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映画よりも謎解きが分かりやすかった。プロットを落ち着いて確認できるのはドラマのメリットか。

名探偵ポワロ 52  ナイルに死す.jpg名探偵ポワロ  ナイルに死す 02.jpg ナイルに死す2.jpg ナイル殺人事件 DVD.jpg
名探偵ポワロ 34 [レンタル落ち]」『ナイルに死す (ハヤカワ・ミステリ文庫)』「ナイル殺人事件 デジタル・リマスター版 【プレミアム・ベスト・コレクション\1800】 [DVD]

名探偵ポワロ  ナイルに死す 01.jpg 解雇に遭って文無しのサイモン・ドイルと婚約したジャックリーンは資産家の友人リネットに彼を雇ってもらうが、若く美しいリネットは友人の婚約者を奪って結婚してしまい、エジプトへ新婚旅行に出かける。リネットは、エジプトのホテルで一緒になったポワロに、ジャクリー名探偵ポワロ  ナイルに死す .jpgンが執拗に二人を追いまわしているので交渉してほしいと相談をもちかけるが、略奪婚の話を聞いているポワロは断る。ポワロはジャクリーンにストーキング行為を止めるよう注意するが彼女は聞き入れず、サイモン夫妻が参加したナイル川クルーズの同じ船に彼女もいた。クルーズには、ゴシップ好きなアラートン夫人、その息子ティム、リネットの会社の米国管財人ペニントン、小説家サロメ・オタボーン、その娘ロザリー、ヴァン・シュワイラー夫人、その娘コーネリア、共産主義者ファーガソン、医師ベクターなどもいた。遺跡見学中にリネットの頭上から石が落ちてくる出来事名探偵ポワロ  ナイルに死す6.jpgがあった。一方、ポワロは旧知のレイス大佐と再会。その晩、ポワロが早く寝てしまった後、ブリッジをしていた人たちの所にジャクリーンとコーネリアが来てリネットが寝室に戻たところで、ジャクリーンが突然ピストルでサイモンの脚を撃つ。自身狼狽するジャクリーンをコーネリアとファー名探偵ポワロ  ナイルに死す 04.jpgガソンが部屋に連れて行き、ベクター医師がサイモンの膝を治療、鎮静剤を打って眠らせる。翌朝、起床したポワロにレイス大佐から、リネットが撃たれて死んだとの知らせが入り、大佐の指揮で捜査が始まるが、不審者の目撃を仄めかしたドイルのメイドのルイーズが刺殺され、更にはルイーズと会った人物について話そうとしたサロメが射殺される―。  

 「名探偵ポワロ」の第52話(第9シーズン第3話)でロング・バージョン。本国放映は2004年4月12日、本邦初放映は2005年8月23日(NHK-BS2)。原作はアガサ・クリスティが1937年に発表した長編作品であり、クローズド・サークルものの傑作とされ、1982年に行われた日本クリスティ・ファンクラブ会員の投票ではクリスティの全作品中5位に入っています。

ナイル殺人事件 スチール.jpg 同じ原作の映画化作品であるジョン・ギラーミン監督の「ナイル殺人事件」('78年/英)が、ポワロ役のピーター・ユスティノフ他オールスター・キャスト映画としてよく知られていて、しかも"クルーズ観光映画"とでも言うべきか旅行気分も味わえる作品ですが、犯人が誰だったかということについては強烈な印象があるものの、事件の細かい経緯は忘れてしまったので(映画は'78年の公開年に観てその後テレビでも観たと思うが)、この「名探偵ポワロ・シリーズ」で改めて観て経緯を再確認したといったところでしょうか(原作の船客からは考古学者のリケティ、弁護士のファンソープ、看護師のミス・バワーズの3人が削られている)。
「ナイル殺人事件」('78年/英)

名探偵ポワロ(第52話)/ナイルに死す .jpg 犯人の解明に至るプロセスを改めて堪能したという感じです。映画の方は、推理半分・観光半分みたいな感じで、最後ポワロが関係者全員を集めて定番の謎解きをするのですが、それがややバタバタっという印象であったのに対し(後で原作を読んで細部について納得した記憶がある)、このテレビ版は、ポワロがさほど大げさなことはしませんが丹念に謎解きをしてくれているように思いました(舞台の派手さよりも。謎解き重視か)。"観光映画"としては、劇場版に比べるとさすがに地味ですが、それでもTVシリーズとしては結構お金がかかっている感じです。戯曲にもなっているように、その気になれば全て室内での演技でも出来てしまう作品なのですが、原作より上流の方らしいけれどちゃんとナイル川に船を出して遺跡巡りもしています(エジプトが舞台の第7話「海上の悲劇」('89年)はギリシャで、第34話「エジプト墳墓のなぞ」('93年)はスペインでそれぞれ撮影されている)。

ナイルに死す エミリー・ブラント.jpgエミリー・ブラント プラダを着た悪魔.jpg 映像化作品では、リネットがお金持ちであるだけでなく美人であり(このドラマでは「プラダを着た悪魔」('06年/米)でブレイクする直前のエミリー・ブラントが金髪のウィッグで演じている)、一方のストーカー行為を行うジャクリーンはコンプレックスをしょい込んだような、普通の男性だったらあまり近づきたくない感じの女性であって(映画版ではミア・ファロー_3.jpg演技派ミア・ファローが好演)、ジャクリーンからリネットに"乗り換えた"サイモン・ドイルはややとっぽい感じの美男子というのがミソでしょうか。男女間の意外な関係がラストで明かされるというのは、クリスティだけでなく、その後も英国ミステリで何度か使われていますが、この作品の場合、先入観無しで映像(見た目)から入っていくと尚更分からないだろなあ(映画もそうだった)。

 最初に映画を観た時には、動機について伏線が全然無かったではないかとの印象で星3つの評価(△評価)をつけましたが、このTVドラマ版では、ポワロが先入観ではなくロジックで謎解きをしていることがよく分かり、映画よりやや上の星3つ半(○評価)にしました。映画とTVシリーズとで同列で評価するのは難しいけれど、プロットを落ち着いて確認できるというTVドラマのメリットが生かされていたように思います。
Death on the Nile
Death on the Nile.jpg
名探偵ポワロ  ナイルに死す 03.jpg「名探偵ポワロ(第52話)/ナイルに死す」●原題:AGAHTA CHRISTIE'S POIROT SEASON9:DEATH ON THE NILE●制作年:2004年●制作国:イギリス●本国放映:2004/04/12●監督:アンディ・ウィルソン●脚本:ケヴィン・エリオット●時間:99分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ)/エマ・マリン(ジャクリーン)/JJ・フィールド(サイモン)/エミリー・ブラント(リネット)/バーバラ・フリン(アラートン夫人)/ダニエル・ラパイン(ティム)/ジュディ・パーフィット(ヴァン・シュワイラー)/デイジー・ドノヴァン(コーネリア)/フランセス・デラチュア(オタボーン夫人)/デビッド・ソウル(ペニストン)/ジェームズ・フォックス(レイス)●日本放映:2005/08/23●放映局:NHK‐BS2(評価:★★★☆)

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ロバート・レッドフォード、ブラッド・ピット「初共演」のCIAもの。

スパイ・ゲーム dvd.jpg スパイ・ゲーム01.jpg   スパイ・ゲーム|文庫|竹書房.jpg
スパイ・ゲーム [DVD]」ロバート・レッドフォード、ブラッド・ピット「スパイ・ゲーム (竹書房文庫)

スパイ・ゲーム02.jpg 1991年春、数々の困難な任務を遂行し今や伝説の存在であるCIA工作員ネイサン・ミュアー(ロバート・レッドフォード)は、引退前の最後の勤務日を迎えようとしていた。彼にとってトム・ビショップ(ブラッド・ピット)はその弟子でもあり最も信頼のおける相棒でもあった。ミュアー自身がスカウトし、スパイに関するあらゆることを教え育て上げ、二人は互いに固い絆で結ばれていた。しかし、まさにミュアーのCIA退官日に、ビショップが中国側にスパイ容疑で逮捕される事件が起きる。本来ビショップはCIA香港支局長のダンカン(デヴィッド・ヘミングス)が指揮をとっていた米中通商会談の盗聴作戦に従事するはずだったが、許可なく中国人協力者を指揮して蘇州刑務所に侵入したのだった。ミュアーはビショップを見捨てようとするCIA上層部の反対を押し切り、背後の巨大な陰謀を承知の上で、ビショップ救出の壮大な作戦を計画する―。

トニー・スコット.bmp 2012年に高い橋から飛び降りて自殺してしまったトニー・スコット監督(1944-2012)。彼の2001年監督作で、 ロバート・レッドフォードが監督した「リバー・ランズ・スルー・イット」('92年)以来のロバート・レッドフォードとブラッド・ピットのコラボレーションですが、「リバー・ランズ・スルー・イット」の時はレッドフォードは監督及び製作総指揮で出演はナレーションのみだったため、この作品が「初共演」と言えます。そうしたこともあってか、むしろロバート・レッドフォードが主演した、同じくCIAの内実を扱った「コンドル」('75年)の系譜に近いという印象の方が個人的には強いです。

スパイ・ゲーム レッドフォード.jpg レッドフォードは「コンドル」ではCIA職員でありながら凄腕の諜報部員でも何でもない単なる素人役だったのが、ここでは伝説的存在の工作員ミュアー役となっています。捕らえられてから24時間後に処刑予告されているブラッド・ピッスパイ・ゲーム buraddo.jpgト演じるビショップをいつ助けに行くのかと思ったら、ミュアーはCIAの幹部らにビショップをCIA工作官に育て上げた経緯を語るばかりで、なかなか助けに行かない。その間に、ミュアーの口からベトナム戦争での二人の出会いから、西ドイツでの仕事やベイルートでの仕事が語られ、映画の大部分の時間はそのカットバックで占められ、ビショップがなぜ蘇州刑務所に侵入したのかも明かされます。

スパイ・ゲーム03.jpg ミュアーが延々と過去を語るのは、ビショップの解放を外交交渉に委ねるための時間稼ぎだったわけですが、結局CIAは中国との通商交渉を控えたホワイトハウスの意向に沿ってビショップを見殺しにすることになり、これではミュアーは観客に過去の経緯を見せるためだけに"昔話"をしていたようなものだなあと思いましたが、実はミュアーはしっかり裏で手を打っていた―。

スパイ・ゲーム  reddo.jpg ロバート・レッドフォードがおいしいところの殆どを持っていってしまったような映画で、監督第一作の「普通スパイ・ゲーム ブラッドピット.jpgの人々」('80年)でアカデミー賞監督になったレッドフォードですが、こうした映画に出る時は昔ながらにカッコいい役をやるのだなあと。ブラッド・ピット演じるビショップは助けを待っているだけなので、ブラッド・ピットのファンには相当物足りない映画ではないでしょうか。

Spy Game (2001).jpg 最後、あまりにスンナデヴィッド・ヘミングス  young & old.jpgリ事が運んで、ちょっと話が出来すぎている感じもしました。終わり方もあっさりしすぎたかな。もう少しCIAの幹部らが唖然とする様を見たかったような気もします。CIA香港支局長を演じたデヴィッド・ヘミングス(1941-2003)が、ミケランジェロ・アントニオーニ監督の「欲望」('66年)に出ていた頃とはえらい変わり様なので、ちょっと驚きました。

Spy Game (2001)

「スパイ・ゲーム」●原題:SPY GAME●制作年:2001年●制作国:アメリカ●監督:トニー・スコット●製作:ダグラス・ウィック/マーク・エイブラハム●脚本:マイケル・フロスト・ベックナー●撮影:ダニエル・ミンデル●音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ●原案:マイケル・フロスト・ベックナー●時間:126分●出演:ロバート・レッドフォード/ブラッド・ピット/キャサリン・マコーマック/スティーヴン・ディレイン/ラリー・ブリッグマン/マリアンヌ・ジャン=バプティスト/デヴィッド・ヘミングス/シャーロット・ランプリング●日本公開:2001/12●配給:ユニバーサル・ピクチャーズ(評価★★★☆)

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次第に狂人化していくヒトラーと、どうすることも出来ない取り巻き将校たち。

ヒトラー 最期の12日間 2005.jpg  ヒトラー 最期の12日間  .jpg ヒトラー 最期の12日間 01.jpg
ヒトラー ~最期の12日間~ ロング・バージョン(2枚組) [DVD]」 ブルーノ・ガンツ(アドルフ・ヒトラー)

ヒトラー 最期の12日間  12.jpg 1942年、トラウドゥル・ユンゲ(アレクサンドラ・マリア・ララ)は数人の候補の中からヒトラー総統(ブルーノ・ガンツ)の個人秘書に抜擢された。1945年4月20日、ベルリン。第二次大戦は佳境を迎え、ドイツ軍は連合軍に追い詰められつつあった。ヒトラーは身内や側近と共に首相官邸の地下要塞へ潜り、ユンゲもあとに続く。そこで彼女は、冷静さを失い狂人化していくヒトラーを目の当たりにするのだった。ベルリン市内も混乱を極め、民兵は武器も持たずに立ち向かい、戦争に参加しない市民は親衛隊に射殺されていく。そして側近たちも次々と逃亡する中、ヒトラーは敗北を認めず最終決戦を決意するが―。

ヒトラー 最期の12日間02.jpg オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督の2004年作品で、ヨアヒム・フェストによる同名の研究書『ヒトラー 最期の12日間』('05年/岩波書店)、およびヒトラーの個人秘書官を務めたトラウドゥル・ユンゲの証言と回想録『私はヒトラーの秘書だった』('04年/草思社)が本作の土台となっています。映画はヒトラーが地下の要塞で過ごした最期の12日間に焦点を当て、トラウドゥル・ユンゲの目を通して、歴史的独裁者の知られざる側面を浮き彫りにしていくほか、混乱の中で国防軍の軍人やSS(親衛隊)隊員らが迎える終末、宣伝相ヨーゼフ・ゲッベルス一家の最期、老若男女を問わず戦火に巻き込まれるベルリン市民の姿にも焦点が置かれています。

ヒトラー 最期の12日間 11.jpg この映画の圧巻は、ブルーノ・ガンツが演じる、次第に冷静さを失い狂人化していくヒトラーではないでしょうか。その演技は話題になり、動画投稿サイトにおいて台詞パロディの題ヒトラー 最期の12日間 12.jpg材として広く用いられています(日本では「総統閣下シリーズ」と銘打たれている)。ただ、ブルーノ・ガンツの演技ばかりでなく、ヒトラーが総統官邸地下壕から出てきてヒトラー・ユーゲントを激励するシーンなどは、実際の記録映像を忠実に再現していて(元になった記録映像は生前のヒトラー最後の映像として残っているもの)、作りの細かさからリアリティを感じさせるものとなっています(ゲッペルスの6人の子供達も本モノそっくりしのようだ)。

ヒトラー 最期の12日間 32.jpg しかし、この映画に描かれていることが全て真実かと言うと、例えば、地下要塞の最後の生き残りだった(この映画にも登場する)親衛隊曹長で地下壕の電話交換手ローフス・ミッシュ(1917-2013/享年96)は、映画は全く事実と異なっていると言い、ヒトラーが映画みたいに怒鳴ってばかりいたというのは誇張で、また、将校らが地下壕内で乱痴気パーティのようなことをしたことも無かったとのことです(ルキノ・ヴィスコンティ監督の「地獄に堕ちた勇者ども」('69年/伊)の影響?)

アレクサンドラ・マリア・ララ(トラウデル・ユンゲ)/トラウデル・ユンゲ
トラウデル・ユンゲ .jpgトラウデル・ユンゲ.jpg そもそもこの映画の原作者の一人、ヒトラーの秘書だったトラウデル・ユンゲ(1920-2002/享年81)の父は積極的なナチス協力者であり、また、彼女の夫は親衛隊将校だったとのことで、その証言の中立性に疑問を挟む向きもあるようです。彼女は、出版社の勧めで1947 - 48年に本を執筆しましたが「このような本は関心を持たれない」という理由で出版されなかったのが、『アンネの伝記』の著者メリッサ・ミュラーと2000年に知り合い、その協力を得て2002年に初の回顧録『最期の時まで―ヒトラーの秘書が語るその人生』を出版したとのこと。その回顧録の内容に関するインタビューの様子がドキュメンタリー映画に収められ(ベルリン映画祭観客賞)、2002年2月、この映画の公開数日後に死去しています(この「ヒトラー~最期の12日間~」でも、冒頭と最後にも生前の彼女のインタビューが出てくる)。

ハインリヒ・シュミーダー(ローフス・ミッシュ)
ヒトラー 最期の12日間 ローフス・ミッシュ.jpg トラウデル・ユンゲは戦後比較的早くからヒトラーの最期について証言していますが、ローフス・ミッシュは彼女がそうした証言によって金を稼いだと批判しています。そのローフス・ミッシュ自身も1970年代からドキュメンタリー映画に登場するようになり、特に1990年代以降、ヒトラーや第二次世界大戦に関する番組によく登場していたとのことです。2006年にも「最後の証人―ロフス・ミシュ」と題するテレビ・ドキュメンタリー番組に出演、『ヒトラーの死を見とどけたローフス・ミッシュ.jpgヒトラーの死を見とどけた男.jpg男―地下壕最後の生き残りの証言』('06年/草思社)という本も書いています。また、映画製作にあたって、オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督が自分の所へ全く取材に来なかったことに不満を呈しています。

ローフス・ミッシュ『ヒトラーの死を見とどけた男―地下壕最後の生き残りの証言』('06年/草思社)

私はヒトラーの秘書だった.jpg この映画でのヒトラーの描かれ方の特徴として、ヒトラーが(特にユンゲが秘書に採用された1942年頃は)人間味もちゃんと持ち併せている人物として描かれている点で、ユンゲの著書でヒトラーが、もともとは紳士的で寛大で親切な側面があり、ユーモアのセンスさえあったように描かれていることの影響を若干反映しているように思います。こうしたユンゲのヒトラーの描き方に、彼女が直接政治には関与しなかったもののあまりに無自覚だという批判があるわけですが、それが映画にも少し反映されていることで、この映画が批判される一因ともなっているようです(彼女自身はレニ・リーフェンシュタールなどと同様、自身はナチズムやホロコーストと無関係であると生涯主張し続けたとされているが、この映画の中のインタビューでは無関係では済まされないと"懺悔"している)。 トラウデル・ユンゲ『私はヒトラーの秘書だった』('04年/草思社)

ヒトラー 最期の12日間 33.jpg 全体としては概ね事実に忠実だという評価のようですが、細部においては何が真実なのか、証言者の数だけ"真実"があって分からないということなのかもしれないです(歴史とはそういうものか)。但し、映画としては、最初はまともだったのが次第におかしくなり、最後はすっかり狂人化していくヒトラーと、最初はヒトラーに忠誠を誓っていたものの次第にその行いに疑問を感じるようになり、それでも従来の"忠誠パターン"から抜け出せないまま、最後はその異様な変貌ぶりに驚きつつ、どうにもすることも出来ずにいる取り巻き将校たちという構図が、一つの大きな見せ所となっているように思いました(ゲッペルス夫妻のように狂的に最後までヒトラーに追従して行く者もいたが、これはごく一握りか)。

ヒトラー 最期の12日間 21.jpg 今どきのビジネス書風に言えば、上司を諌めるフォロワーシップが働かなかったということでしょうか。たとえ合理的な観点から或いは良心の呵責からヒトラーに物申す将校がいたとしても、それを撥ね付ヒトラー 最期の12日間 44.jpgけて二度と自分に口答えさせないだけの迫力ある(?)狂人と化したヒトラーを、ブルーノ・ガンツは力演していたように思います。普通ならば"浮いて"しまうようなオーバーアクションなのですが(パロディ化されるだけのことはある?)、オーバーアクションであればあるほど風刺や皮肉が効いてくる映画でした。

クリスチャン・ベルケル(エルンスト=ギュンター・シェンク)
ヒトラー 最期の12日間 エルンスト=ギュンター・シェンク.jpg 但し、この映画で良心的な人物として描かれている医官のエルンスト=ギュンター・シェンク親衛隊大佐(クリスチャン・ベルケル)は、強制収容所で人体実験を行って多数の犠牲者を出したとされており、民間人の犠牲者を回避するよう繰り返し訴えるヴィルヘルム・モーンケ親衛隊少将(アンドレ・ヘンニック)は、史実においては少なくとも2度に渡り彼の指揮下の部隊が戦争捕虜を虐殺した疑いが持たれているとのことです。同監督の「ヒトラー暗殺、13分の誤算」('15年/独)でも、ヒトラー暗殺計画の手引きをしたとしてヒトラーに処刑される秘密警察のアルトゥール・ネーベを「いい人」のように描いていますが、ネーベはモスクワ戦線進軍中、ユダヤ人やパルチザンと目される人々大勢の殺害を命令した人物で、ネーベの隊だけで4万5,467人の処刑が報告されています。人にはそれぞれの顔があるわけで、映画的に分かり易くするためにその一面だけを描く傾向がこの監督にはあるのかも。一つの映画的手法だとは思いますが、対象がナチスであるだけに、これもまた異議を唱える人が出てくる原因になるのでしょう。アカデミー外国語映画賞にノミネートされましたが、受賞はアレハンドロ・アメナバル監督の「海を飛ぶ夢」に持っていかれています。

Hitorâ: Saigo no 12nichi kan (2004)
Hitora Saigo no 12nichi kan (2004).jpg
「ヒトラー~最期の12日間~」●原題:DER UNTERGANG●制作年:2004年●制作国:ドイツ・オーストリア・イタリア●監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル●製作:ベルント・アイヒンガー●脚本:ベルント・アイヒンガー●撮影:ライナー・クラウスマン●音楽:ステファン・ツァハリアス●原作:ヨアヒム・フェスト「ヒトラー 最期の12日間」/トラウデル・ユンゲ「私はヒトラーヒトラー 最期の12日間 55.jpgの秘書だった Bis zur letzten Stunde」●時間:156分●出演:ブルーノ・ガンツ/アレクサンドラ・マリア・ララ/ユリアーネ・ケーラー/トーマス・クレッチマン/コリンナ・ハルフォーフ/ウルリッヒ・マテス/ハイノ・フェルヒ/ウルリッヒ・ヌーテン/クリスチャン・ベルケル/アレクサンダー・ヘルト/ハインリヒ・シュミーダー/トーマス・ティーメ●日本公開:2005/07●配給:ギャガ●最初に観た場所:渋谷・シネマライズ(05-09-24)(評価:★★★★) ウルリッヒ・マテス(ヨーゼフ・ゲッベルス)・ブルーノ・ガンツ(アドルフ・ヒトラー)

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カーニー監督の原点的作品。映画監督がその初期にしか作れない、原石の輝き。

ONCE ダブリンの街角(07年/アイルランド)  .jpgONCE ダブリンの街角でes.jpg Once/ダブリンの街角で Marketa_Irglova_and_Glen_Hansard.jpg
ONCE ダブリンの街角で [DVD]」グレン・ハンサード/マルケタ・イルグロヴァ Glen Hansard and Marketa Irglova accept the Oscar for best original song

ONCE ダブリンの街角で01.jpg ダブリンの街中、ストリートミュージシャンの男(グレン・ハンサード)が誰もが知る曲を弾いている。夜になると自分の書いた曲を歌うが、足を止めるものはいない。そこへ、雑誌や花を売っている女(マルケタ・イルグロヴァ)が現れ、小銭をギターケースに入れる。男は皮肉交じりに礼を言うが、女の「お金のため?誰のための歌?恋人はいないONCE ダブリンの街角でs.jpgの?」という問いかけを疎ましく思いながらも相手するうちに、彼の昼の本業である掃除機修理を約束されてしまう。翌日、演奏する男の前に掃除機を引き摺った彼女が現れ、昼食を共にする。女はチェコからきた移民で、父ONCE ダブリンの街角で02.jpg親が音楽家だったという。2人は女がピアノを弾かせてもらっているという楽器店に立ち寄り、メンデルスゾーンを弾く彼女のピアノの腕を確信した男も一緒に演奏、2人のセッションは美しいハーモニーを生む。男はその演奏に自身の喜びを感じ、女に惹かれていく。翌日、男は街で花を売り歩く女を見つけ声をかけるが、前日彼女を短絡的に誘ったため女の態度はそっけない。男は謝り、自分の曲が入ったCDとプレイヤーを渡す。強引に彼女を家まで送ると、家へあがらないかと誘われる。家では母親と幼い娘を紹介され、厳しい移民の生活を目の当たりにする。男は、自分の曲に詞をつけてみないかと提案する。女はその夜、働くばかりの生活を忘れ、心に抱えていた想いを詞に込める―。

ONCE ダブリンの街角で92.jpg ジョン・カーニー監督・脚本による2007年公開のアイルランドの音楽映画。アイルランド映画局の出資を受けつつも製作費10万ドルという低予算で作られた作品で、撮影期間も17日間という短さだったそうです。2007年1月のサンダンス映画祭で観客賞を受賞し、同年3月からの全米一般公開での上映劇場数はたった2館だったのが口コミで話題になり、140館まで劇場数を増やしたとのことで、アカデミー賞の歌曲賞を受賞し(授賞式で主演の1人マルケタ・イルグロヴァが「低予算でも良いものを作れば必ず認めてもらえる」とスピーチを行い、会場から大喝采を受けた)、ミュージカル化されるまでに至っています。自身の監督第2作となるカーニー監督は「ザ・フレイムズ」の元ベース奏者であり、主演のグレン・ハンサードとマルケタ・イルグロヴァの2人も共にプロのミュージシONCE ダブリンの街角で2.jpgャンです。コスト削減のために自然光や友人達の家を使用したりし、パーティのシーンはハンサード自身のアパートが使われ、ハンサードの実際の友人がパーティ参加者および演奏者として出演したとのこと、パーティの席上で歌を披露た婦人はハンサードの母親だそうです。ダブリンの街角でのシーンは許可無しのゲリラ撮影で、望遠レンズを使うことで役者はカメラを意識することなく演技が出来たとのこと、勿論、通行人の多くも自分が映画に映り込んでいることを知らず映っていたわけで、全体として、ドキュメンタリー映画のような雰囲気があります(カメラがずっと細かく揺れていて、アドリブにカメラマンが笑って大きく揺れている場面もある)。

ONCE ダブリンの街角で03.jpg ストーリー的には所謂"ボーイ・ミーツ・ガール"の物語ですが、主人公の男女(最後まで名前で呼ばれることはなく、エンドロールでの役名が'guy''giri'となっているのが洒落ている)が互いに惹かれ合いながらも普通の恋愛映画みたに一緒にはならず、最後は(最後も行き違いのようになってしまうのだが)爽やかに別れるのが却っていいです(ロンドン行きを決めた自分に対する父親からの選別でチェコ製のピアノを買ったのかあ)。

「いいえ、私はあなたを愛している」(字幕なし)

 街でバンドのメンバーを集めるというモチーフや街角でのゲリラ演奏という撮影手法も、主人公の男女が普通の男女の関係にはならず音楽を通してそれ以上の関係になるという展開も、カーニー監督の日本公開第2作「はじまりのうた」('13年/米)に引き継がれています。「はじまりのうた」のキーラ・ナイトレイ演じる主人公の女性はイギリスからONCE ダブリンの街角で1.jpgニューヨークに来たという設定ですが、この作品のマルケタ・イルグロヴァ演じる女性は、チェコからダブリンに来た移民という設定で、共に'異邦人'であることで共通しています(イルグロヴァ自身がチェコのモラヴィア出身)。そうした意味では、カーニー監督の原点的な映画でしょうか。男女のロマンスの部分もカーニー監督の実体験がモチーフになっているとのことです(通りで演奏中にお金が盗まれるシーン、銀行でお金を借りるシーンなどは、グレン・ハンサードの下積み時代の実話だそうだ)。

スウェル・シーズン 来日公演.jpgスウェル・シーズン01.jpg 主演のハンサードとイルグロヴァは映画を通して実生活でも交際を始め、カーニー監督によれば、そのことが2006年1月のダブリンでの僅か17日での撮影を容易にしたとのことですが(1988年生まれのイルグロヴァは当時18歳だった)、2人はその年デュオ・アルバム「The Swell Season」を発表、その後私生活上は別れたものの、「スウェル・シーズン」というデュオは継続しており、2009年には初来日して公演をしています。

 ハンサードとイルグロヴァは私生活でも映画のストーリーのような関係になったわけですが、映画のストーリーで2人が結ばれなかったことにも満足していて、インタビューでハンサードは「アメリカの配給社が結末を変えて私達にキスをさせ、私は映画の宣伝活動に全くやる気をなくした」と語ったとのこと。ハンサードは、男が女に別居中の夫を今も愛しているのか尋ねる場面で、イルグロヴァがチェコ語のアドリブで「いいえ、私はあなたを愛している」(字幕なし)と言ったのに対し、ハンサードは撮影中は役の男同様に彼女が何と言ったのかわからなかったと語っており、映画と現実がいくつかの面でシンクロしているのが興味深いです(男が女にその言葉を英訳するよう求めるが、女の方は含みを持たせながらも自分の言葉の意味は教えなかったという、この一連のセリフや演技も全部アドリブなのか?)。

 「観始めて3分で泣ける」と評判の「はじまりのうた」は、ある意味映画として洗練されており、それに比べると本作は、荒削りの良さとでも言うか原石の輝きとで言うべきか、映画監督がその初期においてしか作れない作品であるように思いました。

Once Dublin no Machikado de (2007).jpgONCE ダブリンの街角で00.jpg「ONCE ダブリンの街角で」●原題:ONCE●制作年:2007年●制作国:アイルランド●監督・脚本:ジョン・カーニー●製作:マルティナ・ニーランド●撮影:ティム・フレミング●87分●出演:グレン・ハンサード/マルケタ・イルグロヴァ/ ヒュー・ウォルシュ/ゲリー・ヘンドリック/アラスター・フォーリー/ゲオフ・ミノゲ/ ビル・ホドネット/ダヌシュ・クトレストヴァ/ダレン・ヒーリー/ マル・ワイト/ マルチェラ・プランケット/ ニーアル・クリアリー●日本公開:2007/11●配給:ショウゲート●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(16-07-02)(評価:★★★★)
Once Dublin no Machikado de (2007)

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一見型破りながらも原作のホームズ像に忠実な一面もあったか。ラストがやや大味になった。

シャーロック・ホームズ 2009 dvd.jpgシャーロック・ホームズ 2009 dvd.jpgシャーロック・ホームズ 映画 2009 2.jpg
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シャーロック・ホームズ 映画 2009 00.jpg シャーロック・ホームズ(ロバート・ダウニー・Jr)と相棒で同居人のジョン・ワトスン博士(ジュード・ロウ)は、5人の女性を儀式で殺害したブラックウッド卿(マーク・ストロング)の新たな殺人を阻止し、ブラックウッドは警察に捕まる。ホームズは死刑宣告されたブラックウッドに刑務所で面会、ブラックウッドは更に3人が死に世界が変化するだろうと言い遺して絞首刑になり、ワトスンが死亡を確認する。3日後、プロの泥棒でであるアイリーン・アドラー(レイチェル・マクアダ シャーロック・ホームズ 2009s.jpgムス)がホームズのもとを訪れ、リオドンという男の捜索を依頼、ホームズは彼女を尾行し、顔の隠れた謎の雇い主に会うところを目撃する。ブラックウッドの墓が壊され棺からはリオドンの死体が現れ、リオドンの家でホームズとワトスンは、科学と魔術の融合を目的とした実験の痕跡シャーロック・ホームズ 映画 2009 03.jpgを発見、ここでブラックウッドの手先と戦った後、修道会の寺院でそのリーダーたちに会い、ブラックウッドを止めるよう依頼される。ホームズはブラックウッドは修道会のトマス卿(ジェームズ・フォックス)の息子であると言い当てるが、彼はブラックウッドによって殺され、ブラックウッドが修道会を支配する。ブラックウッドの目的は英国政府転覆と世界征服だった。ブラックウッドはホームズへの囮としてアドラーを使い、彼女は倉庫で肉切りマシンで斬られそうになったのをホームズに助けられるが、仕掛けられた爆弾でワトスンが負傷する。ホームズはブラックウッドの次の標的は議会であると結論し、ウェストミンスターSHERLOCK HOLMES 2009 london towerロード.jpg宮殿でリオドンの実験に基づいて作られた議会室にシアン化水素を流す装置を発見する。議会室に現れたブラックウッドは事前に支持者に解毒剤を飲ませており、「自分の味方にならない者は全員死ぬだろう」と宣言、ホームズとワトスンはブラックウッドの手先と戦い、アドラーは装置からシアン化化合物を盗み出して逃げる。ホームズは未完成のタワーブリッジまで逃げたアドラーを追うが、そこに計画が失敗したことに気づいたブラックウッドも現れる―。
Guy Ritchie
シャーロック・ホームズ 2009  .jpgガイ・リッチー.jpg 2009年公開の英米合作映画で、監督は、読字障害のため15歳で学校を辞めて働き始めたというガイ・リッチー(1968年生まれ)、ホームズ役は、長年の薬物依存から脱却し、2008年公開の「アイアンマン」で復活を果たしたロバート・ダウニー・Jr(1965年生まれ)です(ロバート・ダウニー・Jrは本作のホームズ役で、ゴールデングローブ賞主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞)。

シャーロック・ホームズ 映画 2009 01.jpg 「東洋武術で闘うホームズ」など、今までにないアクションスタイルのホームズ像ですが、一見型破りながらも原作の記述に忠実であるとのことで、但し、これまでに映像化されてこなかった部分を重点的に映像化しているようです。確かにそうした面はあったように思われ、最初はこんなのホームズじゃないと思っていましたが、観ているうちにだんだん馴染んでくる感じがするのもそのせいでしょうか。

シャーロック・ホームズges.jpg 闘いを事前に頭の中でシミュレーションする〈ホームズ・ビジョン〉など、ベネディクト・カンバーバッチ主演のBBCのドラマ「SHERLOCK(シャーロック)」にも通じるSFXなどもあって、「SHERLOCK」がスタートしたのがこの映画の公開の翌年ですから、多少はドラマが先行した映画の影響を受けたということがあるのではないかという気もし、そうでなくともなかなか先駆的です。

SHERLOCK HOLMES 2009 london tower.jpg ストーリーもそれなりに凝っているし、1890年という時代の雰囲気を出すために実写・CGの両面に渡って細かい描写が施されており、この辺りも英国がシャーロック・ホームズTower-Bridge.jpg製作に噛んでいる映画らしいという感じがしました。但し、最後の建設中のタワーブリッジ(1894年開通)でのホームズとブラックウッドの対決は、CGが勝りすぎてやや大味になった印象も受けました(米国風になった?)。娯楽映画としては悪くないですが、結果として逆に印象が弱くなったかも。

 アイリーンを雇った男はホームズの宿敵であるモリアーティ教授で、この作品では顔は見せませんが、続編があるような終わり方をしています。そして、実際(映画の興業的成功もあって)続編「シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム」('11年)が作られていますが、こちらはキャラクター造型だけでなく実際のコナン・ドイルの作品『最後の事件』を下敷きにしており、モリアーティも出てくるようですが個人的には未見、独立した話になっているようなので、急いで観る必要もないかなという感じでしょうか。

シャーロック・ホームズ 映画 2009  01.jpg「シャーロック・ホームズ」●原題:SHERLOCK HOLMES●制作年:2009年●制作国:イギリス・アメリカ●監督:ガイ・リッチー●製作:ジョエル・シルバー/ライオネル・ウィグラム/スーザン・ダウニー/ダン・リン●脚本:マイケル・ロバート・ジョンソン/アンソニー・ペッカム/サイモン・キンバーグ●撮影:フィリップ・ルースロ●音楽:ハンス・ジマー●原作(キャラクター創造):アーサー・コナン・ドイル●128分●出演:ロバート・ダウニー・Jr/ジュード・ロウ/レイチェル・マクアダムス/マーク・ストロング/エディ・マーサン/ケリー・ライリー/ジェラルディン・ジェームズ/ウィリアム・ヒューストン/ジェームズ・フォックス●日本公開:2010/03●配給:ワーナー・ブラザーズ(評価:★★★☆)

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ミュージカルの映画化だが原作に近いテイストも。怪人がイケメン過ぎる?

