【1955】 ○ ガイ・スレーター 「ミス・マープル(第4話)/ポケットにライ麦を」 (86年/英) (1997/03 テレビ東京) ★★★★

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美人が出てこないのが故レックスの周辺の暗さを物語っている感じ。原作にほぼ忠実。

ミス・マープル/ポケットにライ麦を dvd.jpg  A Pocketful of Rye title.gif Joan Hickson 1855.gif   ポケットにライ麦を クリスティー文庫2.jpg
ミス・マープル[完全版]VOL.7 [DVD]」 Joan Hickson in Agatha Christie's Miss Marple:A Pocketful of Rye
Rex Fortescue (Timothy West)
ミス・マープル(第4話)/ポケットにライ麦を timothy west.gif 投資会社社長レックス・フォーテスキュー(ティモシー・ウェスト)が事務所で、秘書のミミス・マープル(第4話)/ポケットにライ麦を01.jpgス・グローブナー(スーザン・ギルモア)がお茶を運んだ直後に急死し、その上着のポケット一杯にライ麦が入っていた。ニール警部(トム・ウィルキンソン)とヘイ巡査部長(ジョン・グローヴァー)は数時間前に摂取されたアルカロイド系毒物が死因と鑑識医フレンチ(ルイス・マホニー)から聞き、朝食に毒を盛られたとみて、レックスの自宅であるイチイ邸に行く。
Mary Dove (Selina Cadell)Adele (Stacy Dorning) 
メリー・ダヴ(セリナ・ケイデル).gifStacy Dorning.jpg 家政婦メリー・ダヴ(セリナ・ケイデル)によれば、亡くなったレックスは皆に嫌われていた。若い後妻アディール(スティシー・ドーニング)はヴィヴィアン・デュボア(マーティン・スタンブリッジ)という男と浮気中であり、義理の姉エフィー・ヘンダーソン(ファビア・ドレイク)は階上の自室に籠り切り。邸には長男パーシヴァル(クライブ・メリン)とその妻ジェニファー(レイチェル・ベル)が同居し、他に執事クランプ(フランク・ミルズ)と料理人のクランプ夫人(メレリーナ・ケンドール)、メイドのエレン(ビュー・ダニエルズ)、マープルが躾けを教えたやや愚鈍な小間使いグラディス・マーティン(アネッテ・バッドランド)がいた。
Lance (Peter Davison)
ミス・マープル(第4話)/ポケットにライ麦を  ランス.jpg レックスにアフリカから呼ばれた次男のランス(ピーター・デビソン)が、貴族出身の未亡人での妻パトリシア(フランセス・ロウ)をホテルに置いて邸へ来た夜、アディールが飲み物で毒殺され、グラディスからの電話を受けたミス・マープル(ジョーン・ヒクソン)はマザー・グースの「6ペンスの唄」の歌詞を思い出す。彼女はイチイ邸にタクシーで駆けつけるが邸に入れてもらえず、ニール警部にメモを渡すも彼はそのメモを見ない。その夜、グラディスが洗濯物干し場で殺されているのが発見され、鼻には洗濯バサミが。マザー・グースの歌詞に沿えば、"つぐみ"が事件の背景にあるはずだとミス・マープルは警部に助言し、ランスはアフリカの"つぐみ"鉱山のことだろうと言う。レックスは昔その鉱山で鉱山技師のマッケンジーを見捨てて帰国しており、彼の子供がレックスへの恨みから犯行に及んだ可能性も。更には、犯行にあたって、男性と付き合いたいというグラディスの女心を巧みに利用した男がいるらしい―。

ポケットにライ麦を ハヤカワ文庫.jpg BBC版ジョーン・ヒクソン(Joan Hickson、1906‐1998)主演のミス・マープルシリーズ全12話の内の第4話(本国放映は1986年)で、原作はアガサ・クリスティ(1890‐1976)が1953年に発表したミス・マープルシリーズの長編第6作(原題:A Pocket Full of Rye)であり、マザー・グースの歌詞どおりに殺人が起きる所謂"見立て殺人"です。

 個人的には、原作を読んだ際には、最後の土壇場まで犯人が判らず(ニール警部も同様)、犯人に該当した人物は、『スリーピング・マーダー』の若夫婦や「トミー&タペンス」シリーズの"おしどり探偵"のように事件の真相を探る側に属していると思い込んでしまったために、その意外性が強く印象に残りましたが、それぐらい"好人物"っぽく描かれています(ある意味、"叙述トリック"気味(?)なくらい)。

Patricia Fortescue (Frances Low)
パトリシア(フランセス・ロウ).gif でも、この映像化作品では、ちょっと雰囲気違うなあと。原作を読み犯人が判っていて観ているというのもあったとは思いますが、この犯人、途中でかなりあからさまに怪しげな素振りもみせるし...。

 何よりもイメージが違ったのは、ランスの妻で貴族出身の未亡人パトリシアで、思ったほど美人ではないというか、ハナからこの女性は幸せになれそうな感じではないなあという雰囲気に満ちている...。

Miss Grovenor (Susan Gilmore)/Gladys Martin (Annette Badland)
ミス・グローブナー(スーザン・ギルモア).gifグラディス・マーティン.gif レックスの会社の秘書のミス・グローブナー(スーザン・ギルモア)もそんな美人ではないし、レックスの若い後妻アディールは軽薄そうだし、小間使いグラディスに至っては...。レックスの義姉エフィー・ヘンダーソン(原作ではラムズボトル姓)が一番イメージ通りだったけれど(何だか全てを見透かしている感じ)、これは酸いも甘いも知り尽くしたお婆さんであり、あまり美人が出てこないというのが、故レックスの周辺の暗さを物語っている感じでした。

ポケットにライ麦を 08.jpg 原作は、犯人の手の込んだ遣り口に対して評価が割れるようですが、個人的には面白く読めた作品であり(評価★★★★☆)、プロット的にも精緻だと思われる傑作。その傑作をほぼ忠実になぞっているから(被害者殺害直前の模様を再現シーンで構成しているのは親切)、いろいろ役者のイメージにケチはつけたものの、そう悪い作品にはなりようがないという感じでしょうか。ただ最後だけ、勝手に犯人にカーチェスをやらせて、原作には無い天罰を下してしまったけれど...。

 因みに、ラストシーンのカーチェイス。左右の道路標識(速度制限標識)は'50年代にはまだ無かったタイプのものらしい。

ミス・マープル 第10巻「ポケットにライ麦を.jpgポケットにライ麦を09.jpg「ミス・マープル(第4話)/ポケットにライ麦を」」●原題:A POCKETFULL OF RYE●制作年:1986年●制作国:イギリス●演出:ガイ・スレーター●脚本:T.R.ボウエン●時間:日本放映版102分(完全版196分)●出演:ジョーン・ヒクソン/ティモシー・ウェスト/ファビア・ドレイク/クライブ・メリン/セリーナ・ケイデル/スティシー・ドーニング/トム・ウィルキンソン/ピーター・デビソン/レイチェル・ベル/スーザン・ギルモア/マーティン・スタンブリッジ/フランセス・ロウ●日本放映:1997/03/06●放映局:テレビ東京(評価:★★★★)ミス・マープル 第10巻「ポケットにライ麦を」【字幕版】 [VHS]」 (101分)

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