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自分の人生の重要シーンを10挙げるとすれば何と何が来るか考えさせられた。

「ある一生」ポスター/シュテファン・ゴルスキー/『ある一生 (Shinchosha CREST BOOKS)』['19年]
1900年頃のオーストリア・アルプス。孤児の少年アンドレアス・エッガー(イヴァン・グスタフィク)は渓谷に住む、遠い親戚クランツシュトッカー(アンドレアス・ルスト)の農場にやってきた。しかし、農場主にとって、孤児は安価な働き手に過ぎず、虐げられた彼にとっての
心の支えは老婆のアーンル(マリアンヌ・ゼーゲブレヒト)だけだった。彼女が亡くなると、成長したエッガー(シュテファン・ゴルスキー)を引き留めるものは何もなく、農場を出て、日雇い労働者として生計を立てる。その後、渓谷に電気
と観光客をもたらすロープウェーの建設作業員になると、最愛の人マリー(ユリア・フランツ・リヒター)と出会い、山奥の木造小屋で充実した結婚生活を送り始める。しかし、幸せな時間は長くは続かなかった。第二次世界大戦が勃発し、エッガーも戦地に召集されたもののソ連軍の捕虜となり、何年も経ってから、ようやく谷に戻ることができた。そして、時代は過ぎ、観光客で溢れた渓谷で、人生の終焉を迎えたエッガー(アウグスト・ツィルナー)は過去の出来事がフラッシュバックし、アルプスを目の前に立ち尽くす―。
「アンネの日記」('16年/独)のハンス・シュタインビッヒラー監督の2023年作。原作であるオーストリアの作家ローベルト・ゼーターラーの同名小説は、2014年に刊行されるや読書界の話題をさらい、世界40カ国以上で翻訳され160万部以上発行、ブッカー賞最終候補にもなった作品だそうです。この原作を美しい情景と共に映画化し、激動の時代に翻弄されながら過酷な人生を歩んだ男の一生を描いたヒューマンドラマになっています(主人公の8歳の時をイヴァン・グスタフィク、18歳から47歳をシュテファン・ゴルスキー、60歳から80歳をアウグスト・ツィルナーが演じている)。
「週刊文春」の映画評で、芝山幹郎氏(翻訳家)などはこの作品を褒めているのではないかと思ったら、「苦手な臭いを感じた」とのことで5つ星満点評価で★★★と抑えめの評価で(「過大評価したくない」とまで言っている)、中野翠氏(コラムニスト)の方がむしろ「一見淡々とした評価だが、胸の奥深くに滲みる」として★★★★とより高い評価だったのが意外でした。でも、言われてみれば、確かにあまりにストレートな造型で、芝山幹郎氏の気持ちも分からなくないです。
戦争に行った以外は、山で生き、山で死んでいった無名の男エッガーの人生。個人的には、ラスト近くで、バスから降りた老エッガーに、それまでの人生の思い出がフラッシュバックして甦ってくるシーンが、彼の人生を集約しているようで良かったです。記憶の"結晶化"作用ではないですが、苦難に満ちたかに思えた彼の人生は、愛と幸福に満ちた人生でもあったのだなあと思ったのと、人生って集約すると、10前後の主だったシーンに纏まってしまうのかもしれないなあと思いました(自分の人生の重要シーンを10挙げるとすれば何と何が来るだろうかと考えさせられた)。
原作はどんな大河小説なのかと思って手にしてみたら、150ページほどのやや長めの中編といった感じの本でした。映画は原作に忠実に作られているのを感じましたが、映画はエッガーの一生を時系列で追っているのに対し、原作の方は人生を俯瞰するような描き方で、時に時系列が入れ替わったりします。
ローベルト・ゼーターラー 『ある一生 (Shinchosha CREST BOOKS) 』['19年]2025.6.7 蓼科親湯温泉にて
例えば、映画の中盤にある、エッガーが山小屋で見つけた瀕死のヤギ飼い〈ヤギハネス〉を背負って山を下ろうとするも、エッガーは片脚が不自由なうえ、折りからの吹雪に足を滑らせて身動きが取れないでいると、ヤギハネスは、死は氷の女が魂を奪っていくのだと語り、雪の中へ駆けて消えていく―というシーンは、原作では冒頭に来ています(そして、マリーとの出会いがその次に来る)。
また、映画では、エッガーが亡くなるシーンがラストで、その前に、前述のそれまでの人生の思い出がフラッシュバックするシーンがありますが、原作では、順番が逆転し、エッガーが亡くなったという記述の後に、彼がバスに乗り、さらにバスから降るシーンがあります。映画におけるフラッシュバックシーンは、原作では「ひとつひとつの記憶が蘇ってきた」となっています。そして「まだそのときじゃない」とエッガーは小声で言います(つまり、今はまだ死なないと)。原作は最も重要な場面を最初と最後に持ってきているとも言えます。主人公は哲学者でも何でもなく、山に生きる無骨な男ですが、映画には常に「生」と密接した「死」の雰囲気があります。そうしたことが作品テーマであることは、原作の構成が、生と死を巡る重要シーンを冒頭と最後に持ってきていることからも窺えるように思いました。単に無名の男の生涯を描いた"感動作"ということではなく、観る側に人生とは何かを考えさせる作品ともとれます(「評価する」か、芝山幹郎氏が言うところの「過大評価しない」かの分かれ目はこの点だろう)。
