【2033】 △ モイラ・アームストロング 「アガサ・クリスティー ミス・マープル(第10話)/無実はさいなむ」 (07年/英) (2010/03 NHK-BS2) ★★★ (○ ガイ・ハミルトン 「007 死ぬのは奴らだ」 (73年/英) (1973/07 ユナイテッド・アーティスツ) ★★★☆)

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ノン・シリーズものの原作を改変して原作より面白くなるならばともかく、そうもなっていない。

007 死ぬのは奴らだps.jpgミス・マープル3 無実はさいなむ dvd.jpg ミス・マープル3 無実はさいなむ 4人兄弟.jpg
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ミス・マープル3 無実はさいなむ グェンダ.jpg ミス・マープル(ジェラルディン・マクイーワン)は、昔マープル家で奉公していたグェンダ(ジュリエット・スティーヴンソンが、自分が秘書を勤める歴史家リオ・アーガイル(デニス・ローソン)と婚約したため、その結婚祝に招待される。リオの妻レイミス・マープル3 無実はさいなむ シーモア.jpgチェル(ジェーン・シーモアは2年前に書斎で殺害されていて、犯人とされた養子のジャッコ(バーン・ゴーマン)は日頃から問題児で、その日もグェンダに金の無心をしに来てと口論になり、彼女に掴 ミス・マープル3 無実はさいなむ キャルガリ.jpgみかかっていた。彼は殺害時刻には他人の車に乗っていたとアリバイを主張するも、証人が現れず死刑になっていた。ケンブリッジ大学の動物学者アーサー・キャルガリ(ジュリアン・リンド・タットは、南極探検で英国を離れていて帰国してから古い新聞記事で、自分が処刑されたジャッコの証言にある人物であることに思い当り、ジャッコの無実を告げにアーガイルの邸サニー・ポイントに駆けつける―。

ミス・マープル3 無実はさいなむ キャルガリの訪問.jpg 邸にはリオ家族である、長女メアリ(リサ・スタンスフィールド)、長男ミッキー(ブライアン・ディック)、次女ヘスター(ステファニー・レオニダス)、ジャッコの双生児ボビー(トム・ライリー)、末女で混血児のティナ(グーグー・ムバサ・ロー)がいて、ジャッコと同様、皆レイチミス・マープル3 無実はさいなむ フィリップ.jpgェルの養子だった。リオ、グェンダ、養子の兄弟姉妹の外には、メアリの夫で車椅子生活のフィリップ・デュラント(リチャード・アーミテージと、家政婦のカーステン・リカーステン・リンツトロム(<font color=deeppink>アリソン・ステッドマン</font>).jpgンツトロム(アリソン・ステッドマンがいた。キャルガリがもたらしたジャッコ冤罪の知らせは皆を喜ばせることはなく、むしろ家族の間で疑心暗鬼が深まる。ミス・マープルが家政婦カーステンから家族の事情を聞くと、レイチェルの葬儀の日に、ジャッコが密かに結婚していた妻モーリーン(アンドリア・ロウ)が家を訪ねて来たと言う。翌日、ヒュイッシ警部補(リース・シェアスミス)が到着して捜査を始めると、家族間の疑心暗鬼は更に深まり、カーステンは、リオの妻の座を狙った秘書のグェンダが犯人だと糾弾する。そのグェンダが、何者かによってレター・オープナーで刺殺される―。

無実はさいなむ ハヤカワ・ミステリ文庫 .bmpMiss Marple & Lisa Stansfield as Mary Durrant.jpg 2007年に本国イギリスで放映されたジェラルディン・マクイーワン主演の英国グラナダ版で、この年から翌年にかけて作られたシーズン3全4話の内の第2話(通算第10話)であり、日本ではNHK‐BS2で2010年3月24日に初放映。原作はアガサ・クリスティ(1890‐1976)の、1958年に発表された作品で(原題:Ordeal by Innocence)、で、ポアロもミス・マープルも登場しないノン・シリーズものでで、クリスティはマイベスト10に選んでいますが、巷では評価が割れている作品です。

Miss Marple & Lisa Stansfield as Mary Durrant

 原作はミス・マープルものではないため、グェンダがミス・マープルの元奉公人という話は当然のことながら無く、ジャッコは刑死ではなく無期懲役で獄中で病死しており、キャルガリの専門は動物学ではなく地理学、彼を除く養子の兄弟姉妹は、長女メアリ・デュラント、長男ミッキー、次女ヘスター、末娘ティナの4人で、ジャッコの双子の兄弟ボビーというのは登場しません(グェンダがミス・マープルの元奉公人ということで視聴者目線では容疑者から外れるため、容疑者の人数合わせで一人足した?)。

ヒュイッシ警部補.jpgMiss Marple and Gwenda Vaughan.jpg 前半部分は、ほぼそれ以外は原作通りに進行しますが、原作では、キャルガリが真相究明に燃えるほか、フィリップも真実の解明に乗り出しますが、この映像化作品では、キャルガリの推理は冴えず、フィリップは推理することすらしないし、原作のヒュイッシ警視は、原作より年齢が下の"警部補"になっていて、あまり冴えないメガネ男に変えられている―要するに、オイシイ箇所は全てミス・マープルが持って行ってしまった感じです。
Miss Marple and Juliet Stevenson as Gwenda Vaughan

