【1933】 ○ デヴィッド・アットウッド 「シャーロック・ホームズ/バスカヴィル家の獣犬」 (02年/英) (2004/09 NHK-BS2) ★★★★

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BBC版。楽しめた。ホームズ、ワトスン共にグラナダ版より若いが、ワトスンが大活躍。恋もした?

バスカヴィル家の獣犬01.jpgバスカヴィル家の獣犬 dvd.jpg    The Hound of the Baskervilles (2002).jpgバスカヴィルの獣犬 [DVD]」リチャード・ロクスバーグ(Richard Roxburgh)

シャーロック・ホームズ 「バスカヴィルの獣犬」 前編.jpg ダートムアの荒野に響く獣の唸り声は、かつてバスカヴィル家の領主だったヒューゴーという男が妻の不倫に怒り沼地に逃げた妻を殺害、その際に妻が大事に飼っていた大きな犬がヒューゴーに飛びかかって殺され、そして今でもその犬の悪霊が沼地を彷徨って遠吠えしているという―そうした伝説が沼沢地の気味悪さを一層深めるこの地で、バスカヴィル家の領主・チャールズ卿が変死し、死体の側に彼のつま先だけの足跡と巨大な犬の足跡が残されていた。当家医師モーティマーの依頼により、ホームズはチャールズ卿の死に関する調査を始めるとともに、新たな当主となったヘンリー卿の身の安全と相続した莫大な財産を守るため、ワトスンが彼の護衛に当たる―。

Hound of the Baskervilles'00.jpg 1901年にコナン・ドイルが発表した、ホームズ物語の4つの長編中最長の作品『バスカヴィル家の犬』の映像化であり、ホームズ物語の映像化では、1994年に完結した英グラナダテレビ製作のジェレミー・ブレッド主演のシャーロック・ホームズシリーズがよく知られていますが、これは英国国営放送(BBC)が2002年に作ったものです(2004年にもう1作放映している。ホントはもっと作ってシリーズ化したかったのか?)。日本では、NHK-BSで2004年に放映されましたが、先行して2003年にDVDが国内発売されています。

 シャーロック・ホームズを演じたリチャード・ロクスバーグ(「ミッション:インポッシブル2」('02年/米)などに出演)は、グラナダ版のホームズ役で高い評価を得たジェレミー・ブレットと比べれば新顔でしたが、4大長編の最後である原作の時代設定が実は一番最初であることを考えると、50代でこの役を演じたブレットよりも、当時40歳だったロクスバーグの方が年齢的には合っているかも知れず、同じことは、ワトスンを演じたイアン・ハート(「ハリー・ポッターと賢者の石」('01年/英)などに出演)にも言えるかと思います。

Hound of the Baskervilles'01.jpg この作品、ホームズ物語で最も数多く映像化されていながら、原作通りに作られているものは一つもないそうで、そうした中では、前半の展開はかなり原作に忠実な方ではないでしょうか。
 原作に比べるとテンポよく話が進んでいき(原作はダートムアの土地柄など文学的な記述表現もあってやや冗長に思える部分もあった)、それでいて軽過ぎる印象を受けないのは、何よりも、ダートムアの荒涼とした気象、土地柄がよく描かれていて、一方で、チャールズ卿の邸宅内などの室内シーンなどはセットに贅を凝らしていて、映像的に全く手抜きがないためでしょう。

Hound of the Baskervilles3.jpg 原作とやや異なるのは、イアン・ハート演じるワトスンが結構活躍する場面が多いことと、ホームズの良き友でありながらも、調査の秘密を明かさなかったホームズに対して強く詰め寄るなど、「助手」と言うより「対等」な関係であろうとしているのが窺える点で、その分、イアン・ハートの人間味溢れるワトソン像が前面に出ていて、これもいいです(対比的に、ロクスバーグのホームズ像はやや冷たい印象か)。

 近所に住む考古人類学者(原作では昆虫学者)スティプルトン(リチャード・E.・ラント)の妹ベリル(ネイブ・マッキントッシュ)が、ヘンリー卿と間違えてワトスンにこの地を立ち去るよう警告するのは原作と同じですが、彼女に惹かれたヘンリー卿と併せて、ワトスンもベリルに惹かれたような印象を受けました(ベリル役のネイブ・マッキントッシュの美貌がかなり目立っている)。

 それで彼女が殺された(原作にはない殺人)ことを知ったワトスンは激昂して...とここからは原作とかなり異なる展開。もともとアクション映画っぽい場面のある原作ですが、よりアクション映画っぽくなっています(最後にホームズが沼にハマる場面は原作にもあるが、とにかくワトスン大活躍といった感じ)。

バスカヴィル家の獣犬 犬.jpg その他にも、原作に無いバスカヴィル家での降霊会や大掛かりなクリスマス・パーティなどがあって(この番組、クリスマスシーズンに放映された)、"膨らまし感"はあるものの"手抜き感"は無いため、これはこれで良しとしていいのではないかと。「犬」はCG(と模型?)を使っていますが、今から10年前のCGだから、まあこんなものかというレベルです。

バスカヴィル家の獣犬 ジョン・ネトルズ.jpgバーナビー警部ド.jpg 「バーナビー警部」のジョン・ネトルズが、モーティマー医師役で登場。「バーナビー警部」のシリーズはもう始まって大いに人気を博していた頃だから、シーズンとシーズンの隙間をぬってのゲスト出演といった感じなのでしょうか。

John Nettles

 繰り返しになりますが、(この映像化作品では)ワトスンもベリルに惹かれたのだと思います。だから、事件が解決しても鬱々としているのではないかなあ(実際、ベリルが殺されたことで、よりダークなトーンになったように思えた)。

 原作とはやや異なった余韻を残す作品で、正統派支持者からはこき降ろされそうなよう要素も多々ありますが、テンポの良さもあって、個人的には改変部分も含め原作より楽しめたかも。

The Hound of the Baskervilles2.jpgシャーロック・ホームズ 「バスカヴィルの獣犬」 後編.jpg「バスカヴィル家の獣犬」●原題:THE HOUND OF THE BASKERVILLES●制作年:2002年●制作国:イギリス●監督:デヴィッド・アットウッド●製作:リストファー・ホール●脚本:アラン・キュービット●撮影:ジェームズ・ウェランド●音楽:ロブ・レイン●原作:アーサー・コナン・ドイル●時間:100分●出演:リチャード・ロクスバーグ/イアン・ハート/マット・デイ/リチャード・E・グラント/ネイブ・マッキントッシュ/ジョン・ネトルズ/ジェラルディン・ジェームズ /ロン・クック●日本放映:2004/09/18●放送局:NHK‐BS2 (評価:★★★★)

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