの展望台で再開を約するのは「めぐり逢い」と同じ。但し、「めぐり逢い」ではケーリー・グラント演じるテリーの事故のため2人の再会は果たせませんでしたが、「めぐり逢えたら」の2人は無事に再開出来るという、こちらもオリジナルをハッピーエンドに改変しています。
「めぐり逢えたら」('93年)

 最近のものになればなるほど、男女双方または何れかに家族や恋人がいたりして話がややこしくなったりもしていますが、それでもハッピーエンド系の方が主流かな。興業的に安定性が高いというのもあるのでしょう。「恋におちて」は、古典的ストーリーをデ・ニーロ、ストリープの演技力で引っぱっている感じですが、2人とも出演時点ですでに大物俳優であるだけに、逆にストーリーの凡庸さが目立ち、やや退屈?(もっと若い時に演じて欲しかった)。但し、「恋におちて」「めぐり逢えたら」「ユー・ガット・メール」の何れも役者の演技はしっかりしていて、ストーリーに多分に偶然の要素がありながらも、ディテールの演出や表現においてのリアリティはありました。しかしながら、物語の構成としては"定番の踏襲"と言うか、「ジョンとメリー」を観て感じた時のような新鮮味は感じられませんでした。

 こうして見ると、ニューヨークという街は、「真夜中のカーボーイ」や「ミスター・グッドバーを探して」に出てくる人間の孤独を浮き彫りにするような暗部は内包してはいるものの、映画における男女の出会いや再会の舞台として昔も今もサマになる街でもあるとも言えるのかもしれません(ダスティン・ホフマンは同じ年に全く異なるキャラクターで、ニューヨークを舞台に孤独な男性の「明・暗」両面を演じてみせたわけだ。これぞ名優の証!)。

ジョンとメリー [VHS]
JOHN AND MARY 1969.jpgジョンとメリーdvd3.jpg「ジョンとメリー」●原題:JOHN AND MARY●制作年:1969年●制作国:アメリカ●監督:ピーター・イェーツ●製作:ベン・カディッシュ●脚本:ジョン・モーティマー●撮影:ゲイン・レシャー●音楽:クインシー・ジョーンズ●原作:マーヴィン・ジョーンズ「ジョンとメリー」●時間:92分●出演:ダスティン・ホフマン/ミア・ファロー/マイケル・トーラン/サニー・グリフィン/スタンリー・ベック/三鷹オスカー.jpgタイン・デイリー/アリックス・エリアス●日本ジョンとメリーe.jpg公開:1969/12●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:三鷹東映(78-01-17)(評価:★★★★☆)●併映:「ひとりぼっちの青春」(シドニー・ポラック)/「草原の輝き」(エリア・カザン)三鷹東映 1977年9月3日、それまであった東映系封切館「三鷹東映」が3本立名画座として再スタート。1978年5月に「三鷹オスカー」に改称。1990(平成2)年12月30日閉館。

Dustin Hoffman and Mia Farrow/Photo from John and Mary (1969)

「真夜中のカーボーイ」●原題:MIDNIGHT COWBOY●制作年:1969年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・シュレシンジャー●製作:ジェローム・ヘルマン●脚本:ウォルド・ソルト●撮影:アダム・ホレンダー●音楽:ジョン・バリー●原作:ジェームズ・レオ・ハーリヒー「真夜中のカーボーイ」●時間:113真夜中のカーボーイ2.jpg真夜中のカーボーイ 映画dvd.jpg分●出演:ジョン・ヴォイト/ダスティン・ホフマン/シルヴィア・マイルズ/ジョン・マクギヴァー/ブレンダ・ヴァッカロ/バーナード・ヒューズ/ルース・ホワイト/ジェニファー・ソルト/ボブ・バラバン●日本公開:1969/10●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:早稲田松竹(78-05-20)(評価:★★★★)●併映:「俺たちに明日はない」(アーサー・ペン)
真夜中のカーボーイ [DVD]

「卒業」●原題:THE GRADUATE●制作年:1967年●制作国:アメリカ●監督:マイク・ニコルズ●製作:ローレンス・ター卒業 1967 pster.jpgマン●脚本:バック・ヘンリー/カルダー・ウィリンガム●撮影:ロバート・サーティース●音楽:ポール・サイモン卒業 1967 1.jpg/デイヴ・グルーシン●原作:チャールズ・ウェッブ●時間:92分●出演:ダスティン・ホフマン/アン・バンクロフト/キャサリン・ロス/マーレイ・ハミルトン/ウィリアム・ダリチャr-ド・ドレイファス 卒業.jpgニエルズ/エリザベス・ウィルソン/バック・ヘンリー/エドラ・ゲイル/リチャード・ドレイファス●日本公開:1968/06●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:池袋・テアトルダイヤ(83-02-05)(評価:★★★★)●併映:「帰郷」(ハル・アシュビー)
卒業 [DVD]

映画パンフレット 「ミスターグッドバーを探して」.jpg「ミスター・グッドバーを探して」●原題:LOOKING FOR MR. GOODBAR●制作年:1977年●制作国:アメリカ●監督・脚本:リチャード・ブルックス●製作:フレディ・フィールズ●撮影:ウィリアム・A・フレイカー●音楽:アーティ・ケイン●原作:ジュディス・ロスナー「ミスター・グッドバーを探して」●時間:135分●出演:ダイアン・キートン/アラン・フェインスタイン/リチャード・カイリー/チューズデイ・ウェルド/トム・ベレンジャー/ウィリアム・アザートン/リチャード・ギア●日本公開:1978/03●配給:パラマウント=CIC●最初に観た場所:飯田橋・佳作座(79-02-04)(評価:★★☆)●併映:「流されて...」(リナ・ウェルトミューラー)
映画パンフレット 「ミスターグッドバーを探して」監督リチャード・ブルックス 出演ダイアン・キートン

FALLING IN LOVE 1984.jpg恋におちて 1984 dvd.jpg「恋におちて」●原題:FALLING IN LOVE●制作年:1984年●制作国:アメリカ●監督:ウール・グロスバード●製作:マーヴィン・ワース●脚本:マイケル・クリストファー●撮影:ピーター・サシツキー●音楽:デイヴ・グルーシン●時間:106分●出演:ロバート・デ・ニーロ/メリル・ストリープ/ハーヴェイ・カイテル/ジェーン・カツマレク/ジョージ・マーティン/デイヴィッド・クレノン/ダイアン・ウィースト/ヴィクター・アルゴ●日本公開:1985/03●配給:ユニヴァーサル映画配給●最初に観た場所:テアトル池袋(86-10-12)(評価:★★★)●併映:「愛と哀しみの果て」(シドニー・ポラック)
恋におちて [DVD]

YOU'VE GOT MAIL.jpgユー・ガット・メール dvd.jpg「ユー・ガット・メール」●原題:YOU'VE GOT MAIL●制作年:1998年●制作国:アメリカ●監督:ノーラ・エフロン●製作:ノーラ・エフロン/ローレン・シュラー・ドナー●脚本:ノーラ・エフロン/デリア・エフロン●撮影:ジョン・リンドリー●音楽:ジョージ・フェントン●原作:ミクロス・ラズロ●時間:119分●出演:トム・ハンクス/メグ・ライアン/グレッグ・キニア/パーカー・ポージー/ジーン・ステイプルトン/スティーヴ・ザーン/ヘザー・バーンズ/ダブニー・コールマン/ジョン・ランドルフ/ハリー・ハーシュ●日本公開:1999/02●配給:ワーナー・ブラザース映画配給(評価:★★★)ユー・ガット・メール [DVD]

SLEEPLESS IN SEATTLE.jpgめぐり逢えたら 映画 dvd.jpg「めぐり逢えたら」●原題:SLEEPLESS IN SEATTLE●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:ノーラ・エフロン●製作:ゲイリー・フォスター●脚本:ノーラ・エフロン/デヴィッド・S・ウォード●撮影:スヴェン・ニクヴィスト●音楽:マーク・シャイマン●原案:ジェフ・アーチ●時間:105分●出演:トム・ハンクス/メグ・ライアン/ビル・プルマン/ロス・マリンジャー/ルクランシェ・デュラン/ルクランシェ・デュラン/ギャビー・ホフマン/ヴィクター・ガーバー/リタ・ウィルソン/ロブ・ライナー●日本公開:1993/12●配給:コロンビア映画(評価:★★☆)めぐり逢えたら コレクターズ・エディション [DVD]

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やはり感動させられる「ロッキー」のシリーズ第1作。スタローンは自分で監督しない方がいい?

ロッキー 1976 dvd.jpg ロッキー2 dvd.jpg ロッキー3 dvd.jpg ロッキー4 dvd.jpg ステイン・アライブ dvd.jpg ランボー dvd.jpg
ロッキー(特別編) [DVD]」「ロッキー2 [DVD]」「ロッキー3 [DVD]」「ロッキー4 [DVD]」「ステイン・アライブ [DVD]」「ランボー/怒りの脱出 [DVD]

ロッキー 1976 02.jpg 「ロッキー」('76年)は、シルヴェスター・スタローン(1946年生まれ)が当時、映画オーディションに50回以上落選し、ポルノ映画への出演や用心棒などをして日々の生活費を稼ぐ暮らしの中で、プロボクシングのヘビー級タイトルマッチ「モハメド・アリ対チャック・ウェプナー戦」をテレビで観てウェプナーの善戦に感激し、それに触発されて3日間で脚本を書き上げプロダクションに売り込んだもので、プロダクション側はその脚本に7万5千ドルという、当時としては破格の値をつけたということですから、脚本自体が良かったのでしょう。

ロッキー 1976 01.jpg プロダクション側は主演にポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、アル・パチーノなどの有名スターを想定していたのに対し(ジェームズ・カーンなども有力な主演候補だった)、スタローンはあくまで自分が主演することに固執したため、最終的に36万ドルまで高騰した脚本は、スタローンの主演と引き換え条件に2万ドルまで減額されたそうな。でも、結果的にスタローンは無名俳優から一躍スターダムに躍り出たわけで、主演に固執して良かった...(逆に言えば、窮乏生活に慣れていたので、カネには固執していなかった)。

ロッキー 03.jpg 日本でも公開当時、誰もがこの作品を観に映画館に押し掛ける状況で、アカデミー賞作品賞受賞、キネマ旬報でも年間1位と高評価。こうなると逆に事前に情報が入り過ぎてしまい、結局個人的にはロードでは観に行かなかったのですが、後で「ロッキー2」('78年)と併せて名画座に降りてきた頃になって遅ればせながら観て、筋書きは分かっていても、やはり感動させられました。

ロッキー4 01.jpg 但し、スタローン自身が監督した「ロッキー2」の方はイマイチ、更に、今度こそロードでと観に行った「ロッキー3」('82年)では、対戦相手クラバー(ミスター・T)が全然強そうに見えないのが難で、これもイマイチ。それに比べると、「ロッキー4 炎の友情」('85年)は、ドラゴ(ドルフ・ラングレン)の登場で、多少シリーズ最後を盛り上げたという印象で、個人的にはまあまあ許せるかなという感じでしたが、スタローン自身はこの「ロッキー4 炎の友情」で、ゴールデンラズベリー賞の最低主演男優賞を受賞しています。
レッド・スコルピオン 1.jpg 一方、ロッキーより強そうに見えたドラゴを演じたドルフ・ラングレンは、その後「レッド・スコルピオン」('88年/米)に主演。アフリカ南部の共産主義国家に潜入したソ連の特殊部隊兵士の活躍を描くアクション映画でしたが、何だか動きが鈍くなったような...。空手家としての実績もあり、6か国語を話すインテリでもあるそうですが、スタローンRed Scorpion -  Dolph Lundgren.jpgレッド・スコルピオン dvd.jpg同様に監督業に進出する傍ら併せて俳優業を続けているものの、B級映画ばかり出ているなあ。因みに、「レッド・スコルピオン」のプロデューサーのジャック・エイブラモフはその後共和党保守派のロビイストとなり、汚職事件でFBIに拘束されていますが、この映画自体にも当初から南アの極右派(アパルトヘイト推進派)が資金提供しているとの噂が囁かれていたとのこと、但し、映画の中にとりたてて人種差別的表現はありません。 
レッド・スコルピオン [DVD]」 ドルフ・ラングレンはローランド・エメリッヒ監督の「ユニバーサル・ソルジャー」('92年)で、べトナム戦争で戦死したものの25年後に軍の秘密兵器として甦る特殊部隊兵ユニバーサル・ソルジャー ps.jpgユニバーサル・ソルジャー 1992.jpg士を演じていますが、ジャン=クロード・ヴァン・ダム演じる同じく甦ったもう一人の兵士の方が善玉なのに対し、ドルフ・ラングレンの方はヒール役(悪玉)というのが相変わらずでした(まあ、ドルフ・ラングレンの方が見た目が強そうだというのもあるかもしれないが、妥当な配役か)。観た時は可もなく不可もない娯楽作品という印象でしたがそこそこ人気があったのか、その後「ユニバーサル・ソルジャー/ザ・リターン」('99年)、「ユニバーサル・ソルジャー:リジェネレーション」('09年)が作られ、ジャン=クロード・ヴァン・ダムは両方に主演、ドルフ・ラングレンは'09年の方に出ています(2人とも中年にして頑張っている?)。

 スタローンについても、シリーズ最後と謳った「ロッキー4」でロッキー・シリーズは実際には終わらず、「ロッキー5 最後のドラマ」(Rocky V、'90年)、そして更に16年後の「ロッキー・ザ・ファイナル」(Rocky Balboa、'06年)と続いたわけで(「ロッキー5」はスタローン自身が失敗作であったことを認め、だから"ザ・ファイナル"を作ったとのこと)、最後60歳でボクサー役でリングに上がったスタローンはすごいと言えばすごいけれど、やはり無理があったと言わざるを得ないのではないでしょうか(ボクシング関係者の一部には、ボクシングを冒涜しているとの声もあった)。

スタローン&シュワルツェネッガー.jpg 「ロッキー2」以降はスタローン自身が監督しているのですが、ボディビルダーから俳優に転じ、更には州知事も務めたアーノルド・シュワルツェネッガー(1947年生まれ)と比べると、スタローンという人は根っから映画が好きなんだなあという気がします。二人が本格共演を果たした「大脱出」('13年)のプレミアで、スタローンは シュワルツェネッガーについて「20年間、本当に互いを激しく嫌い合っていたんだ」と告白していますが、とはいえ、「それはいいライバルはなかなか見つからないということの証。次第にその存在に感謝するようになる。そうやって競い合ってきたから、こうして二人ここにいるのかも」と今は互いの存在を 認め合っていることを明かしています。個人的には、そもそも映画への関わり方が二人は違うのではないかと。シュワルツェネッガーが「俳優」であるのに対し、スタローンは「映画人」という印象であり、脚本を書くか書かないかの違いは大きいように思います。

ステイン・アライブ01.jpg 但し、スタローンの映画監督としての力量はどうなのかはやや疑問符も...。作品への思い入れが先行しているような感じもあり、ついていけない人もいるのではないでしょうか。「ロッキー」に関しては、シリーズを通しての熱烈なファンが多くいるようですが、「ロッキー3」と「ロッキー4」の間の時期に、「サタデー・ナイト・フィーバー」('77年)の続編としてスタローンが監督した「ステイン・アライブ」('83年、脚本もスタローン)は特に見るべきものの無い作品で、この映画に主演したジョン・トラボルタの長期低迷のきっかけになった作品とも言えるのではないかと思います。

ランボー ちらし.jpgランボー 01.jpg 因みに「ランボー」('82年)のシリーズ作も、全4作全てスタローンの脚本または彼が脚本参加しているものでしたが、第1作(「ロッキー3」と同じ年に作られている)の「ランボー1人 vs. 警官千人」に始まり、「ランボー/怒りの脱出」('85年)では「ランボー1人vs.ベトナム軍」、ランボー3/怒りのアフガン dvd.jpg「ランボー3/怒りのアフガン」('88年)では「ランボー1人vs.ソ連軍10万人」とスケール・アップするにつれて、当初のランボーのアウトローの孤独と哀しみは消え、すっかり超人ヒーローになってしまい、「ランボー3/怒りのアフガン」などは、見ていてちっともハラハラしない...。しかも、今思えば皮肉なことに、この作品は、ランボーがアフガン・ゲリラと協力してソ連軍と戦う内容になっていて、当時のアフガン・ゲリラの一派が後のタリバン内の過激武装勢力になっていくわけです。

 「ランボー3/怒りのアフガン」ではスタローン自身も'88年ゴールデンラズベリー賞の最低主演男優賞に選ばれてしまったぐらいで(実は'85年にも「ランボー/怒りの脱出」と「ロッキー4 炎の友情」の"合わせ技"で同賞の最低主演男優賞を受賞している)、20年ぶりの続編「ランボー/最後の戦場」('08年)でその汚名返上を図ったのか、このシリーズで初めて自らメガホンをとりますが、こちらは個人的には未見。でも、この人、あんまり自分で監督しないほうが...。

ロッキー パンフ.jpgrocky 1976 poster.jpg「ロッキー」●原題:ROCKY●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・G・アヴィルドセン●製作:アーウィン・ウィンクラー/ロバート・チャートフ●脚本:シルヴェスター・スタローン●撮影:ジェームズ・グレイブ●音楽:ビル・コンティ●時間:119分●出演:シルヴェスター・スタローン/タリア・シャイア/バート・ヤング/バージェス・メレディス/カール・ウェザース●日本公開:1977/04●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:池袋・文芸坐(81-01-22)(評価:★★★★)●併映:「ロッキー2」(シルヴェスター・スタローン)
「ロッキー」パンフレット

ROCKY2 1979.jpg「ロッキー2」●原題:ROCKYⅡ●制作年:1979年●制作国:アメリカ●監督:シルヴェスター・スタローン●製作:アーウィン・ウィンクラー/ロバート・チャートフ●脚本:シルヴェスター・スタローン●撮影:ビル・バトラー●音楽:ビル・コンティ●時間:119分●出演:シルヴェスター・スタローン/タリア・シャイア/バート・ヤング/カール・ウェザース/バージェス・メレディス●日本公開:1979/09●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:池袋・文芸坐(81-01-22)(評価:★★)●併映:「ロッキー」(シルヴェスター・スタローン)

ロッキー3 02.jpg「ロッキー3」●原題:ROCKYⅢ●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:シルヴェスター・スタローン●製作:アーウィン・ウィンクラー/ロバート・チャートフ●脚本:シルヴェスター・スタローン●撮影:ビル・バトラー●音楽:ビル・コンティ●時間:99分●出演:シルヴェスター・スタローン/タリア・シャイア/バート・ヤング/カール・ウェザース/ミスター・T/ハルク・ホーガン/バージェス・メレディス/トニー・バートン/イアン・フリード/ウォーリー・テイラー/ジム・ヒル/ドン・シャーマン●日本公開:1982/07●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:有楽町・丸の内松竹(82-10-22)(評価:★★)
marunouti syotiku.jpg旧丸の内松竹1.jpg旧丸の内松竹2.jpg丸の内松竹(初代).jpg旧・丸の内松竹 前身は1925年オープンの「邦楽座」(後の「丸の内松竹」)。1957年7月、旧朝日新聞社裏手に「丸の内ピカデリー」オープン(地下に「丸の内松竹」再オープン)。1984年10月2日閉館。1987年10月3日 有楽町マリオン新館5階に後継館として新生「丸の内松竹」(現:丸の内ピカデリー3)がオープン。


「ロッキー4 炎の友情」●原題:ROCKY1977年8月6日 新宿京王 京王地下.jpg京王新宿ビル3.jpg京王三丁目ビル - 2.jpgⅣ●制作年:1985年●制作国:アメリカ●監督:シルヴェスター・スタローン●製作:アーウィン・ウィンクラー/ロバート・チャートフ●脚本:シルヴェスター・スタローン●撮影:ビル・バトラー●音楽:ビル・コンティ●時間:91分●出演:シルヴェスター・スタローン/タリア・シャイア/バート・ヤング/カール・ウェザース/ドルフ・ラングレン/ブリジット・ニールセン/ジェームス・ブラウン●日本公開:1986/06●配給:メトロ・ゴールドウィン・メイヤー/UA=UIP●最初に観た場所:新宿・京王2(86-06-07)(評価:★★★) 新宿京王・京王地下(京王2)新宿3丁目伊勢丹はす向い京王新宿ビル(現・京王三丁目ビルの場所)。1980年代後半に閉館。

レッド・スコルピオン bl.jpgレッド・スコルピオン  映画前売半券.jpg「レッド・スコルピオン」●原題:RED SCORPION●制作年:1989年●制作国:アメリカ●監督:ジョセフ・ジトー●製作:ジャック・エイブラモフ●脚本:アーン・オルセン●撮影:ホアオ・フェルナンデス●音楽:ジェイ・チャタウェイ●時間:106分●出演:ドルフ・ラングレン/M・エメット・ウォルシュ、アル・ホワイト/T・P・マッケンナ/カーメン・アルジェンツィアノ/ブライオン・ジェームズ/ジョセフ・ビッグウッド/ジェイ・チャタウエイ●日本公開:1989/01●配給:日本ヘラルド●最初に観た場所:三軒茶屋映劇(89-07-01)(評価:★★)●併映:「ダイ・ハード」(ジョン・マクティアナン)レッド・スコルピオン HDマスター版(Blu-ray Disc)
三軒茶屋映劇 2.jpg三軒茶屋シネマ/中央劇場.jpg三軒茶屋付近.png三軒茶屋映画劇場 1925年オープン(国道246号沿い現サンタワービル辺り)。1992(平成4)年3月13日閉館(左写真)。菅野 正 写真展 「平成ラストショー hp」より 同系列の三軒茶屋中央劇場(右写真中央)は1952年、世田谷通りの裏通り「なかみち街」にオープン。(「三軒茶屋中央劇場」も2013年2月14日閉館)  ①三軒茶屋東映(→三軒茶屋シネマ) ②三軒茶屋映劇(映画劇場)(現サンタワービル辺り) ③三軒茶屋中劇(中央劇場)

ユニバーサル・ソルジャー dvd 1992.jpgユニバーサル・ソルジャー1992 1.jpg「ユニバーサル・ソルジャー」●原題:UNIVERSAL SOLDIER●制作年:1992年●制作国:アメリカ●監督:ローランド・エメリッヒ●製作:アレン・シャピロ/クレイグ・ボームガーテン/ジョエル・B・マイケルズ●脚本:リチャード・ロススタイン/クリストファー・レイッチ/ディーン・デヴリン●撮影:カール・W・リンデンローブ●音楽:クリストファー・フランケ●時間:102分●出演:ジャン=クロード・ヴァン・ダム/ドルフ・ラングレン/アリー・ウォーカー/ジョセフ・マローン/エド・オロス/ジーン・デイヴィス/レオン・リッピー/ランス・ハワード/リリアン・ショウバン/チコ・ウェルズ/ジェリー・オーバック●日本公開:1992/11●配給:東宝東和(評価:★★★)
ユニバーサル・ソルジャー [DVD]

ステイン・アライブ dvd.jpgSTAYING ALIVE.jpg「ステイン・アライブ」●原題:STAYING ALIVE●制作年:1983年●制作国:アメリカ●監督:シルヴェスター・スタローン●製作:シルヴェスター・スタローン/ロバート・スティグウッド●脚本:シルヴェスター・スタローン/ノーマン・ウェクスラー●撮影:ニック・マクリーン●音楽:ビージーズ/フランク・スタローン●時間:96分●出演:ジョン・トラボルタ/シンシア・ローズ/フィノラ・ヒューズ/スティーヴ・新宿ジョイシネマ .jpgインウッド/ジュリー・ボヴァッソ/チャールズ・ウォード●日本公開:1983/12●配給:パラマウント映画=CIC●最初に観た場所:新宿ジョイシネマ(84-04-07)(評価:★★★)
新宿ジョイシネマ さよならフェスティバル.jpg新宿ジョイシネマ.jpg新宿ジョイシネマ 1947年12月「新宿地球座」としてオープン。1958(昭和33)年12月「地球会館」新築・落成、「新宿座」オープン。1984年1月「新宿ジョイシネマ」と改称。1995年7月~「新宿ジョイシネマ1」。(新宿ジョイシネマ2 1958年12月「新宿地球座」→1983年~「歌舞伎町松竹」→1995年7月~「新宿ジョイシネマ2」) 2009年5月31日(新宿ジョイシネマ1・2(地球会館)・3(中台ビル))閉館。[中写真:新宿劇場(1970年閉館)]

ランボー 82.jpgランボー1982.jpg「ランボー」●原題:FIRST BLOOD●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:テッド・コッチェフ●製作:バズ・フェイシャンズ●脚本:マイケル・コゾル/ウィリアム・サックハイム/シルヴェスター・スタローン●撮影:アンドリュー・ラズロ●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●原作:ディヴィッド・マレル「一人だけの軍隊」●時間:97分●出演:シルヴェスター・スタローン/リチャード・クレンナ/ブライアン・デネヒー/デビッド・カルーソ/ジャック・スターレット/マイケル・タルボット/デビッド・クロウレイ●日本公開:1982/10●配給:東宝東和●最初に観た場所:新宿ローヤル(84-09-24)(評価:★★★)一人だけの軍隊 ランボー (ハヤカワ文庫)
新宿ローヤル 地図.jpg新宿ローヤル.jpg新宿ローヤル劇場 88年11月閉館 .jpg
新宿ローヤル劇場(丸井新宿店裏手) 1988年11月28日閉館[カラー写真:「フォト蔵」より/モノクロ写真:高野進 『想い出の映画館』('04年/冬青社)より]

rambo 3 1988 movie.jpgランボー3/怒りのアフガン チラシ.jpg「ランボー3/怒りのアフガン」●原題:RAMBO 3●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:ピーター・マクドナルド●製作:バズ・フェイシャンズ●脚本:シルヴェスター・スタローン/シェルドン・レティック●撮影:ジョン・スタニアー●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●原作:ディヴィッド・マレル●時間:97分●出演:シルヴェスター・スタローン/リチャード・クレンナ/カートウッド・スミス●日本公開:1988/06●配給:東宝東和●最初に観た場所:歌舞伎町・新宿プラザ(88-07-10)(評価:★★)
新宿プラザ 閉館上映チラシ.jpg新宿プラザ劇場200611.jpg新宿プラザ劇場内.jpg 新宿プラザ劇場 1969年10月31日オープン、コマ劇場隣り (1,044席) 2008(平成20)年11月7日閉館

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冬の寒い日は、自宅でサーフィン映画を...か。意外と乙かも。

ビッグ・ウェンズデー dvd.jpg BIG WENSDAY 1978.jpg カリフォルニア・ドリーミング dvd.jpg 
ビッグ ウェンズデー [DVD]」/「Big Wednesday」(CD, Soundtrack, Import)/「魅惑の女優シリーズ カリフォルニア・ドリーミング [DVD]」/AMERICA - California Dreaming - Music From The Motion Picture Soundtrack

ビッグ・ウェンズデー 1.jpg 60年代初め、カリフォルニアの海辺の町で、マット(ジャン=マイケル・ヴィンセント)、ジャック(ウィリアム・カット)、リロイ(ゲイリー・ビジー)を中心とする若者たちで作るサーフィン・グループは、水曜日にやって来るという世界最大の波"ビッグ・ウェンズデー"に挑戦することを夢見ていた。そんな頃、彼らにもベトナム戦争の徴兵令状がきた。グループの大半が懲兵を免れようとしている中で、優等生だったジャックは懲兵検査を受けて、ベトナムへと出征していった―。

Big Wednesday (1978 Warner Bros).jpg サーファーの一部には、夏の天気がいい日は海辺でサーフィンに勤しみ、冬の寒い日や海が時化たりした日などには、自宅でサーフィン映画を観たりする習慣があるそうな(サーファーでなくとも、意外と乙かも)。「ビッグ・ウェンズデー」('78年/米)は、そうした際の定番映画らしく、ジョン・ミリアス監督が35歳の頃に「自分たちの青春時代を思い出して作った」そうですが、青春の悩み、暴走、反発、落胆、挫折、恋などを盛り込んだ青春映画であるとともに、ベトナム戦争への若者の複雑な思いも反映されています。

ビッグ・ウェンズデー 2.jpg ジョージ・ルーカス監督の「アメリカン・グラフィティ」('73年)では、ラストシーン(エピローグ)で、青春時代の仲間たちの一人がベトナムで戦死(行方不明)したことを伝えていましたが、この映画では、ベトナムへ行った仲間の戦死を悼む場面はあるものの、ジャックは生きて戻ってきます。そのジャックを2人が迎えるシーン、更に3人で颯爽と"ビッグ・ウェンズデー"へ向かうシーンがいいです。「生きていて良かった」という実感があり、アメリカ中心的と言えばそう言えなくもないですが、そうした見方に対しては、アメリカ側からすれば「戦争をやっていない国の人間が何を言うか」という感じになるのかも(因みに、ジョン・ミリアスはアーノルド・シュワルツェネッガー主演の「コナン・ザ・グレート」('82年)の監督でもあり、共和党支持者であると共に反共主義者としても知られている)。

ジャン=マイケル・ヴィンセント.jpgジャン=マイケル・ヴィンセント big wednesday.jpg この映画を観て、ジャン=ウィリアム・カット2.jpgマイケル・ヴィンセント(Jan-Michael Vincent)は、結構スター性があるように思ったけれど、意外と伸びなかったなあ(「アメリカン・グラフィティ」のポール・ル・マットなどもそうだったが)。ジャン=マイケル・ヴィンセントは菜食主義者だそうで、自分の私生活を大切にするタイプだったのかと思ったら、アルコール依存症とドラッグの問題で映画界から消えていきました(ゲイリー・ビジーの方がまだ、アクション映画に悪役としてよく出演している)。

ウイリアムカット.jpgウィリアム・カット ビッグ・ウェンズデイ4.jpg 徴兵に応じたジャックを演じたウィリアム・カット(William Katt)は、80年代に入って「新・弁護士ペリー・メイスン」で腕利き調査員ポール・ドレイク・ジュニア役でその姿を見られたのが嬉しかったです。この役どころは約30年前の旧シリーズ(日本ではフジテレビが1959年3月の開局時に放映)での調査員の息子役。当時の調査員ポール・ドレイク役のウィリアム・ホッパーが既に亡くなっていたためで、一方、レイモンド・バーと秘書デラ役のバーバラ・ヘイルは30年ぶりのシリーズ共演でした。


カリフォルニア・ドリーミング_2.jpgカリフォルニア・ドリーミング 映画パンフ.jpg ハイスクールを卒業し、大学入学までの夏期休暇を憧れのカリフォルニアで過ごすためシカゴからやってきたTT(デニス・クリストファー)は、初老のデューク(シーモア・カッセル)の家に泊まることになる。そこの娘コーキー(グリニス・オコナー)は最初はTTのことを田舎者として疎んじていたが―。
『カリフォルニア・ドリーミング』映画パンフレット
 「カリフォルニア・ドリーミング」('79年/米)は、サーフィン映画とまで言えるかどうか分かりませんが、「ビッグ・ウェンズデー」と同じ頃の青春映画で、シカゴから憧れの地カリフォルニアにやってきた少年が体験するビーチ・ライフを描いた作品でした。

 結局、"ひと夏の体験"物語という感じで、デュークが昔サーフィンの世界チャンピオンだったのは、実は法螺話では無かったというサイドストーリーがありますが、そもそも主人公は女の子をゲットしたくてカリフォルニアに来ただけだったのか、そこのところがよく分からない。様々な男女の恋愛模様を見せつつも、やや薄っぺらい印象も

カリフォルニア・ドリーミング 1.jpg ママス&パパスのデビュー・シングルにして最大のヒット曲となった「夢のカリフォルニア」(映画内ではアメリカがカバー)が耳に心地よいですが、このオールディーズ・ナンバーだけが強く耳に残ったかな。あとはグリニス・オコナー(Glynnis O'Connor/右)の当時の豊胸か(最近では「LAW & ORDER ロー&オーダー」に出ている)。後に「チャーリーズ・エンジェル」のレギュラーメンバーとなり、ボンド・ガールにもなるタニア・ロバーツ カリフォルニア・ドリーミング.jpgタニア・ロバーツ(Tanya Roberts/左)も出ていました(「007 美しき獲物たち」('85年/英)に出る前に、「ミラクルマスター 七つの大冒険」('82年/米)や「シーナ」('84年/米)にも出ていた)。この「カリフォルニア・ドリーミング」は、個人的評価は別にして、それなりに固定ファンがいるはずなのに、永らくDVD化されず今年['13年]になってやっとリリースされたのは、カバー曲の著作権関係が複雑なためなのでしょうか?(VHS及びこれまでのCS放映版では、「CALIFORNIA DREAMIN」の歌が無くて別のインストルメンタルの曲になっている)、それともB級青春映画として近年になって再評価されたためなのか?
グリニス・オコンナー/デニス・クリストファー
CALIFORNIA DREAMING2.jpgCALIFORNIA DREAMING1.jpg 「カリフォルニア・ドリーミング」の主人公の、見ている方が気恥ずかしくなるような青臭さと対比すると、「ビッグ・ウェンズデー」の男同士の強固な友情からは(精神的な)ホモセクシュアルの雰囲気すら感じられるというのは穿った見方でしょうか。

ビッグ・ウェンズデー  ps.jpgBig Wednesday (1978).jpgBIG WEDNESDAY .jpg「ビッグ・ウェンズデー」●原題:BIG WENSDAY●制作年:1978年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ミリアス●製作:バズ・フェイトシャンズ/アレクサンドラ・ローズ●脚本:ジョン・ミリアス/デニス・アーバーグ●撮影:ブルース・サーティース●音楽:ベイBIG WEDNESDAY.jpgジル・ポールドゥリス●時間:119分●出演:ジャン=マイケル・ヴィンセント/ウィリアム・カットBIG WEDNESDAY   .jpg/ゲイリー・ビジー/リー・パーセル/サム・メルヴィル/パティ・ダーバンヴィル/ダレル・フェティ/ジェフ・パークス/レブ・ブラウン/デニス・アーバーグ/リック・ダノ/バーバラ・ヘイル/ジョー・スピネル/ロバート・イングランド●日本公開:1979/04●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場所:テアトル吉祥寺(82-03-13)(評価:★★★☆)●併映:「カッコーの巣の上で」(ミロシュ・フォアマン)
吉祥寺パーキングプラザ.jpg           
吉祥寺ピカデリー.jpgテアトル吉祥寺.jpgテアトル吉祥寺 (1999年〜吉祥寺ピカデリー) 1979年、吉祥寺パーキングプラザ(右写真・現)地下1階にオープン。2000(平成12)年5月22日閉館
        

PERRY MASON katt.jpgペリー・メイスン ウィリアム・カット.jpgペリー・メイスン.jpg「新・弁護士ペリー・メイスン」(原作:E・S・ガードナー)PERRY MASON (CBS 1985~1988) ○日本での放映チャネル:NHK‐BS2

出演:レイモンド・バー/バーバラ・ヘイル/ウィリアム・カット


CALIFORNIA  DREAMING 1979.jpg「カリフォルニア・ドリーミング」●原題:CALIFORNIA DREAMING●制作年:1979年●制作国:●アメリカ●監督:ジョン・ハンコック●製作:クリス・ウィテカリフォルニア・ドリーミング グリニス・オコナー.jpgィカー●脚本:ネッド・ウィン●撮影:ボビー・バーン●音楽:フレッド・カーリン(主題歌「カリフォルニア・ドリーミング」(アメリカ) )●時間:93分●出演:デニス・クリストファーグリニス・オコナー/シーモア・カッセル/ドロシー・トリスタンカリフォルニア・ドリーミング タニア・ロバーツ.jpg/ネッド・ウィーン/ジョン・カルビン/タニア・ロバーツTanya Roberts.jpgジョン・カルヴィン/トッド・サスマン/アリス・プレイトン/ネッド・ウィン/ジェームズ・ヴァン・パタン/ヴィヴィアン・ボネル/ジェームズ・ステイリー/ ボニー・バートレット●日本公開:1979/06●配給:松竹=富士映画●最初に観た場所:高田馬場カリフォルニア・ドリーミング タニア・ロバーツ1.jpgパール座(83-02-27)(評価:★★☆)●併映:「さらば青春の光」(フランク・ロダム)タニア・ロバーツ2.jpgタニア・ロバーツ27.jpg
タニア・ロバーツ

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優れたカメラ効果を生んでいるシーンが多くあり、特にロケシーンは貴重な映像の連続。

天国と地獄 vhs.jpg 2天国と地獄 dvd .jpg 天国と地獄 dvd.jpg
天国と地獄 [VHS]」「天国と地獄 [監督:黒澤明][三船敏郎] [レンタル落ち]」「天国と地獄<普及版> [DVD]

天国と地獄 ポスター.jpg天国と地獄 チラシ.jpgTengoku to jigoku(1963).jpg 製靴会社の専務・権藤(三船敏郎)の息子(江木俊夫)と間違えられて、運転手・青木(佐田豊)の息子が誘拐された。要求された身代金は三千万円。苦悩の末、権藤は運転手のために全財産を投げ出して三千万円を犯人に受け渡すことを決意し、無事子供を救出する。非凡な知能犯の真の目的は―。
Tengoku to jigoku(1963)
天国と地獄  01.jpg
ポスター(左)/チラシ(上)
(下)中村伸郎/伊藤雄之助/田崎潤/三船敏郎
天国と地獄 中村伸郎 .jpg 今観てもつくづく凄い映画だと思います。前半部分の権藤邸での息詰まる舞台演劇のような緊張感と(製靴会社買収攻防の持株数の話はエド・マクべインの原作に基づいている)、後半の犯人と警察及び権藤との攻防のダイナミックな展開の対比がいいです。主演の三船敏郎もいいけれど、戸倉警部役の日本版FBIのような仲代達矢もいい。この映画の仲代達矢は、前半部分では観客の視線を代弁しているような面もあり、演出構成の巧さというのもあるかと思いますが、「用心棒」('61年)での役柄よりも個人的には好みです。そして、犯人・竹内銀次郎を演じる当時は新人であった山崎努もいいです。

天国と地獄12.jpg 更に脇役陣として、戸倉警部の上司に志村喬と藤田進、刑事に木村功や加藤武、名古屋章、土屋嘉男がいて、新聞記者には千秋実、三井浩次、北村和夫がいて、権藤の社内の敵に伊藤雄之助、田崎潤、中村伸郎、工場の靴職人に東野英次郎、ゴミ焼却炉の作業員に藤原釜足、麻薬街には菅井きんといった具合に、細かい処でベテランが出ていて、しかもその内のかなりを黒澤組の常連が固めていたことが窺えます。

天国と地獄  11.jpgこだま 151系電車.jpg 「特急こだま号」の車内での撮影は、実際と同じ12両編成の特急こだま号が借り切られ、他の列車の運行の妨げにならないよう特別ダイヤで運行させていますが、限られた時間内で(当時は東京―大阪間6時間ぐらい。新幹線だったらもっとキツかっただろなあ)、しかも車中だけでなく、酒匂川での身代金の受け渡しシーンなど殆ど撮り直しがきかない条件の中、よく撮ったものだなあと。役者や撮影スタッフの緊張感がそのまま画面に表れていて、それが、緊迫した臨場感を生んでいるように思います。

天国と地獄 煙突.jpg 煙突から赤い煙が上がるシーンなども衝撃的でした。モノクロ画面に合成着色するというこの手法は、「椿三十郎」('62年)で椿の花だけカラーで映すというアイデアが実行出来なかったのをこの作品で実現したものだそうで、「踊る大捜査線 THE MOVIE」('98年)でもオマージュとして引用されました。その他にも、カメラのアングルやカメラワークなどで優れた効果を生んでいるシーンが多くあり、この作品を改めて観ると、最近の邦画はもっと先人の知恵を活かして工夫した方がいいのではないかと思ったりもします。

