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クレージーキャッツの「同窓会」映画なのか、サラリーマンの悲哀を描いた映画なのか。

「会社物語」安田伸/谷啓/ハナ肇/植木等/犬塚弘/桜井センリ
花岡始(ハナ肇)は57歳。東京の商事会社で34年間真面目にコツコツと働き続けた万年課長だが、間もなく定年を迎えようとしていた。いまや仕事もさほど忙しくなく、若い部下達もあまり相手にしてくれない。家に帰れば家族間のトラブルがまたストレス
の種。そんな花岡にとって唯一の心の安らぎは、愛らしく気立てのよい新入社員の由美(西山由美)だけだった。彼女は若いエリートの恋人がいたが、わざわざ花岡のために二人だけの送別会を開いてくれた。退職が近づいたある日、同僚がジャズ・バンド結成の話を持ってきた。若い頃に情熱を傾けたジャズで有志を集めて、コンサートをやろうというのだ。犬山(犬塚弘)、安井(安田伸)、桜田(桜井センリ)、谷山(谷啓)、それに会社の守衛
をしている上木原(植木等)とメンバーも揃い、花岡は練習に精を出して再び生活に張り合いを取り戻した。そして12月25日にコンサートが始まったが、その時花岡の家では息子が暴れ回っていた。花岡は途中で家に帰り、息子を止めようとしてケガをしてしまう。しかし花岡は再び会社に戻り、コンサートを成功させる。退職の日。花岡は、娘のように親しみを感じていた由美を二股にかけて振った生意気な若いエリートをぶっ飛ばし、会社を後にするのだった―。
1988年の市川準(1948-2008/59歳没)監督作で、定年を間近に控えた主人公のサラリーマンが、退職前に昔のバンド仲間と共にジャズコンサートを企画する話。その「昔のバンド仲間」を演じているのが、「ハナ肇とクレージーキャッツ」のメンバーで、1971年1月に石橋エータローが脱退後、メンバーは各自での活動が多くなり、80年代には各メンバーとも俳優としての存在感が増し、グループとして事実上の解散状態を迎えていたため、久しぶりの「同窓会」的映画と言えます。
ただ、冒頭部分でハナ肇が演じる花岡始が、定年を迎えるサラリーマンの悲哀を一身に負っている感じで、矢鱈"重々しい"と言うか"暗~い"印象でした。「えっ、コメディじゃなかったの」という感じです。ストーリー的にも、最後の方に出てくる花岡の息子の家庭内暴力(こっちの方が情緒的なサラリーマンの悲哀よりよほど大きな現実問題ではないか)も解決した風には見えないし、「同窓会」映画ならクレージーらしくもっとも明るくてもよかったのでは。
そのくせ、クレージーのメンバーがジャズバーのようなところで「チャーリー・パーカーはいいよね」とかジャズ談義しているシーンがドキュメンタリー風に挿入されていたりして、これって一体、サラリーマンの悲哀を描いた映画なのか、クレージーキャッツの「同窓会」映画なのか、どうもはっきりしなかったように思います(一応、ハナ肇はこの作品で、1988年度・第31回「ブルーリボン主演男優賞」を受賞している)。

植木等演じる会社の守衛が、実は大邸宅に住み、羽田美智子演じる若妻を侍らせているという設定だけが面白く(羽田美智子はこの年['88年]、'89年日本旅行キャンペーンガールに選
ばれデビューしたばかりだった)、これとて、植木等が物語の設定に異議を唱えて、彼自身のアイディアで実現したようで、ああ、植木等という人は分かっていたなあ。「逆噴射家族」('84年)のようなコメディから黒澤明監督の「
乱」('85年)まで出演経験があり、撮られながらもどんな映画になりそうか見えていたのでしょう。
「乱」植木等(藤巻信弘)
花岡にフィリピン出張を命じる常務が伊東四朗だったり(伊東四朗と羽田美智子は、'03年から昨年['22年]までテレビ朝日系で放送された刑事ドラマシリーズ「おかしな刑事」でW主演としてコンビを組むことになる)、花岡をバイトに勧誘するベンチの変な男がイッセー尾形だったり、職場の課員役として木野花や小川菜摘(ダウンタウンの浜田雅功と1989年に結婚)が出ていたり、色んな人が出ているなあと(ジャイアント馬場も本人役で出ている)。
いずれにせよ、この映画が、メンバー7人が全員出演した最後の「クレージー映画」となりました。以降、下記のように、2023年現在で存命のメンバーは犬塚弘のみとなり、寂しい限りです。
ハナ肇 1930年生まれ・1993年9月10日(63歳没)
石橋エータロー 1927年生まれ・1994年6月22日(66歳没)
安田伸 1932年生まれ・1996年11月5日(64歳没)
植木等 1927年生まれ・2007年3月27日(80歳没)
谷啓 1932年生まれ・2010年9月11日(78歳没)
桜井センリ 1926年生まれ・2012年11月10日(86歳没)
犬塚弘 1929年生まれ・2023年10月26日(94歳没)
こうして見ると、ハナ肇、石橋エータロー、安田伸が何れも60代前半で亡くなっており、早かったのだなあと改めて思います。
「あの頃映画 「会社物語 MEMORIES OF YOU」 [DVD]」

「会社物語 MEMORIES OF YOU」●制作年:1988年●監督:市川準●脚本:鈴木聡/市川準●撮影:小野進●音楽:板倉文●時間:99分●出演:ハナ肇/谷啓/植木等/犬塚弘/安田伸/桜井センリ/石橋エータロー/西山由美(西山由海)/イッセー尾形/鈴木理江子/木野花/小川菜摘/馬渕晴子/羽田美智子/笹野高史/石丸謙二郎/岩松了/近藤宏/堺左千夫/宮部昭夫/余貴美子/ジャイアント馬場/村松友視/伊東四郎●公開:1988/11●配給:松竹●最初に観た場所:シネマブルースタジオ(23-05
-14)(評価:★★★)
犬塚 弘
2023年年10月26日(94歳没)
「ハナ肇とクレージーキャッツ」ベーシストであり最後のメンバー。桜井センリの死去後は、同グループ唯一の存命者であり、唯一、昭和・平成・令和時代と3代に渡って存命していた人物。山田洋次監督の「男はつらいよ」シリーズ、NHK連続テレビ小説「本日も晴天なり」「こころ」「おひさま」など数々の映画・ドラマにも出演したが、大林宣彦監督の遺作となった2020年公開の映画「海辺の映画館-キネマの玉手箱」で「俳優」としての活動から引退する意思を明らかにしていた。


九州に住む田村直樹(宮﨑将)と梢(宮﨑あおい)の兄妹は、小・中学生だった二年前に、沢井真(役所広司)の運転するバスで登校中にバスジャックに遭遇した。犯人(利重剛)は刑事の松岡(松重豊)によって射殺されたが、兄妹と沢井以外の乗
客は犯人の銃で殺された。極度のショックを受けた兄妹は引き籠り、その影響で両親は離婚。親権者の父親は無謀運転で事故死し、兄妹は大きな屋敷に二人きりで住むようになった。一方の沢井も不安定になり、家族と揉めた末に、引き寄せられるように直樹たちの屋敷に転がり込む。二年後の夏、兄
妹の従兄の大学生・秋彦(斉藤陽一郎)が屋敷にやって来る。休暇期間中だけ親戚らに送り込まれたのだ。兄妹が全く口をきかず、沢井まで居ることに驚きつつ、同居を始める秋彦。土木作業員として働く沢井の会
社で、事務員の河野圭子(椎名英姫)が殺された。近辺では通り魔殺人が頻発しており、疑われた沢井は一時留置場に拘留される。沢井と直樹たち兄妹はバスジャックの被害者なのに、地域の人々から孤立し白い目で見られている。このまま引き籠っていてはいけないと感じた沢井は、中古の旧式バスを買って改造し、直樹と梢、秋彦を乗せて旅に出る。バスに寝泊りしながら九州を巡る四人。秋彦は、前日に泊まった阿蘇の町で、通り魔殺人が起きたことを知る。犯人は、夜中にバスから出た沢井か直樹ではないのか―。
昨年['22年]頸部食道がんのため57歳で亡くなった青山真治(1964-2022)監督作で、第53回カンヌ国際映画祭で「
上映時間は3時間37分と長尺で、ほぼ全編セピアカラーのような映像で、心象風景的なシークエンスも少なからずありましたが、時間の長さをあまり感じさせず、一定の緊張感を維持して観続けることができました(劇場で観られたというのもある)。役所広司に加えて、宮﨑将・あおい兄妹の演技力もあったと思います。兄妹はPTSDで会話ができないという設定でしたが、秋彦役の斉藤陽一郎より梢役の宮﨑あおいの方がその存在感が印象に残りました(兄・宮﨑将は現在俳優をやめているが、役者としては、自分より妹の方が優れていると思っているという発言をしたことがある)。
要するに、PTSD(心的トラウマ)とそこからの立ち直りの物語ですが、ほろ苦い結末でもあります。ここから先はネタバレになりますが、結局、連続通り魔事件は心を病んだ直樹の犯行であり、そのことに気づいた沢井は姿を消した直樹を追い、次の殺人を思い留まらせ、付き添って警察に自首させます。そして、残された梢の心を思いやり、バスで海や広大な景色を見せてから家路へと向かう―。
沢井と梢が海を見てから展望台に登るというラストシーンは、ロードムービーの定番的シチュエーションのように思えましたが、悪くなかったように思います。ただ、梢が「お兄ちゃん、見える?」と兄への思いを馳せて言う言葉が、尚のことほろ苦さを増すというか、これから二人が旅しても、新たなトラウマを背負っていくことになるのでは、という気もしなくはありませんでした。
第14回三島由紀夫賞を受賞し、文庫化もされていますが、個人的には未読です。ただ、こうした実験的なアプローチで撮り切って、観客に映画館に足を運ばせる力量のある作品を生み出せる監督が亡くなったのは残念に思います。また、この作品が劇場であまり上映される機会が無いのも残念です(DVDは2002年に発売され、いったん廃盤となり、2008年に値下げして再リリースされたものの、現在は中古品がプレミア価格になってしまっている)。
「EUREKA(ユリイカ)」●制作年:2000年●監督・脚本:青山真治●撮影:田村正毅●音楽:青山真治/山田勳生●時間:217分●出演:役所広司/宮﨑あおい/宮﨑将/斉藤陽一郎/国生さゆり/光石研/利重剛/松重豊/塩見三省/真行寺君枝/でんでん/椎名英姫/中村有志/尾野真千子/本多哲郎(唄人羽(うたいびと はね))●公開:2001/01●配給:サンセントシネマワークス●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(23-03-19)(評価:★★★☆)
弁護士の城戸(妻夫木聡)は、かつての依頼者・谷口里枝(安藤サクラ)から、亡くなった夫・大祐(窪田正孝)の身元調査をして欲しいという奇妙な相談を受ける。里枝は離婚を経験後に子どもを連れて故郷へ帰り、やがて出会った大祐と再婚、新たに生まれた子どもと4人で幸せな家庭を築いていたが、大祐は不慮の事故で帰らぬ人となった。ところが、長年疎遠になっていた大祐の兄・恭一(眞島秀和)が、遺影に写っているのは大祐ではないと話したことから、愛したはずの夫が全くの別人だったことが判明したのだ。城戸はその男「X」の正体を追う中で様々な人物と出会い、驚くべき真実に近づいていく―。
原作は、里枝の再婚相手である大祐が亡くなって里恵が未亡人となったところから話が始まります
が、映画の方は、里枝と大祐の出会いから始まり、二人が慎ましやかながらも幸せな家庭生活を送っていた中、大祐が森林伐採の仕事中に倒木の下敷きになって亡くなるまでが冒頭に描かれています。この部分を安藤サクラが圧倒的な演技力で引っ張っていて、これがこの作品の中盤から後半へ向けてのいい"助走"になっているように思いました。
以下、ネタバレになりますが、猟奇殺人犯の父を持つことXは、成長するにつれ、父に生き写しになる自分を嫌悪し、自分から父を剥ぎ取りたい一心で、ボクシングに打ち込み、さらに、殺人犯の子という烙印から逃れるために、戸籍を替えて、最後には「谷口大祐」となって里枝のもとに辿り着き、やっと幸福に満ちた家族との日々を手に入れたということになります。
このように、入れ子構造を1つ分(作家の分)外してはいますが、冒頭のルネ・マグリットの絵画「エドワード・ジェームズの肖像」に、それを眺める城戸自身が加わることで"複製男"が3人になるのは、「城戸→X→本物の谷口大祐」という構造のメタファーであると分かり、インテリジェンスが感じられました。どこまで観る側に伝わったか(特に原作を読んでいない人に対して)というのはありますが、原作へのこだわりがあって、個人的には良かったように思います(評価は原作と同じく★★★★)
「ある男」●制作年:2022年●監督:石川慶●製作:田渕みのり/秋田周平●脚本:向井康介●撮影:近藤龍人●音楽:Cicada●原作:平野啓一郎●時間:121分●出演:妻夫木聡/安藤サクラ/窪田正孝/清野菜名/眞島秀和/小籔千豊/坂元愛登/山口美也子/きたろう/カトウシンスケ/河合優実/でんでん/仲野太賀/真木よう子/柄本明●公開:2022/11●配給:松竹●最初に観た場所:TOHOシネマズ錦糸町オリナス(22-12-18)(評価:★★★★)


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南北戦争が終り、解放された黒人奴隷のジョー(ロナルド・ネルソン)は、弟サム、従兄ルイ、叔父ボブの3人に再会した。彼らはニューオリンズから船に乗り故郷アフリカへ帰るはずが、メキシコ商人に騙されて香港行きの船に乗せられる。ある日、病気で死んだボムを残し、大嵐の中ボートで脱出を図った3人は駿河湾の庵原藩に助けられる。海郷亮勝(古谷一行)が藩主の庵原藩は、薩摩藩と幕府の中間に位置しているため、家老の石出九郎左衛門(財津一郎)は薩摩
か幕府のどちらにつくべきか悩んでいる。しかし亮勝はどこかうわの空。そんな時、黒人3人が流れ着いたとの一報が入る。亮勝は興味津々で彼らに会いたいと言うが、それを許そうとしない九郎左衛門は、医者の玄斎(殿山泰司)に作らせた眠り薬を使い、彼らを地下牢に閉じ込める。下手な篳篥を演奏するのが趣味の亮勝は、彼らは楽隊ではないかと玄斎から伝え聞き、何とか彼らと会うよう画策する。そして、念願を果たすや、音楽好きの亮勝は彼らの演奏するジャズの虜となり―。


岡本喜八監督の1986(昭和61)年公開作で、原作は筒井康隆の短編集『エロチック街道』('81年/新潮社)の1篇(文庫化後、映画化の際に書名が『ジャズ大名』に改められて表題作となった)。製作会社は大映、配給会社は松竹で、同年キネマ旬報ベストテンで10位となり、映画化困難といわれる筒井原作の映画では初のランクインとなっています。
藩主役の古谷一行と家老役の財津一郎のやり取りが楽しい。原作にある庵原藩の屋敷の特異な形状もしっかり再現されており、百畳敷以上の大広間(これが街道上に位置するため、伊勢参りや敗れた幕府軍、追う官軍などが行き来することになる)のセットは東宝スタジオに建てられ、音楽監督とプロデューサーを除くメ
インスタッフ全員が東宝から起用されたとのことです。
に、戦争なんて馬鹿らしいというメッセージが込められていたように思います。
昭和23年。ビルマ戦線から復員した重左こと宗重左衛門(真田広之)は、戦友の鬼庄こと鬼松庄一(佐藤浩市)と遊郭で再会し、仲間の伝次郎(堀弘一)と共に海賊して瀬戸内海を股にかけていた。ある日、三人が襲撃した船に洋子(安田成美)という名の少女が乗っており、鬼庄は彼女を色街に売って金を得ようとしていた。しかし重左は影のある彼女に惹かれ、鬼庄の計画を思いとどまらせることに成功する。洋子の嫁ぎ先は瀬戸内海を牛耳る新興やくざ・花万に捜索を依頼。そして、花万の番頭・火つけ柴(蟹江敬三)が五貫島に現われ、3日後に洋子を渡すように要求してきた。大分・竹田津の実家まで送り届けると洋子に約束した重左は、高松の元やくざ・阿波政(西村晃)に助けを求めに行くが、その間洋子は火つけ紫に連れ去られてしまう。闇ブローカーの岩テコ(平田満)から火つけ紫の妾の居場所を聞いた重左たちは、その女・千佳(今井美樹)を攫って人質交換を目論み、小型船の梵天丸で西枯木島にある火つけ紫の本拠地に乗り込むが―。
井筒和幸監督作で、荒れ狂う海の上での真田広之と佐藤浩市の活躍が観られます(この二人のW主演はある種"貴重映像"かも。「
今井美樹が唯一ヌードになった映画がこの作品とのことです。ホンダ・トゥデイのCM('85年)に出ていた彼女。個人的には、新車発表会で"ナマ今井美樹"見たこともあり思い入れがあったのですが、その彼女をこうした使い方をして大丈夫なのかなあと、当時思ったりもしました。しかしながら、今井美樹自身は、引き続きNEWトゥデイのCM('88年)にも'91年まで出ていて('93年に2代目イメージガール・牧瀬里穂にバトンタッチ)、その後も歌手、女優として幅広く活躍しています(1999年に布袋寅泰と結婚)。
井筒和幸監督自身は当時のことをどう振り返っているのかと思ったら、「日刊ゲンダイDIGITAL」の連載コラム(2020年9月26日配信)に《新人の今井美樹嬢を丸裸にさせたり、船上で尻をまくって海にオシッコさせたり、キスを何十回と連続でテークしたりした。彼女は耐えに耐えて夢中で演じた。熱い時代だった。今はキスも嫌う女優もどきがいる。ご清潔なものだ》と書いていて、この発言が今年['22年]になってツイッター民により引用・拡散されたことで物議を醸しているようです。
「ジャズ大名」●制作年:1986年●監督:岡本喜八●脚本:岡本喜八/石堂淑朗●製作:室岡信明●撮影:加藤雄大●音楽:筒井康隆/山下洋輔●原作:筒井康隆●時間:85分●出演:古谷一行/財津一郎/神崎愛/岡本真実 /殿山泰司/本田博太郎/今福将雄/小川真司/利重剛/ミッキー・カーチス/唐十郎 (友情出演)/ロナルド・ネルソン/ファーレズ・ウィテッド/レニー・マーシュ/ジョージ
・スミス/六平直政/山下洋輔(特別出演)/タモリ(特別出演)●公開:1986/04●配給:松竹(評価:★★★☆)●最初に観た場所:渋谷松竹(86-05-04)(評価:★★★☆)●併映:「犬死にせしもの」(井筒和幸)
男●音楽:武川雅寛(主題歌:桑名晴子)●原作:西村望「犬死にせしものの墓碑名」●時間:92 分●出演:真田広之/佐藤浩市/安田成美/平田満/堀弘一/梅津栄/今井美樹/風祭ゆき/水木薫/吉行和子/蟹江敬三/木之元亮/中村玉緒(特別出演)/西村晃/堤真一(チンピラ 役)●公開:1986/04●配給:松竹●最初に観た場所:渋谷松竹(86-05-04)(評価:★☆)●併映:「ジャズ大名」(岡本喜八)







大洲齊(おおず ひとし)監督の1976年公開作で、原作は山本周五郎が1964(昭和39)年10月、「別册文藝春秋」に掲した短編載時代小説で、本作を表題作として1967(昭和42)年3月文藝春秋刊。野村芳太郎監督により1972年1月に「初笑いびっくり武士道」というタイトルでコント55号主演で映画化・公開されていて、タイトルからしてもコント55号主演であることからしてもコメディなのですが、原作をコメディ化したと言うより、原作自体が「
松田優作は「太陽にほえろ!」('73年~'74年)の"ジーパン"刑事の印象がありますが、この映画を観ると後のTVドラマ「
女優陣で、松田優作演じる六兵衛の妹かねを演じた五十嵐淳子(1952年生まれ)は、「五十嵐じゅん」の芸名時代にグラビアアイドルとして超人気でした。プライベートでは中村雅俊と1976年12月婚約発表、1977年2月に結婚することなりますが、その前に中村雅俊と松田優作との間で五十嵐淳子を巡って争奪戦があったとか。婚約発表から結婚まで比較的短いのは、五十嵐淳子が妊娠していたためで、この映画の公開された1976年10月にはすでに"三角関係"は決着していたのでしょうか(松田優作は「探偵物語」の第1話にゲスト出演した熊谷美由紀と1983年に結婚)。
ただ、この映画の中の女優でもっと目立っているのは、北陸の宿場町にある旅籠の女将・およう(本名はとら)を演じた高橋洋子(1953年生まれ)で、おようは「ひとごろし」呼ばわりされ別の旅籠を追い出された昂軒を宿泊させる一方、六兵衛の事情を知って暴力を嫌う彼の姿勢に共鳴し、旅籠を番頭に任せて六兵衛の旅に随い、六兵衛と共に昂軒に向かって「ひとごろし!!」と叫び続ける作戦に参加するという役どころです。撮影時は、五十嵐淳子、高橋洋子とも23歳で、高橋洋子は「サンダカン八番娼館 望郷」(1974年)などにすでに出演していたとはいえ、こうして見ると若いな~という感じがします。
武士道に対する風刺ドラマで、コミカルな松田優作、重厚な丹波哲郎、若々しい女優陣、シンプルなストーリーと、タイトルから受ける印象と少し違って肩が凝らずに愉しめる作品でした(珍品的プレミア価値を加味して星4つの評価とした)。
「ひとごろし」●制作年:1976年●監督:大洲齊●製作:永田雅一●脚本:中村努●撮影:牧浦地志●音楽:渡辺宙明●時間:82分●出演:松田優作/高橋洋子/五十嵐淳子/桑山正一/岸田森/永野達雄/西山辰夫/丹波哲郎●公開:1976/10●配給:大映(評価:★★★★)



![トキワ荘の青春 [DVD].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E3%83%88%E3%82%AD%E3%83%AF%E8%8D%98%E3%81%AE%E9%9D%92%E6%98%A5%20%5BDVD%5D.jpg)


冒頭に挙げたトキワ荘の「青春の仲間たち」では、園山俊二が、『がんばれゴンベ』を「毎日小学生新聞」でリアルタイムで読んだ自分としては懐かしいです。「新漫画党」唯一の大学卒(早稲田大学の漫画研究会出身)でしたが、トキワ荘の「半住人」だったと。結局「がんばれゴンベ」は1958年から1992年まで、通算連載回数は9775回となりましたが、肝臓癌で1993年1月20日に57歳で死去したのが惜しまれます(手塚治虫も石ノ森章太郎も60歳で亡くなっている。漫画家ってどうして長生きしないのか)。

トキワ荘について書かれた書籍は当事者によるものも含め数多くあり、また、アニメやドキュメンタリー、ドラマなどにもなっていますが、映画では、昨年['21年]四半世紀ぶりにデジタルリマスター版で公開された、市川準(1948-2008/59歳没)監督の「トキワ荘の青春」('96年)があります(「ロッテルダム国際映画祭」招待作品。1996年キネマ旬報ベストテン第7位、読者選出第7位)。
映画は、トキワ荘におけるリーダー的存在であった寺田ヒロオが主人公であり、その寺田ヒロオを本木雅弘が演じています。コミカルな描写もありますが、自身が理想とする「子供たちに理想を教える漫画」と、雑誌編集者が要求する「商業主義漫画」との間で思い悩む寺田ヒロオの姿などが描かれていて、全体に盛り上がりを抑えた物静かなトーンの作品となっており、それが、ラストで寺田ヒロオが黙ってトキワ荘を去るという結末に繋がっていきます。
当時はまだ無名に近かった自主映画・小劇団関係者で、後年人気スターや映画監督となった俳優が多く起用されていて、安孫子素雄(藤子不二雄Ⓐ)に鈴木卓爾(後に「ゲゲゲの女房」('10年)を監督)、藤本弘(藤子・F・不二雄)に阿部サダヲ(映画デビュー3年目、当時25歳)、石森章太郎にさとうこうじ(映画デビュー作)、赤塚不二夫に大森嘉之、森安直哉に古田新太(映画デビュー翌年・当時31歳)、鈴木伸一に生瀬勝久(映画デビュー作・当時35歳)などを配しています。
結局、寺田ヒロオは後に漫画の筆を折ることになり、本書でも著者が「寺さんの"絶筆宣言"はショックだった。漫画がひどくなる。もう書きたくない」というのが理由だったとありますが、やがてトキワ荘時代のメンバーとの交流も絶ったのは謎です(本人は後に病気が原因と語ったという)。晩年は一人自宅の庭の離れに籠って、母屋に住む家族ともほとんど会話しなかったそうで、1992年9月24日に61歳で亡くなっています。
映画では、若い新進映画化の台頭に(ただし、石森章太郎・藤子不二雄らが早くに売れっ子漫画家となったのに対し、赤塚不二夫・森安直哉らはなかなか芽が出なかった風に描かれている)、本木雅弘が演じる寺田ヒロオが徐々に時流から取り残されていっているように描写されているともとれます(断定的ではないが)。個人的には、『
因みに、石森章太郎者と3歳違いで23歳で亡くなった姉は、映画にも上京した弟のことを思い遣る女性としてとして登場します(演:安部聡子)
「トキワ荘の青春」●英題:TOKIWA:THE MANGA APARTMENT●制作年:1996年●監督:市川準●製作:塚本俊雄/里中哲夫●脚本:市
川準/鈴木秀幸/森川幸治●撮影:小林達比古/田沢美夫●音楽:清水一登/れいち●原案:梶井純『トキワ荘の時代』●時間:110分●出演:本木雅弘/鈴木卓爾/阿部サダヲ/さとうこうじ/大森嘉之/古田新太/生瀬勝久/翁華栄/松梨智子/北村想/安部聡子/土屋良太/柳ユーレイ/桃井かおり/原一男/向井潤一/広
岡由里子/内田春菊/きたろう
/時任三郎●公開:1996/03●配給:カルチュア・パブリッシャーズ●最初に観た場所:神保町シアター(10-09-13)(評価:★★★☆)
![まぼろし探偵 第4巻 [DVD]5_.jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E3%81%BE%E3%81%BC%E3%82%8D%E3%81%97%E6%8E%A2%E5%81%B5%20%E7%AC%AC4%E5%B7%BB%20%5BDVD%5D5_.jpg)




日の丸新聞社の記者・黒星十郎(花咲一平)はある日自分のことを「兄貴」と呼ぶやくざ風の青年と出会う。その事を聞いた当の"兄貴"である黒猫五郎(花咲一平、二役)は
黒星本人に成り済まして彼の給料を前借りしたりする。図に乗った"偽黒星"は、吉野博士(カワベキミオ)からロケットの書類を奪って外国に売るという計画を立てる。しかし、その頃には、少年記者・富士進(加藤弘)に偽物の存在が見抜かれていた。ま

