【1953】 ○ ロイ・ボールティング 「ミス・マープル(第2話)/動く指」 (85年/英) (1997/03 テレビ東京) ★★★★

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比較的早くにミス・マープルが登場するのは、いい味での"改変"と言えるのは。

動く指 dvd2.jpg動く指 1985 01.jpg ミス・マープル/動く指 dvd.jpg   動く指 クリスティ文庫.jpg
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ジェリー(アンドリュー・ビックネル)/ジョアナ(サビーナ・フランクリン)
動く指 1985 Andrew Bicknell.jpg動く指 1985 Sabina Franklyn.jpg 戦争中の飛行機事故で負傷したジェリー・バートン(アンドリュー・ビックネル)とその妹ジョアナ(サビーナ・フランクリン)は、静養でリムストック村を訪ね、ファーズ荘を借りて一時滞在することになるが、やがて兄に妹を中傷する手紙が届き、どうやら中傷の手紙は村の誰彼問わずに送りつけられている模様である。
ガイ(ジョン・アーナット)/モード(ディリス・ハムレット)
動く指 1985John Arnatt.jpg動く指 19851985Dilys Hamlett.jpg 牧師ガイ(ジョン・アーナット)の妻モード(ディリス・ハムレット)は、手紙の主を探るべくミス・マープル(ジョーン・ヒクソン)に相談する。そんな中、弁護士エドワード・シミントン(マイケル・カルヴァー)の妻アンジェラ(エリザベス・カウンセル)が青酸カリを飲んで死亡し、遺体の傍には「次男の父親は違う」という中傷の手紙と「もうダメ」というメモがあっため検死審問では自殺とされたが、ミス・マープルはこれは殺人だと直感する。
マープル(ジョーン・ヒクソン)/エドワード・シミントン(マイケル・カルヴァー)
動く指 1985 Joan Hickson.jpg動く指 1985 Michael Culver.jpg ファーズ荘の料理人パートリッジ(ペネロープ・リー)は、以前ファーズ荘で働いていたメイドのベアトリス(ジュリエット・ウェイリー)から、"自殺"事件の日に奇妙なことがあったので聞いて欲しいと言われ会う約束するが、そのベアトリスはシミントン家の衣装部屋で死体で見つかる。
ミーガン(デボラ・アップルビイ)/エルシー・ホランド(イモジェン・ビックフォード・スミス)
動く指 1985 Deborah Appleby.jpg動く指 1985 Imogen Bickford-Smith.jpg 村に勤めるよそ者の医師オーエン・グリフィス(マーティン・フィスク)はジョアナに恋し、その妹エリル(サンドラ・ペイン)はシミントン氏に思いを寄せる一方、ジェリーはシミントン家の厄介娘ミーガン(デボラ・アップルビイ)の秘めた魅力に気づき、ロンドン行きに同行させて彼女を美しく変身させる。ジョアナは2通目の中傷の手紙を受け取り警察に持参、更に、シミントン家の家庭教師エルシー・ホランド(イモジェン・ビックフォード・スミス)にも中傷の手紙が届き、手紙の指紋からグリフィス医師の妹エリルが逮捕されるが、医師は妹が犯人のはずはないと信じる。クロフォード警視(ロジャー・オスティミー)に依頼して、マープルは真犯人を罠にかける賭けに出る―。

動く指hpm.jpg BBC版ジョーン・ヒクソン(Joan Hickson、1906‐1998)主演のミス・マープルシリーズ全12話の内の第2話(本国放映は1985年)。原作はアガサ・クリスティ(1890‐1976)の1943年に発表されたミス・マープルシリーズの長編第3作(原題:The Moving Finger)で、『牧師館の殺人』(1930)、『書斎の死体』(1942)に次ぐもの。

 原作では、ミス・マープルは、話が全体の4分の3ほど進行して事件が混迷の度を深めた段階でやっと登場し、しかもすぐに引っ込んで、次に登場するラストでは事件を全て解決してしまっているという作りになっているので、クリスティが自作の自選ベストテンに入れている作品でありながらも、読む側としてはやや未消化感が残りましたが、この映像化作品では、そうしないと映像的に持たないというのものあってか比較的早くにミス・マープルが登場し、結構積極的に捜査に関わっており、これはいい意味での"改変"と言えるのでは。あとは概ね原作に忠実ではないでしょうか。

動く指 1985 02.jpg 原作が、田舎町でブラック・メールの飛び交うという陰湿な話のようでありながらそれほど暗くないのは、主人公の兄妹の気の置けない遣り取りと彼らを含む登場人物の恋愛模様を絡めることで毒が中和されているためであり、この映像化作品では、とりわけ妹ジョアナとグリフィス医師、兄ジェリーと二十歳の娘ミーガンとのボーイ・ミーツ・ガール的なストーリーを丁寧に描くことで、更にその中和度を増している印象です。

THE MOVING FINGER 001.jpg 一方で、プロット的には犯人への手掛かりを原作以上に伏線として見せることはしていないので、最後のミス・マープルの謎解きは、原作同様に"ばたばたっ"という印象を受けざるを得ないかも。でもこれ、事件として振り返るとそう複雑なものではないため、下手にヒントを示すと犯人がすぐに解ってしまうというのもあるのかもしれません。

 第1話「書斎の死体」に続き、イギリスの田舎町ののんびりした感じがよく出ている一方(原作の戦中の話が戦後に置き変わっている)、ヒロインのジョアナを演じたサビーナ・フランクリンは、このシリーズとしては現代風のヒロイン像。但し、これだと村の噂では「化粧の濃い女」になってしまうのか。ナルホドね。家庭教師エルシー役のイモジェン・ビックフォード・スミスも美人でした。

動く指 title1.jpg「ミス・マープル(第2話)/動く指」」●原題:THE MOVING FINGER●制作年:1985年●制作国:イギリス●本国放映:1985/02/21●演出:ロイ・ボールティング●脚本:ジュリア・ジョーンズ●時間:日本放映版95分(完全版189分)●出演:ジョーン・ヒクソン/アンドリュー・ビックネル / サビーナ・フランクリン/ジョン・アーナット/ディリス・ハムレット/マイケル・カルヴァー/エリザベス・カウンセル/ペネロープ・リー/ジュリエット・ウェイリー/マーティン・フィスク/サンドラ・ペイン/デボラ・アップルビイ/イモジェン・ビックフォード・スミス/ロジャー・オスティミー/リチャード・ピアソン/ヒラリー・メイソン●日本放映:1997/03/13●放映局:テレビ東京(評価:★★★★)

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