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リゾート感溢れるし、ラストはラストで楽しめたが、原作を超えるには至っていない。

地中海殺人事件  pannhu .jpg地中海殺人事件 1982 poster.jpg地中海殺人事件 DVD.jpg 地中海殺人事件-  Ustinov.jpg
地中海殺人事件 デジタル・リマスター版 [DVD]
映画パンフレット 「地中海殺人事件」監督 ガイ・ハミルトン 出演 ピーター・ユスチノフ」「【映画チラシ】地中海殺人事件 ガイ・ハミルトン ピーター・ユスティノフ [映画チラシ]
マギー・スミス/ロディ・マクドウォール/シルヴィア・マイルズ/ジェームズ・メイソン
地中海殺人事件- smith mcdowell mason.jpg ロンドンの保険会社で、ポアロ(ピーター・ユスティノフ)が模造宝石に保険をかけようとしたホレス・ブラット(コリン・ブレークリー)の調査を依頼される。ポアロは彼に会い、「結婚の約束をした女優のアリーナ・マーシャル(ダイアナ・リグ)に20万ドルの宝石を与えたが、彼女が他の男と結婚したので、宝石を取り戻したところ模造品だった」と聞かされる。当のアリーナはアドレア海の孤島のホテルで休暇を過ごす予定であり、ポアロもそこへ赴く。ホテルの女主人ダフネ(マギー・スミス)はタイラニア国王の元愛人で、手切れ金代りにこのホテルを貰ったのだった。アリーナとは昔一緒に舞台に出たことがあり、二人は再会すると互いに笑いながら嫌味を言い合う。アリーナが新夫ケネス・マーシャル(デニス・クイリー)、ケネスと前妻との間の子リンダ(エミリー・ホーン)と共に着いたホテルには、彼女を再び舞台に復帰させようというプロデューサーのオーデル・ガードナ地中海殺人事件 - balloon.jpgー(ジェームズ・メイソン)と妻の地中海殺人事件- roddy.jpgEvil Under the Sun (1982)_AL_.jpgマイラ(シルヴィア・マイルズ)、彼女の伝記を執筆したジャーナリストのレックス・ブルースター(ロディ・マクドウォール)が待っていたが、彼女は女優業への復帰も伝記の出版も拒否する。そして、ホテル客のハンサムなラテン語教師パトリック・レッドファン(ニコラス・クレイ)と大っ地中海殺人事件276.jpgぴらにいちゃつき、人々の非難の目を浴びる。アリーナのことでパトリックが妻クリスティン(ジェーン・バーキン)と喧嘩しているのを、多くの人が聞きつける。ある日、ホテルを一人で出たアリーナは、ホテルと反対側の海岸の浜辺で日光浴をしていた。パトリックとマイラがボ地中海殺人事件s.jpgートでその浜辺へ。パトリックが横になっている彼女の所へ行くと彼女の死を発見。マイラの知らせを受けたダフネの依頼でポワロが捜査にあたる。皆それぞれに犯行動機があったが、ポアロは死亡推定時刻の11時半から12時までの全員のアリバイ地中海殺人事件b6.jpgを訊くと、誰にとってもアリーナ殺害は不可能だった。リンダとクリスティンは死体発見現場とは反対側の海辺で海水浴とスケッチをしていたし、ケネスは部屋でタイプを打っていたし、レックスはボートで別の海上にいて、ダフニネは従業員とミーティングをし、窓からオーデルが庭で読書しているのを目撃していた。皆がホテルを去る日、ポワロは皆を集めて犯人を指摘する―。

白昼の悪魔  cb.jpg白昼の悪魔 (ハヤカワ・ミステリ文庫2.jpg 1982年公開の昨年['16年]亡くなったガイ・ハミルトン(1922-2016/享年93)による監督、ピーター・ユスティノフ(1921-2004/享年82)の主演作で、原作はクリスティが1941年に発表した『白昼の悪魔』であり、映画の原題も"Evil Under the Sun"。ピーター・ユスティノフにとっては、同じくポワロを演じたジョン・ギラーミン監督の「ナイル殺人事件」('78年)とマイケル・ウィナー監督の「死海殺人事件」('88年)の間の作品であり、ガイ・ハミルトンにとっては、ミス・マープル物の『鏡は横にひび割れて』が原作である「クリスタル殺人事件」('80年)に続くクリスティ原作作品の監督作です(因みにこの「地中海殺人事件」は、「ナイル殺人事件」とプロデューサー、脚本及びが同じであり、「クリスタル殺人事件」ともプロデューサをはじめ主要スタッフが同じである)。

地中海殺人事件 - smith mcdowell.jpg 原作の登場人物の内、ミリー・ブルースターが男性に変更され、レックス・ブルースター(ロディ・マクドウォール)になっているほか、ブルースターがパトリック・レッドファンと共にアリーナの遺体を発見する部分は、オーデル・ガードナーの妻マイラ(シルヴィア・マイルズ)にその役割を置き換えられています。更に、ケネス・マーシャルのことを心配する有名ドレスメーカーのロザモンド・ダーンリーは登場せず、その役割は一部、原作には無いホテルの女主人ダフネ(マギー・スミス)に置き換えられているといった感じです。
マギー・スミス/ロディ・マクドウォール

地中海殺人事件- sea.jpg 原作の舞台は英国内ですが、それをアドリア海にあるティラニア島(架空の島)に改変しています。実際のロケ地はスペインのマヨルカ島付近のドラゴネーラ島であり、美しい風景をバックにコール・ポーターの名曲が地中海殺人事件 - island real.jpg流れ、陽光に満ちたリゾート感、優雅な贅沢感が溢れる作品になっています。一方、一部登場人物の改変はあるものの、プロットはほぼ原作に沿っています(原作が精緻なプロットであるため、基本的には殆どいじりようがないのだが)。

ロケ地のスペイン・ドラゴネーラ島

 映画「ナイル殺人事件」の時もそうでしたが、最後ややバタバタバタっとポワロが謎解きしてしまう感じで、観る者に推理する暇をあまり与えていないような印象があり、こうした点はデビッド・スーシェ主演のドラマ版である「名探偵ポワロ(第48話)/白昼の悪魔」('01年)の方が丁寧で分かり易いかもしれません。

地中海殺人事件e4.jpg そのことを意識してか、最後にポワロが犯人だと名指して推理を展開した容疑者が、話としては面白いが証拠がどこにもないと反駁し、悠々とその場を立ち去ろうとするという映画オリジナルの場面があって、それに対してポワロがどう対処したかという独自の"捻り"が加えられています。イギリス映画であって、多くの観客がクリスティの原作の結末を知っているため、敢えてこうしたシークエンスを加えたのではないかとも思われ、また、「タワーリング・インフェルノ」('74年)などアクションアドベンチャー大作が得意のジョン・ギラーミン監督と、「007死ぬのは奴らだ」('73年)などスパイ物やサスペンス物を多く手掛けたガイ・ハミルトン監督の作風の違いの表れでもあるかもしれません。ラストはラストで楽しめましたが、やはり原作を超えるには至っていないように思います。

地中海殺人事件 - last.jpg地中海殺人事件 - rigg smoth.jpg アリーナ・マーシャルを演じたダイアナ・リグ(Diana Rigg)は、「女王陛下の007」('69年)のボンドガールで、娘のレイチェル・スターリング('77年生まれ)も女優であり、「名探偵ポワロ(第50話)/五匹の子豚」('03年)、「アガサ・クリスティー ミス・マープル(第2話)/牧師館の殺人」('04年)などに出演しています。

地中海殺人事件ジェーン・バーキン19.jpg地中海殺人事件a18.jpg パトリック・レッドファンの妻クリスティンを演じたジェーン・バーキン(Jane Birkin)は、「ジェーン・バーキン22.jpgナイル殺人事件」に続いての出演で、10代で既にミケランジェロ・アントニオーニ監督の「欲望」('66年/英・伊)などに出ていますが、エルメスのカゴバッグ"バーキン"誕生の契機となるエルメスの社長と航空機で乗り合わエルメスのバーキン.jpgジェーン・バーキン ファッション.jpgせたという出来事は'84年のこと。以降、女優業、歌手業をこなしながらカジュアル系のファッション・リーダーとしても今日まで活躍し続けていますが、この映画の頃はまだ"着せ替え人形"みたいな感じ。夫パトリック役のニコラス・クレイはシルビア・クリステル主演の「チャタレイ夫人の恋人」('81年/英・仏)で重要な役どころの森番役を演じるなどしましたが、残念ながら2000年に肝癌で亡くなっています。

ジェーン・バーキン

  
Evil Under the Sun (1982)
Evil Under the Sun (1982).jpg地中海殺人事件 - hercule swim.jpg「地中海殺人事件」●原題:EVIL UNDER THE SUN●制作年:1982年●制作国:イギリス●監督:ガイ・ハミルトン●製作:ジョン・ブラボーン/リチャード・グッドウィン●脚本:アンソニー・シェーファー/バリー・サンドラー●撮影:クリストファー・チャリス●音楽:コール・ポーター●原作:アガサ・クリスティ「白昼の悪魔」●時間:117分●出演:ピーター・ユスティノフ/コリン・ブレイクリー/ジェーン・バーキン/ニコラス・クレイ/マギー・スミス/ロディ・マクドウォール/ジェームズ・メイソン/ダイアナ・リグ/シルヴィア・マイルズ/デニス・クイリー/エミリー・ホーン●日本公開:1982/12●配給:東宝東和●最初に観た場所:有楽座(82-12-28)(評価★★★☆)
ナイル殺人事件」('78年)   「地中海殺人事件」('82年)   「死海殺人事件」('88年)
ナイル殺人事件 スチール2.jpg 地中海殺人事件 es.jpg 死海殺人事件 w.jpg
《読書MEMO》
●原作の評価                
・『ナイルに死す』......★★★★
・『白昼の悪魔』......★★★★
・『死との約束』......★★★★
●映画化作品の評価
・「ナイル殺人事件」......★★★☆
・「地中海殺人事件」......★★★☆
・「死海殺人事件」......★★★

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映画「死海殺人事件」の原作。映画は?だが、原作は本格推理として楽しめる。

死との約束 1957.jpg死との約束HM.jpg 死との約束1978(1988) .jpg 死との約束 クリスティ文庫.jpg 死海殺人事件2.jpg
ハヤカワ・ミステリ(1957)/『死との約束 (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-33)』/映画タイアップカバー/『死との約束 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)』/「MGM HollyWood Classics 死海殺人事件 [DVD]

 ポアロは中東エルサレムで休暇を過ごすが、同じく同地を訪れていたのが、世界的に有名な精神科医のテオドール・ジェラール博士、イギリスの国会議員ウエストホルム卿夫人、新米女医サラ・キング、米国人のボイントン一家らだった。ボイントン夫人は、長男のレノックスとその妻ネイディーン、次男のレイモンド、長女のキャロル、次女のジネブラの5人を従えていた。夫人はかつて刑務所で女看守として働き、偶然に大金持ちのボイントン氏と結婚し、夫が亡くなって未亡人となったが、我儘で個性が強く家族全員を拘束していた。子供達の意見や要求は殆ど無視され、いつまで経っても子供としか扱われない。ある日ジェラール博士、サラ、ウエストホルム卿夫人とその取り巻きのアマベル・ピアス、ネイディーン・ボイントンの友人のジェファーソン・コープらはペトラ遺跡の観光ツアーに参加するが、ペトラに着くとボイントン一家もそこにいた。翌日の昼食時、ボイントン夫人は子供たちに自由に散歩することを許すが、これは彼女にしては希有なことだった。ボイントンの子供たちとサラたちの一行は思い思いに遺跡に向かい、崖の上からの景色を堪能して各々帰路に着くが、ジェラール博士だけはマラリアを発病し先にキャンプに帰っていた。ボイントン夫人は暑さの中で、外に出した椅子に座って身動き一つしなかったが、やがて夕食時に夫人が現れないので召使が呼びに行くと、夫人は亡くなっていた。新米医師サラの見立てでは死亡時刻は発見の1時間以上前で、夫人の手首には注射針の跡があった。さらにジェラール博士の注射器がなくなっており、多量のジギタリスも消えていた―。

ナイルに死す2.jpg死との約束 英初版Collins 1938年 .jpg 1938年に刊行されたアガサ・クリスティのエルキュール・ポアロ・シリーズの第16作で(原題:Appointment with Death)、前年発表のポワロシリーズ『ナイルに死す』((原題:Death on the Nile))と同じく中東を舞台にした本格派推理小説です。前々年発表の『メソポタミヤの殺人』も中東・イラクが舞台でした。因みにクリスティは最初の夫アーチボルド・クリスティ大尉(彼は薬剤師の助手として勤務していたため、クリスティは彼から毒薬の知識を得たという)に裏切られて傷心旅行で訪れたメソポタミヤで14歳年下の考古学者マックス・マローワンと知り合って、彼と1930年に再婚、その後に続く"中東モノ"は、おそらく考古学者である夫の研究調査に随伴した経験が素地になっていると考えられます(但し、この作品には『メソポタミヤの殺人』のような考古学的モチーフは出てこない)。

英初版Collins 1938年

死海殺人事件_0.jpg 『ナイルに死す』はジョン・ギラーミン監督の映画「ナイル殺人事件」('78年/英)の原作として知られていますが、この作品が マイケル・ウィナー監督(「狼よさらば」「ロサンゼルス」)の映画「死海殺人事件」('88年/米)の原作であることはあまり知られていないかもしれません。そもそもエルサレムという異国の地を舞台にしながらも原作がやや地味ですが、ポワロが関係者一人一人に事情聴取していってロジックで犯人を突き止める過程は『オリエント急行の殺人』などにも通じるものがあり、本格推理としてはよく出来ていて、結構楽しめるように思います。

映画「死海殺人事件」チラシ

死海殺人事件w.jpg 映画「死海殺人事件」は、「ナイル殺人事件」やガイ・ハミルトン監督の「地中海殺人事件」('82年/英、原作はポアロ・シリーズ『白昼の悪魔』)に続いてピーター・ユスティノフがエルキュール・ポワロを演じていますが、ピーター・ユスティノフにとっては最後のポワロ役でした。また彼は、「地中海殺人事件」と「死海殺人事件」の間にTVドラマのミニシリーズで「名探偵ポワロ/エッジウェア卿殺人事件」('85年/英)など3本でポワロを演じています(「エッジウェア卿殺人事件」では'89年からTⅤ版「名探偵ポアロ」でポワロを演じることになるデヴィッド・スーシェがジャップ警部を演じている)。

死海殺人事件lt.jpg死海殺人事件es.jpg 原作では、ボイントン夫人は虐待に近いような子供達の扱いぶりで、しかも太った醜い女性として描かれていますが、映画では専制的ではあるものの、原作までは酷くないといった感じでしょうか。それでも、殺害された彼女は皆から嫌われていたわけで、遺産相続も絡んでいて(それが目眩ましにもなっているのだが)、登場人物全員が容疑者候補であるのは原作と同様です(殺人事件があって禁足令が出ているけれど、旅行自体は皆続けるのだろうなあ)。『オリエント急行の殺人』と同様、ポワロの聴き取りに対して誰かが(場合によっては複数が)虚偽を述べているわけであって、ある種"叙述トリック的であるわけですが、これを映像化するのは難しかったかもしれません。

死海殺人事件48.jpg死海殺人事件_.jpg 実際、映画を観ると、容疑者達の陳述が真実であろうと虚偽であろうと、その陳述に沿った映像化がされているため、途中からある程度そのことを含み置いて観ていないと、無かったことを映像化するのは《掟破り》ではないか(フランソワ・トリュフォーなどはアルフレッド ヒッチコックへのインタビュー『映画術』でそう言っている)ということになります。まあ、原作でも映画でも、初めてで犯人が判ればなかなかのものだと思いますが、映画を観て改めて新米医師であるサラの死亡推定時刻の見立ては正しかったのだなあと再確認しました。ピーター・ユスティノフがポワロを演じてきた映画は、この作品で英国から米国のB級映画会社に製作が移った死海殺人事件(1988年5.jpgものの(この会社は後に倒産する)、ユスティノフの演技自体は悪くないし(「ナイル殺人事件」「地中海殺人事件」に続いてこの映画も"旅行もの"であるため違和感が無い)、ローレン・バコールのキツイ顔もいいけれど死との約束 powaro .jpg(初めて観た時はさすがに老けたなあと思ったが、彼女が亡くなったのは2014年でこの作品の26年後89歳で亡くなっている)、やはり、「起きなかったことを映像化している」点がちょっと引っ掛かりました(他に何かいい手があるわけではないが)。デヴィッド・スーシェ版「名探偵ポワロ(第61話)/死との約束」('09年/英)ではその辺りはどう描かれていたでしょうか。
「名探偵ポワロ(第61話)/死との約束」 (09年/英) (2010/09 NHK‐BS2) ★★★☆

Appointment with Death (1988)
Appointment with Death (1988).jpg死海殺人事件ド.jpg「死海殺人事件」●原題:APPOINTMENT WITH DEATH●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督・製作:マイケル・ウィナー●脚本:アンソニー・シェーファー/ピー死海殺人事件ges.jpgター・バックマン/マイケル・ウィナー●撮影:デヴィッド・ガーフィンケル●音楽:ピノ・ドナッジオ●原作:アガサ・クリスティ「死との約束」●時間:103分●出演:ピーター・ユスティノフ/ローレン・バコール/キャリー・フィッシャー/ジョン・ギールグッド/パイパー・ローリー/ヘイリー・ミルズ/ジェニー・シーグローヴ/デビッド・ソウル/アンバー・ベゼール/マ死海殺人事件12.jpg死海殺人事件16.jpgイケル・グレイブ/ニコラス・ゲスト/ジョン・ターレスキー/マイク・サーン●日本公開:1988/05●配給:日本ヘラルド映画(評価★★★)

David SOUL - Appointment with death (1988)

【1957年新書化[ハヤカワ・ポケットミステリ(高橋豊:訳)/1978年文庫化[ハヤカワ・ミステリ文庫(高橋豊:訳)]/2004年再文庫化[ハヤカワ・クリスティー文庫(高橋豊:訳)]】

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同じ屋根の下に夫が2人。劉暁慶、姜文らの演技力と凌子風の演出力が光る。

春桃 中文版.jpg春桃(1988) vhs  劉暁慶 姜文1.jpg 劉暁慶(1950-)61歳時.jpg  凌子風.jpg 
春桃【字幕版】 [VHS]」 劉暁慶(リウ・シャオチン、1950-)[61歳]/凌子風(リン・ツーフォン、1917-1999)

春桃01.jpg 1930年代の北京の街角。春桃(チュンタオ)(劉暁慶〈リウ・シャオチン〉)は毎日、大きな籠を背負って屑拾いに精を出していた。家では、売り物の絵を整理しながら、劉向高(リウ・シアンカオ)(姜文〈チアン・ウェン〉)が彼女の帰りを待っていた。春桃は、匪族に追われ、新婚の夫と離れ離れになって逃げてきたのだ。春桃と向高は愛し合っていたが、彼女は向高が妻と呼ぶことは許さなかった。3年後のある日、籠をChun Tao(1989).jpg背負って春桃が市場の前で、軍服を着た両足のない乞食男に呼び止められる。それは、婚礼の夜に生き別れとなった春桃の夫・李茂(リー・マオ)(曹前明〈ツァオ・チェンミン〉)だった。彼女は李茂を我が家に連れて帰り、戸惑う2人の"夫"に対し、"3人で生きていこう"と励まし慰めるのだが、この生活では当然様々な問題が噴出し、その結果、向高は家出をし、李茂は自殺を図る―。

Chun Tao(1989)

春桃04.jpg 昔の北京の下層の人々の暮らしを描くことにこだわった凌子風(リン・ツーフォン、1917-1999)監督の1988年作品で(英:A WOMAN FOR TWO)、主演の劉暁慶(リウ・シャオチン)と姜文(チアン・ウェン)は、謝晋(シエ・チン)監督の「芙蓉鎮」('86年)でも名コンビぶりを見せたほか、姜文は張姜文2.jpg藝謀(チャン・イーモウ)監督の「紅いコーリャン」('87年)での主演、劉暁慶は李翰祥(リー・ハンシャン)監督の「西太后」('84年)での主演でも知られます。因みに、劉暁慶は中国国内における最高レベルの国家第一級演員に認定されていますが、2002年に脱税容疑で逮捕され当局に日本円にして1億5000万円支払ったという過去があり、一方の姜文は、1994年に監督業に進出し、太平洋戦争中の中国の農村を舞台に村人と日本人兵士の触れ合いや過酷な運命を描いた作品「鬼が来た」('00年)でカンヌ国際映画祭のグランプリを受賞、しかしながら、当局の検閲を受けない無断出品であったことと、その後出された修正要求にも応じなかったことで、この作品は中国国内で上映禁止になった上、自身も7年間にわたる映画製作・出演禁止処分を受けたという、そんな経歴の持ち主です。

春桃 1988 o1.jpg春桃03.jpg このように、後にそれぞれかなり違った道を辿る女優と男優ですが、この作品での演技の息はぴったり合っていて、家事や仕事をしながらの淀みない流れるような掛け合いは見事です。とりわけ、2人の男たちを引っ張っていく春桃を演じる劉暁慶(リウ・シャオチン)の演技は上手いです。この作品での彼女は、後に"整形美人"とまで噂されるようになった美人スター・イメージでは無く、ちょうど鞏俐(コン・リー)が「紅いコーリャン」でデビューしたばかりの時のような素朴な逞しさと内面から来る輝きがあります。

春桃 1988 00.jpg ストーリーの方は、同じ家での女1人男2人の生活が始まるわけですが、何しろ1930年代の中国の話なので、周囲の覗き趣味的な関心や嘲りは尋常ではないものがあり、これに対し春桃ではなく男2人の方が参ってしまいます(2人ともいい人なんだけどねえ)。男2人も真剣に先のことを考えるのですが、相手を思い遣りながら且つメンツにもこだわってしまうため(相手のメンツにまで思い遣ってしまう)、結果、自己犠牲の精神と言えば美しいのかもしれませんが、実質的にはどんどんネガティブ思考になっていきます。

春桃(チュンタオ)02.jpg春桃(チュンタオ)01.jpg この辺りの、世間の目を気にせず、目の前のことだけを考えて生きている、それでいて、世間を恨むわけでもなく、困っている隣人を助けたりもする春桃の生き方と、既成の観念に囚われ、陋習的規範から抜け出せない男たちの対比が、この作品の見処ではないでしょうか。ラストに至るプロセスは重いですが、随所にユーモアも散りばめられていて、娯楽性も備えた作品であると言えます。そうしたこの作品の魅力の多くは、劉暁慶、姜文らの演技力と凌子風の演出力に支えられているのでしょう。

 最後に、「電影時報」に掲載された羅雪蛍(映画評論家)の「『春桃』について」より一部抜粋―
凌子風のキャスティングと演技への把握の確実な腕前は、中国映画界では良く知られているが、彼は俳優の才能と厳粛なる創作態度に非常な賞賛を送る。劉暁慶が10本の指の爪を真っ黒なほこりまみれにし、化粧もせず眉を描くこともせず、はじめから終わりまで白黒二通りの夷小で一言の文句を言わなかった事を賞賛する。姜文が聡明な上努力家で、全てのシ-ンの芝居を彼自身が創造した上、北京っぽい台詞まわしに非常な才能があったと賞賛する。俳優との協力関係がこのような暗黙の信頼にまで達しているのは、おそらく凌子風の、相手の身になって思いやる気配りの結果によるものだろう。

春桃02.jpg「春桃(チュンタオ)」●原題:春桃/A WOMAN FOR TWO●制作年:1988年●制作国:中国・香港●監督:凌子風(リン・ツーフォン)●脚本:韓蘭芳(シュイ・ティーシャン)●撮影:梁子勇(リャン・ツーヨン)●音楽:瞿希賢(チュイ・シーシエン)●原作:許地山●時間:94分●出演:劉暁慶(リウ・シャオチン)/姜文(チアン・ウェン)/曹前明(ツァオ・チェンミン)/馮漢元(フォン・ハンユアン)●日本公開:1994/12●配給:TJC東光徳間(評価:★★★★)

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やはりクライマックスは船の山越えか。文化人類学的な視点の入った映画だったかも。

フィツカラルド dvd.jpgフィツカラルド 山越え.jpg フィツカラルド 2.png
フィツカラルド [DVD]」 クラウス・キンスキー/クラウディア・カルディナーレ

フィツカラルド01.jpg 19世紀末のブラジル・マナウスのオペラハウス。オペラ歌手エンリコ・カルーソの公演を聴こうとペルー・イキトスからボートを漕いで来たフィツカラルド(クラウス・キンスキー)とモリー(クラウディア・カルディナーレ)。会場にもぐり込んだフィッカラルドは、カルーソのテノールに聞き入る。アイルランド出身の彼の本名はブラ『フィツカラルド』(1982).jpgイアン・スウィーニー・フィツジェラルドだが、インディオたちは彼をフィツカラルドと呼ぶ。今は製氷業だが、かつてアンデスに鉄道を敷設しようとして破産した経歴の持主で、白人らは彼を奇人とみなしていたが、娼家経営の愛人モリーは良き理解者であり、インディオの子らも彼を慕う。彼はイキトスにオペラ・ハウスを建てようと決意するが、それには莫大な資金が必要で、ゴム成金たちには相手にされない。そこで彼は、自らがジャングルを切り拓いてゴム園を作ることを計画、モリーが出してくれた金で成金の一人ドン・アキリノ(ホセ・レーゴイ)から中古の蒸気船フィツカラルド tikuonnki.jpgを買い、パウル船長(ポール・ヒッチャー)、料理人ウェレケケ(ウェレケケ・エンリケ・ボホルケス)、機関士チョロ(ミゲル・アンヘル・フェンテス)らを雇う。"モリー号"と命名された船は修理を終えてアマゾン川に船出、彼のゴム園用地は流れの激しい"ボンゴの瀬"のあるウカヤリ川上流にあったため、彼はフィツカラルド 02.png船をパテリア川に進める。途中、中断された鉄道駅に寄り、レールを外して船に積み込む。船が進んで首刈り族の土地に入ると、乗組員らの多くは逃亡してしまう。フィツカラルドは操舵室の屋根上に蓄音機を置いてレコードをかけ、密林にオペラが流れるとインディオたちが姿を現わす。彼らは続々と船に乗り込んで来フィツカラルド 01.jpgるが、フィツカラルド一行に手を出さない。フィツカラルドは、パテリア川とウカヤリ川が最も接近したところで、船を川から揚げて山越えしてウカヤリ川に降ろすという計画をインディオに伝えると、酋長(D・P・エスピノサ)は協力するという。目的地に着いてレールを降ろし、ジャングルを切り拓き、滑車で船を引っぱり揚げる。7ヵ月後、遂に船はウカヤリ川に浮かぶ。祝杯に酔ったフィツカラルドらが寝ている隙に、インディオたちは船を激流に放つ。彼らは激流の荒ぶる魂を静める儀式として協力したのだった。フィッカラルドらを乗せたモリー号は、木の葉の如く激流を流されていく―。

フィツカラルド 00.jpg ヴェルナー・ヘルツォーク監督による1982年作品で、完成まで4年半を要し、苛酷なロケのためスターが次々と降板していった末にフィツカラルドの役をクラウス・キンスキーが得たことは知られていますが、結果として、オペラハウス建設への情熱に憑かれたフィツカラルドを演じたクラウス・キンスキーはハマリ役でした(思えば彼は、同監督の「アギーレ/神の怒り」('72年)で既に、エル・ドラドへの夢に憑かれアマゾン川を遡行するピサロの分遣隊の副隊長を演じていたのだが)。

 結局フィツカラルドは何とかイキトス(1900年代始めにゴムブームが起き、街はゴム産業で知られていた)に帰り着くが、彼の計画自体は水泡に帰し、彼はモリー号をドン・アキリノに売り、その金でオペラ一座を雇って一度だけの船上オペラを上演する―。

フィツカラルド ラスト.jpg ラストの、数日後には自分の所有から離れるモリー号の船上で、オペラを聴きながらフィツカラルドが見せる陶酔と誇りと狂気が入り交ざった表情はなかなかですが(ヘルツォーク作品の中ではかなり爽やかなエンディング?)、この映画のクライマックスはやはり、この映画を観たことがない人でもビデオやCDのジャケットでその場面は知っていると思われる、例の蒸気船の山越えでしょう。

フィツカラルド yamage2.jpg ヘルツォーク監督、ホントに船を山越えさせてしまったなあという感じで、実写でここまでやるというのは当時でもスゴイと思いましたが(完璧主義者だったE.Ⅴ.シュトロンハイムの系譜か)、CG全盛の今ではもうこんな撮影はあり得ないか。"ボンゴの瀬"に船が突っ込むシーンはさすがにミニチュアを使っていますが、これまで本チャンでやったらそれこそ死者が出ていたかもしれません。「山越え」でスペクタクル的には充分満足でした(アマゾン支流をゆっくり遡上するシーンも含め、劇場で観たい作品ではある)。

フィツカラルド03.jpg アギーレと同様フィッツカラルドも実在の人物に改変を加えて描いてるようですが、最初観た時は肉食系人種の凄まじい執念のようなものを感じました。また、異文化の出会いの物語でもあったなあと。最初は、西洋人の自らの文化への自信のようなものを感じましたが(「オペラで未開の地を啓蒙してやる」みたいな)、最近観直してみて、ラストの方でフィツカラルドが、初めてナイヤガラ瀑布を見つけた西洋人の言葉をぼそっと語る場面があったことに気づき、ああ、自分のことをなぞらえていたのだなあと。つまり、人に語っても信じてもらえないような不思議な体験をしたということであり、そこに彼の異文化への畏敬のようなものを感じました。結構、文化人類学的な視点の入った映画だったかもしれません。

Fitsukararudo(1982)
Fitsukararudo(1982).jpg
フィツカラルド      .jpg「フィツカラルド」●原題:FITZCARRALDO●制作年:1982年●制作国:西ドイツ●監督・脚本:ヴェルナー・ヘルツォーク●製作:ヴェルナー・ヘルツォーク/ルッキ・シュティペティック●撮影:トーマス・マウホ●音楽:ポポル・ヴー●時間:158分●出演:クラウス・キンスキー/クラウディア・カルディナーレ/ホセ・レーゴイ/ポール・ヒッチャー/フィツカラルド c.カルディナーレ.jpgウェレケケ・エンリケ・ボホルケス/ミゲル・アンヘル・フェンテス/グランデ・オセFITZCARRALDO Claudia Cardinale.jpgロ/ペーター・ベルリング/デイヴィッド・ペレス・エスピノサ/パウル・ヒットシェル●日本公開:1983/07●配給:大映インターナショナル●最初に観た場所:東急名画座(83-04-16)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ(15-06-23)(評価:★★★★)
Claudia Cardinale in FITZCARRALDO
FITZCARRALDO Claudia Cardinale2.jpg

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五月革命に翻弄される田舎のブルジョワたちの人間模様。フランスの田舎を美しく撮っている。

五月のミル dvd.jpg 五月のミル MILOU EN MAI DVD.jpg 五月のミル ピクニック.jpg  美しき諍い女 _.jpg
「五月のミル」[DVD]「五月のミル【HDニューマスター版】 [DVD]」ミシェル・ピコリ主演「美しき諍い女 無修正版 [HDリマスター版] Blu-ray
五月のミル 母の死.jpg 1968年5月のパリ五月革命の最中、南五月のミル 0.jpg仏ジェール県の当主ヴューザック家夫人(ポーレット・デュボー)が突然の発作で死ぬ。長男のミル(ミシェル・ピコリ)は彼女の死を兄弟や娘たちに伝えようとするがストで電話が繋がらない。ようやく駆け付けたミルの娘カミーユ(ミュウミュウ)と五月のミル ザリガニ.jpgフランソワーズたち3人の子、姪のクレール(ドミニク・ブラン)とそのレズビアン友達マリー=ロール(ロゼン・ル・タレク)、弟のジョルジュ(ミシェル・デュショーソワ)と彼の後妻リリー(ハリエット・ウォルター)たちの話題は革命と遺産分配のことばかり。立派な邸宅を売ったらゴルフ場にもできるというカミーユとジョルジュにミルは怒りを爆発させ、小川へザリガニ捕りに行く。カミーユと幼馴染みの公証人ダニエル(フランソワ・ベルレアン)の読みあげる夫人の遺書の中に、小間使いのアデル(マルティーヌ・ゴーティエ)が相続人に含まれていると知って一同は驚くが、気のあるミルだけは喜ぶ。パリで学生運動に参加しているジョルジュの息子ピエール五月のミル milou-en-mai.jpg=アラン(ルノー・ダネール)が共産党嫌いのグリマルディ(ブルーノ・カレット)のトラックに乗せてもらって屋敷に現われる。翌日、革命の影響で葬儀屋までがストをする。ミルたちは遺体を庭に埋めることにし、葬式を一日延期し、ピクニックに興じる。その夜、屋敷に現われた村の工場主夫妻から、ド・ゴール大統領が姿を消していて、ブルジョワは殺されると知らされた一同は、森の洞窟へと逃げる。疲労と空腹で一夜を過ごした彼らのもとにアデルがやって来て、ストが終ったことを知らせる。いつしか彼らの心の中には、屋敷を売る考えはなくなっていた。無事に葬儀は終わり、人々も帰るべき場所へと帰って行き、屋敷には再びミルだけが残される―。

田舎の日曜日 1984 dvd.jpgお葬式 映画 dvd.jpg ルイ・マル監督の1989年作品(公開は1990年)。ミルが住む美しい田舎へ娘や孫たちがやって来てまた慌ただしく去っていくという設定は、ベルトラン・タヴェルニエ監督の「田舎の日曜日」('84年/仏)を想起させますが、ストのため埋葬できない遺体を差し置いて、遺産相続の話で親族同士が揉め、更に、久しぶりに、或いは新たに出会った男女が急速に接近するなどといった色恋も交えた展開は、伊丹十三監督の「お葬式」('84年/ATG)に近いかも。

田舎の日曜日[デジタルリマスター版] [DVD]」「伊丹十三DVDコレクション お葬式

五月のミル3.jpg ブルジョワ階級出身のルイ・マル監督が五月革命に翻弄されるブルジョワを風刺と皮肉を込めて描いた作品ととれますが、アイロニカルな部分がことさらに強調されているわけではなく、その点において自然であるとともにやや中途半端か。むしろ、政治的なことは抜きにして、単純に集団劇として見た場合に結構面白いのではないでしょうか(ルイ・マルの頭にはアントン・チェーホフの『桜の園』があったという。また、ジャン・ルノワールの「ゲームの規則」的な作りをも意識しているらしい)。

五月のミル pikori.jpg ミルは母親の死に一度慟哭しますが、その後は親族たちのドタバタに振り回され、そうした中で弟の後妻リリーと急速に接近(それまでも小間使いのアデルと恋人関係にあったようだが)、娘のカミーユは幼馴染みの公証人のダニエルとの関係が再燃したようで、レズビアンだったはずのマリー=ロールはピエール=アランと親密になり、それに対抗するようにクレールもトラック運転手のグリマルディと親しくなります(何だか、親戚と他人が入り混じった乱交状態みたいになってくるね)。

五月のミル ピクニック2.jpg こうした人同士の関係の化学変化が、ミルの突然思い立ったザリガニ捕りや(これも相続争い対する嫌気から逃れたい気持ちからの行動だと思うが)、関係者総出でのピクニックを通して描かれ、美しい自然の中で人々の気持ちが解放され、行動が大胆になっていく一方、屋敷を売ってどうのこうのといった考えは消えていき、また、それは同時に、屋敷を売りたくないミルの思惑に沿ったものになっているというのは、観ていてまずますスムーズな流れです。

五月のミル rasuto.jpg しかし、ミル自身は、屋敷は売らずに済んだものの、最後は小間使い兼恋人のアデルにも婚約者がいて彼女も去っていくという目に遭います(意外としたたかな女性だった)。リリーも去ってアデルも去り、残されたミルは、もう誰もいない屋敷で亡き母の幻影とダンスを踊る―ミルの老境の孤独を感じさせるエンディングで、初黒澤明が選んだ100本の映画 (文春新書).jpg黒澤明         .jpgめ「田舎の日曜日」→中ほど「お葬式」→ラスト再び「田舎の日曜日」といった感じの作品ですが、「田舎の日曜日」同様にフランスの田舎を美しく撮っている作品でもあります。黒澤明(1910-1998)監督の娘である黒澤和子氏によれば、黒澤明が生前評価していた作品でもあるようです(黒澤和子『黒澤明が選んだ100本の映画』('14年/文春新書))。

 この作品、オリジナルタイトルは Milou en mai(「5月のミル」) だけれども、英文タイトルだと May Fools(「5月の愚か者たち」) になっているなあ。

                               ミシェル・ピコリ/エマニュエル・ベアール
美しき諍い女 poster .jpgジャック・リヴェット.jpg美しい諍い女4.jpg ミシェル・ピコリ(1925年生まれ)は「最後の晩餐」('73年/伊・仏)や「自由の幻想」('74年/仏)にも出ていた俳優ですが、この映画の翌年、今年['16年]1月に亡くなったジャック・リヴェット(1928-2016/享年87)監督(この人もヌーヴェルヴァーグの中心的人物である)の「美しき諍い女(いさかいめ)」('91年)に出演しています。高名であるが世捨て人の画美しい諍い女05.jpg家(ミシェル・ピコリ)が、もともとモデルだった妻(ジェーン・バーキン)とプロヴァンスの片田舎にある古城で静かに暮らしているところへ、一人の若い画家が恋人(エマニュエル・ベアール)を連れて彼のもとを訪れると、画家は彼女をモデルにする事で、自分が長い間打ち捨てていた作品「美しき諍い女」の制作を再開する気になるというもので、ノーカット版は3時間57分ですが、当時['93年]ビデオ版(1時間31分)で観てしまいました(リヴェットが別撮りのフィルムでテレビ用にシーンを変更した2時間5分の別バージョン「美しき諍い女ディヴェルティメント」が1993年に劇場公開されているが、現在は約4時間のオリジナル完全版がDVD・Blu-ray化されている)。作中を通じて、エマニュエル・ベアールはほとんど美しい諍い女03.jpg知られざる傑作.JPG全裸で、「ワイセツか芸術か」の物議をかもした問題作ですが、カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞しています。個人的には、画家のアトリエのある古城の別荘がヨーロッパ的でいい感じでした(ウラヤマシイ)。原作はバルザックの短編「知られざる傑作」であり(岩波文庫『知られざる傑作 他五編』に所収。帯に結末が書いてあることから窺えるように、あくまでも文学作品である)、手元の文庫版があるので、それを読んだ上でまた観直してみたいと思います(文庫で50ページ足らずの作品を4時間の映画にしてしまうなんてスゴイね。当時観た時の評価は★★★★)。
バルザック「知られざる傑作―他5篇 (1948年) (岩波文庫)

五月のミル  .jpg五月のミル シネヴィヴァン 1990.jpgMay Fools (1990).jpg「五月のミル」●原題:MILOU EN MAI●制作年:1989年(公開年:1990年)●制作国:フランス・イタリア●監督:ルイ・マル●製作:ルイ・マル/ヴィン・セントマル●脚五月のミル 06.jpg本:ジャン=クロード・カリエール●撮影:レナート・ベルタ●音楽:ステファン・グラッペリ●時間:107分●出演:ミュウミュウ/ミシェル•ピコリ/ミシェル・デュショーソワ/ブルーノ•カレット/ポーレット・デュボー/ハリエット•ウォルター/マルティーヌ•ゴーティエ/ドミニク・ブラン/ロゼン・ル・タレク/フランソワ・ベルレアン/ルノー・ダネール●日本公開:1990/08●配給:シネセゾン●最初に観た場所:シネヴィヴァン六本木(90-10-10)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ(15-04-18)(評価:★★★☆)

美しき諍い女 デジタル・リマスター版(2枚組).jpgミシェル・ピコリ/ジェーン・バーキン  「美しき諍い女(いさかいめ)」●原美しき諍い女  ジェーン・バーキン.jpg題:LA BELLE NOISEUSE●制作年:1991年●制作国:フランス●監督:ジャック・リヴェット●製作:マルティーヌ・マリニャック●脚本:パスカル・ポニツェール/クリスティーヌ・ロラン/ジャック・リヴェット●撮影:ウィリアム・リュプチャンスキー●音楽:イゴール・ストラヴィンスキー●時間:107分●出演:ミシェル・ピコリ/ジェーン・バーキン/エマニュエル・ベアール/マリアンヌ・ドニクール/ダヴィッド・バースタイン/ジル・アルボナ/マリー・ベリュック/マリー=クロード・ロジェ●日本公開:1992/05●配給:コムストック(評価:★★★★) 
美しき諍い女 デジタル・リマスター版(2枚組) [DVD]

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当時としては新鮮だったハリソン・フォードの役作り。

フランティック ちらし.jpgフランティック dvd.jpgフランティック [DVD]「フランティック」1988年5.jpg
映画チラシ 「フランティック」監督 ロマン・ポランスキー 出演 ハリソン・フォード