中野翠氏が「親代わりの老婆と、妻という救い」があったとしていますが、虐げられた少年にとっての心の支えとなった老婆アーンルを演じたのはマリアンヌ・ゼーゲブレヒト。パーシー・アドロン監督の「バグダッド・カフェ」 ('87年/西独)で、ジャック・パランス演じる老画家が恋心を抱くおデブの女性ジャスミンを演じていた女優で、あまり喋らないですが、存在感があってその印象は強烈でした。あれから36年、まだ現役なのだなあ(痩せた?)。
「バグダッド・カフェ」 ('87年/西独)
マリアンヌ・ゼーゲブレヒト/ジャック・パランス
「ある一生」●原題:EIN GANZES LEBEN●制作年:2023年●制作国:ドイツ・オーストリア●監督:ハンス・シュタインビッヒラー●製作:ヤーコプ・ポホラトコ/ディエター・ポホラトコ/ティム・オーバーベラント /テオドール・グリンゲル/トビアス・アレクサンダー・サイファート/スカディ・リス●脚本:ウルリッヒ・リマー●撮影:アルミン・フランゼン●音楽:マシアス・ウェバー●原作:ローベルト・ゼーターラー●時間:115分●出演:シュテファン・ゴルスキー/アウグスト・ツィルナー/イバン・グスタフィク/アンドレアス・ルスト/ユリア・フランツ・リヒター/ロバート・スタッドローバー/トーマス・シューベルト/ルーカス・ウォルヒャー/マリアンネ・ゼーゲブレヒト/マリア・ホーフステッター/ペーター・ミッタールッツナー●日本公開:2024/07●配給:アットエンタテインメント●最初に観た場所:新宿武蔵野館(24-08-25)(評価:★★★★)
新宿武蔵野館



医学生のマックス・マッキャンドルス(ラミー・ユセフ)は、外科医で研究者のゴドウィン・バクスター(通称ゴッド)(ウィレム・デフォー)の助手に選ばれる。ゴッドはベラ・バクスター(エマ・ストーン)という知能が未発達の成人女性の研究をしてお
り、マックスはベラが覚えた言葉や食べた物を記録する仕事を引き受ける。ベラはゴッドの家の中に閉じ込められ、日々多くの語彙や感情を覚え、次第には性の歓びをも覚えていく。マックスは近くで観察する時間を過ごす中で、ベラに好意を抱くようになる。ベラの正体をゴッドに問い詰めたマックスは、次のよ
うな事実を知らされる。ある時、ヴィクトリア(エマ・ストーン、二役)という妊婦が橋から飛
び降り自殺をし、その遺体を発見したゴッドが、生存していた胎児の脳を妊婦に移殖して生き返らせたのだという。ゴッドの励ましを受け、マックスはベラに結婚を申し込み、ベラもそれを受け入れた。しかし、知性が急速に発達していったベラは自然と外の世界に興味を持ち始め、結婚の契約のために家に上がり込んだ放蕩者の弁護士ダンカン(マーク・ラファロ)に誘われて大陸横断の旅に出る。大人の体を持ちながら新生児の目線で世界を見つめるベラは時代の偏見から解放され、平等や自由を知り、驚くべき成長を遂げていく―。
ヨルゴス・ランティモス監督の2023年作で、「女王陛下のお気に入り」('18年/英・アイルランド・米)の時のエマ・ストーンと再びタッグを組み、スコットランドの作家アラスター・グレイの同名ゴシック小説を映画化したもの。2023年・第80回「ベネチア国際映画祭 金獅子賞」を受賞し、第96回アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞、脚色賞ほか計11部門にノミネートされ、主演女優賞、衣装デザイン賞、美術賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞の4部門で受賞しました。
原作は1992年に発表されたアラスター・グレイ(自作の挿画や表紙絵を自分で手掛けることで知られる)の同名小説('23年/ハヤカワepi文庫)で、メアリー・シェリーの『
「ラ・ラ・ランド」('16年/米)で2016年・第73回「ベネチア国際映画祭 女優賞」、第74回「ゴールデングローブ賞 主演女優賞(ミュージカル・コメデ
ィ部門)」、第89回「アカデミー賞アカデミー主演女優賞」受賞のエマ・ストーンが、この作品でも2024年・第81回「ゴールデングローブ賞 主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)」、第96回「アカデミー主演女優賞」を受賞しました。
最後に、ベラが母であるヴィクトリアの自殺の原因が暴力的で残虐な夫・アルフィー(クリストファー・アボット)にあったことを突き止め、医者としてゴッドの研究を引き継ぐことを決意したベラが、(手始めに?)アルフィーにヤギの脳を移殖したという、言わば復讐劇的なオチでした。
ランティモス/エマ・ストーン●脚本:トニー・マクナマラ●撮影:ロビー・ライアン●音楽:イェルスキン・フェンドリックス●時間:141分●出演:エマ・ストーン/マーク・ラファロ/ウィレム・デフォー/ラミー・ユセフ/クリストファー・アボット/キャサリン・ハンター/ジェロッド・カーマイケル/マーガレット・クアリー/ハンナ・シグラ●日本公開:2024/01●配給:ディズニー●最初に観た場所:TOHOシネマズ日比谷(スクリーン5・デジタルTCX DOLBYATMOS上映)(23-02-08)((評価:★★★★)