天国と地獄  03.jpg 山崎努演じる犯人・竹内銀次郎が歩き回る横浜の街中や店の様子も、「生きる」(52年)で志村喬が伊藤雄之助に引っ張り回されて徘徊する歓楽街の様と同様にシズル感があり、雰囲気は出ていたように思います。一方で、昭和38年頃でまだこんなアヘン窟みたいな所があったの?と思わせなくもないですが、当時の週刊誌記事(下)によると、横浜に"ハマの麻薬地帯"と呼ばれる地域が実際にあったようです。

天国と地獄  01.jpg この映画、最初に観た時の個人的評価は5つ星が満点として星3つ半という、どういうわけかそう高くないものHigh and Low(Tengoku to Jigoku).jpgになっていて、おそらく、ラストの権藤と竹内の面会シーンが自分の中で解題出来なかったのが評価のマイナス要因だったのではないかと思いますが、今観ると、自分なりに分かる気がします。
 竹内は権藤の苦しんでいる様を確認したくて彼に面会を求めたけれど、権藤は持ち前の叩き上げ精神で既に新たな一歩を踏み出していたわけで、竹内もそこまでは権藤という人物を把握していなかったわけかと。権藤は、なぜ竹内が自分を憎むのかさえ理解できず、この面会は完全に竹内の空振りで終わっています(そのことが同時に竹内の精神的瓦解に繋がる)。
天国と地獄  04.jpg 黒澤明がこの作品を撮った動機の一つに、児童誘拐犯罪の刑罰の軽さに対する憤りもあったと言われていますが、黒澤監督はここでは竹内を(死刑に対する彼の怯えも含め)容赦なく無残極まりない「敗者」として描いており、ピカレスクロマンとは一線を画しているように思いました。

天国と地獄  13.jpg天国と地獄  14.jpg この映画は'63年3月1日の公開であり、今年('13年)オリンピックの東京での2度目の開催(2020年)が決まりましたが、前の東京オリンピック('64年)の前年の公開ということになります(新幹線は未だ開通していない)。そ~かあ、今年でこの作品が公開されてから丁度50年になるのかあと。今観ると、とりわけロケシーンは貴重な映像の連続のように思え、時間の経過と共に価値が増してくる作品かもしれません。半世紀と言う年月の経過に一つの節目というものを感じますが、公開50年目に当たるこの1年間、地上波ではどの局でも放映されなかったようです(現実に誘拐事件が発生していることとの関係(配慮)もあるのか)。

佐田豊.jpg 権藤邸の運転手・青木がここまで責任を感じて自ら犯人の犯行拠点を探ろうとするものかという印象も最初に観た時はありましたが、見直してみて、時代背景というよりは、権藤を裏切る会社幹部との対比での描かれ方だったように思いました。その運転手役の佐田豊は1911年生まれで、2010年時点で健在であることが確認されているとのことです。今(2013年12月)現在も存命中であれば102歳になっており、かつての東宝専属俳優の中でも最長老の人物ということになります。
     
「サンデー毎日」1962(昭和37)年
ハマの麻薬地帯.jpg

天国と地獄63.jpg天国と地獄107.jpg

天国と地獄  02.jpg天国と地獄  15.jpg「天国と地獄」●制作年:1963年●監督:黒澤明●制作:東宝/黒澤プロダクション●脚本:黒澤明/菊島隆三/久板栄二郎/小国英雄●撮影:斎藤孝雄/中井朝一●音楽:佐藤志村 喬 in 天国と地獄.jpg東野英治郎 in 天国と地獄.jpg勝●原作:エド・マクベイン「キングの身代金」●時間:143分●出演:三船敏郎/仲代達矢/山崎努/香川京子/佐田豊/三橋達也/木村功/志村喬/石山健二郎/伊藤雄之助/中村伸郎/田崎潤/名古屋章/藤田江木俊夫.jpg進/田口精一/千秋実/土屋嘉男/三井浩次/北村和夫/東野英次郎/藤原釜足/菅井きん/江木俊夫/島津池袋文芸地下 地図.jpg文芸坐.jpg雅彦/山茶花究/浜村純/西村晃/沢村いき雄●公開:1963/03●配給:東宝●最初に観た場所:池袋・文芸地下(80-07-03)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ(11-01-22)(評価:★★★★★)●併映(1回目):「三十六人の乗客」(杉江敏男) 
池袋・文芸地下 1997(平成9)年3月6日閉館。

《読書MEMO》
小林久三(推理作家,1935-2006)の推す推理・サスペンス映画ベスト10『大アンケートによる日本映画ベスト150』('89年/文春文庫ビジュアル版)
①天国と地獄('63年、黒澤明)
②飢餓海峡('64年、内田吐夢)
③砂の器('74年、野村芳太郎)
④新幹線大爆破('75年、佐藤純彌)
⑤黒い画集・あるサラリーマンの証言('60年、堀川弘道)
⑥張込み('57年、野村芳太郎)
⑦犬神家の一族('76年、市川昆)
⑧天城超え('83年、三村晴彦)
⑨黒の試走車('62年、増村保造)
⑩赤いハンカチ('64年、舛田利雄)

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有名MBA出身でありながら反商業主義を貫き、高い国際的評価を得ているのが興味深い。

タヒミック 悪夢の香り.jpg The Perfumed Nightmare 3.jpg  トゥルンバ祭り dvd.png  Kidlat Tahimik.jpg
"Perfumed Nightmare"(悪夢の香り,1977)    "Turumba"(トゥルンバ祭り,1983)  Kidlat Tahimik

The Perfumed Nightmare 橋.jpg 貧しいフィリピン青年の「僕」キドラット(キドラット・タヒミック)はジムニー(小型乗合バス)の運転手であるが、将来は宇宙飛行士を夢みている。僕のジプThe Perfumed Nightmare ジムニー.jpgニーがアメリカ人のビジネスマン(ハルムート・レルヒ、この作品の共同撮影カメラマン)の気に入り、ひとまずパリに赴くことになって、村をあげての大騒ぎの中、憧れの地へ発つが、日夜チューインガム自販機を詰め替える単純作業に追われ、夢は遠のく。巨大なスーパーの煙突の中に身を隠し、故郷を想う僕は、進歩という観念そのものに疑問を抱くようになる―。

キドラット・タヒミック2.jpg 1977年にフィリピンの映像作家キドラット・タヒミック監督(Kidlat Tahimik 、1942年生まれ)が発表した彼のデビュー作で、スペイン人が造った橋、アメリカの軍用車を改造したジプニー、月ロケットなどをモチーフに、フィリピン社会に染みついた植民地主義を、とぼけたユーモアや温かい詩情、ファンタジックで時にナンセンスな展開、ドキュメンタリー風の映像などを通して炙り出した作品です。

 '82年にヤクルトホールで行われた「国際交流基金映画祭~南アジアの名作をもとめて」(南アジア映画祭)にて上映され、監督本人も会場に来ていましたが、紹介されると突然一般観客席から立ち上がって挨拶するなど、実に剽軽な人でした(当時40歳くらいか。この作品を撮ったのはその5年前)。

 この作品は、'77年のベルリン国際映画祭国際映画批評家連盟賞を受賞し、'81年にはフランシス・フォード・コッポラの配給によってアメリカでも公開されていますが、日本では、その後'96年にシネマトリックスの配給で、「BOX東中野」にて、特集上映「キドラット・タヒミックの世界」の1作として上映されています(昨年(2012年)には、アテネフランセ文化センターの特集「アジア映画の森」でも上映)。

 監督自身はその後もインディペンデント映画作家としての立場を貫いており、最近日本でも若手のインディペンデント系映像作家が海外の映画祭で賞を獲るなどしていますが、彼は、アジアにおける先駆的な個人映画作家として、2012年に「福岡アジア文化賞」を受賞しています。

 同監督による第2作は「月でヨーヨー」(1979)という、これもファンタジー的要素のある作品(フィリピンはヨーヨー発祥の地らしい)、第3作「トゥルンバ祭り」(1983)で、トゥルンバ祭り 02.jpgフィリピンの田舎町で行われる熱狂的な大祭を背景とした物語を描いて国際映画賞を受賞しています(マンハイム・ハイデルベルグ国際映画祭映画「新興国のための審査員賞」)。'87年に第2回東京国際映画祭(アジア秀作映画週間部門)にて上映されたのを観ましたが、馬や犬のマスコトゥルンバ祭り 01.jpgットを家族で作って祭りで売っていた祖母と少年が、ある日ドイツのデパートの女性バイヤー(カタリーナ・ミューラー)がたまたま通りかかって、大量注文をしたために家族は大騒動となるという、ちょっと「悪夢の香り」と似た展開。但し、"日記映画作家"と呼ばれるだけあって、祭りの準備をする人々や本番の祭りの模様を記録映画風に描いていて、ドキュメンタリータッチがより色濃く出ています。また、単に反商業主義・反植民地主義というだけでなく、土着的、アジア文化的なものへの回帰指向もより鮮明になっています。この辺りは、「悪夢の香り」の主人公である「僕」が、最後に文明批判に目覚め、先住民の友達の教えを思い出して帰国するという結末からの流れを汲んでるともとれます。

キドラット・タヒミック4.jpg 今やその風貌や語り口から仙人のような趣を醸す同監督ですが(50代になってからマニラを離れ、山間部に移り住んでいる)、元々は富裕知識階層の出身で、ペンシルバニア大学ウォ―トンスクール(米国でもトップクラスとされるMBA)で経営学の修士号を取得し、パリで経済協力開発機構(OECD)の研究員をしていたという、かつては自他共に認めるバリバリのエコノミストでした。その彼が、帰国してから経済人への道をではなく、自主制作映画作家としての道を歩み(MBAの卒業証書を破り捨たというから相当の覚悟だったのか)、反商業主義を貫いて、国際的に高く評価される映像作家になったというのが興味深いです(相変わらず祭り好きの、剽軽なオッサンである点は変わらないみたいだけど)。

2012tahimik.jpgキドラット・タヒミック3.jpg福岡アジア文化賞受賞スピーチ(2012)
 
 
 
  
 
 

タヒミック氏とカタリーナ・ミューラー夫人(美術担当、「悪夢の香り」「トゥルンバ祭り」両作品に出演)
   

The Perfumed Nightmare2.jpg悪夢の香り 1シーン.jpg「悪夢の香り」●原題:KIDLAT WORLD MABABANGONG BANGUNGOT(Perfumed Nightmare)●制作年:1977年●制作国:フィリピン●監督・製作・脚本・撮影:キドラット・タヒミック●共同撮影:ハルトムート・レルヒ●音楽:エフゲニー・グレボフ●時間:95分●出演:キドラット・タヒミック/ジェジェット・ボードリィ/マン・フェリィ/ハルムート・レルヒ/カタリーナ・ミューラー/ドロレヤクルトホール.jpgス・サンタマリア●日本公開:1982/10(劇場公開:1996/11)●配給:国際交流基金(劇場公開:シネマトリックス)●最初に観た場所:新橋・ヤクルトホール(82-10-16)(評価:★★★★)●併映:「田舎の教師」(スラスィー・パータム)/「ミュージカル女優」(シャーム・ベネガル)/「ふたりは18歳」(トグゥ・カルヤ) Mababangong bangungot (1977)

ヤクルトホール 1972年、東新橋・ヤクルト本社ビル内にオープン

「トゥルンバ祭り」●原題:TURUMBA●制作年:1983年●制作国:フィリピン●監督・脚本:キドラット・タヒミック●撮影:ロベルト・イニゲス●音楽:マンディ・アファング●時間:87分●出演:ホーマー・アビアド/イニゴ・ヴィト/マリア・ペヒポシネセゾン渋谷.jpgル/パティ・アバリ/カタリーナ・ミューラー●日本公開:1987/09●配給:シシネセゾン渋谷 チケット.jpgネセゾン●最初に観た場所:シネセゾン渋谷(87-09-26)(評価:★★★☆) シネセゾン渋谷 1985年11月6日、渋谷道玄坂「ザ・プライム渋谷」6Fにオープン。2011年2月27日閉館。

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囚人チーム対看守チームのフットボール試合。男臭い映画を観たい人にお薦め。

The Longest Yard(1974).jpgBurt Reynolds THE LONGEST YARD.jpg ロンゲスト・ヤード.jpg 『ロンゲスト・ヤード』(1974).jpg
ロンゲスト・ヤード [DVD]
The Longest Yard(1974)
 元プロ・フットボール選手で今は女性のヒモ暮らしというポール・クルー(バート・レイノルズ)は、そんな生活から抜け出そうと彼女の高級車を奪って逃げ出し、警察とのカーチェイスの末にパトカーを壊して逮捕されて懲役3年の刑でテキサス州の刑務所に入る。刑務所のヘイズン所長(エディ・アルバート)はポールをフットボールの看守チームの強化に利用しようと考えるが、チームリーダーのクナウア看守長(エド・ローター)にはポールの存在が面白くない。所長は、囚人チームを作り、看守チームと八百長試合をやって看守チームに勝たさせようと計画、堂々と看守を殴れるとあって囚人チームには怪力のメンバーが集まるが、所長は試合の途中でポールに21点差で負けろと指ロンゲスト・ヤード58.jpg示、反抗すれば密告屋アンガー(チャールズ・タイナー)の便利屋(ジム・ハンプトン)殺人事件の共犯にして20年は刑務所を出られないようにすると脅す。前半互角だった囚人チームは、ポールの手抜きプレーで次第に負けていって21点差がつき、それ以降は看守チームが囚人チームへ暴力を振るわないというのがポールが所長と交わした約束だったのに、所長は看守長に逆の指示を出し、堂々と戦うつもりだったは看守長も、鼻白みながらも所長の指示には逆らえない。そんな中、囚人『ロンゲスト・ヤード』(1974)2.jpgチームのチームメイト、グランヴィル(ハリー・シーザー)が退場する際に吐いた「お前を信用したのが間違いだった」との捨てゼリフがポールを目覚めさせる―。

 ロバート・アルドリッチ監督の看守対囚人のフットボールの試合を描いた作品であり(主演のバート・レイノルズはフットボール選手出身)、観終わった後の印象も爽やか。個人的には、三鷹オスカーでバート・レイノルズ主演の3本立ての内の1本として観ましたが、この作品の役が一番ハマっていたように思います(併映は、ハル・ニーダム監督の「トランザム7000」('77年)とジョージ・G・アビルドセン監督の「デキシー・ダンスキングス」('74年))。

 公開当時、興業的にも成功し、2005年にはピーター・シーガル監督によりリメイクされ、ボブ・サップなどの元NFL選手やプロレスラーが囚人および看守役で多数出演しており(バート・レイノルズもコーチ役で出演)、"コメディ仕様"とのことですが、こちらは未見です。

Ed Lauter.jpg オリジナル版の魅力は、主演のバート・レイノルズの男臭さもさることながら、やはり脇役陣が充実していることでしょうか。刑務所長役のエディ・アルバート、看守長役のエド・ローターをはじめ、個性的な役者が勢揃いし(007の"ジョーズ"ことリチャード・キールなども出ている。選手探しをするところが「七人の侍」みたいで面白い)、最後に看守長がポールに対して男同士の友情のような気持ちを抱くようになるところまで含め、定番的なストーリーとの予測がつくにしても、やっぱりぐいぐい引き込まれて観てしまいます。

勝利への脱出 .jpg 似たような状況でのスポーツの試合を題材にした作品では、ジョン・ヒューストン監督、シルヴェスター・スタローン主演の「勝利への脱出」('81年/米)という、第二次世界大戦最中のドイツの捕虜収容所で、ドイツ軍の将校(マックス・フォン・シドー)の発案のもと、連合国軍捕虜たちとドイツ代表がサッカー試合をするという作品がありましたが、並行して脱走計画の話があり、最後、成功するというもの(実話に基づくものとのこと)。こうした作品に比べると、この「ロンゲスト・ヤード」の結末は、この後の囚人たちに待ち構えるもののことを思うとややほろ苦いものと言えるかも。
「勝利への脱出」('81年/米)

 所長を殴って30年服役しているオヤジ(ジョー・カップ)が、ポールの「所長を殴るだけのことはあったか? 30年でも」という問いに「後悔はしてないよ」と答え、二人が肩を組んで競技場を去る後ろ姿がストップ・モーションになってエンディング・ロール。う~ん、今こうして観ると、アメリカン・ニューシネマの香りもするなあ。「勝利への脱出」よりはこちらの方が個人的には好みであり、男臭い映画を観たい人にお薦めの作品です。
 
「ロンゲスト・ヤード」●原三鷹オスカー予定表.jpg題:THE MEAN MACHINE (THE LONGEST YARD)●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督:ロ三鷹オスカー  復活.jpg三鷹オスカー.jpgバート・アルドリッチ●製作:ロバートエヴァンスほか●撮影:ジョセフ・F・バイロック●音楽:フランク・デ・ヴォル●原案:アルバート・S・ラディ ●時間:121分●出演:バート・レイノルズ/エディ・アルバート/マイケル・コンラッド/リチャード・キール/エド・ローター/ジム・ハンプトン/ハリー・シーザー/ジョン・スティードマン/アルバート・S・ラディ/トレイシー・キーナン・ウィン/バーナデット・ピーターズ●日本公開:1975/05●配三鷹オスカー  (2).jpg三鷹オスカー ー.jpg給:パラマウント映画●最初に観た場所:三鷹オスカー (78-07-20) (評価:★★★★☆)●併映:「トランザム7000」(ハル・ニーダム)/「デキシー・ダンスキングス」(ジョージ・G・アビルドセン) 三鷹オスカー 1977年9月3日、それまであった東映系封切館「三鷹東映」が3本立名画座として再スタート。1978年5月に「三鷹オスカー」に改称。1990(平成2)年12月30日閉館。

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ストーリーが巧みでテンポも良いい。敢えて通俗、通俗だから面白いのでは。

太陽は動かない 吉田修一.jpg吉田修一氏.jpg エントラップメント01.jpg ラストエンペラー02.jpg
 吉田 修一 氏  「エントラップメント [DVD]」 「ラストエンペラー ディレクターズ・カット (初回生産限定版) [DVD]

太陽は動かない』(2012/04 幻冬舎)

『太陽は動かない』5.JPG 表向きはアジア各地のファッションやリゾート情報などを扱う小さなニュース通信社だが、裏では「産業スパイ」としての顔を持つAN(アジアネット)通信情報部の鷹野一彦は、油田開発利権にまつわる機密情報を入手し高値で売り飛ばすというミッションのもと、部下の田岡と共にアジア各国企業の新油田開発利権争いの渦中で起きた射殺事件の背後関係を探っていた。鷹野は、企業間の提携交渉の妨害を意図したウイグル反政府組織による天津スタジアム爆破計画情報を入手、その詳細を突き止めるため、闇社会に通じている雑技団天津スタジアム.jpg団長・張豪(ジャンハオ)の紹介で、首謀者シャマルに会うが交渉は決裂、更に、商売敵デイビッド・キムや謎の女AYAKOが暗躍し、中国国営エネルギー巨大企業CNOX(中国海洋石油)が不穏な動きを見せる中、田岡が何者かに誘拐されたため、張豪の部下である張雨(ジャンユウ)と共に、彼が拉致されていると思われる天津へと飛ぶ―。

天津スタジアム

 スパイ小説ですが、その舞台が「ポスト原発」と呼べる状況にある国際的なエネルギー市場であるところが現代風で、油田開発の利権争いの一方で、日本の無名の技術者が、従来のものとは比較にならない高性能の太陽光発電のパネルを開発した―というのが、何となく夢があっていいなあと。

 お膳立てが揃ってしまえば、後は、政治家、日本企業、中国多国籍企業、CIAなどの様々な組織の利害関係が複雑に絡み合ってのノンストップ・アクション風―ということで、ストーリー・テイリングも巧みだし、実際にテンポも良くて428ページ一気に読めました。

 作者は文芸作家としてデビューし、芥川賞も受賞していますが、『パレード』にはミステリの要素もあったし、『悪人』もエンタテイメント要素はあったように思います。

 この作品に対しては、『悪人』など比べると人物の描き方に深みが無いとの批評も多くありますが、"純粋エンタテイメント"として読めば、それでいいのではないかと思いました。『悪人』とは根本的にテーマもモチーフも異なる作品。敢えて通俗、通俗だから面白いのではないかと。

 日本が"スパイ天国"であるとは、随分と以前から言われていることですが、「スパイ小説」となると、劇画に出てくるような怪しげな外国人が大勢登場して何となく胡散臭いものになりがちという気もし、この作品についてもそのことが言えなくもないけれど、筆の運びの上手さで(さすが芥川賞作家?)、あまりそうしたことに疑念を挟まずにどんどん読めてしまいました。

 最後まで日本人中心であるというのもよく、産業スパイという設定は、日本人を主人公とするのに適しているのかも―と思ったりもしました。

「エントラップメント」1.gifエントラップメント03.jpg アクション風ということで、「ミッション:インポッシブル」 ('96年/米)など想起させられる映画が幾つかありましたが、金だけのために敵になったり味方になったりし、それが鷹野とAYAKOという男女間で展開するところは、個人的にはジョン・アミエル監督の「エントラップメント」('99年/米)を想起しました(この系統は「泥棒成金」('55年/米)や「華麗なる賭け」('68年/米)以来、連綿とあるが)。

「エントラップメント」3.gif AYAKOのイメージは、「エントラップメント」で主人公の美術泥棒役のショーン・コネリーと共演し、主人公と様々な駆け引きを繰り広げる保険会社調査員役のキャサリン・ゼタ=ジョーンズかな。ゼタ=ジョーンズの方がよりアクション系で、主人公の相方(弟子?)的立場になったりし、その間、ショーン・コネリーに若干惹かれ気味になったりするんだけど、ラストは...。

峰不二子.jpg キャサリン・ゼタ=ジョーンズはこの作品でゴールデン・ラズベリー賞の最低主演女優賞にノミネートされていますが(すごくいいと言うほどでもないが、そんなに悪くもなかったと思う)、この『太陽は動かない』も、仮に映画化されるとすると、鷹野やAYAKOを演じきれる役者はあまりいないように思います(巷ではAYAKOは「ルパン三世」の峰不二子が相応しいとの声を聞くが、いきなりアニメに行っちゃうのか)。

 「金だけのために」とか言いつつ、主要な登場人物たちがそれぞれに"貸し借り"に律義で(反政府組織の女性指導者までもが)、ラストのデイビッド・キムの登場などには友情めいたものさえ感じられるという、何だか綺麗に出来過ぎた話ですが、カタルシス効果はあったように思います("カタルシス効果"と言うより"読後感の爽やかさ"か)。

 それにしても、作者に関しては、芸域、広いなあという感じ。普段からエスピオナージをよく読み、その分野を読みつけている人から見れば突っ込みどころの多い作品かも知れないし、従来の作者の作品の世界に馴染んだ人から見れば、人物の描き方がステレオタイプだとかいった評価になるのかも知れないけれど、個人的には、とにかく面白く読めたため、そのことを素直に認めてのほぼ5つ星評価―ミステリ界でどういった評価になるのか気になります(「文芸作家は自分たちの領域に立ち入らんでくれ」と言うほど閉鎖的ではないとは思うが)。

 因みに、作者は映画「ラストエンペラー」('87年/イタリア・中国・イギリス)の大ファンということで、版元のサイトによれば本書執筆のため2011年5月に3泊4日という強行スケジュールで、北京→天津→内モンゴル自治区を行く取材旅行し(編集者同行)、北京では紫禁城を、この作品の前半の主要な舞台となる天津では溥儀が暮らしていた邸宅を訪問したそうですが、そうしたモチーフはこの作品には織り込まれてなかったなあ(純粋に溥儀の家を見たかったということか)。

ラストエンペラー01.jpg ベルナルド・ベルトリッチ(最近はベルトルッチと表記するみたい)監督の「ラストエンペラー」は、アカデミー賞の作品・監督・脚本・撮影・美術・作曲など9部門を獲得した作品で(ゴールデングローブ賞作品賞も)、紫禁城で世界初の完全ロケ撮影を行うなど前半のスペクタクルに比べ、ジョン・ローンが演じる庭師になった元・皇帝が、かつて自分が住んでいた城に入場料を払って入るラストが侘しかったです。

『ラストエンペラー』(1987).jpg 2時間43分という長尺でしたが、実はこれでも3時間39分の完全版を劇場公開用に短縮したものであり、そのため繋がりの良くないところもあって、個人的には星3つ半の評価でした(これ、有楽町マリオン別館内の「丸の内ルーブル」で観たけれど、たまたま天井の可動式シャンデリアの真下に座ったので、最初それが気になったのを憶えている)。その後、今世紀に入って完全版のDVDが発売されていますが未見。

 同監督作品では、「1900年」('76年)の方が質的に上のように感じましたが、こちらは、5時間16分の完全版を観ることが出来たというのも影響しているかもしれません(普段3本立の「三鷹オスカー」で1本のみ上映)。

エントラップメント dvd.jpg「エントラップメント」2.gif「エントラップメント」●原題:ENTRAPMENT●制作年:1999年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・アミエル●製作:ショーン・コネリー/マイケル・ハーツバーグ/ロンダ・トーレフソン●脚本:ロン・バス/ウィリアム・ブロイルズ●撮影:フィル・メイヒュー●音楽:クリストファー・ヤング●原案:ロン・バス/マイケル・ハーツバーグ●時間:113分●出演:ショーン・コネリー/キャサリン・ゼタ=ジョーンズ/ヴィング・レイムス/ウィル・ パットン/モーリー・チェイキン/ケヴィン・マクナリー/テリー・オニール/マッドハヴ・ シャーマ/デヴィッド・イップ/ティム・ポッター/エリック・メイヤーズ/アーロン・スウォーツ●日本公開:1999/08●配給:20世紀フォックス(評価★★★)
The Last Emperor(1987)
The Last Emperor(1987).jpgラストエンペラーdvd.png「ラストエンペラー」●原題:THE LAST EMPEROR●制作年:1987年●制作国:イタリア・中国・イギリス●監督:ベルナルド・ベルトリッチ●製作:ジェレミー・トーマス●脚本:ベルナルド・ベルトルッチ/マーク・ペプロー●撮影:ヴィットリオ・ストラーロ●音楽:坂本龍一●時間:163分(劇場公開版)/219分(オリジナル全長版)●出演:ジョン・ローン/ジョアン・チェン/ピーター・オトゥール/坂本龍一/ケイリー=ヒロユキ・タガワ/デイヴィッド・バーン/コン・スー/ヴィヴィアン・ウー/ヴィクター・ウォン/デニス・ダン/イェード・ゴー/マギー・ハン/リック・ヤング/ウー・ジュンメイ/英若誠/リサ・ルー/ファン・グァン/立花ハジメ/坂本龍一/高松英郎/池田史比古/陳凱歌(カメオ出演)●日本公開:1988/01●配給:松竹富士●最初に観た場所:丸の内ルーブル (88-04-23)(評価:★★★☆)
丸の内ルーブル.jpg丸の内ルーブル シャンデリア.jpg丸の内ピカデリー3の看板.jpg 丸の内ルーブル 1987年10月3日「有楽町サロンパスルーブル.jpgマリオン」新館7階に5階「丸の内松竹」とともにオープン(2005年12月~2008年11月「サロンパス ルーブル丸の内」) 2014年8月3日閉館(「丸の内松竹」は1996年6月12日~「丸の内ブラゼール」、2008年12月1日~「丸の内ピカデリー3」) 

丸の内ピカデリー3.jpg 丸の内ルーブル 閉館最終日の巨大シャンデリアの点灯

【2014年文庫化[幻冬舎文庫]】

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ディズニー・アニメ中心で、作品の選抜基準がかなり恣意的。内容の割には値段が高すぎる。

世界アニメーション歴史事典.jpg(26.2 x 23.8 x 3.8 cm) ダンボ.JPG 
世界アニメーション歴史事典』 (2012/09 ゆまに書房)

 100年にわたるアニメーションの歴史を、図版と解説とで紹介したアニメの歴史事典で、アニメ映画だけでなく、テレビ番組、ゲーム、インディペンデント系映画、インターネットのアニメにいたるまでフォローした、定価8,500円の豪華本です(重い!)

 年代順に整理されていて分かりやすく、何よりも図版の配置が贅沢。その分、400頁余というページ数の割には、取り上げられている作品数に制約があり、観て楽しむ分にはいいですが、「事典」としてはどうかなという思いも。

ファンタジア.JPG 掲載されているアニメ数は700余点とのことですが、芸術アニメからディズニーの大ヒットアニメまでカバーしている分、それぞれの分野で抜け落ちを多いような気もして、作品の選抜にやや恣意性を感じました。

 日本のアニメは、「白蛇伝」('58年)が片面で小さく図版が入っているのみなのに対し、「AKIRA」('88年)が見開き両面に図版を入れての紹介、映画「ファイナルファンタジー」が片面図版入りなのに対し、「鉄腕アトム」('63年)や「千と千尋の神隠し」('01年)が、まるで邦訳版のために後から加えたかのように、図版無しの簡単な文章のみの紹介となっています(これらも、"700余点"にカウントされているのか)。

ネオ・ファンタジア.JPG 「ファンタジア」('41年、日本公開'55年)の見開き4ページにわたる紹介を筆頭に(これ、確かに名作ではある。本書にも紹介されている「ネオ・ファンタジア」('76年/伊)の方が大人向きの芸術アニメで、「ファンタジア」がレオポルド・ストコフスキーならば「ネオ・ファンタジア」の方はヘルベルト・フォン・カラヤンで迫るが、「ネオ・ファンタジア」は「ファンタジア」より35年も後に作られた作品にしては残念ながらはアニメーション部分がイマイチ)、本書全体としてかなりディズニー偏重ではないかと思われ、イギリス映画である「イエロー・サブマリン」('68年/英)なども制作の経緯が結構詳しく記されているけれども、それらも含めアメリカにおいてメジャーであるかどうかという視座が色濃いとも言えます。

イエローサブマリン.JPG 個人的には「イエロー・サブマリンン」は、「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」('64年/英)、「ヘルプ!4人はアイドル」('65年/英)などとの併映で名画座で観ましたが、いつごろのことか記憶にありません。劇場(ロードショー)公開当初はそれほど話題にならなかったといいますが、今思えば、日本の70年代ポップカルチャーに与えた影響は大きかったかも。イラストレーターの伊坂芳太良なんて、影響を受けた一人では?(この人、1970年には亡くなっているが)。

 もちろんディズニー・アニメは歴史的にも先駆的であり、「白雪姫」('37年、日本公開'50年)はディズニーの最初の「長編カラー」アニメーションですが、1937年の作品だと思うとやはりスゴイなあと思うし、個人的には自分の子供時代の弁当箱の図柄だった「ダンボ」('41年、日本公開'54年)にも思い入れはあるし、「ファンタジア」のDVDなどは大型書店に行けば児童書のコナーで簡単に購入できるなど、今も世界的にもメジャーであることは間違いないのですが...。自分の子供時代に関して言えば、「ダンボ」は劇場で観たけれど、「ファンタジア」は観なかったなあ(リヴァイバルされる機会が少なかったのかも)。今観ても、「ファンタジア」はどこよなく"情操教育"っぽい雰囲気が無きにしもあらずで、個人的に懐かしい「ダンボ」の方がやや好みか。

FANTASIA 1941.jpgファンタジア dvd.jpg「ファンタジア」●原題:FANTASIA●制作年:1940年●制作国:アメリカ●監督:ベン・シャープスティーン●製作:ウォルト・ディズニー●脚本:ジョー・グラント/ディック・ヒューマー●音楽:チャイコフスキー/ムソルグスキー/ストラヴィンスキー/ベートーヴェン/ポンキェッリ/バッハ/デュカース/シューベルト(レオポルド・ストコフスキー指揮、フィラデルフィア管弦楽団演奏)●時間:オリジナル125分/1942年リバイバル版81分/1990年リリース版115分●出演:ディームス・テーラー/レオポルド・ストコフスキー●日本公開:1955/09●配給:RKO=大映(評価:★★★☆)ファンタジア [DVD]

ネオ・ファンタジア dvd.jpg「ネオ・ファンタジア」●原題:ALLEGRO NON TROPPO●制作年:1976年●制作国:イタリア●監督・製作:ブルーノ・ボツェット●脚本:ブルーノ・ボツェット/グイド・マヌリ/マウリツィオ・ニケッティ●アニメーション:アニメーション:ギゼップ・ラガナ/ウォルター・キャバゼッティ/ジョバンニ・フェラーリ/ジャンカルロ・セレダ/ジョルジョ・バレンティニ/グイド・マヌリ/パオロ・アルビコッコ/ジョルジョ・フォーランニ●実写撮影:マリオ・マシーニ●音楽:ドビュッシー/ドヴォルザーク/ラヴェル/シベリウス/ヴィヴァルディ/ストラヴィンスキー(ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、フィラデルフィアベルリン・フィルハーモニー管弦楽団)●時間:85分●出演:マウリツィオ・ニケッティ/ネストール・ガレイ/マウリツィオ・ミケーリ/マリア・ルイーザ・ジョヴァンニーニ●日本公開:1980/01●配給:アート・フォーラム●最初に観た場所:池袋文芸坐(82-03-21)(評価:★★★)●併映:「天井桟敷の人々」(マルセル・カルネ)ネオ・ファンタジア [DVD]

白雪姫 dvd.jpg「白雪姫」●原題:SNOW WHITE AND THE SEVEN DWARFS●制作年:1937年●制作国:アメリカ●監督:デイヴィッド・ハンド●製作:ウォルト・ディズニー●脚本:テッド・シアーズ/オットー・イングランダー/ アール・ハード/ドロシー・アン・ブランク/ リチャード・クリードン/メリル・デ・マリス/ディック・リカード/ウェッブ・スミス●撮影:ボブ・ブロートン●音楽:フランク・チャーチル/レイ・ハーライン/ポール・J・スミス●原作:グリム兄弟●時間:83分●声の出演:アドリアナ・カセロッティハリー・ストックウェル/ルシール・ラ・バーン/ロイ・アトウェル/ピント・コルヴィグ/ビリー・ギルバート/スコッティ・マットロー/オーティス・ハーラン/エディ・コリンズ●日本公開:1950/09●配給:RKO(評価:★★★★)白雪姫 スペシャル・エディション [DVD]

ダンボ dvd.jpgダンボ 1941.jpg「ダンボ」●原題:DUMBO●制作年:1941年●制作国:アメリカ●監督:ベン・シャープスティーン●製作:ウォルト・ディズニー●脚本:ジョー・グラント/ディック・ヒューマー/ビル・ピート/オーリー・バタグリア/ジョー・リナルディ/ジョージ・スターリング/ウェッブ・スミス/オットー・イングランダー●音楽:オリバー・ウォレス/フランク・チャーチル●撮影:ボブ・ブロートン●原作:ヘレン・アバーソン/ハロルド・パール●時間:64分●声の出演:エド・ブロフィ/ハーマン・ビング●日本公開:1954/03●配給:RKO=大映(評価:★★★★)ダンボ スペシャル・エディション [DVD]

イエロー・サブマリン dvd.jpgイエロー・サブマリン.jpg「イエロー・サブマリン」●原題:YELLOW SUBMARINE●制作年:1968年●制作国:イギリス●監督:ジョージ・ダニング/ジャック・ストークス●製作:アル・ブロダックス●撮影:ジョン・ウィリアムズ●編集:ブライアン・J・ビショップ●時間:90分●出演:(アニメ画像として)ザ・ビートルズ(ジョン・レノン/ポール・マッカートニー/ジョージ・ハリスン/リンゴ・スター)●日本公開:1969/07●配給:ユナイテッド・アーティスツ(評価:★★★☆)
イエロー・サブマリン [DVD]


ロジャー・ラビット.JPG ロバート・ゼメキス監督の「ロジャー・ラビット」('88年)のような「実写+アニメーション合成作品」も取り上げられていますが、確かにアカデミー視覚効果賞などを受賞していて、合成技術はなかなかののものと当時は思われたものの、合成を見せるためだけの映画になっている印象もあり、キャラクターが飛び跳ねてばかりいて観ていて落ち着かない...まあ、アメリカのトゥーン(アニメーションキャラクター)の典型的な動きなのだろうけれど、これもまたディズニー作品。但し、この作品以降、「リジー・マグワイア・ムービー」('03年)まで15年間、ディズニーは実写+アニメーション合成作品を作らなかったことになります(最も最近の実写+アニメーション合成作は「魔法にかけられて」('07年))。まあ、実写とアニメの合成は、作品全体のごく一部分としてならば、ジーン・ケリーがアニメ合成でトム&ジェリーと踊る「錨を上げて」('45年/米)の頃からあるわけだけれど。

ロジャー・ラビット dvd.jpg「ロジャー・ラビット」●原題:WHO FRAMED ROGER RABBIT●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・ゼメキス●アニメーション監督:リチャード・ウィリアムス●製作:フランク・マーシャル/ロバート・ワッツ●脚本:ジェフリー・プライス/ピーター・シーマン●撮影:ディーン・カンディ●音楽:アラン・シルヴェストリ●原作:ゲイリー・K・ウルフ●時間:113分●出演:デボブ・ホスキンス/クリストファー・ロイド/ジョアンナ・キャシディ/スタッビー・ケイ/アラン・ティルバーン/リチャード・ルパーメンティア●日本公開:1988/12●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場所:渋谷スカラ座(88-12-04)(評価:★★)ロジャー・ラビット [DVD]

錨を上げて アニメ.jpg錨を上げて.jpg「錨を上げて」●原題:ANCHORS AWEIGH●制作年:1945年●制作国:アメリカ●監督:ジョージ・シドニー●製作:ジョー・パスターナク●脚本:イソベル・レナート●撮影:ロバート・プランク/チャールズ・P・ボイル●音楽監督:ジョージー・ストール●原作:ナタリー・マーシン●時間:140分●出演:フランク・シナトラ/キャスリン・グレイソン/ジーン・ケリー/ホセ・イタービ /ディーン・ストックウェル●日本公開:1953/07●配給:MGM日本支社●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

 冒頭の地域別アニメ史の要約は「北米」「西欧」「ロシア・東欧」「アジア」という区分になっていますが、本文中ではアメリカがやはり圧倒的に多いです(著者のスティーヴン・キャヴァリアは、アニメ制作キャリア20年の英国人で、ディズニーの監督もしたことがあるとのことだが、何という作品を監督したのかよく分からない)。

雪の女王.jpg 芸術アニメに関して言えば、アレクサンドル・ペドロフの「老人と海」('99年/露・カナダ・日)は紹介されていますが、山村浩二監督の「頭山」('02年)は無く(加藤久仁生監督の「つみきのいえ」('08年)はある)、伝統的に芸術アニメの先進国であるチェコの作品などは、カレル・ゼーマンの「悪魔の発明」('58年)は入っていますが「水玉の幻想」('48年)などは入っておらず、ロシアの作品は、雪の女王 dvd.jpg「イワンと仔馬」('47年)は図版無しの文章のみの紹介で、「雪の女王」('57年)に至っては「イワンと仔馬」の解説文の中でその名が出てくるのみ、同じく、ユーリ・ノルシュテインの「霧の中のハリネズミ(霧につつまれたハリネズミ)」('75年)も、日本でも絵本にまでなっているくらい有名な作品ですが、「話の話」('79年)の解説文の中でその名が出てくるのみで、その「話の話」の図版さえもありません(「話の話」が「霧の中のハリネズミ」の"続編"として作られたと書いてあるが、それぞれ別作品ではないか)。これでは日本人だけでなく、東欧人やロシア人の自国のアニメを愛するファンも怒ってしまうのでは?

