【1929】 ○ ハーベイ・ハート 「刑事コロンボ(第36話)/魔術師の幻想」 (76年/米) (1977/12 NHK) ★★★☆ (○ パトリック・マクグーハン 「刑事コロンボ(第37話)/さらば提督」 (76年/米) (1977/10 NHK) ★★★☆)

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再度の「犯人」役ジャック・キャシディ、ロバート・ヴォーン、再演出までしたマクグーハン。

魔術師の幻想 vhs.jpg 刑事コロンボ/魔術師の幻想 dvd.jpg  さらば提督 vhs.jpg 
特選「刑事コロンボ」完全版 魔術師の幻想【日本語吹替版】 [VHS]」「特選 刑事コロンボ 完全版「さらば提督」【日本語吹替版】 [VHS]」ジャック・キャシディ

刑事コロンボ/魔術師の幻想01.jpg刑事コロンボ/魔術師の幻想 title.jpg 魔術師サンティーニ(ジャック・キャシディ)は、ジェローム(ネヘミア・パーソフ)が経営するクラブで「水槽の幻想」という脱出魔術を披露して人気を集めていたが、彼の本名はステファン・ミューラーで第二次大戦中はナチスの親衛隊員だった―彼はその過去を知るジェロームに収入の50%を巻き上げられており、サンティーニが今後は5%しか払うつもりはないとジェロームに伝えると、逆にジェロームに過去の秘密を公表すると脅される。クラブでの「水槽の幻想」マジックでサンティーニは箱の中に入れられ更に水槽に沈められてしまうが、その間の10分を利用してサンティーニは移民局宛の密告の手紙をタイプ中のジェロームを殺害、手紙を持ち出し、何食わぬ顔で舞台に戻って"魔術"を完成させる―。

魔術師の幻想03.jpg刑事コロンボ/魔術師の幻想03.png 「魔術師の幻想(Now You See Him)」(第36話)は第5シーズン第5話。ジャック・キャシディは、第1シーズンのスティーブン・スピルバーグ演出の「構想の死角」(第3話)の"書かない作家"フランクリン役、第3シーズン「第三の終章」(第22話)の出版社経営者グリーンリーフ役に続く3度目の登場で、本当に犯人役がサマになる役者であり、本作の本国での放映から10ヵ月後の1976年12月に自宅の火事で亡くなったのが惜しまれます。

刑事コロンボ/魔術師の幻想 02.png サンティーニという名は希代の魔術師フーディーニのもじりか。脱出マジックの裏側を見せてくれ、「悪の温室」(第11話)の熱血刑事ウィルソン(ボブ・ディシー)の再登場、手品はしょぼいがプロポーションで見せるサンティーニの娘サラ(シンシア・シスク)など配役面でも楽しいけれど、タイプライターのリボンが決定的証拠になるというのがちょっと時代を感じさせるかな(ジャック・キャシディの演技で星半個オマケ)。

The Best Columbo Episodes

刑事コロンボ/さらば提督 title.jpg 世間から「提督」と呼ばれているヨット造船会社所有者オーティス・スワンソン(ジョン・デナー)、今は娘のジョアナ(ダイアン・ベイカー)の夫チャーリー・クレイ(ロバート・ヴォーン)が社長になって経営実権を握っているが、チャーリーの儲け主義が気に入らず密かに会社を売ってしまおうと考えていたところを自邸で殺害され、その後始末をするチャーリーは、提督の服を着込みヨットで夜の海に出て死体を捨てると、潜水服に着替えて泳いで戻ってくる―。

刑事コロンボ/さらば提督01.png 続く第5シーズン第6話(日本ではこちらの方が先に放映された)「さらば提督(Last Salute To Commodore)」(第37話)は、当初、本作を以って「刑事コロンボ」シリーズは終了の予定であったため、そのことを考慮してか、カメラワークにおいてコロンボのアップなどが矢鱈多く、特に前半部分はコロンボが絡むギャグ・シーンが満載―と思ったら、いきなり中盤で、ロバート・ヴォーン演じるチャーリー・クレイに対して「あんたが犯人だ」的なことを早々と宣言してしまうという変則パターン。