20世紀初頭のアメリカ。先住民のオセージ族は石油を発見し、莫大な富を手に入れていた。一方、列車で彼らの土地にやってきた白人たちは、富を奪おうとオセージ族を巧妙に操り、殺人に手を染める―。第一次世界
大戦の帰還兵アーネスト・バークハート(レオナルド・ディカプリオ)は、地元の有力者である叔父のウィリアム・ヘイル(ロバート・デ・ニーロ)を頼ってオクラホマへ移り住む。そして、先住民族オセージ族の女性モリー・カイル(リリー・グラッドストーン)と恋に落ち夫婦となるが、2人の周囲で不可解な連続殺人事件が起き始める。町が混乱と暴力に包まれる中、ワシントンD.C.から派遣された捜査官が調査に乗り出すが、この事件の裏には驚愕の真実が隠されていた―。
マーティン・スコセッシ監督の2023年作で、原題は"Killers of the Flower Moon"。主演はレオナルド・ディカプリオで、共演はロバート・デ・ニーロ、ジェシー・プレモンス、リリー・グラッドストーンら。デイヴィッド・グランによるノンフィクション・ノベル『花殺し月の殺人―インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』を映画化したサスペンスです。2023年「ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞 作品賞」を受賞していますが、アカデミー賞では無冠でした(スコセッシもディカプリオもデニーロも既に受賞歴があるし、同じ骨太歴史大作「オッペンハイマー」に票が流れたのか)。
タイトルの由来は、4月に咲いた小さな花が5月に生えてきた大きな草や花によって駆逐されてしまうので、オセージ族は5月を「フラワー・キ
ラー・ムーン(花殺し月)」と呼ぶことから。比喩的には、先住インディオが「4月に咲いた小さな花」で、後からやってきた白人が、それらを"駆除"する「5月に生えてきた大きな草や花」ということなのでしょう。
ディカプリオとデ・ニーロの競演が楽しいし、ストーリーも面白いので、3時間半近い上映時間があまり長く感じられませんでした。主人公のアーネストは、妻モリーを愛しながらもヘイルの企みに協力することになり、事件の真相が明るみになった際もヘイルを守る動きを見せるが、自身の子リトル・アナの死を受け真相を告白する―。
米国史の暗部を抉るだけでなく、エンタテインメントとしても人間ドラマとしても良くできており、マーティン・スコセッシ監督のいまだ衰えぬ力量を感じました。 デ・ニーロが演じる叔父の"キング"が、表向きオーセージ族の理解者・支援者であるに反して、実は本性は怖い男であるという構図は、(娯楽性という面で)早稲田松竹で同時期に同じく1本立て上映された「
「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」●原題:KILLERS OF THE FLOWER MOON●制作年:2023年●制作国:アメリカ●監督:マーティン・スコセッシ●製作:ダン・フリードキン/マーティン・スコセッシ/ブラッドリー・トーマス/ダニエル・ルピ●脚本:エリック・ロス/マーティン・スコセッシ●撮影:ロドリゴ・プリエト●音楽:ロビー・ロバートソン●原作:デイヴィッド・グラン『花殺し月の殺人―インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』●時間:206分●出演:レオナルド・ディカプリオ/ロバート・デ・ニーロ/リリー・グラッドストーン/ジェシー・プレモンス/ブレンダン・フレイザー/タントゥー・カーディナル/モリソン - ルイス・キャンセルミ/ジェイソン・イズベル/カーラ・ジェイド・メイヤーズ/ジャネー・コリンズ/ジリアン・ディオン/ウィリアム・ベロー/スタージル・シンプソン/タタンカ・ミーンズ/マイケル・アボット・Jr/パット・ヒーリー/ スコット・シェパード/ゲイリー・バサラバ/スティーヴ・イースティン/ジョン・リスゴー/マーティン・スコセッシ●日本公開:2023/10●配給:東和ピクチャーズ

●最初に観た場所:早稲田松竹(24-01-26)(評価:★★★★)
東京スカイツリー近くの古アパートで独り暮らす中年の寡黙な清掃作業員・平山(役所広司)は、毎朝薄暗いうちに起き、台所で顔を洗い、ワゴン車を運転して仕事場へ向かう。行き先は渋谷区内の公衆トイレ。それらを次々と回り、隅々まで手際よく磨き上げてゆく。一緒に働く清掃員タカ
シ(柄本時生)はどうせすぐ汚れるからと作業は適当にこなし、通っているガールズ・バーのアヤ(アオイヤマダ)と深い仲になりたいが金が無いとぼやいてばかりいる。平山は意に介さず、ただ一心に自分の持ち場を磨き上げる。誰からも見て見ぬふりをされるような仕事だが、平山はそれも気にせず仕事を続け、仕事中は殆ど言葉を発しない。それでも平山は日々の楽しみを数多く持っている。例えば、移動中の車で聴く古いカセットテープ。パティ・スミス、ルー・リード、キンクス、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドとどれも少し前の音楽だ。