オペラ座の怪人 2004 dvd.jpg オペラ座の怪人 2004 01.jpg オペラ座の怪人 2004 02.jpg
オペラ座の怪人 通常版 [DVD]」 ジェラルド・バトラー/エミー・ロッサム

オペラ座の怪人 2004s.jpg 1870年、パリ・オペラ座。「ファウスト」の上演を控える中、劇場への不満を抱えるスター歌手のカルロッタ(ミニー・ドライヴァー)が主役を降板する。スターのドタキャンに関係者全員が浮き足立つ中、急遽、若き歌姫クリスティーヌ・ダーエ(エミー・ロッサム)がその代役を射止めるが、稀代の美声を披露したクリスティーヌは関係者の不安も一掃し、一躍スターの座に上り詰める。そんな中、劇場のパトロンで幼馴染の美青年の子爵ラウル(パトリック・ウィルソン)との再会に心を弾ませるクリスティーヌだったが、実は彼女の成功にはある秘密が隠されていたのだった―。

オペラ座の怪人5.jpg フランスの作家ガストン・ルルーによって1909年に発表された『オペラ座の怪人』の9回目の映画化作品で(ブライアン・デ・パルマ監督の「ファントム・オブ・パラダイス」('74年/米)など"翻案映画化作品を除く)、アンドリュー・ロイド・ウェバー版のミュージカルをベースにした作品であり、ミュージカルの映画化と言った方が正しいのかもしれません(アンドリュー・ロイド・ウェバーはこの映画の製作者でもあり、音楽も担当、更に脚本にも参加している)。

オペラ座の怪人 ブロードウェイ.jpg ブロードウェイ・ミュージカルの方は1988年初演で、個人的には1995年に観ましたが(野茂秀雄が大リーグに移籍した年だった)、当時で、「キャッツ」(14年目)、「レ・ミゼラブル」(9年目)に次ぐ8年目というロングランで、一方で、シガニー・ウィーバー主演のミュージカルが客の不入りで2週間で打ち切られるような出来事もあって、やはり厳しい舞台の世界の中でのロングランというのはスゴイことなのだなあと実感した記憶があります。結局、「オペラ座の怪人」の舞台は、「キャッツ」「レ・ミゼラブル」を抜いて今も続いており(今年['16年]で19年目)、ブロードウェイ・ミュージカルのロングラン記録を更新中。追いかける「シカゴ」(1996年初演)、「ライオン・キング」(1997年初演)を大きく引き離しているため、当分はこれを抜くロングランは出てこないでしょう。

オペラ座の怪人 2004 08.jpg 映画の方は、モノクロの現在(1919年)において、パリ・オペラ座で1870年に起こった惨事の遺品オークションが開かれ、当時の支援者であったラウル子爵とバレエ教師のマダム・ジリーがペルシャの衣装を纏ったサルのオルゴールを競った後、競りは昔に天井から落下して大参事を引き起こしたシャンデリアへと移り、道具方がシャンデリアを天井へ吊り上げると、子爵の記憶の中で、シャンデリアが劇場の天井に燦然と輝き、当時の記憶が甦っていくという流れでカラーの物語当時(1870年)に移っていき、多くの踊子たちが今まさに舞台稽古をする活気ある劇場の場面になるという、このモノクロからカラーに切り替わって、風化した劇場がみるみる当時の輝きを取り戻してく場面は圧巻でした。

iオペラ座の怪人 2004 09.jpg アンドリュー・ロイド・ウェバーは舞台ミュージカル「オペラ座の怪人」の作曲家であり製作者でもあって(2006年に「オペラ座の怪人」に抜かれるまでのロングラン記録を持っていた「キャッツ」も彼が手がけた)、原作をミュージカルにする際に、それまでのホラー映画的な脚本をラブロマンスに改変したことで知られています。従って、「ミュージカルの映画化」であるこの作品も、殆どロマンチック映画と言ってもよい作品なっているのと、あと、映画化される度に、怪人(ファントム)が美男子になっていく傾向にあり、この作品の怪人(ジェラルド・バトラー)で頂点に達した印象もあります。

オペラ座の怪人 2004 05.jpg 但し、クリスティーヌとラウルの素性や馴れ初めといった背景は原作から変わっておらず、映画でも原作の雰囲気を保っています。ミュージカルの映画化でありながら、原作のテイストも保っている映画化作品と言えるでしょう。原作と異なるのは、怪人の過去を知るペルシャ人のダロガ(実は元秘密警察署長で、原作では後半の主役的存在)を登場させず、マダム・ジリー(ミランダ・リチャードソン)にその役割を吸収させていることで、これは、アンドリュー・ロイド・ウェバーによってミュージカル化された際のオペラ座の怪人 2004es.jpg改変ですが、怪人、クリスティーヌ、ラウルの3者の関係を際立たせるために、ややアクのあるダロガを省いたのでしょう。マダム・ジリーが怪人の過去を知っていて(かつて怪人を匿ったのもマダム・ジリーになっている。原作ではダロガが怪人の全てを知っていて、ペルシャで彼を救ったのもダロガ)、マダム・ジリーはラウルを怪人の隠れ家の手前まで導きますが、あとは、ラウルにこの先は自分一人でお行きなさいという感じでした(原作では、ダロガはクリスティーヌを救い出そうとするラウルに最後まで付き合い、ラウルと一緒に散々危険な目に遭う)。

 そしてラストでモノクロ(1919年)に戻って、1917年に61歳で他界したクリスティーヌの墓を怪人が訪れた事を示唆するカットで終わります(ダロガの役割を兼ねたマダム・ジリーが語り部的位置づけであることも、ダロガが語り部的位置づけにある原作を一部踏襲していることなる)。

オペラ座の怪人 2004 light.jpg 大掛かりな仕掛けもあって映像的には楽しませてくれますが(落下するシャンデリアはスワロフスキー社の製作費1億2千万円のガラス製で、"一発撮り"だった)、やはり、怪人を演じたジェラルド・バトラーのイケメンぶりが一番目立っていました。マスクを外してもあまり醜い感じがしませんでしたが(原作では唇の跡も残っていないことになっている)、終盤のクリスティーヌが怪人にキスをするシーンに観客を感情移入させるにはやむを得ないのでしょうか。そのキスが、怪人が無駄な抵抗や殺戮を止める契機となるわけだし(但し、原作では怪人は連続殺人を犯すのに対し、映画ではカルロッタの恋人の歌手が唯一の犠牲者だったのでは)。

オペラ座の怪人 2004 03.jpg クリスティーヌを演じたエミー・ロッサムの歌唱は良かったように思います。他の歌唱部分もそれぞれの役者が吹き替え無しで歌っています(カルロッタ役のミニー・ドライヴァーのみ吹き替えであったが、ドライヴァーも歌唱力を生かしてエンディング・テーマを歌った)。ただ、歌とセリフが重なってしまっている部分もあって、そのことに対する否定的評価もあったようです。これは、この作品に限らずミュージカル映画の場合、歌の部分を先に収録して、それに合わせて後で演じる姿を撮る手法が一般的であるため、そうしたことが起きることがあるようですが、最近では「レ・ミゼラブル」('12年/英)のように、撮影時にピアニストを常駐させて仮の伴奏をする中で、俳優たちがその場で歌い、演技をするという手法なども用いられているようです(これなら歌とセリフが重なることはない)。

オペラ座の怪人 bw.jpg 因みに、ブロードウェイでミュージカルを観る時はきちんとした服装で観るようにと人から言われていましたが、90年代当時からバミューダ・パンツなどラフな格好で来ているニューヨーカーは多かったです。但し、カーテンコールで正装の客もラフな格好の客も全員が立ち上がって「ブラボー」と叫びながら拍手する様は圧巻でした。そうした幕が降りた後の盛り上がりは映画館では体感できませんが、映画としては充分に愉しめます。本来は悲劇なのだけど、「レ・ミゼラブル」のように泣けるという感じにはならない作品、ストーリーよりもパッションを堪能する作品でしょうか。

オペラ座の怪人 2004 tx.jpg「オペラ座の怪人」●原題:THE PHANTOM OF THE OPERA●制作年:2004年●制作国:アメリカ●監督:ジョエル・シュマッカー●製作:アンドルー・ロイド・ウェバー●脚本:ジョエル・シューマカー/アンドリュー・ロイド・ウェバー●撮影:ジョン・マシソン●音楽:アンドルー・ロイド・ウェバー●原作:ガストン・ルルー●時間:143分●出演:ジェラルド・バトラー/エミー・ロッサム/パトリック・ウィルソン/ミランダ・リチャードソン/ミニー・ドライヴァー/キーラン・ハインズ/サイモン・キャロウ●日本公開:2005/01●配給:ギャガ・コミュニケーションズ●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(15-09-01)(評価:★★★★)

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知識人目線、外国人目線は感じるが、ラストシーンは青春のノスタルジーに満ちていて秀逸。

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戴思杰(ダイ・シージエ)

小さな中国のお針子 [DVD]
Chisana chûgoku no ohariko(2002)

中国の小さなお針子 マー・ルオ.jpg 1971年、文革の嵐が吹き荒れる中国。青年マー(馬剣鈴)(劉燁〈リウ・イエ〉)とルオ(羅明)(陳坤〈チェン・クン〉)は医者を親に持つことから、反革命分子の子として再教育のために奥深い山村へ送り込まれた。彼らはそこで過酷な肉体労働を強いられる。ある日二人は、美しい少女、お針子(周迅〈ジョウ・シュン〉)に出会う。ルオはお針子に一目惚れした。彼らは、同じ再教育で来ている若者が禁書である西洋の本を大量に隠し持っていることを知り、それ中国の小さなお針子 THE LITTLE CHINESE SEAMSTRESS 3.jpg中国の小さなお針子 THE LITTLE CHINESE SEAMSTRESS 2.jpgを盗み出す。そして、文盲のお針子に毎夜西洋の文学を読み聞かせてあげるのだった。許されない秘密を共有することで結びつきを強める三人。そして、お針子は西洋文学が語る自由に次第に目覚めていく―。

 戴思杰(ダイ・シージエ)監督・脚本による2002年製作のフランス・中国の合作映画で、原作は戴監督の自著『バルザックと小さな中国のお針子』(早川書房刊)。マーとルオが農村に行かされたのは、文化大革命当時の所謂「下放」運動の対象となったわけですが、戴思杰監督自身、この作品の主人公らと同じく10代の時に「下放」されており、原作及び映画にはその時に実際にあったことなども盛り込まれているとのことです(お針子の祖父の仕立て屋に9晩かけて「モンテクリスト伯」を物語るエピソードは実際にあった話らしい)。

中国の小さなお針子 THE LITTLE CHINESE SEAMSTRESS.png 「下放」に出された経験がある監督は、「第五世代監督」の旗手と言われる「紅いコーリャン」の張芸謀(チャン・イーモウ)、「さらば、わが愛/覇王別姫」の陳凱歌 (チェン・カイコー)を筆頭に数多くいて、「下放」そのものを扱った映画も、陳監督の「子供たちの王様」('87年/中国)や、「紅いコーリャン」に主演した姜文(チアン・ウェン)が監督した「太陽の少年」('94年/中国・香港)、陳冲(ジョアン・チェン)監督の「シュウシュウの季節」('98年/米)、池谷薫監督の「延安の娘」('02年/日)などがあります。

 但し、陳凱歌は2002年以降アメリカで活動しているし、姜文は00年代に中国当局より7年間映画製作・出演禁止処分を受けています。「シュウシュウの季節」はアメリカ映画、「延安の娘」は日本映画で、この「小さな中国のお針子」も、フランス・中国の合作映画ですが実質的にはフランス映画です。

 戴思杰監督自身は福建省で医師の両親のもとに生まれ、1971年から74年まで四川省の山岳地帯で「再教育」を受けたあとに1984年に政府給費留学生としてパリ映画高等学院に留学、そのままフランスに在住し、フランス語で書いた初の小説『バルザックと小さな中国のお針子』で作家デビュー、これがフランスで40万部のベストセラーとなり、フランス人プロデューサーにより映画化に至ったという経緯です(多くのプロデューサーから映画化権獲得の申し入れがあった)。

中国の小さなお針子s.jpg中国の小さなお針子 ルオ・お針子3.jpg そのように、実質フランス映画であるということもあってか、観ていてそれっぽい筋書きや演出、或いは撮り方をしていると感じれる部分がありました。主人公の二人、ヴァイオリン青年マー(より作者の分身に近いと言える)と歯科医を目指すルオが違った形でお針子に恋をするため、二人の青年とお針子の恋愛を描いた青春映画としての色合いも濃いように思います。革命思想に洗脳されたかのように見えた村長も実は人柄はそう悪くなく、後にマーが再訪した時は歓待してくれたという―いくら恋愛絡みにしても、みんな懐かしくていい思い出となり、苦楽ともにノスタルジーによって美化されてしまうというのはどうなのかという印象は若干あります。しかし、戴監督自身は、「下放」というのは映画の背景に過ぎず、描きたかったのは「文学の力が人を変えていく」様だったというようなことを、どこかのインタビューで答えていたように思います。

中国の小さなお針子 マー・お針子.jpg 個人的に印象に残った場面があり、それは、お針子がルオの子どもを身籠ってしまって違法ながらも中絶するしかなくなり、マーが町で何とか産科医に会い、自分の父親の名前を告げると、マーの父親の名も政治的不遇をも知っていたにも関わらずその産科医に身構えられてしまい(マーが「妹」に生理が無いので相談に乗って欲しいと切り出し「お前の父親に娘などいない」と嘘がバレれたということもあるが)、マーが最後に一縷の望みを賭けて、この窮状を救ってくれるならば「バルザックの本を一冊差し上げます」と言ってその本を見せると、産科医がその中の一文を読んで、「この翻訳は傅雷だな、文体で分かる。可哀そうに、お前のお父さんと同じ人民の敵だ」と言いい、こらえきれなくなって泣きじゃくるマーを慰め、お針子や青年たちのために危険を冒してひと肌脱ぐ決意をするという箇所で、ああ、これは当時弾圧を受けながらも内面の矜恃を保った多くの「知識人」に対するオマージュなのだなあと思いました。

中国の小さなお針子 G.jpg そうした「知識人目線」みたいなのは確かにあり、その辺りもこの映画に対する批判的な見方の要因としてあるようです。お針子の描き方は、川端康成の原作で何度も映画化された「伊豆の踊子」などにも通じるところがあるように思いました(あの名作には東大生から見た"上から目線"との批判もある)。あとはやはり「外国人目線」でしょうか(正確には"外国からの目線"か)。中国語タイトル「巴爾扎克与小裁縫」(バルザックと小さなお針子)に対し、フランス語タイトルは「Balzac Et La Petite Tailleuse Chinoise」(原著共)。原著の仏語タイトルに倣って日本語タイトルに「中国の」とわざわざ入れたことで一層「外国人目線」が意識させられるようになってしまいましたが、ある意味、この作品の微妙な本質というか性格を表しているようにも思います。

 とは言え、批判するのは簡単、中国に外国からスタッフが入って映画を作るのは大変、という事情もあったかと思います。まず、中国国内での撮影許可を得るために当局と交渉があって、原作で27年後に再会する主人公二人が、作者及び監督の分身であるマーの方はバイオリンの名手となってパリで友人と四重奏団を組んでいて、ルオの方はアメリカで歯科医になっているのに対し、「二人とも海外に行ってしまっているのはけしからん」という当局のクレームで、ルオは上海で歯科医となりその分野での国家的権威になっているという具合に改変されています。これも現地でロケを行う許可を得るためのバーター条件だったとのことでやむを得ないのかも。

張家界.jpg 中国で中国の俳優を使って中国の地で撮影出来たことはやはり大きかったように思います。ロケ地の張家界(湖南省)は幻想的に美しく今や中国の一大観光名所ですが、当時は60人の映画クルーが何日もかけてやっと辿り着き、そこには何も無かったと言います。撮影のために建てた主人公の青年らが寝起きした住居などは、後に休憩所として使えるように取り壊さないで残してきたとのことです。

 ストーリーの中では鳳凰山にあるこの美しい村が三峡ダムの工事で水没することになったため、マーは懐かしさに駆られて村を再訪するわけですが、村長など老人はいてもお針子がいないというのが辛いです(文学によって村以外の世界を知ったお針子は、マーやルオがいる時に村を出てしまっていたのだが、戻ってはいなかった)。二人がお針子に文学を読んで聞かせた部屋が水没するラストシーンのイメージ映像は、惜別の念と青春のノスタルジーとに満ちていて秀逸。やはりコレ、青春恋愛映画だなあ。思い出の土地が水没するというのは、痕跡は無くとも土地がそのままであるというのとはまた違った深い寂しさがあるだろうなあ、などと思いました。

周迅(ジョウ・シュン).png劉燁〈リウ・イエ〉.png陳坤〈チェン・クン〉.jpg 当局との中国でのロケ交渉と併せ、中国との共同製作作品とし中国の俳優を使うことを条件として作られた映画であるのに(何れも中国国内で上映できるようにとの仏側からの提案だった)、結局、中国では上映もされていなければ原作も刊行されていない状態が今も続いていますが、周迅(ジョウ・シュン)をはじめ主演俳優のその後の人気もあって、海賊版のビデオやインターネット動画などで結構多くの人が観ているのではないかという気もします。
周迅(ジョウ・シュン)/劉燁(リウ・イエ)/陳坤(チェン・クン)

中国の小さなお針子 wakare.jpg「小さな中国のお針子」●原題:巴爾扎克与小裁縫/BALZAC ET LA PETITE TAILLEUSE CHINOISE/BALZAC AND THE LITTLE CHINESE SEAMSTRESS●制作年:2000年●制作国:フランス・中国●監督:戴思杰(ダイ・シージエ)●脚本:戴思杰(ダイ・シージエ)/ナディーヌ・ペロン●撮影:ワン・プージャン●音楽:ジュン=マリー・ドリュージュ●原作:戴思杰(ダイ・シージエ)●時間:110分●出演:周迅(ジョウ・シュン)/陳坤(チェン・クン)/劉燁(リウ・イエ)/王双宝(ワン・シュアンパオ)/叢志軍(ツォン・チーチュン)/王宏偉(ワン・ホンウェイ))●日本公開:2003/01●配給:アルバトロス・フィルム(評価:★★★☆)

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独特のセンスとメッセージ性。「大感動」というより「心地よい読後感」といった感じ。

アメリ dvd.jpgアメリ dvd3.jpg アメリ m.jpg アメリ 原作.jpg
アメリ【期間限定スペシャル版】 [DVD]」「アメリ [レンタル落ち]」「AMELIE FROM MONTMARTRE 「アメリ」オリジナル・サウンドトラック」『アメリ

アメリ 4.jpg 神経質で元教師の母親と冷淡な元軍医の父親を持つアメリはあまり構ってもらえず、両親との身体接触は父親による彼女の心臓検査時だけ。いつも父親に触れてもらうのを望んでいたが、稀なことなので心臓が高揚し、心臓に障害があると勘違いした父親は、学校には登校させず周りから子供たちを遠ざけてしまう。その中で母親を事故で亡くし、孤独の中で彼女は想像力の豊かな、しかし周囲と満足なコミュニケーションがとれない不器用な少女になっていく。そのまま成長して22歳となったアメリ(オドレイ・トトゥ)は実家を出てアパートに住み、モンマルトルにある元サーカス団員経営のカフェで働き始める。ある日、偶然に自室から小さな箱を発見し、中に入っていた子供の宝物を持ち主に返そうとした彼女は、探偵の真似事の末に前の住人を探し、箱を持ち主に返して喜ばれたことで、彼女は人を幸せにすることに喜びを見出すようになる―。

アメリ01.jpg 2001年のジャン=ピエール・ジュネ監督作で、原題"Le Fabuleux Destin d'Amélie Poulain"は「アメリ・プーランの素晴らしい運命」の意。フランスではそれなりにヒットしたはずの作品ですが、日本ではゲテモノ映画と間違えられたとの話もあります(イポリト・ベルナールの原作の翻訳刊行は映画公開後)。当時低予算のB級映画を専門としていたアルバトロスによって配給され、渋谷・シネマライズで単館上映され観客約18万人を動員し、シネマライズの歴代ナンバーワン映画興行収入作品となりました。全体興行収入では16億円を突破してアルバトロス初のヒット作品となり、それ以降、同社が再びアート作品を配給するきっかけとなります(この配給会社は1980年代の創業時は、主にヨーロッパやアジアの良質な映画も取り扱っていた)。2001年アカデミー賞外国語映画賞、美術賞、撮影賞、音響賞、脚本賞ノミネート作品です。
アメリ02.jpg
 個性的なセンスと独特のビジュアル、エスプリとユーモアに溢れた作品で(結構ブラックユーモアが多いためゲテモノ映画と間違えられたのか?)、こんなの今まで見たことないという感じでした。敢えて言えば、駅のスピード証明写真機のボックスに定期的に現れる男は一体何者かといったミステリ風味を効かせている点で、ジャン=ジャック・ベネックスの「ディーバ」('81年/仏)を想起しましたが、やはり作品全体がこの監督のオリジナリティを色濃く反映したものとなっているように思います。

アメリ04.jpg そして何よりもオドレイ・トトゥ演じるアメリがいいです。クレーム・ブリュレの表面をスプーンで割ったり、パリを散歩しサン・マルタン運河で石を投げ水切りをするなど、ささやかな一人遊びと空想にふける毎日を送っていたアメリは、子供時代の宝箱を持主に届けて喜ばれたことで、「この時、初めて世界と調和が取れた気がし」、以降、父親の庭の人形を父親に内緒で世界旅行をさせ父親に旅の楽しさを思い出させるなど、様々な人に関与するようになります。

アメリ03.jpg そうした彼女にも気になる男性が現れ、それはスピード写真のボックス下に捨てられた他人の証明写真を収集する趣味を持つ若者でしたが、気持ちをどう切り出してよいのかわからず、他人を幸せにしてきた彼女も自分が幸せになる方法は見つからない―でも最後は、アパートの同居人で絵描きである老人らに励まされて...。

 観終わってみれば、単に独特のセンスの作品であるということだけでなく、運命は変えられるという強いメッセージ性を含んだ作品であり、コアなファンがいる作品ですが、「大感動」というより「心地よい読後感」といった感じでしょうか(全体にナレーションが多く物語調で話は展開されている)。「世界を旅する人形」の謎と「駅の証明写真機に定期的に現れる男」の正体がそれぞれ解った時は、思わずクスリとさせられました。

アメリ maruti.jpg「アメリ」●原題:TLE FABULEUX DESTIN D'AMELIE POULAIN●制作年:2001年●制作国:フランス●監督:ジャン=ピエール・ジュネ●製作:クロディー・オサール●脚本:ジャン=ピエール・ジュネ/ギヨーム・ローラン●撮影:ブリュノ・デルボネル●音楽:ヤン・ティルセン●原作:イポリト・ベルナール●時間:122分●出演:オドレイ・トトゥ/マチュー・カソヴィッツ/セルジュ・マーリン/ジャメル・ドゥブーズ/ヨランド・モロー/クレア・モーリア/ドミニク・ピノン/クロディルデ・モレ/リュファス/イザベル・ナンティ/アータス・デ・ペンクアン/(ナレーション)アンドレ・デュソリエ●日本公開:2001/11●配給:アルバトロス・フィルム●最初に観た場所(再見):北千住・シネマブルースタジオ(15-03-25)(評価:★★★★)

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オリジナルに大きく及ばない。人間ドラマを期待すると肩すかしを喰う。

ポセイドン 2006 dvd.jpgポセイドン [DVD]」 ポセイドン (06年/米).jpg

ポセイドン 2006 090.png 大晦日、豪華客船ポセイドン号は北大西洋を航海していた。客室にいたクリスチャン(マイク・ヴォーゲル)と恋人ジェニファー(エミー・ロッサム)は、彼女の父ラムジー(カート・ラッセル)が来たため慌てて離れる。賭博師ディラン(ジョシュ・ルーカス)は、エレナ(ミア・マエストロ)という女性とぶつかるが、実はエレナは、ウエイターのヴァレンタイン(フレディ・ロドリゲス)の手引きでの密航だった。乗客はダンスホールに集まり、船長(アンドレ・ブラウアー)の挨拶でパーテポセイドン 2006        .jpgィーが始まる。歌手グロリア(ファーギー)がステージに登場し、バンドの演奏で歌い始めた。ラムジーやディラン、ラッキー・ラリー(ケヴィン・ディロン)といった面々は、カジノでカードに興じている。ジェニファーはクリスチャンとディスコに向かい、ディランは、シングルマザーのマギー(ジャシンダ・バレット)と息子のコナー(ジミー・ベネット)に出会う。建築家のネルソン(リチャード・ドレイファス)は仲間たちに、妻から別れ話を切り出されポセイドン 2006 81.pngたことを打ち明ける。新年が訪れ、ダンスホールで乗客たちが盛り上がる中、ブリッジでは一等航海士が異変を感じ取っていた。異常波浪に気付いた彼は慌ポセイドン 2006 a3.pngてて面舵を切らせるが、ポセイドン号は激しい揺れに見舞われ転覆、ディスコでは火災が発生して照明が消え、船は逆さまになり、大勢の犠牲者が出る。衝撃が収まると、船長は「ここに留まって助けを待っていれば安全だ」と告げるが、ディランは船長のポセイドン 2006 ac2d.png言葉に従わず、船底から外に出るつもりだと言い、ラムジーも娘を捜すため同行を決める。ネルソンは建築家の見地から、船長の安全宣言に懐疑的だった。ラムジーはディランに、共に協力し合おうと持ち掛けるが、彼は断わる。ラムジーはヴァレンティンに乗務員出口に案内してくれたら報酬を払うと持ちかけ、ディランにも改めて協力を持ちかけるとディランは承諾し、マギー母子、ネルソンも彼らに付いていくことに。一方、ディスコではクリスチャンが瓦礫に足を挟まれて動けなくなっており、ジェニファーとエレナが救出を試みていた―。

ポセイドン・アドベンチャー パンフr.jpgポセイドン・アドベンチャー01.jpg 「ポセイドン・アドベンチャー」('72年)のリメイクであり、監督は「アウトブレイク」('95年)などのウォルフガング・ペーターゼン。期待された見所は、スペクタクルシーンを最新のCGなどを使ってどのように撮るかという点と、オリジナルの人間ドラマの部分をどのように再構成するかという点だったと思われますが、アカデミー賞視覚効果賞にノミネートされたスペクタクルシーンの方はまあまあだったものの、人間ドラマの方は、批評家からは、「ポセイドン・アドベンチャーで描かれていた人間ドラマ的な面は大きく省かれたという評価を受け、ゴールデンラズベリー賞の最低リメイク賞にもノミネートされることになってしまいました。

ポセイドン 2006 08.png 話の枠組みだけは「ポセイドン・アドベンチャー」を踏襲しており、皆が留まっているダンスホールから独自に脱出を図るメンバーの数が「10名」であるのも同じです(早い段階でその内2人が犠牲ポセイドンY.jpgになるのも同様)。序盤で彼らの出自が簡単に紹介的に描かれているだけに、それらがどう人間ドラマとして反映されるのかと思いましたが、やはり、結局はあまり深く描かれてなかったという印象でした。期待して観ると肩すかしを喰います(但し、人間ドラマより純粋スペクタクルを好む人にはそう悪くないかも)。

 オリジナルではジーン・ハックマンとアーネスト・ボーグナインの2大キャラのぶつかり合いが大きな見所でしたが、この作品では、カート・ラッセルとジョシュ・ルーカスが、一旦はオリジナルのように反発し合うものの、すぐさま協力体制に入ってしまい、ジーン・ハックマンにおける、脱出行のメンバーの中に自分の考えに反発する者もいる中で(しかもメンバーの一部はそちらに靡きそうになる中で)、皆をどう導いていくかといったリーダーとしての難しい局面も出てきません。

ポセイドン 2006 07.jpg そもそも、カート・ラッセルはジーン・ハックマンのように他の乗客に一緒に脱出しようと強く働きかけることもしないし、脱出行に出たコアメンバ-もオリジナルに比べると何となく結束力が弱い感じ。潜水で犠牲者が出るのはオリジナルと同じですが、オリジナルではジーン・ハックマンを救うためにシェリー・ウィンタース演じる中年女性が犠牲ポセイドン 2006 01.pngになるのだけれど、この作品でエレナ(ミア・マエストロ)の死は殆ど事故のようなもの。カート・ラッセルは最後にヒロイックな犠牲的精神を発露しますが、ジーン・ハックマンのような牧師が"神"に向かって呼びかけるといった重い感じもありません。

エミー・ロッサム/カート・ラッセル

 オリジナルで淀川長治が「その背中に天使の羽根が見えた」と褒め讃えた、船底に"上がる"ために少年が巨大なクリスマスツリーをよじ登っていくシーンなども再現されていなかったなあ。折角、淀川長治がその象徴性を高く評価したほどの場面だったのに...。

ポセイドン 2006 04.jpgポセイドン エミー・ロッサム.jpg 一方で、オリジナルは、3人の女性がアクションシーンで何かと脚線美を披露するなど、B級映画的要素も兼ね備えていたのに、そうした部分はこのリメイクでは(慎み深く?)抑え気味で、歌手ファーギーやブエノスアイレス出身の女優ミア・マエストロ、「オペラ座の怪人」('04年)ポセイドン リチャード・ドレイファス.jpgエミー・ロッサムなども、ビジュアル面でも演技面でもやや勿体ない使われ方をしていたように思います。リチャード・ドレイファスの役も、誰が演じてもいいようなものでした(まあ、客演のようなものか)。いろいろな見方できますが、総じてオリジナルに大きく及ばなかったと言っていいのではないでしょうか。

