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ものすごくマニアックというほどでもなく、気軽に愉しめる1冊。

カルト映画館 SF.jpgカルト映画館 ホラー.jpg  ローラーボール [DVD].jpg ローラーボール 映画0.jpg
カルト映画館 SF (現代教養文庫)』『カルト映画館 ホラー (現代教養文庫)』(共に表紙イラスト:永野寿彦(シネマ・イラストライター))「ローラーボール [DVD]」ジェームズ・カーン

 『カルト映画館 ホラー』('95年/教養文庫)の4名の執筆者に永野寿彦氏を新たに加えた執筆陣が、SF映画100作品を、「名作SF館」「シリーズSF館」「日本SF館」の3篇に分けて紹介したものです。「名作SF館」は、さらに、➀1900~1950年代、②1960年代、③1970年~1990年代に分かれ、「日本SF館」はさらに➀1950年代、②1960年から1996年に分かれています。

キング・コング 02.jpgキング・コング 1933 dvd.jpg 「名作SF館」の➀1900~1950年代では、やはり「キング・コング」('33年)は外せないところでしょう。本書によれば、コングは、上半身だけの巨大なメカニカル操作の物と、ウィリス・H・オブライエンの人形アニメによって創造されているとのこと。人形アニメのキャラが主役で登場した最初で最後の映画であるとのことで、そう言われてもちょっとぴんとこない面もありますが、要するにあのコマ撮りが「人形アニメ」ということになるのだろうなあと。

宇宙水爆戦1.jpg宇宙水爆戦 dvd.jpg 「宇宙水爆戦」('55年)は、ストーリーにあまり関係ないところで登場するミュータントがいなければ、さほど印象には残らなかったであろうとしていますが、確かに。これに対し、「禁断の惑星」('56年)は、「全編が見どころ。50年代に製作されたSF映画の最高傑作であり、今もって映画史に残る至宝として知られる」としています。「裸の銃を持つ男」シリーズで知られるレスリー・ニールセンが正当な二枚目俳優として出演していること、シェイクスピアの「テンペスト」をSFに翻案したものであることなどに触れているのが嬉しいです。

2001 space odyssey22.jpg2001年宇宙の旅2.jpg ②1960年代には、60年代がSF映画の黄金時代であったことを物語るかのように、「博士の異常な愛情」('64年)や「2001年宇宙の旅」('68年)などの名作があり、それが、③1970年~1990年代で、まず70年代の前半、世界の破滅を描いた映画が出回り、70年後半にはスペースオペラが復権、80年代のSFX映画時代の到来、90年代のSF映画不毛の時代を経て今('96年)に至っているとのことです。

惑星ソラリスSOLARIS 1972.jpg惑星ソラリス dvd.jpg そう言えば、ハリウッド映画に限らず、アンドレ・タルコフスキー監督の「惑星ソラリス」('73年)や「ストーカー」('80年)なども、どこかディストピア的な雰囲気があったかも。ただし、「惑星ソラリス」については、従来のSF作品では取り上げられなかった哲学の世界にまで昇華し、「2001年宇宙の旅」と並び称される傑作としています。

「ローラーボール」('76年)映画.jpg アメリカ映画では、B級映画と言えばB級映画ですが、ノーマン・ジュイソン監督作でジェームズ・カーン主演の「ローラーボール」('76年)を取り上げているのが懐かしいです。これもある意味ディストピア映画で、優れたSF・ファンタジー・ホラー映画に与えられる「サターン賞」の、創設間もない'75年度第3回のサターンSF映画賞、サターン主演男優賞を受賞しています。想定されている年代は2018年です。ジェームズ・カーンの役どころは、古代ローマの見世物としての闘技会のグラディエーターの未来版といったところでしょうか。デスマッチ式のローラーボール・ゲームを戦うのは、ニューヨーク・チームvs.東京チームで、そう言えば70年代に「ローラーゲーム」というスポーツがあり、「東京ボンバーズ」というチームがあったなあ(この作品は2002年、「ダイ・ハード」のジョン・マクティアナン監督によりリメイクされたが、リメイク版は製作費7,000万ドルに対し興行収入2,585万ドルと振るわず、2009年にハリウッド・レポーター誌が発表した過去10年間に全米公開され、大コケした失敗作の8位にランクインした)。

カプリコン1.jpgCapricorn 1.jpg エリオット・グールド主演の「カプリコン・1」('77年)は、アメリカ政府が人類初の有人火星着陸の試みが失敗したのを隠蔽し、"成功"を偽装するという内容で、現実性はともかく、著者が言うように、権力に追い詰められる者の恐怖はよく描けていたかも。何事にも疑いの目を向けよという批判精神が評価された作品ではないかと思います。

Close Encounters of the Third Kind (1977).jpg未知との遭遇-特別編.jpg 本書によれば、「カプリコン・1」と同年公開の「未知との遭遇」('77年)にも、「実はアメリカ政府が人類支配をもくろむエイリアンと既に契約を取り交わしていて、その事実を隠蔽するために宇宙人は平和の使者であるというイメージを大衆に与えようと本作が作られた...」という説があったとのことです。主人公がいかにも"純粋無垢"そうな宇宙人たちに宇宙船内に招き入れられる〈特別編〉まで作られ公開されていることから、そのような説が出てきたりするのではないでしょうか。

ブレードランナー.jpg『ブレードランナー』4.jpgブレードランナー パンフ.jpg 「ブレードランナー」('82年)は一時代を画したといってもいい傑作。「ルトガー・ハウガーがレプリカントを圧倒的な存在感で演じ切っている」とする著者に同感ですが、著者によれば、ルトガー・ハウガーはその後どルトガー・ハウアー.jpgんな映画にも出過ぎて、映画ファンには"どうも仕事を選ばないおじさん"という印象があるそうな。いずれにせよ、この「ブレードランナー」という作品は、公開前及び公開直後はそれほど話題にもなっておらず、時を経て評価が高まった作品で、同年の第7回「サターンSF映画賞」も、候補にはなったものの「E.T.」('82年)に持っていかれています。(件のルトガー・ハウガーは、この文章をアップした18日後の 2019年7月19日に出身地のオランダで75歳にて75歳で亡くなった。)

WarGames.jpgウォー・ゲーム.jpg 「ウォー・ゲーム」('83年)は、パソコン好きの高校生が遊び心から侵入したコンピュータで戦争ゲームをやっていたのが、実はそれは軍の核戦略プログラムで、現実に第三次世界大戦勃発の危機を招いてしまうというもの。"人間が作り出した機械によって起こりうる危機"を上手く描き出していました。こうしたモチーフは「ダイハード4.0(フォー)」('07年)などに継承されていることを考えると、結構先駆的な作品だったかも。

トータル・リコール 1.jpgトータル・リコール dvd.jpg 「トータル・リコール」('90年)も「ブレードランナー」と同じくフィリップ・K・ディック原作(短編SF小説「記憶売ります」)とのことで、まずまず面白かったのでは。原作にはない火星のシーンを映像化できたのも、その頃急速に進化していたCG技術のお陰でしょうか。
   
 以上が「名作SF館」で、「シリーズSF館」では、「物体X」シリーズから「ロボコップ」シリーズまで13のSFシリーズが取り上げられ、「日本SF館」では、「ゴジラ」('54年)から始まって18作品が紹介されています。その中では、永野寿彦氏が「モスラ」('61年)を高く評価しているのが印象に残りました。

 こちらも、『カルト映画館 ホラー』同様、ものすごくマニアックというほどでもなく、馴染みのある作品が多くて、気軽に愉しめる1冊でした。

ローラーボール (特別編) [DVD]
ローラーボール (特別編).jpgローラーボール 映画1.jpg「ローラーボール」●原題:ROLLERBALL●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督・製作:ノーマン・ジュイソン●脚本:ウィリアム・ハリソン●撮影:ダグラス・スローカム●音楽:アンドレ・プレヴィン●原作:ウィリアム・ハリソン●時間:125分●出演:ジェームズ・カーン/ジョン・ハウスマン/モード・アダムス/ジョン・ベック/モーゼス・ガン/パメラ・ヘンズリー/シェーン・リマー/バート・クウォーク/ロバート・イトー/ラルフ・リチャードソン●日本公開:1975/07●配給:ユナイテッド・アーテ池袋テアトルダイア s.jpg池袋テアトルダイア  .jpgテアトルダイア5.jpgィスツ●最初に観た場所:池袋・テアトルダイヤ(78-01-21)(評価:★★★☆)●併映:「新・猿の惑星」(ドン・テイラー)/「ジェット・ローラーコースター」(ジェームズ・ゴールドストーン)/「世界が燃えつきる日」(ジャック・スマイト)(オールナイト)
池袋テアトルダイア  1956(昭和31)年12月26日池袋東口60階通り「池袋ビル」地下にオープン(地上は「テアトル池袋」)、1981(昭和56)年2月29日閉館、1982(昭和57)年12月テアトル池袋跡地「池袋テアトルホテル」地下に再オープン、2009年8月~2スクリーン。2011(平成23)年5月29日閉館。

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比較的オーソドックスなラインアップ。いろいろ思い出させてくれた。

カルト映画館 ホラー0.jpgカルト映画館 ホラー.jpg  ザ・チャイルド 30周年特別版.jpg ザ・チャイルド3.jpg
カルト映画館 ホラー (現代教養文庫)』(表紙イラスト:永野寿彦(シネマ・イラストライター))「ザ・チャイルド 30周年特別版 [DVD]

 4名の執筆者が、ホラー映画100作品を、「名作ホラーの館」「ホラーカルトの館」「ホラー監督の館」「日本怪奇館」の4篇に分けて紹介したものです。

 「名作ホラーの館」は、共著者全員で作品を分担して紹介しているためか、それほどマニアックでもなく、比較的オーソドックスなラインアップだったように思います。

BRIDE OF FRANKENSTEIN2.jpgフランケンシュタインの花嫁 dvd.jpg 「フランケンシュタインの花嫁」('35年)が、本編「フランケンシュタイン」('31年)と比べ、「どこをとっても第1作目をしのいでいる」というのがよく理解できる解説になっていました。個人的にも、80年代に渋谷の旧ユーロ・スペースで予備知識なしに2本続けて観て、「花嫁」の方が上だと感じました。

サイコ1.jpgPsycho.jpg 「サイコ」('60年)は、あの和田誠氏が『お楽しみはこれからだ Part3』('80年/文藝春秋)で是非見てみたいと言っていた劇場予告編のことが書いてあります(ヒッチコックが登場して映画に登場するモーテルで現場検証よろしく、事件を説明するというもの)。今はネットで見ることができます。

「世にも怪奇な物語」2.jpg世にも怪奇な物語 dvd.jpg 「世にも怪奇な物語」('67年)は、エドガー・アラン・ポーの怪奇小説3作をロジェ・ヴァディム、ルイ・マル、フェデリコ・フェリーニの3監督が共作したオムニバス映画で、これも和田誠氏が『お楽しみはこれからだ』('75年/文藝春秋)の中で、ロジェ・ヴァディムのパートは「耽美主義的映像が逆に小細工のようでいけなかった」とし、「通俗的にはルイ・マルが面白く、怖さや不思議さではフェリーニが圧巻」としています。ただし、本書は映画の批評と言うより紹介が主であるため、「三人の名匠が個性派俳優たちを使って絶妙な味付けを施した」と同等に評価しています。

ローズマリーの赤ちゃん』(1968).jpgローズマリーの赤ちゃん.jpg 「ローズマリーの赤ちゃん」('68年)は、"悪魔"の存在がローズマリーの被害妄想かと思ったら実は本当に悪魔が存在していたというのが怖いとしていますが、著者が「"オカルト映画"にふさわしい秀逸な悪夢にイメージとして特筆される」としている、ローズマリーがすべてを受け入れ、至福の表情でわが子を抱いて子守歌を口ずさむラストの方が、ある意味それ以上に怖かったかも。

The Shining.bmp「シャイニング」 (1980) 英.jpg 「シャイニング」('80年)は、スタンリー・キューブリックが作品に織り込んだ"狂気"を見事に表現したのがジャック・ニコルソンで、それによって、スティーヴン・キング原作の映画化の中でも、一,二を争う出来になっているというのは同感です(ただし、当のスティーヴン・キングはこの映画化作品を気に入ってなかった)。

ハンガー パンフ.jpg 「ハンガー」('83年)は、デヴィッド・ボウイが吸血鬼役に挑んだ映画でしたが、著者が言うように、あくまでも主役は女吸血鬼を演じたカトリーヌ・ドヌーブでした。仏映画調のようなフィルム・ノワール調で描かれ、「これがMGM映画なの?」と思わずにはいられないとしていますが、カトリーヌ・ドヌーブが"仕切った"いうことも関係しているのではないでしょうか。

フランケンシュタイン (1994年) dvd.jpg 「フランケンシュタイン」('94年)は、ケネス・プラマー監督がロバート・デ・ニーロと組んだ作品ですが、「フランケンシュタインの"花嫁"となったジェームズ・アイヴォリー作品の乙女、ヘレナ・ボナム・カーターの怪奇女優ぶり」を思い出させてくれました。「眺めのいい部屋」('86年)のお嬢様役からの180度イメチェンは、「ハリー・ポッター」シリーズの魔女役よりずっと前から始まっていたわけか。

 「ホラーカルトの館」は、「鷲巣義明プレゼンツ」とあるように、個人のセレクションであるため、その分マニアック度が上がっているように思いました。

 「ロサンゼルス」('81年)のマイケル・ウィナーが監督した、教会と悪魔を対等に描いたためタブー映画とされている「センチネル」('77年)や(個人的には未見)、ナルシソ・イバネ・セッラドール監督の子供たちが大人たちを襲うというスペインのホラー映画「ザ・チャイルド」('76年)などは、本書にあるように当時はビデオ化されませんでした。「センチネル」にはフリークス(言わば身体障碍者)を悪魔視する描かれ方があり、「日本でのビデオ化はまず不可能」としています。また、「ザ・チャイルド」には、子供が胎児を操って胎内から母親を攻撃、ショック死させる場面があったりします。ところが「ザ・チャイルド」はその後ビデオ化されて2001年にはDVDにもなり、「センチネル」も2009年にDVD化されました。

映画 ザ・チャイルド.jpg とりわけ、「ザ・チャイルド」は、著者が「劇場公開時に観て、本作の素晴らしさに舌を巻いた」と言うように、初めてこの作品を観たホラー映画ファンの間である種ブームとなり、2008年には、「30周年特別版DVD」が発売されたほどです。個人的には、初めて観たときは「大人を襲っている子供たちもやがて大人になるのになあ」とか「子供と大人の中間にいる人はどうすればいいの?」とか引っ掛かりがありましたが、観たのが学生の時だったというのもあるし、或いは、"怖さ"に飲み込まれないよう、わざと白けたことを考えるようにしていたのかもしれんません(基本的に怖がりなので)。

ザ・チャイルド (1976年の映画).jpg「ザ・チャイルド」●原題:WHO CAN KILL A CHILD?//ISLAND OF THE DAMNED●制作年:1976年●制作国:スペイン●監督:ナルシソ・イバニェス・セラドール●製作:マヌエル・ペレス●脚本:ルイス・ペニャフィエル●撮影:ホセ・ルイス・アルカイネ●音楽:ワルド・デ・ロス・リオス●原作:ファン・ホセ・プランス●時間:107分●出演:ルイス・フィアンダー/プルネラ・ランサム/アントニオ・イランソ/ルイス・シヘス●日本公開:1977/05●配給:ジョイパックフィルム●最初に観た場所:中野武蔵野館(77-12-12)(評価:★★★☆)●併映:「小さな悪の華」(ジョエル・セリア)

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すべてを分かり易く撮っているヴィスコンティ。"注釈"的な場面さえある。

べ二スに死す ps.jpgヴェ二スに死す 文庫新潮.jpg ヴェ二スに死す 文庫岩波.jpg ヴェ二スに死す 文庫集英社.jpg トーマス・マン.jpg
ベニスに死す [DVD]」/『トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す (新潮文庫)』['67年]/『ヴェニスに死す (岩波文庫)』['00年]/『ベニスに死す (集英社文庫)』['11年]/トーマス・マン(1875-1955)

ベニスに死す  .jpgベニスに死す 07.jpg 1911年、ドイツ有数の作曲家・指揮者であるグスタフ・アシェンバッハ(ダーク・ボガード)は静養のため訪れたベニスで、母親(シルヴァーナ・マンガーノ)と三人の娘と家庭教師と共に同地を訪れていたポーランド人少年タジオ(ビヨルン・アンデルセン)に理想の美を見出す。以来、彼は浜に続く回廊をタジオを求めて彷徨うようになる。ある日、ベニスの街中で消毒が始まり、疫病が流行しているのだという。白粉と口紅、白髪染めを施して若作りをし、タジオの姿を求めてベニスの町を徘徊ベニスに死す86cf.jpgベニスに死す last.jpgしていたあるとき、彼は力尽きて倒れ、自らも感染したことを知る。それでも彼はベニスを去らない。疲れきった体を海辺のデッキチェアに横たえ、波光がきらめく中、彼方を指さすタジオの姿を見つめながら死んでゆく―。
ルキノ・ヴィスコンティ監督/ビヨルン・アンデルセン
ベニスに死す ヴィスコンティ.jpg 1971年公開のルキノ・ヴィスコンティ監督作で、アメリカ資本のイタリア・フランス合作映画で第24回カンヌ国際映画祭25周年記念賞受賞作。同監督の「地獄に堕ちた勇者ども」「ルートヴィヒ」と並ぶ「ドイツ三部作」の第2作とされていますが、これだけ舞台はドイツではなくイタリアです。原作はドイツの作家トーマス・マン(1875-1955)が1912年に発表した中編小説で、原作では主人公グスタフ・アッシェンバッハは"著名な作家"となっていますが、映画では"作曲家・指揮者"になっています。ただし、主人公のファースト・ネームから窺えるように、トーマス・マンは主人公のモデルに。このDeath in Venice_243fa75d0e.jpg小説執筆の直前に死去した作曲家のグスタフ・マーラー(1860-1911)をイメージし、主人公の名前もそこから借りたとされており、主人公を作曲家にしたのはルキノ・ヴィスコンティ監督の恣意によるものとは必ずしも言い切れないようです。

Vintage cover of a German edition of Death in Venice

ベニスに死すges.jpg トーマス・マンは1911年に実際にヴェネツィアを旅行しており、そこで出会った上流ポーランド人の美少年に夢中になり、帰国後すぐにこの小説を書いたとのことで、作品の主人公は老人になっていまうが、トーマス・マンはこの時まだ30代だったことになります(トーマス・マンの死後、美少年のモデルになったポーランド貴族ヴワディスワフ・モエス男爵が名乗り出て、彼がヴェネツィアでトーマス・マンと遭遇したのは11歳の時で、当時ヴワージオ、アージオなどの愛称で呼ばれていたことが確認されている)。

 文学作品を映画化すると、ストーリーを追おうとするばかり、本質的なところが抜け落ちてしまうことがままありますが、この作品は、アルベール・カミュの原作を同監督が映画化した「異邦人」('67年/伊・仏・アルジェリア)よりはその"抜け落ち"の程度が抑えられているように思います。

ベニスに死す6b.jpg 成功の要因としては、監督がヨーロッパ中を探して見つけたという美少年ビョルン・アンドレセンの美しさ(映画における美少年ランキングの人気投票でほとんどいつもトップにくる)もさるこベニスに死す-07.jpgとながら、舞台となる20世紀初頭のホテルなど、ルキノ・ヴィスコンティ監督の背景への徹底したこだわりがあるかと思います。これは、オフシーズンの名門ホテルを借り切って19世風に改装したそうですが、ホテルのホールやレストラン、客室の調度、人々の衣裳などの華やかさは、ヴィスコンティ監督の十八番という感じでしょうか。

シルヴァーナ・マンガーノ/ビョルン・アンドレセン/ダーク・ボガード
べ二スに死すa.jpg さらにこの映画の特徴としては、すべてを分かり易く撮っているということが言えるかと思います。アシェンバッハが旅立とうしたら荷物の行先が間違えられて、彼は結局ホテルに戻らざるを得なくなりますが、それによってまたタジオと会うことができるようになる、その喜びをダーク・ボガードは堪えても堪えきれないといった満面の笑みで表現しています。アシェンバッハは、少年とその家族にペストの流行を伝え、この地を去るよう注意を促す自分を想像しますが、映画ではこの実現しなかった場面を実際に映像化して少年の髪の毛に手を触れるところまで描いています。さらに、終盤アシェンバッハが化粧して若作りする場面も、リアリティを欠くぐらい濃いメイクをダーク・ボガードに施してします。また、これは、主人公が原作の冒ベニスに死す kesyou.jpg頭で出会った、「若作りをしているが実はぎょっとするぐらい年寄りだったと分かった男」と対応していて、主人公自身がその男になってしまったといういわば"オチ"であるわけですが、その冒頭の"若作り男"もしっかり描かれています。アシェンバッハは疫病のためか体調不良で(心臓の具合が悪いようも見える)、さらに精神的にも疲弊しますが(少年への想いが激しくて自分自身が空洞化しているように見える)、そのことを強調するためか、ホテル内で行われた演奏会での彼の指揮が散々な出来だったという、原作には無い場面を入れています(原作は作家だから元々演奏会の指揮などしないわけだがベニスに死す67.png)。極めつけは、アシェンバッハの回想シーンに彼が娼館に女を買いに行く場面があることで、原作には無い場面のように思います。このシーンがあることによって、アシェンバッハが少年に恋い焦がれているのは事実ですが、彼を直接的に性愛の対象として見ているのではなく、あくまでも絶対的な美の対象としてみていることが示唆されており、ある種"注釈"的な印象を受けました。
    
トーニオ・クレーガー 他一篇 (河出文庫)
トーニオ・クレーガー.jpg そもそも原作のテーマは何なのか。ドイツ文学者の高橋義孝(1913-1995)は、この作品を、同じく作者の代表作の中編小説で1903年発表の「トーニオ・クレーゲル」と対比させています。「トーニオ・クレーゲル」は自分が文学者としてどうあるべきか真摯に思い悩んでいたトーマス・マン自身の告白的な作品で、主人公のトニオはギムナジウムの時代にハンスという美少年とインゲという美少女の両方に憧れを抱き、芸術家(詩人)を目指しながらも彼の思いはその両者の間を彷徨いますが(それを自身は自らの市民気質(かたぎ)によるものと捉え、年上の女性からもあなたは"俗人"だと言われる)、年齢を経て旅行などでの経験を通して、最後は自分はあくまで市民気質を保ちながらより良い作品を書いていく決心をするに至るというものです。高橋義孝は、トーマス・マンにおいて芸術家、特に文士、作家とは、「生」と「精神」、「市民気質」と「芸術家気質」、感情と思想(「ヴェニスに死す」の中の表現)、感性と理性、美と倫理、陶酔と良心、享受と認識という相反する2つのものの板挟みになっている存在であり、「トーニオ・クレーゲル」では、主人公はこれら対立概念の後者にすがってかろうじて自己の文士としての生活を支えるが、「ヴェニスに死す」では、これら対立概念の前者のために敗北し、死んでいくとしており、この解説は分かり易かったです。

 つまり、トーニオ・クレーゲルは踏みとどまったというかバランスを保ち得たわけで(この作品は三島由紀夫や北杜夫などの作家に大きな影響を与えたと言われている)、一方のアシェンバッハは向こう側にイッて(行って/逝って)しまったという感じでしょうか。小説としては、"イッて(行って/逝って)しまった"話の方が面白いような気がするし、また怖いような気もしますが、ルキノ・ヴィスコンティ監督の映画は、その面白さ、怖さをわれわれにその通り伝えてくれているような気がします。この作品は第45回(1971年度)キネマ旬報の外国映画ベスト・テン第1位となりましたが、ルキノ・ヴィスコンティ監督は「家族の肖像」('74年/伊・仏)でも第52回(1978年度)キネマ旬報の外国映画ベスト・テン第1位となっており、"滅びの美学"は感性的に日本人に受け容れられやすいのかもしれません。

ベニスに死すs.jpg「ベニスに死す」●原題:DEATH IN VENICE●制作年:1971年●制作国:イタリア・フランス●監督・製作:ルキノ・ヴィスコンティ●脚本:ルキノ・ヴィスコンティ/ニコラ・バダルッコ●撮影:パスクワーレ・デ・サンティス●音楽:グスタフ・マーラー●原作:トーマス・マン●時間:131分●出演:ダーク・ボガード/ビョルン・アンドレセン/シルヴァーナ・マンガーノ/ロモロ・ヴァリ/マーク・バーンズ/マリサ・ベレンソン/ノラ・リッチ/キャロル・アンドレ/レスリー・フレンチ/フランコ・ファブリッツィ/セルジオ・ガラファノーロ/ドミニク・ダレル/マーシャ『トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す』.JPG・ブレディット/エヴァ・アクセン/マルコ・トゥーリ●日本公開:1971/10●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:大塚名画座(79-02-07)(評価:★★★★)●併映:「地獄に堕ちた勇者ども」(ルキノ・ヴィスコンティ)

【1939年文庫化・1960年改版・2000年改版[岩波文庫『ヴェニスに死す』(実吉捷郎:訳)]/1967年再文庫化[新潮文庫『トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す』(高橋義孝:訳)]/2011年再文庫化[角川文庫『ベニスに死す』(浅井真男:訳)]/2007年再文庫化[光文社古典新訳文庫『ヴェネツィアに死す』(岸美光:訳)]/2011年再文庫化[集英社文庫『ベニスに死す』(圓子修平 :訳)]】
 
《読書MEMO》
●ヴェニス(ヴェネツィア)を舞台にした映画
ジョゼフ・ロージー監督「エヴァの匂い」('62年/仏)/ルキノ・ヴィスコンティ監督「ベニスに死す」('71年/伊・仏)/ニーノ・マンフレディ監督「ヌードの女」('81年/伊・仏)
イタリア・ベネチア●エヴァの匂いes.jpgイタリア ベニスに死す .jpgイタリア。ヴェネチア●ヌードの女.jpg

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ジャック・ロジエの初期作は、瑞々(みずみず)しさ、演技の自然さが光る。

アデュー・フィリピーヌ dvd.jpg アデュー・フィリピーヌ 01.jpg オルエットの方へ .jpg メーヌ・オセアン dvd.jpg メーヌ・オセアン 01.jpg
アデュー・フィリピーヌ [DVD]」/「オルエットの方へ」(海外版DVD)/「メーヌ・オセアン」(海外版DVD)

アデュー・フィリピーヌ 02.jpg 1960年、兵役を数カ月後に控えたミッシェル(ジャン=クロード・エミニ)は、勤め先のテレビ局でリリアーヌ(イヴリーヌ・セリ)とジュリエット(ステファニア・サバティーニ)という女の子と知り合う。2人の娘はミシェルに恋心を抱く。ミシェルは生中継中にヘマをして放送局を辞め、コルシカ島で早めのヴァカンスを楽しんでいた。そんな彼のところに、リリアーヌとジュリエットがやって来る。双子のように仲良しだった2人の仲は、嫉妬が原因でぎくしゃくし始めて―。

アデュー・フィリピーヌ 03.jpg 「アデュー・フィリピーヌ」('62年/伊・仏)は、ヌーヴェルヴァーグの代表監督の一人ジャック・ロジエの長編モノクロ処女作。日本では70年代に東京日仏学院で自主上映されていて、2004年と2006年には紀伊国屋書店がDVDを発売されていますが、入手困難で1万円位のプレミア価格になっていました。2010年1月のユーロスペースでの特集上映「ジャック・ロジエのヴァカンス」での上映が日本初の劇場公開で、2016年にはシアター・イメージフォーラムの同特集で再上映されながらも、DVDは2018年現在再リリースされておらず、価格は依然高値のようです。

アデュー・フィリピーヌ 05.jpg 「さよならフィリピン娘」という意味のタイトルは、劇中に出てくるフランス式の遊びからとったもので、アーモンドの双子の実を見つけた者同士が次に顔を合わせた時に、先に「さよならフィリピン娘」と言った方に幸運が訪れる、という他愛ないものですが、それがこの映画の内容を象徴しているとも言えるし、また、リリアーヌとジュリエットがただふざけて口にする、大した意味が無い言葉ともとれます。

アデュー・フィリピーヌs.jpg 前半の舞台はパリ、主人公ミッシェルはマスコミで働く(といってもカメラのケーブルマン)青年で、録画装置の無かった生放送時代のテレビ局の舞台裏や、華やかな業界に群がる浮薄な連中などを絡めながら、ナンパした2人の娘を手玉に取る様子がテンポ良く描かれます。

 後半は舞台をヴァカンスのコルシカ島に移し、場面の切り替えと共に次々に流れる軽快な音楽のリズムに乗って、ますます調子の良い色恋沙汰が進展するかと思いきや、そこまでは行かず、主人公の心のどこかに常にあった徴兵までのモラトリアムという影が、一見浮かれた青春物語に陰影を与えていきます。

アデュー・フィリピーヌ  ホーキー.jpg ヌーヴェルヴァーグ繋がりとして、ゴダールがプロデューサーにジャック・ロジエ監督を推薦して、この長編デビューの契機を与えたということがあるようです。随所にイタリア的な要素が表出していますが、ジャック・ロジエ監督のイタリアン・ネオリアリスモへの傾倒ぶりを端的に示しているのが、主演に素人を起用している点でしょう。俳優たちにとっても、この作品はほとんどワン・アンド・オンリーなものになったようで、刹那的な魅力を強調しているように思えます。箒のCM(ホーキー?)や冷蔵庫のCM(エスキモーに氷を売る)の制作風景が戯画的に描かれているのは、商業主義への風刺でしょうか? ただし、全体としては、メッセージ性を極力排除しているように思えました。

オルエットの方へ 01.jpgオルエットの方へ ド.jpg ジャック・ロジエ監督の長編第2作は「オルエットの方へ」('69年/仏)で、これも、2010年1月のユーロスペースでの「ジャック・ロジエのヴァカンス」で日本初上映、'16年10月にシアター・イメージフォーラムで再上映された作品。今度はカラー作品ですが、ヴァカンス、男女の三角関係(今度は五角関係?)、ドキュメンタリー風乃至プライベートフィルムタッチなところ、主役に素人の俳優を使っている点など、「アデュー・フィリピーヌ」の要素を多く引き継いでいます。あらすじは―、

オルエットの方へ 3.jpg キャロリーヌ(キャロリーヌ・カルチエ)は、ヴァンデ県の海岸沿いにある家族の別荘に友だちのカリーヌ(フランソワーズ・ゲガン)、ジョエル(ダニエル・クロワジ)と共にヴァカンスを過ごしに来る。最初のうち3人は女だけの気ままな時間を楽しんでいたが、そこへ、ジョエルの上司で密かに彼女にオルエットの方へ 06.jpg思いを寄せるジルベール(ベルナール・メネズ)が現れる。ジルベールは別荘の庭にテントを張らせてもらうことになるが、3人から軽く扱われるばかり。そんな中、3人は海からの帰りにパトリック(パトリック・ヴェルデ)というヨットマンの青年と出会い、ジルベールはパトリックと親しくなっていく―。

オルエットの方へ_11.jpg と、書きましたが、これまたそれほどストーリー性は前面に出されておらず、9月1日から20日までの3人のヴァカンスの過ごし方が映像日記のよう描かれ、3人が都会生活を離れた開放感から日常の何でもないことに可笑しみを見い出しては燥(はしゃ)ぐ姿が自然に生き生きと語られています。彼女たちが別荘の近くの農場やカジノのあるオルエットという村へ行こうとして、その地名を口にするだけで意味なく笑いこけ、これが作品のタイトルの一部になっている点で、タイトルの付け方も「アデュー・フィリピーヌ」と少し似ています。

オルエットの方へ   .jpg 3人に体よく馬鹿にされ続けた上司ジルベールがパリに帰ってしまい、次にはパトリックの粗雑な一面に腹を立てたカリーヌがパリに帰ってしまって、残った2人も興覚めして騒々しいパリに戻ってくる―という結末ですが、ストーリーよりも、うなぎを床にぶちまけるシーン、ヨットで海面を走行するシーン、海岸を馬で駆けるシーンなど、個々の断片的なシーンの方が印象に残ります(特にヨットに乗るシーンは、昔、夏にティンギーヨットに乗ったことがあったので、個人的に懐かしさを覚えた)。
 
 両作品とも、ストーリーよりも、"瑞々しさ"の光る感性が味わえる作品と言っていいかと思います。特に、出演者たちが演技しているのか地なのか分からないくらい自然に振る舞っている印象であり、観ていて自然と彼らの世界に入り込んでしまいます(唯一の職業俳優と言っていい「オルエットの方へ」のジルベール役のベルナール・メネズだけが、"演技している"っぽかったか)。こうした自然な効果を、作品の初めから終わりまで通して保持し続けているというのは、考えていればスゴイことであり、当然のことながら、その背後に計算された技巧があるのだろうなあと思いました。

メーヌ・オセアン poster.jpg 寡作で知られるジャック・ロジエ監督が長編第3作「トルチュ島の遭難者」('74年/仏)に続いて撮った長編第4作は「メーヌ・オセアン」('86年/仏)で、前第3作に続くコメディですが、ジャック・ロジエ監督はこの作品で、本来は新人若手監督に贈られるジャン・ヴィゴ賞を当時60歳で受賞しています。この作品も、2010年1月のユーロスペースでの特集「ジャック・ロジエのヴァカンス」での上映が日本発上映でした。

メーヌ・オセアン 011.jpg フランス西部ナント行きの列車メーヌ・オセアン号で、ブラジル人ダンサーのデジャニラ(ロザ=マリア・ゴメス)は検札係のル・ガレック(ベルナール・メネズ)とリュシアン(ルイス・レゴ)との間でトラブルになるが、女弁護士ミミ(リディア・フェルド)に救われる。漁師プチガ(イヴ・アフォンソ)の弁護のためアンジェで降りる予定のミミは、意気投合したデジャニラと海に行く計画を立て、2人一緒にアンジェで下車する。プチガの裁判はプチガの態度の悪さとミミの意味不明の抗弁のため、あっさりメーヌ・オセアン 05.jpgと敗訴する。ミミとデジャニラは列車内で再会したリュシアンの勧めで、プチガの住むユー島に3人で行くことに。リュシアンはユー島への旅に上司のル・ガレックも誘う。ユー島でリュシアンとル・ガレックは、ミミとデジャニラと合流、そこにプチガが居合わせ、ミミとデジャニラからメーヌ・オセアン号でのル・ガレックの態度について悪口を聞かされていたプチガはル・ガレックに喧嘩をふっかけ、止めに入ったリュシアンがケガを負う。冷静になったプチガは反省し、酔った勢いもあり、逆にル・ガレックを気に入ってしまう。そこにニューヨークからデジャニラの雇い主である興行主ペドロ・マコーラ(ペドロ・アルメンダリス・Jr)が現れ、ふとしたことから市民会館でどんちゃん騒ぎをすることになる―。

メーヌ・オセアン 02.jpg ダンサーと弁護士という全く異質な職業の2人の女性の偶然の出会いを介して、漁師、列車の検札係、興行主という、これまた全く異質の職業の男たちが一堂に会してどんちゃん騒ぎをする―という、コメディだけに初期2作よりはストリー性があり、観ていて楽しい映画です。「ヴァカンス」というモチーフは前3作に通じ、「海辺」や「島」といった背景についても同じことが言えます。

メーヌ・オセアン 03.jpg ただし、映画の終盤は、興行主に「現代のモーリス・シュヴァリエ」とおだて上げられたものの実は単にからかわれていただけだったことに気付いた検札係の上司が(演じるベルナール・メネズは17年前の「オルエットの方へ」でも、ヴァカンス先で部下の女性らに軽んじられ、途中で帰る上司という役柄だった)、ナントに戻るため漁師に頼み込んで船で送ってもらい、何度か船を乗り継ぎ、ようやく海岸に辿り着くまでを延々と描いており、ストーリーもさることながら、ベルナール・メネズがズボンの裾を濡らしながら浅瀬を道路が走っている側に向かって行くシーンなどが印象に残ります。

アデュー・フィリピーヌード.jpg ストーリー性を前面に出さず(或いはストーリーがあってもさほど意味はなく)、個々の出来事を単に個々の事象として背景の中に塗り込んでしまうとでもいうか、そのため、背景が前景にも増して印象に残るのがジャック・ロジエ作品の特徴かもしれません。その意味では、比較的ストーリー性が感じられる「メーヌ・オセアン」よりも、「アデュー・フィリピーヌ」「オルエットの方へ」の2作の方が、よりジャック・ロジエらしいユニークさがあったように思います。特に「アデュー・フィリピーヌ」が実際に撮影されたのは公開の2年前、アルジェリア戦争最中の1960年(昭和35)年の物語と同時期の夏ですが、主人公の兵役の話が出てきてやっと時代に気づくくらいのモダンなセンスには驚かされます。

Adieu Philippine (1962)
Adieu Philippine (1962).jpg
アデュー・フィリピーヌド.jpg「アデュー・フィリピーヌ」●原題:ADIEU PHILIPPINE●制作年:1960年(撮影)・1962年(公開)●制作国:フランス・イタリア●監督:ジャック・ロジエ●脚アデュー・フィリピーヌ es.jpg本:ジャック・ロジエ/ミシェル・オグロール●時間:106分●出演:ジャン=クロード・エミニ/ダニエル・デカン/ステファニア・サバティニ/イヴリーヌ・セリ/ヴィットーリオ・カプリオリ/ダヴィド・トネリ/アンヌ・マルカン/アンドレ・タルー/クリスチャン・ロンゲ/ミシェル・ソワイエ/アルレット・ジルベール/モーリス・ガレル//ジャンヌ・ペレス/シャルル・ラヴィアル●日本公開:2010/01●配給:アウラ●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(18-06-12)(評価:★★★★)

Du côté d'Orouët (1971)
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オルエットの方へ dvd .jpg「オルエットの方へ」●原題:DU COTE D'OROUET●制オルエットの方へ 02.jpg作年:1971年(撮影)・1973年(公開)●制作国:フランス●監督:ジャック・ロジエ●脚本:ジャック・ロジエ/アラン・レゴ●撮影:コラン・ムニエ●時間:106分●出演:フランソワーズ・ゲガン/ダニエル・クロワジ/ キャロリーヌ・カルチエ/ベルナール・メネズル●日本公開:2010/01●配給:アウラ●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(18-06-26)(評価:★★★★)
ジャック・ロジエ DVD-BOX」(「オルエットの方へ」「メーヌ・オセアン」「短篇集」(「ブルー・ジーンズ」「パパラッツィ」「バルドー・ゴダール」)を収録)

Maine Ocean (1986)
Maine Ocean (1986).jpg
Maine océan.jpgメーヌ・オセアン 9s.jpg「メーヌ・オセアン」●原題:MAINE-OCEAN●制作年:1986年●制作国:フランス●監督:ジャック・ロジエ●製作:パウロ・ブランコ●脚本:ジャック・ロジエ/リディア・フェルド●撮影:アカシオ・デ・アルメイダ●音楽:シコ・ブアルキ/フランシス・ハイミ/ユベール・ドジェクス/アンヌ・フレメーヌ・オセアン_04.jpgデリック●時間:130分●出演:ベルナール・メネズ:/ルイス・レゴ/イヴ・アフォンソ/リディア・フェルド/ロザ=マリア・ゴメス/ペドロ・アルメンダリス・Jr●日本公開:2010/01●配給:アウラ●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(18-07-04)(評価:★★★☆)

ジャック・ロジエ シネマブルー.jpg

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精神的"終活映画"「ラッキー」。ハリー・ディーン・スタントンへのオマージュ。

ラッキー 映画 2017.jpgラッキー 映画s.jpg パリ、テキサス dvd.jpg エイリアン DVD.jpg
「ラッキー」ハリー・ディーン・スタントン(撮影時90歳)/「パリ、テキサス デジタルニューマスター版 [DVD]」「エイリアン [AmazonDVDコレクション]

ラッキー 映画.jpg 90歳の通称"ラッキー"(ハリー・ディーン・スタントン)は、今日も一人で住むアパートで目を覚まし、コーヒーを飲みタバコをふかす。ヨガをこなしたあと、テンガロンハットを被って行きつけのダイナーに行き、店主のジョー(バリー・シャバカ・ヘンリー)と無駄話をかわし、ウェイトレスのロレッタ(イヴォンヌ・ハフ・リー)が注いだミルクと砂糖多めのコーヒーを飲みながら新聞のクロスワード・パズルを解く。夜はバーでブラッディ・マリーを飲み、馴染み客たちと過ごす。そんな毎日の中で、ある朝突然気を失ったラッキーは、人生の終わりが近いことを思い知らされ、「死」について考え始める。子供の頃怖かった暗闇、逃げた100歳の亀、"生餌"として売られるコオロギ―小さな町の、風変わりな人々との会話の中で、ラッキーは「それ」を悟っていく―。

ジョン・キャロル・リンチ監督.jpgファウンダーe s.jpg 昨年[2017年]9月に91歳で亡くなったハリー・ディーン・スタントン主演のジョン・キャロル・リンチ監督作品で、ハリー・ディーン・スタントンの遺作となりました。ジョン・キャロル・リンチは本来は俳優で(最近では「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」('16年/米)で「マクドナルドラッキー 映画02.jpg」の創始者マクドナルド兄弟の兄モーリスを演じていた)、この「ラッキー」が初監督作品になります。一方、2017年のTV版「ツイン・ピークス」でハリー・ディーン・スタントンを使ったデヴィッド・リンチ監督が、主人公ラッキーの友人で、逃げてしまったペットの100歳の陸ガメ"ルーズベルト"に遺産相続させようとしとする変な男ハワード役で出演しています(役者として目いっぱい演技している)。

デヴィッド・リンチ(ペットの陸ガメ"ルーズベルト"の失踪を嘆く白い帽子の男)/ハリー・ディーン・スタントン(ブラッディ・マリーを手にする男)

 主人公のラッキーは、ハリー・ディーン・スタントン自身を擬えたと思われますが(存命中だったが、彼へのオマージュになっている? スタラッキー 映画01.jpgントンは太平洋戦争時に、映画の中でダイナーの客が語る沖縄戦に実際に従軍している)、映画では少々偏屈で気難しいところのあるキャラクターとして描かれています。自分の言いたいことを言い、そのため周囲の人々と小さな衝突をすることもありますが、でも、ラッキーは周囲の人々から気に掛けられ、愛されていて、彼を受け容れる友人・知人・コミニュティもあるといったラッキー 映画03.jpg具合で、むしろこれって"ラッキー"な老人の話なのかもと思いました。但し、彼自身はウェット感はなく、どうやら無神論者らしいですが、そう遠くないであろう自らの死に、自らの信念である"リアリズム"(ニヒリズムとも言える)を保ちつつ向き合おうしています。ある意味、精神的"終活映画"と言えるでしょうか。その姿が、ハリー・ディーン・スタントン自身と重なるのですが、孤独でドライな生き方や考え方と、それでも他者と関わりを持ち続ける態度の、その両者のバランスがなかなか微妙と言うか絶妙かと思いました。

ラッキー .jpg ハリー・ディーン・スタントンはこの映画撮影時は90歳で、「八月の鯨」('87年/米)で主演したリリアン・ギッシュ(1893-1993)が撮影当時93歳であったのには及びませんが、「サウンド・オブ・ミュージック」('65年/米)のクリストファー・プラマーが「手紙は憶えている」('15年/カナダ・ドイツ)で主演した際の年齢85歳を5歳上回っています(クリストファー・プラマーはその後「ゲティ家の身代金」('17年/米)で第90回アカデミー賞助演男優賞に88歳でノミネートされ、アカデミー賞の演技部門でのノミネート最高齢記録を更新した)。

ラッキー 映画p.jpg ハリー・ディーン・スタントンがこれまでの出演した作品と言えば、SF映画の傑作「エイリアン」や、準主役の「レポマン」、主役を演じた「パリ、テキサス」など多数ありますが、第37回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した、ヴィム・ヴェンダース監督の「パリ、テキサス」が特に印象深いでしょうか。この「ラッキー」のエンディング・ロールで流れる彼に捧げる歌の歌詞に「レポマン」「パリ、テキサス」と出てきます。また、米国中西部らしい舞台背景は「パリ、テキサス」を想起させます(ジョン・キャロル・リンチ監督はジョン・フォードの作品なども参考にしたと言っているが、確かにそう思えるシーンもある)。

パリ,テキサス コレクターズ・エディション_.jpgパリ、テキサス01.jpgパリ、テキサス03.jpgパリ、テキサス02.jpg 「パリ、テキサス」('84年/独・仏)は、失踪した妻を探し求めテキサス州の町パリをめざす男(スタントン)が、4年間置き去りにしていた幼い息子と再会して親子の情を取り戻し、やがて巡り会った妻(ナスターシャ・キンスキー)に愛するがゆえの苦悩を打ち明ける―というロード・ムービーであり、当時まだアイドルっぽいイメージの残っていたナスターシャ・キンワン・フロム・ザ・ハート キンスキー.jpgスキーに、「のぞき部屋」で働いている生活疲れした人妻を演じさせ新境地を開拓させたヴィム・ヴェンダース監督もさることながら、ハリー・ディーン・スタントンの静かな存在感も作品を根底で支えていたように思います。ヴィム・ヴェンダース監督は、ロマン・ポランスキー監督が文豪トマス・ハーディの文芸大作を忠実に映画化した作品「テス」('79年/英)でナスターシャ・キンスキーの演技力を引き出したのに匹敵する演出力で、フランシス・フォード・コッポラがオール・セットで撮影した「ワン・フロム・ザ・ハート」('82年/米)で彼女を"お人形さん"のように撮って失敗した(少なくとも個人的には成功作に思えない)のと対照的でした(まあ、ナスターシャ・キンスキーが主役の映画ではなく、彼女は準主役なのだが。因みに、この「ワン・フロム・ザ・ハート」には、ハリー・ディーン・スタントンも準主役で出演している)。

エイリアン スタントン.jpg ハリー・ディーン・スタントンは、主役だった「パリ、テキサス」に比べると、リドリー・スコット監督の「エイリアン」('79年/米)では、"怪物"に「繭」にされてしまい、最後は味方に火炎放射器で焼かれてエイリアン ジョンハート.jpgしまう役だったからなあ(それもディレクターズ・カット版の話で、劇場公開版ではその部分さえカットされている)。ただ、あの映画は、英国の名優ジョン・ハートでさえも、エイリアンの幼生(チェスト・バスター)に胸を食い破られるというエグい役でした。最初に観た時はストレートに怖かったですが、最後に生き残るのはシガニー・ウィーバー演じるリプリーのみという、振り返ればある意味「女性映画」だったかも。シリーズ第1作では男性に置き換えられていますが、チェスト・バスターが躰を食い破って出て来るというのは、哲学者・内田樹氏の「街場の映画論」等での指摘もありましたが、女性の出産に対する不安(恐怖、拒絶感)を表象しているのでしょうか。

エイリアン2s.jpgエイリアン2ド.jpg この恐れは、シガニー・ウィーバー演じるリプリーが完全に主人公となったシリーズ第2作以降、リプリー自身の見る「悪夢」として継承されていきます。「エイリアン2」('86年/米)の監督は、「ターミネーター」のジェームズ・キャメロン。ラストでエイリアンと戦うリプリーが突如「機動戦士ガンダム」風に変身する場面に象徴されるように、SF映画というよりは戦争アクション映エイリアン3ド.jpg画風で、「1」に比べ大味になったように思います(海兵隊のバスケスという男まさりの女兵士は良かった)。デヴィッド・フィンチャー監督の「エイリアン3」('92年/米)になると、リドリー・スコット監督がシンプルな怖さを前面に押し出した第1作に比べてそう恐ろしくもないし(馴れた?)、ジェームズ・キャメロン監督がエイリアンを次々と繰り出した第2作に較べても出てくるエイリアンは1匹で物足りないし、ラストの宗教的結末も、このシリーズに似合わない感じがしました(「エイリアン」「エイリアン2」は共に優れたSF映画に与えられる「サターンSF映画賞」を受賞している)。

ジョン・ハート(31歳当時)/in 「エレファント・マン」('80年/英・仏)
ジョンハート.jpgエレファントマン ジョンハート.jpg チェスト・バスターの出現がシリーズを象徴する場面として印象に残るという意味では、「エイリアン」でのジョン・ハートの役は、エグいけれどもオイシイ役だったかも。この人、「エレファント・マン」('80年/英・仏)で"エレファント・マン"ことジョゼフ・メリック役もやってるしなあ。あれも、普通の二枚目出身俳優なら受けない役だったかも。

ジョン・ハート .jpgハリーディーンスタントン.jpg そのジョン・ハートも「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」('17年/英)のチェンバレン役を降板したと思ったら、昨年['17年]1月に膵臓ガンで77歳で亡くなっています。「ウィンストン・チャーチル」ではゲイリー・オールドマンがアカデミー賞の主演男優層を受賞していますが、そのゲイリー・オールドマンと、第22回「サテライト・アワード」(エンターテインメント記者が所属する国際プレス・アカデミが選ぶ映画賞)の主演男優賞を分け合ったのがハリー・ディーン・スタントンです。但し、スタントンは"死後受賞"でした。遅ればせながらこれを機に、ジョン・ハートとハリー・ディーン・スタントンに追悼の意を捧げます(「冥福を祈る」と言うと、"ラッキー"から「冥土なんて存在しない」と言われそう)。

20170918211045e91s.jpg そう言えば、ハリー・ディーン・スタントンは生前、"The Harry Dean Stanton Band"というバンドで歌とギターも担当していて、2016年に第1回「ハリー・ディーン・スタントン・アウォード」というイベントが開催され、ホストが今回の作品にも出ているデヴィッド・リンチで、ゲストが「沈黙の断崖」('97年)でハリー・ディーン・スタントンと共演したクリス・クリストファーソンや、「ラスベガスをやっつけろ」('98年)などで共演経験のあるジョニー・デップでしたが(ジョニー・デップの登場はハリー・ディーン・スタントンにとってはサプラズ演出だったようだ)、この「ハリー・ディーン・スタントン賞」って誰か"受賞者"いたのかなあ。
 
Harry Dean Stanton performs 'Everybody's Talkin' with Johnny Depp & Kris Kristofferson.('Everybody's Talkin'は映画「真夜中のカーボーイ」の主題歌」)

Lucky (2017)
Lucky (2017).jpg
「ラッキー」●原題:LUCKY●制作年:2017年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・キャロル・リンチ●製作:ダニエル・レンフルー・ベアレンズ/アイラ・スティーブン・ベール/リチャード・カーハン/ローガン・スパークス●脚本:ローガン・スパークス/ドラゴ・スモンジャ●撮影:ティム・サーステッド●音楽:エルビス・キーン●時間:88分●出演:ハリー・ディーン・スタントン/デヴィッド・リンチ/ロン・リヴィングストン/エド・ベグリー・Jr/トム・スケリット/ジェームズ・ダーレン/バリー・シャバカ・ヘンリー/ベス・グラント/イヴォンヌ・ハフ・リー/ヒューゴ・アームストロングス●日本ヒューマントラストシネマ有楽町.jpgヒューマントラストシネマ有楽町 sinema2.jpg公開:2018/03●配給:アップリンク●最初に観た場所:ヒューマントラストシネマ有楽町(シアター2)(18-04-13)(評価:★★★★)
ヒューマントラストシネマ有楽町(2007年10月13日「シネカノン有楽町2丁目」が有楽町マリオン裏・イトシアプラザ4Fにオープン。経営がシネカノンから東京テアトルに変わり、2009年12月4日現在の館名に改称)[シアター1(162席)・シアター2(63席)]

Pari, Tekisasu (1984)
Pari, Tekisasu (1984).jpg
「パリ、テキサス」●原題:PARIS,TEXAS●制作年:1984年●制作国:西ドイツ・フランス●監督:ヴィム・ヴェンダース●製作: クリス・ジーヴァニッヒ/ドン・ゲスト●脚本:L・M・キット・カーソン/サム・シェパード●撮影:ロビー・ミューラー●音楽:ライ・クーダー●時間:147分●出演:ハリー・ディーン・スタントン/サム・ベリー/ベルンハルト・ヴィッキ/ディーン・ストックウェル/オーロール・クレマン/クラッシー・モビリー /ハンター・カーソン/ヴィヴァ/ソコロ・ヴァンデス/エドワード・フェイトン/ジャスティン・ホッグ/ナスターシャ・キンスキー/トム・ファレル/ジョン・ルーリー/ジェニ・ヴィシ●日本公開:1985/09●配給:フランス映画社●最初に観た場所:テアトル新宿(86-03-30)(評価:★★★★)●併映:「田舎の日曜日」(ベルトラン・タヴェルニエ)

ワン・フロム・ザ・ハート 【2003年レストア・バージョン】 [DVD]
ワン・フロム・ザ・ハート dvd.jpgワン・フロム・ザ・ハート ちらし.jpg「ワン・フロム・ザ・ハート」●原題:ONE FROM THE Heart●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:フランシス・フォード・コッポラ●製作:グレイ・フレデリクソン/フレッド・ルース●脚本:アーミアン・バーンスタイン/フランシス・フォード・コッポラ●撮影:ロナルド・V・ガーシア/ヴィットリオ・ストラーロ●音楽:トム・ウェイツ●時間:107分●出演:フレデリック・フォレスト/テリー・ガー/ラウル・ジュリア/ナスターシャ・キンスキー/レイニー・カザン/ハリー・ディーン・スタントン /アレン・ガーフィールド/カーマイン・コッポラ/イタリア・コッポラ/レベッカ・デモーネイ●日本公開:1982/08●配給:東宝東和●最初に観た場所:目黒シネマ(83-05-01)(評価:★★★)●併映:「ひまわり」(ビットリオ・デ・シーカ)

エイリアン 1979.jpgエイリアン スタントン.jpg「エイリアン」●原題:ALIEN●制作年:1979年●制作国:アメリカ●監督:リドリー・スコット●製作:ゴードン・キャロル/デヴィッド・ガイラー/ウォルター・ヒル●脚本:ダン・オバノン●撮影:デレク・ヴァンリント●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●時間:117分●出演:トム・スケリット/シガニー・ウィーバー/ヴェロニカ・カートライト/ハリー・ディーン・スタントン/ジョン・ハート/イアン・ホルム/ヤフェット・コットー●日本公開:1979/07●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:三軒茶屋東映(84-07-22)(評価:★★★★)●併映:「遊星からの物体X」(ジョン・カーペンター)

エイリアン2.jpgエイリアン2 .jpgエイリアン2 DVD.jpg「エイリアン2」●原題:ALIENS●制作年:1986年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ジェームズ・キャメロン●製作:ゲイル・アン・ハード●撮影:エイドリアン・ビドル●音楽:ジェームズ・ホーナー●時間: 137分(劇場公開版)/154分(完全版)●出演:シガニー・ウィーバー/マイケル・ビーン/ポール・ライザー/ランス・ヘンリクセン/シンシア・デイル・スコット/ビル・パクストン/ウィリアム・ホープ/リッコ・ロス/キャリー・ヘン/ジャネット・ゴールドスタイン●日本公開:1986/08●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:日本劇場(86-10-05)(評価:★★★)
エイリアン2 (完全版) [AmazonDVDコレクション]

エイリアン3.jpgエイリアン3 DVD.jpg「エイリアン3」●原題:ALIENS³●制作年:1992年●制作国:アメリカ●監督:デヴィッド・フィンチャー●製作:ゴードン・キャロル/デヴィッド・ガイラー/ウォルター・ヒル●脚本:デヴィッド・ガイラー/ウォルター・ヒル/ラリー・ファーガソン●撮影:アレックス・トムソン●音楽:エリオット・ゴールデンサール●時間:114分(劇場公開版)/145分(完全版)●出演:シガニー・ウィーバー/チャールズ・S・ダットン/チャールズ・ダンス/ポール・マッギャン/ブライアン・グローバー/ラルフ・ブラウン/ダニー・ウェブ/クリストファー・ジョン・フィールズ/ホルト・マッキャラニー/ランス・ヘンリクセン/ピート・ポスルスウェイト●日本公開:1992/08●配給:20世紀フォックス(評価:★★)
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エレファント・マン3.jpg「エレファント・マン」●原題:THE ELEPHANT MAN●制作年:1980年●制作国:イギリス●監督:デヴィッド・リンチ●製作:ジョナサン・サンガー●脚色:クリストファー・デヴォア/エリック・バーグレン/デヴィッド・リンチ●撮影:フレディ・フランシス●音楽:ジョン・モリス●時間:124分●出演:ジョン・ハート/アンソニー・ホプキンス/ジョン・ギールグッド/アン・バンクロフト●日本公開:1981/05●配給:東宝東和●最初に観た場所:不明 (82-10-04)(評価:★★★☆)