老人と海(99年公開).jpgアニメーション「The Old Man and the Sea(老人と海)」 by Alexandre Petrov(アレクサンドル・ペトロフ) 1999.jpg 「老人と海」●原題:THE OLD MAN AND THE SEA●制作年:1999年●制作国:ロシア/カナダ/日本●監督・脚本:アレクサンドル・ペドロフ/和田敏克●製作:ベルナード・ラジョア/島村達夫●撮影:セルゲイ・レシェトニコフ●音楽:ノーマンド・ロジャー●原作:アーネスト・ヘミングウェイ●時間:23分●日本公開:1999/06●配給:IMAGICA●最初に観た場所:東京アイマックス・シアター (99‐06‐16) (評価★★★☆)●併映:「ヘミングウェイ・ポートレイト」(アレクサンドル・ペトロフ)●アニメーション老人と海 [DVD]」('99年/ロシア/カナダ/日本)

雪の女王 dvd.jpg「雪の女王」●原題:Снежная королев(スニェージナヤ・カラリェバ)●制作年:1957年●制作国:ソ連●監督:レフ・アタマノフ●脚本:レフ・アタマノフ/G・グレブネル/N・エルドマン●音楽:A.アイヴァジャン●原作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン●時間:63分●声の出演:Y.ジェイモー/A.カマローワ/M.ババノーワ/G.コナーヒナ/V.グリプコーフ●公開:1960/01/1993/08 ●配給:NHK/日本海映画●最初に観た場所:高田馬場ACTミニシアター(84-01-14)(評価:★★★★)●併映:「せむしの仔馬」(イワノフ・ワーノ)

雪の女王 [DVD]」('57年/ソ連)


霧の中のハリネズミ.jpg「霧の中のハリネズミ(霧につつまれた霧の中のハリネズミ 1.jpgユーリ・ノルシュテイン作品集.jpgハリネズミ)」●原題:Ёжик в тумане / Yozhik v tumane●制作年:1975年●制作国:ソ連●監督:ユーリイ・ノルシュテイン●脚本:セルゲイ・コズロフ●音楽:ミハイール・メイェローヴィチ●撮影:ナジェージダ・トレシュチョーヴァ●原作:セルゲイ・コズロフ●時間:10分29秒●声の出演:アレクセーイ・バターロフ/マリヤ・ヴィノグラドヴァ/ヴャチェスラーフ・ネヴィーヌィイ●公開:2004/07(1988/10 ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント【VHS】)●配給:ふゅーじょんぷろだくと=ラピュタ阿佐ヶ谷(評価:★★★★)

ユーリ・ノルシュテイン作品集 [DVD]

 結果的には、アメリカのアニメ史、特にディズニー・アニメに絞って追っていく分にはいい本かも(と思ったら、版元の口上にも、「ディズニー主要作品も網羅した本格的な初のアニメファン必備書」とあった)。個人的には、懐かしいアニメもありましたが、一つ一つの作品解説がそう詳しいわけでもなく(但し、制作の裏話などではトリビアなエピソードも多くあったりする)、むしろアメリカ・アニメ史の中でのそれら作品の位置づけを確認できる、といった程度でしょう。内容的に見て、事典と言うより個人の著書の色合いが濃く、買うには値段が高すぎる本でした。

渋谷東宝会館2.jpg渋谷スカラ座 渋谷東宝会館4階(1階は渋谷東宝劇場)。1989年2月26日閉館。1991年7月6日、跡地に渋東シネタワーが開館。

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'95年はトム・ハンクスが洋画界を牽引? 「フォレスト・ガンプ」の底にある「愛国心」。

映画イヤーブック 1996.JPG   フォレスト・ガンプ 一期一会  ポスター.jpg フォレスト・ガンプ dvd.jpg  フォレスト・ガンプ 一期一会 スコア.jpg
映画イヤーブック〈1996〉 (現代教養文庫)』「フォレスト・ガンプ 一期一会」ポスター「フォレスト・ガンプ 一期一会 スペシャル・コレクターズ・エデション [DVD]」(2008)「フォレスト・ガンプ~一期一会 オリジナル・スコア集

 1995年に公開された洋画330本、邦画184本、計518本の全作品データと解説を収録し、ビデオ・ムービー、未公開洋画、テレビ映画ビデオのデータなども網羅しています。

 本書での最高評価になる「四つ星」作品は、「フォレスト・ガンプ/一期一会」「クイズ・ショウ」「レオン」「ショーシャンクの空に」「ブロードウェイと銃弾」「アポロ13」「恋する惑星」「エドワード・ヤンの恋愛時代」「エド・ウッド」「マディソン郡の橋」「スモーク」の11作品、一方邦画は、「東京兄妹」(市川準監督)「ガメラ」(金子修介監督)「Love Letter」(岩井俊二監督)「KAMIKAZE TAXI」(原田眞人監督)「午後の遺言状」(新藤兼人監督)「幻の光」(是枝裕和監督)の6作品と、比較的邦画も頑張った年でしたが、編者の江藤努氏に言わせれば、邦画は洋画に比べて作品の質が興行成績に繋がらなかったとのことで、確かに、ややマイナー感はあるラインアップ。

フォレスト・ガンプ 一期一会01.jpg ロバート・ゼメキス監督の「フォレスト・ガンプ/一期一会」('94年)はアカデミー賞6部門(作品・監督・主演男優・脚色・視覚効果・編集)独占で、トム・ハンクスは「フィラデルフィア」('93年)に続いてアカデミー賞主演男優賞2年連続受賞、さらにこの年公開の「アポロ13」('95年)にも出演していて、当時は洋画界を一人で牽引しているような勢いがありましたが、アカデミー俳優トム・ハンクス主演ということで、これらの作品を観に映画館に足を運んだ人も多かったのではないでしょうか。

フォレスト・ガンプ 一期一会02.jpg 「フォレスト・ガンプ」は50年代から80年代にかけてのアメリカ現代史を駆け抜けていったIQが人並みに至らない男ガンプの話ですが、彼は俊足を買われて大学で全米アメフト代表選手となってケネディ大統領に祝福され、ベトナム戦争では戦友の命を救ってジョンソン大統領から栄誉を授かる一方、全米卓球チームのメンバーになって「ピンポン外交」特使としてジョン・レノンとテレビ共演するほど有名になり、さらにエビの事業で成功して大金持ちになるといった具合に、アメリカン・ドリームを絵に描いたような道を歩みます。

フォレスト・ガンプ 一期一会03.jpg 但し、そうした"お目出度い"話ばかりでなく、彼の人生と交錯する人びとの挫折や苦悩も描いており、ガンプ自身も幼馴染みの恋人に何度か去られ、最後にやっと愛を成就できたかと思ったら、その彼女に死なれてしまうなどして人生の寂寥感を味わい、それでも彼女が遺した自分の息子に出会うことで未来への希望を抱くという、ラストシーンで空を舞う羽根のように、ふわ~っと心に滲み入る作品でした。

フォレスト・ガンプ 一期一会04.jpg 原作は、1985年にウィンストン・グルームが発表した小説 Forrest Gumpで、ガンプのモーレツぶりは、ジョン・アービング原作、ジョージ・ロイ・ヒル監督、ロビン・ウィリアムズ主演の「ガープの世界」('82年)の登場人物らに通じるものを感じましたが、「ガープの世界」がアービングの自伝的小説であるのに対し、グルームの原作では、主人公のガンプは宇宙飛行士やプロレスラー、チェスのチャンピオンになるといったエピソードもあるとのことで、映画においても、「ガンプ」はシンボライズされたキャラクターと見るのがスジでしょう。

 では、アメリカ現代史を駆け抜けたガンプは何の象徴なのかと言うと、やはりアメリカ国民そのものの象徴であり、見方によってはアメリカという国そのものの象徴ということにもなるのかもしれません。

Forrest Gump (1994).bmp 映画ではアメリカ現代史の様々な映像が合成SFXでガンプの物語に織り込まれており(ゼメキス監督は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でも見せたとおり、特撮が持ち味。ガンプがケネディ大統領と握手し、「おしっこしたい」と言うシーンは笑える)、それもこの作品の一つの見所ですが、個人的には、ウォーターゲート事件にしてもベトナム反戦運動にしても、ガンプの純粋さを媒介としてある種戯画化されて描かれているように思いました。

 この映画がアメリカで「ガンプ現象」と言われるほどのブームになったのは、アメリカ人のヒーローに対する愛着、純粋無垢なモーレツさへの憧憬だけでなく、いろんなことを乗り越えてもアメリカ人は前を向いて走り続けることができる国民なのだという「愛国心」(本書でこの作品の解説を担当している東敬一氏もこの言葉を用いているが)の裏返しのようなものが、作品の底にあるためであるように思いました(すごく自己肯定的だけど、所謂ナショナリズムとは少し違うんだよなあ)。

チャンス.jpg この作品を観て思い出すのは、ハル・アシュビー監督の「チャンス」('79年/米)で、知的障害がある庭師のチャンスが、余命いくばくも無い財界大物を夫に持つ美しい貴婦人が乗る高級車に轢かれ、屋敷に招かれることになったのをきっかけに、その言葉に実は深い意味があると周囲から勝手に解釈されて、世間の注目を集めテレビ出演までするようになり、国民的な人気を得ることになりますが、彼自身は全くそんなことには無頓着でいるというもの。この作品で、ピーター・セラーズ(1925-1980)が演じるチャンスは次期大統領候補にまでなる一方で、ラストはチャンスの死を暗示させて終わりますが、ピーター・セラーズ本人もこの映画の日本公開前に心臓発作で急逝、彼の遺作となった作品であるということでも知られています。

チャンス ラスト.jpg ジャージ・コジンスキーの脚本のベースになっているのはニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』であり、原題の"Being There"は、ドイツの哲学者マルティン・ハイデッガーの未完の主著『存在と時間』からきているとのことで、「ただそこにある(もの)」という意味ですが、「チャンス」という主人公の名前を邦題にしてしまったため、「どんなハンディキャップがある人にもチャンスがある」という話と捉えられている向きがあるように思います。

 個人的には、そうした解釈でもいいと思うし、実際、「アメリカとはそういう(誰にでもチャンスのある)国だ」という意図のもとに作られた作品ととれなくもないですが、ちょっと違うような気がする。。。だからと言って、正しい解釈はこうだと言い切れるものが自分としてもイマイチ明確にないのですが。

Forrest Gump(1994).jpg 「フォレスト・ガンプ/一期一会」の「一期一会」は要らなかったように思いますが、内容的にはこちらの方がスンナリ受け止めることができました。「チャンス」は、コメディとしては秀逸であることは間違いないですが("脇を固めている"のがシャーリー・マクレーンなど一流の演技達者というのがスゴイ)、原題通り「ビーイング・ゼア」としてくれた方が、この作品の象徴性について(自分も世間も)より深く考える契機になったような気がします。最近、かなり再評価されているようですが、当時としては、そんなタイトルでは観客受けしないと思われたのでしょうか。もともと、本国公開から日本公開までの間に1年以上もの間隔があった作品でした。
Forrest Gump(1994)
 
フォレスト・ガンプ 一期一会 dvd.jpg「フォレスト・ガンプ/一期一会」●原題:FORREST GUMP●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・ゼメキス●製作:ウェンディ・フィネルマン/スティーヴ・ティッシュ/スティーヴ・スターキー●脚本:エリック・ロス●撮影:アーサー・シュミット●音楽:アラン・シルヴェストリ●原作:ウィンストン・グルーム●時間:142分●出演:トム・ハンクス/ロビン・ライト/サリー・フィールド/ゲイリー・シニーズ/ミケルティ・ウィリアムソン/ハーレイ・ジョエル・オスメント●日本公開:1995/02●最初に観た場フォレスト・ガンプ  トム・ハンクス.jpgアポロ13 トム・ハンクスapollo13.jpg所:有楽町・日本劇場(95-03-12)●配給:UIP(評価:★★★★)
フォレスト・ガンプ 一期一会 ― スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]」(2001)
トム・ハンクス in「フォレスト・ガンプ 一期一会」('94年)/「アポロ13」('95年)

チャンス dvd.jpg「チャンス」●原題:FORREST GUMP●制作年:1979年●制作国:アメリカ●監督:ハル・アシュビー●製作:アンドリュー・ブラウンズバーグ●脚本:ジャージ・コジンスキー●撮影:キャレブ・デシャネル●音楽:ジョニー・マンデル●原作:ジャージ・コジンスキー●時間:130分●出演: ピーター・セラーズ/シャーリー・マクレーン/メルヴィン・ダグラス/ジャック・ウォーデン/リチャード・ダイサート/リチャード・ベースハート/ルス・アタウェイ●旧丸の内ピカデリー  .jpg日本公開:1981/01●最初に観た場所:有楽町・丸の内ピカデリー(81-02-09)●配給:松竹=富士映画配給(評価:★★★★)
チャンス [DVD]」(2005)
丸の内松竹(初代).jpg
旧・丸の内ピカデリー 前身は1925年オープンの「邦楽座」(後の「丸の内松竹」)。1957年7月、旧朝日新聞社裏手にオープン(地下に「丸の内松竹」再オープン)。 1984年10月1日閉館。1984年10月6日後継館「丸の内ピカデリー1・2」が有楽町センタービル(有楽町マリオン)西武側9階にオープン。

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啓蒙書としても読めるし、ジョブズの失敗と成功、遺したものの大きさも知ることができる。
 
スティーブ・ジョブズ 失敗を勝利に変える底力.gif                     ファインディングニモ dvd.jpg
スティーブ・ジョブズ 失敗を勝利に変える底力 (PHPビジネス新書)』「ファインディング・ニモ [DVD]

 スティーブ・ジョブズがその個性の強さゆえに犯した数々の失敗と、彼自身がそこから学び復活を遂げたことに倣って、ビジネスにおいてどのようなことに留意すべきかを教訓的に学ぶという、ビジネス・パーソン向けの啓蒙書的な体裁を取っていますが、併せて、ジョブズの歩んできた道における様々なビジネス上のイベントが、必ずしも時系列ではないですがほぼ取り上げられているため、ジョブズの足取りを探ることが出来るとともに、コンピュータ産業や映画産業の裏事情なども知ることができ、180ページほどの薄手の新書ですが、かなり面白く読めました。

 ジョブズを徒らに偶像化するのではなく、素晴らしい面とヒドイ面、それぞれについて書かれていますが、こうした体裁から、むしろ「反面教師」として部分にウェイトがかかっているのが本書の1つの特徴でしょうか。但し、こうした人間的にどうなのかと思われるような行動そのものが、ある意味、常人には測り知れない天才の個性でもあることは、著者も重々承知のうえなのですが。

 ジョブズがアップルへの奇跡的な復帰を遂げたことについては、当時のCEOギル・アメリオの"引き"が大きかったわけですが、そのアメリオをジョブズが策略を用いて放逐したことは、ジョブズの"悪行"としてよく知られているところ。本書でも「恩人を蹴落とし、CEOの座を射止める」と小見出しを振っていますが、ジョブズがアップルへの復帰を果たさなかったら、ジョブズの情熱はピクサーに注ぎ込まれ、ピクサーはジョブズの現場介入により、「トイ・ストーリー」('95年)のようなヒット作は生み出せず、駄作のオンパレードになっただろうという分析は興味深く、更には、iPodもiPhoneも誕生しなかったとして、アメリオの救済がいかに大きかったかを述べている辺りは、説得力がありました(そのアメリオを裏切ったジョブズがいかにヒドイ人間かということにも繋がるのだが、「裏切り者が作る偉大な歴史」という小見出しもある)。

ファインディング・ニモ whale.jpg 因みに、「ファインディング・ニモ」('03年)の制作の際に、ピクサーの美術部門のメンバーは、クジラの中にニモが呑みこまれるシーンを描くために、海岸に打ち上げられたクジラの死体を見に出かけたとのこと、ピクサーのデザイナー達は、アニメの映像世界の細部にジョブズ以上のこだわりを持っていたわけです。

ジョブズ&ゲイツ 2007年5月.jpg 更に、ジョブズとビル・ゲイツの間の様々な交渉についても、ジョブズが犯した過ちを鋭く検証していて、いかにジョブズが失ったものが大きかったかということが理解でき、Windowsのユーザーインターフェイスがその典型ですが、ある意味オリジナルはMacであり、普通ならばマイクロソフトではなくアップルがコンピュータ産業の覇者となり、ジョブズが世界一の億万長者の地位にいてもおかしくなかったことを示唆しているのも頷けました。
Steve Jobs and Bill Gates Interviewed together at the D5 Conference (2007).

スティーブ・ジョブズ 偶像復活.jpg ジョブズの秘密主義にもスゴイなあと思わされるものがあり、2005年に刊行されたジェフリー・ヤング、ウィリアム・サイモン著『スティーブ・ジョブズ―偶像復活』(′05年/東洋経済新報社)を読みましたが、そこにはiPhoneのことは全く出てきませんでしたが、2004年夏にジョブズが「アップルフォンを作ることはない」と正式発表した時、心の底では逆のことを考えていたというわけだと。

 著者は、アップルにおいてマーケティングに携わっていたこともある人で、現在はドラッカーの解説本を書いたり講演活動を行ったリもしている人。本書はビジネス啓蒙書としても読めるし、ジョブズの失敗と成功、遺したものの大きさをも知ることができ、更には、もしあの時ジョブズがこうしていたら...といったことに思いを馳せることにも繋がる本です。

ファインディング・ニモo5.jpg「ファインディング・ニモ」●原題:FINDING NEMO●制作年:2003年●制作国:アメリカ●監督:アンドリュー・スタントン/リー・アンクリッチ●製作:グラハム・ウォルターズ(製作総指揮:ジョン・ラセター)●脚本:アンドリュー・スタントン/ボブ・ピーターソン/デヴィッド・レイノルズ● 音楽:トーマス・ニューマン/ロビー・ウィリアムズ●時間:100分●出演:アルバート・ブルックス/エレン・デジェネレス/アレクサンダー・グールド/ウィレム・デフォー/オースティン・ペンドルトン/ブラッド・ギャレット/アリソン・ジャニー●日本公開:2003/12●配渋谷東急 閉館2.jpg渋谷東急 閉館.jpg給:ウォルト・ディズニー・ カンパニー●最初に観た場所:渋谷東急 (03‐12‐23) (評価★★★☆)

映画館「渋谷東急」が5月23日閉館.jpg渋谷東急 2003年7月12日、同年6月の渋谷東急文化会館の閉館に伴い、直営映画館(「渋谷パンテオン」「渋谷東急」「渋谷東急2」「渋谷東急3」)の代替館として渋谷クロスタワー2Fにオープン。2013年5月23日閉館。

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育てようとした対象を自ら押し潰してしまう―感性で捉える不条理劇「授業」。

イヨネスコ 授業・犀.jpg ウジェーヌ・イヨネスコ.jpg ウジェーヌ・イヨネスコ授業1.jpg 中村伸郎「授業」死の教室 中古vhs.jpg
授業・犀 (ベスト・オブ・イヨネスコ)』['93年/白水社]     アンジェイ・ワイダ「死の教室」VHS(絶版)

授業・犀 (ベスト・オブ・イヨネスコ).jpg ある教授の自宅に、女生徒が個別講義を受けに来るが、教授は女中に止められるのもかまわず講義を始める。数学そして比較言語学と講義を進めていくにつれ、最初は穏やかだった教授は夢中になり、しだいに凶暴になっていく。凶暴化した教授は我を忘れて、講義に集中できなくなった女生徒をナイフで刺殺する―。

 ルーマニア生まれのフランスの劇作家ウジェーヌ・イヨネスコ(1909-94/享年84)が1951年に発表した戯曲で、サミュエル・ベケット(1906-89)などと共に20世紀のヌーヴォー・テアトルの代表格にあたる人ですが、文学界にデビューしたのは40歳を過ぎてからであり、結構遅咲きだった人です(デビュー時に、新世代の劇作家の台頭を歓迎する出版社の意向で、年齢を3歳若くサバ読み公表させられた)。

 イヨネスコの作風は「平凡な日常を滑稽に描きつつ、人間の孤独性や存在の無意味さを鮮やかに描き出した」(ウィキペディア)ものということになるらしいですが、昔から言われている言葉で一言で言えば、「不条理劇」であり、実際、カミュやサルトルの不条理の文学に通じるとされています(但し、個人的には、戯曲という表現を通して理論よりも観客の感性に働きかけている分、哲学っぽくないという点で、カフカなどに近いように感じる)。

山手教会地下「ジァン・ジァン」.jpg渋谷ジァン・ジァン 高橋竹山.bmp渋谷ジァン・ジァン 中村伸郎.bmp 演劇としての「授業」は、俳優の中村伸郎(1908-1991/享年82)が、'72年より11年間にわたって、毎週金曜日に渋谷・公園通りの山手教会地下「ジァン・ジ渋谷ジャンジャンr-1s.jpgァン」で演じていたことで知られていますが(「ジャンジャン」は1969年7月オープン。ここへは「高橋竹山の津軽三味線」や「おすぎのシネマトーク」も聞きに行った。「イッセー尾形の一人芝居」もこのジァン・ジァンで始められた。「美輪明宏の世界」とか「松岡計井子渋谷ジャンジャン75年8月.jpgビートルズをうたう」などといったものもあり、荒井由実(後の松任谷由実)、中島みゆき、吉田拓郎、井上陽水など、ここでライブをやった著名アーティストは数知れない。'00年4月25日閉館)、自分自身のメモを見ると、'79年の5月4日の金曜日に「ジァン・ジァン」に「授業」を観に行っていました(ゴールデンウィーク中渋谷ジャンジャン 授業.jpg中村伸郎 授業.pngもやっていた)。小劇場であるため、役者と観客の距離が近くて緊迫感があり、結構インパクトを受けました(その時の女性徒役は、演出も兼ねていた大間知靖子。歴代の女性徒役の中でも名演とされている)。

 女性徒の覚えの悪さ(「ナイフ」という言葉を何度やっても正確に発音できない)に教授はキレてしまい、発作的にナイフによる凶行に及んだともとれるのですが、実はこの教授は今までも同じ殺人を何度も繰り返していることが暗示されています。

 育てようとした対象を自ら押し潰してしまう―家庭教師をやっていたりした時のことを思い出しそうな設定ですが、もし今観れば、会社における部下指導の在り方などを考えてしまうかも(余りにストレートに教訓的な解釈?)。

 中村伸郎の後を受けて、中山仁、勝部演之、仲谷昇といった俳優がこの教授役を演じ、また最近では「劇団東京乾電池」の綾田俊樹やベンガルが演じていますが、今年('11年)7月には、柄本明が「東京乾電池」の公演として自身の演出のもとで演じています。それらを実際に観てはいないけれども、中村伸郎.jpgいかにもひと癖ありそうな柄本明よりも、教授然とした中村伸郎の方が、この作品の中村伸郎2.jpg場合"意外性"の効果はあるのではないかなあ。中村伸郎は「宇宙大怪獣ドゴラ」('64年/東宝)や「サンダ対ガイラ」('66年/東宝)、或いはTV版「白い巨塔[左]('67年)でも博士や教授の役でした。この人、「天国と地獄」('63年/東宝)など黒澤明監督作品にも出ているほか、映画会社ではなく劇団(文学座)所属だったので、「彼岸花」('58年/松竹)、「秋日和」('60年/松竹)、「秋刀魚の味[右](62年/松竹)など小津安二郎監督の後期作品にも常連のように出ています。

 "感性に訴える"作品ではありますが、政治的意図(反ナチズム)もあるようで(家庭教師や会社の上司に置き換えるだけでは"読み"が浅い?)、更に、教室という1場面のみで話が進行するため、アンジェイ・ワイダが監督した「劇団クリコット2」による「死の教室」('76年/ポーランド)を観た際に、この芝居を想起したりもしました。

死の教室の一場面.jpg 「死の教室」は、廃墟(倉庫?)のような教室に、自らの子供の頃の分身である人形を持ってやって来た老人(死者)たちが、脈絡のない不可思議な行動をとりながら、ユダヤの歴史に由来する言葉や、意味不明な単語を発演するという、これもまた「不条理劇」で、舞台劇(演出はタデウシュ・カントール)をそのまま撮った記録映画です。オーケストラ・リハーサル dvd2.jpg"統制の喪失"という意味では、個人的にはフェデリコ・フェリーニの「オーケストラ・リハーサル」(′79年/伊)と少し似ているように思えたました。「オーケストラ・リハーサル」は、「フェリーニの道化師」などと同じくTV用映画として撮られたもので、あるオーケストラのリハーサル風景をTV局が取材するという形で物語が進み、「道化師」と同じくドキュメンタリーかと思って観ていると、実はフィクションだった...。「オーケストラ・リハーサル [DVD]

死の教室 [THE DEAD CLASS] ポスター.jpg アンジェ蜷川幸雄.jpgイ・ワイダはこの「死の教室」という作品を、やはりTV用作品として撮影しましたが、ポーランド国内ではTV放映も劇場公開もされていないとのこと、かつて「劇団クリコット2」が再来日して('82年に一度来日して公演、蜷川幸雄(1936-2016)氏ら日本の演劇人に衝撃を与えたとのこと)、この芝居を舞台公演するという話がありましたが、「クリコット2」のメンバーが全員高齢であるため、長旅に耐えられないという理由で中止になったという顛末がありました。出演者らは"老け役"ではなく、ホントに老人だったのだ...。

「死の教室」●原題:THE DEAD CLASS●制作年:1976年●制作国:ポーランド●監督:アンジェイ・ワイダ●製作:バルバラ・ペツ・シレシツカ●脚本・演出・作曲:タデウシュ・カントール●時間:90分●出演:劇団クリコット2(マリア・グレツカ/パルコ劇場.jpgparco劇場 .jpgボフダン・グリボヴィッチ/ミーラ・リフリツカ/ズビグニエフ・ベトナルチック/ロマン・シヴラック)●日本公開:1988/01●配給:パルコ●最初に観た場所:渋谷・PARCO劇場(88-01-16)(評価:★★★☆)
PARCO劇場 1973年5月23日「西武劇場」として渋谷PARCO PART1の9Fにオープン、主に演劇公演に利用される。1985年~「PARCO劇場」。2016(平成28)年8月7日閉館。2019年に再オープン予定。

「オーケストラ・リハーサル」チラシ/「オーケストラ・リハーサル [DVD]
オーケストラ・リハーサル  チラシ.jpgオーケストラ・リハーサル dvd.jpgオーケストラ・リハーサル 3.jpg「オーケストラ・リハーサル」●原題:PROVA D'ORCHESTRA(ORCHESTRA REHEARSAL)●制作年:1979年●制作国:イタリア・西ドイツ●監督:フェデリコ・フェリーニ●製作:ファビオ・ストレッリ●脚本:フェデリコ・フェリーニ/ブルネッロ・ロンディ●撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ●音楽:ニーノ・ロータ●時間:72分●出演:ボールドウィン・バース/クララ・ユロシーモ/チェーザレ・マルティニョニ/ハインツ・クロイガー/クラウディオ・チョッカ/エリザベス・ラビ ●日本公開:1980/08●配給:フランス映画社●最初に観た場所:三鷹オスカー(81-10-10)(評価:★★★☆)●併映:「フェリーニのアマルコルド」「フェリーニのローマ」

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娼婦たちの田舎行「メゾン テリエ」もいいが、「他三編」も短い中に人生を投影させていていい。

メゾン・テリエ モーパッサン 岩波文庫旧版.jpg メゾン テリエ.JPGメゾン・テリエ モーパッサン 岩波文庫 新版.jpg 快楽 Le plaisir.jpg
『メゾン テリエ―他三編』[岩波文庫・旧版]『メゾンテリエ 他3編 改版 (岩波文庫)』 「メゾン テリエ」―「快楽」(マックス・オフィルス監督)ジャン・ギャバン(中央)

 ノルマンディーの田舎町フェカンで、メゾンテリエ(テリエの家)というのは、つまりテリエ夫人が5人の女を使って営む娼家である。町の名士たちも毎晩のように通うという繁盛ぶり。ところがある晩のこと、「初聖体のため休業仕候」と貼り紙を出して突然の休業―。数あるモーパッサン(1850‐93)の中短篇小説のうち屈指の名作(「岩波ブックサーチャー」より抜粋).

 「メゾン テリエ」は1881年にモーパッサンが発表した中編小説で、娼家が閉まっていたのは、張り紙にあった通り、マダムが弟の娘で彼女が名付け親になっている少女の初聖礼拝受式に参席するため、家の女達を連れて故郷ルール県の村ヴィルヴィルへ出かけてしまったためです。

 フェカンも田舎町だが、ヴィルヴィルは田園地帯にある更なるド田舎。村の教会に突然の美しい(?)女達が現れたために、素朴な村人達は都会の貴婦人が参列したのかと勘違いし、一方、式において清楚な少女の姿を見た娼婦達は、過ぎし日を思い起して思わず泣き出してしまい、教会は、異様な感動に包まれ、それがまた、村人達の感激を引き起こすという―もともと、女達に店を任せておけないから、やむなく全員を引き連れて式に出ることになったのが、彼女らにとっても想い出深いイベントになったという展開がいいです。

 村人はマダムが町で成功していることは噂に知っていても、それが娼家の経営によるものとは知らず、また娼婦らを"貴婦人"と思い込んでしまったのは、現代以上に都会と田舎の情報格差が大きかったせいもあるのではないかと、再読して思いました(現代でも、田舎に帰れば実態とは異なり、「一流企業のOL」をしていることになっているというのはあるかもしれないが)。

 岩波文庫版はこの他に、「聖水授与者」「ジュール伯父」「クロシェット」の3篇の短篇を収めていますが(4篇とも挿絵入り)、「聖水授与者」は、5歳で行方不明になった息子を探す老夫婦を描いた話、「ジュール伯父」は、アメリカに渡った叔父が成功して戻って来ることに全ての希望を託す家族の話で、共に"邂逅"がモチーフになっているものの、結末は明暗を分けています。

 大人になった語り手が少年の頃の思い出を語るというスタイルで「ジュール伯父」と共通する「クロシェット」は、「私」に優しくしてくれていた"ばあや"が亡くなった直後に医師から聞かされた、彼女の若い頃の恋愛事件の話で、壮絶と言っていいくらいに純真な話ですが、何れも極々少ない紙数の中に、家族や個人の人生がくっきり投影されているのが素晴らしいです。

 訳者の河盛好蔵は「メゾン テリエ」に通底するものがあるということからこの3篇を選んだとのことですが、感動やペーソスある一方で「ジョゼフ・ダヴランシュが貧しい施しを求める老人に5フラン銀貨を恵む理由」といったエスプリも効いていて、河盛好蔵らしい選び方のように思いました。

 表題作「メゾン テリエ」は、マックス・オフュルス「快楽(Le Plaisir)」('52年/仏)という映画の中で映像化しており、娼婦達が田園地帯を行く様を撮った光と影の交錯する映像は、ジャン・ルノワール(印象派の画家ピエール=オーギュスト・ルノワールの次男)の「ピクニック」('36年/仏)の"中産階級版"ならぬ"娼婦版"という感じ(因みに、「ピクニック」の原作もモーパッサンの短篇(「野あそび」)。

メゾン テリエ 快楽 .jpgメゾン テリエ 快楽.jpg 「メゾン テリエ」では、唯一、一行の正体が娼婦達であることに気付いているっぽい馬丁をジャン・ギャバンが演じていますが、ギャバンのフォルム・ノワールのイメージとは裏腹に、小説以上に気のいい男として描かれています。

LE PLAISIR 1952 仮面の男.jpg 「快楽」は、「メゾン テリエ」の他に、「仮面」と「モデル快楽 モーパッサン.jpg」という、同じくモーパッサンの短篇を原作とした作品から成るオムニバス映画であり、「仮面(の男)」は、美男の仮面を付けてまでも終生女を漁ってきた老人と、この女好きの夫に一生を捧げてきた妻の話、「モデル」は、画家がモデル快楽 仮面4.jpgと深い仲になるも彼女に飽きてきて別れようとすると、モデルの方は自殺を仄めかし、その結果――(ここでも"脚を折る"までの一途の恋という「クロシェット」と同じモチーフが使われている)。
マックス・オフュルス「快楽」('52年/仏)

 「快楽」は'79年に日仏会館で、「ピクニック」は'80年に京橋フィルムセンターでそれぞれ観て、「快楽」に関して言えば、べルイマンの艶笑喜劇に通じるものを感じましたが、むしろ、ベルイマンよりモーパッサンの方が本家でしょうか。「メゾン テリエ」などのイメージが掴めたのは良かったのですが、本当はもっと綺麗な映像であるはずなのが、フィルムがやや劣化状態だったのが残念でした。

ジャン・ルノワール「ピクニック」.jpg 一方の「ピクニック」は、DVD版の冒頭には「1860年の夏の日曜日、パリの金物商デュフール氏は妻と義母と娘と未来の婿養子アナトールを連れて隣の牛乳屋から借りた馬車でピクニックに出かけた」というのが字幕が出ますが、これは未完の作品だから、説明的にこうした字幕が付いているのでしょう(DVD版は、40分(内、オリジナルは35分)の本編に86分の「NG集」と15分の「リハーサル」が付いている)。

ジャン・ルノワール「ピクニック」('36年/仏)

ジャン・ルノワール「ピクニック」2.jpg レストランを見つけた金物商(アンドレ・ガブリエロ)の一行は、そこでピクニックを楽しむことにし、レストランにはボート遊びに来たアンリ(ジョルジュ・ダルヌー)とルドルフ(ジャック・B・ブリピクニックqN.jpgュニウス)がいて、アンリはブランコをこぐ娘アンリエット(シルヴィア・バタイユ)に魅了され、父親と婿養子が釣りに行っている間に、ルドルフと共にアンリエットとその母親(ジャーヌ・マルカン)をそれぞれボートに誘い出して別々のボートで川に漕ぎ出し、陸に上がってそれぞれが関係を持つ―。

ルノワール「ピクニック」.jpg 数年後、アンリが思い出の場所を訪れるとアンリエットがいて、その傍らには夫となったアナトールが寝ている。二人は、お互いを忘れたことがないという短い会話を交わすが、アナトールが起きたために別れる―。

 映画では、夫婦であるアンリエットとアナトールが最後ボートで去っていく時に、ボートを漕いでいるのが女性であるアンリエットの方であったりと(逞しいアンリに比べアナトールはヤサ男)、原作のアイロニーを更に強めている感もありますが、一方で、映像化するピクニックain.jpgことによってどろっとしてしまいそうな話(考えてみれば結構エロチックな話でもある)を、父オーギュスト・ルノワールの印象派絵画をそのまモノクロ映像したような光と影の映像美で包み込み、美しく仕上げています(ヒロインのアンリエットを演じたシルヴィア・バタイユは哲学者で『眼球譚』の作者でもあるジョルジュ・バタイユの妻)。

ジャン・ルノワール「ピクニック」タイトル.bmp 映画にしてしまうとストーリーにはやや物足りなさもありますが(これでも短編である原作を相当膨らませてはいる)、ジャン・ルノワール自身、自伝の中でこの作品について、「私にとって理想は、まったく主題のない、ひとえに監督の感覚に基づく、その感覚を俳優たちが一般公衆にわかる形に表現してみせた、そんな映画であった」と述べているように(「水」抜きの映画など、私には考えられないとも言っている)、こうした映像美の追求ががこの作品の最大の狙いだったのかも知れません。
Le Plaisir/Le Plaisir (DVD, 2008, Criterion Collection)
Le Plaisir.jpgLE PLAISIR 1952.jpg快楽 輸入版dvd.jpg「快楽」●原題:LE PLAISIR●制作年:1952年●制作国:フランス●監督:マックス・オフュルス●脚本:ジャック・ナタンソン/マックス・オフュルス●撮影:クリスチャン・マトラ/フィリップ・アゴスティニ●音楽:ジョエ・エイオス●原作:ギ・ド・モーパッサン「仮面」「メゾン 快楽 ポスター.jpgテリエ」「モデル」●時間:99分●出演:クロード・ドーファン/ガビ・モルレ/マドレーヌ・ルノー/ジネット・ルクレール/ダニエル・ダリュー/ピエール・ブラッスール/ジャン・ギャバン/ジャン・セルヴェ/ダニエル・ジェラン/シモーヌ・池坊お茶の水学院.jpg日仏会館 旧建物 お茶の水 1960~1995.jpgシモン●日本公開:1953/01●配給:東宝●最初に観た場所:御茶ノ水・日仏会館(79-04-26)(評価:★★★) 旧・日仏会館 1960(昭和45)年、現JRお茶の水駅付近に竣工、1995(平成7)年閉館(現、池坊お茶の水学院)、恵比寿へ移転
 
ジャン・ルノワール「ピクニック」dvd.jpgピクニックelle.jpg「ピクニック」●原題:PARTIE DE CAMPAGNE●制作年:1952年●制作国:フランス●監督・脚本:ジャン・ルノワール●製作:ピエール・ブロンベルジェ●撮影:クロード・ルノワール●音楽:ジョゼフ・コスマ●原作:ギ・ド・モーパッサ「野あそび」●時間40分●出演:シルヴィア・バタイユ/ジョルジュ・ダルヌー(ジョルジュ・サン=サーンス)/ジャック・B・ブリュニウス/アンドレ・ガブリエロ/ジャーヌ・マルカン/ガブリエル・ファンタン/ポール・タン●日本公開:1977/03●配給:フランス映画社●最初に観た場所:京橋フィルムセンター(80-02-15)(評価:★★★★)●併映:「素晴しき放浪者」(ジャン・ルノワール)
ジャン・ルノワール「ピクニック [DVD]

【1940年文庫化・1976年改版[岩波文庫(『メゾン テリエ 他三編』(河盛好蔵:訳))]/1951年再文庫化[新潮文庫(『脂肪の塊・テリエ館』(青柳瑞穂:訳))]/1955年再文庫化[角川文庫(『メーゾン・テリエ―他三篇』(木村庄三郎:訳))]/1971年再文庫化[講談社文庫(『脂肪の塊・テリエ館』(新庄嘉章:訳))]】

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「黄粱一炊の夢」乃至「胡蝶の夢」。自殺した妻との邂逅は「惑星ソラリス」へのオマージュか。

インセプション チラシ.jpg インセプション dvd.jpg       マトリックス dvd.jpg      惑星ソラリス dvd.jpg
「インセプション」チラシ/「インセプション [DVD]」「マトリックス 特別版 [DVD]」「惑星ソラリス [DVD]

インセプション2.jpg 人の夢に入り込むことでアイデアを"盗み取る"産業スパイ・コブ(レオナルド・ディカプリオ)に、大企業のトップ・サイトー(渡辺謙)が、ライバル企業の社長の息子ロバート(キリアン・マーフィー)に父親の会社を解体させるアイデアを"植えつける(インセプション)"仕事を依頼する。自殺した妻モル(マリオン・コティヤール)殺害の容疑をかけられ子供に会えずにいたコブは、犯罪歴抹消と引き換えに仕事を引き受けることにし、コブ及びサイトーに、コブの仕事仲間のアーサー(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)、夢の世界の「設計士」アリアドネ(エレン・ペイジ)、ターゲットの思考を誘導する「偽装師」イームス(トム・ハーディ)、夢の世界を安定させる鎮静剤を作る「調合師」ユスフ(ディリープ・ラオ)の4人を加えた計6人で、ロバートの夢の中に潜入する―。

Inception(2010).jpgInception.jpg 最初は6人がこれからやろうとしていることの説明(理屈)が多くてややダルかったけれども、実際に夢への潜行が始まると、「夢」から「夢の中の夢」に、更に「夢の中の夢の中の夢」に降りて行くという発想が面白く、思いつかないことでもないけれど、よくこれを「お話」にして「映像化」したものだと―(突っ込み所は多いのだが)。
Inception(2010)
                  