ファーギー(ステイシー・ファーガソン)/ミア・マエストロ/エミー・ロッサム in「オペラ座の怪人」
ファーギー.jpgミア・マエストロ.pngエミー・ロッサム オペラ座の怪人.png「ポセイドン」●原題:POSEIDON●制作年:2006年●制作国:アメリカ●監督:ウォルフガング・ペーターゼン●製作:ウォルフガング・ペーターゼン/アキヴァ・ゴールズマン/ダンカン・ヘンダーポセイドン 2006 メンバー.jpgソン/マイク・フレイス●脚本:マーク・プロトセヴィッチ●撮影:ジョン・シール●音楽:クラウス・バデルト●原作:ポール・ギャリコ●98分●出演:カート・ラッセル/ジョシュ・ルーカス/ジャシンダ・バレット/リチャード・ドレイファス/エミー・ロッサム/ミア・マエストロ/マイク・ヴォーゲル/ジミー・ベネット/アンドレ・ブラウアー/フレディ・ロドリゲス/ケヴィン・ディロン/カーク・B・R・ウォーラー/ファーギー(ステイシー・ファーガソン)/ケリー・マクネア●日本公開:2006/06●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場所:丸の内ピカデリー1(06-07-01)(評価:★★☆)

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エピローグでのオリジナリティのある展開。ラストに感動させられた。

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善き人のためのソナタ 1.jpg 1984年、東西冷戦下の東ベルリン。国家保安省(シュタージ)局員のヴィースラー大尉(ウルリッヒ・ミュー善き人のためのソナタ 0.jpgエ)は、後進の若者たちに大学で尋問の手法を講義する教官をしている。ある日、ハムプフ文化相(トーマス・ティーメ)の意により、劇作家のドライマン(セバスチャン・コッホ)と舞台女優である恋人のクリスタ(マルティナ・ゲデック)が反体制的であるという証拠を掴むよう命じられる。国家を信じ忠実に仕えてきたヴィースラーだったが、かつての同期ヴォルヴィッツ(ウルリッヒ・トゥクル)が今は国家保安省の中佐として彼の上司となっている。但し、この盗聴作戦に成功すれば彼にも出世が待っていた。しかし、権力欲にまみれた大臣や、それに追従し自らの政界進出のために手段を選ばないヴォルヴィッツを見るにつけ、彼のこれまでの信念は揺らぐ。更に、盗聴器を通して知る劇作家のドライマンと恋人クリスタの、これまで彼が経験したことのなかった自由、愛、音楽、文学の世界に影響を受け、いつの間にか新しい価値観が彼の中に芽生えてくる―。

善き人のためのソナタ 4.jpg フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督33歳の時の初の長編作品であるとともに、ヨーロピアン・フィルム・アワード主要3部門制覇、アカデミー賞外国語映画賞受賞など多くの賞を受賞した出世作でもあり、映画監督ヴェルナー・ヘルツォークは「ドイツ映画史上、最も素晴らしい作品である」との賛辞を寄せています。記録文書のリサーチだけで4年を費やしたとのことで、人類史上最大の秘密組織と言われる"シュタージ"の内幕を正確に描いているそうです(撮影も当時の建物などが使われた)。ストーリーの本筋そのものは実話ではありませんが、断片的には当時の記録や証言をもとに多くの実話的要素を織り込んでいるようです。

善き人のためのソナタ 2.jpg ある意味、人は変われるかということをテーマにしている作品ともいえ、公開当時は"シュタージ"にヴィースラーのような人間はいなかったとの批判もあったようです。更には、作品の描かれ方としても、ヴィースラーの変化が一部には唐突感をもって受け止められたようですが、個人的には、ヴィースラーの変わっていく様子は、ウルリッヒ・ミューエの抑制の効いた演技によって説得力をもって伝わってきました。

善き人のためのソナタ 3.jpg スパイ映画的な緊迫感もあって、エンタテインメントとしても上手いと思いました。ただ、終盤に大きな悲劇があって、ここで終わりかと思ったら、ややもの足りない印象も。ところが話はやや長めのエピローグへと入っていきます。エピローグが長い映画でいい作品は少ないように思われ、どう落とし込むのかと思ったら、最後はいい意味で予想を裏切り、オリジナリティのある展開で大感動させてくれました。

善き人のためのソナタ 5.jpg ベルリンの壁崩壊後に自分達が盗聴されていたことを初めて知ったドライマン。では当時なぜ当局にすぐさま検挙されることが無かったのか、その謎を探るうちにある真実が浮かび上がり、その"当事者"に行き着く―。当のヴィースラーは、ベルリンの壁崩壊前は国家保安省で閑職に追いやられていましたが、ベルリンの壁崩壊後もチラシを投函する仕事をしていて、かつての大学教員の面影は無く落魄しています。しかし、ドライマンは彼を見つけても声を掛けないし、駆け寄って有難うと言って抱きついたりもしない―この抑制がいいです。でも、作品としてのカタルシスという面ではどうかなと思ったら...。

善き人のためのソナタ 6.jpg 最後、ヴィースラーは相変わらずチラシ配りをしています。そのヴィースラーが偶々ドライマンの新刊の広告を書店前で見かけて店に入り、その著作『善き人のためのソナタ』を手にしてページをめくった時に、もう何が出てくるか、さすがにここまでくれば観ていて分かってしまうのですが、やはり感動してしまいます。そして、ギフト用に包みましょうかと声をかける若い店員に、「私のための本だ」と言ったときのヴィースラーの表情といい、その表情のストップモーションで終わるエンディングといい、カタルシス全開でした(ラストで一番泣かせてくれるというのがニクイ)。

 この作品の中には、幾つもの相似形・相対系が見られたように思います。例えば、好色の文化相に蹂躙されボロボロになって帰って来たクリスタを責めることなく慰めるように受け入れるドライマンと、モダンで無機質な印象を受ける部屋にコールガールを呼ぶ孤独なヴィースラーとの対比、或いは、権力者に弄ばれるクリスタと、それを見ながら自分も同じように権力者に使役されていることを悟るヴィースラー(クリスタが当初は当局の協力者だったならば、その変化という意味でもヴィースラーと重なる)、ドライマンを天井裏から監視する善き人のためのソナタ9.jpgヴィースラーと、終盤のヴィースラーを発見するも観察するだけのドライマン、大学で尋問手法の講義で使われたヴィースラーが被尋問者の人格を否定するかのように番号で呼ぶ場面と、本の献辞の中にあったHGW XX/7というヴィースラー自身を指すコード(但し後者は、ドライマンにとっては自分を助けてくれた恩人の唯一の手掛かりとなり、ヴィースラーにとっては自らの人生の選択が正しかったことを再確認させるものとなった)、等々。

Yoki hito no tame no sonata (2006) .jpg ヴィースラーを演じたのウルリッヒ・ミューエの抑制の効いた演技が何と言っても素晴らしかったですが、彼自身も東ドイツ時代にシュタージの監視下に長年置かれていた経験の持ち主であるとのことです。この作品に出演した翌年の2007年7月に癌のため54歳で逝去しているのが惜しまれます。

「善き人のためのソナタ」●原題:DAS LEBEN DER ANDEREN(英題:THE LIVES OF OTHERS)●制作年:2006年●制作国:ドイツ●監督・脚本:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク●製作:クヴィリン・ベルク/マックス・ヴィーデマン●撮影:ハーゲン・ボグダンスキー●音楽:ガブリエル・ヤレド/ステファン・ムーシャ●時間:137分●出演:ウルリッヒ・ミューエ/マルティナ・ゲデック/セバスチャン・コッホ/ウルリッヒ・トゥクル/トーマス・ティーメ/ウーヴェ・バウアー/フォルクマー・クライネルト/マティアス・ブレンナー●日本公開:2007/02●配給:アルバトロス・フィルム●最初に観た場所:渋谷・シネマライズ(07-04-01)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ(15-06-09)(評価:★★★★☆)
Yoki hito no tame no sonata (2006)
    
シネマライス31.JPGシネマライス9.JPGシナマライズ 地図.jpgシネマライズ 1986年6月、渋谷 スペイン坂上「ライズビル」地下1階に1スクリーン(220席)で「シネマライズ渋谷」オープン。1996年、2階の飲食店となっていた場所(1986年6月から1991年6月まで「渋谷ピカデリー」だった)に2スクリーン目を増設。「シネマライズシネマライズ220.jpgBF館」「シネマライズシアター1(2階)(303席)(後のシネマライズ)」になる。2004年、3スクリーン目、デジタル上映劇場「ライズX(38席)」を地下のバースペースに増設。地下1階スクリーン「シネマライズBF館(旧シネマライズ渋谷)」2010年6月20日閉館(地下2階「ライズⅩ」2010年6月18日閉館)。2011年、編成をパルコエンタテインメントに業務委託。地上2階「シネマライズ」2016年1月7日閉館。[写真:2015年11月26日/ラストショー「黄金のアデーレ 名画の帰還」封切前日]

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重くのしかかってくる作品ではあるが、"謎"の残る作品でもあった。

ヒトラー暗殺、13分の誤算ps.jpg ヒトラー暗殺、13分の誤算 .jpg ヒトラー暗殺、13分の誤算0.jpg
「ヒトラー暗殺、13分の誤算」('15年/独)
ヒトラー暗殺、13分の誤算es.jpgヒトラー暗殺、13分の誤算 cast.jpg 1939年11月8日、ミュンヘンのビアホールで恒例の記念演説を行っていたヒトラーは、いつもより早く退席するが、その僅か13分後ホールに仕掛けられていた爆弾が爆発する。当日のヒトラーの予定を徹底的に調べあげたその計画は緻密かつ大胆、更に時限装置付きの爆弾は精密かつ確実なものだった。ドイツ秘密警察ゲシュタポは、単独犯はあり得ないと考え、英国諜報部の関与を疑うが、逮捕されたのはゲオルク・エルザー(クリスティアン・フリーデル)という36歳の平凡な家具職人だった。彼はスパイどころか所属する政党もなく、すべて自分一人で実行したと供述。それを知ったヒトラーは、犯行日までの彼の人生を徹底的に調べるよう命じる。やがて、人妻エルザ(カタリーナ・シュットラー)との恋、音楽、そして自由を謳歌していた"普通の男"の信念が明らかになっていく―。

 監督は、「ヒトラー~最期の12日間~」('04年/独・墺・伊)でアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたオリヴァー・ヒルシュビーゲル監督で、ヒトラーの暗殺計画は幾つもあったゲオルク・エルザー.jpgようですが、この作品の中で取り上げられているものはその中でもマイナーなもののようであり、このゲオルク・エルザーは、小林信彦氏によれば、戦後ドイツが東西に分断されていた時は、西ドイツでは共産主義者と見做され、東ドイツでは無視されて、彼が見直されたのは1990年のドイツ再統一以降のことであり、復権署名運動が始まったのは1993年になってとのことだそうです。
ゲオルク・エルザー

ヒトラー暗殺、13分の誤算11.jpg そうした意味では、戦後70年を迎え、ドイツにおいても過去を振り返る戦争映画が多く作られている、その流れの中で作られた作品であるとも言えるし、裏を返せば、エルザーのことはまだドイツでも詳しくは知られてはおらず、彼の復権運動は現在進行形であるとも言え、ドイツ国民に彼のことを知らしめる目的で作られた、何よりも先ず国内向け映画であるとも言えます。

ブルクハルト・クラウスナー(アルトゥール・ネーベ)/ヨハン・フォン・ビュロー(ハインリッヒ・ミュラー)/クリスティアン・フリーデル(ゲオルク・エルザー)

 そのことは、ドイツ国民が知っているようなことは説明が端折られている点にも現れており、例えば、エルザーを尋問していた秘密警察のアルトゥール・ネーベ(ブルクハルト・クラウスナー)が終盤では自らが処刑されてしまうシーンがありますが、これはヒトラー暗殺計画の中でも最も有名な1944年7月20日の暗殺計画が失敗に終わった後、その首謀者らと通じていたネーベの謀反も発覚し(映画でその誘因が仄めかされているように彼は途中からゲシュタポのやり方に疑問を感じて反ヒトラーに転じた)、ネーベは逃亡するも1945年1月にゲシュタポに捕まって死刑を宣告され、その年の3月にヒトラー自身の望みによりピアノ線による絞首刑が行わヒトラー 〜最期の12日間〜b.jpgれたことに符合しています。そして、この(大掛かりな方の)暗殺未遂事件の関係者の摘発と逮捕を担当しヒトラー暗殺、13分の誤算FJ.jpgたのが、映画でヨハン・フォン・ビュローが演じているハインリッヒ・ミュラーです(ナチ党指導者で逮捕されず、死亡も確認されていない唯一の人物でもある)。但し、そうした事実をある程度知らないと、なぜネーベがミュラーの目の前で絞首刑に処されるのか、また、なぜ、そうした処刑方法がとられるのかが解らない。因みに、この作アルトゥール・ネーベ.jpg品では、ネーベは根はいい人だったようにもとれますが、彼は1941年にアインザッツグルッペンが組織された際のB隊司令官となり、モスクワ戦線への進軍中、ユダヤ人やパルチザンと目される人々大勢の殺害を指揮命令した人物で、ネーベのB隊だけで4万5,467人の処刑が報告されています。
アルトゥール・ネーベ

ヒトラー暗殺、13分の誤算02.jpg 一方、エルザーの回想として描かれる彼の私生活の部分は、一部フィクションが混ざっているそうですが、どの程度なのか。人妻に恋をし(件の人妻が夫のDVに遭っているといった設定は何となくフィクションっぽいが)、友を思い遣り、音楽を愛するヒトラー暗殺、13分の誤算01.jpg彼のキャラクターはなかなか人間味があっていいし、そうした自由な雰囲気が少しずつ奪われていく中で彼がヒトラーの暗殺計画を思い立つという流れは解らなくもないですが、他の人の中にもヒトラーに盲目的に追従する人ばかりではなく、そうした風潮に危惧を抱いていた人はいたはずであるのに(実際この映画にもパルチザンが登場するが)、なぜ彼だけが、こうした勇気と根気、大胆さと綿密さを要する計画をその実施にまで漕ぎ着けることが出来たのか、その辺りが今一つ見えにくく、"あの時代にこんな人もいたんだよ"的なところで終わってしまっているようにも思えなくもありませんでした。

ヒトラー暗殺、13分の誤算12.jpg ゲオルク・エルザーの背後に英国諜報部の関与があると疑ったのは、映画にある通りヒトラー自身であり、その背後関係を調べるよう命を受けたハインリヒ・ヒムラーが直接エルザーを取り調べ、エルザーに罵声を浴びせながら足蹴にし、ゲシュタポの一人にエルザーを鞭で苦痛で悲鳴をあげるまで打ちすえたというから、映画ではヒムラーの人物像がミュラーに置き換えられていると見ることもできますが、そんなことより、エルザーがそうした拷問に耐え抜いたことが不思議な気も。彼は1945年4月9日にダッハウ強制収容所内で処刑されますが、ヒットラーが自殺を遂げたのはその3週間後。ネーベなどが既に処刑されているのに、その5年前に事件を起こしたエルザーがそこまで生かされていたというのも不思議。ドイツ人に非ずとも重くのしかかってくる作品ではありますが、個人的には、"謎"の残る作品でもありました。
Elser (2015)
Elser (2015).jpgヒトラー暗殺、13分の誤算 es.jpgヒトラー暗殺、13分の誤算s.jpg「ヒトラー暗殺、13分の誤算」●原題:ELSER/13 MINUTES●制作年:2015年●制作国:ドイツ●監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル●製作:ボリス・アウサラー/オリバー・シュンドラー/フレート・ブライナースドーファー●脚本:レオニー=クレア・ブライナースドファー●撮影:ユーディット・カウフマン●音楽:デヴィッド・ホームズ●114分●出演:クリスティアン・フリーデル/カタリーナ・シュットラー/ブルクハルト・クラウスナー/ヨハン・フォン・ビュロー●日本公開:2015/10●配給:ギャガ●最初に観た場所:渋谷・シネマライズ(15-11-26)(評価:★★★☆)

シネマライス31.JPGシネマライス9.JPGシナマライズ 地図.jpgシネマライズ 1986年6月、渋谷 スペイン坂上「ライズビル」地下1階に1スクリーン(220席)で「シネマライズ渋谷」オープン。1996年、2階の飲食店となっていた場所(1986年6月から1991年6月まで「渋谷ピカデリー」だった)に2スクリーン目を増設。「シネマライズシネマライズ220.jpgBF館」「シネマライズシアター1(2階)(303席)(後のシネマライズ)」になる。2004年、3スクリーン目、デジタル上映劇場「ライズX(38席)」を地下のバースペースに増設。地下1階スクリーン「シネマライズBF館(旧シネマライズ渋谷)」2010年6月20日閉館(地下2階「ライズⅩ」2010年6月18日閉館)。2011年、編成をパルコエンタテインメントに業務委託。地上2階「シネマライズ」2016年1月7日閉館。[写真:2015年11月26日/ラストショー「黄金のアデーレ 名画の帰還」封切前日]

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映画化で再注目された面もあるが、個人的には原作も映画も(特にそこに込められた毒が)好き。

チョコレート工場の秘密 yanase.jpg チョコレート工場の秘密 tamura1.jpg チョコレート工場の秘密 tamura 2.jpg  チャーリーとチョコレート工場 dvd.jpg Roald Dahl.png
チョコレート工場の秘密 (ロアルド・ダールコレクション 2)』柳瀬 尚紀:訳 クェンティン・ブレイク(イラスト)/田村 隆一:訳 J.シンデルマン(イラスト)(1972/09 評論社)/『チョコレート工場の秘密 (児童図書館・文学の部屋)』 田村 隆一:訳 J.シンデルマン(イラスト)(評論社・改訂版)/「チャーリーとチョコレート工場 [DVD]

Charlie and the Chocolate Factory1.jpgCharlie and the Chocolate Factory2.jpgCharlie and the Chocolate Factory.jpg 外界から隔離された巨大なチョコレート工場がある大きな町の片隅で、貧乏な暮らしを余儀なくされている少年チャーリーとその一家。ある日、チョコレート工場の工場主ウィリー・ワンカ氏が、自社のチョコレートの中に5枚のゴールデンチケットを隠し、チケットを引き当てた5人の子供を工場見学に招待すると発表する―。

Roald Dahl(著), Quentin Blake(イラスト)

 1964年にロアルド・ダール(Roald Dahl、1916-1990/享年74)が発表した児童小説(原題:Charlie and the Chocolate Factory)で、個人的には、子どもの頃に心と響き合う読書案内.jpg何となく見聞きした覚えがある気もしますが、最近ではまずティム・バートン監督、ジョニー・デップ主演の映画化作品「チャーリーとチョコレート工場」('05年/米)を観て、作者名と併せて再認識したのは小川洋子氏の『心と響き合う読書案内』('09年/PHP新書)で紹介されていたことによるものでした(周囲にも大人になって原作を読んだ人が多くいるような気がするが、映画の影響か)。

 子どもの頃のチョコレートが目一杯食べられたらいいなあという願望を投影した作品とも言えますが、小川氏の場合は、社会科の工場見学にわくわくした記憶が甦ったようで、その気持ちも分かる気がします。一方で、この作品の中にはちょっと怖い場面もありますが、これも童話につき物の「毒」のようなものとみることができるのではないでしょうか(この「毒」がいいのだが)。

 チャーリー以外の4人の悪ガキのうち、デブの男の子がチョコレートの川に落ちて吸い上げられたパイプに詰まったり、女の子が巨大なブルーベリーに変身させられたりするため、発表時はこんなものは子どもに読み聞かせ出来ないとの批判もあったそうですが、作者は毎晩自分の子どもたちに読み聞かせしているとして批判をかわしたそうな。但し、最初の草稿では、面白がって悪ガキを15人も登場させたら、さすがに試しに読んでもらった甥に「このお話は不愉快で嫌だ」と言われて書き直したそうです(「チョコレート工場の秘密の秘密」―『まるごと一冊ロアルド・ダール』より)。

 また、この作品の邦訳は、柳瀬尚紀氏の訳の前に田村隆一氏の訳がありますが(柳瀬尚紀氏の訳は映画化に合わせたものか)、田村隆一氏の訳では主人公の名前がチャーリー・バケットとなっているのに対し、柳瀬尚紀氏の訳ではチャーリー・バケツとなっているなど、登場人物名に作者が込めた意味が分かるようになっています(例えば、肥満の子どもだったら「ブクブトリー」とか)。この訳し方にも賛否両論があるようですが(小川洋子氏は、柳瀬訳は「手がこんでいる」としている)、既にオーソドックスな翻訳(田村訳)があることを前提にすれば、こうした訳もあっていいのではないかという気もします。個人的にはどちらも好きですが。

まるごと一冊ロアルド・ダール.jpgクェンティン・ブレイク.jpg 但し、挿絵は、柳瀬訳のクウェンティン・ブレイク(Quentin Blake、1932年生まれ)のものが良く、大型本である『まるごと一冊ロアルド・ダール』('00年/評論社)によるとロアルド・ダールは何人かの画家と組んで仕事をしているようですが、クウェンティン・ブレイクとのコンビでの仕事が最も多く、また、クウェンティン・ブレイクの絵は、ちょっとシュールな話の内容よくマッチしたタッチであるように思います。
まるごと一冊 ロアルド・ダール (児童図書館・文学の部屋)
         
チャーリーとチョコレート工場o.jpg このお話は、メル・スチュアート監督(「夢のチョコレート工場」('71年/米)ジーン・ワイルダー主演)と、先に述べたティム・バートン監督(「チャーリーとチョコレート工場」('05年/米))によってそれぞれ映画化されていますが、ジョニー・デップがチョコレート工場の工場主ワンカ氏に扮した後者「チャーリーとチョコレート工場」は比較的記憶に新しいところで、ジョニー・デップの演技力というより、演CHARLIE & CHOCOLATE FACTORYI.jpg出に「バットマン」シリーズのティム・バートン色を感じましたが、ストーリー的には原作を忠実になぞっています。男の子がパイプに詰まったり、女の子が巨大なブルーベリーに変身してしまったりするのもCGを使って再現していますが(映画館で近くに座った男の子が「CGだ、CGだ」といちいち口にしていた)、庭園のモニュメントや芝生はパティシェによって作られた本物の菓子だったそうです。

チャーリーとチョコレート工場 set.jpgティム・バートン「チャーリーとチョコレート工場」('05年/米)

チャーリーとチョコレート工場1.jpg 但し、ジョニー・デップ扮するワンカ氏が、幼少時代に歯科医である厳格な父親に半ば虐待に近い躾を受けたことがトラウマになっている"アダルトチルドレン"として描かれているのは映画のオリジナルで、これに原作の続編である『ガラスのCHARLIE & CHOCOLATE FACTORYR.jpg大エレベーター』('05年/評論社)の話をミックスさせて、ラストはワンカ氏がチャーリーとその家族を通して新たな「家族」に回帰的に出会う(トラウマを克服する)というオチになっており、やや予定調和的である気もしますが、プロセスにおいて悪ガキが散々な目に遭い、一方のワンカ氏はケロッとしている(或いはふりをしている)という結構サディスティックな「毒」を孕んでいるため、こうしたオチにすることでバランスを保ったのではないでしょうか(映画はそこそこヒットし、映画館はロード終盤でも週末はほぼ満席。結構口コミで観に行った人が多かったのか)。結局は「家族愛」に搦め捕られてしまったワンカ氏といった感じで、個人的には、折角の「毒」を弱めてしまった印象が無くもありません。

チャーリーとチョコレート工場 uppa.jpg 「2001年宇宙の旅」「サタデー・ナイト・フィーバー」「鳥」「サイコ」「ベン・ハー」「水着の女王」「アフリカの女王」「アダムス・ファミリー」「スター・ウォーズ」といった映画作品へのオマージュも込められていて、後でまた観直してみるのも良し。音楽面でもクイーンやビートルズ、キッスへのオマージュが込められています。こうした味付けもさることながら、ビジュアル面で原作の(クウェンティン・ブレイクの絵の)イメージと一番違ったのは、チョコレート工場で働くウンパ・ルンパ人(柳瀬訳は「ウンパッパ・ルンパッパ人」)でしょうか。ワンカ氏がアフリカの何処かと思しきジャングルの地から連れてきた小人たちですが、色黒のオッサンになっていたなあ。演じたのはディープ・ロイというケニア生まれのインド人俳優で、インドで26代続くマハラジャの家系だそうですが、この映画で165人のウンパルンパ役をこなしたとのことです。個人的には原作も映画も(特にそこに込められた毒が)好きですが、映画は子どもも楽しんでいたのでは。

Roald Dahl2.jpg単独飛行2.jpg ロアルド・ダールは学校を卒業して、まず石油会社に入社して最初の勤務地が東アフリカで、第二次世界大戦では空軍パイロットとして活躍したとのことですが、乗Roald Dahl going solo.jpgった飛行機が燃料切れを起こして墜落、九死に一生を得たとのこと。その後、文筆家として活動するようになり、まずアフリカで聞いた話やパイロット時代の経験を生かして短編小説を書き始め、やがて児童文学の方へ進んだとのことです。初期の作品は、自伝的短編集『単独飛行』('00年/早川書房)に収められているほか、『まるごと一冊ロアルド・ダール』('00年シンバ.JPG/評論社)でもその一部を読むことが出来ますが、最初に原稿料を貰ったのが、アフリカでライオンに咥えられ連れ去れたけれども無事だった女性を実際に目撃した話の記事だったというからスゴイね(「シンバ」―『単独飛行』より)。

『まるごと一冊ロアルド・ダール』('00年/評論社)

サン=テグジュペリ2.png宮崎駿2.jpg 自らの飛行機が墜落して生還するまでのドキュメントも記していますが、『夜間飛行』のサン=テグジュペリ(1900-1944)と、同じ飛行機乗りであって遭難も経験している点で似ており(サン=テグジュペリは第二次世界大戦中に撃墜されて結局不帰の人となったが)、あの宮崎駿監督は、サン=テグジュペリ同様にロアルド・ダールをも敬愛していて、自らの作品においてオマージュをささげたり、共に文庫本の作品の解説を書いたりしています(サン=テグジュペリ『人間の土地』(新潮文庫)とロアルド・ダール『単独飛行』(ハヤカワ・ミステリ文庫))。

007は二度死ぬ チラシ.jpgチキ・チキ・バン・バン 01.jpg 因みに、ロアルド・ダールは「007シリーズ」のイアン・フレミング(1908-1964)と親交があり、映画007は二度死ぬ」('67年/英)と「チキ・チキ・バン・バン」('68年/英)の脚本も手掛けています(イアン・フレミングが「チキ・チキ・バン・バン」の原作者と知った時は今一つぴんとこなかったが、間に児童文学作家ロアルド・ダールが噛んでいたのか)。

チャーリーとチョコレート工場 dvd2.jpg「チャーリーとチョコレート工場」●原題:CHARLIE & CHOCOLATE FACTORY●制作年:2005年●制作国:アメリカ●監督:ティム・バートン●製作:ブラッド・グレイ/リチャード・D・ザナック●脚本:ジョン・オーガスト●撮アナソフィア・ロブ.jpg影:フィリップ・ルースロ●音楽:ダニー・エルフマン●原作:ロアルド・ダール●時間:115分●出演:ジョニー・デップ/フレディ・ハイモア/デヴィッド・ケリー/ヘレナ・ボナム=カーター/ノア・テイラ/ミッシー・パイル/ジェームズ・フォックス/アナソフィア・ロブ/アダム・ゴドリー/アダム・ゴドリー/ディープ・ロイ/クリストファー・リー/ジュリア・ウィンター/ジョーダン・フライ/フィリップ・ウィーグラッツ/リズ・スミス●日本公開:2005/09●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場所:丸の内TOEI2(05-10-23)(評価:★★★☆)アナソフィア・ロブ(AnnaSophia Robb) in 「ソウル・サーファー」('11年)/「チャーリーとチョコレート工場」('05年)
丸の内東映.jpg丸の内toei.jpg丸の内TOEI2(銀座3丁目・東映会館) 1960年丸の内東映、丸の内東映パラスオープン(1992年~丸の内シャンゼリゼ)→2004年10月~丸の内TOEI1・2

【1972年単行本[評論社(児童図書館・文学の部屋)/田村隆一:訳(『チョコレート工場の秘密』)]/2005年単行本[評論社(ロアルド・ダールコレクション)/柳瀬尚紀:訳(『チョコレート工場の秘密』)]】

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卿の方が娘たちに利用されていた(?)「選ばれし者の遺伝子」。

第78話/選ばれし者の遺伝子 dvd.jpg第78話/選ばれし者の遺伝子 dvd2.jpg 第79話/ボクシングに沸く村 dvd.jpg
"Midsomer Murders" Master Class (選ばれし者の遺伝子)/The Noble Art (ボクシングに沸く村)

第78話/選ばれし者の遺伝子0.jpg マイケル・フィールディング卿(ジェームズ・フォックス)と2人の娘は、ピアノの英才教育を行うプライベート・スクールを運営していた。生徒の中でも優れた才能を持つ一人ゾーイが、ある日、白いドレスの若い娘が川で溺れるのを目撃する。早速、捜索が行われるが何も発見されなかった―(「第78話/選ばれし者の遺伝子」)。

バーナビー警部(第78話)/選ばれし者の遺伝子.jpg 最初にゾーイが川で見たものがあまりにクリアで、そこからミスリードされてしまいましたが、犯人もまた個人的には想定外の人物でした。このシリーズ、「第40話/千里眼の系譜」で超能力を存在を肯定的に扱っていましたが、ここでは、音楽における「遺伝的才能」の絶対性を肯定的に扱っていて、こうした本来ならば議論が分かれそうなものについて、大胆に一つの"見解"を示しているところが、なかなか興味深かったです。

第78話/選ばれし者の遺伝子 1.jpg 犯人としては自分は絶対に「天才」なわけで、あとは天賦の才を持った女性と交わり、今度はその娘と―といった具合に"再生産"していくわけかあ。それにしても「父親でもあり祖父でもある」というのがスゴかったなあ。その前の代からそれを繰り返しているのか。

 これ、完全に近親相姦であり、遺伝学上危ないです。でも、自分の遺伝子が入っていることに意義があるわけだから、そうしたことも織り込み済みなのでしょう。あの有名なバッハの家系などはこれと似たようなものだったらしいし(演奏中に鼻血が出てしまったは、劣勢遺伝だったのか)。

2第78話/選ばれし者の遺伝子 .jpg第78話/選ばれし者の遺伝子 3.jpg しかし、音楽学校の生徒も変なのが多かったなあ。特にマスタークラスの最終選抜に漏れてストーカーみたいになってしまった男子。それと、子供ながらに、ゾーイとそのライバル(性格悪そうな娘だなあ)の二股かけて、結局、殺害されてしまった男子。その子の母親はその時、フィールディング卿に対する色仕掛け攻勢の真っ最中だったわけで、卿自身にはアリバイがあるわけだけど、まさか、学校全体でやっていたとはねえ。「魔女の館」みたいで、卿よりも娘(オバサン)達の方が怖かった(若干「ローズマリーの赤ちゃん」風)。見方によっては卿の方が彼女らに利用されていたのかも。


第79話/ボクシングに沸く村 1.jpg ミッドサマー・モーチャード出身のジョン・キンセラ対ガルシア・ラ・トサのボクシング試合が行われ、キンセラが勝利する。キンセラの祝賀会が催されるが、飛行機の遅れで本人やトレーナー、プロモーターは参加できなかった―(「第79話/ボクシングに沸く村」)。

第79話/ボクシングに沸く村 0.jpg 最初、登場人物が皆あまり乱脈で、誰と誰が不倫していて誰が二股かけているのか、本筋の人物相関はどうなっているのか、把握するのが難しかったです。仕舞には、ゲイ関係まで出て来るし...領主ジェラルド(ケビン・R・マクナリー、「ミス・マープル(第19話)/青いゼラニウム」('10年)にサマーセット警部役で出演)の息子セバスチャンが何を嘆いているのか最初は解らなかったけれど、実は殺害された弁護士とそういう関係だったのか...)。

第79話/ボクシングに沸く村 8.jpg でも、バーナビーが領主ジェラルドに対し、やけに友人としての信頼を置いているところで、ああ、これ、彼が往年のロックスターに再会した歓びでその目が曇った「第55話/悲憤の刃」と、もしかしたら同じパターンではないかと思いました。