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レナード&ポール・シュレイダー兄弟の東映ヤクザ映画への思い入れが感じられる作品。

ザ・ヤクザ 1974.jpgザ・ヤクザ dvd.jpg.jpg  ザ・ヤクザ1a8.jpg
ザ・ヤクザ [DVD]
                高倉健/ロバート・ミッチャム
ザ・ヤクザ 01.jpg ロスで私立探偵をしているハリー・キルマー(ロバート・ミッチャム)は旧友のジョージ・タナー(ブライアン・キース)から、日本の暴力団・東野組に誘拐された娘を救出してほしいと依頼される。タナーは海運会社を営むマフィアで、武器密輸の契約トラブルで東野組と揉めていたのだ。東野が殺し屋・加藤次郎(待田京介)をロスに送り、4日以内にタナー自身が日本に来なければ娘の命はないと通達、タナーは、かつて進駐軍憲兵として日本に勤務していた旧友のハリーに相談したのだ。ハリーは日本語が堪能な上、田中ザ・ヤクザ es.jpg健(高倉健)という暴力団の幹部と面識があった。健はハリーに義理があり、東野との交渉もうまく行くだろうというのがタナーの目算だった。ハリーは20年ぶりに東京へ向い、ボディガードで監視役のダスティ(リチャード・ジョーダン)がこれに同行する。ハリーとタナーの共通の友人で、日本文化に惹かれ、大学で米国史を教えるオリヴァー・ウィート(ハーブ・エデルマン)の邸に滞在することになる。ハリーはバー「キルマーハウス」を訪れる。戦後の混乱時に田中英子(岸惠子)と知り合い、子連れの英ザ・ヤクザ .jpg子が娼婦にならずに済んだのもハリーの愛情のお蔭だった。実は英子の夫・健が奇跡的に復員し、健は妻と娘が受けた恩義を尊び、二人から遠去かったのだが、ハリーには健と英子は兄妹だと話していた。軍命で日本を去る際にハリーはタナーから金を用意してもらい、バーを英子に与えたのだった。娘・花子(クリスティーナ・コクボ)も今は美しく成長し、ハリーを歓迎する。ハリーは健に会いに京都に向かう。健はヤクザの世界から足を洗い、剣道を教えていたザ・ヤクザ05.jpgが、義理を返すために頼みを引き受ける。タナーの娘が監禁されている鎌倉の古寺に忍び入って娘を救出、今度は健の命が東野組に狙われる。ハリーはタナーが東野と手を握り、自分たちを裏切ったことを知る。東野組がウィート邸に殴り込みをかけ、目の前で花子とダスティが殺される。タナーを射殺したハリーは健と共に、賭場を開いている東野邸に殴り込む―。
  
The_Yakuza_1974_.jpg 1974年のシドニー・ポラック監督作で、脚本は、2年後に「タクシードライバー」('76年)の脚本を手掛け、後に「MISHIMA:A LIFE IN FOUR CHAPTERS」('85年)を監督するポール・シュレイダー、原作は、その兄で、1969年~1973年の5年間、同志社大学と京都大学で英文学を教え、義侠の世界に興味を持ち、実在の暴力団にも出入りしたレナード・シュレイダーです。レナード・シュレイダーは帰国後、当時の東映ヤクザ映画を元にこの映画の原作を書いています。

 一方、弟のポール・シュレイダーは本当は脚本だけでなく監督もやりたかったのが、この作品で脚本家デビューしたばかりの無名であったためにそれはならず、但し、この脚本を気に入ったワーナー・ブラザーズは彼に監督の選択権を委ねていたそうで、シドニー・ポラックに決まる前に、フランシス・フォード・コッポラやニコラス・ローグにも依頼していたそうです。結局、大御所シドニー・ポラックが監督することになりましたが、その前に、ロバート・アルドリッチに監督のオファーが行ったものの、リー・マーヴィンを起用したいと考えたロバート・アルドリッチと会社側と折り合いがつかず、ロバート・ミッチャムに声が掛かかり、更に、創作上の違いから結局ロバート・アルドリッチが監督を降りたという経緯があります。ロバート・アルドリッチは代わりに、同じ男性アクション映画でも、極々アメリカ的な作品「ロンゲスト・ヤード」('74年)を撮ることになった)。

ザ・ヤクザ2s.jpg レナード&ポール・シュレイダー兄弟の東映ヤクザ映画への思い入れが感じられる作品です。とりわけレナード・シュレイダーはやくざ世界と任侠道についてきちんとリサーチをした上で原作を書いていていて、シドニー・ポラック監督もシュレイダー兄弟の意向をできるだけ汲んで映画化した模様です。従って、日本を舞台にしたハリウッド映画にありがちな、実態と乖離したへんてこりんなジャポニズムは殆ど見られなかったように思います。日本で米国史を教え、日本の歴史研究にも関心があるというオリヴァー・ウィート(ハーブ・エデルマン)のモデルは、原作者のレナード・シュレイダー自身でしょうか。

ザ・ヤクザ3s.jpg シドニー・ポラック監督自身も日本のヤクザ映画を研究したらしく、日本のヤクザ映画でよくみかけるショットなども結構あったように思います(東映のスタッフが制作に関わっている)。菅原文太の「仁義なき戦い」シリーズが1973年にスタートしていますが、むしろ参考にしたのは、ヤクザの美学や様式美の色合いがまだ濃く残る、高倉健主演のザ・ヤクザ1s.jpg日本侠客伝」や「昭和残侠伝」シリーズではないでしょうか(レナード・シュレイダーは帰国後に東映ヤクザ映画を60本ぐらい米国の映画館で観たらしい)。ロバート・ミッチャム演じるハザ・ヤクザ kisi .jpgリーが、自分を裏切ったタナーを射殺した後、東野邸に単独で殴り込みをかけようとする田中健に同行するのは、「昭和残侠伝」シリーズにおける池部良の役どころと重なります。日本のヤクザ映画の"道行"のパターンを踏襲しているわけですが、日本人俳優と外国人俳優の組み合わせであってもその形がさほど崩れておらず、目だった違和感がないのは、ロバート・ミッチャムの演技力に負うところも大きいように思いました(岸恵子もほどよくバタ臭いところがあるし...)。

岡田英次(Toshiro Tono)/高倉健
ザ・ヤクザ the-yakuza.jpgザ・ヤクザ7.jpg でも、全体としては、やはり高倉健の映画という感じです(高倉健はロバート・ミッチャムの次にクレジットされている)。殴り込みも、"主戦場"で闘っているのは高倉健で、岡田英次演じる敵方のボスを殺った後も、一人で何人ザ・ヤクザ1-1.jpgもの相手をしていて、ロバート・ミッチャムは拳銃とライフルで周辺でそれをアシストするのみです。最後は負傷でへたり込んで、ラストの待田京介演じる殺し屋との勝負にも手は出しません。最後に主人公が怒りをザ・ヤクザm.jpg爆発させて暴れまくり、それが観る側にカタルシス効果を生むのはヤクザ映画のお決まりですが、アメリカ人が観たら少しフラストレーションを感じるかも。実際、興行的にはアメリカでは失敗作だったようですが、後にクエンティン・タランティーノなどによって再評価されて自身の作品でオマージュが込めれたり(「キル・ビル」('03年))、ミンク監督、スティーヴン・セガール主演でリメイク作品が作られたりしています(「イントゥ・ザ・サン」('05年))。

ザ・ヤクザ 海外版.jpgザ・ヤクザ 01.jpg-the-yakuza-1.jpg「ザ・ヤクザ」●原題:THE YAKUZA●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督・製作:シドニー・ポラック●脚本:ポール・シュレイダー/ロバート・タウン●撮影:岡崎宏三/デューク・キャラハン●音楽:デイヴ・グルーシン(挿入歌:「ONLY THE WIND」作詞:阿久悠)●原作:レナード・シュレイダー●時間:122分●出演:ロバート・ミッチャム/高倉健/ブライアン・キース/ハーブ・エデルマン/リチャード・ジョーダン/岸惠子/岡田英次/ ジェームス繁田/待田京介/クリスティーナ・コクボ/汐路章/郷鍈治/植村謙二郎 /ヒデ夕樹●日本公開:1975/03●配給:ワーナー・ブラザース(評価:★★★☆)

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ジョン・ヒューストン監督の夢を追いかける男を描いた映画の系譜上にある作品。

王になろうとした男 pannhuretto .jpg になろうとした男 dvd.jpg 王になろうとした男0s.jpg 王になろうとした男3s.jpg
映画パンフレット 「王になろうとした男」 監督 ジョン・ヒューストン/「王になろうとした男 [DVD]」マイケル・ケイン/クリストファー・プラマー/ショーン・コネリー

王になろうとした男7s.jpg 英領インド帝国ラホールの北極星新聞の記者キップリング(クリストファー・プラマー)の事務所に、乞食のような男が現れ、「君の前で契約を交わした」と言われて、キップリングは彼が3年前に出会ったカーネハン(マイケル・ケイン)だと気づく。キップリングは、契約を交わしたもう一人の男王になろうとした男5s.jpgドレイボット(ショーン・コネリー)の行方を訊くが、カーネハンは彼は死んだと言い、彼らの「王になる」という夢の顛末を語る。3年前にカーネハンは、偶然にドレイボット、カーネハンと知り合うが、二人は「王になる」という夢を抱いていて、キップリングを証人に「王になるまでは女と酒を断つ」という契約を交わしたのだ。銃を入手した二人はアフガニスタン辺境カフィリスタンに向けて出発、何とかカフィリスタンに到達した二人は、女性を襲う仮面の部族に出くわし銃で追い払う。襲われていた部族の城に英語を話す男ビリー(サイード・ジャフリー)がいて、二人はビリーを仲間に引き込み、首長を丸め込み英国式軍事訓練を施し、カフィリス王になろうとした男ages.jpgタン支配を企む。仮面の部族に戦争を仕掛け降伏に追い込むが、その際、ドレイボットの胸に矢が命中するも、ベルトに当たり王になろうとした男as.jpg命拾いする。それを見た部族たちは、ドレイボットが、伝説で語られる大昔カフィリスタンを征服した神シカンダー(アレクサンダー大王)の息子だと信じる。カーネハンは伝説を利用してドレイボットを「神の息子」に仕立て上げ、戦わずに周辺部族を従属させるが、聖都シカンダルグルの大司祭に出頭を命じられる。大司祭は「本当の神か確かめる」としてドレイボットを剣で刺そうとするが、彼がフリーメイソンの紋章を所持しているのを見てシカンダーの息子として認める。祭壇に刻まれた古来の紋章は、フリーメイソンのと同じ意匠だった。「シカンダー2世」としてカ王になろうとした男 2s.jpgフィリスタン王に即位したドレイボットは人々から崇められ、シカンダーが残した莫大な財宝を手に入れる。悲願達成を喜ぶカーネハンは、「財宝を手にインドに戻ろう」と提案するが、王座の魅力に憑りつかれたドレイボットは、留まって美女ロクサネ(シャキーラ・ケイン)を王妃に迎えることを決める。「神と人間の結婚」に高僧は反発し、カーネハンも正体の露見を恐れて反対するが、ドレイボットは聞き入れず強引に結婚を宣言する。カーネハンはドレイボットに別れを告げて出発しようとするが、懇願されて結婚式だけは参列する。式の際に、「神に愛された女は灰になる」という言い伝えを信じたロクサネは、恐怖のあまりドレイボットの頬を噛む。不死身のはずのドレイボットから血が流れる姿を見た大司祭らは、彼が神を騙る偽物だと気づき、二人は怒り狂う群衆から逃れようとするが―。

ラドヤード・キップリング.jpg 1975年公開のアメリカ・イギリス映画で、『ジャングル・ブック』などで知られるノーベル文学賞受賞作家のラドヤード・キップリング(1865-1936)の同名小説の映画化作品。キップリングは英国人で初めての(1907年)、且つ史上最年少(41歳)でのノーベル文学賞受賞作家です。ジョン・ヒューストン監督はキップリングの愛読者で、「王になろうとした男」は王になろうとした男2s.jpg20年来の念願の企画だったそうです。当初はハンフリー・ボガートとクラーク・ゲイブルが主演候補でしたが、ゲイブルの死で頓挫し、後にポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの主演で企画が再スタートしまたが、ポール・ニューマンが英国人を主演に据えるべきだと主張し、マイケル・ケインとショーン・コネリーになったとか。ポール・ニューマンの主張は正しかったように思います。

王になろうとした男es.jpg 途中まで結構コミカルなシーンがあるために、ラストのトレイボットが英国の歌を歌いながら吊り橋を渡っていくシーンは一気に悲壮感が増します。結局、「王」になるつもりが「神」にまでなってしまって、それがトレイボットに災いしました。ジョン・ヒューストン自身は、「この映画にも欠点はないとはいえない。でもそんなことを誰が気にするだろうか。これは遮二無二前に突き進む映画である。前方の瀑布に向かってひたすら泳いでいくそういう映画なのである」と述べています。結末こそ悲壮感が漂いますが、夢を追いかける生き方をした男を肯定的に捉えたと言うか、むしろ讃えた映画なのでしょう。

黄金 002.jpgマルタの鷹 b.jpg そう言えば、同監督の「マルタの鷹」('41年)でも、ハンフリー・ボガート演じるサム・スペードは、"マルタの鷹"の争奪に明け暮れる男達を警察に引き渡しながらも、"鷹"を手に取った刑事の「重いな、これは何だ」という問いに「夢のかたまりさ」と答えているし、「黄金」('48年)はまさに、一獲千金を夢見てシエラ・マドレ山中に金鉱を求める男達の話でした。その意味では、「マルタの鷹」「黄金」の流れを汲むものがあると思います。

王になろうとした男0as.jpg 原作であるラドヤード・キップリングの短編小説「王になろうとした男」(1888)(「王になろうとした男」(『諸国物語』('08年/ポプラ社)所収)/「王を気取る男」(『キプリング・インド傑作選』('08年/鳳書房)所収))は、冒険家ジェームズ・ブルックとジョシア・ハーランの二人の経験を元にしていて、ジェームズ・ブルックは、ボルネオ島にあるサラワクで白人王に成った英国人であり、ジョシア・ハーランは、ゴール王子の称号を、彼自身のみ成らず、彼の子孫インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説es.jpgにまで与えられた米国人冒険家でした。こうした秘境に冒険し、お宝や理想郷を求める話は、同じく英国作家のジェームズ・ヒルトンの『失われた地平線』(1933)などに受け継がれ(『失われた地平線』は1937年にフランク・キャプラ監督で映画化されている)、更には、フランシス・フォード・コッポラ監督の「地獄の黙示録」('79年/米)や、スティーヴン・スピルバーグ監督の「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」('81年/米)をはじめとするインディ・ジョーンズ・シリーズなどにも影響を与えているように思います。「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」('84年)

 「王になろうとした男」の舞台カフィリスタンはアフガニスタンとパキスタンの国境付近で、その谷に住むカラーシャ族は独自の宗教を信仰するため「異教(カフィール)徒の地=カフィリスタン」と呼ばれ、人々は白い肌、青い瞳の特徴を持ち、古代マケドニアの将軍アレキサンダー大王の軍隊の末裔という伝説があるそうです。但し、撮影の大半はモロッコで行われたとのことです。カフィリスタンの首長や司祭を演じた俳優はこの作品しか出演記録がないので、モロッコでの現地調達だったのではないでしょうか。

王になろうとした男mages.jpg王になろうとした男ges.jpg ドレイボットが結婚式を挙げる相手のロクサネ役は、ロアルド・ダールとパトリシア・ニールの娘テッサ・ダール(1957年生まれ)が予定されていましたが、ジョン・ヒューストンがよりアラブ的な女性を求め、「私たちはどこかでアラブの姫を探さなければいけない」という話をマイケル・ケインとした食事した時に話した際に、同席したマイケル・ケインの妻シャキーラ・ケイン(1947年生まれ)が南米ガイアナ出身でエキゾチックな容貌だったため、ヒューストンが彼女を説得してロクサネ役に起用したそうです。減量や歯の矯正までして撮影に備えたというテッサ・ダールには気の毒ですが、演技力より容貌の方が重要だったということでしょう。モデル出身のシャキーラ・ケインも"Carry on Again Doctor" (1969)などにノンクレジットのチョイ役で出ている他はこの作品ぐらいしか出演記録が無いテンポラリー(特別出演)で(アイーシャと呼ばれていた頃、英APフィルムズの「謎の円盤UFO」(1970)というSFテレビドラマにアイーシャ・ジョンソン少尉役で出ていて、これがマイケル・ケインの目にとまり二人の結婚に至った)、こちらは"現地調達"ならぬ"自前調達"といったところでしょうか。

SHAKIRA CAINE in CARRY ON AGAIN DOCTOR (1969)/THE MAN WHO WOULD BE KING (1975)
SID JAMES <font color=deeppink><strong>SHAKIRA CAINE</strong></font> & JIM DALE CARRY ON AGAIN DOCTOR (1969) .jpg Shakira Caine .jpg
アイーシャ(in「謎の円盤UFO」)=シャキーラ・ケイン/マイケル・ケイン in「鷲は舞いおりた」('76年/英)
アイーシャ・ジョンソン少尉.jpg シャキーラ ケインSH.jpg 鷲は舞いおりた ケイン サザーランド 2 .jpg

クリストファー・プラマー in 「サウンド・オブ・ミュージック」(1965)/「王になろうとした男」(1975)/「手紙は憶えている」(2015)
クリストファー・プラマー サウンド・オブ・ミュージック.jpg クリストファー・プラマー 王になろうとした男.jpg 手紙は憶えている .jpg

The Man Who Would Be King (1975).jpg王になろうとした男5.jpg「王になろうとした男」●原題:THE MAN WHO WOULD BE KING●制作年:1975年●制作国:アメリカ・イギリス●監督:ジョン・ヒューストン●製作:ジョン・フォアマン●脚本:ジョン・ヒューストン/グラディス・ヒル●撮影:オズワルド・モリス●音楽:モーリス・ジャール●原作:ラドヤード・キップリング「王になろうとした男」●時間:129分●出演:ショーン・コネリー/マイケル・ケイン/クリストファー・プラマー/サイード・ジャフリー/ドラミ・ラルビ/ジャック・メイ/カルーム・ベン・ボウリ/モハマド・シャムシ/アルバート・モーゼス/ポール・アントリム/グラハム・エイカー/シャキーラ・ケイン●日本公開:1976/06●配給:コロムビア・ピクチャーズ(評価:★★★☆)
The Man Who Would Be King (1975)

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元ギャングで死刑囚のジョゼ・ジョヴァンニ監督・脚本、ドロン主演の2作。懐かしいけれど...。

ル・ジタン 1975 ち.jpgル・ジタン vhs.jpg ブーメランのように es.jpg
「ル・ジタン」チラシ/ⅤHS 「ブーメランのように」チケット

ル・ジタン01.jpg "ジタン"の通り名で呼ばれる犯罪者ユーゴ・セナール(アラン・ドロン)は、ロマ族の血を引いているために世間から冷たい仕打ちを受けて生きてきた。3年前、仲間に暴力をふるった村の村長を殺害したために刑務所に収監されていたが、そこで知り合った銀行強盗のジョー(レナート・サルヴァトーリ)と共に脱獄し、その後は彼と共にいくつもの銀行を襲っていた。そんな彼らを追う警察のブロー警視(マルセル・ボズフィ)、暗黒街の大物のヤン(ポール・ムーリス)など、男たちの様々な思惑が交差する―。

ジョゼ・ジョヴァンニ José_Giovanni.JPG 1975年製作のジョゼ・ジョヴァンニ(1923-2004/享年80)監督作。ジョゼ・ジョヴァンニはフランスのセリ・ノワール小説の代表作家でもあり、自らも脱獄経験を持つそうです(かつてはギャングであり、少なくとも3件の強盗殺人に関与して死刑を宣告されるが、大統領恩赦を受けて死刑を免れている)。ジャック・ベッケル監督の「穴」('60年)やロベール・アンリコ監督の「冒険者たち」('67年)の原作者でもあり、この「ル・ジタン」も、原作と脚本を手掛けています(『気ちがいピエロ』という作品もあるが(原題は「Histoire De Fou(気ちがいの物語)」)、ジャン=リュック・ゴダール監督の「気狂いピエロ」('65年)の原作は、一般的にはライオネル・ホワイト著の『十一時の悪魔』であるとされている)。
José Giovanni

ル・ジタン40.jpeg 「ル・ジタン」('75年)は、アラン・ドロンが「ジタン」と呼ばれるロマ(以前はジプシーと言った)で、強盗で稼いで家族を養っているという設定で、初老の金庫破りのヤン共々警察に追われており、2人は最初無関係だったけれども、警察に追い詰められた状況で対峙して友情を感じ合い、但し、ヤンだけが捕まって、ジタンは逃げおうせるというもの。残されたジタンは...というこのパターンは、ジョゼ・ジョヴァンニの最初の監督作「生き残った者の掟」('66年/仏)以来繰り返されているようで、フランス版仁侠ヤクザ映画という感じでしょうか。

ル・ジタン50.jpg 家族を愛しながらも、お尋ね者であるがゆえに家族とは一緒におれないアラン・ドロンが渋いことは渋いですが、"渋い"と言うより"地味"という風に捉えられたのか、公開時は興行成績は振るわなかったようです。ヒゲのドロンについても好き嫌いが割れたのかもしれないし、何よりもストーリー的にやや盛り上がりに欠けるというのもあったかもしれません。しかしながら、長らくソフト化されない期間があり、こうした作品でも久しぶりに観ると悪くないように思えるのは、ある種ノスタルジー効果でしょうか(その効果を含れば星4つだが、それをやっていると昔観た古い映画の評価が皆高くなってしまうので、ここでの評価はそれを含めず星3つ)。

ブーメランのように tirasi.jpgブーメランのように 02.jpg 併映で観た「ブーメランのように」('76年)も、監督・脚本ともジョゼ・ジョヴァンニで、アラン・ドロン演じるかつてギャングで今は大会社の社長となっている男が、麻薬のせいで誤って警官を射殺した息子(ルイ・ジュリアン)を奪還するため、"ブーメランのように"侠骨を取り戻し、護送車を襲う―というもの。追い込まれるほどにギャングの猛々しさが剥き出しになる男は、息子を連れイタリアへ逃亡を図るが―。

ブーメランのように 40.jpg 父性愛をテーマとした作品で、元ギャングというところがジョゼ・ジョヴァンニ自身ともダブりますが、ダブっている分だけベタになった感じで、カルラ・グラヴィーナやシャルル・ヴァネルといった役者が出ているにもかかわらず全体に演出が薄っぺらく見えてしまうのが難でしょうか。まあ、とにかくアラン・ドロンが好きという人にとってはそんなことはどうでもいいのかもしれないけれど、個人的には、主人公の父性愛には今ひとつ感情移入できなかった記憶があります。

デビュー60周年記念53週連続 アラン・ドロンがいっぱい.jpg 今年['17年]1月からスターチャンネルで、アラン・ドロンのデビュー60周年を記念して「53週連続 アラン・ドロンがいっぱい」と題してアラン・ドロンの出演作を放映していますが、そうした中、本人は5月にAFP通信のインタビューで、2018年に公開予定の映画1本に出演してから引退する意向を表明しました。でも、個人的アラン・ドロン .jpg印象としては、もうとっくに引退したと思っていた...。因みに、「53週連続 アラン・ドロンがいっぱい」では、10月22日に「ル・ジタン」が初登場するようですが、「ブーメランのように」は放映予定が無いようです(人気圏外か。ジョゼ・ジョヴァンニ原作の「冒険者たち」は1月1日に登場している)。(と書いてしばらくしたら、10月22日に放映予定だった「ル・ジタン」が「ブーメランのように」に置き換わった。)

アラン・ドロン(朝日新聞デジタル)
     
ル・ジタン 1975.jpgル・ジタン02.jpg「ル・ジタン」●原題:LE GITAN●制作年:1975年●制作国:フランス●監督:ジョゼ・ジョヴァンニ●製作:レイモン・ダノン/アラン・ドロン●脚本:ジョゼ・ジョヴァンニ●撮影:ジャン=ジャック・タルベ●音楽:クロード・ボリング●原作:ジョゼ・ジョヴァンニ「ル・ジタン」●時間:103分●出演:アラン・ドロン/ポール・ムーリス/マルセル・ボズフィ/アニー・ジラル/レナート・サルヴァトーリ/ベルナール・ジロドー/モーリス・バリエ●日本公開:1976/04●配給:東映洋画●最初に観た場所:三鷹オスカー(79-04-15)(評価:★★★)●併映:「地下室のメロディー」(アンリ・ヴェルヌイユ)/「ブーメランのように」(ジョゼ・ジョヴァンニ)
ル・ジタン〈HDリマスター版〉 [DVD]

ブーメランのように dvd.jpgブーメランのように ド.jpg「ブーメランのように」●原題:COMME UN BOOMERANG●制作年:1976年●制作国:フランス●監督:ジョゼ・ジョヴァンニ●製作:レイモン・ダノン/アラン・ドロン●脚本:ジョゼ・ジョヴァンニ●撮影:ビクトール・ロドリゲ●音楽:ジョルジュ・ドルリュー●時間:103分●出演:アラン・ドロン/カルラ・グラヴィーナ/シャルル・ヴァネル/シュザンヌ・フロン/ルイ・ジュリアン●日本公開:1976/12●配給:東映洋画●最初に観た場所:三鷹オスカー(79-04-15)(評価:★★☆)●併映:「地下室のメロディー」(アンリ・ヴェルヌイユ)/「ル・ジタン」(ジョゼ・ジョヴァンニ)
ブーメランのように [DVD]

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フランシス・フォード・コッポラ監督自身の同時解説(DVD特典)が興味深かった。

カンバセーション・・・盗聴・・・ .jpg カンバセーション...盗聴... VHS.jpg カンバセーション...盗聴... dvd.jpg カンバセーション...盗聴... dvd2.jpg
パンフレット「カンバセーション~盗聴~ [VHS]」「カンバセーション...盗聴... [DVD]」「カンバセーション...盗聴... [DVD]
カンバセーション・・・盗聴・・・01.jpgカンバセーション...盗聴00.jpg サンフランシスコのユニオンスクエアを散歩する一組のカップルを注視する一見ごく平凡な中年男ハリー・コール(ジーン・ハックマン)は、実はプロの盗聴屋で、彼は大企業の取締役からの依頼を受け、カップルの会話をテープに録音していたのだ。ハリーの通信傍受カンバセーション...盗聴ges.jpgの権威としての輝かしい名声とは裏腹に、その私生活は孤独であり、それは盗聴という仕事を生業にしていながら、彼が自らのプライバシーの保持に異常に気を使っていカンバセーション...盗聴04.jpgるからだ。そのためにハリーは、彼のことをより知りたがる恋人アミー(テリー・ガー)とも別れる羽目に。そんな彼にとって唯一の心の支えは、厳重に外部から隔離された自室で、ジャズの調べに合わせてサクソフォンを演奏することだった。ユニオンスクエアで密会する男女の会話を盗聴したハリーは、一見すると他愛の無い世間話にカンバセーション...盗聴 04.jpg見えた二人の会話に不審なものを感じ、依頼人の秘書マーティン(ハリソン・フォード)への録音テープの受け渡しを拒否する。依頼人のオフィスからの帰り道にハリーは、公園で盗聴したカップルに遭遇、例の二人組は、女の方は依頼人の妻(シンディ・ウィリアムズ)で、男はその会社に勤めていた社員(フレデリック・フォレスト)だった。ハリーは依頼主への疑念から、「好奇心を捨て、淡々と仕事する」とする自らのポリシーを破り、改めて録音テープを再生する。すると、「チャンスがあれば我々を殺す気だ」という事件の予兆を示す声が録音されていた。ハリーは、依頼主の重役(ロバート・デュヴァル)が二人を殺害しようとしているのではないかという疑惑を抱く―。

 1974年4月米国公開のフランシス・フォード・コッポラ監督作で、同監督の「ゴッドファーザー」('72年)と「ゴッドファーザー PART II」('74年)の間に作られた作品。映画の構想自体は、フランシス・フォード・コッポラが1960年代中盤から暖めていたものですが、「ゴッドファーザー」の成功によって映画化が実現したとのこと。当時、興行的には失敗作でしたが評論家からは高い支持を得、1974年のカンヌ国際映画祭では最高賞であるグランプリ(翌1975年から現在の正式名であるパルム・ドールに改称)を受賞しています。

カンバセーション盗聴V1_.jpg 90年代にビデオで観て今一つでしたが、最近DVDで観直してみて、なかなか面白いのではないかと思いました。自分が観たDVDには、監督のフランシス・フォード・コッポラと編集のウォルター・マーチによる字幕解説が特典付録として付いていました。2000年の時点でコッポラ監督自らがこの作品を振り返った解説が全編にわたって字幕スーパーでインポーズされていて、その内容も、映画ストーリーの進行そのものに合わせた解説や登場する俳優に関するエピソード、更には自分の生い立ちや、撮りたいと思っている作品、名作映画や自身の作品についてなど多岐にわたっていて、なかなか興味深かったです。

 それによれば、フランシス・フォード・コッポラ監督は、元々は集団劇的な大作ではなく個人を描いたオリジナル脚本の作品を撮りたかったけれども、家族を養うために、不本意ながらも原作のある作品「ゴッドファーザー」の仕事を引き受け、それが成功を収め、皆が自分の意見を聴いてくれるようになったため、この映画の製作が実現したとのことです。但し、「ゴッドファーザー PART II」('74年)から「地獄の黙示録」('79年)の間はいろいろ大変で、好きな映画を撮れなかったとも言っています(村上春樹は「地獄の黙示録」にプライベート・フィルム的要素を見て取っていた。さすがと言うべきか)。一方で、「タッカー」('88年)のような映画の撮影は楽しかったと述べています。

カンバセーション...盗聴 デュヴァル.jpgカンバセーション...盗聴 hf.jpgカンバセーション...盗聴 jk.jpg 妻に不倫された取締役を演じたロバート・デュヴァルや、すごく陰険そうな秘書を演じた「スター・ウォーズ」('77年)でブレイクする前のハリソン・フォードがこの映画に出演することになった経緯などが語られているのも楽しいし、この映画出演の数年後に癌で亡くなったジョン・カザールの人間性を絶賛し、その死を惜しんでいます。ジーン・ハックマンは本当は若々しくダンディであったため、老けていてダサい風采のオタク系男である主人公を演じるのに苦労し、イラカンバセーション...盗聴01.jpgついていたとのことです。霧の公園のシーンの撮影の際に近所の住民の通報で警察や記者の邪魔が入り、撮影を中断せざるを得なかったこと(ジーン・ハックマンはますますくイラついたらしい)、結果としてラストシーンに想定していたその場面を中盤に持って来ざるをえなかったことなどを明かしています。また、この映画は、ミケランジェロ・アントニオーニ監督の「欲望」('67年)やアルフレッド・ヒッチコック監督の「サイコ」('60年)などの影響を受けていることも明かしています(「サイコ」の影響を受けているのは言われなくとも分かるが、「欲望」の影響を受けているのは意外だった)。

カンバセーション...盗聴 見本市.jpg 映画公開直後に「ウォーターゲート事件」が発覚し('74年6月)、大いに驚いたとのことで、事件を無意識的に予知したのかも、とも。その他にも、映画に出てくる盗聴業者の見本市のようなものは、本物のその業界の見本市で撮影したとか、主人公が告解する神父の役と、新聞に出た事件の真相を知ろうと取締役の会社に行って警備員に追い返されるその警備員の役は、共にジーン・ハックマンの弟が演じていること、後者のシーンは「室内シーン」だが実は建物の外で撮られていること(言われてみればそんな感じ)など、色々と明かしていて楽しいです。

 ラストで、主人公ハリーは自分が勘違いしていたことに気づきますが、「チャンスがあれば我々を殺す気だ」という言葉が別の意味にも取れることを、解説でコッポラ自身が、二重の意味を持たせたことが良かったのか、もっとシンプルにした方が良かったのかどうか分からないともコメントしています。そして、ハリーは、謎の人物からの「盗聴してる」という電話に怖カンバセーション・・・盗聴・・・02.jpgれ慄きます(この電話の主は、ハリソン・フォード演じるマーティンか。ならば、マーティンは重役夫人カップルとグルなのか)。ハリーは家の中に盗聴器が仕掛けられていないか探しまくりますが(コッポラ監督自身が、盗聴器がある思って主人公が壊すビニール製のキリスト像は「壊れにくかった」とか、自分だったらサクソフォンのトラップに盗聴器が仕掛けてあると疑うとかコメントしている(笑))、結局は盗聴器は見つかりません(コッポラ監督が自分にもどこにあるか分からないとコメントしている(笑))。主人公はもともと神経質な性質なので、それが脅迫神経症に進行し、盗聴のプロが自分が盗聴される立場になって被害妄想になっていくという、たいへん皮肉な結末です。

カンバセーション盗聴 001.jpgカンバセーション 盗聴_03.jpg どこまでが現実でどこまでが主人公の妄想か、仮に妄想であれば主人公はどの辺りからその世界に入っていったのか分からないままでしたが、おそらくは主人公の同僚だったスタン(ジョン・カザール)を引っこ抜いた同業ライバルのウィリアム・P・モラン(アレン・ガーフィールド)のスパイであるコンパニオン女性メレディス(エリザベス・マックレイ)と一夜を共にした辺りからではないかと。新聞記事などから事件が現実のものであったことは間違いないのでしょう。あとは、どこまでが現実でどこまでが主人公の妄想かは、映画を観た人の間で議論してくださいという、含みを持たせた作りにしているように思いました。最初に観た時は、もやっとした印象が残るのがネックになりましたが、観直してみて、これはこれでいいと思うようになりました。フランシス・フォード・コッポラ監督自身の同時解説のお蔭で、興味と愛着が増した作品です。

カンバセーション盗聴 002.jpgジョン・カザール(スタン)/エリザベス・マックレイ(メレディス)/アレン・ガーフィールド(ウィリアム・P・モラン)/ジーン・ハックマン(ハリー・コール)
Conversation - Tôchô (1974)
Conversation - Tôchô (1974).jpg
カンバセーション...盗聴...1974.jpg「カンバセーション...盗聴...」●原題:THE CONVERSATION●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督・製作・脚本:フランシス・フォード・コッポラ●撮影:ビル・バトラー●音楽:デイヴィッド・シャイア●カンバセーション...盗聴 s.jpg時間:113分●出演:ジーン・ハックマン/ジョン・カザール/アレン・ガーフィールド/フレデリック・フォレスト/シンディ・ウィリアムズ/マイケル・ヒギンズ/エリザベス・マックレイ/テリー・ガー/ハリソン・フォード/ロバート・デュヴァル●日本公開:1974/11●配給:パラマウント映画=CIC(評価★★★★)

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久しぶりに劇場で観直してみてもやはり解らず、それでも解らないままに圧倒される映画。

地獄の黙示録2017.jpg 地獄の黙示録 特別完全版2017.jpg   地獄の黙示録01ヘリ .jpg
地獄の黙示録 [DVD]」(2017)/「地獄の黙示録 特別完全版 [DVD]」(2017)

地獄の黙示録02 でゅばる.jpg 米国陸軍・ウィラード大尉(マーティン・シーン)に、カーツ大佐(マーロン・ブランド)暗殺の命令が下る。ウィラードと同行者は、哨戒艇でメコン河を上り、やがて、ジャングルの奥地にあるカーツ大佐の王国へとたどり着く―。

 1979年公開のフランシス・フォード・コッポラ監督作品(原題:Apocalypse Now)で(日本公開は1980年)、4年の歳月と3100万ドルの巨費地獄の黙示録03 pm.jpgをかけて作られた大作であり、カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作でもあって、鳴り物入りで日本公開されましたが、当時テアトル東京に観に行って、解らないままに圧倒されたという印象でした。こうした映画って、観てから時間が経つうちに、ああ、あれってこういことだったんだなあとか解ってくることがありますが、この映画に関してそれが無く、ずっと解らないままでした(先日ちょうど37年ぶりに劇場で観たが、今観ても解らず、解らないままに圧倒される?)。そのうち、この映画が"ワースト1"映地獄の黙示録05 kingdom.jpg画に選ばれたりするような時期があり、例えば『大アンケートによる洋画ベスト150』('88年/文春文庫)の際のアンケートでは"ワースト10"のトップに選ばれています。この結果を受けて、『洋・邦名画ベスト150 〈中・上級篇〉』('92年/文春文庫)で故・田中小実昌2.jpg田中小実昌が映画評論家の北川れい子氏との対談で、「ぼくはそんなに気に入らないことはないですね」とし、ワーストに選ばれる作品はみんな大作なんですよ」と言っていて、ナルホドなあと思いました。

長谷川和彦s.jpg地獄の黙示録06 かーつ.jpg 映画の公開前に映画監督の長谷川和彦氏がコッポラ監督にインタビューしていて、この映画のテーマは何かと質問したら、コッポラは「撮っていて途中で分からなくなった」と答えたとのこと。完成作に寄せた序文でもコッポラは、「撮影の間に映画が徐々にそれ自体で一人歩きを始めた」としていて、映画製作のプロセスをウィラード大尉が奥深いジャングルの河を上って行く旅に重ね合わせています。

地獄の黙示録s.jpg 簡単に言ってしまえば戦争の狂気を描いた映画ということになり、ゆえに「地獄の黙示録 ロ.jpg反戦映画」ということになるのかもしれませんが、多くの戦争映画がそうであるように、同時に戦争と人間の親和性を描いた映画でもあるように思います。特にこの映画は、ロバート・デュヴァル演じるサーフィンをするために敵方の前哨基地を襲撃するビル・キルゴア中佐などに、その部分がよく表象されているように思います。もちろんマーロン・ブランド演じるカーツ大佐にも狂気と戦争への親和性は見られ、むしろカーツ大佐は戦争に過剰に適地獄の黙示録07 s.jpg応してしまい、王国を築いて自分でも壊せなくなってしまったため、マーティン・シーン演じるウィラード大尉に「殺される」運命を選んだのかもしれません。立花 隆 2.jpg評論家の立花隆氏は、ギリシャ神話を隠喩的に織り込んでいると述べていますが、ウィラード大尉によるカーツ大佐殺害は、「父親殺し」の暗喩ととれなくもないでしょう。

村上春樹 09.jpg 村上春樹氏が評論『同時代としてのアメリカ』(単行本化されていない)の中でこの映画について、「いわば巨大なプライヴェート・フィルムであるというのが僕の評価である。大がかりで、おそろしくこみいった映画ではあるが、よく眺めてみればそのレンジは極めて狭く、ソリッドである。極言するなら、この70ミリ超大作映画は、学生が何人か集まってシナリオを練り、素人の役者を使って低予算で作りあげた16ミリ映画と根本的には何ひとつ変りないように思えるのだ」と述べていて、コッポラ監督の談話などから映画製作自体が何か自分探しみたいになっていることが窺えることからも、村上氏の指摘はいいところを突いているように思いました。

 この映画は脚本の段階から紆余曲折あり、原作はジョゼフ・コンラッド(1857‐1924)の『闇の奥』ですが、内容はベトナム戦争に置き換えられ、最初にストーリーを書き下ろしたのは、「ビッグ・ウェンズデイ」('78年)のジョン・ミリアス監督で、その第一稿をコッポラ監督が大幅に書き換えています。また、ウィラード大尉は当初ハーヴェイ・カイテルが演じる予定だったのが、契約のトラブルで降板し、ハリソン・フォードの起用地獄の黙示録 ハリソン・フォード.JPG地獄の黙示録 ハリソン・フォード2.jpgも検討されましたが、「スター・ウォーズ」('77年)の撮影があって無理となり、最終的にマーティン・シーンに落ち着いています。ハリソン・フォードは、撮影の見学に来たときに、映画の序盤部分に端役として出演しており、その時の役名は「ルーカス大佐」となっています。

Jigoku no mokushiroku (1979) フレデリック・フォレスト(哨戒艇乗組員シェフ)全米映画批評家協会賞助演男優賞
Jigoku no mokushiroku (1979).jpgフレデリック・フォレスト.jpg「地獄の黙示録」●原題:APOCALYPSE NOW●制作年:1979年●制作国:アメリカ●監督・製作:フランシス・フォード・コッポラ●脚本:ジョン・ミリアス/フランシス・フォード・コッポラ/マイケル・ハー(ナレーション)●撮影:ヴィットリオ・ストラーロ●音楽:カーマイン・コッポラ/フランシス・フォード・コッポラ●原作:ジョゼフ・コンラッド「地獄の黙示録 デニス・ホッパー_11.jpg闇の奥」●時間:153分(劇場公開版)/202分(特別完全版)●出演:マーロン・ブランド/ロバート・デュヴァル/マーティン・シーン/フレデリック・フォレスト/サム・ボトムズ/ローレンス・フィッシュバーン/アルバート・ホール/ハリソン・フォード/G・D・スプラドリン/デニス・ホッパー/クリスチャン・マルカン/オーロール・クレマン/ジェリー・ジーズマー/トム・メイソン/シンシア・ウッド/コリーン・キャンプ/ジェリー・ロス/ハーブ・ライス/ロン・マックイーン/スコット・グレン/ラリー・フィッシュバーン(=ローレンス・フィッシュバーン)●日本公開:1980/02●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:銀座・テアトル東京(80-05-07)●2回目:高田馬場・早稲田松竹(17-05-07)(評価★★★★)●併映(2回目):「イージー・ライダー」(デニス・ホッパー)

テアトル東京 1955 七年目の浮気3.jpgテアトル東京2.jpg

テアトル東京内.jpg

テアトル東京
1955(昭和30)年11月1日オープン (杮落とし上映:「七年目の浮気」)
1981(昭和56)年10月31日閉館 (最終上映」マイケル・チミノ監督「天国の門」)

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「○外国映画 【制作年順】」のインデックッスへ ○ノーベル文学賞受賞者(ボブ・ディラン)

本番直前まで本当に歌うかどうかわからなかったボブ・ディラン。

Banguradeshu no konsâto (1972).jpgバングラデシュ・コンサート1971 .jpg  バングラデシュ・コンサート ボブ・ディラン 2.jpg
ジョージ・ハリスン & フレンズ コンサート・フォー・バングラデシュ デラックス・パッケージ (初回限定版) [DVD]」 ジョージ・ハリスン/ボブ・ディラン in バングラデシュ・コンサート
Banguradeshu no konsâto (1972)
バングラデシュ・コンサートド.jpg 1971年8月1日、ニューヨーク・マディソン・スクェア・ガーデンで行なわれたジョージ・ハリスン主催のチャリティ・コンサート「バングラデシュ難民救済コンサート」のドキュメンタリー映画で、同じくドキュメンタリー映画になったウッドストック・フェスティバル('69年)やワイト島のフェスティバル(第3回、'70年)と並んで、当時のアメリカの代表的な大規模ロック・フェスティバルとして今も語りつがれているコンサートです。'16年元旦の朝日新聞の「世界は歌う」という特集で、DJのピーター・バラカン氏とクリス・ペプラー氏がそれぞれ選んだ5曲というのが出ていましたが、クリス・ペプラー氏はその5曲の中にこのバングラデシュのコンサートを選んでいます(因み、クリス・ペプラー氏の選んだ5曲に中には、ボブ・ディランの「風に吹かれて」も入っている)。

バングラデシュ・コンサートH1.jpg 内戦や飢饉で幼い子どもらを含む多くの難民を生み出していたバングデシュの状況を救おうとしたコンサートであり、そうしたチャリティ・コンサートの先駆けであるとともにこのコンサートが特徴的であるのは、一応、ジョージ・ハリスンのシタールの師匠であり、コンサートのオープニングを務めたラヴィ・シャンカールなども主催者の一人とはされていますが、もともとは当時28歳のジョージ・ハリスン(1943-2001/享年58)たった一人の呼びかけが契機となっているということです(アーティストに直接電話をかけまくった)。リンゴ・スター、エリック・クラプトン、レオン・ラッセル、クラウス・ヴォアマン、バドフィンガー、ボブ・ディランといった大物アーティストやグループが登場しますが、演奏形式がジョージ・ハリスンを中心としてこのコンサートのために結成されたスペシャル・グループがライブを行うという形式をとっていることも先駆的でした。

バングラデシュ・コンサート クラプトン.jpg 後に知ったのですが、このコンサートには事前に二人のアーティストについて大きな不安要素があったそうです。一人はエリック・クラプトンで、世界最高のギタリストと言われたエリック・クラプトンですが、当時はドラッグ濫用からくる体調不良で活動休止状態にあり、ジョージ・ハリスンは、ドラッグでダウンしていたエリック・クラプトンを復帰させるためにもこのコンサートに誘ったと言われていますが、ジョージ・ハリスンの説得で参加を承諾したものの、本番前日のリハーサルにも来なかったとのこと。但し、本番では何とか演奏してくれて、ジョージ・ハリスンとしっかりセッションしています(ジョージ・ハリスンと比べるとやや覇気がないようにも見えるが、ジョージ・ハリスンがそれを一生懸命カバーしているのが窺える)。

バングラデシュ・コンサート ボブ・ディラン1.jpg もう一人は、ワイト島のフェスティバル(第2回、'69年)以来2年間ライブで歌っていなかったボブ・ディランで(ステージ恐怖症になっているとも噂され、アルバム制作も前年から中断していた)、ボブ・ディランをコンサートの精神的支柱に据えたかったジョージ・ハリソンが何とかコンサートへの彼の参加を取り付けたものの、ジョージ・ハリソンが歌って欲しいと頼んだ「バングラデシュ・コンサート ボブ・ディラン2.jpg風に吹かれて」は歌わないと言っていたとのこと。彼の性格から、コンサートに本当に参加するかどうかも不確定要素があり、前日のリーサルには来たものの、「ここば僕には似合わない、こんな場ではやらない」と辞退を仄めかし、ジョージ・ハリソンは念のため代役を用意しなければならなかったということです。当日、出番近くなって舞台の袖にいた彼を認めたジョージ・ハリソンが、すかさず「僕ら、そしてみんなの友達を紹介しよう。ミスター・ボブ・ディラン!」と言ってステージに上げ、彼は歌わないと言っていた「風に吹かれて」も歌い、ジョージ・ハリソンやレオン・ラッセルらとのセッションもこなして観客から大喝采を浴びることになります。

 このコンサートで、ジョージ・ハリスンが元ビートルズの仲間リンゴ・スターと舞台で共演するのは、'66年にビートルズが解散して以来はじめてのこと。同じく声掛けしたポール・マッカートニーとジョン・レノン(1940-1980/厚年40)は参加しておらず、ポール・マッカートニーはビートルズが再結成されたと捉われるのを嫌がったとされ、ジョン・レノンはオノ・ヨーコがレノンをステージには上げないと言ったとか(何れも真偽のほどは不明)。一方、このコンサートに参加したボブ・ディランは、'16年10月にノーベル文学賞ボブ・ディラン ノーベル賞.jpg授与が決まりましたが、受賞式には来るかこないかが話題になり(受賞を受け入れるかどうかさえ2週間返事が無かった)、結局、本人は来ませんでした。

BOB-DYLAN-201-facebook.jpg ボブ・ディランはグラミー賞やアカデミー賞をはじめ数々の賞を受賞し、2008年にはピューリッツァー賞特別賞を受賞、ローリングストーン誌の「最も偉大なアーティスト100」('10年選出)でビートルズに次いで第2位、「史上最も偉大なソングライター100人」('15年)で1位に選ばれていますが、ノーベル文学賞となると独特の選考基準があるようにも思います。ポピュラー・ミュージックだけでなくアメリカ文化ひいては世界の若者文化に与えた影響は大きいですが、彼がもしこのコンサートへの出演を辞退していたならば、ノーベル賞の受賞選考にまったく影響がなかったとは言い切れないようにも思います(本人はそもそも自分がノーベル文学賞の受賞対象となり得るとは思っていなかったようだが)。彼は、今月['17年4月]1日にツアー公演で訪れたストックホルムで、ようやっと同賞を選考したスウェーデンアカデミーからメダルと証書を受け取っています。

バングラデシュ・コンサートes.jpg「バングラデシュ・コンサート」●原題:THE CONCERT FOR BANGLADESH●制作年:1971年●制作国:アメリカ●監督:ソウル・スウィマー●製作:アレン・クライン/ジョージ・ハリソン●撮影:ソウル・ネグリン/リチャード・E・ブルックス/フレッバングラデシュ・コンサート ボブ・ディラン3.jpgド・ホフマン/トオル田中●時間:103分●出演:ジョージ・ハリスン/リンゴ・スター/エリック・クラプトン/ボブ・ディラン/ビリー・プレストン/レオン・ラッセル/ラビ・シャンカール/アリ・アクバル・カーン/アラ・ラッカ/カマラ・チャクラバーティ/ジェシ・エド・デイビス/バッドフィンガー/ジム・ケルトナー/ドン・プレストン/カール・レイドル/クラウス・フォアマン/ジム・ホーン/チャック・フィンレドリー●日本公開:1972/11●配給:フォックス●最初に観た場所:飯田橋ギンレイホール(78-01-16)(評価★★★★)●併映:「ウッドストック 愛と平和と音楽の三日間」(マイケル・ウォドレー)

ジョージ・ハリスン/ボブ・ディラン in バングラデシュ・コンサート

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ニューシネマの中ではラストに救いがある「ゲッタウェイ」。メディアミックスの先駆「ある愛の詩」。

ゲッタウェイ 1972 .jpgゲッタウェイ dvd.jpg ゲッタウェイ05.jpg  ある愛の詩 1970.jpg
ゲッタウェイ デジタル・リマスター版 [DVD]」 「【映画パンフ】ある愛の詩 アーサー・ヒラー アリ・マッグロー リバイバル判 1976年

ゲッタウェイs.jpg 刑務所を裏取引で出所したドク・マッコイ(スティーブ・マックイーン)は、引き換えに、取引相手のテキサスの政界実力者ベニヨン(ベン・ジョンソン)の要求で、妻キャロル(アリ・マッグロー)と銀行強ゲッタウェイ01.jpg盗に手を染める。ベニヨンからはルディ(アル・レッティエリ)とジャクソン(ボー・ホプキンズ)が助手兼ドクの監視役として送り込まれ、綿密な計画の末に強盗は何とか成功するが、ジャクソンが銀行の守衛を射殺してしまう。ルディは目撃者に面が割れたジャクソンを車内で射殺し、今度はドクに銃を向けるが、ドクの銃が先に火を吹く。ドクは、銀行から奪った金を約束通りベニヨンの元に運び込ぶが、キャロルの様子がおかしく、実はベニヨンとキャロルは男女の関係にあり、当初はドクゲッタウェイ02.jpgを裏切って消す考えだったのだ。しかし、キャロルはドクではなくベニヨンを射殺する。ドクは逃走中に車を止め、嫉妬と怒りからキャロルを殴り倒す。一方のルディは、防弾チョッキゲッタウェイ03.jpgのお蔭で死んでおらず、獣医の家に押し入り、ドクに撃たれた肩の治療をしていたが、ベニヨンの死を知り、ドクの追跡を開始する。ドクは町で自分が指名手配になっているのを知ってショットガンをゲッタウェイ04.jpg買い求め、警察に追われながらも逃げて、エルパソのホテルに辿り着く。だが、そこへはルディが先回りしていて、ベニヨンの手下も向かっていた。ルディがホテルに現れ、ドグが彼を殴り倒した時に今度はベニヨンの手下が現れて大銃撃戦が始まるが、ドクのショットガンで全員が倒され、ルディも射殺される。ドクはホテルからメキシコ人の老人のトラックに乗り込み、国境を越えたところで老人からトラックを買取り、夫婦はメキシコ側へ消えていく―。

 サム・ペキンパー監督の1972年作品で、原作は『鬼警部アイアンサイド』などで知られるジム・トンプスン、脚本は、後に「48時間」「ストリート・オブ・ファイアー」を監督するウォルター・ヒルが手掛けています。追手からの逃避行を続けるうちに、主人公2人の間に夫婦愛が甦ってきて、激しく血生臭い銃撃戦を乗り越えて2人は新たな世界へ逃げ延びる―というニューシネマの中では珍しく(?)ラストに救いがあるタイプです。アーサー・ペン監督の「俺たちに明日はない」('67年)にしても、銀行強盗の末路は警官から一斉射撃を浴びての"蜂の巣状態"でしたから。

ゲッタウェイ  .jpgゲッタウェイ 淀川.jpg しかしながら故・淀川長治は、必ずしも2人の未来は明るいと示唆されているわけではないと言っており、これは、原作にこの続きがあって、バッドエンディンが待ち受けていることを指していたのでしょうか。但し、原作における主人公のキャラクターは極悪人に近く、取引上やむなく銀行強盗をする映画の主人公とはかなり異なるようです。個人的には、この映画のラストには、やはり何となくほっとさせられます。

 一方、この映画の方には、もう1つのエンディングがあったこともよく知られており、最後は2人が警官に撃たれて「俺たちに明日はない」のボニーとクライドのように"蜂の巣状態"になるものだったそうです(実際に撮影された?)。これは、サム・ペキンパー監督が「俺たちに明日はない」に非常に感化されていたということもあったようですが、スティーブ・マックイーンが反対したようです。

 元々この映画は、ピーター・ボグダノビッチ監督、シビル・シェパード主演、原作者のジム・トンプスン脚本で進められていたのが、スティーブ・マックイーンが監督も主演女優も脚本家も変えてしまったみたいで、マックイーンがこうも口を挟む背景には、彼が実質的な製作者になっていったことがあるようです。音楽は、ペキンパー作品の常連ジェリー・フィールディングが担当することになったのが、これまたマックィーンの主張でクインシー・ジョーンズのジャズ音楽に差し替えられています。

 このように、様々な場面でサム・ペキンパー監督とも意見が対立し、マックイーンが押し切った部分もあれば譲歩した部分もあるようです。ペキンパーは破滅的な結末を望んだのかと思いましたが、実はこの映画を風刺のきいたコメディにしたかったらしいとも言われています。そうしたこともあってか、ペキンパー本人はこの作品に不満を持っていたとされていますが、結果として彼の作品の中では最大のヒット作となりました。

ゲッタウェイ  マックグロー.jpgある愛の詩05.jpg 妻役のアリ・マックグローは銃を扱ったことがなく、マックイーンが銃の撃ち方を教えて銃に慣れさせたりもしたそうですアリ・マックグロー 2.jpgが、「ある愛の詩」('70年)の白血病で死んでいく女子大生よりは、こちらの方が"演技開眼"している印象です。でも、この作品での共演をきっかけにマックイーンと結婚し、この後2本だけ映画に出て実質的に映画界を引退してしまいました。6年後に離婚してしまったことを考えると惜しい気もしますが、2006年に68歳で Festen(映画「セレブレーション」の舞台化)でブロードウェイ・デビューを果たしています。

ファラ・フォーセット オニール.jpgある愛の詩02.jpg 一方、「ある愛の詩」で共演したライアン・オニールは、2001年に慢性白血病に冒されていることが判明し、また、パートナーであったファラ・フォーセットのガンによる死(2009年6月25日、マイケル・ジャクソンと同じ日に亡くなった)を看取るとともに、自身も前立腺がんであることが公表(2012年)されていて、こちらはかなりタイヘンそうだなあと。

love story eric.jpg 「ある愛の詩」は、エリック・シーガルによる同名の小説が原作ですが、未完の小説を原作として映画の製作が始まり、先に映画が完成し、映画の脚本を基に小説が執筆された部分もあるそうです。先に小説が刊行され、その数週間後に映画が公開されており、今で言う"メディアミックス"のはしりでした。ペーパーバックを読みましたが、初めて英語で読んだ小説の割には読み易かったのは、ある種ノベライゼーションに近かったせいもあるかもしれないし、ストーリーが古典的で結末が見えているせいもあったかもしれません。この映画のヒットの後、難病モノの映画が幾つか続いた記憶があります(アメリカ人は白血病モノが好き?)。