ぼろし探偵(加藤弘、二役)は本物の黒星に確実なアリバイを作ってやるため、富士警部(大平透)に黒星を明日まで警視庁で預かって欲しいと要請する。富士警部は、大塚刑事(鈴木志郎)に命じて、黒星に逮捕状を出す。ロケットの書類を奪い取った偽黒星は、吉野博士を殴って気絶させ、一緒にいた娘の吉野さくら(吉永小百合)を誘拐するが―。
「まぼろし探偵」は1959(昭和34)年4月1日から1960(昭和35)年3月27日にかけて、全52回にわたり水曜18:15-18:45に放送されたもので(第28回から日曜の朝に変更)、原作は、1957年に『少年画報』に連載された桑田次郎(桑田二郎、1935-2020/85歳没)の漫画です(原作では「日の丸新聞社」は「少画新聞」)。また、当時14歳(中学2年生)だった吉永小百合の「赤胴鈴之助」に続くテレビ出演番組として
この第17話「犯人黒星十郎?」は、第1話「謎の怪電波」(武田信玄の子孫の復讐劇?)、第8話「れい迷教?」(当時流行りの新興宗教批判?)などと並んで面白いとされているエピソードですが、この回に限らず、同じKRT(現TBS)で前年スタートの「月光仮面」よりは全体的に洗練されてきているのではないでしょうか。この回で言えば、黒星記者に成りすましたチンピラのやることが、給料を前借り、かつ丼の注文、紳士服や靴、テレビの購入といったやたら生活染みたものであったりとか、依然、突っ込みどころは多いのですが、それはそれでまた別に意味での愉しみと言えるでしょう。
まぼろし探偵は第1話の時から世間に周知の存在であるという設定であり、富士登警部(第1話から途中まで天草四郎、途中から大平透に交代)もまぼろし探偵に全幅の信頼を置いていますが(まぼろ探偵に言われて黒星記者をほとんど人権蹂躙的に逮捕してしまうくらい(笑))、そのくせ"まぼろし探偵"の正体が今さっきまで目の前にいた自分の息子・進少年であることにはいつまでも気がつきません(主題歌の2番に「親に心配かけまいと、あっという間の早変わり」とある)。
因みに、漫画で描かれるまぼろし探偵はバイクを操りますが、テレビ版は〈まぼろし号〉というフェアレディをベースにしたクルマが愛車で、これは探偵役の加藤弘がバイクに乗れなかったために用意されたとする説がありますが、加藤弘はまぼろし号の運転も無免許で行っていたと証言しています(バイクに乗ったスチール写真もあり、DVDカバーなどに使われ
ている)。結構、撮影現場って道交法の遵守とかに関してはいい加減だったのかも(私有地内ならいいのか?)。この他、飛行シーンはジェット機で、これはミニチュア特撮を駆使しています。特撮は、「
吉野博士の娘、進のガールフレンドのさくら役という設定の吉永小百合は、テレビ番組放映中に人気が出て忙しくなったのか、最初の頃は進と一緒に事件について考えたりしていたのに、この頃にはスタート時ほど出ずっぱりではなく、この回にしても、中盤以降で父親の吉野博士と一緒に出てきて、あっという間に誘拐されてしまいます。誘拐グループが彼女を担ぎ上げて「わっしょい、わっしょい」と大声を出して運び(祭かいな)、すぐさま、まぼろし探偵に見つかってしまう。しかし、最後、まぼろし探偵も(博士から授かった電波ピストルを持っているのだが)徒手空拳の取っ組み合い。まあ、これは「月光仮面」も、宇宙人である「ナショナルキッド」でさえ最後はそうでしたが。それにしても少年の割には強い!
花咲一平のシーリーズ唯一の一人二役の作品で、この人の演技、観ていて楽しいです。黒星十郎のキャラクターは、後の「
どの回も楽しく突っ込めますが、この回の最大の突っ込みどころは、花咲一平が演じる黒星十郎が、"偽黒星"の時は右頬にマジックでつけたような大きな黒子(ホクロ)がある点ではないでしょうか。観ていて今本物が出ているのか偽物が出ているのか分かりやすくしたのでしょうが、この黒子のことを誰も気づかないというのが、進行上の"お約束"ということなのでしょう。普通だったら「黒星さん、顔にマジックがついてますよ」って誰か言うだろうけれどね(笑)。
因みに、吉永小百合はラジオのデビュー作がラジオ東京(現・TBSラジオ)の「赤胴鈴之助」('57年1月-'59年2月)であるのに対し、テレビのデビュー作がこの「まぼろし探偵」('59年4月-'60年3月)だと思っていたという人がいましたが、テレビのデビュー作もKRテレビ版の「赤胴鈴之助」('57年10月-'59年3月)です。一方、映画デビューは、「まぼろし探偵」の放映が始まる前月の'59年3月に公開の松竹映画「朝を呼ぶ口笛」でした。これは新聞配達を続けながら、夜間高校へ進学することを目指している中学生の少年が、母親が病気入院したところに父親の手術が重なって、両親と幼
い弟妹がいる家計を支えるために、学校も新聞配達も辞めて町工場で働くことにし、夢が消え落ち込んではいたところ、新聞販売店の仲間たちの力添えや配達先の少女の励ましに支えられ、再び以前の生活に戻ることができたというもの。その主人公の少年を励ます少女役が吉永小百合で、少年は少女に淡い想いを抱くも、最後、少女は父親の転勤で大阪に行くことになるという、言わば"ボーイ・ミーツ・ガール"&"別れ"というストーリーですが、この少年を演じていたのが「まぼろし探偵」こと富士進役の加藤弘でした。映画の方では、当時14歳の吉永小百合の方が加藤弘より大人びて見え、加藤弘の方は吉永小百合に励まされる役どころということもあってか、子供っぽく見えるので、加藤弘は「まぼろし探偵」で大変身を遂げたように思いました。
「まぼろし探偵(第17話)/犯人黒星十郎?」●制作年:1959年●監督:近藤竜太郎●企画:神山雄二●脚本:柳川創造●原作:桑田次郎(桑田二郎)●音楽:大塚一男●出演:加藤弘/吉永小百合/大平透/利根はる恵/花咲一平/カワベキミオ/藤田弓子●放送局:KRT(現TBS)●放送日:1959/07/22(評価:★★★☆)
1959- 4- 1 水 18:15-18:45 謎の怪電
1959- 5- 20 水 18:15-18:45 れい迷教?
1959- 8- 5 水 18:15-18:45 ゆうれい島
1959-11- 8 日 9:00- 9:30 クラーク東郷・後篇
43 1960- 1- 24 日 9:00- 9:30 謎のジョーカー・前篇 

「朝を呼ぶ口笛」●制作年:1959年●監督:生駒千里●製作:桑田良太郎●脚本:光畑碩郎●撮影:篠村荘三郎●音楽:鏑木創●原作:吉田稔「新聞配達」(全国中小学生綴り方コンクール文部大臣賞受賞)●時間:62分●出演:加藤弘/織田政雄/井川邦子/鳥居博也/羽江マリ/田村高廣/瞳麗子/山内明/殿山泰司/沢村貞子/吉永小百合/田村保/吉野憲司/田中晋二/真塩洋一/土紀洋兒/井上正彦/人見修/後藤泰子/村上記代/秩父晴子●公開:1959/03●配給:松竹(評価:★★★☆)


一見うだつが上がらなそうに見えて実は剣の達人・三沢伊兵衛(長門勇)は、恋人である家老の娘・妙(岩下志麻)を連れて脱藩した。古谷藩の愚鈍な殿様の側室になるよう強要された妙との旅は、すぐ追手につけられる破目となる。すぐにも宿賃を稼がなければならない伊兵衛は、神道
無双流秘法極意階伝の腕前を利用して、武士の掟を犯して町道場で賭試合を挑んだ。太刀落しという奇妙な手で勝った伊兵衛のもとに、迫手は刺客として浪人・大庭軍十郎(丹波哲郎)をむけていた。一方隣藩ににげるため十両を必要とした伊兵衛は武道大会で偶然にも軍十郎と相討ちとなった。この試合を見ていた小室帯刀(宮口精二
)はかつて娘・千草(倍賞千恵子)を川越人足から助けてくれた礼をも兼ねて伊兵衛に仕官を勧める。念願の仕官成就に喜ぶ伊兵衛だった、後日、賭試合をして剣を汚した事を理由に、一転して小室藩は仕官を断ってくる。傷心の伊兵衛だが帯刀と千草の温い心に送られて関所を越えようとするが、その関所で追手に正体を見破られて斬り合いになり、大立回りの最中に敵方の軍十郎が現れるが―。
内川清一郎(1922-2000)監督の1964(昭和39)年作で、原作は山本周五郎の「
まず、「道場破り」では、伊兵衛の脱藩理由が、岩下志麻が演じる、藩のバカ殿の側室になるよう強要された妙(たえ)を、独り道中の駕籠を襲って奪還し、一緒に出奔したことになっていますが、原作では特にそうした理由はなかったように思います。また、賭け試合をしたことが仕官の話が白紙化する原因となったのは原作と同じですが、原作では賭け試合をした理由が、宿賃を稼いで日々の糊口をしのぐためだったのに対し、映画「道場破り」では、関所越えに使う賄賂のためにまとまった金子(きんす)を作ろうとしたのが理由になっています。
また、倍賞千恵子が演じる千草(倍賞千恵子は岩下志麻と同じ年の生まれなのだが、ここでは倍賞がすごく"お嬢さん"に見え、対する岩下志麻は、しばしば"超絶
美人"に見える)は、原作の「雨あがる」にも続編の「雪の上の霜」にも出て来ないし、さらに、丹波哲郎が演じる、映画で大きな役割を占める大庭軍十郎も、同じく映画のオリジナルキャラクターです(したがって、軍十郎がかつて伊兵衛
と同じ境遇にあったという話も、当然に原作には無い話)。
その上で、丹波哲郎が演じる、いかにも剣豪風の大庭軍十郎との賭け試合での対戦などがあり、剣豪ものとして愉しめました。映画「雨あがる」の寺尾聡の演技もまずまずでしたが、「道場破り」の方は、丹波哲郎と長門勇というギャップのある二人が闘っているところが、面白さを倍増させています。
貧しい人たちが泊まる宿の様子もリアルに描かれていてシズル感があり、殿山泰司が演じる人情味のある宿の主人も良かったです。易者役で浜村純、いかけ屋役で左卜全なども出ていて、脇役・端役に至るまで芸達者揃い。映画「雨あがる」の方は、細部の描き方がそこまでいっていなかったし、「道場破り」ほど光る脇役がおらず、エキストラに至っては学芸会並みだったので、いろいろ面で「道場破り」の方が上であるように思いました。
最後、伊兵衛は当初意図していなかったものの、結果的には〈関所破り〉になってしまっていて、この後は伊兵衛は追われる身になるのでは、と心配になりますが、軍十郎とたった二人で全員を片付けてしまっているので、生きている目撃者は一人もいないということなのでしょう。
因みに、長門勇(1932-2013)は、浅草のコメディアン出身で全国的には無名だったのが、この映画の前年'63年10月から始まったテレビドラマ「三匹の侍」で、岡山弁丸出しの槍の名手・桜京十郎を演じて(実際
「三匹の侍」の第1シリーズの演出を主に担当したのは当時フジテレビのディレクターだった五社英雄で、かつてない斬新な殺陣とカメラワークに加え、"バサッ、ビュン、カキーン、ズボッ"と、人を斬る音、刀の刃風、刀と刀が打ち当る刃音、槍の突き刺す音が初めてテレビに出現、また、効果音だけでなく、狭いスタジオでの立ち回りをカバーするために、「写真斬り」(等身大に引き伸ばした写真を刀で斬ってこれを撮影すると、一瞬のことなので、小さなテレビの画面では本当に人が斬られたように見える)といったテクニックなども生み出しています。
「三匹の侍(2)」1964/10~1964/04(全27回)/「三匹の侍(3)」1965/10~1966/04(全27回)/「三匹の侍(4)」1966/10~1967/03(全26回)/「三匹の侍(5)」1967/10~1968/03(全26回)/「鬼平犯科帳(6)」1968/10~1969/03(全25回)(全157回)
「道場破り」●制作年:1964年●監督:内川清一郎●製作:岸本吟一●脚本:小国英雄●撮影:太田喜晴●音楽:佐藤勝●原作:山本周五郎「雨あがる」●時間:91分●出演:長門勇/丹波哲郎/岩下志麻/倍賞千恵子/宮口精二/上田吉二郎/富田仲次郎/今橋恒/青木義朗/浜村純/殿山泰司/高橋とよ/左卜全●公開:1964/01●配給:松竹(評価:★★★★)
長門勇(三沢伊兵衛)/宮口精二(小室帯刀)



安代の醸すユーモラスな雰囲気には生への逞しさが感じられ、そうしたこともあってか、「安ベエの海」というタイトルでTBSの「ポーラテレビ小説」の第3作として、1969(昭和44)年9月から翌1970年3月まで放送されたりもしています。安代役は、一昨年['19年]急死した木内みどり(1950-2019/69歳没)。女優(NHK大河ドラマ「西郷どん」などにも出ていた)でありながら、反原発活動家としても活躍していた人です(個人的には、この人の出ていた伊藤智生監督の自主製作映画「ゴンドラ」('86年/OMプロダクション)が印象深かった)。この原作を、連続テレビドラマとして全156回に渡って話を繰り拡げられたのは、夫の戦死で未亡人となった安代が、戦後の混乱期をひたむきに生きる姿までを描いているためのようです。
また、近年になって作者が、「六十年の間、人生の浮沈に従って書いて来たもの(中略)の中に二篇だけ、これだけはいい、と思えるものがあって」として、『
木内みどりが出ていた「ゴンドラ」('87年)は、伊藤智生監督の自主製作映画で、伊藤監督が上村佳子という少女と出逢ったことが制作のきっかけとなったもの。あらすじは以下の通り。
小学生のかがり(上村佳子)は、母れい子(木内みどり)と二人で暮らし
ている。ある日マンションに帰ると、飼っていた白文鳥が傷ついていた。その時ゴンドラ(足場)で、かがりのマンンョンの窓拭きをしていた良(界健太)は、かがりと一緒に動物病院へ行き、治療代を立て替えてやった。しかし、翌日かがりが病院へ行くと文鳥は死んでいた。彼女は児童公園へ行き文鳥を土に埋めようとするが、それをやめて家に持ち帰りブリキの弁当箱に死骸を入れ冷蔵庫
へしまい込んだ。翌朝れい子はその死骸をゴミと一緒に捨ててしまった。悲しんだかがりは死骸を探し出し、家を出た。良はびしょ濡れのかがりを見かけるとアパートへ連れて行った。そして「もう帰るところがない」というかがりを数日、自分の故郷の青森へ連れて行くことにした。良の父親(佐藤英夫)と母親(佐々木すみ江)はかがりを歓迎してくれた。一方都心の警察では、れい子と別れた父(出門英)がかがりを捜していた。ある夜、良とかがりは海岸近くの洞窟で夜を過ごし、翌朝ゴンドラ(小舟)を出して文鳥の死骸を小さな木の棺を作って海へと沈めるのだった―。
いい映画でした。1986年に完成していましたが、劇場との上映交渉が上手くいかず、ただ評価は高くて、海外の映画祭で賞を受賞したのち、翌1987年10月に特別先行上映され、1988年に正式に公開されて、公開の30年後にあたる2017年、デジタルマスター版が渋谷・ユーロスペースなどでリバイバル上映されています。本作で借金を背負った伊藤智生監督は借金返済のため、「TOHJIRO」としてAV監督へ転身、最初は一時的なものと割り切っていたところ、出演する女優たちに「ゴンドラ」で描いた世界観と同じ景色を見たとして、以後も続けているとのことです。
「ゴンドラ」●制作年:1986年●監督:伊藤智生(ちしょう)●プロデューサー:貞末麻哉子●原案・脚本:伊藤智生/棗耶子●撮影:瓜生敏彦●音楽:吉田智●時間:112分●出演:上村佳子/界健太/木内みどり/佐々木すみ江/佐藤英夫/出門英/長谷川初範/鈴木正幸●公開:1987/10●配給:OMプロダクション●最初に観た場所:テ
アトル新宿(88-04-16)(評価:★★★★)


借金まみれのディスコ・バーズのオーナー・万代(佐藤浩市)、男性相手のコールボーイ・三屋(本木雅弘)、元刑事・氷頭(根津甚八)、リストラされたサラリーマン・荻原(竹中直人)、パンチドランカーの元ボクサー・ジミー(椎名桔平)。社会から弾き出された5人は大胆にも暴力団・大越組の事務所から大金を強奪する計画を企て、辛くも成功する。しかし、ジミーを拷問し万代たち5人の仕業と突き止めた大越組は、二人組のヒットマン・京谷(ビートたけし)と柴田(木村一八)を雇って報復に出る―。
1995年に公開された石井隆監督による「スタイリッシュバイオレンス・アクション映画」作品とのこと。ヤクザの資金強奪計画を企てた男たちの壮絶な運命を描いています。当初の公開は8月中旬を予定していたのが、内容的に重いので夏場の番組として相応しくないとのことで9月公開になったそうです。
'95年度の「キネマ旬報ベストテン」でベスト10入りはしていませんが、「読者選出ベスト・テン」の方で4位にランクインしていて、この辺りも何となくわかる気がします。人気を受けてか、翌年に
は「GONIN2」('96年/松竹)が緒形拳、大竹しのぶ主演で撮られていますが、これはまったく別のストーリーです。
佐藤浩市、本木雅弘、竹中直人、そして殺し屋役のビートたけし等々の怪演が見られるのは貴重で、さらにその上に君臨するのが「
ストーリーが各々の破滅に向かっていくことは想像に難くなく、椎名桔平演じるジミーは恋人のナミィー(横山めぐみ(「
ただ、後半、竹中直人演じるリストラされたことを家族に言えないサラリーマンの荻原だけでなく、根津甚八演じる氷頭までが、離婚こそしてはいるが「家庭人」になっていて、愛する者が殺されるというシビアな状況に持ち込むための設定なのもしれませんが、切りたくても切れない家族の関係というか、スタイリッシュでなくなってきたような気がしました(ラストで本木雅弘演じる三屋の手に万代の遺骨があるが、誰に届けるつもりかと思ったら、シリーズ第3作で本作の正統派続編である「GONIN サーガ」では、万代にも妻子がいることが判明する)。

ビートたけしの殺し屋は、やっぱりビートたけしにしか見えない(笑)というのはありますが、一応は最後までバイオレンス・アクションではありました。そんな中、竹
中直人演じるサラリーマン荻原が、大金の強奪を終えて自宅に戻ってきたところだけはホラーだったなあ。「大仕事してきたんだよ~」とご機嫌で妻(夏川加奈子)と風呂に入るが...。この"ホラー"の場面が一番秀逸だったかも。ピアノをたしなむ荻原の娘を演じていたのは、当時10歳の栗山千明。彼女、初期はホラー専門だった? 
「GONIN」●制作
年:1995年●監督・脚本:石井隆●製作総指揮:奥山和由●撮影:佐々木原保志●音楽:安川午朗(挿入歌:ちあきなおみ「紅い花」)●時間:103分●出演:佐藤浩市(万代樹彦、ディスコ「Birds」のオーナー)/本木雅弘(三屋純一、金持ちの男相手のコールボーイを装い金を巻き上げている)/根津甚八(氷頭要、元刑事、現在は場末のキャバレー「ピンキー」にて用心棒)/椎名桔平(ジミー、元ボクサーで大越組のチンピラ、新
宿のバッティングセンターでも働いている)/竹中直人(荻原昌平、リストラされたサラリ
ーマン)/ビートたけし(京谷一郎、式根に雇われた殺し屋、一馬とはサディスティックな恋仲)/木村一八(柴田一馬、京谷の相棒兼恋人)/鶴見辰吾(久松茂、大越組の若頭)/横山めぐみ(ナミィー、ジミーの恋人。タイ出身で大越組にパスポートを奪われ売春婦をやっている) /永島敏行(大越組の組長)/室田日出男(式根、数々の暴力団を束ねる五誠会の会長)/永島暎子(早
紀、氷頭の元妻。右足に障害がある)/川上麻衣子(ぼったくりキャバレー「ピンキー」の摺れたホステス)/滝沢涼子(「ピンキー」のホステス)/五十嵐瑞穂(氷頭の娘)/夏川加奈子(萩原の妻)/栗山千明(荻原の娘。ピアノをたしなむ)/山田哲也(荻原の息子)/不破万作(ピンキーのマスター)/松岡俊介(式根専属ドライバー)/伊藤洋三郎(式根ボディーガード)/飯島大介(野本)/岩松了(トイレの男)/小形雄二(高速バス運転手)/津田寛治(暴力団組員)/渡辺真起子(ディスコの客)●公開:1995/09●配給:松竹●最初に観た場所:シネマブルースタジオ(21-07-28)(評価:★★★☆)














東海道線の夜行列車にある男が乗り込み、そこである女を見つける。その女・水原秋子(岡田茉莉子)は、元は安酒場で働いていたが、ふとしたことでファッションモデルの幸運を掴みこれを手放すまいと懸命になっていた。一方の男・飯島(山内明)は無免許の堕胎医だった。秋子はプロ野球二軍選手の江波(森美樹)と結婚しようとしていたが、飯島は酒場時代の秋子の古傷に触れ彼女を苦しめていたのだ。飯島は、秋子の大阪でのショーの帰りを追って夜行列車に乗り込んだのだが、洗面所で秋子と口論となり、揉み合いになって列車から落ち、付近の病院に搬送されるも間もなく死亡する。警察
は事件を軽く見たが、長谷川刑事(笠智衆)は何かあると確信、病院の死体置場に贈主不明の花束が届いたことから疑念を深め、列車の乗客で事件の目撃者である石岡三郎(大木実)に辿り着く。石岡は洗面所で秋子の顔を見たという。その新聞記事を見て秋子はモデルをやめ、江波と田舎に帰る決心するが、秋子の最後のショーに、長谷川刑事が石岡を連れて首実検に来る。驚く秋子だったが、石岡は犯人はいないと刑事に告げる。止むなく警察は石岡を尾行したがマカれてしまう。その頃、秋子のアパートでは江波が田舎へ行くため荷造りをしていた。
そこへ石岡が現れ、秋子はいなかったが、去り際に表で帰って来た秋子に会う。石岡は秋子を旅館に連込み脅迫したが、そこを出た途端トラックに轢かれ死ぬ。秋子がアパートに戻ると、江波は石岡との関係を難詰、別れると言い出す。秋子は、呆然として外に出た。長谷川刑事らは漸く飯島殺し犯人として秋子を突止める。夜の銀座を彷徨う秋子。それをパトロールカーのサイレン音がけたたましく追う―。
となり(所収作品:顔、殺意、なぜ「星図」が開いていたか、反射、市長死す、張込み)、この短編集は1957(昭和32)年・第10回「日本探偵作家クラブ賞(第16回以降「日本推理作家協会賞」)」を受賞しています。
ただし、原作の「顔」の主人公はファッションモデル女性ではなく、井野良吉という劇団員で、最近味のある役者として人気が出てきて、映画出演も決まり始めた男性です(つまり映画は主人公の性別を改変している)。実は彼は過去に女性を旅行に誘って殺害しようとして目的を果たすも、その土地に向かう途中の列車内で女性が知り合いの男性と出会ったところから二人でいるのを目撃されたため、今度はその男を理由をつけて旅行に誘い出し、殺害しようとします。ところが、その誘いを訝った男性は警察に相談し、警察は井野が犯人と確信、その旅行についてきて、旅館が井野と同宿だったために鉢合わせに。そこで実質的に首実検の状況になったわけですが、ところが、男には井野が自分が列車内で見た人物と同一人物には見えない! 見えないから当然、コイツが犯人だととも言えない(この点が、石岡が秋子を同一人物と分かりながらも、後で脅迫するために、その場では「犯人はここ中にはいない」と刑事に言っている映画とは大きく異なる)。
原作者の松本清張は、自分の短編が映像化する際に話を膨らますことについては鷹揚であったようで、むしろ、短編をどうやって1時間半なり2時間なりの物語に加工するかこそが映画監督らの力量とみていたようです。自身の短編の映画化作品で最も評価していたのは、野村芳太郎監督の「




「顔」●制作年:1957年●監督:大曽根辰夫●脚本:井手雅人/瀬川昌治●撮影:石本秀雄●音楽:黛敏郎●原作:松本清張「顔」●時間:104分●出演:岡田茉莉子/大木実/笠智衆/森美樹/宮城千賀子/佐竹明夫/松本克平/千石規子/小沢栄(小沢栄太郎)/山内明/細川俊夫/内田良平/永田靖/乃木年雄/草島競子/永井秀明/十朱久雄/笹川富士夫/高村俊郎●公開:1957/01●配給:松竹(評価:★★★☆) 



結婚式から7日後。仕事の引継ぎのため、以前の勤務地である金沢に戻った鵜原憲一(西島秀俊)が姿を消す。憲一の妻・禎子(広末涼子)は、見合い結婚のため夫の過去をほとんど知らず、失踪の理由もさっぱり見当がつかない。夫の足跡を辿って金沢へと旅立った禎子は、憲一のかつての得意先企業、室田耐火煉瓦会社で社長夫人の室田佐知子(中谷美紀)、受付嬢の田沼久子(木村多江)という2人の女性と出会う。日本初の女性市長選出に向けて
支援活動に精を出す佐知子。教養がなく貧しい出身だが、社長のコネで入社した久子。交わるはずのなかった3人の女性の運命だったが、憲一の失踪事件がきっかけとなり、複雑に絡み合っていく。一方、憲一の失踪と時を同じくして起こった連続殺人事件に関して、ある事実が判明する。事件の被害者は、いずれも憲一に関わりのある人間だったのだ。夫の失踪の理由とは?連続殺人の犯人の正体とその目的は?全ての謎が明らかになるとき、衝撃の真相が禎子を待ち受ける―。
野村芳太郎版では、脚本の橋本忍が混み入った原作の背景を1時間半の中に収めようと腐心し、ラストの崖っぷちで犯人が長台詞の告白をするという設定になっていましたが、それが後の数多くの推理ドラマで使われる原型的パターンとなったとされるものの
、今観ると逆に映画ではなくテレビドラマのように見えてしまうという印象を個人的に持ちましたが、こちらは2時間超なので、そのあたりはどう描くのかと思ったら、広末涼子演じる主人公が、汽車に揺られたりしながら自分の頭の中で想像で謎解きをしてしまう形になっていて、旧作よりも更に謎解きの部分が軽く扱われている印象を受けました(独白ナレーションでの謎解きには興醒めさせられる)。
犬童一心監督はロケ地探しに苦心したとのことで、韓国でロケしたりして、更にはVⅩ技術を駆使したりして昭和30年代の金沢を再現しており、安易に現代に置き換えず、当時のままを再現しようとしたその意欲と努力は買いますが、市長選に肩入れする佐和子を遠して婦人参政運動を描くことの方にウェイトがかかり過ぎた感じもして、昭和30年代の金沢を知る自分としては、もっと金沢の街並みとかを描いて欲しかった気もします(東京の場面も含め、いきなり室内シーンから入るパターンが多い)。
広末涼子(禎子)、中谷美紀(佐和子)、木村多江(久子)の演技陣の中では、中谷美紀が目立ってしまった分、主人公である広末涼子が埋没してしまった印象で、事件を通して禎子が人間的に成長することが原作のモチーフの1つ
であるのにそれがイマイチ伝わってきませんが、これは広末涼子のせいなのか演出のせいなのか(おそらく両方のせい?)。逆に木村多江だけがまともな演技をしているようにも見えますが、何れにせよ、背景映像の作り込みがしっかりしているのに、3人とも何となくスタジオで昨今のテレビドラマ風の演技をしているようで背景とマッチしてこず、よって、背負っている過去の重たさも伝わってこないのは、女優たちが化粧品会社の広告のようなポスターの収まり方をしているように感じた個人的先入観のせいだけではないでしょう。
推理ドラマとしてより人間ドラマとして描こうとして、その部分でも弱さを感じたのか佐知子の夫・儀作(おそらく登場人物の中で原作から最もキャラクター改変されている)をラスト近くで自殺させてしまったのだと思いますが(無理やりドラマチックにしようとしてよく使われる手法)、原作における夫婦が見えない絆で結ばれていたということが映画では殆ど描かれていないため、その自死は単に唐突な印象しか与えていないように思います。
この作品で広末涼子は第33回日本アカデミー賞の主演女優賞、中谷美紀、木村多江は助演女優賞を受賞していますが、これは"ノミネート"みたいなもので"最優秀"賞は獲っていません(木村多江は同年の「ぐるりのこと」('08年)で最優秀主演女優賞受賞)。まあ、この作品が作品賞ほか計11部門で優秀賞を受賞しながら、トップの賞は1つも受賞していないというのは分かる気がするし、キネ旬のベストテンに入っていないのもむべなるかな。松本清張の初期作品を当時の時代背景のもとで再現するのは今後ますます難しくなっていくのかもしれません(繰り返しになるが、化粧品の広告のようなポスターは自ら墓穴を掘っている)。