インセプション1.jpg 実際に夢の第1階層(雨のL.A.)、第2階層(ホテル)、第3階層(雪の要塞)のそれぞれで繰り広げられるのは、カーチェイスだったり銃撃戦だったりと定番のアクションなのだけれど(敵はロバートの潜在意識に既にインセプションされているライバル企業側の輩)、下の階層に行くにつれて相対的に上の層より時間の流れが遅くなり、その分だけ時間稼ぎ出来るといった着想などはなかなか秀逸ではないかと思われ(「黄粱一炊の夢」「邯鄲の夢」の"二乗"ということか)、ラストも、コブは本当に現実世界に戻ってきたのか、ちょっと気を持たせる終わり方でした(この辺りはむしろ「胡蝶の夢」か)。
                  
マトリックス 映画.jpg 仮想現実世界での戦いと言えば、ウThe Matrix(1999).jpgォシャウスキー兄弟の「マトリックス」('99年/米)を想起しますが、ストーリー的にはこっちの方が凝っているのでは。但し、「マトリックス」は、シリーズを通してファッションの方に凝っていて、夢と現実世界を結ぶのが"公衆電話"や"黒電話"であるなどというキッチュな味付けもありましたが、それに比べると「キック」というのはやや原始的。物理的な衝撃によって眠り(夢)から覚めるというのは、オーソドオクスと言えばオーソドオクスなんだけど。
The Matrix(1999)

 全体としては、いろんなものを詰め込み過ぎた(オタク系でもあり恋愛系でもある)「マトリックス」よりも、ストレートなアクション系に近いこっちの方が好みですが、いっそのこと、"亡き妻への追慕"といったモチーフも織り込まないで、「夢の階層構造」のみを中心モチーフに据えたアクションに徹しても良かったように思います。

惑星ソラリス1.jpg 映像面でスタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」('68年/米)や、アンドレイ・タルコフスキー作品へのオマージュが見られますが、モチーフとして特に似ているのはタルコフスキーの「惑星ソラリス」('72年/ソ連)ではないでしょうか。

「惑星ソラリス」のナタリア・ボンダルチュク(「戦争と平和」の監督セルゲイ・ボンダルチュクの娘)とドナタス・バニオニス

 「惑星ソラリス」の宇宙飛行士であり科学者でもある主人公(ドナタス・バニオニス)は、"意識を持つ"惑星ソラリスを調査する中で、ソラリス惑星ソラリスSOLARIS 1972.jpgが主人公の記憶の中から再合成して送り出してきた「かつて自殺した妻」(ナタリア・ボンダルチュク)と邂逅し(「インセプション」も同じ)、その仮想現実世界の虜囚とWakusei Solarisu (1972).jpgなってしまうのですが、クリストファー・ノーランは、どうしてもあの作品のモチーフを使いたかったのでしょうか。

 「惑星ソラリス」はタルコフスキーの中でも最も有名な作品ですが、観る前の期待が大きかったのに反して、前半は何となく通俗ドラマ調で、後半になると哲学的で難解なためやや退屈しました(自分には合わなかった作品? 個人的には「鏡」('75年/ソ連)の方が好み)。ラストもイマイチあっけないものでしたが("解"を示さない終わり方)、そうした思わせぶりも「インセプション」と似ていて、「インセプション」には、「惑星ソラリス」へのオマージュが相当に込められているように思われました。

Wakusei Solarisu (1972)

惑星ソラリスSolaris-Highway-Scene-Tokyo-640x277.jpg 「インセプション」には、700系新幹線「のぞみ」が富士川鉄橋を走る映像が出てきますが、「惑星ソラリス」では、未来都市のイメージとして、首都高速道路の赤坂トンネル付近を走行するクルマの車内から見た映像があり、こうした日本からの素材の抽出なども「惑星ソラリス」を意識しているのではないかと思いました。

Solaris-Highway-Scene-Tokyo
 
「インセプション」 クリストファー・ノーラン.jpgインセプション マリオン・コティヤール.jpg「インセプション」●原題:INCEPTION●制作年:2010年●制作国:アメリカ●監督・脚本:クリストファー・ノーラン●製作:エマ・トーマス/クリストファー・ノーラン●撮影:ウォーリー・フィスインセプション 映画.jpgター●音楽:ハンス・ジマー●時間:148分●出演:レオナルド・ディカプリオ/渡辺謙/キリアン・マーフィー/トム・ベレンジャー/マイケル・ケイン/マリオン・コティヤール/ジョセフ・ゴードン=レヴィッド/エレン・ペイジ/トム・ハーディー/ディリープ・ラオ/ルーカス・ハ―ス/ロバート・フィッシャー/キリアン・マーフィ●日本公開:2010/07●配給:ワーナー・ブラザース(評価:★★★☆)
             
THE MATRIX title.jpgマトリックス チラシ.jpg「マトリックス」●原題:THE MATRIX●制作年:1999年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ウォシャウスキー兄弟(アンディ・ウォシャウスキー/ラリー・ウォシャウスキー)→ウォシャウスキー姉弟(アンディ&ラナ(性転換前はラリー)・ウォシャウスキー)●製作:ジョエル・シルバー●撮影:ビル・ポープ●時間:136分●出演:キアヌ・リーブス/ローレンス・フィッシュバーン/キャリー=アン・モス/ヒューゴ・ウィービング/グローリア・フォスター/ジョー・パントリアーノ/マーカス・チョン/ジュリアン・アラハンガ上野東急 場所.jpg上野東急1.jpg上野東急2.jpg/マット・ドーラン/ベリンダ・マクローリー/レイ・パーカー●日本公開:1999/09●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:上野東急(99-10-11)(評価:★★☆)
上野東急 1957年1月19日「上野東急」オープン、1981年10月休館。1982年12月4日「上野とうきゅうビル」に建て替えられ、3階に「上野東急」、1階に「上野東映」(1998年3月「上野東急2」に改称)の2館体制で再オープン。2012年4月30日「上野とうきゅうビル」解体により閉館。

惑星ソラリス パンフレット.jpg惑星ソラリスs.jpg「惑星ソラリス」●原題:SOLARIS●制作年:1972年●制作国:ソ連●監督:アンドレイ・タルコフスキー●脚本:アンドレイ・タルコフスキー/フリードリッヒ惑星ソラリス チラシ.jpg・ガレンシュテイン●撮影:ワジーム・ユーソフ●音楽:エドゥアルド・アルテミエフ●原作:スタニスワフ・レム「ソラリス」(「ソラリスの陽のもとに」)●時間:165分●出演:ナタリア・ボンダルチュク/ドナタス・バニオニス/ウラジスラフ・ドヴォルジェツキー/アナトーリー・ソロニーツィン/ソス・サルキシャン/ユーリー・ヤルヴェト/ニコライ・グリニコ/タマーラ・オゴロドニコヴァ/オーリガ・キズィローヴァ●日本公開:1977/04●配給:日本海映画●最初に観た場所:大井武蔵野館(83-05-29)(評価:★★★) 「惑星ソラリス」1977年岩波ホール公開時パンフレット

鏡 Blu-ray.jpg鏡 パンフレット.jpg「鏡」●原題:ZERKALO●制作年:1975年●制作国:ソ連●監督:アンドレイ・タルコフスキー●脚本:アレクサンドル・ミシャーリン/アンドレイ・タルコフスキー●撮影:ゲオルギー・レルベルグ●音楽:エドゥアルド・アルテミエフ●挿入詩:アルセニー・タルコフスキー●時間:108分●出演:マルガリータ・テレホワ/オレーグ・ヤンコフスキー/イグナト・ダニルツェフ/フィリップ・ヤンコフスキー/アナトーリー・ソロニーツィン●日本公開:1980/06●配給:日本海映画●最初に観た場所:岩波ホール (80-07-03) (評価:★★★★★  「鏡 Blu-ray」['13年]

「鏡」 1980年岩波ホール公開時パンフレット

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昭和初期の軟派系早大生を描いた、小津版「私をスキーに連れてって」といったところ。

学生ロマンス 若き日 vhs2.jpg学生ロマンス 若き日2.jpg    私をスキーに連れてって.jpg
学生ロマンス 若き日 [VHS]」「私をスキーに連れてって [DVD]

 大学の同級生仲間の渡辺(結城一郎)と山本(斎藤達雄)は、憧れのマドンナ千恵子(松井潤子)がスキーに行ったのを知り、彼女の後を追いかけて妙高高原・赤倉に行き、恋の争奪戦を繰り広げていくが―。

「学生ロマンス 若き日」.bmp 1929(昭和4)年公開の小津安二郎監督の第8作にして初の長編作品。小津安二郎の監督作品は記録映画も含めると全部で54作ありますが、その内の現存する37作品の中ではこれが最初期の作品で、個人的には今回が初見。本来はBGMも無い「完全サイレント」作品ですが、神保町シアターで、エレクトーン奏者・柳下美恵氏の伴奏により鑑賞しました。

 陽気でお調子者の渡辺と、生真面目だがちょっと抜けている山本のコンビが妙。もともと2人が千恵子と知り合ったのは、渡辺が下宿に「貸間あり」の張り紙をし、男が訪ねてきたら「残念でした。今日、僕が入居しました」と言って追い払い、美女が訪ねてきたら一旦部屋を引き払って、後で忘れ物をしたと言って部屋に上がり込んで、その女性と親しくなるという戦略によるものです。

学生ロマンス 若き日5.jpg そうして知り合った千恵子が赤倉にスキーに行くことを知った2人ですが、渡辺には仕送りが来ず、山本は財布を落としたために共にその資金が無く、山本の下宿に転がり込んだ渡辺が、山本に「上を向け」と言って、その間に山本の部屋の書籍や家財道具をかき集め、それを質屋に持っていき"軍資金"を作る下りは、渡辺の部屋にポスターが貼ってあったフランク・ボーゼージ監督の1927年映画「第七天国」の、掃除夫の主人公が自分はもっと偉くなるのだという前向きな気持ちを表した「上を向け」という台詞のパロディで、主人公が自分の住む部屋を「第七天国」と称した「七」に「質」を懸けています(柳下美恵氏の解説による)。

学生ロマンス 若き日.jpg 渡辺と山本がゲレンデで千恵子を巡って恋の鞘当を繰り広げる場面は、随所にスラップスティックなノリが感じられ、山本が渡辺にスキー板を流され取りに行く間に、渡辺と千恵子が仲好く語らう場面など、チャップリン映画さながら(この作品に多分に影響を与えていると思われるキートンの「カレッジ・ライフ」(1927)ほどまではいかないが)。

Gakusei romansu Wakaki hi 1.jpg ストーリーの方は、実は、千恵子は、母親(飯田蝶子)と共にお見合いをするためにスキー場に来ていたのであり、見合いの相手は、渡辺らの同級生(日守新一)だったという皮肉な展開に(それでも諦めない渡辺なのだが...)。

 2人がスキー場を後にし、乗った列車の中で、スキーに出かける前に受けた期末試験の担当教授に会い(何で教授がこの列車に乗っている?)、テストの点数を教えてもらったところ、それぞれ45点と37点で、「君たち、スキーをしている場合じゃないだろ」。渡辺は落第、同級生と千恵子の見合いはうまくいったようで、常人ならばがっくりくるところですが、下宿に戻ってから落ち込んでいるのは山本の方で、渡辺は、「俺がもっとシャン(美人)を捜してやるから」と明るく前向き。再び「貸間あり」の張り紙をしたためる図々しさ(今度は山本の部屋なんだよなあ。結城一郎は、いけしゃあしゃあとした主人公を好演)。

 思ったよりゲレンデ・シーンが多く、小津版「私をスキーに連れてって」('87年/東宝)といったところでしょうか。スキー部の学生の一人として出演した笠智衆(当時25歳)の回想録によると、スキー初心者のままロケ地に入ったが、1週間の撮影が終わって帰る頃にはスキーの腕前も上達し、駅まで滑って帰ったとのことです(『小津安二郎先生の思い出』(朝日文庫))。
笠智衆(当時25歳)

私をスキーに連れてって 1.jpg 「私をスキーに連れてって」の方の舞台は奥志賀のゲレンデ。主人公(原田知世)が恋人へのプレゼントを届けるために横手山から万座へ夜中にスキーで山越えをするといった話だったと思いますが、あまりに現実離れしたストーリーで、しかも出演者の演技はみんな下手(もう一人の主演の三上博史は、最初に脚本を読んだ時、あまりのバカバカしさにゴミ箱に捨てたというから、最初からモチベーション低かった? そんな演技にOK出しする作り手の方に問題があるのだろうが)。ユーミンの挿入歌「恋人はサンタクロース」くらいしか印象に残らなかった作品ですが、「見栄講座」のホイチョイ・プロダクションの映画だから、ストーリーや演出よりも、バブル景気に湧いていた当時の「猫も杓子もゲレンデへ」といった世相を映し出すことが主眼の作品だった言えなくも無く、その目的は果たしたか?

彼女が水着にきがえたら10.jpg ホイチョイ・プロダクションはその後"青春ムービー"第2弾として、東京アーバン・マリンリゾートを舞台に、海底に眠る財宝を追う女性ダイバー(原田知世)とヨット乗りの青年(織田裕二、当時は殆ど無名の"ほぼ新人"だった)との恋と冒険を描いた「彼女が水着にきがえたら」('89年/東宝)も製作。「私をスキーに連れって」と同じく、馬場康夫・監督、一色伸幸・脚本で、音楽はユーミンからサザン・オールスターズへ。「渋谷宝塚劇場」の映画館前で開演待ちをしていた客は若いカップルばかりで、"デート用映画"と割り切るにしてもちょっと異様な光景でした(その「渋谷宝塚劇場」も今は無く、跡地に立ったQ‐FRONTビルにオープンした「渋谷シネフロント」も昨年['10年]閉館した...)。 

Gakusei romansu Wakaki hi.jpg さすがに小津安二郎はダイビング映画までは撮っていませんが、「世相を描く」ことが主眼となっているという点では「青春ロマンス 若き日」にも当て嵌る部分があり(演出はこっちの方がしっかりしていて、昭和初期とは思えないほど現代的)、スキーをする時にパイプを咥えたりベレー帽をかぶるのが流行りだったのか(?)とか、「ゲレンデ交際」という当時の若者風俗を描いていること自体に大いに関心を引かれました(共に、その後に不況が控えていたという点でも共通するかも)。

学生ロマンス 若き日  1929年 2.bmp 冒頭「都の西北」とあることから、主人公たちは早稲田の学生なのでしょうが(ロケも早稲田キャンパスでやっている模様)、その他にもいろいろと当時の学生の気風や生活ぶりが窺えるのが興味深かったです。まあ、主人公の渡辺は当時としてはかなりの軟派系だとは思いますが(因みに、小津安二郎自身は現役の時に神戸高等商業学校(現在の神戸大学)を受験して失敗、更に1浪後に三重師範学校(現在の三重大学教育学部)を受験してこれも失敗し、大学に行っていない)。

 監督初の長編作品であるためか冗長な部分もあり、コメディとしてはテンポが今一つですが(但し小津映画全体でみればテンポの早い方?)、そうした「映像記録」的な価値を加味して、星1つオマケしました。

学生ロマンス 若き日 vhs2.jpg「学生ロマンス 若き日」●制作年:1929年●監督:小津安二郎●脚本:伏見晁●撮影:茂原英雄●原作:伏見晁●時間:103分(完全版109分)●出演:結城一郎/斎藤達雄/松井潤子/飯田蝶子/高松栄子/小藤田正一/大国一郎/坂本武/日守新一/山田房生/笠智衆/小倉繁/一木突破/錦織斌/蜂野豊夫●公開:1929/04●配給:松竹蒲田●最初に観た場所:神保町シアター(10-12-04)(評価:★★★☆)
                 
私をスキーに連れてって  .jpg私をスキーに連れてって3.jpg「私をスキーに連れてって」●制作年:1987年●監督:馬場康夫●脚本:一色伸幸●撮影:長谷川元吉●音楽:杉山卓夫(挿入歌:松任谷由実「恋人がサンタクロース」)●原作:ホイチョイ・プロダクション●時間:98分●出演:原田知世/三上博史/ 原田貴和子/沖田浩之/高橋ひとみ/布施博/鳥越マリ/上田耕一/飛田ゆき乃/小坂一也/竹中直人/田中邦衛●公開:1987/11●配給:東宝(評価:★★)

彼女が水着にきがえたら     .jpg「彼女が水着にきがえたら」●制作年:1989年●監督:馬場康夫●脚本:一色伸幸●撮影:長谷川元吉●音楽:サザンオールスターズ(テーマソング:「さよなら彼女が水着にきがえたら2.jpg彼女が水着にきがえたら DVD2.jpgベイビー」)●原作:ホイチョイ・プロダクション●時間:98分●出演:原田知世/織田裕二/伊藤かずえ/竹内力/田中美佐子/谷啓/伊武雅刀/安岡力也/坂田明/白竜/今井雅之/佐藤允/玉井美香(叶美香)●公開:1989/06●配給:東宝●最初に観た場所:渋谷宝塚劇場(89-06-11)(評価:★★)彼女が水着にきがえたら [DVD]

1975年 渋谷宝塚劇場.jpg渋谷宝塚 峰岸ビル.jpg渋谷シネフロント.jpg渋谷宝塚劇場
宇田川町・峰岸ビル内にオープン。1997年5月30日閉館
(跡地にQFRONTビルが建設、1999年12月18日「渋谷シネフロント」開館、2010年1月22日閉館)


 

●小津安二郎フィルモグラフィー
公開年  作品名   製 作   主な出演者
1927年 懺悔の刃 松竹蒲田 吾妻三郎、小川国松、河原侃二、野寺正一、渥美映子 白黒サイレント69分 現存せず
1928年 若人の夢 松竹蒲田 斎藤達雄、吉谷久雄、松井潤子、坂本武、大山健二、笠智衆 白黒サイレント55分 現存せず
1928年 女房紛失 松竹蒲田 斎藤達雄、岡本文子、国島荘一、菅野七郎、坂本武、笠智衆 白黒サイレント54分 現存せず
1928年 カボチヤ 松竹蒲田 斎藤達雄、日夏百合絵、半田日出丸、小桜葉子、坂本武 白黒サイレント42分 現存せず
1928年 引越し夫婦 松竹蒲田 渡辺篤、吉川満子、大国一郎、中川一三 白黒サイレント40分 現存せず
1928年 肉体美 松竹蒲田 斎藤達雄、飯田蝶子、木村健児、大山健二 白黒サイレント54分 現存せず
1929年 宝の山 松竹蒲田 小林十九二、日夏百合絵、青山萬里子、岡本文子 白黒サイレント66分 現存せず
1929年 学生ロマンス 若き日 松竹蒲田 結城一郎、斎藤達雄、松井潤子、飯田蝶子、高松栄子 白黒サイレント 103分
1929年 和製喧嘩友達 松竹蒲田 野田高梧 渡辺篤、吉谷久雄、浪花友子、結城一朗、高松栄子 白黒サイレント77分
1929年 大学は出たけれど 松竹蒲田 高田稔、田中絹代、鈴木歌子、大山健二、日守新一 白黒サイレント70分
1929年 会社員生活 松竹蒲田 斎藤達雄、吉川満子、小藤田正一、加藤精一、青木富夫 白黒サイレント57分 現存せず
1929年 突貫小僧 松竹蒲田 斎藤達雄、青木富夫、坂本武 白黒サイレント38分
1930年 結婚学入門 松竹蒲田 栗島すみ子、斎藤達雄、高田稔、龍田静枝、岡本文子 白黒サイレント71分 現存せず
1930年 朗かに歩め 松竹蒲田 高田稔、川崎弘子、吉谷久雄、伊達里子、坂本武 白黒サイレント98分
1930年 落第はしたけれど 松竹蒲田 斎藤達雄、田中絹代、月田一郎、二葉かほる、笠智衆 白黒サイレント64分
1930年 その夜の妻 松竹蒲田 岡田時彦、八雲恵美子、市村美津子、山本冬郷、斎藤達雄、笠智衆 白黒サイレント65分
1930年 エロ神の怨霊 松竹蒲田 斎藤達雄、星ひかる、伊達里子、月田一郎 白黒サイレント27分 現存せず
1930年 足に触つた幸運 松竹蒲田 斎藤達雄、吉川満子、青木富夫、市村美津子 白黒サイレント74分 現存せず
1930年 お嬢さん 松竹蒲田 栗島すみ子、岡田時彦、斎藤達雄、田中絹代、岡田宗太郎 白黒サイレント135分 現存せず
1931年 淑女と髯 松竹蒲田 岡田時彦、川崎弘子、伊達里子、月田一郎 白黒サイレント74分
1931年 美人哀愁 松竹蒲田 岡田時彦、斎藤達雄、井上雪子、岡田宗太郎 白黒サイレント158分 現存せず
1931年 東京の合唱 松竹蒲田 岡田時彦、八雲恵美子、斎藤達雄、坂本武、菅原秀雄、高峰秀子 白黒サイレント90分
1932年 春は御婦人から 松竹蒲田 城多二郎、斎藤達雄、井上雪子、泉博子、坂本武 白黒サイレント74分 現存せず
1932年 大人の見る繪本 生れてはみたけれど 松竹蒲田 斎藤達雄、吉川満子、菅原秀雄、突貫小僧 白黒サイレント91分
1932年 青春の夢いまいづこ 松竹蒲田 江川宇礼雄、斎藤達雄、田中絹代、大山健二、笠智衆 白黒サイレント91分
1932年 また逢ふ日まで 松竹蒲田 岡田嘉子、岡譲二、奈良真養、川崎弘子、飯田蝶子 白黒音響版 78分 現存せず
1933年 東京の女 松竹蒲田 岡田嘉子、江川宇礼雄、田中絹代、奈良真養 白黒サイレント47分
1933年 非常線の女 松竹蒲田 田中絹代、岡譲二、水久保澄子、三井秀男 白黒サイレント100分
1933年 出来ごころ 松竹蒲田 坂本武、大日方伝、伏見信子、突貫小僧、飯田蝶子 白黒サイレント100分
1934年 母を恋はずや 松竹蒲田 吉川満子、大日方伝、三井秀男、岩田祐吉、奈良真養、加藤清一 白黒サイレント93分
1934年 浮草物語 松竹蒲田 坂本武、八雲理恵子、坪内美子、飯田蝶子、三井秀男、突貫小僧 白黒音響版89分
1935年 箱入娘 松竹蒲田 飯田蝶子、田中絹代、坂本武、突貫小僧、竹内良一、吉川満子 白黒音響版67分 現存せず
1935年 東京の宿 松竹蒲田 坂本武、岡田嘉子、突貫小僧、末松孝行、小嶋和子、飯田蝶子 白黒音響版80分
1936年 大学よいとこ  松竹蒲田 近衛敏明、笠智衆、高杉早苗、小林十九二、大山健二 白黒音響版86分 現存せず
1936年 鏡獅子 国際文化振興会/松竹大船 (記録映画)六代目尾上菊五郎、松永和楓、柏伊三郎 白黒初のトーキー24分
1936年 一人息子 松竹大船 飯田蝶子、日守新一、坪内美子、笠智衆、吉川満子、葉山正雄 白黒トーキー87分
1937年 淑女は何を忘れたか 松竹大船 斎藤達雄、栗島すみ子、桑野通子、佐野周二 白黒75分
1941年 戸田家の兄妹 松竹大船 佐分利信、高峰三枝子、葛城文子、斎藤達雄、吉川満子、三宅邦子 白黒105分
1942年 父ありき 松竹大船 笠智衆、佐野周二、坂本武、水戸光子、津田晴彦、佐分利信、大塚正義 白黒94分
1947年 長屋紳士録 松竹大船 飯田蝶子、青木放屁、河村黎吉、笠智衆、吉川満子、坂本武、高松栄子 白黒71分
1948年 風の中の牝雞 松竹大船 田中絹代、佐野周二、村田知英子、笠智衆、坂本武、高松栄子、三井弘次 白黒84分
1949年 晩春 松竹大船 原節子、笠智衆、月丘夢路、宇佐美淳、杉村春子、三島雅夫、三宅邦子、坪内美子 白黒108分
1950年 宗方姉妹 新東宝 田中絹代、高峰秀子、上原謙、山村聰、堀雄二、高杉早苗、笠智衆、斎藤達雄 白黒112分
1951年 麦秋 松竹大船 原節子、笠智衆、淡島千景、菅井一郎、東山千栄子、三宅邦子、杉村春子、佐野周二 白黒125分
1952年 お茶漬の味 松竹大船 佐分利信、木暮実千代、鶴田浩二、津島恵子、淡島千景、笠智衆、三宅邦子 白黒116分
1953年 東京物語 松竹大船 笠智衆、東山千栄子、原節子、山村聰、杉村春子、三宅邦子、香川京子、東野英治郎、中村伸郎、十朱久雄、大坂志郎、桜むつ子、長岡輝子 白黒136分
1956年 早春 松竹大船 池部良、淡島千景、岸惠子、高橋貞二、中北千枝子、浦辺粂子、笠智衆、山村聰、三宅邦子、加東大介、三井弘次、田浦正二、杉村春子、宮口精二 白黒144分
1957年 東京暮色 松竹大船 原節子、有馬稲子、笠智衆、山田五十鈴、田浦正巳、高橋貞二、中村伸郎、杉村春子、宮口精二、須賀不二夫、信欣三、三好栄子 白黒140分
1958年 彼岸花 松竹大船 佐分利信、田中絹代、山本富士子、有馬稲子、久我美子、佐田啓二、高橋貞二、浪花千栄子、中村伸郎、桑野みゆき、笠智衆 カラー118分
1959年 お早よう 松竹大船 設楽幸嗣、島津雅彦、三宅邦子、笠智衆、佐田啓二、久我美子、杉村春子、高橋とよ、沢村貞子、長岡輝子、東野英治郎 カラー94分
1959年 浮草 大映 中村鴈治郎、京マチ子、若尾文子、川口浩、杉村春子、三井弘次、田中春男、潮万太郎 カラー119分
1960年 秋日和 松竹大船 原節子、司葉子、佐分利信、岡田茉莉子、佐田啓二、中村伸郎、北竜二、桑野みゆき、三宅邦子、沢村貞子、三上真一郎、高橋とよ、桜むつ子、笠智衆、岩下志麻 カラー128分
1961年 小早川家の秋 宝塚映画 中村鴈治郎、原節子、新珠三千代、小林桂樹、司葉子、森繁久彌、浪花千栄子、加東大介、宝田明、団令子、白川由美、山茶花究、藤木悠、杉村春子 カラー103分
1962年 秋刀魚の味 松竹大船 笠智衆、岩下志麻、岡田茉莉子、佐田啓二、東野英治郎、杉村春子、中村伸郎、北竜二、加東大介、吉田輝雄、三宅邦子、高橋とよ、岸田今日子 カラー113分

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説明を排した映画作りによって、14歳の少女の自死の意味を切実に問う。

Mouchette(1967).jpg少女ムシェット [DVD]2.jpg少女ムシェット.jpg 少女ムシェット ポスター.jpg 少女ムシェット・映画.jpg 少女ムシェット・パンフ裏.jpg
少女ムシェット」DVD /ポスター/映画チラシ Mouchette(1967)
少女ムシェット [DVD]」['10年]

 原作は、1926年に発表されたフランスのカトリック作家ジョルジュ・ベルナノス(1888‐1948) 少女ムーシェット 単行本 2.jpgの『悪魔の陽の下に』の第1部にあたる「少女ムーシェット」を元に、ベルナノス自身が単独の物語として翻案したもの。病気の母、乱暴な父のいる貧しい家庭で、同年代の少年や少女たちからも侮蔑され、身勝手な大人たちには弄ばれ、生の暗闇の中で喘ぐ孤独な少女を描いたものです。すべてに絶望した少女は最後に自殺しますが、カトリックは自殺を容認しないはずで、カトリック作家がこうした作品を書いていること自体がある意味驚きと言えるかもしれません。

少女ムシェット2.jpg これを映画化したロベール・ブレッソン(1901‐1999)監督は、主演のムシェット役のナディーヌ・ノルティエをはじめ殆ど素人の俳優だけを使って、貧困と孤独、更に大人たちの偽善と無慈悲に晒され、「絶望」が日常と化している14歳の少女の境遇と、彼女が自死に至るまでを、モノクロームの映像で淡々と描いています。

MOUCHETTE 1967 1.jpg ラストで少女が池のそばの草の上を何度か転がるシーンがあり、一体何をしているのかと思ったら、その後で水音が聞こえて波打つ水面が映り、そしてそのまま暗転しエンドマークという流れで終わり、「えっ、そうなの」という感じで、初めて観た時はショックを受けました。

MOUCHETTE 1967 2.jpg 彼女が死というものをどこまで認識し、またそれなりの覚悟があってのことなのか(彼女が纏った美しい布は、彼女の死への憧憬の象徴ともとれる)。
MOUCHETTE 1967 3.jpg 但し、ベルナノスの原作のコンテクストからすれば、自らの命を絶つことに彼女なりの1つの、唯一の救いがあり、それを神も受容するであろうということになるのでしょう。この映画は、それだけの説得力を持った作品です。

 ムシェットが遊園地のバンピング・カーで遊ぶ場面では、少女らしい歓びが奔出しているように見えましたが、それだけにラストとの対比で、そのシーンも切なく甦ってきます。

MOUCHETTE 1967 4.jpg この映画の中で、少女は多くを語りはしないし、そもそも、語る相手もいません(殆ど無言の演技が延々と続くシーンが多い)。とにかくブレッソンは、こうした、いわゆる物語的説明を徹底的にそぎ落とした映画の作り方をよくする監督で、そのお陰でこの映画も通俗的な"薄幸少女物語"に堕することなく、原作の本題である、「死」は14歳の少女にとって唯一の救いであったと言えるのでないかという問いを、観る者に切実に突きつけてきます。 

MOUCHETTE 1967 4.jpg少女ムシェット621.jpg 多分10年以上の上映権切れの期間があったはずで、まさか復活してDVDに少女ムシェット 12.jpgなるとは思ってもみませんでしたが、「子供の自死」というのは、ある意味で今日的テーマでもあるかも知れません。
MOUCHETTE
 

ロベール・ブレッソン(Robert Bresson)
ロベール・ブレッソン(Robert Bresson).jpgMOUCHETTE 1967.jpg「少女ムシェット」●原題:MOUCHETTE●制作年:1967年●制作国:フランス●監督:ロベール・ブレッソン●撮影:ギスラン・クロケ●音楽:クラウディオ・モンテヴェルディ/ジャン・ウィエネル●原作:ジョルジュ・ベルナノス 「少女ムーシェッ文芸坐.jpgト」●時間:80分●出演:ナディーヌ・ノルティエ/ポール・エベール/マリア・カルディナール/ジャン=クロード・ギルベール/ジャン・ヴィ文芸坐休館.jpgムネ●日本公開:1974/09●配給:エキプ・ド・シネマ●最初に観た場所:池袋文芸坐 (78-06-22) ●2回目:池袋文芸坐 (78-06-23)(評価★★★★★)●併映:「白夜」(ロベール・ブレッソン)
池袋文芸坐 1997(平成9)年3月6日閉館/2000(平成12)年12月12日〜「新文芸坐」 

《読書MEMO》
スアンドレイ・タルコフスキーが選ぶベスト映画10(from 10 Great Filmmakers' Top 10 Favorite Movies)
『田舎司祭の日記』"Diary of a Country Priest"(1950/仏)監督:ロベール・ブレッソン
②『冬の光』"Winter Light"(1962/瑞)監督:イングマール・ベルイマン
③『ナサリン』"Nazarin"(1958/墨)監督:ルイス・ブニュエル
『少女ムシェット』"Mouchette"(1967/仏)監督:ロベール・ブレッソン
⑤『砂の女』"Woman in the Dunes"(1964/米)監督:勅使河原宏
⑥『ペルソナ』"Persona"(1966/瑞)監督:イングマール・ベルイマン
⑦『七人の侍』"Seven Samurai"(1954/日)監督:黒澤明
⑧『雨月物語』"Ugetsu monogatari"(1953/日)監督:溝口健二
⑨『街の灯』"City Lights"(1931/米)監督:チャーリー・チャップリン
⑩『野いちご』"Smultronstället"(1957/瑞)監督:イングマール・ベルイマン

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『評決』の続編。本格リーガル・サスペンスだが、エンタメ要素もふんだんに。

決断 バリー・リード.jpg  評決 dvd.jpg 評決 ニューマン チラシ.jpg 『評決』(1982) 2.jpg
決断 (ハヤカワ文庫NV)』['97年]/「評決 [DVD]」/映画「評決」チラシ/「評決」の1シーン

 アル中から立ち直った弁護士フランク・ギャルヴィンは、今や一流法律事務所で出世街道をひた走っていたが、ある日、若い女性弁護士ティナから巨大製薬会社の薬害訴訟の被害者側の弁護を依頼される。しかし、その訴訟は勝目が無い上に、その製薬会社はギャルヴィンの所属事務所の大手顧客であったため、彼は弁護を断わり、代わりに恩師の老弁護士モウ・カッツを紹介する。訴訟は提訴され、ギャルヴィンは図らずも製薬会社側の弁護を命じられ、恩師と女性弁護士、更には事務所を辞めたかつての部下らと対峙することになる―。

 1980年にデビュー作『評決』(原題:The Verdict、'83年/ハヤカワ・ミステリ文庫)を発表したバリー・リード(Barry C. Reed 1927-2002)が、11年後の1991年に発表した、『評決』の続編で(原題:The Choice)、医療ミスに関する訴訟を扱った前作の『評決』は、「十二人の怒れる男」のシドニー・ルメット監督、「明日に向かって撃て!」のポール・ニューマン(1925-2008)主演で映画化('82年/米)され、アル中のため人生のどん底にあった中年弁護士ギャルヴィンの、甦った使命感と自らの再起を賭けた法廷での闘いが描かれていました。

"The Choice" Barry C. Reed (Paperback 1992)

 本作『決断』では、弁護士として功名を成したギャルヴィンは、専ら大企業の弁護をするボストンの一流法律事務所のパートナー弁護士になっていて、その分刻みでのビジネスライクな仕事ぶりに、最初はすっかり人が変わってしまったみたいな印象を受けますが、やはりギャルヴィンはあくまでギャルヴィンであり、最後どうなるか大方の予想がつかなくもありませんでした。

 中盤までは、法律事務所の仕事ぶりや裁判の経緯がこと細かく描かれていて、バリー・リード自身が医療ミス事件としては史上最高額の評決を勝ち取ったことがある法律事務所に属していた辣腕弁護士であっただけに、本格的なリーガル・サスペンスという感じで、同じ弁護士出身の作家でも、『法律事務所』(1991年発表、'92年/文藝春秋)のジョン・グリシャムのよりも、弁護士としての実績では遥かにそれを上回る『推定無罪』(1987年発表、'88年/文藝春秋)のスコット・トゥローの作風に近い感じがしました。

 結末の方向性は大体見えているし、審理の過程を楽しむ"通好み"のタイプの作品かなと思って読んでいたら、『評決』同様乃至はそれ以上に終盤は緊迫したドンデン返しの連続で、一時は法廷を飛び出してスパイ・ミステリみたいになってきて、相変わらず女性との絡みもあり、大いに楽しませてくれました。

 映画化されたら「評決」と同じかそれ以上に面白い作品になるのではないかとも思いましたが、やはり、主人公がどん底から這い上がって来て、人生の逆転劇を演じるような作品の方がウケルのかなあ(『決断』は映画化されていない)。

 但し、こうした作品が映画化される場合、「評決」の時もカルテの書き換えとそれに関する偽証に焦点が当てられていたように、細かい箇所は端折って、どこか一点に絞ってクローズアップされる傾向にあり、リーガル・サスペンスとしての醍醐味は、やはり原作の方が味わえるのではないかと思います。

 振り返れば、女性の使われ方が『評決』とやや似かよっていて、また、証人の証言に比重がかかり過ぎているようにも思えましたが、後半からラストまでは息つく間もなく一気に読める作品でした(読んでいて、どうしてもギャルヴィンにポール・ニューマンを重ねてイメージしてしまう。映画化されていないのは、続編が出るのが遅すぎて、ポール・ニューマンが歳をとりすぎてしまっていたこともあるのか?)。

評決 ペーパーバック.jpg評決 ポール・ニューマン.jpg 映画「評決」は、当初アーサー・ヒラー監督、ロバート・レッドフォード主演で制作が予定されていたのが、アーサー・ヒラーが創作上の意見不一致を理由に降板、ロバート・レッドフォードもアル中の役は彼のイメージにそぐわないとの理由で見送られ、企画は頓挫し、脚本も途中で何回も書き直されることになったそうです。

 結局、監督はシドニー・ルメットに(彼が選んだ脚本は一番最初に没になったものだった)、主演は「明日に向かって撃て!」でレッドフォードと共演した評決 新宿ロマン1.jpg評決 新宿ロマン2.jpgポール・ニューマンになり、そのポール・ニューマン自身、「自分の長いキャリアの中で初めてポール・ニューマン以外の人物を演じた」と述べたそうですが、そうした彼の熱演もあって、リーガル・サスペンスと言うより人間ドラマに近い感じに仕上がっているように思いました。

評決 ニューマン.jpg ちょうどアカデミー賞の受賞式を日本のテレビ局で放映するようになった頃で、ポール・ニューマンの初受賞は堅いと思われていましたが、「ガンジー」のベン・キングズレーにさらわれ、4年後の「ハスラー2」での受賞まで持ち越しになりました。映画の内容の方は、より一般向けに原作をやや改変している部分もありますが、ポール・ニューマンの演技そのものにはアカデミー賞をあげてもよかったのではないかと思いました。

The Verdict (1982).jpgThe Verdict (1982)
評決」●原題:THE VERDICT●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:シドニー・ルメット●製作:リチャード・D・ザナック/デイヴィッド・ブラウン●脚本:デイヴィッド・マメット●撮影:アンジェイ・バートコウィアク●音楽:ジョニー・マンデル●時間:129分●出演:ポール・ニューマン/シャーロット・ランプリング/ジャック・ウォーデン新宿ロマン.png新宿ロマン劇場2.jpg/ジェームズ・メイスン/ミロ・オシア/エドワード・ビンズ/ジュリー・ボヴァッソ/リンゼイ・クルーズ/ロクサン・ハート/ルイス・J・スタドレン/ウェズリー・アディ●日本公開:1983/03●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:新宿ロマン劇場(83-05-03)(評価:★★★☆)
新宿ロマン劇場 明治通り・伊勢丹向かい。1946年新宿松竹館→新宿大映→新宿ロマン劇場 1989(平成元)年1月16日閉館

「FNNスーパータイム」1989(平成元)年1月17日放送(アンカーマン 逸見政孝・安藤優子)

【1997年文庫化[ハヤカワ文庫NV]】

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乾いた演出と映像詩のようなトーンが新鮮な「スト・パラ」。ラストが爽やかな「ダウン・バイ・ロー」。
ストレンジャー・ザン・パラダイスdvd.jpg 『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(1984)2.jpg ダウン・バイ・ローdvd.jpg DOWN BY LAW01.jpg
ストレンジャー・ザン・パラダイス [DVD]」 「ダウン・バイ・ロー コレクターズ・エディション [DVD]