フランティック05.jpg 米国人外科医リチャード・ウォーカー(ハリソン・フォード)は、学会で講演するために妻サンドラ(ベティ・バックリー)と共にパリを訪れていた。新婚旅行以来のパリに心を弾ませていた彼だったが、ホテルにチェックインした後、「フランティック」1988年 4.jpgスーツケースが空港で誰かのものと取り違えてしまったことに気づく。明日にでも取り替えてもらうよう妻に言ってシャワーを浴びるが、その間に妻はホテルの部屋から忽然と姿を消してしまう。幾つかの関係先に問い合わせるも本気で取り合ってもらえず、逆に妻の浮気を疑われるという不本意な状況の中、ある目撃情報から妻の装身具を路上で発見、彼は妻は誘拐されたと確信し単身で捜索に乗り出す―。

Frantic 1988.jpg ロマン・ポランスキー監督(左写真)の1988年作品で、タイトルの「フランティック」(frantic)とは、「気が狂ったような」という意味であり、妻の誘拐事件にパニックになる主人公の姿を指しています。ハリソン・フォードはプライベートで妊娠中の当時の妻メッリサ・マシスンとパリ旅行に行った際にポランスキー監督と出会い、その時にこの作品の企画を打ち明けられ、異郷のパリで主人公の心情に近い立場だったこともあって喜んで出演をOKしたという裏話があります。

「フランティック」1988年 ミシェル.jpg 主人公が誤って持ち帰ったスーツケースは、運び屋の女ミシェル(エマニュエル・セニエ)が米国から持ち込んだ核兵器の起爆装置が隠されたもので、彼女に行き着いた主人公は、その起爆装置の争奪に躍起になるアラブ人グループとそれを阻止せんとするイスラエル側の攻防の中、ミシェルを救ったりしながら自らも妻の捜索にあたる―。

フランティック07.jpg この映画は、公開時に結構評価が割れたような気がします。ロマン・ポランスキーにしてはクセが無いオーソドックスなサスペンスですが、ストレートにサスペンスとして見「フランティック」1988年 Hフォード.jpgるとやや盛り上がりに欠け、ヒッチコック作品ほどの完成度にも至っていないといのがマイナス評価の理由でしょうか。大掛かりな仕掛けが出てこないこともあって、TVのミステリードラマを見ているような印象もあります。しかしながら、パリの街の雰囲気を自らがエトランゼになった気分で味わえ、ハリソン・フォードの好演もあって、個人的評価としては「○」です。特にハリソン・フォードが、主人公の医師が不測の事態にキリキリ舞いさせられる様を見事に演じていたように思います。

Frantic 1988 06.jpg ハリソン・フォードは当時、「インディ・ジョーンズ」シリーズからのイメージ・チェンジを図っており、既に「刑事ジョン・ブック 目撃者」('85年)といったサスペンスに出演したりもしていましたが、やはり、この「フランティック」が1つエポックになったのではないかと思われます。後の主演作品で、愛人殺害容疑をかけられた地方検事補ラスティ・サビッチを演じたスコット・トゥロー原作の「推定無罪」('90年)や、妻殺害容疑をかけられた医師チャード・キンブルを演じた「推定無罪」「逃亡者」「目撃者」.jpg古典的TVシリーズのリメイク「逃亡者」('93年)といった作品におけるキャラクター造型は、この「フランティック」の時の役作りがベースになっているように思います。「推定無罪」や「逃亡者」におけるハリソン・フォードの演技を知った上でこの作品における彼の演技に接すると、そう目新しい感じではないかも知れないけれど、リアルタイムで初めてこの作品を観た時の彼の演技は新鮮に映ったものでした(役者が自身の新境地を開拓した作品というのはやはり注目に値する)。

「フランティック」1988年.jpg「フランティック」●原題:FRANTIC●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:ロマン・ポランスキー●製作:ティム・ハンプトン/トム・マウント●脚本:ロマン・ポランスキー/ジェラール・ブラッシュ/ロバート・タウン/ジェフ・グロスン●撮影:ヴィトルド・ソボチンスキ●音楽:エンニオ・モリコーネ●時間:120分●出演:ハリソン・フォード/エマニュエル・セニエ/ベティ・バックリー/ジョン・マホーニー/ジミー・レイ・ウィークス/ジェラール・クライン/パトリス・メレネク/イヴ・レニエ/リシャール・デュー/ドミニク・ピノン/ジャック・シロン//パトリック・フラールシェン/新宿ミラノ座内2.jpg新宿ミラノ座 1959.jpgマルセル・ブリュワル/デヴィッド・ハドルストン/アレクサンドラ・スチュワート/トーマス・M・ポラード/アルトゥ・ドゥ・ペンゲルン●日本公開:1988/07●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場ミラノ座 1983年.jpg新宿ミラノ.jpg新宿ミラノ座 内部.jpg所:新宿ミラノ座(88-07-10)(評価:★★★★) [上写真:「新宿ミラノ座」オープン当初 (1959年)]
新宿ミラノ座 1956年12月、歌舞伎町「東急文化会館(後に「東急ミラノビル」)」1Fにオープン(1,288席)、2006年6月1日~「新宿ミラノ1」(1,064席)2014(平成26)年12月31日閉館。

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大味な政治物の典型(第18話)。話が見えにくい部分とミエミエ部分が混在(第19話)。

名探偵ポワロ[完全版]Vol.10.jpgポワロ(第18話)/誘拐された総理大臣 title.png 名探偵ポワロDVDコレクション 42号 (首相誘拐事件).jpg 名探偵ポワロDVDコレクション 43号 (西洋の星の盗難事件).jpg
名探偵ポワロ[完全版]Vol.10 [DVD]」(「誘拐された総理大臣」「西洋の星の盗難事件」所収)「名探偵ポワロDVDコレクション 42号 (首相誘拐事件) [分冊百科] (DVD付)」「名探偵ポワロDVDコレクション 43号 (西洋の星の盗難事件) [分冊百科] (DVD付)

ポワロ(第18話)/誘拐された総理大臣 01.png 何者かによる英国首相の襲撃事件があったが、首相は顔にかすり傷を負ったのみで難を逃れ、国際連盟の会議に出席するべく渡仏する。関係者がほっと安堵した矢先に今度は首相誘拐の報が入り、国家機密問題として外務省のサー・バーナードからジャップ警部の推薦を介してポワロに捜査要請が下る。会議までに残された時間は32時間と15分。差し迫った状況にも関わらず、ポワロは渡仏前の首相の英国での襲撃事件ばかりを調べて、一向にフランスへ渡る気配を見せない―(第18話「誘拐された総理大臣」)。

ポワロ(第18話)/誘拐された総理大臣3.png 「名探偵ポワロ」の第18話(第2シーズン第8話)で本国放映は1990年2月25日、本邦初放映は1991年2月26日(NHK)。原作はクリスティー文庫『ポアロ登場』(「首相誘拐事件」)、創元推理文庫『ポワロの事件簿1』(「誘拐された総理大臣」)、新潮文庫『クリスティ短編集2』(「首相誘拐事件」)などに所収などに所収。

ポワロ(第18話)/誘拐された総理大臣0.png ポワロはフランスで首相と共に襲撃されたというダニエルズ中佐が英国に帰って来ているというので会いに行きます(事件当時の運転手にも会いに行くがこちらは行方不明に)。なかなか渡仏しないポワロに対しサー・バーナードは苛立ちを露わにし(原作と異なり最後まで渡仏しない)、「(ポワロを推薦した)私の年金もパアかも」と嘆くジャップ警部に、ポワロは以前に中佐と派手に離婚争議をやったという元妻イモジャン(ミス・レモン、ここでもゴシップ通を発揮)のことを調べるよう依頼します。

名探偵ポワロ(第18話)/誘拐された総理大臣2967.jpg この辺りから何となく読めてしまう感じもします。ポワロ・シリーズで政治や外交を扱ったものは大味になりがちだという典型例かも(警察だけでなく軍隊まで登場)。分かり易く映像化されていますが、その分、替え玉工作の"無理さ加減"などが露呈した印象も。

 ジョーン・ヒクソン版「ミス・マープル」シリーズのスラック警部役のデヴィット・ホロヴィッチが、ダニエル中佐役で登場していますが、撮影時期は「第11話/魔術の殺人」('91年)の少し前でしょうか。生憎、ダニエル中佐の元妻役のリサ・ハーロウの方がキャラが立っていて(「主任警部モース(第13話)/ラドフォード家の遺産」('90年)にも出ていた)、その存在感はイマイチでしたが。


名探偵ポワロ(第19話)/西洋の星の盗難事件01.png名探偵ポワロ(第19話)/西洋の星の盗難事件 1.jpg名探偵ポワロ(第19話)/西洋の星の盗難事件 2.jpg ベルギー出身の国際的映画スター、マリー・マーベルのもとに、満月の晩にダイヤ"西洋の星"を盗むという脅迫状が届いた。西洋の星には対になる宝石があり、それはレディー・ヤードリーの持つ"東洋の星"と呼ばれるダイヤだという。そして、ヤードリー家にも脅迫状が届いているらしい。レディー・ヤードリーがポワロとヘイスティングスにその宝石を披露した直後、"東洋の星"は盗まれてしまい、やがて"西洋の星"もマリー・マーベルも元から消えてしまう―(第19話「西洋の星の盗難事件」)。

名探偵ポワロ(第19話)/西洋の星の盗難事件 4.jpg名探偵ポワロ(第19話)/西洋の星の盗難事件 3.jpg 「名探偵ポワロ」の第19話(第2シーズン第9話)で本国放映は1990年3月4日、本邦初放映は1991年6月29日(NHK)。原作はクリスティー文庫『ポアロ登場』(「〈西洋の星〉盗難事件」)、創元推理文庫『ポワロの事件簿1』(「西洋の星の事件」)などに所収などに所収。
名探偵ポワロ(第19話)/西洋の星の盗難事件 location.jpg
名探偵ポワロ(第19話)/西洋の星の盗難事件 5.jpg いかにも悪そうな奴らの間に更に仲介人がいて話がややこしくなる一方で、「辮髪の男が...」といったところからして嘘臭く、何となく話が見えにくい一方で、何となくミエミエな面もあるという、観ていて落ち着かない印象でしょうか。

名探偵ポワロ(第19話)/西洋の星の盗難事件 飛行場.png レディー・ヤードリーは最後良かったね、という感じ。もとは言えば、海外で"色男"に靡いてしまったという身から出た錆でもあっただけに、ポワロにどれだけ感謝しても感謝し切れないだろうなあ。一方のマリー・マーベルの方は、ポワロは彼女に悲しい知らせを伝えなければならないと言っていましたが、へイスティングスに対しては、悪党男と切れて良かったと言っています。無理にそう思い込もうとしているのではなく、ポワロ自身の本音でしょうね。全然"いい男"そうでもないし、こんなのが、彼女だけでなく、レディー・ヤードリーまで巻き込んだのが不思議ですが、この部分にケチをつけても仕方がないのでしょう。事件が解決しているのに、"消えたもう一つのダイヤ"はどこにいったのかと案じるへイスティングスは、視聴者に優越感を与えるための存在か?

 大味になりがちな政治物の典型とも言える第18話「誘拐された総理大臣」と、話が見えにくい部分とミエミエ部分が混在する第19話「西洋の星の盗難事件」といったところでしょうか。

The Kidnapped Prime Minister .jpg「名探偵ポワロ(第18話)/誘拐された総理大臣」●原題:AGATHA CHRISTIE'S POIROT Ⅱ:THE KIDNAPPED PRIME MINISTER●制作国:イギリス●本国放映:1990/02/26●監督:アンドリュー・グリーブ●脚本:クライブ・エクストン●時間:55分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ)/ヒュー・フレイザー(ヘイスティングス) /フィリップ・ジャクソン(ジャップ警部) /ポーリン・モラン(ミス・レモン)/ロナルド・ハインズ(サー・バーナード・ドッジ)/デイヴィッド・ホロヴィッチ(ダニエルズ中佐)●日本放映:1991/02/26●放映局:NHK(評価:★★★)

The Kidnapped Prime Minister

The Adventure of the Western Star.jpg「名探偵ポワロ(第19話)/西洋の星の盗難事件」●原題:AGATHA CHRISTIE'S POIROT Ⅱ:THE ADVENTURE OF THE WESTERN STAR●制作国:イギリス●本国放映:1990/03/04●監督:リチャード・スペンス●脚本:クライブ・エクストン●時間:55分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ)/ヒュー・フレイザー(ヘイスティングス) /フィリップ・ジャクソン(ジャップ警部) /ポーリン・モラン(ミス・レモン)/ロザリンド・ベネット(マリー・マーベル)/キャロライン・グッドール(レディー・ヤードリー)●日本放映:1991/06/29●放映局:NHK(評価:★★★)

The Adventure of the Western Star

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2篇ともプロット的には面白かった。あの"書割り"(第17話)の意味は?

名探偵ポワロ完全版9.jpg Double Sin(22 Jan. 1991).jpg 名探偵ポワロ/二重の罪 dvdc.jpg The Adventure of the Cheap Flat(5 Feb. 1991).jpg 名探偵ポワロ(第17話)/安いマンションの事件 dvdc.jpg
名探偵ポワロ[完全版]Vol.9 [DVD]」(「二重の罪」「安いマンションの事件」所収)「名探偵ポワロDVDコレクション 40号 (二重の罪) [分冊百科] (DVD付)」「名探偵ポワロDVDコレクション 41号 (安いマンションの事件) [分冊百科] (DVD付)

名探偵ポワロ(第16話)/二重の罪 03.jpg 暫く面白い事件もなく、ポワロは落ち込んで引退を口走り、へイスティングスを連れて北部の海辺の町ウィットコムに観光に赴く。町にはジャップ警部の講演ポスターが貼られ、本人も姿を見せるが何故かポワロは素っ気無い。ヘイスティングスはポワロ名探偵ポワロ(第16話)/二重の罪 04.pngを、湖の町ウインダミアへのバス旅行に誘う。二人はバスの中でメアリーという娘と知り合った。彼女は、骨董屋を営む叔母から、掘り出し物の画集を得意先に届けるように頼まれていた。ポワロが気に留めたもう一人のバス客は、貧弱な口髭の青年で、これは態度が失礼だったため。観光地でヘイスティングスがメアリーとランチをしている時、メアリーは突然走り出し、自分のスーツケースをその青年が盗ろうとしていると...。しかし、これは間違いで、よく似たスーツケースだったようだ。その夜、ヘイスティングスらと同宿のホテルでメアリーは、画集が盗まれたと言って騒ぎ出す。盗難届を出し、得意先にも行くと、既に絵は何者かによって得意先に売却されていた―(第16話「二重の罪」)。

名探偵ポワロ(第16話)/二重の罪 アンチーク.jpg 「名探偵ポワロ」の第16話(第2シーズン第6話)で本国放映は1990年2月11日、本邦初放映は1991年1月22日(NHK)。原作はクリスティー文庫『教会で死んだ男』、創元推理文庫『砂に書かれた三角形』などに所収。

名探偵ポワロ(第16話)/二重の罪02.jpg このプロットには誰でもまんまと引っ掛かるのではないでしょうか。前半部分が映像上の"叙述トリック"になっていないか、もう一度観直してみる必要はある気がしますが、プロット自体は原作にほぼ忠実に作られているようです。ポワロの謎解きが終わった後、共犯者がポワロに毒づき、そのことによって、ああ、共犯者もいたのかと思い出したくらいですから、自分もヘイスティングスと似たようなものか。

 ポワロが引退を仄めかし、ヘイスティングスが中心になって捜査するとというのは、映像版のオリジナルのようで(但し、ヘイスティングスは例によって"空振り"をする)、短編の場合、サイドストーリーを加えて話を膨らますというのはよくあります。ポワロがこの海辺の町を行先に選んだところ、偶然そこでジャップ警部が講演会に呼ばれていたかのように思われましたが、実はそうではなかったことがエピローグで明かされ、更にポワロが最初イラついていた理由まで分かるというのが上手いです。

 「二重の罪」とは、盗難品では原則として所有権は移動しないため、理論上は同じ手口で再犯が可能であることを指していると思われますが、法的には、占有権とのしのぎ合いでグレーゾーンも存するように思えます(英国の裁判所はどう判断するのか)。


名探偵ポワロ(第17話)/安いマンションの事件 02.jpg ポアロは、あるパーティーで、若夫婦のロビンソン夫妻から自分たちが分不相応な高級マンションを格安で借りることが出来たという話を耳にし、この話の背後に何か事件が拘わっていると考え捜査に乗り出す。一方、スコットランドヤードでは、ジャップ警部が、アメリカからやって来たFBI捜査官たちと、国際的なスパイ事件に関する合同捜査を行っていた―(第17話「安いマンションの事件」)。

名探偵ポワロ(第17話)/安いマンションの事件 レモン.png  「名探偵ポワロ」の第17話(第2シーズン第7話)で本国放映は1990年2月18日、本邦初放映は1991年2月5日(NHK)。原作はクリスティー文庫『ポアロ登場』(「安アパート事件」)、創元推理文庫『ポワロの事件簿1』(「(「安アパート事件」)、新潮文庫『クリスティ短編集2』(「「安アパートの冒険」)などに所収。

名探偵ポワロ(第17話)/安いマンションの事件 eiga.jpg 冒頭でポワロ達が観ている映画はジェームス・キャグニー主演の「Gメン」('35年)という作品だそうで、当エピソードも、雰囲気的にはアメリカの犯罪サスペンス映画の雰囲気を取り入れたものと言えるでしょうか。プロット的には面白かったです(アーサー・コナン・ドイルの『シャーロック・ホームズの冒険』所収の「赤毛組合」に着想がやや似た印象も)。

名探偵ポワロ(第17話)/安いマンションの事件 set.jpg ただ、アメリカで起きた事件の屋外シーンが、見るからにバックが"書割り"風で(高層ビル街などは垂れ布に描いた風)、パリのナイトクラブのシーンが雰囲気があっただけに、ギャップが大きかったように思います(好意的に解釈すれば、パリのナイトクラブは今ポワロ達が見ている光景であるのに対し、アメリカでの事件は、ポワロが謎解きに際して想像したものを映像化したものであるから、わざと作り物風にしているのだと?)。

名探偵ポワロ(第17話)/安いマンションの事件3.png FBIの態度のデカい捜査官が、最初はポワロのことを小馬鹿にしていたのが、最後は素直にその能力を認め、感謝と脱帽の意を表しているのが快く、ポワロもさることながら、ジャップ警部も溜飲を下げたのでは。

 2篇とも、プロット的には面白かったです。それと、ミス・レモンが、第16話「二重の罪」では夢の中でポワロの示唆を得て失くした鍵を見つけ出し、第17話「安いマンションの事件」では、ポワロの指示で単独潜入捜査をして成果を得るなど(ポワロも危ないことさせるなあ)、かなり彼女に焦点が当たっているように思いました。

Double Sin  .jpg「名探偵ポワロ(第16話)/二重の罪」●原題:AGATHA CHRISTIE'S POIROT Ⅱ:DOUBLE SIN●制作国:イギリス●本国放映:1990/02/11●監督:リチャード・スペンス●脚本:クライブ・エクストン●時間:55分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ)/ヒュー・フレイザー(ヘイスティングス) /フィリップ・ジャクソン(ジャップ警部) /ポーリン・モラン(ミス・レモン)/キャロライン・ミルモー(メアリ・ダラント)/エルスペット・グレイ(エリザベス・ペン)/アダム・コッツ(ケイン)●日本放映:1991/01/22●放映局:NHK(評価:★★★☆)

Agatha Christie's Poirot (1989-2013) Double Sin


名探偵ポワロ(第17話)/安いマンションの事件9.png「名探偵ポワロ(第17話)/安いマンションの事件(安アパート事件)」●原題:AGATHA CHRISTIE'S POIROT Ⅱ:THE ADVENTURE OF THE CHEAP FLAT●制作国:イギリス●本国放映:1990/02/18●監督:リチャード・スペンス●脚本:クライブ・エクストン/ラッセル・The Adventure of the Cheap Flat.jpgマレイ●時間:55分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ)/ヒュー・フレイザー(ヘイスティングス) /フィリップ・ジャクソン(ジャップ警部) /ポーリン・モラン(ミス・レモン)/ジョン・ミッチー(ジェームス・ロビンソン)/サマンサ・ボンド(ロビンソン夫人)●日本放映:1991/02/05●放映局:NHK(評価:★★★☆)

The Adventure of the Cheap Flat

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ギャング映画っぽさとユーモアが楽しめる(第13話)。最後は警部に手柄を譲った?(第14話)。

名探偵ポワロ13/消えた廃坑 dvdc.jpg 名探偵ポワロ13/消えた廃坑 01.jpg 名探偵ポワロDVDコレクション 36号 (コンウォールの毒殺事件).jpg
名探偵ポワロDVDコレクション 35号 (消えた廃坑) [分冊百科] (DVD付)」「名探偵ポワロDVDコレクション 36号 (コンウォールの毒殺事件) [分冊百科] (DVD付)

名探偵ポワロ13/消えた廃坑6.jpg ポワロは残高の確認のため銀行へ行くが、引き出しオーバーで赤字と言われ激昂する。その深夜、ポワロの元にピアソン頭取が訪ねてきた。謝罪に来たのかと思ったポワロだが、事件の依頼である。銀行はウー・リンという中国人から、鉱山の場所を示す高価な地図を買う事になっていたのだが、約束の重役会にウー・リンは現れず、行方が分からないという。その翌日、ウー・リンの死体が発見されるが、地図は消えていた―(第13話「消えた廃坑」)。

名探偵ポワロ13/消えた廃坑.jpg 「名探偵ポワロ」の第13話(第2シーズン第3話)で本国放映は1990年1月21日、本邦初放映は1990年7月25日(NHK)。原作はクリスティー文庫『ポアロ登場』、創元推理文庫『ポワロの事件簿2』(「消えた鉱山」)などに所収。

 米エドガー賞の1992年 TV エピソード部門賞受賞作。中篇の割には結構凝っていたなあと。冒頭のウー・リンが重役会に現れず、焦る頭取など、若干"叙述トリック"っぽい箇所もありますが、まあ、佳作と言えるのでは。名探偵ポワロ13/消えた廃坑 4.jpg中華街のカジノ(アヘン窟でもある)での捜査など、ギャング映画っぽい雰囲気もあったし、一方で、ロンドン警察の最新システムという、無線連絡に沿って3人の婦警が地図上でミニチュアのパトカーを動かす奇妙な捜査方法などが出てきて、"ハードボイルド風"と"ホントウかいな風"が混在し、最後は、ポワロがウー・リンのパスポートと見せかけて...と、色々楽しめました。

名探偵ポワロ13/消えた廃坑 モノポリー.jpg 冒頭のポワロが銀行のピアソン頭取が来たのを、謝罪しに来たのと勘違いする場面も可笑しく(原作のピアソンはビルマ鉱業の重役)、さらに可笑しいのが、モノポリーに真剣にハマっているポワロとへースティングス。ポワロは最初劣勢で、「駅にはホテルは建てられないよ」と指摘され、「実際にはあるじゃないか」「でもルールだし...」「じゃあルールが間違ってるんですよ!」とここでも激昂。「スキルなんかは全然関係のないゲームだね」と言っていたのが、ジャップ警部が訪ねてきてもゲームに熱中。事件が解決する頃にはへースティングスに圧勝し、全く逆の発言に...。因みに、残高不足はポワロの入金し忘れが原因でした。

 第10話「夢」、第11話「エンドハウスの怪事件」、第12話「ベールをかけた女」の犯人は、皆ポワロに悩みを打ち明けたり相談を持ちかけたりするふりをしてポワロを騙そうとして、結局墓穴を掘ってしまった...。このエピソードの犯人も同じ轍を踏んだと言えます。


名探偵ポワロ14/コーンワルの毒殺事件02.png 雨の降る寒い日、ポワロの元に中年の女性が訪ねて来る。コーンワルのポルガーウイズに住む歯科医の妻ペンゲリー夫人である。夫人は胃の痛みを訴え、夫が助手のエドウィナといい仲になり、自分を殺すために毒を盛っているのではないかと話す。翌日、ポワロとヘイスティングスは夫人の住むコーンワルへ赴く。しかし、既に夫人は毒殺されていた―(第14話「コーンワルの毒殺事件」)。

 「名探偵ポワロ」の第14話(第2シーズン第4話)で本国放映は1990年1月28日、本邦初放映は1990年8月1日(NHK)。原作はクリスティー文庫『教会で死んだ男』(「コーンウォールの毒殺事件」)、創元推理文庫『ポワロの事件簿2』(「コーンウォールの謎」)などに所収。

名探偵ポワロ14/コーンワルの毒殺事件0.jpg ペンゲリー夫人への訪問を、彼女の方から訪ねて来た日の翌日ではなくその日にしていれば、夫人は殺害されずに済んだのではないかとの自責の念から、ポワロの事件捜査は夫人の弔い合戦の様相を呈し、また、おそらく裁判にかけられるであろう夫のペンゲリーを絞首台送りにしないためにも―と、結構最初から力が入っています。そして、ペンゲリーは実際に捕まり、裁判にかけられます(推理ドラマの"逆転のセオリー"からすれば、まず間違いなく無実だろうとの予測はつくが、その割には、当のペンゲリーは法廷でも無力化していたなあ。妻が亡くなったショックからか。毒殺事件において自らの無実を実証することの困難さというのもあるかも)。

 事件そのものは、犯人は登場した時から何となく犯人っぽかったし、ポワロにとってそう難しくなかったかなあ。最後に犯人に、自白書にサインすること(結局、状況証拠しか無かったから?)とバーターで24時間の逃げる猶予を与えたというのは、最初捜査に力が入っていた割にはあれっという感じでしたが、と思ったらその直後、すたすたと裁判所に行って自白書を見せ、今度はへースティングスの方が、24時間の猶予を与えたことに拘っている?

名探偵ポワロ14/コーンワルの毒殺事件 last.jpg 最後、公判中のペンゲリーが犯人だと信じきって、のんびり立ち食いなんぞをしているジャップ警部に、ポワロが「勝算のない戦を続けるより、負けを認めるほうが利口です」と言って去っていったところへ、部下からの真犯人は別にいたとの報。ジャップ警部は「ポアロめぇっ!」と怒鳴りますが、ポワロが犯人を逃がす際に「2日以内に捕まる」と予言していることからすると、ジャップ警部に手柄を立てさせるための所為だったともとれます。因みに、それより前の事件直後に、ポワロはヘイスティングスに対し、警察はペンゲリーを逮捕し、彼が裁判にかけられることも予言しており、"ポワロの予言は的中する"ことの伏線になっているという構図が上手いと思いました。

 2篇とも星4つに限りなく近い星3つ半といったところでしょうか。

名探偵ポワロ13/消えた廃坑splash.jpg「名探偵ポワロ(第13話)/消えた廃坑」●原題:AGATHA CHRISTIE'S POIROT Ⅱ:THE LOST MINE●制作国:イギリス●本国放映:1990/01/14●監督:エドワード・ベネット●名探偵ポワロ[完全版]Vol.7.jpg脚本:マイケル・ベイカー/デビッド・レンウィック●時間:55分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ)/ヒュー・フレイザー(ヘイスティングス) /フィリップ・ジャクソン(ジャップ警部) /ポーリン・モラン(ミス・レモン)/アンソニー・ベイト(ピアソン頭取)/ジェームズ・サクソン(レジー・ダイアー)●日本放映:1990/07/25●放映局:NHK(評価:★★★☆)
名探偵ポワロ[完全版]Vol.7 [DVD]」(「ベールをかけた女」「消えた廃坑」所収)

名探偵ポワロ14/コーンワルの毒殺事件01.jpg「名探偵ポワロ(第14話)/コーンワルの毒殺事件(コーンウォールの毒殺事件)」●原題:AGATHA CHRISTIE'S POIROT Ⅱ:THE CORNISH MYSTERY●制作国:イギリス●本国放映:1990/01/28●監督:エドワード・ベネット●脚本:クライブ・エク名探偵ポワロ[完全版]Vol.8.jpgストン●時間:55分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ)/ヒュー・フレイザー(ヘイスティングス) /フィリップ・ジャクソン(ジャップ警部) /ポーリン・モラン(ミス・レモン)/ジェローム・ウィリス(エドワード・ペンゲリー)/アマンダ・ウォーカー(ペンゲリー夫人)●日本放映:1990/08/01●放映局:NHK(評価:★★★☆)
名探偵ポワロ[完全版]Vol.8 [DVD]」(「コーンワルの毒殺事件」「ダベンハイム失そう事件」の2話収録)

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まあまあ楽しめた2篇。○○していた犯人(第10話)、今度はポワロが○○?(第12話)。

名探偵ポワロ10夢 dvdc.jpg 名探偵ポワロ10 夢 01.png  名探偵ポワロ12ベールをかけた女 dvdc.png ポワロ ベールをかけた女 ポワロ.jpg
名探偵ポワロDVDコレクション 33号 (夢) [分冊百科] (DVD付)」 「名探偵ポワロDVDコレクション 34号 (ベールをかけた女) [分冊百科] (DVD付)

名探偵ポワロ10 夢 9.jpg 創立50周年の式典を行っているパイ工場。そのパイ工場の経営者ファーリーから一通の手紙を受け取ったポワロは、工場内にある彼の家を訪ねる。毎晩繰り返し、自分が自殺する不可解な夢を見ると彼は言い、誰かが催眠術で自分を殺そうとしているのではと疑っているのだった。ポワロは、その態度や依頼ともつかない彼の話に釈然としないまま工場を後にした。後日ファーリーが、ポワロに話した夢と同じような方法で自殺をする。しかしポワロは、その死に疑問を持ち調査を始める―(第10話「夢」)。

AGATHA CHRISTIE'S POIROT  THE DREAM夢1.jpg 「名探偵ポワロ」の第10話(第1シーズン第10話)で本国放映は1989年3月12日、本邦初放映は1990年7月11日(NHK)。原作はクリスティー文庫『クリスマス・プディングの冒険』、創元推理文庫『砂に書かれた三角形』などに所収。

名探偵ポワロ10夢7.jpg サイコ・ミステリと思わせておいて...というのは、クリスティ作品に結構あるパターンではないでしょうか。今回はポワロはかなり行き詰った様子を見せ、「若い頃の放蕩」が今になって祟ったのではないかと彼らしからぬことまで口にしますが(ヘイスティングスもこのポワロには似つかわしくない言葉にはさすがに唖然とする)、偶々ポワロに時刻を聞かれたミス・レモンが窓を開けて時計台を見て答えた、その何でもないような彼女の行動を見て一気に閃きます。

AGATHA CHRISTIE'S POIROT  THE DREAM夢2.jpg では、その前までは、どこまで判っていたのか。ファーリーに例の手紙を返してくれと言われて最初別の手紙を返したのは単純ミスだったのか。でも、何となくおかしい雰囲気は感じていたようでした(自分も感じたけれど、どこがおかしいかは全然分からなかった)。結局、ポワロは犯人が○○していたのを見破ったわけですが、それは、ミス・レモンの啓示より前か同時か、気になるところです。

 エピローグで、ポワロはミス・レモンに感謝のプレゼント。ミス・レモンは、タイプライターの調子が悪くて新しい物への買換えを以前からポワロに訴えており、今回も直訴したばかり。やっとボスに聞き入れられたかと思ったら、包みの中から出てきたのは...(笑)。ポワロは自分で自分を「従業員に理解がありすぎる(だから件の工場主のような富豪になれない)」と思ってるのが、これまた可笑しいです。


ベールをかけた女 .jpg ポワロたちが、最近起きた宝石泥棒の話をしていると、伯爵令嬢のミリセントがある捜査の依頼をしにやってくる。公爵と結婚することになっている彼女は、ラビントンという男に、昔の恋人に出した手紙をネタにゆすられており、その手紙を取り返してほしいというのだ。ポワロはラビントンと交渉するが、話はポワロ ベールをかけた女 01.jpg決裂する。やむなく、ポワロはヘイスティングスと共にラビントン家に押し入るが―(第12話「ベールをかけた女」)。

 「名探偵ポワロ」の第12話(第2シーズン第2話)で本国放映は1989年3月12日、本邦初放映は1990年7月11日(NHK)。原作はクリスティー文庫『ポアロ登場』(「ヴェールをかけた女)」)、創元推理文庫『ポワロの事件簿2』(「ヴェールをかけた貴婦人」)などに所収。

ポワロ ベールをかけた女 錠前屋.jpg 第10話「夢」では犯人が○○していましたが、今回はポワロが錠前屋を装ってラビントン家に単独入り込んで細工を施し、夜にまた、今度はヘイスティングスを伴って侵入、例の手紙は見つかりますが、通いだったはずの家政婦がいて警官に通報され、逃げ遅れたポワロのみ留置場に入れられてしまうという展開(但し、留置場に入れられるのはドラマのオリジナル)。

ポワロ ベールをかけた女 09.jpg 家政婦は最初から怪しいと思っていたということで(ということは「通い」というのがウソだったのか)、変装やアクションがイマイチなのがポワロらしいというか、先ずそれ以前に、スーパーマリオ・ブラザーズみたいな格好の"スイス人"錠前屋に扮したり、黒のニット帽を被って上下黒ずくめの出で立ちで不法侵入の危険を冒すところはポワロらしくないというか。やっぱり、結構ユニークなエピソードと言えるかも。

 結局、最初にあった宝石泥棒の話とリンクしていたわけかあ。まあ、箱を振ったら、中に何か入っているなって分かるだろうなあ。最後、貴婦人然とした美人が忽ちに豹変するところは、第11話「エンドハウスの怪事件」と重なりました。「名探偵ポワロ」の作品中で唯一、クレジットのゲストキャストに役名の表示が無い作品だそうで、まあ、律儀と言えば律儀です。

 2話とも、中篇としてはそこそこに楽しめました。

The Dream.jpg名探偵ポワロ夢11.jpg「名探偵ポワロ(第10話)/夢」●原題:AGATHA CHRISTIE'S POIROT I: THE DREAM●制作国:イギリス●本国放映:1989/03/12●監督:エドワード・ベネット●脚本:クライブ・エクストン●時間:55分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ)/ヒュー・フレイザー(ヘイスティングス) /フィリップ・ジャクソン(ジャップ警部) /ポーリン・モラン(ミス・レモン)/アラン・ハワード(ベネディクト・ファーリー)、ジョエリー・リチャードソン(ジョアンナ・ファーリー)●日本放映:1990/07/11●放映局:NHK(評価:★★★☆)
The Dream

The Veiled Lady.jpg「名探偵ポワロ(第12話)/ベールをかけた女(ヴェールをかけた女)」●原題:AGATHA CHRISTIE'S POIROT Ⅱ: THE VEILED LADY●制作国:イギリス●本国放映:1990/01/14●監督:エドワード・ベネットポワロ ベールをかけた女09.jpg●脚本:クライブ・エクストン●時間:54分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ)/ヒュー・フレイザー(ヘイスティングス) /フィリップ・ジャクソン(ジャップ警部) /ポーリン・モラン(ミス・レモン)/フランシス・バーバー(レディー・ミリセント)/キャロル・ヘイマン(ゴッドバー夫人)●日本放映:1990/07/18●放映局:NHK(評価:★★★☆)
The Veiled Lady

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犯人逮捕という場面がない2作。ちょっと凝り過ぎ?(第8話) ややご都合主義?(第9話)。

名探偵ポワロ 完全版4.jpg 名探偵ポワロ 謎の盗難事件 dvdc.jpg   名探偵ポワロ 完全版5.jpg 名探偵ポワロ クラブのキング DVDC.jpg
名探偵ポワロ[完全版]Vol.4 [DVD]」(「海上の悲劇」「なぞの盗難事件」所収)「名探偵ポワロDVDコレクション 31号 (なぞの盗難事件) [分冊百科] (DVD付)」 「名探偵ポワロ[完全版]Vol.5 [DVD]」(「クラブのキング」「夢」所収)「名探偵ポワロDVDコレクション 32号 (クラブのキング) [分冊百科] (DVD付)」   

なぞの盗難事件.jpgAgatha Christie's Poirot The Incredible Theft.jpg 新型戦闘機の開発設計を手がける夫メイフィールドがドイツのスパイとの噂のあるバンダリン夫人を屋敷に招待していると知ったメイフィールド夫人。悩んだすえ国家の一大事とポワロに依頼し、屋敷に招くことに。その夜、まんまと設計図が紛失し、バンダリン夫人が盗んだと思われたが―(第8話「なぞの盗難事件」)。

Agatha Christie's Poirot The Incredible Theft dvd.bmp 「名探偵ポワロ」の第8話(第1シーズン第8話)で本国放映は1989年2月26日、本邦初放映は1990年3月10日(NHK)。原作はクリスティー文庫『死人の鏡』(「謎の盗難事件」)、創元推理文庫『死人の鏡』(「謎の盗難事件」)などに所収。

ポワロ第8話/なぞの盗難事件1.jpg 意外と凝っていたなあと。ポワロは、バンダリン夫人は犯人ではないと早々と宣言していましたが、ではシロかと言うとそうとも言えないのではないでしょうか。しかし、ドイツのスパイ組織と交渉したにしても、こんな面倒なトリックを使うかなあという気もしました(ポワロに見破られるための契機をわざわざ作ったことになる)。ちょっと凝り過ぎ?

ポワロ第8話/なぞの盗難事件3.jpg 最後、夫婦間の信頼が回復できて「めでたし、めでたし」、ポワロも表向き笑みを隠しながら、実は目を細めニッコリという感じですが、夫がかつて軍事秘密を敵国(日本)に売ったというのは、恐喝ネタになっていたということからすると本当だったということか。まあ、過去のことより、今のことの方が大事?