ゴジラシリーズの第29作で、『ゴジラ FINAL WARS』('04年/東宝)以来約12年ぶりの日本製作のゴジラシリーズ作。公開前は、コアな映画ファン、ゴジラファンの間ではともかく、一般にはそれほど話題にもなっていなかったのが、7月29日の公開後にネットや口コミでどんどん客足を伸ばし、前作で目標としていたものの果たせなかった'54年からスタートしたシリーズの累計観客動員数1億人突破を公開4日で果たし、公開1か月で累計動員360万人、累計興行収入53億円を突破、11月16日までの公開111日間で、観客動員551万人、興行収入が80億167万円を記録するなど、興行面で成功を収めています(2017年(2016年度)「芸術選奨」受賞作)。
映画がヒットした要因としてまず挙げられることは、完璧とまでは言えないもののゴジラ映画の原点に回帰した点であり、観る前は全編CGでどうなのかなと思いましたが、観てみたら、ゴジラならではの重々しさや生々しさ、無敵の暴れん坊ぶりはなかなかのものでした。ゴジラのテーマや自衛隊のテーマなどお馴染みの伊福部BGMも使われていて、シリーズのオールドファンには懐かしいのではないでしょうか。個人的には、「
庵野秀明監督は、脚本の執筆段階から防衛省・自衛隊に協力を依頼し、「実際にゴジラが現れた場合、自衛隊はどのように対処するのか」「ゴジラに対して武器の使用が認められるのか」などミーティングを繰り返し行い、事実に即した脚本に仕上げていったとのことで、それが怪獣映画にしては比較的豪勢な役者陣の演技と相俟って、緊迫感とテンポの良さを生み出しています(時にコミカルな風刺も効かせていて、これもまたいい)。この映画から、自衛隊の強みと弱みが窺えるという人もいるくらいで、「機能的」脚本とでも言うか、こうした映画に挿入されがちな、恋人がどうしたとか妻子がどうしたといった人情ドラマは殆ど混ざり込む余地のない作りになっているのがいいです(石原さとみの"バイリンガルの米国大統領特使"だけが浮いていた)。
ここまで殆ど褒めっ放しで、では欠点は無いのかと言うと、概ねゴジラ映画の原点に回帰したとは言え、ゴジラ自体が核開発の犠牲者であるという悲劇的要素がやや
抜け落ちた印象も受けました(従って、ゴジラの雄叫びにオリジナルのような悲壮感があまり感じられない)。加えて、ゴジラが1個体で4段階もの変態を繰り返すというのは、本当に必要なアレンジだったのかやや疑問に思いました(CGで出来るからやったという印象も)。
特に第2変態の段階で、最初に上陸してその顔が正面から捉えられたと思ったら、ウーパールーパーみたいな顔に見えたのが拍子抜けしたと言うか、オリジナル特有の悲壮感から更に遠くなり残念に思いました(深海サメの一種「ラブカ」をモチーフにしたらしいが、ラブカはあんなピンポン玉みたいな目ではない。ほとんどぬいぐるみの世界)。
ゴジラを倒すための血液凝固剤って結局何だったのか、単なる液体窒素だったのか、それならば、牧悟郎(岡本喜八が写真のみの出演)博士の「ゴジラの元素変換機能を阻害する極限環境微生物の分子式」を解読する作業なんてあまり意味が無さそうにも思えるし、そもそも博士がなぜ資料をわざわざ暗号化したのかも、分かった人には分かったのかもしれないけれど、自分にはイマイチぴんときませんでした。この辺りについては、「シン・ゴジラを読み解くこと」がある種ブームのようになっていて、一般的な映画ファンだけでなく、例えば朝日新聞などは論説委員が新聞に読み解きを書いており、興味がある人はそうした記事も読んだ覚えがあるかも(政治の無能に対して行政の有能、日本型組織の強みがある種「美談」として描かれている一方、初代ゴジラに見られたような、ゴジラを生み出した文明のありように対する疑念や苦悩は殆ど描かれていないという指摘は的を射ていると思った)。
ゴジラを倒しておいて、取り敢えず首都は大阪に移して、ゴジラは凍らせたまま東京駅傍に放置しておくなんてあり得るのかなあという気がしますが、おそらく、ゴジラは「原発」のメタファーであり、ゴジラ(原発)を管理し続けるという宿命を負った日本の未来を表しているのでしょう。ならば、博士の「好きにしろ」という「遺言」の意味は何なのか?-とか、ラストのゴジラの尾に蠢く人影は何を意味するのか?-とか、確かにいろいろ読み解きを促す作りにはなっています。
今度ゴジラが動き出したら、熱核攻撃のカウントダウンが再開するということで、次回作は東京駅から始まるのでしょうか。都心を汚染したゴジラの放射性物質は半減期が短く、2、3年で影響がなくなるとの設定なので、やがて避難先から360万人の住民が帰還することになったとして、スカイツリーじゃないのだから、立ち尽くすゴジラを見ながら半恒久的に生活を送るというのはちょっと考えにくく、やはり次回作を想定した終わり方なのでしょう(これで、次回作でゴジラがまたいきなり海の中から出てきたら、あの東京駅傍のゴジラはどうなったと突っ込みたくもなるだろう)。

「シン・ゴジラ」●制作年:2016年●総監督・脚本:庵野秀明●監督・特
技監督:樋口真嗣●撮影:山田康介●音楽:鷺巣詩郎/伊福部昭●時間:119分●出演:長谷川博己/竹野内豊/石原さとみ/高良健吾/大杉漣/柄本明/余貴美子/國村隼/市川実日子/ピエール瀧/斎藤工/小出恵介/古田新太/前田敦子/犬童一心/緒方明/片桐はいり/神尾佑/KREVA/黒田大輔/小出恵介/小林隆/嶋田久作/諏訪太朗/高橋
一生/塚本晋也/津田寛治/鶴見辰吾/手塚とおる/中村育二/野間口徹/橋本じゅん/浜田晃/原一男/平泉成/藤木孝/松尾諭/松尾ス
ズキ/三浦貴大/光石研/森廉/モロ師岡/矢島健一/渡辺哲/(ゴジラのモーションキャプチャ)野村萬斎●公開:2016/07●配給:東宝●最初に観た場所:TOHOシネマズ新宿(16-08-29)(評価:★★★☆)
スクリーン 座席数(車椅子用) スクリーンサイズ
SCREEN 1 86+(2) 3.2×7.6m
映画「ゴジラ」シリーズ全29作
(●2023年、「
出来ていた(最後、「アルマゲドン」みたいにならなくて良かった)。主演の神木隆之介・浜辺美波は「
「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」●英題:GODZILLA MINUS ONE●制作年:2023年●監督・脚本:山崎貴●監督・特技監督:山田兼司/岸田一晃/阿部豪/守屋圭一郎●撮影:柴崎幸三●音楽:佐藤直紀/伊福部昭●時間:125分●出演:神木隆之介/浜辺美波/山田裕貴/田中美央/遠藤雄弥/飯田基祐/永谷咲笑/須田邦裕/谷口翔太/鰐渕将市/三濃川陽介/日下部千太郎/赤妻洋貴/千葉誠太郎/持永雄恵/市川大貴/吉岡秀隆/藤田啓介/苅田裕介/松本誠/伊藤亜斗武/保里ゴメス/阿部翔平/仲城煎時/青木崇高/安藤サクラ/佐々木蔵之介●公開:2023/11●配給:東宝●最初に観た場所:TOHOシネマズ日本橋(23-12-20)(評価:★★★★)




江は知る由もない。これが、ラストシーンで、千鶴江が、本懐を遂げ泉岳寺に向かう四十七士の隊列の中にもしやと思ったその源蔵を見つけるという場面で効いてきます。源蔵の姿をを追いかける千鶴江は、雪で思うように歩けないため下駄を脱ぎ捨てて裸足で追う―暫く千鶴江の足元だけ映して彼女の心の昂ぶりを表しているのは上手いと思いました。
し、源蔵が彼女に「西国のさる大名に召し抱えられた」と言伝(ことづて)するのも講談と同じです(この言葉は大石内蔵助が浅野内匠頭の妻・瑤泉院に対して「味方を欺く」ために使ったものと重なることから、源蔵自身が"内蔵助"の再現となっている)。また、源蔵が次に兄と会えるのはお盆の頃かとおすぎに言うのは、これはつまり自身が亡くなった後の"新盆"を意味しており、これは映画では定番のようです(「






元禄14年、勅使饗応役に任命された赤穂藩主・浅野内匠頭(片岡千恵蔵)は、指南役の吉良上野介(山本嘉一)の度重なる嫌がらせに堪忍袋の緒が切れ、江戸城中の松の廊下で吉良に斬りつけるという刃傷沙汰に及ぶ
。内匠頭は切腹、浅野家は断絶を命じられ、大石内蔵助(阪東妻三郎)はじめ家臣たちは城を明け渡す。浪士となった彼らは、敵や世間の目を欺きながら、仇討ちの機会を窺う。遂に翌15年12月14日、吉良邸への討ち入りを決行す―。
1938年公開作。日本映画の父と謳われたマキノ省三(1878-1929/享年50)が1928年に畢生の大作として制作した「
ストーリーがオーソッドクスで、それゆえに「決定版」とか「ベストオブ忠臣蔵映画」などとも言われる作品です。特徴的なのは、ストーリーを追いながらも、名場面はあたかも歌舞伎のようにじっくり撮っている点で、配役も、主役の阪東妻三郎は大石内蔵助のみを演じていますが、同じく主役級の片岡千恵蔵が浅野内匠頭と立花左近、嵐寛寿郎が脇坂淡路守と清水一角、月形龍之介が原惣右衛門と小林平八郎というようにあとの主要な10人の俳優は一人二役であり、これも歌舞伎の手法を模しているのかもしれません。嵐寛寿郎は血で家紋を汚した吉良上野介を打ち据えた浅野家シンパの播磨龍野藩主・脇坂淡路守(嵐寛寿郎は「忠魂義烈 実録忠臣蔵」でもこの役を演じている)と二刀流の剣豪で討ち入りで亡くなった吉良家の用心棒の一人・清水一角の両方を演じ、月形龍之介に至っては討ち入った四十七士の一人(原惣右衛門)と討ち入られて奮戦しながらも亡くなった吉良家家臣の一人(小林平八郎)の両方を演じていることになります。
現在残っているプリントは、昭和31年12月12日再公開時のもので、初公開時19巻だったものが12巻となっているため、本作を「総集編」とも呼びますが、大河ドラマの年末「総集編」ほどの端折り様ではないですが、明らかにあってもよさそうな場面が無いのがやや残念。そんな中、印象に残るのは、後半「地の巻」の立花左近のエピソードでしょうか。
討ち入り決行を決意した内蔵助がいよいよ江戸へ下るとき、武器を輸送する際に関所で咎められないよう、立花左近の名を語って虎の尾を踏む思いで道中行くも、本物の立花左近がやはり品物を輸送中で、二組は東海道・鳴海宿で偶々同宿になってしまい、しかし立花左近は内蔵助たちを主君の仇討ちをせんとする赤穂浪士と察して、自分の方が偽物だと言って本物の身分証(道中手形)を偽物だからそちらで破棄してくれと言って渡すという、所謂「大石東下り」の段です。
これを阪東妻三郎の大石内蔵助と片岡千恵蔵の立花左近が差しの演技で演じていて(内蔵助の家臣らは部屋の外に密かに待機し思わぬ展開に涙を流す)、互いに貫禄充分です(片岡千恵蔵は前半の浅野内匠頭よりも後半のこの立花左近の方が似合っている)。手形を見せろと言われて阪妻・内蔵助が差し出したものは実は白紙で、これを黙認する千恵蔵・立花左近という図は、歌舞伎の「勧進帳」における武蔵坊弁慶と富樫左衛門の図と同じで、この時BGMで流れるのも「勧進帳」です。
もう1つの見せ場は、ほぼそれに続く、浅野長矩の妻・瑤泉院(星玲子)と阪妻・内蔵助の遣り取りで(所謂「南部坂雪の別れ」の段)、京都で放蕩生活をしてきた内蔵助を瑤泉院は吉良方を欺くための所為であろうと問うたのに対し、内蔵助はこれを頑なに否定し、討ち入りは諦めたと言ったため、瑤泉院が怒ってしまうというもの。内蔵助は戸田の局(沢村貞子)にある巻物を託して辞去しますが、吉良の間者である腰元(大倉千代子)がこれを盗み出し、それが見つかって取り押さえられて、取り返した巻物は戸田の局が瑤泉院に届けるが、内蔵助への怒りが収まらない瑤泉院はそれを投げつける―すると、巻物の紐がほどけて現れたのは内蔵助をはじめとする浪士たちの血判状だったというもの。叩きつけられた巻物がほどけて転がっていき、それが血判状であることが明らかになるという見せ方が旨いと思いました(このパターン、後の「忠臣蔵」映画やテレビドラマで何度も踏襲された)。
「忠臣蔵 天の巻・地の巻(総集編)」●制作年:1938年●監督:マキノ正博(天の巻)/池田富保(地の巻)●製作:根岸寛一/藤田平二●脚本:山上伊太郎(天の巻)/滝川紅葉(地の巻)●撮影:石本秀雄(天の巻)/谷本精史(地の巻)●音楽:西梧郎(天の巻)/白木義信(地の巻)●時間:102分(現存)●出演:阪東妻三郎/片岡千恵蔵/嵐寛寿郎/小林平八郎/尾上菊太郎/澤村國太郎/沢田清/河部五郎/市川百々之助/原健作/香川良介/志村喬/市川小文治/団徳麿/磯川勝彦/市川正二郎/瀬川路三郎/田村邦男/葉山富之輔/尾上桃華/尾上華丈/楠栄三郎/島田照夫/仁礼功太郎/石川秀道/藤川三之祐/久米譲/林誠之助/阪東国太郎/大崎史郎/若松文男/志茂山剛/近松龍太郎/市川猿昇/小池柳星/沢村寿三郎/轟夕起子/原駒子/大倉千代子/中野かほる/衣笠淳子/比良多恵子/香住佐代子/小松みどり/滝沢静子/小杉勇/江川宇礼雄/山本嘉一/杉狂児/滝口新太郎/高木永二/北龍二/広瀬恒美/見明凡太朗/山本礼三郎/吉谷久雄/星ひかる/吉井莞象/花柳小菊/
黒田記代/村田知栄子/星玲子/沢村貞子/近松里子/悦ちゃん/宗春太郎/市川小太夫●公開:1938/03/31●配給:日活京都(評価:★★★☆)


槍持ちの権八が(片岡千恵蔵)は、若様酒匂小十郎(島田照夫)に付き従い、仲間の源太(加東大介)と東海道を江戸へ向かっている。同じ道を旅するのは、小間物商人の伝次(加賀邦男)、身売りに行く娘おたね(田代百合子)と老爺の与茂作(横山運平)、按摩の藪の市(小川虎之助)、旅の巡礼(進藤英太郎)、旅芸人のおすみ母子(喜多川千鶴・植木千恵)、挙動
不審の旅人・藤三郎(月形龍之介)、権八の槍に見とれた浮浪児の次郎(植木基晴)等である。折しも街道には大泥棒「風の六右衛門」詮議の触れ書が廻っているが、権八はそれどころではない。気立てが優しいが、酒乱癖のある若様を守って旅を終るのが主命であり、供の源太が酒好きなので気が気ではない。一行が袋井に投宿した際に、藤三郎
が大金を持っているのに目をつけた伝次(実は岡っ引)は、さては大泥棒とつけ廻すが、隣室で藪>の市に肩を揉ませている巡礼こそ大泥棒の六右衛門だった。その夜、権八が外出すると、その隙に小十郎は源太を連れて酒を飲み始めて乱れるが、駈けつけた権八が制して事無
きを得る。また旅が始まったが、大井川付近で馬鹿殿ら(渡辺篤・坊屋三郎・杉狂児)が野立てを始めたため通行止めに。隙を狙って六右衛門は馬鹿
殿の路銀を盗むが、その時に顔を見られた次郎に宿で再び出くわし、騒ぎになって抵抗するも、来合わせた権八の槍を前にお縄となる。与茂作が女衒久兵衛(吉田義夫)におたねを渡して帰ろうとすると藤三郎に引留められる。5年前預けた娘を引取るため金山で刻苦精励し貯めた金を持って来たのだが、娘は既に亡くなっていて、その金をおたねを引き取るために使ってくれと言う。小十郎は、素朴な人々を見て武士の世界に嫌気がさし、再び源太と居酒屋に入る。しかし、酔いどれの武士らと口論から斬り合いになり、権八の駈けつけた時には小十郎と源太は惨殺されていた。権八の怒りが爆発する―。
1955(昭和30)年2月公開の内田吐夢監督の戦後第一作で、井上金太郎が原作・脚本・監督作を務め「道中悲記」('27年/マキノプロダクション)の再映画化作品であるとのこと(旧作では槍持ちの権八を月形龍之介、仲間の源太を杉狂児が演じている)。内田吐夢監督中国から復員したのが昭和31年というからかなり遅いです。でも、監督業に復帰してすぐにこれだけの作品を撮るというのはやはりスゴイと思います。
ラストの片岡千恵蔵の槍の立ち回りは良かったです。槍持ちは所謂「中間(仲間)」の範疇であって、戦闘員である足軽(一応、士分)と家事労働をする下男の中間の身分であり、士分ではなく単なる従者であるとみていいと思います。それでも、槍持ちの権八が主人の死に対して命を賭けて闘うというのが、それまでのストーリーのディテール(例えば、権八が足にまめができて歩けなくなり、心配した主人が高価な膏薬を渡して遅れて来ればよいと言う場面など)から、主人が情け深い人間であることが窺えるため、それに恩義を感じている権八の忠義心の発露として自然に繋がっていきます。しかも、普段は"非戦闘員"であることからくる、テクニックも何も無く、ただ憤りのみで槍を振り回しては突く、泥にまみれた素人っぽい槍遣いの立ち回りを敢えて見せていて、これが所謂"剣戟スター"と言われる人の典型的かつ華麗な殺陣とはまた違っていて、リアルな迫力がありました(それを"剣戟スター"である片岡千恵蔵がやっているのがいい)。


「酒と女と槍」●制作年:1955年●監督:内田吐夢●製作:大川博●脚本:三村伸太郎●撮影:吉田貞次●音楽:小杉太一郎●●時間:94分●出演:片岡千恵蔵/島田照夫/加東大介/喜多川千鶴/植木千恵/加賀邦男/小川虎之助/横山運平/田代百合子/月形龍之介/進藤英太郎/渡辺篤/坊屋三郎/杉狂児/吉田義夫/高松錦之助●公開:1955/02●配給:東映●最初に観た場所(再見):シネマヴェーラ渋谷(16-05-26)(評価:★★★★☆)●併映:「十一人の侍」(工藤栄一)


まかりあり候ところ、此の度不慮の儀これあり候ところ、われら職分怠たりの為と申訳なく存じ候。さるによって来る二十八日未の刻を期して切腹仕可」。建札の主は"槍の蔵人"の異名をもつ富田蔵人高定(大友柳太朗)。高定は死ぬまでの数日を心おきなく過すため、豪商・堺屋宗四郎(十朱久雄)の別荘に身を寄せ、贔屓の女歌舞伎太夫・左近(淡島千景)と妥女(花園ひろみ)を呼ぶ。建札を見て高定の心を知った妥女は一人残るが、一夜明けた朝「殿様は女というものの心がお分
りではございません」という言葉を残して迎えに来た左近と去る。千本松原には多くの見物人が集まったが、高定は乱酔のた
め切腹の定刻を過ごし、介錯人(南方英二)に合図したところで秀吉の使者に切腹を止められる。高定は西山の村里に妥女と住むことになる。慶長3年(1598)、秀吉が亡くなる。兄の知信(原健策)は高定に再び切腹を迫るが、高定は兄を追い返し、仕官を勧めて訪れる前田利長(片岡千恵蔵)の家臣・内藤茂十郎(徳大寺伸)の言にも取り合わない。秀吉の死により家康(小沢栄太郎)の野望は高まり、関ケ原で豊臣徳川両家が興亡を賭け対峙する。今度は
高定の庵に利長本人が訪れて再度仕官を促す。高定に忘れ去ったはずの
侍魂を呼び起したのは槍だった。子供が生れるとすがりつく妥女を残して、高定は利長の後を追うが、これは同時に左近との約束も破ることであった。関ケ原の本陣で、家康の本営に呼ばれた高定の
前に突き出されたのは、三成(山形勲)に内通したという兄・知信の首だった。利長のとりなしで陣営に帰った高定に、左近が迫る。女の一念
をこれで計れと高定を斬りつけ、返す刃でわが胸に懐剣を突き立てる。知信、左近の土饅頭を前に夜を明かした高定。家康の本陣から三成の陣へ。高定の目にはもう敵も味方も生も死もなかった―。
秀次の愛妾の中に家康の密偵として送り込まれた左近(淡島千景)の実の妹がいて、誰が密偵か分からない秀吉側は、秀次切腹後、冷酷な三成の進言により(山形勲かあ)妻妾38人全員を処刑しますが、同じく冷酷な家康の方も(小沢栄太郎かあ)そのことを特に何とも思わない―そうしたことに対する左近の怒りと悲しみというのも説明不足でしょうか。妥女と高定を張り合って、自ら降りて後見人的立場に引き下がっただけみたいな描かれ方をしています。
このようにいろいろケチはつけたくなりますが、豪放磊落な高定を演じる大友柳太朗を楽しめ、ラストの(滅茶苦茶な)戦場シーンも、馬上で槍を振り回すその豪快さは見所と言えるでしょう。しかも、馬を急旋回させながらそれをやっているからすごいです。これだけでもDVD化する価値はあると思うけれど、現在['16年]のところまだされていません。



「酒と女と槍」●制作年:1960年●監督:内田吐夢●製作:大川博●脚本:井出雅人●撮影:鷲尾元也●音楽:小杉太一郎●原作:海音寺潮五郎「酒と女と槍と」●時間:99分●出演:大友柳太朗/淡島千景/花園ひろみ/黒川弥
太郎/山形勲/東野英治郎/原健策/須賀不二夫/織田政雄/徳大寺伸/小沢栄太郎/片岡栄二郎/高松錦之助/松浦築枝/赤木春恵/水野浩/有馬宏治/十朱久雄/香川良介/楠本健二/浅野光男/舟橋圭子/近江雄二郎/大崎史郎/尾上華丈/石
丸勝也/村居京之輔/南方英二(後のチャンバラトリオ)/泉春子/片岡千恵蔵●公開:1960/05●配給:東映(評価:★★★☆)



千代田城御蔵番詰所では、新参の旗本・神尾喬之助(阪東妻三郎)が、上司の戸部近江之介(永田光男)から新春早々陰湿なイジメを受けている。神尾が江戸小町といわれる園絵(津島恵子)を妻にしたことを、園絵に横恋慕していた戸部が妬みに思っていることに加え、神尾が御蔵番一味の不正に日頃からあれこれと意見してきたことを快く思っておらず、戸部にへつらって17 人の御蔵番同僚たちも神尾をいたぶっているのだった。我慢の限界に達した神尾は思い余って戸部を斬って出奔する。神尾は浪人となり、自分を罵倒した面々への復習を図るが、そこで神尾そっくりの喧嘩助っ人・茨右近(阪東妻三郎(二役))と妻のお紘(山田
五十鈴)に出会う。曲がったことが大嫌いな右近は神尾から事情をきき、彼が残る不正の御蔵番一味17人に天誅を加えることに大賛成、神尾の自宅から園絵を密かに連れて来てやる。神尾は次々と不正役人を倒していく。今や戦々恐々の彼等は、剣豪神保造酒(戸上城太郎)に神尾を討つことを依頼し、神保は園絵と引き換えにそれを承知する。騙されておびき出された園絵だったが、魚心堂(三島雅夫)と名乗る大岡越前守(柳永二郎)の親友に救われる。越前守は、悪役人が大かた退治され、主謀の脇坂山城守(小堀誠)も御役御免になった頃合いを見計らって、世を騒がせた神尾を召取らせ、捕らえたのは神尾ではなく右近の人違いだと断じて、江戸追放だけを申渡す―。
この'52年の阪東妻三郎版では阪妻が神尾喬之助と茨右近の一人二役ですが('36年の阪妻版も'56年の大友柳太朗も一人二役、'30年の大河内傳次郎版は大岡越前守まで大河内が演じる一人三役)、ちょっと歌舞伎調で堅め、しかもやや暗めで悪人たちの前にぬっと現れる神尾喬之助と、明るくて悪人と対峙している時でさえ笑いながら剣を振るう茨右近の、同じ浪人でありながら、片や武家的、片や庶民的な対照的なキャラクター
の使い分けが見所でしょうか。それを、映像合成で1つの画面で会話させ、剣戟をさせ、仕舞いには握手させるなどしていて、サービス満点です(因みに'56年の大友柳太朗版はもっぱらスタンドインで撮っている)。この茨右近は後に「喧嘩屋右近」としてTV時代劇のキャラクターにもなりました。
神尾と園絵(津島恵子)、右近とお紘(山田五十鈴)という取り合わせも、片や美しく貞淑な女性、片やちゃきちゃきの女性という感じで、神尾と右近のキャラの違いをより浮き立たせていて良かったです。津島恵子は同じ年に小津安二郎監督の「
魚心堂の三島雅夫(「
大河内傳次郎が演じたようですが、まあそこまでやる必要もなかったでしょう(大友柳太朗版でも大友柳太朗は神尾と右近の二役で、大岡越前守は月形龍之介。TVドラマでは、阪東妻三郎の長男・田村高廣が茨右近を、三男・田村正和が神尾喬之助を演じた「魔像・十七の首」('69年/ABC・TBS系[全9回])がある)。
このお話でちょっと気になったのが、大岡裁き
はいいとして、この裁きでは結局、神尾を「右近」にしてしまったら神尾は捕まっていないことになり、それでいいのかなあと。それは大岡越前守の責任外の問題ということでしょうか。
「魔像」●制作年:1952年●監督:大曾根辰夫●脚本:鈴木兵吾●撮影:石本秀雄●音楽:鈴木静一●原作:林不忘●時間:98分●出演:阪東妻三郎/津島恵子/山田五十鈴/柳永二郎/三島雅夫/香川良介/小林重四郎/小堀誠/永田光男/海江田譲二/田中謙三/戸上城太郎●公開:1952/05●配給:松竹(評価:★★★☆)





1948(昭和23)年公開の伊藤大輔(1898 -1981)監督作品。原作は、実在した将棋界の奇才・阪田三吉(坂田三吉、1870 - 1946)を主人公モデルとした北条秀司の戯曲で、山根貞夫氏によれば、この映画化作品の前年に新国劇が辰巳柳太郎主演で上演して大好評を博しその年に映画化が企画されるも、当時の大映社長に将棋なんか映画になるものかと一蹴されたとのこと。当時は大映の社長が菊池寛から永田雅一に替わった頃であり、どちらの発言か分からないようですが、おそらくそう言ったのは制作に口を挟むことが多かった永田雅一の方ではないでしょうか。
伊藤大輔監督はそれでも映画化を諦めず、シナリオを9回も全面的に書き直してやっと企画は通りますが、一方で、伊藤監督自身は将棋に全く無知で駒の並べ方すら知らなかったため、勉強のため白浜の旅館で開かれていた名人戦を観戦し、そこで観戦に来ていた升田幸三(1918-1991)と知り合い、升田幸三は撮影所に来て伊藤監督に駒の並べ方から将棋の指導をし、また、映画に出てくる将棋の場面を監修しています。
貧乏長屋で草履を作るのを生業としていた坂田三吉が、将棋に没頭するあまり妻子に散々苦労をかけながらも、やがて名人にも打ち勝つ棋士となり、また人間的にも成長していく様を描いたシンプルなストーリーですが、坂田三吉を演じた阪東妻三郎(1901-1953)の活き活きとした名演技によって、骨太の感動物語となっています。阪東妻三郎の時にややオーバーアクション気味の大熱演は、「
ラストで永年の宿敵・関根八段(滝沢修が阪妻とは対照的な気品のある演技を見せる)の第十三世名人襲位披露祝賀会に三吉が重病の妻・小春を大阪に残して上京し、関根名人に手作りの草履を送ったその時、玉江から小春危篤の電話があり、電話越しで涙ながらに妻に語りかける場面は、やはり心に沁みるものがあります。
映画にもあるように、阪田三吉は、1891(明治24)年頃、後に名人となる関根金次郎と堺の料亭で初対決し惨敗、このことでプロの道を決意したとされ、1906(明治39)年の関根との対局で(関根の香落ち)、終盤三吉が千日手のルールを知らずに惜
敗したのも事実であり(但し、映画ではこの2つの出来事が1つに纏められている)、以降、打倒関根を目標として貧困などの危機を乗り越えていき、1913(大正2)年に関根に平手の対局で初勝利するというのも映画と同じ。ただ、映画によって「無法者」のイメージが定着していますが、晩年の阪田は極めて礼儀正しい人物だったとのことです。また、一番弟子の藤内金吾が面倒見のいい人物で弟子を多く育て、阪田三吉の孫弟子には内藤國雄らが、曾孫弟子には谷川浩司らがいます。
この作品が好評だったため、その後も伊藤大輔の監督で、辰巳柳太郎主演の「王将一代」('55年/新東宝)、三國連太郎主演の「王将」('62年/東映、関根名人:平幹二朗/小春:淡島千景/玉枝:三田佳子)が作られ、また堀川弘通監督、勝新太郎主演でも「王将」('62年/東映、関根八段:仲代達矢/小春:中村玉緒/玉枝:音無美紀子)が作られていますが、この「阪妻」版を超えるものではないというのが衆目の一致するところで、水戸光子、三條美紀らの演技も良かったと思います。
「王将」●制作年:1948年●監督・脚本:伊藤大輔●製作:永田雅一●撮影:石本秀雄●音楽:西梧郎●原作:北条秀
司●時間:94分●出演:阪東妻三郎/水戸光子/三條美紀/奈加テルコ/小杉勇/斎藤達雄/大友柳太郎/滝沢修/三島雅夫/香川良介/葛木香一/寺島貢/近衛敏