休憩時に神社の境内の隅に座りささやかな昼食をとる時は、境内の樹々を見上げる。木洩れ日を見て笑みを浮かべ、一時代前の小型フィルムカメラでモノクロ写真を撮る。街の
人々は平山をまったく無視して行き交うが、時折ホームレス風の老人(田中泯)が、平山と目を合わせてくれる。仕事が終わると近くの銭湯で身体を洗い、浅草地下商店街の定食屋で安い食事をする。休日には行きつけの小さな居酒屋で、客にせがまれて歌う女将(石川さゆり)の声に耳を傾けることもある。家に帰ると、四畳半の部屋で眠くなるまで本を読む。フォークナー『野生の棕櫚』、幸田文『木』等々...。眠りに落ちた平山の脳裏には、その
日に目にした映像の断片がゆらゆら閃き続けている。ある日、平山の若い姪・ニコ(中野有紗)がアパートへ押し掛けてくる。平山の妹ケイコ(麻生祐未)の娘で、家出してきたという。平山の妹は豊かな暮らしを送っていて、ニコに平山とは世界が違うのだから会ってはならぬと言い渡しているらしい。ニコは平山を説き伏せて仕事場へついてゆく。公衆トイレを一心に清掃してゆく平山の姿にニコは言葉を失うが、休憩時、公園で木洩れ日を見上げる平山の姿を見て、ニコにも笑顔が戻る。しかし平山の妹がニコを連れ戻しにやってくる―。
ヴィム・ヴェンダース監督の2023年公開作で、同年の第76回「カンヌ国際映画祭」で、役所広司が日本人俳優としては是枝裕和監督の「
この映画の製作のきっかけは、世界で活躍する16人の建築家やデザイナーが参画して渋谷区内17か所の公共トイレを刷新したプロジェクト「THE TOKYO TOILET」の活動PRを目的とした短編オムニバス映画が当初の計画だったとのこと、撮影はたった15日間という短い期間だったそうです。
主人公・平山(ヴェンダース監督が敬愛する小津安二郎監督の作品の主人公の名(例えば「東京物語」('53年)の平山周吉(笠智衆)、「彼岸花」('58年)の平山渉(佐分利信)、「秋刀魚の味」('62年)の平山周平(笠智衆))に由来しているのは明らか)の一見かわり映えの無い生活が12日間描かれています。主人公が毎日の昼休憩か何かの時間に空を見上げ、使い捨てカメラで木漏れ日を撮影して満足そうなのが印象的です。毎日同じようで、日ごと違って見えるのだろうなあ。それと同じように、毎日が同じようで、ちょっとずつ今までにない出来事や事件のようなものが起き、過去を捨てたはずの平山が、次第にその自分の過去に向き合わざるを得なくなるという作りになっています。
エンディングの平山の表情を映した長いショットで、最初笑っていた平山は、途中からやや泣き顔にも見える表情になったりもし、彼の人生への満足と後悔の両方が滲み出ていて、それらをひっくるめての「パーフェクト」という意味であり、少なくとも一般的な「完璧な生活」という意味合いとは異なるように思いました。「幸せ」というより「ハッピー」に近いかもしれません。さらに、平山の日々を見ていると、どこか禅僧の生活のメタファーのようでもありますが、それを「完全に悟りきった哲人」にしてしまっていないところが、平山という人物が身近に感じられていいです。
居酒屋の女将が石川さゆりで、ほんとに映画の中で歌っていたなあ(自分がこの映画を観た大晦日の日に「NHK紅白歌合戦」でも歌っていた)。三浦友和が演じるその女将の元夫が現れ、平山は最初はその元夫の登場で女将に振られたと思い、この映画の中で初めて酒を飲みます(行きつけの定食屋でも居酒屋でもそれまで酒は飲んでいない)。しかし、元夫はガンで余命宣告を受けており、後を平山に託したことで、二人は女将を介して何となく気持ちが通じていました。一方で、麻生祐未が演じる平山の妹ケイコと平山は全然ダメでした。恋敵にもなり得る相手と気持ちが通じて、近しいはずの肉親と気持ちが通じないのも、人生の皮肉かも。小津安二郎の「東京物語」('53年)で、父親(笠智衆)と気持ちが通じ合うのが実の息子や娘ではなく、血の繋がりのない息子の嫁(原節子)だったのが想起させられました。
「PERFECT DAYS」●原題:PERFECT DAYS●制作年:2023年●制作国:日本・ドイツ●監督:ヴィム・ヴェンダース●製作:柳井康治●脚本:ヴィム・ヴェンダース/高崎卓馬●撮影:フランツ・ラスティグ●音楽:(劇中曲)ルー・リード「Perfect Day」ほか●時間:124分●出演:役所広司/柄本時生/アオイヤマダ/中野有紗/麻生祐未/石川さゆり/田中泯/三浦友和/田中都子/水間ロン/渋谷そらじ/岩崎蒼維/嶋崎希祐/川崎ゆり子/小林紋/原田文明/レイナ/三浦俊輔/古川がん/深沢敦/田村泰二郎/甲本雅裕/岡本牧子/松居大悟/高橋侃/さいとうなり/大下ヒロト/研ナオコ/長井短/牧口元美/松井功/吉田葵/柴田元幸/犬山イヌコ/モロ師岡/芹澤興人/松金よね子/安藤玉恵●公開:2023/12●配給:ビターズ・エンド●最初に観た場所:シネ・リーブル神戸(23-12-31)(評価:★★★★☆)




