【2423】 ○ ウィリアム・ワイラー 「大いなる西部」 (58年/米) (1958/12 松竹=ユナイテッド・アーチスツ) ★★★★

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雄大な西部を背景とした様々な価値観の対立。ストーリー的に飽きさせずに最後まで見せる。

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大いなる西部9M.jpg大いなる西部1Y.jpg 1870年代のテキサスのある町に、東部から1人の紳士ジェームズ・マッケイ(グレゴリー・ペック)が、有力者テリル少佐(チャールズ・ビックフォード)の娘パット(キャロル・ベイカー)大いなる西部2HA.jpgと結婚するためにやって来る。出迎えた牧童頭のスティーブ・リーチ(チャールトン・ヘストン)は主人の娘を密かに恋しており、ヤサ男風のジェームズに敵意を抱く。パットは、ジェームズと父の牧場に向かう途中、ヘネシー家の息子大いなる西部5Y.jpgバック(チャック・コナーズ)たちの悪戯を受けるが、ジェームズは彼らの為すがままで抵抗しなかった。パットの父テリル少佐は大地主ルーファス・ヘネシー(バール・アイヴス)とこの地の勢力を二分して争っていた。両者が共に目をつけている水源地ビッグ・マディは、パットの親友の女教師ジュリー・マラゴン(ジーン・シモンズ)が所有していた。大いなる西部1A.jpg彼女は一方が水源を独占すれば必ず争いが起こると考え、どちらにも土地を売ろうとしなかった。少佐は娘婿にされた乱暴に対して、ヘネシーの集落を襲いヘネシーの息子たちにリンチを加えて復讐するが、ジェームズはそんな少佐に相大いなる西部S.jpg容れないものを感じる。彼は争いの元である水源地ビッグ・マディを見て女主人ジュリーに会い、中立の立場で誰にでも水を与え、自分でこの地に牧場大いなる西部JK.jpgを経営したいと申し出て売約契約を交わす。血気にはやるパットと父の少佐には、ジェームズの態度が不満だった。一方、ヘネシー父子は、水源地を手に入れて少佐に対抗するため、ジュリーを監禁する。ジェームズはメキシコ人牧童ラモン(大いなる西部E2.jpgアルフォンソ・ベドヤ)の案内で単身本拠に乗り込み、水源は自由にすると明言してジュリーを救出しようとする。ジュリーに横恋慕する息子バックは、父ルーファス・ヘネシーの計らいでジェームズと決闘することになるが、卑怯な振舞いから父に射殺される。やがて少佐の一隊が乗り込んできて戦いが始まり、1対1で対決したルーファスと少佐は相撃ちで共に死に、憎悪による対立と暴力の時代は終わりを告げる―。

大いなる西部 old poster.jpg ウィリアム・ワイラー監督の1958年作品で、まさに「大いなる西部」を雄大に描きつつ、その中に様々な価値観の対立を織り込み、また、ストーリー的にも2時間46分の長尺でありながら飽きさせずに最後まで見せるという、巨匠ならではの堂々たる娯楽大作です。グレゴリー・ペック(1916-2003/享年87)、チャールトン・ヘストン(1923-2008/享年84)、ジーン・シモンズ(1929-2010/享年80)、キャロル・ベイカー(1931- )の4大スターが共演していますが、テレビで初めて観た時は4人とも存命していたのが、今はキャロル・ベイカーしか生きていないのは、50年以上前の作品であるから仕方無いけれど、ちょっと寂しいです。

大いなる西部BL8.jpg チャールトン・ヘストンは「主演」ではなく、主演はこの映画の製作も兼ねたグレゴリー・ペックであり、チャールトン・ヘストンの方は「助演」ということで、年齢的にも、グレゴリー・ペックが当時42歳だったのに対し34歳と、相対的にはまだ若い感じか。ウィリアム・ワイラー監督は、グレゴリー・ペックの主演作では「ローマの休日」('53年)があり、一方、この作品の翌年には、チャールトン・ヘストン主演の「ベン・ハー」('59年)を撮ることになります。