刑事コロンボ/さらば提督02.png  チャーリー・クレイが「提督」の遺体を処理したのは、言わば、思い込みからくる"勘違い"によるもので、「カリフォルニア州では夫婦の財産は共有制」ということと、「相続人が被相続人を殺害した場合は相続権を失う」ということが関係しているわけね。妻が「殺人者」ではまずいわけで、別に、実は妻を愛していたということではなく、これはこれで金目当てだったわけか。
 
刑事コロンボ/さらば提督03.png ロバート・ヴォーンは「歌声の消えた海」(第29話)に続く「犯人」役としての再登場で(「海」「船」絡みが続くね)、ところがそのチャーリーがやがてあっさり殺されてしまい(そっか、提督の殺害場面がなくていきなり遺体が出てくるシーンが、視聴者をミスリードさせる"叙述トリック"だったわけか、と)、中盤以降は"フーダニット(Who done it?)"の展開になっていて、ラストはコロンボが関係者全員を集めてエルキュール・ポアロの如く謎解きをやるという、これまた変則パターン。

刑事コロンボ/さらば提督04.png 保守的な「刑事コロンボ」ファンには絶対受け入れがたい"掟破り"の作品だと思いますが、ラストの提督の時計の音を関係者全員に聞かせての犯人の炙り出しがややタルくてポアロほどの精緻さに欠くものの、全体としては、個人的にはまあまあ面白かったです(この方法論についても疑念を挟む人は多いと思うが)。

 演出はパトリック・マクグーハン(1928-2009)で、ここまで「祝砲の挽歌」(第28話)、「仮面の男」(第34話)に犯人役で出演済みで、「仮面の男」では演出も手掛けており、これが演出2作目、アイルランド系ではないのに<マック>を名乗る若手刑事の登場とか、遊んでるなあ(マクグーハン自身はアイルランド系)。

刑事コロンボ/さらば提督05.jpg その他、コロンボのアシスタント、クレイマー刑事(ブルース・カービー)が4度目の登場で今回が一番出番が多く、さらに、ウィルフリッド・ハイド=ホワイト.jpg「ロンドンの傘」(第13話)で執事タナーを演じたウィルフリッド・ハイド=ホワイト(右写真)が弁護士役で、「毒のある花」(第18話)でマーチソン博士役を、「5時30分の目撃者」(第31話)で"目撃者"のモリス氏役を演じたフレッド・ドレイパーが被害者の甥役で、「白鳥の歌」(第24話)で調査官パングボーン氏を演じたジョン・デナーが「提督」役でといった具合に、3人のゲストスターも再登場で、「お別れ同窓会」的様相。

 それなりに本国での評価も高かったのか、この作品でピーター・フォークは、当シリーズ3度目のエミー賞ドラマ部門主演男優賞を受賞しています(それとも、シリーズが終わることを見込んでの餞別的な受賞だったのか)。作中で葉巻を止めるようにカミさんに言われているけれどつい無意識に吸ってしまい、最後は開き直って「まだまだやるよ」といって一人で海へボートを漕ぎ出していくシーンには、いろいろな示唆が込められているように思いましたが、結局、この作品がシリーズの最終作とはならず、旧シリーズだでけでも、この後2シーズン8作が作られています。

魔術師の幻想00.jpg「刑事コロンボ(第36話)/魔術師の幻想」●原題:NOW YOU SEE HIM●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:ハーベイ・ハート●製作:エヴァレット・チェンバース●脚本:マイケル・スローン●音楽:バーナード・セイガル●時間:92分●出演:ピーター・フォーク/ジャック・キャシディ/ネヘミア・パーソフ/ボブ・ディシー/ロバート・ロジア/シンシア・シスク/パトリック・カリントン/ロバート・ギボンズ/ヴィクター・イザイ/マイク・ラリー●日本公開:1977/12●放送:NHK(評価:★★★☆)

刑事コロンボ/さらば提督06.jpg「刑事コロンボ(第37話)/さらば提督」●原題:LAST SALUTE TO THE COMMODORE●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:パトリック・マクグーハン●製作:エヴァレット・チェンバース●脚本:ジャクソン・ギリス●音楽:デバーナード・セイガル●時間:93分●出演:ピーター・フォーク/ロバート・ヴォーン/ダイアン・ベイカー/フレッド・ドレイパー/ウィルフリッド・ハイド=ホワイト/ジョン・デナー/デニス・デュガン/ブルース・カービー/スジョシュア・ブライアント/スーザン・フォスター●日本公開:1977/10●放送:NHK(評価:★★★☆)

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