 ジャップ警部と同室の宿になってその寝言に悩まされウンザリしていたヘイスティングスが、終盤ではバンダリン夫人の車を追いかけるカーチェイスでドライビング技量を発揮して、水を得た魚のように活き活きした感じになっているのが微笑ましかったです。


ポワロ9/クラブのキング 02.jpgポワロ9/クラブのキング dvd.jpg ポワロは、ヘイスティングスの友人が監督をしている撮影現場を見に行く。主演は人気絶頂の美人女優ヴァレリー、夫役はサイレント時代の大スター・ウォルトンだが、彼は酔っており台詞も満足に言えない。そして、現場で我もの顔にふるまっているプロデューサーのリードバーンがいた。ヴァレリーはある国の皇太子ポールと婚約しているが、リードバーンに何やら弱みを握られているらしい。その夜、ポワロの元に一本の電話がかかる。自宅にてリードバーンが殺され、第一発見者ヴァレリーの潔白を証明してほしいという依頼だった―(第9話「クラブのキング」)

ポワロ9/クラブのキング 01.jpg 「名探偵ポワロ」の第9話(第1シーズン第9話)で本国放映は1989年3月12日、本邦初放映は1990年3月17日(NHK)。原作はクリスティー文庫『教会で死んだ男』(「クラブのキング」)、創元推理文庫『ポワロの事件簿2』(「クラブのキング」)などに所収。

ポワロ9/クラブのキング4.jpg これも結構凝っていました。原作の興行主とダンサーの関係がプロデューサーと女優に置き換わっていますが、事件当夜ボスの自宅玄関前に三人の男女が次々と現れ慌てて立ち去る姿が見られたというのは原作と同じ。最初、オグランダー家(ここへヴァレリーが逃げ込み匿われる)でその家の家族たちポーカーをしていたその痕跡にポワロがこだわっている意味が不明でしたが、後でナルホドねと。但し、家族として義絶しているのに、隣りなり(プロデューサーの家の隣りだが)近所なりに住んでいるというのはご都合主義的な印象も受けます。

The Adventure of the King of Clubs.jpg それと、やはり最後は「めでたし、めでたし」ですが(丁度嫌な奴もいなくなったことだし?―コレ、制作に口出しするプロデューサーを揶揄してる?)、事件そのものは「傷害致死」が成立しているとも言える状況でありながら、ポワロが意図的に迷宮入りにしてしまったとも言える結末で(これはドラマのオリジナルで、原作ではこの「傷害致死」に該当する部分が無かったのではないか)、この辺りが何となく素直に「めでたし、めでたし」とは言えない印象も。原作では、オグランダー家が家族を一徹なまでに守り切り、ポワロはそれに押されたという感じだったでしょうか(正確には未確認)。少なくともドラマでは、ポワロは積極的にオグランダー家に加担した印象を受けます(ポワロの台詞「家族万歳」!)。

ポワロ9/クラブのキング03.jpg ただ、死んだリードバーンから排斥され関係が険悪だったジプシー(ロマ)の中に犯人はいるのではないかとハナから疑ってかかって、真相からほど遠いところを漁っているジャップ警部からすれば、"ポワロにも解けない事件がある"というのは安心材料なのかも。

 「第4話/24羽の黒つぐみ 」で抽象絵画をバカにしていたかのように見えたヘイスティングスが、今度は前衛芸術を前にキュビズムの講釈をする変わりようですが、それをポワロは殆ど聞き流しているのが可笑しいです。

 共に「犯人逮捕」という場面がない2作。第8話「なぞの盗難事件」はやや凝り過ぎと言うか、こんな手の込んだことをするかという感じで、第9話「クラブのキング」はややご都合主義なのと、やはり「傷害致死」っぽいのが気になりました。

The Incredible Theft_.jpg第8話)/なぞの盗難事件.jpg「名探偵ポワロ(第8話)/なぞの盗難事件(謎の盗難事件)」●原題:AGATHA CHRISTIE'S POIROT I: THE INCREDIBLE THEFT●制作国:イギリス●本国放映:1989/02/26●監督:エドワード・ベネット●脚本:デビッド・リード●時間:55分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ)/ヒュー・フレイザー(ヘイスティングス) /フィリップ・ジャクソン(ジャップ警部) /ポーリン・モラン(ミス・レモン)/ジョン・ストライド(トミー・メイフィールド)/シアラン・マッデン(レディー・メイフィールド)●日本放映:1990/03/10●放映局:NHK(評価:★★★)

The Incredible Theft

ポワロ9/クラブのキング2.jpg「名探偵ポワロ(第9話)/クラブのキング」●原題:AGATHA CHRISTIE'S POIROT I: THE KING OF CLUBS●制作国:イギリス●本国放映:1989/03/12●監督:レニー・ライ●脚本:マイケル・ベイカー●時間:55分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ)/ヒュー・フレイザー(ヘイスティングス) /フィリップ・ジャクソン(ジャップ警部)/ニーヴ・キューザック(バレリー・サンクレア)/ジャック・クラフ(ポール皇太子)/Jonathan Coy(バニー・ソーンダース監督)/David Swift(リードバーン)●日本放映:1990/03/10●放映局:NHK(評価:★★★)

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自宅マンションでの事件(第5話)とアレクサンドリアでの事件(第7話)。何れも"速攻"解決。

4階の部屋 ポワロ DVDブック.jpg 4階の部屋01.jpg 海上の悲劇 dvdbook.jpg 海上の悲劇 03.jpg
名探偵ポワロDVDコレクション 28号 (4階の部屋) [分冊百科] (DVD付)」「名探偵ポワロDVDコレクション 30号 (海上の悲劇) [分冊百科] (DVD付)

名探偵ポワロ 4階の部屋 1.jpg ポアロが住むホワイトヘイブンマンションの自宅56Bの二階下36B号室に、裕福なグラント夫人が引っ越してくる。 ポアロはこのところ風邪をこじらせて自室に閉じこもったまま元気が無く、見かねたヘイスティングスがポアロを推理劇に誘う。観劇で二人は、ポアロの直ぐ階下46B号室の住人で 若い女性パトリシア・マシューズを見かける。劇が終わり、アパートに戻ったマシューズと友人達は部屋の鍵が無い事に気付き、友人のドノバンとジミーがゴミ用エレベーターから入ろうとするが、間違えて1つ下の36B号室に入ってしまう。そこで二人はグラントの夫人の死体を発見する―(第5話「4階の部屋」)。

ホワイトヘイブン・マンション.jpg 「名探偵ポワロ」の第5話(第1シーズン第5話)で本国放映は1989年2月5日、本邦初放映は1990年2月17日(NHK)。原作はクリスティー文庫『愛の探偵たち』(「四階のフラット」)、創元推理文庫『二十四羽の黒ツグミ』(「四階の部屋」)などに所収。

 ジャップ警部の言うように、まさにポワロのお膝元で起きた事件で、お蔭でポワロがどんなマンションに住んでいるかが分かりましたが、実はマンションのポワロの部屋の外部の共有部分はいつもと別のマンションを使って撮影されたようです。イギリスでは日本の1階に当たる部分が "the ground floor"で、2階に当たる部分から1階、2階と数え始めますが、この「4階の部屋」というのは、事件があった36B号室があるフロアなのでしょう。原題では"The Third Floor Flat"となっています。

名探偵ポワロ 4階の部屋 0.jpg 原作を多少変えているようですが、引っ越して来たグラント夫人が、1つ上の階のパトリシア・マシューズが友人と音楽とダンスに興じ、下の自分の階に響いてウルサイため、手紙で苦情を伝えようとした―と思わせる所は上手いと思いました。ただ、お手伝いが、部屋に入って来て死体に気づかないまま寝てしまったというのはどうか。何れにせよ、犯人を推理するのは無理な"知られざる背後関係"設定であり、それでもポワロは推理してしまうわけですが(しかも"速攻"で解決!)、意外性は楽しめる作品ではないでしょうか。

 ヘイスティングスに推理劇の犯人当てで10ポンドを賭けて(推理劇ってインターミッションがあるわけか)、その取ってつけたようなオチに憤っていたポワロですが、ちゃんと10ポンドの小切手を切っていたのは律儀。ただ、本編も、見方によっては...。


海上の悲劇 02.jpg海上の悲劇 2.jpg ポワロとヘイスティングスが船で乗り合わせたクラパトン大佐夫妻。夫人は傍若無人な言動をくり返すが、大佐はそんな妻にも献身的だった。それには夫人の古い友人の将軍も憤ったり呆れたりしている。ところが、船がアレクサンドリア港に停泊中、大佐が船に戻ると、鍵のかかった船室で夫人は殺されていた。アレキサンドリアの警察に介入されたくないというと船長の意向でポワロは捜査に乗り出す―(第7話「海上の悲劇」)。

海上の悲劇 00.jpg 「名探偵ポワロ」の第7話(第1シーズン第7話)で本国放映は1989年2月19日、本邦初放映は1990年3月3日(NHK)。原作はクリスティー文庫『黄色いアイリス』(「船上の怪事件」)、創元推理文庫『砂に書かれた三角』(「海上の悲劇」)などに所収。

海上の悲劇 01.jpg 優雅の地中海クルーズとそれに参加している貴族趣味っぽい乗客たち。どういう訳か、その中におそらく休暇中と思われるポワロとヘイスティングも混ざっています(ジャップ警部とミス・レモンは"お休み")。乗客の中でもとりわけ皆から嫌われているのがクラパトン夫人で、大佐はよくあんな女性の夫でいるものだと陰口を叩かれる始末。殺され海上の悲劇 09.jpgるならこの夫人だろうと思って観ていましたが(そうすれば皆が容疑者になるから)、肝腎の事件はなかなか事件は起こらず、船はアレクサンドリア港に寄港。「地中海殺人事件」ではないですが、観光情緒はそこそこ味わえます。TV版としては結構贅沢な方かも。

 そして、ようやっと中盤で殺人事件が...。別に船長の意向でなくたっても、ポワロは捜査に乗り出したろうなあ―と思ったら、これまた"速攻"で解決(残り時間の関係で?)。皆の前で謎解きをしてみせる場面は小道具や子供まで使って芝居がかっていましたが、それなりの効果はありました。あんなのやられて、犯人は名指しされる前にギブアップでしたね。但し、これも、観ていてトリックを見破るのはほぼ無理("いっこく堂"かあ)。束の間の観光気分が味わえた分だけ、星半分オマケです。

The Third Floor Flat L_.jpg4階の部屋03.jpg「名探偵ポワロ(第5話)/4階の部屋」●原題:AGATHA CHRISTIE'S POIROT I:THE THIRD FLOOR FLAT●制作国:イギリス●本国放映:1989/02/05●監督:エドワード・ベネット●脚本:マイケル・ベイカー●時間:55分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ)/ヒュー・フレイザー(ヘイスティングス) /フィリップ・ジャクソン(ジャップ警部) /ポーリン・モラン(ミス・レモン) /スザンヌ・バーデン(パトリシア・マシューズ)/ジョシィ・ローレンス(グラント夫人)●日本放映:1990/02/17●放映局:NHK(評価:★★★☆)
The Third Floor Flat

Problem at Sea
Problem at Sea_.jpgPROBLEM AT SEA.jpgo海上の悲劇70.jpg「名探偵ポワロ(第7話)/海上の悲劇(船上の怪事件)」●原題:AGATHA CHRISTIE'S POIROT I: PROBLEM AT SEA●制作国:イギリス●本国放映:1989/02/19●監督:レニー・ライ●脚本:クライブ・エクストン●時間:55分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ)/ヒュー・フレイザー(ヘイスティングス) /ジョン・ノーミントン(クラパトン大佐)/シェリア・アレン(クラパトン夫人)/ベン・アリス(ファウラー船長)●日本放映:1990/03/03●放映局:NHK(評価:★★★☆)

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両作品とも犯人自体は雰囲気で判ってしまう。気負わずに気軽に楽しめる作品。

名探偵ポワロ[完全版]Vol.2.jpgジョニー・ウェイバリー誘拐事件 dvdコレクション.jpg ジョニー・ウェイバリー誘拐事件 00.jpg  二十四羽の黒つぐみ dvd.jpg
名探偵ポワロDVDコレクション26号 (ジョニー・ウェイバリー誘拐事件) [分冊百科] (DVD付)」「名探偵ポワロDVDコレクション27号 (24羽の黒つぐみ) [分冊百科] (DVD付)
名探偵ポワロ[完全版]Vol.2 [DVD]」(「ジョニー・ウェイバリー誘拐事件」「24羽の黒つぐみ」所収)

ジョニー・ウェイバリー誘拐事件 3.jpg 地方の大地主マーカス・ウェイバリーが、ポワロのところへ相談に訪れる。5万ポンドを支払わないと、翌日息子ジョニーを誘拐するという脅迫状を受け取ったと言うのだ。ヘイスティングスは、ウェイバリーの話を半信半疑で聞いていた。ポワロは、ウェイバリーを連れてジャップ警部を訪ねるが、ジャップ警部もまた事件としては扱ってくれない。事件を未然に防ぐことが重要だと考えるポワロは、ウェイバリー邸に赴き、やがてジャップ警部も部下を引き連れ警戒にあたるが、2人はジョニーを目の前で誘拐されてしまう―(第3話「ジョニー・ウェイバリー誘拐事件」)。

ジョニー・ウェイバリー誘拐事件 2.jpg デヴィッド・スーシェ主演の英国LWT制作「名探偵ポワロ」の第3話(第1シーズン第3話)で本国放映は1989年1月22日、本邦初放映は1990年1月27日(NHK)。原作はクリスティー文庫『愛の探偵たち』、創元推理文庫『二十四羽の黒ツグミ』などに所収。

ジョニー・ウェイバリー誘拐事件 syokuji.jpg 振り返ってみれば、この回のポワロは結構犯人に翻弄されて、現場を離れた隙に子供を誘拐されてしまうなど複数のミスしている感じがするのですが(時計が10分進められていたことにポワロもジャップ警部も気ジョニー・ウェイバリー誘拐事件 屋敷.jpgづかなかったというのはちょとねえ)、その割には「足行水」などして若干のんびりした雰囲気がするのは、事件が誘拐であって殺人事件ではないためか、それとも翻弄されているように見えて実は早い段階でポワロには犯人の目星がついていたためか。

 ポワロならずとも、犯人は観ていて大体見当がつくのでは。後は共犯者と動機がポイントでしょうか。こちらはちょっと推理が難しい?
  「名門」と「お金持ち」の違いは夫婦の間でもあるのか。邸の増改築を巡る夫婦間の意見対立という伏線はありましたが、そんなことより、邸宅と庭園の美しさを楽しむ一作だったかも。


24羽の黒つぐみ3.jpg 友人の歯科医ボニントンとレストランで食事をしたポワロは、そこの常連客であるという老人が最近長年の習慣にないメニューを口にしたという話に興味を惹かれる。数日後、その老人は遺体で発見され、警察は階段からの転落事故死と判断したが、ポワロは老人が死の直前にレトランでとった行動の不自然さから不審を抱き、独自に調査に乗り出す―(第4話「24羽の黒つぐみ」)。

24羽の黒つぐみ0.jpg 英国LWT制作「名探偵ポワロ」の第4話(第1シーズン第4話)で本国放映は1989年1月29日、本邦初放映は1990年2月3日(NHK)。原作はクリスティー文庫『クリスマス・プディングの冒険』、創元推理文庫『二十四羽の黒ツグミ』などに所収。

24羽の黒つぐみ1.png ミス・マープル物の長編『ポケットにライ麦を』と同じくマザーグースの"6ペンスの歌"がモチーフとして使われていますが、『ポケットにライ麦を』ほどには歌詞がプロットに絡んでいないように思いました。

 原作では亡くなった老人ヘンリー・ガスコインが売れない画家だったのに、この映像化作品では売れっ子画家に変更されていて、その遺作に価値があるとの設定に。そのため容疑者の幅が原作より若干は出ていますが、結局、連続殺人事件で容疑者の1人が亡くなってしまうため、ポワロ自身が言うように、自ずと容疑者が絞られる状態になったように思います。

24羽の黒つぐみ2.jpg ポワロが歯の治療中で肉料理が食べられず、自分で肉料理を作ってヘイスティングスに食べさせ、その味はどうかしきりに気にするという場面が可笑しかったし、抽象絵画を観てそのタイトルが「鳥に石を投げる男」だと聞いてヘイスティングスが「ほぅ。で、どっちが男?」と言ったり、ポワロがクリケットの試合に夢中で気も漫(そぞ)ろのヘイスティングスにイラついたり皮肉を言ったりしつつ、ラストで自ら試合結果を分析してみせヘイスティングスを唖然とさせる場面なども楽しいです。ただ、こうした場面ばかり印象に残って、ポワロの鋭さというのは意外と感じられなかったような気も。

 両作品とも短編がベースであり、犯人探し自体はそう難しくないと言うか、雰囲気で判ってしまうところがあります。でもその分、あまり気負わずに気軽に楽しめる作品ではあります。

The Adventure of Johnnie Waverly_.jpgジョニー・ウェイバリー誘拐事件01.jpg「名探偵ポワロ(第3話)/ジョニー・ウェイバリー誘拐事件」●原題:AGATHA CHRISTIE'S POIROT I:THE ADVENTURE OF JOHNNIE WAVERLY●制作年:1988年●制作国:イギリス●本国放映:1989/01/22●監督:レニー・ライ●脚本:クライブ・エクストン●時間:55分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ)/ヒュー・フレイザー(ヘイスティングス)/フィリップ・ジャクソン(ジャップ警部)/ポーリン・モラン(ミス・レモン) /ジェフリー・ベイトマン(マーカス・ウェイバリー)/ジュリア・チャンバース/DOMINIC ROUGIER●日本放映:1990/01/27●放映局:NHK(評価:★★★☆)
The Adventure of Johnnie Waverly

Four and Twenty Blackbirds_.jpg24羽の黒つぐみ4.jpg「名探偵ポワロ(第4話)/24羽の黒つぐみ」●原題:AGATHA CHRISTIE'S POIROT I:FOUR AND TWENTY BLACKBIRDS●制作年:1988年●制作国:イギリス●本国放映:1989/01/29●監督:レニー・ライ●脚本:ラッセル・マレー●時間:55分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ)/ヒュー・フレイザー(ヘイスティングス)/フィリップ・ジャクソン(ジャップ警部)/ポーリン・モラン(ミス・レモン) /リチャード・ハワード(ジョージ・ロリマー)/トニー・エイトキン(トミー・ピナー)/CHARLES PEMBERTON/GEOFFREY LARDER/DENYS HAWTHORNE/HOLLY DE JONG●日本放映:1990/02/03●放映局:NHK(評価:★★★☆)
Four and Twenty Blackbirds

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記念すべき本国及び日本放映第1話。シーズンのスタートにしてはやや大人しい感じの滑り出し。

コックを捜せ dvd.jpg コックを捜せ ポワロ へニングス レモン.jpg ミューズ街の殺人 dvd.jpg ミューズ街の殺人1.jpg  
名探偵ポワロDVDコレクション 24号 (コックを捜せ) [分冊百科] (DVD付)」 「名探偵ポワロDVDコレクション 25号 (厩舎街の殺人) [分冊百科] (DVD付)

コックを捜せ 依頼.jpg ヘイスティングスが新聞に載っている面白そうな事件を読み上げてみても、国家的重大事件でなければ引き受けないと言うポワロ。そんな彼のもとへコックが失踪したから探してくれという夫人が現れる。依頼を拒否しようとするポワロだったが、夫人から、熟練したコックがいなくなるのは家宝の宝石を失うに等しい国家的事件だと言われて、これは失礼だったと依頼を受けることに。ポワロが話を聞いた下働きの女性は、彼女は奴隷商人に誘拐されたに違いないと言うが、荷造りしていたために、誘拐ではなく、自分から姿を消したのだとポワロは考える。家に下宿している銀行員にも事情を聞くが、何も知らないと言う。彼の勤める銀行では証券紛失事件があり、不審に思ったポワロだが、そうこうするうちに依頼主の夫人から、コックが勝手に出て行ったなら依頼は取り消しだと1ギニーが送られてきてまう―(第1話「コックを捜せ」)。

熊倉一雄 ポワロ.jpgTHE ADVENTURE OF THE CLAPHAM COOK.jpg デヴィッド・スーシェの主演英国LWT(London Weekend Television)制作「名探偵ポワロ」(ポワロの声の吹き替えは、昨年['15年]10月に88歳で亡くなった熊倉一雄が最終シリーズまで務めた)の第1シーズン第1話で本国放映は1989年1月8日、本邦初放映は1990年1月20日(NHK)(記念すべき第1話だが、日本での放送は第2話の方が1週先だった)。原作はクリスティー文庫『教会で死んだ男』(「料理人の失踪」)、創元推理文庫『ポワロの事件簿2』(「料理女を捜せ」)などに所収。

コックを捜せ 銀行家.jpgコックを捜せ 弁護士.jpg 結局、コック失踪事件は銀行の横領事件から殺人事件へと発展していき、プロットの密度は濃いですが、これでほぼ原作通りのようです。失踪したのはコックと言うより家付きの料理女といった感じでしたが、完全に犯人い騙されていたのだなあ。しかし、コックを捜せ 料理人.jpg殺人の犯行において死体を隠すというのは結構たいへんであるにしても、それ用のトランク1つのために、弁護士になりすますなどしてここまでやるかなあというのはあります(それで話が面白くなっているも確かだが)。ただ、同居人ということで、彼女がそういう話に乗ってくるタイプだということは読んでいたのでしょう(高齢者を狙った詐欺だね。金を奪うわけではないけれど)。

 ポワロが最初はコック捜しといった些細な仕事をしていることをジャップ警部に悟られまいとしているのが可笑しく、それが何か背後に怪しいものがあるとと思い始めたところへ夫人から依頼の取り消し連絡があって1ギニーが送られてきたことに珍しく激昂、タダでも捜査を続けると言い、さらにその後の事態の思わぬ展開に、最後はどんな依頼も軽んずべからずとして、1ギニーを額に入れて壁に飾る―という展開は巧み。因みに1ギニーは21シリング、1930年代半ばの貨幣価値で25,000円くらいだそうです(ホームズの時代とそう変わらない?)。


ミューズ街の殺人 現場.jpg ガイ・フォークス・デイの夜、こんな晩なら銃声が花火の音にまぎれてしまうので殺人にはもってこいだとヘイスティングスは言うが、その翌日、女性が自宅で射殺体で発見される。被害者は、若き美貌の未亡人バーバラ・アレンで、当初自殺と思われたが、状況に不審な点があり、警察はミューズ街の殺人 0.jpg他殺と断定する。第一発見者は、ルームシェアをしていた女性写真家のジェーン・ブレンダーリースで、彼女にはアリバイがあり、他に容疑者として、被害者のバーバラと婚約していた下院議員ミューズ街の殺人 gate.jpgチャールズ・レイバトン・ウェスと、ジェーンとバーバラの部屋をしばしば訪れていたユースタス少佐が浮上する。さらに、少佐は被害者との過去の愛人関係を理由にして、恐喝していたようだった―(第2話「ミューズ街の殺人」)。

MURDER IN THE MEWS.jpg 英国LWT制作「名探偵ポワロ」の第2話(第1シーズン第2話)で本国放映は1989年1月15日、本邦初放映は1990年1月13日(NHK)。原作はクリスティー文庫『死人の鏡』(「厩舎街の殺人」)、創元推理文庫『死人の鏡』(「厩舎街の殺人」)などに所収。"ミューズ"は"Muse"ではなく"Mews(厩舎)"で、転じて厩から通りまでの「路地」を言います。

ガイ・フォークス・デイ.jpg ガイ・フォークス・デイ(11月5日)は、1605年の「火薬陰謀事件」で国会爆破をもくろんだ実行犯のガイ・フォークスが捕らえられたガイ・フォークス お面.jpg記念日で、祭りでは篝火で人形を燃やします(但し、ガイ・フォークスは火刑ではなく絞首刑に処せられた)。英語で「男、奴」を意味する"Guy"は彼の名に由来し、また、ガイ・フォークス・デイに人々が着けるお面は、アノニマス、ウィキリークスのジュリア・アサンジが"抵抗と匿名"のシンボルとして用いています。

ミューズ街の殺人 2.jpg 話の方は、自殺だと思ったら他殺...と思ったら...と二転三転する展開に引き込まれますが、"犯人"はちゃんといましたね。"犯人"と言っていいのかどうか分かりませんが、ポワミューズ街の殺人 nazotoki.jpgロははっきり「殺人未遂」と言ってます。この辺りの厳格さはポワロらしいという気がします。それでも"犯人"の気持ちが分からないでもないですが。

 時代背景の割には、シェアしている部屋や下院議員が使っているスポーツクラブのプールなどがモダンで、その分、結構垢抜けて見える一篇でした。但し、第1話についても言えることですが、元が短編で時間も正味55分であることもありますが、シーズンのスタートにしてはやや大人しい感じの滑り出しであった印象を受けます。

「名探偵ポアロ」.jpg名探偵ポワロ.jpg2名探偵ポワロ.jpg「名探偵ポアロ」 Agatha Christie: Poirot (英国グラナダ(ITV)1989~) ○日本での放映チャネル:NHK→NHK-BS2→NHK-BSプレミアム(1990~)/ミステリチャンネル→AXNミステリー

Agatha Christies Poirot The Adventure Of The.jpg「名探偵ポワロ(第1話)/コックを捜せ(炊事婦の失踪)」●原題:AGATHA CHRISTIE'S POIROT I:THE ADVENTURE OF THE CLAPHAM COOK●制コックを捜せG.jpg作年:1988年●制作国:イギリス●本国放映:1989/01/08●監督:エドワード・ベネット●脚本:クライブ・エクストン●時間:55分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ)/ヒュー・フレイザー(ヘイスティングス) /フィリップ・ジャクソン(ジャップ警部) /ポーリン・モラン(ミス・レモン) /ブリジット・フォーサイスコックを捜せ dvd1.jpg(トッド夫人)/ダーモット・クロウリー(アーサー・シンプソン)/FREDA DOWIE/ANTONY CARRICK●日本放映:1990/01/20●放映局:NHK(評価:★★★☆)

名探偵ポワロ[完全版]Vol.1 [DVD]」(「コックを捜せ」「ミューズ街の殺人」所収)

「名探偵ポワロ(第2話)/ミューズ街の殺人(厩舎(ミューズ)街の殺人)」●原題:AGATHA CHRISTIE'S POIROT I:MURDER IN THE MEWS●制作年:1988年●制作ミューズ街の殺人 ゴルフ.jpg国:イギリス●本国放映:1989/01/15●監督:エドワード・ベネット●脚本:クライブ・エクストン●時間:55分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ)/ヒュー・フレイザー(ヘイスティングス) /フィリップ・ジャクソン(ジャップ警部) /ポーリン・モラン(ミス・Murder in the Mews.jpgレモン) /ジュリエット・モール(ジェーン・プレンダーリース)/デイヴィッド・イェランド(チャールズ・レイバトン・ウェスト)/JAMES FAULKNER/GABRIELLE BLUNT●日本放映:1990/01/13●放映局:NHK(評価:★★★☆)

Agatha Christie's Poirot: Season 1, Episode 2 Murder in the Mews

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ここまで三島の作品と人生を再現していれば立派なもの。

Mishima dvd.jpgMishima dvd  .jpg Mishimages.jpg  三島由紀夫と一九七〇年.jpg
MISHIMA : LIFE IN FOUR CHAPTERS」/緒形 拳/『三島由紀夫と一九七〇年
Mishima - A Life in Four Chapters

MISHIMA:A LIFE IN FOUR CHAPTERS .jpg  三島由紀夫の生涯を四つの章に分け、3つの章でその作品等を通して三島文学を描き、第4章で自決に至るまでを描くことで、三島の文学や生き方、そして死に方を探った作品で、監督と脚本は「タクシードライバー」('76年/米)の脚本のポール・シュレイダー(「晩春」など小津安二郎監督作品の読み解きでも知られる)、製作総指揮はフランシス・フォード・コッポラとジョージ・ルーカス、公開に至らなかった日本版はロイ・シャイダーによる英語ナレーション付き、米国版は緒形拳による日本語ナレーション付きです(1985年度の第38回カンヌ国際映画祭最優秀芸術貢献賞受賞作)。

Mishima 01 Ken Ogata Yukio Mishima.gif 「今現在」を「1970年11月25日」に置いて、三島(緒形拳)が自決した当日の起床からの経過を現在進行形でカラー・ドキュメンタリー風に描き、その「今現在」の時の流れをベースに、三島の幼少期から「楯の会」結成までの半生をモノクロームで描いた「フラッシュバック(回想)」シーンを交える一方、第1章「美(beauty)」で『金閣寺』、第2章「芸術(art)」で『鏡子の家(Kyoko's House)』、第3章「行動(action)」で『奔馬(Runaway Horses)』(『豊饒の海』第2部)の各作品をダMISHIMA1-1.jpgイジェストで映像化しており、最後の第4章「文武両道(harmony of pen and sword)」で、三石岡瑛子 mishima.jpg島が市ヶ谷駐屯地に到着した場面から自決に至るまでを描いています。こうなるとかなり複雑な印象を与石岡瑛子.jpgえますが、回想部分はモノクロで、作品部分は「劇中劇」として極めて演劇的に作られているため(石岡瑛子(1938-2012)が美術担当)、観ていてたいへん分かり易いものとなっています。

Mishima 02 Naoko Otani.gif 冒頭で、三島が母(大谷直子)や祖母(加藤治子)との特異な幼少期を経て、思春期から同性愛的指向を自覚したことなどを紹介、第1章では簡略化された『金閣寺』が劇中劇として描かれ、ドモリでコンプレックスのMishima01 金閣寺.jpg塊のような学生(ある意味、三島のペルソナである)で金閣寺の住職になることを目指して修行する溝口(五代目 坂東八十助=十代目 坂東三津五郎)が、障害者でありながらをそれを逆手にとって高い階級の女を籠絡している柏木(佐藤浩市)と出会い、そのMishima 11 Yasosuke Bando Mizoguchi.gifMishima 12 Koichi Sato.gifMishima01 金閣寺s.jpg手ほどきで女性に接するも臆して何もできなかった後(ここでフラッシュバックで青年期の三島(利重剛)が病弱だったために戦争の徴兵を逃れ得たことなどが描かれる)、今度は老師(笠智衆)から施されたMISHIMA  ryu.jpg金で遊郭で遊女(萬田久子)を抱き、女に「どでかいことをする」と言うが、それは金閣寺を燃やすことだった―といMishima 13 Hisako Manda Mariko.gifうもの(ここで三島が自邸を出て「盾の会」のメンバーと市ヶ谷駐屯地へ向かうため車に乗り込む"現在"のシーンに切り替わり、更に今度は、モノクロで『潮騒』などの作品で作家として高い評価を得た頃の三島を描く)。

Mishima 21 Kenji Sawada Osamu.gifMishima 22 Setsuko Karasuma.gif 第2章では『鏡子の家』を演劇化しており、原作では鏡子というある種"巫女"的な女性を軸に、恵まれた結婚をし将来が嘱望されるエリート会社員・清一郎、拳闘家でボクシングで王座を獲る俊MISHIMA:A LIFE IN FOUR CHAPTERS sachiko hidari.jpg吉、美貌の無名俳優でボディビルで鋼の肉体を得る収、天分豊かな童貞の日本画家で画壇での名声を博す夏雄の4人が登場しますが(それぞれが三島のペルソナと言える)、ここでは収(沢田研二)にフォーカスして、母親(左幸子)や恋人(烏丸せつこ)との関係を描いています(ここでまたモノクロのMISHIMA:4X1.jpgフラッシュバックになり、男とダMISHIMA:A LIFE IN FOUR CHAPTERS kurata.jpgMishima 23 Tadanori Yokoo Natsuo.gifンスし―ダンス相手のモデルは美輪明宏か―同性愛者として美醜にこだわり、ボディビルによって肉体改造に励む三島の姿が描かれる)。次に、ラーメン屋台のような所に収、俊吉(倉田保昭)、夏雄(横尾忠則)がいて芸術談義をしていると思ったら、収は清美(李麗仙)という女社長に会って母親の負債を相殺するためのある種"奴隷契約"を結ばされ(その間、三島のセミヌード写真の撮影模様や出演したMishima kyoko no ie2.jpgMishima kyoko no ie.jpg映画のポスターなどがフラッシュバックで入る)、母親にはいい役がついたと報告し、最後はピンク色の部屋でその清美に自分の肉体をマゾヒスティックに傷つけられている―(ここで市ヶ谷に向かう車中の三島と「盾の会」のメンバーのシーンに切り替わる)。

Mishima 31 Toshiyuki Nagashima Isao.gif 第3章は、『奔馬』の主人公・飯沼勲(永島敏行)を描いた劇中劇で、剣道3段の飯島青年が政界Mishima honmaU.jpgの黒幕を倒すべく陸軍中尉(勝野洋)や同志らとクーデターを謀るという二・二六事件をモチーフにした原作通りMISHIMA:A LIFE IN FOUR CHAPTERS17.jpgの展開で(フラッシュバックで日本刀を振るって剣術に精進する三島が描かれる)、彼が首謀者となって同じ学生仲間らと決行を誓い合いますが(そこでまたフラッシュバックで「盾の会」の結成やその閲兵式の模様が描かれ、更に、'69年の東大全共闘との討論会の様子が描かれる)、事を起こす前に飯島らは逮捕され、飯島は聴取にあたった尋問官(池部良)に拷問してくれとミシマ ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ2.jpgMishima 32 Ryô Ikebe.gif頼むが叶わない。その後、飯島は脱獄に成功し、政界の黒幕・蔵原(根上淳)を暗殺Mishima honma.jpgすると、海を見渡す断崖へと直行し、暁の太陽を背に割腹自殺を図る―(ここでいきなり、映画「憂国」の切腹シーンを撮影中の三島のモノクロ・フラッシュバックになる。そして、映画「憂国」の完成記者会見の模様が入る)。

MISHIMA:A LIFE IN FOUR CHAPTERS.jpg 第4章は、これまで「今現在」として描かれてきた「1970年11月25日」の部分の続きで、三島らが市ヶ谷駐屯地に到着してから自決に至るまでが描かれており(間にフラッシュバックで「盾の会」の自衛隊体験入隊の模様が描かれる)、自決前のバルコニーでの演説をはじめ、「三Mishima4.jpg島事件」を克明に描いています(更に間に、ロッキードF104戦闘機に試乗した際の模様が描かれる)。最後に三島が切腹して雄叫びする場面に続いて、第1部から第3部の小説のラストMishimaR.jpgシーンがワンカットずつ描かれ、『奔馬』の最後の一行のナレーションと共に、冒頭のタイトルバックにあった太陽が正面に昇っている風景でエンドロールとなります。なお、「フラッシュバック」で描かれる半生の挿話やナレーションには、自伝的小説『仮面の告白』や随筆『太陽と鉄』などからの引用が使用されています。

 ポール・シュレイダーの実兄の故レナード・シュレーダー(同じく脚本家で、同志社大学と京都大学で英文学の講師をしていた)が生前の三島由紀夫と親交があり、10年間の構想を経て弟と共に脚本を書き始めたのが契機のようですが、よく出来ていると思いました(ハリウッドの知性派女ジョディ・フォスターs.jpg優として知られ、2013年のゴールデングローブ賞授賞式において、自身が同性愛者であることをほぼ公表したジョディ・フォスターが絶賛している)。主人公の三島の役は、最初は高倉健にオファー高倉健G.jpgされていたらしいのですが(高倉健はポール・シュレイダー脚本、シドニー・ポラック監督の「ザ・ヤクザ」('74年/米)に出演している)、右翼などの妨害や誹謗が危惧されて、一度は受けたものの降りてしまい、緒形拳になったったとか。撮影直前までの脚本では、第4章に『天人五衰』(『豊饒の海』第4部)が含まれていたのが、構成が複雑になりすぎるとの理由で割愛されたそうです。更に、ポール・シュレイダー監督は第2章で『禁色』を使うことを希望していたのが、三島の遺族側の承諾が得られず、『鏡子の家』になったとのこと。結局、全体4章の内、作品を再現したのは第1~第3章であり、また、『鏡子の家』で4人の登場人物の内1人のみにフォーカスするという形にはなったMishima irie.jpgものの、ここまで三島の作品と人生を再現していれば立派なものだと思います(それが理解できるかどうかはまた別の問題として)。細かい点で事実と異なるとの指摘もあるようですが(第2章のフラッシュバックに写真集『薔薇刑』の撮影模様があるが、三島はこの映画のように撮影の際に自らカメラのアングルを指示するようなことはなく、完全に「被写体」に徹していたという当のカメラマン細江英公氏の指摘など)、そうした細かい指摘がされるというのは、逆に言えばドキュメンタリーとしても一定の水準を満たしているからであるように思います(ジョディ・フォスターは「作品部分の凝った構成と、生涯の部分のドキュメンタリー・タッチの対比が絶妙」だと評価している)。

三島由紀夫と一九七〇年  .jpg 結局、上映自体が遺族側の了解が得られず、作品は日本では劇場公開されなかったわけで、惜しいことです(同性愛を示唆する場面は結構あったが、それ以外に政治的な理由があったともされている)。長年ビデオ・DVD化されない「幻の作品」であっため、自分自身も、中身がよく分からないのでやや"色物"的な作品ではないかとの先入観が以前はありましたが、近年しばしばネットで見かけ、更に"ゲリラ・リリース"された『三島由紀夫と一九七〇年』('10年/鹿砦社)付録の米国版DVDを観直して観ると、映像も綺麗だし、演技陣も錚々たるメンバーであり、また、よく演出したものだと思いました。作家とその作品の関係性を描くという意味でも非常に大胆な試みであり、それは100%成功しているわけではないですが、分かり易いというだけでも評価できるのではないでしょうか。

Chishu Ryu, Paul Schrader, and Yasosuke Bando on the set of Mishima: A Life in Four Chapters. MISHIMA_500.jpg
「MISHIMA:A LIFE IN FOUR CHAPTERS」●制作年:1985年●制作国:アメリカ・日本●監督:ポール・シュレイダー●製作:山本又一朗/トム・ラディ●脚本:ポール・シュレイダー/レナード・シュレイダー/チエコ・シュレイダー●撮影:ジョン・ベイリー/栗田豊通●音楽:フィリップ・グラス●美術:石岡瑛子●原作:三島由紀夫●120分●出演:●[フラッシュバック(回想)]緒形拳/利重剛/大谷直子/加藤治子/小林久三/北詰友樹/新井康弘/細川俊夫/水野洋介/福原秀雄 [1970年11月25日]緒形拳/塩野谷正幸/三上博史/立原繁人(徳井優)/織本順吉/江角英明/穂高Mishima A Life in Four Chapters (1985).jpg坂東三津五郎.jpg稔 [第1章・金閣寺]坂東八十助/佐藤浩市/萬田久子/沖直美/高倉美貴/辻伊万里/笠智衆(米国版のみ) [第2章・鏡子の家]沢田研二/左幸子/烏丸せつこ/倉田保昭/横尾忠則/李麗仙/平田満 [第3章・奔馬]永島敏行/池部良/誠直也/勝野洋/根上淳/井田弘樹●米国公開:1985/10●DVD発売:2010/11●発売元:鹿砦社(『三島由紀夫と一九七〇年』附録)(評価:★★★★)
十代目 坂東三津五郎(五代目 坂東八十助)(1956-2015.2.21/享年59)
Mishima: A Life in Four Chapters (1985)

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A級、B級問わず映画を語る楽しくて充実した内容の鼎談。瀬戸川氏への哀悼の意が感じられる。

今日も映画日和 単行本2.jpg今日も映画日和 単行本.jpg  今日も映画日和 文庫.jpg
今日も映画日和』['99年] 『今日も映画日和 (文春文庫)』['02年]

 心から映画を愛する3人が、SF、法廷劇、スポーツものなど、12のテーマに沿って語り尽くした楽しい鼎談集です。「カピタン」1997年7月号から1998年6月号にかけて連載された際にページの都合で割愛された部分も、きちんと再録したロング・バージョンであるとのことで、脚注・写真も充実しています(文庫版は脚注のみ、写真無し)。

 単行本の刊行は、鼎談者の一人・瀬戸川猛資(1948 -1999/享年50)がその年の3月に肝臓がんで亡くなっていて氏の存命中に刊行を間に合わせられなかったのですが、脚注では話中に出てきた映画の情報の他に、川本三郎氏、和田誠氏が自らの発言内容に独自に補足するばかりでなく、瀬戸川氏の発言に関係するコメントを瀬戸川氏の著書の中から引用するなどしており、両人のこの鼎談集への思い入れと、瀬戸川氏への哀悼の意が感じられます。

 和田氏が1936年生まれ、川本氏が1944年生まれ、瀬戸川氏が1948年生まれで、和田氏によれば、川本氏は昭和の庶民を描く日本映画や映画のファッションに強く、瀬戸川氏はミステリに強いというようにお互いの守備範囲があるようですが、一方で、映画を、A級とかB級とか関係なく、分け隔てなく観てきたという点で共通するとのことで、それは本書を読めばよく分かります。

 取り上げているテーマは、まず「映画館」から始まって、SF、夏休み(ボーイズライフ)、サラリー★激しい季節(1959)2.jpgマン、野球、クリスマス、酒場、スポーツ、法廷、良妻・悪妻、あの町この町、大スターと続きますが、それらをモチーフとした映画がぽんぽん出てきて、もう誰が話しているのかあまり区別がつかないくらいです。

おもいでの夏 dvd.bmp 3人が若い頃に観た映画の話がかなりあって、「夏休み(ボーイズライフ)」のところで、川本三郎氏が、「激しい季節」('59年/伊)のエレオノラ・ロッシ・ドラゴがオッパイを見せていたのにショックを受けたとかあったりして、当時のアメリカ映画とイタリア映画の倫理コードの違いもあるのだろうなあ。「おもいでの夏」('71年/米)を瀬戸川氏はともかく和田氏も観ておらず(新しすぎるのか?)、川本氏の講釈を受けるという展開は意外でした。
ガン・ホー [DVD]
ガンホーdvd.jpg 「サラリーマン」の章のところで、瀬戸川氏がアメリカでヒットしたのに日本では未公開だった「ガン・ホー」('86年/米)について取り上げると、川本氏が「日本の企業をバカにしたやつですね」と言ったのに対し、「全然バカにしていないですよ。あの通りなんだから」と応えているのが興味深いです。アメリカ地方都市の日本資本の自動車会社("アッサン自動車"。漢字で「圧惨自動車」と表記する)の工場を舞台に、日米自動車経済摩擦を描いた作品ですが、アメリカ側のキャストに後に「バットマン」に出演することになるマイケル・キートンや、演技達者のジョン・タトゥーロまで出ているけれど、ケディ・ワタナベ演じる日本側主人公も好人物に描かれていて、最後、日系の自動車会社側の重役の山村聡が出てきて貫禄で問題を解決し、日米の企業人のカルチャーギャップを解消しているから、軽いノリの映画ではありますが、日本人をバカにした映画とまでは言えないでしょう。日本の企業経営を皮肉ったシーンガン・ホー1986 03.pngガン・ホー1986 01.jpgがあり、これを日本人をバカにしていると観客がとれば日本では受けないとして配給会社が配給を見送ったようですが、ちょっと世に出るのが早すぎたでしょうか。監督は後に「アポロ13」('95年)や「ダ・ヴィンチ・コード」('06年)を監督することになるロン・ハワードです(観た時の評価は星3つだが、グローバル人材がどうのこうの言われる今日において観直すと面白いかも―という観点から星半分プラス)。

黒い画集 あるサラリーマンの証言[1].jpg サラリーマン映画では、「失楽園」も川本氏しか観てなかったなあ。その川本氏が堀川弘通監督の「黒い画集 あるサラリーマンの証言」('60年/東宝、原作:松本清張)を傑作としていますが、当時の方が今よりも不倫に対する風当たりは強かったというのが川本氏の見方のようです。確かに小林桂樹、電話で不倫相手の原知佐子に向かって「はい、承りました」ってやっていたけれど。また、瀬戸川氏が、ワイルダーってアメリカ映画の中で異色なくらい会社を舞台にした作品が多いと指摘していますが(和田誠氏でなく瀬戸川氏が指摘しているのが興味深い)、「アパートの鍵貸します」は勿論のこと、「麗しのサブリナ」('54年/米)なども、確かに言われてみればそうだなあと。