有名映画プロデューサーがパリの大豪邸の自宅で殺された。容疑者は、売れない新人女優マドレーヌ(ナディア・テレスキウィッツ)。プロデューサーに襲われ、「自分の身を守るために撃った」と自供する彼女は、親友で駆け出しの弁護士ポー
リーヌ(レベッカ・マルデール)と共に法廷へ。正当防衛を訴える鮮やかな弁論と感動的なスピーチで裁判官や大衆の心をつかみ、見事無罪を勝ち取る。それどころか、「悲劇のヒロイン」として一躍時の人となったマドレーヌは、大スターの座へと駆け上がっていく。ところが、そんなある日、二人の前にオデット(イザベル・ユペール)という女が現れる。彼女は二人に証拠を突き付け、プロデューサー殺しの真犯人は自分で、マドレーヌたちが手にした富も名声も、自分のものだと言うのだ。こんなに魅力的な"犯人の座"は渡せない─。
フランソワ・オゾン監督の2023年公開作で、3人の女たちが繰り広げる犯罪ミステリ&コメディです。ナディア・テレスキウィッツ(1996年生まれ)が新人女優マドレーヌ、レベッカ・マルデール(1995年生まれ)が新米弁護士ポーリーヌ、この二人より40歳以上も年上のイザベル・ユペール(1953年生まれ)が落ちぶれた元大女優のオデットを演じています(イザベル・ユペールは「エキセントリックで常軌を逸したような役を演じるのはとても楽しい」とインタビューで答えている)。
30年代の戯曲をフランソワ・オゾン監督が脚色したもので、1930年代における女性の地位や差別撤廃にも言及する本作は、ドタバタ・コメディでありながら、フェミニズムや#MeTooムーブメントという現代的なテーマとも通底するメッセージを持っており、むしろ、それを敢えてドタバタコメディというスタイルで表現しているところに、この監督の才気煥発ぶりを感じます。
最大の見せ場は、法廷で男性のみで構成された陪審員団に向けてナディア・テレスキウィッツ演じる新人女優が「嘘も真実となる」とばかり自分が犯人であるとの演説をし、それをレベッカ・マルデール演じる新米弁護士ポーリーヌが見守るシーンです(朝日新聞の批評子は「法廷から男社会を刺す女の絆」としていた)。
ナディア・テレスキウィッツも、「これはシスターフッドの物語。私とレベッカも出合ってすぐ、共に闘う共犯関係のようなもので結ばれました」と述べていますが、共演者同士の関係を映画と重なるように持っていくところに、フランソワ・オゾン監督の演出の旨さがあるのかもしれません。
「私がやりました」●原題:MON CRIME(英:THE CRIME IS MINE)●制作年:2023年●制作国:フランス●監督・脚本:フランソワ・オゾン●製作:エリック・アルトメイヤー /ニコラ・アルトメイヤー●撮影:マニュエル・ダコッセ●音楽:フィリップ・ロンビ●時間:103分●出演:ナディア・テレスキウィッツン/レベッカ・マルデール/イザベル・ユペール/ファブリス・ルキーニ/ダニー・ブーン/アンドレ・デュソリエ/エドゥアール・シュルピス●日本公開:2023/11●配給:ギャガ●最初に観た場所:シネ・リーブル池袋(スクリーン2)(20-11-14)(評価:★★★☆)●同日上映:「サタデー・フィクション」(婁燁(ロウ・イエ))

モロッコ海沿いの街サレ。旧市街の路地裏で、ミナ(ルブナ・アザバル)とハリム(サーレフ・バクリ)の夫婦は母から娘へと世代を超えて受け継がれる、カフタンドレスの仕立て屋を営んでいる。伝統を守る仕事を愛しながら、自分自身は伝統からはじかれた存在と苦悩するハリム。そんな夫を誰よりも理解し支えてきたミナは、病に侵され余命僅かである。そこにユーセフ(アイユーブ・ミシウィ)という若い職人が現れ、誰にも言えない孤独を抱えていた3人は、青いカフタン作りを通じて絆を深めていく。そして刻一刻とミナの最期の時が迫る―。
モロッコ出身の映画監督マリヤム・トゥザニの2022年作品。2022年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、国際映画批評家連盟賞を受賞。本作のタイトルにもあるカフタンとはモロッコの民族衣装で、結婚式や宗教行事など、フォーマルな席で着用するドレスのこと。コードや飾りボタンなどで華やかに刺繍を施し、完成に数カ月を費やすオーダーメイドの高級品となるものです。
妻ミナと夫ハリムの間に25年間の結婚生活で築かれた愛情がある一方、芸術家乃至職人肌のハリムには世間知らずの子どものようなところもあり、実務家で現実家肌のミナが、独り立ちできない息子を助ける過保護な母親のようにも見えます。そうした二人の関係を、言葉や事件ではなく、その仕事などをする日常を描くことで観る側に伝えているのが旨いと思いました。
しかし、このミナという女性が強かった! 自らが余命いくばくもないことを悟るや、今で経験していなかったことを夫といろいろ経験しようとし、一方で、仕事にこだわりを持っているくせに、無茶を言うお客には抗えないという夫の性格を矯正し、自分がいなくても一人で仕事や店をマネジメントしていけるよう教育しています。
