【1070】 ○ コリン・デクスター (大庭忠男:訳) 『カインの娘たち (1995/10 ハヤカワ・ミステリ) ★★★★ (○ ハーバート・ワイズ 「主任警部モース(第30話)/カインの娘たち」 (96年/英) (1998/10 エリア・ビー 【VHS】) ★★★☆)

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事件にも女性たちにも人生の虚無を感じさせられるが、それが"悪くない"。

カインの娘たち.jpg カインの娘たち 文庫.jpg カインの娘たち コリン・デクスタ-.jpg   The Daughters of Cains 3.bmp  The Daughters of Cains 1.jpg
カインの娘たち (ハヤカワ・ミステリ文庫)』['00年]/『カインの娘たち (ハヤカワ ポケット ミステリ)』['95年]/「Inspector Morse: Daughters of Cain [DVD] [Import]」(カインの娘たち)

The Daughters of Cain.jpg オクスフォード大学ウールジー・カレッジの元特別研究員が何者かに刺殺された事件の捜査をモース主任警部は同僚から引き継ぐが、行方不明になっていた最大の容疑者である博物館の係員が、同じく刺殺体となってテムズ河畔で発見され、この係員を殺す動機のあると思われる3人の女性には、堅牢なアリバイがあった―。

"The Daughters of Cain" (1994)

 1994年末に発表されたコリン・デクスターの「主任警部モース」シリーズ11作目で(原題は"The Daughters of Cains")、"犯人探し"より"アリバイ崩し"をメインにもってきたような展開が斬新と言えるかも知れません。
 13作シリーズの終わりから3作目で、アルコールとニコチンでモースの体調はますます良くないみたいですが、持ち前の頭脳と勘で、途中大きく方針転換することもなく、時間とともに事件の核心へ近づいていく感じ。

 謎解きが好きな人には物足りないかも知れませんが、むしろ波乱が少ない分、随所にある作者特有のペダンティックな味付けや、モースと魅惑的な女性とのやりとりが楽しめます。
 このシリーズ、後のものになればなるほど本格推理一本から人間(人情)ドラマ的な要素が加味されたのに推移していくため、本格推理ファンには初期作品の方が人気があるようですが、個人的には後期のものも好きです。                              

 女性に感情移入しやすいところは相変わらずですが、女性からもモテるなあ、このオジさんは。
 でも、結局最後は、事件に対しても女性たちに対しても、何か人生の虚しさのようなものを感じさせられる印象が残って、この虚無感みたいなものが、実は意外と"悪くない虚無感"というか、人生ってそうなんだよなあ、みたいにしみじみ共感してしまい、その点ではシリーズの後半の持ち味が出ている作品だと思いました。

モース警部シリーズ DVD-BOX.jpgThe Daughters of Cains 2.jpg  テレビシリーズ「主任警部モース」で映像化された作品も観ましたが(NHK-BS2でのテレビ放映の以前の1998年に、日本語字幕付きでVHS化されていた)、娼婦役の女性は自分が抱いていたイメージと違って、原作より知的で洗練されているような感じがし(モースの気持ちが傾くのがわかる気がした)、終わり方も、原作の趣意は変えないまでも、モースがわざと未解決事件にしてしまったみたいな感じでしたが、それはそれで必ずしも悪い後味ではなかったように思えます。

モース警部・シリーズ 1 DVD BOX」第26話から最終の第33話まで(「アヴリルの昏睡」「サタンの巣くう日」「神々の黄昏」「森を抜ける道」「カインの娘たち」「死はわが隣人」「オックスフォード運河の殺人」「悔恨の日」)

THE DAUGHTERS OF CAIN.jpg 大学内での麻薬使用がモチーフに使われていますが、オクスフォードを舞台に実在の建物や施設を作品に織り込みながらも、オクスフォード大学に「ウールジー・カレッジ」というのは実在しないそうです。やはり、「麻薬」事件の舞台にするのに実名ではマズイと思ったのでしょうか(因みにコリン・デクスターはケンブリッジ大卒)。イギリスでは、大学って昔から麻薬売買の場だったのでしょうか。

INSPECTOR MORSE:THE SINS OF THE FATHERS.jpg「主任警部モース/カインの娘たち」●原題:INSPECTOR MORSE:THE DAUGHTERS OF CAIN●制作年:1996年●制作国:イギリス●監督:ハーバート・ワイズ●脚本Phyllis Logan THE DAUGHTERS OF CAIN.jpg:ジュリアン・ミッチェル●原作:コリン・デクスター●時間:104分●出演:ジョン・ソウ/ケヴィン・ウェイトリー/ジェームズ・グラウト/クレア・ホルマン/ガブリエル・ロイド/フィリス・ローガン/アマンダ・ライアン●日本放映:2001/05 (NHK-BS2)(評価:★★★☆)
フィリス・ローガン(Phyllis Logan) in THE DAUGHTERS OF CAIN.
NSPECTOR MORSE: DAUGHTERS OF CAIN Double Audio Cassette (2003)

 【2000年文庫化[ハヤカワ・ミステリ文庫]】

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