アパートの鍵貸します2.jpg 「アパートの鍵貸します」('60年/米)は、アカデミー賞の作品賞、監督賞など5部門受賞した作品で、和田誠氏が『お楽しみはこれからだ』シリーズなどで何度も取り上げている作品でもあります。出世の足掛かりにと、上役の情事のためにせっせと自分のアパートを貸している会社員バドことC・C・バクスター(ジャック・レモン)でしたが、人事部長のJ・D・シェルドレイク(アパートの鍵貸します3.jpgフレッド・マクマレイ)が自分の部屋に連れ込んで来たのが、何と自身の意中の人であるエレベーターガールのフラン(シャーリー・マクレーン)だったというよく知られたApâto no kagi kashimasu (1960).jpgストーリーで、宮仕えのサラリーマンの哀愁を描く中で、ラストの急転は実に爽やかでした(こうした急展開は「麗しのサブリナ」などでも見られるが、こちらの方が洒落ている)。テニス・ラケットでパスタをすくったり、マテーニのオリーブを1つずつ時計のように並べたり、小道具をさりげなく使ったシーンにも旨さを感じられ、そもそも役者陣で下手な人は誰も出ていないような演出の見事さ。その中でもやはり、ジャック・レモンの演技が光ったし、シャーリー・マクレーンも良かったです。
Apâto no kagi kashimasu (1960)

野良犬 野球場.jpg 「野球」のところで、黒澤明の「野良犬」('49年/東宝)で後楽園球場が出てきて巨人の川上や青田がちゃんとプレーしているのが良かったと和田氏が言った野良犬 ビール.bmpのに対し、あの試合は巨人対南海線で、日本シリーズではなく1リーグ制の時の試合だと川本氏が指摘しているのがマニアックです。志村喬が野球監督を演じた「男ありて」('55年/東宝)を取り上げると、川本氏が「素晴らしい映画」だとすかさずフォローするのが嬉しいです。

「野良犬」の話は、続く「酒場」のところでも出てきて、川本氏が、志村喬が部下の三船敏郎を自分の家に連小津安二郎 秋刀魚の味 トリスバー.jpgれてきて飲ませるビールは"配給"だったとか(そう言えば、今日はたまたまビールが手に入ったようなことを志村喬が言ってたっけ)、一方、小津安二郎はサントリーと提携してい秋刀魚の味 東野2.jpgて、「秋刀魚の味」('62年/松竹)では、恩師の東野英治郎を教え子の笠智衆や中村伸郎たちが招待するシーンで、わざわざサントリー・オールドを映して「おいしいね、小津安二郎 秋刀魚の味 サッポロビール.jpgこのウィスキーは」と言わせているとか、岸田今日子がやっている店がトリスバーだとか。なるほどで。それでいて、冒頭の川崎球場の照明塔のシーンでサッポロビールとあるから、川本氏が言うように両方から金もらっていたのか(因みに、サントリーがビール事業に再進出したのは1963(昭和38)年で、この映画が公開された翌年)。小津映画では酒好きの中村伸郎のために、飲むシーンは実際に酒を飲ませ、肴もウニだったりしたというからスゴイね。笠智衆は下戸だったけれど、東野英治郎は本当に酔っぱらっていたわけかあ。

女競輪王00.jpg A級、B級問わずと言うことで、黒澤や小津といった巨匠ばかりでなく、前田葉子主演の「女競輪王」('56年/新東宝)なんて作品なんかも取り上げているのが何だか嬉しいです。

 鼎談の持ち味が出ていただけに、もう1冊分ぐらいやって欲しかった企画であり、瀬戸川氏の逝去が惜しまれます。

                   
Estate Violenta.jpgヴァレリオ・ズルリーニ★激しい季節(1959).jpg「激しい季節」●原題:ESTATE VIOLENTA●制作年:1959年●制作国:イタリア●監督:ヴァレリオ・ズルリーニ●製作:シルヴィオ・クレメンテッリ●脚本:ヴァレリオ・ズルリーニ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ/ジョルジョ・プロスペリ●撮影:ティノ・サントーニ●音楽:マリオ・ナシンベーネ●時間:93分●出演:ジャン・ルイ・トランティニャン/エレオノラ・ロッシ・ドラゴ/ジャクリーヌ・ササール/ラフ・マッティオーリ/フェデリカ・ランキ/リラ・ブリナン●日本公開:1960/04●配給:イタリフィルム●最初に観た場所:六本木・俳優座シネマテン(84-11-17)(評価:★★★★)

ガン・ホー1986 04.jpgガン・ホー1986 02.jpg「ガン・ホー」●原題:GUNG HO●制作年:1986年●制作国:アメリカ●監督:ロン・ハワード●製作:デボラ・ブラム/トニー・ガンツ●脚本:ローウェル・ガンツ/ババルー・マンデル●撮影:ドナルド・ピーターマン●音楽:トーマス・ニューマン●時間:111分●出演:マイケル・キートン/ゲディ・ワタナベ/ミミ・ロジャースガン・ホー02.jpgガン・ホー01.jpg/山村聰/クリント・ハワード/サブ・シモノ/ロドニー・カゲヤマ/ジョン・タトゥーロ/バスター・ハーシャイザー/リック・オーヴァートン●日本公開:(劇場未公開)VHS日本発売:1987/11●発売元:パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン(評価:★★★☆)     
証言2.bmp黒い画集 あるサラリーマンの証言.gif証言0.bmp「黒い画集 あるサラリーマンの証言」●制作年:1960年●監督:堀川弘通●製作:大塚和/高島幸夫●脚本:橋本忍●撮影:中井朝一●原作:松本清張「証言」●時間:95分●出演:小林桂樹/中北千枝子/平山瑛子/依田宣/原佐和子/江原達治/中丸忠雄/西村晃/平田昭彦/小池朝雄/織田政雄/菅井きん/小西瑠美/児玉清/中村伸郎/小栗一也/佐田豊/三津田健/西村晃/、平田昭彦●公開:1960/03●配給:東宝●最初に観た場所:池袋文芸地下 (88-01-23)(評価★★★☆)
黒い画集 あるサラリーマンの証言 [DVD]
                    「アパートの鍵貸します [DVD]
アパートの鍵貸します8.jpgアパートの鍵貸しますdvd.jpgアパートの鍵貸します1.bmp 「アパートの鍵貸します」●原題:THE APARTMENT●制作年:1960年●制作国:アメリカ●監督・製作:ビリー・ワイルダー●脚本:ビリー・ワイルダー/I・A・Lアパートの鍵貸します4.jpg・ダイアモンド●撮影:ジョセフ・ラシェル●音楽:アドルフ・ドイッチ●時間:120分●出演:ジャック・レモン/シャーリー・マクレーン/フレッド・マクマレイ/レイ・ウォルストン/ジャック・クラスチェン/デイビット・ホワイト/ホープ・ホリデイ/デイビット・ルイス/ジョアン・ショウリイ/エディ・アダムス/ナオミ・スティーブンス●日本公開:1960/10●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:銀座文化2(86-06-13) (評価:★★★★)
「銀座文化1・銀座文化2」「銀座文化/シネスイッチ銀座」
銀座文化1・2.png銀座文化・シネスイッチ銀座.jpg シネスイッチ銀座.jpg銀座文化 銀座文化劇場(1955年12月オープン)、60年代「銀座文化劇場/銀座ニュー文化」、70年代「銀座文化1・2」、1987年〜「銀座文化/シネスイッチ銀座」、1997年〜「シネスイッチ銀座1・2」
            
                     
                       
野良犬 1949  ポスター0.jpg野良犬 1949 0.jpg「野良犬」●制作年:1949年●監督:黒澤明●製作:本木荘二郎●製作会社:新東宝・映画芸術協会●脚本:菊島隆三/黒澤明●撮影:中井朝一●音楽:早坂文雄●時間:122分●出演:三船敏郎/志村喬/木村功/清水元/河村黎吉/淡路恵子/三好栄子/千石規子/本間文子/飯田蝶子/東野英治郎/永田靖/松本克平/岸輝子/千秋実/山本礼三郎●公開:1949/10●配給:東宝(評価:★★★★)

秋刀魚の味 チラシ.jpg秋刀魚の味 加東.jpg「秋刀魚の味」●制作年:1962年●監督:小津安二郎●脚本:野田高梧/小津安二郎●撮影:厚田雄春●音楽:斎藤高順●原作:里見弴●時間:113分●出演:笠智衆/岩下志麻/佐田啓二/岡田茉莉子/中村伸郎/東野英治郎/北竜二/杉村春子/加東大介/吉田輝雄/三宅邦子/高橋とよ/牧紀子/環三千世/岸田今日子/浅茅しのぶ/須賀不二男/菅原通済●公開:1962/11●配給:松竹●最初に観た場所:三鷹オスカー(82-09-12)(評価:★★★☆)●併映:「東京物語」(小津安二郎)/「彼岸花」(小津安二郎)

【2002年文庫化[文春文庫]】

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観客参加型ムービー「ロッキー・ホラー・ショー」。同じくアナーキーな雰囲気を醸す「ベルリンブルース」。

ロッキー・ホラー・ショー チラシ.jpg THE ROCKY HORROR SHOW 1975.jpg   ベルリンブルース 英字.jpg Stadt der Verlorenen Seelen 0.jpg
ロッキー・ホラー・ショー [DVD]」ティム・カリー(左)/スーザン・サランドン(右手前) 「ベルリンブルース」STAD DER VERLORENEN SEELEN, BERLIN BLUES(CITY OF LOST SOULS)

THE ROCKY HORROR SHOW 1975.jpg  恩師スコット博士に婚約の報告に出かけた恋人同士のブラッド(バリー・ボストウィック)とジャネット(スーザン・サランドン)は、嵐の中で道に迷った末に山中で車がパンクしてしまい、電話を借りようと近くの古城を訪ねるが、そこでは奇怪なパーティーが開かれていた。城主フランクン・フルター(ティム・カリー)は変わった人物で、彼自身が作った人造人間、ブロンドで筋肉質の美男子「ロッキー」を披露する。そしてフルターとロッキーは、結婚するような演出でベッドのある部屋へと向かうが、ジャネットがロッキーの虜になってしまう。さらに、バイセクシュアルのフルターは、ジャネットとブラッドの両方と関係を持ってしまう―。

 ジム・シャーマン監督の「ロッキー・ホラー・ショー」('75年/英)は、最初に名画座で観た時はロック・オペラってこんなのもあるのかという感じで(元々はロンドンで初演された劇場ミュージカル)、併映のロマン・ポランスキーの「ファントム・オブ・パラダイス」('74年/米)の方がミュージカル調の場面は少ないにも関わらずそれらしく感じられ、この作品はよく分らんという印象でした。

シネマライズd.JPG それが2度目に渋谷のシネマライズ渋谷(当時、地下1階にあったスクリーン)で観た時には、米国からシネセゾンが招聘したと思われるコスプレ軍団が来日していて(日本でもパフォーマンス参加者を募集した)、映画館の最前列で映画に合わせて踊ったり、紙吹雪や米を撒いたり、雨のシーンでは如雨露で水を撒いたりして観客も大ノリでした。その時初めて、ああ、これ、こうやってパーティ形式で観るものなんだと初めて知りました。本国でも公開当初は不評だったのですが、深夜興行されるようになって「観客体験型」ムービーとしてカルト化したようです。日本でもシネマライズ渋谷での上映期間中に自発的にパフォーマンスに参加する人がどんどん増えていったとのことですが、それ以前から、英字新聞にパブなどでの深夜興行の広告が出ていた記憶があります(今はAmazonでコスプレ衣裳が買える)。

ベルリンブルース 1.gif ベルリンにあるハンバベルリンブルース03.jpgーガー・ショップ「バーガー・クイーン」は、NYのハーレム出身ダンサーでトランスベイター(性転換者)のアンジー・スターダストが経営する店であり、類が友を呼んで世間のはみ出し者の米国人たちの溜まり場になっている。"バーガー・クイーン・ブルース"を歌うライラは、売春街から東ドイツへ渡って成功したパンク・スター、エロチックな空中ブランコ・ショウを見せるためにやって来たジュディスとパートナーのトロンは、アンジーの"スターダスト・ペンション"に棲むことになるが、隣部屋の売れない黒人ダンサーのゲイリーが魔術や妖術に凝っていて、自室に火をつけてしまう。ストリッパーのタラもトランスベイター(日本流に言えばニューハーフ)で、夜毎、違う男をベッドに連れ込んで同居人のロレッタを困らせる。「バーガー・クイーン」の店員ヨアキンも、ショービジネスのスターをめざす両性具有者(アンドロギュヌス)である―。

ベルリンブルース 0.jpg 「ベルリンブルース」('83年/西独)は、公開された時に「ロッキー・ホラー・ショー」の再来と言われた、西ドイツの異色監督ローザ・フォン・ブラウンハイムの1986年作品で、ドイツらしいアナーキーな雰囲気に満ちたカルト・ムービーですが、不快感とかは無く最後まで楽しめました(むしろ最後の大合唱は、マイノリティの人たちが誇り高く生き続けることを宣言しているようで感動させられた)。ブラウンハイム監督自身もホモセクシュアルであることを公言し、同性愛者や性的倒錯をテーマに撮りまくっていて、出演者たちも実在のベルリン在住アメリカ人グループで、実名で出ていて現実の仕事と同じ役どころを演じています(つまり皆、本人役で出ているということ)。

BAGDAD CAFE 2.jpg 後にパーシー・アドロン監督の「バグダッド・カフェ」('87年/西独)を観た時、ドイツから米国に旅行に来た女性が、様々な人々がいる多国籍風カフェの周辺に棲み込んでしまうという点で、この米国人がドイツのバーガー・ショップ付近に棲みつく「ベルリンブルース」と丁度真逆だなあと思ったことがありますが、「バグダッド・カフェ」も「バーガー・クイーン」ほどお下劣ではないですが、そこに暮らす人たちがショーみたいなことをやっていて、それが無国籍風と言うか、ややアナーキーな雰囲気も醸していました。
BAGDAD CAFE

 この作品「ベルリンブルース」が公開された時は、ライザ・ミネリの「キャバレー」('72年/米)のベルリン版とも言われましたが、もっとキッチュな感じのパンク系ミュージカル(仕立て)と言うか、雰囲気的にやはり「ロッキー・ホラー・ショー」に近いように思われます。

ロッキー・ホラー・ショー_1.jpgロッキー・ホラー・ショーs.jpgロッキー・ホラー・ショー (1976).jpg「ロッキー・ホラー・ショー」●原題:THE ROCKY HORROR SHOW●制作年:1975年●制作国:イギリス●監督:ジム・シャーマン●製作:作 マイケル・ホワイト●脚本:ジム・シャーマン/リチャード・オブライエン●撮影:ピーター・サシツキー●音楽:リチャード・ハートレイ●時間:99分●出演:ティム・カリー/バリー・ボストウィック/スーザン・サランドン/リチャード・オブライエン/パトリシア・クイン/ジョナサン・アダムス/ミート・ローフ/チャールズ・グレイ●日本公開:1978/02●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:五反田TOEIシネマ(83-02-06)●2回目:シネマライズ渋谷(地下1階)(88-07-17)(評価:★★★?)●併映(1回目):「ファントム・オブ・パラダイス」(ブライアン・デ・パルマ)
シネマライズ2.jpgシネマライズ.bmpシナマライズ 地図.jpgシネマライズ渋谷1986年6月、渋谷 スペイン坂上「ライズビル」地下1階に1スクリーン(220席)でオープン。1996年、2階の飲食店となっていた場所に2スクリーン目を増設。「シネマライズBF館」「シネマライズシアター1(後のシネマライズ(2F))(303席)」になる。2004年、3スクリーン目、デジタル上映劇場「ライズX(38席)」を地下のバースペースに増設。地下1階スクリーン「(元)シネマライズ渋谷」2010年6月20日閉館(地下2階「ライズⅩ」2010年6月18日閉館、地上2階「シネマライズ」2016年1月7日閉館

「ベルリンブルース」●原題:STAD DER VERLORENEN SEELEN, BERLIN BLUES(CITY OF LOST SOULS)●制ベルリンブルース vhs.jpgベルリンブルース 輸入.jpg作年:1983年●制作国:西ドイツ●監督・脚本・製作:ローザ・フォン・ブラウンハイム●撮影:シュテファン・ケスター●音楽:ホルガー・ミュンツァー/アレクサンダー・クロート●美術:インゲ・スティボルスキー●時間:91分●出演:レアンジー・スターダスト/ジェイン・カウンティ/ジュディス・フレックス/ロン・フォン・ハリウッド●日本公開:1986/10●配給:ユーロスぺース●最初に観た場所:渋谷・ユーロスペース(86-12-06)(評価:★★★★)ベルリン・ブルース [VHS]

《読書MEMO》
絶対に見たほうがいいカルト映画30選 コタク・ジャパン
1.『ロッキー・ホラー・ショー』
2.『ドニー・ダーコ』
3.『イレイザーヘッド』
4.『ゴーストハンターズ』
5.『ZOMBIO(ゾンバイオ)/死霊のしたたり』
6.『地球に落ちてきた男』
7.『裸のランチ』
8.『プライマー』
9.『ゼイリブ』
10.『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』
11.『レポマン』
12.『アルタード・ステーツ/未知への挑戦』
13.『チェリー2000』
14.『ブラザー・フロム・アナザー・プラネット』
15.『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』
16.『死霊のはらわたll』
17.『バンデットQ』
18.『バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー 』
19.『スリザー』
20.『ダーク・スター』
21.『プラン9・フロム・アウタースペース』
22.『ハンガー』
23.『デス・レース2000年』
24.『Tales from the Hood』
25.『シャークトパス』
26.『Born in Flames』
27.『ロストボーイ』
28.『ウォリアーズ』
29.『トレマーズ』
30.『未来惑星ザルドス』

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モース、やや暴走気味で踏んだり蹴ったりだったが、女性捜査官との距離感の推移が楽しめた。

モース(第14話)/死を呼ぶドライブ dvd.jpg モース(第14話)/死を呼ぶドライブ vhs.jpg  モース(第14話)/死を呼ぶドライブ 0.jpg
Inspector Morse: Driven to Distraction [VHS] [Import]」(死を呼ぶドライブ)
Inspector Morse: Driven to Distraction [DVD] [Import]

死を呼ぶドライブ.jpg 一人暮らしの若い女性が連続して殺害され、被害者2人の共通点を探したモースは、彼女らがクルマを何れもディーラーのボイントン(パトリック・マラハイド)から買っていること、ボイントンは被害者ソーン(ジュリア・レーン)とも接点があり、被害者の女友達アンジー(テッサ・ウォーツザック)を脅迫するなどしていたことから、物証はないもののボイントンを犯人と確信、自動車会社の隣の自動車教習所のベテラン教習官ウィテカー(デヴィッド・ライアル)のもとへ教習を受けるため定期的に通うことで、ボイントンにプレッシャーをかける。捜査に参入した犯罪心理学の専門家である女性捜査官メイトランド(メアリー・ジョー・ランドル)は、初めはモースの強引な捜査に違和感を覚えるが、次第にモースの被害者への同情や犯罪への怒り、そして捜査そのものに対する彼の姿勢に共感を覚えるようになっていく―。

死を呼ぶドライブ 1.jpg 「主任警部モース」シリーズの第14話で、1990年に本国で放映され、2000年に日本語字幕付きVHSが発売されています。「IMDb」のレーティングは8.1となっています。

 モースとメイトランドはコンピュータの記録から過去の類似事件を見つけますが、犯人が収監中であるのに、その事件で幸い助かった女性は引き続き脅迫電話を受けており、モースはこれ以上の犯行を阻止するためにボイントンを拘束、しかし、相変わらず物証が得られず上司の命令で釈放するも、ボイントンは脅迫した女性の恋人に襲われ負傷し入院、その間に3人目の犠牲者が出ます(入院中の彼には犯行は不可能ということになる)。

モース(第14話)/死を呼ぶドライブ 2.jpg 時々、自らの思い込みから暴走することがあるモース。今回はその典型で、誤認逮捕の挙句、最後は包丁を持った真犯人と車内で格闘し、自分の命まで危機に晒される―という、事件的には踏んだり蹴ったりのエピソード、刑事ドラマの最後の方で、主役の刑事が誤認逮捕した相手に誤っている場面が来るというのも冴えない話ですが、モースと女性捜査官メイトランドとの心理的関係の推移が思いの外に楽しめました。

 メイランドはいわばプロファイラーであり、モースも捜査陣の前で彼女に講釈させますが、モース自身はハナから信頼していない様子。実地検証でも彼女の予想は外れ、モースもそれ見ろといった感じで、ここまでは、犯罪心理学とかプロファイリングなんて馬鹿にしているであろうモースらしい展開。しかし、ここからが意外な展開で、令状無しの強硬捜査で、ルイスら他の部下は、こんな違法行為は許されないと現場を去ったのに、彼女だけが「やりましょう」と残って、モースと共に徹夜で作業する―この辺りから2人の距離感は急速に狭まってきます。

モース(第14話)/死を呼ぶドライブ 3.jpg ラスト、犯人との格闘で腕を負傷したモースがその腕を使って作業しているのを見て、メイトランドが医者に禁じられているのでは気遣ったところ、自分は天邪鬼だから人に言われたことと反対の事をすると言うモース。それに対して、「じゃ、私に電話しないでね」と言って去っていくメイトランド―この遣り取りが良かったです。

 犯人も意外だったけれど、モースと女性捜査官の関係の推移の方がもっと意外だったかな。原作者コリン・デクスターは、どういうわけかコインランドリーにいましたね(結構はっきり映っていた)。

Broadway Car Park, Old Hatfield, Hert, UK - Inspector Morse, Driven to Distraction
モース(第14話)/死を呼ぶドライブ 4.jpg390e1006-ccee-4ec6-b61c-f544ee1537cf.jpg「主任警部モース(第14話)/死を呼ぶドライブ」●原題:INSPECTOR MORSE:DRIVEN TO DISTRACTION●制作年:1990年●制作国:イギリス●本国放映:1990/01/17 ●監督:サンディ・ジョンソン●脚本:アンソニー・ミンゲラ●原案:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/パトリック・マラハイド/メアリー・ジョー・ランドル/ジュリア・レーン/テッサ・ウォーツザック/デヴィッド・ライアル●ⅤHS発売:2000/12●発売元:日本クラウン(評価:★★★★)

MyTopDozen(海外サイト)
  List of Best Inspector Morse Episodes
Rank  Score       Item
  1.  133  Driven to Distraction (第14話/死を呼ぶドライヴ)
  2.  131  Last Bus to Woodstock (第7話/ウッドストック行き最終バス
  3.  126  Service of All the Dead (第3話/死者たちの礼拝)
  4.  123  Cherubim and Seraphim (第25話/ケルビムとセラフィム)
  5.  121   Who Killed Harry Field? (第18話/誰がハリー・フィールドを殺したのか?)
  6.  116  Twilight of the Gods (第28話/神々の黄昏)
  7.  113  Infernal Serpent (第12話/邪悪の蛇
  8.  110  Death Is Now My Neighbour (第31話/死は我が隣人)
  9.  103  Happy Families (第22話/ハッピー・ファミリー)
  10.  103  Absolute Conviction (第24話/有罪判決)
  11.  94  Second Time Around (第16話/メアリー・ラプスレイに起こったこと
  12.  94  Ghost in the Machine (第8話/ハンベリー・ハウスの殺人

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モース vs. 天才詐欺師。面白かったが、犯人には犯罪哲学があるような無いような...。

モース第15話「魔笛〜メソニック・ミステリー」dvd.jpg  INSPECTOR MORSE:MASONIC MYSTERIES.jpg Inspector Morse・episode 15 (Masonic Mysteries).jpg
Inspector Morse: Masonic Mysteries [DVD] [Import]」(魔笛〜メソニック・ミステリー~)

モース第15話「魔笛〜メソニック・ミステリー」2.jpg モースも一員である合唱団のオペラ公演「魔笛」のリハーサルに、彼は車で女友達のベリル(マデリーン・ニュートン)と駆けつけるが、運転の荒っぽさを彼女に詰られ、帰りは別行動でと言われてしまう。そのベリスが、一時稽古場を離れた隙に殺害された。悲鳴を聞き、第一発見者となったモースは、凶器の包丁を拾い上げて容疑者となってしまう。モースのことを良くは思っていないボトムリー警部(リチャード・ケイン)が捜査の指揮を執り、ルイスがその配下に付くが、次々とモースに不利な証拠が現れ、濡れ衣を晴らそうとするモースは、逆に追いつめられていく―。

Romeland Gardens, St Albans, Herts, UK - Inspector Morse, Masonic Mysteries (1990)

 英国ITVの「主任警部モース」シリーズモース第15話「魔笛〜メソニック・ミステリー」vhs輸入版.jpgの第15話で、1990年に本国で放映され、2001年に日本語字幕付きVHSが発売されています(監督ダニー・ボイル、脚本ジュリアン・ミッチェル)。「IMDb」のレーティングは8.4という高さ。実際、面白かったですが、ややもやっとした印象も。

モース第15話「魔笛〜メソニック・ミステリー」デクスター.jpg オペラ好きのモースは、オペラの合唱団にも入っていたわけか(モースの前列には、原作コリン・デクスター .jpg者のコリン・デクスターがいて、結構大映しになっているカットがある)。殺害されたべリルは、モースが好意を抱き、かなり積極的にアプローチしていた女性。モース自身も自宅で不審火に見舞われ、自慢のLP盤コレクションがかなりの被害に遭った模様です(トスカニーニの「魔笛」を最悪としているけれど、これ、演奏はBBC交響楽団のものか?)
Inspector Morse: Masonic Mysteries [VHS] [Import]

INSPECTOR MORSE:MASONIC MYSTERIES 2.jpg かつて自分が捕まえた天才的詐欺師ド・フリースが怪しいと睨んだモースでしたが、彼は記録上は海外で獄死したことになっていて、但し、ルイスが調べてみると、コンピュータをハッキングしてデータを改竄していたらしい。時としてモースに反感を抱き、前話ではモースの強引な捜査に反発していたルイスですが、今回は最初から無能なボトムリー警部(フリーメーソン信者らしい)は相手にせず、モース一辺倒でした。しかも、得意なコンピュータでハッキングを突き止めるという、IT犯罪捜査官のような活躍ぶり(操っているのは、黒い画面にグリーンの文字が出るMS-DOSコンピュータみたいだが)。

INSPECTOR MORSE:MASONIC MYSTERIES1.jpg 「機械オンチのモースに犯行は無理で、犯人はモースよりずっと頭がいい」というルイスの言い分は可笑しいですが、やはりド・フリースは生きていて(冒頭のオペラ・リハーサルの衣装係に注目)、モースをその命を奪えるところまで追い詰めるも、アッカンベーするみたいな感じで逃げていく。そして、意外な共犯者と合流。しかし、その途端に警察に包囲され、モースがちょっと前に見た幻視通りに―。

 見た目は気色悪いけれど、「魔笛」に準えて犯行を実行するなど犯罪哲学のようなものを持っているように思えた詐欺師ド・フリースについては、逃げ延びさせる手もあったのでないかなあとも。
 彼を崇拝する共犯者の女性(最初はモースの協力者を装っていた)の方がワルだったような気もするけれど、結局ド・フリースも実行犯だったのか? 「誰も殺さない」という犯罪哲学ではなく、復讐相手の愛している者を奪うことによってその相手に復讐するという、単なる方法論に過ぎなかったのかなあ。それにしても自分はあっさり死んじゃったなあ(そんなに監獄が嫌なのか)。終盤はそれなりに緊迫感はありましたが、その辺りのもやっとした感じが個人的にはちょっと引っ掛かったかも。

INSPECTOR MORSE:MASONIC MYSTERIES 5.jpg モースはルイスに「魔笛」を知らないと事件の話が通じにくいと言い放ち、自分はもう(こんな事件があって)合唱隊は辞めるとしながらも、ルイスにはベリル追悼公演となった「魔笛」を半ば無理矢理聴きに行かせますが、ルイスは台詞がさっぱり聴き取れないと言って途中で夫婦で会場を抜け出してしまいました。「魔笛」は普通ドイツ語でやりますから、台詞が解らなくて当然なのですが、この辺りは労働者階級出身のルイスらしかったかな(映画「アマデウス」では映画観客層に合わせてモーツアルト歌劇を全部英語でやっていたけれど)。でも、ルイスがハッキングを突き止め、自分の疑いを晴らした時などは、モースは感謝の祝杯を挙げるという心遣いもみせています(これも、自分が久しぶりに呑みたかったという理由の方が大きいか)。
Fishpool St, St Albans, Herts, UK - Inspector Morse, Masonic Mysteries (1990)

 新米刑事時代のモースを描いた当シリーズの前日譚「新米刑事モース~オックスフォード事件簿~」(2012年1月からITVで放送)の脚本家ラッセル・ルイスがこのエピソードに影響を受けて、「Case3/殺しのフーガ」(2013年)というエピソードの脚本を書いているそうなので、機会があれば観てみたいと思います。

「主任警部モース(第15話)/魔笛〜メソニック・ミステリー~」●原題:INSPECTOR MORSE:MASONIC MYSTERIES●制作年:1990年●制作国:イギリス●本国放映:1990/01/24 ●監督:ダニー・ボイル●脚本:ジュリアン・ミッチェル●原案:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/マデリーン・ニュートン/イーアン・マクディアミット/セレスティーン・ランダル/リチャード・ケイン●ⅤHS発売:2001/01●発売元:日本クラウン(評価:★★★☆)

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ラストまで飽きさせない展開である上に、諸々のもやもやが最後一度にスッキリする。

第13話/ラドフォード家の遺産 dvd.jpg 第13話/ラドフォード家の遺産 dvd.jpg 第13話/ラドフォード家の遺産.jpg
Inspector Morse: Sins of the Father [DVD] [Import]」(ラドフォード家の遺産)

第13話/ラドフォード家の遺産 01.jpg 150年もの歴史を誇るラドフォード醸造社の社長トレヴァー(アンディ・ブラッドフォード)が酒樽の中で死体で見つかる。ライバル企業からの買収問題に揺れるラドフォード家では、自立再建派の被害者と会社売却派の弟スティーブン(ポール・シェリー)との間に確執があり、更にスティーブンは、元秘書の妻を差し置いて、兄トレヴァーの妻ヘレン(キム・トンソン)と親密状態にある。兄の死によって新社長となり、会社を売却の方に舵を切るかに思えたスティーブンだったが、彼もまた殺害され、酒樽の中で見つかる。息子2人を亡くしたチャールズ(ライオネル・ジェフリーズ)とその妻イザベル(イザベル・ディーン)が、会社の自立再建か売却かを決める重役会議を召集する。一方、トレヴァーの秘書ゲイルは、鉄道オタクの薬剤師ブリースと交際しているが、モースが事件を探る中で、ブリースとその母親は、ラドフォード社の創業に纏わる秘密があるらしいことが判る。そして、その秘密を知っているらしい弁護士ネルソンも殺害されてしまう―。

第13話/ラドフォード家の遺産 vhs.jpg 英国ITVの「主任警部モース」シリーズの第13話で、1990年に本国で放映され、2000年に日本語字幕付きVHSが発売されています。原題は「父親たちの罪」の意。監督は、「シャーロック・ホームズの冒険(第25話)/四人の署名」 ('78年/英)などのピーター・ハモンド。

Inspector Morse - Sins of the Father [VHS] [Import]

 関係者が揃って口をつぐむため、モースは皆何か隠していると訝しみ、やや不機嫌そう。事件解決には相当に難儀しましたが、第1・第2の犯行(兄弟の殺害)と、第3の弁護士の殺害が密接に関係しているとの見当をつけながらも、両事件の犯人を切り離して考えることで犯人逮捕に至り、事件は一件落着したかに―しかし、モースは何となく腑に落ちない...。

 一旦は事件が解決したように見えた後で、部下の部長刑事(ここではルイス)の何気ない言葉から真相に気づくというのは、「バーナビー警部(第47話)/消えないセピア色」('06Ye Olde Fighting Cocks, St Albans, Herts, UK - The Sins of the Fathers (1990).jpg年/英)にもあります。ルイスの言葉遣いは庶民派で、弁護士の事務所にかかってきた犯人からと思われる電話の言葉遣いは上流階級のものだったということなのでしょう(その違いから閃いた)。鉄道オタクの薬剤師(それにしてはモデルのような美人の黒人の恋人がいる)の母親の言葉遣いは"庶民派"であり、よって犯人ではなく、実は母親は、第3の犯行が息子の仕業だと思って彼を庇ったのでした。

Ye Olde Fighting Cocks, St Albans, Herts, UK - The Sins of the Fathers (1990) in Movie Location

 トレヴァーが持っていた「会社の評価額が高すぎる」という殺害される直前に3年前の日付で書かれた手紙の意味がずっと謎であり(売却反対派の彼ならば、その逆のことを言うのが自然である)、観ていて理解できなかったのが、最後にその謎が氷解する展開も見事で、ラストまで飽きさせない展開である上に、諸々のもやもやが一度にスッキリするという、「IMDb」のレーティングが7.8と、前作「邪悪の蛇」の8.0に続いてある程度高いのも頷けるエピソードでした。
Lisa Harrow
Lisa Harrow.gif スティーブンの妻(リサ・ハーロウ)が、夫とは躰だけの関係で結婚したと割り切って、ラドフォード家の人々には愛想をつかしながらも、自宅室内プールでオペラ「椿姫」を聴きながらスイミングに勤しみ、ナイスボディだけは維持しているというのがなかなか良かったです(義姉に自分の夫を「貸し出してもいいのよ」と言う発想がスゴイね。体力ありそうだし、一時、彼女が真犯人ではないかと...)。まあ、彼女にはラドフォード家の遺産相続人である2人の子供もいるわけだし、伝統を重んじ(カネへの執着もさることながら、それ以上に)不名誉を嫌うラドフォード家の人々の価値観の方に尋常ならざるものInspector Morse Sins of the Fathers [Audiobook].jpgがあるわけで、彼女が愛想をつかすのも無理はないといったところでしょうか(但し、彼女にとっても財産は魅力的であるが故に、こうした割り切り方になるわけか。納得)。

「主任警部モース(第13話)/ラドフォード家の遺産」●原題:INSPECTOR MORSE:THE SINS OF THE FATHERS●制作年:1990年●制作国:イギリス●本国放映:1990/01/10 ●監督:ピーター・ハモンド●脚本:ジェレミー・バーナム●原案:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/アンディ・ブラッドフォード/イザベル・ディーン/サイモン・スレイター/リサ・ハーロウ/カミラ・エインズリー/キム・トンソン●VHS発売:2000/11●発売元:日本クラウン(評価:★★★★)

Inspector Morse: Sins of the Fathers [Audiobook] [Audio Cassette] (1993)

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次々と入れ替わる「第一容疑者」。シリーズの中でも傑作の部類ではないか。

主任警部モース(第12話)/邪悪な蛇 dvd.jpgTHE INFERNAL SERPENT.jpg 主任警部モース(第12話)/邪悪な蛇 0.jpg
Inspector Morse Set Four - The Infernal Serpent [DVD] [Import]」/「Inspector Morse: Infernal Serpent Set [DVD] [Import]」(The Infernal Serpent(邪悪な蛇)/The Sins of the Fathers/Driven to Distraction/Masonic Mysteries/Second Time Around/Fat Chance)

THE INFERNAL SERPENT2.jpg ある雨の夜、ボーフォートの学内討論会「環境問題は党派政治を超えるか」に学寮長のマシュー(ジェフリー・パルマー)と参加しようとしていたディア博士(デヴィッド・ニール)が、忘れ物を取りに戻った際に何者かに襲われ死亡し、学寮長は現場から逃げ去った若者とぶつかって負傷する。博士の直接の死因は心臓発作だったが、討論会での問題発言を阻止しようとした何者かの仕業なのか? 学寮長は化学肥料会社に投資して利益をあげていたが、その会社は環境問題を引き起こして問題になっていた。その告発記事を書いた「日曜新聞」の記者シルヴィ(チェリル・キャンベル)は学寮長の養女であり、今度の事件後に公邸を訪れ、家族に煙たがられながらも取材のため滞在していた。学寮長夫妻の娘イモジェン(イレーネ・リチャード)はかつて心に傷を負って大学を中退し、今は結婚して夫と厩舎を営んでいたが、今も神経を病んでおり、その原因は定かでない。学寮長の妻ブランチ(バーバラ・リー=ハント)は元ピアニストで、以前は庭師フィルの娘アマンダも彼女にピアノを習いに来ていた。モースは、学寮長の公邸に何度か届いた嫌がらせの小包と事件との関連を疑う一方、学寮長が事件の際に目撃した若者ミックに辿り着いて身柄を確保するが、彼は、自分が博士の傍に行った時には彼は既に死んでいたと言う。ミックと同性愛関係にあり、彼を匿っていた数学者のジェイク(トム・ウィルキンソン)はアメリカに高飛びし、ミックの部屋は何者かによって放火される。モースが、末期がんで入院中のミックの母親を病院に訪ねた際に、逃げ去る不審者を見つけて追跡するが捕り逃がしてしまう―。

 英国ITVの「主任警部モース」シリーズの第12話で、1990年に本国で放映され、2000年に日本語字幕付きVHSが発売されています。TV用のオリジナル脚本ですが、「IMDb」のレーティングは8.0という高ポイントとなっており、実際、よく出来ていたと思います。

主任警部モース(第12話)/邪悪な蛇 2.jpg 今回は「倒叙法」できたのかと思わせるぐらい、冒頭から不審な素振りを見せる人物が出てきて、実は博士は学寮長と間違えられて殺害されたのではないかとのモースの見方が出てきた以降は、「第一容疑者」が目まぐるしく入れ替わる展開。モースも事件の展開に振り回され放しという感じの中、当の学寮長までも殺害されてしまいます。

 最後に、過去の"邪悪"な出来事が、様々のヒントや当事者の証言から浮かび上がり、モースは学寮長殺害の真犯人にようやっと行き着いたようですが、この学寮長は、誰によって殺害されてもおかしくない人物だったなあと(モースはシルヴィとイモジェンの写った古写真から手掛かりを得るが、その後も、真犯人が誰だったかということについての意外性は十分あった)。

主任警部モース(第12話)/邪悪な蛇 パブ.jpg 一方のルイスは、現場に残された嘔吐物の分析に執心し、モースが相変わらずパブにちょくちょく立ち寄っては推理を纏めようとしているところへ、ビールを飲んでいるモースに向かってゲロの内容物の話ばかりするため、さすがにモースは嫌な顔をしますが、結局、このルイスの"ゲロへの執着"が、捜査が行き詰ったことに加え、上層部からの圧力もあって事件解明を諦めかけていたモースを、博士殺害の真犯人に導きます。

 しかし、学寮長殺害犯も博士殺害犯も、モースが真犯人に行き着く前に最後自ら犯行を認めた感じでもあり、ブランチがミルトンの『失楽園』の一節から引いた「家の中には邪悪な蛇がいた」という言葉は重く感じられ、一方、酔っぱらって復讐犯行に及ぶ際は、相手を間違えないように注意しなければネ、とも思ったりして...。結果として、別人物がその目的を果たしたことになりますが、主任警部モース(第12話)/邪悪な蛇 vhs.jpgそうしたこともあって、博士の死因は心臓発作にして、どのみち余命僅かだったことにしたわけか(高潔な人物だったという博士には気の毒だったが、殺人罪にはならないわけだ)。

 モースは不審者を追って走り回ったり、自殺しようとする犯人を説得したりと、シリーズとしてはやや珍しい側面も見せますが、パターンから外れ過ぎているという印象はさほど無く、むしろ結末はシリーズらしい余韻を残すものであり、「IMDb」のレーティング"8.0"は伊達ではなく、シリーズの中でも傑作の部類ではないかと思います。

 大学の構内で、考え事をしながら歩いているモースとすれ違ったのが、コリン・デクスターか。モースが、ふと振り返り気味に視線を遣って、「他人の空似か」みたいな表情をチラっと見せた後にまた思索に戻るのがご愛嬌でした。

Inspector Morse: Infernal Serpent [VHS] [Import]
 

Audio Book Colin Dexter Inspector Morse Infernal Serpent.jpg「主任警部モース(第12話)/邪悪の蛇」●原題:INSPECTOR MORSE:THE INFERNAL SERPENT●制作年:1990年●制作国:イギリス●本国放映:1990/01/03●監督:ジョン・マッデン●脚本:アルマ・カレン●原案:コリン・デクスター●時間:109分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/ジェフリー・パーマー/デヴィッド・ニール/チェリル・キャンベル/イレーネ・リチャード/バーバラ・リー=ハント/トム・ウィルキンソン●VHS発売:2000/10●発売元:日本クラウン(評価:★★★★)
Inspector Morse: Infernal Serpent (Mci Talk Tapes)」(Audiobook [カセット] 1998)