Love Story - Originally sung by Andy Williams

大林宣彦2.jpg この映画がアメリカでヒットしたことについて、映画監督の大林宣彦氏はアメリカで封切り時にこの作品を現地で観ていて、ベトナム戦争で疲弊したアメリカが、本音ではこのような純愛ドラマを求めている時代感覚を肌で感じていたとのこと。但し、この映画の作られた1970年と言えばまだベトナム戦争の最中ですが、映画内にその影は一切見えません(最初観た時は"ノンポリ"恋愛映画だと思ったが、今思えば意図的にそうしていたのか)。日本でもヒットしたのは、古典的なストーリーに加えて、フランシス・レイの甘い音楽の効果もあったかと思います。

love story Tommy Lee Jones.jpg 因みに、主人公のオリバー・バレット4世(ライアン・オニール)のルームメイト役で無名時代のトミー・リー・ジョーンズ(当時24歳)が出演していますが、その後3年間は映画の仕事がなく、彼の無名時代は長く続き、オリバー・ストーン監督の「JFK」('91年)出演でアカデミー助演男優賞にノミネートされてからようやっと注目されるようになり、ハリソン・フォード主演の「逃亡者」('93年)でアカデミー助演男優賞を獲得しています。オリバーやそのルームメイトが通うのは名門ハーバード大学ですが、トミー・リー・ジョーンズは実人生においてもハーバード大学の出身で、当時のルームメイトに後の副大統領となるアル・ゴアがいたとのことです。

The Getaway (1972) .jpgゲッタウェイ 09.jpg「ゲッタウェイ」●原題:THE GETAWAY●制作年:1972年●制作国:アメリカ●監督:サム・ペキンパー●製作:デヴィッド・フォスター/ミッチェル・ブロウアー●脚本:ウォルター・ヒル●撮影:ルシアン・バラード●音楽:デイヴ・グルーシン●原作:ジム・トンプスン●時間:122分●出演:スティーブ・マックィーン/アリ・マックグロー/ベン・ジョンソン/アル・レッティエリン/スリム・ピケンズ/リチャード・ブライト/ジャック・ダドスン/ボー・ホプキンス/ダブ・テイラー●日本公開:1973/03●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:高田馬場パール坐(77-12-10)●2回目:自由が丘・武蔵野推理(84-09-23)(評価★★★★)●併映(1回目):「パピヨン」(フランクリン・J・シャフナー)●併映(2回目):「48時間」(ウォルター・ヒル)

ある愛の詩 01.jpgある愛の詩01.jpg「ある愛の詩」●原題:LOVE STORY●制作年:1970年●制作国:アメリカ●監督:アーサー・ヒラー●製作:ハワード・ミンスキー●脚本:エリック・シーガル●撮影:リチャード・クラディナ●音楽:フランシス・レイ●原作:エリック・シーガル●時間:99分●出演:ライアン・オニール/アリ・マックグロー/ジョン・マーレー/レイ・ミランド/キャサリン・バルフォー/シドニー・ウォーカー/ロバート・モディカ/ラッセル・ナイプ/トミー・リー・ジョーンズ ●日本公開:1971/03●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:三鷹オスカー(80-11-03)(評価★★★)●併映:「おもいでの夏」(ロバート・マリガン)/「フォロー・ミー」(キャロル・リード)
ある愛の詩 [ラリアン・オニール/アリ・マッグロー] [レンタル落ち]

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細部に"?"はあるが、もっと注目されていい"隠れた傑作"。

コンドル 1975.jpgコンドル dvd.jpg コンドル 1974 bluray.jpg コンドル輸入盤 blu-ray.jpeg
コンドル [DVD]」「コンドル [Blu-ray]」/輸入盤「THREE DAYS OF THE CONDOR
コンドル 3 DAYS OF THE CONDOR [レンタル落ち]
コンドル dvd2.jpgコンドル 01.jpg ニューヨークにあるアメリカ文学史協会は、CIAの外郭団体として世界各国の雑誌書籍の情報分析を行っている。協会職員は学者肌のCIA分析官で構成されていた。ある日の白昼、アメリカ文学史協会は短機関銃で武装した男3人により襲撃さコンドル 1975   .jpgれ、協会職員は次々と射殺される。たまたま裏口から外出していたために命拾いをしたコードネーム"コンドル"ことジョセフ・ターナー(ロバート・レッドフォード)は、CIA本部に緊急連絡し保護を求める。CIA次官コンドル 8.jpgのヒギンズ(クリフ・ロバートソン)からの指示で第17課長のウィクスという男に落ち合うことになったが、コンドル sido.jpgそのウィクスに銃撃を受ける。辛くも逃走したが、孤立状態となったコンドルは、偶然見かけた女性写真家キャサリン・ヘイル(フェイ・ダナウェイ)を拉致同然に巻き込み、独力で真相を暴こうとする。CIAの暗部に近づこうとするコンドルに謎の殺し屋ジュベール(マックス・フォン・シドー)が忍び寄る―。(「Wikipedia」より)

 1975年製作のシドニー・ポラック(1934-2008)監督作であり、同監督がロバート・レッドフォードを主役に据えて映画を撮ったのは「大いなる勇者」('72年)、「追憶」('73年)以来3度目で、この作品以降も、「出逢い」('79年)、「愛と哀しみの果て」('85年)と続くので、相性が良かったのでしょうか。レッドフォードの共演女優は「追憶」がバーブラ・ストライサンド、この「コンドル」がフェイ・ダナウェイ、「出逢い」がジェーン・フォンダ、「愛と哀しみの果て」がメリル・ストリープだから、錚々たる顔ぶれです。

Three Days of the Condor (1975).jpgコンドルの六日間.jpg この「コンドル」の原作はジェイムズ・グレイディの『コンドルの六日間(Six Days of the Condor)』('75年/新潮社)で、映画の原題は"Three Days of the Condor"(3日分圧縮した?)。原作は米国ではベストセラーとなったポリティカル・サスペンスノベルで、日本での映画公開とほぼ同時期に訳出されていますが、個人的には未読です。小説での各人物像と映画で描かれた人物像はかなり異なり、各人の結末も原作と映画で違うようですが、原作を読んでいないためか却ってすんなり楽しめました。
コンドルの六日間 (1975年)
Three Days of the Condor (1975)

コンドル 1975 s.jpg ニューヨークの地味なビルに入っている表向きは「アメリカ文学史協会」という地味な組織が実はCIAの下部組織で、職員は世界中の推理小説やコミックスを読み漁り、そこに隠された敵対勢力の謀略、暗号の意味を解読する仕事を日夜行っているというのが面白いです(今日であればそうした仕事はコンピュータやAIが肩代わりして、フィクションであっても成り立たないような職業のようにも思えるが、そのレトロ感がいい)。

コンドル 9.jpg ある日突然仕事仲間を全員を殺害された"コンドル"は、何が何だか分からないまま得体の知れない巨大な敵から逃れながら、孤独な闘いを強いられますが、その際に、CIA職員であるとは言え、凄腕の諜報部員でも何でもない単なる本の虫に過ぎない彼が、仕事で培った本から得た知識や戦略を駆使して自らを守り、逆襲に出るというわけです。

コンドル 03.jpgコンドルad.jpeg ネタバレにまりますが、結局CIAの中に中東に戦争を仕掛けたがっている派閥、いわば〈もう1つのCIA〉があって、その連中が黒幕です(湾岸戦争やイラク戦争のことを想うと、ある意味"先駆的"な設定とも言え、こうした映画を作るところがいい意味でアメリカ的でもある)。最後"コンドル"は絶体絶命の危機に陥りますが、そこには思わぬ展開が待っていました。

コンドル シド―.jpg 更にネタバレになりますが、マックス・フォン・シドー演じる殺し屋は、結局、〈もう1つのCIA〉と〈本来のCIA〉の両方から雇われたわけなのだなあと。そんなことあり得るかとも思ったりしましたが、敵の目を眩ますために理屈上はあり得るのかも。マックス・フォン・シドーが映画を通してずっと不気味だったのに、最後は急にいい人っぽい感じになって、このギャップが可笑しかったですが、殺し屋が今までターゲットとして狙っていた人間にいきなりスカウトの声掛けをするかなあ(これも原作通りなのか、それともこの辺りは映画でのある種"お遊び"なのか)。

コンドル 1975s.jpg もっと注目されていい"隠れた傑作"だとは思いますが、やや気になったのは、いくらダウンタウンの犯罪多発地域だとは言え、敵方が協会職員を全員殺害したのは、ちょっと乱暴と言うか、リスクがありすぎるように思いました(彼らにだって家族や友人はいるわけで、事件を完全に揉み消すのは何れの立場の側にとっても難しいのでは。強盗のせいにするにしても、押し入った先が「アメリカ文学史協会」では...)。

コンドル 02.jpg フェイ・ダナウェイは珍しく受身的な役回りで、マックス・フォン・シドーの方が記憶に残っていましたが、久しぶりに観直してみると演技達者であることには変わりありませんでした。但し、あくまでも主演はレッドフォードで、フェイ・ダナウェイはやはり一歩引いたポジショニングでした。先に挙げたシドニー・ポラック監督によるロバート・レッドフォードと女優たちの共演作で、主演女優の方がレッドフォードより前面に出ているのは、「追憶」のバーブラ・ストライサンドと「愛と哀しみの果て」のメリル・ストリープでしょうか。いかにもという感じもしますが、ジェーン・フォンダについてはシドニー・ポラック監督は別に彼女を主役に据えた「ひとりぼっちの青春」('69年/米)を撮っていて、これは傑作です。 

Sydney Pollack's 'Three Days of the Condor'
Sydney Pollack's 'Three Days of the Condor'.jpg「コンドル」●原題:THREE DAYS OF THE CONDOR●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:シドニー・ポラック●製作:スタンリー・シュナイダー●脚本:ロレンツォ・センプル・ジュニア/デヴィッド・レイフィール●撮影:オーウェン・ロイズマン●音楽:デイヴ・グルーシン●原作:ジェームズ・グラディ「コンドルの六日間」●時間:118分●出演:ロバート・レッドフォード/フェイ・ダナウェイ/クリフ・ロバートソン/マックス・フォン・シドー/マイケル・ケーン/アディソン・パウエル/ウォルター・マッギン/ジョン・ハウスマン/ティナ・チェン/ドン・マクヘンリー/ヘレン・ステンボーグ/ハンスフォード・ロウ/ジェス・オスナ/ハンク・ギャレット/カーリン・グリン●日本公開:1975/11●配給:東宝東和●最初に観た場所:池袋文芸坐(78-05-04)(評価★★★★)●併映「合衆国最後の日」(ロバート・アルドリッチ)

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細部は違うが大まかには原作通りか。俳優陣は好演しているがやや地味になった。

オデッサ・ファイル_1974.jpg The Odessa File (1974).jpg  オデッサ・ファイル (1974年) .jpg オデッサ・ファイル (角川文庫).jpg
映画チラシ/「オデッサ・ファイル [DVD]」『オデッサ・ファイル (1974年)』『オデッサ・ファイル (角川文庫)

オデッサ・ファイル図0.jpg 1963年11月22日、西独ハンブルグ。新聞記者あがりのルポライター、ペーター・ミラー(ジョン・ヴォイト)は母親(マリア・シェル)の家を訪ねた帰り道、カーラジオでケネディ大統領暗殺の臨時ニュースを聴く。その時一台の救急車が彼の車を追い越し、ミラーは反射的にその後を追う。事件は一老人のガス自殺だったが、翌日、知人の警部補から自殺した老人の日記を渡される。老人はドイツ系ユダヤ人で、日記はラトビアのリガにあったナチ収容所での地獄の生活を記録したものだった。老人は、リガ収容所長だったSS大尉ロシュマン(マクシミリアン・シェル)の非人道的な残虐さを呪い、復讐しようとしていたが果たさず、絶望のうちに自殺したのだ。ミラーは老人にオデッサ・ファイル図8.jpg代わってそのロシュマンを捜し出す決心をする。彼はまず、老人の仲間を捜し出し、"オデッサ"という、元ナチSS隊員で作った、ナチ狩りから逃れ身元を偽って社会にもぐり込んでいる元ナチSS隊員を法廷にかけさせないために様々な活動をしている秘密組織の存在を知る。数日後、ミラーが恋人のジギー(メアリー・タム)とXマスの買物のために地下鉄に乗ろうとしたとき、突然後から何者かに走ってくる電車に向かって突き落とされる。間一髪で命は助かるが、こうなるとミラーとしても意地があった。米資料センターでロシュマンの資料を発見したミラーは、帰りに3人組に捕まる。彼らは元SS隊員に復讐することを目的としたグループで、ミラーが"オデッサ"を追っているのを知り、彼に協力しようというオデッサ・ファイル図1.jpgのだ。ミラーを"オデッサ"に潜入させる工作が始まる。元ナチ隊員で病死した男コルブの出身証明書を盗み、彼に化けて元SS軍曹で警察に追われているという設定で"オデッサ"に接近、下級隊員の紹介で幹部に会うことになる。ミラーはファイルを盗み出し、ロシュマンの足跡を掴むことが出来た。ロシュマンを尾行し、彼の屋敷に潜入して彼と対峙する―。

 ロナルド・ニーム(1911-2010/享年99)監督が「ポセイドン・アドベンチャー」('72年/米)の次に監督した作品で、原作は英国の作家フレデリック・フォーサイスの1971年発表の彼の出世作『ジャッカルの日(The Day of the Jackal)』('73年・角川書店)に続く1972年オデッサ・ファイル図3.jpg発表の第2作『オデッサ・ファイル(The Odessa File)』('74年・角川書店)。1974年発表の『戦争の犬たち(The Dogs of War)』('75年・角川書店)と併せて初期3部作とされていて、『ジャッカルの日』はフレッド・ジンネマン監督によって映画化され('73年/米)、「戦争の犬たち』もジョン・アーヴィン監督によって映画化されていますが('80年/米)、共にアメリカ映画で、この「オデッサ・ファイル」だけ、製作国はイギリスと西ドイツです。

 映画「ジャッカルの日」は、原作の面白さに加え、"ジャッカル"を演じたエドワード・フォックスの好演もあって楽しめましたが(淀川長治がある本で、映画史上の悪役のベストに「ジャッカルの日」の"ジャッカル"を選んでいる)、一方、「戦争の犬たち」の方は、せっかくの原作をラストを勝手に変えてしまって、クリストファー・ウォオデッサ・ファイル図4.jpgーケンが演じた主人公がなぜ傭兵になったのか分からないまま終わってしまっていました。この「オデッサ・ファイル」でペーター・ミラーを演じたジョン・ボイドはどうかというと、原作の主人公(原作ではミューラー)のイメージと違っていたかもしれませんが、ジョン・ボイドが当時まだ若いながらも演技達者なのと、主人公が相手方に潜入してからオデッサ・ファイル08.jpgの危機の脱し方など部分的には原作を改変しているものの、大まかには原作に沿っていたため、個人的には楽しめました(原作の主人公の愛車がジャガーであるのに映画ではベンツになっていた一方、オデッサの殺し屋のクルマがジャガーだった。この辺りは意図的に変えている?)。評価として、「ジャッカルの日」「オデッサ・ファイル」「戦争の犬たち」の順で、やはり監督の知名度順になるのでしょうか)。

オデッサ・ファイル図5.jpg 「ジャッカルの日」の主人公はプロのスナイパーであり、「戦争の犬たち」の主人公はプロの傭兵、それに対してこの「オデッサ・ファイル」の主人公だけがある意味アマチュアであり、素人が元SS軍曹に化けて"オデッサ"に潜入することが出来るのかというリアリティの問題がありますが、"オデッサ"幹部将校が主人公の身許審査のためSSについて矢継ぎ早にした質問で、「収容所の真中に何が見えたか?」との問いに、答えに詰まって「空が見えました」と答えてしまい、将校の眼が鋭く光るといった場面など、逆に旨い具合に緊張感を生む効果にも繋がっていたかも。なぜジャーナリストとは言え、一市民に過ぎない主人公が元SS大尉ロシュマンにこだわるのか、作品の鍵となるその秘密の明かされ方は原作と同じで、但し、原作を読んでいると、映画の方はややあっけなくて、ちょっともの足りなかったでしょうか。

オデッサ・ファイル図7.jpg ラストで主人公に追い詰められて、身勝手な理論に基づく演説をぶつロシュマンを演じたマクシミリアン・シェル(1930-2014)も好演で、主人公の母親役のマリア・シェル(1926-2005)オデッサ・ファイル図6.jpgは彼の実姉になります(「居酒屋」('56年/仏)での彼女の演技は良かった)。主人公の恋人を演じたメアリー・タムは、この作品ぐらいしか代表作がありませんが美人で、演技もまあまあ。全体にちょっと地味な感じになったけれども、原作の良さと俳優陣の好演で、一応"及第点"の映画になっているように思いました。

オデッサ・ファイル09.jpg 因みに、マクシミリアン・シェルが演じたエドゥアルト・ロシュマンは実在の人物で、リガにあった強制収容所の歴代所長の一人で、"リガの屠殺人"と呼ばれ、1977年7月、アルゼンチン警察に逮捕されるも、4日後に国外退去を条件に釈放され、同年8月、パラグアイで心臓発作による死亡が確認されています(この作品の原作をフォーサイスが書いていた時はまだ逃亡・潜伏中だったということか)。

オデッサ・ファイル図9.jpg「オデッサ・ファイル」●原題:THE ODESSA FILE●制作年:1974年●制作国:イギリス・西ドイツ●監督:ロナルド・ニーム●製作:ジョン・ウルフ●脚本:ケネス・ロス/ジョージ・マークスタイン●撮影:オズワルド・モリス●音楽:アンドルー・ロイド・ウェバー●原作:フレデリック・フォーサイス●時間:130分●出演:ジョン・ヴォイト/マクシミリアン・シェル/マリア・シェル/メアリー・タム/デレク・ジャコビ/ハンネス・メッセマー/シュミュエル・ロデンスキ●日本公開:1975/03●配給:コロムビア映画●最初に観た場所:新宿ローヤル(82-12-08)(評価★★★☆)

《読書MEMO》
●個人的評価
【原作】
『ジャッカルの日』............★★★★
『オデッサ・ファイル』......★★★★
『戦争の犬たち』...............★★★★

【映画】
「ジャッカルの日」............★★★★
「オデッサ・ファイル」......★★★☆
「戦争の犬たち」...............★★★

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ブニュエルのコメディ(?)。次から次へと出てくる「常識破壊」を楽しむ作品か。

自由の幻想 poster.jpg自由の幻想 pannhu .png 自由の幻想 dvd 2001.jpg 自由の幻想 dvd 2012_.jpg
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「自由の幻想」ポスター
「自由の幻想」パンフレット
ジャン=クロード・ブリアリ/モニカ・ビッティ
自由の幻想 01.jpg 1808年、スペイン・トレド。ナポレオン占領下の地で、抵抗するスペイン人が処刑される。「自由くたばれ!」という彼らの叫び。場面は変わり現代のパリ。少女がある紳士より絵葉書を貰い、母親のフーコー夫人(モニカ・ヴィッティ)にそれを見せる。「いやらしい!」という夫人と夫のフーコー氏(ジャン=クロード・ブリアリ)はやがて興奮していく。絵葉書は風景物である。翌朝、不眠症自由の幻想 12.jpgが昂じて寝室をダチョウが歩き回るのが見えてしまったフーコー氏は医者(アドルフォ・チェリ)の所へ。すると看護婦(ミレナ・ヴコティッチ)が休暇を願っている。1泊2日の休みに彼女は父の家へ向かうが、途中で宿屋に1泊。主人(ポール・フランクール)の自由の幻想 05.jpg案内でチェック・インしたが、伯母(エレーヌ・ペルドリエール)と甥の恋人達やマゾ男などが泊まっていた。看護婦は賭博好きの牧師らとトランプをしている。早朝、彼女は車で出発。同乗した教授(フランソワ・メーストル)は街で降り、憲兵隊本部で講義する。訓練、事故発生等で生徒は減って2人だけ。「習俗の変化」と題し、教授は友人の家での出来事を話す。食事はトイレで、トイレはテーブルの前の椅子=便器で、という話。講義を終え街へ出た2人の生徒=警官は、ルジャンドル(ジャン・ロシュフォール)をスピード違反で捕まえた。彼はガンで、1人娘が行方不明。早速彼は娘をつれて警察へ行き、この娘が誘拐されたと訴える。捜査は開始され、ライフル乱射魔が捕まり、死刑自由の幻想 03.jpg宣告後に釈放されヒーローになる。ルジャンドルは警視総監(ジュリアン・ベルトー)に娘が発見されたと聞かされ、妻(パスカル・オードレ)の連れてきた娘と再会。総監は墓地へ行き、死んだ妹(アドリアーナ・アスティ)の棺桶を開けようとして逮捕される。そして警察でもう1人の総監(ミシェル・ピッコリ)と対面、酒を飲む2人は、動物園へ入っていく。そして動物達にダブって、あの「自由くたばれ!」の叫びがこだましてくる―。

自由の幻想76l.jpg 1974年製作・公開のルイス・ブニュエル(1900-1983)監督作で、非日常的なブラック・ユーモアの世界をオムニバス形式で描いた作品です。それぞれのエピソードは緩やかに繋がっていますが(主役が)バトンタッチするかのように変わっていく)、全体として纏まった体系的ストーリーがるわけではありません。加えて、何れのエピソードにおいても設定が不条理であるため、ストーリーを書いたところで、「何のこっちゃ分からん」ということになるかも。例えば、娘が行方不明だというルジャンドルは、娘を連れて警察に行き、この娘が誘拐されたと説明する訳で、その訴えを訊いて警察が捜査に乗り出すというストーリー自体がナンセンスであり、完全に不条理です。

自由の幻想ド.jpg それでもブニュエル作品の中では分かり易い方の部類とされているようで、確かにシュールでブラックですが、現代ではそれほど刺激的でもなかったりする面もあります。ただ、最初に観た時は、風刺の意味を読み解こうとして、逆にあまり楽しめなかったかも。1度観に行ってよく分からなくて再度観に行ったりしましたが、強いて言えば、世間で言われる「常識」や「モラル」といったものも一つの囚われでに過ぎないことを示唆しているのでしょうか。ブニュエル自身が、この作品は「『アンダルシアの犬』('28年/仏)と同様、不条理に湧き出たものだ。意味など無い」と言ったとか。

自由の幻想5.jpg あまり深く考えず、ブニュエルのコメディ(ナンセンス・コメディ?)と割り切って、次から次へと出てくる「常識破壊」を、ジャン=クロード・ブリアリ、モニカ・ヴィッティ、ミシェル・ピコリらの真面目くさった演技と、ピエール・ギュフロワ(1926-2010)の美術的映像美とともに楽しめばいいのかも。「女は女である」('61年/伊・仏)のジャン=クロード・ブリアリと「太陽はひとりぼっち」('62年/伊・仏)のモニカ・ヴィッティが夫婦役で、風景絵葉書を見て興奮している図なんて、ブニュエルの映画でしか観ることが出来ないと思います。

自由の幻想 bunyueru.jpg「自由の幻想」●原題:LE FANTOME DE LA LIBERTE●制作年:1974年●制作国:フランス●監督:ルイス・ブニュエル●脚本:ルイス・ブニュエル/ジャン=クロード・カリエール●製作:セルジュ・シルベルマン●撮影:エドモン・リシャール●時間:104分●出演:ジャン=クロード・ブリアリ/モニカ・ビッティ/ミシェル・ピコリ/ジャン・ロシュフォール/パスカル・オードレ/ポール・フランクール/アドリアーナ・アスティ/ベルナール・ベルレー/アドルフォ・チェリ●日本公開:1977/11●配給:東宝東和●最初に観た場所:池袋文芸坐(78-10-28)●2回目:大塚名画座(78-11-07)(評価★★★☆)●併映(1回目):「サテリコン」(フェデリコ・フェリーニ)●併映(2回目):「最後の晩餐」(マルコ・フェレーリ)/「糧なき土地」(ルイス・ブニュエル)

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母娘の壮絶な確執を描く(観ていてキツイぐらい)。牧師の無力ぶりが「冬の光」とダブる。

秋のソナタ 没後30年.jpg秋のソナタ 1978 dvd.jpg 秋のソナタ dvd1L.jpg 秋のソナタ ベルイマン .jpg
秋のソナタ [DVD]」「秋のソナタ [DVD]
イングリッド・バーグマン没後30周年記念上映ポスター(2012年/ユーロスペース) 初公開時ポスター(1981年/岩波ホール)
リヴ・ウルマン/イングリッド・バーグマン
秋のソナタ ベルイマン02.jpg ノルウェー北部の田園地方。湖畔の牧師館で静かに暮らす、ヴィクトル(ハルヴァール・ビョルク)とエヴァ(リヴ・ウルマン)夫妻。エヴァは7年も会わなかった母シャルロッテ(イングリッド・バーグマン)を、牧師館に招くことを思いつく。国際的なピアニストとして煌(きら)びやかな人生を送ってきた母が、つい最近長年連れ添った恋人を亡くしたことを、風の噂で聞いたばかりだった。シャルロッテは相変わらず若々しく華やいだ雰囲気で、自ら豪華な車を運転してやってきた。2人は抱擁を交わし、お互いの近況を話し合う。エヴァへの愛情を示していたシャルロッテだが、もうひとりの娘であり、脳性麻痺を患うヘレーナ(レナ・ニーマン)が一緒に暮らしていると聞き、一転して苛立ちをあらわにする。エヴァとシャルロッテは、お互いの感情が7年前といささかも変わっていないことに、既に気づいていた。夕食後、母の誘いに応じてショパンのプレリュードを弾くエヴァ。エヴァの弾き方を厳しく批評し、解釈を語って聞かせるシャルロッテの横顔を、エヴァは複雑な表情で見つめるのだった―。

秋のソナタ バーグマン.jpg 1978年公開のイングマール・ベルイマン(1918-2007/享年89)監督が異なった環境で生活をする母と娘の微妙な絆を描いた作品で、ハリウッドで成功したイングリッド・バーグマン(1915-1982/享年67)が久しぶりにスウェーデン語を話す映画となりました(スウェーデン映画であるが、ベルイマンが'76年に発生した自身の税金問題に嫌気がさして海外へ逃れていたため、ノルウェーで撮影された。従って、牧師館もルウェーに在ることになっている)。因みに、〈バーグマン〉は〈ベルイマン〉の英語読みであり、同姓のよしみでベルイマン作品にイングリッド・バーグマンが出ることになったとの話もありますが、元々イングリッド・バーグマンは芸術的作品への出演意欲が強かったのではないでしょうか(将来"傑作"と呼ばれるようになる作品に出ることにこだわる彼女に、ヒッチコックが「たかが映画じゃないか」と言ったという逸話もある)。

秋のソナタ ベルイマン 01.jpg しかも、共演の相手は、公私共にベルイマンのパートナーであったリヴ・ウルマンということで(「冬の光」('63年)のイングリット・チューリンもそうだったが、本当は美人女優なのに、わざと不美人のメイクにすることで長年の心理的鬱屈を表している)、敢えて手強い共演者と言うか非常に高いハードルに挑んだようにも思われます。実際、この2大女優が確執を抱えた母と娘として激しく遣り合う場面は、「共演」と言うより「競演」と言ってよく、この作品がイングリッド・バーグマンの映画としては最後の主演作品となるわけですが、ああ、この人、最期の最期まで女優だったのだなあと改めて思わされます(遺作は、イスラエルの女性首相ゴルダ・メイアを演じたTVドラマシリーズ「ゴルダと呼ばれた女」('82年)で、没後にエミー賞、ゴールデングローブ賞の各主演女優賞(ミニシリーズ/テレビ映画部門)を受賞している)。

Ingrid Bergman .jpgKatharine  Hepburn.jpg 因みに、イングリッド・バーグマンはこの「秋のソナタ」で、ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞、ニューヨーク映画批評家協会賞、全米映画批評家協会賞の各主演女優賞を受賞したほか、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞にもノミネートされています(アカデミー賞受賞は成らなかった。イングリッド・バーグマンはそれまでにアカデミー賞を主演女優賞2回、助演女優賞1回の3回受賞しており、これは主演女優賞を3回受賞していたキャサリン・ヘプバーン(1907-2003/享年96)と並んで歴代1位だったが、キャサリン・ヘプバーンが「黄昏」('81年)で4回目の主演女優賞を獲得したため、キャサリン・ヘプバーンに次ぐ歴代2位となった)。
Ingrid Bergman/Katharine Hepburn

秋のソナタ05.jpg 「秋のソナタ」は、演劇的な室内劇を主とした母娘の愛憎劇ですが、母に対する娘の心理的復讐劇であると見ることも可能で、それは、一歳のときに母に捨てられ、思春期までに脳性麻痺を発病し、それを悪化させたが故に療養所送りになった娘ヘレーナをエヴァが施設から牧師館に引き取り、手厚い看護を継続させていたところへ母のシャルロッテを'わざわざ'牧師館に招いた―という状況からも見ることが出来、事情を知らないまま牧師館を訪れ、エヴァによってヘレーナと対面させられた母シャルロッテ「不意打ちね」と呟きます。

秋のソナタ piano.jpg秋のソナタ ベルイマンes.jpg ここから、当初ぎこちないながらも再会を歓び合った二人の関係は、どんどん互いの過去を抉(えぐ)り合うようなものとなっていき、互いに激しい会話の遣り取りとなります。過去の回想シーンと現在のシーンが交互に現れる手法はテンポ良く、過去のシーンの静謐感が対比的に現在のシーンの重苦しさを増し、場面によっては観ていてキツイぐらいでした(母が娘にピアノを弾かせるシーンもキツイ。ベルイマンの彼と彼の父親との関係が投影されているのだろうか)。

秋のソナタ  09.jpg ラスト、結局とことんまで娘に打ちのめされた母親は牧師館を去り、列車の中で同乗してもらった彼女のマネージャーのポール(グンナール・ビョルンストランド。「冬の光」('63年)では主人公の牧師役だった)に「ヘレーナなんて死ねばいいのに」とあっけらかんと言い、一方エヴァは母親に言い過ぎたと詫びの言葉を手紙にしたため夫に出してくれるように頼みます。そこで夫が出てきてエンディングとなりますが、その時の構図が、映画の冒頭のシーンの構図と同じであり、そこで観客は、牧師である夫が、最初は妻に優しい言葉をかけていたりしたけれども、結局はこの壮絶な母娘関係の前では終始全く無力であったことに改めて気づかされます。この夫は、「冬の光」における牧師と、「無力」であるという意味では同じポジショニングであると思いました。

Höstsonaten (1978)
Höstsonaten (1978).jpg
「秋のソナタ」●原題:HOST SONATEN(英:AUTUMN SONATA)●制作年:1978年●制作国:スウェーデン●監督・脚本:イングマール・ベルイマン●撮影:スヴェン・ニクヴィスト●時間:92分●出早稲田松竹★.JPG演:イングリッド・バーグマン/リヴ・ウルマン/レナ・ニーマン秋のソナタ 早稲田松竹.jpg/ハルヴァール・ビョルク/エルランド・ヨセフソン/グンナール・ビヨルンストランド●日本公開:1981/10●配給:東宝東和●最初に観た場所:早稲田松竹(15-10-09)(評価:★★★★)●併映:「冬の光」(イングマール・ベルイマン) 早稲田松竹 1951年封切館としてオープン、1975年からいわゆる「名画座」に。2002年4月1日閉館、有志の手で2002年12月21日再建、2003年1月25日から本格的再開。

《読書MEMO》
フィンランド国立歌劇場による歌劇「秋のソナタ」(NHK BSプレミアム「プレミアムシアター」2018年7月8日(日)放映)
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'いい雰囲気'の中で撮影が行われたことを示唆する40周年記念の同窓会的イベント。

Fantomu obu Paradaisu (1974).jpgファントム・オブ・パラダイス dvds.jpgファントム・オブ・パラダイス [DVD.jpg
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Fantomu obu Paradaisu (1974)  
ファントム・オブ・パラダイス05s.jpg 容姿は冴えないが天才的才能をもつ無名の青年音楽家ウィンスロー・リーチ(ウィリアム・フィンレイ)は、懸命に自分の曲を売り込もうとしていた最中に、無名で駆け出しの女性歌手フェニックス(ジェシカ・ハーパー)の才能を見出し、共に将来を夢見る。しかし、大手レコード会社「デス・レコード」社長のスワン(ポール・ウィリアムズ)に曲を奪われ、美しい彼女は身体を奪われかけ、自身は無実の罪で投獄される。獄中でスワンが自分の作ファントム・オブ・パラダイスs.jpg品に醜悪なアレンジをして売り出そうとすることを知ったウィンスローは激怒し、脱獄してレコード会社に乱入するが、警官に追われた際に誤ってプレス機に頭を挟まれ顔と声が潰れてしまう。復讐のため、スワンが建設した杮落とし前の大劇場「パラダイス」に現れたウィンスローは、リハーサルで自分の曲を歌うバンド「ビーチ・バムズ」の舞台セットに爆弾をしかけてスワンを襲ファントム・オブ・パラダイス02.pngうが、スワンは恐れるどころか逆にウィンスローに、「パラダイス」のオープニングをウィンスローの曲で飾る契約を持ちかける。それが悪魔との契約とは知らず、フェニックスを大劇場のオープニングにと夢見てウィンスローは作曲を続けるが、スワンはそれを裏切り、オカマロックシンガーのビーフ(ゲリット・グレアム)を舞台に立たせた。完成したスコアと愛するフェニックスもスワンに奪われていて、怒りに燃えたウィンスローは怪人ファントムと化す―。

ファントム・オブ・パラダイス08s.jpg '74年公開のブライアン・デ・パルマ監督によるロックンロール・ミュージカルで、元々ブロードウェイなどでの舞台が無い映画オリジナルの作品ですが、最初はジム・シャーマン監督の「ロッキー・ホラー・ショー」('75年/英)と二本立てで観て、こちらの方ががミュージカル調の場面は少ないにも関わらファントム・オブ・パラダイス73.jpgずロック・オペラっぽく感じられました。「オペラ座の怪人」「ファウスト」「ノートルダム・ド・パリ」「ドリアン・グレイの肖像」などがモチーフとして織り込まれていて、更にヒッチコック映画のパロディなどもあったりして盛り沢山、ある意味トラジディ(悲劇)ですが、テンポよく話が進むのと、今観ると70年代カルチャーが横溢しているのが窺え、意外と悲壮感は感じられませんでした。

ファントム・オブ・パラダイス03.jpg 主人公のウィンスロー(ファントム)を演じたウィリアム・フィンレイは、デ・パルマ監督の前作「悪魔のシスター」('73年)での変態ドクター役に続けての起用、歌姫役のジェシカ・ハーパーは、この映画を観たダリオ・アルジェントによって「サスペリア」('77年)に抜擢されることになりますが、この映画で一番目立っているのはやはりスワンを演じたポール・ウィリアムズで、本職のシンガーソングライターで、カーペンターズの「愛のプレリュード」「雨の日と月曜日は」などの作詞も手掛けている人ルパン三世 ルパンVS複製人間 11.jpgポール・ウィリアムズ.jpgです(2010年から「米国作曲家作詞家出版者協会」の会長を務めている)。日本では、アニメ「ルパン三世」の劇場版第1作「ルパン三世~ルパンVS複製人間」('78年)に登場したクローン人間マモーは、本作のスワンがモデルになっていると言われていますが、本当のところはどうなのでしょうか。

 '14年に映画公開40周年を記念するパネルディスカッションがハリウッドで催されており、ブライアン・デ・パルマほか、ポール・ウィリアムズ(スワン役)、ジェシカ・ハーパー(フェニックス役)、ゲリット・グレアム(ビーフ役)らが登壇して活発な遣り取りがあり(ウィリアム・フィンレイは残念ながら'12年に71歳で亡くなっている)、詰めかけたファンからも喝采を浴びています。こうした同窓会的なイベントが実現するということは、この作品に幅広い年代でコアなファンがいることを示す一方、当時の撮影が非常に楽しい雰囲気の中で行われたことも示唆しているように思われます。また、そのことが、この作品がベースはトラジディ(悲劇)でありながら、何となく楽Phantom Of The Paradise 40th Anniversary Panel 7-30-14.jpgしめてしまうことにも繋がっているのかもしれないと思った次第です。タイトルからして、ストーリーの中心には「オペラ座の怪人」がきていると思いますが、その割にはシャンデリアの落下シーンなどが無いのが今思うとやや残念だったかも。70年代の雰囲気のノスタルジー効果とプラスマイナスして、最初に観た時の評価(星4つ)としました。
Phantom Of The Paradise 40th Anniversary Panel 7-30-14

ファントム・オブ・パラダイス title.jpg「ファントム・オブ・パラダイス」●原題:PHANTOM OF THE PARADICE●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ブライアン・デ・パルマ●製作:エドワード・R・プファントム・オブ・パラダイス09.jpgレスマン●撮影:ラリー・パイザー●音楽:ポール・ウィリアムズ/ジョージ・アリソン・ティプトン●92分●出演:ウィリアム・フィンレイ/ポール・ウィリアムズ/ジェシカ・ハーパー/ゲリット・グレアム/ジョージ・メモリ●日本公開:1975/05●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:五反田TOEIシネマ(83-02-06)(評価:★★★★)●併映:「ロッキー・ホラー・ショー」(ジム・シャーマン)

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パニック映画ブームの先駆け。CG全盛の今観ると、「実写」の"手作り"的な良さを感じる。

ポセイドン・アドベンチャー パンフ.jpgポセイドン・アドベンチャー dvd.jpg ポセイドン・アドベンチャー01.jpg
映画パンフレット 「ポセイドンアドベンチャー」 監督 ロナルド・ニーム 出演 ジーン・ハックマン アーネスト・ボーグーナイン」「ポセイドン・アドベンチャー [DVD]

ポセイドン・アドベンチャー 12.jpg 81,000トンの豪華客船「ポセイドン号」は1,400名の乗客を乗せてニューヨークを出港、ギリシャ行の航海に出たが、船長(レスリー・ニールセン)は、船の重心が高くバラスト(底荷)をしていないため、大波に襲われて転覆することを恐れていた。ポセイドン・アドベンチャー t.jpg船内ホールでは大晦日の年越しパーティーが開かれていたが、折しもクレタ島沖で海底地震が発生して高さ32mの巨大津波が船を襲い、船体に問題があった船はあっという間に転覆、ホールの船客らは、それまでのポセイドン・アドベンチャー H5.jpg上部が足下に、足下が上部にひっくり返って、躰ごと投げ出されて落下、壁に叩き落されるなどし、船内は阿鼻叫喚の地獄図となる。180度横転したホールには、この時点ではまだ相当数が生存しており、その内の1人のパーサーは、この場に留まることが最善で、救援隊が来るまでここで待機しようと訴える。しかし牧師のフランク・スコット(ジーン・ハックポセイドン・アドベンチャー7.jpgマン)は、留まっていれば海面下に置かれているホールはやがて浸水して全員死ぬので、ひとまず上に上がって「船底」の竜骨付近に行ってそこで救援隊を待つ方がよいと主張、ホールに居た船客も意見が分かれるが、牧師に従って上に登る決意をしたのは僅か8名だった。スコット牧師らは、大きなクリスマスツリーをよじ登って、上にいたボーイのエイカーズ(ロディ・マクドウォール)と合流、その時、大爆発がし鉄砲水が残りの大勢の船客を押し流すが、牧師にはどうすることも出来ない。牧師にポセイドン・アドベンチャーes.jpg従ったのは、ニューヨークの刑事マイク・ロゴ(アーネスト・ボーグナイン)と リンダ・ロゴ(ステラ・スティーヴンス)の夫婦、気ままな旅をしていたマニー・ローゼン(ジャック・アルバートソン)とベル・ローゼン(シェリー・ウィンタース)の中年夫婦、雑貨商ジェームズ・マーティン(レッド・バトンズ)、ホールで演奏していた楽団メンバーを全て失った歌手ノニー・パリー(キャロル・リンレー)、欧州へ遊びに行く予定だったスーザン・シェルビー(パメラ・スー・マーティン)とロビン・シェルビー(エリック・シーア)の姉弟の8人であり、スコット牧師、エイカーズと合わせて10人でエンジンルームを目指す―。

Poseidon Adobenchâ (1972).jpgポセイドン・アドベンチャーs.jpg 1969年に発表されたポール・ギャリコの小説を原作として1972年に映画化された作品で監督はロナルド・ニーム(1911-2010/享年99)、製作は後に同じパニック映画「タワーリングインフェルノ」('74年)を製作するアーウィン・アレンです。'72年公開作では「ゴッドファーザー」('72年)に次ぐ全米興行収入を上げ、日本でも、'73年の興行収入第1位となり、パニック映画ブームの先駆けとなった作品とされていますが、個人的にはテレビで観たと思います(記録を調べると、1976年10月11日TBS「月曜ロードショー」で放送されている)。
Poseidon Adobenchâ (1972)

ポセイドン・アドベンチャー8.jpg まず、豪華客船が転覆して、全てが上下ひっくり返るというのが、原作通りではあるものの、映像にしてみるとなかなか面白く、「パニック映画、こうあるべし」みたいな感じで、それでいて、1回使ったらもうよそでは使えないみたいなユニークさがあったのではないでしょうか(結局、続編を含め「ポセイドン」というタイトルをそのまま使用して、この後3度映画化された)。当時の製作費1,200万ドルは船のセット、転覆場面の撮影、1,135万リットルの水に大半が費されたとのことですが、大量の海水が勢いよく、或いはじわじわと浸水してくるシーンなども含め、CGなどが無い時代のことで全て実写でやっているわけです。公開当時は大規模なセットが話題になったかと思われますが、CG全盛の今日この映画を観ると、むしろ"手作り"的な良さが感じられます。

ポセイドン・アドベンチャー00.jpg パニック映画ではありますが、ヒューマンドラマ的な部分もしっかりしていました。とりあえず、船内ホールにいた100人ぐらいの船客以ポセイドン・アドベンチャーK.jpg外は"絶望"として生存者を絞り込んで、更に「船底」に退避するかその場に留まるかで、結局、留まった人々は全滅、退避した10名だけに早々に絞り込まれます。そのことによって、以降、演劇的な、丹念な人物像の描き方となっていたように思います。そして、その10人の中から更に犠牲者が1人、2人と出続ける―。

ポセイドン・アドベンチャー09.jpg 序盤の船内ホールには、居残り組にも牧師がいて、こちらはただ祈るのみ。一方のジーン・ハックマン演じる牧師は、とにかく生きるために前へ進もうとする、この対比のさせ方はかなり明確です。そして、その牧師が最後にとった自己犠牲的な行動―。やや典型的なヒロイズムになってしまった印象もあるし、その際に、牧師が"神"に向かって「邪魔しないでくれ」と言いますが、牧師がそんなこと言うかなあというものちょっと引っ掛かったけれど、ジーン・ハックマンはまずまずの好演。
   
ポセイドン・アドベンチャー03.jpg 他の俳優陣では、牧師と意見の衝突を繰り返す刑事役のアーネスト・ボーグナイン(1917-2012/享年95)の、ジーン・ハックマンとの演技合戦が見所でしょうか。ジーンポセイドン・アドベンチャー20s.jpg・ハックマンは英国アカデミー賞の主演男優賞を受賞しましたが、アーネスト・ボーグナインの濃い演技もパニック映画向きで良かったように思います(元水泳選手ポセイドン・アドベンチャー 001.jpgPicture of The Poseidon Adventure.jpgで牧師を救うも自らは斃れる中年婦人ベル・ローゼンを演じたシェリー・ウィンタースがゴールデングローブ賞助演女優賞を受賞している)。最近観直してみて、船長役が「裸の銃を持つ男」('88年)などコメディに転ずる前のレスリー・ニールセン、ボーイ役が「猿の惑星」シリーズのロディ・マクドウォールだったことに改めて気づきました。 

「ポセイドン・アドベンチャー」●原ポセイドン・アドベンチャー _b.jpg題:THE POSEIDON ADVENTURE●制作年:1972年●制作国:アメリカ●監督:ロナルド・ニーム●製作:アーウィン・アレン●脚本:スターリング・シリファント/ウェンデル・メイズ●撮影:ハロルド・E・スタイン●音楽:ジョン・ウィリアムズ/アル・カシャ/ジョエル・ハーシュホーン●原作:ポール・ギャリコ「ポセイドン・アドベンチャー」●時間:117分●出演:ジーン・ハックマン/アーネスト・ボーグナイン/レッド・バトンズ/キャロル・リンレー/ロディ・マクドウォール/ステラ・スティーヴンス/シェリー・ウィンタース/ジャック・アルバートソン/パメラ・スー・マーティン/エリック・シーア/レスリー・ニールセン/アーサー・オコンネル●日本公開:1973/03●配給:20世紀フォックス(評価:★★★☆)

リンダ・ロゴ(ステラ・スティーヴンス)、スーザン・シェルビー(パメラ・スー・マーティン)、ノニー・パリー(キャロル・リンレー)の各フィギア
ポセイドン・アドベンチャー 53.jpgポセイドン・アドベンチャー 50.jpgポセイドン・アドベンチャー b5.jpg

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セリフの拾い方、連想ゲームのようにつないでいく手法の巧みさ&イラストも楽しめる優れもの。

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  料理長殿、ご用心 p1.jpg 料理長シェフ殿、ご用心 02.jpg
料理長(シェフ)殿、ご用心 [DVD]」 Jacqueline Bisset
お楽しみはこれからだ〈part 3〉―映画の名セリフ (1980年)

  「PART2のあとがきに、PART3を作る予定はない、と書いたのだけれど、こうしてPART3が出来てしまった。「キネマ旬報」で連載を再開し、もう一冊分続けたというわけである。(中略)一つだけ新趣向を加えた。項目から次の項目への橋渡しを、シリトリのようにつないでゆく、というもので、いくらかこじつけもないではないが、どうやら最後の項目が最初に戻る形で輪のようにつながった。反省は、アメリカ映画に片寄り過ぎた点である。」 (あとがきより)

 和田誠(1936年生まれ)氏のシリーズ第3冊目で、あとがきに以上あるように、PART2で打ち止めの予定が「キネマ旬報」で連載を再開したために出来上がったもの(結局、その後も間歇的に連載し、シリーズは1995年単行本刊行の第7巻(PART7)までの累計ページ数は1,757ページに及ぶことになります。
 PART2で邦画も取り上げていましたが、PART3では洋画だけに戻しています。PART2で、洋画が多くなる理由として字幕で見たセリフの方が記憶に残っているからとありました。

 このシリーズ、あとがきは、読者からあった"誤り"の指摘に基づく訂正でほぼ費やされることが多いのですが、PART3のあとがきで、「七人の侍」で「勝ったのは百姓たちだ。俺たちではない」と書いたことに読者から「俺」ではなく「わし」と言ったはずだとの指摘があったという話に続いて、「ほとんど記憶だけで書いているので、一字一句正確にしなければならないとなると、ちょっとつらい。外国映画だとどっちみち翻訳になるから、意味さえ取り違えなければいいと思うが、日本映画はもともと日本語だから、意訳というわけにもいかず、つい敬遠することになる」とありました。ナルホドね。これも洋画が多くなる理由か。それにしても、連載しているのが「キネ旬」だから、読者も映画通が多かったりして、結構プレッシャーだろうなあ。実際には、どうしてあの映画のあのセリフをとりあげないのかといった手紙が多く、中には語気鋭いものもあったそうです。

 確かに今回はアメリカ映画に偏った分、マニアックになった感じもありますが、一方で「麗しのサブリナ」みたいな著者のお気に入りは、PART1に続いて再登場したりもしています。でも。こんな面白いセリフがあったのだなあという内容でした。

 年代的には、30年代終わりから始まって、40年代、50年代、60年代と割合均等で、70年代も、70年代終盤だけでも「さすらいの航海」('77年)、「アニー・ホール」('77年)、「ブリンクス」('78年)、「アルカトラズからの脱出」('79年)、「グッバイ・ガール」('77年)、「おかしな泥棒ディック&ジェーン」('77年)、「ジュリア」('77年)、「カリフォルニア・スイート」('78年)、「帰郷」('78年)、「遠すぎた橋」('77年)、「世界が燃えつきる日」('77年)、「リトル・モー」('77年)、「天国から来たチャンピオン」('78年)、「オー!ゴッド('77年)、「料理長(シェフ)殿、ご用心」('78年)、「リトル・ロマンス」('78年)、「ナイル殺人事件」('78年)、「チャイナ・シンドローム」('79年)、「愛と喝采の日々」('77年)、「マンハッタン」('79年)、「パワープレイ」('78年)など結構数多く取り上げています。このあたりは、連載時にほぼリアルタイムに近いかたちで公開されたものではないでしょうか(70年代は特に後半の方が多くなっている)。

Jacqueline Bisset Who Is Killing the Great Chefs.jpg1978 WHO IS KILLING THE GREAT CHEFS of EUROPE  PROMO MOVIE PHOT.jpg ジャクリーン・ビセットがジョージ・シーガルと共演した「料理長(シェフ)殿、ご用心」('78年)なんて、何てことはない映画だけれど(監督は4年後に「ランボー」('82年)を撮るテッド・コチェフ)懐かしいなあ。著者が書いているように、ちょっと洒落たスリラーで、ヨーロッパの一流シェフが次々と、それぞれの得意の料理法に因んだ方法で殺されていくというもの。ジャクリーン・ビセットの役は所謂パティシエですが、まあ当時の自分自身の理解としてはデザート専門のコックという感じ(著者も本書で「コック」と書いている。パティシエなんて言葉は当時日本では聞かなかった)。サスペンスですがユーモアがあって、ちょっとエロチックでもあるというもの(勿論ビセットが)。個人的には、本書が刊行される少し前くらいに名画座で観ましたが、「クリスチーヌの性愛記」('72年、ジャクリーン・ビセットが19才のストリッパー役で主演した作品)と「セント・アイブス」('76年、チャールズ・ブロンソン主演)の3本立て「ジャクリーン・ビセット特集」でした。 

音楽:ヘンリー・マンシーニ

ヒッチコック サイコ 予告編.jpg あと、個人的な収穫は、「サイコ」('60年)のところで、著者が予告編を観ていないことを非常に残念がっていて、ヒチコックがお喋りするだけのものでありながら、予告編史上に残る傑作と観た人は皆言ったそうですが、これ、今はネット動画で観ることが可能であったりもすると知ったこと(アップされてもすぐに消されたりもしているが)。

 1995年単行本刊行でこのシリーズが終わったというのは、DVDなどの普及などで便利になり過ぎて、セリフを追いやすくなったために、個人的な記憶の意義が相対的に軽くなったというのもあるのではないかなあ。誰もが検証可能だからといって、洋画のセリフまで一字一句正確を期さねばならなくなったら、そちらの方に時間をとられて、連載がしづらいというのもあるのでは?