「將軍を狙う女」原節子(当時17歳)/黒川弥太郎
小西行長の遺臣・磧田(せきた)与四郎(黒川弥太郎)は、徳川家康(鳥羽陽之助)の乗った駕籠を襲うが討ち損じ、逃げ延びた山小屋には、石田三成の客分だった老人・遠山白雲斎(横山運平)がお鶴(花井蘭子)という娘と暮らしていた。お鶴は家康の前妻・築山御前(つきやまごぜん)の娘で、父である家康とその腹心の野中三五郎(進藤英太郎)を母の仇として狙っていた。家康は駿府
城に人質でいる小西行長の娘・お由利(原節子)を寵愛し、お由利は切支丹信者だった。築山御前の命日、お鶴は与四郎の手を借りて本懐を遂げんと野中の屋敷に乗り込むが、奮戦空しく与四郎は捕らわれてしまう。与四郎はお由利の手引きで脱獄するが、お由利は家康に見つかり島送りにされることに。一方、野中の追手から逃げたお鶴は、バテレンに助けられて隠れ切支丹たちの潜む洞窟に行き、そこで与四郎と再会する。ある日、与四郎とお鶴は伊豆の岬で、金山奉行の金春大蔵(こんぱる・おおくら)(永井柳太郎)と出会う。金春はかつて与四郎から爆破術を伝授され、その腕を家康に認められ、金山奉行として引き立てられていた。お由利が流島になることを知った与四郎たちは、お由利を救い出して金山
に匿う。与四郎とお由利の間に愛情が芽生えるが、与四郎は大望を言い聞かせて自制を求める。野中を嫌う金春は洞窟に野中を誘い出して自爆死し、与四郎は野中を鉄砲で斃す。与四郎は、運命を共にすると言うお由利を説得し、お由利が差し出した駿府城の地図を手にお鶴と城内に忍び込む。家康を前にお鶴は刀を抜くが、築山御前への詫びを口にしてお鶴に刺せと言う家康に憐れみを感じ、親子の情を抑え難く手を下すのを止め、与四郎も今までの無礼を詫びる。家康は与四郎とお鶴を海外で安寧に暮らすように諭し、その計らいをする。船出の日、切支丹宗門に生きるお由利らに見送られて、与四郎とお鶴を乗せた船が出帆する―。
1937(昭和12)年10月公開の石田民三(いしだ・たみぞう、1901-1972)監督作で、公開時のタイトルは「東海美女傳」でしたが、後に「将軍を狙う女」と改題されました。同年2月公開の日独合作「新しき土」に主演した原節子が'特別出演'し、当時の広告の謳い文句は"原節子帰朝歓迎映画"でした。小西行長の娘・お由利を演じた原節子(1920-2015/享年95)は当時17歳。美少女であるとともに、堂々した女優ぶりです。徳川家康の前妻の娘・お鶴を演じる当時19歳の花井蘭子(1918-1961/享年42)と比べるとぱっちり目で、切支丹信者が似合うバタ臭い目鼻立ちとも言えます。
与四郎・お鶴の話がメインストーリーですが、黒川弥太郎の演じる与四郎よりも鳥羽陽之助演じる徳川家康の方がキャラ立ちしているし、花井蘭子演じる切れ長の目の和風美人よりも、客演であるはずの原節子のつぶらな瞳(時代劇らしくない?)、くっきりし過ぎる顔の造作(それでいてその役どころは古風でバタ臭い容貌との間にギャップがある)の少女役の方が目立つ映画でした。
「将軍を狙う女(東海美女傳)」●制作年:1997年●監督:石田民三●製作:小山一夫●脚本:白浜四郎/加戸野恩児●撮影:上田勇●音楽:伊藤宣二●原作:村松梢風●時間:67分●出演:黒川弥太郎/鳥羽陽之助/永井柳太郎/深見泰三/山田好良/進藤英太郎/大家宏康/長島武夫/横山運平/大崎時一郎/花井蘭子/原節子/鈴村京子/五月潤子●公開:1937/10●配給:東宝映画(評価:★★★)


冬の網走駅で汽車を降ろされた男たちが、トラックに乗せられ網走刑務所へ護送される。受刑者の橘真一(高倉健)もその一人だった。入所後、雑居房に入
れられた橘は、殺人鬼"鬼寅"の義兄弟と称して幅を利かせていた牢名主の依田(安部徹)や同じ新入りの権田(南原宏治)と衝突、喧嘩の責任をとって懲罰房に送られる。一人になった橘は、幼かった自分と妹を飢えさせないために母(風見章子)が不幸な再婚をしたこと、養父の横暴に耐え切れず母と妹(宗方奈美)を残して家を出たことを回想する。都会へ
出てやくざとなった彼は、渡世の義理で人を斬り3年の刑期を宣告され網走刑務所に送られたのだった。入所から半年が過ぎ、真面目に労役に汗を流す橘を囚人たちは点数稼
ぎとして冷ややかに見る。仲間への意地から騒動を起こし再び懲罰房へ行かされる橘に対し、保護司の妻木(丹波哲郎)だけは親身になって相談に乗る。故郷の妹からの手紙によると、母が死の床にあり早く戻ってほしいという内容
であり、同情した妻木は仮釈放の手続きを約束してくれる。一方、雑居房では依田、権田らが脱走計画を練っており、密告すれば渡世の仁義を踏みにじるイヌとされ、巻き込まれると仮釈放が消える橘は苦悩する。この脱走を直前になって失敗させたのは同じ雑居房にいた阿久田老人(嵐寛
寿郎)であり、彼の正体こそ"鬼寅"であり、鬼寅は橘の苦境を見抜いて彼を救ったのだった。翌日、森林伐採の労役でトラックに乗せられた依田らは無蓋の荷台から飛び降りる。権田と手錠でつながれた橘も彼と一緒に飛び出して脱獄囚とされてしまう。報告を聞いた妻木は、やっともらった橘の仮釈放認可の書類を破り捨て二人を追う―。
石井輝男(1924-2005/享年81)監督による作品で、'65年公開当初は小沢茂弘監督の任侠映画「関東流れ者」(鶴田浩二主演)の添え物映画という位置づけであり、映画業界でカラーフィルムによる「総天然色」が主流になりつつあった時代に、「主役が脱獄囚であり、ヒロインにあたる女優が登場せず、ラブロマンスもないため興収を見込めない(だから当たりそうもない)」という理由で、石井輝男監督らが北海道のロケハンより戻ってきた際に「予算はカット、添え物の白黒映画にする」と会社(東映)から言われたそうです。何とかカラーで撮らせてくれと執拗に迫った高倉健に対し、大川博社長(東映の事実上の創業者)は「文句があるなら主役を梅宮辰夫に変えるぞ」と言ったそうです。しかしながら映画はヒットし、高倉健は一躍スターダムへ。石井輝男=高倉健のコンビで、以下、シリーズ第10作まで作られました。
この第1作は、(高倉健はカラー映画を望んだわけだが望みが聞き入れられず)白黒映画になったことで、雪中シーンが多いことやシンプルなアクションシーンなどとの相乗効果で、却ってシリーズの中で際立つことになったように思
います(シリーズ第2作以降は全作品カラー)。また、第2作以降に出てくる(「男はつらいよ」シリーズのような)マドンナ的な女性がこの第1作では登場せず、「母子物」的要素と「義侠心」に近い男の'友情'が前面に押し出されています(「母子物」的要素は第5作「網走番外地 南国の対決」にもあるが、それは子供が当事者であって、一方、第1作は大人としての主人公が当事者である)。
ロケは大変だったろうなあと思わせる作品でした(特に高倉健と南原宏治)。大雪原の脱走、トロッコによる追跡劇、列車による手錠切断から大団円までを演じた高倉健
は、まだこの頃みずみずしさがあって良く、若くして存在感がある一方で(このシリーズでの特徴だが)ちょっと剽軽一面も見せます(高倉健の実際の性格にも近いとも言われる)。南原宏治やいかつい顔の安部徹(若手時代は二枚目俳優だった)も悪くないですが、嵐寛寿郎演じる"八人殺しの鬼寅"の役回りも極めて良く、嵐寛寿郎は南原宏治、安部徹らを凌駕するどころか、準主役の丹波哲郎や主役の高倉健より良かったという人もいます。どういうわけか獄中59年、残り刑期が21年あったはずの"鬼寅"
が、以降のシリーズ作でも設定を変え、キャラクターのみ"鬼寅"のそれを継承して毎回出てきますが、やっぱりこの第1作の"鬼寅"が一番印象に残ります。
は、スタンリー・クレイマー監督、トニー・カーチス,シドニー・ポワチエ主演の「手錠のままの脱獄』('58年/米)を換骨奪胎した脚本を書き、女っ気の無い、男だけの脱獄映画、雪上アクション映画となったという経緯があります(こうなると伊藤一の小説は殆ど'原作'とは言えないのでは)。
脱獄する気も無かったのに脱獄犯として追われるという不条理な状況に置かれた高倉健演じる主人公の橘が、最後の最後に嫌疑が晴れてスッキリというこのパターンは、映画会社が違っても高倉健が主演の「
「網走番外地」●制作年:1965年●監督・脚本:石井輝男●企画:大賀義文●撮影:山沢義一●音楽:八木正生●原作:伊藤一「網走番外地」●時間:92分●出演:高倉健/丹波哲郎/南原宏治/安部徹/嵐寛寿郎/田中邦
衛/沢彰謙/風見章子/杉義一/潮健児/滝島孝二/三重街恒二/ジョージ吉村/佐藤晟也/関山耕司/菅沼正/北山達也/志摩栄/宗方奈美/河合絃司/小塚十紀雄/山之内修/日尾孝司/久保一/相馬剛三/久地明/沢田実/水城一狼/久保比佐志/山田甲一/沢田浩二/秋山敏/植田灯孝/最上逸馬/勝間典子/佐藤公明/石川えり子●公開:1965/04●配給:東映(評価:★★★★)

![黒線地帯 [DVD] - 1.jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E9%BB%92%E7%B7%9A%E5%9C%B0%E5%B8%AF%20%5BDVD%5D%20-%201.jpg)


秘密売春組織に絡む女(瀬戸麗子)を追っていたトップ屋の町田広二(天知茂①)は、街の女易者(魚住純子②)の手引きでポン引のサブ(鳴門洋二③)と行ったホテルで睡眠薬を飲まされ、目覚めた時には傍らでその踊子の女が町田のネクタイで首を絞
められ死んでいた。罠に嵌ったと知った彼は、女易者とポン引の行方を探る。この事件を新聞が報じ、町田のライバル鳥井五郎(細川俊夫④)も動き出す。町田はホテルの女中(城実穂)を街で見かけ、捉まえて話を訊こうとする。女の髪の中からは麻薬が見つかる。車が女を撥ね、彼女は"あの晩の男はサブ"と言い遺す。警察への町田からの匿名通報と同じ頃、事件を知らせる女の電話もあった。鳥井は、男の通報者は町田だと目星をつける。町田は死んだ踊子と親しかったという洗濯屋を
探り、街で拾った女の麻薬常用者からポン引のサブの居所を知る。コマ劇場の傍のパチンコ店で町田はサブを追い、マネキン製造所に飛び込み、麻耶(三原葉子⑤)という女と知り合う。彼女は、海軍キャバレーのシンガポール(水上恵子⑥)という女給のことを話してくれ、そのキャバレーに行くと鳥井が来ていた。町田は死んだ女の踊っていた横浜のキャバレーへの
途中、美
沙子(三ツ矢歌子⑦)という高校生を拾う。彼女はフランス人形運搬のバイトをしていたが、町田は人形に麻薬が隠されている事実を掴み、麻耶に自白を迫る。鳥井が来て町田を犯人と決めつけるが、町田は2日の猶予を鳥井に貰う。麻耶はいつしか町田に惹かれいた。警察は町田を犯人として追い、町田は麻耶と逃れるが、途中で麻耶が負
傷し、それを看るうちに時は迫る。麻耶は知っていることを町田に全部話し、町田は女易者を見つけ出し、麻薬団のボス(大友純⑧)が例の横浜のキャバレーを根城にしていることを聞き出すと、そのキャバレーに行く。そこには美沙子が人質になっていた―。
■「白線秘密地帯」('58年)監督:石井輝男、主演:宇津井健
■「黄線地帯 イエローライン」('60年・新東宝)監督:石井輝男、主演:吉田輝雄/天知茂
■「セクシー地帯」('61年)監督:石井輝男、主演:吉田輝雄

無実の主人公が警察に追われながら真犯人を探すのというのは(それに女性が絡むというのも含め)ある種定番ストーリーですが、サスペンスフルでテンポもいいです(音楽は渡辺宙明)。東映プロデューサーの天尾完次は、「石井は同じ東宝出身の黒澤明の対極に位置する」と評していますが、主人公が人伝(づて)に訊いて徐々に真相に近づいていく様は、個人的には、黒澤明の「
拳銃を盗まれた新米刑事(三船敏郎)の探索に重なるものがあるようにも思いました(黒澤作品を想起させるほどレベルが高いということか)。三船敏郎演じる刑事に鍵となる情報を与えるのも全て女性でした。
女(山村邦子⑨)やゲイボーイ(浅見比呂志⑩)がいる店とか。麻薬団のボス(大友純)は怖そうだったし(あっさり謀殺されてしまうけれど)、終盤の町田と殺し屋ジョー(宗方祐二)の格闘シーンも良かったです。貨物列車の上からはしけの上に飛び移って...。横浜のどの辺りでしょうか。情感を秘めたラストもいいです(ちょっと三原葉子向きではない感じもするが)。
あの淀川長治も、この作品のストーリーや細部の描写を1つ1つ取り上げて褒めていますが、「けれど、そんな筋よりも安っぽいグラマーに扮した三原葉子が出てくると、 もうそれで面自くなる。ジエルソミーナがヌード・グラマーに早変りした魅力である。この映画作者はもっと自信を、もつと本格に取り組むべし」としています(「キネマ旬報」昭和35年2月下旬号第252)。三原葉子は演技力よりも、三原葉子そのものがいいという感じ。淀川長治は石井輝男に黒澤のような作品を期待したのかなあ。石井輝男は5年後にその代表作「
「黒線地帯」●制作年:1960年●監督:石井輝男●製作:大蔵貢●脚本:石井輝男/宮川一郎●撮影:吉田重業●音楽:渡辺宙明●時間:80分●出演:天知茂/三原葉子/三ツ矢歌子/細川俊夫/吉田昌代/魚住純子/ 守山竜次/鳴門洋二/宗方祐二/瀬戸麗子/南原洋子/菊川大二郎/鮎川浩/城実穂/浅見比呂志/板根正吾/山村邦子/桂京子/小高まさる/大谷友彦/水上恵子/国創典/倉橋宏明/宮浩一/晴海勇三/村山京司/原聖二●公開:1960/01●配給:新東宝(評価:★★★★)



井伏鱒二(1898-1993)
南国の海浜の村、多甚古村(たじんこむら)に新たに赴任してきた甲田巡査は平和を愛する好人物。その甲田巡査の日録の形で、飄々とした作者独特の文体でもって、多甚古村で起きた喧嘩、醜聞、泥棒、騒擾など、庶民の実生活が軽妙に描かれ、ジグザグした人間模様が生彩を放ちつつ展開される―。
翌1940(昭和15)年1月に今井正(1912-1991/享年79)監督による映画化作品「多甚古村」(東宝)が公開され、以降、井伏作品の映画化が「南風交響楽」(S.15)、「
映画では、前半部分では、新任の巡査、所謂「駐在さん」である主人公(清川荘司)がご近所から鮒を分けて貰った話や、同じくご近所さんが自炊を手伝ってくれた話など独身巡査の身辺生活の話と、村の老婆の住む家に押し込み強盗が入ったけれども何も盗らないで逃げたという話や、野良犬を退治してくれと村人が頼み込んできた話など、田舎村らしい事件と言えるかどうか分からないようなものも含めた事件話が、原作通りに取り上げられています。
これらは何れも駐在所に持ち込まれた話であり、甲田巡査が現場に出向いて行く場面はありませんが、相次ぐ村人からの事件とも相談事ともつかない話の連続に甲田巡査は過労でダウンしてしまい、その看病や食事の世話をする村のお寺の和尚の役を滝沢修(1906-2000/享年93)が演じていて、老け役ではありますが、実年齢は当時33歳と若いです(原作でも淨海という和尚は出てくるが、巡査がダウンする話はない)。また、主人公の同僚の杉野巡査役で、滝沢修と戦後一緒に民衆芸術劇場(劇団民藝の前身)を設立することになる宇野重吉(1914-1988/享年73)も出ていますが、当時25歳とこれまた若いです(宇野重吉は10年後の成瀬巳喜男監督の「怒りの街」('50年/東宝)でもまだ学生役を演じている)。
このまま小事件をこまめに拾っていくのかと思ったら、映画の後半分は、原作の2つのエピソードに焦点を当て、後半の3分の2を、村出身の帝大の学生がカフェの女と相思相愛の仲になってしまったのを、学生の親に頼まれて巡査が2人を別れさせる話(原作における「恋愛・人事問題の件」)に、最後、後半の3分の1を村の2つの中学同士の集団決闘事件とその仲裁に巡査が関わる件(原作における「学生決闘の件」)に充てています。
カフェの女には刑務所に服役中のヤクザ者の元情夫がいるということが判明し、巡査は学生と女のそれぞれの所へ出向いて別れるよう説得しますが、原作では、巡査は一度学生に、「家庭争議というものは、或る段階に至るまでは一種の快楽に属する。いま、われわれは他人を介在する必要はない」という理論でやり込められていて(民事不介入という"法理論"よりハイレベルの"心理学的理論"?)、親子喧嘩の仲裁は自分に向かないと思ったのを(しかも相手はインテリ学生)、学生の家族に再度懇願されて説得に当たることになっています。
「多甚古村」●制作年:1940年●監督:今井正●脚本:八田尚之●撮影:三浦光雄●音楽:服部正●原作:井伏鱒二「多甚古村」●時間:63分●出演:清川莊司/竹久千惠子/月田一郎/宇野重吉/赤木蘭子/鶴丸睦彦/伊達信/小沢栄/深見泰三/原泉子/三島雅夫/藤間房子/月田一郎/滝沢修●公開:1940/01●配給:東宝映画(評価★★★) 


仕事を辞めて何もせずに生活していた達夫(綾野剛)は、パチンコ屋で気が荒いもののフレンドリーな青年、拓児(菅田将暉)と出会う。拓児の住むバラックには、寝たきりの父親、かいがいしく世話をする母親、そして姉の千夏(池脇千鶴)がいた。達夫と千夏は互いに思い合うようになり、ついに二人は結ばれる。ところがある日、達夫は千夏の衝撃的な事実を知る―。
呉美保の2014年監督作で、モントリオール世界映画祭で最優秀監督賞(呉美保)を受賞しており(吉永小百合がプロデュース参画し主演した「

観る前は、綾野剛(達夫)、池脇千鶴(千夏)、菅田将暉(拓次)という配役を聞いて、原作の登場人物のイメージに比べて「線が細い」感じで「お子様っぽい
」のではないかとの印象を受けたのですが、実際に観てみたら、それなりに持ち味を出していたように思います。個人的感想で言えば、綾野剛の演じる達夫は、どちらかと言うと"観る側"であるから、綾野剛の演技が受身的であるのはいいとして、イメージ的に一番改変されていたのは菅田将暉が演じる拓次だったでしょうか。"幼い"と言うより"軽い"感じがしました。
そして、肝腎の千夏ですが、やはりどうしても"肉感的"な女性でなければならないのでは...と。それも、日中、イカをさばく工場で働いて、夜は売春で生計を立て、弟の勤め先の社長の愛人であり、要介護の父親の性欲処理を母親に代わってしているという、そうしたものを全て背負った上での"肉感的"な女性であるわけで、小柄な池脇千鶴ではイメージが弱いか或いは違うのではないかと思われたのですが、蓋を開けてみれば思った以上に役柄に嵌った"肉感的"ぶりだったと言うか、芯が強く、それでいて、ふと見せる優しい女性の顔もあり、いい意味で予想を裏切られました。
池脇千鶴(1981年生まれ。三井不動産リアルティの第8代"リハウスガール"('97-'98年)やNHK朝の連続テレビ小説「ほんまもん」('01年)の頃と随分変わった)はこの演技で、TAMA映画賞最優秀女優賞、毎日映画コンクール女優助演賞、日本映画批評家大賞助演女優賞などを受
賞、「日本アカデミー賞」では優秀主演女優賞を受賞しましたが、"最優秀" 主演女優賞は「
「そこのみにて光輝く」●制作年:2014年●監督:呉美保(お・みぽ)●製作:永田守/菅原和博●脚本:高田亮●撮影:藤龍人●音楽:田中拓人●原作:佐藤泰志「そこのみにて光輝く」●時間:120分●出演:綾野剛/池脇千鶴/菅田将暉/高橋和也/火野正平/伊佐山ひろ子/田村泰二郎●公開:2014/04●配給:東京テアトル・函館シネマアイリス(評価:★★★★)

演目でもありますが、この映画の2か月前に公開された山中貞雄監督の「
忠夫・白川由美主演で「サラリーマン權三と助十」('62年/東宝)という現代ものに置き換えたパロディ映画まで作られていますが(「サラリーマン權三と助十 恋愛交叉点」('62年/東宝)という続編まで作られた)、岡本綺堂の戯曲を原作としたものはこの伊丹万作の作品のみです。岡本綺堂の戯曲が講談と大きく異なるのは大岡越前守が登場しないという点なのですが、この映画化作品では大岡越前守が登場するものの脇に置かれているには違いなく、前進座などで演じられる歌舞伎の「権三と助十」などもほぼ同じような作りになっているようです。
源三位の政の娘のおとわ(花井蘭子、当時19歳)は、家計を救うために吉原に売られていくが、その彼女を駕籠に乗せる助十と慕い合っている関係にあり、こうなると悲劇・悲恋のオンパレードみたいですが、途中の庶民の暮らしぶりの描き方などにユーモアがあって、映画全体としてむしろコメディ色が前面に出ていると言えます。事件の方も、実はおとわの父・源三位の政は死んではおらず、大岡越前は全てを承知の上で浪人を釈放して泳がせたらしく、そうと知らぬ浪人が天井裏に隠してあった血のついた財布を証拠隠滅のため燃やすところを目撃され捕縛される―そして助十とおとわは結ばれる、といった具合にハッピーエンドに収束しています。
人の好い長屋の大家役の高堂黒天は、後の高堂國典であり、戦後も「



是枝裕和監督の「そして父になる」('13年/ギャガ)は、夫(福山雅治)と妻(尾野真千子)の間にいる6歳の一人息子が、実は出生時に子どもの取り違えがあって実の息子ではなかったことが判明し、そこから始まるその夫婦の苦悩と、取り違えられた子を育ててきたもう1つの夫婦(リリー・フランキー・真木よう子)とのやり取りを描いた作品(2014年「芸術選奨」受賞作)。
子どもの取り違えが判明してからその次にどういう手順になるのかがきっちり取材されていて、加えて、河瀬直美監督に見出され「萌の朱雀」('97年)でデビューしたd尾野真千子、「無名塾」出身の真木よう子、スピルバーグがその演技を絶賛したリリー・フランキーなど、演技陣も充実していました。
員賞(パルムドール、(審査員特別)グランプリに次ぐ賞)を受賞した作品ですが、国内では、尾野真千子、真木よう子の2人はそれぞれ第37回「日本アカデミー賞」の優秀主演女優賞、最優秀助演女優賞を受賞、福山雅治、リリー・フランキーもそれぞれ優秀主演男優賞、最優秀助演男優賞を受賞しています(電気屋夫婦の方が「最優秀」を獲っていることになる。因みに真木よう子は、同年の「さよなら渓谷」での最優秀主演女優賞とのW受賞)。
(●是枝裕和監督の「万引き家族」('18年)が、
ヌ国際映画祭
ったかあ。でも彼は「そして父になる」以上の演技だった。この映画、Amazon.comのレビューなどでみると「どこがおもしろいのか、わからない」という人も結構多いようだが、個人的には良かったと思った。「お父さん」「お母さん」と呼んでほしいと願う主人公の想いが核になっていて、終わり方も良
かった。家族っていなくなると切ないものである。これで、是枝監督にとって「家族」というのが大きなテーマであることがよく分かった。それでは小津安二郎や山田洋次と変わらないと思われるフシもあるかもしれないが、ステップファミリーを通して「家族」というものを描いているのが大きな特徴であり、「そして父になる
」からの流れで見ると繋がっている。ハッピーエンドにせず、問題投げかけ型で終わるのも同じ。今回は中流家庭ではなく、下流家庭(疑似家族)を描いている点で、明らかに小津安二郎の後期作品とも異なる。何となく是枝監督のスタンスが見えてきた気がする。パルム・ドールは、ベルギー移民の少女や若者の貧困を描いたダルデンヌ兄弟の作品が2度受賞しているなど、格差社
会を描いたものが近年では賞を獲り易い傾向にあり、「万引き家族」の受賞も意外性はなかった(「万引き家族」の翌年2019年には、ポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」がパルム・ドール受賞。やっぱりという感じ)。因みに本作は、2019年・第13回アジア・フィルム・アワードも作品賞と作曲賞(細野晴臣)を受賞しているほか(この賞の作品賞受賞は日本映画では初)、
犬童一心、樋口真嗣共同監督の「のぼうの城」('12年/東宝)は、北条氏の支城で、周囲を湖に囲まれ浮城とも呼ばれる忍城(おしじょう)の領主・成田氏一門の成田長親(野村萬斎)と、その城を攻め落とそうとする豊臣方・石田三成(上地雄輔)の攻防を描いた作品で、2時間超ですがあまり長さを感じさせず、予想以上に面白かったです(この面白さは、和田竜氏の直木賞候補となった原作の面白さによるものではないかとも思うが、原作を読んでいないので、素直に「面白かった」としておきたい。台詞が一部、「○○的」など現代語になっているのが気になったが、脚本も原作者によるもの)。
歌舞伎や狂言の俳優が、日頃その世界で伝統芸能の継承・研鑽に励みつつも、現代劇や時代劇に出てすんなりそれにフィットした演技が出来てしまうのにはいつも感心させられますが、この映画の野村萬斎の場合、狂言の演技をそのまま成田長親のキャラに活かしていることにより、映画を自分の作品にしている点で、起用に充分応えているように思いました。また、近習の正木丹波守利英を演じた佐藤浩市の演技がオーソドックスな映画的演技であることも、対比的な効果を醸しているように思われます。この2人はそれぞれ第36回「日本アカデミー賞」の優秀主演男優賞、優秀助演男優賞を受賞しています。
ストーリー的には、最後は、北条氏の本城である小田原城が落城してしまうことから、支城を巡って争う理由がなくなり、これ以上は戦わずして成田氏は忍城を豊臣方・石田三成に明け渡すことになってしまうという点では、これもまた、アンチ・カタルシス的な作品と言えるかもしれません(M&Aで大企業に吸収される関係会社みたい)。それでも「こういう武将もいたのだ」という面白さによってさほどカタルシス不全を感じさせないのは、これはやはり、原作の目の付け所の良さに拠るものかと思われます。
僅か500の兵で2万の大軍から城を守り和議に持ち込んだというのはやはりスゴイことだと思われ、今までほとんど時代小説の素材になっていないのが不思議なくらい(風野真知雄の『水の城 いまだ落城せず』では主人公の成田長親は、際立った武勇や才覚はなく、捉えどころのない人物として描かれているそうだ)。近年の研究では、もともと水攻めに向かない城に対して水攻めに固執した秀吉のミスだったとの説が有力なようで、実戦経験の乏しい石田三成に配慮した作戦が裏目に出たのか。逆に三成が書状の中で「諸将は完全に水攻めと決め込んで全く攻め寄せる気がない」と嘆く事態となったわけですが、水攻めの決定に三成軍の武将たちのモチベーションががたんと低下する場面はこの作品の中でも描かれています。
敢えて長年二番館として営業してきた三茶シネマらしいラインアップを選んだらしい)。ラストショーと思って思い入れを込めて観た分、評価はやや甘くなっているかもしれません。昨年['13年]5月に亡くなった夏八木勲(1939-2013/享年73)が両方の作品に脇役で出ています('12年の秋から膵癌を患い、闘病を続けていた)。