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このシリーズ第1作が一番面白く、その後はどんどん大味になっていく。

ダイハード 1988 ちらし.jpg ダイハード 1988 02.jpg ダイハード 1988 05.jpg
「ダイ・ハード」チラシ
ダイハード 1988 01.pngダイハード dvd.jpgダイハード 1988 04.jpg 「ダイ・ハード シリーズ」の中で一番面白かったのはやはり第1作の「ダイ・ハード」('88年)であり、「テロ集団に襲われたロサンゼルスの高層ビル」という設定を生かして、縦のアクションに徹したのが成功した1つの要因だったと思います。
ダイ・ハード [DVD]

ダイ・ハード-04.jpgダイハード 1988 03.jpg ブルース・ウィリス演じるニューヨーク市警マックレーン刑事は、これまでに無かった新たなヒーロー像を産み出した言えるし(その"嘆き節"も受けた)、マックレーンが高層ビル内で孤軍奮闘する状況の中、外部から無線の声だけでサポートする黒人刑官(レジナルド・ヴェルジョンソン)との男同士の見えない絆なども、観客を熱くさせるものがあったと思います。

ダイハード 1988 アラン・リックマン.jpgダイハード 1988 リックマン.jpg また、英ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー出身のアラン・リックマン(1946-2016/享年69)演じるテロリストも良かったです。アラン・リックマンは「ロビン・フッド」('91年)でもケビン・コスナー演じるロビンの敵役の悪役を演じましたが、半ばコメディ仕立てということもあってか、「ダイ・ハード」で見せたほどの凄味や演技のキレはありませんでした(但し「ロビン・フッド」の演技で英国アカデミー賞助演男優賞を受賞している)。「ダイ・ハード」での好演は、リックマンの落下シーンで事前に打ち合わせていたタイミングより早く彼を落下させ、"素"の驚きの表情を撮るなどした、ジョン・マクティアナン監督の演出の妙にあるのでしょうか(撮影は、後に「スピード」('94年)を監督することになるヤン・デ・ボン)。

 その後「ダイ・ハード2」、「ダイ・ハード3」、「ダイ・ハード4.0」と作られましたが、だんだん質が落ちていったような...。

エルム街の悪夢4.jpg 「ダイハード2」('90年)は、スイス出身で、「エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター最後の反撃」('88年)を撮ったレニー・ハーリンの監督作です。「エルム街の悪夢」シリーズは'84年から'97年までの間に7作作られいて、ライバルシリーズであった「13日の金曜日」シリーズは'88年から'02年までの間に10作作られています('03年には「フレディ vs ジェイソン」が作られている)。「エルム街の悪夢4」は「フレディ対超能力少女」で、その前に観た「13日の金曜日 PART6/ジェイソンは生きていた!」('86年)が、"ジェイソン"はコメディアンだったのか?と思えるほど怖くなかったのですが、「エルム街の悪夢4」ダイ・ハード2 1990.jpgにおけダイハード2   .jpgる"フレディ"のコメディアン化は、ジェイソンのそれを上回っているように思えました。そんなこともあって、「ダイハード2」も劇場に行くのをためらわれたのですが、劇場で観たらまあまあの出来だったでしょうか。但し、雪のワシントン・ダレス空港を舞台に(原作はウォルター・ウェイジャー『ケネディ空港/着陸不能』)、旅客機ダイハード2 03.jpgの爆発、滑走路の大火災とスペクタル・シーンが大掛かりになった分だけ主人公のマックレーン刑事がスーパーマン化し、「1」と比べると大味な印象を受けました。レニー・ハーリンは、この後、シルヴェスター・スタローン主演の「クリフハンガー」('93年)を撮っています(「ダイハード2」の終盤のクライマックスシーンでのマックレーン刑事が懐からライターを取り出すところから、彼がまだ喫煙者であったころが窺える)。
ダイ・ハード2 [DVD]」('90年)

ダイ・ハード3.jpg 「ダイハード3」('95年)で監督をマクティアナン、舞台をニューヨークに戻して原点回帰? ニューヨーク市内で突如爆弾テロが発生し、「サイモン」と名乗る犯人は警察に電話し、ジョン・マクレーンを指名する。嫌がらせの様に、黒人達が多く住むハーレムのど真ん中で、「黒ん坊は嫌いだ(I hate Niggers)」というカードを下げさせられたマクレーンは、自身が白人である事も災いし、当然それを見た黒人ギャング達に半殺しにされかける。しかし、その近くで店を経営する黒人の男・ゼウス(サミュエル・L・ジャクソン)に助けられ、それを知り、面白くなかったサイモンの指示によって、2人は行動を共にする事になるというあらすじ。
ダイ・ハード3 [DVD]」('95年)

ダイハード3 ジェレミー・アイアンズ.jpg マクレーンに協力する黒人ゼウスを演じたサミュエル・L・ジャクソン(前年の「パルプ・フィクション」('94年/米)で一気に知名度をアップさせていた)、敵役サイモンを演じたジェレミー・アイアンズと(個人的には「運命の逆転」('90年/米)以来だったなあ)、共に演技達者で、途中まではそれなりに楽しませてくれましたが、途中から主人公のスーパーマン化は前作より更に進行し、最終的には一層大味な作品になってしまいました。

ダイ・ハード4.0 01.jpg その12年後に作られた「ダイハード4.0(フォー)」('07年)では(いきなりマクレーンの娘が出てきた)、不正にネットワークへアクセスするハッカーを利用して、政府機関・公益企業・金融機関への侵入コードを入手したテロリストがライフラインから防衛システムまでを掌握し、サイバーテロによって全米を揺るがすという設定で、それでもテロリストとまともに戦っていダイ・ハード4.0 3.jpgるのは(若いハッカーを従えた)マクレーンただ1人という不思議な設定で、彼の娘は例のごとくテロリストの人質に。一部にサイバー合戦も見られますが、遂には国防省から最新鋭戦闘機F-35まで出てきてしまって、これが結構間抜けな役回りで、通信システムを掌握するテロリストのミスリードでマクレーンを攻撃(いくら命令とは言え、街中のハイウェイで戦闘機が機銃を乱射するかなあ)、これはもう、カネをかければいいものが出来ると勘違いしているのではないかと思わざるを得ません。マクレーンはトラックから戦闘機に飛び乗り、戦闘機からハイウェイに舞い降りと、殆ど人間ではあり得ない超絶アクションで、これまた更に大味に。まあ、自分の中では既に「3」でこのシリーズは終わったという印象ではありましたが...。

ダイ・ハード/ラスト・デイdvd.jpgダイ・ハード/ラスト・デイ1.jpg 最近作のシーリズ第5作となる「ダイ・ハード/ラスト・デイ」('13年)は、舞台をシリーズ初の海外であるロシアに移しての展開でしたが(今度はいきなりマクレーンの息子が出てきた)、周囲の迷惑を顧みない滅茶苦茶なカーチェイスから始まって(巻き添えの死傷者が何十人と出てもおかしくない)、ラストでは女性敵役がマックレーンに対する怨みからヘリコプターで突っ込んでくるという、殆ど盲目的自爆の様相。彼女イリーナ(ユーリヤ・スニギル)はそれまで何のためにマックレーンを欺こうとしていたのか。もう完全にリアリティとはサヨナラした上に、ストーリーまでも破綻気味―「3」以降「5(ラスト・デイ)」まであまり評価する気にならないのですが、「5」はこれまでの中で最も劣るように思いました。 「ダイ・ハード/ラスト・デイ [DVD]」('13年)

 これでホントに終わりにするのかと思ったら「6」を作る予定があるらしく、ブルース・ウィリスの当シリーズへの思い入れは解らなくもないけれど、どうなんだろうか。

ダイハード 1988 00.jpg「ダイ・ハード」●原題:DIE HARD●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・マクティアナン●製作:ローレンス・ゴードン/ジョエル・シルバー●脚本:スティーヴン・E・デ・スーザ/ジェブ・スチュアート●撮影:ヤン・デ・ボン●音楽:マイケル・ケイメン●原作:ロデリック・ソープ「ダイ・ハード」●時間:131分●出演:ブルース・ウィリス/アラン・リックマン/アレクサンダー・ゴドノフ/ボニー・ベデリア/レジナルド・ヴェルジョンソン/アート・エヴァンス/ウィリアム・サドラー●日本公開:1989/02●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:渋谷東宝(89-02-12)●2回目:三軒茶屋映劇(89-07-01)(渋谷 東横映画劇場(1936年).jpg渋谷東宝.jpg評価:★★★★)●併映(2回目):「レッド・スコルピオン」(ジョセフ・シドー)
渋谷東宝 1936年「東横映画劇場」として開場(座席数1,401席)。1944年「渋谷東宝映画劇場」に改称、後に渋谷東宝(渋谷東宝会館1階)、渋谷スカラ座(同4階)、渋谷文化劇場(同地階)の3館体制に。1989(平成元)年2月26日閉館(閉館時座席数1,026席)。1991年7月6日、跡地に渋東シネタワーが開館。(右写真:「渋谷東宝会館」(渋谷東宝劇場・渋谷スカラ座/地階・渋谷文化劇場)
三軒茶屋映劇 2.jpg三軒茶屋シネマ/中央劇場.jpg三軒茶屋付近.png三軒茶屋映画劇場 1925年オープン(国道246号沿い現サンタワービル辺り)。1992(平成4)年3月13日閉館(左写真)。菅野 正 写真展 「平成ラストショー hp」より 同系列の三軒茶屋中央劇場(右写真中央)は1952年、世田谷通りの裏通り「なかみち街」にオープン。(「三軒茶屋中央劇場」も2013年2月14日閉館)  ①三軒茶屋東映(→三軒茶屋シネマ) ②三軒茶屋映劇(映画劇場)(現サンタワービル辺り) ③三軒茶屋中劇(中央劇場)

ダイ・ハード2-38.jpgダイ・ハード2.jpg「ダイ・ハード2」●原題:DIE HARD 2: DIE HARDER●制作年:1990年●制作国:アメリカ●監督:レニー・ハーリン●製作:ローレンス・ゴードン/ジョエル・シルバー/チャールズ・ゴードン●脚本:スティーヴン・E・デ・スーザ/ダグ・リチャードソン●撮影:オリヴァー・ウッド●音楽:マイケル・ケイメン●原作:ウォルター・ウェイジャー「ケネディ空港/着陸不能」●時間:124分●出演:ブルース・ウィリス/デニス・フランツ/ウィリアム・サドラー/フランコ・ネロ/ジョン・エイモス/ボニー・ベデリア/ウィリアム・アザートン/レジナルド・ヴェルジョンソン/フレッド・トンプソン●日本公開:1990/09●配給:20世紀フォックス(評価:★★★)
ダイ・ハード2 [DVD]

スマイルBEST エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター 最後の反撃 [DVD]
エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター.jpg「エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター最後の反撃」●原題:A NIGHTMARE OF ELM STREET 4 THE DREAM MASTER●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:レニー・ハーリン●製作:ロバート・シェイ/レイチェル・タラレイ●脚新宿オデヲン座0.jpg本:スコット・ピアース/ ブライアン・ヘルゲランド●撮影:スティーヴン・ファイアーバーグ●音楽:クレイグ・セイファン●時間:94分●出演:ロバート・イングランド/リサ・ウィルコックス/チューズデイ・ナイト/アンドラス・ジョーンズ/ダニー・ハッセル/ブルック・ゼイス/トイ・ニューカーク/ニコラス・メレ/ブルック・バンディ/ロドニー・イーストマン/ケン・サゴーズ●日本公開:1989/04●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:新宿オデヲン座(89-04-30)(評価:★★)
新宿オデヲン座 1951(昭和26)年11月、現在の歌舞伎町「第二東亜会館」の場所に開館。1959年4月「グランドビル」(後の「第一東亜会館」)地下1階に移転。2009(平成21)年11月30日閉館。(写真:歌舞伎町「第一東亜会館」(左から新宿オスカー・新宿オデヲン座・新宿アカデミー)

13日の金曜日 PART6 ジェイソンは生きていた! [DVD]」/チラシ
13日の金曜日 PART6ジェイソンは生きていた.jpg13日の金曜日 PART6/ジェイソンは生きていた! tirasi.jpg「13日の金曜日 PART6/ジェイソンは生きていた!」●原題:FRIDAY THE 13TH PART6:JASON LIVES●制作年:1986年●制作国:アメリカ●監督・脚本:トム・マクローリン●製作:ドン・ビーンズ●撮影:ジョン・R・クランハウス●音楽:ハリー・マンフレディーニ●時間:87分●出演:トム・マシューズ/ジェニファー・クック/デヴィッド・ケーガン/トム・フリドリー/レネー・ジョーンズ/ケリー・ヌーナン/トニー・ゴールドウィン/ナンシー・マクローリン/ヴィンセント・ガスタフェッロ/ロン・パリロ●日本公開:1986/10●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:東急レックス(89-04-30)(評価:★★)
東急レックス.jpg東急レックス2.jpg
東急レックス(渋谷東急3) 1956年開館東急文化会館の地下1階(地下東急ストア隣り)。当初はニュース映画館「東急ジャーナル」。1990(平成2年)10月、東急レックスから「渋谷東急3」に改称。2003(平成15)年6月30日閉館。

(モノクロ写真:東急レックス(1977(昭和52)年)/カラー写真:「東急文化会館」(左から渋谷東急2(旧東急名画座)・渋谷東急・渋谷パンテオン・東急レックス(後の渋谷東急3)

ダイ・ハード3-47.jpgダイ・ハード3 ps.jpg「ダイ・ハード3」●原題:DIE HARD: WITH A VENGEANCE●制作年:1995年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・マクティアナン●製作:ジョン・マクティアナン/マイケル・タッドロス●脚本:ジョナサン・ヘンズリー●撮影:ピーター・メンジース・ジュニア●音楽:マイケル・ケイメン●時間:128分●出演:ブルース・ウィリス/サミュエル・L・ジャクソン/ジェレミー・アイアンズ/グラハム・グリーン/コリーン・キャンプ/ラリー・ブリッグマン/アンソニー・ペック/ニック・ワイマン/サム・フィリップス/ケヴィン・チェンバーリン/シャロン・ワシントン/スティーヴン・パールマン/マイケル・アレクサンダー・ジャクソン/アルディス・ホッジ●日本公開:1995/07●配給:20世紀フォックス(評価:★★☆)
ダイ・ハード3 [DVD]

ダイ・ハード4.0 02.jpgダイ・ハード4.0 [DVD].jpg「ダイハード4.0(フォー)」●原題:DIE HARD 4.0: LIVE FREE OR DIE HARD●制作年:2007年●制作国:アメリカ●監督:レン・ワイズマン●製作:マイケル・フォトレル●脚本:マーク・ボンバック●原案:マーク・ボンバック/デヴィッド・マルコーニ●撮影:サイモン・ダガン●音楽:マルコ・ベルトラミ●時間:129分●出演:ブルース・ウィリス/ジャスティン・ロング/メアリー・エリザベス・ウィンステッド/ティモシー・オリファント/マギー・Q/シリル・ラファエリ/エドアルド・コスタ/ジョナサン・サドウスキー/クリフ・カーティス/ケヴィン・スミス/ヤンシー・アリアス●日本公開:2007/07●配給:20世紀フォックス(評価:★★☆)
ダイ・ハード4.0 [DVD]

ダイ・ハード/ラスト・デイw.jpg「ダイ・ハード/ラスA GOOD DAY TO DIE HARD 01.jpgト・デイ」●原題:A GOOD DAY TO DIE HARD●制作A GOOD DAY TO DIE HARD 02.jpg年:2013年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ムーア●製作:アレックス・ヤング●脚本:スキップ・ウッズ●撮影:ジョナサン・セラ●音楽:マルコ・ベルトラミ●キャラクター創造:ロデリック・ソープ●時間:98分(劇場公開版)・102分(最強無敵ロング・バージョン)●出演:ブルース・ウィリス/ ジェイ・コートニー/セバスチャン・コッホ/メアリー・エリザベス・ウィンステッド/ユーリヤ・スニギル/ラシャ・ブコヴィッチ●日本公開:2013/02●配給:20世紀フォックス(評価:★★)
Yuliya Snigir

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シリーズの中で一番面白かった「魔宮の伝説」。この頃は"手作り"感があった。

インディージョーンズ 魔宮の伝説 dvd.jpg インディジョーンズ 魔宮の伝説 パンフレット.jpg インディジョーンズ魔球の伝説4298.JPG
インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説 [DVD]」「映画パンフレット 「インディ・ジョーンズ-魔宮の伝説-」

インディジョーンズ魔球の伝説4299.JPG 「インディ・ジョーンズ シリーズ」の最初の3作のうち、個人的には最初の「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」('81年)は名画座に降りてくるのを待って観ましたが、この「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」('84年)は、周りのブームに乗せられたというのもあったのか、ロード館で観ました。第3作「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」('89年)もロードで観ましたが、結局、一番面白かったのは「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」だったように思います。

 日本でも、前作を上回るヒットを記録しましたが、年間興業収入では「ゴーストバスターズ」の69.7億円に次いで2位でした。因みに'82年本邦公開の「レイダース」は年間5位で、その年のトップは同じくスピルバーグ監督の「E.T.」の163.5億円(これは15年興行収入.jpg後に「タイタニック」('97年公開)に抜かれるまで1位の記録だった)、'89年公開の「最後の聖戦」も、同年公開の「バック・トゥ・ザ・フューチャー パート2」の94.0億円に及ばず2位と、このシリーズ作は何れも年間トップを取ってはいなかったんだなあと、やや意外な思いもします。「最後の聖戦」公開時に「シリーズ最終作」と銘打っていたように思いますが、その後「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」('08年)が作られています(2008年の年間興業収入57.1億円で第3位。この年の第1位は「崖の上のポニョ」の155億円)。

 シリーズ全体の原案はジョージ・ルーカスとスティーブン・スピルバーグ、製作には何れもはジョージ・ルーカス(ルーカス・フィルム)が噛んでいて、第1作「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」の原作は、後に「ライト・スタッフ」「存在の耐えられない軽さ」「ライジング・サン」などを監督することになるフィリップ・カウフマン、脚本は「白いドレスの女」を監督することになるローレンス・カスダンと、第1作から才人が集まっていたことになります。

インディジョーンズ魔球の伝説4300.JPG 「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」の3年後に作られた第2弾「魔宮の伝説」の時代設定は前作の1年前(1935年)ということになっていて、トロッコやつり橋の使い方が上手く、アニメをそのままのスピード感で実写化したという感じでした。今だったらCGに委ねるところをセットやミニチュア模型でやっている、この"手作り"感がいいのかもしれません。

 50年代、60年代のミュージカル映画のようなオープニングから始まって、物語の舞台が、上海 → メイアプール → パンコットとテンポよく移り変わり(メイアプールは実在するインドの小村、パンコットは架空の宮殿)、ピンチを脱したと思ったらまたピンチの連続で、何も考えずにただただ楽しめます。

インディジョーンズ魔球の伝説4301.JPG 冒頭のシーンは「ザッツ・エンターテインメント」('74年)へのオマージュでもあるのでしょうか。007映画やディズニーインディジョーンズ魔球の伝説4302.JPG映画、スピールバーグが好きな「フラッシュ・ゴードン」('36年)など様々な映画へのオマージュが随所込められており、ラストの大洪水シーンは、前作「レイダース」のパロディになっているなど、トリビアな見所も多いです。

 この作品を撮った時、ジョージ・ルーカス39歳、スティーブン・スピルバーグ37歳と、共に30代で、しかも、それでいてシリーズ2作目。二人とも若かったのだなあと改めて思います(シリーズ第1作の時は更にそれぞれ3歳若かったわけだが)。

インディ・ジョーンズ/最後の聖戦 dvd.jpg 5年後に作られた「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」('89年)は、時代設定は1938年で第1作「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」の2年後という設定。ジョーンズ博士の少年時代を演じたのはリバー・フェニックスで(当時19歳)、この作品の4年後に麻薬死しています。
インディ・ジョーンズ 最後の聖戦 [DVD]

インディ・ジョーンズ/最後の聖戦 husi2.jpg 物語は聖杯伝説をベースにしており、手に入れれば願いはすべて叶うという聖杯を巡ってのナチス連中とインディたちの争奪戦。ナチスに誘拐された考古学者である父親(ショーン・コネリー)を救出に向かったインディも捉えられ...と、本来ならばもっとハラハラドキドキさせられるような展開になるところが、ハリソン・フォード演じるインディのおとぼけぶりに輪をかけるようなショーン・コネリー演じる父親のおとぼけぶりで、コメディ映画みたいになっていました。

インディ・ジョーンズ/最後の聖戦 husi.jpg インディは馬に乗って軍用列車を追いかけたり、ナチスの一味と殴り合い、撃ち合いしたりと相変わらずアクション面でも頑張っていますが、前作に比べると派手さがなく、テンポもイマイチ。最後は、聖杯の守り主みたいな騎士が出てきiインディ・ジョーンズ/最後の聖戦.jpgてなかなかシュールに盛り上げてくれましたが(それにしてはその手前の仕掛けがやたらメカニックだったりもする)、「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」のラストと被ってしまい、結果的に「ショーン・コネリーがとぼけた父親役をやっている映画」という印象インディ・ジョーンズ/最後の聖戦s.jpgのみが強く残ってしまった気がします(敵か味方かよく分からないボンドガール的な女性が出てくるのは、これもまた007へのオマージュか)。

 個人的評価は、第1作「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」が★★★☆、第2作「魔宮の伝説」が★★★★、第3作「最後の聖戦」が★★★といったところです(第3作が星3つと厳しいのは、絶対評価と言うより、ややシリーズの中での相対評価になっているためで、普通の娯楽映画としてみれば十分楽しめる作品であると言える)。因みに「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」は、2000年代に入って、ソフト化作品のタイトルに"インディ・ジョーンズ"と付けるようになっており、シリーズ作品の第1作であることを知らない年代層が増えてきたためでしょうか。

レイダース/失われたアーク vhs.jpgレイダース/失われたアーク<聖櫃>(字幕 [VHS]」「インディ・ジョーンズ レイダース 失われたアーク《聖櫃》 [DVD]
レイダース/失われたアーク dvd.jpg「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」●原題:RAIDERS OF THE LOST ARK●制作年:1981年●制作国:アメリカ●監督:スティーヴン・スピルバーグレイダース/失われたアーク《聖櫃》.jpg●製作:フランク・マーシャル●脚本:ローレンス・カスダン●撮影:ダグラス・スローカム●音楽:ジョン・ウィリアムズ●原案:ジョージ・ルーカス/フィリップ・カウフマン●時間:115分●出Reidâsu Ushinawareta âku (1981).jpg演:ハリソン・フォードカレン・アレン/ジョン・リス=デイヴィス/デ飯田橋佳作座.jpgンホルム・エリオット/ポール・フリーマン/ロナルド・レイシー/ヴォルフ・カーラー/ジョージ・ハリス/アルフレッド・モリーナ/ビック・タブリアン/アンソニー・ヒギンズ●日本公開:1981/12●配給:パラマウント映画/CIC●最初に観た場所:飯田橋佳作座(82-07-11)(評価:★★★★)●併映:「スター・ウォーズ」(ジョージ・ルーカス)
飯田橋佳作座 (神楽坂下外堀通り沿い) 1988(昭和63)年4月21日閉館
Reidâsu/Ushinawareta âku (1981)
Indi Jônzu - Makyû no densetsu (1984)
Indi Jônzu - Makyû no densetsu (1984).jpg
インディジョーンズ魔球の伝説4303.JPG「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」●原題:INDIAN JONES AND THE TEMPLE OF DOOM●制作年:1984年●制作国:アメリカ●監督:スティーヴン・スピルバーグ●製作:ロバート・ワッツ●脚本:ウィラード・ハイク/インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説2.jpgグロリア・カッツ●撮影:ダグラス・スローカム●音楽:ジョン・ウィリアムズ●原案:ジョージ・ルーカス●時間:118分●出演:ハリソン・フォード/ケイト・キャプショー/キー・ホイ・クァン/アムリッシュ・プリ/ロイ・チャオ/ロシャン・セス/リック・ヤン/デヴィッド・ヴィップ/チュア・カー・ジョー/フィリップ・タン/ダン・エイクロイド/フィリップ・ストーン●日本公開:1984/07●配給:パラマウント・ピクチャーズ●最初に観た場所:新宿プラザ劇場(84-07-08)(評価:★★★★)
新宿プラザ8.jpg新宿プラザ 閉館上映チラシ.jpg

新宿プラザ劇場200611.jpg 歌舞伎町・新宿プラザ劇場 1969年10月31日オープン、コマ劇場隣り (1,044席) 2008(平成20)年11月7日閉館

1981年「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」/1984年「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝新宿プラザ劇場内.jpg説」/1989年「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」

「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」●原題:INDIAN INDIANA JONES AND THELAST CRUSADE●制作年:1989年●制作国:アメリカ●監督:スティーヴン・スピルバーグ●製作:ロバート・ワッツ●脚本:ジェフリー・ボーム●撮影:ダグラス・スローカム●音楽:ジョン・ウィリアムズ●製作総指揮:ジョージ・ルーカス●時間:127分●出演:ハリソン・インディ・ジョーンズ/最後の聖戦e.jpgフォード/ショーン・コネリー デン/ホルム・エリオット/アリソン・ドゥーディ/ジョン・リス=デイヴィス/ジュリアン・グローヴァー/インディ・ジョーンズ/最後の聖戦 リバー・フェニックス.jpgリヴァー・フェニックス/マイケル・バーン/ケヴォルク・マリキャン/リチャード・ヤング/ロバート・エディスン●日本公開:1989/07●配給:パラマウント・ピクチャーズ●最初に観た場所:新宿プラザ劇場(89-07-30)(評価:★★★)
リヴァー・フェニックス(1970-1993) in 「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」

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シリーズ"らしい"ほろ苦い結末。モースと美女のやり取りが見所?(トロイのクリケットも)

Vol.10「欺かれた過去」【字幕版】 [VHS].jpg主任警部モース 10 欺かれた過去 dvd.jpg 主任警部モース 10 欺かれた過去 クリケット.png
Inspector Morse: Deceived By Flight [DVD] [Import]
モース警部シリーズ Vol.10「欺かれた過去」【字幕版】 [VHS]

主任警部モース 10 欺かれた過去.jpg モースは、大学OBのクリケット・チームの試合のためにロンドンに来ていた、学友の弁護士ドンに呼び出されて久々の再会を果たす。彼はモースに何か相談したがっているようだが、モースが訊いても話さない。その後、彼の方からモースに連絡をしてくるが、モースは書店爆破事件の捜査で手が離せない。その翌日ドンはリード線をくわえて感電死死体となって発見される。モースは休暇中のルイスを説得し、ドンが所属していた、脚の不自由な事業家ローランドが率いるOBクリケットチームに、彼を代わりの選手として潜入させる。トニーの妻ケイト(シャロン・モーン)はラジオ局のDJで、トニーの隣室のフォスター夫婦(ジオフリー・ビーヴァーズ、ジェーン・ブッカー)の夫ピーター・フォスターは何やらクリケット・チームを探っているようだった。そんな中、OBチームのクリケットの試合中に選手控室でピーターが何者かに殺されてしまう―。

 英国ITVの「主任警部モース」シリーズの第9話で、1989年に本国で放映され、1999年に日本語字幕付きVHSが発売されています。

第10話/欺かれた過去 3.jpg ドンの妻でラジオ局のDJのケイトは若くて美人で、モースは夫を亡くした彼女を慰めるうちに彼女に惚れてしまった感じですが、フォスター夫婦の妻フィリッパも美人で、モースはこちらにも接近、双方ともモースに悪からぬ印象を抱いているようで、モースがフィリッパとクリケットのOB試合を観戦しているところへケイトが現れ、女性同士がバッティングした感じ(ケイトはぷぃと去ってしまった)。更に、ピーターが殺害されたことで、モースは2人の「未亡人」の間に挟まった形になりましたが、まあ、原作においてもモースは不思議と女性にモテるキャラではあるので、これはアリかなと。

Morse & kate Donn

 モースは、フィリッパとクリケット試合を観ながら、変なユニフォーム来て不可思議なルールで行われるスポーツとこき下し、それでもクリケットが好きそうなフィリッパのために自分もこのスポーツを好きになろうかなと冗談を言いますが(これって彼女へのアプローチ?)、結局居眠りしてしまって、ルイスの折角のファインプレーも見逃した...。そこに起きたフィリッパの夫ピーターの殺害事件。

 実はピーターとフィリッパのフォスター夫婦は本物の夫婦ではなく、英国からのヘロイン密輸出の捜査に2年越しで当たっている所謂「麻薬Gメン」でした。OBクリケットチームが怪しいと、わざとモースを通して事件未解決の中での海外遠征を認めさせ、水際でヘロイン密輸輸出の現場を抑えようとしてドーバーに張り込んでいるところへ、モースも事件の真相を追って現れます。そこでモースが見たものは...(因みにドーバーは英国の都市であり、フランスでは「ドーバー海峡」を「カレー海峡」と呼ぶ)。

eceived By The Flight1.jpg 2件の殺人事件もヘロイン密輸出も解決を見ないまま船が出そうになる―その時モースに突然の閃きが訪れるという、結構ハリウッド映画的なスリルはありましたし、結末も意外でした。ヘロイン密輸出の犯人に対しては、モースも思わず「なぜだ」と問い詰めたくなるし、一方の旧友ドンの殺害事件につていても...。

主任警部モース 10 欺かれた過去 03.jpg このシリーズ"らしい"ほろ苦い結末でした。振り返ってみれば、2件の殺人事件に何か動機上の関連がありそうに思えたのがまず第一のミスリード要因だったでしょうか。モース独特の理詰めの推理は勿論ありましたが、最後は直観による解決だったような気もして、その辺りはややシリーズ"らしくない"真相への導き方だったようにも思います。むしろ、モースと美女2人の遣り取りが見所だったとも言えます。

eceived By The Flight2.jpg 警察官がクリケット・チームに潜入していきなり好プレーを連発することが可能かと言うのはありますが、ルイス巡査部長役のケヴィン・ウェイトリーは、一時プロのクリケット選手を目指していたということで、コリン・デクスターの原案がそもそもケヴィン・ウェイトリーの"クリケット愛"に捧げられたものであるとのことです。

Sharon Maughan2.jpgSharon Maughan.jpg 一方で、ネスカフェ・ゴールド・ブレンドのTVコマーシャルに出ていたシャロン・モーンが演じるケイトに、「コーヒーは嫌い。飲むと頭が痛くなる」と言わせているのは、脚本家のお遊びか。

Sharon Maughan pictured in the Nescafé Gold Blend instant coffee adverts which ran between 1987 to 1992

主任警部モース 10 欺かれた過去 vhs.jpgモース主任警部&ルイス巡査部長.jpg「主任警部モース(第10話)/欺かれた過去」●原題:INSPECTOR MORSE:DECEIVED BY FLIGHT●制作年:1988年●制作国:イギリス●本国放映:1989/01/18●監督:アンソニー・シモンズ●脚本:アンソニー・ミンゲラ●原案:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/アマンダ・ヒルウッド/シャロン・モーン/ノーマン・ロッドウェイ/ジオフリー・ビーヴァーズ/ジェーン・ブッカー/ダニエル・マッセィ/ブライアン・プリングル/ニッキー・ヘンソン●VHS発売:1999/08●発売元:日本クラウン(評価:★★★☆)

"Inspector Morse: Deceived By Flight [VHS] [Import]"(輸入版VHS)

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象牙の塔を巡る権力争いと、それに纏わる復讐劇。犯人がやや唐突に姿を現した印象も。

モース警部シリーズ Vol.9「最後の敵」v1.jpgモース第9話/最後の敵 dvd.jpg モース第9話/最後の敵 dvd2.jpg
モース警部シリーズ Vol.9「最後の敵」【字幕版】[VHS]」"Inspector Morse: Last Enemy [DVD] [Import]"(2002)"Inspector Morse: Last Enemy Set [DVD] [Import]"(2005) 右下:ルイス部長刑事(Kevin Whately)/モース主任警部(John Thaw)/ラッセル検視医(Amanda Hillwood)
Inspector Morse Last Enemy.jpgAmandy Hillwood 2.jpg 運河で首と両手脚が切断された死体が見つかる。時を同じくして、オックスフォード大学時代の同級生で同大学の学寮長を務める旧友アレックス・リース(バリー・フォスター)から、ケリッジ博士(テニエル・エヴァンス)が失踪していると相談を受けたモース。死体の状況から殺害されたのは博士だと思われたが...。一方、博士課程を修了したばかりのデボラ・バーンズ(ビーティ・エドニー)は、自分が特別研究員になれなかったのはケリッジ博士が反対票を投じたからだと思い込み博士に直接尋ねると、ケリッジは反対したのは自分ではなく、学寮長のリースだと言う。リースは彼女の博士論文の指導担当で、共著で本を出し、更には2人の間に肉体関係まであったのだが―。

"Inspector Morse: Last Enemy [VHS] [Import]"

モース第9話/最後の敵 dvd 2011.jpg 英国ITVの「主任警部モース」シリーズの第9話で(TV用のオリジナルでコリン・デクスターは"原案"提供。但し、ベースとなっているデクスターによる原作あり(『謎まで三マイル(The Riddle of the Third Mile)』(1983)) 、1989年に本国で放映され、1999年に日本語字幕付きVHSが発売されています。

 1つ前の「ハンベリー・ハウスの殺人」が一見、学寮長候補同士の争いに起因する事件と思わせて実は夫婦の愛憎劇だったのに対し、こちらはストレートに象牙の塔を巡る権力争いと、それに纏わる復讐劇でした(「シェルドン講師」とはそれほど名誉ある地位なのか)。

"Inspector Morse Set Three: The Last Enemy [DVD] [Import]"(2011)
(Last Bus to Woodstock /Ghost in the Machine /The Last Enemy) 

 殺されたと思ったら実は生きていたケリッジ教授も結局は殺され、モースが疑いを抱いていた学寮長のリースまで殺されてしまう―そうなると残るはなかなか姿を見せないあの人物が犯人かなと、大方の予想はつきましたが、モースが街中を歩いていて見つかるぐらいなのに、それまで見つからなかったのがやや不自然なように思いました(ケリッジ博士だって、モースらが死んでいるのではないかと調べている間にニセ番組の出演交渉とかしているし。そのニセ番組を仕組んだのも犯人だったわけか)。

モース第9話/最後の敵 0.jpg リースまで殺されてしまったのは、実力の無い彼が"漁夫の利"を得たことに対する犯人の恨みでしょうか。女子大生の研究成果を自分のものとし、肉体関係まで持っておいて研究員には推さないというのは、まあ、殺されても仕方無いという感じでしたが。

 モース自身も、犯人の犯行に、単なる復讐ではなく、正義を正すという強い信念を見出しているようで、その犯人の「最後の敵」は病いだったわけかと。それにしても恩師が犯人とは...(モースが学生時代に優秀で、オックスフォードをトップで卒業できる頭脳を持っていながら学者の道を選ばなかったことが明かされる)。犯人は既に逮捕するまでもない状態だったけれど、こうした終わり方は『カインの娘たち』のドラマ版('96年)の方にもありました。

第9話/最後の敵 5.jpg第9話)/最後の敵 10.jpg それにしてもモースは、捜査中にビールを飲む回数がどんどん多くなるなあ。しかも、独身の気安さからか、リースの秘書キャロルに声掛けして彼女の行きつけのジャマイカ料理のレストランで歓談しています。

Morse & Carol Sharp

 その一方で、「お嬢さん」「ドクター」の呼び名で一悶着あった検視医のラッセル女医まで呑みに誘っている...。捜査の一環ということもあるでしょうが、モース自身、女性主任警部モース(第9話)/最後の敵 カメオ.jpgと呑みたがっているように見えました(上司のストレンジ警視正に罵倒され、歯医者にも苛められ、その上事件の解決が困難を極めれば、自宅でオペラを聴くだけではストレスは解消されないか)。

 恒例の原作者のカメオ出演、冒頭のシーンで運河の縁で釣り糸を垂れているオジさんがコリン・デクスターではないかなと思ったけれど、その川縁を散歩していてボートから降りてきた男と鉢合わせになる人がそうだったようです(途中のシーンでは釣り人の後ろを歩いているようですが、そんなシーンあった?)。

「主任警部モース(第9話)/最後の敵」●原題:INSPECTOR MORSE:THE LAST ENEMY●制作年:1988年●制作国:イギリス●本国放映:1989/01/11●監督:ジェームス・スコット●脚本:ピーター・バックマン●原案:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/アマンダ・ヒルウッド/バリー・フォスター/テニエル・エヴァンス/ビーティ・エドニー/シーアン・トーマス/マイケル・アルドリッジ●VHS発売:1999/07●発売元:日本クラウン(評価:★★★☆)

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かなり無理のあるトリックだけど、パトリシア・ホッジが良かったのでまあいいか。

第8話/ハンベリー・ハウスの殺人 dvd.jpg  第8話/ハンベリー・ハウスの殺人 01.jpg GHOST IN THE MACHINE.jpg
"Inspector Morse: Ghost in Machine [DVD] [Import]"(ハンベリー・ハウスの殺人)
ミシェル(Irina Brook)/レディ・ハンベリー(Patricia Hodge)
Irina Brook.gifPatricia Hodge 2.gif オックスフォード大学の学寮長候補ハンベリー卿の大邸宅から、数点の絵画が盗まれ、モースはルイスと気乗りしない窃盗事件の捜査を開始するが、窃盗事件の後に失踪していた絵の所有者ハンベリー卿が、邸の敷地内で死体となっているのを発見する。更に、邸付近でブレーキに細工されたクルマの事故に遭遇、亡くなった男は、邸で子守に雇われていたフランス人のミシェル(イリーナ・ブルック)の恋人ロジャーで、ミシェルはレディ・ハンベリー(パトリシア・ホッジ)から突然の解雇を言い渡されていた。ロジャーの所持品から脅迫文が見つかり、ハンベリー卿を何らかのネタで脅迫していたらしい―。

第8話/ハンベリー・ハウスの殺人 04v.jpg 英国ITVの「主任警部モース」シリーズの第8話で、以降第28話まで、「モース主任警部シリーズ」の原作者コリン・デクスターが原案を示して脚本家が仕上げるというスタイルが続きます。この第8話は1989年に本国で放映され、1999年に日本語字幕付きVHSが発売されています。

 学寮長の地位争いによる殺人かと思わせておいて実は愛憎劇でした。学寮長候補の夫は写実的な裸体画が好みであるばかりでなく、子守嬢をモデルにヌード写真を撮るという趣味もあったわけで、でも妻の躰には触れない―それでもって妻は庭師(わっくてイケメン、加えてハロー校出身のインテリ)と不倫し、結婚まで考えていたということか。

 パトリシア・ホッジ演じるレディ・ハンベリーは、荘厳な邸に住む貴婦人の風格がありました。それでいて愛情面で満たされていないという、そうした女性の内面も上手く表現していたように思います。

Inspector Morse: Ghost in the Machine [VHS] [Import]

 あちらの貴族って、地所内に一族の霊廟があるんだなあと(アガサ・クリスティの『パディントン発4時50分』のクラッケンソープ邸もそうだった)。死体を霊廟に置いたことで、強盗ではなく一族の誰かによる犯行だという疑いをモースに抱かせてしまったわけですが、それにしても、一旦「他殺」にみせかけて実は自殺だったという方向に導くとは、随分と凝った手を使ったものだなあ。自殺にしておいた方が名誉が守られ子どもへの教育上もその方が望ましいというのはかなり無理な理屈で、裏の裏をかいたつもりでもモースには通用しませんでした。

第8話/ハンベリー・ハウスの殺人 03.jpg ラストで実行犯が殺人容疑で逮捕され、手錠を掛けられて連行されますが(かなり惨め)、一方のレディは娘と別れの言葉を交わす(手錠を掛けられることもない)―でも、裁判が始まったら「殺人」と「殺人教唆」は同等の扱いであり、この場合むしろ「殺人教唆」の方が罪が重いんじゃないかな。

 ロンドンのコヴェント・ガーデンで歌劇「トスカ」を観劇していたというレディのアリバイ供述に対し、モースも偶々ロンドンからの帰路、「トスカ」のプログラムを見ていたというのはやや出来過ぎですが(モースはレディのマリア・カラスに対する低評価でややむっとしていた)、プラシド・ドミンゴも出ていたのに値打ちもののプログラムを買わなかったことに疑念を持つというのは、モースならではの推理でした(ルイスには無理)。そのドミンゴは、声の不調でその夜は舞台に立たなかったことが判明したところからアリバイは崩れていきます。

GHOST IN THE MACHINE house.jpgAmandy Hillwood 1.jpg 今回からこれまでの検死医マックスに代わって女医ラッセル(アマンダ・ヒルウッド)が登場、モースが「お嬢さん」と呼ぶと「ドクター」と呼んで欲しいと、早速2人はぶつかっています。

女医ラッセル(Amanda Hillwood)