ストレンジャー・ザン・パラダイス1.jpg ニューヨークに住むウィリー(ジョン・ルーリー)は、クリーブランドに住む叔母が入院する間、ハンガリー出身の16歳の従妹エヴァ(エスター・バリント)を預かることになり、エヴァ、ウィリー、ウィリーの賭博友達エディ(リチャード・エドソン)の3人の奇妙な生活が始まる―。
 最初、ニューヨークを舞台にする「The New World」が短編作品として制作され、ヴィム・ヴェンダースに才能を認められたジム・ジャームッシュが彼から生フィルムを譲り受け、ジョン・ルーリーとの共同脚本で、続くクリーブランドを舞台とする「One Year Later」、フロリダを舞台とする「Paradise」を撮影したという3部作。

ストレンジャー・ザン・パラダイス2.jpg というわけで、ジム・ジャームッシュの前作「パーマネント・バケーション」('80年)もそうですが、自主制作フィルムの雰囲気を保っていて、それを3本繋ぎ合せたという感もあり、ストーリーはあって無いようなシンプルなもの。

『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(1984).jpg 一応はロード・ムビーのような体裁をとっていて(途中からか)、ウィリーとエディがエヴァを誘って雪のエリー湖に行ったり、南国フロリダに行ったりしていますが、ストーリーよりも3人の、ぎこちないようで自然体でもあるように見える不思議な関係を、淡々としたモノクロームのカメラワークで描いており(殆どワンシーン・ワンショットで撮られている)、その演出と映像のトーンそのものが新鮮でした(時に映像詩のような印象も)。

 映画データベースで「コメディ」に分類されていましたが、確かにドッグレースや競馬などに入れあげる男2人は浮いたり沈んだりで、一方で、エトランゼであるエヴァの下にひょんなことから大金が入るというのは確かに可笑しい。でも、最初からストーリーで見せようという作品ではなく、3人の演技しているのか演技していなのかよく分からないような遣り取りの細部においてクスッと笑わせるような作品であり、何とも言えない不思議な仕上がりです。それでいて、ウィリーのエヴァに寄せる仄かな想い(妹を想いやるような感情)が伝わって来て、観終わった後の余韻もいいです。

 次作「ダウン・バイ・ロー」('86年)もモノクロでしたが、3人の刑務所仲間の男の脱獄劇をユーモラスに描いていて、こちらの方がストーリー性は前面に出ている分(映画らしくなった分?)、原石の魅力はやや減少しましたが、これはこれでファンキーな味わいがあります。

ダウン・バイ・ロー1.jpg タイトルは「はみ出し者仲間」の意。刑務所仲間の超ノン気な脱獄道中で、今回も音楽も担当のジョン・ルーリーが演技でも相変わらず良く、そのジョン・ルーリーと、映画初出演のシンガーソングライター、トム・ウェイツのクールな2人に、後に「ライフ・イズ・ビューティフル」('98年)を監督・脚本・主演し、アカデミー賞主演男優賞・外国映画作品賞を受賞する、ロベルト・ベニーニが陽気に絡みます。

ダウン・バイ・ロー2.bmp 登場人物の行動が行き当たりばったりだったり、予期せぬ偶然に流されたりするのと、登場人物相互の関わり合いがカラッと乾いた感じで描かれているのは「スト・パラ」と同じで、最後に男達が、ごく当たり前のようにそれぞれの道へ別れていくのは、日本映画ではちょっと考えられないようなドライ且つ爽やかなエンディングでした。

ジョン・ルーリー.jpg ジョン・ルーリー(イイ男にも見えるし、ハ虫類系の顔にも見える)も、本職は役者ではなくサックス奏者で、両作品の音楽も担当していますが、多才な人だなあと。90年代にライム病という難病を発症して生死の境を彷徨い、音楽活動からは身を引きましたが、画家としての活動に創作意欲の捌け口を見出し、昨年('10年)には日本でも個展が開かれています(作品は夢の世界を描いたような水彩画が多く、画風は子供の描いた絵のように見えるものもあれば、幽玄な水墨画に近いものもある。やはり、大病したためただろうか)

Stranger Than Paradise(1984).jpg「ストレンジャー・ザン・パラダイス」●原題:STRANGER THAN PARADISE●制作年:1984年●制作国:アメリカ・西ドイツ●監督:ジム・ジャームッシュ●製作:サラ・ドライヴァー●脚本:ジム・ジャームッシ/ジョン・ルーリー●撮影:トム・ディチロ●音楽:ジョン・ルーリー●時間:90分●出演:ジョン・ルーリー/エスター・バリント/リチャード・エドソン/セシリア・スターク/ダニー・ローゼン/ラメルジー/トム・ディチロ/リチャード・ボーズ/ロケッツ・レッドグレア/ハーヴェイ・パー/ブライ新宿文化シネマ2.jpgアン・J.バーチル/サラ・ドライヴァー/ポール・スローン●日本公開:1986/04●配給:フランス映画社●最初に観た場所:新宿文化シネマ2(86-08-23)(評価:★★★★☆)●併映「真夏の夜のジャズ」(バート・スターン) Stranger Than Paradise(1984)
新宿文化シネマ2 2006(平成18)年9月15日閉館、2006(平成18)年12月9日〜文化シネマ1・4が「新宿ガーデンシネマ1・2」としてオープン(2006(平成18)年6月14日「角川シネマ館」に改称)、文化シネマ2・3が「シネマート新宿1・2」としてオープン

スバル座.jpgDOWN BY LAW02.jpg「ダウン・バイ・ロー」●原題:DOWN BY LAW●制作年:1986年●制作国:アメリカ・西ドイツ●監督・脚本:ジム・ジャームッシュ●製作:アラン・クラインバーグ●撮影:ロビー・ミューラー●音楽:ジョン・ルーリー●時間:107分●出演:トム・ウェイツ/ジョン・ルーリー/ロベルト・ベニーニ/ニコレッタ・ブラスキ/エレン・バーキン●日本公開:1986/11●配給:フランス映画社●最初に観た場所:有楽町・スバル座(86-12-14)(評価:★★★★)

「●た‐な行の外国映画の監督」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2426】 張藝謀 「初恋のきた道
「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「○都内の主な閉館映画館」の インデックッスへ(旧ユーロスペース・シアターN渋谷)「○存続中の映画館」の インデックッスへ(有楽町スバル座)

"赤"を基調としたダイナミックな映像美の張藝謀(チャン・イーモウ)初期作品2作がいい。

紅高梁 (中国版DVD).jpg RED SORGHUM1.jpg RED SORGHUM2.jpg 紅高梁
紅高梁 (中国版DVD)   コン・リー(鞏俐)(中央)
紅いコーリャン .jpg紅いコーリャン.jpg 1920年代末の中国山東省。私(語り手)の祖母・九児(チウアル)(鞏俐(コン・リー))は、ロバ一頭と引き換えに父に売られるように、親子ほども年の離れた病気持ち(ハンセン病)の造り酒屋の男に嫁ぐことになるが、御輿で嫁入りに向かう途中、強盗たちに襲われ、御輿の担ぎ手・余占鰲(ユイチャンアオ)(姜文(チアン・ウェン))に救われる。実家への里帰りの帰路でも、再び強盗が彼女を襲うが、強盗は余占鰲であり、互いに惹かれ合っていた2人は、コーリャン畑で結ばれる。やがて夫が行方不明となり、造り酒屋を継いだ九児は余と結婚、子供も生まれ、幸せな日々が続くのだが、やがてそこに日本軍が侵攻する―。「紅いコーリャン [DVD]

「紅いコーリャン」 チャン・イーモウ.jpgコン・リー(鞏俐)/チャン・イーモウ(張藝謀)
コン・リー.jpgチャン・イーモウ(張藝謀).jpg ベルリン国際映画祭のグランプリ金熊賞を受賞し、チャン・イーモウ(張藝謀)の名を世界に知らしめた作品で、神話的な雰囲気をも携えた骨太のストーリー、この作品がデビュー作でもあるコン・リー(鞏俐)をはじめとする役者陣の演技、"赤"を基調とした映像美等々の何れをとっても一級品であり、「中国映画にしては」といった上から目線での評価が入り込む余地がありません。
 "神話的"である一方で、日本軍の侵攻が始まってからの悲劇はリアルに描かれていて、抗日運動をしていた造り酒屋の番頭さんが、見せしめのため生きたまま頭皮を剥がされ、それを九児らは黙って見ているしかないという残酷なシーンもあり(江戸時代の刑罰より酷いなあ)、その際に強盗の頭目も並んで同様のやり方で処刑されるという、もう日本軍のやることは無茶苦茶という感じ。そうした日本軍を倒すために余らも立ち上がるが―。

 プロパガンダ的と言うよりも人間そのものをしっかり描いている感じで、度重なる悲劇に屈せず前向きに生きようとする主人公が、「風と共に去りぬ」のスカーレットみたいであり(たまたまこれも"赤系統"の名前だが)、赤を主体とした強烈な色彩美が印象的。ダイナミックなカメラワークも含め、この監督が将来、「HERO 英雄」('02年)のような娯楽映画を撮る予兆が、既にこの作品にもあったかも(ワイヤーアクションを駆使するところまでいくとは思わなかったが、実は「紅いコーリャン」もワイヤーにカメラを吊るして撮っているシーンが幾つもある)。

菊豆 dvd.jpg菊豆 dvd us版.bmp JUDOU.jpg Ju Dou(1990)
菊豆 [DVD]」/輸入版DVD
 「紅いコーリャン」では、それまでの中国現代映画にはないくらい大胆に"性"を描いていますが、「菊豆<チュイトウ>」('90年)はそれ以上であり、更には、現代に近い時代を扱った作品ではタブーとされてきた"不倫"を描いています。

菊豆3.jpg 菊豆1.bmp 菊豆2.jpg
 これも「紅いコーリャン」と同じように金で買われて旧家の染物屋に嫁入りした菊豆(チュイトウ)(鞏俐(コン・リー)が主人公で、彼女は夫のDV(性的サディズム)に苛まれた末に、同居の使用人の若い男を引き込んでその男と結ばれ、病に倒れ身体の自由がきかなくなった夫に代わって次第に家庭内での実権を握っていきますが、男との間に生まれた子供が実の子でないことを知った父親(菊豆の夫は実は不能だった)は子供を邪険にする―。

Ju Dou (1990).jpg 子供がダミアンみたいな悪魔っ子で、かなり怖いです。当初辛くあたっていた父親がやがて愛情をかけるようになったにも関わらず、誤って染料の壺に落っこちて今まさに溺死しようとしている父を見て、この子は助けようともせず不気味な笑みを浮かべています。

 この後、更にこの子の悪魔っ子ぶりはエスカレートし、実の父親をも―といった具合に"不倫"をしたことに対する「因果応報」的なストーリーになっているのがやや気になりましたが、原作は農家が舞台だそうで、それを染物屋に置き換えることで、「紅いコーリャン」以上に強烈に"赤"を前面に押し出している作品であり、そうした"映像"を見せることが主眼であり、ストーリーはそのためのモチーフに過ぎないという感じがしなくもない作品でした(それぐらい強烈な映像美)。

 かつて中国本土では、チャン・イーモウのこれらの初期作品は度々上映禁止になっていたそうですが、その知名度が世界的に広まったこともあって、'08年の「北京オリンピック開会式」や'09年の「建国60周年記念パレード」の演出を任されるなど、今や"国家的"なディレクターになってしまっている(体制にとり込まれた?)―それに伴って、初期の頃の斬新さは弱まり、ハリウッド映画のような作品を撮るようになってしまったという印象はします。

Hong gao liang(1987) コン・リー(鞏俐)
HONG GAO LIANG .jpgHong gao liang(1987).jpgコン・リー(鞏俐).jpg「紅いコーリャン」●原題:紅高梁(HONG GAO LIANG) /RED SORGHUM●制作年:1987年●制作国:中国●監督:張藝謀(チャン・イーモウ)●製作:呉天明(ウー・ティエンミン)●脚本:陳剣雨(チェン・チェンユイ)/朱偉(チュー・ウェイ)/莫言(モー・イェン)●撮影:顧長衛(クー・チャンウェイ)●音楽:趙季平(ヂャオ・チーピン)●原作:莫言(モー・イェン)「紅高梁」「高梁酒」●時間:91分●出演:鞏俐(コン・リー)/姜文(チアン・ウェン)/滕汝駿(トン・ ルーチュン)/劉継(リウ・チー)/錢明(チェン・ミン)/計春華(チー・チュンホア)●公開:1989/01●配給:ユーロスペース●最初に観た場所:渋谷ユーロスペース(89-02-18)(評価:★★★★☆)

シアターN渋谷.jpg旧・渋谷ユーロスペースシアターN渋谷 1982(昭和57)年渋谷駅南ユーロスペース1・2.jpg渋谷ユーロスペース.jpgシアターN.jpg口桜丘町にオープン、2005(平成17)年11月移転のため閉館。2006(平成18)年1月から渋谷円山町「Q-AXビル」に再オープン。旧ユーロスペース跡地に、2005年12月3日「シアターN渋谷」がオープン(2012年12月2日閉館)

菊豆<チュイトウ> .jpg「菊豆<チュイトウ>」●原題:菊豆 JUDOU●制作年:1990年●制作国:中国・日本●監督:張藝謀(チャン・イーモウ)●製作:徳間康快●脚本:劉恒(リュウ・ホン)●撮影:顧長衛(クー・チャンウェイ)●音楽:郭峰(クオ・フォン)●原作:劉恒(リュウ・ホン)「羲、伏羲」 ●時間:94分●出演:鞏俐(コン・リー)/李保田(リー・パオティエン)/李スバル座_2.jpg有楽町 スバル座内.jpg緯(リー・ウェイ)/張毅(チャン・イー)●日本公開:1990/04●配給:大映●最初に観た場所:有楽町スバル座(90-05-26)(評価:★★★★)
有楽町スバル座 1946年12月31日オープン後1953年火災により閉館、1966年有楽町ビル2Fに再オープン
 
莫言1.jpg莫言2.jpg 莫言(ばく げん、モー・イエン、1955 - )
2012年ノーベル文学賞受賞

雑誌「環球人物」/WEB NEWS「新华视点」

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ヘンリー・フォンダ、ヴィクター・マチュアが良く、モノクロの味わいがある「荒野の決闘」。

my-darling-clementine.jpg 荒野の決闘 dvd.jpg     GUNFIGHT AT THE O.K. CORRAL.jpg OK牧場の決斗 dvd.jpg
「荒野の決闘」輸入版ポスター/「荒野の決闘 [DVD] ヘンリー・フォンダ/「OK牧場の決斗」輸入版ポスター/「OK牧場の決斗 [DVD]」バート・ランカスター/カーク・ダグラス

Henry Fonda in My Darling Clementine.bmp 牛追いの旅の途中で逗留した墓場の町トゥームストーンで、牛を盗まれ末弟を殺されたワイアット・アープ(ヘンリー・フォンダ)ら兄弟は、犯人を捜すべく町に留まり保安官職を引き受けるが、町には賭博師ドク・ホリディ(ヴィクター・マチュア)がいた。ワイアットは根っからの悪人ではないドクに一目置き、友情を抱く。やがてドクを追って東部からクレメンタイン(リンダ・ダーネル)という女性が来て、ワイアットは密かに恋心を抱くも彼女のドクへの想いを知り、その希望を叶えるためにも酒浸りのドクに酒を控えるよう忠告するが、は自らが病気であることを悟るドク、彼女につれない態度をとる―。
ヘンリー・フォンダ/リンダ・ダーネル

my darling clementine.jpg『荒野の決闘』(1946).jpg 「荒野の決闘」は1946年のジョン・フォード作品ですが、ヘンリー・フォンダの映画と言ってもいいかも(そもそも、ジョン・フォードがジョン・ウェインを使わずヘンリー・フォンダを起用している点が興味深い)。もの静かながらも正義感と責任感を裡に秘め、武骨ながらも時にユーモアも見せるヘンリー・フォンダ独特のワイアット・アープ像が印象的でした。

 '82年リヴァイバル公開時の「いとしのクレメンタイン」というタイトル(実はこれが原題)からしても、メロドラマ的要素の強い作品のように思われていますが、ワイアット・アープとドク・ホリディの男の友情(精神的なホモ・セクシュアルに近い感じも)が軸となっている作品であるとも言えるのでは。

 弟を殺した犯人がクラントン一家と分かり、残されたアープ3兄弟はドク・ホリディと共に、牧場主クラントンと4人の息子兄弟を相手に戦うことになりますが、これが有名な「OK牧場の決闘」―。

My Darling Clementine (1946).jpg この作品の他にも「OK牧場の決斗」('57年/ジョン・スタージェス監督、バート・ランカスター、カーク・ダグラス主演)をはじめ何度か映画の素材になっており、90年代に入ってもトゥームストーン('93年/ジョージ・P・コスマトス監督、カート・ラッセル、ヴァル・キルマー主演)、ワイアット・アープ('94年/ローレンス・カスダン監督、ケヴィン・コスナー、デニス・クエイド主演)と続きましたが、比べると細部においてそれぞれ筋立てが異なる部分があって興味深いです。

 実際には「決闘」ではなく、保安官が銃所持者を武装解除しようとした際に牧舎付近で発生した突発的な銃撃戦だったそうですが(タイトル的には「OK牧場の決斗」の原題(Gunfight at the O.K. Corral)が正しく、僅か2分間で決着したという点は「トゥームストーン」が史実に忠実に作られている)、但し、それまでにアープ兄弟やドク・ホリディとクライトン一家の間で様々な確執があったのは事実のようです。

ビクター・マチュア.jpg 「荒野の決闘」では、ワイアット・アープとドグ・ホリディは酒場で出会って意気投合し、ドク・ホリディに惚れていた酒場の女が銃で撃たれる事件が起きて、ドクがその時に彼女の手術をしたために、彼が元医者であることが初めて皆に知れるというようになっていますが、「OK牧場の決斗」「トゥームストーン」「ワイアット・アープ」では2人は以前から親友だったことになっています。

ビクター・マチュア

 この他に、「荒野の決闘」では、町の酒場で酒ですっかりダメになった役者が荒くれ男たちに絡まれて無理矢理「演劇芸」をさせられるものの「ハムレット」の台詞を忘れて絶句したところ、ドグ・ホリディがつぶやくように後を続けるという場面があり、彼が東部で教育を受けたインテリであることが示唆されています(西部育ちの武骨なワイアット・アープは、只々茫然とそれを見遣る)。

 「荒野の決闘」のワイアット・アープが憧憬を抱いたクレメンタインのような清楚なキャラクターの女性は、「トゥームストーン」でもドグに寄り添う恋人が一応は登場しますが「OK牧場の決斗」には登場せず、代わりに「OK牧場の決斗」ではドグ・ホリディの"情婦"ケイト(ジョー・ヴァン・フリート)が登場し、これはかなりのあばずれ女(「荒野の決闘」の酒場女がこれに該当か)、一方のワイアット・アープの方も、「OK牧場の決斗」では美貌の女賭博師ローラ(ロンダ・フレミング)と、「トゥームストーン」では聡明な舞台女優と、「ワイアット・アープ」では町の美しい踊子と結ばれており、この辺りにくるとどれが本当の話かよく分かりませんが、少なくともドグ・ホリディの恋人に想いを馳せるといった三角関係のようなことは他の3作にはありません。

お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ.jpg 何よりも「荒野の決闘」が他の作品と異なるのは、この決闘でドク・ホリディが自らの命をあっさり投げ出してしまうことで(ジョン・フォードによって美化されている?)、実在の彼は21歳で肺結核に罹り、医師から余命数カ月と宣告されていたため"死に場所"を探していた可能性は高いですが、ホントは「決闘」 後6年間生きていて、享年は36歳、と言うことは、「決闘」時は30歳。一方ワイアット・アープは、「決闘」時は33歳で、80歳まで生きています。
 和田誠氏は『お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ』('75年/文藝春秋)の中で「OKコラルの決闘は明治14年、ドグ・ホリディが死んだのは明治20年、ワイアット・アープが死んだのは昭和4年だそうである」と、いつ頃のことか想像し易いよう和暦に置き換えて書いています。
お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ

「OK牧場の決闘」チラシ
OK牧場の決闘 チラシ.jpgGunfight at the O.K. Corral2.jpg 「OK牧場の決斗」も西部劇の傑作には違いなく、アクション味やカタルシスの度合いは「荒野の決闘」より上かも知れませんが、個人的には「荒野の決闘」の静かな雰囲気の方が好きかなあ(モノクロームの味わいもある)。

バート・ランカスター/カーク・ダグラス

OK牧場の決斗09.jpg "娯楽作品"vs."文芸作品"という感じで、比較するのにOK牧場の決斗7.jpg無理があるかも知れませんが、ワイアット・アープ像は、保安官然とした「OK牧場の決斗」のバ―ト・ランカスターよりも、じわっと人間味が出ている「荒野の決闘」のヘンリー・フォンダの方カーク・ダグラス.jpgが上、ドグ・ホリディは誰が演じても受ける"映画向き"のキャラクターという気はしますが、これもヴィクター・マチュアの存在感が、カーク・ダグラス(これも、この作品でのバ―ト・ランカスターと比べると悪くはないが)を上回っているように思います(但し、先に挙げた和田誠氏の『お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ』によると、この映画でのヴィクター・マチュアの一般的評価はあまり高くないようだ)。

カーク・ダグラス

 因みにワイアット・アープは晩年ジョン・フォードと親交を持ち、そのことがフォードの映画作りにも影響しているようであり(結局、「荒野の決闘」が最も創意を含んでいる?)、この作品のワイアット・アープ、と言うよりヘンリー・フォンダは、「アメリカ的騎士道」の体現者といった感じがしました(「駅馬車」('39年)のジョン・ウェインにもそれが当て嵌まる。タイプは"動"のジョン・ウェインと"静"のヘンリー・フォンダで異なるが)。

OK牧場の決闘 ディミトリ・ティオムキン.jpg 「荒野の決闘」のテーマ曲「いとしのクレメンタイン」は、歌詞に"a miner, forty-niner"とあるように、ゴールドラッシュ時代を回顧したアメリカ民謡で、"Clementine"は亡くなった恋人(抗夫の娘)の名、日本では探検・登山家の西堀栄三郎が作詞した「雪山讃歌」として知られています。

 一方の「OK牧場の決斗」のテーマ曲も、同じくジョン・スタージェス監督の「荒野の七人」('60年)のテーマ曲などと並んで、西部劇のテーマ曲としては超有名で、フランキー・レイン(連続TVドラマ「ローハイド」のテーマもこの人が歌っていた)の歌が作中の場面の変わり目に何度か挿入され、歌詞がドラマの語り手のような役割を果たして効果をあげています。
Frankie Laine :Gunfight At The OK Corral 

「荒野の決闘」パンフレット
リンダ・ダーネル.jpg荒野の決闘 パンフレット.jpgMY DARLING CLEMENTINE.jpg「荒野の決闘(いとしのクレメンタイン)」●原題:MY DARLING CLEMENTINE●制作年:1946年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・フォード●製作:サミュエル・G・エンゲル●脚本:サミュエル・G・エンゲル/ウィンストン・ミラー●撮影:ジョー・マクドナルド●音楽:シリル・モックリッジ/アルフレッド・ニューマン●原-自由ヶ丘劇場2.jpgヒューマックスパビリオン自由が丘.jpg作:サム・ヘルマン/スチュアート・N・レイク●時間:97分●出演:ヘンリー・フォンダ/ヴィクター・マチュア/リンダ・ダーネル/キャシー・ダウンズ/ ウォルター・ブレナン/ウォード・ボンド/ティム・ホルト/ジョン・アイアランド/ジェーン・ダーウェル/アラン・モーブレイ/ラッセル・シンプソン/メエ・マーシュ/フランシス・フォード●日本公開:1947/08●配給:20世紀フォックス=セントラル●最初に観た場所:自由が丘・自由が丘劇場(85-02-17)(評価:★★★★)●併映「わが谷は緑なりき」(ジョン・フォード)
自由が丘劇場 自由が丘駅北口徒歩1分・ヒューマックスパビリオン自由が丘(現在1・2Fはパチンコ「プレゴ」)1986(昭和61)年6月閉館

「OK牧場の決闘」パンフレット
ロンダ・フレミング1.jpgOK牧場の決斗 パンフレット.jpg「OK牧場の決斗」●原題:GUNFIGHT AT THE O.K. CORRAL●制作年:1957年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・スタージェス●製作:ハル・B・ウォリス●脚本:レオン・ウーリス●撮影:チャールズ・ラング・Jr●音楽:ディミトリ・ティオムキン●原案:ジョージ・スカリン●時間:122分●出演:バート・ランカスター/カーク・ダグラス/ロンダ・フレミング/ライル・ベトガー/ジョン・アイアランド/Gunfight at the O.K. Corral(1957).jpgジョー・ヴァン・フリート/リー・ヴァン・クリーフ/アール・ホリマン/デニス・ホッパー/ケネス・トビー/デフォレスト・ケリー/ジャック・イーラム/ブライアン・ハットン/フランク・フェイレン/マーティン・ミルナー/オリーヴ・ケリー/テッド・デ・コルシア●日本公開:1957/07●配給:パラマウント映画(評価:★★★☆)
Gunfight at the O.K. Corral(1957) 

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逆境からスターになったマックイーンに相応しい作品。肉食系人種の強さを感じた。

パピヨン ポスター.jpgパピヨン 半券.jpgパピヨン パンフレット2.jpgパピヨン dvd.jpgパピヨン  タイムライフ社 1974 .jpg
映画ポスター/チケット/「映画パンフレット 「パピヨン」監督フランクリン・J・シャフナー 出演スティーブ・マックイーン」/「パピヨン-製作30周年記念特別版- [DVD]」/『パピヨン (1970年) (タイムライフブックス)

パピヨン縦1.JPG 実在の脱獄囚アンリ・シャリエール(1906-1973)が自らの数奇な半生を綴ったベストセラー小説のフランクリン・J・シャフナー監督による'73年の映画化作品。

 脚本はダルトン・トランボ(1905-1976)の遺作で、ハリウッドの赤dalton trumbo.jpg狩りで映画界から干され、「ジョニーは戦場へ行った」('71年/米)を匿名で書いたという気骨の脚本家兼映画監督ですが(「ローマの休日」('53年/米)の原作者・脚本家でもある)、映画の冒頭でDalton Trumbo PAPILLON.jpgギアナに送られる囚人達に「お前たちは祖国に見捨てられたのだ!」と威圧的に訓示する刑務所長役で出演しています(極めてアイロニカルな"お遊び"か)。

パピヨン1シーン.jpg パピヨン(スティーブ・マックイーン)が護送船上で債権偽造犯ドガ(ダスティン・ホフマン)に接近したのは、脱獄資金が要ると考えたためで(この時からもう脱獄を考えていた)、ドガは金を金属筒に入れて直腸内に隠し持っており、それを狙ってドガを殺そうとした囚人達からドガを救ったことで両者の絆は強まります。

パピヨン横2.JPG パピヨンが何度も逃亡を図って重禁固刑になる一方、ドガは隠し金を用いて一時は刑務所長代理のような立場にも就きますが、パピヨンの脱獄を助けようとした際に看守を殴ったため、成り行き上パピヨンと共に脱獄をすることになり、結局は捕まってしまい、パピヨンと同じく悪魔島に送られます。パピヨンの悪魔島からの最後の脱出では、ドガは土壇場で彼と行動を共にすることを躊躇し、そこに2人の生き方の違いが浮き彫りになっていますが、2人が強い友情で結ばれていることには変わりありません。

 ラストでパピヨンを見送るドガの、ダスティン・ホフマンの演技が良かったですが、実在のドガは1度も脱獄には参加することなく、悪魔島で15年の刑期を終えたそうです(しかし、アンリ・シャリエールの特赦活動をするなど、実際に友情関係にあった)。

パピヨン横3.JPG 一方、映画で2人と共に脱獄に加わったゲイの美男子マチュレットは、実際に1933年のアンリ・シャリエールの9度目の脱獄に、クルジオ(映画の中では看守との格闘に斃れる)と共に参加したそうで、映画ではマチュレットはその後の独房生活で獄死したことになっていますが、実際に獄死したのはクルジオであり、マチュレットは1944年のアンリ・シャリエールの悪魔島からの脱出(10度目)にも同行し成功しているので、ドガ、マチュレット、クルジオのそれぞれの役回りが部分的に置き換えられていることになります。

アンリ・シャリエール.jpg 原作にはこの他にもアンリ・シャリエールと友情関係にあり、彼を助ける多くの人物が登場し、アンリ・シャリエールという人はかなり律儀と言うか粘着気質ではなかったのかと思わせる記述の細かさで(単行本で上下巻2段組み各300ページ超、悪魔島から脱出する場面でまだ全体の3分の1を残している)、一方で、夢の中での審問官との遣り取りやインディオの部落での幻想的な体験がシュールに描かれていて、この部分は"小説"的な印象を受けますが、映画ではその部分も含め映像化されています(インディオの娘との恋物語とか、話を膨らませている部分もある。一夜にしてインディオ達がいなくなってしまうという話は原作には無く、こうした改変を加えるということは、原作に元々"小説"的要素があることを示唆しているのではないか)。

アンリ・シャリエール夫妻とスティーブ・マックイーン夫妻

Papillon (1973).jpgパピヨン _.jpgパピヨン縦2.JPG 貧しく不幸な家庭に生まれ、逆境から這い上がって大物スター俳優になったスティーブ・マックイーンに相応しい作品であり(この作品への彼の出演料は6億円!)、また、暗く狭い重禁固監獄で、腕立て伏せをして体力を保ち、ムカデやゴキブリまでスープに入れて栄養を摂って生き延びる主人公に、日本人とは異質の肉食系人種的な強さが感じられた作品でもありました。

 音楽はジェリー・ゴールドスミス。テーマ曲も良かったなあと思います(昔、学校の音楽の教科書に載っていた)。

Papillon (1973)            

「パピヨン」●原題:PAPILLON●制作年:1973年●制作国:アメリカ●監督:フランクリン・J・シャフナー●製作:ロベール・ドルフマン/フランクリン・J・シャフナー●脚本:ダルトン・トランボ/ロレンツォ・センプル・ジュニア●撮影:フレッド・J・キーネカンプ●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●原作:アンリ・シャリエール●時間:150分●出演:スティーブ・マックイーン/ダスティン・ホフマンパピヨンのテーマ.jpg/ロバパピヨン3.jpgート・デマン/ウッドロー・パーフリー/ドン・ゴードン/アンソニー・ザーブ/ヴィクター・ジョリー/ラトナ・アッサン/ウィリアム・スミザーズ/バーバラ・モリソン/ドン・ハンマー●日本公開:1974/03●配給:東宝東和●最初に観た場所:高田馬場パール座(77-12-10)(評価:★★★★☆)●併映「ゲッタウェイ」(サム・ペキンパー)
"パピヨン"がココナッツ筏に乗っているのを下から安定させているダイバーが見える。

パール座入口(写真共有サイト「フォト蔵」)①②高田馬場東映/高田馬場東映パラス ③高田馬場パール座 ④早稲田松竹
高田馬場パール座2.jpg高田馬場パール座 地図.pngパール座.jpg高田馬場パール座4.JPGパール座1.jpg高田馬場パール座(高田馬場駅西口、早稲田通り・スーパー西友地下) 1951(昭和26) 年封切館としてオープン。1963(昭和38)年の西友ストアー開店後、同店の地下へ。1989(平成元)年6月30日閉館。

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アメリカン・ニューシネマ代表作2本。もし配役が当初の予定通りだったら違った作品に?。

俺たちに明日はない dvd.jpg 俺たちに明日はない1シーン.jpg    明日に向かって撃て dvd.jpg 明日に向かって撃て! チラシ 1975.jpg
俺たちに明日はない [DVD]」/「俺たちに明日はない」1シーン/「明日に向って撃て! (特別編) [DVD]」/チラシ

俺たちに明日はない パンフ 73年リバイバル版.gif俺たちに明日はない 3.jpg 60年代アメリカン・ニューシネマの代表的な作品と言えば、'67年の「俺たちに明日はない」「卒業」、'68年の「ワイルドバンチ」、'69年の「イージー・ライダー」「明日に向って撃て!」「真夜中のカーボーイ」あたりでしょうか。

「俺たちに明日はない」パンフレット(1973年リバイバル版)

アメリカン・ニューシネマ '60~70 別冊太陽.jpg アメリカン・ニューシネマを最も象徴する作品を1つ挙げるとすれば、メッセージ性という点から「イージー・ライダー」を挙げる人もいるかも知れませんが、やはり、"アメリカン・ニューシネマ第1号作品"とも言えるアーサー・ペン(Arthur Penn、1922 -2010)監督の「俺たちに明日はない」(Bonnie and Clyde)がそれに該当するとするのが大方の見方ではないかという気がします(何せ、当初の監督候補には、フランソワ・トリュフォーやジャン=リュック・ゴダールといったヌーヴェルヴァーグの担い手の名が挙がっていたぐらいだし)。

アメリカン・ニューシネマ '60~70 別冊太陽 (構成=川本三郎・小藤田千栄子)

「俺たちに明日はない」1.jpg「俺たちに明日はない」2.jpg 名画座で初めて観た時には、既に公開から10年を経ており、それまでにリヴァイバル上映もされていて、おおよその展開を知ってはいましたが、それでも「死のバレエ」と言われるラスト・シーンを観た際の衝撃は大きく、併映の「真夜中のカーボーイ」(これもいい作品)を観終わった後で、また最初から見直しました(その後も何度かリヴァイバル・ロードショーなどで観た)。
俺たちに明日はない1.gif デヴィッド・ニューマンとロバート・ベントンの脚本に共感したウォーレン・ベイティが製作者として関わっていますが、当初は製作に専念する予定だったそうで、一方、彼の姉であるシャーリー・マクレーンが強くボニーの役を願っていたのが、ウォーレン・ベイティがクライド役に決定したためマクレーンは役から降り(脚本の原案では、クライドはバイセクシャルとして扱われていて、これが映画化が難航する原因となったが、映画化のために改変された脚本でもクライドの"不能"がモチーフとして使われているため、何れにせよ、実姉であるマクレーンは降りざるを得なかった)、その結果フェイ・ダナウェイに白羽の矢が立ったとのこと。フェイ・ダナウェイはこの作品で一躍知名度を上げました。

 冒頭の方にある、着替えをするフェイ・ダナウェイの背中を舐めるようなショットが印象的でしたが、ウォーレン・ベイティがクライドを演じなければ、あれも無かったか、または別の女優が演じていた?(この映画の雰囲気は殆どフェイ・ダナウェイが作っているとも言え、フェイ・ダナウェイとシャーリー・マクレーンとでは随分イメージが違うような気がする)

明日に向かって撃て/バート・バカラック 1969.bmp明日に向かって撃て パンフ 75年リバイバル版.jpg ジョージ・ロイ・ヒル(George Roy Hill、1922 -2002)監督の「明日に向って撃て!」(Butch Cassidy and the Sundance Kid)も思い出深い作品であり、「俺たちに明日はない」の約半年前に観たため、自分の中ではある意味、"ニューシネマ"というとこちらの作品になるという面もあります。

「明日に向かって撃て!」パンフレット(1975年リバイバル版)(左)/バート・バカラック・オリジナル・サウンドトラック版CD(右)

明日に向って撃て 1シーン.jpg 「俺たちに明日はない」と同様に実在の人物をベースとしたギャング・ストーリーであり、アメリカン・ニューシネマに特徴的な悲劇的結末を迎えますが、多分この作品で最も印象に残るのは、バート・バカラックの「雨にぬれても」が流れる中、ポール・ニューマン(Paul Newman、1925 - 2008)がキャサリン・ロスを自転車に乗せて走るシーンではないかと思われ、イメージとしては「俺たちに明日はない」より明るいというか、ソフィストケートされて和田 誠 氏.jpgいる印象を受けます。

 この「雨に濡れても」の自転車のシーンは、その後TVコマーシャルで随分マネものが作られましたが、和田誠氏は、このシーンを初めて観た時に「CMみたい」と思ったそうで(『お楽しみはこれからだ PART2―映画の名セリフ』('76年/文藝春秋))、その感覚は分かる気がします。

 当初予定されていた配役は、ポール・ニューマンと共同で脚本を買い取ったスティーブ・マックイーン(Steve McQueen、1930-1980)がブッチ役で、ポール・ニューマンがサンダンス役だったそうですが、マックイーンが都合により出演しなくなったため、ポール・ニューマンがブッチ役に回り、当時無名のロバート・レッドフォード(Robert Redford、1936-)がサンダンス役に抜擢されたとのこと。

明日に向かって撃て 01.jpg しかも、いきなりロバート・レッドフォードに白羽の矢が立ったわけではなく、最初はマーロン・ブランド(Marlon Brando、1924-2004)がポール・ニューマンの共演者としてサンダンス役をやることになっていたのが、キング牧師の暗殺事件にショックを受けた(本当に?)マーロン・ブランドが役を断った結果、ロバート・レッドフォードに初の大役が回ってきたというから、世の中わからないものです。

 もし、マックイーンとポール・ニューマンの組み合わせだったとすれば、或いはポール・ニューマンとマーロン・ブランドの組み合わせだったら、これも違った雰囲気の作品になっていたように思います。

 当初予定配役の変更により、結果として、「俺たちに明日はない」はフェイ・ダナウェイを、「明日に向って撃て!」はロバート・レッドフォードを、それぞれスターダムに押し上げた作品になったわけだなあと。
                        
俺たちに明日はない」.jpg「俺たちに明日はない」●原題:BONNIE AND CLYDE●制作年:1967年●制作国:アメリカ●監督:アーサー・ペン●製作:ウォーレン・ベイティ●脚本:デヴィッド・ニューマン/ロバート・ベントン/ロバート・タウン●撮影:バーネット・ガフィ●音楽:チャールズ・ストラウス●時間:122分●出演:ウォーレン・ベイティ/フェイ・ダナウェイ/ジーン・ハックマン/マイケル・J・ポラード銀座文化・シネスイッチ銀座.jpg/エステル・パーソンズ/デンヴァー・パイル/ダブ・テイラー/エヴァンス・エヴァンス/ジーン・ワイルダー●日本公開:1968/02●配給:ワーナー・ブラザーズ=セブン・アーツ●最初に観た場所:早稲田松竹(78-05-20)●2回目:銀座文化(88-06-18)(評価:★★★★)●併映(1回目):「真夜中のカーボーイウォーレン・ベイティ フェイ・ダナウェイ.jpg」(ジョン・シュレジンジャー)
2017年第89回アカデミー賞作品賞プレゼンター
フェイ・ダナウェイ(76)・ウォーレン・ベイティ(79)

早稲田松竹.jpg高田馬場a.jpg早稲田松竹 1951年封切館としてオープン、1975年からいわゆる「名画座」に
①②高田馬場東映/高田馬場東映パラス/③高田馬場パール座/④早稲田松竹
        
butch_cassidy_and_the_sundance_kid1.jpg「明日に向って撃て!」●原題:BUTCH CASSIDY AND THESUNDANCE KID●制作年:1969●制作国:アメリカ●監督:ジョージ・ロイ・ヒル●製作:ジョン・フォアマン●脚本:ウィリアム・ゴールドマン●撮影:コンラッド・L・ホール●音楽:バート・バカラック●時間:110分●出演:ポール・ニューマン/ロバート・レッドフォード/キャサリン・ロス/ストローザー・マーティン渋谷文化劇場.png/ジェフ・コーリー/ジョージ・ファース/クロリス・リーチマン/ドネリー・ローズ/ケネス・マース/ヘンリー・ジョーンズ●日本公開:1970/02●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:渋谷文化劇場(77-10-23)(評価:★★★★)●併映:「追憶」(シドニー・ポラック)

渋谷文化劇場 1952年11月17日、渋谷東宝会館地下にオープン 1989年2月26日閉館(1991年7月6日、跡地に渋東シネタワーがオープン)

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「チャンプ」に比べリアリティがある分、カタルシス効果は弱い。佳作だが地味か。