「そして父になる」●英題:LIKE FATHER,LIKE SON●制作年:2013年●監督・脚本:是枝裕和●製作:亀山千広/畠中達郎/依田翼●撮影:瀧本幹也●音楽:松本淳一/森敬/松
原毅●時間:120分●出演:福山雅治/尾野真千子/真木よう子/リリー・フランキー/二宮慶多/黄升炫/中村ゆり/高橋和也/田中哲司/井浦新/ピエール瀧/大河内浩/風吹ジュン/國村隼/樹木希林/夏八木勲●公開:2013/09●配給:ギャガ●最初に観た場所:三軒茶屋シネマ(14-07-20)(評価:★★★★)●併映:「のぼうの城」(犬童一心/樋口真嗣)
風吹ジュン(野々宮のぶ子(良多の義母)) 
「万引き家族」●英題:SHOPLIFTERS●制作年:2018年●監督・脚本・原案:是枝裕和●製作:石原隆/依田巽/中江康人●撮影:近藤龍人●音楽:細野晴臣●美術:三ツ松けいこ●衣裳デザイン:黒澤和子●時間:120分●出演:リリー・フランキー/安藤サクラ/松岡茉優/池松壮亮/城桧吏/佐々木みゆ/高良健吾/池脇千鶴/樹木希林/緒形直人/森口瑤子/山田裕貴/片山萌美/柄本明/笠井信輔(ニュースキャスター)/三上真奈(ニュースキャスター)●公開:2018/06●配給:ギャガ(評価:★★★★☆)



「のぼうの城」●制作年:2012年●監督:犬童一心/樋口真嗣●製作:久保田修●脚本:和田竜●撮影:瀧本幹也●音楽:松本淳一/森敬/松原毅●時間:145分●出演:野村萬斎/榮倉奈々/成宮寛貴/佐藤浩市/山口智充/上地雄輔/前田吟/中尾明慶/尾野真千子/ピエール瀧/前田吟/山田孝之/平岳大/市村正親/西村雅彦/鈴木保奈美/平泉成/夏八木勲●公開:2012/11●配給:東宝●最初に観た場所:三軒茶屋シネマ(14-07-20)(評価:★★★★)●併映:「そして父になる」(是枝裕和)

「愛よ星と共に」ポスター
VHS(国際放映・日本映画傑作全集) 下スチール写真中央:高峰秀子
十年ぶりに北海道の北島牧場を訪れた邦彦(池部良)は、牧夫頭の娘はるえ(高峰秀子)と再会した。とても美しくなったはるえをみた邦彦はとても驚いたが、綺麗になったと言われ自分の姿を小川の水に映しては何時までも自分を見つめる彼女は、まだ無垢な乙女そのものであった。邦彦とはるえは、牧場の小川で一夜を過ごした。はるえは邦彦の語る美しい星の話を興味深く熱心に聞いていた。しかしその話はあまりにも美しくあまりにも巧みな運命の夢だった。邦彦が東京へ帰ってから数月、はるえの腹には美しい星の子供が宿っていた。父からの反対に耐え切れず、はるえは家を飛び出し東京の邦彦を訪ねるが、時すでに遅く、彼がフランスへ旅立った後だった―。
阿部豊(1895-1977)監督の1947(昭和22)年「新東宝」作品で(黒澤明の「
牧場主、つまり上流階級に属する男性と恋し合って一夜を共にするも、娘より自らが仕える本家の方を気遣う牧夫頭の親によって勘当され、北海道の家を出て東京にその男性を追うも、恋人は海外へ渡航した後。身重の身で生活すらままならず、独り寂しく赤ん坊を産むが、その赤ん坊にも病で死なれて、女給の生活に身を窶(やつ)す。しかし、やがてその世界で「花形女給」として名を馳せるようになり、そんな中、男女のもつれからある男を誤って銃で死なせてしまう。世間からは次々と男を渡り歩く毒婦のようにみられ、裁判でも死刑判決を受けるが、自身がこの世界に身を置くようになった契機が、赤ん坊が亡くなったことにあるとは判明するも、その赤ん坊が誰との間の子であったかは公判で明かすことなく、判決を受け入れようとする。そこへ―。
女性映画と言うかメロドラマと言うか、しかもハーレクインみたいな波乱万丈(或いはシドニィ・シェルダン風か)。テレビがある時代なら13話連続のテレビドラマだろうけれど、まだテレビが登場する何年か前なので、TVドラマが担っているような役割を、その分も含め映画が担っていたのだなあと思わせる作品でした。
因みに、この作品は北海道・幕別町の新田牧場でロケが行われていますが、なぜ新田牧場がロケ地に選ばれたかというと、この映画のプロデューサーだった青柳信雄が札幌の雪印乳業を訪問した時に新田牧場
を紹介されたとのこと。戦後間もない食糧難の折、当地では白米、牛乳、玉子、肉等などの供給が豊かで、40日のロケ期間中、ロケ隊には毎日が天国のようだったとも言われています。






この作品は1940(昭和15)年が神武天皇の即位から2600年に当たるとされる「皇紀二千六百年」であることの記念として、陸軍航空本部の全面協力のもとに制作されたもので(因みに零式艦上戦闘機、通称「ゼロ戦」などの命名由来も、採用年次の皇紀年代(下2桁)による)、日中戦争において活躍した戦闘機乗り達を描いています。ドラマ部分と飛行・戦闘シーンが交互に現れ、ドラマ部分は、この作品が戦闘において犠牲となった戦闘機乗り達「陸の荒鷲の英霊」への弔意を込めて作られていることから、(コミカルな場面もあるが)全体の色合いとしてははっきり言って暗めでしょうか。
一方、戦闘シーンは、日中戦争時に活躍した当時最新鋭の九七式戦闘機や九七式重爆撃機などの実機が大量に使用されており(この部分では国威発揚映画と言える)、スケールも大きく、迫力のあるものとなっており、円谷英二が特撮を担当していますが(本名・圓谷英一でクレジット)、特撮場面は少なく殆どが実写映像となっています。
冒頭は昭和11年(1936年)の陸軍航空飛行学校が舞台で、少年飛行兵の行本(月田一郎)、山村(大川平八郎)、佐藤(灰田勝彦)、田中(伊東薫)の仲の良い4人組を中心とする飛行兵達の日常から始まり、教官・山本大尉(大日方傳)と彼らの遣り取りなどが描かれますが、訓練シーンなどでは実際に飛行学校で起床している生徒達が大勢出演していると思われることから、戦争映画として、戦闘シーンなどとはまた異なる記録的価値があるように思いました。
話は昭和13年(1938年)に飛び、主人公の4人組は北支戦線の飛行戦隊仁禮(高田稔)部隊に配されおり、そこへ飛行学校時代の元教官・山本大尉が飛行中隊長として赴任してきて、ここでも教官と彼らの交流などが描かれます。
一方の戦闘シーンは、九七式戦闘機など実機を使って操縦席に撮影カメラを設置し、戦闘機操縦者目線で撮影しているためリアルそのもので、敵軍の中国空軍機にも、九七式より旧式の九五式戦闘機を使っています。
山村は敵機に撃墜され不時着するも(不時着シーンは、さすがにここは円谷特撮)やっとのことで行本に救出され、皆で生還を祝います。しかし今度は佐藤の乗る九七式重爆撃機(乗員7名)が撃墜されて佐藤以外は全員死亡、佐藤も腕を骨折しますが、片手で土を掘って死亡した機長・奈良大尉(佐伯秀男)を埋葬し、その後、拳銃で頭を撃ち抜いて自決したことが山本大尉から行本、山村に伝えられます。
4人組の内、田中は既に名誉の戦死を遂げており、佐藤に続き、今度は行本が敵機の攻撃を受けて行方不明になって、結局何とか帰還するも、滑走路に激突するようなかたちで着陸、瀕死の重傷を負って彼自身が既に死を覚悟している―山村らが行本を看取る場面が作品のクライマックスとなっており、こうなると、戦意高揚映画と言うよりは、戦争の悲劇を主題に据えた作品に思えなくもありません(実際、あまりに悲惨なため、佐藤が撃墜された場面は生かしたものの、その最期はリアルタイムの話として撮ったものをカットし、山本大尉の口伝に置き換えられたらしい)。
乗り越えようとしているように思われましたが、それは容易ならざることであったことが窺えます。時代とリアルタイムでこうした作品が作られていることに意義を感じました。
実機を使って撮影しているということで、戦闘機ファンの間でも高い評価を得ている作品ですが、この映画で活躍する九七式戦闘機(右)は、2年後に
作られた山本薩夫監督の「翼の凱歌」('42年/東宝)では、一式戦闘機「隼」にあっさり追い抜かれてしまいます(当時を知る人の中には、よく九七式戦闘機のようなもので戦ったものだと述懐する人もいるくらい)。それでも、固定脚ながら見事にアクロバティックな飛行をこなす九七式戦闘機を(加えてより旧式の九五式戦闘機(左)も)じっくり見ることが出来るという意味では稀有な作品であり、確かに戦闘
シーンの迫力も素晴らしいものです。しかしながら、やはりそれを操縦しているのも生身の人間であることを思うと、個人的には人間ドラマの方にウェイトを置いて観てしまいます(女性が一人も登場しない作品なのだが)。
山村を演じた大川平八郎(ヘンリー大川、1905-1971、当時35歳)は、埼玉・草加出身で、実業家になる修行ために1923年に18歳で渡米して、コロンビア大学で経済学を勉強したという人。それまでの間に皿洗いをしながら好奇心からコロンビア大学の劇科にも学び、同大学に併設された俳優養成学校の一期生となって、ハワード・ホークス監督の「空中サーカス」('28年)などに出演しました(俳
優学校の同期にゲーリー・クーパーらがいる)。日本国軍人としてフィリピン駐留中に終戦を迎えた彼は、語学堪能ということもあって降伏の際に山下奉文司令官の通訳を務め、戦後は「
更に、監督の阿部豊(1895-1977)も、1912年に17歳でロサンゼルス在住の叔父をたよって渡米した人で、演劇学校を経てハリウッドに渡り、ハリウッド無声映画期の俳優としてジャック・アベ(Jack Abbe)の芸名で活躍していて、俳優としても大川平八郎より先輩になるわけですが、フランク・ボーゼージ監督などに演出術を学び、映画監督になるべく帰国して1925(大正15)年に日活に入社、翌年には「足にさはった女」というハリウッド風のソフィスティケート・コメディを撮っています(彼自身がアメリカで「Mystic Faces」(1918)などのコメディ映画に出演していた)。
ゆる大空」でも、少年飛行兵生徒らの訓練や生活の様んでいくわけであって...)。一方、長谷川一夫が飛行部隊附軍医の役で出演しているのは、女性が全く登場しない映画であるため、女性客の集客を考慮したのだとも言われています。音楽は早坂文雄が担当、主題歌「燃ゆる大空」の作曲者は山田耕筰となっています。
「燃ゆる大空」●制作年:1940年●監督・製作:阿部豊●監修:陸軍航空本部●脚本:八木保太郎●撮影:宮島義勇●特殊技術撮影:円谷英二/奥野文四郎●音楽:早坂文雄●主題歌「燃ゆる大空」作詞:佐藤惣之助/作曲:山田耕筰●原作:北村/高田稔/龍崎
小松●時間:102分●出演:大日方傳/月田一郎/大川平八郎/灰田勝彦/伊東薫/長谷川一夫一郎/藤田進/柳谷寛/佐伯秀男/清川荘司/三木利夫/真木順/深見泰三/原聖四郎/中村彰/社栄一/沢村昌之助/沼田春雄/島壮児/谷三平●公開:1940/09●配給:東宝東京(評価:★★★★)


名物按摩の徳市(徳大寺伸)と福市(日守新一)が山の温泉場へと向かい歩いていた。二人は盲目ながら優れたカンの持ち主で、そばを通る人たちの素性を言い当てる程だった。温泉場で徳市は東京から来た女(高峰三枝子)に呼ばれる。徳市は彼女が来る途中に自分を追い抜いていった女だとピンと来る。だが少し影のあるこの女に徳市は惚れてしまうのだった。その頃この温泉場では次々と盗難事件が発生する。徳市は彼女が犯人じゃないかと疑い始める―(「ムービーウォーカー」より)。
清水宏の監督作品のベストテン投票などでしばしば第1位になる作品で、石井克人監督、草彅剛、マイコ主演で「山のあなた 徳市の恋」('08年/東宝)としてリメイクされました。
そんな徳市が、道中、東京から来た女が馬車に乗っていたと言い当てた、まさにその女の肩を揉むことになったことから、彼は女に対して恋に落ちてしまう―そんな折に宿屋での盗難事件が持ち上がり、彼特有のカンで素性を明かさないその女から微妙な翳と怯えを感じ取っていた徳市は、こうして身を隠すように滞在している彼女こそが犯人だと察し彼女を助けようと骨を折るのだが―。
元々謎解きミステリなどとは違った作品だったと思えば、犯人捜しの結末がぼかされていることに不満を言う筋合いではないのでしょう。徳市の勘違いは、恋愛でその"超能力的"カンがやや鈍ったともとれ、リメイク作品のサブタイトル(徳市の恋)がテーマそのものを言い当てているかと思います。厳密に言えばリメイクではなく、「カバー作品」として作っているとのことで、その辺りにもオリジナルへのリスペクトを感じます。
リメイク作品を観る前は、オリジナルの抒情をどこまで描き切れているのかがっかりさせられるのを避けたい気持ちが
思ったより良かったです。まさに「カバー」作品として作られていて、宿泊客の独身男を演じた堤真一などは、「カバー作品」であるという前提にオリジナルの佐分利信の演技を完全に模倣している感じでしょうか。
山間の温泉宿という舞台背景もあって、シンプルだが抒情溢れる作品。ラストの更に馬車で逃げていこうとする女を、まるで「めあき」のように見遣る徳市の表情の切なさもさることながら、子供の前で徳市が川泳ぎをしてみせた後、女が駆け寄り黙って浴衣を着せてやる場面などは何となくエロチックなものが感じられて印象に残っています(その他にも、徳市が、風呂に行くと言う女に一緒に入らないかと誘われたと勘違いする場面など、エロチックな妄想を駆り立てるシーンがあった)。「小股の切れ上がった女」という表現がありますが、この映画で小走りに駆ける高峰三枝子は、まさにその言葉がぴったりのように思います。
「按摩と女」●制作年:1938年●監督・脚本:清水宏●撮影:斎藤正夫●音楽:伊藤宣二●時間:66 分●出演:高峰三枝子/徳大寺伸/日守新一/爆弾小僧/佐分利信/坂本武/春日英子/京谷智恵子/油井宗信/二木蓮/飯島善太郎/大杉恒雄/赤城正太郎/近衞敏明/磯野秋雄/廣瀨徹/水原弘志/槙芙佐子/三浦光子/中井戸雅子/関かほる/平野鮎子●公開:1938/07●配給:松竹(松竹大船)(評価:★★★★)


「山のあなた 徳市の恋」●制作年:2008年●監督:石井克人●脚本:清水宏●撮影:町田博●音楽:緑川徹/中川俊郎●時間:94分●出演:草彅剛/加瀬亮/マイコ/広田亮平/堤真一/宮永リサ/黒川芽以/津田
寛治/三木俊一郎/田中要次/森下能幸/三浦友和/渡辺えり子/松金よね子/洞口依子/轟木一騎/阿部ジュン/大山健/白仁裕介/野村佑香/尾野真千子●公開:2008/05●配給:東宝(評価:★★★☆) 

広能昌三(菅原文太)は復員後、遊び人の群れに身を投じていたが、山守組々長・山守義雄(金子信雄)はその度胸と気風の良さに感心し、広能を身内にする。まだ小勢力だった山守組は、土居組との抗争に全力を注ぐ。その土居組を破門された若頭・若杉(梅宮辰夫)が山守組に加入し、若杉による土居(名和宏)殺害計画が進む―。 

「仁義なき戦い 広島死闘篇「('73年)、「仁義なき戦い 代理戦争」('73年) 、「仁義なき戦い 頂上作戦('74年)、「仁義なき戦い 完結篇」('74年)も続けて観ましたが、広能の他にも、松方弘樹演じる板井や梅宮辰夫演じる若杉などサブヒーロー的な登場人物がいることはいますが、彼らは皆、この第1作の中で死んでしまいます。
シリーズの後の方になると、死んだ人物の役を演じた俳優がまた別の役で出てくるので、観ていて妙な感じがします。第1作における梅宮辰夫の「若杉」などは結構キーパーソンだったのですが、第3作「仁義なき戦い 代理戦争」と第4作と「仁義なき戦い 頂上
作戦」には「明石組幹部 岩井信一」の役で出演しています。この役を演じるのに際して眉毛を剃り落としましたが、これは、岩井のモデルで
ある三代目山口組若頭の山本健一に眉毛がなかったためで、眉のない父の顔を見た娘の梅宮アンナ(1972年生まれ)は、怖くて泣いたそうです。でも、このシリーズの演技で最も飛躍した俳優の一人が彼、梅宮辰夫であり、異なった役を演じ切ったこともその要因としてあったのでは。違った役と言えば、第3作に第1作と別の役で出てくるのは渡瀬恒彦も然り。しかも、ストーリー的には、この第3作が第1作の続編となっているのでややこしいです。松方弘樹は第4作「頂上作作戦」で別の役で登場、第5作「完結篇」でさらに別の役で出てきます。
松方弘樹 in「仁義なき戦い」(坂井鉄也・射殺される)/「仁義なき戦い頂上作戦」(藤田正一(射殺される)/「仁義なき戦い完結編」(市岡輝吉・射殺される)
準主役級でさえそうですから、主に殺され役である川谷拓三などは第1作から第5作まで全部異なる役で登場しており、一方で、小林旭は第3作から第5作まで、山城新伍は第2作から第5作まで同じ役で出ていたりもします。流れとしては、誰か特定の個人の生き様を追うというよりは、次第に"群像活劇"の色合いを濃くしていくという感じでしょうか(広能が結構長く刑務所に入っている期間があって、必ずしも毎回は表舞台に出てはこないということもある)。

菅原文太は、'60(昭和35)年の正月映画「女奴隷船」(新東宝)に26歳で主演しています。この作品は舟崎淳の「お唐さん」を基にした和風海洋アドベンチャー(?)で、これ、昭和20年初頭の時代設定なのですが(「仁義なき戦い」と大差ない)、日本女性を上海まで運んでセリにかけて売り飛ばす「お唐さん船」というものがストーリー背景となっています。
善玉主人公が菅原文太で(この頃は何となく的場浩司と似ている)、悪役は丹波哲郎(この人は昔からこんな感じだったんだなあと)、女優陣は新東宝のセクシー看板女優・三原葉子に、この映画を撮った小野田嘉幹監督と結婚することになる三ツ矢歌子など。
菅原文太は丹波哲郎とのアクション対決を演じたりしましたが、う~ん、スゴイ「B級」の冒険アクション&お色気映画。ダサいセットが微笑ましく、但し、東映風のミニチュア特撮を駆使したりしている努力は買えます。音楽は、東大文学部卒心理学科卒で作曲家になった渡辺宙明(1925-font color=red>2022/96歳没)です。
丹波哲郎の海賊の統領役はあまりに漫画チックで笑
えますが(洋画の影響?)、これでも作品全体としては新東宝作品群の中では相対的にみてゴージャスな方
と言ってよく(この作品は'60年の新東宝のお正月映画であり、新東宝は翌'61年に倒産する)、三原葉子の
ベリーダンスもどきの踊り(これも洋画の影響?)が見ることができるなど、「珍品」的意味合いで星1個オマケという感じ

(●映画評論家の春日太一氏が「週刊文春」2023年6月22日号「春日太一の木曜邦画劇場」で「女奴隷船」を取り上げ、「まるで漫画『ワンピース』からそのまま飛び出してきたような個性的
なキャラクターたちが、所狭しと暴れまくる。」と評していた。そう言えば、その「ONE PIECE」の劇場版の「FILMシリーズ」の第4作「ONE PIECE FILM RED(フィルム・レッド)」('22年/東映)を昨年['22年]観たが、メインヒロインは"世界の歌姫"ウタで、歌唱部分はAdoが担当。歌唱力はあると思ったが、ウタのキャラクターが「世界中の苦しんでいる人々を自分の歌で幸せにしよう」と考えるのは結構だけど、"独善"が目立つように思え、子どもと観に行ったということもあり、少し気になった。東映が配給した映画で初の興収200億円突破の映画となったそうで、興行的には成功を収めたが、個人的には△評価。)

「仁義なき戦い 〈シリーズ第1作〉」●制作年:1973年●監督:深作欣二●脚本:笠原和夫●撮影:吉田貞次●音楽:津島利章●原作:飯干
晃一●時間:99分●出演:菅原文太/松方弘樹/田中邦衛/金子信雄/梅宮辰夫/成田三樹夫/渡瀬恒彦/曽根晴美/川地民夫/田中邦衛/名和宏/内田朝雄/伊吹吾郎/川谷拓三/中村英子/木村俊恵/渚まゆみ/内田朝雄/三上真一郎/高野真二/高宮敬二/林彰太郎/中村錦司/野口貴史/大前均/志賀勝/岩尾正隆●公開:1973/01●配給:東映●最初に観た場所:吉祥寺東映(83-07-09)(評価:★★★☆)●併映:「仁義なき戦い 広島死闘篇」/「仁義なき戦い 代理戦争」/「仁義なき戦い 頂上作戦」/「仁義なき戦い 完結篇」(何れも深作欣二) 


「仁義なき戦い 広島死闘篇」●制作年:1973年●監督:深作欣二●脚本:笠原和夫●撮影:吉田貞次●音楽:津島利章●原作:飯干晃一●時間:100分●出演:菅原文太/前田吟/松本泰郎/司裕介/金子信雄/木村俊恵/名和宏/成田三樹夫/北大路欣也/山城新伍/宇崎尚韶/笹木俊志/木谷

邦臣/小池朝雄/堀正夫/遠藤辰雄/国一太郎/川谷拓三/藤沢徹夫/白川浩二郎/千葉真一/大木晤郎/室田日出男/八名信夫/志賀勝/広瀬義宣/北川俊夫/加藤嘉/中村錦司/梶芽衣子●公開:1973/04●配給:東映●最初に観た場所:吉祥寺東映(83-07-09)(評価:★★★☆)
前田吟(広能組若衆・島田幸一)/千葉真一(大友組組長・大友勝利)/加藤嘉(大友連合会々長・大友長次)


戦争」●制作年:1973年●監督:深作欣二●脚本:笠原和夫●撮影:吉田貞次●音楽:津島利章●原作:飯干晃一●時間:102分●出演:菅原文太
/小林旭/渡瀬恒彦/山城新伍/池玲子/金子信雄/木村俊恵/成田三樹夫/加藤武/山本麟一/川谷拓三/北村英三/汐路章/内田朝雄/遠藤辰雄/室田
日出男/大前均/野口貴史/曽根晴美
/名和宏/丹波哲郎/梅
宮辰夫/田中邦衛●公開:1973/09●配給:東映●最初に観た場所:吉祥寺東映(83-07-09)(評価:★★★☆)

「仁義なき戦い 頂上作戦」●制作年:1974年●監督:深作欣二●脚本:笠原和夫●撮影:吉田貞次●音楽:津島利章●原作:飯干晃一●時間:101分●出演:菅原文太/梅宮辰夫/黒沢年男/田中邦
衛/小林旭/松方弘樹/堀越光恵/木村俊恵/中原早苗/渚まゆみ
/金子信雄/小池朝雄/山城新伍/加藤武/夏八
木勲/遠藤太津朗/内田朝雄/長谷川明男/小倉一郎/葵三津子/城恵美/八名信夫/汐路章/室田日出男/鈴木瑞穂/野口貴史/小林稔侍/岡部正純/高月忠/白川浩二郎/有川正治●公開:1974/01●配給:東映
●最初に観た場所:吉祥寺東映(83-07-09)(評価:★★
★☆)

「仁義なき戦い 完結篇」●制作年:1974年●監督:深作欣二●脚本:高田宏治●撮影:吉田貞次●音楽:津島利章●原作:飯干晃一●時間:98分●出演:菅原文太/伊吹吾郎/野口貴史/寺田誠/桜木健一/松方弘樹/唐沢民賢/白川浩三郎/小林旭/北大路欣也/西田良/曽根晴美/成瀬正孝/宍戸錠/山田吾一/誠直也/織本順吉/高並功/八名信夫/山城新伍/木谷邦臣/田中邦衛/国一太郎/川谷拓三/金子
信雄/岩尾正隆/鈴木康弘/天津敏/内田朝雄/野川由美子/藤浩子/中原早苗/橘麻紀/賀川雪絵●公開:1974/06●配給:東映●最初に観た場所:吉祥寺東映(83-07-09)(評価:★★★☆)

「女奴隷船」●制作年:1960年●監督:小野田嘉幹●製作:大蔵貢●脚本:田辺虎男●撮影:山中晋●音楽:渡辺宙明●原作:舟崎淳「お唐さん」●時間:83分●出演:菅原文太/三原葉子/三ツ矢歌子/丹波


「ONE PIECE FILM RED」●制作年:2022年●監督:谷口悟朗●脚本:黒岩勉●音楽:中田ヤスタカ(主題歌:Ado「新時代」(オープニングテーマ・劇中歌)/Ado「風のゆくえ」(エンディングテーマ・劇中歌)●原作:尾田栄一郎●時間:115分●出演(声):田中真弓/中井和哉/岡村明美/山口勝平/平田広明/大谷育江/山口由里子/矢尾一樹/チョー/宝亀克寿/名塚佳織/Ado/津田健次郎/池田秀一●公開:2022/08●配給:東映●最初に観た場所:OSシネマズ ミント神戸(22-08-15)(評価:★★☆)
あんかけの時次郎(藤田まこと)は、喧嘩は弱いがハッタリをきかすのは得意な浪花っ子ヤクザ。非力ゆえにヤクザ連中から干された際に、口八丁・手八丁の小坊主・珍念(白木みのる)と知り合う。当時の殺し屋連中の間では、清水次郎長を斬って日本一になろうという気運が盛んで皆が清水を目指していたため、時次郎らも清水へ向かう。途中ハッタリで殺し屋連中の首領となった時次郎だったが、次第に怖くなって金を持って逃げようとしたのがバレる。運良く追手の殺し屋を斬ることが出来て難を逃れたと思いきや、今度はすっかりカラ自信を回復してしまった時次郎、珍念の止めるのも聞かず、次郎長を斬るため再び徒党を組んで清水へ向かう。ところが清水に来てみると、次郎長一家は食中毒に見舞われていて、次郎長を斬るつもりがその助太刀をするはめに―。
TVコメディ番組「てなもんや三度笠』は、1962(昭和37)年5月から1968(昭和43)年3月までTBS系列で放送され(制作はABC朝日放送)、平均視聴率は関東地区26.6%、関西地区37.5%、最高視聴率は関東地区42.9%、関西地区64.8%('66年2月20日放送)と「西高東低」でしたが、何れにせよスゴイ数字。
TVドラマの方は藤田まこと(1933-2010/享年76)の出世作で、藤田まことが番組のオープニングで、小コントの
後「"俺がこんなに強いのも、あたり前田のクラッカー!"」というフレーズを発しながら、テレビカメラの前に前田製菓のクラッカーを差し出すCMで、そのクラッカーも人気商品となりました(後に「あたり前田のクラッカー」という商品名になった)。
映画版は、セット撮影だけでなく自然を背景としたロケも行っていて、スケールは大きくなっており、黒澤明の「
たいな箇所がある)。しかしながら、逆に、舞台劇としての軽妙な面白さは削がれている印象も受けます。TVアニメの劇場版作品などにもありがちですが、TVで観ている分には乾いた笑いが楽しめるところを、最後、無理矢理ウエットな気持ちにさせられてしまうというのはシンドイかな(時次郎と珍念の互いを思い合う気持ちのようなものがラストで強調されていている)。全体としては、キレイに纏めすぎてパンチ力不足という感じでしょうか。
但し、当時の関西喜劇人が多く出演しているという点で、ああ、こんな人も出ているのか、という意味での見所は多いです。財津一郎はまだ登場していませんが、平参平、大村崑、芦屋雁之助、芦屋小雁、茶川一郎、トニー谷、堺駿二(堺正章の父)、夢路いとし・喜味こいし等々、それぞれの演技やギャグも賑やかしい限りです。そんな中、花菱アチャコが清水次郎長役を、ノーギャグで時代劇の親分そのままに演じているのが印象的でした。
「てなもんや三度笠」(映画版)●制作年:1963年●監督:内出好吉●脚本:野上龍雄●撮影:羽田辰治●原作:香川登志緒●時間:81分●出演:藤田まこと/白木みのる/平参平/大村崑/大泉滉/芦屋雁之助/芦屋小雁/トニー谷/花菱アチャコ/茶川一郎/若水ヤエ子/夢路いとし/喜味こいし/秋田Aスケ/秋田Bスケ/坂本スミ子/鉄砲光三郎/赤木春恵/香山武彦●公開:1963/06●配給:東映●最初に観た場所:京橋フィルムセンター(05-02-18)(評価:★★★) 





