【1952】 ○ シルビオ・ナリッツァーノ 「ミス・マープル(第1話)/書斎の死体」 (84年/英) (1997/05 日本クラウン【VHS】) ★★★★

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BBC版「第1話」。原作にほぼ忠実。スラック警部の"ご機嫌斜め"ぶりが可笑しい。

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ミス・マープル 第1巻「書斎の死体」【字幕版】 [VHS]」/「ミス・マープル 第1巻 書斎の死体 [DVD]」ジョーン・ヒクソン
ミス・マープル 書斎の死体 vhs00.jpg セント・メアリー・ミード村の大佐の邸ゴシントン・ホールの書斎で家政婦が若い女性の死体を発見、バントリー大佐(モーレイ・ワトソン)と妻ドリー(グェン・ワットフォード)に知らせるとともに警察に連絡、ドリーは友人のマープル(ジョーン・ヒクソン)を車で呼び寄せて相談する。事件捜査の方は、大佐の友人メルチェット警察本部長(フレデリック・イエガー)が担当し、スラック警部(デヴィッド・ホロヴィッミス・マープル 書斎の死体 01.jpgチ)、レイク警部補(イアン・ブリンブル)が現場を受け持つことに。マジェスティック・ホテルから行方不明者の捜索願が出されていたが、死体はホテルダンサーのルビー・キーン(サリー・ジェイン・ジャクソン)だという証言が得られる。ルビーは足首を痛めたジョージー(トゥルディー・スタイラー)が代わりに雇った少女で、捜索願を出した大富豪コンウェイ・ジェファーソン(アンドリュー・クルイックシャンク)はルビーを養女にするつもりだったと言う。一方、村の男マルコム(コリン・ヒギンズ)が採石場で燃えた車と焼死体を発見するが...。

ミス・マープル 書斎の死体 00.jpg コンウェイは8年前の航空機事故で家族を失い、自らも車椅子でのホテル住まいであり、遺された義理の娘アデレード(シーラン・マッデン)と息子マーク・ギャスケル(キース・ドリンクル)の世話になっていた。スラック警部はダンサー兼テニスコーチのレイモンド(ジェス・コンラッド)らを事情聴取。一方、黒焦げの車はルビーと最後に踊ったバートレット(アーサー・ボストロム)のものであり、焼死体はリーヴ少佐(スティーブン・チャーチェット)の娘パメラ(アストラ・シェリダン)と思われた。普段素行が良くない映画制作者のベィジル・ブレイク(アンソニー・スメー)が事件の夜に外出しており、彼に強い容疑がかかる。

ミス・マープル 書斎の死体 vhs2.jpg マープルはジェファーソンの友人で警視庁の元警視総監のヘンリー・クリザリング卿(レイモンド・フランシス)に、ルビーを殺した人物はパメラ殺しと同一犯で、第三の殺人を計画していると話し、ヘンリー卿は本部長にマープル同席でパメラの友人の再尋問を依頼、本部長はスラック警部に指示、マープルはパメラの友人フローリー(カレン・シーコーム)から映画のカメラ・テストを受けるためホテルへ行くと言っていたとの証言を得る。彼女はベィジルの女ダィナ・リー(デビー・アーノルド)がベィジルと結婚していることを見抜き、夫の助けになるように忠告するが、直後にスラック警部は、ベィジルの車から見つかった敷物の繊維を物証としてベィジルを逮捕する―。
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書斎の死体 クリスティー文庫.jpg 1984年から1992年にかけて本国イギリスで放映されたBBC版ジョーン・ヒクソン(Joan Hickson、1906‐1998)主演のミス・マープルシリーズ全12話の内の第1話(本国放映は1984年)。原作はアガサ・クリスティ(1890‐1976)の1942年に発表されたミス・マープルシリーズの長編第2作(原題:The Body in the Library)。

 原作は傑作ですが、この映像化作品もしっかり作られています。登場人物が錯綜しているためか、挙動不審の教授と助手のコンビの存在が割愛されていたりしますが、でも、これ、元々あまり本筋には関係無かったかも。