 邸(馬鹿デカくて豪勢!)の玄関に立っていつも見張りをしている制服姿の警官がいつの間にか若い巡査から中年の巡査に変わっている場面があって、あれがコリン・デクスターではないかな(違っているかもしれないけれど)。

Patricia Hodge.jpg「主任警部モース(第8話)/ハンベリー・ハウスの殺人」●原題:INSPECTOR MORSE:GHOST IN THE MACHINE●制作年:1988年●制作国:イギリス●本国放映:1989/01/04●監督:●脚本:ジュリアン・ミッチェル●原案:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/アマンダ・ヒルウッド/マイケル・ゴドリー/パトリシア・ホッジ/クリフォード・ローズ/バーナード・ロイド●VHS発売:1999/06●発売元:日本クラウン(評価:★★★☆)

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原作シリーズ第1作のドラマ化。映像化作品は映像化作品としてそこそこ楽しめたといった感じ。

モース(第5話)/ウッドストック行最終バス dvd.jpg モース(第5話)/ウッドストック行最終バス 01.jpg     ウッドストック行最終バス 文庫.jpg ウッドストック行最終バス hpm.jpg
Inspector Morse: Last Bus to Woodstock [DVD] [Import]」Terrence Hardiman As Clive Palmer 「ウッドストック行最終バス (ハヤカワ・ミステリ文庫)」「ウッドストック行最終バス (1976年) (世界ミステリシリーズ)

モース(第5話)/ウッドストック行最終バス 原著.jpg 夕闇迫るオックスフォードで、なかなか来ないウッドストック行きのバスにしびれを切らして、2人の娘がヒッチハイクをすることに。その晩、ウッドストックの酒場の中庭で、2人の娘の1人シルビアが死体で見つかる。シルビアはその日、もう1人の娘とバス停でバスを待っていたのを目撃されていたのだが、バスに乗った形跡はなく、彼女は赤いクルマの何者かの誘いに乗ったようだ。また、彼女が持っていた封筒の宛先は、勤務先の秘書部長ジェニファー・コールビーになっていた。もう1人の娘は誰でどこに消えたのか、なぜ名乗り出ないのか? テレズ・バレイ警察のモース主任警部は、ルイス部長刑事とともに事件捜査に当たる―。

 原作『ウッドストック行最終バス』(原題:Last Bus to Woodstock)は、コリン・デクスターが1975年に発表した「モース主任警部」シリーズの長編第1作。英国ITVの「主任警部モース」シリーズの第7話として1988年に本国で放映され、日本では2001年5月にNHK-BS2で放映されていますが、その前に、1999年に日本語字幕付きVHSが発売されています。

 記念すべき原作シリーズの第1作ということもあってか、第5話の「キドリントンから消えた娘」のように原作と犯人を変えてしまうようなことはしてなかったようですが、真犯人が容疑者として浮かび上ってくるのは原作よりかなり後の方になっているのでは。原作を知っていれば、まだかまだかという感じですが、知らないと、第一発見者のジョンを皮切りに、さんざん怪しい人物が出てきて、モースがミスリードさせられた(と言うより犯人の見当がつかないまま)結構最後の方で突然新たな容疑者が浮かび上がってきたという感じではないでしょうか。でも、最終的にその人物が真犯人であると判るのが最後の最後になってというのは原作も同じだったように思います。

モース(第5話)/ウッドストック行最終バス 02.jpg 大学講師バーナードは大学の正教授を目指していて(その割には年齢を喰っている)、妻のマーガレットはその尻を叩いている感じでしたが、あまりに妻に言われ続けると、女子大生を誘惑して気晴らしをしたいという気になるのか(それとも単なるスケベ老人か)。夫がシルビアを轢き殺したと思い込んだマーガレットは、クルマのタイヤを破棄したりして(確かにシルビアをヒッチしたのはバーナードだったが、シルビアの事故死に殺人の疑念があることは報じられていなかったのか)懸命に証拠隠滅を図るけれども、これも夫のためと言うより、その地位を守るため。しかし、その頃には、最初の2人の娘の目撃者であるとともに、超人的記憶力を持つ推理好きお婆さんの証言で、クルマの持主は特定されていた...。

Inspector Morse:Last Bus to Woodstock [VHS].jpg 片や、シルビアが勤めていた会社の秘書部長ジェニファーは、若い女性たちを自宅に下宿させていて、大学教授に言い寄られた奥手の文学少女の悩みを聞いてあげたりもしながら、一方で自身は社長クライブ(テレンス・ハーディマン)と不倫関係にあり、社長に奥さんと別れるよう迫る様はやや強引だったなあ(もう、愛欲の権化という感じ)。原作ではジェニファーは、大学講師バーナードとその愛人の橋渡しもしていることになっています。なぜならば、その愛人というのが、やはりジェニファーのところに下宿している看護婦であり、その点は原作とこの映像化作品は同じ。犯人が誰かは知っていても、犯行動機がイマイチ記憶に無かったのは、ある種衝動的とも言える殺人だったからかもしれません。

 これも原作を読んでかなりの年月を経ているため、映像化作品は映像化作品としてそこそこ楽しめたといった感じでしょうか。このシリーズ、原作者コリン・デクスター自身が毎回登場しているそうですが、いつもどこに出ているのか不明なんだけど、今回はパブの客の一人(チェックのセーターを着ている)として出ていたのが判りました。
Inspector Morse: Last Bus to Woodstock [VHS] [Import]
    
モース第9話/最後の敵 dvd 2011.jpg「主任警部モース(第7話)/ウッドストック行最終バス」●原題:INSPECTOR MORSE:LAST BUS TO WOODSTOCK●制作年:1988年●制作国:イギリス●本国放映:1988/03/22●監督:ピーター・デュフェル●脚本:マイケル・ウィッルコックス●原作:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/アンソニー・ベイト/テレンス・ハーディマン/ファビア・ドレイク/ジル・ベイカー●VHS発売:1999/05●発売元:日本クラウン●日本放映:2001/05(NHK-BS2)(評価:★★★☆)

"Inspector Morse Set Three: The Last Enemy [DVD] [Import]"(2011)
(Last Bus to Woodstock /Ghost in the Machine /The Last Enemy)

《読書MEMO》
●モース警部シリーズ(原作発表順)
 ・ウッドストック行最終バス Last Bus To Woodstock
 ・キドリントンから消えた娘 Last Seen Wearing
 ・ニコラス・クインの静かな世界 The Silent World of Nicholas Quinn
 ・死者たちの礼拝 Service of all the Dead (1979年CWA「シルバー・ダガー賞」受賞)
 ・ジェリコ街の女 The Dead of Jericho (1981年CWA「シルバー・ダガー賞」受賞)
 ・謎まで三マイル The Riddle of the Third Mile
 ・別館三号室の男 The Secret of Annexe 3
 ・オックスフォード運河の殺人 The Wench is Dead (1989年CWA「ゴールド・ダガー賞」受賞)
 ・消えた装身具 The Jewel That was Ours
 ・森を抜ける道 The Way Through the Woods(1992年CWA「ゴールド・ダガー賞」受賞)
 ・カインの娘たち The Daughters of Cain
 ・死はわが隣人 Death is Now My Neighbour
 ・悔恨の日 The Remorseful Day

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第一容疑者がどんどん入れ替わる。原作改変に拘泥せず観れば、独立した作品として楽しめた。

INSPECTOR MORSE:LAST SEEN WEARING dvd.jpgキドリントンから消えた娘 01.jpg キドリントンから消えた娘 03.jpg
Inspector Morse: Last Seen Wearing [DVD] [Import]

 2年前に失踪して以来、行方の知れなかった裕福な家庭の女子校生の娘バレリーから両親に無事を知らせる手紙が届いた。彼女は生きているのか、だとしたら今はどこでどうしているのか。だが捜査を引き継いだ テレズ・バレイ警察のモース主任警部(ジョン・ソウ)は、ルイス部長刑事(ケヴィン・ウェイトリー)に「彼女は死んでいる」との自らの直感を述べる―。

LAST SEEN WEARING.jpgキドリントンから消えた娘 文庫.png 原作『キドリントンから消えた娘』(原題:Last Seen Wearing)は、コリン・デクスターが1976年に発表した「モース主任警部」シリーズの長編第2作で、第1作『ウッドストック行最終バス』(1975)と並んで評価の高い作品。1987年から始まった英国ITVの「主任警部モース」シリーズの第5話として1988年に本国で放映され、日本では2001年5月3日にNHK-BS2で放映、その後ミステリチャンネルでも放映されています(但し、それに先んじて1999年に日本語字幕付きVHSが発売されている)。
キドリントンから消えた娘 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
"Last Seen Wearing"
 失踪した娘バレリーは既に死んでいるとのモースの直観はあっさり外れ、その後、失踪事件の第一容疑者が次々と入れ替わるのは原作と同じです。モースがバレリーの交友関係を調べていくうちに、彼女の男友達の部屋でマリファナが見つかり、また、彼女が妊娠していたことが判ったりしますが、彼女の男関係が結構"乱脈"気味で、彼女に関わったと思われる疑わしい男が次々現れます。そうした中、女子校の副校長シェリル・ベインズが殺害されますが、こちらの事件も第一容疑者がどんどん入れ替わっていくという展開です。

 原作の重厚感も良かったように思いますが、モースの"妄想的"推理に多くのページを割いており、その点、テレビドラマ版はテンポが良くて楽しめました。原作を読んだのは随分前なので、犯人すら虚(うろ)覚えでしたが、これ、原作と犯人も結末も違えているんじゃないかな。バレリーの両親はこんな瀟洒な家に住んではおらず、彼女が通っていた学校も学費の高い私立のお嬢様学校ではなく、普通の庶民が行く学校だったのでは。殺害された副校長が女性になっているため(原作では男性)、その辺りから若干原作と雰囲気が違ってきた部分もありましたが、これはこれで楽しめました。

キドリントンから消えた娘 02.jpg バレリーは若いフランス語の補助教員ディヴィッド・エイカムとも、女子校の校長ドナルド・フィリップソンとも関係していたということなのでしょう。それを知った女性副校長(彼女は男性には関心が無い。つまりレズビアン?)は、そのことをネタに校長を脅して副校長の座を掴んだということのようです(フランス語教師はクビになって別の学校へ転職した?)。校長はバレリーの母親グレース(フランセス・トーメルティ)とも関係していて、グレースはバレリーがジョージの子供ではないことを仄めかしていますが、どうやらジョージも血の繋がりのない娘バレリーと関係していたみたいで、そのことに頭にきたグレースが校長との不倫に走り、その現場を見てしまった娘バレリーがショックを受けて家を出たというのが、2年前の彼女の失踪の原因だったようです。

 ラスト近くで、校長の妻が夫と不倫関係にあったバレリーの母親グレースと対峙し、そこで奇妙な連帯感が生まれ、そこへひょっこり現れたのが...と、かなりドロドロしたプロセスだったにも関わらず、最後は過度に後味が悪くならないように纏めた感じで、テレビ版らしい改変でしたが、個人的にはそう悪くないように思えました。

 原作を読んだ直後に観たら「え~っ」という感じだったかもしれないけれど、原作を読んでから年月を置いて映像化作品を観ると、改変に拘泥せず独立した作品として楽しめるというのはあるのかもしれません。
 エリザベス・ハーレー(Elizabeth Hurley)が女学生役で出ていますが、「幻の城/バイロンとシェリー」('88年/英)で劇場映画にデビューする前で、当時は無名だったと思われます。

エリザベス・ハーレイ(Elizabeth Hurley).jpgエリザベス・ハーレー.jpg「主任警部モース(第5話)/キドリントンから消えた娘」●原題:INSPECTOR MORSE:LAST SEEN WEARING●制作年:1988年●制作国:イギリス●本国放映:1988/03/08●監督:エドワード・ベネット●脚本:トーマス・エリス●原作:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/ピーター・マッケリー/フランセス・トーメルティ/メリッサ・シモンズ/フィリップ・フレサートン/スザンヌ・ベルティシュ/グリーン・ヒューストン/ジュリア・サワルハ/エリザベス・ハーレー●VHS発売:1999/04●発売元:日本クラウン●日本放映:2001/05 (NHK-BS2)(評価:★★★★)

1-IMG_0390.JPG●本国個人サイト (Muffy Aldrich The Daily Prep

My Favorite Inspector Morse.jpg◎ Here are some favorite episodes (or characters or scenes or...):
Last Seen Wearing 第5話/キドリントンから消えた娘)- Morse's best line, "We ought to be able to arrest him for his taste", after surveying a suspect's flat. The headmaster gives a nearly-comedic dramatic performance (and in one scene in a very nice Irish Fisherman's sweater).
Last Bus to Woodstock 第7話/ウッドストック行き最終バス)- Oxford politics; pub murder; an old Volvo; and perhaps Morse's best withering glance.
Ghost in the Machine 第8話/ハンベリー・ハウスの殺人)- A supremely snobbish and delightful performance by Patricia Hodge; a discussion of appropriateness of school ties worn as belts; and Morse's commentary on the distastefulness of social envy. This might be a good "first episode" to watch.
Deceived by Flight 第10話/欺かれた過去)- Simply marvelous cricket scenes with equally marvelous cricket clothing.
Driven to Distraction第14話/死を呼ぶドライヴ)- A love of the Mark 2; creepy; Morse on the edge.
Happy Families (第22話/ハッピー・ファミリー)- Two dreadful grown sons (one of whom is played by Martin Clunes, Doc Martin) with the most enviable knitwear. And a moat.
The Day of the Devil (第27話/サタンが巣くう日)- By far the creepiest of all, complete with church pipe organs, vicars and the underground of Oxford.
Twilight of the Gods (第28話/神々の黄昏)- Sir John Gielgud using Oxford England and Oxford Mississippi in the same sentence; and the always wonderful Robert Hardy.
Death Is Now My Neighbour (第31話/死は我が隣人)- Richard Briers (Hector Naismith MacDonald from Monarch of the Glen), Roger Allam (who would later be in Endeavor), and Maggie Steed more than make up for Holley Chant's American accent. Oxford politics and the reveal of Morse's first name.

◎ And my honorable mentions are:
The Last Enemy 第9話/最後の敵)- Good Guernsey in the opening scene; impressive Master's quarters; and bespoke clues.
The Infernal Serpent 第12話/邪悪な蛇)- Terrible topic but stars the wonderful Geoffrey Palmer (Lionel from As Time Goes By).
The Sins of the Fathers 第13話/ラドフォード家の遺産)- Morse solving a crime at a brewery.

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ニューヨークという大都会を舞台にしたダスティン・ホフマン主演'69年作品2作。

ジョンとメリー [VHS].jpgジョンとメリー [DVD].jpg 真夜中のカーボーイ dvd.jpg 卒業 [DVD] L.jpg
ジョンとメリー [DVD]」「真夜中のカーボーイ [DVD]」「卒業 [DVD]

ジョンとメリー 1.jpg マンハッタンに住む建築技師ジョン(ダスティン・ホフマン)のマンションで目覚めたメリー(ミア・ファロー)は、自分がどこにいるのか暫くの間分からなかった。昨晩、独身男女が集まるバーで2人は出会い、互いの名前も聞かないまま一夜を共にしたのだった。メリーは、整頓されたジョンの家を見て女の影を感じる。ジョンはかつてファッションモデルと同棲していた過去があり、メリーはある有力政治家と愛人関係にあった。朝食を食べ、昼食まで共にした2人は、とりとめのない会話をしながらも、次第に惹かれ合っていくが、ちょっとした出来事のためメリーは帰ってしまう―。

 ピーター・イエーツ(1929-2011/享年81)監督の「ジョンとメリー」('69年)は、行きずりの一夜を共にした男女の翌朝からの1日を描いたもので、男女の出会いを描いた何とはない話であり、しかも基本的に密室劇なのですが、2人のそれぞれの回想と現在の気持ちを表す独白を挟みながらストーリーが巧みに展開していき、2人の関係はどうなるのだろうかと引き込まれて観てしまう作品でした。

ジョンとメリー 4.jpg 脚本は「シャレード」('63年)の原作者ジョン・モーティマーですが、構成の巧みさもさることながら、演じているダスティン・ホフマンとミア・ファローがそもそも演技達者、とりわけダスティン・ホフマン演じるジョンの、そのままメリーに居ついて欲しいような欲しくないようなその辺りの微妙に揺れる心情が可笑しく(ジョンの方に感情移入して観たというのもあるが)ホントにこの人上手いなあと思いました(でも、ミア・ファローも良かった)。

ジョンとメリー 2.jpg 最後に互いの気持ちを理解し合えた2人が、そこで初めて「ぼくはジョンだ」「私はメリーよ」という名乗り合う終わり方もお洒落(その時大方の観客は初めて、そっか、2人はまだ名前も教え合っていなかったのかと気づいたのでは)。観た当時は、これが日本映画だったら、もっとウェットな感じになってしまうのだろうなあと思って、ニューヨークでの一人暮らしに憧れたりもしましたが、逆に、ニューヨークのような大都会で恋人も無く一人で暮らすということになると、(日本以上に)とことん"孤独"に陥るのかも知れないなあとも思ったりして。

真夜中のカーボーイ1.jpg そうした大都会での孤独をより端的に描いた作品が、ダスティン・ホフマンがこの作品の前に出演した同年公開のジョン・シュレシンジャー(1926-2003/享年77)監督の「真夜中のカーボーイ」('69年)であり、ジョン・ヴォイトが、"いい男ぶり"で名を挙げようとテキサスからニューヨークに出てきて娼婦に金を巻き上げられてしまう青年ジョーを演じ、一方のダスティン・ホフマンは、スラム街に住む怪しいホームレスのリコ(一旦は、こちらもジョーから金を巻き上げる)役という、その前のダスティン・ホフマンの卒業 ダスティン・ホフマン .jpg主演作であり、彼自身の主演第1作だったマイク・ニコルズ監督の「卒業」('67年)の優等生役とはうって変った役柄を演じました(「卒業」で主人公が通うコロンビア大学もニューヨーク・マンハッタンにある)。

卒業 ダスティン・ホフマン/キャサリン・ロス.jpg 映画デビューした年に「卒業」でアカデミー主演男優賞ノミネートを受け(この作品、今観ると「サウンド・オブ・サイレンス」をはじめ「スカボロ・フェアー」「ミセス・ロビンソン」等々、サイモン&ガー卒業(1967).jpgファンクルのヒット曲のオン・パレードで、そちらの懐かしさの方が先に立つ)、主演第2作・第3作が「真夜中のカーボーイ」(これもアカデミー主演男優賞ノミネート)と「ジョンとメリー」であるというのもスゴイですが、ゴールデングローブ卒業 1967 2.jpg賞新人賞を受賞した「卒業」の、その演技スタイルとは全く異なる演技をその後次々にみせているところがまたスゴイです(「卒業」で英国アカデミー賞新人賞を受賞し、「真夜中のカーボーイ」と「ジョンとメリー」で同賞主演男優賞を受賞している)。

真夜中のカーボーイQ.jpg 3作品共にアメリカン・ニュー・シネマと呼ばれる作品ですが、その代表作として最も挙げられるのは「真夜中のカーボーイ」でしょう。ニューヨークを逃れ南国のフロリダへ旅立つ乗り合いバスの中でリコが息を引き取るという終わり方も、その系譜を強く打ち出しているように思われます。「真夜中のカーボーイ」も「ジョンとメ真夜中のカーボーイs.jpgリー」も傑作であり、ダスティン・ホフマンはこの主演第2作と第3作で演技派としての名声を確立してしまったわけですが、個人的には「ジョンとメリー」の方が、ラストの明るさもあってかしっくりきました。一方の「真夜中のカーボーイ」の方は、ジョーとリコの奇妙な友情関係にホモセクシュアルの臭いが感じられ、当時としてはやや引いた印象を個人的には抱きましたが、2人の関係を精神的なホモセクシュアルと見る見方は今や当たり前のものとなっており、その分だけ、今観ると逆に抵抗は感じられないかも。

ミスター・グッドバーを探して [VHS].jpg 「ジョンとメリー」に出てくる"Singles Bar"(独身者専門バー)を舞台としたものでは、リチャード・ブルックス(1912-1992/享年72)監督・脚本、ダイアン・キートン主演の「ミスター・グッドバーを探して」('77年)があり、こちらはジュディス・ロスナーが1975年に発表したベストセラー小説の映画化作品です。
ミスター・グッドバーを探して [VHS]

ミスター・グッドバーを探して1.jpg ダイアン・キートン演じる主人公の教師はセックスでしか自己の存在を確認できない女性で、原作は1973年にニューヨーク聾唖学校の28歳の女性教師がバーで知り合った男に殺害された「ロズアン・クイン殺人事件」という、日本における「東電OL殺人事件」(1997年)と同じように、当時のアメリカ国内で、殺人事件そのものよりも被害者の二面的なライフスタイルが話題となった事件を基にしており、当然のことながら結末は「ジョンとメリー」とは裏腹に暗いものでした。主人公の女教師は最後バーで拾った男(トム・ベレンジャー)に殺害されますが、その前に女教師に絡むチンピラ役を、当時全く無名のリチャード・ギアが演じています(殺害犯役のトム・ベレンジャーも当時未だマイナーだった)。

恋におちて 1984.jpg 何れもニューヨークを舞台にそこに生きる人間の孤独を描いたものですが、ニューヨークを舞台に男女の出会いを描いた作品がその後は暗いものばかりなっているかと言えばそうでもなく、ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープの演技派2人が共演した「恋におちて」('84年)や、メグ・ライアンとトム・ハンクスによるマンハッタンのアッパーウエストを舞台にしたラブコメディ「ユー・ガット・メール」('98年)など、明るいラブストーリーの系譜は生きています(「ユー・ガット・メール」は1940年に製作されたエルンスト・ルビッチ監督の「街角/桃色(ピンク)の店」のリメイク)。
「恋におちて」('84年)

ユー・ガット・メール 01.jpg 「恋におちて」はグランド・セントラル駅の書店での出会いと通勤電車での再会、「ユー・ガット・メール」はインターネット上での出会いと、両作の間にも時の流れを感じますが、前者はクリスマス・プレゼントとして買った本を2人が取り違えてしまうという偶然に端を発し、後者は、メグ・ライアン演じる主人公は絵本書店主、トム・ハンクス演じる男は安売り書店チェーンの御曹司と、実は2人は商売敵だったという偶然のオマケ付き。そのことに起因するバッドエンドの原作を、ハッピーエンドに改変しています。
「ユー・ガット・メール」('98年)

めぐり逢えたら 映画 1.jpg トム・ハンクスとメグ・ライアンは「めぐり逢えたら」('93年)の時と同じ顔合わせで、こちらもレオ・マッケリー監督、ケーリー・グラント、デボラ・カー主演の「めぐり逢い」('57年)にヒントを得ている作品ですが(「めぐり逢い」そのものが同じくレオ・マッケリー監督、アイリーン・ダン、シャルル・ボワイエ主演の「邂逅」('39年)のリメイク作品)、エンパイア・ステート・ビルの展望台で再開を約するのは「めぐり逢い」と同じ。但し、「めぐり逢い」ではケーリー・グラント演じるテリーの事故のため2人の再会は果たせませんでしたが、「めぐり逢えたら」の2人は無事に再開出来るという、こちらもオリジナルをハッピーエンドに改変しています。
「めぐり逢えたら」('93年)

 最近のものになればなるほど、男女双方または何れかに家族や恋人がいたりして話がややこしくなったりもしていますが、それでもハッピーエンド系の方が主流かな。興業的に安定性が高いというのもあるのでしょう。「恋におちて」は、古典的ストーリーをデ・ニーロ、ストリープの演技力で引っぱっている感じですが、2人とも出演時点ですでに大物俳優であるだけに、逆にストーリーの凡庸さが目立ち、やや退屈?(もっと若い時に演じて欲しかった)。但し、「恋におちて」「めぐり逢えたら」「ユー・ガット・メール」の何れも役者の演技はしっかりしていて、ストーリーに多分に偶然の要素がありながらも、ディテールの演出や表現においてのリアリティはありました。しかしながら、物語の構成としては"定番の踏襲"と言うか、「ジョンとメリー」を観て感じた時のような新鮮味は感じられませんでした。

 こうして見ると、ニューヨークという街は、「真夜中のカーボーイ」や「ミスター・グッドバーを探して」に出てくる人間の孤独を浮き彫りにするような暗部は内包してはいるものの、映画における男女の出会いや再会の舞台として昔も今もサマになる街でもあるとも言えるのかもしれません(ダスティン・ホフマンは同じ年に全く異なるキャラクターで、ニューヨークを舞台に孤独な男性の「明・暗」両面を演じてみせたわけだ。これぞ名優の証!)。

ジョンとメリー [VHS]
JOHN AND MARY 1969.jpgジョンとメリーdvd3.jpg「ジョンとメリー」●原題:JOHN AND MARY●制作年:1969年●制作国:アメリカ●監督:ピーター・イェーツ●製作:ベン・カディッシュ●脚本:ジョン・モーティマー●撮影:ゲイン・レシャー●音楽:クインシー・ジョーンズ●原作:マーヴィン・ジョーンズ「ジョンとメリー」●時間:92分●出演:ダスティン・ホフマン/ミア・ファロー/マイケル・トーラン/サニー・グリフィン/スタンリー・ベック/三鷹オスカー.jpgタイン・デイリー/アリックス・エリアス●日本ジョンとメリーe.jpg公開:1969/12●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:三鷹東映(78-01-17)(評価:★★★★☆)●併映:「ひとりぼっちの青春」(シドニー・ポラック)/「草原の輝き」(エリア・カザン)三鷹東映 1977年9月3日、それまであった東映系封切館「三鷹東映」が3本立名画座として再スタート。1978年5月に「三鷹オスカー」に改称。1990(平成2)年12月30日閉館。

Dustin Hoffman and Mia Farrow/Photo from John and Mary (1969)

「真夜中のカーボーイ」●原題:MIDNIGHT COWBOY●制作年:1969年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・シュレシンジャー●製作:ジェローム・ヘルマン●脚本:ウォルド・ソルト●撮影:アダム・ホレンダー●音楽:ジョン・バリー●原作:ジェームズ・レオ・ハーリヒー「真夜中のカーボーイ」●時間:113真夜中のカーボーイ2.jpg真夜中のカーボーイ 映画dvd.jpg分●出演:ジョン・ヴォイト/ダスティン・ホフマン/シルヴィア・マイルズ/ジョン・マクギヴァー/ブレンダ・ヴァッカロ/バーナード・ヒューズ/ルース・ホワイト/ジェニファー・ソルト/ボブ・バラバン●日本公開:1969/10●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:早稲田松竹(78-05-20)(評価:★★★★)●併映:「俺たちに明日はない」(アーサー・ペン)
真夜中のカーボーイ [DVD]

「卒業」●原題:THE GRADUATE●制作年:1967年●制作国:アメリカ●監督:マイク・ニコルズ●製作:ローレンス・ター卒業 1967 pster.jpgマン●脚本:バック・ヘンリー/カルダー・ウィリンガム●撮影:ロバート・サーティース●音楽:ポール・サイモン卒業 1967 1.jpg/デイヴ・グルーシン●原作:チャールズ・ウェッブ●時間:92分●出演:ダスティン・ホフマン/アン・バンクロフト/キャサリン・ロス/マーレイ・ハミルトン/ウィリアム・ダリチャr-ド・ドレイファス 卒業.jpgニエルズ/エリザベス・ウィルソン/バック・ヘンリー/エドラ・ゲイル/リチャード・ドレイファス●日本公開:1968/06●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:池袋・テアトルダイヤ(83-02-05)(評価:★★★★)●併映:「帰郷」(ハル・アシュビー)
卒業 [DVD]

映画パンフレット 「ミスターグッドバーを探して」.jpg「ミスター・グッドバーを探して」●原題:LOOKING FOR MR. GOODBAR●制作年:1977年●制作国:アメリカ●監督・脚本:リチャード・ブルックス●製作:フレディ・フィールズ●撮影:ウィリアム・A・フレイカー●音楽:アーティ・ケイン●原作:ジュディス・ロスナー「ミスター・グッドバーを探して」●時間:135分●出演:ダイアン・キートン/アラン・フェインスタイン/リチャード・カイリー/チューズデイ・ウェルド/トム・ベレンジャー/ウィリアム・アザートン/リチャード・ギア●日本公開:1978/03●配給:パラマウント=CIC●最初に観た場所:飯田橋・佳作座(79-02-04)(評価:★★☆)●併映:「流されて...」(リナ・ウェルトミューラー)
映画パンフレット 「ミスターグッドバーを探して」監督リチャード・ブルックス 出演ダイアン・キートン

FALLING IN LOVE 1984.jpg恋におちて 1984 dvd.jpg「恋におちて」●原題:FALLING IN LOVE●制作年:1984年●制作国:アメリカ●監督:ウール・グロスバード●製作:マーヴィン・ワース●脚本:マイケル・クリストファー●撮影:ピーター・サシツキー●音楽:デイヴ・グルーシン●時間:106分●出演:ロバート・デ・ニーロ/メリル・ストリープ/ハーヴェイ・カイテル/ジェーン・カツマレク/ジョージ・マーティン/デイヴィッド・クレノン/ダイアン・ウィースト/ヴィクター・アルゴ●日本公開:1985/03●配給:ユニヴァーサル映画配給●最初に観た場所:テアトル池袋(86-10-12)(評価:★★★)●併映:「愛と哀しみの果て」(シドニー・ポラック)
恋におちて [DVD]

YOU'VE GOT MAIL.jpgユー・ガット・メール dvd.jpg「ユー・ガット・メール」●原題:YOU'VE GOT MAIL●制作年:1998年●制作国:アメリカ●監督:ノーラ・エフロン●製作:ノーラ・エフロン/ローレン・シュラー・ドナー●脚本:ノーラ・エフロン/デリア・エフロン●撮影:ジョン・リンドリー●音楽:ジョージ・フェントン●原作:ミクロス・ラズロ●時間:119分●出演:トム・ハンクス/メグ・ライアン/グレッグ・キニア/パーカー・ポージー/ジーン・ステイプルトン/スティーヴ・ザーン/ヘザー・バーンズ/ダブニー・コールマン/ジョン・ランドルフ/ハリー・ハーシュ●日本公開:1999/02●配給:ワーナー・ブラザース映画配給(評価:★★★)ユー・ガット・メール [DVD]

SLEEPLESS IN SEATTLE.jpgめぐり逢えたら 映画 dvd.jpg「めぐり逢えたら」●原題:SLEEPLESS IN SEATTLE●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:ノーラ・エフロン●製作:ゲイリー・フォスター●脚本:ノーラ・エフロン/デヴィッド・S・ウォード●撮影:スヴェン・ニクヴィスト●音楽:マーク・シャイマン●原案:ジェフ・アーチ●時間:105分●出演:トム・ハンクス/メグ・ライアン/ビル・プルマン/ロス・マリンジャー/ルクランシェ・デュラン/ルクランシェ・デュラン/ギャビー・ホフマン/ヴィクター・ガーバー/リタ・ウィルソン/ロブ・ライナー●日本公開:1993/12●配給:コロンビア映画(評価:★★☆)めぐり逢えたら コレクターズ・エディション [DVD]

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やはり感動させられる「ロッキー」のシリーズ第1作。スタローンは自分で監督しない方がいい?

ロッキー 1976 dvd.jpg ロッキー2 dvd.jpg ロッキー3 dvd.jpg ロッキー4 dvd.jpg ステイン・アライブ dvd.jpg ランボー dvd.jpg
ロッキー(特別編) [DVD]」「ロッキー2 [DVD]」「ロッキー3 [DVD]」「ロッキー4 [DVD]」「ステイン・アライブ [DVD]」「ランボー/怒りの脱出 [DVD]

ロッキー 1976 02.jpg 「ロッキー」('76年)は、シルヴェスター・スタローン(1946年生まれ)が当時、映画オーディションに50回以上落選し、ポルノ映画への出演や用心棒などをして日々の生活費を稼ぐ暮らしの中で、プロボクシングのヘビー級タイトルマッチ「モハメド・アリ対チャック・ウェプナー戦」をテレビで観てウェプナーの善戦に感激し、それに触発されて3日間で脚本を書き上げプロダクションに売り込んだもので、プロダクション側はその脚本に7万5千ドルという、当時としては破格の値をつけたということですから、脚本自体が良かったのでしょう。

ロッキー 1976 01.jpg プロダクション側は主演にポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、アル・パチーノなどの有名スターを想定していたのに対し(ジェームズ・カーンなども有力な主演候補だった)、スタローンはあくまで自分が主演することに固執したため、最終的に36万ドルまで高騰した脚本は、スタローンの主演と引き換え条件に2万ドルまで減額されたそうな。でも、結果的にスタローンは無名俳優から一躍スターダムに躍り出たわけで、主演に固執して良かった...(逆に言えば、窮乏生活に慣れていたので、カネには固執していなかった)。

ロッキー 03.jpg 日本でも公開当時、誰もがこの作品を観に映画館に押し掛ける状況で、アカデミー賞作品賞受賞、キネマ旬報でも年間1位と高評価。こうなると逆に事前に情報が入り過ぎてしまい、結局個人的にはロードでは観に行かなかったのですが、後で「ロッキー2」('78年)と併せて名画座に降りてきた頃になって遅ればせながら観て、筋書きは分かっていても、やはり感動させられました。

ロッキー4 01.jpg 但し、スタローン自身が監督した「ロッキー2」の方はイマイチ、更に、今度こそロードでと観に行った「ロッキー3」('82年)では、対戦相手クラバー(ミスター・T)が全然強そうに見えないのが難で、これもイマイチ。それに比べると、「ロッキー4 炎の友情」('85年)は、ドラゴ(ドルフ・ラングレン)の登場で、多少シリーズ最後を盛り上げたという印象で、個人的にはまあまあ許せるかなという感じでしたが、スタローン自身はこの「ロッキー4 炎の友情」で、ゴールデンラズベリー賞の最低主演男優賞を受賞しています。
レッド・スコルピオン 1.jpg 一方、ロッキーより強そうに見えたドラゴを演じたドルフ・ラングレンは、その後「レッド・スコルピオン」('88年/米)に主演。アフリカ南部の共産主義国家に潜入したソ連の特殊部隊兵士の活躍を描くアクション映画でしたが、何だか動きが鈍くなったような...。空手家としての実績もあり、6か国語を話すインテリでもあるそうですが、スタローンRed Scorpion -  Dolph Lundgren.jpgレッド・スコルピオン dvd.jpg同様に監督業に進出する傍ら併せて俳優業を続けているものの、B級映画ばかり出ているなあ。因みに、「レッド・スコルピオン」のプロデューサーのジャック・エイブラモフはその後共和党保守派のロビイストとなり、汚職事件でFBIに拘束されていますが、この映画自体にも当初から南アの極右派(アパルトヘイト推進派)が資金提供しているとの噂が囁かれていたとのこと、但し、映画の中にとりたてて人種差別的表現はありません。 
レッド・スコルピオン [DVD]」 ドルフ・ラングレンはローランド・エメリッヒ監督の「ユニバーサル・ソルジャー」('92年)で、べトナム戦争で戦死したものの25年後に軍の秘密兵器として甦る特殊部隊兵ユニバーサル・ソルジャー ps.jpgユニバーサル・ソルジャー 1992.jpg士を演じていますが、ジャン=クロード・ヴァン・ダム演じる同じく甦ったもう一人の兵士の方が善玉なのに対し、ドルフ・ラングレンの方はヒール役(悪玉)というのが相変わらずでした(まあ、ドルフ・ラングレンの方が見た目が強そうだというのもあるかもしれないが、妥当な配役か)。観た時は可もなく不可もない娯楽作品という印象でしたがそこそこ人気があったのか、その後「ユニバーサル・ソルジャー/ザ・リターン」('99年)、「ユニバーサル・ソルジャー:リジェネレーション」('09年)が作られ、ジャン=クロード・ヴァン・ダムは両方に主演、ドルフ・ラングレンは'09年の方に出ています(2人とも中年にして頑張っている?)。

 スタローンについても、シリーズ最後と謳った「ロッキー4」でロッキー・シリーズは実際には終わらず、「ロッキー5 最後のドラマ」(Rocky V、'90年)、そして更に16年後の「ロッキー・ザ・ファイナル」(Rocky Balboa、'06年)と続いたわけで(「ロッキー5」はスタローン自身が失敗作であったことを認め、だから"ザ・ファイナル"を作ったとのこと)、最後60歳でボクサー役でリングに上がったスタローンはすごいと言えばすごいけれど、やはり無理があったと言わざるを得ないのではないでしょうか(ボクシング関係者の一部には、ボクシングを冒涜しているとの声もあった)。

スタローン&シュワルツェネッガー.jpg 「ロッキー2」以降はスタローン自身が監督しているのですが、ボディビルダーから俳優に転じ、更には州知事も務めたアーノルド・シュワルツェネッガー(1947年生まれ)と比べると、スタローンという人は根っから映画が好きなんだなあという気がします。二人が本格共演を果たした「大脱出」('13年)のプレミアで、スタローンは シュワルツェネッガーについて「20年間、本当に互いを激しく嫌い合っていたんだ」と告白していますが、とはいえ、「それはいいライバルはなかなか見つからないということの証。次第にその存在に感謝するようになる。そうやって競い合ってきたから、こうして二人ここにいるのかも」と今は互いの存在を 認め合っていることを明かしています。個人的には、そもそも映画への関わり方が二人は違うのではないかと。シュワルツェネッガーが「俳優」であるのに対し、スタローンは「映画人」という印象であり、脚本を書くか書かないかの違いは大きいように思います。

ステイン・アライブ01.jpg 但し、スタローンの映画監督としての力量はどうなのかはやや疑問符も...。作品への思い入れが先行しているような感じもあり、ついていけない人もいるのではないでしょうか。「ロッキー」に関しては、シリーズを通しての熱烈なファンが多くいるようですが、「ロッキー3」と「ロッキー4」の間の時期に、「サタデー・ナイト・フィーバー」('77年)の続編としてスタローンが監督した「ステイン・アライブ」('83年、脚本もスタローン)は特に見るべきものの無い作品で、この映画に主演したジョン・トラボルタの長期低迷のきっかけになった作品とも言えるのではないかと思います。

ランボー ちらし.jpgランボー 01.jpg 因みに「ランボー」('82年)のシリーズ作も、全4作全てスタローンの脚本または彼が脚本参加しているものでしたが、第1作(「ロッキー3」と同じ年に作られている)の「ランボー1人 vs. 警官千人」に始まり、「ランボー/怒りの脱出」('85年)では「ランボー1人vs.ベトナム軍」、ランボー3/怒りのアフガン dvd.jpg「ランボー3/怒りのアフガン」('88年)では「ランボー1人vs.ソ連軍10万人」とスケール・アップするにつれて、当初のランボーのアウトローの孤独と哀しみは消え、すっかり超人ヒーローになってしまい、「ランボー3/怒りのアフガン」などは、見ていてちっともハラハラしない...。しかも、今思えば皮肉なことに、この作品は、ランボーがアフガン・ゲリラと協力してソ連軍と戦う内容になっていて、当時のアフガン・ゲリラの一派が後のタリバン内の過激武装勢力になっていくわけです。

 「ランボー3/怒りのアフガン」ではスタローン自身も'88年ゴールデンラズベリー賞の最低主演男優賞に選ばれてしまったぐらいで(実は'85年にも「ランボー/怒りの脱出」と「ロッキー4 炎の友情」の"合わせ技"で同賞の最低主演男優賞を受賞している)、20年ぶりの続編「ランボー/最後の戦場」('08年)でその汚名返上を図ったのか、このシリーズで初めて自らメガホンをとりますが、こちらは個人的には未見。でも、この人、あんまり自分で監督しないほうが...。

ロッキー パンフ.jpgrocky 1976 poster.jpg「ロッキー」●原題:ROCKY●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・G・アヴィルドセン●製作:アーウィン・ウィンクラー/ロバート・チャートフ●脚本:シルヴェスター・スタローン●撮影:ジェームズ・グレイブ●音楽:ビル・コンティ●時間:119分●出演:シルヴェスター・スタローン/タリア・シャイア/バート・ヤング/バージェス・メレディス/カール・ウェザース●日本公開:1977/04●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:池袋・文芸坐(81-01-22)(評価:★★★★)●併映:「ロッキー2」(シルヴェスター・スタローン)
「ロッキー」パンフレット

ROCKY2 1979.jpg「ロッキー2」●原題:ROCKYⅡ●制作年:1979年●制作国:アメリカ●監督:シルヴェスター・スタローン●製作:アーウィン・ウィンクラー/ロバート・チャートフ●脚本:シルヴェスター・スタローン●撮影:ビル・バトラー●音楽:ビル・コンティ●時間:119分●出演:シルヴェスター・スタローン/タリア・シャイア/バート・ヤング/カール・ウェザース/バージェス・メレディス●日本公開:1979/09●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:池袋・文芸坐(81-01-22)(評価:★★)●併映:「ロッキー」(シルヴェスター・スタローン)