 後半部分になると急に改変が目立つようになり、グェンダは刺殺されるわ、ボビーは溺死するわで、これみんな原作には無い話です(原作では、真相に近づき過ぎたフィリップが殺害され、事件当日の不審な出来事を思い出したティナも刺される)。特に、グェンダを殺してしまったのは、ちょっとねえという感じ。「ポケットにライ麦を」でも、ミス・マープルの元奉公人が殺害されますが、あれは原作通りだからいいとして、わざわざ改変してまで殺さなければならなかったのかなあ。容疑を掛けられたまま殺されたグェンダが気の毒過ぎました。

キャルガリ.jpg 原作では、事件解決後に、キャルガリとヘスターとの間に恋が芽生えるのですが、これも無し(それ以前に、ヘスターの恋人で医師のドナルドというのが登場するが、これも出てこない)。まあ、ラストのヘスターの新たな恋の目覚めは、原作においても唐突感があるため端折ってもいいかなという気はするし、さすがに真犯人までは変えていなかったけれど、様々な改変によって原作より面白くなるならばともかく、そうもなっていないため、自分としてはイマイチでした。
Julian Rhind-Tutt as Dr Arthur Calgary

Jane Seymour
Jane Seymour 007.pngJane Seymour 3.jpg  グェンダ役のジェーン・シーモアは、"007シリーズ"第8作、ガイ・ハミルトン監督、ロジャー・ムーア主演「007死ぬのは奴らだ」('73年/英)のボンドガールであり、自分が初めて映画館で見た007作品であるため懐かしかったです。この作品も、"007シリーズ"の中で評価が割れている作品ですが、個人的にはそう嫌いではないです(懐かしさもあって)。

ジョアンナ・ラムレイ .jpgティモシー・ダルトン.jpg この"ミス・マープル"シリーズの第8話「シタフォードの謎」('06年)では、ロジャー・ムーアの次にボンド役を演じたティモシー・ダルトンが登場し、また、第1話「書斎の死体」('04年)第20話「鏡は横にひび割れて」('10年)には、「女王陛下の007」('69年/英)のボンドガール、ジョアンナ・ラムレイが登場しています。

  
ミス・マープル3 無実はさいなむ title.pngミス・マープル3 無実はさいなむ 食卓.jpg「アガサ・クリスティー ミス・マープル(第10話)/無実はさいなむ」●原題:ORDEAL BY INNOCENCE, AGATHA CHRISTIE`S MARPLE SEASON 3●制作年:2007年●制作国:イギリス●演出:モイラ・アームストロング●脚本:スチュアート・ハーコート●原作:アガサ・クリスティ「バートラム・ホテルにて」●時間:93分●出演:ジェラルディン・マクイーワン/ジュリエット・スティーヴンソン/デニス・ローソン/アリソン・ステッドマン/リチャード・アーミテージ/ステファニー・レオニダス/リサ・スタンスフィールド/バーン・ゴーマン/ジェーン・シーモア/トム・ライリー/リース・シェアスミス/ジュリアン・リンド・タット/ブライアン・ディック/グーグー・ムバサ・ロー/マイケル・フィースト/ピッパ・ヘイウッド/カミーユ・コドゥリ●日本放送:2010/03/23●放送局:NHK‐BS2(評価:★★★)

ジェーン・シーモアロジャー・ムーア「007 死ぬのは奴らだ」0.jpg
クレオパトラ=ジェーン・シーモア.jpgJane Seymour2.jpg「007 死ぬのは奴らだ」●原題:LIVE AND LET DIE●制007 死ぬのは奴らだ dvd.jpg作年:1973年●制作国:イギリス●監督:ガイ・ハミルトン●製作:ハリー・サルツマン/アルバート・R・ブロッコリ●脚本:トム・マンキーウィッツ●撮影:テッド・ムーア●音楽:ジョージ・マーティン● 原作:イアン・フレミング●時間:121分●出演:ロジャー・ムーア/ヤフェット・コットー/ジェーン・シーモア/クリフトン・ジェームズ/ジュリアス・W・ハリス/ジェフリー・ホールダー/デイヴィッド・ヘディソン/グロリア・ヘンドリー/バーナード・リー/ロイス・マクスウェル●日本公開:1973/07●配給:ユナイテッド・アーティスツ(評価:★★★☆) 
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ガイ・ハミルトン(Guy Hamilton、1922年9月16日 - 2016年4月20日)
イギリスの映画監督。2016年4月20日、スペインのパルマ・デ・マヨルカで死去(93歳)。「007 ゴールドフィンガー」など、007シリーズの監督として知られた。

ロジャー・ムーア(Sir Roger George Moore、1927年10月14日 - 2017年5月23日)イギリスの映画「007」シリーズで7作にわたってジェームズ・ボンドを演じた(2017年現在、歴代最多)
2017年5月23日、スイスの自宅でガンのため死去。89歳。

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