TABLE FOR FIVE 1982 5人のテーブル.jpg5人のテーブル チラシ.png 5人のテーブル ビデオ.jpg    飯野ビル.jpg
「5人のテーブル」輸入版VHS・チラシ/「5人のテーブル [VHS]」/内幸町・旧飯野ビル(手前中央)

Table For Five movie poster.jpg5人のテーブル 輸入版dvd.jpg もとプロゴルファーで現在は不動産屋のタネン(ジョン・ヴォイト)は、別れた妻(ミリー・パーキンス)のもとで育てられている3人の子供たちと年に一度過ごす期間に、夏の地中海を豪華客船で旅をするというプランを立てる。それは子供達の愛情を取り戻し、妻との復縁の為に無理をして実行した旅行だったが―。

 父親と息子の絆を描いた「チャンプ」('79年)で父親のプロボクサー役を演じたジョン・ヴォイトが、3年後のこの作品でもまた、自堕落により離婚し、今は何とか家族との絆を回復したいと考えている父親を演じています(この映画の製作も兼ねたジョン・ヴォイトの実生活における父親もプロゴルファーだった。娘は女優のアンジェリーナ・ジョリー)。

 主人公の父親が、酒などで身を持ち崩した離婚男であるのは「チャンプ」のボクサーと同じですが、いきなりエジプト旅行とかを思い立ったりして、性格的にもやや破綻気味なのが「チャンプ」とは異なる点で、"性格俳優"のジョン・ヴォイトが演じるにより相応しいキャラクターだったかも知れません。

 3人の子供(内1人はベトナム系養子)を連れての旅の最中にも、元妻以外の新たな相手女性を探し求めたりしていて、レストランでの食事で"5人席"を予約した腹の内を子供達に見透かされるなど、子供の方も「チャンプ」よりスレてきていていますが、そうしたことも含め、脚本にはリアリティがあったのでは。

5人のテーブル 1.jpg 別れた妻の再婚相手は弁護士であり、普通にエンタメ系ならば、こうした社会的地位のある強力なライバルとダメ男だった主人公が競い合って、最後は主人公が再び家族を取り戻すという風になりがちなのですが、この作品は必ずしもそうはなりません。

 「チャンプ」のような"大円団"的な終わり方にはならないので、「チャンプ」と同じくらい"泣ける映画"との触れ込みでロードにかかりましたが、カタルシス効果は弱いと思います。

TABLE FOR FIVE3.jpg 「父親とは何か」を考えさせる映画であり、但し、ここで求められている父親像は、ハリウッド映画の伝統的な「強い父親」像ともやや異なり、アメリカ映画というよりヨーロッパ映画を観ているみたいな感じでした("新たな相手女性?"役でマリー・クリスチーヌ・バローとか出てくるし)。

 70年代後半から80年代にかけては、日本の経済は安定成長期でしたが(その後、バブル経済に突入する)、片やアメリカは、景気が低迷して企業の生産性は落ち込み、リストラが横行して多くの労働者が失業に喘いでいました。

5人のテーブル2.jpg 「チャンプ」('79年)と「5人のテーブル」('82年)の2作品だけの比較で見るのは乱暴かもしれませんが、不況の時は「一発逆転」的なドリーミィな作品がウケるかも知れないけれども、あまりに不況が長引くと、そんな"夢物語"のような話は次第に受け容れられにくくなり、こうしたリアルな脚本になったのではないかとも。

 豪華客船での地中海クルーズという見た目の派手さとは逆に、作品そのものの印象が、"佳作"ではあるが地味ということになるのはそのせいでしょう。世の景気は映画の作風に影響するのかも(ビデオ化はされているが、DVDは見当たらない。"バブル直前の日本"向きの作品ではなかった?)。

 霞が関(内幸町)・飯野ビル内「イイノホール」での試写会で鑑賞しました(試写会で映画を観るというのは個人的には滅多にないことなのだが、たまたま勤め先の近くだったので)。霞が関のど真ん中、地下鉄「霞が関」駅の真上に、これだけの敷地を使って9階建とは勿体ないと常々思っていたら(隣の日比谷中日ビルも10階建とそう高くはないが)、この度、約半世紀ぶりに建て替えられることになりました(新ビルは27階建、ホールの席数は600超→500席に減る)。

「5人のテーブル」●原題:TABLE FOR FIVE●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・リーバーマン●製作: ロバート・シャッフェル/ジョン・ヴォイト●脚本:デイヴィッド・セルツァー●撮影:ヴィルモス・ ジグモンド●音楽:ジョン・モリス●時間:122分●出演:ジョン・ヴォイト/リチャード・クレンナ/ミリー・パーキンス/マリー・クリスチーヌ・バロー/ロクサーナ・ザル/ロビー・カイガー/ソン・ホアン・ブイ/ケヴィン・コスナー●日本公開:1983/03●配給:日本ヘラルド●最初に観た場所:霞が関・新イイノホール.jpgイイノホール(83-03-01)(評価:★★★☆)

飯野ビル3.jpgイイノホール地図.jpg旧イイノホール 1960年10月霞が関・飯野ビル内に、試写会、舞踊・演劇・落語公演、会議・セミナー用多目的ホールとしてオープン。2007(平成19)年10月30日閉館。2011(平成23)年11月再オープン予定。

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子役を使って泣かせるなんてアザトイと思いながらも、やはり泣けてしまう...。
チャンプ dvd.jpg THE CHAMP.jpg  新宿ピカデリー.jpg 新宿ピカデリー 新館.jpg
チャンプ [DVD]」 Ricky Schroder and Jon Voight  旧・新宿ピカデリー(2006年閉館)/新・新宿ピカデリー

「チャンプ」 (79年/米).jpgチャンプ 輸入版ポスター.jpg いつの日か栄光の座に返り咲くことを夢見る元世界チャンピオンのボクサー(ジョン・ヴォイト)と、彼を尊敬し今もチャンプと呼ぶ息子(リッキー・シュローダー)の親子の絆、それに別れた妻(フェイ・ダナウェイ)が絡んでの家族愛を描いた作品で、日本でも大いにヒットしました。

 「ロミオとジュリエット」 ('68年/英・伊) 、「ブラザー・サン シスター・ムーン」('72年/英・伊)のフランコ・ゼフィレッリ監督よるキング・ヴィダー監督の同名作品('31年)のリメイクですが、子役リッキー・シュローダーの演技が絶賛され、これはフランコ・ゼフィレッリの演出によるところが大きいのではないかと個人的には思いました(この監督は、アッシジのフランチェスコの半生を描いた「ブラザー・サン シスター・ムーン」('72年/伊)でも素人に近い役者を使っていたが、主演のグレアム・フォークナーは聖人になりきっていた)。

輸入版ポスター

 もともとイタリア映画(イタリア人監督の映画)には、ビットリオ・デ・シーカの「自転車泥棒」('48年)からエルマンノ・オルミの「木靴の樹」('78年)にまで連なるネオレアリズモの流れがあり、共通する要素は"素人"乃至"子役"を旨く使っていることではないかとも思ったりします。

チャンプ 1979 03.jpg 37歳でチャンピオン戦というのはかなり無理があるなあとか(実際、当時はボクシングを冒涜しているとの批判もあったが、ジョン・ヴォイドのボクシング・スタイルは、「ロッキー」のシルベスター・スタローンのそれなどよりはずっと本モノぽかった)、或いは、子役を使って泣かせるなんてアザトイなあとか、やや斜に構えて観ていても、やはり結局最後は泣けてしまいます。

チャンプ(1931).jpg 個人的には子役の演技にはやや鼻につく面もありましたが、強さと弱さの両面を併せ持つ父親を演じたジョン・ヴォイドの演技がそれをカバーしているように思いました。フェイ・ダナウェイも含め、"ベテランが脇を固める"というパターンか。因みに、この作品は、キング・ヴィダー監督の1931年作品のリメイクですが、旧作の方は未見。小津安二郎の「出来ごころ」('34年)のヒントとなった作品でもあるそうです。

「チャンプ」(1931)

 上映後に女性客がみんな泣いているのでちょっと気恥ずかしかった記憶がありますが(今ここで流されている涙を全部かき集めたらどれぐらいになるのだろうかなどと余計な事を考えてしまうのが自分の悪い癖)、とは言え、映画を観て涙を流すことが皆無になったら、映画館に行って映画を観る意味は無くなるのかも知れない...。

チャンプ 1979 01.jpg「チャンプ」●原題:THE CHAMP●制作年:1979年●制作国:アメリカ●監督:フランコ・ゼフィレッリ●製作:ダイソン・ロヴェル●脚本:本 ウォルター・ニューマン●撮影:フレッド・コーネカンプ●音楽:デイヴ・グThe Champ (1979).jpgルーシン●原作:フランシス・マリオン●時間:123分●出演:ジョン・ヴォイト/フェイ・ダナウェイ/リッキー・シュローダー/ジャック・ウォーデン/アーサー・ヒル/ジョーン・ブロンデル/ストロザー・マーティン●日本公開:1979/07●配給:MGM映画=CIC●最初に観た場所:新宿ピカデリー(80-11-14)(評価:★★★☆)●併映:「クレイマー、クレイマー」(ロバート・ベントン)
The Champ (1979)

 この作品を観たのは、新宿松竹会館の旧「新宿ピカデリー」に於いてで、当時は「新宿松竹」(地下劇場)との2館体制で、「新宿ピカデリー」は2本立ての二番館(「チャンプ」の併映は「クレイマー、クレイマー」だった)、それが「アマデウス」('84年/日本公開'85年)を観た頃にはロード館になっていて、その後、松竹会館全体としては3館体制、4館体制となっていきました(新宿ピカデリー1~4)。

新宿ピカデリーS.jpg新 新宿ピカデリー.jpg 「新宿ピカデリー(ピカデリー1)」は1,154席(2001年の改修前)の大劇場でしたが、2006年に全館閉館し、2008年に10スクリーンのシネコンとして再オープン、新生「新宿ピカデリー」の10スクリーン全部合わせた席数は、以前の4館の合計の約5割増しになるそうですが、最大席数の「スクリーン1」で約600席と、かつての「ピカデリー1」の約半分しかないことになります。
新「新宿ピカデリー」 2008年7月オープン

 「みんな泣いているのでちょっと気恥ずかしかった」と書きましたが、大スクリーンということだけでなく、多くの観客と感動を共有できるのも大劇場の魅力かも知れないと思ったりもします。そうした大劇場は消えゆくのみかという寂しい気もするし、同じ1フロアーに昔は一体どうやって今の2倍もの客席を詰め込んでいたのかと思うと、やや不思議な気もします(ゴンドラ席があったなあ)。

新宿ピカデリー 閉館.jpg新宿ピカデリー.jpg 旧・新宿ピカデリー 1958年、靖国通り沿い「新宿松竹会館」1階に「新宿松竹映画劇場」オープン。1962年~「新宿ピカデリー」(1154席)、1987年~「新宿ピカデリー1」。2001年3月改修(820席)。2006年5月14日閉館。

【松竹会館全体】1958年10月28日「新宿松竹映画劇場」「新宿名画座」「新宿スター座」「新宿松竹文化演芸場」の4館オープン、1962年9月28日~「新宿ピカデリー」「新宿松竹」に、1987年7月4日~雀荘を改修し「新宿ピカデリー2」(44席)オープン(3館体制)、1992年8月12日「新宿ピカデリー2」オープン(4館体制、前「ピカデリー2」→「ピカデリー3」)、1999年6月12日「新宿松竹」→「ピカデリー2」、「ピカデリー2」→「ピカデリー3」、「ピカデリー3」→「ピカデリー4」に改称。2001年3月全館改修。2006年5月14日閉館。2008年7月19日、新生「新宿ピカデリー」オープン(10スクリーン)。

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骨太感のある娯楽映画。ボガードの好演を凌ぐエドワード・G・ロビンソンの悪役ぶり。

キー・ラーゴ dvd.jpg キー・ラーゴ ポスター.jpg KEY LARGO.jpg key largo movie.jpg
キー・ラーゴ [DVD]」/輸入版ポスター  ローレン・バコール、ハンフリー・ボガート

キー・ラーゴ2.jpg 第2次世界大戦の復員将校フランク(ハンフリー・ボガード)は、戦死した部下の遺族に会いにフロリダ半島南端の小島キー・ラーゴを訪ねるが、当地で部下の父親(ライオネル・バリモア)と未亡人ノーラ(ローレン・バコール)が経営するホテルは、ギャングの頭目ロッコ(エドワード・G・ロビンソン)とその一味らの隠れ家になっていた。大きな取引を控え、ハリケーンの接近に苛立つギャング達は横暴になっていき、ノーラや父親に暴力を奮い、遂には保安官助手を殺してしまうが、戦争のため虚脱感に陥っているフランクはそれを見て何の反応も示さず、ノーラはその腑甲斐なさを歯がゆく思う―。

「キー・ラーゴ」ローレン・バコール.jpg 1948年の作品。1939年にブロードウェイで上演されたマックスウェル・アンダーソンの戯曲「キー・ラーゴ」を、ジョン・ヒューストンとリチャード・ブルックスが映画用に脚色したもので、「脱出」('44年)「三つ数えろ」('46)、「潜行者」('47年)に続く、ボガードとバコールの4度目にして最後の夫婦共演作でもあります。

 オリジナルが戯曲であったことは後に知りましたが、それほど多くない登場人物、密室状態のホテル、フランクとロッコの心理的駆け引きやノーラのフランクに対する見方の変化など、確かに心理劇的要素が強い作品かも。

キー・ラーゴ 1.jpg それでいてスカッとしたカタルシスがあるのは、最初の内は"男気"をなかなか見せないフランクが、徐々にその本分を発揮し、最後に...というプロセスから結末までの描き方の上手さによるものでしょう。

 ロッコの情婦ゲイ(クレア・トレヴァー)が、アル中の元歌手か何かで、ロッコからそんなに酒が飲みたいなら歌えと言われて一生懸命歌いますがそんな下手なんじゃやれないと言われたりして、最後はフランクがロッコに逃亡用の船の操縦を命じられた際にそっとフランクにピストルを手渡すところなどは、定番と言えば定番なのですが、役者陣がしっかりしている分、シンプルなストーリーが活き、骨太感のある娯楽映画に仕上がっています(クレア・トレヴァーはこれら一連の演技でアカデミー助演女優賞受賞)。

「キー・ラーゴ」E・G・ロビンソン.jpg とりわけ、その演技が光るのはエドワード・G・ロビンソンで、その強面の悪役ぶりは、ボガードの好演をも喰ってしまっているほどです。エドワード・G・ロビンソン 十戒.jpg「十戒」('57年)でも、チャールトン・ヘストン演じるモーゼに逆らって民衆を堕落へと扇動する男を演じていましたが、こうした心理劇的要素の強い作品では、ますますその凄味が増してくる俳優だったように思います(スティーブ・マックイーンと共演した「シンシナティ・キッド」('65年)などもそう)。

キー・ラーゴ エドワード・G・ロビンソン.jpg エドワード・G・ロビンソン(1893-1973/享年79)という人は8カ国語を操るインテリだったそうで、そのリベラルな思想のため40年代後半はハリウッドでも冷遇され、この作品でも"後輩スター"ボガードの脇に回ることになりましたが、仕事と割り切って出演を承諾、ボガートの方もロビンソンに対し"先輩スター"として接し、他のスタッフもこれに倣うよう命じたという逸話があります。

 この作品は吉祥寺の「ジャヴ50」で観ましたが(当時は自主上映館としての色合いが強かった)、現在は「バウスタウン」内の「バウスシアター2」というミニシアター(席数50)になっています。当時の「ジャヴ50」の客席フロアは"個席"ではなく、長椅子(ビニール張りのソファー)が並べられているだけであり、「席数50」と言うより「収容観客数50」という意味でのネーミングだったのでしょう。
Key Largo (1948)
KEY LARGO3.jpgKey Largo (1948).jpg「キー・ラーゴ」ローレン・バコール2.jpg「キー・ラーゴ」●原題:KEY LARGO●制作年:1948年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ヒューストン●製作:ジェリー・ウォルド●脚本:リチャード・ブルックス/ジョン・ヒューストン●撮影:カール・フロイント●音楽:マックス・スタイナー●原作戯曲:マックスウェル・アンダーソン「キー・ラーゴ」●時間:138分●出演:ハンフリー・ボガート/エドワード・G・ロビンソン/ローレン・バコール/ライオネル・バリモア/クレア・トレヴァー/ジョン・リッジリー/モンテ・ブルー/トーマス・ゴメス●日本公開:1951/11●配給:セントラル●最初に観た場所:吉祥寺ジャヴ(JAⅤ)50(85-12-21)(評価:★★★★)
           
吉祥寺バウスシアター 映画から船出した映画館.jpgバウスシアター.jpg.png吉祥寺バウスシアター.jpg吉祥寺ジャヴ(JAⅤ)50 1951年~「ムサシノ映画劇場」、1984年3月~「吉祥寺バウスシアター」(現吉祥寺バウスシアター3.jpg・シアター1/218席)と「ジャヴ50」(現・シアター2/50席)の2館体制でリニューアルオープン。2000年4月29日~シアター3を新設し3館体制に。 2014(平成26)年5月31日閉館。

吉祥寺バウスシアター内(右)

吉祥寺バウスシアター映画から船出した映画館』(2014/05)

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3監督のオムニバス。コアなファンがいてもおかしくない雰囲気はある。

世にも怪奇な物語 dvd.jpg  世にも怪奇な物語 ポスター.jpg  世にも怪奇な物語 輸入版dvd.jpg
世にも怪奇な物語 HDニューマスター版 [DVD]」/ポスター/輸入版DVD 
世にも怪奇な物語 1-1.jpg世にも怪奇な物語 ジェーン・フォンダ.jpg エドガー・アラン・ポーの怪奇小説3作を基に、ロジェ・ヴァディム、ルイ・マル、フェデリコ・フェリーニの3監督が共作したオムニバス映画。一応、全体のトーンはゴチック・ホラーですが...。

 第1話「黒馬の哭く館」(ロジェ・ヴァディム監督) 若くして莫大な財産を相続し、我儘放題に暮らす伯爵家の娘フレデリック(ジェーン・フォンダ)は、ある日、親族で唯一彼女を批判して憚らない男爵ウィルヘルム(ピーター・フォンダ)に偶然助けられたことで彼に一目惚れし、彼を誘惑しようとするが、男爵は彼女の誘い世にも怪奇な物語」 (67年/仏・伊)2.jpgには乗らず、プライドを傷つけられた彼女は家臣に命じて男爵の厩に火をつけさせる。愛馬を助けようとした男爵は焼死し、ショックを受けた彼女は、火事の後にどこからともなく現れた黒馬に癒しを求める―。

ロジェ・ヴァディム.gif ロジェ・ヴァディム監督による第1話は、ゴチックホラー調と次回作「バーバレラ」にも通じるセクシー&サイケデリック調の入り混じった感じで、詰まる所、ヴァディムが妻の美貌と伸びやかな肢体を獲りたかっただけのことかとも勘繰りたくなるくらいジェーン・フォンダがセックス・アピールしており、これ、純粋な意味での"ゴチック調"とはちょっと違うかも...。

第2話「影を殺した男」.jpg世にも怪奇な物語 影を殺した男1.jpg 第2話「影を殺した男」(ルイ・マル監督) 暴力で他の生徒らを支配する残忍な少年ウィリアム・ウィルソンが、ある時他の少年を苛めていると1人の転校生が近付いてきて、その少年もウィリアム・ウィルソンと名乗るが、彼は全てにおいてウィルソンより優れていた。ある夜、寝ていたその転校生をウィルソンは絞め殺そうとするが、途中で気付かれ放校処分に。数年後、医大に進んだウィルソン(アラン・ドロン)は若い女性を誘拐し、解剖を始めようとしていた―。

「影を殺した男」02.jpg世にも怪奇な物語 2.jpg アラン・ドロンがベッドに縛りつけた全裸女性を解剖しようとするシーンをルイ・マル監督が撮っているというのも驚きですが、むしろ、この第2話「影を殺した男」の方が、ポーの作品の雰囲気は出ていたかも知れず、青年になったウィルソンの、優(やさ)男の裏側に残忍さを秘めた二重人格者ぶりは、TV番組「デクスター」のよう。この場合、"二重人格"と言うより完全に"分身"(ドッペルゲンガー?)だけど。
 ウィルソン(アラン・ドロン)は、イカサマ賭博で手に入れた女(ブリジット・バルドー)を鞭打ち残酷な快楽に浸るというスゴい設定ながも、ドロンは好演しており、ドロン相手にトランプの賭けをする女賭博師ブリジット・バルドー(ロジェ・ヴァディムの元妻!)の演技も良くて、ジェーン・フォンダよりは演技しているという感じでした。

世にも怪奇な物語 悪魔の首飾り1.jpg 第3話「悪魔の首飾」(フェデリコ・フェリーニ監督) 落ちぶれたイギリス人俳優トビー(テレンス・スタンプ)は撮影のためイタリアへ飛ぶが、酒と麻薬で意識は混濁。そのトビーの前に度々現れるのは、少女の姿をした死神だった―。

世にも怪奇な物語 3.gif 第3話は、ストーリーよりも、フェリーニ監督の映像美が(美的と言うより意匠的なのだが)堪能できる作品。主人公の妄想に出てくる少女(死神)が、なぜ白い服を着て白いボールを持っているのかよく解りませんが、まあ、理屈よりも映像美...。
 テレンス・スタンプの出ようとしている映画が、キリストが西部の草原に降臨するという「カトリック西部劇」なるわけのわからない映画であることや、マスコミの取材攻勢を描いたところなどは「甘い生活」('59年)の雰囲気に繋がりますが、3作品の共通テーマが「死」であることからすると、締め括りに最も相応しい作品かも知れません。
世にも怪奇な物語 輸入版ポスター.jpg 一方で、これだけが時代背景が「現代」であることもあって、前2作とはトーンが異なる感じも(イタリア人監督ということもあるか)。
 ただ、神経質そうな主人公を演じるテレンス・スタンプの演技は悪くない、と言うか、かなり良かったように思います(アラン・ドロンより上か)。

お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ.jpg和田 誠 氏2.jpg 何れも「怪奇」な話であるけれども怖くはないという感じ。和田誠氏は『お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ』('75年/文藝春秋)の中で、ロジェ・ヴァディムのパートは「耽美主義的映像が逆に小細工のようでいけなかった」とし、「通俗的にはルイ・マルが面白く、怖さや不思議さではフェリーニが圧巻」としています。

お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ

高田馬場東映パラス 入り口.jpg「世にも怪奇な物語」.jpg 高田馬場東映パラス(時々変わった作品を上映していた)で観て以来、10年以上もビデオにもならなかったので、もう見(まみ)えることはないと思っていたら、'99年にTV放映されビデオも発売、最近はCS放送で放映されたり、DVDにもなったりしていて、昨年('10年)は遂にデジタル・リマスター版が新宿武蔵野館で公開されました。

 3作とも、コアなファンがいてもおかしくない、カルトというか独特な雰囲気は確かにありました。考えてみれば、作風はマイナーでありながらも一応エドガー・アラン・ポーの原作に忠実に作られているわけだし、何よりも贅沢過ぎると言っていいくらい豪華な配役でもあることだし、実際そうなったから言うわけではないですが、リバイバル上映されてもおかしくない作品でした。

世にも怪奇な物語」 pos.jpg世にも怪奇な物語」 (67年/仏・伊)1.jpg


「世にも怪奇な物語」●原題:HISTOIRES EXTRAORDINAIRES(TRE PASSI NEL DELIRIO)●制作年:1967年●制作国:フランス/イタリア●監督:ロジェ・ヴァディム(1話)/ルイ・マル(2話)/フェデリコ・フェリーニ(3話)●脚本:ロジェ・ヴァディム(1話)/パスカル・カズン(1話)/ルイ・マル(2話)/クレマン・ビドル・ウッド(2話)/ダニエル・ブーランジェ(1話、2話)/フェデリコ・フェリーニ(3話)/ベルナルディーノ・ザッポーニ(3話)●撮影:クロード・ルノワール(1話)/トニーノ・デリ・コリ(2話)/ジュゼッペ・ロトゥンノ(3話)●音楽:ジャン・プロドロミデス世にも怪奇な物語 1-2.jpg(1話)/ディエゴ・マ悪魔のような恋人2.jpgッソン(2話)/ニーノ・ロータ(3話)●原作:エドガー・アラン・ポー「メッツェンゲルシュタイン」(1話)/「ウィリアム・ウィルソン」(2話)/「悪魔に首を賭ける勿れ」(3話)●時間:121分●出演:ジェーン・フォンダ(1話)/ピーター・フォンダ(1話)/アラン・ドロン(2話)/ブリジット・バルドー(2話)/世にも怪奇な物語」 (67年/仏・伊)0.jpgテレンス・スタンプ(3話)/サルヴォ・ランドーネ(3話)●日本公開:1969/07●配給:MGM●最初に観た場所:高田馬場東映パラス(86-11-30)(評価:★★★☆)●併映:「白夜」(ルキノ・ヴィスコンティ)

高田馬場a.jpg高田馬場・稲門ビル.jpg高田馬場東映パラス 入り口.jpg高田馬場東映パラス 高田馬場・稲門ビル4階(現・居酒屋「土風炉」)1999年頃閉館

①②高田馬場東映/高田馬場東映パラス/③高田馬場パール座/④早稲田松竹 

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共演の男優・女優を追悼。シェイクスピアを下敷きにした見所多い(?)作品「禁断の惑星」。

禁断の惑星 dvd.jpg 禁断の惑星 英語ポスター.jpg 禁断の惑星 ポスター.jpg 昆虫型ミュータントがアダムス博士を襲う.jpg
禁断の惑星 [DVD]」「禁断の惑星」輸入版ポスター/日本版ポスター 「宇宙水爆戦 -HDリマスター版- [DVD]
 
禁断の惑星 ポスター(東宝).jpg 宇宙移民が行われている2200年代、アダムス機長が率いる宇宙船は、20年前に移住して消息を絶った移民団の捜索のために、惑星第4アルテアへ着陸するが、アルテア移民団の生き残りは、モービアス博士と、アルテアで誕生した彼の娘アルティラの2人と、博士が作った万能ロボット・ロビーだけだった。博士によれば、アルテアにはかつて高度に進化し、発達した科学を創り上げた先住民族が存在したが、原因不明の滅亡を遂げ、そして移民団も正体不明の怪物に襲われて自分達以外は死んでしまったという―。

「禁断の惑星」パンフレット

アン・フランシス_3.jpgForbidden Planet2.jpgForbidden Planet.jpg アダムス機長を演じたレスリー・ニールセンが昨年('10年)11月に亡くなった(享年84)のに続いて、アルティラを演じたアン・フランシスも今年('11年)1月に亡くなり(享年80)、寂しい限りです。TV番組「ハニーにおまかせ」('56年~)の私立探偵役のアン・フランシスも、「裸の銃(ガン)を持つ男」('86年)のレスリー・ニールセンも、この映画では2人とも20代でしょうか。この作品を観ると、永遠に2人とも若いままでいるような錯覚に陥ります。

禁断の惑星 名画座ミラノ2.jpg 「禁断の惑星」がシェイクスピアの「テンペスト」を下敷きにしていることはよく知られていて、最初に劇場(名画座ミラノ、すでに「名画座料金」ではなくなっていた)で観た時も、同時期の作品「宇宙水爆戦」('55年)などに比べてよく出来ているように思いました。

宇宙水爆戦1.jpg 「宇宙水爆戦」の方は結構キッチュ趣味と言えるかも。惑星間戦争で絶滅の危機にある星の異星人の科学者が、地球の科学者に協力を依頼するが、実はその星の指導者は地球を支配して移り住むことを企んでいた―というストーリーですが、最後、事件が一見落着したかと思ったら、宇宙船内に潜んでいた宇宙昆虫人間みたいなミュータントに襲われそうになるという―このとってつけたように出現するミュータントがポスターなどではメインになっていて、それだけストーリーは印象に残らないといことでしょうか。ストーリー的にも怪物キャラクター的にも、当時流行ったSFパルプマガジンの影響を強く受けているようです(そのこともキッチュ感に繋がる要因か。でもこのキッチュ感こそが、この作品の根強い人気の秘密かも)。

宇宙家族ロビンソン3.jpg 一方、「禁断の惑星」に出てくる有名キャラクターは万能ロボット「ロビー」で、これを参照したのが60年代に作られたテレビ番組「宇宙家族ロビンソン」に出てくるロボット(愛称:フライデー)だったりし、先駆的な要素も結構あったわけです(「宇宙家族ロビンソン」には外にも「宇宙水爆戦」も参考にしている箇所が幾つかある)。

刑事コロンボ 愛情の計算2.png刑事コロンボ 愛情の計算.jpg 因みに、このロボットは、「刑事コロンボ」の第23話「愛情の計算」('74年)にも"ゲスト出演"してロビーとフライデー.jpgおり(下半身の造りが二本脚から台座型に変わっている)、人工知能研所の所長である犯人のアリバイ作りに一役買っていますが、ロボットのキー・ボードを叩く手つきの大雑把さを見ると、ちょっと所長の代役をさせるには無理な感じも。

ロビー(「禁断の惑星」)とフライデー(「宇宙家族ロビンソン」)

 事件の鍵を握る天才少年の名は、スティーブン・スペルバーグで、これは勿論、コロンボ・シリーズ第3話「構想の死角」を撮ったスピルバーグ監督の名前をもじったもの。息子を庇う親心を利用して犯人を自白に追い込むというのは、後のフェイ・ダナウェイが犯人役を演じた第62話「恋におちたコロンボ」('93年)でもFaye Dunaway & Peter Falk.jpg恋におちたコロンボ2.jpg(こちらは娘を庇ってだが)使われましたが、真犯人ではないと分かっていながら拘束するのはいかがなものでしょうか(「恋におちたコロンボ」の脚本はピーター・フォーク自身が手掛けている)。但し、フェイ・ダナウェイの演技力はさすが。70年代のシリーズ作に比べ見劣りがする90年代のシリーズ作(特に後期作品)の中では、ひときわ映える名犯人役と言っていいのではないでしょうか。 Faye Dunaway & Peter Falk

アン・フランシス「死の方程式」「溶ける糸
死の方程式 アン・フランシス.jpg溶ける糸3 アン・フランシス.jpg 因みに「刑事コロンボ」シリーズに出たのはロボットだけではなく、アン・フランシスも「刑事コロンボ」の第8話「死の方程式」('72年)にロディ・マクドウォール(「猿の惑星」)演じる犯人の秘書兼愛人役で、第15話「溶ける糸」('73年)にレナード・ニモイ(「スタートレック」)演じる犯人に殺されてしまう看護婦役で出ているし、レスリー・ニールセンも、第7話の「もう一つの鍵」で、犯人である広告会社役員役のスーザン・クラークの恋人役で、第34話「仮面の男」('75年)で、元同僚のスパイに殺害される被害者役仮面の男2.jpg刑事コロンボ 仮面の男2.jpgで出ています。

レスリー・ニールセン 「仮面の男

 レスリー・ニールセンはこの頃もまだ二枚目俳優で(コメディ初出演は「フライング・ハイ」('80年))、「禁断の惑星」や「刑事コロンボ」の演技と「裸の銃(ガン)を持つ男」('88年)の演技を比べてみるのも一興でしょうか。コメディ俳優としてブレイクするきっかけとなった「裸の銃を持つ男」ではエリザベス女王裸の銃(ガン)を持つ男(1988).jpgをはじめフセイン大統領、ホメイニなど様々な人物をコケにし、「裸の銃を持つ男PART2 1/2」('88年)では当時のアメリカ大統領裸の銃(ガン)を持つ男2.jpgジョージ・ブッシュをコケにしています。「裸の銃を持つ男PART33 1/3 最後の侮辱」('94年)までプリシラ・プレスリー、ジョージ・ケネディ、O・J・シンプソンという共演トリオは変わらず和気藹々といった雰囲気でしたが、O・J・シO・J・シンプソンs.jpgンプソンは'94年に発生した元妻の殺害事件(「O・J・シンプソン事件」)の被疑者となってしまいました(刑事裁判で殺人を否定する無罪判決となったが、民事裁判では殺人を認定する判決が下った)。


Forbidden Planet3.jpg 「禁断の惑星」という作品は、ストーリーも凝っているように思われ、「テンペスト」をなぞるだけでなく、「イドの怪物」という精神分析的な味付けがされていて、ファーザー・コンプレックスがモチーフになっているように、フロイディズムの影響も濃く滲んでいます。
 また、ロボット・ロビーが博士に怪物の攻撃を止めるよう命じられても出来ないのは、アイザック・アシモフの「ロボット3原則」が下敷きになっているわけですが、この「ロボット3原則」は「ロボコップ」('87年/米)のラストなどにも援用されていたなあ。

 「禁断の惑星」も、時代ものSFパルプマガジンをそのまま映像化したような雰囲気はあるものの、それでいて結構おシャレな、レトロ・モダン感満載の"未来"像が楽しめるし、アン・フランシスがパルプマガジンの表紙そのままに超ミニで歩き回るし、この作品が実質的には映画デビュー作であるアダムス機長を演じたレスリー・ニールセンは、多分大多数の日本人がイメージしキャプテンウルトラ222.jpgている彼の演技とは全く異なる演技をしているし(昔の怪獣映画の宝田明や夏木陽介の感じ、乃至は、背景も含めると「キャプテンウルトラ」('67年)の中田博久の方がより近いか)、いろいろと見所が多い作品です(「なぜウチの中にビオトープがあるのか?」とか、突っ込み所も含めて)。

キャプテンウルトラ ハック2.jpg 尚「キャプテンウルトラ」にも、「宇宙警察パトロール隊」と共に「宇宙船シュピーゲル号」(なぜかドイツっぽい名前)に乗り込み、バンデル星人や怪獣たちと戦い続ける万能ロボット「ハック」が登場しますが、こちらは「ゴジラ」以来の日本の"伝統"か(この番組の制作城野ゆき.jpg会社は東映)、着ぐるみっぽいロボットでした。このシリーズは、脚本が番組放送に追いつかなくなった「ウルトラQ」と、その後継番組として構想されていた「ウルトラマン」との間の所謂「つなぎシリーズ」だったので、書割りのような背景からも察せられる通り、番組制作予算は限られていたようです。その後ウルトラ・シリーズでお決まりとなる"紅一点"の女性隊員は、ここでは「アカネ隊員」ですが、「ウルトラマン」で桜井浩子が演じた「フジ・アキコ隊員」、「ウルトラセブン」で菱見百合子が演じた「アンヌ隊員」と並んで、この「キャプテンウルトラ」で城野ゆきが演じた「アカネ隊員」キャプテンウルトラ」第9話42.jpgアカネ隊員s.jpgアカネ隊員3s.jpgアカネ隊員5s.jpgも、今もって人気があるようです(フジ・アキコ隊員、アンヌ隊員のいわば先輩格になるわけだが、1度だけコスプレっぽい服を着ていたことがある。「禁断の惑星」のアン・フランシスを意識したのか)。

「キャプテンウルトラ」第9話「怪生物バンデルエッグあらわる」
 

禁断の惑星 11 アンフランシス.jpg SFパルプマガジン風ファッション

禁断の惑星 21 アン・ニールセン.jpg 万能ロボット・ロビー登場

禁断の惑星 20 アン.jpg なぜウチの中にビオトープがあるのか?