大いなる西部Z.jpg この作品には、グレゴリー・ペック演じるジェームズ・マッケイのキャラクターが分かりにくいとの批評もあるようですが、物語の設定上も、周囲が煮え切らないようなものを感じるキャラだから、観ている側がそう感じるのもおかしくないかも。実際にはジェームズは勇気ある正義漢であり、決して"ヤサ男"でも"慎重居士"でもないわけですが大いなる西部D83.jpg(逆にいくら命があっても足りないくらい(?)勇敢)、ただ、そこまで「能ある鷹は爪を隠す」的行動をするかなあという感じは確かにあります(却ってイヤミっぽい?)。むしろ、チャールトン・ヘストン演じる牧童頭スティーブ・リーチのキャラクターの方が分かり易くて親近感が感じられました。チャールトン・ヘストンが屈折した役柄を演じているというのも興味深いですが、彼は同年のオーソン・ウェルズ監督の「黒い罠」('58年/米)では、主人公のメキシコ人麻薬捜査官を演じています(オーソン・ウェルズ演じる刑事の不正を探る役))。

ジーン・シモンズ.jpgバール・アイヴス.jpg大いなる西部-01.jpg それ以外の俳優陣では、ヘネシー家の父親を演じたバール・アイヴス(1909-1995、数多くのヒット曲を持つフォーク歌手でもあった)がアカデミー助演男優賞とゴールデングローブ賞の両方の助演男優賞を受賞していますが、個人的には、ジーン・シモンズ(1929-2010)演じる女教師が印象的でした。きりっとした美人でもありますが、自らの名誉を犠牲にしてジェームズを守ろうとするところが、名誉にこだわって争いを繰り返す周囲の愚か者たちとの対比で際立大いなる西部J.jpgっていました。最後は、ジェームズと結ばれることを暗示するような終わり方と取るのが妥当―というか、もう、それしかないだろうなあと思ったりもします。

チャック・コナーズ バスケ.jpgチャック・コナーズ mlb.jpg グレゴリー・ペックとチャールトン・ヘストンの延々と続く殴り合いのシーンも語り草になっていますが、確かにグレゴリー・ペック190㎝、チャールトン・ヘストン191㎝という両者の長身は荒野に映えます。但し、敵役バック・ヘネシーを演じたチャック・コナーズ(1921-1992/享年71)はそれらを上回る身長197㎝の長身で、俳優になる前はBAA(現NBA)とMLBの選手でした(つまりプロバスケットボールとメジャーリーグ大いなる西部B.jpgの選手を兼ねていたことになる)。1958年10月に公開されたこの映画の中では、ヘネシー家の不良息子で、ジェームズ、パットらにちょっかいを出し、ジュリーに横恋慕した挙句、最期はその卑怯な行為によりバール・アイヴス演じる自分の父親に射殺されてしまうという情けない男の役ですが、同じく1958年9月から米ABCで放送開始されたテレビ西部劇「ライフルマン」では、無法者の悪や暴力と闘う銃の達人にして、妻にライフルマン59.jpgライフルマン .jpgChuck_Connors_The_Rifleman_1959.JPG先立たれ男手で子どもを育てる、いわば「男やもめのヒーロー」ルーカス・マケインを演じ、日本でも1960年から1963年までTBS系列で156話が放映されて人気を博しています(つまり、テレビの西部劇でヒーロー役を演じながら、同時期に映画の方ではアウトローの不良かつダメ男役を演じていたことになる)。

ルーカス・マケイン(チャック・コナーズ)
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「ライフルマン」The Rifleman (ABC 1958~1963) ○日本での放映チャネル:TBS(1960ライフルマン.jpg~1963)

「大いなる西部」●原題:THE BIG COUNTRY●制作年:1958年●制作国:アメリカ●監督:ウィリアム・ワイラー●製作:ウィリアム・ワイラー/グレゴリー・ペック●脚本:ジェサミン・ウェスト(脚色)/ロバート・ワイラー(脚色)/ジェームズ・R・ウェッブ/サイ・バートレット/ロバート・ワイルダー●撮影:フランツ・F・プラナー●音楽:ジェローム・モロス●原作:ドナルド・ハミルトン●時間:166分●出演:グレゴリー・ペック/チャールトン・ヘストン/ジーン・シモンズ/キャロル・ベイカー/バール・アイヴス/チャールズ・ビックフォード/アルフォンソ・ベドヤ/チャック・コナーズ/チャック・ヘイワード/ドロシー・アダムズ●日本公開:1958/12●配給:松竹=ユナイテッド・アーチスツ●最初に観た場所(再見):北千住・シネマブルースタジオ(15-09-14)(評価:★★★★)

《読書MEMO》
●チャールトン・ヘストン 1958年出演作
Charlton Heston 1958 Touch of Evil poster .jpgCharlton Heston 1958  the big country.jpgCharlton Heston in 1958 "Touch of Evil" (「黒い罠」)& "The Big Country "(「大いなる西部」)

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