戦後間もない京都。新任教師の谷村清吉(堀雄二)は、精神薄弱児を集めた「特別学級」の担任になるが、想像以上に困難だと知り辞めたいと申し出る。しかし杉田校長(笠智衆)に説得され、 2年という期限付きの条件で引き受ける。はじめはどう教育していいのかわからない谷山は、絵ばかり書いて過ごすが、子供達と触れ合ううちに意識が変化する―。
「手をつなぐ子等」('48年/大映)に続く稲垣浩監督作品で、「手をつなぐ子等」は、知的障害児の研究家・田村一二の原作を故・伊丹万作が脚色した遺作シナリオを、稲垣浩が監督したもので、この「忘れられた子等」も田村一二が原作ですが、独立した一つの物語となっています。
最初のうちは、気の乗らないまま特別学級の担任となった谷山は、黒板の隅に校長との約束の2年間の残日数を書いて、とにかく早いとこ2年間過ぎてしまわないかなあという感じで、教室の窓から野外スケッチばかりして授業時間を過ごします。しかし、子供たちの顔を洗ってやったりしているうちに徐々に彼らに愛情を抱くようになります。
14,5人の特殊学級の生徒の中には、木登りの名人、歌の天才少女、算数の天才少年、自動車狂の少年、泣虫、理屈家、正義派と色々な能力・個性を持った子等がいて、彼らのそうした能力を社会に活かすことの難しさを知りながらも、谷村の心は、次第に子供等のことで占められていき、一人の男児が一週間近く欠席したのが、谷村の風邪が治るようにと金光詣を続けて発熱したためと知って、谷村の心は完全に教育に目覚めます。
約束の2年が経ったため、校長がその旨を告げようとすると、谷村の方から「まさか辞めさせるつもりではないでしょうね」と言い寄る場面は感動的で、谷村役の掘雄二(1922-1979/享年56)は、早稲田大学政経学部卒、'46年デビューの東宝ニューフェイスでしたが、この作品の教師役はハマっているなあと(この人は後にテレビドラマ「七人の刑事」('61 -'69年/TBS)で赤木係長を演じることになる)。一方、笠智衆(1904-1993/享年88)は


「忘れられた子等」●制作年:1949年●監督・製作・脚本:稲垣浩●撮影:安本淳●音楽:西梧郎●原作:田村一二●時間:86分●出演:掘雄二/笠智衆/泉田行夫/岩田直二/葛木香一/浅野光男/葉山富之輔/松浦築枝/滝沢静子/木下サヨ子/宮川喜美枝●公開:1949/10●配給:新東宝(評価:★★★☆) 






(●2013年に石井裕也監督、松田龍平主演で映画化され、第37回日本アカデミー賞で最優秀作品賞をはじめ6部門の最優秀賞を受賞、石井裕也監督は芸術選奨新人賞も受賞したほか、主演の松田龍平をはじめとするキャストやスタッフも多くの個人賞を得た。原作では年代を特定していないが、映画では松田龍平演じる主人公・馬締が辞書編集部に配転になったのが1995年で、原作で後日譚として扱われている部分が

その12年後となっている。細部での改変はあるが、全体としては原作のストーリーを比較的忠実に追っている感じで、松田龍平、宮﨑あおい、オ
ダギリジョー、黒木華といった若手の俳優陣も頑張っているが、加藤剛、小林薫、伊佐山ひろ子、八千草薫といったベテランが脇を固めているのが大きく、特に、加藤剛の「先生」は印象的だった。そもそも、原作が、その後数多く世に出た"お仕事系"小説のどれと比べても優れているため、原作の良さに助けられている部分もあるが、少なくとも原作の持ち味を損なわずに活かしているという点で良かったと思う。)
「舟を編む」●制作年:2013年●監督:石井裕也●プロデューサー:土井智生/五箇公貴/池田史嗣/岩浪泰幸●脚本:渡辺謙作●撮影:藤澤順一●音楽:渡邊崇●時間:133分●出演:松田龍平/宮﨑あおい/オダギリジョー/黒木華/渡辺美佐子/池脇千鶴/鶴見辰吾/伊佐山ひろ子/八千草薫/小林薫/加藤剛/宇野祥平/森岡龍/又吉直樹/斎藤嘉樹/波岡一喜/麻生久美子●公開:2013/04●配給:松竹=アスミック・エース(評価:★★★★)
●2024年ドラマ化 【感想】2024年2月18日から4月21日まで、NHK-BSプレミアム4Kの「プレミアムドラマ」枠で池田エライザと野田洋次郎の主演でドラマ化(この枠で前回は、篠田節子の2008年刊行の『
マ向きではないかも)。その馬締を演じてた野田洋次郎はロックバンド「RADWIMPS」のボーカル&ギターだが、まずまずの演技だった。


明治時代の九州小倉。人力車夫・富島松五郎(阪東妻三郎)は、喧嘩好きで通称「無法松」と呼ばれる荒くれ者だが、根は気のいい男。ある時、気の弱い男の子・敏雄(沢村アキオ)を助けてやったことから、その子の父である陸軍大尉・吉岡(永田靖)の家に出入りするようになるが、身分を超えて良き友人となった矢先に大尉は病死、その未亡人(園井恵子)から、幼い敏雄を男らしく育てられるか不安だと訴えられ、後見人を買って出たその日から、彼の未亡人とその息子に対する無私の献身の日々が始まる―。
小学校の運動会でも、父兄参加の徒競争ってあったんだなあ。松五郎が小倉の祇園太鼓を叩くシーンは有名ですが、久しぶりに再見して、運動会でも車夫の面目躍如だったことを思い出しました(このシーンがかなり漫画チックに撮られているのも、今思えば計算づくだったようだ)。
この物語には2つの重要な関係性があるように思え、1つは、少年の成長に影響を及ぼした父以外の男という関係性であり、もう1つは、松五郎の未亡人に対する、究極の「忍ぶ恋」であると言えるのではないかと。但し、「前者」については、大人になった少年の振り返りという視点はなく、やや弱い感じもしましたが、元々最初からこの2つの関係性を拮抗させるつもりで作られたのではなかったのかもしれません(この作品は、伊丹万作が自ら手掛けたシナリオを、病臥に伏した伊丹に代わり稲垣浩が監督した)。
と言うのは、「後者」について、制作当初は、松五郎が未亡人にその想いを打ち明けるという場面があったのが、時局柄、軍人の未亡人の恋愛は戦地の将兵の士気を削ぐと考えられ、内務省の検閲でカットされたそうで(その部分のフィルムはそのまま逸失し、スチールしか残っていない)、こうなると、「忍ぶ恋」のニュアンスはやや違ってくるように思えます。
つまり、松五郎自身は、自分の敏雄少年に対する思いやりの背後に、未亡人に対する自らの想いがあることをよく認識していたということであり、また、そうした自分を卑しいと考え、その"罪"を告白するような感じで、未亡人に想いを打ち明けたということではないかと思われます(こうなると、告白と言うより懺悔に近い)。
因みに、未亡人を演じた園井恵子(1913-1945)は、軍隊慰問公演で演劇「無法松の一生」を中国地方で巡回公演中、広島で原爆により被曝、原爆症による苦悶のうちに半月後に32歳の若さで亡くなっており(その時の様子は、新藤兼人監督のセミドキュメンタリー「さくら隊散る」('88年)に詳しく描
かれている)、また、幼少の敏雄を演じた沢村アキオは、後の長門裕之(1934-2011)であり、こちらは、つい先だって(今年['11年]5月)その訃報に触れたところです(享年77)。
「無法松の一生」●制作年:1943年●監督:稲垣浩●製作:中泉雄光●脚本:伊丹万作●撮影:宮川一夫●音楽:西梧郎●原作:岩下俊作「富島松五郎伝」●時間:89分(99分)●出演:阪東妻三郎/月形龍之介/園井恵子/沢村アキオ(長門裕之)/永田靖/川村禾門/杉狂児/山口勇/葛木香一/尾上華丈/香川良介/二葉かほる/小宮一晃/小林叶江/町田仁/荒木忍/横山文彦/戸上城太郎/水野浩/葉山富之輔/浮田勝三郎/滝沢静子/春日清/大川原左雁次/志茂山剛/小池柳星/駒井耀●公開:1943/10●配給:映画配給社(大映京都)(評価:★★★★) 

ったトランクを脇坂に渡し、脇坂の秘密を守ることと引き換えに、5年後
に刑期を終え出所するまでその金を預かって欲しいと言う。それから4年後、匠子が有名化粧品会社社長と結婚してしまったことを知った脇坂は絶望し、速水から預かった金を1年で使い切って後は自殺をしようと考え、月百万円で女を次々と買うという彼の生活が始まる―。
原作は山田風太郎の『棺の中の悦楽』で、大島渚監督にしては珍しく("巨匠"とか言われる以前の作品ということもあるためか)ストーリー性が前面に出たサスペンス・ドラマ風作品であり、導入部は面白かったです(カラー作品なのだが、80年代に映画館で観た時は、すでにかなりフィルムが色褪せていた)。
脇坂が最初に愛人契約をしたのが、どことなく翳のあるバーホステス眸(野川由美子)、次が夫との不幸な家庭生活から逃れられないアルサロの女・志津子(八木昌子)、3人目は研究医のインテリ女圭子(樋口年子)、そして最後が唖で知的障害のある娼婦マリ(清水宏子)―何れも女優らがそれぞれの持ち味を出しているという感じがしましたが(演技自体は野川由美子がいいが、じっくり描かれているのは樋口年子、役柄的には清水宏子がいい)、それらが必ずしも全体のオムニバス効果に繋がっておらず、時間の経過とともに平板な印象を受けるようになってしまうのはどうしてかなあ。
1年の間に大金を女に注ぎ込み「悦楽」を汲み上げるという脇坂のプランに、自分だったらこんなことはしないだろうなあとマトモに考えてしまったのも、今1つノリきれなかった原因かも―。結局、脇坂は女性たちに「悦楽」ではなく、匠子の面影を求めていたように思え、女性の肉体を得られても心が得られなければ気持ちは満たされず、女性遍歴を辿っていくと次第に"本来目的"に近づきつつあったようにも思えますが、色々ごたごたもあって、いずれの女性の前からも彼の方から去っていくことになります。
野川由美子ら4人の女を演じた女優たちに比べると、加賀まりこはやや影が薄いと言うか、最後にもう一度出てきて、ああ、そういうことだったのかと思わせる部分はありますが、ミステリとしてもイマイチだし、再登場によって凄味が増すとかいったことはありません。
「悦楽」●制作年:1965年●監督・脚本:大島渚●撮影:高田昭●音楽:湯浅謙二●原作:山田風太郎「棺の中の悦楽」●時間:96分●
出演:中村賀津雄/加賀まりこ/野川由美子/清水宏子/樋口年子/八木昌子/
野大悟/佐藤慶●公開:1965/08●配給:松竹●最初に観た場所:池袋・文芸地下(82-11-03)(評価:★★☆)●併映:「儀式」(大島渚)



江戸の伊達家の大名屋敷に着任した赤西蠣太(片岡千恵蔵)は、風采が上がらず胃弱のお人好し侍だが、実は彼は、江戸にいる伊達兵部(瀬川路三郎)と原田甲斐(片岡千恵蔵・二役)による藩転覆の陰謀の証拠を掴むという密命を帯びて送られてきた間者(スパイ)であり、彼の目的は、同じく間者として送り込まれていた青鮫鱒次郎(原健作)と集めた様々な証拠を、無事に国許へ持ち帰ることだった。江戸藩邸を出奔する理由として蠣太らは、蠣太が邸内随一の美人である小波(毛利峯子)に落とし文をして袖にされ、面目を保てなくなったというストーリーを練る―。
原作は、伊達騒動に材を得た志賀直哉が1918(大正7)年9月に『新小説』に発表した時代小説で、志賀直哉が生涯において書いた時代小説はこの作品だけだそうですが、伊丹万作が二枚目役者・片岡千恵蔵に醜男・赤西蠣太の役を配して、ユーモラスな作品に仕上げています。
角川文庫、新潮文庫、ちくま文庫などに収められいる原作は20ページほどの小品ですが、それが1時間半近い作品になっているわけで、蠣太と隣人との武士の迷い猫の押し付け合いや、なかなかラブレターがうまく書けない蠣太の様子などのユーモラスなリフレインを入れて多少は時間を稼いでいるものの(それらも赤西蠣太の人柄を表すうえで無駄な付け加えという風には感じない)、概ね原作に忠実に作られていると見てよく、ある意味、志賀直哉の文体が、如何に簡潔で圧縮度が高いものであるかを示していることにもなっているように思えました。
赤西蠣太(実は偽名)の名は原題通りですが、原作における「銀鮫鱒次郎」が原健作が演じる「青鮫(蒼ざめ?)鱒次郎」になっているほか、志村喬が演じる「角又鱈之進」など、主要な登場人物の名前に魚編の文字を入れるなどして、原作の"遊び"を更に増幅させています(意外なことに蠣太に恋心を抱いていたことが判明する「小波」(ささなみ)は、原作では「小江」(さざえ)。何だか"磯野家"みたいになってしまうけれど、同じ海関係なのでこのまま使っても良かったのでは?)。

しかし、この映画の白眉とも言える最大の"遊び"は、謀反の黒幕である原田甲斐(山本周五郎の『樅の木は残った』ではこの人物に新解釈を加えているが、この作品では型通りの「悪役」として描かれている)、つまり主人公にとってのある種「敵役」を演じているのもまた片岡千恵蔵その人であるということです。当時の映画作りにおいて一人二役はそれほど珍しいことではないですが、これはよく出来ている!
"赤西蠣太"としての演技が、同僚の下級武士の演技より一段とすっとぼけた現代的なサラリーマンのような感じであるのに対し(千恵蔵の演技だけ見ていると、とても戦前の作品とは思えない)、"原田甲斐"としての台詞は、官僚的な上級武士の中でも目立って大時代的な歌舞伎調の文
語になっているという、この対比が面白いと言うか、見事と言っていいくらいです。事前の予備知識がなければ、同じ役者が演じているとは絶対に気づかないかも。因みに片岡千恵蔵は、2年後の「
原作は、伊達騒動の経緯自体は僅か1行半で済ませていますが、映画では、当時から見ても更に時代の旧い無声映画風のコマ落とし的描写で早送りしていて、伊達騒動自体は周知のこととして細かく触れていないという点でも原作に忠実です。
一方で、「蠣太と小江との恋がどうなったかが書けるといいが、昔の事で今は調べられない。それはわからず了いである」として原作は終わっていますが、映画では、蠣太が"小波"の実家を訪ね、結婚行進曲(作中にもショパンのピアノ曲などが使われている)が流れるところで終わるという、微笑ましいエンディングになっています。
「赤西蠣太」●制作年:1936年●監督・脚本:伊丹万作●製作:片岡千恵蔵プロダクション●撮影:漆山裕茂●音楽:高橋半●原作:志賀直哉「赤西蠣太」●時間:84分●出演:片岡千恵蔵/杉
山昌三九/

●田中小実昌(作家・翻訳家,1925-2000)の推す喜劇映画ベスト10(『








「お葬式」('84年/ATG)で映画界に旋風を巻き起こした伊丹十三監督でしたが、個人的には続く第2作「

趣旨のことを後に述べていますが、確かに、鬼沢さえも黒幕に操られている駒の1つに過ぎなかったという展開は重いけれども、ラストは前作の方がスッキリしていて個人的には「1」の方がカタルシス効果が高かったかなあ。監督自身は、高い娯楽性と巨悪の存在を一般に知らしめることとの両方を目指したのでしょう。




「県庁の星」●制作年:2006年●監督:西谷弘●製作:島谷能成/
亀山千広/永田芳男/安永義郎/細野義朗/亀井修朗●脚本:佐藤信介●撮影:山本英夫●音楽:松谷卓●原作:桂望実「県庁の星」●時間:131分●出演:織田裕二/柴咲コウ/佐々木蔵之介/和田聰宏/紺野まひる/奥貫薫/井川比佐志/益岡徹/矢島健一/山口紗弥加/ベンガル/酒井和歌子/石坂浩二●公開:2006/02●配給:東宝(評価:★★★)


「スーパーの女」●制作年:1996年●監督・脚本:伊丹十三●製作:伊丹プロダクション●撮影:前田米造/浜田毅/柳島克巳/高瀬比呂志●音楽:本多俊之●原作:安土敏「小説スーパーマーケット」●時間:127分●出演:宮本信子/津川雅彦/三宅裕司/小堺一機/伊東四朗/金田龍之介/矢野宣/六平直政/高橋長英/あき竹城/松本明子/山田純世/柳沢慎吾/金萬福/伊集院光●公開:1996/06●配給:東宝(評価:★★★★)
「お葬式」●制作年:1984年●監督・脚本:伊丹十三●製作:岡田裕/玉置泰●撮
影:前田米造●音楽:湯浅譲二●時間:124分●出演:山
崎努/宮本信子/菅井きん/財津一郎/大滝秀治/江戸家猫八/奥村公廷/藤原釜足/高瀬春奈/友里千賀子/尾藤イサオ/岸部一徳/笠智衆/津川雅彦/佐野浅/小林薫/長江英和/井上陽水●公開:1984/11●配給:ATG●最初に観た場所:池袋日勝文化 (85-11-04)(評価:★★★☆)●併映「逆噴射家族」(石井聰互)




「マルサの女」●制作年:1987年●監督・脚本:伊丹十三●製作:玉置泰/細越省吾●撮影:前田米造●音楽:本多俊之●時間:127分●出演:宮本信子/山崎努/津川雅彦/大地康雄/桜金造/志水
季
里子/松居一代/室田日出男/ギリヤーク尼ヶ崎/柳谷寛/杉山とく子/佐藤B作/絵沢萠
子/山下大介/橋爪功/伊東四朗/小沢栄太郎/大滝秀治/芦田伸介/小林桂樹/岡田茉莉子/渡辺まちこ/山下容里枝/小坂一也/打田親五/まる秀也/ベンガル/竹内正太郎/清久光彦/汐路章/上田耕一●公開:1987/02●配給:東宝





徹他/マッハ文朱/加藤善博/浅利香津代/村井のりこ/岡本麗/矢野宣/笠智衆/上田耕一/中村竹弥/小松方正●公開:1988/01●配給:東宝●最初に観た場所:新宿シネパトス (88-03-12)(評価:★★★☆)●併映「マルサの女」(伊丹十三)




小林多喜二はこの小説により発表の同年には勤務先の北海道拓殖銀行を辞め、翌'30年には不敬罪で逮捕・起訴され'31年には共産党に入党していますが、入党直後に志賀直哉(1883‐1971)の奈良の自邸を訪ね、創作の指導を仰いでいます。
当時プロレタリア文学作家というのは結構な数がいて、「戦旗」で活躍した作家には
「党生活者」の内容は殆ど小林多喜二が自らが体験したことに基づくものと思われ(この小説は、小林多喜二が執筆過程において逮捕され虐殺死したため、前編で終わっている)、今井正(1912‐1991)監督の映画「小林多喜二」('74年/多喜二プロダクション)は、この「党生活者」をかなりの部分において下敷きにして作られていたように思います。
小説の中では特高警察の眼を逃れるため同志の女性の家に匿って貰っていたようになっていますが、映画では、通っていた廓の薄幸の酌婦・田口タキ(当時17歳)を足抜けさせて内縁の妻にした作りとなっていて、これは実際にあったことですが、但しその頃は多喜二はまだ拓銀に勤めていたわけであり、特高警察に本格マークされる前のことと思われます。映画は、室内シーンなどにおいて、周辺の照明を抑えスポットライトを当てたような映像で、時代のムードを旨く醸し出していた佳作でしたが、映画の最後に、小林多喜二の文学碑の建立に、思想的立場の全く異なる伊藤整が尽力したことが紹介されていました。伊藤整は小樽高商(現小樽商大)の1学年後輩でした。因みに、先に述べた志賀直哉も、多喜二の文学碑建立の発起人に名を連ねています。
尚、多喜二の生涯を描いた映像化作品では、池田博穂監督のドキュメンタリー映画「時代(とき)を撃て・多喜二」('08年)や、北海道放送のTVドキュメンタリー「いのちの記憶-小林多喜二・二十九年の人生」('08年)などがあり、また「蟹工船」そのものも、'53年に俳優の山村聡が監督している作品がある外、'09年に再度の映画化が予定されているようです。
小林多喜二は1930年に上京してからは、芥川龍之介(1892‐1927)を真似した髪形にしていたそうですが(前年に東大生だった宮本顕治が芥川龍之介を批判した「敗北の文学」を発表しているのだが)、女性にはかなりモテたようで、また、普段から冗談で周囲を笑わすことの多い人柄だったとのこと、この重い雰囲気の両作品にも、随所にユーモラスな表現が見受けられます。

時間:119分●出演:山本圭/中野良子/森幹太/北林谷栄/南清貴/佐藤オリエ/森居利昭/富士真奈美/津田京子/杉山とく子/寺田誠/滝田裕介/長山藍子/下絛正巳/地井武男/鈴木瑞穂/悠木千帆(樹木希林)/横内正(ナレーター)●公開:1974/02●配給:多喜二プロダクション(評価:★★★★)






「サード」('78年3月/ATG)は、少年院にいる"サード"という少年の、大人達から浮ついた励ましの言葉をかけられたところで決して満たされることのない鬱々とした日々を描いた作品。彼は元々、「大きな町へ行く」ことを夢見る高校生男女の4人組の1人で、資金稼ぎに始めた売春がもとで事件を起こし少年院へ送られてきたのだった―。
ただ、"オシ"という無口な少年をはじめ、"トベチン"、"アキラ"、"漢字"、脱走を試みる"ⅡB"といった少年達は皆、自閉的ながらもユニークで、こういうキャラは寺山の半自伝的作品にもあったかも(そう言えば"短歌"と呼ばれている少年もいた)。
永島敏行(1956年生まれ。現在、俳優兼「農業コンサルタント」?)は、この作品が映画初出演でしたが、演技はそれほど悪くないけれども良くもないと言うか、あまり陰が感じられず、同年に主演した藤田敏八(1932‐1997/享年65)監督の「
「サード」は、主人公を演じた永島敏行よりも、主人公の女友達役の森下愛子(1958年生まれ、この作品が映画初出演。吉田拓郎と結婚し、いったん芸能活動を休止したが、その後また復帰し、宮藤官九郎脚本の作品の常連に)の陰のある演技が良く、「帰らざる日々」で主人公の青年が高校時代に思いを寄せた喫茶店のウェイトレス役の浅野真弓(1957年生まれ)や、中学時代の同級生役の竹田かほり(1958年生まれ、同年の「桃尻娘 ピンク・ヒップ・ガール」('78年4月/日活)が映画初主演)などの演技も良かったように思います(橋本治原作の「桃尻娘 ピンク・ヒップ・ガール」は思春期の女の子をヴィヴィッドに描いていて単純に面白かった)。



寺山修司は「サード」以前にも、羽仁進監督の「初恋・地獄変」('68年/ATG)の脚本を羽仁進と共同で書いていて、これは、救護院にいた少年が彫金師に引き取られて成長する様を、少年の過去と現在を交互に織り交ぜ、そこにインタビューや隠し撮りなどのドキュメンタリーの手法も入れて描いたものですが、こちらは「サード」と違って、寺山の色が薄いと言うより、どの部分が寺山修司でどの部分が(多分ゴダールの影響を受けたらしい)羽仁進の部分かということが、観ていて何となく分かってしまう―その点では、必ずしも成功したコラボだったようには思えませんでした。
出演俳優の1人だった

「![サード ≪HDニューマスター版≫ [DVD].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%89%20%E2%89%AAHD%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E7%89%88%E2%89%AB%20%5BDVD%5D.jpg)
作:前田勝弘●脚本:
間:103分●出演:永島敏行/吉田次昭/森下愛子/志方亜紀子/片桐夕子/峰岸徹/内藤武敏/島倉千代子/西塚肇/根本豊/池田史比古/佐藤俊介/鋤柄泰樹/若松武 /飯塚真人/宇土幸一/渋谷茂/尾上一久/藤本新吾/岡本


「
夏たより●公開:1978/08●配給:日活●最初に観た場所:飯田橋ギンレイホール(79-05-23)●2回目:神田・神保町シアター(22-08-28)(評価:★★★★)●併映(1回目):「

「桃尻娘 ピンク・ヒップ・ガール」●制作年:1978年●監督:小原宏裕(おはらこうゆう)●製作:岡田裕●脚本:金子成人●撮影:森勝●音楽:長戸大幸●原作:
内田裕也/遠山牛/大竹智子/一谷伸江/関悦子/岸部シロー●公開:1978/04●配給:日活●最初に観た場所:池袋文芸地下(79-06-03)(評価:★★★☆)●併映:「ふりむけば愛」(大林宣彦)

「初恋・地獄篇」●制作年:1968年●監督:羽仁進●脚本:脚本:
「やさしいにっぽん人」●制作年:1971年●監督:東陽一●製作:高木隆太郎●脚本:東陽一/前田勝弘●撮影:池田伝一●音楽:東陽一/田山雅光●時間:112分●出演:河原崎長一郎/緑魔子/伊丹十三/伊藤惣一/石橋蓮司/蟹江敬三/渡辺美佐子/寺田柾/横山リエ/大辻伺郎/平田守/東山千栄子/桜井浩子/秋浜悟史/陶隆司●公開:1971/03●配給:東プロ●最初に観た場所:●最初に観た場所:●最初に観た場所:新宿・紀伊國屋ホール(82-03-27)(評価:★★★☆)●併映:「日本妖怪伝サトリ」(東陽一) 



緑魔子 in「





「祭りの準備」('75年/ATG)は、昭和30年代の高知を舞台に、1人の青年がしがらみの多い土地の人間関係に圧迫されながらも巣立っていく姿を描いた青春映画で、主人公(江藤潤)が信用金庫に勤めながらシナリオライターになることを夢見ていることからも窺えるように、原作は中島丈博の自伝的小説であり、監督は'06年に亡くなった黒木和雄です。


青年がシナリオを書くとセックス描写が頻出し、左翼かぶれの"心の恋人"に「労働者階級をもっときちんと描くべきで、どうしてセックスのことばかり書くの」となじられる始末。そのくせ、彼女はオルグの男性にフラれると、宿直中の青年に夜這いして来て、そこで小火(ボヤ)事件が起きてしまうという、青年同様に彼女自身、青春の混沌の中でちょっと取りとめが無い状態になっています。
こんな状況から脱したいという青年の気持ちがよく分かり、その旅立ちを駅のホームで列車に伴走しながら万歳して見送る、青年の隣家の泥棒一家「中島家」の次男で殺人の容疑をかけられ逃亡の身の男「中島利広」を演じているのが原田芳雄(1940-2011)で、

竹下景子(1953年生まれ、当時22歳)の映画デビュー2作目、主演級は初で、桂木梨江(1955年生まれ、当時20歳)も映画デビュー2作目。この作品は竹下景子のヌードシーンで話題になることがありますが、主人公の青年に夜這いした際の下着姿と引き続く火事の炎の向こうにチラッと見える全裸(半裸?)姿程度で(この頃の彼女は結構コロコロ体型、よく言えばグラマラスだった)、この後清純派で売り出し、"お嫁さんにしたい
女性No.1"などと言われたために以降全くスクリーン上では脱がなくなり(「天の花と実」('77年/テレビ朝日)ではヌードを拒否した)、そんな経緯もあって「祭りの準備」のこのシーンの付加価値が出たのかも? むしろ、この作品で大胆なヌードを見せたのは「中島家」の末娘で男達の性欲の捌け口となっている狂女を演じた桂木梨江の方で、彼女はこの演技で第18回ブルーリボン賞新人賞、第49回キネマ旬報ベスト・テン助演女優賞にノミネートされています。