禁断の惑星 04 アン・レスリー.jpg アン・フランシス/レスリー・ニールセン
Forbidden Planet(1956)
Forbidden Planet(1956).jpg
「禁断の惑星」●原題:FORBIDDEN EARTH●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:フレッド・マクラウド・ウィルコックス●製作:ニコラス・ネイファック●脚本:シリル・ヒューム●撮影:ジョージ・J・フォルシー●音楽:ルイス・アンド・ベベ・バロン●原作:アーヴィング・ブロック/アレン・アドラー「運命の惑星」●時間:98しねまみらの.jpgシネマミラノ 劇場内.jpgシネマミラノ.jpg分●出演:ウォルター・ピジョン/アン・フランシスレスリー・ニールセン/ウォーレン・スティーヴンス/ジャック・ケリー/リチャード・アンダーソン/アール・ホリマン/ジョージ・ウォレス/ボブ・ディックス●日本公開:1956/09●配給:MGM●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-04-29)(評価:★★★☆)
名画座ミラノ 1971年11月、歌舞伎町「東急ミラノビル」4Fにオープン、→「シネマミラノ」(写真)、2006年6月1日~「新宿ミラノ3」 2014(平成26)年12月31日閉館。

宇宙水爆戦 dvd.jpg「宇宙水爆戦」.bmp「宇宙水爆戦」●原題:THIS ISLAND EARTH●制作年:1955年●制作国:アメリカ●監督:ジョセフ・ニューマン●製作:ウィリアム・アランド●脚本:フランクリン・コーエン/エドワード・G・オキャラハン●撮影:クリフォード・スタイン/デビッド・S・ホスリー●音楽:ジョセフ・ガ―シェンソン●原作: レイモンド・F・ジョーンズ●時間:86分●出演:フェイス・ドマーグ/レックス・リーズン/ジェフ・モロー/ラッセル・ジョンソン/ランス・フラー●配給:ユニバーサル・ピクチャーズ●日本公開:1955/12)●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-05-17)(評価:★★★☆)宇宙水爆戦 -HDリマスター版- [DVD]」 

宇宙家族ロビンソン dvd.jpg宇宙家族ロビンソン l.jpg「宇宙家族ロビンソン」Lost in Space (CBS 1965~68) ○日本での放映チャネル:TBS(1966~68)
(全3シーズン。第1シーズンはモノクロ、第2シーズンからカラー)

宇宙家族ロビンソン ファースト・シーズン DVDコレクターズ・ボックス 通常版」 

  

刑事コロンボ 愛情の計算 vhs.bmp「刑事コロンボ/愛情の計算」●原題:MIND OVER MAYHEM●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督:アルフ・ケリン●脚本:スティーブン・ボッコ/ディーン・ハーグローブ/ローランド・キビー刑事コロンボ 愛情の計算3.bmp●原案:ロバート・スペクト●音楽:ディック・デ・ベネディクティス●時間:74分●出演:ピーター・フォーク/ホセ・ファーラー/ロバート・ウォーカー/ジェシカ・ウォルター/リュー・エヤーズ/リー・H・モンゴメリー/アーサー・バタニデス/ジョン・ザレンバ/ウィリアム・ブライアント/ルー・ワグナー/バート・ホランド●日本公開:1974/08●放送:NHK総合(評価:★★★)特選 刑事コロンボ 完全版「愛情の計算」【日本語吹替版】 [VHS]

恋におちたコロンボ1.jpg「新・刑事コロンボ/恋におちたコ恋におちたコロンボ dvdブック.jpgロンボ」●原題:IT'S ALL IN THE GAME●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:ビンセント・マクビーティ●製作:クリストファー・セイター●脚本:ピーター・フォーク●音楽:ディック・デ・ベネディクティス●時間:74分●出演:ピーター・フォーク/フェイ・ダナウェイ/アルマンド・プッチ/クローディア・クリスチャン/ジョン・フィネガン/ビル・メイシー/シェリー・モリソン/ブルース・E・モロー/ジョニー・ガーデラ/ダグ・シーマン/ダニエル・T・トレント/トム・ヘンシェル日本公開:1999/05●放送:NTV(評価:★★★☆)
新刑事コロンボDVDコレクション 17号 (恋におちたコロンボ) [分冊百科] (DVD付)

裸の銃(ガン)を持つ男 dvd.jpg裸の銃(ガン)を持つ男 1.jpg「裸の銃(ガン)を持つ男」●原題:THE NAKED GUN:FROM THE FILES OF POLICE SQUAD!●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:デヴィッド・ザッカー●製作:ロバート・K・ウェイス●脚本:ジェリー・ザッカー/ジム・エイブラハムズ/デヴィッド・ザッカー/パット・プロフト●撮影:ロバート・スティーヴンス●音楽:アイラ・ニューボーン●時間:85分●出演:レスリー・ニールセン/プリシラ・プレスリー/ジョージ・ケネディ/O・J・シンプソン/リカルド・モンタルバン/ナンシー・マルシャン●配給:UIP映画配給●日本公開:1989/04(評価:★★★☆)
裸の銃(ガン)を持つ男 [DVD]

「キャプテンウルトラ」中田.jpgキャプテンウルトラ.jpg「キャプテンウルトラ」●演出:佐藤肇、田口勝彦/加島昭/竹本弘一/山田稔/富田義治●制作:平山亨/植田泰治●脚本:大津皓一/高久進/長田紀生/井口達/伊上勝●音楽:冨田勲●出演:中田博久/城野ゆき小林稔侍/伊沢一郎/安中滋/相馬剛三/都健二/田川恒夫●放映:1967/04~09(全24回)●放送局:TBキャプテンウルトラ」9.jpgキャプテンウルトラ」第9話61PQCFU.jpg 「キャプテンウルトラ Vol.2 [DVD]
中田博久(キャプテンウルトラ=本郷武彦)/城野ゆき(アカネ隊員)
 

「キャプテンウルトラ」第9話「怪生物バンデルエッグあらわる」 
城野ゆき(アカネ隊員)1_500.jpgアカネ隊員cp.jpg城野ゆき(アカネ隊員)










小林稔侍(キケロ星人ジョー)[当時26歳]/「シュピーゲル号」プラモデル
キャプテンウルトラ 小林稔侍.jpgシュピーゲル号.jpg

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トム・クルーズとニコール・キッドマンが夫婦だった頃。「オクラホマ・ランドラッシュ」が印象深かった「遥かなる大地へ」。

遥かなる大地へ チラシ1.jpg遥かなる大地へ チラシ2.jpg遥かなる大地へ dvd.jpg     トップガン dvd.jpg    
遥かなる大地へ [DVD]」  「トップガン [DVD]

遥かなる大地へ 4.jpg 農民が地主の横暴に苦し遥かなる大地へ3.jpgめられた19世紀末のアイルランド、農夫ジョセフ(トム・クルーズ)の父も、厳しい地代の取立ての混乱で事故死する。更に地主の配下に家を焼かれ、怒ったジョセフは地主を射殺しようと地主邸に向かうが失敗、銃の暴発のため負傷し、復ロン・ハワード 「遥かなる大地へ」2.jpg讐相手の邸で介抱を受けるという間抜けな結果となる。そこには、放火の張本人で地主令嬢と結婚を図るスティーブン(トーマス・ギブソン)がいて、ジョセフは彼を襲うも再度失敗し、彼と決闘させられることに。そこへ、実はスティーブンのお高くとまった性格が嫌いで、堅苦しい生活を捨てアメリカ行きを望む地主令嬢のシャノン(ニコール・キッドマン)が現れ、ジョセフを攫うように連れ去り、2人のアメリカ行きの旅が始まる―。

1889年のランドラッシュ
オクラホマ・ランドラッシュ.jpg アイルランド系移民の苦労を描いたロン・ハワード監督の'92年作品で、トム・クルーズとニコール・キッドマンが仲良かった頃、と言うか、結婚したての頃の作品ですが、映画の中に出てくる「オクラホマ・ランドラッシュ」というのが印象深かったです。ロン・ハワード 「遥かなる大地へ」.jpg1889年4月22日の正午を境にオクラホマへの白人の入植が認められた。同年同月日には15ドルの入植手続き料を支払った人々がオクラホマとの境界に集まり、正午を告げる号砲が鳴ると一斉にオクラホマへと乗り込んでいった。彼らは一人当たり160エーカー(65ヘクタール)の土地を手に入れることができた――これは、新大陸のフロンティア時代の入植者に土地を無料で配るというもので、移民たちが白線に並んで「用意ドン!」で駆けっこして、ここからここまでは自分の土地だと主張した範囲の土地が与えられるというスゴイものなのですが(当然、そこで醜い争いも生じる)、お嬢さんだが気が強いシャノンと、自分の土地を得るにはこの方法しかないと考えるジョセフは、このレースに参加する―。

遥かなる大地へ 2.jpg ロン・ハワードにはアイルランド人の血が流れていて、祖先にはこのオクラホマのランド・ラッシュに実際に参加した人もいたとのことで、随分前からこの映画の構想は練っていたそうです。ニコール・キッドマンをヒロインに想定していたところに、トム・クルーズが出演の名乗りを上げたそうですが、ロン・ハワードは当時2人が交際していることを知らなかったそうです。因みに、トム・クルーズ自身にもアイルランド人の血が流れています。

ニコール・キッドマン.jpg 2人ともいい演技をしています。特に、上流意識を持ち、気位が高いながらも、ボディガード代わりに連れてきたトム・クルーズに内心では惹かれていくニコール・キッドマンの演技がいい(トム・クルーズはこの映画の随所で、状況の急な変化に振り回される、三枚目的な味を出している)。

 フランク・キャップラの「或る夜の出来事」の、寝室で男女がロープにシーツを吊るして「こちらへ先は入ってこないように」というルールを作る「ジェリコの壁」のエピソードなどがパロディ的に織り込まれているなど、細かいところでも楽しめました。

ニコール・キッドマン

ロン・ハワード.jpg 移民たちが駆けっこして奪い合っている土地は、元々は北米原住民のものであるはずという批判的な見方も出来ますが、この映画が日本でも本国でもあまりヒットしなかったことを思うと、もう少し注目されても良かったのでないかと。ロン・ハワードは両親とも俳優だったので、子役の頃から多くのテレビドラマや映画に出演していましたが(「アメリカン・グラフィティ」('73年)などに出ていた)、その後映画監督に転身し、この作品の後「アポロ13」('95年)から「ダ・ヴィンチ・コード」('06年)まで多くのヒット作を飛ばし、その間「ビューティフル・マインド」('01年)でアカデミー賞監督賞を受賞したりしもして、監督として成功したと言えます。アカデミー賞に関しては、ニコール・キッドマンも「めぐりあう時間たち」(′02年)で主演女優賞を獲っています。
ロン・ハワード

トップガン チラシ.jpgトップガン クルーズ.jpg 一方のトム・クルーズは、それ以前に「トップガン」('86年)で一躍世界的なスターになっていたわけで、日本トップガンR.jpgでもこの映画は大ヒットしました。まあ、米海軍が協力を惜しまない "USネイビィのリクルート戦略"の一環のような映画でした。「ハンガー」(′83年/英)のトニー・スコット監督(「エイリアン」(′79年/米)のリドリー・スコット監督の弟)はハリウッドに渡ってがらっと作風が変わったみたいですが、個人的印象としては、パターン化されたストーリーで、F-14トムキャットのみが唯々美しかった...。

ケリー・マクギリス7.jpgアンソニー・エドワーズ.jpg ヴァル・キルマー、メグ・ライアン、ティム・ロビンスら若手俳優の出世作としても知られ、「ER 緊急救命室」の"グリーン先生"ことアンソニー・エドワーズがトム・クルーズの同僚パイロット役で出てましたが、出ていた記憶が薄いのはまだ髪の毛が濃かったせいか。

ケリー・マクギリス2.jpgケリー・マクギリス1.jpg トム・クルーズの相手役の女性教官を演じたのは「刑事ジョン・ブック 目撃者」('85年)のケリー・マクギリスですが(因みに、トム・クルーズの身長は170cm。ケリー・マクギリスは身長178cm)、この人は2009年に自らがレズビアンであることをカミングアウトしています(2010年には同性婚をした)。

 「トップガン」は日比谷スカラ座('98年に閉館)で観たのですが、この劇場は旧「東京宝塚劇場」内にあって、観に行った時はちょうど宝塚の公演がはねた後の「お見送り」で、女性ファンが劇場前に溢れていました。その合間をぬって映画館のフロアに行くと、今度はトム・クルーズのファンだと思われる女性達で一杯...。

FAR AND AWAY 2.jpg「遥かなる大地へ」●原題:FAR AND AWAY●制作年:1992年●制作国:アメリカ●監督:ロン・ハワード●製作:ブライアン・グレイザー/ロン・ハワード●脚本:ボブ・ドルマン●撮影:ミカエル・サロモン●音楽:ジョン・ウィリアムズ●時間:140分●出演:トム・クルーズ/ニコール・キッドマン/トーマス・ギブソン/バーバラ・バブコック/シリル・キューザック/ロバート・プロスキー/コルム・ミーニー/アイリーン・ポロック/ミシェル・ジョンソン/ダグラス・ジリソン/ウェイン・グレイス/バリー・マクガヴァン●日本公開:1992/07●配給:ユニヴァーサル映画=UIP(評価:★★★☆)

トップガン3.jpg「トップガン」●原題:TOP GUN●制作年:1986年●制作国:アメリカ●監督:トニー・スコット●製作:ドン・シンプソン/ジェリー・ブラッカイマー●脚本:ジム・キャッシュ/ジャック・エップス・Jr●撮影:ジェフリー・キンボール●音楽:ハロルド・ファルターメイヤー/ジョルジオ・モロダー●時間:110分●出演:トム・クルーズ/ケリー・マクギリス/ヴァル・キルマー/アンソニー・エドワーズ/トム・スケリット/マイケル・ アイアンサイド/ジョン・ストックウェル/リック・ロソビ旧東京宝塚劇場.jpg旧日比谷スカラ座8.jpgッチ/メグ・ライアン/ティム・ロビンス●日本公開:1986/12●配給:UIP●最初に観た場所:日比谷スカラ座(86-12-14)(評価:★★)
旧・日比谷スカラ座 1940年4月東京宝塚劇場ビル4階にオープン(当初の呼称は「東宝四階劇場」)、1955年7月改装 (1,197席)。1998(平成10)年1月18日閉館。

《読書MEMO》
MSN産経ニュース
トニースコットor.jpg

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「集団主人公」映画。「アメリカン・アイドル」の地方予選を想起させる「ナッシュビル」。

グランドホテル(GRAND HOTEL)パンフレット.jpg
ナッシュビル Nashville.jpg ナッシュビル チラシ.jpg   グランド・ホテル ポスター.jpg
Nashville [DVD] [Import]」(輸入盤)/チラシ  「グランド・ホテル[DVD]」/「グランド・ホテル」米国版パンフレット(1932)

ナッシュビル 映画.jpg カントリー音楽のメッカ、ナッシュビルで、ある大統領候補のキャンペーンのためにコナッシュビル 1場面.jpgンサートが行われる準備が進められていて、町には、イベント関係者や働き口を求める者、野次馬、音楽ファンなど、多くの人間が集まってきていた。その中には、自分がカントリー歌手であることに疑問を感じている黒人や、芸能界で生きることを夢見る運転手、歌手希望の音痴のウエイトレス、家出してきたノイローゼ青年、カントリー歌手になりたくて田舎の農家の夫から逃れきた女など、様々な人間がいた―。

 ロバート・アルトマン(Robert Altman、1925-2006)監督の1975年の作品で(Nashville)、主人公が24人もいるという所謂「グランド・ホテル」形式の映画ですが、最初に観た時はむしろ、「主人公がいない映画」という印象だったように思います。

グランドホテル オールキャスト.jpg エドマンド・グールディング監督の元祖「グランド・ホテル」('32年/米)を後に観ましたが、ベルリンの一流ホテルのそれぞれの部屋で1日の間に起きる人間ドラマを描いた映画で、旧い映画のわりには面白かったです。
 但し、この"元祖"作品よりも、新「グランド・ホテル」形式とも言われた「ナッシュビル」の方がより面白かったと言うか、インパクトありました。

マンハッタン乗換駅.jpg こうした試みは、文学では既に先行して行われていて、例えば、ジョン・ドス=パソスが1925年に発表した『マンハッタン乗換駅(Manhattan Transfer)』(中央公論社「世界の文学36」)は、ニューヨークの一画に住み、同じ乗換駅を利用する何人もの人々の、彼らの意識を1つ1つ切り取るように描いた作品ですが、これもある種「グランド・ホテル」的形式と言えるのではないでしょうか(コーラスグループ「マンハッタン・トランスファー」の名は、この小説に由来する。「マンハッタン乗換駅」とは要するに「グランド・セントラル駅」なのだが)。

『グランド・ホテル』.jpg 「グランド・ホテル」は、オーストリアの作家ヴィッキー・バウム(Vicki Baum、1888-1960)の小説『ホテルの人びと』を、アメリカで舞台化した戯曲に基づき映画化したもので、バウムはこの小説を書くために実際にホテルでメイド(客室係)として働いたそうな(実際にあった有名企業経営者と速記者とのスキャンダルがストーリーに使われているが、ホテル従業員としての守秘義務違反にならないのか?)。映画はアカデミー作品賞(第5回)を受賞しましたが、作品賞でしか候補に挙がらずに受賞を果たした珍しいケースです(主演○○賞とか言われても、誰が主演で誰が助演なのか判別しにいくいとうのもあるのか)。
ジョーン・クロフォード & ウォーレス・ビアリー in 「グランド・ホテル」

 映画化作品の出演者には有名スターが名を連ねていて、彼らが演じている役柄が中心的登場人物ということになり、こっちの方は「集団」と言うより「複数主人公」というイメージに近いかも。その中でもグレタ・ガルボとジョーン・クロフォードが目を引きますが、今思い起こしても、"共演"していたという印象はあまりないです(その辺りが、まさに「グランド・ホテル」形式と言えるかもしれないが)。
Joan Crawford
ジョーン・クロフォード.jpg これ、実は、『淀川長治究極の映画ベスト100』('03年/河出文庫)によれば、撮影初日、ホテルのセットが出来上がって、ガルボが一段高い所に立っていた、そこにクロフォードが入ってきて、ガルボの所へ行って「お早うございます」と言ったら、ガルボは上から見下ろして、「ご苦労さん」と言ったもので、クロフォードはかんかんに怒って、「私だって主役よ。何がご苦労さんなの。絶対にこんな映画になんか出ません」淀川長治究極の映画ベスト100_1.jpgと言い出す騒ぎになり、それで二人が一緒に映る場面がこの映画には無いそうです(クロフォードはこの悔しさから、ハリウッドの第一級プロデューサーのサミュエル・ゴールドウィンに泣きついて、生涯最高の作品に出演させて欲しいと頼み込み、そこでゴールドウィンはサマセット・モームの小説の映画化作品「」('32年/米)の主演の娼婦の役を与えたとのこと)。
淀川長治 究極の映画ベスト100 (河出文庫)
 
Nashville (1975).jpg 一方、「ナッシュビル」はどのようにして作られたかと言うと、アルトマン監督がスタッフをナッシュビルに滞在させて毎日日記を書かせ、それを繋ぎ合せてストーリーを作り上げたのだそうで、ナッシュビルでの撮影期間中も、スタッフやキャストは全員同じモーテルに泊まっていたそうです(出演者のギャラは均一だった)。

 そのためか、観ていてアドリブ感があると言うか、撮りながら作り、作りながら撮っていったという感じがします(カレン・ブラックが"カントリーの女王"という役どころで自作の歌を歌うなど)。
アメリカン・アイドル.bmp 当時としては抜きん出て有名なスター俳優は(カメオ出演以外は)使っていないということもあって(当時無名で、後に有名になる役者も多く出ているが)、結果として「集団主人公」という映画の特質がよく出ているように思いました。

 アルトマンは「M★A★S★H マッシュ」('70年/米)の監督でもあり、ある意味、ベトナム戦争終結当時の「病めるアメリカ社会」の断片像ともとれますが、オーデション歌番組「アメリカン・アイドル」の地方予選などは、いまだにこの映画の雰囲気と重なる部分があるような気もします。

M★A★S★H マッシュ ポスター.jpg★A★S★H マッシュ 3.jpg 「M☆A☆S☆H」は、朝鮮戦争を舞台にしたブラック・コメディで、野戦病院(マッシュ)に派遣されたドナルド・サザーランド、エリオット・グールド、トム・スケリット演じる3人の医師が、軍規を無視して婦長の尻を追いかけたり、女性将校(サリー・ケラーマン)をからかったりとやりたい放題をやる話。でも、この3人、実は「M☆A☆S☆H」.jpg極めて優秀な外科医であって、負傷して血だらけの患者を面白可笑しく冗談を言いながら手術するけれど、結局は治してしまうし、いたずらや悪事を企んだりはするけれど、人情味もあるということで、ちょっと憎めない...コメディ部分にもやや毒気のある鬼才ロバート・アルトマンらしい作品でしたが(1970年の第23回カンヌ国際映画祭でグランプリ受賞)、個人的には「ナッシュビル」の方がやや上でしょうか(「ナッシュビル」は全米映画批評家協会賞・作品賞&監督賞受賞)。両作品について言えることですが、アルトマンの社会批判精神はストレートな表され方をするのはでなく、ユーモアを介するなどして屈折した形で表現されるので、背景が掴めていないと、ただ面白かったで終わってしまうこともあるかもしれません(その面白さにもクセがあって、人や作品によって評価が分かれるが)。
Nashville(1975)
Nashville(1975).jpg「ナッシュビル」●原題:NASHVILLE●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督・製作:ロバート・アルトマン●脚本:ジョーン・テューケスベリー●撮影:ポール・ローマン●音楽:リチャード・バスキン/キース・キャラダイン●時間:160分●出演:ヘンリー・ギブソン/カレン・ブラック/アレン・ガーフィールド/ネッド・ビーティー/マイケル・マーフィー/ジェフ・ゴールドブラム/リリー・トムリン/ジェラルディン・チャップリン/キース・キャラダイン/ロニー・ブレイクリー/グウェン・ウェルズ/バーバラ・ハリス/スコット・グレン/エリオット・グールド/ジュディー・クリスティー/デイヴィッド・アーキン/バーバラ・バクスレイ/ティモシー・ブラウン/ロバート・ドキ/シェリー・デュヴァル/アラン・ニコルズ/デイヴィッド・ピール/バート・レムゼン/キーナン・ウィン●日本公開:1976/04●配給:パラマウント映画=CIC●最初に観た場所:新宿西口・新宿(西口)パレス(78-02-08)(評新宿西口パレス3.jpg新宿三葉ビル.bmp価:★★★★)●併映:「バーブラ・ストライサンド スター誕生」(フランク・ピアスン) 

新宿(西口)パレス 新宿西口小田急ハルクそば「新宿三葉ビル(三葉興行ビル(現・三葉興業本社ビル))」内。1986(昭和61)年11月閉館。


有楽座(旧)3.bmpみゆき座.jpg「グランド・ホテル」●原題:GRAND HOTEL●制作年:1932年●制作国:アメリカ●監督:エドマンド・グールディング●製作:ポール・バーン/アーヴィング・G・サルバーグ●脚本:ウィリアム・A・ドレイク●撮影:ウィリアム・H・ダニエルズ●音楽:ウィリアム・アックスト/グランド・ホテル dvd ivc.jpgチャールズ・マックスウエル●原作:ヴィッキー・バウム●時間:112分●出演:グレタ・ガルボ/ジョン・バリモア/ジョーン・クロフォード/ウォーレス・ビアリー/ライオネル・バリモア/ ロバート・テイラー/ジョージ・キューカー●日本公開:1933/10●配給:MGM日本支社●最初に観た場所:日比谷・みゆき座(86-11-18)(評価:★★★)●併映:「暗黒街の顔役」(ハワード・ホークス)グランド・ホテル《IVC BEST SELECTION》 [DVD]
旧・みゆき座 1957(昭和32)年、東宝会館ビル(東宝本社ビル)竣工に伴い、同年4月、1階に邦画の「千代田劇場」、地下1階に洋画の「みゆき座」オープン。2005(平成17)年3月31日閉館(同年4月1日「日比谷スカラ座2」が「みゆき座」の名を引き継ぐ)。[写真]千代田劇場・みゆき座[1984(昭和59)年9月]「ぼくの近代建築コレクション」より

マッシュ [DVD]
★A★S★H マッシュ dvd.jpgM★A★S★H マッシュ ケラーマン.jpg「M★A★S★H マッシュ」●原題:M*A*S*H●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・アルトマン●製作:インゴ・プレミンジャー●脚本:リング・ランドナーJr.●撮影:ハロルド・E・スタイン●音楽:ジョニー・マンデル●時間:116分●出演:ドナルド・サザーランド/トム・スケリット/エリオット・グールド/ロバート・デュヴァル/サリー・ケラーマン(右)●日本公開:1970/07●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:三鷹オスカー(79-05-13)(評価:★★★★)●併映:「まぼろしの市街戦」(フィリプド・ロカ)/「博士の異常な愛情」(スタンリー・キューブリック) 

アメリカン・アイドル1.jpgアメリカン・アイドル2.bmp「アメリカン・アイドル」American Idol (FOX 2002/06~ ) ○日本での放映チャネル:FOX(2006~)

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マフィアの一族においても強力な「父性原理」が過去のものとなりつつあったことの予兆。

ゴッドファーザーⅡ チラシ.jpg  ゴッドファーザーⅡ パンフレット.jpg    ゴッドファーザーPARTIIDVD.jpg
「">ゴッドファーザー PART II 」チラシ/パンフレット(1975.04)/「ゴッドファーザー PART II [DVD]

ゴッドFⅡ 012.JPG 1958年、湖畔の教会ではドン・マイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ)の息子の聖餐式が行われており、湖に臨む大邸宅の庭でのパーティには、妻ケイ(ダイアン・キートン)と息子、妹らが、来賓には、ママ・コルレオーネ(マリア・カータ)、次兄フレドー(ジョン・カザール)夫婦、妹コニー(タリア・シャイア)とその恋人(トロイ・ドナヒュー)、相談役トム・ヘーゲン(ロバート・デュヴァル)らが招かれていた。パーティが済みマイケルがベッドへ入ろうとした時、機関銃の弾が寝室にぶち込まれ、床に伏したマイケルは、ベッドから転がり落ちた妻ケイを抱きかかえていた―。

ゴッドFⅡ 021.JPG 言わずと知れたフランシス・フォード・コッポラ監督による前作「ゴッドファーザー」(′69年/米)の続編で、正編・続編共にアカデミー作品賞を受賞した唯一のシリーズ。

 サンチャゴ版「ゴッドファーザー」的なドン・ウィンズロウの『フランキー・マシーンの冬』('10年/角川文庫)に、映画「ゴッドファーザー」のトリビアなネタが幾つか出てくるので思い出したのですが、「PARTⅡ」では、コルレオーネ家は本拠をニューヨークからネバダ州に移していて、それは近くに収入源であるラスベガスがあるからだったのだなあと。

ゴッドFⅡ 031.JPG 本編でマーロン・ブランドが演じたヴィトー・コルレオーネの後継者としてゴッドファーザーになった三男のマイケルが、今度は父の遺産を守るために苦悩する姿が描かれる一方で、マリオ・プーゾの原作にはあるものの本編では描かれなかった、若き日のヴィトー(ロバート・デ・ニーロ)がシチリアからアメリカに移民としてやって来て、一代で裏社会の巨大ファミリーを築くまでのエピソードが、共に本編を挟むような形で対を成しています。

ゴッドFⅡ 041.JPG 時間的にはヴィトーの出ている時間の方が少ないのですが、「ミーン・ストリート」('73年/米)の演技が認められてコッポラ監督に抜擢されたロバート・デ・ニーロの演技が良く、彼がリトル・イタリーで次第に人望を集めていく様が、最初の内は、パン屋とか八百屋とか様々なごく普通の市井の民としての仕事をしながら、まるで地区の"相談係"乃至はもめ事の"解決係"みたいなことを任されていくという風に描かれているのが興味深いです(「タクシードライバー」('76年/米)の主人公トラヴィスの持つ繊細な一面を彷彿させるが、この作品のデ・ニーロは「タクシードライバー」に出演する2年前。若いなあ)。

ゴッドFⅡ 051.JPG 一方、家族の確執に悩まされるマイケルの方は、崩壊していく家族の絆を目の当たりにし、自らも裏切った親族に手を下しつつ、改めてヴィトーの偉大さに想いを馳せるという、アル・パチーノとしてはやや損な役回りだったかも(本編のマーロン・ブランドの下でひ弱な印象をこの作品でも引き摺っている?)。

 本編あっての続編ではあるものの、続編でヴィトーの若き日の台頭と、現在のマイケルの孤絶を描くことで、単なるマフィアものを超えて、イタリア移民の一族の年代記としての厚みが増したように思います。

 本編では"家族の絆"の強さというものが描かれていて、日本でも大いに受けたわけですが、心理療法家の河合隼雄が、プロスペル・メリメがシチリアの伝承に材を得た小編「マテオ・ファルコーネ」(岩波文庫『エトルリヤの壷』に所収)(官憲に追われている男を腕時計と引き換えに官憲に密告した息子をその場で射殺した父親の話)を挙げて、こうした強力な「父性原理」は、日本のような「母性原理」の社会では見られないと指摘したように、"家族の絆"の根底にあるものが根本的に日本と異質のような感じもします(だから、肉親であっても裏切者は殺られてしまう)。

ザ・ソプラノズ.jpg ただ、米国のイタリア(シチリア)系社会でもこうした強力な「父性原理」はすでに過去のものとなっているのかも知れず、それがこの続編で予兆として現れていて、近年の海外ドラマ「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」('99-07年)などを観ていると、そのギャップがある種パロディカルに描かれるに至っているように思いました。

 「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」のジェームズ・ギャンドルフィーニ演じる主人公のマフィアのボスであるトニー・ソプラノは、ストレスと悩みが原因のパニック障害を有し、精神科のカウンセリングを受けていますが(ギャンドルフィーニはこの役でエミー賞を3回受賞)、ロバート・デ・ニ―ロもハロルド・ライミス監督のコメディ「アナライズ・ミー」('99年/米)で、パニック障害で精神分析医に掛かるマフィアのボスを演じています。

The Godfather Part II(1974).jpgThe Godfather: Part II(1974)
「ゴッドファーザーPARTⅡ」●原題:THE GODFATHER PART II●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督:フランシス・フォード・コッポラ●製作:フランシス・フォード・コッポラ/グレイ・フレデリクソン/フレッド・ルース●脚本:マリオ・プーゾ/フランシス・フォード・コッポラ●撮影:ピーター・ツィンナー/バリー・マルキン/リチャード・マークス●音楽:ニーノ・ロータ/カーマイン・コッポラ●原作:マリオ・プーゾ「ゴッドファーザー」●時間:200分●出演:アル・パチーノ/ロバート・デ・ニーロ/マリア・カータ/ダイアン・キートン/ロバート・デュヴァル/ジェームズ・カーン/ジョン・カザール/タリア・シャイア/有楽座(旧)1.bmpリー・ストラスバーグ/マイケル・ヴィンセント・ガッツォ/リチャード・ブライト/ガストン・モスチン/トム・ロスキー/ブルーノ・カ-ビー/フランク・シベロ/フランチェスカ・デ・サピオ/モーガナ・キング/マリアナ・ヒル/レオパルド・トリエステ/ドミニク・キアネーゼ/アメリゴ・トット/トロイ・ドナヒュー●日本公開:1975/04●配給:パラマウント映画=CIC●最初に観た場所:旧有楽座(75-?-?)●2回目:池袋文芸坐(78-01-12)(評価:★★★★)●併映(2回目):「コーザ・ノストラ」(フランチェスコ・ロージ)
写真左:有楽座[1984(昭和59)年9月]「ぼくの近代建築コレクション」より
旧有楽座内.jpg有楽座.jpg
旧・有楽座 1935(昭和10)年6月に演劇劇場として開館。1949(昭和24)年8月~ロードショー館(席数1,572)。1984年10月31日閉館。 
          
 
The Sopranos (1999).jpgザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア.jpgThe Sopranos 2.jpg「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」The Sopranos (HBO 1999/01~2007)○日本での放映チャネル:WOWOW/スーパー!ドラマTV

The Sopranos (1999)

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「仮に地球人の姿をしている宇宙人」を演じるデヴィッド・ボウイが、かなり宇宙人っぽい。

地球に落ちてきた男.jpg 地球に落ちてきた男 dvd.jpg THE MAN WHO FELL TO EARTH.jpg Christiane F. - Wir Kinder vom Bahnhof Zoo (1981) .jpg Senjô no merî Kurisumasu (1983) .jpg
「地球に落ちて来た男」パンフレット「地球に落ちて来た男 [DVD]Christiane F. - Wir Kinder vom Bahnhof Zoo (1981)  Senjô no merî Kurisumasu (1983)

地球に1.JPG 砂漠化した故郷の星に妻子を残し、地球にやってきたニュートン(デヴィッド・ボウイ)は、発明家として巨万の富を築き、ロケットを建造して家族の待つ星に帰ろうとするが、地球で知り合い、愛し合うようになったメリー・ルー(キャンディ・クラーク)を残して宇宙に飛び立とうとする直前、政府組織に捕らえら、拷問じみた人体実験と軟禁生活の中で、数十年を過ごす―。

 「ブレードランナー」の原作者であるフィリップ・K・ディックらに影響を与えたSF映画ですが、特撮(と言えるほどのものでもない)部分は、ニュートンが回想する故郷の星の家族が"着ぐるみ"みいたいだったりして(しかも、お決まりの"キャット・アイ")、むしろ、地球人の姿を借りている主人公の宇宙人を演じているデヴィッド・ボウイ自身の方が、表情や立ち振る舞いがよほど宇宙人っぽく見えました(相当な集中力を要求される演技だと思う)。

地球に2.JPG 世間がニュートンを忘れた頃、彼は拘禁状態を解かれ(依然、軟禁状態にはある)外界に戻りますが、もはや誰も彼を覚えておらず、メリー・ルーとの再会も、お互いの心の中に無力感を刻むだけのものとなり、故郷の星に戻ることもできず、巨万の富を抱えたままでひっそりと生きて行くしかない―(ラストでは、軟禁状態をも解かれ、ニュートンにとっての次なる世界が展開されるかのような終わり方になっているが...)。

地球に3.JPG パンフレットの解説によれば、これはSFと言うよりも愛の物語であるとありましたが、メリー・ルーがニュートンとの数十年ぶりの再会で心を開くことが出来なかったのは、彼女が年齢を加えているのに、ニュートンの方は一向に年をとっていないという隔たりのためで、時を共有するというのは、一緒に年齢を重ねていくということなのだなあと。「時」というのも、この作品のテーマの1つであると言えるかもしれません。

地球に落ちて来た男 深夜の告白1.jpg地球に落ちて来た男 深夜の告白2.jpg 富を得れば得るほど孤独になり、何のために地球に来たのかもだんだんわからなくなり、酒に溺れていく(宇宙人もアル中になる!)ニュートン―。人間の疎外というものを描いた作品でもあるように思いました。

アメリカン・グラフィティAmericani.jpg デヴィッド・ボウイの日本初公演は1973年ですが、映画「地球に落ちて来た男」では、「アメリカン・グラフィティ」('73年/米)でデヴィッド・ボウイより先に日本に"映画お目見え"したキャンディ・クラークも、本作メリー・ルー役で、カントリー・ガール風にいい味出しています(2人でピンポンをするシーンなんか、良かったなあ)。

デヴィッド・ボウイs.jpg デヴィッド・ボウイは、本作が映画では日本初お目見えでしたが、この作品の前後に「ジギー・スターダスト」('73年/英、ボウイのステージと素顔を追ったドキュメンタリー。日本での公開は'84年)、「ジャスト・ア・ジゴロ」('81年/西独、未見)に出ていて、その後「クリスチーネ・F」('83年/西独、ドイツの麻薬中毒少女をドキュメンタリー風に扱った映画)、「ハンガー」('83年/英、カトリーヌ・ドヌーヴが吸血鬼女、デヴィッド・ボウイがその伴侶という設定)、大島渚監督の「戦場のメリー・クリスマス」('83年/日・英)と続きます。因みに、「ジギー・スターダスト」は1972年にデヴィッド・ボウイがリリースしたアルバム名であり、異星からやってきた架空のスーパースター「ジギー」の成功からその没落までを描いたというそのコンセプトは、3年後に作られた「地球に落ちて来た男」にほぼ反映されたとみていいのではないでしょうか。
ジギー・スターダスト dvd.bmp  ジギー・スターダスト パンフ.gif ジギー・スターダスト パンフ3.jpg ジギー・スターダスト パンフ2.jpg ジギー・スターダスト アルバム.jpgジギー・スターダスト [DVD]」/「ジギー・スターダスト」パンフレット/「ジギー・スターダスト発売30周年記念アニヴァーサリー・エディション

クリスチーネ・F [DVD]
クリスチーネ・F dvd.jpg映画「クリスチーネF」.jpg 「クリスチーネ・F」は、西ベルリンの実在のヘ麻薬中毒の少女(当時14歳)の手記『かなしみのクリスチアーネ』(原題: "Wir Kinder vom Bahnhof Zoo", 「われらツォー駅の子供たち」)をベースに作られ映画ですが、主人公のクリスチーネも、同じ14歳の女友達も、共に薬代を稼ぐために売春していて(この女友達はヘロインの過剰摂取で死んでしまう)、更に、男友達も男娼として身体を売っているという結構すごい話で、クリスチーネをはじめ、素人を役者として使っていますが、演技も真に迫っていて、衝撃的でした(因みに、手記を書いたクリスチアーネ・フェルシェリノヴ(1962年生まれ)は、2010年現在生きていて、一旦は更生したものの、最近また麻薬に手を出しているという)。

CHRISTINE F.jpg この頃の「西ドイツ」映画には、日本に入ってくるものが所謂"芸術作品"っぽかったり(「ノスフェラトゥ」('78年)、「ブリキの太鼓」('79年)、「メフィスト」('81年))、歴史・社会派の作品だったり(「リリー・マルレーン」('81年)、「マリア・ブラウンの結婚」('79年))、重厚でやや暗めのものが多く、また、娯楽映画の中にもアナーキーな部分があったりして(「ベルリン・ブルース」('86年)、「ベルリン忠臣蔵」('85年))、共通して独特の暗さがありましたが、この作品は、テーマの暗さがそれに輪をかけているような感もあります。

 デヴィッド・ボウイは、クリスチーネが訪れるベルリンのコンサートシーンOriginal Soundtrack.jpgに出てくるだけですが、元々デヴィッド・ボウイとドイツの縁は深く、70年代半ばに長年の薬物使用による中毒で精神面での疲労が頂点に達し、更にドイツでのライブがナチズムを強く意識したステージ構成になっていたため世間のバッシングを浴びたりもした彼でしたが、ツアー終了後、薬物からの更生という目的も兼ねてそのままベルリンに移住し創作活動を行っていた時期があります。映画ではデヴィッド・ボウイが音楽でクリスチーネを元気づけ、立ち直りに向かわせるような位置づけになっていて、当時(80年代初め)はまだデヴィッド・ボウイに対してどことなく反社会的なイメージがあったために、やや意外な印象を受けました(実はいい人なんだあ、みたいな)。
Christine」Original Soundtrack CD (2001年)
 
ハンガー 映画.bmp リドリー・スコット監督の弟トニー・スコットの初監督作品でもある「ハンガー」では、デヴィッド・ボウイは、「地球に落ちてきた男」で演じた「歳を取らない」宇宙人役とは真逆で、吸血鬼に若さを奪われ「急速に老いていく男」を演じています。

 この他にも、スーザン・サランドンとカトリーヌ・ドヌーヴとのラヴシーンといったのもありましたが、個人的には、全体的にイマイチ入り込めなかった...。日本でもそんなにヒットしなかったように思いますが、ガラッと作風を変えた次回作「トップガン」('86年/米)がヒットして、もう、トニー・スコットがこのような映画を撮らなくなったということもあってか、この作品自体はカルト的な人気はあるようですトニー・スコットは2012年に病気を苦に橋から飛び降り自殺した)

戦場のメリークリスマス ブルーレイ.jpg デヴィッド・ボウイが日本で再びブレイクすることになったのは、「ハンガー」より先に公開された大島渚監督作品「戦場のメリークリスマス」('83年/日・英)によってであって、音楽の方は、同じく役者として出演していた坂本龍一が担当していました。

 ヴァン・デル・ポストが日本軍俘虜収容所での体験を描いた小説がベースになっていて、日英の文化的相克のようなものが描かれている作品ですが(「戦場にかける橋」などとは違った意味で、それぞれの良いところ、悪いところが描かれているのには好感を持てた)、両者の溝を超えるものとしての人間と人間の繋がりが、ヒューマニズムと言うよりはホモ・セクシュアルを匂わせるようなものになっているところが大島監督らしいところ(役者名で言えば、トム・コンティとビートたけしの関係、デヴィッド・ボウイと坂本龍一との関係。ボウイが坂本龍一にキスするシーンが話題になったが、それは、映画の文脈の中でまた異なる意味を持つ)。但し、何か"日本的"と言うか"ウェット"な感じがするかなあと(大島渚監督は後の作品「御法度」(司馬遼太郎原作)でもホモ・セクシュアルを扱っている)。

 作家の小林信彦氏によれば、デヴィッド・ボウイの役は、はじめ大島監督は、ローバート・レッドフォードを考えていたのが、レッドフォードは「オーシマを尊敬している」が、脚本が自分向きでないとして断ったとこと、日本人側の俳優も、滝田栄と緒方拳でやるつもりだったが2人とも大河ドラマ出演のため出られず、勝新太郎、若山富三郎、菅原文太、三浦友和...と"口説いて"、結局、坂本龍一とビートたけしになったとのことです。坂本龍一は勿論、ビートたけしも当時は役者としてのキャリアは殆ど無く(監督としても、デビュー作「その男、凶暴につき」を撮るのは6年後)、大島渚監督の前で硬くなっている感さえあり、その点、デヴィッド・ボウイの演技面は貫禄充分でした(但し、個人的には、この作品にあまり合っているように思えない)。

 それにしてもデヴィッド・ボウイは、アメリカ、西ドイツ、イギリス、日本と、様々な国の監督のもとで映画に出演してるなあ。

ハンガー dvd.jpgハンガー パンフ.jpg    戦場のメリークリスマス dvd.jpg戦場のメリークリスマス パン.jpg 戦場のメリークリスマス 6.jpg 
ハンガー [DVD]」パンフレット 「戦場のメリークリスマス [DVD]」/パンフレット

「地球に落ちて来た男」●原題:THE MAN WHO FELL TO EARTH●制作年:1976年●制作国:アメ中野武蔵野ホール.jpgリカ●監督:ニコラス・ローグ●製作:マイケル・ディーリー/バリー・スパイキングス●脚本:ポール・メイヤーズバーグ●撮影: アンソニー・B・リッチモンド●音楽:ジョン・フィリップス●原作:ウォルター・テヴィス●時間:119分●出演:デヴィッド・ボウイ/キャンディ・クラーク/リップ・トーン/バック・ヘンリー●日本公開:1977/02●配給:コロムビア映画●最初に観た場所:中野武蔵野館 (78-02-24)●2回目:三鷹オスカー(86-07-06)(評価:★★★★)●併映(1回目):「魚が出てきた日」(ミカエル・カコヤニス)併映(2回目):「ハンガー」(トニー・スコット)/「ジギー・スターダスト」(D・A・ペネベイカー) 中野武蔵野館 (後に中野武蔵野ホール) 2004(平成16)年5月7日閉館 

david-bowie-1973.jpgZIGGY STARDUST movie.jpg「ジギー・スターダスト」●原題:ZIGGY STARDUST●制作年:1973年●制作国:イギリス●監督:ドン・アラン・ペネベイカー●撮影:ジェームズ・デズモンド/マイク・デイヴィス/ニック・ドーブ/ランディ・フランケン/ドン・アラン・ペネベーカー●音楽:デヴィッド・ボウイ●衣装デザイン:フレディ・パレッティ/山本寛斎●時間:90分●出演:デヴィッド・ボウイ/リンゴ・スター(ノンクレジット)●日本公開:1984/12●配給:ケイブルホーグ●最初に観た場所:三鷹オスカー(86-07-06)(評価:★★★)●併映:「地球に落ちて来た男」(ニコラス・ローグ)/「ハンガー」(トニー・スコット)

