【1961】 ○ クリストファー・ペティット 「ミス・マープル(第10話)/カリブ海の秘密」 (89年/英) (1996/04 テレビ東京) ★★★★

「●TV-M (クリスティ原作)」の インデックッスへ Prev|NEXT⇒ 【2406】「名探偵ポワロ(第13話)/消えた廃坑 
「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「●く アガサ・クリスティ」の インデックッスへ

映像化によりカリブ海リゾートのイメージが掴めた。ドナルド・プレザンスの老富豪役も嬉しい。

カリブ海の秘密 dvd1.jpg カリブ海の秘密 dvd2.jpg カリブ海の秘密 01.jpg カリブ海の秘密 011.jpg
ミス・マープル 第4巻 カリブ海の秘密 [DVD]」「ミス・マープル/カリブ海の秘密 [完全版]VOL.5 [DVD]」 
ミス・マープル(ジョーン・ヒクソン)/パルグレイブ少佐(フランク・ミドルマス)/ヴィクトリア(ヴァレリー・ブキャナン)
カリブ海の秘密 1989Joan Hickson.jpgカリブ海の秘密 1989Frank Middlemass.jpgカリブ海の秘密 1989Valerie Buchanan.jpg ミス・マープル(ジョーン・ヒクソン)は、甥のレイモンドに持病の気管支炎の転地療養を勧められ、カリブ海のバルバドス島のホテルに滞在していた。ある日、宿泊客の一人で自慢話好きのパルグレイブ少佐(フランク・ミドルマス)から、2件の妻の自殺に関わった殺人容疑者だという人物の写真を見せられようとした時、彼がマープルの肩越しに誰かを見てそれをやめ、財布に写真をしまってしまうということがあった。その晩に酔っていた少佐は、翌朝自分の部屋で死んでいるのを部屋係のヴィクトリア(ヴァレリー・ブキャナン)に発見される。ヴィクトリアは少佐の部屋で死亡前には無かった不審な錠剤を見つける。
ティム・ケンドール(エイドリアン・ルーキス)/モリー(ソフィー・ウォード)/グレアム医師(T・P・マッケンナ)
カリブ海の秘密 1989Adrian Lukis.jpgカリブ海の秘密 1989Sophie Ward.jpgカリブ海の秘密 1989 T.P. McKenna.jpg ホテルの経営者ティム・ケンドール(エイドリアン・ルーキス)とヴィクトリアから報告を受けたティムの妻モリー(ソフィー・ウォード)は、グレアム医師(T・P・マッケンナ)に相談する。医師は大佐の死は高血圧によるものと判断するが、一応、ネピア総督(ショーガン・シーモア)に依頼してウェストン警部(ジョゼフ・マィデル)に埋葬した死体を再検査させる。
イヴリン(シェイラ・ラスキン)/エドワード(マイケル・フィースト)/ラッキー(スー・ロイド)
カリブ海の秘密 1989 Sheila Ruskin.jpgカリブ海の秘密 1989Michael Feast.jpgカリブ海の秘密 1989Sue Lloyd.jpg マープルはヴィクトリアから、彼女の叔母(イサベラ・ルーカス)が住む村へ招待され、その叔母からSophie Ward & Sheila Ruskin.jpgホテル経営者夫婦の来歴を聞く。ヴィクトリアは、錠剤を本来の持ち主グレッグ(ロバート・スワン)に返す。モリーは一時的に記憶を失うことがある不安を滞在客のイヴリン(シェイラ・ラスキン)に打ち明ける。イヴリンの夫でグレッグに雇われている蝶学者エドワーカリブ海の秘密 1989 Donald Pleasence.jpgド(マイケル・フィースト)は、最初の妻の看護婦で今はグレッグの妻であるラッキー(スー・ロイド)と関係しながらも、妻イヴリンとはとりあえず一緒にいる。カリブ海の秘密 Sue Lloyd .jpgそうした中、モリーが夕食時に、樹の傍で刺殺されているヴィクトリアを発見する。ホテルに滞在していた車椅子の大富豪ジェイソン・ラフィール(ドナルド・プレザンス)は、最初はミス・マープルのことを嫌っていたが、やがて彼女の観察眼の鋭さに気づき、マープルと共に連続殺人事件の推理を始める―。
ジェイソン・ラフィール(ドナルド・プレザンス)