 でも、セリフの拾い方にしても、こうした「新しい」映画や「古い」映画を織り交ぜて、しりとりか連想ゲームのようにつないでいく手法にしても、その技は著者ならではの巧みさがあり、しかも、イラストも楽しめるという、今読んでも優れものの映画エッセイであると思います。

料理長殿、ご用心 v1.jpg料理長殿、ご用心』.jpg「料理長(シェフ)殿、ご用心」●原題:SOMEONE IS KILLING THE GREAT CHEFS OF EUROPE●制作年:ヴァン・ライアンズ/料理長シェフ殿、ご用心 03.pngナン・ラ1978年●制作国:アメリカ●監督:テッド・コチェフ●脚本:ピーター・ストーン●撮影:ジョン・オルコット●音楽:ヘンリー・マンシーニ●原作:アイヴァン・ライアンズ/ナン・ライアンズ●時間:112分●出演:ジャクリーン・ビセット/ジョージ・シーガル/ロバート・モーレイ/ジャン=ピエール・カッセル/フィリップ・ノワレ/ジャン・ロシュフォール/ルイージ・プロイェッティ/ステファノ・サッタ・フロレス●日本公開:1979/05●配給:日本料理長(シェフ)殿、ご用心 ロバート・モーレイ.jpgJacqueline Bisset THE GRASSHOPPER.jpgヘラルド映画●最初に観た場所:五反田TOEIシネマ(80-02-18)(評価:★★★)●併映「セント・アイブス」(J・リー・トンプソン)/「クリスチーヌの性愛記」(アロイス・ブルマー)
ジョージ・シーガル/ロバート・モーレイ(全米映画批評家協会賞「助演男優賞」・ロサンゼルス映画批評家協会賞「助演男優賞」受賞)/ジャクリーン・ビセット  Jacqueline Bisset in "The Grasshopper"(クリスチーヌの性愛記)
五反田TOEIシネマ 2.jpg五反田TOEIシネマ79.jpg五反田TOEIシネマ.jpg五反田TOEIシネマ 3.jpg五反田TOEIシネマ/五反田東映(写真:跡地=右岸)「五反田東映」をを分割して1977(昭和52)年12月3日オープン、1990(平成2)年9月30日「五反田TOEIシネマ」閉館(1995年3月21日「五反田東映」閉館)

サイコ dvd.jpgPSYCHO2.jpg「サイコ」●原題:PSYCHO●制作年:1960年●制作国:アメリカ●監督・製作:アルフレッド・ヒッチコック●音楽:バーナード・ハーマン●原作:ロバート・ブロック「気ちがい(サイコ)」●時間:108分●出演:アンソニー・パーキンス/ジャネット・リー/ベラ・マイルズ/マーチン・バルサン/ジャン・ギャヴィン●日本公開:1960/09●配給:パラマウント●最初に観た場所:六本木・俳優座シネマテン(97-09-19) (評価★★★★)

「七年目の浮気」
お楽しみはこれからだ part3 七年目の浮気.jpg

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観客参加型ムービー「ロッキー・ホラー・ショー」。同じくアナーキーな雰囲気を醸す「ベルリンブルース」。

ロッキー・ホラー・ショー チラシ.jpg THE ROCKY HORROR SHOW 1975.jpg   ベルリンブルース 英字.jpg Stadt der Verlorenen Seelen 0.jpg
ロッキー・ホラー・ショー [DVD]」ティム・カリー(左)/スーザン・サランドン(右手前) 「ベルリンブルース」STAD DER VERLORENEN SEELEN, BERLIN BLUES(CITY OF LOST SOULS)

THE ROCKY HORROR SHOW 1975.jpg  恩師スコット博士に婚約の報告に出かけた恋人同士のブラッド(バリー・ボストウィック)とジャネット(スーザン・サランドン)は、嵐の中で道に迷った末に山中で車がパンクしてしまい、電話を借りようと近くの古城を訪ねるが、そこでは奇怪なパーティーが開かれていた。城主フランクン・フルター(ティム・カリー)は変わった人物で、彼自身が作った人造人間、ブロンドで筋肉質の美男子「ロッキー」を披露する。そしてフルターとロッキーは、結婚するような演出でベッドのある部屋へと向かうが、ジャネットがロッキーの虜になってしまう。さらに、バイセクシュアルのフルターは、ジャネットとブラッドの両方と関係を持ってしまう―。

ロッキー・ホラー・ショー.jpg ジム・シャーマン監督の「ロッキー・ホラー・ショー」('75年/英)は、最初に名画座で観た時はロック・オペラってこんなのもあるのかという感じで(元々はロンドンで初演された劇場ミュージカル)、併映のロマン・ポランスキーの「ファントム・オブ・パラダイス」('74年/米)の方がミュージカル調の場面は少ないにも関わらずそれらしく感じられ、この作品はよく分らんという印象でした。

シネマライズd.JPG それが2度目に渋谷のシネマライズ渋谷(当時、地下1階にあったスクリーン)で観た時には、米国からシネセゾンが招聘したと思われるコスプレ軍団が来日していて(日本でもパフォーマンス参加者を募集した)、映画館の最前列で映画に合わせて踊ったり、紙吹雪や米を撒いたり、雨のシーンでは如雨露で水を撒いたりして観客も大ノリでした。その時初めて、ああ、これ、こうやってパーティ形式で観るものなんだと初めて知りました。本国でも公開当初は不評だったのですが、深夜興行されるようになって「観客体験型」ムービーとしてカルト化したようです。日本でもシネマライズ渋谷での上映期間中に自発的にパフォーマンスに参加する人がどんどん増えていったとのことですが、それ以前から、英字新聞にパブなどでの深夜興行の広告が出ていた記憶があります(今はAmazonでコスプレ衣裳が買える)。

ベルリンブルース 1.gif ベルリンにあるハンバベルリンブルース03.jpgーガー・ショップ「バーガー・クイーン」は、NYのハーレム出身ダンサーでトランスベイター(性転換者)のアンジー・スターダストが経営する店であり、類が友を呼んで世間のはみ出し者の米国人たちの溜まり場になっている。"バーガー・クイーン・ブルース"を歌うライラは、売春街から東ドイツへ渡って成功したパンク・スター、エロチックな空中ブランコ・ショウを見せるためにやって来たジュディスとパートナーのトロンは、アンジーの"スターダスト・ペンション"に棲むことになるが、隣部屋の売れない黒人ダンサーのゲイリーが魔術や妖術に凝っていて、自室に火をつけてしまう。ストリッパーのタラもトランスベイター(日本流に言えばニューハーフ)で、夜毎、違う男をベッドに連れ込んで同居人のロレッタを困らせる。「バーガー・クイーン」の店員ヨアキンも、ショービジネスのスターをめざす両性具有者(アンドロギュヌス)である―。

ベルリンブルース 0.jpg 「ベルリンブルース」('83年/西独)は、公開された時に「ロッキー・ホラー・ショー」の再来と言われた、西ドイツの異色監督ローザ・フォン・ブラウンハイムの1986年作品で、ドイツらしいアナーキーな雰囲気に満ちたカルト・ムービーですが、不快感とかは無く最後まで楽しめました(むしろ最後の大合唱は、マイノリティの人たちが誇り高く生き続けることを宣言しているようで感動させられた)。ブラウンハイム監督自身もホモセクシュアルであることを公言し、同性愛者や性的倒錯をテーマに撮りまくっていて、出演者たちも実在のベルリン在住アメリカ人グループで、実名で出ていて現実の仕事と同じ役どころを演じています(つまり皆、本人役で出ているということ)。

BAGDAD CAFE 2.jpg 後にパーシー・アドロン監督の「バグダッド・カフェ」('87年/西独)を観た時、ドイツから米国に旅行に来た女性が、様々な人々がいる多国籍風カフェの周辺に棲み込んでしまうという点で、この米国人がドイツのバーガー・ショップ付近に棲みつく「ベルリンブルース」と丁度真逆だなあと思ったことがありますが、「バグダッド・カフェ」も「バーガー・クイーン」ほどお下劣ではないですが、そこに暮らす人たちがショーみたいなことをやっていて、それが無国籍風と言うか、ややアナーキーな雰囲気も醸していました。
BAGDAD CAFE

 この作品「ベルリンブルース」が公開された時は、ライザ・ミネリの「キャバレー」('72年/米)のベルリン版とも言われましたが、もっとキッチュな感じのパンク系ミュージカル(仕立て)と言うか、雰囲気的にやはり「ロッキー・ホラー・ショー」に近いように思われます。

ロッキー・ホラー・ショー_1.jpgロッキー・ホラー・ショーs.jpgロッキー・ホラー・ショー (1976).jpg「ロッキー・ホラー・ショー」●原題:THE ROCKY HORROR SHOW●制作年:1975年●制作国:イギリス●監督:ジム・シャーマン●製作:作 マイケル・ホワイト●脚本:ジム・シャーマン/リチャード・オブライエン●撮影:ピーター・サシツキー●音楽:リチャード・ハートレイ●時間:99分●出演:ティム・カリー/バリー・ボストウィック/スーザン・サランドン/リチャード・オブライエン/パトリシア・クイン/ジョナサン・アダムス/ミート・ローフ/チャールズ・グレイ●日本公開:1978/02●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:五反田TOEIシネマ(83-02-06)●2回目:シネマライズ渋谷(地下1階)(88-07-17)(評価:★★★?)●併映(1回目):「ファントム・オブ・パラダイス」(ブライアン・デ・パルマ)
シネマライズ2.jpgシネマライズ.bmpシナマライズ 地図.jpgシネマライズ渋谷1986年6月、渋谷 スペイン坂上「ライズビル」地下1階に1スクリーン(220席)でオープン。1996年、2階の飲食店となっていた場所に2スクリーン目を増設。「シネマライズBF館」「シネマライズシアター1(後のシネマライズ(2シネマライズ BF.JPGF))(303席)」になる。2004年、3スクリーン目、デジタル上映劇場「ライズX(38席)」を地下のバースペースに増設。地下1階スクリーン「(元)シネマライズ渋谷」2010年6月20日閉館、跡地はライブハウス「WWW」に(地下2階「ライズⅩ」2010年6月18日閉館、地上2階「シネマライズ」2016年1月7日閉館

シネマライズBF館(前・シネマライズ渋谷)
        
「ベルリンブルース」●原題:STAD DER VERLORENEN SEELEN, BERLIN BLUES(CITY OF LOST SOULS)●制ベルリンブルース vhs.jpgベルリンブルース 輸入.jpg作年:1983年●制作国:西ドイツ●監督・脚本・製作:ローザ・フォン・ブラウンハイム●撮影:シュテファン・ケスター●音楽:ホルガー・ミュンツァー/アレクサンダー・クロート●美術:インゲ・スティボルスキー●時間:91分●出演:レアンジー・スターダスト/ジェイン・カウンティ/ジュディス・フレックス/ロン・フォン・ハリウッド●日本公開:1986/10●配給:ユーロスぺース●最初に観た場所:渋谷・ユーロスペース(86-12-06)(評価:★★★★)ベルリン・ブルース [VHS]

《読書MEMO》
絶対に見たほうがいいカルト映画30選 コタク・ジャパン
1.『ロッキー・ホラー・ショー』
2.『ドニー・ダーコ』
3.『イレイザーヘッド』
4.『ゴーストハンターズ』
5.『ZOMBIO(ゾンバイオ)/死霊のしたたり』
6.『地球に落ちてきた男』
7.『裸のランチ』
8.『プライマー』
9.『ゼイリブ』
10.『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』
11.『レポマン』
12.『アルタード・ステーツ/未知への挑戦』
13.『チェリー2000』
14.『ブラザー・フロム・アナザー・プラネット』
15.『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』
16.『死霊のはらわたll』
17.『バンデットQ』
18.『バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー 』
19.『スリザー』
20.『ダーク・スター』
21.『プラン9・フロム・アウタースペース』
22.『ハンガー』
23.『デス・レース2000年』
24.『Tales from the Hood』
25.『シャークトパス』
26.『Born in Flames』
27.『ロストボーイ』
28.『ウォリアーズ』
29.『トレマーズ』
30.『未来惑星ザルドス』

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「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ

壮大華麗な舞台装置に埋没しない強烈な個性の配役陣と演出力はヴィスコンティ映画ならでは。

ルートヴィヒ 完全版 dvd.jpgルートヴィヒ taiknnsiki.jpg
ルートヴィヒ 復元完全版 デジタル・ニューマスター [DVD]」['06年]       
ヘルムート・バーガー(Helmut Berger)/ロミー・シュナイダー(Romy Schneider)
ルートヴィヒ 01.jpgLudwig movie 3.jpg 1864年18歳でバイエルン王に即位したルートヴィヒ(ヘルムート・バーガー)は、やがて年上の従姉エリザベート(ロミー・シュナイダー)に惹かれていくが、その思いは叶えられない。またルートヴィヒは政治や軍事より芸術を好み、特にワーグナー(トレヴァー・ハワード)を援助した。そのワーグナーは王をなめきっていて、愛人コジマ(シルヴァーナ・マンガーノ)と共に彼を食い物にする。ルートヴィヒは、贅を極めた宮殿での愚かしい生活や虚しい日常と、当時勃発した普墺戦争の中で精神的に消耗していき、その行動は次第に常軌を逸したものとなっていく―。

ルートヴィヒ 2.jpg  ルキノ・ヴィスコンティ(1906-1976)監督の1972年のイタリア・フランス・西ドイツ合作映画で、「地獄に堕ちた勇者ども」('69年)、「ベニスに死す」('71年)と並ぶ「ドイツ三部作」の最後となるもの。バイエルン王ルートヴィヒ2世の即位から死までを描いた作品で、元々は約4時間もの作品だったのですが、配給会社から長すぎるとのクレームが出て、仕方なくヴィスコンティ自身の手によって約3時間に短縮されたとのこと。ヴィスコンティが没して4年後の'80年にようやく日本で初公開されたのはこの短縮版であり、「ルードウィヒ/神々の黄昏」というタイトルであったため、「ウ」ではなくその前の「ト」の方を濁る言い方に馴染んでしまった印象はあります。

ルートヴィヒ 02 雪.jpg 同じく'80年にヴェネツィア国際映画祭において、ヴィスコンティの当初の意図に限りなく近いとされる4時間版が初公開され、劣化したフィルムの修復作業を経たものが'06年に新宿のテアトルタイムズスクエアで開催された「ヴィスコンティ生誕100年祭」で、「ルートヴィヒ【完全復元版】」として「山猫」「イノセント」と共に上映されましたが、個人的にはその時は遺作となった「イノセント」しか観ることができず、今回、北千住・シネマブルースタジオのヴィスコンティ監督特集の一本として上映されたのを観ました(特集と言っても、「若者のすべて」('60年)と2作だけの上映だったが)。完全版もビデオ化されていましたが、やはりいつか劇場で観たいという思いもあって今回足を運んだ次第です。
Rûtovihi (1973)
Rûtovihi (1973).jpg
Ludwig movie 7.jpg 4時間という長さそのものが劇場向きですが、冒頭のルートヴィヒの戴冠式から荘厳な舞台劇を観ているみたいで、劇場で観た価値はありました。王族の絢爛豪華な世界を妥協なく再現している点で、中期以降のヴィスコンティ作品に観られる貴族趣味が最も徹底している作品と言えるかと思いますが(撮影はリンダーホーフ城など実際にルートヴィヒ2世が建設した王城でも行われた)、そうした壮大なバックグラウンドの中で、繊細で孤独を好むルートヴィヒの理知と狂気をきっちり浮き彫りにしてみせていて、「大味」感が全くないところがスゴいと思います。

Ludwig movie 2.jpg 改めて完全版を観て思ったのは、史実に比較的忠実に描かれている点で、ルートヴィヒは近侍させた美青年たちを愛し、女性を嫌忌していたものの、エリーザベトだけには女性でありながら唯一心を許していたというのも事実らしく、また、彼女の妹のゾフィーと婚約者として押しつけられ、挙式を伸ばし延ばしにした挙句、婚約を反故にしてしまったのも実際のことのようです。ワーグナーに入れ込んで金を使い、城を幾つも建てて税金を使い、政治よりも詩を愛し、社交よりも真夜中の彷徨を好んだルードウィッヒですが、バイエルンの国民には人気があったそうです。

 映画は、ルートヴィヒに王としての統治能力があるかどうか重臣たちが証人を喚問して査問会議を開いているという外枠的状況があって、終盤は王は精神を病んでいるとの結論に至った重臣たちが王を廃位すべく反乱を起こす経緯とそれに対するルートヴィヒの抵抗が詳しく描かれていますが、短縮版ではこの部分がかなり削られていたのではなかったかと。こうしてみると、かなり史劇として丁寧に作られていたのだという印象を受けましたが、重臣たちがルートヴィヒを廃位したのは、多くの城を造営した彼の乱費が最大原因だったというのが最近の有力な説のようです(家臣たちがワーグナーの召喚を快く思っていなかったのも事実らしい)。但し、「狂王」とも呼ばれたように、次第に王の奇行が目立つようになり、首相らが医師たちに診断書を作成させて精神病を理由に王を禁治産者にしようとしたのもほぼ事実のようです。

 ルートヴィヒがベルク城に送られ、その翌日に城付近の湖で侍従医と共に水死体となって発見されたのも事実ですが、その事件の経緯は「謎」であるようで、映画の中でのルートヴィヒが彼を監視していた医師を殺して自殺したという重臣の台詞は、実際にその場面が出てこないことからも、あくまで映画内における重臣による事件の決着のさせ方なのでしょう。映像化して史実を逸脱してしまうことを回避するとともに、観る者に「謎」を投げかけつつも、幽閉されるよりは死を選ぶというルートヴィヒの絶望と美学を示唆するような描かれ方をしているように思いました。

Ludwig movie.jpg ヘルムート・バーガーは好演してると言うか、前半の美男子ぶりから終盤は一転して顔を白塗りにしての怪演、ホモセクシュアルはさほど強調されていませんが、「地獄に堕ちた勇者ども」を想起させるようなシーンがありました(ヴィスコンティとヘルムート・バーガーは"恋人同士"の関係にあったと言われ、ヘルムート・バーガーは姉として慕っていたロミー・シュナイダーから"バーガー嬢"或いは"バーガー夫人"とからかわれたほどであったという)。

Ludwig movie 03.jpg ワーグナーを演じるトレヴァー・ハワードも怪演、加えて、ロミー・シュナイダーの強い意志を秘めた美しさとシルヴァーナ・マンガーノのアクの強さ―といった具合に、壮大華麗な舞台装置に決して埋没してしまうことのない強烈な個性の配役陣と、その持ち味を十二分に引き出しているヴィスコンティの演出力が光ります。やはり、これはこの監督にしか撮れない作品なのだと思いましたが、'12年にワーグナー生誕200周年としてマリー・ノエル、ピーター・ゼアー共同監督でドイツ映画「ルートヴィヒ」が作られています。ある意味、こっちの方が「ご当地」版ということになりますが、出来の方はどうなのでしょうか。
        
ルートヴィヒ 04.jpgルードウィヒ 神々の黄昏 ポスター.jpg「ルートヴィヒ (ルードウィヒ/神々の黄昏)」●原題:LUDWIG●制作年:1972年(ドイツ公開1972年/イタリア・フランス公開1973年)●制作国:イタリア・フランス・西ドイツ●監督:ルキノ・ヴィスコンティ●製作:ウーゴ・サンタルチーア●脚本:ルキーノ・ヴィスコンティ/エンリコ・メディオーリ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ●撮影:アルマンド・ナンヌッツィ●音楽:ロベルト・シューマン/リヒャルト・ワーグナー/ジャック・オッフェンバック●時間:(短縮版)184分/(完全版)237分●出演:ヘルムート・バーガー/ロミー・シュナイダー/トレヴァー・ハワード/シルヴァーナ・マンガーノ/ゲルト・フレーベ/ヘルムート・グリーム/ジョン・モルダー・ブラウン/マルク・ポレル/ソーニャ・ペドローヴァ/ウンベルト・オルシーニ/ハインツ・モーグ/マーク・バーンズ1962年の3人.jpgロミー・シュナイダー.jpg●日本公開:1980/11(短縮版)●配給:東宝東和●最初に観た場所:(短縮版)高田馬場・早稲田松竹(82-06-06) (完全版)北千住・シネマブルースタジオ(14-07-30)(評価:★★★★)

ロミー・シュナイダー


ロミー・シュナイダー(手前)、アラン・ドロン、ソフィア・ローレン(1962年)

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ジョン・ネトルズが主役を演じた最後のエピソード。長らくの間お疲れ様でした。

第81話「安らぎのスパ殺人」dvd.jpg 第81話「安らぎのスパ殺人」.jpg Midsomer Murders Fit for Murder 2.jpg
"Midsomer Murders" Fit for Murder(安らぎのスパ殺人)

Midsomer Murders Fit for Murder 1.jpg ルーク・アーチボルド(ジェイソン・デュール)の経営するスパ&ホテルに、ジョイスとバーナビーは休みを利用して滞在することにする。バーナビーは、性に合わないので、文句を言い続けるばかりだった。やがて来るバーナビーの誕生日も何やら気掛かりな様子だった―。

Midsomer Murders Fit for Murder 0.jpg シーズン13の第8話(最終話)で、これまで通算81話に渡ってトム・バーナビー警部をを演じてきたジョン・ネトルズの最後の主演作ということで、本筋のミステリと併せて、バーナビーが引退を決意するという図太いサイドストーリーがあります。

 でも、ミステリの方も、いつもながらにジョイスの行くところに事件ありで、スパの客の女性キティが殺害され、スパの経営者ルーク・アーチボルドが殺害され、更に、先に殺された女性客の夫ケニーは行方不明で...と、相変わらずの複数殺人やら行方不明者やらで、一応は手を抜かず展開されていたように思います。

第81話「安らぎのスパ殺人」02.png 並行して、バーナビーの気掛かりの元が少しずつ明かされてきて、それは誕生日と同じ日に亡くなった父親に対する思いと(その日に限って、いつもの父親の誕生日と同じように一緒に釣りに行くことをしなかった自分に対する悔恨)、自分も父親と同じ年齢の誕生日、つまり間近に迫っている次の誕生日に死ぬのではないかという不安であったようです(既に誕生日が近づくつれて体調に変調をきたしていた)。

第81話「安らぎのスパ殺人」01.jpg ミステリの方は、サイドストーリーに圧迫されて、スパ経営者の妻と小説を書いているという女性の2人とそれを取り巻く男達の確執の経緯や、犯人の犯行動機とかが分かりにくかったかな。一応、このシリーズではここのところ、犯人が捕まった後、自らの殺人を丁寧に振り返ってくれる傾向にはあるのだけれど。

 突然、瞑想用の庭の噴水が噴き出して、びっくりして逃げ帰るトレーナーと、そこから行方不明者を突き止めるバーナビー(重傷を負ったままバルブに寄り掛かっていたわけか)、バーナビーが瞑想トレーナーの娘の透視術のインチキを見破ったかと思ったら、誰にも話していない自分の不安の源を言い当てられ、彼女の透視能力はホンモノだったとか、細部に見所はありました。

第81話「安らぎのスパ殺人」引退発表.jpg 事件解決後のエピローグに多い目に時間を割き、無事に誕生日を迎えたバーナビーが誕生パーティの席で突然の引退発表、唖然とするジョーンズも、事件現場からの呼び出し電話に当地に転任してきた従兄弟のジョン・バーナビー警部(ニール・ダジョン Neil Dudgeon)を電話口に出させる彼の姿を見て上司の引退を既定の事実として受け入れたのか、事件現場へ向かうために辞去する前に思わずバーナビーにハグ(いい場面!)、残されたジョイスのほっとしたような表情から、バーナビーの引退決意の理由はここにあったのだなあと。

第81話/安らぎのスパ殺人 誕生パーティー.jpg 引退はちょっと勿体ない気もしましたが(ジョーンズは今回も思い込みから誤認逮捕Midsomer Murders Fit for Murder 3.jpgしそうな感じでやや頼りなかったし)、あちらでは自分で引退をする時期を決め、後はリタイア後の人生を楽しむというのがむしろ普通なのかも。バーナビー警部を演じるジョン・ネトルズは1943年生まれで、1997年(54歳)から13年間主役張っており、67歳と言えばかなりいい歳ではありますが。

 ジョン・ネトルズ自身は「(引退するのは)とても悲しいが、(バーナビーは)約200件もの事件を解決した。目標は達成したと思う」と話しているそうです。正確には15シーズンで208件の殺人事件があったそうで、1話当たり概ね2.5人殺害されているわけか)。バーナビーもジョン・ネトルズも長らくの間お疲れ様でした。

アイソレーションタンク2.jpgアイソレーションタンク1.jpg 因みに、このエピソードの中でジョイスがスパで試そうとしたしたフローティングタンクは「アイソレーションタンク」と呼ばれるもので、都内にも利用可能なエステや「癒しのスペース」のようなものがあるみたいですが、装置は外国製のものを使っているようです。海外では、複数人数で浸かれるような大きなタンクもあるようです。アルタード・ステーツ tirasi.jpgアルタード・ステーツ2.jpg一度利用してみたい気もするけれど、このタンク見ると、ケン・ラッセル監督の「アルタード・ステーツ 未知への挑戦」('79年/米)を思い出して、ちょっと怖い気もしないでもない(少なくとも閉所恐怖症の気がある人は無理だろうなあ)。パディ・チャイエフスキーのSFが原案の映画では、感覚遮断実験のための装置として使われていましたが、タンクそのものの原理はほぼ同じだろうなあ(当時アメリカで、「タンキング」と呼ばれるこの種の瞑想法が流行っていた)。ウィリアム・ハート演じる科学者が、タンクを使って自らを実験台にし、人類進化の過程を意識面で遡っていくが、それが身体にまで影響を及ぼすというものでした(まあ、映画を観ていても、いくら何でもこれはあり得ないとは思いましたが)。

Church End seen in 'Fit for Murder'.jpg「バーナビー警部(第81話)/安らぎのスパ殺人」●原題:MIDSOMER MURDERS:FIT FOR MURDER●制作年:2011年●制作国:イギリス●本国上映:2011/11/15●監督:レニー・ライ●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:アンドリュー・ペイン●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジェイソン・ヒューズ/ジェーン・ワイマーク/バリー・ジャクソン/カースティ•ディロン/ローラ・ハワード/ニール・ダジョン/ジェイソン・デュール●日本放映:2013/10/25●放映局:AXNミステリー(評価:★★★☆)
Church End seen in 'Fit for Murder'

ALTERED STATES.jpgアルタード・ステーツa.gif「アルタード・ステーツ 未知への挑戦」●原題:ALTERD STATES●制作年:1979年(米国公開1980年)●制作国:アメリカ●アルタード・ステーツ b.gif監督:ケン・ラッセル●製作:ハワード・ゴットフリード●脚本:シドニー・アーロン●撮影:ジョーダン・クローネンウェス●音楽:ジョン・コリリアーノアルタード・ステーツ dvd.png●原作:パディ・チャイエフスキー●時間:101分●出演:ウィリアム・ハート/ドリュー・バリモア/ブレア・ブラウン/ボブ・バラバン/チャールズ・ヘイド●日本公開:1981/04●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場所:新宿・京王地下(81-05-17)(評価:★★★)「アルタード・ステーツ 未知への挑戦 [DVD]

1977年8月6日 新宿京王 京王地下.jpg京王新宿ビル3.jpg京王三丁目ビル - 2.jpg 新宿京王・京王地下(京王2)新宿3丁目伊勢丹はす向い京王新宿ビル(現・京王三丁目ビルの場所)。1980年代後半に閉館。

「●あ行外国映画の監督」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒【1442】 ロジェ・ヴァディム/ルイ・マル/フェデリコ・フェリーニ 「世にも怪奇な物語
「●さ行の外国映画の監督①」の インデックッスへ「●た‐な行の外国映画の監督」の インデックッスへ「●は行の外国映画の監督①」の インデックッスへ「●か行外国映画の監督」の インデックッスへ「●ダスティン・ホフマン 出演作品」の インデックッスへ(「ジョンとメリー」「真夜中のカーボーイ」)「●ジョン・ヴォイト 出演作品」の インデックッスへ(「真夜中のカーボーイ」)「●ロバート・デ・ニーロ 出演作品」の インデックッスへ(「恋におちて」)「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ「○都内の主な閉館映画館」の インデックッスへ(三鷹東映)

ニューヨークという大都会を舞台にしたダスティン・ホフマン主演'69年作品2作。

ジョンとメリー [VHS].jpgジョンとメリー [DVD].jpg 真夜中のカーボーイ dvd.jpg 卒業 [DVD] L.jpg
ジョンとメリー [DVD]」「真夜中のカーボーイ [DVD]」「卒業 [DVD]

ジョンとメリー 1.jpg マンハッタンに住む建築技師ジョン(ダスティン・ホフマン)のマンションで目覚めたメリー(ミア・ファロー)は、自分がどこにいるのか暫くの間分からなかった。昨晩、独身男女が集まるバーで2人は出会い、互いの名前も聞かないまま一夜を共にしたのだった。メリーは、整頓されたジョンの家を見て女の影を感じる。ジョンはかつてファッションモデルと同棲していた過去があり、メリーはある有力政治家と愛人関係にあった。朝食を食べ、昼食まで共にした2人は、とりとめのない会話をしながらも、次第に惹かれ合っていくが、ちょっとした出来事のためメリーは帰ってしまう―。

 ピーター・イエーツ(1929-2011/享年81)監督の「ジョンとメリー」('69年)は、行きずりの一夜を共にした男女の翌朝からの1日を描いたもので、男女の出会いを描いた何とはない話であり、しかも基本的に密室劇なのですが、2人のそれぞれの回想と現在の気持ちを表す独白を挟みながらストーリーが巧みに展開していき、2人の関係はどうなるのだろうかと引き込まれて観てしまう作品でした。ピーター・イエーツは英国人で、映画監督になる前にプロのレーシング・ドライバーだったこともあり、この作品が監督第3作ですが、第1作が犯罪サスペンス映画「大列車強盗団」('67年/英)で、この作品でのアクション・シーンの手腕が買われ、ハリウッドで第2作、スティーブ・マックイーン主演のアクション映画「ブリット」('67年/米)を撮っていますが、今度はがらっと変って男女の出会いを描いた作品に。

ジョンとメリー 4.jpg 脚本は「シャレード」('63年)の原作者ジョン・モーティマーですが、構成の巧みさもさることながら、演じているダスティン・ホフマンとミア・ファローがそもそも演技達者、とりわけダスティン・ホフマン演じるジョンの、そのままメリーに居ついて欲しいような欲しくないようなその辺りの微妙に揺れる心情が可笑しく(ジョンの方に感情移入して観たというのもあるが)ホントにこの人上手いなあと思いました(でも、ミア・ファローも良かった)。

ジョンとメリー 2.jpg 最後に互いの気持ちを理解し合えた2人が、そこで初めて「ぼくはジョンだ」「私はメリーよ」という名乗り合う終わり方もお洒落(その時に大方の日本人の観客は初めて、そっか、2人はまだ名前も教え合っていなかったのかと気づいたのでは。アメリカ人だったら普通は最初に名乗るけれど、アメリカ人が見たらどう感じるのだろうか)。観た当時は、これが日本映画だったら、もっとウェットな感じになってしまうのだろうなあと思って、ニューヨークでの一人暮らしに憧れたりもしましたが、逆に、ニューヨークのような大都会で恋人も無く一人で暮らすということになると、(日本以上に)とことん"孤独"に陥るのかも知れないなあとも思ったりして。

真夜中のカーボーイ1.jpg そうした大都会での孤独をより端的に描いた作品が、ダスティン・ホフマンがこの作品の前に出演した同年公開のジョン・シュレシンジャー(1926-2003/享年77)監督の「真夜中のカーボーイ」('69年)であり、ジョン・ヴォイトが、"いい男ぶり"で名を挙げようとテキサスからニューヨークに出てきて娼婦に金を巻き上げられてしまう青年ジョーを演じ、一方のダスティン・ホフマンは、スラム街に住む怪しいホームレスのリコ(一旦は、こちらもジョーから金を巻き上げる)役という、その前のダスティン・ホフマンの卒業 ダスティン・ホフマン .jpg主演作であり、彼自身の主演第1作だったマイク・ニコルズ監督の「卒業」('67年)の優等生役とはうって変った役柄を演じました(「卒業」で主人公が通うコロンビア大学もニューヨーク・マンハッタンにある)。

卒業 ダスティン・ホフマン/キャサリン・ロス.jpg 映画デビューした年に「卒業」でアカデミー主演男優賞ノミネートを受け(この作品、今観ると「サウンド・オブ・サイレンス」をはじめ「スカボロ・フェアー」「ミセス・ロビンソン」等々、サイモン&ガー卒業(1967).jpgファンクルのヒット曲のオン・パレードで、そちらの懐かしさの方が先に立つ)、主演第2作・第3作が「真夜中のカーボーイ」(これもアカデミー主演男優賞ノミネート)と「ジョンとメリー」であるというのもスゴイですが、ゴールデングローブ卒業 1967 2.jpg賞新人賞を受賞した「卒業」の、その演技スタイルとは全く異なる演技をその後次々にみせているところがまたスゴイです(「卒業」で英国アカデミー賞新人賞を受賞し、「真夜中のカーボーイ」と「ジョンとメリー」で同賞主演男優賞を受賞している)。

真夜中のカーボーイQ.jpg 3作品共にアメリカン・ニュー・シネマと呼ばれる作品ですが、その代表作として最も挙げられるのは「真夜中のカーボーイ」でしょう。ニューヨークを逃れ南国のフロリダへ旅立つ乗り合いバスの中でリコが息を引き取るという終わり方も、その系譜を強く打ち出しているように思われます。「真夜中のカーボーイ」も「ジョンとメ真夜中のカーボーイs.jpgリー」も傑作であり、ダスティン・ホフマンはこの主演第2作と第3作で演技派としての名声を確立してしまったわけですが、個人的には「ジョンとメリー」の方が、ラストの明るさもあってかしっくりきました。一方の「真夜中のカーボーイ」の方は、ジョーとリコの奇妙な友情関係にホモセクシュアルの臭いが感じられ、当時としてはやや引いた印象を個人的には抱きましたが、2人の関係を精神的なホモセクシュアルと見る見方は今や当たり前のものとなっており、その分だけ、今観ると逆に抵抗は感じられないかも。

ミスター・グッドバーを探して [VHS].jpg 「ジョンとメリー」に出てくる"Singles Bar"(独身者専門バー)を舞台としたものでは、リチャード・ブルックス(1912-1992/享年72)監督・脚本、ダイアン・キートン主演の「ミスター・グッドバーを探して」('77年)があり、こちらはジュディス・ロスナーが1975年に発表したベストセラー小説の映画化作品です。
ミスター・グッドバーを探して [VHS]

ミスター・グッドバーを探して1.jpg ダイアン・キートン演じる主人公の教師はセックスでしか自己の存在を確認できない女性で、原作は1973年にニューヨーク聾唖学校の28歳の女性教師がバーで知り合った男に殺害された「ロズアン・クイン殺人事件」という、日本における「東電OL殺人事件」(1997年)と同じように、当時のアメリカ国内で、殺人事件そのものよりも被害者の二面的なライフスタイルが話題となった事件を基にしており、当然のことながら結末は「ジョンとメリー」とは裏腹に暗いものでした。主人公の女教師は最後バーで拾った男(トム・ベレンジャー)に殺害されますが、その前に女教師に絡むチンピラ役を、当時全く無名のリチャード・ギアが演じています(殺害犯役のトム・ベレンジャーも当時未だマイナーだった)。

恋におちて 1984.jpg 何れもニューヨークを舞台にそこに生きる人間の孤独を描いたものですが、ニューヨークを舞台に男女の出会いを描いた作品がその後は暗いものばかりなっているかと言えばそうでもなく、ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープの演技派2人が共演した「恋におちて」('84年)や、メグ・ライアンとトム・ハンクスによるマンハッタンのアッパーウエストを舞台にしたラブコメディ「ユー・ガット・メール」('98年)など、明るいラブストーリーの系譜は生きています(「ユー・ガット・メール」は1940年に製作されたエルンスト・ルビッチ監督の「街角/桃色(ピンク)の店」のリメイク)。
「恋におちて」('84年)

ユー・ガット・メール 01.jpg 「恋におちて」はグランド・セントラル駅の書店での出会いと通勤電車での再会、「ユー・ガット・メール」はインターネット上での出会いと、両作の間にも時の流れを感じますが、前者はクリスマス・プレゼントとして買った本を2人が取り違えてしまうという偶然に端を発し、後者は、メグ・ライアン演じる主人公は絵本書店主、トム・ハンクス演じる男は安売り書店チェーンの御曹司と、実は2人は商売敵だったという偶然のオマケ付き。そのことに起因するバッドエンドの原作を、ハッピーエンドに改変しています。
「ユー・ガット・メール」('98年)

めぐり逢えたら 映画 1.jpg トム・ハンクスとメグ・ライアンは「めぐり逢えたら」('93年)の時と同じ顔合わせで、こちらもレオ・マッケリー監督、ケーリー・グラント、デボラ・カー主演の「めぐり逢い」('57年)にヒントを得ている作品ですが(「めぐり逢い」そのものが同じくレオ・マッケリー監督、アイリーン・ダン、シャルル・ボワイエ主演の「邂逅」('39年)のリメイク作品)、エンパイア・ステート・ビルの展望台で再開を約するのは「めぐり逢い」と同じ。但し、「めぐり逢い」ではケーリー・グラント演じるテリーの事故のため2人の再会は果たせませんでしたが、「めぐり逢えたら」の2人は無事に再開出来るという、こちらもオリジナルをハッピーエンドに改変しています。
「めぐり逢えたら」('93年)

 最近のものになればなるほど、男女双方または何れかに家族や恋人がいたりして話がややこしくなったりもしていますが、それでもハッピーエンド系の方が主流かな。興業的に安定性が高いというのもあるのでしょう。「恋におちて」は、古典的ストーリーをデ・ニーロ、ストリープの演技力で引っぱっている感じですが、2人とも出演時点ですでに大物俳優であるだけに、逆にストーリーの凡庸さが目立ち、やや退屈?(もっと若い時に演じて欲しかった)。但し、「恋におちて」「めぐり逢えたら」「ユー・ガット・メール」の何れも役者の演技はしっかりしていて、ストーリーに多分に偶然の要素がありながらも、ディテールの演出や表現においてのリアリティはありました。しかしながら、物語の構成としては"定番の踏襲"と言うか、「ジョンとメリー」を観て感じた時のような新鮮味は感じられませんでした。

 こうして見ると、ニューヨークという街は、「真夜中のカーボーイ」や「ミスター・グッドバーを探して」に出てくる人間の孤独を浮き彫りにするような暗部は内包してはいるものの、映画における男女の出会いや再会の舞台として昔も今もサマになる街でもあるとも言えるのかもしれません(ダスティン・ホフマンは同じ年に全く異なるキャラクターで、ニューヨークを舞台に孤独な男性の「明・暗」両面を演じてみせたわけだ。これぞ名優の証!)。

ジョンとメリー [VHS]
JOHN AND MARY 1969.jpgジョンとメリーdvd3.jpg「ジョンとメリー」●原題:JOHN AND MARY●制作年:1969年●制作国:アメリカ●監督:ピーター・イェーツ●製作:ベン・カディッシュ●脚本:ジョン・モーティマー●撮影:ゲイン・レシャー●音楽:クインシー・ジョーンズ●原作:マーヴィン・ジョーンズ「ジョンとメリー」●時間:92分●出演:ダスティン・ホフマン/ミア・ファロー/マイケル・トーラン/サニー・グリフィン/スタンリー・ベック/三鷹オスカー.jpgタイン・デイリー/アリックス・エリアス●日本ジョンとメリーe.jpg公開:1969/12●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:三鷹東映(78-01-17)(評価:★★★★☆)●併映:「ひとりぼっちの青春」(シドニー・ポラック)/「草原の輝き」(エリア・カザン)三鷹東映 1977年9月3日、それまであった東映系封切館「三鷹東映」が3本立名画座として再スタート。1978年5月に「三鷹オスカー」に改称。1990(平成2)年12月30日閉館。

Dustin Hoffman and Mia Farrow/Photo from John and Mary (1969)

「真夜中のカーボーイ」●原題:MIDNIGHT COWBOY●制作年:1969年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・シュレシンジャー●製作:ジェローム・ヘルマン●脚本:ウォルド・ソルト●撮影:アダム・ホレンダー●音楽:ジョン・バリー●原作:ジェームズ・レオ・ハーリヒー「真夜中のカーボーイ」●時間:113真夜中のカーボーイ2.jpg真夜中のカーボーイ 映画dvd.jpg分●出演:ジョン・ヴォイト/ダスティン・ホフマン/シルヴィア・マイルズ/ジョン・マクギヴァー/ブレンダ・ヴァッカロ/バーナード・ヒューズ/ルース・ホワイト/ジェニファー・ソルト/ボブ・バラバン●日本公開:1969/10●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:早稲田松竹(78-05-20)(評価:★★★★)●併映:「俺たちに明日はない」(アーサー・ペン)
真夜中のカーボーイ [DVD]

「卒業」●原題:THE GRADUATE●制作年:1967年●制作国:アメリカ●監督:マイク・ニコルズ●製作:ローレンス・ター卒業 1967 pster.jpgマン●脚本:バック・ヘンリー/カルダー・ウィリンガム●撮影:ロバート・サーティース●音楽:ポール・サイモン卒業 1967 1.jpg/デイヴ・グルーシン●原作:チャールズ・ウェッブ「卒業」●時間:92分●出演:ダスティン・ホフマン/アン・バンクロフト/キャサリン・ロス/マーレイ・ハミルトン/ウィリアム・ダリチャr-ド・ドレイファス 卒業.jpgニエルズ/エリザベス・ウィルソン/バック・ヘンリー/エドラ・ゲイル/リチャード・ドレイファス●日本公開:1968/06●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:池袋・テアトルダイヤ(83-02-05)(評価:★★★★)●併映:「帰郷」(ハル・アシュビー)
卒業 [DVD]

映画パンフレット 「ミスターグッドバーを探して」.jpg「ミスター・グッドバーを探して」●原題:LOOKING FOR MR. GOODBAR●制作年:1977年●制作国:アメリカ●監督・脚本:リチャード・ブルックス●製作:フレディ・フィールズ●撮影:ウィリアム・A・フレイカー●音楽:アーティ・ケイン●原作:ジュディス・ロスナー「ミスター・グッドバーを探して」●時間:135分●出演:ダイアン・キートン/アラン・フェインスタイン/リチャード・カイリー/チューズデイ・ウェルド/トム・ベレンジャー/ウィリアム・アザートン/リチャード・ギア●日本公開:1978/03●配給:パラマウント=CIC●最初に観た場所:飯田橋・佳作座(79-02-04)(評価:★★☆)●併映:「流されて...」(リナ・ウェルトミューラー)
映画パンフレット 「ミスターグッドバーを探して」監督リチャード・ブルックス 出演ダイアン・キートン

FALLING IN LOVE 1984.jpg恋におちて 1984 dvd.jpg「恋におちて」●原題:FALLING IN LOVE●制作年:1984年●制作国:アメリカ●監督:ウール・グロスバード●製作:マーヴィン・ワース●脚本:マイケル・クリストファー●撮影:ピーター・サシツキー●音楽:デイヴ・グルーシン●時間:106分●出演:ロバート・デ・ニーロ/メリル・ストリープ/ハーヴェイ・カイテル/ジェーン・カツマレク/ジョージ・マーティン/デイヴィッド・クレノン/ダイアン・ウィースト/ヴィクター・アルゴ●日本公開:1985/03●配給:ユニヴァーサル映画配給●最初に観た場所:テアトル池袋(86-10-12)(評価:★★★)●併映:「愛と哀しみの果て」(シドニー・ポラック)
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YOU'VE GOT MAIL.jpgユー・ガット・メール dvd.jpg「ユー・ガット・メール」●原題:YOU'VE GOT MAIL●制作年:1998年●制作国:アメリカ●監督:ノーラ・エフロン●製作:ノーラ・エフロン/ローレン・シュラー・ドナー●脚本:ノーラ・エフロン/デリア・エフロン●撮影:ジョン・リンドリー●音楽:ジョージ・フェントン●原作:ミクロス・ラズロ●時間:119分●出演:トム・ハンクス/メグ・ライアン/グレッグ・キニア/パーカー・ポージー/ジーン・ステイプルトン/スティーヴ・ザーン/ヘザー・バーンズ/ダブニー・コールマン/ジョン・ランドルフ/ハリー・ハーシュ●日本公開:1999/02●配給:ワーナー・ブラザース映画配給(評価:★★★)ユー・ガット・メール [DVD]

SLEEPLESS IN SEATTLE.jpgめぐり逢えたら 映画 dvd.jpg「めぐり逢えたら」●原題:SLEEPLESS IN SEATTLE●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:ノーラ・エフロン●製作:ゲイリー・フォスター●脚本:ノーラ・エフロン/デヴィッド・S・ウォード●撮影:スヴェン・ニクヴィスト●音楽:マーク・シャイマン●原案:ジェフ・アーチ●時間:105分●出演:トム・ハンクス/メグ・ライアン/ビル・プルマン/ロス・マリンジャー/ルクランシェ・デュラン/ルクランシェ・デュラン/ギャビー・ホフマン/ヴィクター・ガーバー/リタ・ウィルソン/ロブ・ライナー●日本公開:1993/12●配給:コロンビア映画(評価:★★☆)めぐり逢えたら コレクターズ・エディション [DVD]

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やはり感動させられる「ロッキー」のシリーズ第1作。スタローンは自分で監督しない方がいい?

ロッキー 1976 dvd.jpg ロッキー2 dvd.jpg ロッキー3 dvd.jpg ロッキー4 dvd.jpg ステイン・アライブ dvd.jpg ランボー dvd.jpg
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ロッキー 1976 02.jpg 「ロッキー」('76年)は、シルヴェスター・スタローン(1946年生まれ)が当時、映画オーディションに50回以上落選し、ポルノ映画への出演や用心棒などをして日々の生活費を稼ぐ暮らしの中で、プロボクシングのヘビー級タイトルマッチ「モハメド・アリ対チャック・ウェプナー戦」をテレビで観てウェプナーの善戦に感激し、それに触発されて3日間で脚本を書き上げプロダクションに売り込んだもので、プロダクション側はその脚本に7万5千ドルという、当時としては破格の値をつけたということですから、脚本自体が良かったのでしょう(アカデミー賞作品賞・監督賞、ゴールデングローブ賞作品賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞作品賞などを受賞)。

ロッキー 1976 01.jpg プロダクション側は主演にポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、アル・パチーノなどの有名スターを想定していたのに対し(ジェームズ・カーンなども有力な主演候補だった)、スタローンはあくまで自分が主演することに固執したため、最終的に36万ドルまで高騰した脚本は、スタローンの主演と引き換え条件に2万ドルまで減額されたそうな。でも、結果的にスタローンは無名俳優から一躍スターダムに躍り出たわけで、主演に固執して良かった...(逆に言えば、窮乏生活に慣れていたので、カネには固執していなかった)。

ロッキー 03.jpg 日本でも公開当時、誰もがこの作品を観に映画館に押し掛ける状況で、アカデミー賞作品賞受賞、キネマ旬報でも年間1位と高評価。こうなると逆に事前に情報が入り過ぎてしまい、結局個人的にはロードでは観に行かなかったのですが、後で「ロッキー2」('78年)と併せて名画座に降りてきた頃になって遅ればせながら観て、筋書きは分かっていても、やはり感動させられました。

ロッキー4 01.jpg 但し、シルヴェスター・スタローン自身が監督した「ロッキー2」の方はイマイチ、更に、今度こそロードでと観に行った「ロッキー3」('82年)では、対戦相手クラバー(ミスター・T)が全然強そうに見えないのが難で、これもイマイチ。それに比べると、「ロッキー4 炎の友情」('85年)は、ドラゴ(ドルフ・ラングレン)の登場で、多少シリーズ最後を盛り上げたという印象で、個人的にはまあまあ許せるかなという感じでしたが、スタローン自身はこの「ロッキー4 炎の友情」で、ゴールデンラズベリー賞の最低主演男優賞を受賞しています。

レッド・スコルピオン 1.jpg 一方、ロッキーより強そうに見えたドラゴを演じたドルフ・ラングレンは、その後「レッド・スコルピオン」('88年/米)に主演。アフリカ南部の共産主義国家に潜入したソ連の特殊部隊兵士の活躍を描くアクション映画でしたが、何だか動きが鈍くなったような...。空手家としての実績もあり、6か国語を話すインテリでもあるそうですが、シルヴェスター・スタローン同様に監督業に進出する傍ら併せて俳優業を続けているものの、B級映画ばかり出ている印象でしょうか。因みに、「レッド・スコルピオンRed Scorpion -  Dolph Lundgren.jpgレッド・スコルピオン dvd.jpg」のプロデューサーのジャック・エイブラモフはその後共和党保守派のロビイストとなり、汚職事件でFBIに拘束されていますが、この映画自体にも当初から南アの極右派(アパルトヘイト推進派)が資金提供しているとの噂が囁かれていたとのこと、但し、映画の中にとりたてて人種差別的表現はありません。 
レッド・スコルピオン [DVD]

 ドルフ・ラングレンはローランド・エメリッヒ監督の「ユニバーサル・ソルジャー」('92年)で、べトナム戦争で戦死したものの25年後に軍の秘密兵器として甦る特殊部隊兵ユニバーサル・ソルジャー ps.jpgユニバーサル・ソルジャー 1992.jpg士を演じていますが、ジャン=クロード・ヴァン・ダム演じる同じく甦ったもう一人の兵士の方が善玉なのに対し、ドルフ・ラングレンの方はヒール役(悪玉)というのが相変わらずでした(まあ、ドルフ・ラングレンの方が見た目が強そうだというのもあるかもしれないが、妥当な配役か)。観た時は可もなく不可もない娯楽作品という印象でしたがそこそこ人気があったのか、その後「ユニバーサル・ソルジャー/ザ・リターン」('99年)、「ユニバーサル・ソルジャー:リジェネレーション」('09年)が作られ、ジャン=クロード・ヴァン・ダムは両方に主演、ドルフ・ラングレンは'09年の方に出ています(2人とも中年にして頑張っている?)。

 シルヴェスター・スタローンについても、シリーズ最後と謳った「ロッキー4」でロッキー・シリーズは実際には終わらず、「ロッキー5 最後のドラマ」(Rocky V、'90年)、そして更に16年後の「ロッキー・ザ・ファイナル」(Rocky Balboa、'06年)と続いたわけで(「ロッキー5」はスタローン自身が失敗作であったことを認め、だから"ザ・ファイナル"を作ったとのこと)、最後60歳でボクサー役でリングに上がったシルヴェスター・スタローンはすごいと言えばすごいけれど、やはり無理があったと言わざるを得ないのではないでしょうか(ボクシング関係者の一部には、ボクシングを冒涜しているとの声もあった)。

スタローン&シュワルツェネッガー.jpg 「ロッキー2」以降はシルヴェスター・スタローン自身が監督しているのですが、ボディビルダーから俳優に転じ、更には州知事も務めたアーノルド・シュワルツェネッガー(1947年生まれ)と比べると、シルヴェスター・スタローンという人は根っから映画が好きなんだなあという気がします。二人が本格共演を果たした「大脱出」('13年)のプレミアで、シルヴェスター・スタローンは アーノルド・シュワルツェネッガーについて「20年間、本当に互いを激しく嫌い合っていたんだ」と告白していますが、とはいえ、「それはいいライバルはなかなか見つからないということの証。次第にその存在に感謝するようになる。そうやって競い合ってきたから、こうして二人ここにいるのかも」と今は互いの存在を 認め合っていることを明かしています。個人的には、そもそも映画への関わり方が二人は違うのではないかと。アーノルド・シュワルツェネッガーが「俳優」であるのに対し、シルヴェスター・スタローンは「映画人」という印象であり、脚本を書くか書かないかの違いは大きいように思います。

ステイン・アライブ01.jpg 但し、シルヴェスター・スタローンの映画監督としての力量はどうなのかはやや疑問符も...。作品への思い入れが先行しているような感じもあり、ついていけない人もいるのではないでしょうか。「ロッキー」に関しては、シリーズを通しての熱烈なファンが多くいるようですが、「ロッキー3」と「ロッキー4」の間の時期に、「サタデー・ナイト・フィーバー」('77年)の続編としてシルヴェスター・スタローンが監督した「ステイン・アライブ」('83年、脚本もシルヴェスター・スタローン)は特に見るべきものの無い作品で、この映画に主演したジョン・トラボルタの長期低迷のきっかけになった作品とも言えるのではないかと思います。

ランボー ちらし.jpgランボー 01.jpg 因みに「ランボー」('82年)のシリーズ作も、全4作全てシルヴェスター・スタローンの脚本または彼が脚本参加しているものでしたが、第1作(「ロッキー3」と同じ年に作られている)の「ランボー1人 vs. 警官千人」に始まり、「ランボー/怒りの脱出」('85年)では「ランボー1人vs.ベトナム軍」、ランボー3/怒りのアフガン dvd.jpg「ランボー3/怒りのアフガン」('88年)では「ランボー1人vs.ソ連軍10万人」とスケール・アップするにつれて、当初のランボーのアウトローの孤独と哀しみは消え、すっかり超人ヒーローになってしまい、「ランボー3/怒りのアフガン」などは、見ていてちっともハラハラしない...。しかも、今思えば皮肉なことに、この作品は、ランボーがアフガン・ゲリラと協力してソ連軍と戦う内容になっていて、当時のアフガン・ゲリラの一派が後のタリバン内の過激武装勢力になっていくわけです。

 「ランボー3/怒りのアフガン」ではシルヴェスター・スタローン自身も'88年ゴールデンラズベリー賞の最低主演男優賞に選ばれてしまったぐらいで(実は'85年にも「ランボー/怒りの脱出」と「ロッキー4 炎の友情」の"合わせ技"で同賞の最低主演男優賞を受賞している)、20年ぶりの続編「ランボー/最後の戦場」('08年)でその汚名返上を図ったのか、このシリーズで初めて自らメガホンをとりますが、こちらは個人的には未見。でも、この人、あんまり自分で監督しないほうが...。

タリア・シャイア in「ロッキー」第42回ニューヨーク映画批評家協会賞助演女優賞受賞
ロッキー パンフ.jpgタリア・シャイア ロッキー.jpgrocky 1976 poster.jpg「ロッキー」●原題:ROCKY●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・G・アヴィルドセン●製作:アーウィン・ウィンクラー/ロバート・チャートフ●脚本:シルヴェスター・スタローン●撮影:ジェームズ・グレイブ●音楽:ビル・コンティ●時間:119分●出演:シルヴェスター・スタローン/タリア・シャイア/バート・ヤング/バージェス・メレディス/カール・ウェザース●日本公開:1977/04●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:池袋・文芸坐(81-01-22)(評価:★★★★)●併映:「ロッキー2」(シルヴェスター・スタローン)
「ロッキー」パンフレット

ROCKY2 1979.jpg「ロッキー2」●原題:ROCKYⅡ●制作年:1979年●制作国:アメリカ●監督:シルヴェスター・スタローン●製作:アーウィン・ウィンクラー/ロバート・チャートフ●脚本:シルヴェスター・スタローン●撮影:ビル・バトラー●音楽:ビル・コンティ●時間:119分●出演:シルヴェスター・スタローン/タリア・シャイア/バート・ヤング/カール・ウェザース/バージェス・メレディス●日本公開:1979/09●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:池袋・文芸坐(81-01-22)(評価:★★)●併映:「ロッキー」(シルヴェスター・スタローン)

ロッキー3 02.jpg「ロッキー3」●原題:ROCKYⅢ●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:シルヴェスター・スタローン●製作:アーウィン・ウィンクラー/ロバート・チャートフ●脚本:シルヴェスター・スタローン●撮影:ビル・バトラー●音楽:ビル・コンティ●時間:99分●出演:シルヴェスター・スタローン/タリア・シャイア/バート・ヤング/カール・ウェザース/ミスター・T/ハルク・ホーガン/バージェス・メレディス/トニー・バートン/イアン・フリード/ウォーリー・テイラー/ジム・ヒル/ドン・シャーマン●日本公開:1982/07●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:有楽町・丸の内松竹(82-10-22)(評価:★★)
marunouti syotiku.jpg旧丸の内松竹1.jpg旧丸の内松竹2.jpg丸の内松竹(初代).jpg旧・丸の内松竹 前身は1925年オープンの「邦楽座」(後の「丸の内松竹」)。1957年7月、旧朝日新聞社裏手に「丸の内ピカデリー」オープン(地下に「丸の内松竹」再オープン)。1984年10月2日閉館。1987年10月3日 有楽町マリオン新館5階に後継館として新生「丸の内松竹」(現:丸の内ピカデリー3)がオープン。


ロッキー4 炎の友情 .jpg「ロッキー4 炎の友情」●原題:ROCKYⅣ●制作年:1985年●制作国:アメリカ●監督:シルヴェスター・スタローン●製作:アーウィン・ウィンクラー/ロバート・チャートフ●脚本:シルヴェスター・スタローン●撮影:ビル・バトラー●音楽:ビル・コンティ●時間:91分●出演:シルヴェスター・スタローン/タリア・シャイア1977年8月6日 新宿京王 京王地下.jpg京王新宿ビル3.jpg京王三丁目ビル - 2.jpg/バート・ヤング/カール・ウェザース/ドルフ・ラングレン/ブリジット・ニールセン/ジェームス・ブラウン●日本公開:1986/06●配給:メトロ・ゴールドウィン・メイヤー/UA=UIP●最初に観た場所:新宿・京王2(86-06-07)(評価:★★★) 新宿京王・京王地下(京王2)新宿3丁目伊勢丹はす向い京王新宿ビル(現・京王三丁目ビルの場所)。1980年代後半に閉館。

レッド・スコルピオン bl.jpgレッド・スコルピオン  映画前売半券.jpg「レッド・スコルピオン」●原題:RED SCORPION●制作年:1989年●制作国:アメリカ●監督:ジョセフ・ジトー●製作:ジャック・エイブラモフ●脚本:アーン・オルセン●撮影:ホアオ・フェルナンデス●音楽:ジェイ・チャタウェイ●時間:106分●出演:ドルフ・ラングレン/M・エメット・ウォルシュ、アル・ホワイト/T・P・マッケンナ/カーメン・アルジェンツィアノ/ブライオン・ジェームズ/ジョセフ・ビッグウッド/ジェイ・チャタウエイ●日本公開:1989/01●配給:日本ヘラルド●最初に観た場所:三軒茶屋映劇(89-07-01)(評価:★★)●併映:「ダイ・ハード」(ジョン・マクティアナン)レッド・スコルピオン HDマスター版(Blu-ray Disc)
三軒茶屋映劇 2.jpg三軒茶屋シネマ/中央劇場.jpg三軒茶屋付近.png三軒茶屋映画劇場 1925年オープン(国道246号沿い現サンタワービル辺り)。1992(平成4)年3月13日閉館(左写真)。菅野 正 写真展 「平成ラストショー hp」より 同系列の三軒茶屋中央劇場(右写真中央)は1952年、世田谷通りの裏通り「なかみち街」にオープン。(「三軒茶屋中央劇場」も2013年2月14日閉館)  ①三軒茶屋東映(→三軒茶屋シネマ) ②三軒茶屋映劇(映画劇場)(現サンタワービル辺り) ③三軒茶屋中劇(中央劇場)

ユニバーサル・ソルジャー dvd 1992.jpgユニバーサル・ソルジャー1992 1.jpg「ユニバーサル・ソルジャー」●原題:UNIVERSAL SOLDIER●制作年:1992年●制作国:アメリカ●監督:ローランド・エメリッヒ●製作:アレン・シャピロ/クレイグ・ボームガーテン/ジョエル・B・マイケルズ●脚本:リチャード・ロススタイン/クリストファー・レイッチ/ディーン・デヴリン●撮影:カール・W・リンデンローブ●音楽:クリストファー・フランケ●時間:102分●出演:ジャン=クロード・ヴァン・ダム/ドルフ・ラングレン/アリー・ウォーカー/ジョセフ・マローン/エド・オロス/ジーン・デイヴィス/レオン・リッピー/ランス・ハワード/リリアン・ショウバン/チコ・ウェルズ/ジェリー・オーバック●日本公開:1992/11●配給:東宝東和(評価:★★★)
ユニバーサル・ソルジャー [DVD]

ステイン・アライブ dvd.jpgSTAYING ALIVE.jpg「ステイン・アライブ」●原題:STAYING ALIVE●制作年:1983年●制作国:アメリカ●監督:シルヴェスター・スタローン●製作:シルヴェスター・スタローン/ロバート・スティグウッド●脚本:シルヴェスター・スタローン/ノーマン・ウェクスラー●撮影:ニック・マクリーン●音楽:ビージーズ/フランク・スタローン●時間:96分●出演:ジョン・トラボルタ/シンシア・ローズ/フィノラ・ヒューズ/スティーヴ・新宿ジョイシネマ .jpgインウッド/ジュリー・ボヴァッソ/チャールズ・ウォード●日本公開:1983/12●配給:パラマウント映画=CIC●最初に観た場所:新宿ジョイシネマ(84-04-07)(評価:★★★)
新宿ジョイシネマ さよならフェスティバル.jpg新宿ジョイシネマ.jpg新宿ジョイシネマ 1947年12月「新宿地球座」としてオープン。1958(昭和33)年12月「地球会館」新築・落成、「新宿座」オープン。1984年1月「新宿ジョイシネマ」と改称。1995年7月~「新宿ジョイシネマ1」。(新宿ジョイシネマ2 1958年12月「新宿地球座」→1983年~「歌舞伎町松竹」→1995年7月~「新宿ジョイシネマ2」) 2009年5月31日(新宿ジョイシネマ1・2(地球会館)・3(中台ビル))閉館。[中写真:新宿劇場(1970年閉館)]

ランボー 82.jpgランボー1982.jpg「ランボー」●原題:FIRST BLOOD●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:テッド・コッチェフ●製作:バズ・フェイシャンズ●脚本:マイケル・コゾル/ウィリアム・サックハイム/シルヴェスター・スタローン●撮影:アンドリュー・ラズロ●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●原作:ディヴィッド・マレル「一人だけの軍隊」●時間:97分●出演:シルヴェスター・スタローン/リチャード・クレンナ/ブライアン・デネヒー/デビッド・カルーソ/ジャック・スターレット/マイケル・タルボット/デビッド・クロウレイ●日本公開:1982/10●配給:東宝東和●最初に観た場所:新宿ローヤル(84-09-24)(評価:★★★)一人だけの軍隊 ランボー (ハヤカワ文庫)
新宿ローヤル 地図.jpg新宿ローヤル.jpg新宿ローヤル劇場 88年11月閉館 .jpg
新宿ローヤル劇場(丸井新宿店裏手)1955年「サンニュース」オープン、1956年11月~ローヤル劇場、1988年11月28日閉館[カラー写真:「フォト蔵」より/モノクロ写真:高野進 『想い出の映画館』('04年/冬青社)より]

rambo 3 1988 movie.jpgランボー3/怒りのアフガン チラシ.jpg「ランボー3/怒りのアフガン」●原題:RAMBO 3●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:ピーター・マクドナルド●製作:バズ・フェイシャンズ●脚本:シルヴェスター・スタローン/シェルドン・レティック●撮影:ジョン・スタニアー●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●原作:ディヴィッド・マレル●時間:97分●出演:シルヴェスター・スタローン/リチャード・クレンナ/カートウッド・スミス●日本公開:1988/06●配給:東宝東和●最初に観た場所:歌舞伎町・新宿プラザ(88-07-10)(評価:★★)
新宿プラザ 閉館上映チラシ.jpg新宿プラザ劇場200611.jpg新宿プラザ劇場内.jpg 新宿プラザ劇場 1969年10月31日オープン、コマ劇場隣り (1,044席) 2008(平成20)年11月7日閉館