ミナは夫にすごく大きなものを遺したと思います。自分が亡くなった後も夫が自立して生活できるようにすることが、彼女の最後の生きがいであり、自らの病を嘆いている間もなくそのことに没頭したという意味では、彼女にとっても充実した最期の時間だったかもしれません。そして、その延長線上に、夫のアイデンティを回復を後押しする言葉があったのだと思います。
ミナを演じたルブナ・アザバルは、マリヤム・トゥザニ監督の長編デビュー作「モロッコ、彼女たちの朝」('19年/モロッコ・仏・ベルギー)に続く主演で、ドゥニ・ヴィルヌーヴ 監督 「
「青いカフタンの仕立て屋」●原題:LE BLEU DU CAFTAN●制作年:2022年●制作国:フランス/モロッコ/ベルギー/デンマーク●監督:マリヤム・トゥザニ●製作:ナビール・アユーシュ●脚本:マリヤム・トゥザニ/ナビール・アユーシュ●撮影:ビルジニー・スルデー●音楽:ナシム・ムナビーヒ●時間:122分●出演:ルブナ・アザバル/サーレフ・バクリ/アイユーブ・ミシウィ●日本公開:2023/06●配給:ロングライド●最初に観た場所:新宿武蔵野館(23-07-20)((評価:★★★★☆)



中国系移民のエヴリン(ミシェル・ヨー)は、自身が経営するコインランドリーが破産寸前で、しかも国税局から監査が入り、税金の申告をやり直さなければならなくなったという問題や、頼りにならない夫ウェイモンド(キー・ホイ・クァン)、反抗的な娘ジョイ(ステファニー・スー)、老齢で車椅子が必要な上に最近ボケてきた父親ゴンゴン(ジェームズ・ホン)といった家族の問題など、数多くのトラブル
を抱えていた。疲れ果てた彼女の前にある日、夫に乗り移った"別の宇宙(ユニバース)の夫"が現れ、「全宇宙にカオス
をもたらそうとしている強大な悪ジョブ・トゥパキを倒せるには君だけだ」と彼から告げられて、世界の命運を託されてしまう。彼女は"無限の多元宇宙(マルチバース)"に飛び込み、カンフーの達人の"別の宇宙のエヴリン"の力を得て、マルチバースの脅威ジョブ・トゥパキと戦うこととなるが、ジョブ・トゥパキの正体は"別の宇宙の自分の娘"だった―。

2022年制作のダニエルズ(ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート)監督よる「異次元間アクション映画(通称「エブエブ」)。主演は香港アクシ
ョン映画の華として活躍し、「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」('97年/英・米)、「
どうして今このメンバー?とも思える組み合わせですが、先月['23年3月]発表の第95回アカデミー賞において、作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞、編集賞の計7部門を受賞し、この3人ともが演技賞を受賞したことになります(主演男優賞は「ザ・ホエール」のブレンダン・フレイザ)。
アカデミー賞受賞決定の直後に観ました。そんなスゴイ作品かなあというのはありましたが、話は強引ながらも勢いがあり、乗せられて観てしまいました(フツーに娯楽映画として観たということか)。ミシェル・ヨー演じるエヴリンの、現実生活の苦しさをぶっ飛ばすキレキレのアクションは「グリーン・デスティニー」での彼女を髣髴させ、キー・ホイ・クァンも、一時俳優業から武術指導のアシスタントに転じていただけに、なかなかのアクションでした。共にCGは使っていないそうです(ミシェル・ヨーの小指での腕立て伏せのシーンはCGだと思うが)。
人生をカオスと捉え、マルチバースの世界にそれを反映させているといった感じでしょうか(監督のダニエルズは「湯浅政明や今敏、宮崎駿などといった、日本のアニメ監督からインスピレーションを受けて作った」とコメントしている)。例えばエヴリンには、カンフーマスターであったり女優として成功するなど別宇宙での彼女が沢山いるといった具合です(ミシェル・ヨーの過去に出演したカンフー映画や、国際的な映画祭での実際の映像などを使っている。映画自体は低予算映画で、2023年・第38回「インディペンデント・スピリット賞 作品賞」を受賞している)。SFのスタイルを借りつつ、女性とマイノリティを励ます映画にもなっています。
一方で、観終わってみれば、徹底した「現実逃避」映画ともとれ、要は、「母と娘」の関係の解(ほつ)れとその修復という古典的・感情的テーマを、大袈裟なマルチバースという枠組みの中で展開しただけに過ぎなかったという見方もできなくはないと思います(この点が「そんなスゴイ作品かなあ」という印象に繋がる)。
この作品でアジア人女優として初めてアカデミー主演女優賞を受賞した(エントリーされること自体がアジア人女優初だった)ミシェル・ヨー(楊紫瓊・1962年生まれ)は、その前にゴールデングローブ賞(今年['23年]1月)でも主演女優賞を受賞していて、その時のスピーチで「昨年私は60歳を迎えた」「女性は年齢の数字が大きくなればなるほど、機会に恵まれることは少なくなる」と女性の年齢による機会損失について訴えていましたが、アカデミー賞の授賞式のスピーチでもオスカー像を掲げ、「これは希望と可能性の印です。夢が叶う証です。そして女性のみなさん、『あなたはもう盛りを過ぎた』なんて誰にも言わせてはなりません」と語ったことが、世界的に大きな反響を呼びました。