Midsomer Murders (The Noble Art) house.jpg しかし、今度は、自分が意識的に彼を容疑者から外していることを充分に自覚していたなあ。ジョイスに自分が情に流され易いタイプか訊いているところで、観ている側としてはほぼ犯人は判ったという感じでしょうか。但し、それもかなり後半の方で、そTHE NOBLE ART.jpgれまでは自分もミスリードされ続けたわけですが(ジョーンズとのアクション付きボクシング談義で、一応、容疑者候補の一人ではあったけれど)。
 金に執着が無いと思われた人物の方が実は一発勝負を賭けていたわけかあ(邸を賭けの担保にするかね、フツー。それも大邸宅!)。冒頭のマジソン・スクェア・ガーデンからのタイトルマッチ中継でキンセラが勝った瞬間の映像が謎解きの時に改めて流れたけれど、全然印象に無かったなあ。

 犯人の目星がついてからは、意外と余裕のように見えたバーナビーでした。全く無駄な殺人を3件もやってしまった、その皮肉を嘆く犯人に関して、「我々の目の前で3件の殺人をやってのけるような人間は、我々とは別の人間だ」と部下ジョーンズに言い聞かせるくらい割り切った様子(最初の頃の、「判事(領主)はこちら側の人間だ」発言はもうさっぱり忘れてしまっている?)。

 まあ、バーナビーは学習した(?)のか以前の轍は踏まなかったわけで、その点では満足しているみたいだし、イギリスはとっくの昔に死刑制度を廃止していることもあって、この軽さなのかも。

Midsomer Murders Master Class .png第78話/選ばれし者の遺伝子 2.jpg「バーナビー警部(第78話)/選ばれし者の遺伝子」●原題:MIDSOMER MURDERS:MASTER CLASS●制作年:2010年●制作国:イギリス●本国上映:2010/10/06●監督:レニー・ライ●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:ニコラス・マーティン●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジェイソン・ヒューズ/ジェーン・ワイマーク/バリー・ジャクソン/カースティ・ディロン/ジェームズ・フォックス●日本放映:2013/10/25●放映局:AXNミステリー(評価:★★★☆)

第79話/ボクシングに沸く村.jpg第79話/ボクシングに沸く村 si.jpg「バーナビー警部(第79話)/ボクシングに沸く村」●原題:MIDSOMER MURDERS:THE NOBLE ART●制作年:2010年●制作国:イギリス●本国上映:2010/10/13●監督:リチャード・ホルトハウス●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:Barry Purchese●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジェイソン・ヒューズ/ジェーン・ワイマーク/バリー・ジャクソン/カースティ・ディロン/ケビン・R・マクナリー●日本放映:2013/11/02●放映局:AXNミステリー(評価:★★★)

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バーナビーの従兄弟ジョン・バーナビーが前フリ的登場。スプラッター・モードだが観光気分も。

第75話「ギヨームの剣」dvd.jpg 第75話「ギヨームの剣」dvd2.jpg バーナビー警部(第75話)/ギヨームの剣 バーナビー.jpg  The Sword of Guillaume 3.jpg
Midsomer Murders : Season 13, Episode 1 Sword of Guillaume (ギヨームの剣)

バーナビー警部(第75話)/ギヨームの剣 1.jpg第75話「ギヨームの剣」被害者1.jpg 長年関係が途絶えていた2つの町、コーストンとブライトン。コーストンがブライトンの土地の購入を検討中ということもあって、2つの町の友好関係を築く目的の旅行が計画されるが、裏には個人利益を狙う人々がいた。そして、ツアーの最中、参加者の一人ダルグリーシュがお化け屋敷列車で首を切り落とされた姿で見つかる―。

Hugh Dalgleish(Tim McInnerny)

バーナビー警部(第75話)/ギヨームの剣 3.jpg第75話「ギヨームの剣」被害者2.jpg バス旅行ツアーにバーナビーが参加するという設定は、アガサ・クリスティの『復讐の女神』を想起させ、そして、その行った先で殺人事件が起きるというのも同じだなあと(クリスティ作品へのオマージュであることは間違いない?)。殺害されそうな人物は大体予測がつきましたが、それにしても生首がゴロンとは。そして、次なる殺人も生首状態で発覚、被害者は、ツアー中にバーナビーに秋波を送り続けていたジェニー・ラッセル。スプラッター・モード全開といったところでしょうか。

Jenny Russell (Lucy Cohu)
バーナビー警部(第75話)/ギヨームの剣 ジョン.jpg シーズン13の第1話にあたりますが、トム・バーナビー警部の従兄弟のジョン・バーナビー警部(ニール・ダジョン Neil Dudgeon)がブライトン署の刑事として登場。シーズン14、第82話から主役交代することになるわけですが、その前フリでしょうか(ということは従兄弟ジョン・バーナビーはコーストンからブライトンへ転勤してくるのか)。「バーナビー警部」と呼ばれて2人とも同時に反応するところが可笑しいです(一番笑ったのは、牧師が神の存在に疑念を抱いて悩んでいる時に"奇跡"が起きた場面だったのだが。蝋燭の上に偶々物が落ちて火がついただけなのだが、当の牧師は思わずひれ伏していた)。

 トム・バーナビーを演じるジョン・ネトルズの降板が決まった後、後継主役候補として、ナサニエル・パーカー、ルパート・ペンリー=ジョーンズ、ジェイソン・アイザックス、ブラッドリー・ウォルシュ、フィリップ・グレニスターなど錚々たる名前が挙がっていましたが、ニール・ダジョンに決定。まあ、そう悪い選択ではなかったように思います。
DCI John Barnaby (Neil Dudgeon)
バーナビー警部(第75話)/ギヨームの剣 牧師.jpg
 いつもながらに人間関係が錯綜していて、最初の内はとても犯人の見当などつきそうにもなかったけれど、脇役と思われた人物が被介護者を抱きかかえて階段を楽々と上っていく場面で、ああ、もしかして...と。背後関係や動機はかなり後の方にならないと分からなかったのですが、牧師がゲイだったとはね。「第34話/炎の惨劇」でも牧師と副牧師がホモ関係というのがありましたが。
                       Rev Giles Shawcross (Mark Gatiss)
バーナビー警部(第75話)/ギヨームの剣 2.jpg しかし、女当主マチルダ、子孫を残すためにそこまでやるのかあ。事件解決後は「可哀そうな○○○○」の一言で済ませてしまって(まあ、自分の計画を潰した一方で、自分の代わりに復讐してくれたのも○○○○だったとも言えるが)、そそくさとバーナビーを追い返した感じ。そんな中、当主の息子である被介護人リチャードのバーナビーに向けた目線が気になります。
Lady Matilda William (Janet Suzman)

The Sword of Guillaume 2.jpg それにしても、バーナビーの部下ジョーンズ巡査部長とスティーブンス巡査の若い2人の職場恋愛はなかなか進展しないなあ。バーナビーの居ぬ間に携帯電話持っているから大丈夫と水辺でのランチを洒落込んだら、上司バーナビーからその携帯に殺人事件発生の急報が入り、「何故アヒルの声が聞こえるんだ」と言われて冷や汗をかく始末。

The Sword of Guillaume Landscape.jpg コーストンが架空の町であるのに対し、ブライトンは実在の観光地で、実業家や有名芸能人などが引退後に暮らす地としても人気の場所。いつもの長閑な田園風景とはまた一味違った、風光明媚な海沿いの光景や垢抜けた街並みがちょっとした観光気分で楽しめるエピソードでもありました。

バーナビー警部(第75話)/ギヨームの剣 sfx.jpg「バーナビー警部(第75話)/ギヨームの剣」●原題:MIDSOMER MURDERS:SWORD OF GUILLAUME●制作年:2010年●制作国:イギリス●本国上映:2010/02/10●監督:レニー・ライ●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:マイケル・エイトケンス●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジェイソン・ヒューズ/ジェーン・ワイマーク/バリー・ジャクソン/カースティ・ディロン/ニール・ダジョン●日本放映:2013/10/04●放映局:AXNミステリー(評価:★★★☆)

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冷戦時代の裏切り行為に対する壮絶な復讐劇。制服警官から私服刑事になったゲイル。ジョーンズとの関係はどうなる?

バーナビー警部 69「スパイたちの秘密」dvd1.jpgバーナビー警部 69「スパイたちの秘密」dvd2.jpg バーナビー警部 69「スパイたちの秘密」01.jpg
Midsomer Murders: Season 12, Episode 3 Secrets and Spies(スパイたちの秘密)

SECRETS AND SPIES.jpg アレンビー・ハウスの当主フレーザー卿は、かつてMI6に所属し、ベルリンの壁崩壊以前に東ベルリンから西側へ逃亡者を送る作戦を指揮していた。そのチームには彼の息子ニッキーと妻ジェニーも入っていた。しかしフレーザー卿は現在は、自分の棺を用意したり、葬儀のリハーサルをするなどして家族に持て余されていた。フレーザー卿は、生活維持費のために、アレンビー・ハウスバーナビー警部 69「スパイたちの秘密」6.jpgをMI6のセイフ・ハウスとして提供することに了承する。そこへやってきたバーナビー警部 69「スパイたちの秘密」3.jpgラーキンは、フレイザー卿とも息子ニッキーとも反りの合わなかったが、その彼が、クリケットの試合の直後に死体で発見される。死体には、獣に噛まれたような痕があり、羊番のセスは「ミッドサマーの伝説」の復活をマスコミに吹聴する―。

バーナビー警部 69「スパイたちの秘密」4.jpg クリケットの試合が出てくるのは、このシリーズでは「第8話/不実の王(採石場にのろいの叫び)」('99年)以来で、その時はトロイ巡査部長が試合に出ましたが、今度はジョーンズ巡査部長が試合に出ています。一方のバーナビーも、ジョーンズに依頼されて審判をやることになってルールを猛勉強。「主任警部モース」シリーズの「第10話/欺かれた過去」('89年)でもクリケット・シーンがありましたが、モースが試合を見ているだけで、しかもそのうち居眠りしてしまうのとは対照的(一方のモースの部下ルイス巡査部長はプロ級の腕前を見せる)。

バーナビー警部 69「スパイたちの秘密」05.jpg クリケットの試合って、合間に「お茶とお菓子の時間」があるのが普通なのか。バーナビーがその際に妻ジョイスに、クリケットの審判は「神になれる」から楽しいと漏らした背景には、事件の方が情報機関の管轄になって捜査権を奪われてしまったことへの不満があったのでしバーナビー警部 69「スパイたちの秘密」2.jpgょう。そのバーナビーもかつてMI6に所属していたことをジョイスは初めてバーナビーから知らされますが、その彼女が読んでいる本が、John Le Carréのスパイ小説の古典"Tinker Tailor Soldier Spy"(邦題も『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』)で、2011年に「裏切りのサーカス」(英・独・仏合作)として映画化されており、ジョイスは映画化に合わせて原作を読んでいたのかも。

 事件は、冷戦時代の裏切り行為に対する壮絶な復讐劇だったわけで、考えてみれば随分と時間をかけた且つ手の込んだ復讐方法だったように思われますが、推理音痴の自分にとっては犯人の意外性はありました。プロローグをよく注意して見て考えれば、分からないことはないのですが...(妻ジェニー(アリス・クリーグ)の"スゴ技"って何だ?? )。
Alice Krige

バーナビー警部 69「スパイたちの秘密」03.jpg ジョーンズは同僚の女性警官ゲイル・スティーブンス(カースティ・ディロン)が念願叶ってDC(DC DITECTIV Constable=巡査)になったことを自らも喜んでいるけれど(因みにジョーンズ自身は第51話「呼ばれた殺人者」でDCからDS(DS DITECTIV Sergeant=巡査部長)に昇進しており、前々任のトロイはそのDS(番組表記はSgt.)からDI(DI DITECTIV Inspector=警部補)に昇進した。バーナビーは更にその1つ上のDCI(DCI DITECTIV Chief Inspector=警部))、いざ仕事となるとやりにくいのか、彼女を置いてきぼり気味。事件関係者の聞き込みの際に女性学芸員の甘い誘惑に乗らないところ(上)は彼らしいけれど、制服警官から私服刑事になってどんな服を着ればよいか迷っているスティーブンスの相談に対してもつれないです。
バーナビー警部 69「スパイたちの秘密」02.jpg 彼女からチームワークで仕事すべきだと言われ、防犯カメラの映像分析の仕事をさせると、彼女の方がそこから犯人の絞り込みに繋がるヒントを見つけ出し、逆に一歩遅れをとる(スティーブンスはその前には容疑者の情事が映っている場面を見て、男女の付き合いの長いことを断言し、男性らを絶句とさせている(左))―といった具合に、いいコンビと言えばいいコンビだし、お互い頭にくることもあると言えばそうとも言えます。バーナビーの娘カリーの結婚で「娘の恋愛」ネタが無くなった後は、このジョーンズとスティーブンスの「異性の同僚」ネタがしばらく続いており、男女ネタのサイドストーリーで視聴者を惹きつけるのが上手いなあと思いました(スティーブンスは制服姿の印象が強くて、彼女の私服姿を見慣れるのに時間がかかりそう)。

バーナビー警部 69「スパイたちの秘密」ロケ地.jpg「バーナビー警部(第69話)/スパイたちの秘密」●原題:MIDSOMER MURDERS:SECRETS AND SPIES●制作年:2009年●制作国:イギリス●本国上映:2009/06/29●監督:レニー・ライ●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:マイケル・エイトケンス●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジェイソン・ヒューズ/ジェーン・ワイマーク/バリー・ジャクソン/カースティ・ディロン/アリス・クリーグ●日本放映:2013/01/18●放映局:AXNミステリー(評価:★★★☆)

The cricket match was filmed at Wormsley Park, former home of Sir Paul Getty, where he built a replica of The Oval cricket ground, Kennington, London.

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プロット的には秀作だが、バーナビーの"ロック・マニア"ぶりがやや浮き気味。スージー・クワトロが懐かしかった。

バーナビー警部(第55話)/悲憤の刃 dvd.jpg バーナビー警部(第55話)/悲憤の刃 アックスマン.jpg バーナビー警部(第55話)/悲憤の刃 バーナビー1.jpg
Midsomer Murders: Season 10, Episode 4 The Axeman Cometh(悲憤の刃)

バーナビー警部(第55話)/悲憤の刃 感電.png ミッドサマーで野外ロックフェスティバルが開かれることになった。30年ぶりの再結成で注目を集める「ハイヤード・ガン」というバンドも出演予定だったが、このバンドは、メンバーの1人が30年前に事故に遭ったまバーナビー警部(第55話)/悲憤の刃 被害者.jpgま失踪していた。ロック・コンサートが始まり、ボーカルのミミ(スージー・クワトロ)が歌い出しマイクを握った途端、高圧電流が流れ彼女は感電死する。バンドリーダーのゲイリーは警察に、切り裂かれた豚や鳥の死骸を送り付けられる脅迫を受けていたことを明かす。やがて、バンドメンバーのアックスマンのバイクが爆破され、もう一人のメンバーのニッキーは車ごとプールに沈められた死体で見つかる―。

 バーナビーがこれほどのオールド・ロックファンだったなんバーナビー警部(第55話)/悲憤の刃 スージー・クアトロ.jpgて。これまでそんなこと、おくびにも出さなかったのに、今回はやけにはしゃぎ気味。アックスマンへの崇拝ぶりに、ジョーンズ巡査部長も、捜査に偏見が入るのではないかと心配するぐらいで、いつものバーナビーとかなり雰囲気が異なりました(個人的には、久しぶりに見るスージー・クワトロが懐かしかったが、歌い始めたと思ったらいきなり殺されてしまった...)。
Suzi Quatro

バーナビー警部(第55話)/悲憤の刃 カリー.jpg カリーがバンドのマネージャーのサイモンにたまたまイベント会場で足を踏んづけられて、お詫びに楽屋裏に出入りできるチケットを貰ったことから、二人の交際が始まります(サイモン君、ボートハウス暮らしかあ。カリーは誘われて中に入ったところで"OK"ということか)―これが、第60話「結婚狂想曲」で二人は結婚式を挙げることになるわけだから、男女の付き合いとは偶然によって始まるのものだなあと(足を踏んづけなければ二人の結婚は無かった?)。

バーナビー警部(第55話)/悲憤の刃 娘.jpg ストーリーは、随分と手の込んだ復讐劇だったなあという印象です。何のための復讐なのかは最後にならないと明かされませんが、アックスマン愛用のバイクが爆破されたというのは、ミスリードをさせるものでした(疑いを呈したジョーンズ巡査部長、いつもミスリードさせられる役回りなのに、今回は彼の方が侮れなかった。むしろ彼が正鵠を射ていたことの方が決定的なミスリード要因か?)。

バーナビー警部(第55話)/悲憤の刃 プール.jpg 車ごとプールに沈められたメンバーの殺人も、アリバイの作り方が大胆でした("映像の欺瞞"スレスレのところでやっているなあ)。フツー、人妻とベッドにいたことを娘に証言させるかねえ。まあ、それはたまたまそうなったわけだけど。それに、動物の死骸の送り付けによる脅迫も入り混じってややこしい。復讐劇がダブルで進行していたわけか。これはもう、犯人を当てるのは不可能という印象でした(スティーブン・セガール似の執事は禿だったのかあ)。

バーナビー警部(第55話)/悲憤の刃 バーナビー2.jpg ラストは、犯人の動機としては説得力がありましたが、バーナビーはどこで犯人が判ったのか(写真がヒントになったことは間違いないが)それがよく解りませんでした。バーナビーに疑惑を進言しながらも、結局はちんぷんかんぷんのジョーンズ巡査部長に対して、「ここで見ていれば解る」と最後は余裕綽々でしたが。

 プロット的には秀作エピソードと言っていいでしょうか。犯人のキャラクターも、豪放磊落な「表」の陰に繊細な「裏」があったのが意外。ただ、バーナビーのいきなりの"ロック・マニア"ぶりがやや浮いている印象でした。

バーナビー警部(第55話)/悲憤の刃 ロケ地.jpg「バーナビー警部(第55話)/悲憤の刃」●原題:MIDSOMER MURDERS:THE AXEMAN COMETH●制作年:2009年●制作国:イギリス●本国上映:2007/02/02●監督:レニー・ライ●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:マイケル・エイトケンス●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジェイソン・ヒューズ/ジェーン・ワイマーク/ローラ・ハワード/バリー・ジャクソン/スージー・クワトロ●日本放映:2011/02/25●放映局:AXNミステリー(評価:★★★☆)
Midsomer Murders Locations - Rickmansworth,
Simon takes Cully on his canal boat here in 'The Axeman Cometh'

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ラロジエールに娘が...太すぎるサイドストーリー。面白かったが、改変の一部がやや気に入らない。

Épisode 5 鳩の中の猫.jpg鳩のなかの猫 フレンチ・ミステリ0.jpg 鳩のなかの猫 フレンチ・ミステリ2.jpg
Les Petits Meurtres d'Agatha Christie Épisode 5 : Le chat et les souris(鳩のなかの猫)

鳩のなかの猫 フレンチ・ミステリ3.jpg 森で身元不明の女性の遺体が発見される。遺体に着衣はなく、頭を砕かれていた。時を同じくして、森の近くの女子寄宿学校では、学生達が休みから学校に戻ってきた。新任の教師も集まり、学校は活気を取り戻していた―。

 ポワロやミス・マープルに代わって、ラロジエール警視とランピオン刑事のコンビが事件を解決していく「フレンチ・ミステリー」の2010年の作品(第5話)で、2011年9月に「AXNミステリー」で放映されました(女性の全裸死体をそのまま映すところがフランスのTVっぽい?)。

鳩のなかの猫 クリスティ文庫.png 原作は1959年にアガサ・クリスティ(1890‐1976)が発表した作品で、原題「Cat among the Pigeons」は、女生徒(鳩)達の園である学園に殺人者(猫)が紛れ込んでいるという意。中東の王国で起きた革命騒ぎのさなか、莫大な価値をもつ宝石が消えうせ、一方、ロンドン郊外の名門女子校で新任の体育教師が何者かに射殺されるのですが、ふたつの事件には実は関連があったという話です。

 原作で最後に事件を解決するのはポワロですが、そのポワロは原作を読み始めて3分の2を過ぎないと出てきません。原作に比較的忠実に作られているとされている英国ITVデヴィッド・スーシェ主演の「名探偵ポワロ」シリーズでも、この原作の映像化作品(第59話/2008年製作)では、ポワロを最初から登場させたり、登場人物の一部を端折ったりしていました。

クリスティのフレンチ・ミステリー(第5話)/鳩のなかの猫.jpg "改変の妙"が売りのこの「フレンチ・ミステリー」シリーズですので、この作品も、新学期から学校に転入してきた革命があった国の王女と、国王から宝石を託された男性の姉の娘(同じくこの学校の生徒)を同一人物にしたりしています(原作では王女はニセモノだったけれど、この作品ではホンモノになっている!)。

 更に、事件解決の鍵となる宝石の在り処に辿り着く女子校生ジュリエット(原作ではジュリア)の母親は、原作ではトルコにのんびりバス旅行に行っている有閑マダム(実は昔諜報機関にいた)になっていますが、ここでは学校の寮母と同一人物になっていて、寮母の娘であるジュリエットはその関係で、庶民でありながら上流階級の子女が集うこの学校に入学が許されたことになっています(従って、学校で高慢ちきでイヤミな女子学生からイジメを受けている。但し、寄宿寮で同室の王女とは仲良し)。

鳩のなかの猫 フレンチ・ミステリ1.jpg でも、何よりの改変は、ジュリエットの母親である寮母とラロジエール警視は昔一夜を共にしたことがあり、実は彼女の娘ジュリエットはラロジエールの娘でもあったという―このもの凄い改変が、それまで娘がいることを知らなかったラロジエールと、父親を知らなかった娘の出会いの物語という、太いサイドストーリーを形成しています(太過ぎる!)。

 「テニスラケットの入れ替え」などは原作を踏襲していてそれなりに面白かったですが、原作の犯人は宝石狙いだったのに、ここではそれに加えて、中東国で国王を殺害したことになっていて、最後、王女が剣でブスリと父の仇を討つという、ややぶっ飛び過ぎの結末。「目には目を歯には歯を」はかつてのイスラム圏の話で、フランスだと一応は殺人罪が適用されると思うのですが、何となく目出度し目出度しで終わってしまったような...。

 ラロジエールとジュリエットの父娘の別れは切ないけれど、そんなに裕福ではない母子家庭に対し、ラロジエールには今後しばらくは養育費を送り続ける義務が発生しているのではないかなあ、などと考えてしまいます。

鳩のなかの猫 フレンチ・ミステリ.jpg鳩の中の猫.jpg 原作では、女子校の校長は立派な人物で、彼女の教育観には原作者クリスティの教育観が織り込まれていますが、ここでは、頑なに学校の名誉にこだわる石のような女性にキャラクター改変されていて、全体として面白Flore Bonaventura.jpgかったなりにも、この改変が個人的にはやや気に入らず、評価は「△」としました。

「クリスティのフレンチ・ミステリー(第5話)/鳩のなかの猫」●原題:LES PETITS MEURTRES D'AGATHA CHRISTIE/LE CHAT ET LES SOURIS●制作年:2010年●本国放映:2010/9/8●制作国:フランス●監督:エリック・ウォレット●出演:アントワーヌ・デュレリ/マリウス・ コルッチ/Flore Bonaventura/Stéphane Caillard/Isabelle Candelier/Marilyne Canto●原作:アガサ・ クリスティ●日本放映:2011/09●放映局:AXNミステリー(評価:★★★)

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ポアロが出てくるのは後の方だけれど、やはりポアロ物らしい傑作。

鳩のなかの猫 ポケミス.jpg 鳩のなかの猫 hm文庫.jpg 鳩のなかの猫 クリスティ文庫.png  鳩のなかの猫 dvd.jpg
鳩のなかの猫 (1960年) (世界ミステリシリーズ)』『鳩のなかの猫 (1978年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)』『鳩のなかの猫 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)』「名探偵ポワロ ニュー・シーズン DVD-BOX 3」(2010)

 中東のラマット国での革命勃発当日、アリ・ユースフ国王は、自分が生き延びられなかった場合に備え、一族伝来の巨額の価値を持つ宝石を国外へ持ち出すよう、英国出身の親友ボブ・ローリンスンに託す。ボブは、自分は国王の国外脱出行に同行するため、別の誰かに宝石を託そうとするが、姉のジョアン・サットクリフが娘ジェニファーの肺炎の療養のため当地に滞在し、やがて英国へ戻ることになっているのに目をつける。そのジェニファーが通うロンドン郊外の名門女子校メドウバンクは、新たに夏季学期を迎えていたが、新任の体育教師が何者かに射殺されるという事件が起きる。その学校には、今学期からラマット国の国王の従妹であるシャイスタ王女が転入してきたところでもあった。莫大な価値を持つ消えた宝石の謎と、名門女子校で起きた体育教師殺害事件には何か関連があるのか―。

鳩のなかの猫 原著.jpg 1959年にアガサ・クリスティ(1890‐1976)が発表した作品で、原題「Cat among the Pigeons」は、女生徒(鳩)達の園である学園に殺人者(猫)が紛れ込んでいるという意。ポワロ物ですが、ポワロが登場するのは、メドウバンクの生徒で知人の娘であるジュリアが彼に相談を持ち込んできてからで、これが全体の3分の2を過ぎてからということもあって、今一つポワロ物という印象が薄かった作品でした(作家の浅暮三文氏もハヤカワ・クリスティー文庫の解説で、ポワロは「友情出演」の感が強いとしている)。でも今回読み直してみて、ラストの畳み掛け感は素晴らしく、やはりポワロ物らしい傑作ではないかと感じました。

Cat Among the Pigeons Dust-jacket illustration of the first UK edition

 冒頭の中東のラマット国での革命の話は、作者の政治的冒険譚風の初期作品の雰囲気もありますが、これはポアロ物では全33の長編の内の第28長編とのことで、かなり後の方。実は1958年に起きたイラン革命をモチーフにしているとのことで、その頃の作者は、遺跡の発掘作業のため毎年のようにイラクに赴いていた考古学者である夫に随行して当地を訪ねていたとのことです。また、メドウバンク校のモデルは、作者の娘が通っていた全寮制の女子予科校だそうです。そうしたこともあって作者にとっても愛着があるのか、この作品は作者の自選ベスト10にも入っています。

 第2の殺害事件が起き、ポワロが捜査に乗り出してからも第3の殺害事件が発生するなど、相変わらず殺人事件に"事欠かない"状況ですが、「3連続殺人」でしかも被害者は同じ学校の女教師ばかりというというのが、振り返れば、推理をミスリードさせる1つのポイントでした。ミステリ書評家の濱中利信氏は、この作品を傑作としながらも、物語の視点が一定していない、探偵役が不在である、犯人がアリバイ不在の状況の中で犯行を犯すとは考えにくい等ミステリとしての欠点も指摘しています。個人的にもその辺りが、星5つまでには至らない理由でしょうか。但し、中盤部分の探偵役は、ジェニファーとテニスラケットを交換したことから宝石の在り処に辿り着いたジュリアでしょう。

 嫌な人物も多く出ていますが、国王とボブの厚い信頼に基づく友情から始まって、国王が密かに結婚していた女性が、宝石の受け取りを拒否し、更に、その1つを、宝石の在り処を突き止めたジュリアに贈ることを言付けるなど、清廉な人物も登場し、読後感は悪くありません(メドウバンクの校長オノリア・バルストロードも立派な人物)。

鳩のなかの猫 ドラマ.jpg 英国LWT(London Weekend Television)制作・デヴィッド・スーシェ主演の「名探偵ポワロ」シリーズで、第59話(本国放映2008年)として映像化されていますが、ポワロがなかなか登場しないのではマズイと思ったのか、原作の冒頭にあるメドウバンクの新学期が始まる場面からポワロが登場します(引退を考えている校長オノリアが、自分の後継者の人選にあたり、人間洞察に優れたポワロの助言を求めたという設定。原作ではポアロは、女生徒ジュリアの母親を介して学園と繋がるが、校長のオノリアとは直接面識がなく、初めて会う直前はやや警戒気味。但し、会ってから後はオノリアの人格者ぶりに感心する)。

鳩のなかの猫 ドラマ2.jpg ポワロが女生徒らの只中にいたりする場面は原作には無く、また、第2の殺人事件の被害者ヴァンシッタートをカットし、被害者を別の人物に変更しています(但し、結末の整合性は保っている)。更には、宝石の1つがジュリアに贈られることになったエピローグで、ポアロがわざわざキャンディドロップに混ぜて、この中に1つだけ固いキャンディがある、なんて言って彼女に贈るのも、原作でのポワロの登場時間の少なさを補うTVドラマ版のオリジナル。但し、時間を遡ったりしてはいるけれども、大筋では原作のプロットに忠実であり、原作の持ち味は活かしていたと思います(「IMDb」のレーティングは8.0という高ポイント)。

鳩のなかの猫 dvd2.jpg「名探偵ポワロ(第59話)/鳩のなかの猫」●原題:AGAHTA CHRISTIE'S POIROT SEASON11: CAT AMONG THE PIGEONS●制作年:2008年●制作国:イギリス●本国放映:2008/09/21●監督:ジェームス・ケント●脚本:マーク・ゲイティス●時間:94分●出演:デビッド・スーシェ(ポワロ) /ハリエット・ウォルター(バルストロード) /アマンダ・アビントン(ブレイク) /エリザベス・バーリントン(スプリンガー) /アダム・クローズデル(アダム) /ピッパ・ヘイウッド(アップジョン夫人) /アントン・レッサー(ケルシー警部) /ナターシャ・リトル(アン) /キャロル・マクレディ(ジョンスン) /ミランダ・レーゾン(ブランシュ) / クレア・スキナー(アイリーン) /スーザン・ウールドリッジ(チャドウィック) /ロイス・エドメット(ジュリア) /アマラ・カラン(シャイスタ王女) /ケイティ・ルング(スイ・タイ) /ジョー・ウッドコック(ジェニファー)●日本放映:2010/09/14●放映局:NHK‐BS2(評価:★★★☆)名探偵ポワロDVDコレクション 20号 (鳩のなかの猫) [分冊百科] (DVD付)

Épisode 5 鳩の中の猫.jpg鳩のなかの猫 フレンチ・ミステリ0.jpg 「クリスティのフレンチ・ミステリー(第5話)/鳩のなかの猫」 (10年/仏) ★★★

【1960年新書化[ハヤカワ・ポケットミステリ(橋本福夫:訳)]/1978年文庫化[ハヤカワ・ミステリ文庫(橋本福夫:訳)]/2004年再文庫化[ハヤカワ・クリスティー文庫(橋本福夫:訳)]】

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このシリーズ第1作が一番面白く、その後はどんどん大味になっていく。

ダイハード 1988 ちらし.jpg ダイハード 1988 02.jpg ダイハード 1988 05.jpg
「ダイ・ハード」チラシ
ダイハード 1988 01.pngダイハード dvd.jpgダイハード 1988 04.jpg 「ダイ・ハード シリーズ」の中で一番面白かったのはやはり第1作の「ダイ・ハード」('88年)であり、「テロ集団に襲われたロサンゼルスの高層ビル」という設定を生かして、縦のアクションに徹したのが成功した1つの要因だったと思います。
ダイ・ハード [DVD]

ダイ・ハード-04.jpgダイハード 1988 03.jpg ブルース・ウィリス演じるニューヨーク市警マックレーン刑事は、これまでに無かった新たなヒーロー像を産み出した言えるし(その"嘆き節"も受けた)、マックレーンが高層ビル内で孤軍奮闘する状況の中、外部から無線の声だけでサポートする黒人刑官(レジナルド・ヴェルジョンソン)との男同士の見えない絆なども、観客を熱くさせるものがあったと思います。

ダイハード 1988 アラン・リックマン.jpgダイハード 1988 リックマン.jpg また、英ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー出身のアラン・リックマン(1946-2016/享年69)演じるテロリストも良かったです。アラン・リックマンは「ロビン・フッド」('91年)でもケビン・コスナー演じるロビンの敵役の悪役を演じましたが、半ばコメディ仕立てということもあってか、「ダイ・ハード」で見せたほどの凄味や演技のキレはありませんでした(但し「ロビン・フッド」の演技で英国アカデミー賞助演男優賞を受賞している)。「ダイ・ハード」での好演は、リックマンの落下シーンで事前に打ち合わせていたタイミングより早く彼を落下させ、"素"の驚きの表情を撮るなどした、ジョン・マクティアナン監督の演出の妙にあるのでしょうか(撮影は、後に「スピード」('94年)を監督することになるヤン・デ・ボン)。