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冬の寒い日は、自宅でサーフィン映画を...か。意外と乙かも。

ビッグ・ウェンズデー dvd.jpg BIG WENSDAY 1978.jpg カリフォルニア・ドリーミング dvd.jpg 
ビッグ ウェンズデー [DVD]」/「Big Wednesday」(CD, Soundtrack, Import)/「魅惑の女優シリーズ カリフォルニア・ドリーミング [DVD]」/AMERICA - California Dreaming - Music From The Motion Picture Soundtrack

ビッグ・ウェンズデー 1.jpg 60年代初め、カリフォルニアの海辺の町で、マット(ジャン=マイケル・ヴィンセント)、ジャック(ウィリアム・カット)、リロイ(ゲイリー・ビジー)を中心とする若者たちで作るサーフィン・グループは、水曜日にやって来るという世界最大の波"ビッグ・ウェンズデー"に挑戦することを夢見ていた。そんな頃、彼らにもベトナム戦争の徴兵令状がきた。グループの大半が懲兵を免れようとしている中で、優等生だったジャックは懲兵検査を受けて、ベトナムへと出征していった―。

Big Wednesday (1978 Warner Bros).jpg サーファーの一部には、夏の天気がいい日は海辺でサーフィンに勤しみ、冬の寒い日や海が時化たりした日などには、自宅でサーフィン映画を観たりする習慣があるそうな(サーファーでなくとも、意外と乙かも)。「ビッグ・ウェンズデー」('78年/米)は、そうした際の定番映画らしく、ジョン・ミリアス監督が35歳の頃に「自分たちの青春時代を思い出して作った」そうですが、青春の悩み、暴走、反発、落胆、挫折、恋などを盛り込んだ青春映画であるとともに、ベトナム戦争への若者の複雑な思いも反映されています。

ビッグ・ウェンズデー 2.jpg ジョージ・ルーカス監督の「アメリカン・グラフィティ」('73年)では、ラストシーン(エピローグ)で、青春時代の仲間たちの一人がベトナムで戦死(行方不明)したことを伝えていましたが、この映画では、ベトナムへ行った仲間の戦死を悼む場面はあるものの、ジャックは生きて戻ってきます。そのジャックを2人が迎えるシーン、更に3人で颯爽と"ビッグ・ウェンズデー"へ向かうシーンがいいです。「生きていて良かった」という実感があり、アメリカ中心的と言えばそう言えなくもないですが、そうした見方に対しては、アメリカ側からすれば「戦争をやっていない国の人間が何を言うか」という感じになるのかも(因みに、ジョン・ミリアスはアーノルド・シュワルツェネッガー主演の「コナン・ザ・グレート」('82年)の監督でもあり、共和党支持者であると共に反共主義者としても知られている)。

ジャン=マイケル・ヴィンセント.jpgジャン=マイケル・ヴィンセント big wednesday.jpg この映画を観て、ジャン=ウィリアム・カット2.jpgマイケル・ヴィンセント(Jan-Michael Vincent)は、結構スター性があるように思ったけれど、意外と伸びなかったなあ(「アメリカン・グラフィティ」のポール・ル・マットなどもそうだったが)。ジャン=マイケル・ヴィンセントは菜食主義者だそうゲイリー・ビジー.jpgで、自分の私生活を大切にするタイプだったのかと思ったら、アルコール依存症とドラッグの問題で映画界から消えていきました(ゲイリー・ビジーの方がまだ、アクション映画に悪役としてよく出演している)。

ウイリアムカット.jpgウィリアム・カット ビッグ・ウェンズデイ4.jpg 徴兵に応じたジャックを演じたウィリアム・カット(William Katt)は、80年代に入って「新・弁護士ペリー・メイスン」で腕利き調査員ポール・ドレイク・ジュニア役でその姿を見られたのが嬉しかったです。この役どころは約30年前の旧シリーズ(日本ではフジテレビが1959年3月の開局時に放映)での調査員の息子役。当時の調査員ポール・ドレイク役のウィリアム・ホッパーが既に亡くなっていたためで、一方、レイモンド・バーと秘書デラ役のバーバラ・ヘイルは30年ぶりのシリーズ共演でした。


カリフォルニア・ドリーミング_2.jpgカリフォルニア・ドリーミング 映画パンフ.jpg ハイスクールを卒業し、大学入学までの夏期休暇を憧れのカリフォルニアで過ごすためシカゴからやってきたTT(デニス・クリストファー)は、初老のデューク(シーモア・カッセル)の家に泊まることになる。そこの娘コーキー(グリニス・オコナー)は最初はTTのことを田舎者として疎んじていたが―。
『カリフォルニア・ドリーミング』映画パンフレット
 「カリフォルニア・ドリーミング」('79年/米)は、サーフィン映画とまで言えるかどうか分かりませんが、「ビッグ・ウェンズデー」と同じ頃の青春映画で、シカゴから憧れの地カリフォルニアにやってきた少年が体験するビーチ・ライフを描いた作品でした。

カリフォルニア・ドリーミング 2_2.jpg 結局、"ひと夏の体験"物語という感じで、デュークが昔サーフィンの世界チャンピオンだったのは、実は法螺話では無かったというサイドストーリーがありますが、そもそも主人公は女の子をゲットしたくてカリフォルニアに来ただけだったのか、そこのところがよく分からない。様々な男女の恋愛模様を見せつつも、やや薄っぺらい印象も

カリフォルニア・ドリーミング 1.jpg ママス&パパスのデビュー・シングルにして最大のヒット曲となった「夢のカリフォルニア」(映画内ではアメリカがカバー)が耳に心地よいですが、このオールディーズ・ナンバーだけが強く耳に残ったかな。あとはグリニス・オコナー(Glynnis O'Connor/右)の当時の豊胸か(最近では「LAW & ORDER ロー&オーダー」に出ている)。後に「チャーリーズ・エンジェル」のレギュラーメンバーとなり、ボンド・ガールにもなるタニア・ロバーツ カリフォルニア・ドリーミング.jpgタニア・ロバーツ(Tanya Roberts/左)も出ていました(「007 美しき獲物たち」('85年/英)に出る前に、「ミラクルマスター 七つの大冒険」('82年/米)や「シーナ」('84年/米)にも出ていた)。この「カリフォルニア・ドリーミング」は、個人的評価は別にして、それなりに固定ファンがいるはずなのに、永らくDVD化されず今年['13年]になってやっとリリースされたのは、カバー曲の著作権関係が複雑なためなのでしょうか?(VHS及びこれまでのCS放映版では、「CALIFORNIA DREAMIN」の歌が無くて別のインストルメンタルの曲になっている)、それともB級青春映画として近年になって再評価されたためなのか?
グリニス・オコンナー/デニス・クリストファー
CALIFORNIA DREAMING2.jpgCALIFORNIA DREAMING1.jpg 「カリフォルニア・ドリーミング」の主人公の、見ている方が気恥ずかしくなるような青臭さと対比すると、「ビッグ・ウェンズデー」の男同士の強固な友情からは(精神的な)ホモセクシュアルの雰囲気すら感じられるというのは穿った見方でしょうか。

ビッグ・ウェンズデー  ps.jpgBig Wednesday (1978).jpgBIG WEDNESDAY .jpg「ビッグ・ウェンズデー」●原題:BIG WENSDAY●制作年:1978年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ミリアス●製作:バズ・フェイトシャンズ/アレクサンドラ・ローズ●脚本:ジョン・ミリアス/デニス・アーバーグ●撮影:ブルース・サーティース●音楽:ベイBIG WEDNESDAY.jpgジル・ポールドゥリス●時間:119分●出演:ジャン=マイケル・ヴィンセント/ウィリアム・カットBIG WEDNESDAY   .jpg/ゲイリー・ビジー/リー・パーセル/サム・メルヴィル/パティ・ダーバンヴィル/ダレル・フェティ/ジェフ・パークス/レブ・ブラウン/デニス・アーバーグ/リック・ダノ/バーバラ・ヘイル/ジョー・スピネル/ロバート・イングランド●日本公開:1979/04●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場所:テアトル吉祥寺(82吉祥寺パーキングプラザ.jpg-03-13)(評価:★★★☆)●併映:「カッコーの巣の上で」(ミロシュ・フォアマン)           
吉祥寺ピカデリー.jpgテアトル吉祥寺.jpgテアトル吉祥寺 (1999年〜吉祥寺ピカデリー) 1979年、吉祥寺パーキングプラザ(右写真・現)地下1階にオープン。2000(平成12)年5月22日閉館
        
PERRY MASON katt.jpgペリー・メイスン ウィリアム・カット.jpg
ペリー・メイスン.jpg
「新・弁護士ペリー・メイスン」(原作:E・S・ガードナー)PERRY MASON (CBS 1985~1988) ○日本での放映チャネル:NHK‐BS2

出演:レイモンド・バー/バーバラ・ヘイル/ウィリアム・カット


CALIFORNIA  DREAMING 1979.jpg「カリフォルニア・ドリーミング」●原題:CALIFORNIA DREAMING●制作年:1979年●制作国:●アメリカ●監督:ジョン・ハンコック●製作:クリス・ウィテカリフォルニア・ドリーミング グリニス・オコナー.jpgィカー●脚本:ネッド・ウィン●撮影:ボビー・バーン●音楽:フレッド・カーリン(主題歌「カリフォルニア・ドリーミング」(アメリカ) )●時間:93分●出演:デニス・クリストファーグリニス・オコナー/シーモア・カッセル/ドロシー・トリスタンカリフォルニア・ドリーミング タニア・ロバーツ.jpg/ネッド・ウィーン/ジョン・カルビン/タニア・ロバーツTanya Roberts.jpgジョン・カルヴィン/トッド・サスマン/アリス・プレイトン/ネッド・ウィン/ジェームズ・ヴァン・パタン/ヴィヴィアン・ボネル/ジェームズ・ステイリー/ ボニー・バートレット●日本公開:1979/06●配給:松竹=富士映画●最初に観た場所:高田馬場カリフォルニア・ドリーミング タニア・ロバーツ1.jpgパール座(83-02-27)(評価:★★☆)●併映:「さらば青春の光」(フランク・ロダム)タニア・ロバーツ2.jpgタニア・ロバーツ27.jpg
タニア・ロバーツ(「007 美しき獲物たち」('85年/英))

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有名MBA出身でありながら反商業主義を貫き、高い国際的評価を得ているのが興味深い。

タヒミック 悪夢の香り.jpg The Perfumed Nightmare 3.jpg  トゥルンバ祭り dvd.png  Kidlat Tahimik.jpg
"Perfumed Nightmare"(悪夢の香り,1977)    "Turumba"(トゥルンバ祭り,1983)  Kidlat Tahimik

The Perfumed Nightmare 橋.jpg 貧しいフィリピン青年の「僕」キドラット(キドラット・タヒミック)はジムニー(小型乗合バス)の運転手であるが、将来は宇宙飛行士を夢みている。僕のジプThe Perfumed Nightmare ジムニー.jpgニーがアメリカ人のビジネスマン(ハルムート・レルヒ、この作品の共同撮影カメラマン)の気に入り、ひとまずパリに赴くことになって、村をあげての大騒ぎの中、憧れの地へ発つが、日夜チューインガム自販機を詰め替える単純作業に追われ、夢は遠のく。巨大なスーパーの煙突の中に身を隠し、故郷を想う僕は、進歩という観念そのものに疑問を抱くようになる―。

キドラット・タヒミック2.jpg 1977年にフィリピンの映像作家キドラット・タヒミック監督(Kidlat Tahimik 、1942年生まれ)が発表した彼のデビュー作で、スペイン人が造った橋、アメリカの軍用車を改造したジプニー、月ロケットなどをモチーフに、フィリピン社会に染みついた植民地主義を、とぼけたユーモアや温かい詩情、ファンタジックで時にナンセンスな展開、ドキュメンタリー風の映像などを通して炙り出した作品です。

 '82年にヤクルトホールで行われた「国際交流基金映画祭~南アジアの名作をもとめて」(南アジア映画祭)にて上映され、監督本人も会場に来ていましたが、紹介されると突然一般観客席から立ち上がって挨拶するなど、実に剽軽な人でした(当時40歳くらいか。この作品を撮ったのはその5年前)。

 この作品は、'77年のベルリン国際映画祭国際映画批評家連盟賞を受賞し、'81年にはフランシス・フォード・コッポラの配給によってアメリカでも公開されていますが、日本では、その後'96年にシネマトリックスの配給で、「BOX東中野」にて、特集上映「キドラット・タヒミックの世界」の1作として上映されています(昨年(2012年)には、アテネフランセ文化センターの特集「アジア映画の森」でも上映)。

 監督自身はその後もインディペンデント映画作家としての立場を貫いており、最近日本でも若手のインディペンデント系映像作家が海外の映画祭で賞を獲るなどしていますが、彼は、アジアにおける先駆的な個人映画作家として、2012年に「福岡アジア文化賞」を受賞しています。

 同監督による第2作は「月でヨーヨー」(1979)という、これもファンタジー的要素のある作品(フィリピンはヨーヨー発祥の地らしい)、第3作「トゥルンバ祭り」(1983)で、トゥルンバ祭り 02.jpgフィリピンの田舎町で行われる熱狂的な大祭を背景とした物語を描いて国際映画賞を受賞しています(マンハイム・ハイデルベルグ国際映画祭映画「新興国のための審査員賞」)。'87年に第2回東京国際映画祭(アジア秀作映画週間部門)にて上映されたのを観ましたが、馬や犬のマスコトゥルンバ祭り 01.jpgットを家族で作って祭りで売っていた祖母と少年が、ある日ドイツのデパートの女性バイヤー(カタリーナ・ミューラー)がたまたま通りかかって、大量注文をしたために家族は大騒動となるという、ちょっと「悪夢の香り」と似た展開。但し、"日記映画作家"と呼ばれるだけあって、祭りの準備をする人々や本番の祭りの模様を記録映画風に描いていて、ドキュメンタリータッチがより色濃く出ています。また、単に反商業主義・反植民地主義というだけでなく、土着的、アジア文化的なものへの回帰指向もより鮮明になっています。この辺りは、「悪夢の香り」の主人公である「僕」が、最後に文明批判に目覚め、先住民の友達の教えを思い出して帰国するという結末からの流れを汲んでるともとれます。

キドラット・タヒミック4.jpg 今やその風貌や語り口から仙人のような趣を醸す同監督ですが(50代になってからマニラを離れ、山間部に移り住んでいる)、元々は富裕知識階層の出身で、ペンシルバニア大学ウォ―トンスクール(米国でもトップクラスとされるMBA)で経営学の修士号を取得し、パリで経済協力開発機構(OECD)の研究員をしていたという、かつては自他共に認めるバリバリのエコノミストでした。その彼が、帰国してから経済人への道をではなく、自主制作映画作家としての道を歩み(MBAの卒業証書を破り捨たというから相当の覚悟だったのか)、反商業主義を貫いて、国際的に高く評価される映像作家になったというのが興味深いです(相変わらず祭り好きの、剽軽なオッサンである点は変わらないみたいだけど)。

2012tahimik.jpgキドラット・タヒミック3.jpg福岡アジア文化賞受賞スピーチ(2012)
 
 
 
  
 
 

タヒミック氏とカタリーナ・ミューラー夫人(美術担当、「悪夢の香り」「トゥルンバ祭り」両作品に出演)
   

The Perfumed Nightmare2.jpg悪夢の香り 1シーン.jpg「悪夢の香り」●原題:KIDLAT WORLD MABABANGONG BANGUNGOT(Perfumed Nightmare)●制作年:1977年●制作国:フィリピン●監督・製作・脚本・撮影:キドラット・タヒミック●共同撮影:ハルトムート・レルヒ●音楽:エフゲニー・グレボフ●時間:95分●出演:キドラット・タヒミック/ジェジェット・ボードリィ/マン・フェリィ/ハルムート・レルヒ/カタリーナ・ミューラー/ドロレヤクルトホール.jpgス・サンタマリア●日本公開:1982/10(劇場公開:1996/11)●配給:国際交流基金(劇場公開:シネマトリックス)●最初に観た場所:新橋・ヤクルトホール(82-10-16)(評価:★★★★)●併映:「田舎の教師」(スラスィー・パータム)/「ミュージカル女優」(シャーム・ベネガル)/「ふたりは18歳」(トグゥ・カルヤ) Mababangong bangungot (1977)

ヤクルトホール 1972年、東新橋・ヤクルト本社ビル内にオープン

「トゥルンバ祭り」●原題:TURUMBA●制作年:1983年●制作国:フィリピン●監督・脚本:キドラット・タヒミック●撮影:ロベルト・イニゲス●音楽:マンディ・アファング●時間:87分●出演:ホーマー・アビアド/イニゴ・ヴィト/マリア・ペヒポシネセゾン渋谷.jpgル/パティ・アバリ/カタリーナ・ミューラー●日本公開:1987/09●配給:シシネセゾン渋谷 チケット.jpgネセゾン●最初に観た場所:シネセゾン渋谷(87-09-26)(評価:★★★☆) シネセゾン渋谷 1985年11月6日、渋谷道玄坂「ザ・プライム渋谷」6Fにオープン。2011年2月27日閉館。
シネセゾン渋谷closing.jpg

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ロシアン・ゴチック・ミステリー。プロットはともかく、独特の雰囲気を持った作品。
Savage Hunt of King Stakh (1979).jpg
スタフ王の野蛮な狩り ポスター.jpgスタフ王の野蛮な狩り スタフ王.jpg スタフ王の野蛮な狩り4.jpg
"ДИКАЯ ОХОТА КОРОЛЯ СТАХА"「The Savage Hunt of King Stakh / Dikaya Okhota Korolya Stakha [Import] [DVD]

スタフ王 主人公.jpgスタフ王2.jpg 1899年、ベロルシアのポレーシエ村に、ペテルスブルグートニコフの大学生アンドレイ・ベロレツキー(ボリス・プロ)が、民俗学研究として民話の取材にやって来た。彼が雨やどりをした古い館には、美しい女性ナジェージタ(エレン・ディミートロワ)が住んでいた。17世紀始めのポレーシエには、「スタフ王」と呼ばれる農奴制の改革を訴えて決起した農民らにとっての英雄がいたが、反目する金持の貴族ロマン・ヤノフスキーによってスタフは狩猟中に殺害され、今際の際(いまわのきわ)に、ヤノフスキー家の一族を呪い殺すことを誓ったという。その最初の儀牲者となったのがロマン・ヤノフスキーで、ナジェージタはヤノフスキーの最後の血縁者だった―。

スタフ王 儀式.jpgスタフ王の野蛮な狩り 小人.jpg アンドレイはこの家で、ナジェージダが全裸で羽毛に包まれ召使いの老婆が呪文を唱えていたり、執事が怪しげな行動をとったりするなど、不思議なことを目撃する。ナジェージタの誕生パーティが開かれ、彼女の伯父ドゥボトフク(ロマン・フィリッポフ)が、高価な贈り物をする。やがて執事が殺され、彼の弟の小人の存在が明らかになる。そのころ村では、スタフ王の亡霊が出没し、人々を恐怖の底に陥れていた。アンドレイは村人たちを励ましてスタフ王と騎士たちに挑み、その正体を明らかにする―。

King Stakhs Wild Hunt.jpgスタフ王9.jpg ロシアン・ゴチック・ミステリーいう感じでしょうか。「ベロルシア」は「ベラルーシ」のことで(従って今のロシアには含れない)、ポレーシエは湿地帯の多い地方のようです(コナン・ドイルの『バスカヴィル家の犬』の舞台になった英国のダートムアみたいな感じか)。ベラルーシの作家ウラジミール・コロトケヴィチの作品を基に映画化されたそうで、この作家がどういう作品を書いているのかよく分からないのですが、スタフ王伝説というのは実際にあるそうです。

King Stakh's Wild Hunt [NOOK Book(USA)]
スタフ王1.jpg
 冒頭からおどろおどろしい雰囲気に満ちていて、古城や貴族の邸などもホンモノらしいスケールを感じさせましたが、観終わってみれば「な~んだ」という感じがしなくもないプロットでした。でも、それは観終わってから思うことであって、民話的・幻想的な雰囲気は、観る側を引き込むものがあったと思います。「ソ連」のミステリ映画ってそれまで観たことが無かったし、そもそも最初に観た時はミステリ映画だとは知らないで観たので、展開の予測がつかなかったというのもあったと思います。

 ラストが、"スタフ王"をやっつけて目出度し目出度しではなく、アンチカタルシス気味の作りになっているため、この辺りで作品への"評価"と言うより"好み"が分かれるかも。個人的には、冒頭勢いがあっただけに、その分、中盤がやや緩慢に感じられました。まあ、他にあまり類の無い、独特の雰囲気を持った作品であることは間違いないです。

スタフ王の野蛮な狩り 5.jpg「スタフ王の野蛮な狩り」●原題:ДИКАЯ ОХОТА КОРОЛЯ СТАХА(THE SAVAGE HUNT OF KING STACH)●制作年:1979年●制作国:ベロルシア共和国(ベラルーシ共和国)●監督:ワレーリー・ルビンチク●脚本:ウラジミール・コロトケヴィチスタフ王の野蛮な狩り 娘.png/ワレーリー・ルビンチク●撮影:タチャーナ・ロギーノワ●音楽:エフゲニー・グレボフ●原作:ウラジミール・コロトケヴィチ"King Stakh's Wild Hunt"(Belarusian: Дзікае паляванне караля Стаха)●時間:109分●出演:草月ホール.jpgボリス・プロートニコフ/エレン・ディミートロワ/ワレンチナ・シェンドリコワ/アルベルト・フィローゾフ/ロマン・フィリッポフ●日本公開:1983/05●配給:日本海映画●最初に観た場所:赤坂・草月ホール(83-06-11)(評価:★★★☆)●併映:「戦火を越えて」(レーゾ・テヘイゼ)/「七発目の銃弾」(アリ・ハムラーエフ)/「ジプシーは空に消える」(エミーリ・ロチャヌー)/「狩場の悲劇」(エミーリ・ロチャヌー)
草月ホール 赤坂・草月会館(1958年竣工・1977(昭和52)年建て替え)内

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ノン・シリーズものの原作を改変して原作より面白くなるならばともかく、そうもなっていない。

007 死ぬのは奴らだps.jpgミス・マープル3 無実はさいなむ dvd.jpg ミス・マープル3 無実はさいなむ 4人兄弟.jpg
アガサ・クリスティーのミス・マープルDVD-BOX3」「007 死ぬのは奴らだ アルティメット・エディション [DVD]

ミス・マープル3 無実はさいなむ グェンダ.jpg ミス・マープル(ジェラルディン・マクイーワン)は、昔マープル家で奉公していたグェンダ(ジュリエット・スティーヴンソンが、自分が秘書を勤める歴史家リオ・アーガイル(デニス・ローソン)と婚約したため、その結婚祝に招待される。リオの妻レイミス・マープル3 無実はさいなむ シーモア.jpgチェル(ジェーン・シーモアは2年前に書斎で殺害されていて、犯人とされた養子のジャッコ(バーン・ゴーマン)は日頃から問題児で、その日もグェンダに金の無心をしに来てと口論になり、彼女に掴 ミス・マープル3 無実はさいなむ キャルガリ.jpgみかかっていた。彼は殺害時刻には他人の車に乗っていたとアリバイを主張するも、証人が現れず死刑になっていた。ケンブリッジ大学の動物学者アーサー・キャルガリ(ジュリアン・リンド・タットは、南極探検で英国を離れていて帰国してから古い新聞記事で、自分が処刑されたジャッコの証言にある人物であることに思い当り、ジャッコの無実を告げにアーガイルの邸サニー・ポイントに駆けつける―。

ミス・マープル3 無実はさいなむ キャルガリの訪問.jpg 邸にはリオ家族である、長女メアリ(リサ・スタンスフィールド)、長男ミッキー(ブライアン・ディック)、次女ヘスター(ステファニー・レオニダス)、ジャッコの双生児ボビー(トム・ライリー)、末女で混血児のティナ(グーグー・ムバサ・ロー)がいて、ジャッコと同様、皆レイチミス・マープル3 無実はさいなむ フィリップ.jpgェルの養子だった。リオ、グェンダ、養子の兄弟姉妹の外には、メアリの夫で車椅子生活のフィリップ・デュラント(リチャード・アーミテージと、家政婦のカーステン・リカーステン・リンツトロム(<font color=deeppink>アリソン・ステッドマン</font>).jpgンツトロム(アリソン・ステッドマンがいた。キャルガリがもたらしたジャッコ冤罪の知らせは皆を喜ばせることはなく、むしろ家族の間で疑心暗鬼が深まる。ミス・マープルが家政婦カーステンから家族の事情を聞くと、レイチェルの葬儀の日に、ジャッコが密かに結婚していた妻モーリーン(アンドリア・ロウ)が家を訪ねて来たと言う。翌日、ヒュイッシ警部補(リース・シェアスミス)が到着して捜査を始めると、家族間の疑心暗鬼は更に深まり、カーステンは、リオの妻の座を狙った秘書のグェンダが犯人だと糾弾する。そのグェンダが、何者かによってレター・オープナーで刺殺される―。

無実はさいなむ ハヤカワ・ミステリ文庫 .bmpMiss Marple & Lisa Stansfield as Mary Durrant.jpg 2007年に本国イギリスで放映されたジェラルディン・マクイーワン主演の英国グラナダ版で、この年から翌年にかけて作られたシーズン3全4話の内の第2話(通算第10話)であり、日本ではNHK‐BS2で2010年3月24日に初放映。原作はアガサ・クリスティ(1890‐1976)の、1958年に発表された作品で(原題:Ordeal by Innocence)、で、ポアロもミス・マープルも登場しないノン・シリーズものでで、クリスティはマイベスト10に選んでいますが、巷では評価が割れている作品です。

Miss Marple & Lisa Stansfield as Mary Durrant

 原作はミス・マープルものではないため、グェンダがミス・マープルの元奉公人という話は当然のことながら無く、ジャッコは刑死ではなく無期懲役で獄中で病死しており、キャルガリの専門は動物学ではなく地理学、彼を除く養子の兄弟姉妹は、長女メアリ・デュラント、長男ミッキー、次女ヘスター、末娘ティナの4人で、ジャッコの双子の兄弟ボビーというのは登場しません(グェンダがミス・マープルの元奉公人ということで視聴者目線では容疑者から外れるため、容疑者の人数合わせで一人足した?)。

ヒュイッシ警部補.jpgMiss Marple and Gwenda Vaughan.jpg 前半部分は、ほぼそれ以外は原作通りに進行しますが、原作では、キャルガリが真相究明に燃えるほか、フィリップも真実の解明に乗り出しますが、この映像化作品では、キャルガリの推理は冴えず、フィリップは推理することすらしないし、原作のヒュイッシ警視は、原作より年齢が下の"警部補"になっていて、あまり冴えないメガネ男に変えられている―要するに、オイシイ箇所は全てミス・マープルが持って行ってしまった感じです。
Miss Marple and Juliet Stevenson as Gwenda Vaughan

 後半部分になると急に改変が目立つようになり、グェンダは刺殺されるわ、ボビーは溺死するわで、これみんな原作には無い話です(原作では、真相に近づき過ぎたフィリップが殺害され、事件当日の不審な出来事を思い出したティナも刺される)。特に、グェンダを殺してしまったのは、ちょっとねえという感じ。「ポケットにライ麦を」でも、ミス・マープルの元奉公人が殺害されますが、あれは原作通りだからいいとして、わざわざ改変してまで殺さなければならなかったのかなあ。容疑を掛けられたまま殺されたグェンダが気の毒過ぎました。

キャルガリ.jpg 原作では、事件解決後に、キャルガリとヘスターとの間に恋が芽生えるのですが、これも無し(それ以前に、ヘスターの恋人で医師のドナルドというのが登場するが、これも出てこない)。まあ、ラストのヘスターの新たな恋の目覚めは、原作においても唐突感があるため端折ってもいいかなという気はするし、さすがに真犯人までは変えていなかったけれど、様々な改変によって原作より面白くなるならばともかく、そうもなっていないため、自分としてはイマイチでした。
Julian Rhind-Tutt as Dr Arthur Calgary

Jane Seymour
Jane Seymour 007.pngJane Seymour 3.jpg  グェンダ役のジェーン・シーモアは、"007シリーズ"第8作、ガイ・ハミルトン監督、ロジャー・ムーア主演「007死ぬのは奴らだ」('73年/英)のボンドガールであり、自分が初めて映画館で見た007作品であるため懐かしかったです。この作品も、"007シリーズ"の中で評価が割れている作品ですが、個人的なそう嫌いではないです(懐かしさもあって)。

ジョアンナ・ラムレイ .jpgティモシー・ダルトン.jpg この"ミス・マープル"シリーズの第8話「シタフォードの謎」('06年)では、ロジャー・ムーアの次にボンド役を演じたティモシー・ダルトンが登場し、また、第1話「書斎の死体」('04年)第20話「鏡は横にひび割れて」('10年)には、「女王陛下の007」('69年/英)のボンドガール、ジョアンナ・ラムレイが登場しています。

ミス・マープル3 無実はさいなむ title.pngミス・マープル3 無実はさいなむ 食卓.jpg「アガサ・クリスティー ミス・マープル(第10話)/無実はさいなむ」●原題:ORDEAL BY INNOCENCE, AGATHA CHRISTIE`S MARPLE SEASON 3●制作年:2007年●制作国:イギリス●演出:モイラ・アームストロング●脚本:スチュアート・ハーコート●原作:アガサ・クリスティ「バートラム・ホテルにて」●時間:93分●出演:ジェラルディン・マクイーワン/ジュリエット・スティーヴンソン/デニス・ローソン/アリソン・ステッドマン/リチャード・アーミテージ/ステファニー・レオニダス/リサ・スタンスフィールド/バーン・ゴーマン/ジェーン・シーモア/トム・ライリー/リース・シェアスミス/ジュリアン・リンド・タット/ブライアン・ディック/グーグー・ムバサ・ロー/マイケル・フィースト/ピッパ・ヘイウッド/カミーユ・コドゥリ●日本放送:2010/03/23●放送局:NHK‐BS2(評価:★★★)
「007 死ぬのは奴らだ」0.jpg
クレオパトラ=ジェーン・シーモア.jpgJane Seymour2.jpg「007 死ぬのは奴らだ」●原題:LIVE AND LET DIE●制007 死ぬのは奴らだ dvd.jpg作年:1973年●制作国:イギリス●監督:ガイ・ハミルトン●製作:ハリー・サルツマン/アルバート・R・ブロッコリ●脚本:トム・マンキーウィッツ●撮影:テッド・ムーア●音楽:ジョージ・マーティン● 原作:イアン・フレミング●時間:121分●出演:ロジャー・ムーア/ヤフェット・コットー/ジェーン・シーモア/クリフトン・ジェームズ/ジュリアス・W・ハリス/ジェフリー・ホールダー/デイヴィッド・ヘディソン/グロリア・ヘンドリー/バーナード・リー/ロイス・マクスウェル●日本公開:1973/07●配給:ユナイテッド・アーティスツ(評価:★★★☆) 
死ぬのは奴らだ (アルティメット・エディション) [DVD]

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囚人チーム対看守チームのフットボール試合。男臭い映画を観たい人にお薦め。

The Longest Yard(1974).jpgBurt Reynolds THE LONGEST YARD.jpg ロンゲスト・ヤード.jpg 『ロンゲスト・ヤード』(1974).jpg
ロンゲスト・ヤード [DVD]」バート・レイノルズ
The Longest Yard(1974)
 元プロ・フットボール選手で今は女性のヒモ暮らしというポール・クルー(バート・レイノルズ)は、そんな生活から抜け出そうと彼女の高級車を奪って逃げ出し、警察とのカーチェイスの末にパトカーを壊して逮捕されて懲役3年の刑でテキサス州の刑務所に入る。刑務所のヘイズン所長(エディ・アルバート)はポールをフットボールの看守チームの強化に利用しようと考えるが、チームリーダーのクナウア看守長(エド・ローター)にはポールの存在が面白くない。所長は、囚人チームを作り、看守チームと八百長試合をやって看守チームに勝たさせようと計画、堂々と看守を殴れるとあって囚人チームには怪力のメンバーが集まるが、所長は試合の途中でポールに21点差で負けろと指ロンゲスト・ヤード58.jpg示、反抗すれば密告屋アンガー(チャールズ・タイナー)の便利屋(ジム・ハンプトン)殺人事件の共犯にして20年は刑務所を出られないようにすると脅す。前半互角だった囚人チームは、ポールの手抜きプレーで次第に負けていって21点差がつき、それ以降は看守チームが囚人チームへ暴力を振るわないというのがポールが所長と交わした約束だったのに、所長は看守長に逆の指示を出し、堂々と戦うつもりだったは看守長も、鼻白みながらも所長の指示には逆らえない。そんな中、囚人『ロンゲスト・ヤード』(1974)2.jpgチームのチームメイト、グランヴィル(ハリー・シーザー)が退場する際に吐いた「お前を信用したのが間違いだった」との捨てゼリフがポールを目覚めさせる―。

 ロバート・アルドリッチ監督の看守対囚人のフットボールの試合を描いた作品であり(主演のバート・レイノルズはフットボール選手出身)、観終わった後の印象も爽やか。個人的には、三鷹オスカーでバート・レイノルズ主演の3本立ての内の1本として観ましたが、この作品の役が一番ハマっていたように思います(併映は、ハル・ニーダム監督の「トランザム7000」('77年)とジョージ・G・アビルドセン監督の「デキシー・ダンスキングス」('74年))。

 公開当時、興業的にも成功し、2005年にはピーター・シーガル監督によりリメイクされ、ボブ・サップなどの元NFL選手やプロレスラーが囚人および看守役で多数出演しており(バート・レイノルズもコーチ役で出演)、"コメディ仕様"とのことですが、こちらは未見です。

Ed Lauter.jpg オリジナル版の魅力は、主演のバート・レイノルズの男臭さもさることながら、やはり脇役陣が充実していることでしょうか。刑務所長役のエディ・アルバート、看守長役のエド・ローターをはじめ、個性的な役者が勢揃いし(007の"ジョーズ"ことリチャード・キールなども出ている。選手探しをするところが「七人の侍」みたいで面白い)、最後に看守長がポールに対して男同士の友情のような気持ちを抱くようになるところまで含め、定番的なストーリーとの予測がつくにしても、やっぱりぐいぐい引き込まれて観てしまいます。

勝利への脱出 .jpg 似たような状況でのスポーツの試合を題材にした作品では、ジョン・ヒューストン監督、シルヴェスター・スタローン主演の「勝利への脱出」('81年/米)という、第二次世界大戦最中のドイツの捕虜収容所で、ドイツ軍の将校(マックス・フォン・シドー)の発案のもと、連合国軍捕虜たちとドイツ代表がサッカー試合をするという作品がありましたが、並行して脱走計画の話があり、最後、成功するというもの(実話に基づくものとのこと)。こうした作品に比べると、この「ロンゲスト・ヤード」の結末は、この後の囚人たちに待ち構えるもののことを思うとややほろ苦いものと言えるかも。
「勝利への脱出」('81年/米)

 所長を殴って30年服役しているオヤジ(ジョン・スティードマン)が、ポールの「所長を殴るだけのことはあったか? 30年でも」という問いに「後悔はしてないよ」と答え、二人が肩を組んで競技場を去る後ろ姿がストップ・モーションになってエンディング・ロール。う~ん、今こうして観ると、アメリカン・ニューシネマの香りもするなあ。「勝利への脱出」よりはこちらの方が個人的には好みであり、男臭い映画を観たい人にお薦めの作品です。
 
「ロンゲスト・ヤード」●原三鷹オスカー予定表.jpg題:THE MEAN MACHINE (THE LONGEST YARD)●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督:ロ三鷹オスカー  復活.jpg三鷹オスカー.jpgバート・アルドリッチ●製作:ロバートエヴァンスほか●撮影:ジョセフ・F・バイロック●音楽:フランク・デ・ヴォル●原案:アルバート・S・ラディ ●時間:121分●出演:バート・レイノルズ/エディ・アルバート/マイケル・コンラッド/リチャード・キール/エド・ローター/ジム・ハンプトン/ハリー・シーザー/ジョン・スティードマン/アルバート・S・ラディ/トレイシー・キーナン・ウィン/バーナデット・ピーターズ●日本公開:1975/05●配三鷹オスカー  (2).jpg三鷹オスカー ー.jpg給:パラマウント映画●最初に観た場所:三鷹オスカー (78-07-20) (評価:★★★★☆)●併映:「トランザム7000」(ハル・ニーダム)/「デキシー・ダンスキングス」(ジョージ・G・アビルドセン) 三鷹オスカー 1977年9月3日、それまであった東映系封切館「三鷹東映」が3本立名画座として再スタート。1978年5月に「三鷹オスカー」に改称。1990(平成2)年12月30日閉館。

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「おしどり探偵」シリーズのパイロット版? ただし、セリフの一つ一つからして原作に忠実。

アガサ・クリスティ なぜ、エヴァンズに頼まなかったか vhs.jpg  アガサ・クリスティ なぜ、エヴァンズに頼まなかったか dvd.jpg  Why Didn't They Ask Evans dvd.jpg
アガサ・クリスティー・ミステリーズ Vol.3「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」【字幕版】 [VHS]」「おしどり探偵[完全版]VOL.7 [DVD]」「Why Didn't They Ask Evans [DVD] [Import]

Why Didn't They Ask Evans? [1980] [VHS].jpgなぜ、エヴァンズに頼まなかったか.jpg 牧師の息子ボビー・ジョーンズ(ジェームズ・ワーウィック)はトーマス医師(バーナード・マイルズ)とゴルフの最中に、崖から転落した瀕死の男を見つける。男は「なぜエヴァンズに頼まなかったか?」という言葉を口にして息絶える。ボビーが男が持っていた美しい女性の写真を見た後、そこへロジャー・バッシントン・フレンチ(リー・ローソン)と名乗る男が現れ、用事があったボビーは彼に後を任して帰宅する。新聞では、死んだ男はアレックス・プリチャードといい、妹の写真を持っていたと報じられたが、ロジャーが、幼馴染みフランシス(フランキー)・ダーウェント(フランセスカ・アニス)と共に臨んだ検死審問に現れた男の妹を名乗る女性ケイマン夫人(ミッツィ・ロジャーズ)は、写真の女性とは似ても似つかなかった。訝しんだボビーは敢えて彼女の問いに応え、男の死に際の言葉を手紙で伝える。その後、ボビーのもとに南米での好条件の仕事の話が舞い込むが、友人のバッジャー(ロバート・ロングデン)と中古車業を開業したばかりだったためにその誘いを断り、すると今度は何者かにビールにモルヒネを盛られて命を落としかける。

Why Didn't They Ask Evans? [1980] [VHS]

Francesca Annis as Frankie Derwent 02.jpg フランキーは、南米行きの話があったり命を狙われたりしたのは謎の言葉のせいだとし、好奇心旺盛な彼女は、写真をすり替えたと思しきロジャー・バッシントン・フレンチの居る邸の前でジョージ医師(ロウランド・ディヴィズ)と組んで偽装クルマ事故を起こし、邸内に客として入り込む。邸の当主のヘンリー・バッシントン・フレンチ(ジェイムズ・コッシンズ)はロジャーの兄でありモルヒネ中毒者、邸内にはヘンリー夫人のシルヴィア(コニー・ブース)と息子トミーがいて、トミーはフレンチ家に出入りするニコルソン博士(エリック・ポーター)に馴染んでいた。フランキーが崖から落ちた男の新聞切り抜き写真を夫人に見せると、リヴィントン夫妻と一緒に来たカナダ人学者で冒険家のアラン・カーステーアズにそっくりだという。

 ボビーもフランキーの指示で彼女の運転手を装って様子を探るが、夜中にニコルソン博士の診療所の庭でモイラ(マデリーン・スミス)に出くわす。彼女は、シルヴィアとの結婚を図っている夫に殺されると言って助けを求めるが、彼女こそロジャーが見た写真の女性だった。しかし彼女は、エヴァンスのことは知らないと言う。フランキーはボビーをリヴィントン夫人(ジョーン・ヒクソン)の元へ行かせ、アラン・カーステーアズが死んだ億万長者のサヴィッジのことで何かを調べていたらしいことを探る。ボビーは、ニコルソン医師が嫉妬してアラン・カーステーアズを殺したのではないかと疑う。そんな中、フレンチ家の当主ヘンリーが自殺と思われる死を遂げるが、ボビーはニコルソン医師を疑い、医師に監禁されていると思われるモイラの救出に燃える―。

なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか? クリスティーb.jpg 1980年制作の英国ITV版で、原作はクリスティ1934年発表の『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか』。2009年にも英国グラナダTVで「ミス・マープル」シリーズ(ジュリア・マッケンジー主演)の1作として映像化されていますが、もともとはポアロやミス・マープルのようなシリーズ・キャラクターは登場しない"ノン・シリーズ"ものです。但し、原作が「トミー&タペンス」の"おしどり探偵"シリーズの先駆けとなったように、この作品でボビーとフランキーを演じたフランセスカ・アニス(Francesca Annis)、ジェームズ・ワーウィック(James Warwick)のコンビで、「トミー&タペンス おしどり探偵(二人で探偵を)」(Partners in Crime)としてTVシリーズ化されています。

Francesca Annis as Frankie Derwent.jpg それだけ、ボビー役のジェームズ・ワーウィックとフランキー役のフランセスカ・アニスの演技が好評だったということだと思いますが、特にフランセスカ・アニスは、好奇心旺盛な貴族令嬢フランキーの役が嵌っていて、ファッションや立ち振る舞いにおいて大人の女性の雰囲気を漂わせる一方で(オードリー・ヘプバーンをよりタフにした風)、ボビーとの軽快でコミカルな遣り取りが楽しく、前半部分はボビーを一方的にリードして謎解きを進め、ボビーに次々指示を出す―それが、後半、ボビーがモイラに惹かれているのを察すると、ボビーと共にモイラの救出にあたるもやや複雑な心境になるという、その心の移り変わりが上手く描けていたように思います(フランセスカ・アニスは「アガサ・クリスティー ミス・マープル(第9話)/バートラム・ホテルにて」('07年)にも出ている)。

 結局、モイラの前にやや盲目的状態となっているボビーに対して、これはおかしいと気づくのは彼女ですが、彼女の発した言葉からボビーも真相に行き着くという、この辺りの展開も含め、セリフの一つ一つからして原作に忠実で、原作ではもう一人の犯人である男は海外に逃げおうせ、手紙で事の真相を告げてくるのに対し、この作品では、犯人がフランキーに言い寄る形で犯行の経緯を告げる点ぐらいが原作との明確な相違点でしょうか。これは映像化作品としての効果を考えてのことでしょう。

Madeline Smith 01.jpgMadeline Smith 12.jpgMadeline Smith 11.jpg モイラ役を演じたマデリーン・スミス(Madeline Smith)は、「ドラキュラ血の味」('70年/英)などのハマー・ホラーに何作か出ていたほか、「007/死ぬのは奴らだ」('73年/英)でジェーン・シーモアらと共にボンド・ガールとしてロジャー・ムーアの相手役も演じている女優です。このモイラ役は、グラナダ版でも、ナタリー・ドーマー(Natalie Dormer)というセクシー女優が演じていますが、このITV版ではセクシーさよりも翳のあるミステリアスな雰囲気の方を重視した演出となっています。

Joan Hickson1980.jpg アラン・カーステーアズの情報を教えるリヴィントン夫人役で登場するジョーン・ヒクソン(Joan Hickson、1906‐1998)(最初の日本オンエア版ではカットされている)は、1984年から1992年にかけて英国で放映されたBBC版ミス・マープルシリーズ全12話でミス・マープルを演じることになるわけですが、この作品の中では顔つきも体型もややふっくらしたお金持ちの貴婦人といった風で、綺麗な服を着て贅を尽くした応接間に居るため、見た目は"ミス・マープル"とは随分差があり、彼女が出ていることを知らずに観ていると見落としてしまうかも。別に謎解きをするわけでもない、単なる話し好きの有閑婆さんという感じですが、それでも演技はやはりあの"ミス・マープル"でした。

どり探偵[完全版]DVD-BOXI.jpg 尚、この作品の翌年に「七つのダイヤル」('81年)がフランセスカ・アニス、ジェームズ・ワーウィックのコンビで作られていて、その後、'83年から'84年にかけて、同コンビで、『秘密機関』と、『おしどり探偵』所収の10短編がTVドラマ版として映像作品化されており(第1話「桃色真珠紛失の謎」、第2話「謎を知ってるチョコレート、第3話「キングで勝負」、第4話「赤い館の謎」、第5話「サニングデールの怪事件」、第6話「大使閣下の靴の謎」、第7話「霧の中の男」、第8話「婚約者失踪の謎」、第9話「鉄壁のアリバイ」、第10話「かくれ造幣局の謎」)、従ってこの「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」と「七つのダイヤル」は、シリーズのパイロット版乃至は番外編という位置づけになっているようです。本シリーズは、夫婦物ではありますが、子供でも楽しめる極めて"健全"な冒険活劇譚となっています(昔、結構楽しみながら観た。今観るとややご都合主義な展開も目立つが...)。
おしどり探偵[完全版]DVD-BOXI
第1話:桃色の真珠紛失の謎/第2話:謎を知ってるチョコレート/第おしどり探偵[完全版]DVD-BOXII.jpg3話:キングで勝負/第4話:赤い館の謎/第5話:サニングデールの怪事件/第6話:大使閣下の靴の謎/第7話:霧の中の男/第8話:婚約者失踪の謎/第9話:鉄壁のアリバイ/第10話:かくれ造幣局の謎

おしどり探偵[完全版]DVD-BOXII

「秘密機関」「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」「七つのダイヤル」

「トミー&タペンス おしどり探偵(二人で探偵を)」AGATHA CHRISTIE`S PARTNERS IN CRIME (ITV 1983~1984) ○日本での放映チャネル:NHK/AXNミステリー

なぜエヴァンズに頼まなかったのか? vhs2.jpg「アガサ・クリスティ/なぜエヴァンズに頼まなかったのか?」●原題:AGATHA CHRISTIE`S WHY DIDN'T THEY ASK EVANS?●制作年:1980年●制作国:イギリス●監督:ジョン・ハワード・デイヴィス/トニー・ワームビー●脚本:パット・サンダース●撮影:マイク・ハンフリーズ●時間:日本放映版147分(完全版189分)●出演:フランセスカ・アニス/ジェームズ・ワーウィック/ジョン・ギールグッド/バーナード・マイルズ/エリック・ポーター/ジェイムズ・コッシンズ/リー・ローソン/マデリーン・スミス/ロバート・ロンデン/コニー・ブース/リンダ・マーシャル/ジョーン・ヒクソン●日本放映:1981/??/??●放映局:NHK(評価:★★★★) 
Madeline Smith  
Madeline Smith 21.jpgMadeline Smith 04.jpgMadeline Smith 03.jpg007/死ぬのは奴らだ」('73年/英)

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フロント・ページ 9 (2).jpg レトロ・タッチの社会派コメディといったところか。ジャック・レモンの滑舌の良さは"演劇"風。

『フロント・ページ』(1974)dvd.jpg『フロント・ページ』(1974)03.jpg
フロント・ページ [DVD]」ウォルター・マッソー/ジャック・レモン/スーザン・サランドン

『フロント・ページ』(1974)02.jpg 1929年のシカゴの刑事裁判所の記者クラブ。裁判所の庭では、翌朝行われる警官殺しの犯人として死刑を宣告されたアール・ウィリアムズ処刑のための絞首台が設けられていた。シカゴ・エグザミナー紙のデスク、ウォルター・バーンズ(ウォルター・マッソー)は、トップ記者ヒルディ・ジョンソン(ジャック・レモン)をその取材に当たらせようとしたが、彼は今日限りで辞職し、恋人ペギー(スーザン・サランドン)と結婚してシカゴを去ると言う。ウォルターが仕方なく後任に据えた新米記者ケップラー(ジョン・コークス)が記者クラブにいるところへ、モリー(キャロル・バーネット)が、自分のことを死刑囚ウィリアムズの情婦であるように書き立ている新聞記事に文句を言いに来る。モリーと入れ違いにヒルディが来て祝い酒が始まるが、ウィリアムズが脱走したとの知らせで記者たちは一斉に飛び出す。一人残されたヒルディの前にウィリアムズ(オースティン・ペンドルトン)が転がり込んできた。ヒルディは大急ぎでバーンズに電話すると、今度はモリーが来る。再会を喜ぶ2人だが、他社の記者らが戻ってきたため、ヒルディは咄嗟にウィリアムズをトリビューン紙の記者ベンジンガー(デイヴィッド・ウェイン)の大きなロールトップデスクの中に隠す―。

the front page(1974)poster.jpg 1974年のビリー・ワイルダー(1906-2002/享年95)監督67歳の時の作品。「フロント・ページ」とは、文字通り新聞の「第一面」の意で、先に取り上げた「ネットワーク」('76年)がテレビ業界の視聴率競争を描いているならば、こちらは新聞業界のトップネタ争いが背景になっており、同じく"社会派"作品であることには違いないですが、婚約を機に退職を目論む敏腕記者ジャック・レモン(1925-2001/享年76)と、それを引き留めようとするウォルター・マッソー(1920-2000/享年79)の丁々発止の遣り取りが見所のレトロ・タッチの軽妙なコメディとなっています。

『フロント・ページ』(1974)04.jpg オリジナルはベン・ヘクト(ヒッチコックの「汚名」などの脚本家)、チャールズ・マッカーサー原作の1928年初演の戯曲であり、「犯罪都市」(1931年)、「ヒズ・ガール・フライデー」(1940年)に続く3度目の映画化作品だそうで、そう思って観ると殆ど場面転換がなく、「ああ、舞台劇だなあ」という印象であるし('88年にはキャスリーン・ターナー、バート・レイノルズ主演で「スイッチング・チャンネル」というタイトルで4度目の映画化)、ジャック・レモンの機関銃のように早口でまくしたてる職人芸のような喋りも(ウォルター・マッソーもそれによく伍している)、その滑舌の良さも"演劇"風であるならば、大机に隠れたウィリアムズが出てきそうになるのを必死で抑えようとするところなどは典型的なドタバタ・コント風と言えるかもしれません(笑いのツボをオーソドックスに押さえている感じ)。まあ、ジャック・レモンの昔の作品は大体みんなこんな感じなのですが。

 仕事中毒人間をユーモラスに描いた懐かしい作品ですが、この作品自体に、当時からみて35年前の時代へのノスタルジーが込められており、それを作られてから35年以上後の今、デジタル・リマスター版で再び観ているわけであって、それが昔映画館で観た時よりも画面がやけに明るいので、何となく不思議な(時代感覚を喪失するような)感じでした(最近、デジタル・リマスター版で昔の映画を見ると、よくこうした感覚に捉われるなあ)。

スーザン・サランドン.gif スーザン・サランドンは「ロッキー・ホラー・ショー」('75年)より前の出演作品『フロント・ページ』(1974)06.jpgになるわけで、日本では殆ど無名だったのではないかな。昔からあのような容貌だったのだなあと。記者クラブに詰めている他紙記者の中に昨年['12年]12月に亡くなったチャールズ・ダーニング(享年89)がいたことに改めて気付きました。

フロント・ページ6.jpg『フロント・ページ』(1974)01.jpg「フロント・ページ」●原題:THE FRONT PAGE●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督:ビリー・ワイルダー●製作:ポール・モナシュ●脚本:ビリー・ワイルダー/I・A・L・ダイアモンド●撮影:オジョーダン・クローネンウェス●音楽:ビリー・メイ●原作:ベン・ヘクト/チャールズ・マッカーサー●時間:105分●出演:ジャック・レモン/ウォルター・マッソー/スーザン・サランドン/オースティン・ペンドルトン/キャロル・バーネット/デイヴィッド・ウェイン/チャールズ・ダーニング/ジョン・コークス●日本公開:1975/05●配給:ユニバーサル・ピクチャーズ●最初に観た場所:高田馬場ACTミニシアター(84-01-14)(評価:★★★★)●併映:「七年目の浮気」(ビリー・ワイルダー)/「アラビアのロレンス」(デビッド・リーン)/「せむしの仔馬」(イワノフ・ワーノ)/「雪の女王」(レフ・アタマノフ)

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経営陣の企業倫理の逸脱パターンが戯画的に描かれている。フェィ・ダナウェイの演技は絶妙。

ネットワーク 1976 ちらし.jpgネットワーク 1976 vhs.jpg  ネットワーク 1976 11.jpg
  「ネットワーク [DVD]」       Faye Dunaway

NETWORK title.jpg 最盛期に28%の視聴率を誇ったUBSのビール(ピーター・フィンチ)のイブニング・ニュースも今や12%とに低落、これが引金となり、ジェンセン(ネッド・ビーティ)率いるCCAがUBSを買収し傘下に収め、CCAより新社長が就任、報道部長マックス(network 1976 01.jpgウィリアム・ホールデン)はビールに番組降板を通告する。翌日、ビールは本番中に自分が辞めさせられる事を暴き、さらに自殺予告までするが、そのことで視聴率は27%に上がる。野心家のダイアナ(フェイ・ダナウェイ)は、ビールを現代の偽善と戦う予言者とし「再売り出し」し、雨の日の本番中にスタジオに闖入したビールの社会不満を告発する言動が大ヒットするなどして、「ビール・ショー」の視聴率は48%に。ダイアナのアイデアはエスカレートし、過激Network.jpg派グループと契約して、ビールを絡めた衝撃シリーズを展開、これも成功し、彼女とマックスの社内での地位は逆転するが、過激化するビールが、親会社CCAを番組内で非難し始めたことで危機に陥る。ジェンセンはビールに強制暗示的に言動変更を迫り、感化されたビールは番組内でジェンセンの理論を滔々とぶつが視聴率は低下、ダイアナはジェンセンのロボットとなったビールを番組から降ろすために、上層部のハケット(ロバート・デュヴァル)らを説得して、ついにビールの暗殺を決定させ、テレビ局の走狗と化した過激派をスタジオの観客に紛れ込ませ、ビールを銃撃させる―。

ネットワーク 1976 02.jpg シドニー・ルメット(1924-2011/享年86)監督作品。最初観たときは、こんなのありっこないという荒唐無稽さを覚えましたが興業的には成功し、風刺劇としての世間評価も高かった作品であり(シドニー・ルメットはこの映画は風刺劇ではなくテレビ業界の内実を暴露したルポルタージュであると言った)、アカデミー賞においても主演男優賞(ピーター・フィンチ)、主演女優賞(フェイ・ダナウェイ)、など4部門獲得しました(ノミネート直後に心不全で急死したピーター・フィンチは、アカデミー賞史上初の「死後の主演男優賞受賞者」となった)。

 そうした評価につられてではないですが、観直してみて、よく出来ている作品だったかもと思いました。ピーター・フィンチに扇動される人々の描き方などは戯画的と言うか漫画チックですが、ピーター・フィンチの脇を固める俳優陣の演技が素晴らしいです。

network 1976 03.jpg ウィリアム・ホールデン演じるマックスがダイアナとの関係をなかなか断ち切れないのは、ある種"保護者"感覚ではないかなあ。彼女、傍に誰かいないとどうなるか分からないという...。それでもって、自分の妻(ベアトリス・ストレイト)に別居を切り出すというのも、言われた方の妻の心境は察するに余りありますが、ベアトリス・ストレイトはこのヘビイなNETWORK 1976.jpg状況に置かれた妻の哀しみを好演して、僅か5分間の登場でアカデミー賞の助演女優賞を獲っています。助演男優賞候補となったネッド・ビーティがもし受賞していれば(ネッド・ビーティがピーター・フィンチを緑色のシェードのライトが並んだ部屋で洗脳するシーンもスゴかったが)、アカデミー史上初の主演男優・主演女優・助演男優・助演女優の演技4賞独占となるところでしたが、「欲望という名の電車」('51年)に次ぐ史上2度目の演技賞3冠にとどまりました(因みに「欲望という名の電車」の時はマーロン・ブランドが主演男優賞を逃した)。
Ned Beatty - Network 1976

network 1976 02.jpg ダイアナの無茶苦茶な提案に躊躇するものの、最終的にはそれを是認してしまうテレビ局の上層部―というのは、経営陣が企業倫理を逸脱する際のパターンを描いており("殺人"まで認めてしまうというところが戯画的だが)、そもそもダイアナは、こんな"素晴らしいアイデア"になぜ上層部がすぐに同意を示さないかが解らず、逡巡する経営陣の様を見てきょとんとしている―この時のフェィ・ダナウェイの演技は絶妙です。

ネットワーク 1976 12.jpg 熾烈な視聴率競争を繰り広げるTV業界の中で「壊れていく」人々を描いた作品ですが、ピーター・フィンチ演じるニュースキャスターは「壊れている」と言うよりも「狂っている」のであって、「壊れている」という言葉が相応しいのはむしろフェィ・ダナウェイ演じるダイアナではないかなと思いました。最後はウィリアム・ホールデン演じるマックスも彼女を見切った感じですが、ダイアナの行く末がどうなったかまでは描かれていません。個人的には、再見して、この作品の主人公はダイアナではなかったかと思っただけに気になりました。

Faye Dunaway - Best Actress Oscar for Network 1976.jpgネットワーク [DVD].jpg「ネットワーク」●原題:NETWORK●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:シドニー・ルメット●製作:ハワード・ゴットフリード●脚本:パディ・チャイエフスキー●撮影:オーウェン・ロイズマン●音楽:エリオット・ローレンス●時間:121分●出演:フェイ・ダナウェイ/ウィリアム・ホールデン/ピーター・フィンチ/ロバート・デュヴァル/ベアトリス・ストレイト/ウェズリー・アディ/ネッド・ビーティネットワーク ロバート・デュヴァル.jpg/ジョーダン・チャーニー/コンチャータ・フェレル/レイン・スミス/マーリーン・ウォーフィールド●日本公開:1977/01●配給:ユナイト映画●最初に観た場所:池袋・文芸坐(78-12-13)(評価:★★★★)●併映:「カプリコン・1」(ピーター・ハイアムズ)
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プロットはともかく、犯人の心理がよく描かれている。グラス・シーリングが背景テーマ?