A Caribbean Mystery.jpgカリブ海の秘密 クリスティー文庫.jpg BBC版ジョーン・ヒクソン(Joan Hickson、1906‐1998)主演のミス・マープルシリーズ全12話の内の第10話(本国放映は1989年)で、原作はアガサ・クリスティ(1890‐1976)の、1964年に発表されたミス・マープルシリーズの長編第9作(原題:A Caribbean Mystery)。

 ミス・マープルとカリブ海のリゾートという取り合わせが興味深いですが、原作ではリゾート地の描写があまりされておらず、その分、映像的にどう作るかが一つの見所となり、また、作品のイメージをより身近に感じられるものでもありました。
 
 ストーリー的にも、牧師一行を宿泊客から割愛して登場人物を簡素化したり、マープルがヴィクトリアの実家を訪ねたり、或いはウェストン警部がミス・マープルの名を知っていたりとか一部改変はありますが、ほぼ原作に忠実で、宿泊客の2組の夫婦のドロドロな関係もよく描き分けている印象。犯人は、当初マープルも想定していなかった意外な人物ですが、原作ではその伏線があまり無く、最後まで誰が犯人か判らなかったけれど、この映像化作品では、大佐が殺害される夜に、犯人を示唆するシーンが一瞬あります。しかし、その後、宿泊客のそれぞれが不審な行動をはじめ、そちらの方へミスリードされるようになっていて、その"不審な行動"のそれぞれに理由があるという点で、原作の旨さを改めて認識した次第です。

刑事コロンボ 別れのワイン.jpg別れのワイン ラスト.jpg ミス・マープルと共に推理を展開することになる偏屈な金持ちの車椅子老人ラフィールを(この老人とミス・マープルとの当初険悪だった関係が、やがて共闘関係に転じていくところが本作の面白みの一つ)、映画「大脱走」('63年)でのバイプレーヤーぶりが光り、「刑事コロンボ/別れのワイン」('73年)ではシリーズ最高の犯人役を演じたと評されるドナルド・プレザンス(1919-1995)が演じているのが嬉しいです。

カリブ海の秘密 03.jpg 原作に対しては、やはり伏線が無かった分"掟破り"の印象を抱かざるを得ませんでしたが、この映像化作品ではそのヒントを与えているし、プロットが結構粗いところを、キャラクターをきちんと描き分けてドロドロした人物相関を浮かび上がらせることで補っている原作に倣って、この映像化作品も、ドラマ部分が丁寧に描かれているというか、説明的で分かりやすかったです(原作を先に読んでいるということもあるが)。

カリブ海の秘密 01.jpg 個人的には、原作が星3つ半の評価に対して、原作の魅力を忠実に再現しているという点、プラス、映像化によりカリブ海リゾートのイメージが掴めたり、ドナルド・プレザンスとジョーン・ヒクソンの演技競演が見られたりしたことを加味して星4つ。ミス・マープルがヴィクトリアの葬儀に参列するなども原作からの改変ですが、そのことによって「復讐の女神」というキータームの意味が明確化することに繋がっており、ここまできちんと作られてしまうと、後に来る映像化作品は、独自の改変を加え、"改変の妙"を狙ったものにならざるを得ないのかなあと。ストレートで勝負して、このジョーン・ヒクソン版を超えるのは難しいのでは。

A Caribbean Mystery 1989.jpg「ミス・マープル(第10話)/カリブ海の秘密」」●原題:A CARIBBEAN MYSTERY●制作年:1989年●制作国:イギリス●本国放映:1989/12/25●演出:クリストファー・ペティット●脚本:T・R・ボーウェン●時間:日本放映版108分(完全版203分)●出演:ジョーン・ヒクソン/フランク・ミドルマス/エイドリアン・ルーキス/ソフィー・ウォード/ドナルド・プレザンス/ロバート・スワン/シェイラ・ラスキン/ショーガン・シーモア/ジョゼフ・マィデル/マイケル・フィースト/スー・ロイド/バーバラ・バーンズ/スティーヴン・ベント/ヴァレリー・ブキャナン/イサベラ・ルーカス●日本放映:1996/04/09●放映局:テレビ東京(評価:★★★★)

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1