 その後「ダイ・ハード2」、「ダイ・ハード3」、「ダイ・ハード4.0」と作られましたが、だんだん質が落ちていったような...。

エルム街の悪夢4.jpg 「ダイハード2」('90年)は、スイス出身で、「エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター最後の反撃」('88年)を撮ったレニー・ハーリンの監督作です。「エルム街の悪夢」シリーズは'84年から'97年までの間に7作作られいて、ライバルシリーズであった「13日の金曜日」シリーズは'88年から'02年までの間に10作作られています('03年には「フレディ vs ジェイソン」が作られている)。「エルム街の悪夢4」は「フレディ対超能力少女」で、その前に観た「13日の金曜日 PART6/ジェイソンは生きていた!」('86年)が、"ジェイソン"はコメディアンだったのか?と思えるほど怖くなかったのですが、「エルム街の悪夢4」ダイ・ハード2 1990.jpgにおけダイハード2   .jpgる"フレディ"のコメディアン化は、ジェイソンのそれを上回っているように思えました。そんなこともあって、「ダイハード2」も劇場に行くのをためらわれたのですが、劇場で観たらまあまあの出来だったでしょうか。但し、雪のワシントン・ダレス空港を舞台に(原作はウォルター・ウェイジャー『ケネディ空港/着陸不能』)、旅客機ダイハード2 03.jpgの爆発、滑走路の大火災とスペクタル・シーンが大掛かりになった分だけ主人公のマックレーン刑事がスーパーマン化し、「1」と比べると大味な印象を受けました。レニー・ハーリンは、この後、シルヴェスター・スタローン主演の「クリフハンガー」('93年)を撮っています(「ダイハード2」の終盤のクライマックスシーンでのマックレーン刑事が懐からライターを取り出すところから、彼がまだ喫煙者であったころが窺える)。
ダイ・ハード2 [DVD]」('90年)

ダイ・ハード3.jpg 「ダイハード3」('95年)で監督をマクティアナン、舞台をニューヨークに戻して原点回帰? ニューヨーク市内で突如爆弾テロが発生し、「サイモン」と名乗る犯人は警察に電話し、ジョン・マクレーンを指名する。嫌がらせの様に、黒人達が多く住むハーレムのど真ん中で、「黒ん坊は嫌いだ(I hate Niggers)」というカードを下げさせられたマクレーンは、自身が白人である事も災いし、当然それを見た黒人ギャング達に半殺しにされかける。しかし、その近くで店を経営する黒人の男・ゼウス(サミュエル・L・ジャクソン)に助けられ、それを知り、面白くなかったサイモンの指示によって、2人は行動を共にする事になるというあらすじ。
ダイ・ハード3 [DVD]」('95年)

ダイハード3 ジェレミー・アイアンズ.jpg マクレーンに協力する黒人ゼウスを演じたサミュエル・L・ジャクソン(前年の「パルプ・フィクション」('94年/米)で一気に知名度をアップさせていた)、敵役サイモンを演じたジェレミー・アイアンズと(個人的には「運命の逆転」('90年/米)以来だったなあ)、共に演技達者で、途中まではそれなりに楽しませてくれましたが、途中から主人公のスーパーマン化は前作より更に進行し、最終的には一層大味な作品になってしまいました。

ダイ・ハード4.0 01.jpg その12年後に作られた「ダイハード4.0(フォー)」('07年)では(いきなりマクレーンの娘が出てきた)、不正にネットワークへアクセスするハッカーを利用して、政府機関・公益企業・金融機関への侵入コードを入手したテロリストがライフラインから防衛システムまでを掌握し、サイバーテロによって全米を揺るがすという設定で、それでもテロリストとまともに戦っていダイ・ハード4.0 3.jpgるのは(若いハッカーを従えた)マクレーンただ1人という不思議な設定で、彼の娘は例のごとくテロリストの人質に。一部にサイバー合戦も見られますが、遂には国防省から最新鋭戦闘機F-35まで出てきてしまって、これが結構間抜けな役回りで、通信システムを掌握するテロリストのミスリードでマクレーンを攻撃(いくら命令とは言え、街中のハイウェイで戦闘機が機銃を乱射するかなあ)、これはもう、カネをかければいいものが出来ると勘違いしているのではないかと思わざるを得ません。マクレーンはトラックから戦闘機に飛び乗り、戦闘機からハイウェイに舞い降りと、殆ど人間ではあり得ない超絶アクションで、これまた更に大味に。まあ、自分の中では既に「3」でこのシリーズは終わったという印象ではありましたが...。

ダイ・ハード/ラスト・デイdvd.jpgダイ・ハード/ラスト・デイ1.jpg 最近作のシーリズ第5作となる「ダイ・ハード/ラスト・デイ」('13年)は、舞台をシリーズ初の海外であるロシアに移しての展開でしたが(今度はいきなりマクレーンの息子が出てきた)、周囲の迷惑を顧みない滅茶苦茶なカーチェイスから始まって(巻き添えの死傷者が何十人と出てもおかしくない)、ラストでは女性敵役がマックレーンに対する怨みからヘリコプターで突っ込んでくるという、殆ど盲目的自爆の様相。彼女イリーナ(ユーリヤ・スニギル)はそれまで何のためにマックレーンを欺こうとしていたのか。もう完全にリアリティとはサヨナラした上に、ストーリーまでも破綻気味―「3」以降「5(ラスト・デイ)」まであまり評価する気にならないのですが、「5」はこれまでの中で最も劣るように思いました。 「ダイ・ハード/ラスト・デイ [DVD]」('13年)

 これでホントに終わりにするのかと思ったら「6」を作る予定があるらしく、ブルース・ウィリスの当シリーズへの思い入れは解らなくもないけれど、どうなんだろうか。

ダイハード 1988 00.jpg「ダイ・ハード」●原題:DIE HARD●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・マクティアナン●製作:ローレンス・ゴードン/ジョエル・シルバー●脚本:スティーヴン・E・デ・スーザ/ジェブ・スチュアート●撮影:ヤン・デ・ボン●音楽:マイケル・ケイメン●原作:ロデリック・ソープ「ダイ・ハード」●時間:131分●出演:ブルース・ウィリス/アラン・リックマン/アレクサンダー・ゴドノフ/ボニー・ベデリア/レジナルド・ヴェルジョンソン/アート・エヴァンス/ウィリアム・サドラー●日本公開:1989/02●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:渋谷東宝(89-02-12)●2回目:三軒茶屋映劇(89-07-01)(渋谷 東横映画劇場(1936年).jpg渋谷東宝.jpg評価:★★★★)●併映(2回目):「レッド・スコルピオン」(ジョセフ・シドー)
渋谷東宝 1936年「東横映画劇場」として開場(座席数1,401席)。1944年「渋谷東宝映画劇場」に改称、後に渋谷東宝(渋谷東宝会館1階)、渋谷スカラ座(同4階)、渋谷文化劇場(同地階)の3館体制に。1989(平成元)年2月26日閉館(閉館時座席数1,026席)。1991年7月6日、跡地に渋東シネタワーが開館。(右写真:「渋谷東宝会館」(渋谷東宝劇場・渋谷スカラ座/地階・渋谷文化劇場)
三軒茶屋映劇 2.jpg三軒茶屋シネマ/中央劇場.jpg三軒茶屋付近.png三軒茶屋映画劇場 1925年オープン(国道246号沿い現サンタワービル辺り)。1992(平成4)年3月13日閉館(左写真)。菅野 正 写真展 「平成ラストショー hp」より 同系列の三軒茶屋中央劇場(右写真中央)は1952年、世田谷通りの裏通り「なかみち街」にオープン。(「三軒茶屋中央劇場」も2013年2月14日閉館)  ①三軒茶屋東映(→三軒茶屋シネマ) ②三軒茶屋映劇(映画劇場)(現サンタワービル辺り) ③三軒茶屋中劇(中央劇場)

ダイ・ハード2-38.jpgダイ・ハード2.jpg「ダイ・ハード2」●原題:DIE HARD 2: DIE HARDER●制作年:1990年●制作国:アメリカ●監督:レニー・ハーリン●製作:ローレンス・ゴードン/ジョエル・シルバー/チャールズ・ゴードン●脚本:スティーヴン・E・デ・スーザ/ダグ・リチャードソン●撮影:オリヴァー・ウッド●音楽:マイケル・ケイメン●原作:ウォルター・ウェイジャー「ケネディ空港/着陸不能」●時間:124分●出演:ブルース・ウィリス/デニス・フランツ/ウィリアム・サドラー/フランコ・ネロ/ジョン・エイモス/ボニー・ベデリア/ウィリアム・アザートン/レジナルド・ヴェルジョンソン/フレッド・トンプソン●日本公開:1990/09●配給:20世紀フォックス(評価:★★★)
ダイ・ハード2 [DVD]

スマイルBEST エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター 最後の反撃 [DVD]
エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター.jpg「エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター最後の反撃」●原題:A NIGHTMARE OF ELM STREET 4 THE DREAM MASTER●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:レニー・ハーリン●製作:ロバート・シェイ/レイチェル・タラレイ●脚新宿オデヲン座0.jpg本:スコット・ピアース/ ブライアン・ヘルゲランド●撮影:スティーヴン・ファイアーバーグ●音楽:クレイグ・セイファン●時間:94分●出演:ロバート・イングランド/リサ・ウィルコックス/チューズデイ・ナイト/アンドラス・ジョーンズ/ダニー・ハッセル/ブルック・ゼイス/トイ・ニューカーク/ニコラス・メレ/ブルック・バンディ/ロドニー・イーストマン/ケン・サゴーズ●日本公開:1989/04●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:新宿オデヲン座(89-04-30)(評価:★★)
新宿オデヲン座 1951(昭和26)年11月、現在の歌舞伎町「第二東亜会館」の場所に開館。1959年4月「グランドビル」(後の「第一東亜会館」)地下1階に移転。2009(平成21)年11月30日閉館。(写真:歌舞伎町「第一東亜会館」(左から新宿オスカー・新宿オデヲン座・新宿アカデミー)

13日の金曜日 PART6 ジェイソンは生きていた! [DVD]」/チラシ
13日の金曜日 PART6ジェイソンは生きていた.jpg13日の金曜日 PART6/ジェイソンは生きていた! tirasi.jpg「13日の金曜日 PART6/ジェイソンは生きていた!」●原題:FRIDAY THE 13TH PART6:JASON LIVES●制作年:1986年●制作国:アメリカ●監督・脚本:トム・マクローリン●製作:ドン・ビーンズ●撮影:ジョン・R・クランハウス●音楽:ハリー・マンフレディーニ●時間:87分●出演:トム・マシューズ/ジェニファー・クック/デヴィッド・ケーガン/トム・フリドリー/レネー・ジョーンズ/ケリー・ヌーナン/トニー・ゴールドウィン/ナンシー・マクローリン/ヴィンセント・ガスタフェッロ/ロン・パリロ●日本公開:1986/10●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:東急レックス(89-04-30)(評価:★★)
東急レックス.jpg東急レックス2.jpg
東急レックス(渋谷東急3) 1956年開館東急文化会館の地下1階(地下東急ストア隣り)。当初はニュース映画館「東急ジャーナル」。1990(平成2年)10月、東急レックスから「渋谷東急3」に改称。2003(平成15)年6月30日閉館。

(モノクロ写真:東急レックス(1977(昭和52)年)/カラー写真:「東急文化会館」(左から渋谷東急2(旧東急名画座)・渋谷東急・渋谷パンテオン・東急レックス(後の渋谷東急3)

ダイ・ハード3-47.jpgダイ・ハード3 ps.jpg「ダイ・ハード3」●原題:DIE HARD: WITH A VENGEANCE●制作年:1995年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・マクティアナン●製作:ジョン・マクティアナン/マイケル・タッドロス●脚本:ジョナサン・ヘンズリー●撮影:ピーター・メンジース・ジュニア●音楽:マイケル・ケイメン●時間:128分●出演:ブルース・ウィリス/サミュエル・L・ジャクソン/ジェレミー・アイアンズ/グラハム・グリーン/コリーン・キャンプ/ラリー・ブリッグマン/アンソニー・ペック/ニック・ワイマン/サム・フィリップス/ケヴィン・チェンバーリン/シャロン・ワシントン/スティーヴン・パールマン/マイケル・アレクサンダー・ジャクソン/アルディス・ホッジ●日本公開:1995/07●配給:20世紀フォックス(評価:★★☆)
ダイ・ハード3 [DVD]

ダイ・ハード4.0 02.jpgダイ・ハード4.0 [DVD].jpg「ダイハード4.0(フォー)」●原題:DIE HARD 4.0: LIVE FREE OR DIE HARD●制作年:2007年●制作国:アメリカ●監督:レン・ワイズマン●製作:マイケル・フォトレル●脚本:マーク・ボンバック●原案:マーク・ボンバック/デヴィッド・マルコーニ●撮影:サイモン・ダガン●音楽:マルコ・ベルトラミ●時間:129分●出演:ブルース・ウィリス/ジャスティン・ロング/メアリー・エリザベス・ウィンステッド/ティモシー・オリファント/マギー・Q/シリル・ラファエリ/エドアルド・コスタ/ジョナサン・サドウスキー/クリフ・カーティス/ケヴィン・スミス/ヤンシー・アリアス●日本公開:2007/07●配給:20世紀フォックス(評価:★★☆)
ダイ・ハード4.0 [DVD]

ダイ・ハード/ラスト・デイw.jpg「ダイ・ハード/ラスA GOOD DAY TO DIE HARD 01.jpgト・デイ」●原題:A GOOD DAY TO DIE HARD●制作A GOOD DAY TO DIE HARD 02.jpg年:2013年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ムーア●製作:アレックス・ヤング●脚本:スキップ・ウッズ●撮影:ジョナサン・セラ●音楽:マルコ・ベルトラミ●キャラクター創造:ロデリック・ソープ●時間:98分(劇場公開版)・102分(最強無敵ロング・バージョン)●出演:ブルース・ウィリス/ ジェイ・コートニー/セバスチャン・コッホ/メアリー・エリザベス・ウィンステッド/ユーリヤ・スニギル/ラシャ・ブコヴィッチ●日本公開:2013/02●配給:20世紀フォックス(評価:★★)
Yuliya Snigir

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原作のポイント部分をきっちり抑えていたため楽しめた。

クリスティのフレンチ・ミステリー⑧満潮に乗ってdvd.jpgクリスティのフレンチ・ミステリー⑧満潮に乗って01.jpg  クリスティのフレンチ・ミステリー⑧満潮に乗って06.jpg
DVD(輸入盤)

クリスティのフレンチ・ミステリー⑧満潮に乗って05.jpg ある日、ランピオン刑事はラロジエール警視の所属する"スタークラブ"の集会に参加する。名士達が集まる会場で、ラロジエール警視は、かつての上官で大富豪のドラリーブ大尉と感動の再会を果たす。しかし、警視が大尉の屋敷での家族との食事会に招かれた数日後、滞在先の火事により大尉が亡くなったとの悲報が警視にもたらされる。大尉は孫のような年の娘アルベルティーネと結婚したばかりで、大尉によって多くの親族が養われていた屋敷へ、その若妻の兄が、大尉の遺言によりその全財産の相続人となった妹を連れて乗り込んで来る―。

満潮に乗って クリスティー文庫.jpg フランス2で2009年から放映されている「クリスティのフレンチ・ミステリー」シリーズの、2011年放映の通算第8話で、原作は1948年にアガサ・クリスティ(1890‐1976)が発表した作品(原題:Taken at the Flood)で、戦争が生んだ一族の心の闇をポアロが暴くもの(但し、ポワロは後半部からしか登場しない)。原作では大尉は空襲により亡くなったことになっていますが、この映像化作品では火事によって亡くなったことになっています(因みに、英国ITV(グラナダ)のデヴィッド・スーシェ版「名探偵ポアロ」ではガス爆発による事故死だった)。
    
クリスティのフレンチ・ミステリー⑧満潮に乗って6.jpg 冒頭、科学的捜査に執心するランピオンとそれを軽んじる警視との間に確執があり、そこへ大尉の訃報が入り、警視は実の父親を失ったような思いに駆られ虚脱状態に。事件の捜査どころか刑事を辞めるとまで言い出し、話は一体どうなるのかと思いましたが(事件現場にランピオンから貰ったキノコのバスケットを抱えて悄然と立ち、親族から「あの人、大丈夫」と言われているのが可笑しい)、そこから警視の"復活"に至るまでのサイドストーリーはサイドストーリーとして楽しめ、むしろデヴィッド・スーシェ版が原作を改変してまでポワロが最初から事件に関与していたのに比べると、前半部分で警視が事件捜査に直接関与しない分、原作に近かったかも。

クリスティのフレンチ・ミステリー⑧満潮に乗って04.jpg 原作と同じく死体が上がるのは3体。原作の妙味は、それらが自殺・事故・他殺とそれぞれ死亡原因が異なることが考えられる点と、AがBを殺害し、CがDを殺害したという一般的な推理を、例えばAがDを殺害したとすればどうかという具合に置き換えてみないと事件の謎は解けないという点で、細部のキャラクターの改変はあるものの、この原作のポイント部分はきっちり抑えていたと思われます。親族たちが若妻の死を願う気持ちが、個々の"妄想"を映像化することで巧く表現されていたりした点も含め、十分楽しめました。

クリスティのフレンチ・ミステリー⑧満潮に乗って062.jpg 「若妻」の「兄」は、 原作でも大尉の親族を屋敷から追い出して財産の"総取り"を狙う悪い奴なのですが、この映像化作品では、登場早々に見るからにワルそう。親族の中で唯一そうした"妄想"に駆られることのなかったセリアが、婚約者を差し置いてこんな男に惹かれる気持ちが知れないですが、一見しっかり者に見える女性がジゴロ風の男が好きだったということがあってもおかしくないのかも。田舎の生活にやや飽きがきていて、更には婚約者との結婚後に待っている平凡な牧場暮らしにもあまり魅力を感じていなかった矢先だったというのもあるかもしれません。或いは、深読みすれば、婚約者の欲得やその中に潜む危険な何かを本能的に嗅ぎ取っていて、その反動だったのかも(婚約者が性的不能であることも暗示されている。加えて言えば、大尉の焼死にこのジゴロ風の男が関与していたことも暗示されていて、これらは原作には無い設定)。

クリスティのフレンチ・ミステリー⑧満潮に乗って03.jpg このシリーズ、何れも細部にコメディ風のアレンジをしていますが、一方で、原作の抑えるべきところはきっちり抑えていたりもし、特にこの作品についてはそのことが言え、ロケに使われたドラリーブ大尉の屋敷なども豪勢でした。本場英国のクリスティ物テレビ映画にほぼ負けていない一作ではないかと。
Marie Denarnaud est Célie
Marie Denarnaud est Célie.jpg「クリスティのフレンチ・ミステリー(第8話)/満潮に乗って」」●原題:LES PETITS MEURTRES D'AGATHA CHRISTIE/ LE FLUX ET LE REFLUX(Flux and Reflux)●制作年:2010年●制作国:フランス●本国上映:2011/4/15●監督:エリック・ウォレット●脚本:Sylvie Simon●出演:アントワーヌ・デュレリ/マリウス・コルッチ/Marie Denarnaud /Alexandre Zambeaux/Yves Pignot/Marie Denarnaud/Blandine Bellavoir/Nicky Marbot/Dominique Labourier/Luce Mouchel/Pascal Ternisien●日本放映:2011/09●放映局:AXNミステリー(評価:★★★★)

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壊れかけてはいたが壊れてはいなかった「聖歌隊」。意外とヒネリが無かった「ビジネスの...」。

DEATH IN CHORUS dvd.jpg第50話/壊れかけた聖歌隊 dvd2.jpg 第50話/壊れかけた聖歌隊 00.jpg  第49話)/ビジネスの総決算 dvd1.jpg
"Midsomer Murders" Death in Chorus(壊れかけた聖歌隊) Country Matters(ビジネスの総決算)

第50話/壊れかけた聖歌隊 01.jpg ジョイスやジョージも参加するミッドサマー・ワーシー聖歌隊が大会に向け猛練習の最中、メンバーの一人コナーが突然心臓発作で倒れ、軽症だったためにそもまま帰宅するが、自分の忘れ物を取りに来たステファンが、偶然コナーの携帯電話を見つけ届けに行くと、コナーは何者かに頭を殴られDEATH IN CHORUS 3.jpg死んでいた。キッチンのゴミ箱からは「お前の嘘つきな心臓」と書かれた紙とともに、豚の心臓が見つかる―。(第50話「壊れかけた聖歌隊」)

 指揮者ローレンスの過度な猛練習に聖歌隊の雰囲気は悪くなっていましたが、そのローレンスと、アストン聖歌隊の指揮者で、かつて経歴詐称をして大聖堂のオルガン奏者の座を手に入れたというフランシスとの間に憎悪に近いライバル心があり、聖歌隊メンバーへの嫌がらせもフランシスの仕業だったけれど、一方のローレンスも、自分の妻エレンとコナーとの不倫の証拠をもみ消して無かったことにしようとして、コナー宅に忍び込んでそこ(殺人現場)で音叉を落としてしまっていて、こうした彼らの行動が犯人推理を大いにミスリードさせてくれたなあ。

DEATH IN CHORUS house.jpg そうこうしている内に、教会の周辺でメンフクロウを観察をしていたサムという男が、墓地で遺体で発見され、実際に殺害された場所は彼が以前不動産管理を任されていたハーツメイドというジャイルズの屋敷の納屋だったようだ―。結局、ギャンブルで大損こいたコナーとレオという男とジャイルズが、ジャイルズの妻キャロラインが相続したバッハの肖像画の贋作を売って儲けようとしたところ(コナーはかつて贋作画家だった!)、本物を手にしたコナーがそれを売ってエレンと駆け落ち資金にしようとしたということからの仲間割れが原因だったのか。
Used as the Giles & Carolyn Armitage's house in 'Death in Chorus'

第50話/壊れかけた聖歌隊 04.jpg 妻キャロラインに薬を飲ませて入水自殺に見せかけ殺そうとしたジャイルズが一番のワルか。男たちの喧嘩を仲裁しようとして池にドボンしたジョーンズ巡査に続いて、キャロラインを助けようとしたバーナビーもびしょ濡れに。スティーブンという男性も最初はやや怪しかったけれど、キャロラインに対する純愛のみの男だったわけで、事件解決後暫くしたら彼女と結ばれる? エレンの方は、妻と縒りを戻すのを諦めたローレンスが家をおん出て、彼女はバーナビーからコナーが自分のために描いてくれた絵を返してもらい、コナーの想い出に生きるのでしょう。

DEATH IN CHORUS 05.jpg だんだん刑事らしくなってきたジョーンズは(次回「第51話「呼ばれた殺人者」で巡査部長に昇進する)、バーナビー宅でシャワーを浴びていた際の歌声を見込まれてコナーの代わりに聖歌隊のテノール担当になっていましたが、指揮者ローレンスはヤケクソになったのか聖歌大会の場にも現れず、前から聖歌隊の一員だった検視官ブラード博士が熱弁を振るって皆を鼓舞し、ローレンスの代わりに指揮棒を振ってミッドサマー・ワーシー聖歌隊が優勝!と、やや出来過ぎた作りですが、事件のプロセスが暗めであるだけに、"お口直し"的エンディングということでいいのではないでしょうか。

 
COUNTRY MATTERS 7.jpg 田舎町エルバートンで、大手スーパー「グッドフェア」の進出を巡り、議会と一部住民が対立していた。ある晩、村の集会で、グッドフェア側は、スーパーを誘致すれば、世帯向け物件を提供するほか、建設予定地の汚染土壌浄化を行うと住民に説明したが、賛成COUNTRY MATTERS 8.jpg派と反対派の間で小競り合いが起きて収拾がつかなくなる。その頃、集会を抜け出した子供達が製材工場で男性の刺殺体を発見、被害者の名はフランク・ホップカークと判明し、現場にあった凶器と思われる高級ナイフは、地元で料理教室を経営している女性ローズのものと判るが、警察の問いに彼女は、ホップカークが偽名で料理を習いに来ていたが、ナイフが何時なくなったのかは覚えがないと言う―。(第49話「ビジネスの総決算」)

第49話)/ビジネスの総決算 01.jpg第49話)/ビジネスの総決算 3.jpg スーパー反対派のオーランドは馬の調教師をしている妻ジニー差し置いてローズに執心、ジニーは当てつけにパブ店主を愛人にするものの、その愛人もジニーに入れ込むという、この料理教室のオバさんのモテぶりは不思議。ホップカークも彼女目当てに料理教室に通っていた? 躰を許さないというのが却って男が惹かれる要因なのでしょうか、それとも、調教師ジニーの"調教"(SM強要)に男達は付き合い切れなかったということだったのかも。

第49話)/ビジネスの総決算 4.jpg 狩猟場では「コスプレ人間罠」ごっこみたいな変てこなビジネスをやっているし(ちゃんとお客がいるわけだ)、村の女性司祭は雑貨屋店主と不倫しているし、こんな誰もが乱脈な環境だと、子供達も製材所で隠れて酒と煙草に耽るようになってしまうということなのでしょうか。死体を見つけてショックを受けるどころか、「学校に行って友達に話さなくっちゃ」と、むしろ新たな刺激を見つけて張り切っている様子です。

 見るからに怪しげな人物は犯人ではないというのがパターンになっているように思いましたが、今回は、怪しげで無い人は殆どおらず、犯人も結局その怪しげな人物の中の一人だったわけで、その分ヒネリがあまりなかった印象も受けました(「ビジネスの総決算」と言うより、それに便乗した「愛情(嫉妬)の総決算」だった)。

 犯人が誰かをぎりぎりまで引っ張らず、少し早めに犯人を明かして、犯行の経緯をじっくり犯人に話させる(同時に再現映像を流す)というのが、ここのところ見られる新たなパターンと言えるでしょうか。
 
MIDSOMER MURDERS 50.jpgMidsomer Murders Set 12.jpg「バーナビー警部(第50話)/壊れかけた聖歌隊」●原題:MIDSOMER MURDERS:DEATH IN CHOURUS●制作年:2006年●制作国:イギリス●本国上映:2006/09/03●監督:サラ・ヘリングス●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:デヴィッド・ハーセント●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジェイソン・ヒューズ/ジェーン・ワイマーク/ローラ・ハワード/バリー・ジャクソン/パトリック・ドルーリー/ピーター・キャパルディ●日本放映:2010/05●放映局:AXNミステリー(評価:★★★☆)

Midsomer Murders Set 12 [DVD] [Import]」(Four Funerals and a Wedding/Country Matters(ビジネスの総決算)/Death in Chorus(壊れかけた聖歌隊)/Last Year's Model) 

COUNTRY MATTERS 6.jpg第49話)/ビジネスの総決算 dvd2.jpg「バーナビー警部(第49話)/ビジネスの総決算」●原題:MIDSOMER MURDERS:COUNTRY MATTERS●制作年:2006年●制作国:イギリス●本国上映:2006/09/10●監督:リチャード・ホルトハウス●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:アンドリュー・ペイン●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジェイソン・ヒューズ/ジェーン・ワイマーク/バリー・ジャクソン/クレア・ホルマン/ティム・ハーディ●日本放映:2010/05●放映局:AXNミステリー(評価:★★★)

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面白かった。まともに見える人が犯人に違いないと思いつつつも、やはり騙されてしまう。

第47話「消えないセピア色」dvd.jpg 第47話「消えないセピア色」04.jpg  MIDSOMER MURDERS 11.jpg   第47話「消えないセピア色」バーナビー夫妻.jpg
MIDSOMER MURDERS. DOWN AMONG THE DEAD MEN  「Midsomer Murders Set 11 [DVD] [Import]」(The House in the Woods/Dead Letters/Vixen's Run/Down Among the Dead Men(消えないセピア色))

第47話「消えないセピア色」店主.jpg 役所の給与係バレットが散弾銃で殺される。バーナビーは、彼の部屋にあったオークションの切り抜きの絵の持ち主であるパブ店主ジャックに事情を聞きに行く。店主はバレットを「誰にでも好かれる男」と話すが、パブで働き、バレットの家で掃除の仕事もしていたルビーは「最低の男」だと言う。店主は、父親のものだった絵を、相続税を逃れるため売却しようとしたのを、それを知ったバレットに脅迫されていたのだった。バレットはその他にも、問題児を9人引き取って育てた地元の名士ウェーバリーを、その内の一人と密通していたというデマを流すとして脅し、石油採掘をしているというフロリアン夫妻についても脅迫ネタを探していたらしい。また、彼ら全員の家の掃除の仕事をしていたルビーも盗癖を知られて脅され、フロリアン夫妻についての情報を取るようバレットに指示されていた。バレットは夫妻が別荘を持つフェナコム湾にある魚屋のレシートを持っていたが、バーナビーが魚屋を訪ねると、店主ピーターは以前に香港で警官をしていた人物で、捜査にも協力的だった。フロリアン夫妻はよく沖の岩礁付近に出かけたが、そこには沈没船があるという噂があった―。

第47話「消えないセピア色」別荘.png第47話「消えないセピア色」03.jpg 面白かったです。今回も登場人物は皆怪しげ。見るからに怪しげな人物は犯人ではないというのがパターンになっているようで、そのことを念頭に置きつつも(つまり、まともに見える人が犯人に違いないと思って観つつつも)、やはり騙されてしまいます。と言っても、今回のケースなどは、犯行動機が最後の最後にならないと分からないから無理もないかも。海外での昔の出来事を巡る復讐劇でした。

 バーナビーも今回は、わざとではなく明らかな誤認逮捕をしてしまったわけで、一件落着したかのように思えて何となくスッキリしないところへジョーンズの言葉でやっと閃いた...(冷たい海の水で目が覚めた?)。

 考えてみれば、事件解決に幾つかの偶然が働いていて、例えば、ピーターに「ガソリンスタンドのレシートを取って来い」と言われたルビーが間違って魚屋のレシートを取って来たのもその1つであるし、ピーターの奥さんのキャロルがたまたま好意でジョイスにウサギ肉を贈ったのもそうです(ウサギ料理の中から散弾が出てきたことをバーナビーが思い出したことで、ジョイスとカーリーは残飯漁りをしなければならなくなったが、散弾は見つかり、それが決定的な犯行証拠になった)。

Down Among the Dead Men.jpg お宝探しの夫婦は夫婦で、殺人事件解決後はお宝の隠し場所を追及されてシラを切り通すも、ジョーンズが誤ってペットボトルを倒したことから井戸の存在が明らかになり...と、ジョーンズは推理ではバーナビーの足元にも及ばないものの、"本人の能力以外"のところで意図せず事件の解決に貢献しているなあ(スコットから交替して才気煥発ぶりが目立ったため、ここらでほどほどに調整している?)。

 小説や映画などから、沈没船のお宝は引き揚げた人のものになるというイメージがありますが、日本では1年間所有者が名乗り出なければ発見者のものになるものの、ヨーロッパなどでは最初から国のものと規定しているケースが殆どで、それを黙って自分のものにしてしまうと窃盗罪になるようです。所有権争いを避けるのが狙いのようですが、沈没船が近海にそれだけ数多くあり、徒に射幸心を煽らないようにするというのもあるのでは。

第47話「消えないセピア色」マッケンジー.jpg ルビーを演じたジュリア・マッケンジーは、2009年からグラナダ版「アガサ・クリスティー ミス・マープル」でミス・マープルを演じることになりますが、ここではパブの手伝いと掃除人の仕事の掛け持ちと忙しく、その上、パブの店主の内縁の妻みたいになっていて、家から鉄砲が出てきて、互いに相手が犯人ではないかと疑心暗鬼になり、"夫婦喧嘩"の末に鉄砲が暴発、自ら警察を招き入れることになって、窃盗癖も白状するという、ミス・マープルとは全く異なる役どころを演じているのが興味深かったです(でも、どことなく品のある感じ)。

Martin Barrett's house in 'Down Among the Dead Men'.jpg
「バーナビー警部(第47話)/消えないセピア色」●原題:MIDSOMER MURDERS:DOWN AMONG THE DEAD MEN●制作年:2006年●制作国:イギリス●本国上映:2006/03/12●監督:レニー・ライ●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:ダグラス・ワトキンソン●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジェイソン・ヒューズ/ジェーン・ワイマーク/ローラ・ハワード/バリー・ジャクソン/ジュリア・マッケンジー●日本放映:2010/04●放映局:AXNミステリー(評価:★★★★)
Martin Barrett's house in 'Down Among the Dead Men'

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巡査ジョーンズが「刑事」に。双子兄弟の一人二役に続いて、キャラ立ちしている親子の二人四役。

MIDSOMER MURDERS 11.jpg  MIDSOMER MURDERS 44真相の眠る屋敷.jpg 真相の眠る屋敷.jpg   第45話/カーニバルの傷痕 dvd.jpg
Midsomer Murders Set 11 [DVD] [Import]」(The House in the Woods(真相の眠る屋敷)/Dead Letters(カーニバルの傷痕)/Vixen's Run/Down Among the Dead Men)

