【1957】 ○ ジョン・デイビス 「ミス・マープル(第6話)/スリーピング・マーダー」 (87年/英) (1996/05 テレビ東京) ★★★★

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原作にほぼ忠実であり、原作同様に推理を堪能できるのではないか。

スリーピング・マーダー dvd00.jpg  スリーピング・マーダー dvd.jpg  スリーピング・マーダー 001.jpg  スリーピング・マーダー クリスティー文庫.jpg
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Sleeping Murder, 1987 002.jpg ニュージーランドで育ったグエンダ・リード(ジェラルディン・アレクサンダー)は、夫ジャイルズ(ジョン・モルダー=ブラウン)と新居を購入したが、屋敷の持ち主に案内される前に寝室の場所が分かったり、庭師に頼んだ階段が既に柳の木の下にあったり、建築家に頼んだ扉が壁の裏側にあったりと、初めてのはずの家の中を隅々まで知っているような感覚を抱く。
スリーピング・マーダーDavid McAlister.gif 夫ジャイルズは、ロンドンに住む従弟のレイモンド・ウェスト(ディヴィッド・マカリスター)夫とその妻に会ってグエンダを紹介、レイモンドの叔母ミス・マープル(ジョーン・ヒクソン)と皆で観劇に行くが、劇中の夫が妻を絞殺する場面で、グエンダは恐怖に駆られ叫び出し、マープルはそれは彼女の過去の記憶のせいだと推理、過去は掘り返さない方がよいと助言しつつも調査したところ、グエンダの父はインドから英国へ帰航中にへレンと会って結婚したが、新妻は駆け落ちしていたことが分かる。
スリーピング・マーダー 1987 13.jpg グエンダがヘレンの情報を求める新聞広告を出すと、ヘレンの兄ジェイムズ・ケネディ医師(フレデリック・トレヴェス)が訪ねて来て、彼の話をもとに父の居たナトリウムを訪ね、父の死が、自分がヘレンを絞殺したという妄想に駆られての自殺だったことを知らされる。ヘレンには誰か他の男がいたらしく、グエンダはヘレンの恋人だった男を探し出し、弁護士ウォルター・フェーン(テレンス・ハーディマン)、退役少佐リチャード・アースキン(ジョン・ベネット)、観光会社経営ジャッキー・アフリック(ケネス・コープ)らと会うが、彼らは皆ヘレンに振られただけのようで、犯行証拠は得られない。
 しかし、元料理人イーディス・パジェット(ジーン・ヘイウッド)から、ヘレンの駆け落ち当夜、メイドのリリー(エリル・メイナード)が、旅行鞄の洋服の不自然さから、駆け落ちは見せかけで本当は旦那様に殺されたんだと言っていたことを聞き、リリーから話を聞こうとするが、リリ-は会いに来る途中で絞殺される。マープルが、屋敷の庭の不自然に植えられた柳の下を警察に依頼して掘らせると、そこにはヘレンの死体が埋まっていた―。

スリーピング・マーダー 1987 22.jpg スリーピング・マーダー 文庫.jpg 1984年から1992年にかけて本国イギリスで放映されたBBC版ジョーン・ヒクソン(Joan Hickson、1906‐1998)主演のミス・マープルシリーズ全12話の内の第6話(本国放映は1987年)で、原作はアガサ・クリスティ(1890‐1976)の、その遺言により没後の1976年に刊行された作品(原題:Sleeping Murder)。

 新居探しを夫婦でするなど原作と一部の違いはありますが(原作ではグエンダが単独で探す)、概ね原作に忠実に作られており、原作が充分に推理を堪能できるものであるだけに有難いなあと。これも、「原作を読んだ気」になりたければ、お薦めの映像化作品。

Sleeping Murder, 1987 003.jpg グエンダを演じるジェラルディン・アレクサンダーは、グラナダ版「スリーピング・マーダー」('06年/英)でグエンダを演じたソフィア・マイルズほどには今風の美女というわけではないけれど、本作においては新妻らしさが出ていて良く、ジョン・モルダー=ブラウン(かつて、マクシミリアン・シェル監督、ツルゲーネフ原作の映画「初恋(ファースト・ラブ)」('70年/西独)やイェジー・スコリモフスキー監督の「早春」('70年/英)に美少年俳優として主演)演じるジャイルズもいいです。すぐに仕事に就かなくてもいいという状況設定であるにしろ、根気強く妻の過去の探求に付き合って、いい旦那さんだなあと(まあ、新婚だからね)。

 ヘレンの元恋人たちの、弁護士がマザコンぽかったり、退役少佐が嫉妬深い妻の元であまり幸せそうでなかったり、観光会社経営者が破れた恋を忘れるかのように仕事と趣味に生きていたりする人物造型などもほぼ原作通りですが、主人公である若く希望に満ちたカップルとの対比で、恋愛や夫婦生活というものの様々な位相を上手く見せているように思いました。

 しいて言えば、犯人役が、出てくるなり怪しいという印象を受けなくもないですが、こっちが犯人だと分って観ているせいもあるのかも。原作同様、犯行動機が最後まで伏されているため、原作を未読の人には、推理の面でも楽しめると思います(DVDジャケットが、ミス・マープルがラストで珍しくアクションをすることを仄めかしていて、やや他のものと雰囲気が異なるなあ)。

Sleeping Murder, 1987 001.jpg「ミス・マープル(第6話)/スリーピング・マーダー」」●原題:SLEEPING MURDER●制作年:1987年●制作国:イギリス●演出:ジョン・デイビス●脚本:ケン・テイラー●時間:日本放映版108分(完全版203分)●出演:ジョーン・ヒクソ/ジェラルディン・アレクサンダー/ジョン・モルダー=ブラウン/フレデリック・トレーヴス/ジーン・アンダーソン/テレンス・ハーディマン/ジョーン・スコット/エイリル・メイナード/ケネス・コープ●日本放映:1996/05/08●放映局:テレビ東京(評価:★★★★)

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