その彼女に、来月['23年5月]のカンヌ国際映画祭のオフィシャルディナーの場にて、「ウーマン・イン・モーション」アワードが授与されることが今月['23年4月]決定しました。2015年に発足した「ウーマン・イン・モーション」アワードは、女性に対するコミットメントや取り組みを称えるもので、アジア人では2019年のコン・リー以来2人目の授賞になります。
ていなかったと思います。作品賞や監督賞はあっても、俳優だけはノミネートされなかった。ジョアン・チェンやコン・リーなど、私より先に活躍していた美しい女優たちは、本来ならアカデミー賞にノミネートされているべきでした。人種のせいなのか? 私はそうだと思います。しつ
こく言いたくはないですが、ただ『前に進みましょう』と言いたい。いまこそ前進するときです。素晴らしい映画の魅力とは、文化を超え、時代を超え、言語を超えるところにあると思います」と述べています。
ミシェル・ヨーは1985年、初主演作「レディ・ハード 香港大捜査線」('85年/香港)でアクション映画に初挑戦、バレエ仕込みの身体表現で激しいカンフーアクションや危険なスタントシーンを演じ、レディ・アクションスターの先駆けとなって、「皇家戦士」('86年/香港)では真田広之と共演、「ポリス・ストーリー3」('92年/香港)でジャッキー・チェンと共演し「走行中の貨物列車の屋根にオートバイで飛び乗る」というスタントを代役なしで演じています(ジャッキー・チェンをして「自分の見せ場を奪われるから競演NG」と言わしめたとか)。映画のラストにジャッキー・チェン作品ではお馴染みのNG集があり、1回では成功していないことが窺えますが、これ、ハリウッド映画だったら、スタントを使わないこと自体がNGでしょう。「ジェームズ・ボンド」シリーズ第18作「007トゥモロー・ネバー・ダイ」('97年/英米)(公開時タイトルは「トゥモロー・ネバー・ダイ」)で
35歳で「ミシェル・ヨー
」(それまではミシェル・キングまたはミシェル・カーンだった)としてハリウッドへ進出したのは、"満を持して"といった感じだったでしょうか。中国国外安保隊
員ウェイ・リンという役柄で、ジェームズ・ボンド役のピアース・ブロスナンと対等に渡り合う「戦うボンドガール」として注目を浴びました。ボンドと一緒に手錠をかけられた
状態でビルからジャンプするシーンや、そのままバイクで市中を駆け抜けるシーンは派手で、格闘シーンもよく脚が上がっていてキレキレと言う感じでした。ストーリーは大したことなかったものの、優れたSF・ファンタジー・ホラー作品に送られる「サターン賞」で4つのノミネートを受け、ピアース・ブロスナンが「
キー・ホイ・クァンで、ゴールデングローブ賞助演男優賞、アカデミー助演男優賞のほかに、第88回「ニューヨーク映画批評家協会賞 助演男優賞」、第57回「全米批評家協会賞 助演男優賞」、第48回「ロサンゼルス映画批評家協会賞 助演男優賞」など多くの賞を受賞しています。「現実世界の頼りない夫」としてのハリウッド映画における従来のアジア人のパターナルな演技と、「"別の宇宙(ユニバース)の夫"」としてのヒロイックな演技(まるでブルース・リー(!?))の使い分けが際立っていたことが評価されたのでしょう。
さらに、ボケているのに頑固な父親ゴンゴンを演じたジェームズ・ホンは1929年生まれの今年94歳。ジェニファー・ジョーンズ、ウィリアム・ホールデン主演の香港を舞台とした映画「慕情」('55年)の頃からノンクレジットですが映画に出ており、「砲艦サンパブロ」('66年)のヴィクター・スー役などもありましたが、「
とは、ハリソン・フォードは、この映画に出ているキー・ホイ・クァンと「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」('84年/米)で共演したほかに、ジェームズ・ホンとも「ブレードランナー」で共演したことがあるということか。
「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」●原題:EVERYTHING EVERYWHERE ALL AT ONC●制作年: 2022年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ダニエルズ(ダニエル・クワン/ダニエル・シャイナート)●撮影:ラーキン・サイプル●音楽:サン・ラックス●時間:140分●出演:ミシェル・ヨー/キー・ホイ・クァン/ステファニー・スー(許瑋倫)/ジェイミー・リー・カーティス/ジェームズ・ホン/タリー・メデル/ジェニー・スレイト/ハリー・シャム・Jr/ビフ・ウィフ/スニータ・マニ/アーロン・ラザール/オードリー・ヴァシレフスキ/ピーター・バニファズ●日本公開:2023/03●配給:ギャガ●最初に観た場所:TOHOシネマズ西新井(シアター1)(23-03-15)(評価:★★★☆)