バーナビー警部(第44話)/真相の眠る屋敷 03.jpg ニュートンの森にひっそりと佇むウィンヤード屋敷は、近頃幽霊が出ると噂になり、地元の子供たちの肝試しスポットとなっていた。ある日、物件探しでこの屋敷に惹かれた夫婦が、屋敷から車に戻ったところで何者かに絞殺されてしまう―。(第44話「真相の眠る屋敷」)

 屋敷を売り出しているチャーリーには実は双子のジャックという兄弟がいて、昔起こした事件(警官殺し)で服役中とのこと。しかし、実際には、ジャックがチャーリーの罪を被って服役していたんだなあ。そのジャックは屋敷に思い入れがあって、脱獄までして屋敷を見に来る―。

バーナビー警部(第44話)/真相の眠る屋敷 04.jpg う~ん、双子の兄弟で自分が知能も人格も全ていいところばかり取ってしまって、弟には悪いところばかりいったからと言って、そのことに後ろめたさを感じて弟の罪を被るかなあというのはありますが、実際ジャックは子供にも好かれるいい人という感じで、自分を愛してくれた女性とも会えて、まあ最後は犯人に殺されなくて良かったという感じでしょうか。
 兄弟を同じ俳優が演じていますが、きっちり演じ分けていたし、両者がもみ合う場面などは巧く撮っていました(但し、ジャックを簡単に脱獄させてしまう刑務所や、チャーリーに易々と屋敷に入り込まれる警察というのは如何なものか)。

バーナビー警部(第44話)/真相の眠る屋敷 01.jpg チャーリーも充分に怪しいのですが、それまでに怪しい人物が目一杯出てくるので、初登場の時は相対的にまともに見えてしまうという、いつもながらの巧みなミスリードのさせ方でした。ある程度まで混迷を深めた段階で、少年がチャーリーをジャックだと思って「ジャック」と呼びかけて反応が無かったという、視聴者から見れば分かり易い謎解きの手立て示したのは親切か。

バーナビー警部(第44話)/真相の眠る屋敷 02.jpg 本作から第9シーズン。バーナビーは、スコット巡査部長の病欠で、代わりに巡査ジョーンズ(ジェイソン・ヒューズ)を警官の制服からスーツに着替えさせて巡査部長代理として共に捜査に当たらせますが(「キミ、やってみるか?」って感じだったね)、もしかしてこの人、スコットより優秀? 一方のスコットは、結局、前シーズンを最後に、このシリーズに復帰することは無かったようです(やや気の毒)。


カーニバルの傷痕 3.jpg ミッドサマー・バートンで年一度開催されるオークアップル祭。お祭り気分の中、マリオン・スレードの水死体が発見される。彼女は精神安定剤のダイラシンを多量に服用しており自殺かと思われたが、肩には押さえつけられたような痕があったバーナビーとジョンは捜査を開始、聞き込みを続けるうちに、マリオンに8年前に食中毒で死亡した娘がいたことを知らされる。その後ベラのかつての同級生マークが、自分の犬を祭りのドッグショーに出すと言っていたが現れず、森で首を切られて死んでいるのが見つかる。彼もマリオンと同様にダイラシンを飲まされて殺されたのだった―(第45話「カーニバルの傷痕」)

第45話/カーニバルの傷痕11.jpg第45話/カーニバルの傷痕12.jpg 今回も怪しげな人物が目一杯出てきますが、極めつけは「第1話/謎のアナベラ」に出てきた覗き趣味の"塩沢とき"風オバサンと葬儀屋の息子の親子が、村の祭りの仕切り屋と図書館員の役でまた出てきている点―といっても、2人は第1話で犯人によって殺害されているため、それはあり得ないと思って観ていましたが、どう見ても同じ役者が演じている! 結局、このアリスター親子というのは、第1話のレインバード親子の姉と義兄だったわけかあ(スゴイ役者の使い回し方! それだけあの親子のキャラが視聴者受けしたということか)。

 バーナビーがどこかでお会いしましたね、とか、ずっとこの村に住んでいるのですかとか色々訊いて、やっと9年前に妹親子が殺害されたことを聴き出し得心しますが、意外と自分が手掛けた事件のことを覚えていないのかな(9年前ならまあ無理もないか)。こっちのオバサンも覗き趣味だし、息子には溺愛していた甥と同じ格好をさせているし、それがまた葬儀屋の恰好なので、怪しさ全開なのですが、まあ今回も被害者になることはあっても犯人ではないんだろうなあと。

第45話/カーニバルの傷痕2.jpg第45話/カーニバルの傷痕 医師2.jpg お祭り男の旦那はプロのコメディアンを目指していて実入りのある仕事はしておらず、その旦那にあなたコメディアンにはなれない、なぜならば「あなたの人生そのものがコメディなのよ」と言い放つ妻。その妻も医師と浮気していて、この医師(医者なのにヘビースモーカー)も好色...といった具合に、犯人を除く残りの人たちの方が問題ありではないかと思わせるような村の人々でした。

 ジョーンズ巡査の優秀さが結構目立ちました。バーナビーが相手に質問したいことを先回りして聴いていくため、バーナビーもやや感心している様子。「巡査」(階級名)がスーツで仕事しているのを「刑事」と俗称で呼ぶのは日本だけなのかなあ。"DITECTIV"は日本語で「探偵」とか「刑事」とか訳されることが多いですが、本来は階級名の一部でもあるようです(「巡査」が私服刑事になるのに特に試験とはないわけか)。

 因みに、イギリスでは、警視以下の役職階層は次の通り。
  警視    DSI DITECTIV Superintendent     
  警部    DCI DITECTIV Chief Inspector
  警部補   DI DITECTIV Inspector  
  巡査部長  DS DITECTIV Sergeant
  巡査    DC DITECTIV Constable
 バーナビーは「警部」(DCI DITECTIV Chief Inspector、番組のオープニングでは「DCI」の表記)で、かつての部下トロイは「巡査部長」(DS DITECTIV Sergeant、同「Sgt. 」の表記)から「警部補」(DI DITECTIV Inspector)に昇進して番組を去り、今度の部下ジョーンズは、一番下の「巡査」(DC DITECTIV Constable、同「DC」の表記)ということになるようです(トロイの初登場時より年喰っているように見えなくもないが)。

3真相の眠る屋敷 .jpg真相の眠る屋敷 5.jpg「バーナビー警部(第44話)/真相の眠る屋敷」●原題:MIDSOMER MURDERS:THE HOUSE IN THE WOODS●制作年:2005年●制作国:イギリス●本国上映:2005/10/09●監督:ピーター・スミス●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:バリー・シンナー●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジェイソン・ヒューズ/ジェーン・ワイマーク/バリー・ジャクソン/ジョージ・ベイカー●日本放映:2010/04●放映局:AXNミステリー(評価:★★★☆)

MIDSOMER MURDERS:DEAD LETTERS 2.jpg「バーナビー警部(第45話)/カーニバルの傷痕」●原題:MIDSOMER MURDERS:DEAD LETTERS●制作年:2006年●制作国:イギリス●本国上映:2006/02/26●監督:レニー・ライ●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:ピーター・ハモンド●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジェイソン・ヒューズ/ジェーン・ワイマーク/バリー・ジャクソン/エリザベス・スプリッグス/リチャード・キャント●日本放映:2010/04●放映局:AXNミステリー(評価:★★★☆)

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ソース工場の経営を巡る一族の確執。後味は良くないけれど、そこそこに巧いエピソード。

SAUCE FOR THE GOOSE dvd.jpgSECOND SIGHT dvd2.jpg  SAUCE FOR THE GOOSE 00.jpg SAUCE FOR THE GOOSE 02.jpg   
"Midsomer Murders" Sauce for the Goose (斜陽の喧騒)「Midsomer Murders Set 10 [DVD] [Import]」(Second Sight/Hidden Depths/Sauce for the Goose/Midsomer Rhapsody)

SAUCE FOR THE GOOSE 03.jpg 1851年創業のソース工場プラマー社のピリ辛ソースは、英国内外で愛され、売れ続けていたが、いつしか経営難に陥り、フィールドウェイ社から買収話がもちかけられていた。今年の年次総会でプラマー社の一族が集まった時、工場見学に来ていた男が殺される―。

SAUCE FOR THE GOOSE 01.jpg 被害者の死体が全裸で高熱消毒のベルトコンベアから出てきたというのが凄いね。検視官ブラード博士が、今回の死体は"見もの"だと言ってるぐらいですから、確かに充分にユニーク且つグロテスク。バーナビーらの調べで、斜陽の喧騒.jpg殺害された男はフィールドウェイの社員デクスター・ロックウッドで、消毒される前にフォークリフトでソース瓶の壁に挟まれて圧死していたことが判り、彼は買収会社の社員であるだけでなく、祖父がプラマー社の創業メンバーの一人でありながら、解雇され自殺したという過去経緯もありました。

SAUCE FOR THE GOOSE 4.jpg プラマー社の経営権は、母親と3人の兄弟・妹にあるものの、長男レイフは社長でありながらも会社経営よりバードウォッチングに執心しており、実質的にはその妻ヘレンが経営を仕切っていて、残るアンセルム、キャロラインの弟妹は遊び人みたいな感じで、工場を売却することで金を得たいと考えていますが、大株主の母親と長男がそれを拒んでいるという状況です。

 バーナビーは長男の妻ヘレンに事情聴取しようとして逆にレストランを指定され、そこでいい雰囲気で話していると、スコットもキャロラインを伴って同じレストランへやってきて"Wデート"みたいな感じになりますが、スコットの方はキャロラインから事件に関する事実を聞き出そうとして、彼女から"実利主義者"呼ばわりされて決裂(キャロラインは「実利主義の家族から自由になろうとする女の話」を小説に書こうとしていて、その話をスコットに聴いて欲しかったみたい)、一方のバーナビーは"いい雰囲気"でヘレンと別れ、外で待っていたスコットに、「偏見を持ってはいけませんよ」と負け惜しみ的に言われ、やや憮然とするのが可笑しいです。

斜陽の喧騒5.jpg 一族の中でも最も意外な線が犯人だったというのはこのシリーズらしいですが、夫が妻を庇って全ての罪を被ろうとしていたのに、妻の方は夫が所有し大事にしている森を売って(そっか、自分の森だったのか)経営を立て直そうとしていて、その齟齬が哀しいなあ。こうなると、純粋な人ではあるが、社長なのにあまりにも経営から逃げ続けてきた夫も問題ありでしょう。

 バナービーが事件の進捗を家族に話すのはいつものことですが、容疑者の一人と食事したことを妻ジョイスに話す際に、相手は美人だったとかそんなことまで話しちゃったのかなあ。最後は、自分が捜査に偏見を持っていないことをスコットの前で実証してみせたけれど、ジョイスはずっと不機嫌だったなあ。

 最後、母親が認知症になってしまうのも哀しいけれど、会社を売りたがっていたはずのアンセルムらが、働くことを覚えなきゃなんてことを言い出したということは、プラマー社の存続を示唆しているのでしょうか(その場合、森を売るんだろうなあ)。どちらにしても、バーナビーが、昔の好きだった味とは違ってしまったプラマー社のピリ辛ソースはもう要らないと言っているは、事件の後味の悪さと重なっているように思いました。確かに後味は良くないけれど、そこそこに巧いエピソードではあると言えるかも。

斜陽の喧騒 3.jpg「バーナビー警部(第42話)/斜陽の喧騒」●原題:MIDSOMER MURDERS:SAUCE FOR THE GOOSE●制作年:2005年●制作国:イギリス●本国上映:2005/04/03●監督:レニー・ライ●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:アンドリュー・ペイン●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジョン・ホプキンズ/ジェーン・ワイマーク/バリー・ジャクソン/ジェームズ・フリート/ジェラルディン・アレクサンダー●日本放映:2010/04●放映局:AXNミステリー(評価:★★★☆)
80 High St, Amersham, Bucks, UK - Midsomer Murders, Sauce For The Goose

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「千里眼」(超能力)を肯定的に捉えているのが興味深い。後味も悪くない。

SECOND SIGHT dvd1.jpgSECOND SIGHT dvd2.jpg  千里眼の系譜 01.jpg
"Midsomer Murders" Second Sight (千里眼の系譜)「Midsomer Murders Set 10 [DVD] [Import]」(Second Sight/Hidden Depths/Sauce for the Goose/Midsomer Rhapsody)

 ある日、ミッドサマー・ミアのパブを追い出された若い男ジョン・ランサムは男達と争っている中、死亡した。パブの店主ジミー・カーヴィは、「ジョンが暴れ出し、押さえつけたところ死亡した」と説明するが、彼の頭には火傷のような跡がいくつも残っていた―。

Second Sight 3.jpg 息子ジョンが亡くなっても、科学者一家ランサム家の父親グレゴリーはあまり悲しんでいないところから、バーナビーが一家の家系に疑問を抱き始めるのは比較的分かり易い展開でした。科学者一家と対立する「千里眼」一家カーヴィ家(千里眼って遺伝するのか)のジミーの奥さんエマは、赤ん坊の千里眼に怯えている感じで、その赤ちゃんと奥さんを牧師が無理矢理赤ちゃんに洗礼を受けさせるために連れ去ります。

千里眼の系譜 03.jpg 超能力ブームみたいなものがずっと続いている村というのも変わっているいるけれど、村人の中で超能力者を自認するのは胡散臭そうな人ばかり。そうした風潮を改め、村人を教化するという牧師の意気込みは一見真っ当なように見えましたが、な~んだ、自分の布教成績を上げて栄転を果たしたい(これ以上の僻地(?)へ飛ばされたくない)ということだったのかあ。そもそも、エマへの接し方が最初から怪しかった...(赤ん坊が洗礼を受ければ千里眼の呪縛から解き放たれると強引に説得したわけか)。

千里眼の系譜 02.jpg 村の超能力ブームの背景には、マル(カーヴィ家の父親)が昔、ブレーキがかかってない状態で坂の上に停められた無人トラックが暴走して小学校に突っ込むのを予知して、大勢の生徒達を救ったという出来事があったためでした。そのマルは、今は世捨て人のような生活を送っています。

 実は亡くなったジョンはマルの息子で、実際に予知能力があり(隔世遺伝ではなかったわけか)、牧師の異動を予知して「アンタは左遷されるよ」と本人に告げてしまったということだったのかと。マルが言うように、超能力は持っていても矢鱈と使うもんじゃないね。科学者一家の息子マックスなどは、異父弟ジョンの超能力を研究していたというより、それを使って競馬で儲けようとしていたみたいで、まさに論外です。

 ずっと千里眼とは縁を切ったような生活を送っていたマルが、最後にジミーや似非超能力者たちの目の前で、裏返しにされたトランプを次々当てるなどして超能力の実力を見せつける場面は圧巻で(マル自身の哲学には反するのかもしれないけれど、本人も意外とジミーとの親子対決を楽しんでいるみたい?)、それまでジミーの中途半端な千里眼しか見ていなくて超能力に懐疑的だったバーナビーも、マルこそは"本物"の千里眼であることを認めざるを得ないことになります。犯人と赤ちゃんの居所まで当ててしまって、バーナビーも後はそこへ駆けつけるばかりという、ちょっといつもとは違った展開でした。

The cottage used as  Mal Kirby's house in 'Second Sight'.jpg マルが、事件解決後、旅立つカーリーを心配そうに見送るバーナビー夫妻に対して「彼女は大丈夫」と言ったかと思うといつの間にか消えてしまったのはカッコ良過ぎ。でも、マルが大丈夫といったからにはカーリー大丈夫なのでしょう。前エピソード(「第39話/闇に下る鉄槌」)の、子供が犯人で、しかも、頭の弱い叔父を実行犯として操っていた...といった話などと比べて、後味は悪くありませんでした(と言うか、こっちの方が断然いい)。

The cottage used as Mal Kirby's house in 'Second Sight'.

 大方の推理ドラマで超能力者が出てくるとそれは大概ニセモノなのに対し、このエピソードでは「千里眼」(超能力)の存在を肯定的に捉えているのが興味深いです(脚本のトニー・エッチェルズはこのシリーズ初起用)。結局、マルはどこまで見えていたのか、予知に不確実性は伴うのか(マルの自身が教会の入り口で最期を迎えるという予知は一応外れたことになる)といったことを後で考えてみると、案外と面白いエピソードだったように思います。

Emma & Jimmy Kirby's house in 'Second Sight'.jpg「バーナビー警部(第40話)/千里眼の系譜」●原題:MIDSOMER MURDERS:SECOND SIGHT●制作年:2005年●制作国:イギリス●本国上映:2005/01/23●監督:リチャード・ホルトハウス●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:トニー・エッチェルズ●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジョン・ホプキンズ/ジェーン・ワイマーク/ローラ・ハワード/バリー・ジャクソン/オーウェン・ティール●日本放映:2010/03●放映局:AXNミステリー(評価:★★★★)

Emma & Jimmy Kirby's house in 'Second Sight'.

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ちゃんと素人を推理の正解に導いてくれる作りもたまにはいい。

愛憎の終幕 dvd.jpg第37話「愛憎の終幕」11.jpg 愛憎の終幕 7.jpg
"Midsomer Murders" Dead in the Water(愛憎の終幕)

愛憎の終焉 3.jpg第37話「愛憎の終幕」ボート.jpg ミッドサマーでレガッタ大会が開催され、レースが盛り上がる中、川でボートクラブの会長ガイ・スイートマンの水死体が発見された。同じボートクラブのトレントやパークウェイは、事件にショックを受けた様子もなくレース続行を主張、一方バーナビーらは、クラブのバーテンから「彼らは、金に困ってて揉めていた」との証言を得ると共に、トレントら数名が毎週トレントのボートで極秘の打ち合わせをしている事実を掴む―。

第37話「愛憎の終幕」1.jpg レガッタ大会をやってもらわないことには、保険金詐欺計画がおじゃんになるということだったのかあ。モテ男のガイは、仲間内のイザコザで仲間らに殺されたのかと思ったら、この連中には黒幕がいて、その黒幕が直接手を下したということだでした。保険金詐欺計画も全部、この黒幕の発案です。但し、金蔓となる女性サンドラを見つけたことで仲間を抜けたガイの口から計画の秘密が漏れるのを恐れて殺したと言うよりも、ガイが若くて実家が金持ちの娘サンドラに走ったという愛情の裏切り行為に対し、かっとなって殺したと言った方が正解でしょう。

愛憎の終幕 00.jpg 犯人はサンドラの口をも封じるために殺害を試みるが、これはバーナビーに先を越されて失敗、そこで御用となり、黒ヘルメットを外す前に、大方の視聴者には犯人が誰だか判ったのではないでしょうか。ちゃんと素人を推理の正解に導いてくれる作りもたまにはいいです。

愛憎の終幕 6.jpg と言うことで、被害者も少ないし、意外とシンプルだった? むしろ、地方のレガッタ大会風物を愉しめる?(レガッタって、別にテムズ川だけでなく、英国のあちこちでやっているわけか)。ジョイスが「またよ、一緒に出かけると10分で事件に出くわすわ」とボヤいているけれど、前作では被害者と別れた直後の殺人事件だったし、ちょっと異常なまでの"事件居合わせ率"?

オウェイン・イオマン1.jpg ボート選手ヘンリー役のオウェイン・イオマン(Owain Yeoman)は、米国のコメディ・ドラマ「キッチン・コンフィデンシャル」で副料理長役で出ていたけれど、最近では同じく米国のクライム・サスペンスドラマ「THE MENTALIST メンタリストの捜査ファイル」の恋愛に不器用なCBI捜査官の印象が強く、ガタイはいいけれど、やや三枚目っぽい役が似合う印象です(そのつもりで観てしまうから、生意気娘ヘティとボートクラブの会計係兼コーチのクレアとの二股を掛けた女好きというこのエピソードの役柄においても、あまり女性の気持ちを理解していなさそうな...)。オウェイン・イオマン メンタリスト2.jpgオウェイン・イオマン メンタリスト1.jpg

Owain Yeoman in The Mentalist (「THE MENTALIST メンタリストの捜査ファイル」)
 

「バーナビー警部(第37話)/愛憎の終幕」●原題:MIDSOMER MURDERS:DEAD IN THE WATER●制作年:2004年●制作国:イギリス●本国上映:2004/10/17●監愛憎の終焉 ロケ地.jpg愛憎の終焉 張り込み.jpg督:レニー・ライ●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:ダグラス・ワトキンソン●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジョン・ホプキンズ/ジェーン・ワイマーク/ローラ・ハワード/バリー・ジャクソン●日本放映:2010/02●放映局:AXNミステリー(評価:★★★☆)
ASTON, OXFORDSHIRE Seen in 'Dead in the Water'. Barnaby & Scott use this house as a lookout to spy on Trent's boat.

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霊媒師の宣託の虚実皮膜は上手いと思ったが、犯人像がややチンケな印象も。

止まらない凶行 dvd.png 止まらない凶行 dvd.jpg  止まらない凶行 0.jpg
"Midsomer Murders Set 9 [DVD] [Import]" Things That Go Bump in the Night(止まらない凶行)/Dead in the Water/Orchis Fatalis/Bantling Boy
止まらない凶行 01.jpg ミッドサマーの小村フレッチャーズ・クロスでは、霊媒師ロゼッタによる降霊会が大人気で、愛する人に先立たれた人々が、死者のメッセージを聞くために集まっていた。最近引っ越してきたエリザベスと親しくなったジョイスが、彼女に誘われてその降霊会に行った晩、ロゼッタは「誰かに不幸なことが起こる」と警告、その晩に葬儀屋パトリック・ペニマンが霊安室で殺され、次にはエリザベスが自宅前でジョイスとの別れ際に、更に降霊会を手伝う男ジョンがフレッチャーズ・クロス駅付近の線路上で殺される―。

止まらない凶行 3.jpg 犯人が全然読めなかったなあ。葬儀屋の妻ジャネットが両手首を切られた夫の死体を発見して驚いて助けを求めに外に飛び出すシーンは、推理小説でいうところの"叙述トリック"に当たるのではないかな。これに完全に騙されてしまったけれど、やや"掟破り"の印象も受けました("演技"がプロの役者並みに上手過ぎ。若干の不自然さが欲しかった―と言うか、誰も見てはいないところでどうして演技する必要がある?)。

止まらない凶行 2.jpg クリスティ作品などにも出てくる降霊会と、ロゼッタに馮衣したヴィクトリア朝時代の少女の霊(サラ・ウォーターズの『半身』を想起した)、「きかんしゃトーマス」みたいな鉄道列車の保守並びに止まらない凶行 天然石屋.jpgフレッチャーズ・クロス駅の再開に携わる人々といった英国ならではの味付け。霊媒師の他にも「天然石屋」とか、いろいろ出てきます(これも半分占い師みたいなものだなあ)。ロゼッタが亡くなった人の家族しか知らないような身体的特徴を言い当てることが出来たのは、"葬儀屋情報"だったわけかあ、ナルホド(土葬だとエンバーミングするわけか。火葬でも湯灌するけれど)。

「天然石屋」のセット[上]/Long Crendon Manor(降霊会会場)[下]
止まらない凶行 1.jpg止まらない凶行 降霊会.png 殺害されたエリザベスは、冷やかしで降霊会に出ていたわけではなく、ロゼッタのインチキを暴くためだった(それと盗品の謎も追及しようとしていた)―ロゼッタが宣託した「復讐の天使」は、ジョイスが警部を妻に持つ自分のことかと勘違いしたようですが、実はエリザベスのことだったと考えると、ヴィクトリア朝時代の少女の霊は本物だった? 常識的に考えれば偶然だとは思いますが、この辺りの虚実皮膜は上手いと思いました。

 ただ、不倫と欲得のための犯行動機で、ジャネットと共犯の不倫相手も色呆け老人となると、沢山殺した割には、犯人像がややチンケな印象も(スコットの単純な尋問テクニックにも嵌ってしまったし)。あの笑い方からして、ある意味2人とも"壊れた"人だったなあ。

 止まらない凶行 降霊会 bb.jpg ミッドサマーでは村ごとにブラスバンドがあって、「バーナビーのテーマ」が定番曲なのか?

「バーナビー警部(第36話)/止まらない凶行」●原題:MIDSOMER MURDERS:THINGS THAT GO BUMP IN THE NIGHT●制作年:2004年●制作国:イギリス●本国上映:2004/10/10●監督:ピーター・スミス●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:ピーター・ハモンド●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジョン・ホプキンズ/ジェーン・ワイマーク/ローラ・ハワード●日本放映:2010/02●放映局:AXNミステリー(評価:★★★☆)

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シリーズの中でも秀作エピソードだと思う。鬼のような長姉と「名探偵コナン」みたいな少年。

バーナビー警部 「錯覚の証明」dvd 輸入盤2.jpgバーナビー警部 「錯覚の証明」 dvd輸入盤.jpg  バーナビー警部 「錯覚の証明」2.jpg
"Midsomer Murders" Ghosts of Christmas Past(錯覚の証明)

バーナビー警部 「錯覚の証明」1.jpg クリスマスの日、バーナビーは妻のジョイスの両親を家に招待していたが、妻の父親が苦手なバーナビーは、スコットが彼を事件で呼び出す事を願っていた。時を同じくして、由緒あるヴィリアーズ家の人間たちも、クリスマスを祝っていたが、そうした中、大叔母のリィディアがガレージで車の排ガスによって殺害されそうになり、次は階段から突き落とされて―。

バーナビー警部 「錯覚の証明」犯人.jpg ヴィリアーズ家では、プロの手品師を目指していた長兄のファーディが、唯一心を通わせた女性クレアの悪行を聞かされて9年前のクリスマスに自殺したという暗い過去があり、実はそのクレアも、その時には既に更生していたにも関わらず、信頼していたリィディアの裏切りに遭ったことを知って自殺していた...。

バーナビー警部 「錯覚の証明」3.jpg でも、これ、一番悪いのは、どう見ても長姉ジェニファーでしょう。長兄に彼の生きがいである手品師になる夢を諦めるように言い、クレアにヌレギヌを着せるようリィディアに警察に電話させた彼女は鬼のような女性であり、殺されてもあまり同情できず、むしろリィディアの方は、犯人の復讐に巻き込まれた感じでしょうか。9年前からこの家の家族と友人になったというドミニクが、実は...。

バーナビー警部 「錯覚の証明」 3.jpgバーナビー警部 「錯覚の証明」少年.jpg 息子のガールフレンドで家族にとってはよそ者となるエミリーがヒロインっぽくって(情緒不安定の頼りない青年と、彼のことを気遣うしっかり者の若い女性という、よくある組み合わせパターン)、彼女が探偵役を務めるのかと思ったら、ハワードという次女の息子がこれまた「名探偵コナン」みたいに利発で、この辺りは楽しめます(手品も上手で、トリックに騙されたスコットは本気で不機嫌だったなあ)。

錯覚の照明 3.jpg 犯人の犯行手口をバーナビーが現場でスコットに解き明かす一方で、ハワード少年は現場から離れた場所で、バーナビーと同じタイミングで犯行トリックを家族の皆に説明していたから、考えてみればこれはスゴイことです。バーナビー自身、ハワード少年の言葉から、犯行の謎を解くヒントを得ています。

錯覚の証明 スコット.jpg バーナビー家のクリスマスの様子が見られるのも興味深く、スコットも招かれますが、この辺りから少しずつ、バーナビーとスコットの上司・部下としての関係が変わってきたかな。スコットも、前回エピソード「炎の惨劇」の悲惨な体験で一皮剥けたのか、クリスマスイブに女性と一緒になっても、待機命令を受けているからと言って、"2次会"は断っていたなあ。住まいは依然"仮住まい"っぽいけれど、犯人の行方については、持ち前の勘を働かすなど、当初は気が乗らなかった地方勤務に、やや本腰になってきた感じです。

バーナビー警部 「錯覚の証明」 ロケ.jpg 屋敷に犯人がいるということで、バーナビーが禁足令を出して一人ずつ尋問に当たるという、名探偵ポアロのようなどことなくクラシカルなパターンでしたが(家族は勝手に狩りに出てしまうが)、最後の犯人逮捕の場面は、犯人も最初から捕まるつもりでいたし、また犯行に至った心情も理解できるだけにしんみりさせられます。いろいろな意味で秀作エピソードであるように思います。

'Draycott Hall' used as Villiers family's house

 「じゃじゃーん」は英語でも「ジャジャーン」でした。ファーディという名は、「脱出王」の異名を取った希代の魔術師ハリー・フーディーニに懸けたものなのかなあ(但し、姓ではなく名だし、しかも本名のようだが)。

錯覚の照明 4.jpg「バーナビー警部(第35話)/錯覚の証明」●原題:MIDSOMER MURDERS:GHOSTS OF CHRISTMAS PAST●制作年:2004年●制作国:イギリス●本国上映:2004/12/25●監督:レニー・ライ●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:デヴィッド・ホスキンス●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジョン・ホプキンズ/ジェーン・ワイマーク/ローラ・ハワード/バリー・ジャクソン●日本放映:2009/03●放映局:ミステリチャンネル(評価:★★★★)

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スコットにとってはまさに"悲惨な"体験。これで彼も一皮剥けるか。

バーナビー警部 「炎の惨劇」dvd輸入盤.jpg炎の惨劇 dvd.jpg  バーナビー警部 「炎の惨劇」 バーナビー.gif バーナビー警部 「炎の惨劇」 スコット.jpg
Midsomer Murders - The Straw Woman (炎の惨劇)

炎の惨劇 わら人形.jpgバーナビー警部 「炎の惨劇」 title.jpg ミッドサマー・パーヴァで「女わら人形祭り」が行なわれ、提案者は教師のフランシスで、昔の女達が偏見により火あぶりになった歴史を通し、無知がもたらす恐怖を子供達に教えるのが目的だった。巨大なわら人形に牧師が火をつけると中から叫び声がし、教会の副牧師が焼死体で見つかる―。

バーナビー警部 「炎の惨劇」牧師.jpg 副牧師、牧師、医師と次々に殺害されていきます。バーナビー警部 「炎の惨劇」1.jpg村に屋敷を構え、毎晩のパーティ三昧で教会と対立するアランが最初に疑われますが、一番最初に怪しいと疑われる人物は真犯人ではないというのがもうパターンになってるね。アラン自身、最初の殺人で、「自分が容疑者になる予感がする」と言っているぐらいだから、もうこれは犯人じゃない。そうなると、誰か...。

バーナビー警部 「炎の惨劇」 ケイト.gif 実はアランは末期患者で、村の民間療法士ケイトと看護師アグネスを頼って治療をしているけれど、この2人の関係に大元があったのだなあ。嫉妬からくる動機としても、ちょっと殺し過ぎ。犯人は、三角関係のライバル本人を殺害しないで、副牧師、牧師、医師と、「師」の字の方を殺していったなあ。
バーナビー警部 「炎の惨劇」 ジョー.gif
 事件をややこしくしたのは、アランの娘ジョーでしょうか。セクハラ医師をからかったのはともかく、純朴なマシューをたぶらかしたのはいただけません(ヌードになるだけだったらまだいいんだけれどね)。

バーナビー警部 「炎の惨劇」2.jpgバーナビー警部 「炎の惨劇」リズ.gif そして最後は教師フランシスが犠牲となり、彼女が殺害される前夜に、携帯を留守電にして仕事そっちのけ状態で彼女と一夜を共にしたスコット巡査部長には、目の前で彼女が焼かれて亡くなるのを見たのはキツかっただろうなあ(この辛い経験で、彼はこの後一皮剥けるか?)。

 「女わら人形祭り」はクリスティの「蒼ざめた馬」を想起させますが、但し、ミッドサマー・パーヴァでのものは今回が第1回。でも、こうしたお祭りに英国人は郷愁を感じるのでしょうか。シリーズのベストエピソード・ランキングでもベスト10に入ることの多い作品です(しかし、牧師と副牧師がホモ関係にあるなんて、こんな設定で教会からクレームがこないのかな)。

Trivia:The character of Alan Clifford's nurse, Agnes Waterhouse, is named after the first witch to be executed in England (hanged, not burned, in 1566).