刑事コロンボ/秒読みの殺人 vhs.jpg    刑事コロンボ/秒読みの殺人01.jpg  事コロンボ/魔術師の幻想04.jpg
特選「刑事コロンボ」完全版 秒読みの殺人【日本語吹替版】 [VHS]」 Trish Van Devere/Laurence Luckinbill

刑事コロンボ/秒読みの殺人02.jpg刑事コロンボ/秒読みの殺人 title.jpg 「CNCテレビ」西部支局長のチーフ・アシスタント、ケイ(トリッシュ・バン・デバー)はプライベートでは支局長のマーク(ローレンス・ラッキンビル)と同棲関係にあった。彼女は有能かつ野心家で、マークのニューヨーク本社栄転に自分も一緒に行くものと思っていたところがマークから別れ話を持ち出され、更に次期支局長にも推薦しないと言われる。自分が切り捨てられたと分かった彼女は、社内でのTVムービーの試写で映写技師のウォルター(ジェームズ・マクイーチン)に、フィルムのリール交換は自分がするからと言って、別のフィルムを倉庫まで取りに行かせ、その4分間の僅かな時間の隙を利用し、社内の別の部屋にいたマークを射殺する―。

刑事コロンボ/秒読みの殺人03.jpg 第43話「秒読みの殺人」は、第7シーズン第3作、旧シリーズの終わりから数えて3番目の作品で、第44話「攻撃命令」第45話「策謀の結末」と併せて'79年の正月休みにNHKで放映されました。

 コロンボが、被害者が射殺された際に遠近両用眼鏡を頭に乗せたままだったところから犯人は顔見知りだと推理し、被害者宅にクリーニング屋から届いたブレザー左前ボタンだったことから被害者と犯人が同棲していたことを見抜き、フィルムのパンチと映写技師が戻ってきた時に見たドラマのシーンとの関係から犯人のアリバイトリックを見抜くという流れは当時新鮮で、今観てもなかなかのものではないかと。一方で、犯人は、まさにタイトル通りの緻密な完全犯罪を図りながらも、手袋を映写室に置きっ放しにしたり、犯行に使った拳銃をエレベータの天井に置き放しにしたままずっと回収しなかったりと、結構ミスや粗さが目立ったりもします。

刑事コロンボ/秒読みの殺人07.jpg しかし、今回に見直してみると、そうしたプロットとは別に、追い詰められていく犯人の側に立ってその心理がよく描かれていて、加えて、犯人の上昇志向の背景に、小さな家で育って、視聴率競争が激しい(しかも男性社会の)TV業界に身を投じ、現場からの叩き上げで這い上がって勝ち抜きキャリアを築いてきた女性であることが窺え、最後に犯行を認めざるを得ない結末となっても、パターン的には「これで却ってほっとした」と言いそうなところを、「私負けないわ。必ず這い上がってみせる」と言うほどです。この頃のアメリカでは、「ガラスの天井(グラス・シーリング)=女性がぶつかる男性社会の壁」というのが社会テーマになり始めていたのだろうなあと。

ネットワーク 1976 ちらし - コピー.jpgnetwork 1976 02.jpg 同じように競争の激しいTV業界の中で「壊れていく」人間像を描いた作品として、たまたまこの作品の放映の前月に観たシドニー・ルメット監督の映画「ネットワーク」('76年/米)を思い出させます。あの作品のピーター・フィンチ演じるニュースキャスターは「壊れている」と言うより「狂っている」のであって、「壊れている」という言葉が相応しいのはむしろフェイ・ダナウェイ(コロンボ・シリーズに犯人役で登場したこともある)が演じるプロデューサーなんだろなあ。この作品のケイと少しダブりました(フェイ・ダナウェイは"グラス・シーリング"にぶつからず、上司を追い落して出世するのだが)。

 シリーズ第9話「パイルD-3の壁」で犯人の建築家を演じたパトリック・オニール(ジェームズ・コバーン似の渋いオッさん)が、マークがいなくなることで当然自分が支局長になるものと思っていたケイに解雇通告をするTV局の重役の役で出ており(ロマンス・グレイだったのが完全な白髪頭になっているなあ)、また、普段はコロンボを補佐するクレーマー刑事役で出てくることが多いブルース・カービーが、コロンボが故障した自宅のテレビを持ち込んだ電機修理屋の役で出ています。

刑事コロンボ/秒読みの殺人 11.jpg 刑事コロンボ/秒読みの殺人 12.jpg 刑事コロンボ/秒読みの殺人 13.jpg 刑事コロンボ/秒読みの殺人 14.jpg  

刑事コロンボ  秒読みの殺人.jpg事コロンボ/魔術師の幻想7.jpg「刑事コロンボ(第43話)/秒読みの殺人」●原題:MAKE ME A PERFECT MURDER●制作年:1978年●制作国:アメリカ●監督:ジェームズ・フローリー●製作:リチャード・アラン・シモンズ●脚本:ロバート・ブリーズ●音楽:パトリック・ウィリアムズ●時間:90分●出演:ピーター・フォーク/トリッシュ・バン・ディーバー/ローレンス・ラッキンビル/パトリック・オニール/レイニー・カザン/ジェームズ・マクイーチン/ロン・リフキン/ケネス・ギルマン/ブルース・カービイ●日本公開:1979 /01●放送:NHK:★★★☆)  

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再度の「犯人」役ジャック・キャシディ、ロバート・ヴォーン、再演出までしたマクグーハン。

魔術師の幻想 vhs.jpg 刑事コロンボ/魔術師の幻想 dvd.jpg  さらば提督 vhs.jpg 
特選「刑事コロンボ」完全版 魔術師の幻想【日本語吹替版】 [VHS]」「特選 刑事コロンボ 完全版「さらば提督」【日本語吹替版】 [VHS]」ジャック・キャシディ

刑事コロンボ/魔術師の幻想01.jpg刑事コロンボ/魔術師の幻想 title.jpg 魔術師サンティーニ(ジャック・キャシディ)は、ジェローム(ネヘミア・パーソフ)が経営するクラブで「水槽の幻想」という脱出魔術を披露して人気を集めていたが、彼の本名はステファン・ミューラーで第二次大戦中はナチスの親衛隊員だった―彼はその過去を知るジェロームに収入の50%を巻き上げられており、サンティーニが今後は5%しか払うつもりはないとジェロームに伝えると、逆にジェロームに過去の秘密を公表すると脅される。クラブでの「水槽の幻想」マジックでサンティーニは箱の中に入れられ更に水槽に沈められてしまうが、その間の10分を利用してサンティーニは移民局宛の密告の手紙をタイプ中のジェロームを殺害、手紙を持ち出し、何食わぬ顔で舞台に戻って"魔術"を完成させる―。

魔術師の幻想03.jpg刑事コロンボ/魔術師の幻想03.png 「魔術師の幻想(Now You See Him)」(第36話)は第5シーズン第5話。ジャック・キャシディは、第1シーズンのスティーブン・スピルバーグ演出の「構想の死角」(第3話)の"書かない作家"フランクリン役、第3シーズン「第三の終章」(第22話)の出版社経営者グリーンリーフ役に続く3度目の登場で、本当に犯人役がサマになる役者であり、本作の本国での放映から10ヵ月後の1976年12月に自宅の火事で亡くなったのが惜しまれます。

刑事コロンボ/魔術師の幻想 02.png サンティーニという名は希代の魔術師フーディーニのもじりか。脱出マジックの裏側を見せてくれ、「悪の温室」(第11話)の熱血刑事ウィルソン(ボブ・ディシー)の再登場、手品はしょぼいがプロポーションで見せるサンティーニの娘サラ(シンシア・シスク)など配役面でも楽しいけれど、タイプライターのリボンが決定的証拠になるというのがちょっと時代を感じさせるかな(ジャック・キャシディの演技で星半個オマケ)。

The Best Columbo Episodes

刑事コロンボ/さらば提督 title.jpg 世間から「提督」と呼ばれているヨット造船会社所有者オーティス・スワンソン(ジョン・デナー)、今は娘のジョアナ(ダイアン・ベイカー)の夫チャーリー・クレイ(ロバート・ヴォーン)が社長になって経営実権を握っているが、チャーリーの儲け主義が気に入らず密かに会社を売ってしまおうと考えていたところを自邸で殺害され、その後始末をするチャーリーは、提督の服を着込みヨットで夜の海に出て死体を捨てると、潜水服に着替えて泳いで戻ってくる―。

刑事コロンボ/さらば提督01.png 続く第5シーズン第6話(日本ではこちらの方が先に放映された)「さらば提督(Last Salute To Commodore)」(第37話)は、当初、本作を以って「刑事コロンボ」シリーズは終了の予定であったため、そのことを考慮してか、カメラワークにおいてコロンボのアップなどが矢鱈多く、特に前半部分はコロンボが絡むギャグ・シーンが満載―と思ったら、いきなり中盤で、ロバート・ヴォーン演じるチャーリー・クレイに対して「あんたが犯人だ」的なことを早々と宣言してしまうという変則パターン。

刑事コロンボ/さらば提督02.png  チャーリー・クレイが「提督」の遺体を処理したのは、言わば、思い込みからくる"勘違い"によるもので、「カリフォルニア州では夫婦の財産は共有制」ということと、「相続人が被相続人を殺害した場合は相続権を失う」ということが関係しているわけね。妻が「殺人者」ではまずいわけで、別に、実は妻を愛していたということではなく、これはこれで金目当てだったわけか。
 
刑事コロンボ/さらば提督03.png ロバート・ヴォーンは「歌声の消えた海」(第29話)に続く「犯人」役としての再登場で(「海」「船」絡みが続くね)、ところがそのチャーリーがやがてあっさり殺されてしまい(そっか、提督の殺害場面がなくていきなり遺体が出てくるシーンが、視聴者をミスリードさせる"叙述トリック"だったわけか、と)、中盤以降は"フーダニット(Who done it?)"の展開になっていて、ラストはコロンボが関係者全員を集めてエルキュール・ポアロの如く謎解きをやるという、これまた変則パターン。

刑事コロンボ/さらば提督04.png 保守的な「刑事コロンボ」ファンには絶対受け入れがたい"掟破り"の作品だと思いますが、ラストの提督の時計の音を関係者全員に聞かせての犯人の炙り出しがややタルくてポアロほどの精緻さに欠くものの、全体としては、個人的にはまあまあ面白かったです(この方法論についても疑念を挟む人は多いと思うが)。

 演出はパトリック・マクグーハン(1928-2009)で、ここまで「祝砲の挽歌」(第28話)、「仮面の男」(第34話)に犯人役で出演済みで、「仮面の男」では演出も手掛けており、これが演出2作目、アイルランド系ではないのに<マック>を名乗る若手刑事の登場とか、遊んでるなあ(マクグーハン自身はアイルランド系)。

刑事コロンボ/さらば提督05.jpg その他、コロンボのアシスタント、クレイマー刑事(ブルース・カービー)が4度目の登場で今回が一番出番が多く、さらに、ウィルフリッド・ハイド=ホワイト.jpg「ロンドンの傘」(第13話)で執事タナーを演じたウィルフリッド・ハイド=ホワイト(右写真)が弁護士役で、「毒のある花」(第18話)でマーチソン博士役を、「5時30分の目撃者」(第31話)で"目撃者"のモリス氏役を演じたフレッド・ドレイパーが被害者の甥役で、「白鳥の歌」(第24話)で調査官パングボーン氏を演じたジョン・デナーが「提督」役でといった具合に、3人のゲストスターも再登場で、「お別れ同窓会」的様相。

 それなりに本国での評価も高かったのか、この作品でピーター・フォークは、当シリーズ3度目のエミー賞ドラマ部門主演男優賞を受賞しています(それとも、シリーズが終わることを見込んでの餞別的な受賞だったのか)。作中で葉巻を止めるようにカミさんに言われているけれどつい無意識に吸ってしまい、最後は開き直って「まだまだやるよ」といって一人で海へボートを漕ぎ出していくシーンには、いろいろな示唆が込められているように思いましたが、結局、この作品がシリーズの最終作とはならず、旧シリーズだでけでも、この後2シーズン8作が作られています。

魔術師の幻想00.jpg「刑事コロンボ(第36話)/魔術師の幻想」●原題:NOW YOU SEE HIM●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:ハーベイ・ハート●製作:エヴァレット・チェンバース●脚本:マイケル・スローン●音楽:バーナード・セイガル●時間:92分●出演:ピーター・フォーク/ジャック・キャシディ/ネヘミア・パーソフ/ボブ・ディシー/ロバート・ロジア/シンシア・シスク/パトリック・カリントン/ロバート・ギボンズ/ヴィクター・イザイ/マイク・ラリー●日本公開:1977/12●放送:NHK(評価:★★★☆)

刑事コロンボ/さらば提督06.jpg「刑事コロンボ(第37話)/さらば提督」●原題:LAST SALUTE TO THE COMMODORE●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:パトリック・マクグーハン●製作:エヴァレット・チェンバース●脚本:ジャクソン・ギリス●音楽:デバーナード・セイガル●時間:93分●出演:ピーター・フォーク/ロバート・ヴォーン/ダイアン・ベイカー/フレッド・ドレイパー/ウィルフリッド・ハイド=ホワイト/ジョン・デナー/デニス・デュガン/ブルース・カービー/スジョシュア・ブライアント/スーザン・フォスター●日本公開:1977/10●放送:NHK(評価:★★★☆)

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逆トリックに乗った犯人に疑問が残るが、船旅というシチュエーションは楽しめた。

歌声の消えた海 vhs.jpg 刑事コロンボ 歌声の消えた海 ヴォーン.jpg アドベンチャー・ファミリー 01.jpg スーパーマンIII 電子の要塞 [Blu-ray].jpg
特選 刑事コロンボ 完全版「歌声の消えた海」【日本語吹替版】 [VHS]」Robert Vaughn「アドベンチャー・ファミリー [DVD]」「スーパーマンIII 電子の要塞 [Blu-ray]

刑事コロンボ 歌声の消えた海 title.jpg メキシコ・アカプルコへ向かう豪華客船で、中古車ディーラーのヘイドン・ダンジガー(ロバート・ヴォーン)は、不倫関係にあり、不倫をネタに恐喝されていた、船専属のショー歌手ロザンナ(プーピー・ボッカー)を殺害、ロザンナに言い寄っていPoupée Bocar.jpgDean Stockwell.jpgたピアニスト、ロイド(ディーン・ストックウェル)に容疑がかかるよう工作を行う。船長は、たまたま缶詰の懸賞に当選し、夫婦で観光で船に乗り込んでいたコロンボを呼び出し、非公式に捜査を依頼することにする―(結局、"カミさん"は映像上一度も出てこないのだが..)。
Poupée Bocar(プーピー・ボッカー)/ Dean Stockwell(ディーン・ストックウェル)

刑事コロンボ 歌声の消えた海 02.jpg 第29話であり、テレビシリーズ「0011/ナポレオン・ソロ」のロバート・ヴォーン演じる犯人は、第24話「白鳥の歌」のジョニー・キャッシュが演じたカントリー&ウェスタン歌手、第25話「権力の墓穴」のリチャード・カイリーが演じたロス市警次長、第27話の「逆転の構図」のディック・バン・ダイクが演じた写真家に続く、「恐妻家」乃至「資産家の奥さんの尻に敷かれている旦那」といったところですが、こっちはこれまでの彼らのように奥さんを殺すのではなく、愛人の方を殺してしまいます。
刑事コロンボ 歌声の消えた海 01.jpg
 犯行現場となった船に最初からコロンボが乗り合わせていたというところからいつもと違って楽しく、大体このシリーズ、あまり定型パターンを外れると意外と面白くなくなるのですが(特に新シリーズにそういうのが多い)、この作品は船内のシチューションや小道具などが上手く謎解きに活かされていて楽しめました(コロンボがいつものよれよれのコートで登場するのは、出航の直前に職場から船に駆け付けたことが冒頭に示唆されている)。

刑事コロンボ 歌声の消えた海3.jpg 撮影には随分費用がかかっているのではないかなあと思いましたが、実際にメキシコのマサトラン経由でアカプルコに向かうクルーズ(出港地はサンフランシスコ)を利用して行なわれ、エキストラは本当の乗船客だったそうです。

 ロバート・ヴォーンの落ち着いた犯行ぶりは様になっていて、一方のコロンボは、船酔いに遭いながらも捜査のためvあちこち走り回っている感じで、船に鑑識係がいるでもなく、指紋、硝煙反応のチェックなども自分でやっている―しかし、意外と犯人は証拠を残していて、最後はコロンボの方が鼻歌を歌いつつ...。

 犯行に使われた使い捨てのゴム手袋さえ見つかればロイドを挙げることが出来るとダンジガーに意図的に漏らして、コロンボの方から犯人の次の行動を促す典型的な逆トリックですが、ゴム手袋の在庫数をコロンボが確認していたことをダンジガーも聞いていたはずではないかと、その一点のみが疑問として引っ掛かりました。

TROUBLED WATERS 1975 01.jpgTROUBLED WATERS 1975 02.jpg 患者として寝ていたはずのダンジガーに後ろをすり抜けられてしまう看護婦メリッサ役のスーザン・ダマンテは、この作品では脇役ですが、この頃、スチュワート・ラフィル監督の「アドベンチャー・ファミリー」('75年)にロバート・ローガンと共に主人公の夫婦役で出演していて、人柄の良さそうな典型的な70年代美女でした。
Susan Damante(スーザン・ダマンテ)
アドベンチャー・ファミリー 1.jpgアドベンチャー・ファミリー 2.jpg ロスの大都会からロッキーの山奥へ移住した家族を描いた「アドベンチャー・ファミリー」は実話がヒントになっているそうですが、佳作ではあるものの、ロッキーでの自給自足生活は、"グリズリー"の襲来などもあって大変そうだなあと(娘の健康を考えての移住なのに、万一子供が羆に襲われたりしたら元も子もない)。クマに襲われたところを家族が助けたクマに救われるという、今思うとちょっと作り話っぽかったかな。

倉本聰.bmp 因みに、脚本家の倉本聰氏は、テレビドラマ「北の国から」の脚本を書く際に制作サイドから、この「アドベンチャー・ファミリー」のようにしてくれと言われたそうです(あと一つ、参考にしてくれと言われたのが映画「キタキツネ物語」だった)(倉本聰『獨白 2011年3月』フラノ・クリエイティブ・シンジケート、2011年)。

0011ナポレオン・ソロ.jpg 一方、知的な悪役が似合うロバート・ヴォーンは、「荒野の七人」('60年)の時からお馴染みですが、グッと人気が出たのはアメリカNBC系列で1964年から1968年まで4シーズンにわたり放送されたTVシリーズ「0011ナポレオン・ソロ」からではないでしょうか。ロバート・ヴォーン演じるナポレオン・ソロとデヴィッド・マッカラム演じるイリヤ・クリヤキンのコンビが活躍するスパイもので、日本では、1966年から1970年まで、日本テレビ系列で放送されました(当初モノクロで、途中からカラーになった。最近またAXNミステリーで再放映されたりしている)。

スーパーマンⅢ/電子の要塞 dvd2.jpgスーパーマンⅢ/電子の要塞 4.jpgRobert Vaughn superman3.jpg ロバート・ヴォーンはその後も渋い脇役や悪役として活躍し、80年代では個人的には「スーパーマンⅢ/電子の要塞」('83年/米)に出ていたのが印象に残っています。リチャード・プライヤー演じる"小物"のワルを背後から操る"大物"のワルといった役どころ。クリストファー・リーヴ演じるスーパーマンをスーパー・コンピュータで打ちのめそうとするコンピュータ会社の悪徳社長の役ですが、現場に送り込まれるのはいつもリチャード・プライヤーで、作品全体のトーンもコメディ調。リチャード・プライヤーって、日本ではマイナーだけど、アメリカではかなり有名なコメディアンだったんだなあ(2005年没)。この作品は、ロバート・ヴォーン自身にとっても、その後の相次ぐコメディ映画出演への転機となった作品でした。因みに、テレビシリーズ「スーパーマン」(1952‐1958年)は日本では1956年からTBSで放映が開始され、最高視聴率74.2%を記録したそうな。スゴイ数字!

華麗なるペテン師たち2.jpg華麗なるペテン師たち01.jpg 「荒野の七人」のメンバー"7人"の中でも、2013年時点で存命しているのはロバート・ヴォーンだけという状況であり、しかも、イギリスのTVドラマシリーズ「華麗なるペテン師たち」で今もバリバリに頑張っている...。AXNでシーズン3をやっているのを見ましたが(本国放映は2010年)、ドラマで見る限り、この人、きびきびしていて、78歳(1932年生まれ)にしてはホント若いなあ(2016年11月11日、急性白血病のため逝去。満83歳。これで「荒野の七人」にガンマン役で出演した7人の男優全員がこの世を去ったことになった)

Bernard Fox(バーナード・フォックス)
刑事コロンボ(第29話)/歌声の消えた海 .jpgBernard Fox.jpg「刑事コロンボ(第29話)/歌声の消えた海」●原題:TROUBLED WATERS●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:ベン・ギャザラ●製作:エヴァレット・チェンバース●脚本:ウィリアム・ドリスキル●音楽:ディック・デ・ベネディクティス●時間:95分●出演:ピーター・フォーク/ロバート・ヴォーン/ジェーン・グリア/ディーン・ストックウェル/バーナード・フォックス/ロバート・ダグラス/パトリック・マクニー/プーピー・ボッカー/スーザン・ダマンテ/ピーター・マローニー●日本公開:1976/01●放送:NHK(評価:★★★★)
The Adventures of the Wilderness Family (1975)
The Adventures of the Wilderness Family (1975).jpg
「アドベンチャー・ファミリー」●原題:THE ADVENTURES OF THE WILDERNESS FAMILY●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督・脚本:スチュワート・ラフィアドベンチャー・ファミリー 02.jpgル●製作:アーサー・R・ダブス●撮影:ジェラルド・アルカン●音楽:ジーン・カウアー/ダグラス・M・ラッキー●原作:アーサアドベンチャー・ファミリー sanntora.jpgー・R・ダブス●時間:99分●出演:ロバート・ローガン/スーザン・ダマンテ/ホリー・ホルムズ/ハム・ラーセン/ジョージ・"バック"・フラワー/スーザン・ダマンテ・ショウ●日本公開:1977/02●配給:東宝東和●最初に観た場所:中野武蔵野館 (78-01-12)(評価:★★★☆)●併映:「ベンジーの愛」(ジョー・キャンプ)
     「アドベンチャー・ファミリー [EPレコード 7inch]」サントラ盤カバー   

 
0011ナポレオン・ソロ2.jpg0011ナポレオン・ソロ4.jpg0011ナポレオン・ソロ3.jpg「0011ナポレオン・ソロ」 The Man from U.N.C.L.E. (NBC 1964~1968) ○日本での放映チャネル:日本テレビ(1966-1970)/AXNミステリー
0011ナポレオン・ソロ(The Man From U.N.C.L.E )」(CD)  

スーパーマンIII 電子の要塞 [DVD]
スーパーマンⅢ/電子の要塞 dvd.jpgスーパーマンⅢ/電子の要塞5.jpg「スーパーマンⅢ/電子の要塞」●原題:SUPERMANⅢ●制作年:1983年●制作国:アメリカ●監督リチャード・レスター●製作:ピエール・スペングラー●脚本:デイヴィッド・ニューマン/レスリー・ニューマン ●撮影:ロバート・ペインター ●音楽:ケン・ソーン●時間:123分●出演: クリストファー・リーヴ/リチャード・プライアー/アネット・オトゥール/マーゴット・キダー/ジャッキー・クーパー/マーク・マクルーア/ロバート・ヴォーン/アニー・ロス/パメラ・スティーヴンソン/ギャヴァン・オハーリヒー●日本公開:1983/07●配給:ワーナー・ブラザーズ●最東京劇場(1940年).jpg銀座 東劇.jpg銀座・東劇2.jpg東劇 劇場内.jpg初に観た場所:銀座・東劇 (83-07-24)(評価:★★★) 
銀座・東劇 1930年4月、歌舞伎などの演劇の劇場として「東京劇場」オープン(左写真1940年「民族の祭典」公開時)。1950年ロードショー館として再オープン。1972(昭和47)年12月、老朽化につき閉館。1975(昭和50)年7月4日、東劇ビル落成。東劇開場。

華麗なるペテン師たち3.jpg「華麗なるペテン師たち」 Hustle (BBC 2004~2012) ○日本での放映チャネル:NHK‐BS2(2006-)/AXN
Hustle (BBC).jpg

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凝った逆トリックによる鮮やかな結末。作品全体としては何となく楽しい雰囲気。

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逆転の構図02.jpg 刑事コロンボ/逆転の構図00.jpg
特選「刑事コロンボ」完全版~逆転の構図~【日本語吹替版】 [VHS]」 ディック・バン・ダイク(Dick Van Dyke) 

ディック・バン・ダイク / アントワネット・バウアー
NEGATIVE REACTION title.jpg逆転の構図01.jpg逆転の構図03.jpg 口やかましい妻との生活に心底嫌気がさした著名な写真家ポール・ガレスコ(ディック・バン・ダイク)は、誘拐事件を偽装して妻フランセス(アントワネット・バウアー)を殺害し、以前から手なずけていた前科者のダシュラー(ドン・ゴードン)を廃車置き場に呼び出し、椅子に縛り付けた妻を写した写真と脅迫状に指紋を付けさせた後に彼を射殺、自分の足も撃ち抜き、身代金の受け渡しの際に犯人に撃たれたように装った―。
ドン・ゴードン / ジョアンナ・キャメロン
コロンボ 逆転の構図.jpg逆転の構図04.jpg シリーズ第27話。犯人のポールは「この世からお前が消えてくれれば良いのと何度も願った」ほど、妻のフランシスを憎んでいたとのことで、元々のシナリオには、コロンボの聞き込みに対し、写真集出版社の社長が、「もともとポールは財産を彼女に半分渡していたんだが、数年前、彼は神経衰弱になってね、フランシスはそれを利用して裁判所に彼の管理能力の喪失を訴え、財産のすべてを自分の管理下に置いてしまったんだ。それにナイーブな彼には、フランシスと争うだけのガッツはない」とのセリフがあったそうです。

逆転の構図07.jpg ナルホドね。助手のローナ(ジョアンナ・キャメロン)の美脚の魅力に駆られて犯行を決意したのかな。でも、かなり冷徹というか、完全犯罪に近い線、いっていたように思います。それが、コロンボに纏わりつかれているうちに、だんだん表情が曇ってくる...。

imagesCA8E9UTV.jpg 犯人役のディック・バン・ダイクは、「メリー・ポピンズ」('64年)よりも、主役だった「チキ・チキ・バン・バン」('68年、原作は007シリーズで知られるイアン・フレミングが唯一著した童話)の方が、学校の課外授業でリアルタイムで観たということもあって印象に残っています(当時、主題歌のソノシートを買って「チュリ・バンバン」とか英語で歌っていた。山本リンダのカバー・ヴァージョンもあったなあ)。

 犯人は2人も殺害している悪い奴であり、ディック・バン・ダイクはこの作品においては渋味のある二枚目キャラクターで通しているのですが、そうした映画のイメージもあって、しかも、何と言ってもこの作品の白眉とも言える、コロンボが犯人に仕掛けた証拠写真を裏焼きしての逆トリックの妙もあって(凝っているし、大胆な手法でもある)、作品全体としては何となく楽しい雰囲気。

VitoScotti2.jpg コロンボが救済所のシスター(ジョイス・バン・パタン、第39話「黄金のバックル」では犯人役を演じる)にホームレスと間違えられたり、たまたまポールの第二の犯行現場に居合わせた「貧乏は恥にあらず」とのたまう浮浪紳士トーマス(ヴィット・スコッティ、またまた登場。第19話「別れのワイン」のレストランの支配人役、第20話「野望の果て」でテーラーの主人役、第24話「白鳥の歌」の葬儀屋に続いて、今度はとうとう"職無し"に)との遣り取りがあったりと、鮮やかな結末だけでなく、その外の部分も楽しめます。

 ディック・バン・ダイク(1925年生まれ)は、TVドラマシリーズ「Dr.マーク・スローン」で再び見(まみ)えることができて、懐かしかったなあ。事件ものでしたが(本業の医師より探偵業の方が忙しそう)、やはり、何となくほのぼのとしたキャラクターでした。

刑事コロンボ(第27話)/逆転の構図.jpg刑事コロンボ(第27話)/逆転の構図 0.jpg「刑事コロンボ(第27話)/逆転の構図」●原題:NEGATIVE REACTION●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督:アルフ・ケリン●製作:エヴァレット・チェンバース●脚本:ピーター・S・フィッシャー●音楽:バーナード・セイガル●時間:95分●出演:ピーター・フォーク/ディック・バン・ダイク/アントワネット・バウアー/ジョイス・バン・パタン/マイケル・ストロング/ドン・ゴードン/ジョアンナ・キャメロン/ヴィット・スコッティ●日本公開:1975/12●放送:NHK(評価:★★★★) 

チキ・チキ・バン・バン チラシ.jpgチキ・チキ・バン・バン2.jpgチキ・チキ・バン・バン3.png「チキ・チキ・バン・バン」●原題:CHITTY CHITTY BANG BANG制作年:1968年●制作国:イギリス●監督:チキ・チキ・バン・バン 01.jpgケン・ヒューズ●製作:アルバート・R・ブロッコリス●脚本:ロアルド・ダール/ケン・ヒューズ●撮影:クリストファー・チャリス●音楽:リチャード・M・シャーマン/ロバート・M・シャーマン●原作:イアン・フレミング●時間:143分●出演:ディック・バン・ダイク●/サリー・アン・ハウズ/アドリアン・ホール/ヘザー・リプリー/ゲルト・フレーベ/アンナ・クエイル/ロバート・ヘルプマン/ライオネル・ジェフリーズ/ジェームズ・ロバートソン・ジャスティス●日本公開:1968/12●配給:ユナイテッド・アーティスツ(評価:★★★☆)

Dr.マーク・スローン00.pngDr.マーク・スローン1.pngDr.マーク・スローン2.jpg「Dr.マーク・スローン」 Diagnosis: Murder (CBS 1993~2001) ○日本での放映チャネル:NHK(1995-1999)/スーパーチャンネル(2003-2005)

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小説の梗概という証拠が凝っている。シリーズの中でもプロット的には優れている方か。

刑事コロンボ(第22話)/第三の終章.jpg刑事コロンボ(第22話)/第三の終章 01.gif
Riley Greenleaf (Jack Cassidy)
特選 刑事コロンボ 完全版「第三の終章」【日本語吹替版】 [VHS]

刑事コロンボ(第22話)/第三の終章op.jpg刑事コロンボ/第三の終章 03.jpg 大衆向けの官能小説で知られる出版社の社長グリンリーフ(ジャック・キャシディ)は、地方紙の記者として燻っていたアラン・マロリー(ミッキー・スピレーン)の作家としての才能を見出したが、その後はマロリーの意思に反して官能小説ばかり書かせていた。売れっ子作家になっていたマロリーはそのことにうんざりし、シリアスな小説を書くために大手の出版社に移籍しようとしていた。そこでグリンリーフはマロリーの新作「サイゴン刑事コロンボ/第三の終章 02.jpgへ60マイル」と保険金を詐取するためにマロリーの殺害を計画。ベトナムからの復員兵で爆弾マニアのエディ・ケーン(ジョン・チャンドラー)を使ってマロリーを射殺。その後、エディも爆弾作成中に事故死したように見せかけて殺害する―。

 第22話「第三の終章」は、このシリーズで3度犯人役を演じているジャック・キャシディ(1927-1976)の第3話「構想の死角」(監督はS・スピルバーグ)に次ぐ登場で(あとの1回は第36話「魔術師の幻想」)、前回は「自分では1行も書かないミステリ作家」という役でしたが、今回も、「売れっ子作家に本人の意に反して官能小説を書かせ、自分は儲ける出版社の社長」という、ちょっと似た感じの役どころかな。

Mickey Spillane COLUMBO.jpg 殺人の被害者となるベストセラー作家マロリーを演じたのが、『裁くのは俺だ』など私立探偵マイク・ハマーが主役のハードボイルド小説の作家ミッキー・スピレーンその人であったり、コロンボがグリンリーフに、「うちの署にも本を書く奴がいましてね」と話すのが、当時、実際にロス市警に勤務しながら小説を発表していたジョセフ・ウォンボー(リチャード・フライシャー監督の映画「センチュリアン」('72年)の原作者)を指していたりと、小説ネタが遊び感覚で織り込まれています。

刑事コロンボ(第22話)/第三の終章 07.jpg グリンリーフは、新作のネタに困っていたマロリーがエディの小説の構想を盗み、それを恨んだエディがマロリー殺害に及んで、本人は爆弾製造中に事故死―という筋書きを完成させますが、たまたまコロンボが、「サイゴンへ60マイル」がロック・ハドソン主演によって映画化されることになったため、主人公を死なせるわけに行かず、最近になって結末を変えたという話を関係者から聞き及んでいて、エディの死亡現場にあった以前にグリンリーフに持ち込んだとされる小説の梗概に、その変えられた結末が既に書かれていたことから、変えられた結末の方しか知らなかったグリンリーフが、エディに罪を被せるために偽造した梗概に最終稿の梗概を書いてしまっていたことが決め手に。

 まあ、いつも通り、コロンボ早くからグリンリーフが犯人であると睨んではいたのでしょうが、小説の梗概の中身が証拠というのが凝っているというかお洒落で、しかも、結末が変更されたものであることを知らされたグリンリーフが、その場でギブアップせざるを得ない強力なものであり、シリーズの中でもプロット的には優れている方だと思います。

橋爪功.jpg 加えて、ジャック・キャシディの不敵な面構えと犯行の大胆さ(「構想の死角」でも、作家に加えて真相を知った雑貨屋の女主人を殺害している)、ジョン・チャンドラーの偏執的な爆弾マニアぶりも良かったです(吹替えは無名時代の橋爪功で、当時、小池朝雄の所属劇団の後輩)。


pubper.jpgモーリス・マルサック.jpg 聞き込みで高級レストランを訪れたコロンボが、メニューに載っていない好物の「チリ」を注文し、更にケチャップやらクラッカーやらを持ってこさせて老ウェイター(モーリス・マルサック)を憮然とさせ、逆に支払いの時はその値段を見て驚くという、お約束のコミカル・シーンなども楽しめます(後で若い警官に「チリには気をつけた方がいい」と聞く側には訳の分からないアドバイスをしている)。

 因みに、この作品は、NHKでの当初の放送予定日だった'74年8月31 日のその前日30日に、丸の内で過激派による「三菱重工本社ビル爆破事件」が発生したため、冒頭に爆破シーンがあることや、爆弾マニアのエディ・ケーンが登場することからNHKは放映を自粛(差替えとして、第23話「愛情の計算」を先に放映)、その年の12月になってやっと放映されました。
 
 「刑事コロンボ(第22話)/第三の終章」●原題:PUBLISH OR PERISH●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・バトラー●製作:スローランド・キビー&ディーン・ハーグローブ●脚本:ピーター・S・フィッシャー●音楽:ビリー・ゴールデンバーグ●時間:74分●出演:ピーター・フォーク/ジャック・キャシディ/ミッキー・スピレーン/マリエット・ハートレイ/ジャック・オービュション/ジョン・チャンドラー/アラン・ファッジ/モーリス・マルサック●日本公開:1974 /12●放送:NHK:★★★★)
マリエット・ハートレイ in「第三の終章」(第22話)/「死者のメッセージ」(第41話)
マリエット・ハートレイ 第三の終章.jpgマリエット・ハートレイ 死者のメッセージ.jpg

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モチーフの時節の捉え方は抜群だが、犯行に用いるには不確実性が高いのではないか。

刑事コロンボ 意識の下の映像 vhs.jpg刑事コロンボ 意識の下の映像 01.pngRobert Culp in "Columbo" Double Exposure (1973)
 

 
 
  

刑事コロンボ 意識の下の映像 07.jpg
特選「刑事コロンボ」完全版 意識の下の映像【日本語吹替版】 [VHS]」ロバート・カルプ

刑事コロンボ 意識の下の映像02.jpg刑事コロンボ 意識の下の映像 タイトル.png 心理学の権威で博士号も持つケプル(ロバート・カルプ)は、宣伝・広告の心理学について多数の著書を持ち、わずか三年間で宣伝の進路を変えたと高い評価を受けている。意識調査研究所を主宰しており、企業からさまざまな販売促進戦略の立案を請け負っているが、その裏では研究所を拡大させるため、妻帯者の男性顧客をキャンペンガールに誘惑させて、その弱みにつけこんで恐喝を重刑事コロンボ 意識の下の映像04.jpgねていくという美人局を行っていた。脅迫対象だったノリス社長(ロバート・ミドルトン)が逆に告発すると反撃に出たため、販売促進用の映画の試写中にサブリミナル効果のトリックを使いロビーにおびき出し銃殺した。すると、そのトリックに気づいた映写技師のホワイト(チャック・マッキャン)がケプルを脅迫し、口止めの金銭的対価を求めてくる―。

刑事コロンボ 意識の下の映像01.png 第3シーズンの第21話「意識の下の映像」は、第1シーズンの第4話「指輪の爪あと」、第2シーズンの第12話「アリバイのダイヤル」で犯人を演じたロバート・カルプ(1930-2010)が再々登板、旧シリーズでの3度の犯人役は、ジャック・キャシディ(1927-1976)と並ぶ最多で、また犯人と同じくロバート・カルプは実際に銃器収集家として有名だったそうです。

 サブリミナル効果については、米国で50年代に、映画の中に「コカコーラを飲め」「ポップコーンを食べろ」というメッセージが書かれたスライドを繰り返し二重映写したところ、コカコーラ、ポップコーンとも売上の増加がみられたとの"実験"が行われたそうですが、その結果は論文としては発表されず、また、その後何度か行われた実験では効果が検証されなかったことです。

 しかし、'73年にウィルソン・ブライアン・キイが自著で、サブリミナル技術が広告で広く用いられているとしたため議論が再燃し、政府の委員会でサブリミナル広告は「公の利益に反する」「人を欺こうとしている」とされ、'74年に法的に禁止されました。

刑事コロンボ 意識の下の映像03.png このエピソードの米国での放映が'73年12月で、丁度サブリミナル広告を巡る議論の真っ盛りの際に、こうしたモチーフを織り込んでいるわけであり、その時節の捉え方は抜群であり、興味深かったけれども、犯行に用いるにはやや不確実性が高いのではないなあ。

 コロンボが同じトリックを使って犯人を誘うのは、こっちは相手の「生理的欲求」ではなく「不安」に働きかけるものであるだけに、尚更のこと不確実性が高いように思います。

 ロバート・カルプ演じる(やはり演技はピカイチ)ケルプ博士は、自らの犯行の手口を察した映写技師も殺してしまいますが、これは結構このシリーズで見られるパターン。

 犯人が2人以上の殺害を行っている(または試みている)エピソードは、第1シーズンでは第3話「構想の死角」、第6話「二枚のドガの絵」、第8話「死の方程式」、第2シーズンでは第13話「ロンドンの傘」、第13話「溶ける糸」、第3シーズンでは第18話「毒のある花」、(この)第21話「意識の下の映像」、第22話「第三の終章」、第24話「白鳥の歌」、第4シーズンでは第27話「逆転の構図」、第31話「5時30分の目撃者」、第5シーズンでは第33話「ハッサン・サラーの反逆」、第6シーズンでは第39話「黄金のバックル」、7シーズンだは第44話「攻撃命令」と、旧シリーズだけでも結構あります。

 2人以上殺害したら死刑は免れないようにも思われますが、'72年6月に米国最高裁判所が死刑執行の違憲判決を出して'76年7月に死刑執行の合憲判決に転じるまでの間、米国では死刑判決は出ておらず、カリフォルニア州は'77年以降に死刑制度を復活させた40州のうちの1つですが、'77年から'11年までの35年何間の間に死刑が執行されたのは13人で(全米の死刑執行数の約1%)、700人以上の未執行の死刑囚がいるそうな(全米の死刑囚の23%で断トツの多さ)。カリフォルニア州では死刑判決は終身刑に近い運用になっているとみていい?

意識の下の映像 ド.jpg「刑事コロンボ(第21話)/意識の下の映像」●原題:DOUBLE EXPOSURE●制作年:1973年●制作国:アメリカ●監督:リチャード・クワイン●製作:ローランド・キビー&ディーン・ハーグローブ●脚本:スティーブン・J・キャネル●音楽:ディック・デ・ベネディクティス●時間:73分●出演:ピーター・フォーク/ロバート・カルプ/ロバート・ミドルトン/チャック・マッキャン/ルイーズ・ラサム/ピーター・ウォーカー/ハリー・ヒコックス●日本公開:1974 /08●放送:NHK(評価:★★★☆)

ピーター・フォーク/ロバート・カルプ

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犯人の殺意に説得力がある「断たれた音」。「二つの顔」は"叙述トリック"。基本形を外れすぎると面白くなくなる例。

刑事コロンボ/断たれた音.jpg THE MOST DANGEROUS MATCH 5.jpg 刑事コロンボ/二つの顔 vhs.jpg
特選 刑事コロンボ 完全版「断たれた音」【日本語吹替版】 [VHS]」ローレンス・ハーベイ「特選 刑事コロンボ 完全版「二つの顔」【日本語吹替版】 [VHS]

刑事コロンボ/断たれた音01.jpg チェスのチャンピオンであるエメット・クレイトン(ローレンス・ハーベイ)だが、かつてチャンピオンだったトムリン・デューディック(ジャック・クルッシェン)が復帰し、自分に挑戦して来たことに恐怖し、夢にうなされる有様。対決前夜にレストランで二人きりで勝負するが、あえなく敗北したクレイトンはデューデックの殺害を決意し、彼をゴミ処理機に突き落とす―。

刑事コロンボ/断たれた音00.jpg 第16話「断たれた音」は、途中のネタを明かすと、犯人による最初の犯行で被害者が瀕死の重傷を負うも死ななかったため、更に犯人は二度目の犯行に及ぶというもので、結果的に被害者が死亡するのが開始から1時間後という、ストレートな倒叙スタイルで描かれた作品中では最も遅い時間帯の作品であるとのことです(レナード・ニモイが犯人役の外科医を演じた第15話「溶ける糸」のように直接の殺害目的であった人物が死ななかった作品もあるけれど、あの時の犯人は関係者2人を殺害している)

 チャンピオン対決の前夜にレストランで密かに直接対決するかなとか、それで負けて相手を殺害することを考えるかなとか、普通に考えればいろいろあるかもしれないけれど、"レストラン対決"が旧チャンピオンの圧勝である上に、彼の態度も負けた相手を思いやるなど余裕綽々であることが、犯人の殺意に説得力を持たせていて、この辺りは構成も両者の演技も上手いなあと。

刑事コロンボ/断たれた音2.jpg刑事コロンボ/断たれた音1.jpg 被害者役ジャック・クルッシェンは、ビリー・ワイルダー監督の「アパートの鍵貸します」(1960)でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされた名バイプレイヤー、犯人役のローレンス・ハーベイは、本作に出演に際には進行した胃ガンを抱えていたと言われ、この作品の1973年3月の本国初放映から8ヵ月後に亡くなっているそうで、そう思って観ると、そうしたことが鬼気迫る演技に繋がっているようにも思えます。


Double Shock title.jpg二つの顔.jpg 続く第17話「二つの顔」は、若い女性と婚約した金持ちのおじ(ポール・スチュワート)を、料理研究家と銀行員である双子の兄弟(マーティン・ランドーが二役)のうちに料理研究家の方が殺害するというもので―と思ったら、そういうことだったのかと。

刑事コロンボ/二つの顔01.jpg 犯人役のマーティン・ランドーは、「スタートレック」に出ていたレナード・ニモイ同様、こちらも「スパイ大作戦」のレギュラー俳優で、今でもそうですが、TVドラマシリーズのレギュラーが、シーズンの合間に他のTVシリーズに出演することがよくあります。

刑事コロンボ/二つの顔02.jpg 推理小説で言うところの「叙述トリック」と言えるかな。アイデア的にはちょっと変わっていて面白いけけれど、双子のそれぞれがキャラがキャラ立ちしていないというか、一人二役がハンディとなっているような印象で、そのため、久しぶりに観た時、この肝心の「叙述トリック」のことを個人的にはすっかり忘れてしまっていた次第です。

 このシリーズは細部の違いが面白いのであって、"基本形"を外れ過ぎるとあまり面白くなくなる傾向にあるのかも。このことは、他のTVドラマシリーズについても言えるが。

imagesCAC7LMUL.jpg「刑事コロンボ(第16話)/断たれた音」●原題:THE MOST DANGEROUS MATCH●制作年:1973年●制作国:アメリカ●監督:エドワード・M・エイブロムズ●製作:ディーン・ハーグローブ●脚本:ジャクソン・ギリス●音楽:ディック・デ・ベネディクティス●時間:74分●出演:ピーター・フォーク/ローレンス・ハーベイ/ジャック・クルッシェン/ハイディ・ブリュール/ロイド・ボックナー/マイケル・フォックス●日本公開:1973 /11●放送:NHK‐UHF(評価:★★★★)

スパイ大作戦 サウンドトラック 1967.jpgマーティン・ランドー2.jpg「刑事コロンボ(第17話)/二つの顔」●原題:DOUBLE SHOCK●制作年:1972年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・バトラー●製作:ディーン・ハーグローブ●脚本:スティーブン・ボッコ/ピーター・アラン・フィールズ●音楽:ディック・デ・ベネディクティス●時間:74分●出演:ピーター・フォーク/マーティン・ランドー/ジャネット・ノーラン/ティム・オーコナー/ジュリー・ニューマーン/ポール・スチュワート●日本公開:1973/12●放送:NHK‐UHF(評価:★★★)

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ラストのロープウェイという"密室"での犯人の追いつめ方に味があった。

死の方程式 vhs.jpg 死の方程式 rm.jpg   死の方程式 本.jpg
特選 刑事コロンボ 完全版「死の方程式」【日本語吹替版】 [VHS]」/ロディ・マクドウォール/『刑事コロンボ 死の方程式 サラブレッドブックス4』

死の方程式 タイトル.jpg 化学会社の先代社長の道楽息子ロジャー(ロディ・マクドウォール)は叔父で現社長のデビット(ジェームス・グレゴリー)に会社を追放されそうになり、葉巻ケースに仕掛けた爆弾で事故に見せかけ爆殺する。コロンボはロジャーを犯人とにらむが証拠が見つからなかった―。

死の方程式01.jpg 巷の評価はイマイチみたいですが、個人的にはそう悪くないと思っている作品で、コロンボのラストのロープウェイという"密室"での犯人の追いつめ方はなかなか味があったし、それまでずっと調子づいていた犯人が最後で大もがきする、その落差の激しさもいいと思いました。
死の方程式 ロディ・マクドウォール.jpg 犯人が、若くて軽く、お調子者っぽい感じであるのも、あまり高い評価を得ていない理由の一つかもしれませんが、演じているのは「猿の惑お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ.jpg星」('68年)でコーネリアスを演じていたロディ・マクドウォール(1928-1998)であり(当時42歳で、実はピーター・フォークと同世代)、こんな犯人がいてもいいかなあと(吹替え担当は野沢那智)。ロジャーはいつもカメラを手にしていますが、和田誠氏の『お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ』('75年/文藝春秋)によれば、実際のロディ・マクドウォールはかなり上手な写真家であり、芸能人を大勢撮って写真集も出しているとのことです(代表作は撮られた有名人に関するエッセイを別の有名人が書いている「Double Exposure」シリーズ)。

 第6話「二枚のドガの絵」には、被害者の前妻役で「猿の惑星」のジーラ博士を演じたキム・ハンターが出ていたし、この第8話「死の方程式」の犯人の叔父である被害者役のジェームズ・グレゴリーも「続・猿の惑星」に出ていたということで、シリーズ全体では7名の役者が「猿の惑星」シリーズ(全5作ある)の出演者であるとのことです。

死の方程式 アン・フランシス.jpg その他にこの第8話には、「禁断の惑星」('56年)のアン・フランシス(1930-2011)が犯人の秘書&愛人役で出ていますが、第15話「溶ける糸」にも犯人に殺されてしまう看護婦役で出ているし、被害者デビットの妻(犯人の叔母)役のアイダ・ルピノは、第24話「白鳥の歌」で犯人に殺されてしまう妻役でも出ていたことに気づきました(こうして見ると、複数回このシリーズに出ている役者が結構いるなあと)。

死の方程式03.jpg シリーズ中、世間的にはややマイナーの部類のエピソードのようですが、こうしたクロスオーバーしている役者陣への関心と、ロープウェイ内でのラストシーンの面白さ(恒例の"逆トリック"の中でも秀逸)や野沢那智の吹替えがハマっていることなどもあって、個人的にはお薦めの一作です。

「刑事コロンボ(第8話)/死の方程式」●原題:SHORT FUSE●制作年:1972年●制作国:アメリカ●監督:エドワード・M・エイブロムズ●製作:リチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンク●脚本:ジャクソン・ギリス●音楽:/ギル・メレ●時間:73分●出演:ピーター・フォーク/ロディ・マクドウォール/ジェームズ・グレゴリー/アン・フランシス/ウィリアム・ウィンダム/アイダ・ルピノ/エディ・クィラン/リュー・ブラウン●日本公開:1973 /03●放送:NHK‐UHF(評価:★★★★)

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パイロット版第2作。"コロンボ"のキャラクターや事件解決のパターンが出来上がった作品。

死者の身代金 vhs.jpg リー・グラント.png リー・グラント 死者の身代金 本.jpg 
特選「刑事コロンボ」完全版~死者の身代金~【日本語吹替版】 [VHS]」/『刑事コロンボ 死者の身代金/サラ・ブックス16』

RANSOM FOR A DEAD MAN.jpg 本国で'71年3月に放映されたもので、日本では一応シリーズ第3話となっていますが、本国で'68年2月に放映された「殺人処方箋」と同じく、シリーズ化の前に作られたパイロッット版です。同'71年9月に次の第3話「構想の死角」が放映され、これが本来のシリーズ第1作となります。

死者の身代金01.jpg 日本での放映は、'72年8月に「殺人処方箋」、'72年11月「構想の死角」、そして'73年4月にこの「死者の身代金」となっており、'73年2月に放映された第9話「パイルD-3の壁」などよりも遅く、結局日本では、シリーズの始まる3年前に作られたパイロット版の第1作「殺人処方箋」を放映した後、第3話から第9話までの「シーズン1」を放映し、更にその後で、パイロット版の第2作であるこの作品を放映したことになります。

 人気投票では本作よりも「殺人処方箋」の方が大体上位にくるようですが、個人的には本作の方が"コロンボ"らしくていいかなあ。「殺人処方箋」から3年も間が空いたわけですが、本作でシリーズ化が決定したわけでしょ(この間にピーター・フォークは40歳から43歳になっている)。

死者の身代金03.jpg 「殺人処方箋」でスーツもヘアスタイルもさっぱりしていたのが、ちゃんとよれよれのコートで、もじゃもじゃの髪型になっているし、いざという時に筆記用具を失くしたりなかなか出てこなかったりするのは「殺人処方箋」の時からですが、"バーニーの店"でチリソースを食べるシーンは今回が初めて。あとは、愛車プジョーはまだ出てきていません。

 犯人は、リー・グラント演じる女性弁護士レスリーで、電話を使った偽装誘拐トリックなど、その後のシリーズの作品の同種の場面を彷彿させるシーンが幾つかありますが、何よりも、出だしは犯人に対しても、他の捜査員(FBI)に対してもぐっと控えめでありながらも、レスリーが"夫からの電話"に対し、「あなたご無事?」などと言って夫の安否を訪ねなかったことをまず不審に思うといったところから事件の真相に迫るところが、やはり"コロンボ"らしいなあと(FBI捜査官らはこれを看過してしまう)。

 犯人に対しては、状況証拠がありながらも決定的な証拠がなくてお手上げだというフリをして、最後一気にに犯人から物証を引き出す―このやり方も、その後のシリーズの作品に同様のものがあったし、まさに本作において、シリーズ化以降の"コロンボ"のキャラクターや事件解決手口のパターンが出来上がっていたという感じ。

 犯人に物証となる身代金を使わせるために、普通はこんな手は通用しないとしながらも、レスリー相手ならいけるという確信のもとに芝居を打つ―なぜならば、彼女は欲深い上に、愛する肉親を殺された者でも同様に金で動かすことができると思い込んでいるから―。

死者の身代金02.jpg 完全犯罪が破綻したのは、そうした自分の思い込みによるものだと、この辺りは「殺人処方箋」とも通じるものがありますが、それを犯人である彼女に説いてみせるのは、やや解説過剰かなあ(脚本家は、犯人の口から言わせたかったのだろうなあ)。

 唯一の物証を引き出すために用いたやり方自体には賛否はあるかも知れませんが、目の付け所はやはり秀逸だと思います。レスリーと一緒にセスナに乗るシーンやラストの大金を目の前にして小銭が払えないでいる辺り、ピーター・フォークが「コロンボ」でメジャーになる前に出ていたコメディ映画の雰囲気を帯びている感じがしました。

RANSOM FOR A DEAD MAN2.jpg「刑事コロンボ(第2話)/死者の身代金」●原題:RANSOM FOR A DEAD MAN●制作年:1971年●制作国:アメリカ●監督:リチャード・アービング●脚本・製作:/ディーン・ハーグローブ●音楽:ビリー・ゴールデンバーグ●時間:95分●出演:ピーター・フォーク/リー・グラント/パトリシア・マティック/ハロルド・グールド/ハーラン・ウォード/ハンク・ブラント/ビル・ウォーカー/ジャドソン・モーガン/ジョン・フィンク/リサ・ムーア/ジーン・バイロン●日本公開:1973/04●放送:NHK-UHF(評価:★★★★)
刑事コロンボ完全版 DVD-SET 1.jpg刑事コロンボ完全版 DVD-SET 1 【ユニバーサルTVシリーズ スペシャル・プライス】
刑事コロンボ 1シーン.jpgDisc1 (1) 殺人処方箋: 約99分 (2) 死者の身代金: 約95分
Disc2 (3) 構想の死角 :約76分 (4) 指輪の爪あと:約76分
Disc3 (5) ホリスター将軍のコレクション :約76分 (6) 二枚のドガの絵: 約76分
Disc4 (7) もう一つの鍵: 約75分 (8) 死の方程式 :約75分
Disc5 (9) パイルD-3の壁: 約75分 (10) 黒のエチュード: 約96分

「刑事コロンボ」Columbo (NBC 1971~1978/ABC 1989~2003) ○日本での放映チャネル:NHK-UHF・NHK(1972~1981)ほか

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ディズニー・アニメ中心で、作品の選抜基準がかなり恣意的。内容の割には値段が高すぎる。

世界アニメーション歴史事典.jpg(26.2 x 23.8 x 3.8 cm) ダンボ.JPG 
世界アニメーション歴史事典』 (2012/09 ゆまに書房)

 100年にわたるアニメーションの歴史を、図版と解説とで紹介したアニメの歴史事典で、アニメ映画だけでなく、テレビ番組、ゲーム、インディペンデント系映画、インターネットのアニメにいたるまでフォローした、定価8,500円の豪華本です(重い!)