ロッキー3 02.jpg「ロッキー3」●原題:ROCKYⅢ●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:シルヴェスター・スタローン●製作:アーウィン・ウィンクラー/ロバート・チャートフ●脚本:シルヴェスター・スタローン●撮影:ビル・バトラー●音楽:ビル・コンティ●時間:99分●出演:シルヴェスター・スタローン/タリア・シャイア/バート・ヤング/カール・ウェザース/ミスター・T/ハルク・ホーガン/バージェス・メレディス/トニー・バートン/イアン・フリード/ウォーリー・テイラー/ジム・ヒル/ドン・シャーマン●日本公開:1982/07●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:有楽町・丸の内松竹(82-10-22)(評価:★★)
marunouti syotiku.jpg旧丸の内松竹1.jpg旧丸の内松竹2.jpg丸の内松竹(初代).jpg旧・丸の内松竹 前身は1925年オープンの「邦楽座」(後の「丸の内松竹」)。1957年7月、旧朝日新聞社裏手に「丸の内ピカデリー」オープン(地下に「丸の内松竹」再オープン)。1984年10月2日閉館。1987年10月3日 有楽町マリオン新館5階に後継館として新生「丸の内松竹」(現:丸の内ピカデリー3)がオープン。


「ロッキー4 炎の友情」●原題:ROCKY1977年8月6日 新宿京王 京王地下.jpg京王新宿ビル3.jpg京王三丁目ビル - 2.jpgⅣ●制作年:1985年●制作国:アメリカ●監督:シルヴェスター・スタローン●製作:アーウィン・ウィンクラー/ロバート・チャートフ●脚本:シルヴェスター・スタローン●撮影:ビル・バトラー●音楽:ビル・コンティ●時間:91分●出演:シルヴェスター・スタローン/タリア・シャイア/バート・ヤング/カール・ウェザース/ドルフ・ラングレン/ブリジット・ニールセン/ジェームス・ブラウン●日本公開:1986/06●配給:メトロ・ゴールドウィン・メイヤー/UA=UIP●最初に観た場所:新宿・京王2(86-06-07)(評価:★★★) 新宿京王・京王地下(京王2)新宿3丁目伊勢丹はす向い京王新宿ビル(現・京王三丁目ビルの場所)。1980年代後半に閉館。

レッド・スコルピオン bl.jpgレッド・スコルピオン  映画前売半券.jpg「レッド・スコルピオン」●原題:RED SCORPION●制作年:1989年●制作国:アメリカ●監督:ジョセフ・ジトー●製作:ジャック・エイブラモフ●脚本:アーン・オルセン●撮影:ホアオ・フェルナンデス●音楽:ジェイ・チャタウェイ●時間:106分●出演:ドルフ・ラングレン/M・エメット・ウォルシュ、アル・ホワイト/T・P・マッケンナ/カーメン・アルジェンツィアノ/ブライオン・ジェームズ/ジョセフ・ビッグウッド/ジェイ・チャタウエイ●日本公開:1989/01●配給:日本ヘラルド●最初に観た場所:三軒茶屋映劇(89-07-01)(評価:★★)●併映:「ダイ・ハード」(ジョン・マクティアナン)レッド・スコルピオン HDマスター版(Blu-ray Disc)
三軒茶屋映劇 2.jpg三軒茶屋シネマ/中央劇場.jpg三軒茶屋付近.png三軒茶屋映画劇場 1925年オープン(国道246号沿い現サンタワービル辺り)。1992(平成4)年3月13日閉館(左写真)。菅野 正 写真展 「平成ラストショー hp」より 同系列の三軒茶屋中央劇場(右写真中央)は1952年、世田谷通りの裏通り「なかみち街」にオープン。(「三軒茶屋中央劇場」も2013年2月14日閉館)  ①三軒茶屋東映(→三軒茶屋シネマ) ②三軒茶屋映劇(映画劇場)(現サンタワービル辺り) ③三軒茶屋中劇(中央劇場)

ユニバーサル・ソルジャー dvd 1992.jpgユニバーサル・ソルジャー1992 1.jpg「ユニバーサル・ソルジャー」●原題:UNIVERSAL SOLDIER●制作年:1992年●制作国:アメリカ●監督:ローランド・エメリッヒ●製作:アレン・シャピロ/クレイグ・ボームガーテン/ジョエル・B・マイケルズ●脚本:リチャード・ロススタイン/クリストファー・レイッチ/ディーン・デヴリン●撮影:カール・W・リンデンローブ●音楽:クリストファー・フランケ●時間:102分●出演:ジャン=クロード・ヴァン・ダム/ドルフ・ラングレン/アリー・ウォーカー/ジョセフ・マローン/エド・オロス/ジーン・デイヴィス/レオン・リッピー/ランス・ハワード/リリアン・ショウバン/チコ・ウェルズ/ジェリー・オーバック●日本公開:1992/11●配給:東宝東和(評価:★★★)
ユニバーサル・ソルジャー [DVD]

ステイン・アライブ dvd.jpgSTAYING ALIVE.jpg「ステイン・アライブ」●原題:STAYING ALIVE●制作年:1983年●制作国:アメリカ●監督:シルヴェスター・スタローン●製作:シルヴェスター・スタローン/ロバート・スティグウッド●脚本:シルヴェスター・スタローン/ノーマン・ウェクスラー●撮影:ニック・マクリーン●音楽:ビージーズ/フランク・スタローン●時間:96分●出演:ジョン・トラボルタ/シンシア・ローズ/フィノラ・ヒューズ/スティーヴ・新宿ジョイシネマ .jpgインウッド/ジュリー・ボヴァッソ/チャールズ・ウォード●日本公開:1983/12●配給:パラマウント映画=CIC●最初に観た場所:新宿ジョイシネマ(84-04-07)(評価:★★★)
新宿ジョイシネマ さよならフェスティバル.jpg新宿ジョイシネマ.jpg新宿ジョイシネマ 1947年12月「新宿地球座」としてオープン。1958(昭和33)年12月「地球会館」新築・落成、「新宿座」オープン。1984年1月「新宿ジョイシネマ」と改称。1995年7月~「新宿ジョイシネマ1」。(新宿ジョイシネマ2 1958年12月「新宿地球座」→1983年~「歌舞伎町松竹」→1995年7月~「新宿ジョイシネマ2」) 2009年5月31日(新宿ジョイシネマ1・2(地球会館)・3(中台ビル))閉館。[中写真:新宿劇場(1970年閉館)]

ランボー 82.jpgランボー1982.jpg「ランボー」●原題:FIRST BLOOD●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:テッド・コッチェフ●製作:バズ・フェイシャンズ●脚本:マイケル・コゾル/ウィリアム・サックハイム/シルヴェスター・スタローン●撮影:アンドリュー・ラズロ●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●原作:ディヴィッド・マレル「一人だけの軍隊」●時間:97分●出演:シルヴェスター・スタローン/リチャード・クレンナ/ブライアン・デネヒー/デビッド・カルーソ/ジャック・スターレット/マイケル・タルボット/デビッド・クロウレイ●日本公開:1982/10●配給:東宝東和●最初に観た場所:新宿ローヤル(84-09-24)(評価:★★★)一人だけの軍隊 ランボー (ハヤカワ文庫)
新宿ローヤル 地図.jpg新宿ローヤル.jpg新宿ローヤル劇場 88年11月閉館 .jpg
新宿ローヤル劇場(丸井新宿店裏手) 1988年11月28日閉館[カラー写真:「フォト蔵」より/モノクロ写真:高野進 『想い出の映画館』('04年/冬青社)より]

rambo 3 1988 movie.jpgランボー3/怒りのアフガン チラシ.jpg「ランボー3/怒りのアフガン」●原題:RAMBO 3●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:ピーター・マクドナルド●製作:バズ・フェイシャンズ●脚本:シルヴェスター・スタローン/シェルドン・レティック●撮影:ジョン・スタニアー●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●原作:ディヴィッド・マレル●時間:97分●出演:シルヴェスター・スタローン/リチャード・クレンナ/カートウッド・スミス●日本公開:1988/06●配給:東宝東和●最初に観た場所:歌舞伎町・新宿プラザ(88-07-10)(評価:★★)
新宿プラザ 閉館上映チラシ.jpg新宿プラザ劇場200611.jpg新宿プラザ劇場内.jpg 新宿プラザ劇場 1969年10月31日オープン、コマ劇場隣り (1,044席) 2008(平成20)年11月7日閉館

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有名MBA出身でありながら反商業主義を貫き、高い国際的評価を得ているのが興味深い。

タヒミック 悪夢の香り.jpg The Perfumed Nightmare 3.jpg  トゥルンバ祭り dvd.png  Kidlat Tahimik.jpg
"Perfumed Nightmare"(悪夢の香り,1977)    "Turumba"(トゥルンバ祭り,1983)  Kidlat Tahimik

The Perfumed Nightmare 橋.jpg 貧しいフィリピン青年の「僕」キドラット(キドラット・タヒミック)はジムニー(小型乗合バス)の運転手であるが、将来は宇宙飛行士を夢みている。僕のジプThe Perfumed Nightmare ジムニー.jpgニーがアメリカ人のビジネスマン(ハルムート・レルヒ、この作品の共同撮影カメラマン)の気に入り、ひとまずパリに赴くことになって、村をあげての大騒ぎの中、憧れの地へ発つが、日夜チューインガム自販機を詰め替える単純作業に追われ、夢は遠のく。巨大なスーパーの煙突の中に身を隠し、故郷を想う僕は、進歩という観念そのものに疑問を抱くようになる―。

キドラット・タヒミック2.jpg 1977年にフィリピンの映像作家キドラット・タヒミック監督(Kidlat Tahimik 、1942年生まれ)が発表した彼のデビュー作で、スペイン人が造った橋、アメリカの軍用車を改造したジプニー、月ロケットなどをモチーフに、フィリピン社会に染みついた植民地主義を、とぼけたユーモアや温かい詩情、ファンタジックで時にナンセンスな展開、ドキュメンタリー風の映像などを通して炙り出した作品です。

 '82年にヤクルトホールで行われた「国際交流基金映画祭~南アジアの名作をもとめて」(南アジア映画祭)にて上映され、監督本人も会場に来ていましたが、紹介されると突然一般観客席から立ち上がって挨拶するなど、実に剽軽な人でした(当時40歳くらいか。この作品を撮ったのはその5年前)。

 この作品は、'77年のベルリン国際映画祭国際映画批評家連盟賞を受賞し、'81年にはフランシス・フォード・コッポラの配給によってアメリカでも公開されていますが、日本では、その後'96年にシネマトリックスの配給で、「BOX東中野」にて、特集上映「キドラット・タヒミックの世界」の1作として上映されています(昨年(2012年)には、アテネフランセ文化センターの特集「アジア映画の森」でも上映)。

 監督自身はその後もインディペンデント映画作家としての立場を貫いており、最近日本でも若手のインディペンデント系映像作家が海外の映画祭で賞を獲るなどしていますが、彼は、アジアにおける先駆的な個人映画作家として、2012年に「福岡アジア文化賞」を受賞しています。

 同監督による第2作は「月でヨーヨー」(1979)という、これもファンタジー的要素のある作品(フィリピンはヨーヨー発祥の地らしい)、第3作「トゥルンバ祭り」(1983)で、トゥルンバ祭り 02.jpgフィリピンの田舎町で行われる熱狂的な大祭を背景とした物語を描いて国際映画賞を受賞しています(マンハイム・ハイデルベルグ国際映画祭映画「新興国のための審査員賞」)。'87年に第2回東京国際映画祭(アジア秀作映画週間部門)にて上映されたのを観ましたが、馬や犬のマスコトゥルンバ祭り 01.jpgットを家族で作って祭りで売っていた祖母と少年が、ある日ドイツのデパートの女性バイヤー(カタリーナ・ミューラー)がたまたま通りかかって、大量注文をしたために家族は大騒動となるという、ちょっと「悪夢の香り」と似た展開。但し、"日記映画作家"と呼ばれるだけあって、祭りの準備をする人々や本番の祭りの模様を記録映画風に描いていて、ドキュメンタリータッチがより色濃く出ています。また、単に反商業主義・反植民地主義というだけでなく、土着的、アジア文化的なものへの回帰指向もより鮮明になっています。この辺りは、「悪夢の香り」の主人公である「僕」が、最後に文明批判に目覚め、先住民の友達の教えを思い出して帰国するという結末からの流れを汲んでるともとれます。

キドラット・タヒミック4.jpg 今やその風貌や語り口から仙人のような趣を醸す同監督ですが(50代になってからマニラを離れ、山間部に移り住んでいる)、元々は富裕知識階層の出身で、ペンシルバニア大学ウォ―トンスクール(米国でもトップクラスとされるMBA)で経営学の修士号を取得し、パリで経済協力開発機構(OECD)の研究員をしていたという、かつては自他共に認めるバリバリのエコノミストでした。その彼が、帰国してから経済人への道をではなく、自主制作映画作家としての道を歩み(MBAの卒業証書を破り捨たというから相当の覚悟だったのか)、反商業主義を貫いて、国際的に高く評価される映像作家になったというのが興味深いです(相変わらず祭り好きの、剽軽なオッサンである点は変わらないみたいだけど)。

2012tahimik.jpgキドラット・タヒミック3.jpg福岡アジア文化賞受賞スピーチ(2012)
 
 
 
  
 
 

タヒミック氏とカタリーナ・ミューラー夫人(美術担当、「悪夢の香り」「トゥルンバ祭り」両作品に出演)
   

The Perfumed Nightmare2.jpg悪夢の香り 1シーン.jpg「悪夢の香り」●原題:KIDLAT WORLD MABABANGONG BANGUNGOT(Perfumed Nightmare)●制作年:1977年●制作国:フィリピン●監督・製作・脚本・撮影:キドラット・タヒミック●共同撮影:ハルトムート・レルヒ●音楽:エフゲニー・グレボフ●時間:95分●出演:キドラット・タヒミック/ジェジェット・ボードリィ/マン・フェリィ/ハルムート・レルヒ/カタリーナ・ミューラー/ドロレヤクルトホール.jpgス・サンタマリア●日本公開:1982/10(劇場公開:1996/11)●配給:国際交流基金(劇場公開:シネマトリックス)●最初に観た場所:新橋・ヤクルトホール(82-10-16)(評価:★★★★)●併映:「田舎の教師」(スラスィー・パータム)/「ミュージカル女優」(シャーム・ベネガル)/「ふたりは18歳」(トグゥ・カルヤ) Mababangong bangungot (1977)

ヤクルトホール 1972年、東新橋・ヤクルト本社ビル内にオープン

「トゥルンバ祭り」●原題:TURUMBA●制作年:1983年●制作国:フィリピン●監督・脚本:キドラット・タヒミック●撮影:ロベルト・イニゲス●音楽:マンディ・アファング●時間:87分●出演:ホーマー・アビアド/イニゴ・ヴィト/マリア・ペヒポシネセゾン渋谷.jpgル/パティ・アバリ/カタリーナ・ミューラー●日本公開:1987/09●配給:シシネセゾン渋谷 チケット.jpgネセゾン●最初に観た場所:シネセゾン渋谷(87-09-26)(評価:★★★☆) シネセゾン渋谷 1985年11月6日、渋谷道玄坂「ザ・プライム渋谷」6Fにオープン。2011年2月27日閉館。

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「○存続中の映画館」の インデックッスへ(銀座文化1(シネスイッチ銀座1))

ミステリ風コメディ映画。ヴェネチア・カーニヴァルの幻想的雰囲気がストーリーによくマッチ。

ヌードの女.jpg NUDO DI DONNA 1981 01.jpg NUDO DI DONNA 1981lt.jpg
Nudo di donna [VHS] [Import]」 Eleonora Giorgi(エレオノーラ・ジョルジ)/Nino Manfredi(ニーノ・マンフレディ)

 ニーノ・マンフレディ(1921‐2004)監督・主演の、ヴェネチアのカーニヴァルを背景としたミステリ風コメディ映画で、'84年の「イタリア映画祭」で上映された作品であり、その後、一般ロードでも公開されたかと思います。マンフレディは元々俳優であり、この作品の当初の監督アルベルト・ラットゥアーダ(「スキャンドール」('80年/伊)の監督)と意見が合わず、とうとう自分で監督してしまったというものです。

ヌードの女2.bmpヌードの女1.bmp 老舗の古書店の娘と結婚して十数年経つ夫(マンフレディ)は、自らもローマからヴェネチアに移り住んで古書店を営もうとするがうまくいかず、芸術家の間で顔が広い妻(エレオノーラ・ジョルジ)に対するコンプレックもあって2人の関係はやや冷え切り気味だが、そんなある日、芸術家達の集いの場となっている知人の屋敷で、妻にそっくりの女の大判ヌード写真を見つける―。

 やがてカフェで、派手なカラフルな娼婦の衣装を身につけたその写真のモデル、妻そっくりの女リリー(エレオノーラ・ジョルジが二役を演じている)を見つけ、男は彼女のところへ通いつめるようになるが、彼女がケガをした日に家に帰ると妻も同じところをケガしたりしていて、更に、カーニヴァルの夜、自宅からリリーの家まで屋根伝いで行ける近道を偶然に発見する―。

ヌードの女4.bmpヌードの女3.bmp カーニヴァルの翌朝、男はリリーと並んで焼きカボチャか何かを食べていますが、もう男にとってリリーが妻と同一人物であろうとなかろうとどうでもよく、目の前に愛する人がいるだけで満ち足りた気分になっているという、ミステリ的要素がありながら謎は最後まで明かされないという終わり方ですが(その方が却って洒落ていていい)、ある意味、女性に妻と娼婦の2役を求める男の願望を表した作品であるともいえます。

 夫婦は互いの全てを知ろうとはしない方がいいという教訓譚と解すことも出来て、大らかな艶笑コメディの伝統を有するイタリア映画ならではの作品ですが、ヴェネチア・カーニヴァルの幻想的な雰囲気が映画のストーリーによくマッチしていたように思います。

IMG_0739.jpg

NUDO DI DONNA.jpg「ヌードの女」●原題:NUDO DI DONNA(NU DE FEMME [仏])●制作年:1981年●制作国:イタリア・フランス●監督:ニーノ・マンフレディエレオノラ・ジョルジ.jpg●脚本:ニーノ・マンフレデ/アージェ・スカルペッリ/ルッジェロ・マッカリ●撮影:ダニロ・デシデリ●音楽:ロベルト・ガットー/マウリッツィオ・ジアマルコ●時間:103分●出演:ニーノ・マンフレディ/エレオノーラ・ジョルジ/ジョルジュ・ウィルソン/ジャン=ピエール・カッセル/カルロ・バーノ●日本公開:1984/10●配給:イタリア会館●最初に観た場所:銀座文化1(84-10-04)(評価★★★☆)Nudo di donna [VHS] [Import]」 
Eleonora Giorgi 2.jpg                                Eleonora Giorgi
「銀座文化1・銀座文化2」「銀座文化/シネスイッチ銀座」
銀座文化1・2.png銀座文化・シネスイッチ銀座.jpg シネスイッチ銀座.jpg 
銀座文化 銀座文化劇場(1955年12月オープン)、60年代「銀座文化劇場/銀座ニュー文化」、70年代「銀座文化1・2」、1987年〜「銀座文化/シネスイッチ銀座」、1997年〜「シネスイッチ銀座1・2」

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ノン・シリーズものを「面白く」と言うより「複雑に」改変した、「スリークラウンの謎」と呼ぶべき別物の話。

シタフォードの謎 dvd.jpg第8話シタフォードの謎 01.jpg 第8話シタフォードの謎 title.jpg
アガサ・クリスティーのミス・マープル DVD-BOX 2

第8話シタフォードの謎 00.jpg プロローグで、エジプトの秘宝発掘現場で2人の男が王の墓から財宝を見つける。その25年後、「シタフォード荘」に住むトレヴェリアン大佐(ティモシー・ダルトンは、現首相チャーチルの後継と目されている。彼が後見人となっているジム・ピアソン(ローレンス・フォックス)は、素Zoe Telford.jpg行不良のため遺産相続人から外す旨の手紙を大佐から受け取ったとして怒っているが、大佐は、自分がその手紙を書いたことを否定する。酔い潰れたジムを、その婚約者エミリー(ゾーイ・テルフォードは、パーティーで偶然知り合った新聞記者チャールズ・バーナビー(ジェームズ・マリー)とともに家に送り届けるが、翌日ジムは大佐に会うと言って、降りしきる雪の中、シタフォード荘に向かう。ミス・マープル(第8話シタフォードの謎 07.pngジェラルディン・マクイーワン)は甥で作家のレイモンドの別荘を訪ねてシタフォードに来たが、レイモンドは戻れず、彼女は、近くの「シタフォード荘」に泊めてもらうことになる。大佐の親友エンダービー(メル・スミスは、大佐の政務官であり「シタフォード荘」を管理している。大佐は、そのエンダービーにも行先を告げずに山荘を出るが、ミス・マープルは彼が、ホテル「スリークラウン館」に偽名で予約を入れるのを聞いていた。エンダービーは、山荘に送り届けられたゼリーを食べた飼い鷹が死んだのを見て、大佐の身を案じて吹雪の中「スリークラウン館」に向第8話シタフォードの謎 o6.jpgかうが、歩いて2時間はかかる。更にそれを案じたチャールズが後を追う。「スリークラウン館」は、カークウッド(ジェームズ・ウィルビー)が昨年ここを買い取ったもの第8話シタフォードの謎 04.jpgで、ミセス・ウィレット(パトリシア・ホッジ)と娘のヴァイオレット(キャリー・マリガン、ミス・パークハウス(リタ・トゥシンハム)ら何人かの客がいて、ウィレット夫人の提案で、ホテルの客たちを集めての心霊占いが始まるが、占いの結果「今夜トレヴェリアン大佐が死ぬ」という言葉が現れる。エンダービーが到着し、途中で彼に追いついたチャールズと共に大佐の部屋に行くと、彼は胸を刺されて死んでいた。大雪で警察が来られないため、エンダービーが捜査に当たる―。

シタフォードの秘密  ハヤカワ・ミステリ文庫.jpg第8話シタフォードの謎 06.jpg 2006年に本国イギリスで放映されたジェラルディン・マクイーワン主演のグラナダ版で、シーズン2の第4話(通算第8話)。日本ではNHK‐BS2で2008年6月26日に初放映。原作は、アガサ・クリスティ(1890‐1976)が1931年に発表し作品で(原題:The Sittaford Mystery (米 Murder at Hazelmoor))で、ポアロもミス・マープルも登場しないノン・シリーズものです。
エミリー(ゾーイ・テルフォード)/チャールズ・バーナビー(ジェームズ・マリー

 原作は、結構、登場人物が多くて人物相関が複雑な割には、犯行に直結するプロットも動機も単純で、個人的にはクリスティ作品としては物足りなかった印象があり、「面白い方向」に改変してくれるならばいいかなと思いましたが、「面白い方向」と言うより「複雑な方向」に改変しただけの映像化作品でした。

第8話シタフォードの謎 シタンフォード荘.jpg 降霊会の行われるのが原作の「シタフォード荘」でではなく、「スリークラウン館」に改変されていて、「シタフォード荘」の降霊会で「大佐が死ぬ」というお告げがあったちょうどその頃、「スリークラウン館」で大佐は殺害されたらしい、というのが原作のミソであるのに対し、「スリークラウン館」で行われた降霊会に大佐自身が加わっていて、その後で殺害されるので、その分、ミステリアスな雰囲気は削がれてしまっています。

 ジム・ピアソンが第一容疑者として拘束されるのは原作と同じ。原作では、「シタフォード荘」のコテージに住む隣人たちが次に疑わしい容疑者になるわけですが、ここでは「スリークラウン館」の客らがそれに該当します(彼らの人物像は、ウィレット夫人と娘のヴァイオレット以外は全面改変されている)。原作での真犯人バーナビー少佐に該当するエンダービーが、なんと、いきなり刑事役を買って出ます(原作での素人探偵役は、ジム・ピアソンの婚約者エミリーと新聞記者のチャールズ・"エンダービー")。

Zoe Telford2.jpg 原作では、事件を解決したエミリーが、頼りない男である婚約者ジムと、事件を通して距離の狭まった新聞記者チャールズのどちらを選ぶかが1つの見所で、最終的にはやはり婚約者の方を選んで、出来る女性というのは意外と頼りない男の方を選んだりするものだなあと思わせる面がありましたが、この映像化作品に登場するジム・ピアソンは最初からどうしようもない男で、そもそもなぜエミリーはこんな男と婚約したのかと思わざるをえません(そのエミリーも、やや高慢ちきで、原作ほど魅力的な女性にはなっていないのだが)。 エミリー(ゾーイ・テルフォード

第8話シタフォードの謎 09.jpg 「この線でいくと、こっちは最後、チャールズの方を選ぶだろうなあ」と思わせるのが1つの引っ掛けだったわけかと。原作の真犯人バーナビー少佐がエンダービーに改名され、新聞記者のチャールズ・"エンダビー"の名前がチャールズ・"バーナビー" に改名されていることが「伏線」だったわけですが、凝り過ぎていて分かんないよ、そんな細かいところは...(因みに、ミセス・ウィレットの娘で原作のヴァイリットも"ヴァイオレット"に改変され、トレヴェリアン大佐がエジプト時代に愛した娘と同名という設定になっているが、こんな話は原作には元々は無い)。 トレヴェリアン(ティモシー・ダルトン)/ヴァイオレット(キャリー・マリガン

 第2の殺人となるドクターの殺害や、エジプトでの過去の殺人(大佐も殺人犯だったのか)、そして最後は、エメリーによるチャールズの○○(どうして、その後の女2人の南米行きに繋げることができるのだろうか。取り敢えず、身柄拘束されて警察の尋問を受けるのでは?)等々、原作に無い話がてんこ盛りで、脚本家がもう好き放題に造っている感じ。 「シタフォードの謎」ではなく、「スリークラウンの謎」とでも呼ぶべき、原作とは別物の話でした。

007 リビング・デイライツ ポスター.jpg007 リビング・デイライツ 洋物.jpg ティモシー・ダルトンは007シリーズの4代目ジェームズ・ボンド役で、シリーズ第15作、第16作に主演(原作は共にイアン・フレミングの短編、監督は共にジョン・グレン)。第15作「007 リビング・デイライツ」('87年)は、高齢ロジャー・ムーアからの大幅若返りということで、ハードアクションが多く、アンケートによっては、シリーズの中、ショーン・コネリーの「ロシアより愛をこめて」に次いで人気が高いという結果が出ているものもありましたが、ロケや仕掛けにお金がかかっている割には個人的にはイマイチでした。アクションも、最初の、久しぶりにシリーズで復活したアストン・マーチンで山から下っていくカーチェイスは迫力がありましたが、それ以外は...。

007 消されたライセンス チラシ.jpg007 消されたライセンス 1シーン.jpg 続く第16作「007 消されたライセンス」('89年)は、'89年11月にベルリンの壁が崩壊したこともあり、冷戦下で作られた最後の007シリーズ作品です。ストーリー的も冷戦の要素が組み込まれた最後の作品とされていますが、ボンドの実質的な敵役は既に、前作のKGBから麻薬王へと変わっています。「古い時代の名残を感じられる最後のボンド映画」との見方もありますが、個人的には、ティモシー・ダルトンになってアメリカのアクション映画とあまり変わらなくなってきた印象を受けました(ボンド・ガールはキャリー・ローウェルとタリサ・ソトで共に米国出身)。

ティモシー・ダルトン2.jpg ティモシー・ダルトンは、'71年にショーン・コネリーの後任としてボンド役を依頼されていますが、ボンドを演じるには若すぎるという理由で辞退し、'79年にロジャー・ムーアが降板を考えていたために来た依頼も断っており、3度目の依頼でようやく引き受けたとのことです。但し、この2作でボンド役を降ろされてしまい、次回作からボンド役はピアース・ブロスナンになっています。もう何本かボンド役を演じていればまた違ったかもしれませんが、結果的には、ちょうどシリーズの転換期にボンドを演じた俳優であり、方向性試行錯誤の犠牲になったというイメージがあります。


Carey Mulligan.jpg第8話シタフォードの謎 2.jpg「アガサ・クリスティー ミス・マープル(第8話)/シタフォードの謎」●原題:THE SITTAFORD MYSTERY, AGATHA CHRISTIE`S MARPLE SEASON 2●制作年:2006年●制作国:イギリス●演出:ポール・アンウィン●脚本:スティーヴン・チャーチェット●原作:アガサ・クリスティ●時間:93ティモシー・ダルトン 007.jpg分●出演:ジェラルディン・マクイーワン/ティモシー・ダルトン/マイケル・ブランドン/ローレンス・フォックス/ロバート・ハーディ/パトリシア・ホッジ/ポール・ケイ/マシュー・ケリー/ジェフリー・キッスーン/キャリー・マリガン/ジェームズ・マリー/メル・スミス/ゾーイ・テルフォード/リタ・トゥシンハム/ジェームズ・ウィルビー●日本放送:2008/06/26●放送局:NHK‐BS2(評価:★★★)
Carey Mulligan 

007 リビング・デイライツ  dvd2.jpg「007 リビング・デイライツ」●原題:JAMES BOND 007 THE LIVING DAYLIGHT●制作年:1987年●制作国:イギリス・アメリカ007 リビング・デイライツ  dvd1.jpg●監督:ジョン・グレン●製作:マイケル・G・ウィルソン/アルバート・R・ブロッコリ●脚本:リチャード・メイボーム/マイケル・G・ウィルソン●撮影:アレック・ミルズ●音楽:ジョン・バリー●原作:イアン・フレミング●時間:130分●出演:ティモシー・ダルトン/マリアム・ダボ/ジェローン・クラッベ/ジョー・ドン・ベイカー/ジョン・リス=デイヴィス/アート・マリック/ジョン・テリー/アンドレアス・ウィズニュースキー/デスモンド・リュウェリン/ロバート・ブラウン/キャロライン・ブリス●日本公開:1987/12●配給:MGM=ユナイテッド・アーティスツ(評価:★★★) 「007 リビング・デイライツ アルティメット・エディション [DVD]

007 消されたライセンス dvd.jpg「007007 消されたライセンス dvd2.jpg 消されたライセンス」●原題:JAMES BOND 007 LICENCE TO KILL●制作年:1989年●制作国:イギリス・アメリカ●監督:ジョン・グレン●製作:マイケル・G・ウィルソン/アルバート・R・ブロッコリ●脚本:リチャード・メイボーム/マイケル・G・ウィルソン●撮影:アレック・マイルズ●音楽:マイケル・ケイメン●原作:イアン・フレミング●時間:133分●出演:ティモシー・ダルトン/キャリー・ローウェル/ロバート・ダヴィ/タリサ・ソトアンソニー・ザーブ/フランク・マクレイ/エヴェレット・マッギル/ウェイン・ニュートン/デスモンド・リュウェリン●日本公開:1989/09●配給:MGM=ユナイテッド・アーティスツ(評価:★★★) 「消されたライセンス (デジタルリマスター・バージョン) [DVD]

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比較的原作に忠実。後のポワロことデビッド・スーシェ演じるジャップ警部に目が行ってしまう。

エッジウェア卿殺人事件 us.jpg     エッジウェア卿殺人事件 vhs2.jpg Thirteen at Dinner 1985 04.jpg
"Thirteen at Dinner"輸入盤DVD 「名探偵ポワロ エッジウェア卿殺人事件 [VHS]」 David Suchet/Peter Ustinov

Thirteen at Dinner 1985 フェイ・ダナウェイ2.jpg 偶然に女優のジェーン・ウィルキンソン(フェイ・ダナウェイ)と知り合ったポワロ(ピーター・ユスティノフ)は、彼女から離婚に応じない夫エッジウェア卿を説得して欲しいと頼まれる。ポワロはエッジウェア卿に会うが、卿からは半年も前に承諾の手紙を書いたことを聞かされ訝しがる。そしてその晩、エッジウェア卿は何者かに殺害され、現場ではジェーンの姿が目撃されたのだが、彼女には確かなアリバイがあり、どうやらそれは彼女そっくりの物真似タレント、カーロッタ(フェイ・ダナウェイが二役)だったらしい。しかし今度はそのカーロッタまで不自然な死を遂げる。エッジウェア卿の娘をはじめ、卿の死を望みそうな人間は多くいるが、その誰もにアリバイがあった―。

Thirteen at Dinner 1985 03.jpg 映画「ナイル殺人事件」('78年/英)、「地中海殺人事件」('82年/英)でポワロを演じたピーター・ユスティノフ(1921-2004)が、'85年にアメリカのTVドラマでポワロを演じたもので(原題:Thirteen at Dinner)、この翌年には「死者のあやまち」と「三幕の殺人」が作られていますが、ピーター・ユスティノフ主演のTVシリーズはこの3作で打ち止めで(ヘイスティングス役は3作ともジョナサン・セシル)、ユスティノフは2年後に映画「死海殺人事件」('88年/米)で彼自身最後のポワロ役を演じています。

晩餐会の13人 (創元推理文庫.jpgThirteen at Dinner 02.jpg 原作は、アガサ・クリスティ(1890‐1976)が1933年に発表した名探偵ポワロシリーズの長編第7作(原題:Lord Edgware Dies)ですが、時代は、この映像化作品が作られた時代に置き換えられています。ポワロが有名人としてTV出演したり、男優がアクションシーンに何度もダメ出ししたりといった現代風の味付けがありますが、筋立てそのものは原作に比較的忠実に作られており、かなりストーリー的には複雑な作品ではありますが、謎解きも丁寧でした。

 但し、原作を比較的忠実になぞった分、テンポ的にはややゆったりしているかなという印象。一人二役のフェイ・ダナウェイは、さすが堂々たる演技ですが、登場人物が多いため、その中にやや埋没している印象も。

Thirteen at Dinner 1985 05.jpg そうした中、興味深いのは、お馴染みジャップ警部を、'89年からTⅤ版「名探偵ポアロ」でポワロを演じることになるデビッド・スーシェが演じている点で、ピーター・ユスティノフ演じるポワロに常に先行される役どころを彼が演じているというのが、なかなか面白かったです。

 "新旧ポアロ対決"と言いたいところですが、デビッド・スーシェ演じるジャップ警部はいつも食い意地が張っていて、犯行現場などに行ってもつまみ食いばかりしているといった、ややとぼけた人物造型となっており、その上、最初から犯人はアイツだと決めてかかかる石頭ぶりで、後のポワロ役の剃刀の如く研ぎ澄まされた名探偵ぶりとは雲泥の差です。

デビッド・スーシェ/フェイ・ダナウェイ

 ピーター・ユスティノフとデビッド・スーシェが並ぶと、ついついデビッド・スーシェの方に目が行ってしまいます(後に自分がポワロを演じることになるのを少しでもイメージしていたのかなあ、とか考えてしまう)。フェイ・ダナウェイと並んでもデビッド・スーシェの方に目が...。
 という訳で、ピーター・ユスティノフやフェイ・ダナウェイの演技よりも、デビッド・スーシェのダメ警部ぶりの方が、"お宝映像"的な価値があったかもしれない作品ですが、原作のストーリーを再度確認する上ではオーソドックスな作品と言えます。

エッジウェア卿殺人事件001.jpgThirteen at Dinner 1985 04.jpg「名探偵ポワロ/エッジウェア卿殺人事件」●原題:THIRTEEN AT DINNER●制作年:1985年●制作国:アメリカ●本国放映:1985/09/19●監督:ルー・アントニオ●脚本:ロッド・ブラウニングス●原作:アガサ・クリスティ●時間:95分●出演:ピーター・ユスティノフ/デヴィッド・スーシェ/フェイ・ダナウェイ/ジョナサン・セシル/リー・ホースリー/ビル・ナイ/ダイアン・キートン●ビデオ発売:1990/11 (ビクターエンタテインメント)(評価:★★★☆)

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どんな状況においてもポアロは名探偵であるという思い込みがトラップになっているとも言える?