「バーナビー警部(第34話)/炎の惨劇」●原題:MIDSOMER MURDERS:THE STRAW WOMAN●制作年:2004年●制作国:イギリス●本国上映:2004/02/29●監督:サラ・ヘリングス●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:ジェフ・ドッズ●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ジョン・ホプキンズ/ジェーン・ワイマーク/ローラ・ハワード/バリー・ジャクソン●日本放映:2009/02●放映局:ミステリチャンネル(評価:★★★☆)

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老人たちが秘めたシルバー・パワーを見せた2作。

バーナビー 委託の代償dvd .jpg バーナビー 委託の代償2.jpg    バーナビー 聖女の池 dvd.jpg
Midsomer Murders [VHS] [Import]」SINS OF COMMISSION (委託の代償)/THE MAID IN SPLENDOUR (聖女の池)

バーナビー 委託の代償1.jpg 第12回ミッドサマー文芸祭の前日、作家のリチャードが自宅で殺害されているのを友人のケイが発見する。現場に駆け付けたバーナビー警部は、ケイがリチャードの部屋に飾られていた絵葉書をバッグにしまいこむのを目撃するが―。(第32話「委託の代償」)

 まず、一番最初に怪しいと疑われる人物(今回は若手の男性作家)は真犯人ではないというのがこのシリーズのパターンですが、その後が全然判らなかったなあ。まさか、犯人がスーパーお婆ちゃんとは。プロット的には面白かったけれど、最後の謎解きでの再現シーンは笑ってしまいました。自然に身体が動いてしまう殺人のプロかあ。

 まあ、確かに、殺害された人物が全て"刺客"的要素を帯びていたと解すれば筋は通り、法廷で全て正当防衛だとして罪に問われないよう尽力するというバーナビーの言葉は、彼が現場に立ち会ってなくとも頷けるものでしたが、このシリーズとしては(お婆ちゃんのアクションシーンも含めて)かなり異色作の部類に入るのではないでしょうか(脚本のエリザベス・アン・ホイールはこのシリーズ初仕事)。

SINS OF COMMISSION.jpg 例の我儘し放題の女流作家の小説もお婆ちゃんが書いていたわけだけど、色恋でもまだまだ現役であることを匂わせる場面がありましたね。本はジョイスに酷評されていたけれど、わざと通俗風に書いていたのでしょうか。

 バーナビーと一緒に捜査に当たる巡査部長がトロイ(ダニエル・ケーシー)からスコット(ジョン・ホプキンズ)に代わって3作目。結構トッポい感じで、聞き込み相手が美人だと捜査を忘れそうになってしまう一方で、巧みに筆跡鑑定の素材を得たり、思わぬところで証拠を見つけたりして、それをバーナビーも叱ったり褒めたりと、こまめにOJTしているなあ。


バーナビー 聖女の池 3.jpg オーナーだったマイケル・バナーマンが引退し、常連客で賑わうレストランとバーを備えたミッドサマーの人気店「美しい池の娘」は息子のスティーブンと妻ローナにより経営されているが、スティーブンはバーを閉めて、レストランを拡大しようと計画して不動産屋との間で売却話を進めていた―。(第33話「聖女の池」)

バーナビー 聖女の池 4.jpg オーナーのスティーブンは絶対に殺されると思ったけれど、そこからの展開が判らなかったなあ。尤も、過去から続く結構複雑な人間関係(2世代にわたる不倫関係と三角関係が、爺さんの老いらくの恋のおかげでクロスしてしまっている)が意外とすんなり頭に入ったのは、見せ方の上手さでしょうか。

バーナビー 聖女の池 店.jpg 実行犯は爺さんだったけど、それを仄めかしたのは、かつて不倫関係にあり、今も結婚を迫っているオバさん。爺さんが心臓発作で亡くなって、バーナビーは「委託の代償」とうって変って、今度は厳しい態度で教唆犯に臨んでいました(前回が異例だった?)。

 まあ、日本の法律でも、「殺人」と「殺人教唆」は最低懲役5年から最高刑は死刑と同じで、時として教唆犯の方が実行犯より重刑となる場合もあるわけですが、このオバさん、バーナビーの追及に観念したのか、殺人教唆の手口を弁護士もいないところで結構バーナビーに喋っていたなあ。

The George Hotel - used as 'The Maid in Splendour' pub

バーナビー 聖女の池 バー'.jpg プロット的には面白かったけれど、愛する男に自分の息子を殺すよう仕向けるかなあ。殺されたオーナーの妻ローナも、亭主が殺されたとたんに店を改装して前オーナーの爺さんを追い出すし、オバさんの娘は、見かけの清楚さとは裏腹に意外と金目当ての蓮っ葉だったし、エゴイスティックな女性ばかりで、主要登場人物がろくなのがおらず、後味はイマイチでした。

 スコットはここでもその娘への関心から単独行動に出て、そこで聞き知ったことをバーナビーに報告せずにいてキツく叱られていたけれど、一方で、爺さんとオバさんの昔の関係を探るヒントを見つけ出してバーナビーを唸らせるなど、誤った推理や挙句の果ての誤認逮捕を繰り返していたトロイに比べる、結構意外なところで鼻が効いたりするのが特徴でしょうか。

The bar in 'The George Hotel' used as one of the interiors for 'The Maid in Splendour'

 爺さんは店の経営を断念せざるを得ないほどに身体は弱っていて、しかもアル中気味だったのに、いざ殺しとなると矍鑠と行動していたわけか(色恋の力?)。前作のスーパーお婆ちゃんといい、秘めたシルバー・パワーを見せた2作でした。

第32話)/委託の代償.jpg「バーナビー警部(第32話)/委託の代償」●原題:MIDSOMER MURDERS:SINS OF COMMISSION●制作年:2004年●制作国:イギリス●本国上映:2004/01/18●監督:ピーター・スミス●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:エリザベス・アン・ホイール●時間:96分●出演:ジョン・ネトルズ/ジョン・ホプキンズ/ジェーン・ワイマーク/ローラ・ハワード/バリー・ジャクソン●日本放映:2009/02●放映局:ミステリチャンネル(評価:★★★☆)

第33話)/聖女の池.jpg「バーナビー警部(第33話)/聖女の池」●原題:MIDSOMER MURDERS:THE MAID IN SPLENDOUR●制作年:2004年●制作国:イギリス●本国上映:2004/01/25●監督:ジリチャード・ホルトハウス●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:アンドリュー・ペイン●時間:95分●出演:ジョン・ネトルズ/ジョン・ホプキンズ/ジェーン・ワイマーク/ローラ・ハワード/バリー・ジャクソン●日本放映:2009/02●放映局:ミステリチャンネル(評価:★★★☆)

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昇進したトロイの門出に花を持たせた脚本? バーナビーがトロイを送り出すに相応しいエピソード。

Midsomer Murders the green man dvd.jpg 森の聖者 01.jpg Midsomer Murders.jpg
Midsomer Murders [VHS] [Import]」 The Green Man (2003)(森の聖者) Sergeant Gavin Troy's last appearance as regular
森の聖者 00.jpg 産業遺産としての運河の再開に向けて、バーナービー夫人ジョイスや娘のカーリーを含む多くのボランティアが清掃活動に参加する中、トンネル崩落事故が起き、ジョイスらは中に閉じ込められるものの何とか救出される。救出活動中に、トンネル内から18~19世紀頃の工夫ものと思われる複数体の人骨が発見されるが、一体だけ20世紀の歯科技術を施されていた。同じ頃、村の若者たちが運河のある森に住むホームレスの老人トム(デイヴィッド・ブラッドリー)に暴行を加えたという匿名の通報があり、警部補への昇進通知を受け取ったばかりのトロイは、トムに会うため森へ向う。その内に、トムに暴行を働いた若者の一人が猟銃で撃たれて殺される事件が起き、更にまた1人―。

森の聖者 02.png 警部補へ昇進したトロイを実質的に独り立ちさせるためか、バーナビーはトンネルの遺体の謎の解明に専念し、ホームレス老人への暴行事件は敢えてトロイに一人で捜査させているといった感じ。しかし、そのトロイは、森の住人トムを捜して会うだけで苦労しているといったところでしょうか。そしたら、連続殺人事件が起きて...いよいよトロイには荷が重そう?

greenman8.jpg このエピソードは、トロイがレギュラーで登場する最後の回で、ところがいきなり「森の聖者」を誤認逮捕(しかも警察犬にがぶりと噛ませて)、このまま良いとこ無しに終わるのかと思ったら、二転三転して何とか一件落着したように見えた事件に対し、何となく腑に落ちないものを感じたトロイがいきなり閃いて、最後の最後に彼が事件の真相を突き止めるという、トロイの新たな門出に脚本家が花を持たせた感じでした。

森の聖者 03.jpg 「第28話/真実の鳥」では鳥が"演技"していたけれど、今度はキツネが演技していました。そのキツネが若者に撃たれたのは可哀そうだったし、キツネを友とする森の老人(聖者または哲人風?)も痛々しかったですが、その後、何とか救いのある場面もあったし、最後の、バーナビー一家によるトロイの昇進祝い&送別会的な団欒も、一家の息子を送り出すようで、いい味が出ていました(結局、トロイとカーリーとは友達で終わってしまったが)。総じて、バーナビーがトロイを送り出すに相応しいエピソードだったと思います。

バーナビー&トロイ.jpg トロイの新たな赴任地はニューカッスル。トロイは子供の時に北部から引っ越してきたので、いまだに北部訛りがあるという設定ですが、演じているダニエル・ケーシーも、1972年イギリス北部、ストックトンオンティーズの生まれ(ニューカッスルに近い)。父親はジャーナリストでテレビの司会者、姉妹はジャーナリストだったり作曲家だったりし、ダニエル・ケーシー自身も歌とバイオリンを8年間習い、ギターも習っているし、そのうえ乗馬などのスポーツを愛し、結構、お坊ちゃん育ちという感じ(作中のトロイは労働者階級の出身という設定)。トロイは原作にもあるキャラクターですが、ドラマでのトロイ像には、ダニエル・ケーシー自身の役作り観が大いに織り込まれていたとのことです。ダニエル・ケーシーは、10年前のこの頃に比べ今は太ったのが残念。この頃が一番良かった?

「バーナビー警部(第29話)/森の聖者」●原題:MIDSOMER MURDERS:THE GREEN MAN●制作年:2003年●制作国:イギリス●本国上映:2003/11/02●監督:サラ・ヘリングス●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:マイケル・ラッセル●撮影:ダグ・ハロウズ●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ダニエル・ケーシー/ジェーン・ワイマーク/ローラ・ハワード/バリー・ジャクソン/デイヴィッド・ブラッドリー/John Carlisle/Tim Woodward/Cherie Lunghi/Marc Buchner●日本放映:2009/01●放映局:ミステリチャンネル(評価:★★★★)

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真犯人の意外性はそれなりだが、共に若干のもの足りなさも残るエピソード。

領主の資質 dvd.jpg 領主の資質 dvd 輸入盤.jpg 真実の鳥 dvd.jpg 真実の鳥 dvd輸入盤.jpg
バーナビー警部「領主の資質」第27話 [DVD]」A Tale of Two Hamlets(領主の資質)/「バーナビー警部「真実の鳥」第28話 [DVD]」Birds of Prey(真実の鳥)
領主の資質 1.jpg ウェブスター家が村の歴史を題材にした小説の映画化のアトラクション施設を作ったが、そのお披露目会場で、映画に主演した領主の甥で俳優のラリーが爆死する。バーナビーとトロイは、二つの村の対立から事件が起きたと考え捜査するが、今度はラリーの叔父である映画プロデューサーのフランクも自宅でトレーニング中に殺害される―。(第27話「領主の資質」)

A Tale of Two Hamlets.jpg 一族に怨みを持つ者の犯行と思わせておいて、「第25話/背徳の絆」と同様、未熟な若者のエゴみたいな犯行動機だったなあ。実行犯は実は知らないうちに身内を殺していたわけか。
領主の資質 ロケ地.jpg 事情を知っていながら実行犯を操っていた主犯格は恐ろしいけれど、「背徳の絆」の方が年齢が低い分、より怖かったかも。

 実行犯を操っていた人物が背後事情を知っていて、領主と実行犯本人という当事者らが事情を知らないというのはどうなんだろうか。噂が当事者の耳に入るのは、周辺の人たちが全員知った後、一番最後ということか。
 ウェブスター家の邸が立派なのに対し、フランクが宣伝のために作った"悪魔の体験館"というのが、田舎っぽくてキッチュでした。

真実の鳥 0.jpg 車ごと池に突っ込んだと思われる元古本屋ジュリアン・シェパードの遺体が発見される。彼は仕事に失敗し妻にも逃げられているため、家政婦は自殺しても不思議ではないと証言するが、ブラード検視官は、遺体の肺からは微生物が発見されなかったので他所で溺死させられたに違いないと言う。シェパードは、発明家エドモントンへの投資から手を引こうとしていたことが判ったが、そのエドモントンも殺害される―。(第28話「真実の鳥」)

真実の鳥 5.gif 件(くだん)の発明家はアルツハイマーだったのだなあ。無燃料機関がキックスケーターだったとは。キックスケーターを現物配当された出資者側も、さぞビックリするやら、がっくりするやらだったでしょう。
 発明家の奥さんが何だか怪しいですが、ただ夫のアルツハイマーを直視したくがないために、猛禽類飼育にのめり込んでいたということだったのでしょうか。最後は、危うく犯人の犠牲となるところを鳥に助けられた...。
 トロイ巡査部長が野生保護鳥の卵の密猟者捜索に乗り出して、アウトドアっぽい美女と知り合うのがサイドストーリーでしたが、結局、2人の関係もそう発展しそうになかったですね。

真実の鳥 車.jpg 溺死体と思われた遺体の肺に水が入っていなかったので他所で殺害されたという推理はよくありますが、池で死んでいたのに肺から微生物が検出されなかったというのはナルホドね。「刑事コロンボ」に、プールで見つかった溺死体の肺にシャボンの成分が含まれていたことから、コロンボが浴槽に沈められて殺されたと推理するものがあったのを思い出しました(「刑事コロンボ(第25話)/権力の墓穴」)。

 
 真犯人の意外性はそれなりなのに、共に、若干のもの足りなさも残るエピソードに感じられるのは、電気による殺害とか、過去のエピソードからくる既視感があるせいでしょうか。
 
Barry Jackson, who plays pathologist George Bullard.jpg検視官ブラード博士.jpg 検視官ブラード博士役のバリー・ジャクソンは今月[2013年12月]5日に逝去したとのこと。日本では、AXNの番組ホームページ以外はどこも報じていないけれど、ご冥福を祈ります。

Barry Jackson, who plays pathologist George Bullard/検視官ブラード博士 in 「第17話/大胆な死体」

領主の資質 DVD 輸入盤.jpg「バーナビー警部(第27話)/領主の資質」●原題:MIDSOMER MURDERS:A TALE OF TWO HAMLETS●制作年:2003年●制作国:イギリス●本国上映:2003/01/24●監督:ピーター・スミス●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:アラン・プレイター●撮影:ダグ・ハロウズ●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ダニエル・ケーシー/ジェーン・ワイマーク/バリー・ジャクソン/レオ・ビル/ベス・ゴダード/クリストファー・グッド/ジョナサン・ハイド/アレックス・ロー●DVD発売:2004/11●発売元:キングレコード(評価:★★★)  「Midsomer Murders [VHS] [Import]

真実の鳥 1.jpg「バーナビー警部(第28話)/真実の鳥」●原題:MIDSOMER MURDERS:BIRDS OF PREY●制作年:2003年●制作国:イギリス●本国上映:2003/01/31●監督:ジェレミー・シルバーストン●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:マイケル・ラッセル●撮影:ダグ・ハロウズ●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ダニエル・ケーシー/ジェーン・ワイマーク/ローラ・ハワード/バリー・ジャクソン/ケイト・バッファリー/デヴィッド・コールダー/アレクサンドラ・ギルブレス/アントン・レッサー●DVD発売:2004/11●発売元:キングレコード(評価:★★★)

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バーナビーの指摘のように愉快犯に近く、その意味でも、犯人は壊れ過ぎていたという印象。

バーナビー警部(第25話)/背徳の絆 dvd.jpgバーナビー警部(第25話)/背徳の絆 01.jpg バーナビー警部(第25話)/背徳の絆 8.jpg
バーナビー警部「背徳の絆」第25話 [DVD]」"Midsomer Murders" Death and Dreams

バーナビー警部(第25話)/背徳の絆 title.jpgバーナビー警部(第25話)/背徳の絆 院長.jpg うつ病の治療を受けていたマーティンが射殺死体で発見される。自殺を装っていたが体内から薬物が検出され、バーナビーは他殺の線で捜査を開始、マーティンが通っていた病院の、バーナビーの知り合いの女性院長ジェーンを訪ねるが、その後病院の関係者が次々と殺される―。

 第25話「背徳の絆」は、精神病院が舞台で、当然のように怪しげな人物がいますが、大体、怪しげな人物は犯人ではないというバーナビー警部(第25話)/背徳の絆 02.jpgのがこのシリーズのパターン。では一体犯人なのかという思いで観ていましたが、結局最後まで判らなかったなあ。犯人が壊れ過ぎていたというのもあるかも。遂にはバーナビーまで狙われ、「犯人は犯行を愉しんでいる」と、バーナビーもご機嫌斜め(犯人にクスリを飲まされたため気分も優れないわけだが)。

バーナビー警部(第25話)/背徳の絆 03.jpgバーナビー警部(第25話)/背徳の絆 7.jpg 犯人は犯行を問い詰められても悪びれた様子もなく、実は過去に父親も殺していたわけで(バーナビーの異常者のモードに合わせた訊き方が興味深い)、特にブラスバンド狂いの薬局店主を殺害する時の様子は、よくこれを再現映像化したものだと(英国のTVコードは緩い?)。それにしても精神科医であるジェーンは、全く気が付かなかったのか。犯人が判ったと伝えられても、誰が犯人か思い当るフシは無かったみただけれど。

バーナビー警部(第25話)/背徳の絆 05.jpg ロープ屋などから大量のロープが盗まれたりした謎は、連続殺人にロープが絡んでいたため、女性院長を守ろうとした患者の一人がそれを隠そうとしてやったわけか。病者特有の偏執的な思い込みはともかく、わざわざ推理をややこしくするような場所に隠さんでくれと言いたくなります。

バーナビー警部(第25話)/背徳の絆 04.jpg バーナビーの娘カーリーの久しぶりの登場で(移動図書館は地域奉仕活動の一環?)、トロイは彼女の前でいいところを見せようとする一方、バーナビーと女性院長の親密度にも気になって、結局、「僕も刑事だ」と彼女の前で自らの人間観察力をアピールしつつも、余興でスプーン伴奏の妙技を見せたぐらいで、事件推理にはいいところ無しでした。カーリーとのキスシーンはあったものの、カーリー初の死体発見で、そうした雰囲気もぶっ飛んでしまったし、上司であるバーナビーからは、死体発見現場にカーリーと二人でいたことについて、露骨に不愉快だと言われてしまう始末です。

 一方、バーナビーが最後に妻ジョイスの助けを借りるところは、「やっぱり奥さん一筋」ということを視聴者にアピールした演出だったのかな。

バーナビー警部(第25話)/背徳の絆 6.jpg 振り返ってみれば、妹が「ママのこと好き?」とバーナビー聞いたりしたのは、カマをかけてきたわけか。怖いね。面白かったけれど、病院の事務長といい薬局店主といい、その殺害は副次的なもので、動機的にはやや弱いか。どちらかというと、バーナビーの指摘するように愉快犯に近く、その意味でも、犯人は壊れ過ぎていたという印象です。

MORETON, NR. THAME, OXFORDSHIRE used as Martin's home (the first victim)
バーナビー警部(第25話)/背徳の絆 ロケ.jpg「バーナビー警部(第25話)/背徳の絆」●原題:MIDSOMER MURDERS:DEATH AND DREAMS●制作年:2003年●制作国:イギリス●本国上映:2003/01/10●監督:ピーター・スミス●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:ピーター・J・.ハモンド●撮影:ダグ・ハロウズ●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ダニエル・ケイシー/ジェーン・ワイマーク/ローラ・ハワード/バリー・ジャクソン/イズラ・ブレア/スチュアート・バンス/フィリップ・フォックス/ペルディータ・ウィークス●DVD発売:2004/11●発売元:キングレコード(評価:★★★☆)

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「死を告げる鐘」の"壊れた人"と、「デヴィントン学院の闇」の"壊れた人たちの集まり"。

バーナビー 死を告げる鐘 dvd.jpg 死を告げる鐘 01.jpg  デヴィントン学院の闇dvd.jpg デヴィントン学院2.jpg
バーナビー警部 ~死を告げる鐘~ [DVD]」'Ring Out Your Dead'「バーナビー警部 ~デヴィントン学院の闇~ [DVD]」'Murder on St. Malley's Day'
バーナビー 死を告げる鐘 zenntai.jpgバーナビー 死を告げる鐘 title.jpg バーナビーと同じ署に勤めるピーターは、鐘撞き競技大会優勝を目指している6人チームのリーダーだった。レジー中佐らが苦言を呈する中、チームは練習に励むが、メンバーが次々と何者かに襲われ殺されていく―。

 第22話「死を告げる鐘」は、鐘撞き大会が事件背景。6人の鐘撞きメンバーのうち3人が殺害され、最終的に残った3人で大会に出場して各人2つずつの鐘を担当して優勝してしまいます。この結果からすると、最初から大会優勝に異常な執着を見せていたピーターが、足手纏いとなるメンバーを殺害して上手な人だけ残したような気もしましたが、ピーターを除く5人の鐘つきの技量にさほど差はなかったような...。

バーナビー 死を告げる鐘07.jpg そこで、プロローグにある、昔、牧師が殺害され井戸に投げ捨てられたという話が生きてくるわけですが、5世代前の先祖の死に対する復讐劇だったのかあ。ピーターの鐘撞き大会への執着は異常だったけれど(部署は総務らしいけれど、署内では競馬中継を見ているし、仕事しているのかな?)、5世代前の先祖の復讐というのは、それを上回る異常さであり、この犯人もある意味"壊れている"と言えます。

バーナビー 死を告げる鐘 .jpg 本国では人気エピソードの上位に入っている作品で、叔父であるレジーの思い遣りを理解できない死を告げる鐘 02.jpg甥の焦った行動や(最初は甥に意地悪しているのかと思った)、聞き込みに行った先で女地主(カルメン・デュ・ソートイ、「007 黄金銃を持つ男」('74年)に出演))の強烈なモーションに骨抜きにされてしまうトロイなど(急な呼び出しで慌ててネクタイを置いてきてしまった?)、サイドストーリーも豊かですが、やはり「鐘撞き大会」というのが英国人にとってはノスタルジックなのではないかな。日本の寺でもやっているところがあるけれど、制限時間内に何回撞けるかを競うもので、こんな練習を重ね、高度なテクニックを競う"演奏会"的なものは英国ならではないかと思います(ハンドベルのジャンボ版と言えるか)。

The church seen in 'Ring Out Your Dead'


デヴィントン学院の闇 2.jpgデヴィントン学院の闇 1.jpg コーストン郊外にある寄宿制男子校デヴィントン学院。この学院に向かう途中の道で、学院のOBで外交官のベリンガムが襲われ行方不明になる。数日後、デヴィントン学院の聖マリー・デー・レースを見物していたバーナビー夫妻の眼前で、1等でゴールに現れた、学院の創設者の孫で生徒会長を務めるダニエルが倒れ死亡する。ダニエルは選ばれた学生しか入会することのできない"プディング・クラブ"のメンバーだったが、どうやらクラブを抜けたがっていたらしい。バーナビーは学院の実態を探り始めるのだが―。

デヴィントン学院の闇 3.jpg 第23話「デヴィントン学院の闇」は、厳しい教育と規範で有名な全寮制の伝統校が事件の舞台。今どき、こんな学校があるのかと。殆ど"ハリー・ポッター"の魔法学校の「裏版」みたいな世界でした。

デヴィントン学院の闇 4.jpg 学院の理事長も怪しいし、その他にも怪しい人物がいる中、プディング・クラブのクラブルームに謎が隠されているとバーナビーに示唆していた学院OBのカルーが、頭を殴られ口にプディングを突っ込まれたうえグラウンド整備用ローラーの下敷きされた惨殺死体で見つかり、ベリンガムも、生徒達が水練中の池の中から死体となってバーッと浮き上がってきます(まるでゾンビみたい)。

デヴィントン学院の闇 6.jpg 主演のジョン・ネトルズ自身が自選ベストテンに"Most Dramatic Episode"として入れている作品ですが、主犯と実行犯が別々なので分かりにくかったね。そこが面白さでもあるのでしょうが、実行犯は1人とみていいのかな(水練指導の体育教師がベリンガムを殺害デヴィントン学院.jpgしたということはないよね。やはり、○○○が3人を殺害した?)

 ダニエルが殺害された理由は、ダニエルの恋人が実は村の娘だったため?(二人の逢引きを知っていた人物にもっと聞き込みをすべきだった)。 学生たちのいざこざは、そのことがクラブの沽券に関わるということより、奨学金狙いだったわけか。最初は斜に構えたはみ出し者だったのに、口封じと引き換えにクラブのメンバーに迎えられるや、クラブ内での覇権を握ろうとしたチャーリーにみられるが如しです(みんな金持ちの子弟ではなく、意外と苦学生なの?)

 壊れた人の集まりみたいな感じで、バーナビーもトロイもやれやれという感じ。そうしたこともあって、後味的にも何となくイマイチのお話でした。

Holloway College, Egham, Surrey Used as 'Devington School'

バーナビー 死を告げる鐘 05.jpg「バーナビー警部(第22話)/死を告げる鐘」●原題:MIDSOMER MURDERS:RING OUT YOUR DEAD●制作年:2002年●制作国:イギリス●本国上映:2002/06/23●監督:サラ・ヘリングス●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:クリストファー・ラッセル●撮影:スティーヴ・ソーンダーソン●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ダニエル・ケイシー/ジェーン・ワイマーク/エイドリアン・スカーボロ/シーマス・ホイッティ/リンゼイ・マーシャル/ヒュー・ボネヴィル/グレアム・クラウデン/カルメン・ドゥ・ソートイ/ジェマ・ジョーンズ●DVD発売:2004/10●発売元:キングレコード(評価:★★★☆)

「バーナビー警部(第23話)/デヴィントン学院の闇」●原題:MIDSOMER MURDERS:MURDER ON ST. MALLEY'S DAY●制作年:2002年●制作国:イギリス●本国上映:2002/09/22●監督:ピーター・スミス●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:アンドリュー・ペイン●撮影:スティーヴ・ソーンダーソン●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ダニエル・ケイシー/ジェーン・ワイマーク/デズモンド・バリット/ジェレミー・チャイルド/パトリック・ゴッドフリー/ピーター・ワイト/ニコラス・オーズリー●DVD発売:2004/10●発売元:キングレコード(評価:★★★)

MyTopDozen(海外サイト)
List of Best Midsomer Murders Episodes
Only top dozen Best Midsomer Murders Episodes, according to different criteria, are presented. The ranking is in particular based on the number of occurences of each midsomer murders episode in web pages, news, pictures and people votes in corresponding context.
◎ Overall popularity
Rank  Score              Item
 1.   97  Murder on St. Malley's Day (第23話/デヴィントン学院の闇
 2.   91  The Maid in Splendour (第33話/聖女の池
 3.   82   Down Among the Dead Men (第47話/消えないセピア色
 4.   79  Death and Dreams (第25話/背徳の絆
 5.   76  Country Matters (第49話/ビジネスの総決算
 6.    74  Vixen's Run (第46話/薄情なキツネたち)
 7.   74   Destroying Angel (第15話/人形劇の謎
 8.    73  Last Year's Model (第51話/呼ばれた殺人者)
 9.   72  Midsomer Rhapsody (第43話/不協和なラプソディ)
 10.   71  Things That Go Bump in the Night (第36話/止まらない凶行
 11.   70  Sauce for the Goose (第42話/斜陽の喧騒
 12.  62  Dead in the Water (第37話/愛憎の終幕

◎ Popularity on the Web
Rank  Score         Item
  1.  590  Ring Out Your Dead (第22話/死を告げる鐘
  2.  435  Second Sight (第40話/千里眼の系譜
  3.  393   Birds of Prey (第28話/真実の鳥
  4.  349  The Green Man (第29話/森の聖者
  5.  342  The Fisher King (第31話/古墳の報復)
  6.  319  Electric Vendetta (第16話/UFOの殺人
  7.  294  Dark Autumn (第18話/時代遅れの殺意
  8.  289  Who Killed Cock Robin? (第17話/大胆な死体)
  9.  288  Garden of Death (第14話/庭園の悲劇
  10. 286  Bad Tidings (第30話/旧友の縁)
  11. 283  Destroying Angel (第15話/人形劇の謎
  12. 268  Dead in the Water (第37話/愛憎の終幕

◎ Popularity in pictures
Rank  Score         Item
  1.   30  The Maid in Splendour (第33話/聖女の池
  2.   28  Vixen's Run (第46話/薄情なキツネたち)
  3.   27  Country Matters (第49話/ビジネスの総決算
  4.   25  Murder on St. Malley's Day (第23話/デヴィントン学院の闇
 5.   21   Sauce for the Goose (第42話/斜陽の喧騒
 6.   20   Bad Tidings (第30話/旧友の縁)
 7.   18   Death and Dreams (第25話/背徳の絆
 8.   16  Dead in the Water (第37話/愛憎の終幕
 8.   16  Death in Chorus (第50話/壊れかけた聖歌隊
  8.   16  Last Year's Model (第51話/呼ばれた殺人者)
 11.   15   Second Sight (第40話/千里眼の系譜
 11.   15  Midsomer Rhapsody (第43話/不協和なラプソディ)

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ミスリードさせると言うより、見当がつかなかったという感じか。ちびっこ探偵が活躍。

セトウェル森の魔 輸入盤dvd2.jpgセトウェル森の魔 dvd.jpg セトウェル森の魔 ちびっこ探偵1.jpg
バーナビー警部 ~セトウェル森の魔~ [DVD]」"Midsomer Murders" A Worm in the Bud

セトウェル森の魔 01.jpg 破産寸前のジェームズ・ハリントンは、自らが所有するセトウェル森を更地にして売却しようとして、森を守ろうとする自治体から訴えられていた。裁判では勝利を収めるが、自治体メンバーと諍いになり、その内の一人サイモン・バートレットと殴り合いになったのを、別裁判に証人として出廷していたバーナビーとトロイが止める。サイモンは、裁判に自治体側として関与している女性弁護士と不倫関係にあった。翌朝、セトウェル森の池で、サイモンの妻スーザンの死体が見つかる。スーザンはかつてジェームズの恋人だった。スーザンの死因は溺死で、夫サイモンの元にスーザンのパソコンから「真実からは逃れられない。死んだ方がまし」というメールが送られていたことから、子供ができないことを悩んでの自殺かと思われた。しかしそのメールが送信された時刻の6時間以上前に、森で遊んでいたジュリーとショーンのフィールディング姉弟は、池ではなく茂みの中で倒れているスーザンを発見し、その傍に一匹のジャックラッセルテリアがいたのを目撃していた―。

 ジェームスとサイモンの母親同士も幼馴染で、こちらは今も仲は悪くないなど、相変わらずの複雑かつ微妙な人間関係です。大体このシリーズ、いかにも怪しそうな人物は犯人ではないのですが、犯行動機、と言うよりその遣り口があまりに常識離れしていたため、誰が犯人なのかを推理するのが難しかったです。主演のジョン・ネトルズ自身が、犯人について"Favorite Leading Lady"として、この作品を自選ベストテンに入れていますが、ミス・リーディングさせると言うより、見当がつかなかったという感じでしょうか(伏線は、「牛の種付け」の話のみ?)。

セトウェル森の魔 ちびっこ探偵2.jpg 森で犬を目撃したフィールディング姉弟が、犬とその飼い主が事件に関わっていると考え、「ちびっこ探偵」ぶりを発揮するのが楽しく、村中のジャックラッセルテリアを調べ上げ、飼い主はサイモンの農場で働くブロクサムであることを突き止めて、学校をサボってバーナビー宅にまで押しかけます(実質的に鋭いのは姉ジュリーの方で、弟ショーンの方はバーナビー宅で能天気にケーキのおかわりを貰っていたりしていたが)。A Worm in the Bud 03.jpg最初は子供の証言に懐疑的だったバーナビーが、ジュリーのテリアの識別能力を目の当たりにして認識を改めるのが愉快(姉弟の父親は猟犬の訓練士)。更に、ジュリーの、被害者は「眠っているようだった」という証言も、事件解決の糸口に。

 但し、バーナビーよりも早く犯人が誰かを察知した人物が少なくとも3人いたわけで、その内の1人は犯人を庇い、1人は犯人を脅迫し、1人は犯人に報復したことになります。なかなかお決まりの第二の殺人が起きないなあと思ったら、終盤になってジェームスが殺害されて、これでジェームスとサイモンの母親同士の関係も180度変わってしまったということでした。

A Worm in the Bud 01.jpg でも、自分を庇ったサイモンを襲って瀕死の重傷を負わせたのもこの犯人だとすれば、目的のためには手段を選ばずと言う感じで、ラストで報復により殺されてしまうのはやむを得ない感じでしょうか。「ちびっこ探偵」の活躍は、シャーロック・ホームズの「ベーカー街イレギュラーズ」ならばいざらず、このシリーズでは珍しいですが、「暗~い話」と「微笑ましい話」が隣り合わせ的に併存するという意味では、シリーズの特徴が出ていたように思います(これが、このシリーズの独特かつ定番的な"バランス感覚"?)。

Cottages seen in 'A Worm in the Bud'/The village shop -used In 'A Worm in the Bud'
セトウェル森の魔コテージ.jpgセトウェル森の魔店.jpg「バーナビー警部(第21話)/セトウェル森の魔」●原題:MIDSOMER MURDERS:A WORM IN THE BUD●制作年:2002年●制作国:イギリス●本国上映:2002/06/23●監督:デヴィッド・タッカー●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:マイケル・ラッセル●撮影:スティーヴ・ソーンダーソン●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ダニエル・ケイシー/ジェーン・ワイマーク/バリー・ジャクソン/ジリアン・バージ/ウェンディ・クレイグ/ジャニー・ディー/イアン・ホッグ/エミリー・ジョイス●DVD発売:2004/10●発売元:キングレコード(評価:★★★☆)

1-IMG_0390.JPG●本国個人サイト (Muffy Aldrich The Daily Prep

Midsomer Murders Episodes.jpgHere are some favorite episodes (or characters or scenes or...):

Made to Measure (第74話/ミルトン・クロスの秘密) - As one might guess by the name, it centers around a village tailoring shop. Not only are there bolts of estate tweeds but one can see an uncharacteristically somber Plilip Bretherton . (He played Allister Deacon on favorite series As Time Goes By.)
Worm in the Bud (第21話/セトウェル森の魔) - My absolute favorite. There are Barbours, tattersalls and Jack Russells, but best of all there is the utterly charming family of the Kennel Master.
Ring Out Your Dead第22話/死を告げる鐘) - Adrian Scarborough gives a wonderfully convincing performance as an obsessed bell ringer. Expect lots and lots of bell ringing and a few quick shots of a nice old yellow lab.
Murder at Badger's Drift第1話/謎のアナベラ) - The first episode ever made, and features the marvelously creepy undertaker and his mother. It has a shooting scene with some beautiful Purdeys.
Dead in the Water第37話/愛憎の終幕) - This episode focuses completely on the Rowing Club and it would be hard to imagine where I could see more examples of exquisite wooden boats, replete with dashing men wearing Navy blazers and caps. Although because it is on a river, it may feature an odd rat or two.
Death of a Stranger第10話/絶望の最果て) - Worth watching for some beautiful fox hunting scenes.
Stranglers Wood第7話/首締めの森) - It features Phyllis Logan, who to my surprise, plays Mrs. Hughes in Downton Abbey.
St. Malley's Day第23話/デヴィントン学院の闇) - "Ludlow, the bell!" "The bell, Ludlow!"
Dead Man's Eleven第8話/不実の王) - I will watch anything that features Robert Hardy, but even if he wasn't in this episode, it is worth watching solely for the one line about how they are planning to sell their massive estate so they can move to... Orlando. (How much fun was had in that writing room choosing that destination.)
Judgement Day第12話/審判の日) - How many celebrations can one region support? Worth it to see a tipsy Josephine Tewson, Keeping Up Appearances's Elizabeth.
Birds of Prey第28話/真実の鳥) - Beautiful birds of prey, their eggs, and over-sized waxed jackets.
Market for Murder第20話/殺人市況) - Just to see Angela Thorne looking fabulous - whether up on the roof in her pearls or driving her old 240 wagon. In real life she was the wife to Peter Penry-Jones ("Peter, Marquis of Ross" in Midsomer's "The Electric Vendetta"), and mother to Rupert Penry-Jones (who played Adam Carter on MI-5 or better known as Spooks) and who is in turn is the spouse of Dervla Kirwan (Assumpta Fitzgerald on Ballykissangel).
The Creeper (第72話/謎の侵入者): Great Dower house.
The Great and The Good (第73話/眠れぬ日々): Good woolens, great cottage, and an always appreciated dog in the lap.
Death in Chorus第50話/壊れかけた聖歌隊) - Choral music and pretty, cold weather village scenes.

