【3189】 ○ ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー 「マルタ」 (74年/西独) (2012/12 マーメイドフィルム) ★★★☆

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DV・モラハラのビョーキ夫の支配から逃れられない主人公マルタは「自発的隷従」?

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「マルタ」マルギット・カルステンセン
「マルタ」1.jpg 図書館に勤めるマルタ(マルギット・カルステンセン)は父親とローマを旅行していて、父親を心臓発作で亡くす。その混乱の最中に財布を盗まれたことに気づいたマルタは、ドイツ大使館に行く。大使館を出たマルタは、ある男性を見かけ、帰国後、彼女はたまたま、その男ヘルムート(カ「マルタ」2.jpgール=ハインツ・ベーム)を紹介される。ヘルムートはマルタを言葉で侮辱したり、嫌がることを強要するが、マルタは従順に受け入れていく。そして二人は結婚する。ハネムーンに出かけたイタリアで、ヘルムートの要求はさらにエスカレートしていき、精神的、肉体的にマㇽタを痛めつけるようになっていく。マルタは友人マリア「マルタ」3.jpgンヌ(バルバラ・ヴァレンティン)に相談するが、ヘルムートの振る舞いについて説「マルタ」4.jpg明することができないでいる。ある日ヘルムートの殺意を感じたマルタは、図書館の同僚カイザー(ペーター・カテル)に助けを求める。二人はカイザーの運転する車で逃げるが、動転したマルタがハンドルをつかみ、事故を起こしてしまう。病院で目を覚ましたマルタは、カイザーが事故で死に、自分も下半身麻痺になったことを知る。そして、ヘルムートは―。

「マルタ」f.jpg ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー(1945-1982)監督の'74年制作の映画で、もともとはテレビ映画です(日本ではファスビンダー監督の没後30年となる2012年、特集「ファスビンダーと美しきヒロインたち」で上映)。何かしら精神的に不安定なものや性に対する恐怖心や秘められた欲望を感じさせる女主人公マルタが、サディストの結婚相手に追い詰められる話で、ある意味、サイコサペンスと言うか、血の流れないホラー映画でした(笑)。

「マルタ」6.jpg マルギット・カルステンセン演じる主人公のマルタは、厳格な父親の束縛ゆえか、籠の中の鳥のように三十路を迎えた女で、その世間から浮いた印象は、父と異国に旅する冒頭シーンからも窺えます。そんな彼女を受け入れる男が突如目の前に現れて、「どうする、私っていう」という惑い。それを演じるマルギッテ・カルステンセンのずれ方が巧いです。

 そして、結局はそのサディストのDV男(婚前DV男)と結婚し、男のサディズム攻勢ははますます拍車をかけいきます。マルタは友人に相談したりしますが、観ていて、とっとと別れてしまえばいいににと何度思ったことか。

 夫ヘルムートの出張中に電話線を切られ、さらに外出を禁止され、帰宅すれば暴力を振るわれるなどし、遂にはヘルムートに殺されると思ったマルタは、ようやっと家を出ることを決心しますが―。

「マルタ」7.jpg なぜマルタが逃げないのか、「外出禁止」など無視すればいいのにと思って見ていましたが、ラストの男が病院にマルタを迎えに来るシーンで、車椅子のマルタが抵抗せず夫に付き添われて病院の下りエレベータに乗る場面で、マルタがDV・モラハラのビョーキ夫の支配から逃れられないのは「そういうことか」と、遅ればせながら気づいた次第です。

 後でネットで調べたら、ファスビンダー監督は「マルタは望んで支配されようとした」と述べているそうで、やっぱりそうか、「自発的隷従」かと。しかし、我ながら鈍いなあ。ラストシーンでやっとそのことが分かったとは。マルタを救おうとして亡くなった、親切な青年カイザー君が気の毒になりました。

「マルタ」ひ.jpg しかし、無理やり日焼けさせる「責め」というのがあるのだなあ。本当に白い肌が真っ赤になていて痛そうでした。これがテレビドラマとして作られたというのは、ちょっと意外な気がしますが、ドイツならOKなのか。

gazo_martha01.jpg「マルタ」●原題:MARTHA●制作年:1974年●制作国:西ドイツ●本国放映:1974年5月28日●監督:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー●脚本:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー/クルト・ラーブ●撮影:ミヒャエル・バルハウス●音楽:ペール・ラーベン●時間:112分●出演:マルギット・カルステンセン/カール=ハインツ・ベーム/バルバラ・ヴァレンティン/ペーター・カテル/ブリジット・ミラ/イングリット・カーフェン/ジゼラ・ファケルデイ/クルト・ラープ●日本公開:2012/12●配給:マーメイドフィルム●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(19-06-18)(評価:★★★☆)

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This page contains a single entry by wada published on 2022年9月 1日 03:58.

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