長崎の軍艦島から漫画家を志望して上京し、遊園地の修理工場で働いている主人公の二十歳の松岡純(江藤潤)は、恋人がいながらその手さえ握らず、通勤電車の中で痴漢行為に耽ける―漫画家を志望で軍艦島から東京に出てきたというところが、脚本家志望で高知・四万十から都会へ行こうとする「祭りの準備」の主人公と似ていますが、ラストまでのプロセスが観ていて気が滅入るくらい暗くて(痴漢行為に耽っているわけだから明るいはずはないが)、脇を固めている俳優陣は非常にリアリティのある演技をしていたものの、イマイチ自分の肌には合わなかったなあ(リアリティがあり過ぎて?)。江藤潤はやはり「祭りの準備」の彼が良かったように思います(「純」はどうして海外でウケたのだろう。外国人には痴漢が珍しいのかなあ。そんなことはないと思うが、クロード・ガニオン監督の「Keiko」('79年/ATG)でも冒頭に痴漢シーンがあった)。
女優のデビュー時乃至デビュー間もない頃のスクリーン・ヌードという点では、「高校生ブルース」('70年/大映)の関根(高橋)惠子(1955年生まれ、当時15歳)、「旅の重さ」('72年/松竹)の高橋洋子(1953年生まれ、当時19歳)、「十六歳の戦争」('73年制作/'76年公開)の秋吉久美子(1954年生まれ、当時19歳)、「恋は緑の風の中」('74年/東宝)の原田美枝子(1958年生まれ、当時15歳)、「青春の門(筑豊篇)」('74年/東宝)の大竹しのぶ(1957年生まれ、当時16歳)、「はつ恋」('75年/東宝)の仁科明子(亜季子)(1953年生まれ、当時22歳)などがありますが(これらの中では、関根惠子と原田美枝子の15歳が一番若くて、仁科明子の22歳が竹下景子と並んで一番遅いということになる)、個人的には、'05年に亡くなった岡本喜八監督の「肉弾」('68年/ATG)の大谷直子(1950年生まれ、当時17歳)が鮮烈でした。

この「肉弾」という作品は、特攻隊員(寺田農)を主人公に据え(「肉弾」とは「肉体によって銃弾の様に敵陣に飛び込む攻撃」のこと)、戦争の悲劇というテーマを扱っていながら、コミカルで悲壮感を(一応は)表に出していないという変わった映画で、映画
自体は、太平洋に漂流するドラム岳の中で魚雷を抱えている(ある意味、既に死んでいる)主人公の回想という形で進行し、主人公が1日だけの外出許可日に古本屋に行くつもりが思わず女郎屋に駆け込んでしまい、そこにいたセーラー服姿の肥溜めに咲いた一輪の白百合のような少女と防空壕の中で結ばれるという、その少女の役が映画初出演の大谷直子でした(その後、NHKの朝の連ドラ「信子とおばちゃん」('69年)でTVデビュー)。
笑えないなあ。岡本監督はその後も自らと同年代の戦中派の心境を独特のシニカルな視点で描き続けますが、「独立愚連隊」('59年)とこの「肉弾」は、そのルーツ的な作品でしょう。「日本のいちばん長い日」('67年)のようなオールスター大作を撮った後に、私費を投じてこのような自主製作映画のような作品を撮っているというのも凄いことだと思います。

「祭りの準備」●制作年:1975年●監督:黒木和雄●製作:大塚和/三浦波夫●脚本:中島丈博●撮影:鈴木達夫●音楽:松村禎三●原作:中島丈博●時間:117分●出演:江藤潤/馬渕晴子/ハナ肇/浜村純/竹下景子/原田芳雄/杉本美樹/桂木梨江/石山雄大/三戸部スエ/絵沢萠子/原知佐子
/真山知子/阿藤海/森本レオ/斉藤真/芹明香/犬塚弘/湯沢勉/瀬畑佳代子/夏海千佳子/石津康彦/下馬二五七/福谷強/中原鐘子/柿谷吉美●公開:1975/11●配給:ATG●最初に観た場所:飯田橋・ギンレイホール(78-07-25)(評価:★★★★☆)●併映:「

高田昭●音楽:一柳慧(1933-2022)●時間:88分●出演:江藤潤/朝加真由美/中島ゆたか/榎本ちえ子/赤座美代子/山内恵美子/田島令子/橘麻紀/花柳幻舟/原良子/江波杏子/小松方正/深江章喜/大滝秀治/安倍徹/小坂一也/小鹿番/
今井健二/森あき子/田中小実昌●公開:1980/12●配給:東映セントラルフィルム●最初に観た場所:新宿昭和館(83-05-05)(評価:★★☆)●併映:「

7月13日新宿3丁目にオープン(前身は1932年開館の洋画上映館「新宿昭和館」)。1956年、昭和館地下劇場オープン。2002(平成14)年4月30日 建物老朽化により閉館。跡地にSHOWAKAN-BLD.(昭和館ビル)が新築され、同ビル3階にミニシアター「K's cinema」(ケイズシネマ)がオープン(2004(平成16)年3月6日)。 

「肉弾」●制作年:1968年●監督・脚本:岡本喜八●撮影:村井博●音
楽:




晃一(主題歌「冬物語」作詞:

寺田農 2024年3月14日未明、肺がんのため81歳で死去。代表作「肉弾」など。出演作「


地方都市の女子中学生たちが、学校のプールに夜中に泳ぎにやってきて、先に来ていた男子生徒にイタズラをするが、度が過ぎて溺死寸前の状態に追い込んでしまう。翌朝、ニュースでは台風の接近を告げていた―。
「台風クラブ」('85年/東宝=ATG)は、'85(昭和60)年の
く描き出した作品。女子中学生役の工藤夕貴が、中学生の日常とそこに潜む思春期の生理的・精神的危うさを演じて秀逸で、何か自分でそうしたものを観察でもしたかのような相米慎二監督の演出が際立っています。実際、女子中学生の私生活を「長回し」で写し撮っているような感じのシーンもあり、今ならば児童保護の名目で規制の対象になりそうな際どい場面もあって、更にストーリー的にも結構どろどろした出来事がありますが、そうしたことも含め、「観察対象」としての距離を置いて撮っているような感じもします。
一過、中学生たちは何事もなかったかのようにまた元気に学校に通い出す―でも実は、台風が来る前に比べぐっと大人に近づいているという、 "大人になるための出来事"を台風に絡めているところが旨く、また、女子中学生の方が男子よりも逞しく描かれているように思いました。人間の自律神経は気圧の変化には敏感で、酸素がたくさんある高気圧だと酸素ストレスで交感神経が緊張して体は興奮して元気になり、逆に雨や台風で低気圧が接近すると、副交感神経が優位に働いて、特に神経痛やリュウマチなどの持病がある人にとっては低気圧は不快感を増幅させるそうですが、思春期にある者の情緒不安定を引き起こすことについても何か科学的根拠があるんじゃないかなあ。
相米慎二(1948‐2001/享年53)監督は、薬師丸ひろ子(当時17歳)主演の「セーラー服と機関銃」('81年)の後に夏目雅子(当時25歳)主演の「
「台風クラブ」では三浦友和が不良っぽい教師役で出ていて、なかなか良かったです。三浦友和は、所謂「百恵・友和ゴールデンコンビ」と言われた作品群で1970年代に二枚目の俳優として10代に大変な人気がありましたが、その百恵・友和のゴールデン・コンビの第8作、大林宣彦監督、ジェームス三木脚本の「ふりむけば愛」('78年/東宝)を友達と観に行って、2人とも途中で眠くなりました。ただ、本作を契機に山口百恵と三浦友和は結婚に踏み切ることを決意したと言われています。2本立てで小原宏裕監督の「
所で料理をしている隣りの部屋でだらしなく寝転がってる三浦友和が、近よってきた恋人に足を絡ませ倒して抱きつく長回しなど、ダメさ加減がよく出ていました(ハードボイルド風よりよりこっちの方がいい)。個人的には、この作品こそが彼のイメージチェンジ作ではないかなと思います(イメチェンって、ただこれまでと違う役をやればいいというものでもなく、新たなキャラを確立させなければならないだけに難しい)。三浦友和はこの作品で、第10回報知映画賞助演男優賞を受賞しています。

一方、工藤夕貴の映画初出演は、この作品の前年の石井聰互監督の「逆噴射家族」('84年/ATG)で(当時13歳)、真面目で小心者のサラリーマン(小林克也)が長期ローンでやっとマイホームを建て、家族4人でそれなりの幸せ気分でいたところに(この家族が変人揃いで皆それぞれ勝手気儘というかバラバラなのだが、その1人が工藤夕貴演じる娘)、郷里からまた変な祖父(植木等)が舞い込んで来て家の中がおかしくなりだし、更にある日、このサラリーマン氏が自宅でシロアリの群れを発見して、マイホームが朽ちるのではとの不安に駆られ、シロアリ駆除に向けて大暴走するというものです。
小林よしのり氏(当時31歳)の原案だそうですが、映画としてはあくまでも石井聰互監督(当時27歳)の映画という感じで、DJ・小林克也の演技は役者並みだし、ちょっと狂い気味の妻役の倍賞美津子や、植木等の怪しい老人ぶりもいいです。
更には工藤夕貴の兄を演じた有薗芳記の電脳オタクぶりも、映画初出演ながら凄かった―ということで、工藤夕貴のぶっ飛び感も、これらに比べるとちょっと弱かったかも知れません("緊縛シーン"(?)に象徴されるように、彼らの被害者的立場という色合いが強い役柄のせいもあったが)。
「逆噴射家族」は海外の映画祭でもグランプリなどを獲っている作品ですが、狂気を描くことが目的化してしまっている面も感じられ、むしろ異価値・異文化的な面で海外に受
けたのではないかなあ。個人的には「台風
クラブ」の方がより好みでしょうか。
「台風クラブ」●制作年:1985年●監督:相米慎二●製作:宮坂進●脚本: 加藤裕司●撮影:伊藤昭裕●音楽:三枝成章●時間:85分●出演:工藤夕貴/三上祐一/大西結花
/三浦友和/佐藤充/寺田農/尾美としのり/鶴見辰吾/紅林茂/松永敏行/会沢朋子/小林かおり/きたむらあきこ/石井富/佐藤浩市(友情出演)●公開:1985/08●配給:東宝=ATG●最初に観た場所:有楽町スバル座(1985/8/31)●2回目:大井武蔵野館(1986/9/20)(評価:★★★★)●併映(2回目):「時代屋の女房」(森崎東) 
「ふりむけば愛」●制作年:1978年●監督:大林宣彦●製作:堀威夫/笹井英男●脚本:



「獣たちの熱い眠り」●制作年:1981年●監督:村川透●脚本:永原秀一●撮影:仙元誠三●
音楽:速水清司●原作:勝目梓●時間:111分●出演:三浦友和/風吹ジュン/なつきれい/宇佐美恵子/石橋蓮司/鹿内孝/峰岸徹/宮内洋/佐藤蛾次郎/阿藤海/安岡力也/草薙幸二郎/中丸忠雄/中尾彬/成田三樹夫/伊吹
吾郎/(以下、特別出演)吉行和子/池波志乃/来栖アンナ●公開:1981/09●配給:東映●最初に観た場所:池袋文芸坐(82-03-21)(評価:★★)●併映:「吼えろ鉄
拳」(鈴木則文)


「逆噴射家族」●制作年:1984年●監督:石井聰互●製作:長谷川和彦/山根豊次/佐々木史郎●脚本:石井聰
亙/小林よしのり/神波史男●撮影:田村正毅●時間:106分●出演:小林克也/倍賞美津子/植木等/工藤夕貴/有薗芳記/岸野一彦/小海とよ子/緒方明/林崎巌/郷守信廣/井上欣
則/高橋佑奈/井手国弘/アレックス・アブラモフ●公開:1984/06●配給:ATG●最初に観た場所:池袋日勝文化劇場(85-11-04)(評価:★★★☆)●併映:「お葬式」(伊丹十三)



③池袋東急 ④池袋スカラ座 ⑮池袋日勝地下劇場 ⑬池袋日勝映画劇場 ⑭池袋日勝文化劇場



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森田芳光(1950-2011)監督・脚本の「家族ゲーム」('83年/ATG)は、家族が食卓に横一列に並んで食事するシーンなど凝ったカットの多い作品でしたが、個人的には、川沿いの団地へ松田優作(1949‐1989/享年40)が演じる家庭教師が小舟に乗って赴く冒頭シーンと、教え子が無事に志望校に合格した後の家族全員の食事の席で、その家庭教師が食卓をぐちゃぐちゃにしてしまうラストが印象的でした。




みではなかったでしょうか。「セーラー服と機関銃」('82年/角川春樹事務所)では相米慎二(1948-2001)監督の魔術的演出に救われていましたが、「探偵物語」では、岸田今日子のような演技達者を起用して脇を固めようとしてはいるものの、そんな演技未熟の薬師丸ひろ子を相手に演技している松田優作の苦闘ぶりが目につきました。玉川大学文学部就学のため一時芸能活動を休止していた薬師丸ひろ子の復帰第一弾を角川事務所が企画した作品であり、あくまでも薬師丸ひろ子が主人公の探偵(ごっこ)物語であって、脇だけ固めても主役があまりに未熟では...。それでも映画はヒットし、ラストの新東京国際空港での松田優作と薬師丸ひろ子の"身長差30センチ"キスシーンは当時話題となったのは、彼女がアイドルとしていかに人気があったかということでしょう。松田優作に関して言えば、TV版の方がハードボイルド・ヒーローでありながらずっこけたような面があるという点で、より"優作らしい"演技だったと言えるかも。
役で蜷川幸雄(1935-2016)が出演し、実際に劇中劇の演出も担当しています。三田佳子がベテランらしい渋い演技を見せ(日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞)、薬師丸ひろ子もそれに触発され
演技開眼したのか、そう悪くない演技でした(高木美保の映画デビュー作でもあり、主人公を陥れようとする敵役だった)。夏樹静子の原作は、その後、テレビドラマとしてそれそれアレンジされながら繰り返し作られることとなります('83年TBS(秋吉久美子主演)、'86年フジテレビ(高峰三枝子主演)、'01年テレビ東京(名取裕子主演)、'10年TBS(菅野美穂主演)、'12年テレビ朝日(武井咲主演))。
因みに、「探偵物語」と「Wの悲劇」の併映作品はそれぞれ「時をかける少女」('83年/角川春樹事務
所)、「天国にいちばん近い島」('84年/角川春樹事務所)でした。共に大林宣彦監督、原田知世主演で、「時をかける少女」は、原作は筒井康隆が学習研究社の「中三コース」1965(昭和40)年11月号にて連載開始し、「高一コース」1966(昭和41)年5月号まで全7回掲載したものであり、原田知世の映画デビュー作でした。
配役発表の時点では原田知世は当時圧倒的人気を誇っていた薬師丸ひろ子
のアテ馬的存在でしたが、「時をかける少女」一作で薬師丸ひろ子と共に角川映画の二枚看板の一つになっていきます。「時をかける少女」は筒井康隆の原作の舞台を尾道に移して、大林監督の「尾道三部作」(他の2作は「転校生」「さびしんぼう」)の第2作目という位置づけになっていますが、後に「SFジュブナイルの最高傑作」とまで言われるようになった原作に対し、原田知世の可憐さだけでもっている感じの映画になってしまった印象がなくもない作品でした。
「尾道三部作」の中でいちばんの秀作と思われる「転校生」('82年/松竹)に比べるとやや落ちるでしょうか。「転校生」は、原作は山中恒(この人も「高一コース」とかにちょっとエッチな青春小説を連載していた)の『おれがあい
神社の階段から転げ落ち、そのはずみで心と身体が入れ替わってしまう話ですが、二人が入れ替わるまでをモノ
れていない」としていますが、(昨年['08年]7月にCXで2度目のテレビ放映されたのを観た)個人的感想は筒井氏の前者と富野氏の後者に近いでしょうか。主人公たちの「告白したい!」という台詞が「SEXしたい!」と自分には聞こえるとまで富野由悠季は言い切りましたが、鋭い指摘だと思います('10年に更にそのアニメの実写版のリメイクが作られている(主演はアニメ版の主人公の声を務めた仲里依紗)。'16年に日本テレビでテレビドラマ化された「時をかける少女」はまたオリジナルに戻っている(主演は黒島結菜)。テレビドラマ化はこれが5回目になる)。
「Wの悲劇」の併映作品だった「天国にいちばん近い島」は、個人的にはイマイチもの足りない映画でしたがこれもヒットし、舞台となったニューカレドニアに初
めてリゾート・ホテルが建ったとか(バブルの頃で、日本人観光客がわっと押しかけた)。原作者・森村桂(1940-2004)が行った頃はリゾート・ホテルなど無かったようです。舞台は美しいけれど、バブルは崩壊したし、原作者が自殺したということもあって、今となってはちょっと侘しいイメージもつきまとってしまいます(森村桂の自殺の原因はうつ病とされている)。![それから [DVD].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E3%81%9D%E3%82%8C%E3%81%8B%E3%82%89%20%5BDVD%5D.jpg)
「家族ゲーム」の後、松田優作が森田芳光監督と再び組んだ「それから」('85年/東映)は、評論家の評価は高かったですが(松田優作は文芸作品はこれが初めてではなく、「家族ゲーム」「探偵物語」の前年、泉鏡花原作、鈴木清順監督の「
森田芳光監督には、「の・ようなもの」('81年/N.E.W.S.コーポレーション)というある若手の落語家の日常と恋を描いた劇場用映画デビュー作があり、映画のつくりそのものはやや荒削りな面もありましたが、落語家の世界の描写に関しては丹念な取材の跡がみてとれ(森田監督は日大落研出身)、落語家志望の青年に扮する伊藤克信のとぼけた個性もいいし、彼が通うソープ嬢エリザベス役の秋吉久美子も"軽め"のしっとりした演技で好演しています(第3回「ヨコハマ映画祭」作品賞受賞作)。

「愛と平成の色男/バカヤロー!2 幸せになりたい。」


鈴木保奈美はカネボウのCMモデル、財前直美は東亜国内航空の沖縄キャンペーンガール、鈴木京香はカネボウの水着キャンペーンガール出身。少女モデルから歌手になった武田久美子は中学生時代の1981年11月、東大駒場祭「第2回東大生が選ぶアイドルコンテスト'81」に自身で応募し、総数1263人の中で優勝、「東大生が選んだアイドル」として一時人気を博し、後に「
「タクシードライバー」とも言われたが、個人的にはよくわからなくてイマイチ)。それが、昭和が終わったこの年に刊行された"貝殻ビキニ"の写真集が売れに売れて人気復活。この頃は、CMもグラビアも撮影と言えば3泊4日でハワイでというのが当たり前のバブル期でした。時の流れを感じますが、武田久美子だけ今もって肉体派路線を継続中? 「
監督(第4話)の山田邦子が再就職に苦戦するハイミスに扮した「女だけがトシとるなんて」が良かったように思います。あとの2話は、本田昌広監督(第1話)の小
林稔侍が家族のためにとったニューカレドニア旅行のチケットを会社から顧客に回すように言われた旅行代店社員を演じた「パパの立場もわかれ」と、堤真一が深夜の
コンビニでバイトしてお客の扱いで頭を悩ますうちに妄想ノイローゼになっていく男を演じた鈴木元監督(第二話)の「こわいお客様がイヤだ」(堤真一にとっては初主演映画。他に爆笑問題の太田光・田中裕二が映画初出演、太田光は後に「バカヤロー!4」('91年)の第1話を監督している)でした。
秋吉久美子は柳町光男監督の「
優陣が惜しげもなく脱いでいますが、スラップスティク・コメディ調であるためにベタベタした現実感がなく、さらっと乾いた感じの作品に仕上がっています(ただ、原作のシュールな雰囲気までは出し切れていないか)。秋吉久美子って「70年代」というイメージのある女優ですが、80年代の作品を観ても、演技の幅が広かったなあと改めて思わされます。

「家族ゲーム」●制作年:1983年●監督・脚本:森田芳光●製作:佐々木志郎/岡田裕/佐々木史朗●撮影:前田米造●原作:本間洋平「家族ゲーム」●時間:106分●出演:松田優作/





三樹夫/山西道広/竹田かほり/ナンシー・チェニー/平田弘美/橘雪子/重松収/倍賞美津子/佐藤蛾次郎/中島ゆたか/片桐竜次/草薙幸二郎/清水宏/広京子/川村京子/三原玲奈/真辺了子/戸浦六宏/熊谷美由紀(松田美由紀)●放映:1979/09~1980/04(全27回)●放送局:日本テレビ



「探偵物語」●制作年:1983年●監督:根岸吉太郎●製作:角川春樹●脚本:鎌田敏夫●撮影:
仙元誠三●音楽:加藤和彦(主題歌:薬師丸ひろ子)●原作:赤川次郎●時間:106分●出演:薬師丸ひろ子/松田優作/秋川リサ/岸田今日子/北詰友樹/坂上味和/藤田進/中村晃子/鹿内孝/荒井注/蟹江敬三/財津一郎/三谷昇/林家木久蔵/ストロング金剛/山西道広/清水昭博/榎木兵衛/加藤善博/草薙良一/清水宏●公開:1983/07●配給:角川春樹事務所●最初に観た場所:東急名画座 (83-07-17)(評価:★★☆)●併映:「時をかける少女」(大林宣


彦) 東急名画座 (東急文化会館6F、1956年12月1日オープン、1986年〜渋谷東急2) 2003(平成15)年6月30日閉館![Wの悲劇 [DVD].jpg](/book-movie/archives/Wの悲劇 [DVD].jpg)
子/世良公則/三田村邦彦/仲谷昇/高木美保/蜷川幸雄/清水浩治/内田稔/草薙二郎/南美江/絵沢萠子/藤原釜足/香野百合子/志方亜紀子/幸日野道夫/西田健/堀越大史/渕野俊太/渡瀬ゆき●公開:1984/12●配給:東映/角川春樹事務所●最初に観た場所:新宿武蔵野館 (85-01-15)(評価:★★★★)●併映:「天国にいちばん近い島」(大林宣彦)

「時をかける少女」●制作年:1983年●監督:大林宣彦●製作:角川春樹●脚本:剣持亘●撮影:前田米造●音楽:松任谷正隆(主題歌:原田知世(作詞・作曲:松任谷由実))●原作:筒井康隆●時間:104分●出演:原田




「転校生」●制作年:1982年●監督:大林宣彦●製作:森岡道夫/大林恭子/多賀祥介●脚本:剣持亘●撮影:阪本善尚●原作:山中恒「おれがあいつであいつがおれで」●時間:112分●出演:尾美としのり/小林聡美/佐藤允/樹木希林/宍戸錠/入江若葉/中川勝彦/井上浩一/岩本宗規/大
山大介/斎藤孝弘/柿崎澄子/山中康仁/林優枝/早乙女朋子/秋田真貴/石橋小
百合/伊藤美穂子/加藤春哉/鴨志田和夫/鶴田忍/人見きよし/志穂美悦子●公開:1982/04●配給:松竹●最初に観た場所:大井武蔵野舘 (83-07-17)●2回目:テアトル吉祥寺 (84-02-11)(評価:★★★★☆)●併映(1回目):「の・ようなもの」(森田芳光)/「ウィークエンド・シャッフル」(中村幻児)●併映(2回目):「家族ゲーム」(森田芳光)
「時をかける少女(アニメ)」●制作年:2006年●監督:細田守●製作:渡邊隆史/齋藤優一郎●脚本:奥寺佐渡子●音楽:吉田潔●原作:筒井康隆●時間:98分●声の出演:仲里依紗/石田卓也/板倉光隆/原沙知絵/谷村美月/垣内彩未/関戸優希子●公開:2006/07●配給:角川ヘラルド映画(評価:★★☆)








セー尾形/森尾由美/羽賀研二/
川上麻衣子/遠藤京子/泉じゅん/一の宮あつ子/小林勝彦/佐原健二/加藤和夫/水島弘/小林トシエ/佐藤恒治/伊藤洋三郎●公開:1985/07●配給:東映●最初に観た場所:新宿ミラノ座 (85-11-17)(評価:★★☆)







「愛と平成の色男」●制作年:1989年●監督・脚本:森田芳光●製作:鈴木光●撮影:仙元誠三●音楽:野力奏一●時間:96分●出演:石田純一/鈴木保奈美/財前直見/武田久美子/鈴木京香/久保京子/桂三木助/佐藤恒治●公開:1989/07●配給:松竹●最初に観た場所:渋谷松竹(89-07-15)(評価:★☆)●併映:「バカヤロー!2」(本田昌広/鈴木元/岩松了/成田裕介、製作総指揮・脚本:森田芳光)
「シャッフル」●制作年:1981年
●監督・脚本:石井聰亙(石井岳龍)●製作:秋田光彦●撮影:笠松則通●音楽:ヒカシュー●原作:大友克洋●時間:34分●出演:中島陽典/森達也/室井滋/武田久美子●公開:1981/12(1983)●配給:ATG●最初に観た場所:大井ロマン(89-07-15)(評価:★★☆)●併映:「レッドゾーン」(神有介)
「バカヤロー!2 幸せになりたい。」●制作年:1989年●製
作総指揮・脚本:森田芳光●監督:本田昌広(第1話「パパの立場もわかれ」)/鈴木元(第2話「こわいお客様がイヤだ」)/岩松了(第3話「新しさについて
いけない」)/成田裕介(第4話「女だけがトシとるなんて」)●製作:鈴木光●撮影:栢原直樹/浜田毅●音楽:土方隆行●時間:98分●出演:(第1話)小林稔侍/風吹ジュン/高橋祐子/橋爪功/(第2話)堤真一/金子美香/イッセー尾形/太田光/田中裕二/金田明夫/島崎俊郎/銀粉蝶/ベンガル/宮田早苗(第3話)藤井郁弥/荻野目慶子/尾
美としのり/柄本明/佐藤恒治/竹中直人/広岡由
里子/(第4話)山田邦子/香坂みゆき/辻村真人/水野久美/加藤善博/桜金造●公開:1989/07●配給:松竹●最初に観た場所:渋谷松竹(89-07-15)(評価:★★★)●併映:「愛と平成の色男」(森田芳光)













○エノケンのちゃっきり金太('37年、山本嘉次郎)
富野「僕が細田監督の『時かけ』の嫌な点は、現代の高校生を安易に描いているんじゃないのかと。主人公たちの『告白したい!』という台詞が『SEXしたい!』と僕には聞こえるんです。ただの風俗映画になっているんじゃないかという危うさを感じるんです。アニメという実写映画以上に記号的なものを使って、映画的構造の中で単に風俗映画にしてしまうのはもったいないぞと。作品としてスタイリッシュな分、若者たちが無批判で受け入れてしまう可能性があるわけです。ウラジミール・ナブコフの小説を原作にした『ロリータ』('62)や文化革命を背景にした『.jpg)


怪獣映画ファンサークル代表の竹内博氏が、仕事関係で怪獣映画の写真が手元に来る度に自費でデュープして保存しておいたもので(元の写真は出版社や配給会社に返却)、当時の出版・映画会社の資料保管体制はいい加減だから(そのことを氏はよく知っていた)、結局今や出版社にも東宝にもない貴重な写真を竹内氏だけが所持していて、こうした集大成が完成した、まさに生活費を切り詰め集めた"執念のコレクション"です(星半個マイナスは価格面だけ)。