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分かり易さもあって、個人的には楽しめた。ラストも爽やか且つユーモラス。

殺人市況 dvd.jpg殺人市況07.jpg 第20話/殺人市況 03.jpg
バーナビー警部 ~殺人市況~ [DVD]」 "Midsomer Murders" Market for Murder

MIDSOMER MURDERS:MARKET FOR MURDER title.jpg第20話/殺人市況 02.jpg殺人市況4.jpg コーストン郊外の高級住宅地で、株式仲買人の車が炎上する事件が起きる。この地に住む「読者会」メンバーの5人の女性、マージョリー(会の主宰者で未亡人)、ジニー(ちょっと美人でナイスボディ?)、タムジン(仲買人の妻。過去に秘密を持つ)、殺人市況1.jpg殺人市況2.jpg殺人市況5.jpg殺人市況3.jpgラビニア(年老いた夫を介護中。自身は邸の屋根の修理に執心)、サンドラ(医師の妻)らは今日もマージョリーの家に集っていたが、実は「読書の会」とは表向きの名で、家族に秘密で株式投資をしているサークルだった。投資を始めたのは5人に各事情があったからで、今現在でか第20話/殺人市況 025.jpgなりの利益を上げており、運用が順調な今のうちに株を売却するか投資を続けるかで意見が分かれていた。会の主宰者マージョリーは仕切り屋で、メンバーからはあまり良く思われていなかった。その彼女が自宅で撲殺死体で発見される。室内が荒らされ銀食器が持ち去られているところから強盗による犯行の疑いもあった。そして彼女の家のどこからも、会で保有している株の証券が見つからなかった―。

殺人市況8.gif 高級住宅地にプール清掃員として出入りする男ハリーや、サンドラの夫でセレブ達の秘密に触れる機会の多い医師ルパートなど、何となく怪しい人物はいますが、その後、メンバーのジニーが自宅のプールで殺され(自宅プールって、一晩中灯りをつけているのかあ。贅沢!)、ラビニアも屋根から転落して死亡。そうなると、この事件の犯行動機は、サークルで運用していた資産を独占することしか考えられず、そうなると、サークルの秘密が外部にもれていない限りはサークル内の誰かが犯人であり、そうなるとタムジンとサンドラしか残っていないわけで、ここで犯人が判った感じも。

The 'Proctors' House seen in 'Market for Murder'
殺人市況3.jpg このシリーズで自分がここまで犯人を絞り込めたのは珍しい方で、実際の展開としても、いつものように最後ぎりぎりまで犯人が判らないようなものではなく、その殺人市況2.jpg少し前に誰が犯人か示唆していました。たまにはこういうのもありかな。この犯人も、第18話「時代遅れの殺意」の犯人と同じく、最初は普通の人に見えていたけれど、実は精神的に壊れていました(こんな女性に言い寄られた老人男性の方も災難)。犯人が捕まってから、自分がどうやって殺したのか一人一人について解説してくれるのも同じ殺人市況10.gif。分かり易さもあって、個人的には充分楽しめました。

Seen as a Newsagents in 'Market for Murder'
殺人市況 4'.jpg 高級住宅地が舞台ということで、風景や建物がキレイな上に、ラストも爽やか。第19話「腐熟の愛情」と同じく、女性が最後に決断をして新たな人生を歩む、という終わり方だけど、鼻持ちならない大金持ちと結婚した後で離婚して、相手の鼻をへし折ってやろうという「腐熟の愛情」の看護婦サリーよりは、こちらのヒロインの方が好感が持てました。

殺人市況5.jpg プール清掃人の男は実はいい奴だったね。マッチョで意外と男前だし。以前の仕事は○○○だったのかあ。その道のプロでした。さくさくパソコンを操作し、パスワードの前で立ち往生したところでは、今度はバーナビーが刑事の勘を発揮します。

BRAZIERS COLLEGE, IPSDEN, OXFORDSHIRE.seen in 'Market for Murder'
殺人市況 OXFORDSHIRE.jpg バーナビーが年金対策で投資したばかりの保険会社が、加入企業のタイかどこかの工場が水害で大損害を被って保険金の高額支払が見込まれ株価が暴落、所持しているコミック誌に高値がつくことが分かったトロイとは対照的に、彼だけが最後にムスッとしているのが可笑しいです。「腐熟の愛情」のラストに比べるとクセの無い、爽やか過ぎる終わり方に対する、ある種"照れ隠し"的味付けでしょうか。こうしたエピソード間のバランス感覚は絶妙。

 それにしてもトロイのコミック好きはともかく、コミック誌を隠すために一緒に新聞も買うのか。まあ、大の大人が電車内で堂々とコミック誌を読んでいる国は日本ぐらいというから、アリかも。それよりも、彼はいつから高所恐怖症になったのか?

 因みに、自宅プールで華麗な素潜りを見せた後に殺害されるジニーを演じたセレナ・ゴードン(Serena Gordon)は、「007/ゴールデンアイ」('95年/英)に出演。ボンドガールではなく、冒頭でピアーズ・ブロズナンの坂道カーチェイスに無理矢理付き合わされるMI6か何かの女性職員の役でした。

「バーナビー警部(第20話)/殺人市況」●原題:MIDSOMER MURDERS:MARKET FOR MURDER●制作年:2002年●制作国:イギリス●本国上映:2002/06/16●監督:サラ・ヘリングス●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:アンドリュー・ペイン●撮影:スティーヴ・ソーンダーソン●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ダニエル・ケイシー/ジェーン・ワイマーク/バリー・ジャクソン/ジェシー・バーズオール/セレナ・ゴードン/バーバラ・リー=ハント/キャロライン・ハーカー●DVD発売:2004/09●発売元:キングレコード(評価:★★★★)

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事件の本筋とサイドストーリーの両方が楽しめ、ラストも粋。

第18話/時代遅れの殺意 dvd.jpg第18話/時代遅れの殺意 dvd 輸入盤.jpg 第18話/時代遅れの殺意 dvd 輸入盤2.jpg Midsomer Murders Season 4 Episode 5.jpg
バーナビー警部 ~時代遅れの殺意~ [DVD]」輸入盤DVD"Midsomer Murders" Dark Autumn

第18話/時代遅れの殺意 被害者.jpg グッドマンズ・ランド村の郵便配達員デイヴ・カトラーが配達中に喉を掻き切られて殺される。彼は村で"人妻キラー"と呼ばれていて、彼に妻を寝取られた男は数多くいた。バーナビー(ジョン・ネトルズ)は村のかつてダンスホールだった建物内に本部を設置して捜査を開始するが、その後も次々と残虐な犯行が繰り返され、村の男女それぞれに犠牲者が出る―。

 トム・バーナビー警部のシリーズ第18話「時代遅れの殺意」(原題:Dark Autumn)の本国放映は2001年9月16日で、シーズン4第5話です。

 結局、最初の殺人の後も立て続けに3人殺害されていて、被害者の横の繋がりが全然読めなかったかったのですが、最後に、ああ、そーゆーことだったのかと。このシリーズでは久しぶりのサイコパスでした。

第18話/時代遅れの殺意 サイコパス.jpg 子供時代に亡くなった母親に対する愛情と悔恨の念から、気に入った女性に母親像を重ねて一方的に崇拝し、但し、その女性が実際にはさほど清純でも貞淑でもないことが分かると殺害してしまうという―。犯人は見かけ上は普通のパブ従業員か何かだったけれど、後で振り返れば、架空の相手に電話をかけていたりしたわけで、そうしたことも含め、ヒチコックの「サイコ」と重なる部分もありました。

 犯行は、妻を寝取られた男の"人妻キラー"への報復か思わせておいて、その直後に女性も殺されていたりするからややこしいのですが、郵便配達員は、女性を食い物にしているという理由で殺害し(犯人の目から見るとそうなるわけで、実際には女性の方も期待していて、必ずしもそういう一方的な悪でもないのだけれど)、男性編集者は、母の想い出について書いた自分の本を出版しなかったから殺したわけか。最後に犯人がバーナビーの問いに答えて1人ず殺害理由を解説(?)してくれたので、よく分かりました。

第18話/時代遅れの殺意 トロイ.jpg 村の女性巡査ジェイに対するトロイ巡査部長(ダニエル・ケーシー)の恋愛感情がサイドストーリーになっていて、最後は予想通りトロイはフラれてしまうのですが、彼女の断りの理由は、「破れた恋愛からまだ立ち直っていないから」とのこと。ジェイとトロイが夜中に元ダンスホールだった場所で踊るのを偶然垣間見て、事件捜査中にトロイを"グッドダンサー"と呼んで冷やかしていたバーナビーですが、彼女の手に渡ることのなかったトロイのプレゼントであるバイロン(ジェイの好きな詩人)の詩集を見て、カトラーの葬儀の際に、赤いバラの花束の無記名の献花にバイロンの詩の一節が添えてあったのを思い出すものの、そのことをトロイには話さないところが部下への気遣いです。

 そう言えば、ジェイは、カトラーの写真を見てバーナビーが「いい男だな」と言った際に、「ホントに」といって写真を撫でていたなあ。事件の本筋とサイドストーリーの両方が楽しめ、ラストも粋でしたが、殺された郵便局員は"人妻専科"ではなかったわけなのか。だとしたら、よくやるなあ。それを女性側も望んでいたりするわけで、"グッドマンズ・ランド"という村の名前も皮肉が効いていました(仮にカトラーとジェイの間に関係があったとしても不倫には該当しないが)。

Midsomer Murders - John Nettles:My Top Ten [DVD].jpgOxfordshire .jpg 因みに、このエピソードは、主演のジョン・ネトルズ自身が選んだ「ベストテン」に、「Best Location」(最高の撮影場所)作品として入っており、それだけに風景にも素晴らしいものがありました(署から遠い場所にあるため、捜査本部を現地に置いたということなのか)。

Oxfordshire Seen in 'Dark Autumn' as the 'August's' house

Midsomer Murders - John Nettles: My Top Ten [DVD] (2011) 
Little Parmoor Farm used as Holly Reid's cottage in 'Dark Autumn'/The Church where the funeral takes place in 'Dark Autumn'
Little Parmoor Farm used as Holly Reid's cottage in 'Dark Autumn'.jpgThe Church where the funeral takes place in 'Dark Autumn'.jpg

 
 
 
 

 

 

  

'The Plough' pub, Great Haseley, Oxfordshire - seen in 'Dark Autumn'
第18話/時代遅れの殺意 パブ.jpg第18話/時代遅れの殺意 パブ2.jpg「バーナビー警部(第18話)/時代遅れの殺意」●原題:MIDSOMER MURDERS:DARK AUTUMN●制作年:2001年●制作国:イギリス●本国上映:2001/09/16●監督:ジェレミー・シルバーストン●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:ピーター・J・ハモンド●撮影:グラハム・フレーク●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ダニエル・ケイシー/ジェーン・ワイマーク/バリー・ジャクソン/ニッキー・ヘンソン/アラン・ハワード/ジリアン・カーニー/セリア・イムリー●DVD発売:2004/09●発売元:キングレコード(評価:★★★★)

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よく出来た脚本。これでもかと言うくらい複雑に愛憎入り乱れて...。

UFOの殺人 dvd.jpg UFOの殺人 輸入盤dvd.jpg  UFOの殺人 01.jpg 
バーナビー警部 ~UFOの殺人~ [DVD]」/輸入盤DVD"Midsomer Murders" The Electric Vendetta(UFOの殺人)

UFOの殺人 全体.jpg プロローグは40年前。2人の男が1人の女性(イザベラ)を巡ってフェンシングで決闘し決着をつける。そして現在のミッドサマー・パーヴァ。小麦畑のミステリーサークルで男の全裸死体が発見される事件が起きる。殺害されたのは前科者のロニーで、死因は感電死と判明、地元のUFO研究家ロイド・カービー(ケネス・コリー)はこれは宇宙人の仕業だと言う。バーナビー(ジョン・ネトルズ)がロイドに参考人として署で話を聴くと、ロイドの友人でサー・クリスチャン・オーバリー(アレック・マッコーエン)という貴族が、彼の釈放を求めてくる。そしてまた、ミステリーサークルで男の全裸死体が発見され、これも被害者は前科者であることが判明する。クリスチャンの妻イザベラ(ウルスラ・ハウェルズ)は不治の病で死期が迫っていた。一方、村に住むサー・ハリー・チャトウィン(ジョン・ウッドヴァイン)の妻ベアトリス(アリソン・フィスク)は、ロイドと幼馴染であり、夫のハリーはロイドを嫌っていた。更にハリーは、自分の娘ルーシー(デイジー・ベイツ)と不仲にある夫スティーブン・ラムジー(パトリック・バラディ)をも嫌っていた。それはスティーブンが、村の看護婦サリー(アマンダ・メアリング)と不倫していたからだが、ハリー自身も、サリーと密会していた。サリーはハリーとスティーブンの両方を手玉に取りつつ、別の愛人と盗品の銀器の売買を図っていた。そのスティーブンが、車の中で感電死して死体となって発見され、更にはロイドも、ミステリーサークルで全裸死体となって発見される―。

UFOの殺人2.jpgUFOの殺人3.jpg トム・バーナビー警部のシリーズの第16話「UFOの殺人」(原題:The Electric Vendetta)の本国放映は2001年9月2日で、シーズン4の第3話になります。主演のジョン・ネトルズ自身の「ベストエピソード10選」の中に"Most Difficult to Film"として入っているのは、"UFO"の登場シーンを指してのことなのでしょうか。車で夜道を運転中にいきなりのスピルバーグ映画「未知との遭遇」みたいな光景が現れ、トロイ巡査部長(ダニエル・ケイシー)の仰天ぶりが可笑しかったです。

 人物関係は相変わらず複雑。結局、決闘に負けた男が、復讐相手に殺し屋を送り続けていたということだったのかと。狙われた方も、家中に高圧電線を張り巡らせて防御していたわけで、バーナビーもトロイもこの罠にハマってしまうのが可笑しく、更には、殺し屋を差し向けたクリスチャンの旧敵、当の子爵ピーター(ピーター・ペンリー-ジョーンズ)までもが―。

 ジョン・ネトルズの「自選10話」に入るだけあって、よく出来た脚本。最後は、クリスチャンとピーターがイザベラの臨終に同席して仲違いを解消するような形で、なんとなくしんみりさせられますが、クリスチャンが殺し屋2人を返り討ちにしているのが正当防衛では済まないのでは当然で、クリスチャンは殺人、ピーターは殺人教唆で逮捕されることになるのでしょう。

 話がややこしくなっているのは、もう1人の犯人がスティーブンを車の中で感電死させていることで、たまたま電気に詳しい人が揃ったというのがご都合主義に思えなくもないですが、但しこれも、すでに起きている殺人の遣り口に便乗して捜査の攪乱を狙ったのだとすれば不自然ではないのかも(あの色呆け爺さん、意外と知能犯だった?)。遂には、看護婦サリーの愛人男までが、ロイドの死体を全裸にしてミステリサークルへと、元々最初にロイド自身が商売繁盛を狙って死体にそれらしき細工をしてミステリサークルに置いたのを皮切りに、もう"便乗合戦"の様相。ロイドがなぜ、わざわざ盗品の銀器の隠し場へふらふらと行ったのかかと言うと、そこはたまたまハリーの妻ベアトリスとの密会の場だったのだなあと(昔懐かしさ、と言うより今現在不倫していたわけか)。

UFOの殺人 ウルスラ・ハウェルズ.jpg このように、これでもか、これでもかと言うくらい複雑に愛憎入り乱れていて、よくここまで込み入った脚本を考えるなあと思わされますが、まあこの辺りが、日本の推理ドラマなどではまず見られない、このシリーズの特徴なのでしょう。UFOという奇抜なモチーフではありますが、シリーズの特色がよく出ていました。

 クリスチャンの妻イザベラを演じたウルスラ・ハウェルズ(1922年生まれ)は、BBC版「ミス・マープル(第3話)/予告殺人」('85年)では、リトル・パドックス邸の女主人レティシア・ブラックロック夫人を演じていました(犯人役だったということ)。

UFOの殺人 ロケーション.jpg「バーナビー警部(第16話)/UFOの殺人UFOの殺人 輸入盤 dvd.jpg」●原題:MIDSOMER MURDERS:THE ELECTRIC VENDETTA●制作年:2001年●制作国:イギリス●本国上映:2001/09/02●監督:ピーター・スミス●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:テリー・ホッジキンソン●撮影:グラハム・フレーク●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ダニエル・ケイシー/ジェーン・ワイマーク/ケネス・コリー/ジョン・ウッドヴァイン/アリソン・フィスク/デイジー・ベイツ/パトリック・バラディ/アマンダ・メアリン/アレック・マッコーエン/ウルスラ・ハウェルズ/マイケル・バーテンショウ/ドナルド・ジー/ナイジェル・ハリソン/ピーター・ペンリー-ジョーンズ●DVD発売:2004/08●発売元:キングレコード(評価:★★★☆)
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プロットはよく出来ていたが、純粋な天誅劇にした方がよかった。殺し方いろいろ...。

人形劇の謎 dvd.jpg 人形劇の謎 dvd 輸入盤2.jpg 人形劇の謎 0.jpg 
バーナビー警部 ~人形劇の謎~ [DVD]」'Destroying Angel'(人形劇の謎)

人形劇の謎輸入盤 dvd.jpg バーナビー夫妻(ジョン・ネトルズ、ジェーン・ワイマーク)が参列したイースタングランジホテルの所有者カール(エドワード・ジョーズベリー)の葬儀に、ホテルの相続人の一人グレゴリー・人形劇の謎 人形劇.jpgチェンバース(フィリップ・ボー)が現れない。同じく相続人であるグレゴリーの妻スザンナ(サマンサ・ボンド)は、普段通りホテル業務を続け、気に留めようとしていないようだ。ケネス・グッダーズ(ジョナサン・コイ)も相続人の一人で、妻はジュリア(アビゲイル・マッケーン)は情緒不安定気味。スザンナは、ホテルの料理人トリスタン(トム・ウォード)を愛人にしていて、グレゴリーの方も、森の狩猟番マシュー・タイソン(トニー・ヘイガース)の娘アニー(アディ・アレン)と愛人関係にあったらしい。人形劇の主催者で、その役割をグレゴリーに譲っていたエブリン・ポープ(ローズマリー・リーチ)は彼の行方を心配するが、やがて森の中でグレゴリーのものと思われる片手が見つかる―。 
'The Easterly Grange Hotel' in 'Destroying Angel'.jpg
 トム・バーナビー警部のシリーズの第15話「人形劇の謎」(原題:Destroying Angel)の本国放映は2001年8月26日で、シーズン4の第2話になります。

'The Easterly Grange Hotel' in 'Destroying Angel'

 グレゴリーの死体が見つからない間に、相続人の一人ケネスが倒れてきた食器棚に潰されて殺され、更にスザンナの愛人トリスタンが毒キノコにあたって後は死を待つばかり。そのスザンナも―と、相続人やそれに近しい人物がが次々と死に追いやられていきます。

 ミステリ音痴の自分は、これが壮大且つ精緻に仕組まれた復讐劇だということに、かなり後の方まで気づきませんでしたが、人形劇の主催者エブリンは、バーナビーよりもずっと早くから、グレゴリー殺しの背景構造を掴んでいたわけだなあと(殆ど、ミス・マープルかジェシカおばさん並み)。

 天誅劇にも似た復讐劇かと思いきや、これも動機は遺産相続だったんだんなあ。良く出来たプロットだとは思いましたが、「犯人たちを殺した犯人」には遺産を絡めない方がスッキリしたように思われて残念。ラストは病死だったのか自殺だったのか。これも病死だとすればややご都合主義で、深みが無いように思いました。

バーナビー警部(第15話)/人形劇の謎.jpg 弓矢を駆使したランボー風の殺害方法及び死体隠滅方法から、心理的に追い込んで同士討ちさせるなどの凝った殺害方法まで色々出てきて、食器棚に圧殺されたというのもさることながら、ドクツルタケを食べてしまったイケメン料理人トリスタン(トム・ウォード)の、もう死を待つしかないという状況が一番悲惨だったかな。どちらかと言うと、スザンナが一番悪女という感じなんだけど(夫を枕で窒息死させていたとは)、こちらはあっという間の射殺(一番シンプル)。

人形劇の謎 きのこ.jpg 因みに、ドクツルタケは欧米では「死の天使」(Destroying Angel) という異名を持ち、それがそのままこのエピソードの原題となっているわけですが、このキノコ、日本でも死亡率の高さから、タマゴテングタケ、シロタマゴテングタケとともに「猛毒キノコ御三家」とされているそうです。

ドクツルタケ(Destroying Angel)

 海外の絵本童話に出てきそうな家に住んでいる"森を愛する男"コリン・スレーター(ロジャー・フロスト、「チャーリーとチョコレート工場」('05年/米・英)、「ウルフマン」('10年/米)に出演)は、キノコに関しては超専門家級に詳しかったね。女性と森を"散歩"するだけが好みというわけではなかったみたいだけど、男の「裸エプロン」はさすがに気色悪かった...。

隠れ家.jpg「バーナビー警部(第15話)/人形劇の謎」●原題:MIDSOMER MURDERS:DESTROYING ANGEL●制作年:2000年●制作国:イギリス●本国上映:2001/08/26●監督:デヴィッド・タッカー●製作:ブライアン・トゥルー=メイ●脚本:デヴィッド・ホスキンス●撮影:グラハム・フレーク●時間:102分●出演:ジョン・ネトルズ/ダニエル・ケイシー/ジェーン・ワイマーク/バリー・ジャクソン/エドワード・ジョーズベリー/フィリップ・ボー/サマンサ・ボンド/ジョナサン・コイ/アビゲイル・マッケーン/トム・ウォー/ロバート・ラング/ローズマリー・リーチ/マドレーヌ・ウォラル/アディ・アレン/トニー・ヘイガース/ロジャー・フロスト●DVD発売:2004/08●発売元:キングレコード(評価:★★★☆)

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脚本家に「ご苦労様」と言いたいぐらいの改変。オリジナル作品として楽しんだ方が良さそう。

復讐の女神 dvd.jpg 「復讐の女神」.jpg 第12話/復讐の女神 00.jpg

第12話/復讐の女神00.jpg 1940年、独軍戦闘機が英国で墜落し、操縦士は英国女性(=ベリティ)に助けられた。11年後の1951年、大富豪ラフィールの訃報を新聞で知ったミス・マープル(ジェラルディン・マクイーワン)のもとへ彼の秘書が現れ、ミス・マープルを「ネメシス(復讐の女神)」と呼んでいたラフィールの、事件の解決を依頼する遺言と、「ミステリー・ツァー」のチケットが2枚届き、ミス・マープルは甥で作家レイモンド・ウェスト(リチャード・E・グラント)とツアーに参加す第12話/復讐の女神 04.jpgることに。ツァーのコンダクター兼バス運転手はジョージア(ルース・ウィルソン)で、ツアー参加者くはマーガレット(ローラ・ミシェル・ケリー、ベリティと二役)と第12話/復讐の女神 01.jpg)シドニー(ジョニー・ブリッグズ)の夫婦、元執事レイバン(ジョージ・コール)、派手な赤コートの女アマンダ(ロニー・アンコーナとその弁護士ターンブル(エイドリアン・ローリンズ)、足が不自由で顔中に縫い傷の痕があるワッディ(ウィル・メラー)とその妻ロウィーナ(エミリィ・ウーフ)、アグネス修道院長(アン・リード)とクロチルド修道女(アマンダ・バートン)、ドイツ人のマイケル(ダン・スティーブンズ)らで、全員ラフィール氏に招待されていた―。

第12話/復讐の女神 09.jpg ツアーで訪れたフォレスター卿の邸で、邸の相続続人であるアマンダが癇癪を起こし、そこにあったベリティの写真を踏みつける。宿泊先でコリン・ハーズ(リー・イングルビー)という若者が作家志望だとレイモンドに話しかけてくる。ミス・マープルは孤立しているマイケルに話し掛け、彼がラフィールの息子であることを掴む。夜中に宿の階段から落ちたレイバンは、マーガレットに「ベリティ?」と問いかけるが、彼女は否定する。翌朝、レイバンはベッドで亡くなっており、実は警官だったコリンに、ミス・マープルは毒殺の可能性を示唆する。朝食の席で修道尼らは、ベリティは第12話/復讐の女神 05.jpg男に追われて修道院に逃げ込んできたと言い、その男とはシドニーのようだ。また、ベリティはフォレスター卿の隠し子だったようで、アマンダがメイドをしていた彼女を邸から追い出し、行方不明のまま死亡宣告されため、相続権は無いと彼女は言う。ボナヴェンチュア・ロックッス見物で、ミス・マープルと同じ川縁コースを選んだ修道女らは、マイケル(=ラフィールの息子)がベリティを殺したに違いないと話す。一方、山道コースを選んだロウィーナが何者かに突き落とされ、翌日死体で発見される。コリンとレイモンド、マープルの3人はツアー客らから聞き込みを行う―。

復讐の女神 クリスティ文庫.jpg 2009年1月1日に本国イギリスで放映されたジェラルディン・マクイーワン主演の英国グラナダ版で、2007年に放映されたシーズン3の「バートラム・ホテルにて」「無実はさいなむ」「ゼロ時間へ」に続く第4話(通算第12話)。このシーズン3の4作は、全て英国に先行してカナダで2007年中に放映されています。マクイーワンはこの「復讐の女神」を以ってミス・マープル役を降板、同名シリーズのまま、マープル役はジュリア・マッケンジーに交代します。
 日本ではNHK‐BS2で2010年3月26日に初放映。原作は1971年に刊行されたアガサ・クリスティのミス・マープルシリーズの長編第11作(原題:Nemesis)で、1964年発表の『カリブ海の秘密』の続編乃至は後日談ですが、ジョーン・ヒクソン主演のBBC版と同じく、「カリブ海の秘密」より先に放映されています。
「復讐の女神」レイモンド.jpg
 原作ではミス・マープルが単独で「ミステリー・ツァー」に参加するのに対し、BBC版もこのグラナダ版も、甥で作家のレイモンド・ウェストを伴っての参加となっていますが、このグラナダ版の方がBBC版よりもレイモンドの事件解決へ向けてへの関与度はすっと大きくなっています(でも、事件を実質的に解決するのはやはりミス・マープルなのだが)。

第12話/復讐の女神 02.jpg 真犯人は、原作では「魔女の館」っぽい邸にいた3姉妹の1人であり、BBC版ではこれを踏襲していましたが、この映像化作品では、ツアー客の中の独自のキャラクターに置き換えています(犯行動機などから見て、犯人まで変えているとは必ずしも言えないが)。また、原作では、ラフィールの息子マイケルは事件が解決するまで収監されていたのを、BBC版では貧民屈でボランティア活動をしている(自らも浮浪者?)風に置き換えていましたが、この映像化作品では、これもまたツアー客の1人になっています。

 彼らばかりでなく、この映像化作品では、マープル、レイモンド以外の10名の参加者が全員何らかの形でベリティに纏わる過去の出来事に関与しているという(原作ではミス・マープルの外に14名いたツアー参加者の大半が事件には直接絡んでこなかった)―その絡み方につてはオリジナルの脚本になっているわけで、加えて、犯人の案山子を使ったトリックや、死体入れ替えトリック、そのための記憶喪失者への別人の記憶注入と、独自のプロット&トリック満載、もうこれは、半ばオリジナル作品として楽しんだ方が良さそう...。まあ、これはこれで面白かったと見るべきでしょうか。

 コアなクリスティの原作ファンからは大いに叩かれそうな改変ぶりですが、個人的には、原作でツアー客の殆どが事件に絡んでこないことにやや拍子抜けの感があっただけに、10人全員を事件に関与させたことに対して、脚本家に「ご苦労様」といいたいくらいです。結果的に、原作に全く無い話の部分でかなりごちゃごちゃしてしまった面もありますが、一応これでも、クリスティ協会だかクリスティ財団だかのお墨付きは得ているのだろうなあ。

NEMESIS  MARPLE SEASON 2007.jpgローラ・ミシェル・ケリー.jpg「アガサ・クリスティー ミス・マープル(第12話)/復讐の女神」●原題:NEMESIS, AGATHA CHRISTIE`S MARPLE SEASON 3●制作年:2007年●制作国:イギリス●演出:ニコラス・ウィンディング・レフン●脚本:スティーヴン・チャーチェット●原作:アガサ・クリスティ「バートラム・ホテルにて」●時間:93分●出演:ジェラルディン・マクイーワン/ローラ・ミッシェル・ケリー/ダン・スティーブンズ/グレイム・ガーデン/リチャード・E・グラント/ルース・ウィルソン/ジョニー・ブリッグズ/ジョージ・コール/ロニ・アンコーナ/エイドリアン・ローリンズ/ エミリー・ウーフ/ウィル・メラー/アン・リード/アマンダ・バートン/リー・イングルビー●日本放送:2010/03/26●放送局:NHK‐BS2(評価:★★★☆)

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