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最初のうちは楽しく読めたが...。"ナンセンスもの"って意外と書くのが難しい?
『どすこい(仮)』('00年/集英社/装画:しりあがり寿/装丁:祖父江慎)「ベルリン忠臣蔵 [VHS]」
「力士」をネタに、それに関連づけて推理小説の有名作品ばかり7作を次々とパロディ化したアンソロジーで、全編ナンセンス・ギャグだらけ、ストーリー自体もハチャメチャです。
"ナンセンスもの"を読むのは時間の無駄だと思っている人にはまずお薦めできないし、「京極堂シリーズ」とは対極にあるような "バカバカしさ"オンリーの作品なので、著者のファンの間でも評価は割れるかも。
個人的には"ナンセンスもの"が嫌いではないので(気分転換になるし、ものによっては、イマジネーションを刺激される)、最初のうちは楽しく読みました。
池宮彰一郎の『四十七人の刺客』や瀬名秀明の『パラサイト・イブ』のパロディは、相撲の決まり手の「四十八手」を「四十七士」や染色体数「46」を絡めて"落ち"にしているのが上手く、この後どう続くのかと期待させました。
しかし、だんだん(最初から?)原作から離れてパロディとは言えないものばかりになり、編集者とのやりとりなど楽屋ネタが多くなって、最後は推理作家が集っての座談になってしまうという、モロ"身内ネタ"(この部分が面白いと思う読者もいるかも知れないですが)。
「(仮)」って何かと思ったら、後に『どすこい(安)』という新書版と『どすこい。』という文庫版が出ていて、途中で多少の書き加えはあったものの、「。」は、これで打ち止めということらしいです。
"ナンセンスもの"っていうのは多くの作家にとって、結構書いてみると難しいのかも知れないと思いました。
因みに、個人的にこれまでに接した「四十七士」モノ(忠臣蔵)のパロディで、一番ぶっ飛んじゃっていると思ったのは、小説ではなく外国映画で、「ベルリン忠臣蔵」('85年/西独)というもの。
ハンブルグ(ベルリンではない?)で権力者や金持ちばかり狙われる事件が次々起こりますが、それらの犯行は、大石内蔵助を名乗る男を首謀者とする日本人ギャング団で、犯行後に日本語で書かれた「近松」「木村」「赤植」といった謎の文字を残していく...彼等の目的はを探るため、女性事件記者が立ち上がるというストーリーです。
「ワタシハオーイシクラノスケダ」と片言の日本語を操る大石蔵之助の正体は、実は日本で柔道の修行したドイツ人で(なんだ、留学生みたいなものか。マスクをつけていても、見れば日本人でないことはすぐわかってしまうのだが)、最後には、日本からやってきた忍者と戦います(かなり強引な展開)。
監督はすごく日本贔屓の人だそうですが、ストーリーも衣装も殺陣もメチャクチャなのに(しかも時折ヘン何な日本語が出てくる)、監督自身は大真面目、本気でヒーロー物を撮っているつもりみたいで、そのギャップで笑えるという珍品。
ロードの上映館は中野武蔵野ホール、カルトムービーとしかジャンル区分のしようがありませんが(そのカルト的価値をオマケしたうえで「評価不能」)、べルリンの壁が崩壊した際の記念番組としてNHK-BSで放映されました。NHKも何を間違ったのか...。
「ベルリン忠臣蔵」●原題:SUMMER OF SAMURAI●制作年:1985年●制作国:西ドイツ●監督:ハンス・クリストフ・ブルーメンベルグ●脚本:ウォルフガング・ディクマン●撮影:ヴィットリオ・ストラーロ●音楽:ヒューベルト・バルトローメ●時間:115分●出演:ヴォジェックス・プュショナック/ユルネリア・フローボッシュ/ハンス・ペーター・ハルヴァクス/トーヨー・タナカ●日本公開:1987/12●配給:ギャガ・コミュニケーションズ●最初に観た場所:中野武蔵野ホール (87-12-22)(評価:★★★?)「ベルリン忠臣蔵 [VHS]」
中野武蔵野ホール 1987年8月、中野駅北口方面「中野武蔵野館」跡地にオープン 2004(平成16)年5月7日閉館
【2002年新書版[集英社ノベルズ(『どすこい(安)』)]/2004年文庫化[集英社文庫(『どすこい。』)]】