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凝った逆トリックによる鮮やかな結末。作品全体としては何となく楽しい雰囲気。
「特選「刑事コロンボ」完全版~逆転の構図~【日本語吹替版】 [VHS]」 ディック・バン・ダイク(Dick Van Dyke)
ディック・バン・ダイク / アントワネット・バウアー
口やかましい妻との生活に心底嫌気がさした著名な写真家ポール・ガレスコ(ディック・バン・ダイク)は、誘拐事件を偽装して妻フランセス(アントワネット・バウアー)を殺害し、以前から手なずけていた前科者のダシュラー(ドン・ゴードン)を廃車置き場に呼び出し、椅子に縛り付けた妻を写した写真と脅迫状に指紋を付けさせた後に彼を射殺、自分の足も撃ち抜き、身代金の受け渡しの際に犯人に撃たれたように装った―。
ドン・ゴードン / ジョアンナ・キャメロン
シリーズ第27話。犯人のポールは「この世からお前が消えてくれれば良いのと何度も願った」ほど、妻のフランシスを憎んでいたとのことで、元々のシナリオには、コロンボの聞き込みに対し、写真集出版社の社長が、「もともとポールは財産を彼女に半分渡していたんだが、数年前、彼は神経衰弱になってね、フランシスはそれを利用して裁判所に彼の管理能力の喪失を訴え、財産のすべてを自分の管理下に置いてしまったんだ。それにナイーブな彼には、フランシスと争うだけのガッツはない」とのセリフがあったそうです。
ナルホドね。助手のローナ(ジョアンナ・キャメロン)の美脚の魅力に駆られて犯行を決意したのかな。でも、かなり冷徹というか、完全犯罪に近い線、いっていたように思います。それが、コロンボに纏わりつかれているうちに、だんだん表情が曇ってくる...。
犯人役のディック・バン・ダイクは、「メリー・ポピンズ」('64年)よりも、主役だった「チキ・チキ・バン・バン」('68年、原作は007シリーズで知られるイアン・フレミングが唯一著した童話)の方が、学校の課外授業でリアルタイムで観たということもあって印象に残っています(当時、主題歌のソノシートを買って「チュリ・バンバン」とか英語で歌っていた。山本リンダのカバー・ヴァージョンもあったなあ)。
犯人は2人も殺害している悪い奴であり、ディック・バン・ダイクはこの作品においては渋味のある二枚目キャラクターで通しているのですが、そうした映画のイメージもあって、しかも、何と言ってもこの作品の白眉とも言える、コロンボが犯人に仕掛けた証拠写真を裏焼きしての逆トリックの妙もあって(凝っているし、大胆な手法でもある)、作品全体としては何となく楽しい雰囲気。
コロンボが救済所のシスター(ジョイス・バン・パタン、第39話「黄金のバックル」では犯人役を演じる)にホームレスと間違えられたり、たまたまポールの第二の犯行現場に居合わせた「貧乏は恥にあらず」とのたまう浮浪紳士トーマス(ヴィット・スコッティ、またまた登場。第19話「別れのワイン」のレストランの支配人役、第20話「野望の果て」でテーラーの主人役、第24話「白鳥の歌」の葬儀屋に続いて、今度はとうとう"職無し"に)との遣り取りがあったりと、鮮やかな結末だけでなく、その外の部分も楽しめます。
ディック・バン・ダイク(1925年生まれ)は、TVドラマシリーズ「Dr.マーク・スローン」で再び見(まみ)えることができて、懐かしかったなあ。事件ものでしたが(本業の医師より探偵業の方が忙しそう)、やはり、何となくほのぼのとしたキャラクターでした。
「刑事コロンボ(第27話)/逆転の構図」●原題:NEGATIVE REACTION●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督:アルフ・ケリン●製作:エヴァレット・チェンバース●脚本:ピーター・S・フィッシャー●音楽:バーナード・セイガル●時間:95分●出演:ピーター・フォーク/ディック・バン・ダイク/アントワネット・バウアー/ジョイス・バン・パタン/マイケル・ストロング/ドン・ゴードン/ジョアンナ・キャメロン/ヴィット・スコッティ●日本公開:1975/12●放送:NHK(評価:★★★★)
「チキ・チキ・バン・バン」●原題:CHITTY CHITTY BANG BANG制作年:1968年●制作国:イギリス●監督:ケン・ヒューズ●製作:アルバート・R・ブロッコリス●脚本:ロアルド・ダール/ケン・ヒューズ●撮影:クリストファー・チャリス●音楽:リチャード・M・シャーマン/ロバート・M・シャーマン●原作:イアン・フレミング●時間:143分●出演:ディック・バン・ダイク●/サリー・アン・ハウズ/アドリアン・ホール/ヘザー・リプリー/ゲルト・フレーベ/アンナ・クエイル/ロバート・ヘルプマン/ライオネル・ジェフリーズ/ジェームズ・ロバートソン・ジャスティス●日本公開:1968/12●配給:ユナイテッド・アーティスツ(評価:★★★☆)
「Dr.マーク・スローン」 Diagnosis: Murder (CBS 1993~2001) ○日本での放映チャネル:NHK(1995-1999)/スーパーチャンネル(2003-2005)