【1954】 ○ デヴィッド・ジャイルズ 「ミス・マープル(第3話)/予告殺人」 (85年/英) (1998/01 日本クラウン【VHS】) ★★★★

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原作にたいへん忠実。箇所によっては原作より丁寧に謎解きしている。

A MURDER IS ANNOUNCED 1985.jpg予告殺人 dvd.jpg Miss Marple A Murder Is Announced (1985).jpg 予告殺人 クリスティー文庫.jpg
ミス・マープル[完全版]VOL.12 [DVD]」『予告殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
Miss Marple: A Murder Is Announced(1985)

マープル 予告殺人 レティシア・ブラックロック夫人.jpg 「リトル・パドックスで今晩7時に殺人があります」という広告が地元の新聞に出たことが村の人の間で話題になり、リトル・パドックスの邸の女主人レティシア・ブラックロック夫人(ウルスラ・ハウェルズ)がパーティの準備をするマープル 予告殺人 マーガトロイド.jpg中、好奇心の旺盛な村の住人たち―イースターブルック大佐(ラルフ・マイケル)とその夫人(シルヴィア・シムズ)、スウエッテナム夫人(メリー・ケリッジ)と息子で作家の卵であるエドマンド(マシュー・ソロン)、豚の世話をするヒンチクリフ(パオラ・ディオニソッティ)と気はいいが頭の弱い友人マーガトロイド(ジョーン・シムズ)、ハーモン牧師(ディヴィッド・コリングズ)とその夫人(ヴィヴィエンマープル 予告殺人 ハナ .jpgヌ・ムーア)―らが集まってくる。やがて7時丁度に居間の明かりが突然消えて銃声がし、見知らぬ男が倒れ絶命していた。銃弾はレティシアの耳をかすめたようで、夫人は耳朶から出血し、夫人の友人で同居人のドーラ・バンニー(レニー・アシャーソン)は気が動転し、難民の外人メイドであるハナ(エレーン・アイヴス・キャメロン)は自分の命が狙われているとヒステリニックに喚く。強盗に入って来た男はホテル従業員のルディ(ティム・チャリングトン)だったが、自殺なのか他殺なのかそれとも事故なのか杳として知れない。
マープル 予告殺人 クラドック警部.jpg 捜査はクラドック警部(ジョン・キャッスル)とフレッチャー巡査部長(ケヴィン・ウェイトリー)によって行われ、居間にいた客をはじめ、レティシアの遠戚であるというジュリア(サマンサ・ボンド)とパトリック(サイモン・シェファード)、夫を戦争で亡くしたという、何か秘密を抱えている様子の若い未亡人フィリッパ(ニコラ・キング)らの証言を探っていく。署長の推薦で意見を求められたマープルは、ルディに強盗をやらせた誰かが犯人だと示唆し、ルディの友達だった女給のマーナ(リズ・クロウサー)に重ねて聞くよう助言したところ、ルディは強盗の真似をして誰かから礼金を貰う約束だったことが判明する。事件には、大富豪ゲドラーの遺産が絡んでいるようで、ゲドラーは妻が死んだ場合は、かつ彼の秘書だったレティシアに遺産が行くようになっていた。そして、ドーラ・バンニーが誕生日パーティの後、毒殺死する―。

予告殺人 ハヤカワ・ミステリ文庫.jpg BBC版ジョーン・ヒクソン(Joan Hickson、1906‐1998)主演のミス・マープルシリーズ全12話の内の第3話(本国放映は1985年)で、原作はアガサ・クリスティ(1890‐1976)の1950年に発表されたミス・マープルシリーズの長編第4作(原題:A Murder Is Announced)。「クリスティ自選のベストテン」にも「日本クリスティ・ファンクラブ員の投票によるクリスティ・ベストテン」にもランクインしている作品であり、また、江戸川乱歩は、クリスティ作品の中で「面白かったもの」のべスト8に挙げていて、それらの中でも『アクロイド殺し』と並んでこの作品を高く評価をしていますが、この映像化作品は、「書斎の死体」などと同じく3部構成ドラマになっており、原作にたいへん忠実で、会話なども原作をそのままなぞっている印象です。

 第3部では、ヒンチクリフとマーガトロイドがルディのやらせ強盗事件の独自の謎解きをして他殺説を裏付け(原作より丁寧に謎解きしている)、事件の夜に誰が居間にいなかったか(つまりその人物がルディの背後に廻ったことになる)をマーガトロイドが思い出したところでヒンチクリフが出かけてしまい、マーガトロイドは洗濯物を取り込んでいる最中に何者かに殺されてしまいます。

 そこでミス・マープルは、犯人を炙り出すための大胆な罠を仕掛けますが(彼女には既にこの時点で犯人の確証はあったということになるのだが)、ミス・マープルが犯人に仕掛けた罠がどういうものであったかが、事件解決の後でマープルが協力者に礼を言う場面などを入れることによって、たいへん分かり易くなっていて、このドラマ版、なかなかの優れものではないかなあと。

 クラドック警部が早くにミス・マープルの才能を見抜くところが、第1話「書斎の死体」のスラック警部と対照的。スラック警部は、第11話「魔術の殺人」で、事件を解決したミス・マープルに「ありがとう」とやっとこさ礼を言い、第一線を退いた第12話「鏡は横にひび割れて」でようやっと、クラドック警部とレイク警部補にミス・マープルの協力も得るようアドバイスするようになりますが、クラドック警部は既にこのエピソードの中で早々と、マープルの信奉者へと変身を遂げています。まあ、常識人であるクラドック警部よりも、ミス・マープルに何度も先を越されても対抗心を燃やし続けるスラック警部の方が、ドラマの構成的には面白いわけだけど...(「弁護士ペリー・メイスン」シリーズなどは、負ける方のライバル検事は一貫してハミルトン・バーガーで、最後はいつも苦虫を噛み潰したような顔していた。このシリーズでそれに該当するのがクラック警部)。

主任警部モース2.jpg クラドック警部を補佐するフレッチャー巡査部長役のケヴィン・ウェイトリーは、英ITVの「主任警部モース」シリーズではモースを補佐するルイス部長刑事役でずっと出ており、この時期、掛け持ちして「別の上司」に付いていたことになりますが、キャラクター的に全く同じに見えるのは、立場が同じだからか。

 このエピソードも「書斎の死体」と同じく、90年代にNHKやテレビ東京などで放映されないままビデオ化され、今でもAXNミステリーなどで放映されるのは完全版です(155分という長さは、「書斎の死体」と同じく完全版の中では一番「短い」類であるということもあるのだろうが)。

マープル 予告殺人 レティシア・ブラックロック夫人2.jpg「ミス・マープル(第3話)/予告殺人」」●原題:A MURDER IS ANNOUNCED●制作年:1985年●制作国:イギリス●本国放映:1985/02/28●演出:デヴィッド・ジャイルズ●脚本:アラン・プレイター●時間:155分●出演:ジョーン・ヒクソン/シルヴィア・シムズ/パオラ・ダイオニソッティ/ メアリー・ケリッジ/ウルスラ・ハウエルス/ジョン・キャッスル/レネ・アシェーソン/ ジョーン・シムズ/ラルフ・マイケル/ケヴィン・ウォートリー/シルヴィア・シムズ/ジョン・キャッスル/マシュー・ソロン/ディヴィッド・コリングズ/ヴィヴィエンヌ・ムーア/エレーン・アイヴス・キャメロン/ティム・チャリングトン/サマンサ・ボンド●ビデオ発売:1998/01●発売元:日本クラウン(評価:★★★★)

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