自分が生まれる前の作品であり(モノクロ)、かなり後になって劇場で観ましたが、バックに反核実験のメッセージが窺えたものの、怪獣映画ファンの多くが過去最高の怪獣映画と称賛するわりには、自分自身の中では"最高傑作"とするまでには、今ひとつノリ切れなかったような面もあります。やはりこういうのは、子供の時にリアルタイムで観ないとダメなのかなあ。
初めて「怪獣映画」というものを観た人たちにとっては、強烈なインパクトはあったと思うけれど。昭和20年代終わり頃に作られ、自分がリアルタイムで観ていない作品を、ついつい現代の技術水準や演出などとの比較で観てしまっている傾向があるかもしれません。但し、制作年('54年)の3月にビキニ環礁で米国による水爆実験があり、その年の9月に「第五福竜丸」の乗組員が亡くなったことを考えると、その年の12月に公開されたということは、やはり、すごく時代に敏感に呼応した作品ではあったかと
思います。
中から上がらずゴジラともに最期を迎えたのは、最強兵器オキシジェン・デストロイヤーの知識を自ら封印したというのが一般的解釈だが、そこまでする必要があったのかという思いがあった。今回観直してみて、山根恵美子(河内桃子)が尾形(宝田明)に秘密を漏らしたことで、芹沢は彼女が自分より尾形を選んだことを改めて認識し、恋に破れたと言うか、前向きに捉えれば恵美子の幸せは尾形に託したという意識も根底にあったのではないかと思った。ある意味「三角関係」映画だった。)
「ゴジラ」●制作年:1954年●監督:本多猪四郎●製作:田中友幸●脚本:村田武雄/本多猪四郎●撮
影:玉井正夫●音楽:伊福部昭●特殊技術:円谷英二ほか●原作:香山滋●時間:97分●出演:宝田明/河内桃子/平田昭彦/志村喬/堺左千夫/村上冬樹/山本廉/榊田敬二/鈴木豊明 /馬野都留子/菅井きん/笈川武夫/林幹/恩田清二郎/高堂国典/小川虎之助/手塚克巳/橘正晃/帯一郎/中島春雄/川合玉江/東静子/岡部正/鴨田清/今泉康/橘正晃/帯一郎●公開:1954/11●配給:東宝●最初に観た場所(再見):新宿名画座ミラノ(83-08-06)●2回目:TOHOシネマズ 日比谷 (24-07-17)(評価:★★★☆→★★★★(緊迫感はシリーズ随一ではないかと思われ、評価を修正した。))●併映(1回目):「怪獣大戦争」(本多猪四郎)
作品区分としてはゴジラ・シリーズではないですが、中村真一郎、福永武彦、堀田善衛の3人の純文学者を原作者とする「モスラ」('61年)の方が、今観ると笑えるところも多いのですが、全体としてはむしろ大人の鑑賞にも堪えうるのではないかと...。まあ、「ゴジラ」と「モスラ」の間には7年もの間隔があるわけで、その間に進歩があって当然なわけだけれど。
ザ・ピーナッツ(伊藤エミ(1941-2012)、伊藤ユミ(1941-2016))のインドネシア風の歌も悪くないし、東京タワー('58年完成、「ゴジラ」の時
はまだこの世に無かった)に繭を作るなど絵的にもいいです。原作「発光妖精とモスラ」では繭を作るのは東京タワーではなく国会議事堂でしたが、60
年安保の時節柄、政治性が強いという理由で変更されたとのこと、これにより、モスラは東京タワーを最初に破壊した怪獣となり、東京タワーは完成後僅か3年で破壊の憂き目(?)に。繭から出てきたのは例の幼虫で、これが意外と頑張った? 宮崎駿監督の「
「モスラ」●制作年:1961年●監督:本多猪四郎●製作:田中友幸●脚色:関沢新一●撮影:小泉一●音楽:
善衛「発光妖精とモスラ」●時間:101分●出演:
フランキー堺/小泉博/香川京子/ジェリー伊藤/ザ・ピーナッツ(伊藤エミ、伊藤ユミ)/上原謙/志村喬/平田昭彦/佐原健二/河津清三郎/小杉義男/高木弘/田島義文/山本廉/加藤春哉/三島耕/中村哲/広
瀬正一/桜井巨郎
/堤康久●公開:1961/07●配給:東宝●最初に観た場所(再見):新宿シアターアプル (83-09-04)(評価:★★★☆)●併映:「三大怪獣 地球最大の決戦」(本多猪四郎) 
「ゴジラシリーズ」の第1作「ゴジラ」を観ると、ゴジラが最初は純粋に"凶悪怪獣"であったというのがよくわかりますが、「ゴジラシリーズ」の第4作「モスラ対ゴジラ」('64年)(下写真)の時もまだモスラの敵役
でした。この作品はゴジラにとって怪獣同士の闘いにおける初黒星で、昭和のシリーズでは唯一の敗戦を喫した作品でもあります。因みに、「ゴジラシリーズ」の第3作「キングコング対ゴジラ」('62年)は両者引き分け(相撃ち)とされているようです。それが、'64年12月に公開された('64年12月公開予定だった黒澤明監督「赤ひげ」の撮影が長引いたため、正月興行用に急遽制作された)「ゴジラシリーズ」の第5作「三大怪獣 地球最大の決戦」('64年)(下写真)
になると、宇宙怪獣キングギド


を力を合わせて宇宙怪獣キングギドラ戦に挑むことから、「地球の三大怪獣」にとっての最大の決戦という意味らしいです。

「モスラ対ゴジラ」●制作年:1964年●監督:本多猪四郎●製作:田中友幸●脚色:関沢新一●撮影:小泉一●音楽:伊福部昭●特殊技術:円谷英二●時間:89分●出演:宝田明/星由里子/小泉博/ザ・ピーナッツ(伊藤エミ、伊藤ユミ)/藤木悠/田島義文/佐原健二/谷晃/木村千吉/中山豊/田武謙三/藤田進/八代美紀/小杉義男/田崎潤/沢村いき雄/佐田豊/山本廉/佐田豊/野村浩三/堤康久/津田光男/大友伸/大村千吉/岩本弘司/丘照美/大前亘●公開:1964/04●配給:東宝(評価:★★★☆)



「三大怪獣 地球最大の決戦」●制作年:1964年●監督:本多猪四郎●製作:田中友幸●脚本:関沢新一●撮影:小泉一●音楽:伊福部昭●特殊技術:円谷英二●時間:97分●出演:夏木陽介/小泉博/星由里子/若林映子/
ザ・ピーナッツ/志村喬/伊藤久哉/平田昭彦/佐原健二/沢村いき雄/伊吹徹/野村浩三/田島義文/天本英世/小杉義男/高田稔/英百合子/
加藤春哉●時間:93分●公開:1964/12●配給:東宝●最初に観た場所(再見):新宿シアターアプル (83-09-04)(評価:★★☆)●併映:「モスラ」(本多猪四郎)
更に、ゴジラシリーズ第6作「怪獣大戦争」('65年)は、地球侵略をたくらむX星人がキングギ
ドラ、ゴジラ、ラドンの3大怪獣を操り総攻撃をかけてくるというもので、X星人の統制官(土屋嘉男)がキングギドラを撃退するためゴジラとラドンを貸して欲しいと地球人に依頼してきて(土屋嘉男は「
本書にはない裏話になりますが、この作品に準主役で出演した米俳優のニック・アダムスは、ラス・タンブリンなど同列のSF映画で日本に招かれたハリウッド俳優達が日本人スタッフと交わろうとせずに反発を受けたのに対し、積極的に打ち解け馴染もうとし、共演者らにも人気があったそうで、土屋嘉男とは特に息が合い、土屋にからかわれて女性への挨拶に「もうかりまっか?」と言っていたそうで、仕舞には、自らが妻帯者であるのに、水野久美に映画の役柄そのままに「妻とは離婚するから結婚しよう」と迫っていたそうです(ニック・アダムスは当時、私生活では離婚協議中だったため、冗談ではなく本気だった可能性がある。但し、彼自身は、'68年に錠剤の過量摂取によって死亡している(36歳))。
「怪獣大戦争」●制作年:1965年●監督:本多猪四郎●製作:田中友幸●脚本: 関沢新一●撮影:小泉一●音楽:伊福部昭●特殊技術:円谷英二●時間:94分●出演:宝田明/ニック・アダムス/久保明/水野久美/沢井桂子/土屋嘉男/田崎潤/田島義文/田武謙三/村上冬樹/清水元/千石規子/佐々
木孝丸●公開:1965/12●配給:東宝●最初に観た場所(再見):新宿名画座ミラノ (83-08-06)(評価:★★☆)●併映:「ゴジラ」(本多猪四郎)
怪獣の複数登場が常となったのか、「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」('66年)などというのもあって(「ゴジラ」シリーズとしては第7作)、監督は本多猪四郎ではなく福田純で、音楽は伊福部昭ではなく佐藤勝ですが、これはなかなかの迫力だった印象があります(後に観直してみると、人間ドラマの方はかなりいい加減と言うか、ヒドいのだが)。

シリーズ第6作「怪獣大戦争」に"X星人"役で出ていた水野久美が今度は"原住民"の娘役で出ていて、キャスティングの変更による急遽の出演で、当時29歳にして19歳の役をやることになったのですが、今スチール等で見ても、妖艶過ぎる"19歳"、映画「
督:福田純●製作:田中友幸●脚本:関沢新一●撮影:山田一
夫●音楽:
木和夫/本間文子/中北千枝子/池田生二/岡部正/大前亘/丸山謙一郎/緒方燐作/勝部義夫/渋谷英男●時間:87分●公開:1966/12●配給:東宝(評価:★★★☆)●併映:「
この辺りまで怪獣映画は東映の独壇場ともいえる状況でしたが、'65年に大映が「大怪獣ガメラ」、'67年に日活が「大巨獣ガッパ」でこの市場に参入します(本書には出てこないが)。このうち、「大怪獣ガメラ」('65年/大映)は、社長の永田雅一の声がかりで製作されることとなり(永田雅一の「カメ」で行けという"鶴の一声"で決まったようで、湯浅憲明(1933-2004)監督はじめスタッフは苦労したのではないか)、これがヒットして、ガメラ・シリーズは'71年に大映が倒産するまでに7作撮影されましたが、本作はシリーズ唯一のモノクロ作品です(「ゴジラ」の第1作を意識したのかと思ったが、予算と技術面の都合だったらしい)。
あらすじは、砕氷調査船・ちどり丸で北極にやってきた東京大学動物学教室・日高教授(船越英二)らの研究チームが、国
籍不明機を目撃、その国籍不明機には核爆弾が搭載されており、その機体爆発の影響で、アトランティスの伝説の怪獣ガメラが甦るというもの。「ガメラ」の命名者でもある永田雅一の「子供たちが観て『怪獣がかわいそうだ』とか哀愁を感じないといけない。子供たちの共感を得ないとヒットしない」との考えの

健/森一夫/佐山真次/喜多大八/大庭健二/荒木康夫/井上大吾/三夏伸/清水昭/松山新一/岡郁二/藤井竜史/山根圭一郎/村松若代/沖良子/加川東一郎/伊勢一郎/佐原新治/宗近一/青木英行/萩原茂雄/古谷徹/中条静夫(ナレーション)●時間:87分●公開:1965/11●配給:大映(評価:★★★)
「ガメラ」のヒットを受け、翌年「ガメラシリーズ」の第2作として総天然色による「大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン」('66年/大映)が作られましたが、併映の「大魔神」('66年/大映)の
方が"初物"としてインパクトがあったかも。ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の「巨人ゴーレム」('36
年/チェコスロバキア)で描かれたゴーレム伝説に材を得たそうですが、戦国時代に悪人が陰謀を巡らせて民衆が虐げられると、穏やかな表情の石像だった大魔神が復活して動き出し、破壊的な力を発揮して悪人を倒すというストーリーは分かりやすいカタルシスがありました。大映映画ですが、音楽は東宝ゴジラ映画の

「大魔神怒る」('66年/大映)は、1作目が大ヒットしたため、お盆興行作品として製作されたもので、監督は三隅研次(1921-1975)で、これも伊福部昭が音楽を担当。千草家とその分家・名越家が領主の平和な国が隣国か
ら侵略され、領主は滅ぶもお家再興と平和を望んで千草家の本郷功次郎の許嫁である名越家の藤村志保が魔人に願掛けするというもの。今回は魔人は「水の神」という設定になっていて、藤村志保
が悪人たちより
焚刑に処せられることになって、今まさに火に焼かれようとする時、この身を神に捧げますと涙を流すと大魔神が現れ(出現シーンはハリウッド映画「
「大魔神怒る」藤村志保(当時27歳)
「大魔神逆襲」('66年/大映)の監督は森一生監督(1911-1989)で、これもまた音楽は伊福部昭が担当。森一生監督は「女と男はつまらない。子供好きだから
子供でやりたい」と子
供たちが主役に据え、少年の純真な信仰心が大魔神を動かすという設定で、今回は大魔神「雪の魔神」として雪の中から現れ、最後には粉雪となって消えていきます。子供たちを主役に据えるのも悪いとは言いませんが、やは
り当時19歳の高田美和、27歳の藤村志保と続いた後だと、完全にお子様向けに路線変更してしまったなあという印象は拭えません。製作費は1億円弱、興行では併映なしの2番館上映となり、配給収入(興行収入から映画館の取り分を差し引いた配給会社の収入)も赤字で、4作目の企画もあったものの、これで打ち止めになっています。結局、わずか1年の間の3作で終わってしまったわけですが、その分、大魔神の重厚感は印象に残るものでした。ゴジラが「怪獣大戦争」('65年)で「シェー」をするなど、シリーズが永らえたゆえに"堕落"してしまったのとは対照的と言えるでしょうか。
「大魔神」●制作年:1966年●監督:安田公義●製作総指揮:永田雅一●脚本:吉田哲郎●撮影:森田富士郎●音楽:

「大魔神怒る」●制作年:1966年●監督:三隅研次●製作:永田雅一●脚本:吉田哲郎●撮影:今井ひろし/森田富士郎●音楽:

「大魔神逆襲」●制作年:1966年●監督:森一生●製作総指揮:永田雅一●脚本:吉田哲郎●撮影:森田富士郎●音楽:




第17作「ゴジラ vs ビオランテ」('89年)(「平成ゴジラシリーズ」第2作)は、バイオテクノロジーによってゴジラとバラの細胞を掛け合わせて造られた超獣ビオランテが登場し、一般公募ストーリー5千本から選ばれたものだそうですが(選ばれたのは「帰ってきたウルトラマン」第34話「許されざるいのち」の原案者である小林晋一郎の作品。一般公募と言ってもプロではないか)、確かに植物組織を持った怪獣は、「
第18作「ゴジラ vs キングギドラ」('91年)(「平成ゴジラシリーズ」第3作)は、南洋の孤島に生息していた恐竜が核実験でゴジラに変身したという新解釈まで採り入れており(ここに来てゴジラの出自を変えるなんて)、ゴジラが涙ぐんでいるような場面もあって、また同じ道を辿っているなあと(この映画、敵役の未来人のUFOが日本だけを攻撃対象とするのも腑に落ちないし、タイム・パラドックスも破綻気味)。
第17、第18作は大森一樹監督で、いくらか期待したのですが、かなり脱力させられました(第18作「ゴジラ vs キングギドラ」で怪獣映画の中での土屋嘉男を見たのがちょっと懐かしかったくら
いか。山村聰も内閣総理大臣役で出ていたけれど)。この監督は商業映画色の強い作品を撮るようになって、はっきり言ってダメになった気がします。大森一樹監督の最高傑作は自主映画作品「暗くなるまで待てない!」('75年/大森プロ)ではないでしょうか。神戸を舞台に大学生の若者たちが「暗くなるのを待てないで昼間から出てくるドラキュラの話」の映画を撮る話で、モノクロで制作費の全くかかっていない作品ですが、むしろ新鮮味がありました(今年['08年]3月に、大森監督によってリメイクされた)。
駄作の多かった「平成ゴジラシリーズ」(第16作~第22作)に対し、第23作「ゴジラ2000 ミレニアム」('99年)から始まる「ミレニアムシリーズ」(第23作~第28作)でやや盛り返した感もありますが、その中でいちばんの傑作とする人もいる第26作「ゴジラ×メカゴジラ(ゴジラたいメカゴジラ)」('02年)(先行作品に第14作「ゴジラ対メカゴジラ」('74年)、第20作「ゴジラvsメカゴジラ(ゴジラたいメカゴジラ)」('93年)がある)さえ、個人
的にはイマイチでした。何よりも、主演の釈由美子(当時24歳)のセリフ棒読みが結構キツイ...。ゴジラは絶対悪として描かれ、ゴジラに対抗するために作られたメカゴジラのメインパイロットが彼女の役なので、あまりに下手だとちょっと作品に入り込めない...(「ゴジラ vs ビオランテ」の沢口靖子(当時24歳)も当時はあまり上手くなかったが、主役ではなかったのがまだ許せるか(主役は田中好子(当時33歳))。
「ゴジラ vs ビオランテ」●制作年:1989年●監督・脚本:大森一樹●製作:田中友幸●音楽:すぎやまこういち(ゴジラテーマ曲:伊福部昭)●時間:97分●出演:三田村邦彦/田中好子/小高恵美/峰岸徹/高嶋政伸/高橋幸治/沢口靖子(特別出演)/永島敏行(友情出演)/久我美子(友情出演)●公開:1989/12●配給:東宝(評価:★☆)「

久我美子(大和田圭子官房長官 ※友情出演)/
「ゴジラ vs キングギドラ」●制作年:1991年●監督・脚本:大森一樹●製作:田中友幸●音楽:伊福部昭●特技監督:川北紘一●時間:103分●出演:中川安奈/豊原功補/小高恵美/西岡徳馬/土屋嘉男/山村聰/佐原健二/時任三郎/原田貴和子/小林昭二/佐々木勝彦/上田耕一/チャック・ウィルソン/ケント・ギルバート/ダニエル・カール/リチャード・バーガー/ロバート・スコットフィールド●公開:1991/12●配給:東宝 (評価:★☆)
「暗くなるまで待てない!」●制作年:1975年●監督:大森一樹●脚本:大森一樹/村上知彦●音楽:吉田健志/岡田勉/吉田峰子●時間:30分●出演:稲田夏子/栃岡章/南浮泰造/村上知彦/森岡富子/磯本治昭/塚脇小由美/大森一樹/鈴木清順●公開:1975/04●配給:大森プロ●最初に観た場所:高田馬場パール座 (80-12-25) (評価:★★★★)●併映:「星空のマリオネット」(橋浦方人)/「青春散歌 置けない日々」(橋浦方人)
「ゴジラ×メカゴジラ(ゴジラたいメカゴジラ)」●制作年:2002年●監督:手塚昌明●脚本:三村渉●音楽:大島ミチル●特撮監督:菊地雄一●時間:88分●出演:釈由美子/宅麻伸/小野寺華那/高杉亘/友井雄亮/水野純一/水野久美/上田耕一/森末慎二/萩尾みどり/江藤潤/北原佐和子/柳沢慎吾/藤山直美/中村嘉葎雄/田中美里/永島敏行/村田雄浩/中尾彬/松井秀喜(本人役)●公開:2002/12●配給:東宝 (評価:★★☆)

ゴジラ・シリーズ以外で、役者だけで見れば何と言っても凄いのが「日本誕生」('59年)で、ヤマタノオロチが出てくるため確かに"怪獣映画"でもあるのですが、三船敏郎、乙羽信子、司葉子、鶴田浩二、東野英治郎、杉村春子、田中絹代、原節子など錚々たる面々、果ては、柳家金語楼から朝汐太郎(当時の現役横綱)まで出てくるけれど、「大作」転じて「カルト・ムービー」となるといった感じでしょうか(観ていないけれど、間違いなくズッコケそうで観るのが怖いといった感じ)。 


「



検分役が立ち会うような格式ばった「かたき討ち」を描いた映画で思い出す作品に、今井正監督、橋本忍脚本、中村錦之助(萬屋錦之介)主演の「仇討(あだうち)」('64年/東映)がありますが、些細な諍いから起きた決闘で上役を殺してしまった下級武士が主人公で、封建社会における家名尊重の理不尽を描いた今井正監督ならではの作りになっています(昔ビデオ化されていたが、どういうわけかその後、国内ではDVD化されていない)。
4月号(文藝春秋刊)に発表されたものを基に、1969年にオムニバスドラマの一編としてテレビドラマ化され、2002年に真田広之主演で映画化されたものです。同監督の「
倉梅太郎役で出てきて、検分役のはずの岸部一徳が鉄砲をぶっ放して仲代はあっさり討ち死してしまうというかなり乱暴な流れ。これはあくまで助六を演じた真田広之の映画だったのだなあ。梅太郎が生き別れた実父だったことを知った助六は親の
仇を討とうとしますが、岸部一徳が演じる御検分役曰く「仇討の仇討」は御法度であるということで、ならばこれは助太刀であるとの助六の言い分も強引。真田広之演じる助六が24歳、鈴木京香演じるお仙はそれより若い「おぼこ」の役という設定もかなりきついです。でも、まあ肩の凝らない娯楽作ではありました。
「助太刀屋助六」●制作年:2001年●監督:岡本喜八●製作:豊忠雄/宮内正喜●脚本:生田大作(岡本喜八)●撮影:加藤雄大●音楽:山下洋
輔●原作:生田大作(岡本喜八)●時間:88分●出演:真田広之/鈴木京香/村田雄浩/鶴見辰吾/風間トオル/本田博太郎/友居達彦/山本奈々/岸部一徳/岸田今日子(ナレーションも)/小林桂樹/仲代達矢/竹中直人/宇仁貫三/嶋田久作/田村奈巳/長森雅人/滝藤賢一/伊佐山ひろ子/佐藤允/天本英世●公開:2002/02●配給:東宝(評価:★★★☆)
小林桂樹(棺桶屋)





昭和22年秋、台風のため青函連絡船・層雲丸の転覆事故が起き、必死の救助活動が行われる中、3人の復員服姿の男が台風で不通になった列車から飛び降り、転覆事故の混乱に紛れ、本土へ向けて夜の海峡を船を漕いでいた。台風が去った後、転覆した層雲丸の乗客の遺体が次々と収容されるが、引取り人のいない遺体があり、収容遺体は実際の乗客数より2体多かった。一方、同じ台風の中、函館市内て質屋が全焼する火事があり、焼け跡から質屋一家の他殺体が発見され、質屋一家強盗殺人事件と、転覆事故の乗船者数より多い2体の遺体が結びついた―。
[映画]函館署のベテラン刑事の弓坂(伴淳三郎)は、亡くなった男2人と行動を共にしていた犬飼太吉なる大男の行方を粘りつよく捜索を続け、その男・犬飼太吉(三國連太郎)と思われる男と一夜を共にした女郎・杉戸八重(左幸子)の存在を突き止める―。

主人公・犬飼役の三國連太郎の生涯最高の演技に加えて、刑事役の高倉健の演技もいいですが、高倉健と共に捜査にあたる元
刑事役の伴淳三郎と、堅気になろうとしてなれない薄幸の女性・八重(ひたすら犬飼を思いながら生き続ける哀しさ)を演じた左幸子の演技が、この二人もまた生涯最高の演技と言っていいくらいに、とてもいいです。
とりわけ伴淳三郎については、内田吐夢監督がロケで、大勢の見物人の前で彼を罵倒して何十回もNGを出し、喜劇王伴淳のプライドをズタズタに傷つけ、すっかり意気消沈させたとのことで、実はそれこそが内田吐夢の狙いであり、伴淳がいつもの喜劇と場が違って巨匠の撮る大作にシリアスな大役ということで、いいところを見せようと肩に力が入り過ぎるのを、監督が伴淳を怒鳴りつける事で意図的に元気をなくさせ、それが作品が求めるところの人生に疲弊している老刑事像に繋がったというから、恐ろしいまでの演出です。



「飢餓海峡」●制作年:1965年●制作:東映●監督:内田吐夢●脚本:鈴木尚之●撮影:仲沢半次郎●音楽:冨田勲●時間:183分●出演:三國連太郎(樽見京一郎/犬飼多吉)、左幸子(杉戸八重/千鶴)/伴淳三郎(弓坂吉太郎刑事、函館)/高倉健(味
村時雄刑事、東舞鶴)/加藤嘉(杉戸長左衛門、八重の父)/三井弘次(本島進市、亀戸の女郎屋「梨花」の主人)/沢村貞子(本島妙子)/藤田進(東舞鶴警察署長、味村の上司)/風見章子(樽見敏子、樽見の妻)/山本麟一(和尚、弓坂
の読経を褒める)/最上逸馬(沼田八郎、岩内の強盗犯)/安藤三男(木島忠吉、岩内の強盗犯)/沢彰謙(来間末吉)/関山耕司(堀口刑事、東舞鶴)/亀石征一郎(小川、チンピラ)/八名信夫(町田、チンピラ)/菅沼正(佐藤刑事、函館)/曽根秀介(八重が大湊で働いていた娼館、"花や"の主人)/牧野内とみ子(朝日館女中)/志摩栄(岩内署長)/岡野耕作(戸波刑事、函館)/鈴木昭生(唐木刑事、東舞鶴)/八木貞男(岩田刑事、東舞鶴)/外山高士(田島清之助、岩内署巡査部長)/安城百合子(葛城時子、八重が東京で訪ねる)/河村久子(煙草屋のおかみ)/高須準之助(竹中誠一、樽見家の書生)/河合絃司(巣本虎次郎、網走刑務所所長)/加藤忠(刈田>治助)/須賀良(鉄、チンピラ)/大久保正信(漁師の辰次)/西村淳二(下北の巡査)/田村錦人(大湊の


『






一方、先に劇場映画作品として公開された宮崎駿監督の「ルパン三世〜カリオストロの城」は、ヒロインのクラリス姫が特定のファンの間で非常に人気があるこ
のカッコ良さの方が個人的には印象に残ったかなあ。
「カリオストロの城」のモデルと言われる(諸説あり)リヒテンシュタイン城。ドイツの南西部の都市・シュトゥットガルトの郊外にあり、映画と同じく古代ローマ様式の水道橋がある。
第1シリーズ当初からのファンの中には、そのやや大人びた雰囲気が好きな層も多くいたようで、劇場版第1作「ルパン三世~ルパンVS複製人間」は、低年齢化したテレビ版の反動からか、クローン人間をテーマとしたSFチックな壮大なストーリーでした。怪人「マモー」(ブライアン・デ・パルマ監督の「
「海のトリトン」●演出:富野喜幸(富野由悠季)●制作:ア
ニメーション・スタッフルーム●脚本:辻真先/松岡清治/宮田雪/松元力/斧谷稔●音楽:鈴木宏昌●原作:手塚治虫「青いトリトン」●出演(声):塩谷翼/広川あけみ/北浜晴子/八奈見乗児/野田圭一/沢田敏子/杉山佳寿子/北川国彦/渡部猛/増岡弘/渡辺毅/塩見龍助/滝口順平/矢田耕司/中西妙子/柴田秀勝●放映:1972/04~09(全27回)●放送局:朝日放送

色:押井守●製作:多賀英典●演出:安濃高志●脚本:金春智子●撮影監督:若菜章夫●音楽:小林泉美・安西史孝・天野正道●原作:高橋留美子●時間:80分●声の出演:平野文/古川登志夫/島津冴子/神谷明●公開:1983/02●配給:東宝●最初に観た場所:大井ロマン(85-05-05)(評価:★★☆)●併映:「うる星やつら2」(押井守)/「うる星やつら3」(やまざきかずお)
「うる星やつら2/ ビューティフル・ドリーマー」●制作年:1984年●監督・脚本:押井守●製作:多賀英典●演出:西
村純二●撮影監督:若


「うる星やつら3/リメンバー・マイ・ラブ」●制作年
「うる星やつら」(テレビアニメ版)●チーフディレクター:押井守(1話 - 129話)/やまざきかずお(130話 - 218話)●プロデューサー:布川ゆうじ/井上尭

「ルパン三世〜カリオストロの城」●制作年:1979年●監督:宮崎駿●製作:片山哲生●脚本:宮崎駿/山崎晴哉●作画監督:大塚康生●音楽:大野雄二 ●原作:モンキー・パンチ●時間:98分●声の出演:山田康雄(1932-1995)/島本須美/納谷悟朗(1929-2013)/小林清志/井上真樹夫/増山江威子/石田太郎/加藤正之/宮内幸平/寺島幹夫/山岡葉子/常泉忠通/平林尚三/松田重治/永井一郎/緑川稔/鎗田順吉/阪脩●公開:1979/12●配給:東宝 (評価:★★★☆)


「ルパン三世」(テレビアニメ版)●監督:(第1シリーズ)大隈正秋/(第3シリーズ)こだま兼嗣/鍋島修/亀垣一/奥脇雅晴ほか●プロデューサー:(第2シリーズ)高橋靖二(NTV)/高橋美光(TMS)/(第3シリーズ) 松元理人(東京ムービー新社)/佐野寿七(YTV)●音楽:山下毅雄/(第2シリーズ)大野雄二●原作:モンキー・パンチ●出演(声):山田康雄/小林清志/二階堂有希子/増山江威子/井上真樹夫/大塚周夫/納谷悟朗●放映:1971/10~1972/03(全23回)/1977/10~1980/10(全155回)/1984/03~1985/12(全50回)●放送局:読売テレビ(第1シリーズ)/日本テレビ(第2・第3シリーズ)