クリスチーネ・Fes.jpg「クリスチーネ・F」●原題:CHRISTINE F●制作年:1981年●制作国:西ドイツ●監督:ウルリッヒ・エーデル●製作:ベルント・アイヒンガー●脚本:ヘルマン・ヴァイゲル/カイ・ヘルマン/ホルスト・リーク●撮影:ユストゥス・パンカウ●音楽:ユルゲン・クニーパー/デヴィッド・ボウイ●原作:クリスチアーネ・ヴェラ・フェルシェリノヴ「かなしみのクリスチアーネ(われらツォー駅の子供たち)」●時間:138分●出演:ウルリッヒ・エーデル/ナーチャ・ブルンクホルスト/トーマス・ハウシュタイン/イェンス・クーパル/ヘルマン・ヴァイゲル/デヴィッド・ボウイ●日本公開:1982/06●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:荻窪オデヲン座(82-12-11)(評価:★★★☆)●併映:「グローイング・アップ ラスト・バージン荻窪オデオン座 - 2.jpg荻窪駅付近.jpg荻窪オデヲン.jpg荻窪東亜会館.jpg」(ボアズ・デビッドソン)
荻窪オデヲン座・荻窪劇場 1972年7月、荻窪駅西口北「荻窪東亜会館」B1にオープン。1991(平成3)年4月7日閉館。(パンフレット「世にも怪奇な物語
菅野 正 写真展 「平成ラストショー hp」より

三鷹オスカー  復活.jpg三鷹オスカー2.jpg「ハンガー」●原題:THE HUNGER●制作年:1983年●制作国:イギリス●監督:トニー・スコット●製作:リチャード・シェファード●脚本:ジェームズ・コスティガン/アイヴァン・デイヴィス/マイケル・トーマス●撮影:スティーヴン・ゴールドブラット●音楽:デニー・ジャガー/デヴィッド・ローソン/ミシェル・ルビーニ●時間:119分●出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/デヴィッド・ボウイ/スーザン・サランドン/クリフ・デ・ヤング/ダン・ヘダヤ/ウィレム・デフォー●日本公開:1984/04●配給:MGM●最初に観た場所:三鷹オスカー (86-07-06)(評価:★★★)●併映:「地球に落ちて来た男」(ニコラス・ローグ)/「ジギー・スターダスト」(D・A・ペネベイカー)

「戦場のメリークリスマス」●制作年:1983年●制作国:日本・イギリス・オーストラリア・ニュージーランド●監督:大島渚●製作:ジェレミー・トーマス●脚本:大島渚/ポール・メイヤーズバーグ●撮影:杉村博松竹セントラル123.jpg章●音楽:坂本龍一●原作:ローレンス・ヴァン・デル・ポスト「影さす牢格子」「種子と蒔く者」●時間:123分●出演:デヴィッド・ボウイ/坂本龍一/ビ松竹セントラル123.jpg松竹セントラル.jpgートたけし/トム・コンティ/ジャック・トンプソン/内田裕也/三上寛/ジョニー大倉/室田日出男/戸浦六宏/金田龍之介/内藤剛志/三上博史●日本公開:1983/05●配給:松竹松竹セントトラル 銀座ロキシー.jpg富士=日本ヘラルド●最初に観た場所:銀座・松竹セントラル(83-06-04)(評価:★★★)
松竹セントラル・銀座松竹・銀座ロキシ-(→松竹セントラル1・2・3) 1952年9月、築地・松竹会館にオープン。1999年2月11日閉館。

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原作はプロットも心理描写も見事。映画は"観光映画(?)"としては楽しめたが...。

ナイルに死す.jpg ナイルに死す2.jpg ナイルに死す3.bmp ナイル殺人事件 DVD.jpg DEATH ON THE NILE  .jpg
ナイルに死す (1957年) 』『ナイルに死す (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-76)』(表紙:真鍋博) 『ナイルに死す (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)』 「ナイル殺人事件 デジタル・リマスター版 【プレミアム・ベスト・コレクション\1800】 [DVD]」 ピーター・ユスティノフ

ナイルに死す ハ―パーコリンズ版.jpg ハネムーンをエジプトに決めた大富豪の娘リンネットは、ナイル河で遊覧船の旅を楽しんでいたが、そこには夫のかつての婚約者ジャクリーンの不気味な影が...果たして、乗り合わせたポワロの目の前でリンネットは殺され、さらに続く殺人の連鎖反応が起きるが、ジャクリーンには文句無しのアリバイが―。

ナイル殺人事件 北大路.jpg"Death on the Nile" ハ―パーコリンズ版

 1937年に発表されたアガサ・クリスティ(1890‐1976)の作品で(原題:Death on the Nile)、プロットもさることながら、会話を主体とした多くの登場人物の心理描写が見事。ああ、この作家は小説でも戯曲でも"何でもござれ"だなあと改めて思わされた次第ですが、この作品はあくまでも小説です(クリスティはこの作品の戯曲版も残していて、日本でも北大路欣也などの主演で上演されているが、こちらはポワロが登場しない)。

ナイル殺人事件 スチール.jpg 「タワーリング・インフェルノ」('74年)、「キングコング」('76年)のジョン・ギラーミン監督によって「ナイル殺人事件」('78年/英)として映画化されており、ポアロ役はピーター・ユスティノフです(ピーター・ユスティノフ はその後「地中海殺人事件」('82年/英)、「死海殺人事件」 ('88年/米)でもポアロを演じている)。シドニー・ルメットが監督した「オリエント急行殺人事件」('74年/英)ほどの「往年の大スターの豪華競演」ではないにしても、こちらも名優がたくさん出演しています。
音楽:ニーノ・ロータ

ナイル殺人事件  Death on the Nile(1978英).jpg '78年の公開時に、今は無きマンモス映画館「日比谷映画劇場」で観て、90年代初めにビデオでも観ましたが、映画は、原作をやや端折ったような部分もあり、最後はちょっとドタバタのうちにポアロの謎解きが始まって、原作との間に多少距離を感じました。

 映画化されると、本格推理の部分よりも人間ドラマの方が強調されてしまうのは、この作品に限らず、この手の作品によくあるパターンで、しかも、この作品は登場人物が結構多いとあって、時間の制約上やむを得ない面もあるのかなあ(一応、2時間20分とやや長めではあるのだが)。それでも、原作の良さに救われている部分が多々あるように思いました。

『ナイル殺人事件』(1978) 2.jpg また、この映画に関して言えば、本場エジプトでのオールロケで撮影されているため(同じナイル川でも原作の場所とはやや違っているようだが)、ある種"観光映画"(?)としても楽しめたというのがメリットでしょうか。行ってみたいね、ナイル川クルーズ。雪中で止まってしまった「オリエント急行」と違って、ナイルの川面を船が「動いている」という実感もあるし、途中で下船していろいろ観光もするし...。

 映画「オリエント急行殺人事件」は、トリックの関係上(犯人同士しかいない場で演技させると"映像の嘘"になってしまうという制約があり)、ポワロの容疑者に対する個別尋問に終始しましたが、こちらはそのようなオチではないので、登場人物間の心理的葛藤は比較的自由かつ丁寧に描けていたと思います。

ナイル殺人事件ド.jpgDEATH ON THE NILE_original_poster.jpg 名優揃いの作品ですが、やはり何と言ってもオリジナルがいいんだろうなあ。この意外性のあるパターン、男女の関係なんて、傍目ではワカラナイ...。クリスティが最初の考案者かどうかは別として、この手の「人間関係トリック」は、その後も英国ミステリで何度か使われているみたいです。

DEATH ON THE NILE UK original film poster(右)/「ナイル殺人事件」映画パンフレット/単行本(早川書房(加島祥造:訳)映画タイアップカバー)
ナイル殺人事件 パンフレット.jpg「ナイルに死す」.jpg「ナイル殺人事件」●原題:DEATH ON THE NILE●制作年:1978年●制作国:イギリス●監督:ジョン・ギラーミン●製作:ジョン・ブラボーン/リチャード・グッドウィン●脚本:アンソニー・シェーファー●撮影:ジャック・カーディフ●音楽:ニーノ・ロータ●原作:ミア・ファロー_3.jpgアガサ・クリスティ「ナイルに死す」●時間:140分●出演:ピーター・ユスティノフ/ベティ・デイヴィス/ミア・ファロー/アンジェラ・ランズkinopoisk.ru-Death-on-the-Nile-1612358.jpgベリー/ジョージ・ケネディ/オリヴィア・ハッセー/ジョン・フィンチ/マギー・スミス/デヴィッド・ニーヴkinopoisk.ru-Death-on-the-Nile-1612353.jpgン/ジャック・ウォーデン/ロイス・チャイルズサイモン・マッコーキンデール/ジェーン・バーキン/サム・ワナメイカー/ハリー・アンドリュース●日本公開:1978/12●配給:東宝東和●最初に観た場所:日比谷映画劇場(78-12-17)(評価:★★★☆)
日比谷映画劇場.jpg日比谷映画劇場(戦前).bmp日比谷映画5.jpg 
     
日比谷映画劇場(日比谷映劇)
1934年2月1日オープン(現・日比谷シャンテ辺り)(1,680席)1984年10月31日閉館

戦前の日比谷映画劇場(彩色絵ハガキ)

名探偵ポワロ  ナイルに死す 02.jpg名探偵ポワロ 52  ナイルに死す.jpg「名探偵ポワロ(第52話)/ナイルに死す」 (04年/英) ★★★☆

 【1957年ポケット版[ハヤカワ・ミステリ(脇矢徹:訳)]/1965年文庫化[新潮文庫(西川清子:訳)]/1977年ノベルズ版[ハヤカワ・ノヴェルズ(加島祥造:訳)]/1984年再文庫化[ハヤカワ・ミステリ文庫(加島祥造:訳)]/2003年再文庫化[ハヤカワ・クリスティー文庫(加島祥造:訳)]】

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前半はカフカ的。単館ロードのインディペンデント系作品の中でも伝説的なカルトムービー。

鉄男 チラシ.jpg鉄男 dvd.bmp 中野武蔵野ホール 2.jpg中野武蔵野ホール 地図.jpg
「鉄男 TETSUO」チラシ/「鉄男 [DVD]」 中野武蔵野ホール(「出撃!!アド街ック天国」2003年8月16日放送より)

「鉄男 TETSUO」  .jpg 平凡なサラリーマンである"男"がある朝目覚めると、頬に金属のトゲのようなニキビが生じ、やがて彼の身体は時間とともに鉄に蝕まれていくが、それは、それは数日前に男が車で轢いてしまい、山林に捨てた"やつ"の復讐によるものだった―。

「鉄男 TETSUO」1.jpg 前半から、何だかカフカの「変身」みたいで引き込まれ、全体的にも、モノクロながらも映像構成が素晴しいと思いました。製作・監督・脚本・美術・撮影・照明・編集・特撮を1人でこなした(出演までしている)塚本晋也というのはスゴイなあと。

「鉄男 TETSUO」2.jpg 拾い集めた廃物を利用したSFX、SFXと言っても殆どコマ撮りやモンタージュの集積なのですが、低予算にも関わらず(低予算ならではの?)いい味を出しています。

 本作の約20年後の'10年に第3弾「鉄男 THE BULLET MAN」が製作されていますが(第2弾は'92年に製作)、本作の良さであるインディペンデントな雰囲気は保たれているのでしょうか(予告編を見る限り、そうは思えなかった)。

 主演の田口トモロヲも、俳優のほか、ミュージシャン・映画監督・劇画家などとして多才ぶりを発揮していたそうですが、NHKの「プロジェクトX」のナレーションで一気に有名になったのがこの作品に出演した15年後で、あの田口トモロヲが...という感慨がありました(随分と落ち着いた感じになったなあ)。

中野武蔵野ホール.jpg 中野武蔵野ホールでの単館ロードでしたが(確か、レイト・ショーの初日に観たと思う)、前年公開の松井良彦監督の「追悼のざわめき」('88年/欲望プロダクション)と並んで(これも中野武蔵野ホールでの単館ロード)、当時のインディペンデント系作品の中でも伝説的なカルトムービーと言えるのではないでしょうか。

中野武蔵野ホール 1987年8月、中野駅北口方面「中野武蔵野館」跡地にオープン 2004(平成16)年5月7日閉館

鉄男 TET.jpgTetsuo(1989).jpg「鉄男 TETSUO」●制作年:1989年●監督・製作・脚本・美術・撮影・照明・編集・特撮:塚本晋也●音楽:石川忠●時間:67分●出演:田口トモロヲ/塚本晋也/藤原京/叶岡伸/六平直政/石橋蓮司●日本公開:1989/07●配給:海獣シアター●最初に観た場所:中野武蔵野ホール (89-07-01)(評価:★★★★) 

Tetsuo(1989)


《読書MEMO》
Top 10 Strange Japanese Films You Need to Watch(海外個人サイト)
10.House (1977)
9.Marebito (2004)
8.Versus (2000)
7.Survive Style 5+ (2004)
6.Tokyo Gore Police (2008)
5.Paprika (2006)
4.Dead Leaves (2004)
3.Robo Geisha (2009)
2.Rampo Noir (2005)
1.Tetsuo the Iron Man (1989)

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大胆に翻案し、原作以上のもの(現代的なもの)を生み出す黒澤スタイルの典型作。

羅生門 チラシ.bmp「羅生門」デジタル復元・完全版(2008年).jpg羅生門ポスター.jpg 羅生門dvd.jpg 藪の中 講談社文庫.jpg
映画「羅生門」ポスター/「羅生門 [DVD]」/『藪の中 (講談社文庫)』 ['09年]
羅生門 デジタル完全版 [DVD]」['10年]
映画「羅生門」チラシ(左) 

羅生門1.bmp 平安末期、侍(森雅之)が妻(京マチ子)を伴っての旅の途中で、多襄丸という盗賊(三船敏郎)とすれ違うが、妻に惹かれた盗賊は、藪の中に財宝があると言って侍を誘い込み、不意に組みついて侍を木に縄で縛りつけ、その目の前で女を手込めにする。『羅生門』.jpg 翌朝、侍は死骸となって木樵り(志村喬) に発見されるが、女は行方不明に。後に、一体何が起こり何があったのかを3人の当事者達は語るが、それぞれの言い分に食い違いがあり、真実は杳として知れない―。

羅生門2.bmp 1922(大正11)年1月に雑誌「新潮」に発表の芥川の短編「藪の中」が実質的な原作で、1915(大正4)年発表の「羅生門」は、橋本忍と黒澤が脚色し、黒澤がメガホンを取ったこの映画では、冒頭の背景など題材として一部が使われているだけです。

京マチ子 羅生門.jpg 原作は、事件関係者の証言のみで成り立っていて、木樵、旅法師、放免(警官)、媼(女の母)の順に証言しますが、この部分が事件の説明になっている一方で、彼らは状況証拠ばかりを述べて事件の核心には触れません。続いて当事者3人の証言が続き、多襄丸こと盗人が、侍を殺すつもりは無かったが、女に2人が決闘するように言われ、武士の縄を解いて斬り結んだ末に武士を刺し、その間に女は逃げたと証言、一方の女は、清水寺での懺悔において、無念の夫の自害を自分が幇助し、自分も死のうとしたが死に切れなかったと言います。 そして最後に、侍の霊が巫女の口を借りて、妻が盗人を唆して自分を殺させたと―。

「羅生門」.jpg羅生門3.bmp 原作はこれだけで終わってしまっているので、誰の言うことが真実なのかわからないわけですが、霊が語っているだけに、何となく侍の言い分が真実味があるような...(作者である芥川龍之介は犯人が誰かを示唆したのではなく、それが不可知であることを意図したというのが「通説」のようだが)。

羅生門4.bmp京マチ子.jpg 映画では、原作と同様、盗人、女、侍の証言が再現映像と共に続きますが、女の証言が原作とやや異なり、侍の証言はもっと異なり、しかも最後に、杣売(そまふ)、つまり木樵(志村喬)が、実は自分は始終を見ていたと言って証言しますが、この杣売の証言は原作にはありません。

 その杣売(木樵)の証言がまた、それまでの3人の証言と異なるという大胆な設定で、杣売(木樵)の語ったのが真実だとすれば、京マチ子が演じた女が最も強くなっている(怖い存在になっている?)という印象であり、黒澤明はこの作品に、現代的であるとともに相当キツイ「解」を与えたことになるかと思います(その重いムードを救うような、原作には無いラストが用意されてはいるが)。

京マチ子(1959年)[共同通信]

 個人的には、そのことによって原作を超えた映画作品となっていると思われ、黒澤明が名監督とされる1つの証しとなる作品ではないかと。因みに、同様に全く個人的な印象として、原作を超えていると思われる映画化作品を幾つか列挙すると―(黒澤明とヒッチコックはまだまだ他にもありそうだが、とりあえず1監督1作品として)。

・監督:溝口健二「雨月物語」('53年/大映)>原作:上田秋成『雨月物語』
・監督:ビリー・ワイルダー「情婦」('57年/米))>原作:アガサ・クリスティ『検察側の証人』
・監督:アルフレッド・ヒッチコック 「サイコ」('60年/米)>原作:ロバート・ブロック『気ちがい(サイコ)』
・監督:ロベール・ブレッソン「少女ムシェット」('67年/仏)>原作:ジョルジュ・ベルナノス『少女ムーシェット』
・監督:スティーヴン・スピルバーグ「ジョーズ」('75年/米)>原作:ピーター・ベンチリー『ジョーズ』

 この「羅生門」は、ストーリーの巧みさもさることながら、それはいつも観終わった後で思うことであって、観ている間は、森の樹々の葉を貫くように射す眩い陽光に代表されるような、白黒のコントラストの強い映像が陶酔的というか、眩暈を催させるような効果があり(宮川一夫のカメラがいい)、あまり思考力の方は働かないというのが実際のところですが、高田馬場のACTミニシアターでは、そうした自分のような人(感覚・情緒的映画観賞者?)のためを思ってか、上映後にスタッフが、ドナルド・リチーによる論理的な読み解きを解説してくれました(アットホームなミニシアターだったなあ、ここ。毎回、五円玉とミルキー飴をくれたし)。

Rashômon(1950) 「羅生門」(1950) 日本映画初のヴェネツィア国際映画祭金獅子賞とアカデミー賞名誉賞受賞。
Rashômon(1950).jpg
 
 

羅生門 志村喬.jpg羅生門 加東大介.jpg「羅生門」●制作年:1950年●監督:黒澤明●製作:箕浦甚吾●脚本:黒澤明/橋本忍●撮影:宮川一夫●音楽:早坂文雄●原作:芥川龍之介「藪の中」●時間:88分●出演:三船敏郎/森雅之/京マチ子/志村喬/千秋実/上田吉ニ郎/加東大介/本間文子●公開:1950/08●配給:大羅生門-00.jpg映●最初に観た場所:高田馬ACTミニ・シアター.jpgACTミニ・シアター2.jpg早稲田通りビル.jpg場ACTミニシアター(84-12-09)(評価:★★★★☆)●併映:「デルス・ウザーラ」(黒澤明)
高田馬場(西早稲田)ACTミニシアター 1970年代開館。2000(平成12)年頃 閉館(活動休止)

 芥川の「藪の中」と「羅生門」は、岩波文庫、新潮文庫、角川文庫、ちくま文庫などで、それぞれ別々の本(短編集)に収められていますが("やのまん"の『芥川龍之介 羅生門―デカい活字の千円文学!』 ('09年)という単行本に両方が収められていた)、'09年に講談社文庫で両方が1冊入ったもの(タイトルは『藪の中』)が出ました(講談社が製作に加わっている映画「TAJOMARU(多襄丸)」の公開に合わせてか。「藪の中」を原作とするこの映画(要するに「羅生門」のリメイク)の評価は散々なものだったらしいが)。

ACTミニシアターのチラシ.gifACTミニシアターのチラシ http://d.hatena.ne.jp/oyama_noboruko/20070519/p1 大山昇子氏「女おいどん日記」より

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高評価作品が多い30年~50年代。40年~50年代の12作品の著者の評価を自分のと比べると...。

ミュージカル洋画 ぼくの500本.jpg     巴里のアメリカ人08.jpg バンド・ワゴン 映画poster.jpg 南太平洋 チラシ.jpg
ミュージカル洋画ぼくの500本 (文春新書)』 「巴里のアメリカ人」1シーン/「バンド・ワゴン」ポスター/「南太平洋」チラシ

 著者の外国映画ぼくの500本('03年4月)、『日本映画 ぼくの300本』('04年6月)、『外国映画 ハラハラドキドキぼくの500本』('05年11月)、『愛をめぐる洋画ぼくの500本』('06年10月)に続くシリーズ第5弾で、著者は1910年10月生まれですから、刊行年(西暦)の下2桁に90を足せば、刊行時の年齢になるわけですが、凄いなあ。

 本書で取り上げた500本は、必ずしもブロードウェイなどの舞台ミュージカルを映画化したものに限らず、広く音楽映画の全般から集めたとのことですが、確かに「これ、音楽映画だったっけ」というのもあるにせよ、500本も集めてくるのはこの人ならでは。何せ、洋画だけで1万数千本観ている方ですから(「たとえ500本でも、多少ともビデオやDVDを買ったり借りたりするときのご参考になれば幸甚である」とありますが、「たとえ500本」というのが何だか謙虚(?))。

天井桟敷の人々 パンフ.JPG『天井桟敷の人々』(1945).jpg 著者独自の「星」による採点は上の方が厳しくて、100点満点換算すると100点に該当する作品は無く、最高は90点で「天井桟敷の人々」('45年)と「ザッツ・エンタテインメント」('74年)の2作か(但し、個人的には、「天井桟敷の人々」は、一般的な「ミュージカル映画」というイメージからはやや外れているようにも思う)。
 85点の作品も限られており、やはり旧い映画に高評価の作品が多い感じで、70年代から85点・80点の作品は減り、85点は「アマデウス」('84年)が最後、以降はありません。
 これは、巻末の「ミュージカル洋画小史」で著者も書いているように、70年代半ばからミュージカル映画の急激な凋落が始まったためでしょう。

 逆に30年代から50年代にかけては高い評価の作品が目白押しですが、個人的に観ているのは40年代半ば以降かなあという感じで自分で、自分の採点と比べると次の通りです。(著者の☆1つは20点、★1つは5点)

①「天井桟敷の人々」 ('45年/仏)著者 ☆☆☆☆★★(90点)/自分 ★★★★(80点)
天井桟敷の人々1.jpg天井桟敷.jpg天井桟敷の人々 ポスター.jpg 著者は、「規模の雄大さ、精神の雄渾において比肩すべき映画はない」としており、いい作品には違いないが、3時間超の内容は結構「大河メロドラマ」的な要素も。占領下で作られたなどの付帯要素が、戦争を経験した人の評価に入ってくるのでは? 著者は「子供の頃に見た見世物小屋を思い出す」とのこと。実際にそうした見世物小屋を見たことは無いが(花園神社を除いて。あれは、戦前というより、本来は地方のものではないか)、戦後の闇市のカオスに通じる雰囲気も持った作品だし、ヌード女優から伯爵の愛人に成り上がる女主人公にもそれが体現されているような。

「天井桟敷の人々」●原題:LES ENFANTS DU PARADIS●制作年:1945年●制作国:フランス●監督:マルセル・カルネ●製作:フレッド・オラン●脚本:ジャック・プレヴェール●撮影:ロジェ・ユベール/マルク・フォサール●音楽:モーリス・ティリエ/ジョセフ・コズマ●時間:190分●出演:アルレッティ/ジャン=ルイ・バロー/ピエール・ブラッスール/マルセル・エラン/ルイ・サルー/マリア・カザレス/ピエール・ルノワール●日本公開:1952/02●配給:東宝●最初に観た場所:池袋文芸坐(82-03-21)●併映:「ネオ・ファンタジア」(ブルーノ・ボセット)

②「アメリカ交響楽」 ('45年/米)著者 ☆☆☆★★(70点)自分 ★★★☆(70点)
アメリカ交響楽 RHAPSODY IN BLUE.jpgアメリカ交響楽.jpg この映画の原題でもある「ラプソディー・イン・ブルー」や、「スワニー」「巴里のアメリカ人」「ボギーとベス」などの名曲で知られるガーシュウィンの生涯を描いた作品で、モノクロ画面が音楽を引き立てていると思った(著者は、主役を演じたロバート・アルダより、オスカー・レヴァント(本人役で出演)に思い入れがある模様)。因みに、日本で「ロード・ショー」と銘打って封切られた映画の第1号。

「アメリカ交響楽」 ●原題:RHAPSODY IN BLUE●制作年:1945年●制作国:アメリカ●監督:アーヴィン・クーパー●製作:フレッド・オラン●脚本:ハワード・コッホ●撮影:ソル・ポリート●音楽ジョージ・ガーシュウィン●時間:130分●出演:ロバート・アルダ/ジョーン・レスリー/アレクシス・スミス/チャールズ・コバーン/アルバート・バッサーマン/オスカー・レヴァント/ポール・ホワイトマン/ジョージ・ホワイト/ヘイゼル・スコット/アン・ブラウン、アル・ジョルスン/ジュリー・ビショップ●日本公開:1947/03●配給:ワーナー・ブラザース映画●最初に観た場所:テアトル新宿(85-09-23)

③「錨を上げて」 ('45年/米)著者 ☆☆☆★(65点)自分 ★★★(60点)
錨を上げて08.jpg錨を上げて2.jpg錨を上げて.jpgAnchors Aweigh.jpg 4日間の休暇を得てハリウッドへ行った2人の水夫の物語。元気のいい映画だけど、2時間20分は長かった。ジーン・ケリーがアニメ合成でトム&ジェリーと踊るシーンは「ロジャー・ラビット」の先駆けか(著者も、その技術を評価。ジーン・ケリーが呼び物の映画だとも)。
錨を上げて アニメ.jpg
「錨を上げて」●原題:ANCHORS AWEIGH●制作年:1945年●制作国:アメリカ●監督:ジョージ・シドニー●製作:ジョー・パスターナク●脚本:イソベル・レナート●撮影:ロバート・プランク/チャールズ・P・ボイル●音楽監督:ジョージー・ストール●原作:ナタリー・マーシン●時間:140分●出演:フランク・シナトラ/キャスリン・グレイソン/ジーン・ケリー/ホセ・イタービ /ディーン・ストックウェル/パメラ・ブリットン/ジョージ・シドニー●日本公開:1953/07●配給:MGM日本支社●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

④「夜も昼も」 ('46年/米)著者 ☆☆☆★(65点)自分 ★★★(60点)
NIGHT AND DAY 1946.jpg夜も昼も NIGHT AND DAY.jpgNight and Day Cary Grant.jpg アメリカの作曲家コール・ポーターの伝記作品。著者の言う通り、「ポーターの佳曲の数々を聴かせ唄と踊りの総天然色場面を楽しませる」のが目的みたいな作品(曰く「その限りにおいては楽しい」と)。

「夜も昼も」●原題:NIGHT AND DAY●制作年:1946年●制作国:アメリカ●監督:マイケル・カーティズ●製作:アーサー・シュワルツ●脚本:チャールズ・ホフマン/レオ・タウンゼンド/ウィリアム・バワーズ●撮影:ペヴァレル・マーレイ/ウィリアム・V・スコール●音楽監督:レオ・F・フォーブステイン●原作:ナタリー・マーシン●時間:116分●出演:ケーリー・グラント/アレクシス・スミス/モンティ・ウーリー/ジニー・シムズ/ジェーン・ワイマン/カルロス・ラミレス●日本公開:1951/01●配給:セントラル●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

⑤「赤い靴」('48年/英)著者 ☆☆☆☆(80点)自分 ★★★(60点)
赤い靴 ポスター.jpg赤い靴.jpg赤い靴2.jpg ニジンスキーとロシア・バレエ団の主宰者ディアギレフとの関係がモデルといわれているバレエもの(ハーバート・ロス監督の「ニジンスキー」('79年/英)は両者の確執にフォーカスした映画だった)だが、主人公が女性になって、「仕事か恋か」という今も変わらぬ?テーマになっている感じ。著者はモイラ・シアラーの踊りを高く評価している。ヨーロッパには「名人の作った赤い靴をはいた者は踊りの名手になれるが、一生踊り続けなければモイラ・シアラー.jpgならない」という「赤い靴」の伝説があるそうだが、「赤い靴」と言えばアンデルセンが先に思い浮かぶ(一応、そこから材を得ているとのこと)。

「赤い靴」 ●原題:THE RED SHOES●制作年:1948年●制作国:イギリス●監督:エメリック・プレスバーガー●製作:マイケル・パウエル/エメリック・プレスバーガー●脚本:マイケル・パウエル/エメリック・プレスバーガー●撮影:ジャック・カーディフ●音楽演奏:ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ●原作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン●時間:136分●出演:アントン・ウォルブルック/マリウス・ゴーリング/モイラ・シアラー/ロバート・ヘルプマン/レオニード・マシーン●日本公開:1950/03●配給:BCFC=NCC●最初に観た場所:高田馬場パール座(77-11-10)●併映:「トリュフォーの思春期」(フランソワ・トリュフォー)
モイラ・シアラー

⑥「イースター・パレード」('48年/英)著者 ☆☆☆☆(80点)自分 ★★★☆(70点)
Easter Parade (1949).jpgイースター・パレード dvd.jpg ジュディ・ガーランドとフレッド・アステアのコンビで、ショー・ビズものとも言え、一旦引退したアステアが、骨折のジーン・ケリーのピンチヒッター出演で頑張っていて、著者の評価も高い(戦後、初めて輸入された総天然色ミュージカルであることも影響している?)。

「イースター・パレード」●原題:EASTER PARADE●制作年:1948年●制作国:アメリカ●監督:チャールズ・ウォルターズ●製作:アーサー・フリード●脚色:シドニー・シェルダン/フランセス・グッドリッチ/アルバート・ハケット●撮影:ハリー・ストラドリング●音楽演奏:ジョニー・グリーン/ロジャー・イーデンス●原作:フランセス・グッドリッチ/アルバート・ハケット●時間:136分●出演:ジュディ・ガーランド/フレッド・アステア/ピーター・ローフォード/アン・ミラー/ジュールス・マンシュイン●日本公開:1950/02●配給:セントラル●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

⑦「踊る大紐育」('49年/米)著者 ☆☆☆☆★(85点)自分 ★★★☆(70点)
踊る大紐育.jpg 24時間の休暇をもらった3人の水兵がニューヨークを舞台に繰り広げるミュージカル。3人が埠頭に降り立って最初に歌うのは「ニューヨーク、ニューヨーク」。振付もジーン・ケリーが担当した。著者はヴェラ=エレンの踊りが良かったと。

踊る大紐育(ニューヨーク) dvd.jpg「踊る大紐育」●原題:ON THE TOWN●制作年:1949年●制作国:アメリカ●監督:スタンリー・ドーネン●製作:アーサー・フリード●脚本:ベティ・カムデン/アドルフ・グリーン●撮影:ハロルド・ロッソン●音楽:レナード・バーンスタイン●原作:ベティ・カムデン/アドルフ・グリーン●時間:98分●出演:ジーン・ケリー/フランク・シナトラ/ジュールス・マンシン/アン・ミラー/ジュールス・マンシュイン/ベティ・ギャレット/ヴェラ・エレン●日本公開:1951/08●配給:セントラル●最初に観た場所:テアトル新宿(85-09-23)

巴里のアメリカ人 ポスター.jpg⑧「巴里のアメリカ人」 ('51年/米)著者 ☆☆☆☆★(85点)自分 ★★★★(80点)
巴里のアメリカ人2.jpg巴里のアメリカ人 dvd.jpg 音楽はジョージ・ガーシュイン。踊りもいいし、ストーリーも良く出来ている。著者の言う様に、舞台装置をユトリロやゴッホ、ロートレックなど有名画家の絵に擬えたのも楽しい。著者は「一番感心すべきはジーン・ケリー」としているが、アクロバティックな彼の踊りについていくレスリー・キャロンも中国雑伎団みたいで凄い(1951年アカデミー賞作品)。

ジーンケリーとレスリーキャロン.jpg巴里のアメリカ人09.jpg「巴里のアメリカ人」●原題:AN AMERICAN IN PARIS●制作年:1951年●制作国:アメリカ●監督:ヴィンセント・ミネリ●製作:アーサー・フリード●脚本:アラン・ジェイ・ラーナー●撮影:アルフレッド・ギルクス●音楽:ジョージ・ガーシュイン●時間:113分●出演:ジーン・ケリー/レスリー・キャロン/オスカー・レヴァント/ジョルジュ・ゲタリー/ユージン・ボーデン/ニナ・フォック●日本公開:1952/05●配給:MGM日本支社●最初に観た場所:高田馬場パール座(78-05-27)●併映:「シェルブールの雨傘」(ジャック・ドゥミ)

⑨「バンド・ワゴン」('53年/米)著者 ☆☆☆☆★(85点)自分 ★★★★(80点)
バンド・ワゴン08.jpgバンド・ワゴン2.jpgバンド・ワゴン.jpgバンド・ワゴン 特別版 [DVD].jpgシド・チャリシー.jpg 落ち目のスター、フレッド・アステアの再起物語で、「イースター・パレード」以上にショー・ビズもの色合いが強い作品だが、コメディタッチで明るい。ストーリーは予定調和だが、本書によれば、ミッキー・スピレーンの探偵小説のパロディが織り込まれているとのことで、そうしたことも含め、通好みの作品かも。但し、アステアとシド・チャリシーの踊りだけでも十分楽しめる。シド・チャリシーの踊りも、レスリー・キャロンと双璧と言っていぐらいスゴイ。

THE BANDO WAGON.jpg「バンド・ワゴン」●原題:THE BANDO WAGON●制作年:1953年●制作国:アメリカ●監督:ヴィンセント・ミネリ●製作:アーサー・フリード●脚本:ベティ・コムデン/アドルフ・グリーン●撮影:ハリー・ジャクソン●音楽:アドルフ・ドイッチ/コンラッド・サリンジャー●時間:112分●出演:フレッド・アステア/シド・チャリシー/オスカー・レヴァント/ナネット・ファブレー●日本公開:1953/12●配給:MGM●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

⑩「パリの恋人」('53年/米)著者 ☆☆☆☆(80点)自分 ★★★☆(70点)
パリの恋人dvd.jpg『パリの恋人』(1957).jpgパリの恋人 映画ポスター.jpg 著者曰く「すばらしいファション・ミュージカル」であり、オードリー・ヘプバーンの魅力がたっぷり味わえると(原題の「ファニー・フェイス」はもちろんヘップバーンのことを指す)。
Funny Face.jpg 衣装はジバンシー、音楽はガーシュウィンで、音楽と併せて、女性であればファッションも楽しめるのは確か。
'S Wonderful.bmp ちょっと「マイ・フェア・レディ」に似た話で、「マイ・フェア・レディ」が吹替えなのに対し、こっちはオードリー・ヘプバーン本人の肉声の歌が聴ける。それにしても、一旦引退したこともあるはずのアステアが元気で、とても57才とは思えない。結局、更に20余年、「ザッツ・エンタテインメント」('74年)まで活躍したから、ある意味"超人"的。

『パリの恋人』(1957) 2.jpgパリの恋人 パンフ.jpg「パリの恋人」●原題:FUNNY FACE●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:スパリの恋人 パンフ.jpgタンリー・ドーネン●製作:アーサー・フリード●脚本:レナード・ガーシェ●撮影:レイ・ジューン●音楽:ジョージ・ガーシュウィン/アドルフ・ドイッチ●時間:103分●出演:オードリー・ヘプバーン/フレッド・アステア/ケイ・トンプスン/ミシェル・オークレール●日本公開:1957/02●配給:パラマウント映画●最初に観た場所:高田馬場ACTミニシアター(85-11-03)●併映:「リリー・マルレーン」(ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー) 
南太平洋パンフレット.jpg
⑪「南太平洋」('58年/米)著者 ☆☆☆★(65点)自分 ★★★☆(70点)
  1949年初演のブロードウェイ版の監督であるジョシュア・ローガンが映画版でもそのまま監督したもので、ハワイのカウアイ島でロケが行われた(一度だけ行ったことがあるが、火山活動によって出来た島らしい、渓谷や湿地帯ジャングルなど、野趣溢れる自然が満喫できる島だった)。
 著者は「戦時色濃厚な」作品であるため、あまり好きになれないようだが、それを言うなら、著者が高得点をつけている「シェルブールの雨傘」などは、フランス側の視点でしか描かれていないとも言えるのでは。超エスニック、大規模ロケ映画で、空も海も恐ろ「南太平洋」(自由が丘武蔵野館).jpgしいくらい青い(カラーフィルターのせいか?)。トロピカル・ナンバーの定番になった主題歌「バリ・ハイ」や「魅惑の宵」などの歌曲もいい。

「南太平洋」映画チラシ/期間限定再公開(自由が丘武蔵野館) 1987(昭和62)年7月4日~7月31日 
       
                                             
南太平洋(87R).jpg南太平洋.jpg「南太平洋」●原題:SOUTH PACIFIC●制作年:1958年●制作国:アメリカ●監督:ジョシュア・ローガン●製作:バディ・アドラー●脚本:ポール・オスボーン●撮影:レオン・シャムロイ●音楽:リチャード・ロジャース●原作:ジェームズ・A・ミッチェナー ●原作戯曲:オス自由が丘武蔵野館.jpgカー・ハマースタイン2世/リチャード・ロジャース/ジョシュア・ローガン●時間:156分●出演:ロッサノ・ブラッツィ/ミッチー・ゲイナー/ジョン・カー/レイ・ウォルストン/フランス・ニューエン/ラス・モーガン●日本公開:1959/11●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:自由が丘武蔵野館(87-07-05)(リバイバル・ロードショー) 自由が丘武蔵野館 (旧・自由が丘武蔵野推理) 1951年「自由が丘武蔵野推理」オープン。1985(昭和60)年11月いったん閉館し改築、「自由が丘武蔵野館」と改称し再オープン。2004(平成16)年2月29日閉館。

⑫「黒いオルフェ」('59年/仏)著者 ☆☆☆☆(80点)自分 ★★★★(80点)
黒いオルフェ2.jpg黒いオルフェ (1959).jpg黒いオルフェ dvd.jpg 娯楽作品と言うより芸術作品。ジャン・コクトーの「オルフェ」('50年)と同じギリシア神話をベースにしているとのことだが、ちょっと難解な部分も。著者も言うように、リオのカーニヴァルの描写が素晴らしい。

「黒いオルフェ」●原題:ORFEO NEGRO●制作年:1959年●制作国:フランス●監督:マルセル・カミュ●製作:バディ・アドラー●脚本:マルセル・カミュ/ジャック・ヴィオ●撮影:ジャン・ブールゴワン●音楽:アントニオ・カルロス・ジョビン/ルイス・ボンファ●原作:ヴィニシウス・デ・モライス●時間:107分●出演:ブレノ・メロ/マルペッサ・ドーン/マルセル・カミュ/ファウスト・グエルゾーニ/ルルデス・デ・オリベイラ/レア・ガルシア/アデマール・ダ・シルバ●日本公開:1960/07●配給:東和●最初に観た場所:八重洲スター座(79-04-15)

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