【1045】 ◎ ミケランジェロ・アントニオーニ 「情事」 (60年/伊) (1962/01 イタリフィルム) ★★★★★

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静かな情感を湛えつつ、ストレートにわかり易く人間の"原罪"を描く。

情事.jpg L'Avventura(1960).jpg L' AVVENTURA Michelangelo Antonioni.jpg L'Avventura (1960).jpg 
情事 [DVD]」 L'Avventura(1960) モニカ・ヴィッティ
 元大使の娘アンナ(レア・マッセリ)の誘いで、彼女とは冷えかけた関係にある建築家の恋人サンドロ(ガブリエル・フェレゼッティ)と、彼女の友人クラウディア(情事03.jpgモニカ・ヴィッティ)の3人は、夏の数日間をシチリアのエオリア諸島のある島にて過ごすことになるが、ヨットで小さな無人島に立ち寄った際にアンナが忽然と姿を消す。捜索隊も出て、残された2人も懸命に行方を捜すが、そのうち疚しさを覚えながらも2人は情事に耽るようになり、やがてアンナの件も口にしなくなる―(原題は L'avventura、「冒険」の意))。

Michelangelo Antonioni.jpg いいなあ、アントニオーニのモノクロ映画! 晩年は寡作で、日本でも一旦は忘れかけたみたいな感じだったのが、90年代に静かなリバイバル・ブームが起こり、この作品も'94年にリバイバルされています。そして、今また人気が出ているようです。
Michelangelo Antonioni (1912‐2007/享年94)

img_8.jpg "愛の不毛"を描き続けた監督と言われていますが、フェリーニの「8 1/2」やゴダールの「パッション」、トリュフォーの「アメリカの夜」と同じく映画監督を主人公にした「ある女の存在証明」('82年)などは、同じ"愛の不毛"を描いたものでも「抽象画」という感じで、自分としてはやや期待外れで、やはり「欲望」('66年)以前、とりわけ「さすらい」('57年)とこの両モノクロ作品が、静かな情感を湛え、ストレートにわかり易くていいです。
Monica Vitti in L'Eclisse
太陽はひとりぼっち71.jpg「情事」 6.jpg 何がわかり易いかと言えば、先ずもってモニカ・ヴィッティのアンニュイな魅力がわかり易いです(アラン・ドロンと共演した「太陽はひとりぼっち」(L'Eclisse、'62年)の彼女も良かった)。これに抗しきれない男の気持ちが理解できるだけに、身につまされる思い?

L'Avventura2.gif 「太陽はひとりぼっち」のアラン・ドロンはイケメン証券マンという役柄でしたが、ガブリエル・フェレゼッティ演じるサンドロは、創造力の面で才能に恵まれず、今は「構造計算」の仕事を専門にしている建築家という設定で、レア・マッセリ演じる元大使の娘アンナから見放されかけているというのが辛そうでした。

『情事』【ニュー東宝版】.jpg コトがなし崩し的に進行したある時から、モニカ・ヴィッティ演じるクラウディアは不安感に見舞われるようになり、サンドロも、俺たちは一体何をやっているんだと我に返ったように愕然とする―。

 男女の関係で捉えれば、筋立て自体はどこでもありそうな極めて俗な話で、にもかかわらずラストが重いのは、キリスト教のイメージが映画の伏線にあるためかも知れません。原罪とは逃れられないものなのかという想いに暫し浸されました。

 失踪者した元大使の娘のことを離れ、2人の成り行きに引き込まれて観ましたが、失踪者した娘がどうなったのかというミステリだと思って観てはいけない作品です(そう思って観たがために、この作品を貶す人がたまにいる)。

「情事」パンフレット(ニュー東宝版) 

L'Avventura (1960)
L'avventura (1960).jpg
「情事」(1960).jpg「情事」●原題:L' AVVENTURA(英:THE ADVENTURE)●制作年:1960年●制作国:イタリア●監督・脚本:ミケランジェロ・アントニオーニ●音楽:ジョヴァンニ・フスコ●時間:129分●出演:ガブリエル・フェルゼッティ/モニカ・ヴィッティ/レア・マッセリ/ドミニク・ブランシャール/ジェームズ・アダムス/レンツォ・リッチ●日本公開:1962/01●配給:イタリフィルム●最初に観た場所:六本木・俳優座シネマテン(82-06-30)●2回目:三鷹文化(82-11-06)●3回目:飯田橋ギン「情事」 7.jpgレイホール (83-07-10) (評価★★★★★)●併映(2回目):「フランス軍中尉の女」(カレル・ライス)●併映(3回目):「甘い生活」(フェデリコ・フェリーニ)
L_avventura_(1959)_Antonioni.jpg ガブリエル・フェルゼッティ/レア・マッセリ

三鷹文化 劇場 - 2.jpg三鷹文化 チラシ.jpg三鷹文化劇場 3.jpg三鷹文化.jpg
三鷹文化劇場 (三鷹駅南口中央通り) 1988(昭和63)年9月閉館
①三鷹オスカー ②三鷹文化劇場
  

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モニカ・ヴィッティ(女優)
2022年2月2日死去。90歳。ミケランジェロ・アントニオーニが1960年代に製作した「愛の不毛」3部作として知られる「情事」「夜」「太陽はひとりぼっち」や「赤い砂漠」などで知られる。

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