【1407】 ○ アーサー・コナン・ドイル (日暮雅通:訳) 『四つの署名―新訳シャーロック・ホームズ全集』 (2007/01 光文社文庫) 《 (小林 司/東山あかね:訳) 『四つのサイン (1998/06 河出書房新社)》 ★★★☆

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『緋色の研究』同様にそこそこ面白かったが...。河出書房版「四つのサイン」の訳者あとがきは興味深い。

四つの署名.jpg 四つのサイン 河出大.jpg 四つの署名 (ハヤカワ・ミステリ文庫 75-6.jpg  四つの署名 シャーロック・ホームズ [新潮CD].jpg 四つのサイン (河出文庫).jpg
四つの署名 新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫)』『四つのサイン (シャーロック・ホームズ全集)』『四つの署名 (ハヤカワ・ミステリ文庫 75-6)』「四つの署名―シャーロック・ホームズ [新潮CD] (新潮CD 名作ミステリー)」['98年]四つのサイン (河出文庫)』['14年]
The Sign of Four 01.jpgThe Sign of Four 02.jpg ホームズの元にメアリー・モースタンという若い女性が相談に訪れ、彼女の父親はインド英国軍の大尉だったが、帰国した際に消息を絶ち、その数年後から謎の人物から彼女に贈り物が届くようになって、そして今度は、その相手から直接会いたいとの連絡があったという―。ホームズとワトスンは、メアリーに付添って、彼女の父親とインドで一緒だったショルトー少佐の息子、サディアスを訪れ、そこで父親の死と秘密の財宝についての話を聞かされ、更に財宝を見つけた兄バーソルミューを訪ねるが、彼は密室の中で死んでいた―。

A Study in Scarlet and the Sign of Four
Sir Arthur Conan Doyle (Wordsworth Editions(2003)/Grant Thiessen(2004))

 シャーロック・ホームズ・シリーズの『緋色の研究』(1987年発表)に続く長編第2作で、1890年に発表され、同年に単行本刊行されたものですが(原題:The Sign of Four)、ホームズとワトスンのタッグがしっかり確立された作品であると言えます。
 但し、このシリーズが世間に人気を博したのは、この後に続く短編シリーズからだそうで、この作品はシリーズ全体の人気ランキングでも、必ずしも上位には入ってこない作品であり、そうしたこともあってか、個人的には今回が初読(だと思うが)。

 『緋色の研究』同様にそこそこ面白かったですが、謎解きの要素は意外と希薄で、結末部分では "high speed" boat chase などがあってアクションっぽくなるのですね、この作品は。
 後半4分の1を占める最終章は犯人の独白になっており、事件にインド大乱の時の混乱が絡んでいて、そこから財宝話が出てくるわけですが、このインド大乱って、セポイの乱のことなのですね。光文社文庫の新訳版は読み易くてすらすら読めてしまうのですが、その辺の周辺事情の部分だけは、ややごちゃごちゃしていて、分かりづらかったです。

 物語の途中までの焦点は、メアリーの手に財宝が渡るかどうかですが、最後は彼女とワトスンの2人が逆説的にめでたしめでたしとなる―冒頭で、『緋色の研究』において事件の記録にロマンチックな要素を持ち込んだことをホームズに批判されるワトスンですが(ドイル自身の前作への自己批判が反映されているらしい)、今回の物語でも、ホームズの口を借りて「絶対におめでとうとは言えないね」と。う~ん、ドイルは二重人格か。

Sign of Four.jpg 河出書房版は『四つのサイン』としていますが、より正確に言えば「四人のしるし」でしょう。他の3人は字が(自分の名前すら)書けないのだから(左のオーディオ・ブックのジャケット参照)。

"The Sign of Four, Sir Arthur Conan Doyle, Audio book"

 シャーロッキアンでも知られる訳者らしく、注釈と解説、訳者あとがきで本全体の3分の1を占めていました(これだけで1つの読み物のよう)。

 しかも、その訳者あとがきで、この物語を精神分析的に解釈していて、この作品の様々な登場人物に、作者のドイル自身及びその家族が反映されていることを示すとともに(この物語はドイルの「告白小説」だそうだ)、この物語における財宝が、母親の愛情の象徴であることを示唆しており、なかなか穿った見方で面白かったです。

 訳者あとがき部分だけだと10ページほど。興味がある人には、一読されることをお勧めします

四人の署名0.jpg「シャーロック・ホームズの冒険(第25話)/四人の署名」 (87年/英) ★★★☆ ジェレミー・ブレット主演 
 【1953年文庫化[新潮文庫(延原謙:訳)]/1960年文庫化[創元推理文庫(阿部知二:訳『四人の署名』)]/1979年再文庫化[講談社文庫(鮎川信夫:訳)]/1983年再文庫化[ハヤカワ・ミステリ文庫(大久保康雄:訳)]/1997年再文庫化[ちくま文庫(小池滋:訳『四つの署名・バスカヴィル家の犬―詳注版シャーロック・ホームズ全集〈5〉』)]/2007年再文庫化[光文社文庫(日暮雅通:訳)]/2013年再文庫化[角川文庫(駒月雅子:訳)]/2014年再文庫化[河出文庫(小林 司/東山あかね:訳)『四つのサイン―シャーロック・ホームズ全集2』)]】 

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