 年代順に整理されていて分かりやすく、何よりも図版の配置が贅沢。その分、400頁余というページ数の割には、取り上げられている作品数に制約があり、観て楽しむ分にはいいですが、「事典」としてはどうかなという思いも。

ファンタジア.JPG 掲載されているアニメ数は700余点とのことですが、芸術アニメからディズニーの大ヒットアニメまでカバーしている分、それぞれの分野で抜け落ちを多いような気もして、作品の選抜にやや恣意性を感じました。

 日本のアニメは、「白蛇伝」('58年)が片面で小さく図版が入っているのみなのに対し、「AKIRA」('88年)が見開き両面に図版を入れての紹介、映画「ファイナルファンタジー」が片面図版入りなのに対し、「鉄腕アトム」('63年)や「千と千尋の神隠し」('01年)が、まるで邦訳版のために後から加えたかのように、図版無しの簡単な文章のみの紹介となっています(これらも、"700余点"にカウントされているのか)。

「ファンタジア」ド.jpg 「ファンタジア」('41年、日本公開'55年)の見開き4ページにわたる紹介を筆頭に(これ、確かに名作ではある。本書にも紹介されている「ネオ・ファンタジア」('76年/伊)の方が大人向きの芸術アニメで、「ファンタジア」ネオ・ファンタジア.JPGがレオポルド・ストコフスキーならば「ネオ・ファンタジア」の方はヘルベルト・フォン・カラヤンで迫るが、「ネオ・ファンタジア」は「ファンタジア」より35年も後に作られた作品にしては残念ながらはアニメーション部分がイマイチ)、本書全体としてかなりディズニー偏重ではないかと思われ、イギリス映画である「イエロー・サブマリン」('68年/英)なども制作の経緯が結構詳しく記されているけれども、それらも含めアメリカにおいてメジャーであるかどうかという視座が色濃いとも言えます。

イエローサブマリン.JPG 個人的には「イエロー・サブマリンン」は、「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」('64年/英)、「ヘルプ!4人はアイドル」('65年/英)などとの併映で名画座で観ましたが、いつごろのことか記憶にありません。劇場(ロードショー)公開当初はそれほど話題にならなかったといいますが、今思えば、日本の70年代ポップカルチャーに与えた影響は大きかったかも。イラストレーターの伊坂芳太良なんて、影響を受けた一人では?(この人、1970年には亡くなっているが)。

 もちろんディズニー・アニメは歴史的にも先駆的であり、「白雪姫」('37年、日本公開'50年)はディズニーの最初の「長編カラー」アニメーションですが、1937年の作品だと思うとやはりスゴイなあと思うし、個人的には自分の子供時代の弁当箱の図柄だった「ダンボ」('41年、日本公開'54年)にも思い入れはあるし(「ダンボ」は1947年・第2回カンヌ国際映画祭「アニメーション賞」受賞作)、「ファンタジア」のDVDなどは大型書店に行けば児童書のコナーで簡単に購入できるなど、今も世界的にもメジャーであることは間違いないのですが...。自分の子供時代に関して言えば、「ダンボ」は劇場で観たけれど、「ファンタジア」は観なかったなあ(リヴァイバルされる機会が少なかったのかも)。今観ても、「ファンタジア」はどこよなく"情操教育"っぽい雰囲気が無きにしもあらずで、個人的に懐かしい「ダンボ」の方がやや好みか。

FANTASIA 1941.jpgファンタジア dvd.jpg「ファンタジア」●原題:FANTASIA●制作年:1940年●制作国:アメリカ●監督:ベン・シャープスティーン●製作:ウォルト・ディズニー●脚本:ジョー・グラント/ディック・ヒューマー●音楽:チャイコフスキー/ムソルグスキー/ストラヴィンスキー/ベートーヴェン/ポンキェッリ/バッハ/デュカース/シューベルト(レオポルド・ストコフスキー指揮、フィラデルフィア管弦楽団演奏)●時間:オリジナル125分/1942年リバイバル版81分/1990年リリース版115分●出演:ディームス・テーラー/レオポルド・ストコフスキー●日本公開:1955/09●配給:RKO=大映(評価:★★★☆)ファンタジア [DVD]

ネオ・ファンタジア dvd.jpg「ネオ・ファンタジア」●原題:ALLEGRO NON TROPPO●制作年:1976年●制作国:イタリア●監督・製作:ブルーノ・ボツェット●脚本:ブルーノ・ボツェット/グイド・マヌリ/マウリツィオ・ニケッティ●アニメーション:アニメーション:ギゼップ・ラガナ/ウォルター・キャバゼッティ/ジョバンニ・フェラーリ/ジャンカルロ・セレダ/ジョルジョ・バレンティニ/グイド・マヌリ/パオロ・アルビコッコ/ジョルジョ・フォーランニ●実写撮影:マリオ・マシーニ●音楽:ドビュッシー/ドヴォルザーク/ラヴェル/シベリウス/ヴィヴァルディ/ストラヴィンスキー(ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、フィラデルフィアベルリン・フィルハーモニー管弦楽団)●時間:85分●出演:マウリツィオ・ニケッティ/ネストール・ガレイ/マウリツィオ・ミケーリ/マリア・ルイーザ・ジョヴァンニーニ●日本公開:1980/01●配給:アート・フォーラム●最初に観た場所:池袋文芸坐(82-03-21)(評価:★★★)●併映:「天井桟敷の人々」(マルセル・カルネ)ネオ・ファンタジア [DVD]

白雪姫 dvd.jpg「白雪姫」●原題:SNOW WHITE AND THE SEVEN DWARFS●制作年:1937年●制作国:アメリカ●監督:デイヴィッド・ハンド●製作:ウォルト・ディズニー●脚本:テッド・シアーズ/オットー・イングランダー/ アール・ハード/ドロシー・アン・ブランク/ リチャード・クリードン/メリル・デ・マリス/ディック・リカード/ウェッブ・スミス●撮影:ボブ・ブロートン●音楽:フランク・チャーチル/レイ・ハーライン/ポール・J・スミス●原作:グリム兄弟●時間:83分●声の出演:アドリアナ・カセロッティハリー・ストックウェル/ルシール・ラ・バーン/ロイ・アトウェル/ピント・コルヴィグ/ビリー・ギルバート/スコッティ・マットロー/オーティス・ハーラン/エディ・コリンズ●日本公開:1950/09●配給:RKO(評価:★★★★)白雪姫 スペシャル・エディション [DVD]

ダンボ dvd.jpgダンボ 1941.jpg「ダンボ」●原題:DUMBO●制作年:1941年●制作国:アメリカ●監督:ベン・シャープスティーン●製作:ウォルト・ディズニー●脚本:ジョー・グラント/ディック・ヒューマー/ビル・ピート/オーリー・バタグリア/ジョー・リナルディ/ジョージ・スターリング/ウェッブ・スミス/オットー・イングランダー●音楽:オリバー・ウォレス/フランク・チャーチル●撮影:ボブ・ブロートン●原作:ヘレン・アバーソン/ハロルド・パール●時間:64分●声の出演:エド・ブロフィ/ハーマン・ビング●日本公開:1954/03●配給:RKO=大映(評価:★★★★)ダンボ スペシャル・エディション [DVD]

イエロー・サブマリン dvd.jpgイエロー・サブマリン.jpg「イエロー・サブマリン」●原題:YELLOW SUBMARINE●制作年:1968年●制作国:イギリス●監督:ジョージ・ダニング/ジャック・ストークス●製作:アル・ブロダックス●撮影:ジョン・ウィリアムズ●編集:ブライアン・J・ビショップ●時間:90分●出演:(アニメ画像として)ザ・ビートルズ(ジョン・レノン/ポール・マッカートニー/ジョージ・ハリスン/リンゴ・スター)●日本公開:1969/07●配給:ユナイテッド・アーティスツ(評価:★★★☆)
イエロー・サブマリン [DVD]


ロジャー・ラビット.JPG ロバート・ゼメキス監督の「ロジャー・ラビット」('88年)のような「実写+アニメーション合成作品」も取り上げられていますが、確かにアカデミー視覚効果賞などを受賞していて、合成技術はなかなかののものと当時は思われたものの、合成を見せるためだけの映画になっている印象もあり、キャラクターが飛び跳ねてばかりいて観ていて落ち着かない...まあ、アメリカのトゥーン(アニメーションキャラクター)の典型的な動きなのだろうけれど、これもまたディズニー作品。但し、この作品以降、「リジー・マグワイア・ムービー」('03年)まで15年間、ディズニーは実写+アニメーション合成作品を作らなかったことになります(最も最近の実写+アニメーション合成作は「魔法にかけられて」('07年))。まあ、実写とアニメの合成は、作品全体のごく一部分としてならば、ジーン・ケリーがアニメ合成でトム&ジェリーと踊る「錨を上げて」('45年/米)の頃からあるわけだけれど。

ロジャー・ラビット dvd.jpg「ロジャー・ラビット」●原題:WHO FRAMED ROGER RABBIT●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・ゼメキス●アニメーション監督:リチャード・ウィリアムス●製作:フランク・マーシャル/ロバート・ワッツ●脚本:ジェフリー・プライス/ピーター・シーマン●撮影:ディーン・カンディ●音楽:アラン・シルヴェストリ●原作:ゲイリー・K・ウルフ●時間:113分●出演:デボブ・ホスキンス/クリストファー・ロイド/ジョアンナ・キャシディ/スタッビー・ケイ/アラン・ティルバーン/リチャード・ルパーメンティア●日本公開:1988/12●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場所:渋谷スカラ座(88-12-04)(評価:★★)ロジャー・ラビット [DVD]

錨を上げて アニメ.jpg錨を上げて.jpg「錨を上げて」●原題:ANCHORS AWEIGH●制作年:1945年●制作国:アメリカ●監督:ジョージ・シドニー●製作:ジョー・パスターナク●脚本:イソベル・レナート●撮影:ロバート・プランク/チャールズ・P・ボイル●音楽監督:ジョージー・ストール●原作:ナタリー・マーシン●時間:140分●出演:フランク・シナトラ/キャスリン・グレイソン/ジーン・ケリー/ホセ・イタービ /ディーン・ストックウェル●日本公開:1953/07●配給:MGM日本支社●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

 冒頭の地域別アニメ史の要約は「北米」「西欧」「ロシア・東欧」「アジア」という区分になっていますが、本文中ではアメリカがやはり圧倒的に多いです(著者のスティーヴン・キャヴァリアは、アニメ制作キャリア20年の英国人で、ディズニーの監督もしたことがあるとのことだが、何という作品を監督したのかよく分からない)。

雪の女王.jpg 芸術アニメに関して言えば、アレクサンドル・ペドロフの「老人と海」('99年/露・カナダ・日)は紹介されていますが、山村浩二監督の「頭山」('02年)は無く(加藤久仁生監督の「つみきのいえ」('08年)はある)、伝統的に芸術アニメの先進国であるチェコの作品などは、カレル・ゼーマンの「悪魔の発明」('58年)は入っていますが「水玉の幻想」('48年)などは入っておらず、ロシアの作品は、雪の女王 dvd.jpg「イワンと仔馬」('47年)は図版無しの文章のみの紹介で、「雪の女王」('57年)に至っては「イワンと仔馬」の解説文の中でその名が出てくるのみ、同じく、ユーリ・ノルシュテインの「霧の中のハリネズミ(霧につつまれたハリネズミ)」('75年)も、日本でも絵本にまでなっているくらい有名な作品ですが、「話の話」('79年)の解説文の中でその名が出てくるのみで、その「話の話」の図版さえもありません(「話の話」が「霧の中のハリネズミ」の"続編"として作られたと書いてあるが、それぞれ別作品ではないか)。これでは日本人だけでなく、東欧人やロシア人の自国のアニメを愛するファンも怒ってしまうのでは?

老人と海(99年公開).jpgアニメーション「The Old Man and the Sea(老人と海)」 by Alexandre Petrov(アレクサンドル・ペトロフ) 1999.jpg 「老人と海」●原題:THE OLD MAN AND THE SEA●制作年:1999年●制作国:ロシア/カナダ/日本●監督・脚本:アレクサンドル・ペドロフ/和田敏克●製作:ベルナード・ラジョア/島村達夫●撮影:セルゲイ・レシェトニコフ●音楽:ノーマンド・ロジャー●原作:アーネスト・ヘミングウェイ●時間:23分●日本公開:1999/06●配給:IMAGICA●最初に観た場所:東京アイマックス・シアター (99‐06‐16) (評価★★★☆)●併映:「ヘミングウェイ・ポートレイト」(アレクサンドル・ペトロフ)●アニメーション老人と海 [DVD]」('99年/ロシア/カナダ/日本)

雪の女王 dvd.jpg「雪の女王」●原題:Снежная королев(スニェージナヤ・カラリェバ)●制作年:1957年●制作国:ソ連●監督:レフ・アタマノフ●脚本:レフ・アタマノフ/G・グレブネル/N・エルドマン●音楽:A.アイヴァジャン●原作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン●時間:63分●声の出演:Y.ジェイモー/A.カマローワ/M.ババノーワ/G.コナーヒナ/V.グリプコーフ●公開:1960/01/1993/08 ●配給:NHK/日本海映画●最初に観た場所:高田馬場ACTミニシアター(84-01-14)(評価:★★★★)●併映:「せむしの仔馬」(イワノフ・ワーノ)

雪の女王 [DVD]」('57年/ソ連)


霧の中のハリネズミ.jpg「霧の中のハリネズミ(霧につつまれた霧の中のハリネズミ 1.jpgユーリ・ノルシュテイン作品集.jpgハリネズミ)」●原題:Ёжик в тумане / Yozhik v tumane●制作年:1975年●制作国:ソ連●監督:ユーリイ・ノルシュテイン●脚本:セルゲイ・コズロフ●音楽:ミハイール・メイェローヴィチ●撮影:ナジェージダ・トレシュチョーヴァ●原作:セルゲイ・コズロフ●時間:10分29秒●声の出演:アレクセーイ・バターロフ/マリヤ・ヴィノグラドヴァ/ヴャチェスラーフ・ネヴィーヌィイ●公開:2004/07(1988/10 ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント【VHS】)●配給:ふゅーじょんぷろだくと=ラピュタ阿佐ヶ谷(評価:★★★★)

ユーリ・ノルシュテイン作品集 [DVD]

 結果的には、アメリカのアニメ史、特にディズニー・アニメに絞って追っていく分にはいい本かも(と思ったら、版元の口上にも、「ディズニー主要作品も網羅した本格的な初のアニメファン必備書」とあった)。個人的には、懐かしいアニメもありましたが、一つ一つの作品解説がそう詳しいわけでもなく(但し、制作の裏話などではトリビアなエピソードも多くあったりする)、むしろアメリカ・アニメ史の中でのそれら作品の位置づけを確認できる、といった程度でしょう。内容的に見て、事典と言うより個人の著書の色合いが濃く、買うには値段が高すぎる本でした。

渋谷東宝会館2.jpg渋谷スカラ座 渋谷東宝会館4階(1階は渋谷東宝劇場)。1989年2月26日閉館。1991年7月6日、跡地に渋東シネタワーが開館。

「●映画」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1783】 江藤 努/中村 勝則 『映画イヤーブック 1997
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見ていると眠れなくなってしまいそうな本。美麗本であれば、ファンには垂涎の一冊。

怪奇SF映画大全2.jpg メトロポリス.JPG アマゾンの半漁人.JPG
怪奇SF映画大全』(30 x 23 x 2.4 cm) 「メトロポリス」('27年) 「アマゾンの半魚人」('54年)

図説ホラー・シネマ.jpgGraven Images 1992.jpgGraven Images 2.jpg 先に『図説 モンスター―映画の空想生物たち(ふくろうの本)』('07年/河出書房新社)を取り上げましたが、本書(原題"Graven Images" 1992)は怪奇映画だけでなくSFホラーまで領域を拡げた「映画ポスター+解説集」であり、「カリガリ博士」「キング・コング」から「吸血鬼ドラキュラ」「2001年宇宙の旅」まで怪奇・SF・ファンタジー映画の歴史をポスターの紹介と併せて解説したまさに永久保存版であり、1910~60年代まで450本の映画及びポスターが紹介されています。
"Graven Images: The Best of Horror, Fantasy, and Science-Fiction Film Art from the Collection of Ronald V. Borst"

 ポスターの紹介点数もさることながら、大型本の利点を生かしてそれらを大きくゆったりと配置しているためかなり見易く、また、迫力のあるものとなっています(表紙にきているのはボリス・カーロフ主演の(「フランケンシュタイン」ではなく)「ミイラ再生」('32年)のポスター)。

 「ふくろうの本」の方が映画そのものの解説が詳しいのに比べ、こちらはポスターそのものを見せることが主で、その余白に映画の解説が入るといった作りになっていますが、それでも解説も丁寧。「10年代と20年代」から「60年代」まで年代ごとの"編年体"の並べ方になっているため、時間的経緯を軸に怪奇SF映画の歴史を辿るのにはいいです。

 更に各章の冒頭に、ロバート・ブロック(「サイコ」の原作者)、レイブラッド・ベリ、ハーラン・エリスン、クライブ・パーカーなどの作家陣が、年代ごとの作品の解説を寄せていますが(序文はスティーヴン・キング)、それぞれエッセイ風の文章でありながら、作品解説としてもかなり突っ込んだものになっています。

「キング・コング」('33年)
kingkong 1933 poster.jpgキング・コング 1933.jpg ポスターに関して言えば、60年代よりも前のものの方がいいものが多いような印象を受けました。個人的には、「キング・コング」('33年)のポスターが見開き4ページにわたり紹介されているのが嬉しく、「『美女と野獣』をフロイト的に改作」したものとの解説にもナルホドと思いました。映画の方は、最近のリメイクのようにすぐにコングが出てくるのではなく、結構ドラマ部分で引っ張っていて、コングが出てくるまでにかなり時間がかかったけれど、これはこれで良かったのでは。当のコングは、ストップ・アニメーションでの動きはぎこちないものであるにも関わらず、観ている不思議と慣れてきて、ティラノサウルスっぽい「暴君竜」との死闘はまるでプロレスを観ているよう(コマ撮りでよくここまでやるなあ)。比較的自然にコングに感情移入してしまいましたが、意外とこの時のコングは小さかったかも...現代的感覚から見るとそう迫力は感じられません。但し、当時は興業的に大成功を収め(ポスターも数多く作られたが、本書によれば、実際の映画の中でのコングの復讐_1.jpgコングの姿を忠実に描いたのは1点[左上]のみとのこと)、その年の内に「コングの復讐」('33年)が作られ(原題は「SON OF KONG(コングの息子)」)公開されました。 「コングの復讐」('33年)[上]

紀元前百万年 ポスター.jpg
紀元前百万年 スチール.jpg 因みに、アメリカやイギリスでは「怪獣映画」よりも「恐竜映画」の方が主に作られたようですが、日本のように着ぐるみではなく、模型を使って1コマ1コマ撮影していく方式で、ハル・ローチ監督、ヴィクター・マチュア、キャロル・ランディス主演の「紀元前百万年」('40年)ではトカゲやワニに作り物の角やヒレをつけて撮る所謂「トカゲ特撮」なんていう方法も用いられましたが、何れにしても動きの不自然さは目立ちます。そもそも恐竜と人類が同じ時代にいるという状況自体が進化の歴史からみてあり得ない話なのですが...。
     
one million years b.c. poster.jpg この作品のリメイク作品が「恐竜100万年」('66年)で、"全身整形美女"などと言われたラクエル・ウェルチが主演でしたが(100万年前なのにラクェル・ウェルチ   .jpgラクェル・ウェルチがバッチリ完璧にハリウッド風のメイキャップをしているのはある種"お約束ごと"か)、やはりここでも模型を使っています。結果的に、ラクエル・ウェルチの今風のメイキャップでありながらも、何となくノスタルジックな印象を受けて、すごく昔の映画のように見えてしまいます(CGの出始めの頃の映画とも言え、なかなか微妙な味わいのある作品?)。

King Kong 02.jpg「キングコング」(1976年)1.jpg「キングコング」(1976年).jpg それが、その10年後の、ジョン・ギラーミン監督のリメイク版「キングコング」('76年)(こちらは邦題タイトル表記に中黒が無い)では、キング・コングの全身像が出てくる殆どのシーンは、リック・ベイカーという特殊メイクアーティストが自らスーツアクターとなって体当たり演技したものであったとのことで、ここにきてアメリカも、「ゴジラ」('54年)以来の日本の怪獣映画の伝統である"着ぐるみ方式"を採り入れたことになります(別資料によれば、実物大のロボット・コング(20メートル)も作られたが、腕や顔の向きを変える程度しか動かせず、結局映画では、コングがイベント会場で檻を破るワンシーンしか使われなかったという)。

フランケンシュタインの花嫁 poster.jpg 「フランケンシュタイン」('31年)「フランケンシュタインの花嫁」('35年)のポスターもそれぞれ見開きで各種紹介されていて、本書によれば、ボリス・カーロフは自分の演じる怪物にセリフがあることを不満に思っていたそうな(普通、逆だけどね)。その後も続々とフランシュタイン物のポスターが...。やはり、フランケンシュタインはSFまで含めても怪奇物の王者だなあと。

 40年代では「キャット・ピープル」('42年)や「ミイラ男」シリーズ、50年cat people 1942 poster.jpgthe thing 1951 poster.jpgforbbidden planet 1956 poster.jpg代では「遊星よりの物体X」('51年)「大アマゾンの半魚人」('54年)などのポスターがあるのが楽しく、50年代では日本の「ゴジラ」('54年)のポスターもあれば、「禁断の惑星」('56年)「宇宙水爆線」('55年)のポスターもそれぞれ見開きで各種紹介されています(50年代の最後にきているのはヒッチコックの「サイコ」('60年)のポスター)。

「キャット・ピープル」('42年)/「遊星よりの物体X」('51年)/「禁断の惑星」('56年)各ポスター

「遊星よりの物体X」('51年)/「遊星からの物体X」('82年)
the thing 1951.jpgthe thing 1982.jpg 「キャット・ピープル」はポール・シュレイダー監督、ナスターシャ・キンスキー主演で同タイトル「キャット・ピープル」('81年)としてリメイクされ(オリジナルは日本では長らく劇場未公開だったが1988年にようやく劇場公開が実現したため、多くの人がリメイク版を先に観たことと思う)、「遊星よりの物体X」は、ジョン・カーペンター監督によりカート・ラッセル主演で「遊星からの物体X」('82年)としてリメイクされています。
「キャット・ピープル」('42年)/「キャット・ピープル」('81年)
cat people 1942 01.jpgcat people 1982.jpg 前者は、オリジナルでは、猫顔のシモーヌ・シモンが男性とキスするだけで黒豹に変身してしまう主人公を演じていますが、ストッキングを脱ぐシーンとか入浴シーン、プールでの水着シーンなどは当時としてはかなりエロチックな方だったのだろうなあと。実際に黒豹になるナスターシャ「キャット・ピープル」.jpg場面は夢の中で暗示されているのみで、それが主人公の妄想であることを示唆しているのに対し、リメイク版では、ナスターシャ・キンスキーが男性と交わると実際に黒豹に変身します。ナスターシャ・キンスキーの猫女(豹女?)はハマリ役で、後日テス 0.jpg「あの映画では肌を露出する場面が多すぎた」と述懐している通りの内容でもありますが、むしろ構成がイマイチのため、ストーリーがだらだらしている上に分かりにくいのが難点でしょうか。ナスターシャ・キンスキー自身は、「テス」('79年)で"演技開眼"した後の作品であるため、「肌を出し過ぎた」発言に至っているのではないでしょうか。「テス」は、19世紀のイギリスの片田舎を舞台に2人の男の間で揺れ動きながらも愛を貫く女性を描いた、文豪トマス・ハーディの文芸大作をロマン・ポランスキーが忠実に映画化した作品で、ナスターシャ・キンスキーの演技が冴え短く感じた3時間でした(ナスターシャ・キンスキーはこの作品でゴールデングローブ賞新人女優賞を受賞)。一方、「テス」に出る前年にナスターシャ・キンスキーは、スイスの全寮制寄宿学校を舞台に、そこにやって来たアメリカ人少女というレッスンC  poster.jpgレッスンC 00.jpg設定の青春ラブ・コメディ「レッスンC」('78年)に出演していて、そこでは結構「しっかり肌を出して」いたように思います。「レッスンC」は音楽はフランシス・レイでありながらもB級というよりC級映画に近いですが(まあ、フランシス・レイは「続エマニュエル夫人」('75年)といった作品の音楽も手掛けているわけだが)、16歳のナスターシャ・キンスキーのキュートでお茶目なぶりがいやらしさを感じさせず、ある種ガーリームービーとして後にカルト的人気となった作品です。それにつられた訳ではないが、個人的評価も当初×(★★)だったのを△(★★☆)にしました(音楽も今聴くと懐かしい)。

 後者「遊星からの...」はカート・ラッセル主演で、オリジナル「遊星よりの...」の"植物人間"のモチーフを更に"擬態"にまで拡げてアレンジ、犬の顔がバナナの皮が剥けるように割けるシーンや、首を切られて落ちた頭に足が生えてカニのように逃げていくシーンのSFXはスゴかった...。これを観てしまうと、オリジナルはやや大人し過ぎるでしょうか。リメイクの方がむしろジョン・W・キャンベルの原作『影が行く』に忠実な面もあり、オリジナルを超えていたかもしれません。SFXを駆使して逆にオリジナルの良さを損なう作品が多い中、誰が「偽人間」なのかと疑心暗鬼に陥った登場人物らの心理をドラマとして丁寧に描くことで成功しています。エンニオ・モリコーネの音楽も効いていました。

フェイ・レイ.jpg2フェイ・レイ.jpgキング・コング 1976 ジェシカ・ラング.jpg 「キング・コング」('33年)のリメイク、ジョン・ギラーミン監督の「キングコング」('76年)は、オリジナルは、ヒロイン(フェイ・レイ)に一方的に恋したコングが、ヒロインをさらってエンパイアステートビルによじ登り、コングの手の中フェイ・レイは恐怖のあまりただただ絶叫するばかりでしたが(このため、フェイ・レイ"絶叫女優"などと呼ばれた)、King Kong 1976 03.jpgリメイク版のヒロイン(ジェシカ・ラング)は最初こそコングを恐れるものの、途中からコングを慈しむかのように心情が変化し、世界貿易センタービルの屋上でヘリからの銃撃を受けるコングに対して「私といれば狙われないから」と言うまでになるなど、コングといわば"男女間的コミュにケーション"をするようになっています(そうしたセリフ自体は観客に向けての解説か?)。但し、「美女と野獣」のモチーフが、それ自体は「キング・コング」の"正統的"なモチーフであるにしてもここまで前面に出てしまうと、もう怪獣映画ではなくなってしまっている印象も。個人的には懐かしい映画であり、郵便配達は二度ベルを鳴らす 1981.jpg興業的にもアメリカでも日本でも大ヒットしましたが、後に観直してみると、そうしたこともあってイマイチの作品のように思われました。ジェシカ・ラング「郵便配達は二度ベルを鳴らす」('81年)で一皮むける前の演技であるし...2005年にナオミ・ワッツ主演の再リメイク作品が作られましたが、ナオミ・ワッツもジェシカ・ラング同様、以降の作品において"演技派女優"への転身を遂げています。

 因みに、ボブ・ラフェルソン監督、ジャック・ニコルソン、ジェシカ・ラング主演の「郵便配達は二度ベルを鳴らす」はジェームズ・M・ケインの原作の4度目の映画化作品でしたが(それまでに米・仏・伊で映画化されている)、その中で批評家の評価は最も高く、個人的もルキノ・ヴィスコンティ監督版('42年/伊、出演はマッシモ・ジロッティとクララ・カラマイ)を超えていたように思います。
ジェシカ・ラング in「郵便配達は二度ベルを鳴らす」('81年)

 「蠅男の恐怖」('58年)のリメイク、デヴィッド・クローネンバーグ監督の「ザ・フライ」('86年)などは、原作の"ハエ男"化していく主人公の哀しみをよく描いていたように思われ、こちらはもオリジナル以上と言えるのではないかと思います。ラストは、視覚的には"蠅男"が"蟹男"に見えるのが難点ですが、ドラマ的にはしんみりさせられるものでした。

 見ていると眠れなくなってしまいそうな本であり、ファンには垂涎の一冊と言えますが、絶版中。発売時本体価格6,800円で、古本市場でも美麗本だとそう安くなっていないのではないかな。そこだけが難点でしょうか。

キングコング 髑髏島の巨神 日本ポスター.jpgキングコング 髑髏島の巨神 日本ポスター2.jpg(●2017年に32歳のジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督による「キングコング:髑髏島の巨神」('17年/米)が作られた。シリーズのスピンオフにあたる作品とのことだが、主役はあくまでキングコング。1973年の未知の島髑髏島がキングコング 髑髏島の巨神 01.jpg舞台で、一応、コングが島の守り神であったり、主人公の女性を救ったりと、オリジナルのコングに回帰している(一方で、随所にフランシス・フォード・コッポラ監督の「地獄の黙示録」('79年/米)へのオマージュが見られる)。コングのほかにいろいろな古代生物が出てくるが、コングも含め全部CG。コングはまずまずだが、天敵の大蜥蜴などはアニメっぽかったように思えた(日本のアニメへのオマージュもキングコング 髑髏島の巨神 02.jpg込められているようだ)。ヴォート=ロバーツ監督自らが来日して行われた本作のプレゼンテーションに参加したジョーダン・ヴォート=ロバーツ、樋口真嗣。.jpgシン・ゴジラ」('16年/東宝)の樋口真嗣監督は、本作のコングについて、'33年のオリジナル版キングコングのような人形劇の動きに近く、2005年版で描かれたような巨大なゴリラではなく、どちらかといえばリック・ベイカー(1976年版コングのスーツアクター)っぽいと述べたが、モーション・キャプチャを使っているせいではないか。同じCG主体でも、「ジュラシック・パーク」('93年/米)が登場した時のようなインパクトもなく(もうCG慣れしてしまった?)、その上、サミュエル・L・ジャクソンやオスカー女優のブリー・ラーソンが出ている割にはドラマ部分も弱くて、人間側の主人公が誰なのかはっきりしないのが痛い。)


キング・コング [DVD]
キング・コング 1933 dvd.jpgキング・コング 02.jpg「キング・コング」●原題:KING KONG●制作年:1933年●制作国:アメリカ●監督:メリアン・C・クーパー/アーネスト・B・シェードサキング・コング(オリジナル).jpgック●製作:マーセル・デルガド●脚本:ジェームス・クリールマン/ルース・ローズ●撮影:エドワード・リンドン/バーノン・L・ウォーカー●音楽:マックス・スタイナー●時間:100分●出演:フェイ・レイ/ロバート・アームストロング/ブルース・キャボット/フランク・ライチャー/サム・ハーディー/ノーブル・ジョンソン●日本公開:1933/09●配給:ユニヴァーサル映画●最初に観た場所:池袋・文芸座ル・ピリエ(84-06-30)(評価:★★★☆)●併映:「紀元前百万年」(ハル・ローチ&ジュニア)

紀元前百万年 dvd.jpg紀元前百万年 dvd.jpg「紀元前百万年」●原題:ONE MILLION B.C.●制作年:1940年●制作国:アメリカ●監督:ハル・ローチ&ジュニア●製作:マーセル・デルガド●脚本:マイケル・ノヴァク/ジョージ・ベイカー/ジョセフ・フリーカート●撮影:ノーバート・ブロダイン●音楽:ウェルナー・リヒャルト・ハイマン●時間:80分●出演:ヴィクター・マチュア/キャロル・ランディス/ロン・チェイニー・Jr/ジョン・ハバード/メイモ・クラーク/ジーン・ポーター●日本公開:1951/04●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:池袋・文芸座ル・ピリエ(84-06-30)(評価:★★★)●併映:「キング・コング」(ジュニアメリアン・C・クーパー/アーネスト・B・シェードサック) 「紀元前百万年 ONE MILLION B.C. [DVD]

恐竜100万年 [DVD]
恐竜100万年 dvd.jpg恐竜100万年 ラクエル・ウェルチ.jpg「恐竜100万年」●原ラクエルウェルチ71歳.jpg題:ONE MILLION YEARS B.C.●制作年:1966年●制作国:イギリス・アメリカ●監督:ドン・チャフィ●製作:マイケル・カレラス●脚本:ミッケル・ノバック/ジョージ・ベイカー/ジョセフ・フリッカート●撮影:ウィルキー・クーパー●音楽:マリオ・ナシンベーネ●時間:105分●出演:ラクエル・ウェルチ/ジョン・リチャードソン/パーシー・ハーバート/ロバート・ブラウン/マルティーヌ=ベズウィック/ジェーン・ウラドン●日本公開:1967/02●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:杉本保男氏邸 (81-02-06) (評価:★★★)  Raquel Welch age71

フランケンシュタインの花嫁 dvd.jpg「フランケンシュタインの花嫁」●原題:BRIDE OF FRANKENSTEIN●制作年:1935年●制作国:アメリカ●監督:ジェイムズ・ホエール●製作:カール・レームル・Jr●脚本:ギャレット・フォート/ロバート・フローリー/フランシス・エドワード・ファラゴー●撮影:ジョン・J・メスコール●音楽:フランツ・ワックスマン●時間:75分●出演:ボリス・カーロフ/エルザ・ランチェスター/コリン・クライヴ/アーネスト・セシガー●日本公開:1935/07●配給:ユニヴァーサル映画●最初に観た場所:渋谷ユーロ・スペース (84-07-21)(評価:★★★★)●併映:「フランケンシュタイン」(ジェイムズ・ホエール)
フランケンシュタインの花嫁[DVD]

禁断の惑星 dvd.jpg禁断の惑星 ポスター(東宝).jpg「禁断の惑星」●原題:FORBIDDEN EARTH●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:フレッド・マクラウド・ウィルコックス●製作:ニコラス・ネイファック●脚本:シリル・ヒューム●撮影:ジョージ・J・フォルシー●音楽:ルイス・アンド・ベベ・バロン●原作:アーヴィング・ブロック/アレン・アドラー「運命の惑星」●時間:98分●出演:ウォルター・ピジョン/アン・フランシス/レスリー・ニールセン/ウォーレン・スティーヴンス/ジャック・ケリー/リチャード・アンダーソン/アール・ホリマン/ジョージ・ウォレス●日本公開:1956/09●配給:MGM●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-04-29)(評価:★★★☆)
禁断の惑星 [DVD]」/パンフレット

宇宙水爆戦 dvd.jpg「宇宙水爆戦」.bmp「宇宙水爆戦」●原題:THIS ISLAND EARTH●制作年:1955年●制作国:アメリカ●監督:ジョセフ・ニューマン●製作:ウィリアム・アランド●脚本:フランクリン・コーエン/エドワード・G・オキャラハン●撮影:クリフォード・スタイン/デビッド・S・ホスリー●音楽:ジョセフ・ガ―シェンソン●原作:レイモンド・F・ジョーンズ●時間:86分●出演:フェイス・ドマーグ/レックス・リーズン/ジェフ・モロー/ラッセル・ジョンソン/ランス・フラー●配給:ユニバーサル・ピクチャーズ●日本公開:1955/12)●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-05-17)(評価:★★★☆)
宇宙水爆戦 -HDリマスター版- [DVD]

CAT PEOPLE 1942 .jpgキャット・ピープル 1942 DVD.jpg 「キャット・ピープル」●原題:CAT PEOPLE●制作年:1942年●制作国:アメリカ●監督:ジャック・ターナー●製作:ヴァル・リュウトン●脚本:ドゥィット・ボディーン●撮影:ニコラス・ミュスラカ●音楽:ロイ・ウェッブ●時間:73分●出演:シモーヌ・シモン/ケント・スミス/ジェーン・ランドルフ/トム・コンウェイ/ジャック・ホルト●日本公開:1988/05●配給:IP●最初に観た場所:千石・三百人劇場(88-05-04)(評価:★★★)●併映:「遊星よりの物体X」(クリスチャン・ナイビー) 「キャット・ピープル [DVD]

シモーヌ・シモン(1910-2005)
        
「キャット・ピープル」●原題:CAT PEOPLE●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:ポール・シュレイダー●製作:チャールズ・フライズ●脚本:アラン・オームキャット・ピープル 1982.jpgズビー●撮影:ジョン・ベイリー●音楽:ジョルジキャット・ピープル dvd.jpgキャット・ピープル ポスター.jpgオ・モロダー(主題歌:デヴィッド・ボウイ(作詞・歌)●原作(オリジナル脚本):ドゥイット・ボディーン●時間:118分●出演:ナスターシャ・キンスキー/マルコムジョン・ハード/ アネット・オトウール/ルビー・ディー●日本公開:1982/07●配給:IP●最初に観た場所:新宿(文化?)シネマ2(82-07-18)(評価:★★☆)
キャット・ピープル [DVD]」/チラシ

テス Blu-ray スペシャルエディション
テス  0.jpgテス   00.jpg「テス」●原題:TESS●制作年:1979年●制作国:フランス・イギリス●監督:ロマン・ポランスキー●製作:クロード・ベリ●脚本:ロマン・ポランスキー/ジェラール・ブラッシュ/ジョン・ブラウンジョン●撮影:ギスラン・クロケ/ジェフリー・アンスワース●音楽:フィリップ・サルド●原作:トーマス・ハーディ「ダーバヴィル家のテス」●時間:171分●出演:ナスターシャ・キンスキー/ピーター・ファース/リー・ローソン/ジョン・コリン/デイヴィッド・マーカム/ローズマリー・マーティン/リチャード・ピアソン/キャロリン・ピックルズ/パスカル・ド・ボワッソン●日本公開:1980/10●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:テアトル吉祥寺(81-03-18)(評価:★★★★)

レッスンC [DVD]」 音楽:フランシス・レイ
レッスンC dvd.jpg「レッスンC」●原題:LEIDENSCHAFTLICHE BLUMCHEN/PASSION FLOWER HOTEL●制作年:1977年●制作国:西ドイツ・フランス・アメリカ●監督:アンドレ・ファルワジ●製作:アルツール・ブラウナー●脚本:ポール・ニコラス●撮影:リチャード・スズキ●音楽:フランシス・レイ●原作:ロザリンド・アースキン●時間:171分●出演:ナスターシャ・キンスキー/ゲリー・サンドクイスト/キャロリン・オーナー/マリオン・クラット/ヴェロニク・デルバーグ●日本公開:1982/05●配給:ジョイパックフィルム●最初に観た場所:中野武蔵野館(82-10-03)(評価:★★☆)●併映:「グローイング・アップ3 恋のチューインガム」(ボアズ・デビッドソン)

遊星よりの物体X3.jpg遊星よりの物体X dvd.jpg「遊星よりの物体X」●原題:THE THING●制作年:1951年●制作国:アメリカ●監督:クリスチャン・ナイビー●製作:ハワード・ホークス●脚本:チャールズ・レデラー●撮影:ラッセル・ハーラン●音楽:ディミトリ・ティオムキン●原作:ジョン・W・キャンベル「影が行く」●時間:87分●出演:マーガレット・シェリダン/ケネス・トビー/ロバート・コーンスウェイト/ダグラス・スペンサー/ジェームス・R・ヤング/デウェイ・マーチン/ロバート・ニコルズ/ウィリアム・セルフ/エドゥアルド・フランツ●日本公開:1952/05●配給:RKO●最初に観た場所:千石・三百人劇場(88-05-04)(評価:★★★)●併映:「キャット・ピープル」(ジャック・ターナー)
遊星よりの物体X [DVD]

遊星からの物体X.jpg遊星からの物体Xd.jpg遊星からの物体X dvd.jpg「遊星からの物体X」●原題:THE THING●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・カーペンター●製作:デイヴィッド・フォスター/ローレンス・ターマン/スチュアート・コーエン●脚本:ビル・ランカスター●撮影:ディーン・カンディ●音楽:エンニオ・モリコーネ●原作:ジョン・W・キャンベル「影が行く」●時間:87分●出演:カート・ラッセル/A・ウィルフォード・ブリムリー/リチャード・ダイサート/ドナルド・モファット/T・K・カーター/デイヴィッド・クレノン/キース・デイヴィッド●日本公開:1982/11●配給:ユニヴァーサル=CIC●最初に観た場所:三軒茶屋東映(84-07-22)●2回目:三軒茶屋東映(84-12-22)(評価:★★★★)●併映(1回目):「エイリアン」(リドリー・スコット)●併映(2回目):「ブレードランナー」(リドリー・スコット) 
遊星からの物体X [DVD]
遊星からの物体X(復刻版)(初回限定生産) [DVD]

音楽:エンニオ・モリコーネ
    
King Kong 01.jpgking kong 1976.jpg「キングコング」●原題:KING KONG●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ギラーミン●製作:ディノ・デ・ラウレンティス●脚本:ロレンツォ・センプル・ジュニア●撮影:リチャード・H・クライン●音楽:ジョン・バリー●時間:134分●出演:ジェフ・ブリッジス/ジェシカ・ラング/チャールズ・グローディン/ジャック・オハローラン /ジョン・ランドルフ/ルネ・オーベルジョノワ/ジュリアス・ハリス/ジョン・ローン/ジョン・エイガー/コービン・バーンセン/エド・ローター ●日本公開:1976/12●配給:東宝東和●最初に観た場所:新宿プラザ劇場(77-01-04)(評価:★★★)

郵便配達は二度ベルを鳴らす [DVD].jpg郵便配達は二度ベルを鳴らす br.jpg「郵便配達は二度ベルを鳴らす」●原題:THE POSTNAN ALWAYS RINGS TWICE●制作年:1981年●制作国:アメリカ●監督:ボブ・ラフェルソン●製作:チャールズ・マルヴェヒル/ ボブ・ラフェルソン●脚本:デヴィッド・マメット●撮影:スヴェン・ニクヴィスト●音楽:マイケル・スモール●原作:ジェイムズ・M・ケイン「郵便配達は二度ベルを鳴らす」●時間:123分●出演:ジャック・ニコルソン/ジェシカ・ラング/ジョン・コリコス/マイケル・ラーナー/ジョン・P・ライアン/ アンジェリカ・ヒューストン/ウィリアム・トレイラー●日本公開:1981/12●配給:日本ヘラルド●最初に観た場所:三鷹オスカー (82-08-07)●2回目:自由ヶ丘・自由劇場 (84-09-15)(評価★★★★)●併映:(1回目)「白いドレスの女」(ローレンス・カスダン(原作:ジェイムズ・M・ケイン))●併映:(2回目)「ヘカテ」(ダニエル・シュミット)
郵便配達は二度ベルを鳴らす [DVD]」「郵便配達は二度ベルを鳴らす [Blu-ray]

ザ・フライ dvd.jpg「ザ・フライ」●原題:THE FLY●制作年:1986年●制作国:アメリカ●監督・脚本:デヴィッド・クローネンバーグ●製作:スチュアート・コーンフェルド●撮影:マーク・アーウィン●音楽:ハワード・ショア●原作:ジョルジュ・ランジュラン「蠅」●時間:87分●出演:ジェフ・ゴールドブラム/ジーナ・デイヴィス/ジョン・ゲッツ/ジョイ・ブーシェル●日本公開:1987/01●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:大井武蔵野舘 (87-07-19)(評価★★★★)●併映:「未来世紀ブラジル」(テリー・ギリアム)
ザ・フライ <特別編> [DVD]

キングコング 髑髏島の巨神24.jpgキングコング 髑髏島の巨神es.jpgキングコング 髑髏島の巨神 海外.jpg「キングコング:髑髏島の巨神」●原題:KONG:SKULL ISLAND●制作年:2017年●制作国:アメリカ●監督:ジョーダン・ヴォート=ロバーツ●脚本:ダン・ギルロイ/マックス・ボレンスタイン/デレク・コノリー●原案:ジョン・ゲイティンズ/ダン・ギルロイ●製作:トーマス・タル/ジョン・ジャシュー/アレックス・ガルシア/メアリー・ペアレント●撮影:ラリー・フォン●音楽:ヘンリー・ジャックマン●時間:118分●出演:トム・ヒドルストン/キングコング髑髏島の巨神ド.jpgブリー・ラーソン キング・コング.jpgサミュエル・L・ジャクソン/ジョン・グッドマン/ブリー・ラーソン/ジン・ティエン/トビー・ケベル/ジョン・オーティス/コーリー・ホーキンズ/ジェイソン・ミッチェル/シェー・ウィガム/トーマス・マン/テリー・ノタリー/ジョン・C・ライリー●日本公開:2017/03●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:OSシネマズ ミント神戸 (17-03-29)(評価★★☆)
旧神戸新聞会館9.jpgミント神戸6.jpgミント神戸.jpgOSシネマズ ミント神戸 神戸三宮・ミント神戸(正式名称「神戸新聞会館」。阪神・淡路大震災で全壊した旧・神戸新聞会館跡地に2006年10月完成)9F~12F。全8スクリーン総座席数1,631席。

阪神・淡路大震災で廃墟と化した旧・神戸新聞会館(1995.2.3大木本美通氏撮影)

Raquel Welch
Raquel Welch RPT 0005.jpgRaquel Welch RPT.jpgRaquel Welch RPT 0006.jpg




 
 
 
  
《読書MEMO》
●主な収録作品
【10~20年代】エッセイ=ロバート・ブロック
カリガリ博士/吸血鬼ノスフェラトゥ/巨人ゴーレム/ロスト・ワールド/猫とカナリヤ/メトロポリス/狂へる悪魔/ダンテ地獄篇/バット/オペラの怪人/真夜中すぎのロンドン/プラーグの大学生/他
【30年代】エッセイ=レイ・ブラッドベリ
魔人ドラキュラ/フランケンシュタイン/フランケンシュタインの花嫁/透明人間/モルグ街の殺人/悪魔スヴェンガリ/M/怪人マブゼ博士/倫敦の人狼/猟奇島/恐怖城/怪物団/肉の蝋人形/キング・コング/オズの魔法使/ミイラ再生/獣人島/バスカヴィル家の犬/他
【40年代】エッセイ=ハーラン・エリスン
狼男の殺人/バグダッドの盗賊/猿人ジョー・ヤング/キャット・ピープル/ミイラの復活/謎の下宿人/スーパーマン/夢の中の恐怖/凸凹フランケンシュタインの巻/美女と野獣/バッタ君町に行く/死体を売る男/猿の怪人/他
【50年代】エッセイ=ピーター・ストラウブ
遊星よりの物体X/地球最後の日/宇宙戦争/大アマゾンの半魚人/原子怪獣現わる/ゴジラ/放射能X/タランチュラの襲撃/禁断の惑星/宇宙水爆戦/海底二万哩/蠅男の恐怖/吸血鬼ドラキュラ/ミイラの幽霊/狩人の夜/空の大怪獣ラドン/ボディ・スナッチャー 恐怖の街/シンドバッド7回目の航海/戦慄!プルトニウム人間/他
【60年代】エッセイ=クライヴ・パーカー
サイコ/血だらけの惨劇/ローズマリーの赤ちゃん/忍者と悪女/血塗られた墓標/吸血狼男/テラー博士の恐怖/ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/タイム・マシン/恐竜100万年/猿の惑星/2001年宇宙の旅/怪談/鳥/何がジェーンに起ったか?/華氏451/バーバレラ/博士の異常な愛情/ミクロの決死圏/血の祝祭日/他

「●映画」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【269】 双葉 十三郎 『外国映画ぼくの500本
「●は行の外国映画の監督②」の インデックッスへ「●は行の外国映画の監督①」の インデックッスへ「●た‐な行の外国映画の監督」の インデックッスへ「●ロバート・デ・ニーロ 出演作品」の インデックッスへ 「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ「●TV-M (刑事コロンボ)」の インデックッスへ「○存続中の映画館」の インデックッスへ(ドイツ文化センター)

見てるだけで楽しい。圧倒的に多いフランケンシュタイン物。パロディ映画にも楽しいものが。

図説ホラー・シネマ.jpg  図説 ホラー・シネマ2.jpg      怪奇SF映画大全.jpg
図説 ホラー・シネマ―銀幕の怪奇と幻想 (ふくろうの本)』('01年/河出書房新社、123ページ(21.4x16.4x1.2cm)) 『怪奇SF映画大全』('97年/国書刊行会、239ぺージ(30x23x2.4cm))
フランケンシュタイン dvd.jpg フランケンシュタインの花嫁 dvd.jpg ヤング・フランケンシュタイン.gif ノスフェラトゥ dvd.jpg ドラキュラ都へ行く dvd.jpg 5時30分の目撃者 vhs 5.jpg
フランケンシュタイン[DVD]」「フランケンシュタインの花嫁[DVD]」「ヤング・フランケンシュタイン〈特別編〉 [DVD]」「ノスフェラトゥ [DVD]」「ドラキュラ都へ行く[VHS]」「特選 刑事コロンボ 完全版「5時30分の目撃者」

 同著者による『図説 モンスター―映画の空想生物たち』('01年/河出書房新社)に続くシリーズ第2段で、草創期(サイレント時代~1930年代)、繁栄と低迷(1940~1950年代)、復興と世代交代(1960年代以降)という流れで、各時代の名作を紹介、製作にまつわる裏話やエピソードなども交え解説しています。

 何よりもスターやスチール写真が豊富で、よくこれだけ揃えたなあと。見ているだけで楽しく、表紙には「狼男」がきていますが、圧倒的に多いのはフランケンシュタインもので、次にドラキュラものがきて、狼男は3番目といったところでしょうか。映画会社でみると、戦前はボリス・カーロフ、ベラ・ルゴンをホラー・スターに育てたユニヴァーサル、戦後はピーター・カッシングとクリストファー・リーをホラー・キングに育てたハマー・プロが中心なっています。

 それにしても、こんなにも多くのフランケンシュタイン映画、ドラキュラ映画が作られてきたのかと改めて驚かされ、そうした数多くの作品群の中でも、フランケンシュタイン映画に占めるボリス・カーロフと、ドラキュラ映画に占めるクリストファー・リーの重みは、それぞれの活躍した時代は異なるものの、圧倒的であるように思いました。

 イギリスの詩人シェリーの夫人メアリー・シェリー(1797-1851)原作の『フランケンシュタイン』は、文学史上でも最もよく知られた作品でありながら、原作は殆ど読まれていないということでも有名な作品ですが、「フランケンシュタイン」は怪物(クリーチャー)の名前ではなく、怪物を生み出したマッド・サイエンティストの名前です。

フランケンシュタイン 1931 ポスター.pngフランケンシュタイン 1931 01.jpg 現代のホラー映画をすっかり観慣れてしまうと、ジェームズ・ホエール(1889-1957)監督、ボリス・カーロフ主演の「フランケンシュタイン(FRANKENSTEIN)」('31年/米)に出てくる怪物も、漫画「怪物くん」のフランケンのようにどこか可愛いかったりもし、湖のほとりで少女と触れ合うシーンは、ビクトル・セリエ監督の「ミツバチのささやき」('73年/スペイン)でも、主人公の少年が観る映画の1シーンで使われました。

「フランケンシュタインの花嫁」.jpg   FRANKENSTEIN and old man.jpg フランケンシュタインの花嫁 1935 01.jpg
 本編で風車小屋に追い詰められて焼き殺された怪物を復活させて作った続編の「フランケンシュタインの花嫁(BRIDE OF FRANKENSTEIN)」('35年)は、本編以上に面白くてBride of Frankenstein _.jpg笑えますが、但し、ラストは異性(と言っても、かなりキツイ感じの女フランケンシュタインなのだが)に愛されない男の悲哀を表していて、しんみりさせられます(これ、傑作)。因みに、監督のジェームズ・ホエールは、自らが同性愛者であることを早くから公表していました(女性嫌いだった?)。Bride of Frankenstein (1935)

 フランケンシュタイン映画では、フランシス・フォード・コッポラが「ドラキュラ」('92年/米、ドラキュラ伯爵役はゲイリー・オールドマン。石岡瑛子がこの作品でアカデミー賞衣裳デザイン賞を受賞)に続きフランケンシュタイン (1994年).jpg製作した、ケネス・ブラナー監督の「フランケンシュタイン」('94年/英・日・米)などもありましたが、ロフランケンシュタイン (1994年) dvd.jpgバート・デ・ニーロが演じたクリーチャー(被造物)は、見かけは醜怪だけれど心性的には子どものようであるという設定でした(フランシス・フォード・コッポラは妖怪好きなのか? 一方のケネス・ブラナーの方は、この作品ではヴィクター・フランケンシュタイン博士役での主演も兼ねている)。クリーチャーが元々はセンシティブで知的な存在として描かれているなど、原作に忠実に作られているようですが、原作って結構混み入ったスト-リーだったのだなあと。2時間で収まりきらず、個人的には消化不良感あり。更にデ・ニーロのメイクに懲りすぎて、単なるホラー映画になってしまった印象も。「フランケンシュタイン Hi-Bit Edition [DVD]

YOUNG%20FRANKENSTEN2.jpgメル・ブルックス『ヤング・フランケンシュタイン』(1974).jpg フランケンシュタインのパロディ映画では、メル・ブルックス監督のヤング・フランケンシュタイン」('74年/米)が通好みのコメディで、ギョロ目の怪優マーティー・フェルドマン(せむし男)やピーター・ボイル(怪物)など、脇役がいいです。オリジナルの「フランケンシュタインの花嫁」にも出てくる山小屋に住む盲目の老人役はジーン・ハックマン、ラストに小さくクレジットされていました。    「ヤング・フランケンシュタイン」(マーティ・フェルドマン(上)/ピーター・ボイル/ジーン・ワイルダー/テリー・ガー)

ヘルツォーク「ノスフェラトゥ」1.jpgヘルツォーク「ノスフェラトゥ」2.jpg ドラキュラ映画の古典的作品で劇場で観たものは記憶にありませんが、70年代の作品でヴェルナー・ヘルツォーク監督の「ノスフェラトゥ」('79年/西独)は、フリードリッヒ・ヴィルヘルム・ムルナウ監督の吸血鬼映画の古典的作品「吸血鬼ノスフェラトゥ(不死人)」('22年/独、無声映画)のリメイク作品であり、「アギーレ/神の怒り」('72年/西独)などヘルツォーク作品でお馴染みの怪優クラウス・キンスキーが主人公のドラキュラ伯爵を演じていました。
ノスフェラトゥ [DVD]

 ムルナウは、ブラム・ストーカーの小説『吸血鬼ドラキュラ』を原作に映画化するつもりが映画化権を得られず、それで「ドラキュラ伯爵」を「オルロック伯爵」に変えて19世紀初頭のドイツの小都市に吸血鬼が出現するという設定にし、その容貌も禿頭の特異なものとしたわけですが、イザベル・アジャーニ.jpgヘルツォーク/キンスキー版は、「ドラキュラ伯爵」に戻しながらも設定はムルナウ版を踏襲。全体として透明感のある映像で、ペストで住民が死滅した村の描写などは絶妙でしたが、それら以上に、クラウス・キンスキーの怪演ぶり、「キモさ」が際立っていた印象です(彼に噛まれる女性役は美貌のイザベル・アジャーニ。トリュフォーの「アデルの恋の物語」('75年/仏)で知られるフランスの人気女優だが、この作品でドイツ語で話しているのは、父親がアルジェリア人であるのに対し、母親はドイツ人であるため。「ノスフェラトゥ」の前年作のウォルター・ヒル監督のアクション映画「ザ・ドライバー」('78年/米)でみせたように英語も堪能)。