邪悪の家 1959 ハヤカワ 田村.jpg エンドハウスの怪事件 創元推理文庫.jpg 邪悪の家 クリスティー文庫 旧田村訳.jpg 邪悪の家 クリスティー文庫 新訳.jpg エンドハウスの怪事件 dvd.jpg
邪悪の家 (1959年) (世界ミステリーシリーズ)』『エンド・ハウスの怪事件 (創元推理文庫)』『邪悪の家 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)』『邪悪の家(ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)』(カバーイラスト:和田誠)「名探偵ポワロ[完全版]Vol.6 [DVD]

「邪悪の家」ハヤカワ・ミステリ文庫.jpgエンド・ハウス殺人事件.jpg 英国南部の牧歌的な漁村セント・ルーにバカンスで来ていたポワロとヘイスティングスは、滞在先のマジェスティックホテルで、近くにあるエンドハウスの女主人ニック・バックリーと知り合う。彼女は最近3日間に3回も命拾いをする経験をしたと話すが、ポワロとホテルのテラスで話している間にも、何者かから狙撃される。弾は逸れ、またも彼女の命は救われるが、ポワロは彼女に警告を発し、自ら警護を申し出てエンドハウスへと乗り込む。しかし、花火の夜に、偶然ニックのショールを羽織っていたニックの従妹のマギーが何者かによって射殺されてしまう―。

邪悪の家 (1984年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)』『エンド・ハウス殺人事件 (新潮文庫)

Peril At End House.jpg 1932年に刊行されたアガサ・クリスティのエルキュール・ポワロシリーズの長編第6作で(原題:Peril at End House)、『牧師館の殺人』(1930)、『シタフォードの秘密』(1931)に続く「館物」でもあり、タイトルの邦訳は、ハヤカワ・ミステリ文庫・クリスティー文庫では「邪悪の家」ですが、創元推理文庫では「エンド・ハウスの怪事件」、新潮文庫では「エンド・ハウス殺人事件」などとなっています。

First Edition Cover 1932(Collins Crime Club (London))

 クリスティの脂が乗り切った時の作品でありながら意外と評価が高くないのは、クリスティ自身が、「私の小説の中ではまるで印象が残っていないし、書いた記憶さえ思い出せない」と発言していることもありますが、ポワロが事件の謎に翻弄され続ける状況が続き、いつもの精彩を欠いているように見えるから、というのもあるのでしょう。ポワロのファンにはいただけない作品かも。

 確かに屋敷に出入りする関係者には一様に怪しい点があり、いつも通り容疑者の数には事欠かないのですが、その中に犯人がいるはずだと推理するポワロに対し、ある程度のミステリ通は、ポワロより先に犯人が判ってしまうのかも。但し、自分が初読の際は全く真犯人が判らず、その分、ドンデン返しも含んだ最後の謎解きはストレートに楽しめました。

PERIL AT END HOUSE f.jpg 犯人がポワロの謎解きをミスリードさせる張本人である作品ですが、ポワロに対する読者の、彼がどんな状況においても超人的な名探偵であるという思い込みがある種トラップになっている作品とも言え、そう言えばこの作品はポワロとヘイスティングスとの謎解きを巡る会話が多く、振り返ってみれば、2人して読者をミスリードする役割を果たしていた感じもします。

PERIL AT END HOUSE Fontana1975 (Cover illus.Tom Adams)

 2011年にクリスティー文庫が田村隆一(1923-1998)の旧訳を改版して真崎義博氏による新訳版を刊行しましたが、現代風で、それでいてジュニア版みたいな翻訳にはなっておらず、これはこれで良かったのでないでしょうか。

 田村隆一訳との違いの一つとして、ポワロがヘイスティングスと話す際に、例えば田村訳では「わが友(モナミ)、あなたのは受け売りですよ」となっているのが、真崎訳では「君の言っていることは受け売りだよ」というように、ポワロとヘイスティングスの距離感が近くなっているように思いました(特にこの作品は2人の会話が多いため、それを強く感じた)。

熊倉一雄 ポワロ.jpgエンドハウスの怪事件 0.jpg デヴィッド・スーシェ(David Suchet)の主演TⅤ版(London Weekend Television)「名探偵ポワロ」でも、吹替えの熊倉一雄(1917-2015)の独特の声の抑揚のもと、ポワロはヘイスティングスに対しても「です・ます調」で語りかけ、それが固定的イメージになっていますが、考えてみれば、ポワロがヘイスティングスに対して「です・ます調」で話すのは、あくまでも翻訳者の選択であると言えるのでないかと思います。

エンドハウスの怪事件00.jpg そのデヴィッド・スーシェ版「名探偵ポワロ」ですが、英国LWT(London Weekend Television)が主体となって制作、1989年1月放映分から2014年1月放映予定分まで70作品作られており、この『邪悪の家』は、第2シーズン第1話(通算第11話)「エンドハウスの怪事件」として、1990年1月にシリーズ初の拡大版(ロング・バージョン)で放映されました。日本でも1990年8月11日、NHKがこのシリーズの放映を始めた年に放映されており、このシリーズで最初に観たポワロ物がコレという人も多いのではないかと思われます。

エンドハウスの怪事件03.jpg ほぼ原作に忠実に作られていますが、田舎に来て、誰も自分が有名な探偵であることを知らないことに不満なポワロのご機嫌斜めぶりが強調されているのが可笑しいです。それと、原作には出てこないミス・レモンが登場し、謎解きのヒントはヘイスティングスと彼女の言葉遊び的な遣り取りから生まれることになっています。更に、ラストのポワロが仕組んだ降霊会で、無理やり霊能力者の役割を演じさせられるのは、原作ではヘイスティングスのところが、この映像化作品ではミス・レモンになっています。

 海岸沿いの丘の上にあるホテルが美しく、推理と併せてリゾートの雰囲気が楽しめるのがいいです(ポワロがホテルのレストランで注文した2つのゆで卵の大きさが違から食べられないと駄々をこねるところは、まるで「名探偵モンク」みたい。こういう完璧主義が探偵に共通する気質なのか)。

Poirot Polly Walker1.jpgPoirot Polly Walker2.jpg「名探偵ポワロ(第11話)/エンドハウスの怪事件」●原題:AGATHA CHRISTIE'S POIROT II:PERIL AT END HOUSE●制作年:1990年●制作国:イギリス●本国放映:1990/01/07●監督:レニー・ライ●脚本:クライブ・エクストン●時間:103分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ)/ヒュー・フレイザー(ヘイスティングス) /フィリップ・ジャクソン(ジャップ警部) /ポーリン・モラン(ミス・レモン) /ポリー・ウォーカー(ニック・バックリー) /ジョン・ハーディング/ジェレミー・ヤング/メアリー・カニンガム/ポール・ジェフリー/アリソン・スターリング/クリストファー・ベインズ/キャロル・マクレディ/エリザベス・ダウンズ●日本放映:1990/08/11●放映局:NHK(評価:★★★☆)

名探偵ポワロ.jpg2名探偵ポワロ.jpg「名探偵ポアロ」 Agatha Christie: Poirot (英国グラナダ(ITV)1989~) ○日本での放映チャネル:NHK→NHK-BS2→NHK-BSプレミアム(1990~)/ミステリチャンネル→AXNミステリー

【1959年新書化[ハヤカワ・ポケットミステリ(田村隆一:訳)]/1975年文庫化[創元推理文庫(厚木淳:訳『エンド・ハウスの怪事件』)/1984年再文庫化[ハヤカワ・ミステリ文庫(田村隆一:訳)]/1988年再文庫化[新潮文庫(中村妙子:訳『エンド・ハウス殺人事件』)]/2004年再文庫化[ハヤカワ・クリスティー文庫(田村隆一:訳)]/2011年再文庫化[ハヤカワ・クリスティー文庫(真崎義博:訳)]】

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ワトスンが婚約に至らないことを除き、原作に忠実。"モース"が出ていたことに後で気づいた。

シャーロック・ホームズの冒険(第25話)/四人の署名0.jpgシャーロック・ホームズの冒険(第25話)/四人の署名1.jpg 四人の署名0.jpg
シャーロック・ホームズの冒険 完全版 Vol.11 [DVD]
シャーロック・ホームズの冒険DVD BOOK vol.11 (宝島MOOK) (DVD付)」ジョン・ソウ(John Thaw)(上)、(左から)ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)、ジェニー・シーグローブ(Jenny Seagrove)、エドワード・ハードウィック(Edward Hardwicke)

 ホームズの元にメアリー・モースタン(ジェニー・シーグローブ)という若い女性が相談に訪れ、彼女の父親はインド英国軍の大尉だったが、帰国した際に消息を絶ち、その数年後から謎の人物から彼女に贈り物が届くようになって、そして今度は、その相手から直接会いたいとの連絡があったという。ホームズとワトスンは、メアリーに付添って、彼女の父親とインドで一緒だったショルトー少佐の息子サディアス(ロナルド・レイシー)を訪れ、そこで父親の死と秘密の財宝についての話を聞かされる。それによれば、サディアスの父ショルトー少佐はインドにいた時期に、友人のモースタン大尉と共にアグラの財宝を発見し、ショルトーは先に財宝を持ってイギリス本国に戻っていたが、約束していた財宝の分け前を要求してインドからやってきたモースタン大尉と口論になり、心臓発作を引き起こさせてしまう。せめてもの罪滅ぼしに、財宝の一部を娘の元に送るようにというショルトー少佐の遺言を守っていたというのが事の真相で、ショルトーはその後持病を悪化させ、謎の侵入者の影に怯えながら急死、遺骸の胸に、侵入者が現れたことを示す「四人の署名」の文字と、シーク教を象徴する4の意味の赤い印付きの紙片が残されていたという。そして今回、父が生前に隠し場所を話さなかった財宝の隠し場所を発見して、メアリに分け与えるために手紙で呼び出したのだという。ホームズ一行はショルトーの兄が住むノーウッドの屋敷へと向かうが、鍵のかかった部屋の中で、双子の兄(ロナルド・レイシー二役)の死体が発見され、サディアスは兄殺しの容疑をかけられ逮捕される。ホームズが犬のトービィの嗅覚を頼りに真犯人を追ってテムズ河畔に辿り着くと、貸し船屋の女主人が義足の奇妙な男に船を貸したとを言う。ホームズは船を発見するため、ベーカー街イレギュラーズをロンドンの街に放った―。

 英国グラナダTV(ITV)製作、ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett、1933-1995)主演の「シャーロック・ホームズの冒険」(1984~1994、全41話)の第25話で、拡大スペシャル版として作られ、本国では1987年12月29日に放映、日本では第21話として1988年3月5日と12日に前後編に分けて放送されました。アーサー・コナン・ドイルの原作は、1890年に発表され、同年に単行本刊行されています(原題:The Sign of Four)。

 冒頭で、『緋色の研究』において事件の記録にロマンチックな要素を持ち込んだことをホームズに批判されるワトスン(エドワード・ハードウィック)など、細部において原作に忠実ですが、四人の署名1-2.jpg1点だけ大きな違いがあり、原作では最後ワトソンンはメアリーと婚約してめでたしめでたし、それをホームズが「絶対におめでとうとは言えないね」と皮肉るところ、この映像化作品では、彼女は事件解決後に去っていき、それを窓から見遣ったワトスンが「魅力的な女性だ」とポツリ漏らすと、ホームズは「気がつかなかったよ」と―(この遣り取りは、原作では、メアリーがベイカー街を最初に訪れ、帰った後にある)。以降、長編第2作にしてワトスンが婚約してしまった原作に対し、このシリーズでは、最後までワトスンはホームズの同居人でいます。

四人の署名1.jpg ジェニー・シーグローブ演じるメアリーは美しく、また、原作よりかなり気丈な印象。彼女の手に財宝が渡るかどうかがストーリーのカギとなりますが、ファッションから見て何だか原作よりも経済的に恵まれている生活を送っている印象もあり、これだったら、財宝がなくても大丈夫?

 最後、ボートによるチェイスがあって、アクション映画っぽい感じもありますが、これも原作通り。事件のカギを握シャーロックホームズ 長編「四人の署名」.jpgる義足の男ジョナサン・スモールが逮捕された後に事件の内容を自らホームズらへ語るのも原作と同じですが、このジョナサン・スモールを演じているのが、「主任警部モース」のジョン・ソウ(John Thaw、1942-2002)だとは、最初気づきませんでした。「主任警部モース」の第1話は、この年(1987年)の1月に英国で放映されています。
四人の署名 ジョン・ソウ.jpg
 ジェレミー・ブレットが心不全のため61歳で、ジョン・ソウが食道癌のため60歳でと、共に比較的早くに亡くなっているのが惜しまれます。因みに、ジェレミー・ブレット主演の「シャーロック・ホームズの冒険」は全41話(1984-94)、ジョン・ソウ主演の「主任警部モース」は全33話(1987-99)作られています。

シャーロック・ホームズの冒険.jpg「シャーロック・ホームズの冒険(第25話)/四人の署名」●原題:THE ADVENTURE OF SHERLOCK HOLMES: THE SIGN OF FOUR●制作年:1987年●制作国:イギリス●本国放映:1987/12/29●監督:ピーター・ハモンド●脚本:ジョン・ホークスワース●原作:アーサー・コナン・ドイル●時間:102分●出演:ジェレミー・ブレット/エドワード・ハードウィック/ロザリー・ウィリアムズ/ジェニー・シーグローブ(メアリー・モースタン)/ロナルド・レイシー(サディアス&バーソロミュー・ショルトー)/エムリス・ジェームズ(アセルニー・ジョーンズ警部)/キラン・シャー(トンガ)/ジョン・ソウ(ジョナサン・スモール)●日本放映:1988/3/5 (NHK)(評価:★★★☆)
「シャーロック・ホームズの冒険」THE ADVENTURE OF SHERLOCK HOLMES(英国グラナダ(ITV) 1984~1994) ○日本での放映チャネル:NHK(1985~1995)/AXNミステリー

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プロット的には物足りない。関係者ほぼ全員が劇団員であるのが最大のミソか。

バーナビー警部/劇的なる死 dvd 輸入盤.jpgバーナビー警部/劇的なる死 dvd.jpg 劇的なる死00.jpg  アマデウス dvd.jpg
バーナビー警部~劇的なる死~ [DVD]」 Death of a Hollow Man' 「アマデウス [DVD]
ハロルド・ウィンスタンリー(Bernard Hepton)/エスリン(Nicholas Le Prevost)
ハロルド・ウィンスタンリー(バーナード・ヘプトン).gifエスリン(ニコラス・レプレボ).gif ミッドサマー地区で中年女性アグネス・グレイ(デニーズ・アレクサンダー)が何者かに殺された。アグネスは不治の病に冒されており、「とてつもない過ちを犯したのでそれを正したい」と漏らし、意外なほどの大金を動物保護団体に寄付していた。一方、ハロルド・ウィンスタンリー(バーナード・ヘプトン)が舞台監督を務めるコーストン・アマチュア劇団による舞台劇「アマデウス」の初日が近づいていたが、バーナビー(ジョン・ネトルズ)の妻ジョイス(ジェーン・ワイマーク)も端役で出演する、サリエリ役で主演する会計士のエスリン(ニコラス・ラ・ブレボスト)はアグネスのいとこで唯一の親族だった。
バーナビー警部/劇的なる死01.jpgキティ(Debra Stephenson)/ローザ(Sarah Badel)
キティ(デブラ・スティーブンソン).gifローザ(サラ・バデル).gif エスリンの妻キティ(デブラ・スティーブンソン)は(舞台ではモーツァルトの恋人役)は不倫をしており、そのことを同じ劇団員のエスリンの元妻のローザ(サラ・バデル)がエスリンに示唆したことで、エスリンはローザに離婚話を切り出す。人々の愛憎が錯綜する中で初日の幕は上がるが、クライマックスでエスリンは、何者かによってテープが剥がされた剃刀で喉を切ってしまい死亡。バーナビーの調べで劇団員兼大道具係デービッド(イアン・フィッツギボン)の父で大道具係のコリン(ジェフリー・ハッチングス)が「自分が殺した」と自供するが、それは息子を庇ってのことで息子も無実が明らかになり、となると、アグネスとエスリンを殺した真犯人は別にいることになる―。

うつろな男の死.jpg この1998年3月本国イギリスでの放映の第3話「劇的なる死」(Death of a Hollow Man)は、日本初放映は2002年5月で、前後編(第7話・第8話)に分けて放映され、当時のタイトルは「開演ベルは死の予告」。キャロライン・グレアムによる原作は、1989年に発表されたバーナビー警部シリーズ第2作『うつろな男の死』(Death of a Hollow Man)であり、1993年に創元推理文庫で翻訳が刊行されています。
うつろな男の死 (創元推理文庫)

バーナビー警部/劇的なる死 03.jpg アマチュア劇団を舞台にした演出家と俳優の確執をモチーフにした作品ですが、ちゃんと原作者の著作がある作品で、しかも、今回は珍しく原作者本人が脚本を担当しているにしては、第1話「謎のアナベラ」、第2話「血ぬられた秀作」と比べると、人間関係の入り組み具合もさほどではなく、プロットも単純で、分かりやすけれど物足りないと言うか、ミステリとしてはややランク落ちの印象を受けます。

 ミッドサマー地区は、アマチュア作家のサークルとかアマチュア劇団とか、アマチュアの文化活動が盛んだなあと。しかし、芝居の小道具で、テープを張るにしろ本物の剃刀を使うかなあ。

デアドレ・ティブス(ジャニーン・ダヴィツキー).gif プロットは物足りないけれども、今回も怪しい人物、奇妙な人々には事欠きません。エスリンの妻の不倫相手は、ゲイの書店主アベリーの本屋で働いていた"ゲイ友"の書店員ティムだったんだなあ(舞台では2人は舞台美術係と照明係)。ハロルドのお手伝い(舞台では進行係兼小道具係)デアドレ・ティブス(ジャニーン・ダヴィツキー)が、ハロルドが劇の評判を聞くよう彼女に頼んだのに、彼女は事件のことを記者たちに話したくて仕方がない様子がおかしいです(でも、これが"マトモな感覚"なんだろなあ)。

バーナビー警部/劇的なる死02.jpg トロイ巡査部長(ダニエル・ケイシー)が初めて警部の娘カリー(ローラ・ハワード)に出会って一目惚れするのはこの回だったんだなあと。彼女は、役者の卵ニコラス(エド・ウォーターズ)の方と仲良くなってしまいましたが、このプロの役者を目指している青年も書店員。バーナビーも、舞台美術の手伝いで書割の絵をかいているし、今回は、関係者ほぼ全員が劇団員であるか何らかの形で舞台に関係しているという中で事件が起きるというのが、最大のミソと言えるのでしょう。

劇的なる死 劇場.jpg しかし、「アマデウス」とはねえ。田舎のアマチュア劇団にしては随分難しそうな演目を選んだものだと思いますが、わざとそうした設定にしたのでしょう。原作は、サリエリが喉を搔き切る場面で"血糊"を見せるかどうかを演出家らが議論している場面から始まり、シェークスピア劇をはじめ演劇に関する薀蓄がてんこ盛りです。

The Summer house used for an illicit affair in 'Death of a Stranger'

 「アマデウス」(Amadeus)は、ミロス・フォアマン監督の映画「アマデウス」('84年/米)が知られていますが、元々は英国の劇作家ピーター・シェーファー原作の戯曲で、初演もロンドン(1979年)。それが翌年に米国に渡り、ブロードウェイで上演され、1981年には戯曲部門でトニー賞を受賞したもので、日本でも舞台化されましたが、個人的には映画化作品しか観ていません(旧「新宿ピカデリー」で観たが、ここ、いつの間にか、館名は変えないまま「二番舘」から「ロード館」になっていた)。

アマデウス 1.jpg 映画の方は、アカデミー賞の作品賞、監督賞、主演男優賞など8部門を獲得した作品で、双葉十三郎(1910-2009/享年99)の『ミュージカル洋画ぼくの500本』('07年/文春新書)をみると、年代別に見て85点(著者流に表せば☆☆☆☆★)以上の評点を付けている最後の作品が「アマデウス」で、それ以降はありません。

アマデウス モーツアルト.jpgアマデウス サリエリ.jpg 個人的にも大作であるとは思いましたが、モーツァルト像がややデフォルメされ過ぎている印象もありました。アカデミー賞の主演男優賞には、"ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト"を演じたトム・ハルスと、"サリエリ"を演じたF・マーリー・エイブラハムの両方がノミネートされましたが、F・マーリー・エイブラハムが受賞したのは順当と言えるかと思います。モーツァルトのオペラは、少年少女合唱団レベルでもドイツ語で歌われているのに、映画の中では全て英語になっているのもやや気になりました。

「バーナビー警部(第3話)/劇的なる死(開演ベルは死の予告)」●原題:MIDSOMER MURDERS:DEATH OF A HOLLOW MAN●制作年:1998年●制作国:イギリス●本国上映:1998/03/29●監督:ジェレミー・シルバーストン●脚本:キャロライン・グラハム●撮影: ナイジェル・ウォルターズ●音楽 : ジム・パーカー●原作:キャロライン・グレアム●時間:101分●出演:ジョン・ネトルズ/ダニエル・ケーシー/ジェーン・ワイマーク/ローラ・ハワード/バリー・ジャクソン/バーナード・ヘプトン/デニース・アレクサンダー/ニコラス・ラ・ブレボスト/ジャンニ・ドュヴィッキ/イアン・フィッツギボン/サラ・バデル/エド・ウォーターズ●日本放映:2002/05●放映局:NHK‐BS2(評価:★★★)

アマデウス 0.jpg「アマデウス」●原新宿ピカデリー.jpg題:AMADEUS●制作年:1984年●制作国:アメリカ●監督:ミロス・フォアマン●製作:ソウル・ゼインツ●脚本:ピーター・シェーファー●撮影:ミロスラフ・オンドリチェク●音楽:ジョン・ストラウス●原作:ピーター・シェーファー●時間:160分(ディレクターズカット180分)●原作:ピーター・シェーファー●出演:F・マーリー・エイブラハム/トム・ハルス/エリザベス・ベリッジ/サイモン・カロウ/ロイ・ドトリス/クリスティン・エバソール/ジェフリー・ジョーンズ/シンシア・ニクソン●日本公開:1985/02●配給:松竹富士●最初に観た場所:新宿ピカデリー(85-05-19)(評価:★★★☆)

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意外と原作の持ち味を活かしたソフトな改変だった。分かりやすい。

第7話)/五匹の子豚 dvd.jpg 五匹の子豚01.jpg 五匹の子豚00.jpg 新・刑事コロンボDVDコレクション 05.jpg

五匹の子豚02.jpg ある日、ランピオン刑事(マリウス・コルッチ)が歩いていると怪しげな男が近づいてきて、男はルブランという浮気調査の探偵だった。君は出世の道をラロジエール警視(アントワーヌ・デュレリ)に邪魔されているとランピオンに話すルブランは、ランピオンを探偵社にスカウト、常日頃のラロジエールの横暴に耐えかねていたランピオンは、警察を辞め、探偵社に転職する。その探偵社に一人の女性マリー(プリュンヌ・ブシャ)が訪ねてきて、死んだと聞かされていた母親が夫殺しの罪で獄中にあることを最近知り、画家である父親は心臓発作で亡くなったと聞かされていたのだが、その15年前の出来事の真相を知りたいと調査依頼する。元上司のラロジエールを見返すべく、ランピオンは調査に奔走、事件は、女性の母親が、愛人を同じ屋敷内に住まわせた夫に対して嫉妬し、毒入りのビールを飲ませたというものだったが、マリーは母親の無実を信じていた―。

五匹の子豚 文庫2.jpg フランス2で2009年から放映されている「クリスティのフレンチ・ミステリー」シリーズの、2011年放映の通算第7話で、原作は1943年にアガサ・クリスティ(1890‐1976)が発表した作品(原題:Murder in Retrospect)で、実質的に同じ頃に書かれ、作者の遺言により没後に発表された『スリーピング・マーダー』と同じ、所謂"回想の殺人"物です。

五匹の子豚10.jpg 原作では、16年前に画家である夫を殺害したとして死刑を宣告され、その1年後に獄中で死亡した母の無実を訴える遺書を読んだ若き娘が、母が潔白であることを固く信じポアロのもとを訪れる―というものですが、この映像化作品では母親は獄中にて存命しています。

五匹の子豚04.jpg 加えて、本編冒頭からラロジエール警視の横暴に不満の募るランピオン刑事の探偵社への転職話があったりして、原作が非常に完成度の高い構成を備えた傑作であるため、あんまり極端な改変をしないで欲しいなあと思って観ていましたが、まあ、上司・部下の関係の展開はサブストーリーであって、観終わってみれば、本筋の部分では原作をそう外れておらず、むしろ、母親がなぜ自身の無実を娘に伝えながらも公には冤罪を主張することをしなかったのか、或いは、なぜ犯人は被害者に対して殺意を抱いたのか、などといったことが状況と併せてスンナリ分かるものとなっています。

クリスティのフレンチ・ミステリー⑦五匹の子豚 04.jpg 原作では、事件当時の5人の関係者それぞれにポワロが会って、過去の事件の状況を訊いて回り、まるで童謡にある「五匹の子豚」のような行動をとった5人に"レポート"まで出させるわけですが、さすがに"レポート"提出まではないものの、最後に関係者を集めて謎解きをしてみせるのは原作と同じ。しかもそこへ、存命だった(であることにしてしまった)母親が疑い晴れて釈放されて現れるというハッピーエンドで、冒頭で母親が絞首刑になる場面を入れた改変を行っているデヴィッド・スーシェ版(第50話、2003年)の暗さの対極にある、このシリーズならではの明るさです。カタルシス効果もあって良かったのではないかと思います。

五匹の子豚09.jpg 原作では、母親が被害者の殺害現場にあったビール瓶の指五匹の子豚06.jpg紋を拭ったのを見たと言う元家庭教師の後からの証言から、それこそ彼女が犯人ではないことを証明するものだというポワロの洞察が導かれるわけですが、この映像化作品では、当時5歳くらいだった娘に、二十歳過ぎの今になって、母親のそうした所為を見た記憶が甦ってくるというふうに改変されていて、これは改変する必要があったのかなとも。

 妻と愛人が同居する生活に自らも翻弄されながらも、愛人をモデルに絵を描くことに没頭し、現実の問題を解決しようともしなければ、女性心理を見抜くことも出来なかった被害者の画家は、いかにも芸術家らしいエゴを体現していていました。

殺意のキャンパス011.jpg殺意のキャンパス TITLE.jpg そう言えば、「刑事コロンボ」の中にも、「殺意のキャンバス」(Murder, a Self Portrait、第50話、1989年)という、3人の女性(妻・前妻・愛人)と海辺のコテージで暮らす天才画家の話がありました。こうした状況設定のモデルはパブロ・ピカソ(1881-1973)だそうです。

Murder, a Self Portrait.jpg殺意のキャンパス022.png 「殺意のキャンパス」の方は、前妻は隣りのコテージに住んでいますが、今の妻と絵のモデルの愛人は自分のコテージに同居させていて、何れにせよ、妻妾同居はトラブルの元―といったところでしょうか。

 この画家マックス・バーシーニ(パトリック・ボーショー)は、実は過去に画商を殺害しており、前妻もその秘密を知っていて、精神分析治療の際に過去の出来事に関連する事柄を口走りはじめるようになった前妻を、画家が身の危険を感じて殺害するというもので、殺害のトリックは、酒場の店主ヴィト(ヴィト・スコッティ)に頼まれた絵を、昔その酒場の2階で自分がアトリエとして使っていた部屋に籠殺意のキャンパス01.jpgって描いていたとうことをアリバイに、実は既に出来上がっていいる絵を持ち込んで、その間にアトリエを抜け出して海辺で日光用中の前妻を殺害するというもの。3人の女性との暮らしがギクシャクして、前妻を殺したら多少は落ち着くかと思ったら、現在の妻も愛人も画家の自己チューぶりに愛想をつかして出て行ってしまうという展開も皮肉がよく効いていて、80年代終わりに始まった新・シリーズの中では、比較的よく出来ている方ではないでしょうか。

殺意のキャンパス02.jpg殺意のキャンパス ヴィと.jpg このシリーズのコメディっぽいシーンに欠かせない俳優ヴィト・スコッティは、新旧シリーズ通して6話に登場していて、これが最後となりました。この作品以前は、第19話「別れのワイン」のレストラン支配人、第20話「野望の果て」のテーラーの主人、第24話「白鳥の歌」の葬儀屋、第27話「逆転の構図」の浮浪者、第34話「仮面の男」のぶどう輸入会社社長の役で出演しています。 
  
  
五匹の子豚05.jpg五匹の子豚08.jpg「クリスティのフレンチ・ミステリー(第7話)/五匹の子豚」」●原題:LES PETITS MEURTRES D'AGATHA CHRISTIE/CINQ PETITS COCHONS(Five Little Pigs)●制作年:2010年●制作国:フランス●本国上映:2011/4/8●監督:エリック・ウォレット●脚本:Sylvie Simon●出演:アントワーヌ・デュレリ/マリウス・コルッチ/Julia Vaidis-Bogard /Vincent Winterhalter/Michel Muller/Prune Beuchat /Eglantine Rembauville/Gabrielle Atger/Marine Mendes/Lily-Rose Miot ●日本放映:2011/09●放映局:AXNミステリー(評価:★★★☆)

新・刑事コロンボDVDコレクション 05.jpg殺意のキャンパス00.jpg「刑事コロンボ(第50話)/殺意のキャンバス」●原題:MURDER, A SELF PORTRAIT●制作年:1989年●制作国:アメリカ●監督:ジェームズ・フローリー●製作:スタンリー・カリス●脚本:ロバート・シャーマン●音楽:パトリック・ウィリアムズ●時間:90分●出演:ピーター・フォーク/ロバート・フォックスワース/パトリック・ボーショー/フィオヌラ・フラナガン/シーラ・ダニーズ/イザベル・ロルカ/ヴィト・スコッティ/ジョージ・コー/デヴィッド・バード●日本初放送:1994 /11●放送:NTV:★★★☆) 
隔週刊 新・刑事コロンボDVDコレクション 2013年 8/6号 [分冊百科]

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映像化によりカリブ海リゾートのイメージが掴めた。ドナルド・プレザンスの老富豪役も嬉しい。

カリブ海の秘密 dvd1.jpg カリブ海の秘密 dvd2.jpg カリブ海の秘密 01.jpg カリブ海の秘密 011.jpg
ミス・マープル 第4巻 カリブ海の秘密 [DVD]」「ミス・マープル/カリブ海の秘密 [完全版]VOL.5 [DVD]」 
ミス・マープル(ジョーン・ヒクソン)/パルグレイブ少佐(フランク・ミドルマス)/ヴィクトリア(ヴァレリー・ブキャナン)
カリブ海の秘密 1989Joan Hickson.jpgカリブ海の秘密 1989Frank Middlemass.jpgカリブ海の秘密 1989Valerie Buchanan.jpg ミス・マープル(ジョーン・ヒクソン)は、甥のレイモンドに持病の気管支炎の転地療養を勧められ、カリブ海のバルバドス島のホテルに滞在していた。ある日、宿泊客の一人で自慢話好きのパルグレイブ少佐(フランク・ミドルマス)から、2件の妻の自殺に関わった殺人容疑者だという人物の写真を見せられようとした時、彼がマープルの肩越しに誰かを見てそれをやめ、財布に写真をしまってしまうということがあった。その晩に酔っていた少佐は、翌朝自分の部屋で死んでいるのを部屋係のヴィクトリア(ヴァレリー・ブキャナン)に発見される。ヴィクトリアは少佐の部屋で死亡前には無かった不審な錠剤を見つける。
ティム・ケンドール(エイドリアン・ルーキス)/モリー(ソフィー・ウォード)/グレアム医師(T・P・マッケンナ)
カリブ海の秘密 1989Adrian Lukis.jpgカリブ海の秘密 1989Sophie Ward.jpgカリブ海の秘密 1989 T.P. McKenna.jpg ホテルの経営者ティム・ケンドール(エイドリアン・ルーキス)とヴィクトリアから報告を受けたティムの妻モリー(ソフィー・ウォード)は、グレアム医師(T・P・マッケンナ)に相談する。医師は大佐の死は高血圧によるものと判断するが、一応、ネピア総督(ショーガン・シーモア)に依頼してウェストン警部(ジョゼフ・マィデル)に埋葬した死体を再検査させる。
イヴリン(シェイラ・ラスキン)/エドワード(マイケル・フィースト)/ラッキー(スー・ロイド)
カリブ海の秘密 1989 Sheila Ruskin.jpgカリブ海の秘密 1989Michael Feast.jpgカリブ海の秘密 1989Sue Lloyd.jpg マープルはヴィクトリアから、彼女の叔母(イサベラ・ルーカス)が住む村へ招待され、その叔母からSophie Ward & Sheila Ruskin.jpgホテル経営者夫婦の来歴を聞く。ヴィクトリアは、錠剤を本来の持ち主グレッグ(ロバート・スワン)に返す。モリーは一時的に記憶を失うことがある不安を滞在客のイヴリン(シェイラ・ラスキン)に打ち明ける。イヴリンの夫でグレッグに雇われている蝶学者エドワーカリブ海の秘密 1989 Donald Pleasence.jpgド(マイケル・フィースト)は、最初の妻の看護婦で今はグレッグの妻であるラッキー(スー・ロイド)と関係しながらも、妻イヴリンとはとりあえず一緒にいる。カリブ海の秘密 Sue Lloyd .jpgそうした中、モリーが夕食時に、樹の傍で刺殺されているヴィクトリアを発見する。ホテルに滞在していた車椅子の大富豪ジェイソン・ラフィール(ドナルド・プレザンス)は、最初はミス・マープルのことを嫌っていたが、やがて彼女の観察眼の鋭さに気づき、マープルと共に連続殺人事件の推理を始める―。
ジェイソン・ラフィール(ドナルド・プレザンス)

A Caribbean Mystery.jpgカリブ海の秘密 クリスティー文庫.jpg BBC版ジョーン・ヒクソン(Joan Hickson、1906‐1998)主演のミス・マープルシリーズ全12話の内の第10話(本国放映は1989年)で、原作はアガサ・クリスティ(1890‐1976)の、1964年に発表されたミス・マープルシリーズの長編第9作(原題:A Caribbean Mystery)。

 ミス・マープルとカリブ海のリゾートという取り合わせが興味深いですが、原作ではリゾート地の描写があまりされておらず、その分、映像的にどう作るかが一つの見所となり、また、作品のイメージをより身近に感じられるものでもありました。
 
 ストーリー的にも、牧師一行を宿泊客から割愛して登場人物を簡素化したり、マープルがヴィクトリアの実家を訪ねたり、或いはウェストン警部がミス・マープルの名を知っていたりとか一部改変はありますが、ほぼ原作に忠実で、宿泊客の2組の夫婦のドロドロな関係もよく描き分けている印象。犯人は、当初マープルも想定していなかった意外な人物ですが、原作ではその伏線があまり無く、最後まで誰が犯人か判らなかったけれど、この映像化作品では、大佐が殺害される夜に、犯人を示唆するシーンが一瞬あります。しかし、その後、宿泊客のそれぞれが不審な行動をはじめ、そちらの方へミスリードされるようになっていて、その"不審な行動"のそれぞれに理由があるという点で、原作の旨さを改めて認識した次第です。

刑事コロンボ 別れのワイン.jpg別れのワイン ラスト.jpg ミス・マープルと共に推理を展開することになる偏屈な金持ちの車椅子老人ラフィールを(この老人とミス・マープルとの当初険悪だった関係が、やがて共闘関係に転じていくところが本作の面白みの一つ)、映画「大脱走」('63年)でのバイプレーヤーぶりが光り、「刑事コロンボ/別れのワイン」('73年)ではシリーズ最高の犯人役を演じたと評されるドナルド・プレザンス(1919-1995)が演じているのが嬉しいです。

カリブ海の秘密 03.jpg 原作に対しては、やはり伏線が無かった分"掟破り"の印象を抱かざるを得ませんでしたが、この映像化作品ではそのヒントを与えているし、プロットが結構粗いところを、キャラクターをきちんと描き分けてドロドロした人物相関を浮かび上がらせることで補っている原作に倣って、この映像化作品も、ドラマ部分が丁寧に描かれているというか、説明的で分かりやすかったです(原作を先に読んでいるということもあるが)。

カリブ海の秘密 01.jpg 個人的には、原作が星3つ半の評価に対して、原作の魅力を忠実に再現しているという点、プラス、映像化によりカリブ海リゾートのイメージが掴めたり、ドナルド・プレザンスとジョーン・ヒクソンの演技競演が見られたりしたことを加味して星4つ。ミス・マープルがヴィクトリアの葬儀に参列するなども原作からの改変ですが、そのことによって「復讐の女神」というキータームの意味が明確化することに繋がっており、ここまできちんと作られてしまうと、後に来る映像化作品は、独自の改変を加え、"改変の妙"を狙ったものにならざるを得ないのかなあと。ストレートで勝負して、このジョーン・ヒクソン版を超えるのは難しいのでは。

A Caribbean Mystery 1989.jpg「ミス・マープル(第10話)/カリブ海の秘密」」●原題:A CARIBBEAN MYSTERY●制作年:1989年●制作国:イギリス●本国放映:1989/12/25●演出:クリストファー・ペティット●脚本:T・R・ボーウェン●時間:日本放映版108分(完全版203分)●出演:ジョーン・ヒクソン/フランク・ミドルマス/エイドリアン・ルーキス/ソフィー・ウォード/ドナルド・プレザンス/ロバート・スワン/シェイラ・ラスキン/ショーガン・シーモア/ジョゼフ・マィデル/マイケル・フィースト/スー・ロイド/バーバラ・バーンズ/スティーヴン・ベント/ヴァレリー・ブキャナン/イサベラ・ルーカス●日本放映:1996/04/09●放映局:テレビ東京(評価:★★★★)

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クラッケンソープ家の兄弟関係などは原作に忠実。スーパー家政婦のイメージも原作に近い。

パディントン発4時50分 dvd.jpg  パディントン発4時50分 1987.jpg  パディントン発4時50分 07.jpg  パディントン発4時50分 クリスティー文庫.jpg
ミス・マープル 第3巻 パディントン発4時50分 [DVD]」「ミス・マープル[完全版]VOL.4 [DVD]

パディントン発4時50分 01.jpg セント・メアリー・ミードへ行くためにパディントン発4時50分の急行列車に乗ったマクギリカティ夫人(モナ・ブルース)は、平行して走る列車を追い越す際に窓越しに女性が絞殺される瞬間を目撃、その話を信じるミス・マープル(ジョーン・ヒクソン)はスラック警部(デヴィッド・ボロヴィッチ)に捜査を依頼するが、警察は手掛かりを見つけられず、夫人の勘違いだろうと片づける。そこでミス・マープルは、同じ列車に乗って犯人が死体を遺棄した場所を推察パディントン発4時50分 05.jpgし、フリーのハウスキーパーのルーシー・アイレスバロウ(ジル・ミーガー)に調査を依頼し、付近にあるクラッケンソープ家の住むラザフォード邸に彼女を家政婦として送り込む。屋敷の当主ルーサー(モーリス・デパディントン発4時50分 04.jpgンハム)は、先代の遺言で屋敷や土地を勝手に処分することはできず、遺産は彼の子供らにいくことになっていて、年一回相続権のある人間が集まって会食を開くことも遺言により決まっている。父の世話をしている長女エマ(ジョアンナ・ディヴィッド)のほか、屋敷に集まってきたのは、次男の画家セドリック(ジョン・ハラム)、三パディントン発4時50分 06.jpg男の銀行家ハロルド(バーナード・ブラウン)、四男のディーラーのアルフレッド(ロバート・イースト)、亡くなった次女の夫で子連れの保険会社員ブライアン(ディヴィッド・ビームズ)と息子のアレクサンダー及びその寮友達、そしてクインパー医師(アンドリュー・バート)。見届け人は、弁護士のアーサー・ウィンボーン(ウィル・ティシー)。ルーシーは古い納屋の石棺で女性の死体を見つけ、警察がその身元を探るうちに、今度は事故に見せかけてハロルドが森で殺される―。

パディントン発4時50分 ハヤカワ文庫.jpg BBC版ジョーン・ヒクソン(Joan Hickson、1906‐1998)主演のミス・マープルシリーズ全12話の内の第9話(本国放映は1987年)で、原作はアガサ・クリスティ(1890‐1976)の、1957年に発表されたミス・マープルシリーズの長編第7作(原題:4:50 From Paddington)。日本では1996年4月8日にテレビ東京「午後のロードショー」で放映され、1982年から放送が始まった同番組で最初に放映されたテレビシリーズがミス・マープルシリーズですが、そのミス・マープルシリーズの中で一番最初に放映されたのがこのエピソードです(以降、テレビ東京でのシリーズ作の放映が何作か続くが、結局放映されなかったエピソードもある)。

Miss Marple - 450 From Paddington.jpg 2004年に作られたジェラルディン・マキューアン主演のグラナダ版の同原作TVドラマ(左)が、クラッケンソープ家の男兄弟の順番を入れ替えたりしているのに対し、こちらは原作に忠実で、但し、原作でルーシー・アイレスバロウを巡って恋の鞘当をする画家セドリックと次女の夫ブライアンが、原作では結局ルーシーがどちらを選んだか明かしてしないのに対し、この映像化作品ではセドリックが最初から横柄なキャラクターとして描かれているため、彼がどれだけ強引にルーシーに言い寄ろうと、最終的にはルーシーがセドリックを選ぶことはまずないだろという大方の予想がつくようになっています。
David Horovitch
David Horovitch  'Miss Marple' (1987) 1.9.jpgミス・マープル(第9話)/パディントン発4時50分59.jpg その他にも、原作のクラドック警部(原作の『予告殺人』にも登場)ではなく、スラック警部(デヴィッド・ボロヴィッチ)が登場、彼はこのシリーズで第5話「牧師館の殺人」事件でミス・マープルに面目を潰されたこともあってか、シリーズ中ほとんどずっとミス・マープルを疎ましく思っているという設定で、このシリーズの第3話「予告殺人」に登場のスコットランドヤードのダッカム警部(デイヴィッド・ウォラー)が積極的にミス・マープルの意見を参考にする(ミス・マープルは旧知の友?)という描かれ方と対照的であるのも興味深いです(スラック警部もシリーズの最後の方第11話「魔術の殺人」でミス・マープルと和解(?)し、第12話「鏡は横にひび割れて」では「警視」に昇進、クラドック警部にミス・マープルに相談するようアドバイスする)。

 兄弟関係を原作通りにしているため、セドリックが偽悪的に描かれているほかは、各キャラクター造型は大体しっくりくるものがあり、何よりもジル・ミーガー演じるスーパー家政婦ルーシー・アイレスバロウが極めて原作に近い印象で、また、十分に魅力的、二人の男性に言い寄られて困惑する女性らしさも出ていました(グラナダ版で同役を演じたアマンダ・ホールデンは、今風と言うかアメリカ的なドライな感じ)。料理を作るシーンなどが無かったグラナダ版と比べると、ちゃんと料理もするし、最初から家族と同じ食卓につくようなこともありません。

 屋敷の作りなども本格的で、こんな大邸宅が舞台だったのかと。「納屋」と言ってもスケールが違う。ルーシーは広い庭園でゴルフの練習をするなど、家政婦にしてはハイブロウですが、彼女は元々オックスフォードを優秀な成績で卒業した才媛、但し、奉公先に高級クラシックカーで乗り付けたグラナダ版アマンダ・ホールデンのルーシーの過剰なセレブぶりよりは、これもしっくりきました(ゴルフ練習も実は行方不明の死体探しの方便)。

 セドリックの描き方の改変だけでなく、戦争の英雄でありながら今は一保険会社員に甘んじ屈折気味のブライアンが、ルーシーに感化されて前向きに行動するようになり、最後は犯人逮捕劇でヒロイックなアクションを演じるという、自信を回復してルーシーに相応しい男性へと変貌していく過程が織り込まれていることもあったりして、細部においては原作からの改変が幾つか見られますが、全体としては原作にほぼ忠実、原作のプロットや雰囲気を知る上ではぴったりの作品であり、また、原作の持ち味がよく出ているように思いました。

4:50 FROM PADDINGTON 87.jpg「ミス・マープル(第9話)/パディントン発4時50分」」●原題:4:50 FROM PADDINGTON●制作年:1987年●制作国:イギリス●演出:マーティン・フレンド●脚本:T.R.ボウエン●時間:日本放映版110分(完全版204分)●出演:ジョーン・ヒクソン/モーリス・デンハム/デヴィッド・ボロヴィッチ/デヴィッド・ビームス/モナ・ブルース/ジル・ミーガー/ジョアンナ・デヴィッド/ アンドリュー・バート/ジョン・ハラン/ローダ・ルイス/バーナード・ブラウン/ロバート・イースト/イアン・ブリンブル/ウィル・ティシー●日本放映:1996/04/08●放映局:テレビ東京(評価:★★★★)

《読書MEMO》
●テレビ東京「午後のロードショー」でのシリーズ作放映年月日()内は本国放映順。「午後のロードショー」放映時のタイトルはいずれも頭に「アガサ・クリスティ」とつく。
・1996年04月08日(月)...「ミス・マープル・パディントン発4時50分」 (第9話)
・1996年04月09日(火)...「ミス・マープル・カリブ海の秘密」 (第10話)
・1996年04月10日(水)...「ミス・マープル・復讐の女神」 (第8話)
・1996年05月07日(火)...「ミス・マープル・バートラム・ホテルにて」 (第7話)
・1996年05月08日(水)...「ミス・マープル・スリーピング・マーダー」 (第6話)
・1997年03月06日(木)...「ミス・マープル・ポケットにライ麦を」 (第4話)
・1997年03月07日(金)...「ミス・マープル・牧師館の殺人」 (第5話)
・1997年03月13日(木)...「ミス・マープル・動く指」 (第2話)
・1997年03月19日(水)...「ミス・マープル・鏡は横にひび割れて」 (第12話)
・1997年03月14日(金)...「ミス・マープル・魔術の殺人」 (第11話)

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