ミス・マープル 書斎の死体 04.jpg 原作はプロット的にも「死体入れ替え・時間差」殺人とやや凝っていて複雑。書斎で見つかった死体が検分の結果"処女"だったとか、村の知恵遅れの男マルコムが採石場で比較的早いうちに車と焼死体を発見するが最初は警察に相手にされないとか、村人から疑いの目で見られ始めたバントリー大佐に対して、映画制作者(原作では実は道具係り)のベィジル・ブレイクが「お話したいことがあります」と申し出る場面とかは何れも原作には無く、これみんな、視聴者に対する犯人推理の"助け舟"かと思われます(ベィジル・ブレイクが庭で何かを燃やしているのをマルコムに何を燃やしているのか訊かれ、「うちのばあさんさ」と答えたのは、死体を運んだ際の絨毯を処分していたわけか)。

ミス・マープル 書斎の死体 03.jpg マープル物の長編第2作、BBC版第1作でありながら、元警視総監ヘンリー卿をしてミス・マープルのことを「イギリス一の犯罪学者。メアリー・ミード村の観察から世界を見ている」と言わしめているのは、先行する短編集『火曜クラブ』でミス・マープルの推理力の凄さを知ったことによるものでしょう。デヴィッド・ホロヴィッチ演じるスラック警部は、現場の捜査が忙しい割には進展が無い中で上司からマープルの意見を聴くよう言われて、「ばあさんと引退した警視総監の両方の面倒を見なければならない」とご機嫌斜めなわけです(この"ご機嫌斜め"ぶりが可笑しいのは、サラリーマンにとっては、会社の中でもこうしたことが時にあるからかもしれないからか)。

クラドック警部.jpg ミス・マープルとスラック警部は、原作では、『牧師館の殺人』でスラック警部がミス・マープルに事件解決の先を越されているためマープルに対してライバル心を燃やすという設定ですが、このBBC版は「第1話」であるため当然"初顔合わせ"となり、この後、第5話「牧師館の殺人」だけでなく、第9話「パディントン発4時50分」では原作のクラドック警部に代わって登場するなど、このTVシリーズで重要な位置を占めます。それだけに、この第1話は、スラック警部の、やり手ではあるが、それ以上に自らがやり手であるということへの自負心が強いというキャラクターを重点的に描いているように思いました。

 結局スラック警部は、自らのプライドの高さからマープルのことをなかなか認めようとしないのですが、第11話「魔術の殺人」では、事件を解決したミス・マープルに「ありがとう」としゃちほこばってぎこちない礼を言い、第12話「鏡は横にひび割れて」では、クラドック警部とレイク警部補に捜査を指示する際にマープルの協力も得るよう指示し、自らも積極的にマープルの助言を仰いで捜査を進めるようになるという、こうした両者の関係の変化もこのシリーズの見所です。

 この作品は90年代にテレビ東京やNHKでこのシリーズが放映された際の(何れも短縮版)ラインアップに入っておらず、先にVHSが販売され、その後も地上波では放映されなかったという経緯もあってか、近年AXNミステリーなどで放映される場合も常に完全版で放映されています。

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ミス・マープル 完全版 DVD BOX 1,2

【BOX1】収録内容

Disc.1『復讐の女神』(Nemesis)
Disc.2『バートラム・ホテルにて』(At Bertram's Hotel)
Disc.3『スリーピング・マーダー』(Sleeping Murder)
Disc.4『パディントン発4時50分』(4.50 from Paddington)
Disc.5『カリブ海の秘密』(A Caribbean Mystery)
Disc.6『書斎の死体』(The Body in the Library)


【BOX2】収録内容

Disc.7『ポケットにライ麦を』(A Pocketful of Rye)
Disc.8『牧師館の殺人』(The Murder at the Vicarage)
Disc.9『動く指』(The Moving Finger)
Disc.10『魔術の殺人』(They Do it with Mirrors)
Disc.11『鏡は横にひび割れて』(The Mirror crack'd from side to side)
Disc.12『予告殺人』(A Murder in Announced)
 
 
    
 
「ミス・マープル(第1話)/書斎の死体」」●原題:THE BODY IN THE LIBRARY●制作年:1984年●制作国:イギリス●演出:シルビオ・ナリッツァーノ●脚本:T・R・ボーウェン●時間:156分●出演:ジョーン・ヒクソン/グエン・ワットフォード/モーリー・ワトソン/フレデリック・イエガー/デヴィッド・ホロヴィッチ/アンソニー・スメー/アンドリュー・クルイックシャンク/シーラン・マッデン/トゥルディー・スタイラー/イアン・ブリンブル●ビデオ発売:1997/05●発売元:日本クラウン(評価:★★★★)

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