ドラキュラ都へ行く  映画宝庫.jpgドラキュラ都へ行く02.jpg ドラキュラのパロディでは(クリストファー・リーが「エアポート'77/バミューダからの脱出」('77年/米)で土左衛門姿で出てきた際に見せていた苦悶の表情も、ドラキュラのパロディと言えばパロディだったけれど)、たまたま「ノスフェラトゥ」と同じ年に作られたもので、本書にも紹介されている「ドラキュラ都へ行く」('79年/米、原題:Love at First Bite)という5時30分の目撃者.jpgジョージ・ハミルトンが主演し製作総指揮もした作品もありました(ジョージ・ハミルトンは「刑事コロンボ」の第31話「5時30分の目撃者」('75年)で犯人の精神分析医役を演じていた二枚目俳優で、ハリウッド社交界でもプレイボーイで鳴らした彼らしく、愛人が絡むエピソードだが、計画殺人ではなく衝動殺人になっているのがややプロット的には弱点か。ハミルトンは、「刑事コロンボ」の新シリーズ(通算第57話)「犯罪警報」('91年)でも人気テレビ番組のホストである犯人役を演じた)。
 「ドラキュラ都へ行く」という邦題タイトルは、フランク・キャップラの「スミス都へ行く」をもじったものですが、内容は無関係。楽屋ネタのギャグ満載の身内で楽しみながら作った感じの映画で、一緒に観に行った外国人女性にはすごく受けていましたが、字幕頼りの自分にとっては残念ながらさほどでも(映画字幕はセリフが相当端折られていたように思うが、DVD化はされていないようだ)。

 SFホラーまで領域を拡げた「映画ポスター+解説集」では、ロナルド・V・ボーストの怪奇SF映画大全('97年/国書刊行会)という大型本があり、こちらは本書よりも更にポスター中心であるため、これも見て楽しめます。


FRANKENSTEIN 1931 poster.jpg「フランケンシュタイン」●原題:FRANKENSTEIN●制作年:1931年●制作国:アメリカ●監督:ジェイムズ・ホエール●製作:カール・レームル・Jr●脚本:ギャレット・フォート/ロバート・フローリー/フランシス・エドワード・ファラゴー●撮影:アーサー・エジソン●音楽:バーンハルド・カウン●原作:メアリー・シェリーFRANKENSTEIN 1931.jpg●時間:71分●出演:コリン・クライヴ/ボリス・カーロフ/メイ・クラークメイ・クラーク.jpgエドワード・ヴァン・スローン/ドワイト・フライ/ジョン・ポールズ/フレデリック・カー/ライオネル・ベルモア●日本公開:1932/04●配給:ユニヴァーサル映画●最初に観た場所:渋谷ユーロ・スペース (84-07-21)(評価:★★★☆)●併映:「フランケンシュタインの花嫁」(ジェイムズ・ホエール)
メイ・クラーク

BRIDE OF FRANKENSTEIN2.jpg「フランケンシュタインの花嫁」●原題:BRIDE OF FRANKENSTEIN●制作年:1935年●制フランケンシュタインの花嫁 1935 poster.jpg作国:アメリカ●監督:ジェイムズ・ホエール●製作:カール・レームル・Jr●脚本:ギャレット・フォート/ロバート・フローリー/フランシス・エドワード・ファラゴー●撮影:ジョン・J・メスコール●音楽:フランツ・ワックスマン●時間:75分●出演:ボリス・カーロフ/エルザ・ランチェスター/コリン・クライヴ/アーネスト・セシガー●日本公開:1935/07●配給:ユニヴァーサル映画●最初に観た場所:渋谷ユーロ・スペース (84-07-21)(評価:★★★★)●併映:「フランケンシュタイン」(ジェイムズ・ホエール)
「フランケンシュタインの花嫁」公開時ポスター。「カーロフ」の苗字が冠のように載っている。(本書より)

FRANKENSTEIN 1994 2.jpgFRANKENSTEIN 1994.jpg「フランケンシュタイン」●原題:FRANKENSTEIN●制作年:1994年●制作国:イギリス・日本・アメリカ●監督:ケネス・ブラナー●製作:フランシス・フォード・コッポラ/ジェームズ・V・ハート/ジョン・ヴィーチ/ケネス・ブラナー/デビッド・パーフィット●脚本:ステフ・レイディ/フランク・ダラボン●撮影:ロジャー・プラット●音楽パトリック・ドイル●原作:メアリー・シェリー●時間:123分●出演:ロバート・デ・ニーロ/ケネス・ブラナー/トム・ハルス/ヘレナ・ボナム=カーター/エイダン・クイン/イアン・ホルム/ジョン・クリーズ/シェリー・ルンギ/リチャード・ブライアーズ/アレックス・ロー●日本公開:1995/01●配給:トライスター・ピクチャーズ(評価:★★★)

「ヤング・フランケンシュタイン」2.jpgヤング・フランケンシュタイン.gif「ヤング・フランケンシュタイン」●原題:YOUNG FRANKENSTEN●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:メル・ブルックス●製作:マイケル・グラスコフ●脚本:ジーン・ワイルダー/メル・ブルックス●撮影:ジェラルド・ハーシュフェルド●音楽:ジョン・モリス●原作:メアリー・シェリイ●時間:108分●出演:ジーン・ワイルダー/ピーター・ボイル/マーティ・フェルドマン/テリー・ガー/ジーン・ハックマン●日本公開:1975/10●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:飯田橋ギンレイホール (78-12-14) (評価:★★★★)●併映:「サイレントムービー」(メル・ブルックス)

「ノスフェラトゥ」2.jpg「ノスフェラトゥ」01.jpg「ノスフェラトゥ」●原題:NOSTERTU. PHANTOM DER NACHT●制作年:1979年●制作国:西ドイツ●監督・脚本・製作:ヴェルナー・ヘルツォーク●撮影:イェルク・シュミット=ライトヴァノスフェラトゥ(1978)[A4判].jpgイン●音楽:ポポル・ヴー●時間:107分●出演:クラウス・キンスキー/イザベル・アジャーニ/ブルーノ・ガンツ/ロラント・トーポー/ワルター・ラーデンガスト/ダン・ヴァン・ハッセン/ヤン・グロート/カールステン・ボディヌス●日本公開:1984/10●配給:ドイツ文化センター●最初に観た場ドイツ文化センター 青山.jpgドイツ文化センター 2.jpg所:青山・ドイツ文化センター(84-10-07)(評価:★★★☆)●併映:「ヴォイツェック」「カスパーハウザーの謎」(ヴェルナー・ヘルツォーク) 「映画パンフレット ノスフェラトゥ(1978作品) 発行:㈱パルコ(A4) 監督:ヴェルナー・ヘルツォーク 出演:イザベル・アジャーニ

ドイツ文化センター 1962年、青山通り付近にオープン

ドラキュラ都へ行く01.jpg「ドラキュラ都へ行く」●原LOVE AT FIRST BITE.jpg題:LOVE AT FIRST BITE●制作年:1979年●制作国:アメリカ●監督:スタン・ドラゴッティ●製作・脚本:ロバート・カウフマン●撮影:エドワード・ロッソン●音楽チャールズ・バーンスタイン●時間:96分●出演:ジョージ・ハミルトン/スーザン・セント・ジェームズ/ディック・ショーン/アート・ジョンソン/リチャード・ベンジャミン/シャーマン・ヘムズリー●日本公開:1979/12●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:日比谷・みゆき座(79-12-15)(評価:★★★)

5時30分の目撃者 vhs.jpg刑事コロンボ(第31話)/5時30分の目撃者.jpg「刑事コロンボ(第31話)/5時30分の目撃者」●原題:A DEADLY STATE OF MIND●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:ハーベイ・ハート●製作:エヴァレット・チェンバース●脚本:ピーター・S・フィッシャー●ストーリー監修:ピーター・S・フィッシャー●音楽:バーナード・セイガル●時間:73分●出演:ピーター・フォーク/ジョージ・ハミルトン/レスリー・ウォーレン/スティーブン・エリオット/カレン・マックホン/ブルース・カービー/ライアン・マクドナルド/ジャック・マニング/フレッド・ドレイパー/ウィリアム・ウィンターソウル/ヴァンス・デイヴィス/レッドモンド・グリーソン/グローリー・カウフマン●日本公開:1976/12●放送:NHK(評価:★★★☆)特選 刑事コロンボ 完全版「5時30分の目撃者」【日本語吹替版】 [VHS]

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映画と日付との関連はやや強引。それにこだわらず、単に作品解説としてならば楽しめる。

ビデオ大好き.JPGブラザー・サン シスター・ムーン チラシ.jpg ブラザー・サン シスター・ムーン パンフレット.jpg ロミオとジュリエットp.jpg
ビデオが大好き!365夜―映画カレンダー (文春文庫―ビジュアル版)』「映画チラシ「ブラザー・サン シスター・ムーン」」「映画パンフレット「ブラザー・サン シスター・ムーン」」/「ロミオとジュリエット」

 洋画の名作・傑作を1年間の日付や季節と関連付けてカレンダーに沿って1月から12月まで紹介し、ビデオ観賞に利用してもらおうという試みで、発想はなかなか面白いと言うか"風流"と言うか...。ただ、編集する側も、企画を思いついてこれはいいと思ったものの、それなりの名作を取り上げることを前提にそれをやってみたら結構たいへんだったというのが本音ではないでしょうか。すべてを1年間365日に1日ずつ関連づけようとすると、映画そのものより付随するエピソードの方を日付と結びつけたりすることにもなりがちで、やや強引な面もあるように思いました(「モダン・タイムス」('36年/米)が2月5日にきているのは米国での公開が1936年2月5日だったからとか、「ゴジラ(海外版)」('56年/東宝)が11月3日にきているのはの日本での公開が1956年11月3日だったからとか)。

バングラデシュ・コンサート ボブ・ディラン  2.jpg 「バングラデシュ・コンサート」 ('71年/米)が8月1日にきてい狼たちの午後2.jpgるのは実際コンサートがあったのが1971年8月1日であったからとか、「狼たちの午後」('75年/米)が8月22日にきているのは1972年8月22日にニューヨークのブルックリン区で発生した銀行強盗事件を題材にしているから、「荒野の決闘」('47年/米)が10月26日にきているのはOK牧場の決闘が1881年10月26日にあったから、などというのはいいとして、例えば「スタア誕生」('55年/米)が3月26日にきているのは3月下旬がアカデミー賞授賞式シーズンであるからとか、「エデンの東」('55年/米)が4月6日にきているのは、死んだと思ったEast of Eden.jpg母親の実像を弟キャル(ジェームズ・ディーン)により無理矢理知ることになったアーロンが捨て鉢になって徴太陽はひとりぼっちs2.jpg兵に応じた第一次世界大戦にアメリカが参戦した日であるからとか、アニメ「不思議な国のアリス」('53年/米)が4月15日になっているのは東京ディズニーランドの開園日が1983年4月15日だからとか、「太陽はひとりぼっち」('62年/伊・仏)(原題「日蝕」)が8月3日にきているのは、次の日蝕が見られるのは2017年8月であるからとか―。

ベニスに死す 3.jpg 当てモノをするような楽しみも無きにしも非ずですが、むしろ、解説の一つ一つがカレンダーの「日付」に厳密に関連づけるというよりも、そのポセイドン・アドベンチャーsb.jpg「季節」や(「ベニスに死す」('71年/伊・仏)が8月12日にきているのは1911年の夏のヴェネツィアが舞台であるからとか。原作でも日付は特定されていない)、乃至は「時期」「時間」に関係づけているものも多くあるように思いました。結果として、その映画の名場面が想起されたりし、その点が本書のいいところなのかもしれません。1月2日ある愛の詩022.jpgのところにある「ポセイドン・アドベンチャー」('72年/米)はニューイヤーを迎えた日から1月5日までの出来事だったのだなあとか(思っていたより長丁場だった)、「ある愛の詩」('72年/米)でオリバー(ライアン・オニール)とジアパートの鍵貸します1.bmpェニー(アリ・マックグロー)の二人がセントラル・パークに行ったのは1月4日だったのかあとか(その2週間後にジェニーは白血病で亡くなる)。1月13日のところにある「アパートの鍵貸します」('60年/米)は、1959年11月1日に話が始まり、翌年の1月中旬にバクスター(ジャック・レモン)とフラン(シャーリー・マクレーン)が結ばれるという約3カ月の恋の物語だったのだなあとか、その「特定の日」と言うよりも、映画内の時間感覚を改めて感じることができたりしました。

 よく知られている作品、映画ファンなら外せない名作を多く選んでいるのもそうした狙いがあるのではないかと思います。タイトルからも窺えるように、当時ビデオで鑑賞可能であることが取り上げる前提となっていますが、名作・傑作揃いであるため、今はほとんどDVD化されているように思われます(中には例外もあるかもしれないが)。

BROTHER SUN SISTER MOON poster.jpg 四季ごとに4人の映画評論家が、それぞれの季節に関連する映画への自らの思いを寄せていて、「春」のところで北川れい子氏が「エデンの東」などの幾つかの作品を取り上げる中で(要するに「青春」の「春」というわけだ)、"春、青春、男の子"の極めつけけとしてフランコ・ゼフィレリレッリ監督が、13世紀イタリアの、最もキリストに近い聖人だったと言われる聖フランチェスコの青春時代を描いた「ブラザー・サン シスター・ムーン」('72年/英・伊)を取り上げていましたが(作品中のも厳しい冬のシーズンから雪解けの春に移る季節の転換場面がある)、映像も音楽も美しい映画だったと思います。

ブラザー・サン シスター・ムーン o1.jpg この作品で一番目を引くのは、主演のグレアム・フォークナーのフランチェスコへの「なり切り感」であり、フランコ・ゼフィレリレッリ監督は、「ロミオとジュリエット」('68年/英・伊)でもまだ16歳だったオリビア・ハッセーを上手く使っているし(この作品公開後のオリビア・ハッセーの日本での人気の高騰ぶりはスゴかっTHE CHAMP22.jpgた)、「チャンプ」('79年/米)では子役リッキー・シュローダーに世間をして「天才」と言わしめるほどの演技をさせていますが、結局、これら全て監督の演出力だったのだろうなあ。改めてその力量を感じます。因みに、本書で「チャンプ」が6月22日にきているわけは、大体この頃が「父の日」(6月の第3日曜)に当たるからとのことです。
    
ブラザー・サン シスター・ムーン dvd.jpgBROTHER SUN SISTER MOON1.jpg「ブラザー・サン シスター・ムーン」●原題:BROTHER SUN SISTER MOON●制作年:1972年●制作国:イギリス・イタリア●監督:フランコ・ゼフィレッリ●脚本:フランコ・ゼフィレッリ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ/ケネス・ロス/リナ・ウェルトミューラー●撮影:エンニオ・グァルニエリ●音楽:ドノヴァン●時間:135分●出演:グレアム・フォークナー/ジュディ・バウカー/リー・ローソン/アレック・ギネス/ヴァレンティナ・コルテーゼ/アドルフォ・チェリ●日本公開:1973/06●配給:パラマウント=CIC●最初に観た場所:中野武蔵野館 (77-10-29)●2回目:中野武蔵野館 (77-10-29)(評価:★★★★)●併映:「ジーザス・クライスト・スーパースター」(ジノーマン・ジュイスン)
ブラザー・サン シスター・ムーン [DVD]

「ロミオとジュリエット」.jpg「ロミオとジュリエット」●原題:ROMEO AND JULIET●制作年:1968年●制作国:イギリス・イタリア●監督:フランコ・ゼフィレッリ●製作:ジョン・ブレイボーン/アンソニー・ヘイヴロック=アラン●脚本:フランコ・ゼフィレッリ/フランコ・ブルサーティ/マソリーノ・ダミコオリビア・ハッセー.jpg●撮影:パスクァリーノ・デ・サンティス●音楽:ニーノ・ロータ(歌:グレン・ウェストン)●時間:138分●出演:レナード・ホワイティング/オリヴィア・ハッセー/マイケル・ヨーク/ジョン・マケナリー/ミロ・オーシャ/パット・ヘイウッド/ロバート・スティーヴンス/ブルース・ロビンソン/ポール・ハードウィック/ナターシャ・パリー/アントニオ・ピエルフェデリチ/エスメラルダ・ルスポーリ/ロベルト・ビサッコ/(ナレーション)ローレンス・オリヴィエ●原作:ウィリアム・シェイクスピア●日本公開:1968/11●配給:パラマウント映画●最初に観たOlivia Hussey RPT.jpg場所:三鷹オスカー (81-03-15)(評価:★★★☆)●併映:「ハムレット」(ローレンス・オリヴィエ)/「マクベス」(ロマン・ポランスキー)  Olivia Hussey(オリヴィア・ハッセー)

「Romeo and Juliet(ロミオとジュリエット)」(1968年)
theme music:「What Is A Youth」
作曲:Nino Rota(ニーノ・ロータ

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'95年はトム・ハンクスが洋画界を牽引? 「フォレスト・ガンプ」の底にある「愛国心」。

『映画イヤーブック 1996』.JPGフォレスト・ガンプ 一期一会  ポスター.jpg フォレスト・ガンプ dvd.jpg  フォレスト・ガンプ 一期一会 スコア.jpg
映画イヤーブック〈1996〉 (現代教養文庫)』「フォレスト・ガンプ 一期一会」ポスター「フォレスト・ガンプ 一期一会 スペシャル・コレクターズ・エデション [DVD]」(2008)「フォレスト・ガンプ~一期一会 オリジナル・スコア集

 1995年に公開された洋画330本、邦画184本、計518本の全作品データと解説を収録し、ビデオ・ムービー、未公開洋画、テレビ映画ビデオのデータなども網羅しています。

 本書での最高評価になる「四つ星」作品は、「フォレスト・ガンプ/一期一会」「クイズ・ショウ」「レオン」「ショーシャンクの空に」「ブロードウェイと銃弾」「アポロ13」「恋する惑星」「エドワード・ヤンの恋愛時代」「エド・ウッド」「マディソン郡の橋」「スモーク」の11作品、一方邦画は、「東京兄妹」(市川準監督)「ガメラ」(金子修介監督)「Love Letter」(岩井俊二監督)「KAMIKAZE TAXI」(原田眞人監督)「午後の遺言状」(新藤兼人監督)「幻の光」(是枝裕和監督)の6作品と、比較的邦画も頑張った年でしたが、編者の江藤努氏に言わせれば、邦画は洋画に比べて作品の質が興行成績に繋がらなかったとのことで、確かに、ややマイナー感はあるラインアップ。

Sally Field FORREST GUMP.jpg ロバート・ゼメキス監督の「フォレスト・ガンプ/一期一会」('94年)はアカデミー賞6部門(作品・監督・主演男優・脚色・視覚効果・編集)独フォレスト・ガンプ 一期一会01.jpg占で、トム・ハンクスは「フィラデルフィア」('93年)に続いてアカデミー賞主演男優賞2年連続受賞、さらにこの年公開の「アポロ13」('95年)にも出演していて、当時は洋画界を一人で牽引しているような勢いがありましたが、アカデミー俳優トム・ハンクス主演ということで、これらの作品を観に映画館に足を運んだ人も多かったのではないでしょうか。

フォレスト・ガンプ 一期一会02.jpg 「フォレスト・ガンプ」は50年代から80年代にかけてのアメリカ現代史を駆け抜けていったIQが人並みに至らない男ガンプの話ですが、彼は俊足を買われて大学で全米アメフト代表選手となってケネディ大統領に祝福され、ベトナム戦争では戦友の命を救ってジョンソン大統領から栄誉を授かる一方、全米卓球チームのメンバーになって「ピンポン外交」特使としてジョン・レノンとテレビ共演するほど有名になり、さらにエビの事業で成功して大金持ちになるといった具合に、アメリカン・ドリームを絵に描いたような道を歩みます。

フォレスト・ガンプ 一期一会03.jpg 但し、そうした"お目出度い"話ばかりでなく、彼の人生と交錯する人びとの挫折や苦悩も描いており、ガンプ自身も幼馴染みの恋人に何度か去られ、最後にやっと愛を成就できたかと思ったら、その彼女に死なれてしまうなどして人生の寂寥感を味わい、それでも彼女が遺した自分の息子に出会うことで未来への希望を抱くという、ラストシーンで空を舞う羽根のように、ふわ~っと心に滲み入る作品でした。

フォレスト・ガンプ 一期一会04.jpg 原作は、1985年にウィンストン・グルームが発表した小説 Forrest Gumpで、ガンプのモーレツぶりは、ジョン・アービング原作、ジョージ・ロイ・ヒル監督、ロビン・ウィリアムズ主演の「ガープの世界」('82年)の登場人物らに通じるものを感じましたが、「ガープの世界」がアービングの自伝的小説であるのに対し、グルームの原作では、主人公のガンプは宇宙飛行士やプロレスラー、チェスのチャンピオンになるといったエピソードもあるとのことで、映画においても、「ガンプ」はシンボライズされたキャラクターと見るのがスジでしょう。

 では、アメリカ現代史を駆け抜けたガンプは何の象徴なのかと言うと、やはりアメリカ国民そのものの象徴であり、見方によってはアメリカという国そのものの象徴ということにもなるのかもしれません。

Forrest Gump (1994).bmp 映画ではアメリカ現代史の様々な映像が合成SFXでガンプの物語に織り込まれており(ゼメキス監督は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でも見せたとおり、特撮が持ち味。ガンプがケネディ大統領と握手し、「おしっこしたい」と言うシーンは笑える)、それもこの作品の一つの見所ですが、個人的には、ウォーターゲート事件にしてもベトナム反戦運動にしても、ガンプの純粋さを媒介としてある種戯画化されて描かれているように思いました。

 この映画がアメリカで「ガンプ現象」と言われるほどのブームになったのは、アメリカ人のヒーローに対する愛着、純粋無垢なモーレツさへの憧憬だけでなく、いろんなことを乗り越えてもアメリカ人は前を向いて走り続けることができる国民なのだという「愛国心」(本書でこの作品の解説を担当している東敬一氏もこの言葉を用いているが)の裏返しのようなものが、作品の底にあるためであるように思いました(すごく自己肯定的だけど、所謂ナショナリズムとは少し違うんだよなあ)。

チャンス.jpg この作品を観て思い出すのは、ハル・アシュビー監督の「チャンス」('79年/米)で、知的障害がある庭師のチャンスが、余命いくばくも無い財界大物を夫に持つ美しい貴婦人が乗る高級車に轢かれ、屋敷に招かれることになったのをきっかけに、その言葉に実は深い意味があると周囲から勝手に解釈されて、世間の注目を集めテレビ出演までするようになり、国民的な人気を得ることになりますが、彼自身は全くそんなことには無頓着でいるというもの。この作品で、ピーター・セラーズ(1925-1980)が演じるチャンスは次期大統領候補にまでなる一方で、ラストはチャンスの死を暗示させて終わりますが、ピーター・セラーズ本人もこの映画の日本公開前に心臓発作で急逝、彼の遺作となった作品であるということでも知られています。

チャンス ラスト.jpg ジャージ・コジンスキーの脚本のベースになっているのはニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』であり、原題の"Being There"は、ドイツの哲学者マルティン・ハイデッガーの未完の主著『存在と時間』からきているとのことで、「ただそこにある(もの)」という意味ですが、「チャンス」という主人公の名前を邦題にしてしまったため、「どんなハンディキャップがある人にもチャンスがある」という話と捉えられている向きがあるように思います。

 個人的には、そうした解釈でもいいと思うし、実際、「アメリカとはそういう(誰にでもチャンスのある)国だ」という意図のもとに作られた作品ととれなくもないですが、ちょっと違うような気がする。。。だからと言って、正しい解釈はこうだと言い切れるものが自分としてもイマイチ明確にないのですが。

Forrest Gump(1994).jpg 「フォレスト・ガンプ/一期一会」の「一期一会」は要らなかったように思いますが、内容的にはこちらの方がスンナリ受け止めることができました。「チャンス」は、コメディとしては秀逸であることは間違いないですが(シャーリー・マクレーン、メルヴィン・ダグラスなど一流の演技達者が"脇を固めている"というのがスゴイ)、原題通り「ビーイング・ゼア」としてくれた方がこの作品の象徴性について(自分も世間も)より深く考える契機になったような気がします。最近、かなり再評価されているようですが、当時としては、そんなタイトルでは観客受けしないと思われたのでしょうか。もともと、本国公開から日本公開までの間に1年以上もの間隔があった作品でした。

Forrest Gump(1994)[IMDbスコア 8.8]

サリー・フィールド(ミセス・ガンプ) 
フォレスト・ガンプes.jpgSally Field in FORREST GUMP.jpg「フォレスト・ガンプ/一期一会」●原題:FORREST GUMP●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・ゼメキス●製作:ウェンディ・フィネルマン/スティーヴ・ティッシュ/スティーヴ・スターキー●脚本:エリッゲイリー・シニーズ Forrest_Gump.jpgク・ロス●撮影:アーサー・シュミット●音楽:アラン・シルヴェストリ●原作:ウィンストン・グルーム●時間:142分●出演:トム・ハンクス/ロビン・ラフォレスト・ガンプ 一期一会 dvd.jpgイト/サリー・フィールドゲイリー・シニーズ/ミケルティ・ウィリアムソン/ハーレイ・ジョエル・オスメント/マイケル・コナー・ハンフリーズ/ハンナ・R・ホール●日本公開:1995/02●最初に観た場所:有楽町・日本劇場(95-03-12)●配給:UIP(評価:★★★★)フォレスト・ガンプ 一期一会 ― スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]」(2001)
日劇1.jpg有楽町マリオン 阪急.jpg日本劇場 1984年10月6日「有楽町マリオン」有楽町阪急側11階にオープン(1,008席)、2002年~「日劇1」(948席)、2006年10月~「TOHOシネマズ日劇・スクリーン1」(上写真:「日劇1」館内) 2018年2月4日閉館
トム・ハンクス in「フォレスト・ガンプ 一期一会」('94年)/「アポロ13」('95年)
フォレスト・ガンプ  トム・ハンクス.jpg アポロ13 トム・ハンクスapollo13.jpg

BEING+THERE+1.jpgBillionaire Benjamin Rand (Melvyn Douglas) takes on Chance (Peter Sellers) as a trusted advisor.メルヴィン・ダグラス(億万長者ベンジャミン・ランド)アカデミー助演男優賞・ゴールデングローブ賞助演男優賞・ニューヨーク映画批評家協会賞助演男優賞・ロサンゼルス映画批評家協会賞助演男優賞受賞

「チャンス」●原題:BEING THERE●制作年:1979年●制作国:アメリカ●監督:ハル・アシュビー●製作:アンドチャンス_m.jpgリュー・ブラウンズバーグ●脚本:ジャチャンスes.jpgージ・コジンスキー●撮影:キャレブ・デシャネル●音楽:ジョニー・マンデル●原作:ジャージ・コジンスキー●時間:130分●出演:ピーター・セラーズ/シャーリー・マクレーン/メルヴィン・ダグラス/ジャック・ウォーデン/リチャード・ダイサート/リチャード・ベースハート/ルチャンス dvd.jpgス・アタウェイ/デイヴィッド・クレノン/フラン・ブリル●日本公開:1981/01●最初に観た旧丸の内ピカデリー  .jpg場所:有楽町・丸の内ピカデリー(81-02-09)●配給:松竹=富士映画配給(評価:★★★★)チャンス [DVD]」(2005)
丸の内松竹(初代).jpg旧・丸の内ピカデリー 前身は1925年オープンの「邦楽座」(後の「丸の内松竹」)。1957年7月、旧朝日新聞社裏手にオープン(地下に「丸の内松竹」再オープン)。 1984年10月1日閉館。1984年10月6日後継館「丸の内ピカデリー1・2」が有楽町センタービル(有楽町マリオン)西武側9階にオープン。

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天才犯人とコロンボの「天才」の成り立ち方の違い、「知恵」の発揮どころの違いを浮き彫りに。

刑事コロンボ  殺しの序曲.jpg刑事コロンボ 殺しの序曲 dvd.jpg  殺しの序曲2.jpg 
殺しの序曲―刑事コロンボ (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)』「特選 刑事コロンボ 完全版「殺しの序曲」【日本語吹替版】 [VHS]」セオドア・バイケル

刑事コロンボ 殺しの序曲 1.bmp 会計事務所を経営するオリヴァー・ブラント(セオドア・バイケル)は、共同経営者で親友のバーティ・ヘイスティング(ソレル・ブーク)とともに、「シグマ協会」という知能指数がトップから2パーセントという天才だけで構成されるクラブに所属していたが、オリヴァーが会計事務所の客の金を横領していることに気づいたバーディから、「おまえは泥棒だ!私は、おまえの正体をあばきたててやる」と言われ、拳銃でバーティを殺害する―。

左から セオドア・バイケル/ドリー・トムソン/ソレル・ブーク

 第6シーズンの最終作で、相手は「天才」だけに、レコードプレイヤーのオートリターン機能を使った凝りに凝った仕掛けでアリバイ作りをしますが、やや凝り過ぎの感じも。そのレコードプレイヤーと同じ機能のものが犯人の自宅にあり、コロンボが自宅を訪ねた際に、犯人の奥さんがレコードをかけてくれてると言って、コロンボがその機能に気付いたのは、ややラッキーに助けられた感じもします。

刑事コロンボ 殺しの女局1.jpg コロンボが作中で、自分の人生を振り返って「あたしはどこへいっても秀才にばかり出会ってね。お分かりでしょう。学校にも頭のいい子は大勢いたし、軍隊に初めて入った時にも、あそこにもおっそろしく頭のいいのがいましたよ。ああいうのが大勢いちゃ、刑事になるのも容易じゃない、と思ったもんです。あたし考えました。連中よりせっせと働いて、もっと時間をかけて、本を読んで、注意深くやりゃ、ものになるんじゃないかって」と犯人に語る場面があり、自分のトリックを見破ったことでコロンボを自分と同質の「天才」だと見做す犯人に対し、コロンボの「天才」の形成のされ方が犯人のそれとは異質であることを自らわざわざ説明しているのが興味深いです(「あたしはこの仕事が心底、好きなんです」というセリフもある)。

 また更に、状況証拠の積み重ねでしかないところで、(このシリーズでよくあるパターンだが)犯人を自白に追い込むことで事件の決着を図る際に、相手の「自分は天才だ」という自負心を逆手にとって、犯人に自ら犯行の手口を語らせるといったことをしており、犯人の幼稚さにやや呆れはするものの、「知恵」の発揮のしどころが、これまた犯人とコロンボでは異なることを示唆していて、そうしたコロンボと「単なる天才」との違いを浮き彫りにしたという意味では、意外と奥深い作品でした。

"The Collector " ('65/UK)
殺しの序曲.jpgThe Collector.jpg「刑事コロンボ(第40話)/殺しの序曲.jpg コロンボに事件解決のヒントを与えてしまう犯人の奥さん役は、ウィリアム・ワイラー監督の「コレクター」('65年/英・米)で、コミュニケーション不全の青年(テレンス・スタンプ)に誘拐・監禁される美大生を演じてアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたサマンサ・エッガーで、異常男に虐められるその虐められぶりが秀逸でしたが、それから12年を経て、今度は夫を精神的に苛めているような役柄を演じているのが興味深いです。

ジェイミー・リー・カーティス2.jpg殺しのじょきょく.jpg その他に、コロンボがカフェにドーナッツを食べながら入ってくるとそれを取り上げてしまう、つっけんどんなウェイトレス役で、後に映画「トゥルー・ライズ」などに主演する、映画デビュー前のジェイミー・リー・カーティスがちょこっと出演していて(怖そうなお姉さんという感じ)、彼女は本国でこの「殺しの序曲」の2年前に放映された第32話「忘れられたスター」で犯人を演じたジャネット・リーの娘でもあり、このチョイ役出演はその繋がりなのか?

columbo swan song.jpg 被害者バーティ役のソレル・ブークは、第24話「白鳥の歌」では、犯人である歌手のマネージャー役で出ていました。

第24話「白鳥の歌」

「刑事コロンボ(第40話)/殺しの序曲」●原題:THE BYE-BYE SKY HIGH I.Q.MURDER CASE●制作年:1977年●制作国:アメリカ●監督:サム・ワナメイカー●製作:リチャード・アラン・シモンズ●脚本:ロバート・マルコム・ヤング●音楽:ボブ・プリンス●時間:74分●出演:ピーター・フォーク/セオドア・バイケル/ソレル・ブーク/サマンサ・エッガー/ケネス・マース/バジル・ホフマン/ハワード・マクギリン/キャロル・ジョーンズ/デリエ・トムソン/フェイ・デウィット/ジョージ・スペルダコス/キャスリーン・キング/ミッツィ・ロジャース/ジェイミー・リー・カーティス●日本公開:1978/05●放送:NHK総合(評価:★★★★)

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「AXNミステリー」の「視聴者ベスト10」からも窺えるが、中盤作品の中では頑張っていた。

刑事コロンボ 忘れられたスター vhs1.jpg 刑事コロンボ/忘れられたスター 1.jpg忘れられたスター ジャネット・リ―.jpg ジャネット・リー
特選 刑事コロンボ 完全版「忘れられたスター」【日本語吹替版】 [VHS]」「刑事コロンボ 完全版 Vol.16 [DVD]

axn コロンボ best.jpg 今年('11年)6月にピーター・フォークが亡くなったのを受けて、「AXNミステリー」で9月16日から2日間にわたり、「俳優ピーター・フォーク追悼特集 連続50時間放送」が放送され、1日目はオスカー俳優が犯人役としてゲスト出演した作品(vs.レイ・ミランド 第11話「悪の温室」/vs.アン・バクスター 第14話「偶像のレクイエム」/vs.ホセ・ファーラー 第23話「愛情の計算」/vs.ルース・ゴードン 第41話「死者のメッセージ」/vs.フェイ・ダナウェイ 第62話「恋におちたコロンボ」)などを放送、そして2日目には、視聴者投票による「刑事コロンボ人気ランキングBEST10」が発表され、10位から1位の順で10作品が放送されました。その「視聴者ベスト10」の内容は下記の通り(カッコ内の役者名は、犯人役を演じた俳優。因みにNHKの方では、7月初旬にBSプレミアムでの追悼特集として、「二枚のドガの絵」「別れのワイン」「パイルD‐3の壁」の3作をセレクトして放映した)。
視聴者投票による「刑事コロンボ人気ランキングBEST10」(AXNミステリー)
 第1位:別れのワイン(第19話/ドナルド・プレザンス)
 第2位:忘れられたスター(第32話/ジャネット・リー)
 第3位:殺人処方箋(第1話/ジーン・バリー)
 第4位:溶ける糸(第15話/レナード・ニモイ)
 第5位:祝砲の挽歌(第28話/パトリック・マクグーハン)
 第6位:ロンドンの傘(第13話/R・ベイスハート / O・ブラックマン)
 第7位:パイルD‐3の壁(第9話/パトリック・オニール)
 第8位:二枚のドガの絵(第6話/ロス・マーティン)
 第9位:歌声の消えた海(第29話/ロバート・ボーン)
 第10位:指輪の爪あと(第4話/ロバート・カルプ)

 「コロンボ・シリーズ」は70年代の最初のシリーズがパイロット版も含めて全45話、80年代終わりから90年代にかけての新シリーズが24話ありますが、こうして見ると、「ベスト10」はすべて70年代のシリーズから選ばれていて、しかも、その中でも1話から10話までの間に4つ、11話から20話までの間に3つ、21話から30話までの間に2つ、31話から45話までの間に1つと、前の方ほど選ばれている作品が多いようです。

刑事コロンボ   忘れられたスター.jpg刑事コロンボ(第32話)/忘れられたスター.bmp 「ベスト10」で一番後の作品は第32話のジャネット・リー(Janet Leigh)が犯人役を演じた「忘れられたスター」で、たまたまAXNで「コロンボ・シリーズ」全69話を放送中にピーター・フォークが亡くなり、8月中旬の段階でシリーズ全体の丁度真ん中くらいにあたる第32話「忘れられたスター」まで放送が終わったところだったので、そうした関係もあるのかなと。

 倒叙型のパターンを毎回繰り返しているわけで、その中でも幾つかのパターン類型があり、どうしても前の方の作品が有利になるというのもあるかもしれませんが、シリーズの前半部分に傑作が多いことは実際その通りであるようにも思われ、個人的にはシリーズ前半に"偏った"「ベスト10」にあまり違和感は覚えませんでした(むしろ、"確かに"という感じ)。

刑事コロンボ 忘れられたスター1.jpg そうした中、「忘れられたスター」は第32話でありながら「ベスト10」の第2位ということで、中盤の作品の中ではすごく評価高く、頑張っているなあと(そのあらすじは次の通り)。

 往年のミュージカルスターのグレース・ウイラー(ジャネット・リー)は、自ら出資してまでカムバックを果たそうとしているが、引退した医師の夫ヘンリー(サム・ジャッフェ)は、その出資に反対する。グレースはどうしても譲らない夫を自殺に見せかけ銃殺、ヘンリーは前立腺の手術を勧められており、それを苦に自殺したと見られたが―。

刑事コロンボ 忘れられたスター2.jpg 個人的には、犯人グレースの行動には不合理なところも多いように思われ(計画殺人なのか発作的な殺人なのかよく分からなかった)、そうしたことも含め、彼女が脳動脈瘤という「不治の病」を抱えていることと関係しているのでしょうか。もし治るのだったら、医者である夫が治療を勧めていたであろうけれど、夫はそのことを本人に告げていないため、本人は病気のことを知らず、復帰に向けてやる気満々なわけだ―。

 コロンボが事件の謎を解いている最中にも、彼女の病が記憶喪失を昂進させているため、彼女自身、自分が殺人を犯したことも忘れてしまっているような感じで、一方で、彼女の身代わりになろうとするナイト(騎士)的な男性(ネッド・ダイアモンド)もいて、コロンボは彼に事件の経緯を説明し、犯人に対しては謎解きも逮捕もしないという、極めて変則的な結末になっています。コロンボが彼女を逮捕しないのは、ネッド・ダイアモンドが彼女に自分殺したんだと言い含めるように言ったところ、彼女は「まあ、なんてことを」という反応で、コロンボの予測通り、自分が殺人を犯したとの記憶もない―ああ、こりゃだめだと思いつつも、ネッドに「あんたの自白なんか、すぐひっくり返されますよ」と言うと、ネッドは「2カ月は頑張ってみせる」と言い、これ、彼女の余命を指しているわけですね。この結末がこの作品の最大の評価ポイントであることは間違いなく(第1位の「別れのワイン」にも通じる犯人へのいたわりか)、個人的にも余韻を残したいいエンディングだと思います。

サンセット大通り.jpgPsycho (1960).jpgJanet Leigh.jpg 大スターだった過去に執着するグレース・ウイラー(ジャネット・リー)の設定は、ビリー・ワイルダー監督の映画「サンセット大通り」('50年)を念頭に発想されたように思われ(「サンセット大通り」のグロリア・スワンソンが着ていたドレスと似た衣装をまとっている場面がある)、また、ジャネット・リー(1927‐2004/享年77)の代表作は「サイコ」('60年)ですが、「サイコ」ではないものの、自身が出演した映画「Walking My Baby Back Home」('50年)で歌い踊る26歳の自分を観ているという場面があるなど、結構、映画ネタの詰まった作品です(因みに、ジャネット・リーの夫はトニー・カーティス、映画「トゥルー・ライズ」などのジェイミー・リー・カーティスは次女で、父親と母親の両方の姓を名乗っているわけだが、第40話「殺しの序曲」につっけんどんなウェイトレス役でチョイ役出演している)。

 最初観た時の評価は星3つか3つ半ぐらいだったけれど、犯人の行動の不合理も病気によるものと捉えれば...。更に、再見してラストをじっくり味わった末に星4つに(AXNの「ベスト10」に多少影響を受けた?)。ジャネット・リーも「サンセット大通り」のグロリア・スワンソンほどの凄味は無いけれど、それでも「忘れられたスター」の哀しみと焦りをリアルに演じていて、つくづく上手いなあという感じ。出てくるなり殺されてしまう「サイコ」よりは、じっくり"女優"している感じがしました。

刑事コロンボ/忘れられたスター 2.jpg 「刑事コロンボ(第32話)/忘れられたスター」●原題:FORGOTTEN LADY●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:ハーベイ・ハートJanet Leigh4.jpg●製作:エヴァレット・チェンバース●脚本:ウィリアム・ドリスキル●ストーリー監修:ピーター・S・フィッシャー/ウィリアム・ドリスキル●音楽:ジェフ・アレキザンダー●時間:97分●出演:ピーター・フォーク/ジャネット・リー/ジョン・ペイン/サム・ジャッフェ/モーリス・エバンス/リンダ・ゲイ・スコット/ロス・エリオット/ハーヴェイ・ゴールド/フランシーヌ・ヨーク/ジェローム・ガーディノ/マイク・ラリー/ジョニー・カーソン/デラ・リーズ●日本公開:1977/01●放送:NHK総合(評価:★★★★)
Janet Leigh in PSYCHO(1960)

●ラストシーンでのコロンボとネッド・ダイヤモンドの会話
【オリジナル】
C:「It's not gonna take much to break your story.」
 (あんたの証言なんて、すぐにひっくり返されますよ)
N:「It might take a couple of months.」
 (2ヵ月はかかるかもしれないだろう)
C:「Yes...Yes, It might.」
 (そう......そう、かかるかもしれないね)
(曖昧肯定)

【吹き替え版】
コ:「あんたの自白なんか、すぐひっくり返されますよ」
ネ:「がんばってみせる。二月[ふたつき]間は――」
コ:「そう――それがいいね」
(積極肯定)

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パトリック・マクグーハンが犯人を演じた2作。「早朝でなければ」という点が似ている。

刑事コロンボ/祝砲の挽歌 vhs1.jpg刑事コロンボ/祝砲の挽歌 vhs2.jpg  刑事コロンボ/仮面の男vhs1.jpg刑事コロンボ/仮面の男vhs2.jpg
特選「刑事コロンボ」完全版~祝砲の挽歌~【日本語吹替版】 [VHS]」パトリック・マクグーハン「特選 刑事コロンボ 完全版「仮面の男」【日本語吹替版】 [VHS]」パトリック・マクグーハン

刑事コロンボ/祝砲の挽歌 1.jpg 私立ヘインズ陸軍幼年学校の校長ラムフォード大佐(パトリック・マクグーハン)は、創立記念日の早朝、校庭にある大砲の砲弾に強力な火薬を仕込み、砲筒の中に大砲清掃用のボロ布を押し込む。記念日の式典に創立者の孫で学校の理事長でもあるヘインズ(トム・シムコックス)も来校し、経営が思わしくないこの陸軍学校を閉鎖して男女共学の短大にするという以前からの意向を具体化する話をするが、軍人気質のラムフォードには元より許容しかねる話で、彼はヘインズを誘導して式典の祝砲を彼に撃たせ、祝砲は暴発しヘインズは死ぬ―。

祝砲の挽歌5.jpg 第28話「祝砲の挽歌」は、コロンボ・シリーズで最も多い4度の犯人役をやったパトリック・マクグーハン(1928-2009)の初登場作品で、彼はこの作品の演技でエミー賞を獲っています(この人は、ドン・シーゲル監督、クリント・イーストウッド主演の「アルカトラズからの脱出」('79年)でも、アルカトラズ刑務所の憎たらしい所長役を好演した)。

祝砲の挽歌4.jpg マクグーハン演じるのは、冷静で知性と自信に溢れ、専門知識に秀でた犯人で、コロンボも相当に苦心惨憺しますが、学生達が密造していたリンゴ酒が「起床ラッパまで部屋の窓辺に吊るしてあった」のを砲台の付近から見てしまったのが犯人の命取りに。一生懸命に(まるで自らの犯した犯行を忘れ去ろうとするかのように)密造酒造りの犯人探しをしたのはいいけれど、結局、「早朝」その時間にその場所にいたことを自ら証明することになってしまいました。

刑事コロンボ/祝砲の挽歌1.jpg この犯人は、ある面、自分の思想信念に基づく「確信犯」であり、彼の「士官学校を守らねば」という信念は、学校の経営難という現実の前では、一層のこと古びて見えるのが悲しく見えます。

 ラストでコロンボは、彼が犯行を認めた直後も、引き続き学生達に最後の指揮をするのを見守っている―このエンディング(パトリック・マクグーハンは名演)が、物証はボロ布のみで、後は状況証拠の積み重ねに過ぎないとも言えるこの作品の評価を、一気に押し上げているように思います。


刑事コロンボ 仮面の男 1.jpgIDENTITY CRISIS columbo title.jpg パトリック・マクグーハンの2度目の登場は、第34話「仮面の男」(IDENTITY CRISIS)で、この作品では監督もしています。

刑事コロンボ/仮面の男1.jpg 経営コンサルタントのブレナー(パトリック・マクグーハン)の正体はCIAのエージェントであり、彼の元にかつての同僚ヘンダーソン(レスリー・ニールセン)が現れるが、二重スパイを働いた過去をヘンダーソンに握られていたブレナーは、物盗りの犯行に見せかけてヘンダーソン殺害する―。

刑事コロンボ 仮面の男2.jpgレスリー・ニールセン.jpg 言わばスパイ・ストリーが絡んでおり(パトリック・マクグーハンはジェームズ・ボンド役の候補に挙がったこともある)、殺されるのがレスリー・ニールセン(1926-2010)というのも豪華だし、コロンボの捜査にCIAの圧力がかかるというのも珍しい設定ですが、知的で自信に満ちた犯人像というのが「祝砲の挽歌」と似ています(マクグーハンが演じるとみんなそうなる)。

Vito Scotti IDENTITY CRISIS.png 被害者殺害時刻の夜には、クライアントである食品商社社長のデフォンテ(ヴィト・スコッティ)のためにスピーチのテープ録りをしていたというのが犯人の主張で、それを裏付けるような証拠もテープは拾っていますが、これはあくまで犯人が仕込んだもの―コロンボの明察はその上を行きます。(因みに、ヴィト・スコッティは、第19話「別れのワイン」でレストランの支配人、第20話「野望の果て」でテーラーの主人(右)、第24話「白鳥の歌」で葬儀社の営業マン、第27話「逆転の構図」での酔っ払いの浮浪者に続く5度目の登場。この人、見ているだけで楽しい)。

仮面の男2.jpg 当日の「夜」では知ることが出来ない(「早朝」でなければ知り得ない)"情報"がそこに織り込まれていなかったか。「早朝」でなければ―というのが鍵になる点でも、「祝砲の挽歌」と似ています。その"情報"(ニュース)とは―。

 今は考えにくいけれども、中国は当時ずっとオリンピック不参加で、1976年のオリンピックのモントリオール大会では参加が噂されたものの結局これも不参加、次の'80年年のレークプラシッド大会から参加しています。そのオリンピック"不参加"表明のニュースが流れたタイミングが、犯人の"逆アリバイ"に結び付くという、このシリーズでは珍しい時事ネタ的なオチです(この作品の米国での放映は'75年11月)。

レスリー・ニールセン/パトリック・マクグーハン

 ラストのコロンボの「ある日、ポーカーとマージャンが賭をし、初めはポーカーが優勢だったが...」という犯人に向けての"謎かけ"は、元々は「今日、中国人の気が変わりゲームをやることに...」という、「態度を二転三転させる中国」に「旗幟不鮮明な二重スパイ」を懸けた"皮肉"だったようで、NHKの独自の訳し方は、数年前に国交回復したばかりだった中国への政治的配慮だったのか。

 被害者が最後に行った店にコロンボが聞き込みに行った際に、ベリーダンサーの踊りに目を細めるといったシーンもあります。'09年に亡くなったパトリック・マクグーハン、'10年に亡くなったレスリー・ニールセンに続いて、遂にピーター・フォーク(1927- 2011年6月23日)までが亡くなったのが寂しいかぎりです。
 
刑事コロンボ/祝砲の挽歌0.jpg刑事コロンボ/祝砲の挽歌 2.jpg「刑事コロンボ(第28話)/祝砲の挽歌」●原題:BY DAWN'S EARLY LIGHT●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督:ハーベイ・ハート●製作:エヴァレット・チェンバース●脚本:ハワード・バーク●音楽:バーナード・セイガル●時間:98分●出演:ピーター・フォーク/パトリック・マクグーハン/バー・デベニング/マデリーン・ソントン・シャーウッド/トム・シムコックス/マーク・ホイーラー/シドニー・アーマス/ブルース・カービー/ロバート・クロットワー●日本公開:1976/01●放送:NHK(評価:★★★★)

IDENTITY CRISIS columbo 2.jpg刑事コロンボ/仮面の男2.bmp「刑事コロンボ(第34話)/仮面の男」●原題:IDENTITY CRISIS●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:パトリック・マクグーハン●製作:エヴァレット・チェンバース●脚本:ウィリアム・ドリスキル●音楽:バーナード・セイガル●時間:98分●出演:ピーター・フォーク/パトリック・マクグーハン/レスリー・ニールセン/オーティス・ヤング/デイビッド・ホワイト/バル・アベリー/ブルース・カービー/ビトー・スコッティ/バーバラ・ローズ/カーメン・アルゼンチアノ/ウィリアム・ミムス/クリフ・カーネル/アンジェラ・メイ/マイク・ラリー/エドワード・バック●日本公開:1977/09●放送:NHK(評価:★★★★)

パトリック・マクグーハン(刑務所長) in「アルカトラズからの脱出」('79年/米)
アルカトラズからの脱出 パトリック・マクグーハン1.jpg アルカトラズからの脱出 パトリック・マクグーハン2.jpg

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育てようとした対象を自ら押し潰してしまう―感性で捉える不条理劇「授業」。

イヨネスコ 授業・犀.jpg ウジェーヌ・イヨネスコ.jpg ウジェーヌ・イヨネスコ授業1.jpg 中村伸郎「授業」死の教室 中古vhs.jpg
授業・犀 (ベスト・オブ・イヨネスコ)』['93年/白水社]     アンジェイ・ワイダ「死の教室」VHS(絶版)

授業・犀 (ベスト・オブ・イヨネスコ).jpg ある教授の自宅に、女生徒が個別講義を受けに来るが、教授は女中に止められるのもかまわず講義を始める。数学そして比較言語学と講義を進めていくにつれ、最初は穏やかだった教授は夢中になり、しだいに凶暴になっていく。凶暴化した教授は我を忘れて、講義に集中できなくなった女生徒をナイフで刺殺する―。

 ルーマニア生まれのフランスの劇作家ウジェーヌ・イヨネスコ(1909-94/享年84)が1951年に発表した戯曲で、サミュエル・ベケット(1906-89)などと共に20世紀のヌーヴォー・テアトルの代表格にあたる人ですが、文学界にデビューしたのは40歳を過ぎてからであり、結構遅咲きだった人です(デビュー時に、新世代の劇作家の台頭を歓迎する出版社の意向で、年齢を3歳若くサバ読み公表させられた)。

 イヨネスコの作風は「平凡な日常を滑稽に描きつつ、人間の孤独性や存在の無意味さを鮮やかに描き出した」(ウィキペディア)ものということになるらしいですが、昔から言われている言葉で一言で言えば、「不条理劇」であり、実際、カミュやサルトルの不条理の文学に通じるとされています(但し、個人的には、戯曲という表現を通して理論よりも観客の感性に働きかけている分、哲学っぽくないという点で、カフカなどに近いように感じる)。

山手教会地下「ジァン・ジァン」.jpg渋谷ジァン・ジァン 高橋竹山.bmp渋谷ジァン・ジァン 中村伸郎.bmp 演劇としての「授業」は、俳優の中村伸郎(1908-1991/享年82)が、'72年より11年間にわたって、毎週金曜日に渋谷・公園通りの山手教会地下「ジァン・ジ渋谷ジャンジャンr-1s.jpgァン」で演じていたことで知られていますが(「ジャンジャン」は1969年7月オープン。ここへは「高橋竹山の津軽三味線」や「おすぎのシネマトーク」も聞きに行った。「イッセー尾形の一人芝居」もこのジァン・ジァンで始められた。「美輪明宏の世界」とか「松岡計井子渋谷ジャンジャン75年8月.jpgビートルズをうたう」などといったものもあり、荒井由実(後の松任谷由実)、中島みゆき、吉田拓郎、井上陽水など、ここでライブをやった著名アーティストは数知れない。'00年4月25日閉館)、自分自身のメモを見ると、'79年の5月4日の金曜日に「ジァン・ジァン」に「授業」を観に行っていました(ゴールデンウィーク中渋谷ジャンジャン 授業.jpg中村伸郎 授業.pngもやっていた)。小劇場であるため、役者と観客の距離が近くて緊迫感があり、結構インパクトを受けました(その時の女性徒役は、演出も兼ねていた大間知靖子。歴代の女性徒役の中でも名演とされている)。

 女性徒の覚えの悪さ(「ナイフ」という言葉を何度やっても正確に発音できない)に教授はキレてしまい、発作的にナイフによる凶行に及んだともとれるのですが、実はこの教授は今までも同じ殺人を何度も繰り返していることが暗示されています。

 育てようとした対象を自ら押し潰してしまう―家庭教師をやっていたりした時のことを思い出しそうな設定ですが、もし今観れば、会社における部下指導の在り方などを考えてしまうかも(余りにストレートに教訓的な解釈?)。

 中村伸郎の後を受けて、中山仁、勝部演之、仲谷昇といった俳優がこの教授役を演じ、また最近では「劇団東京乾電池」の綾田俊樹やベンガルが演じていますが、今年('11年)7月には、柄本明が「東京乾電池」の公演として自身の演出のもとで演じています。それらを実際に観てはいないけれども、中村伸郎.jpgいかにもひと癖ありそうな柄本明よりも、教授然とした中村伸郎の方が、この作品の中村伸郎2.jpg場合"意外性"の効果はあるのではないかなあ。中村伸郎は「宇宙大怪獣ドゴラ」('64年/東宝)や「サンダ対ガイラ」('66年/東宝)、或いはTV版「白い巨塔[左]('67年)でも博士や教授の役でした。この人、「天国と地獄」('63年/東宝)など黒澤明監督作品にも出ているほか、映画会社ではなく劇団(文学座)所属だったので、「彼岸花」('58年/松竹)、「秋日和」('60年/松竹)、「秋刀魚の味[右](62年/松竹)など小津安二郎監督の後期作品にも常連のように出ています。

 "感性に訴える"作品ではありますが、政治的意図(反ナチズム)もあるようで(家庭教師や会社の上司に置き換えるだけでは"読み"が浅い?)、更に、教室という1場面のみで話が進行するため、アンジェイ・ワイダが監督した「劇団クリコット2」による「死の教室」('76年/ポーランド)を観た際に、この芝居を想起したりもしました。

死の教室の一場面.jpg 「死の教室」は、廃墟(倉庫?)のような教室に、自らの子供の頃の分身である人形を持ってやって来た老人(死者)たちが、脈絡のない不可思議な行動をとりながら、ユダヤの歴史に由来する言葉や、意味不明な単語を発演するという、これもまた「不条理劇」で、舞台劇(演出はタデウシュ・カントール)をそのまま撮った記録映画です。オーケストラ・リハーサル dvd2.jpg"統制の喪失"という意味では、個人的にはフェデリコ・フェリーニの「オーケストラ・リハーサル」(′79年/伊)と少し似ているように思えたました。「オーケストラ・リハーサル」は、「フェリーニの道化師」などと同じくTV用映画として撮られたもので、あるオーケストラのリハーサル風景をTV局が取材するという形で物語が進み、「道化師」と同じくドキュメンタリーかと思って観ていると、実はフィクションだった...。「オーケストラ・リハーサル [DVD]

死の教室 [THE DEAD CLASS] ポスター.jpg アンジェ蜷川幸雄.jpgイ・ワイダはこの「死の教室」という作品を、やはりTV用作品として撮影しましたが、ポーランド国内ではTV放映も劇場公開もされていないとのこと、かつて「劇団クリコット2」が再来日して('82年に一度来日して公演、蜷川幸雄(1936-2016)氏ら日本の演劇人に衝撃を与えたとのこと)、この芝居を舞台公演するという話がありましたが、「クリコット2」のメンバーが全員高齢であるため、長旅に耐えられないという理由で中止になったという顛末がありました。出演者らは"老け役"ではなく、ホントに老人だったのだ...。

「死の教室」●原題:THE DEAD CLASS●制作年:1976年●制作国:ポーランド●監督:アンジェイ・ワイダ●製作:バルバラ・ペツ・シレシツカ●脚本・演出・作曲:タデウシュ・カントール●時間:90分●出演:劇団クリコット2(マリア・グレツカ/パルコ劇場.jpgparco劇場 .jpgボフダン・グリボヴィッチ/ミーラ・リフリツカ/ズビグニエフ・ベトナルチック/ロマン・シヴラック)●日本公開:1988/01●配給:パルコ●最初に観た場所:渋谷・PARCO劇場(88-01-16)(評価:★★★☆)
PARCO劇場 1973年5月23日「西武劇場」として渋谷PARCO PART1の9Fにオープン、主に演劇公演に利用される。1985年~「PARCO劇場」。2016(平成28)年8月7日閉館。2019年に再オープン予定。

「オーケス