「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」●原題:TOMORROW NEVER DIES●制作年:1997年●制作国:イギリス・アメリカ●監督:ロジャー・スポティスウッド●製作:マイケル・G・ウィルソン/バーバラ・ブロッコリ●脚本:ブルース・フィアスティン●撮影:ロバート・エルスウィット●音楽:デヴィッド・アーノルド(主題歌:「トゥモロー・ネヴァー・
ダイ」シェリル・クロウ)●原作:イアン・フレミング●時間:119分●出演:ピアース・ブロスナン/ジョナサン・プライス/ミシェル・ヨー/テリー・ハッチャー/ジョー・ドン・ベイカー/リッキー・ジェイ/ゲッツ・オットー/デスモンド・リュウェリン/ヴィンセント・スキャベリ/ジョフレー・パーマー/コリン・サーモン/サマンサ・ボンド/ジュディ・デンチ●日本公開:1998/03●配給:UIP(評価:★★★☆)
「ポリス・ストーリー3」●原題:警察故事3/超級警察(英題:POLICE STORY III:SUPER COP)●制作年:1992年●制作国:香港●監督:スタンリー・トン(唐季禮)●製作:ウィリー・チェン/エドワード・タン●脚本:エドワード・タン/フィレー・マー/リー・ウェイイー●撮影:ラム・ウォクワー(アンディ・ラム(林國華))●音楽:ジョナサン・リー(李宗盛)●時間:96分●出演:ジャッキー・チェン(成龍)/ミシェール・キング(ミシェル・ヨー(楊紫瓊))/マギー・チャン(張曼玉)/トン・ピョウ(董驃)/ユン・ワー(元華)/ケネス・ツァン(曾江)/ジョセフィーヌ・クー(顧美華)/ケルヴィン・ウォン(王霄)/フィリップ・チャン(陳欣健)/ロー・リエ(羅烈)●日本公開:1992/12●東宝東和(評価:★★★)

「小さき麦の花」(2022)
2011年、中国西北地方の農村。貧しい農家の四男・ヨウティエ(ウー・レンリン)は、三男ヨウトン(チャオ・トンピン)から厄介者として扱われながら兄の家で暮らしていた。働き者だが未だ独身で、兄は自分の息子の縁談話の前に(世間体を気にして
)彼に縁談話を持ち掛ける。相手の女性クイイン(ハイ・チン)は、体
に障碍があり、すぐ小便をもらしてしまい、左半身も不自由である。今まで結婚相手もなく、兄夫婦にいじめられて生きてきた。「どう?二人はお似合いよね」と仲介者は兄たちから200元の金を受け取り、本人たちが何も言わないまま、二人の結婚は決まる。村には空き家が目立ち、耕地は荒れていた。ロバ1頭が唯一の財産の新婚夫婦は、空き家に居を構える。農地を耕し、小麦の種を蒔き、野菜を育て、そうして不器用ながらも互いに思いやって慎ましく生きるが、やがて農村改革によって住んでいた空き家を追い出されることになる。立ち退きの補償金を元手にするなどして、二人だけで自分たちの家を建てるが―。
「僕たちの家(うち)に帰ろう」('14年/中国)のリー・ルイジュン(李睿珺)監督による2022年作品で、家族から厄介者扱いされていた男女が夫婦となり、社会の変革などに翻弄されながらも絆を深めていく、第72回「ベルリン国際映画祭」のコンペティション部門に出品されたドラマ映画です(原題は「隐入尘烟」で「埃の中に隠れる」という意味、英題「Return to Dust」は「埃に還る」なので、ほぼ原題に近い)。
とにかく徹底したリアリズム。ノーメイク(汚れメイク?)でクイインを演じたハイ・チン(海清)は、もう女優には見えず、このあたりが張藝謀(チャン・イーモウ)の「
武仁林(ウー・レンリン)/海清(ハイ・チン)
ヨウティエを演じたウー・レンリン(武仁林)に至っては、映画の舞台となった甘粛省の村で実際に農業に従事している人物だそうで、そのため、一挙手一投足に芝居ではないリアルさがありました。クイイン役のハイ・チンは、本作の出演に当たってウー・レンリンの家に10カ月滞在し役作りに励んだことで、こちらも農民の動作が体にしみ込んでいました。
季節が移って麦が成長し、卵が孵(かえ)り、ヨウティエ、クイインの夫婦の関係も深化していきます。最初はぎこちなかった二人の心の距離が徐々に縮んでいく様が、繊細に描き出されていました。
映像美的にも、先祖に結婚を報告した後、砂丘の頂上に並んで座った二人が会話を交わすシーンや、卵を孵化させる段ボール箱から発せられる光がイルミネーションのように二人の顔を照らすシーン、屋根の上で二人が体を結んで寝るシーンなど、美しい場面をいくつもあり、リアリズム映画であると同時にファンタジー映画にもなっていると思います。
瓦造りから始めて、手作りで家を建てるというのもスゴいが)ブルドーザーであっけなく壊され、 補償金の1万5000元が支払われますが、それを受け取ったのはヨウティエではなかった―。
「小さき麦の花」●原題:隐入尘烟/RETURN TO DUST●制作年: 2022年●制作国:中国●監督・脚本:リー・ルイジュン(李睿珺)●撮影:ワン・ウェイホア●音楽:ペイマン・ヤザニアン●時間:133分●出演:ウー・レンリン(武仁林)/ハイ・チン(海清)/ヤン・クアンルイ(杨光锐)/チャオ・トンピン/ワン・ツァイラン/ワン・ツイラン/シュー・ツァイシャ/リウ・イーフー/チャン・チンハイ/リー・ツォンクオ/ワン・チールー●日本公開:2023/02●配給:マジックアワー=ムヴィオラムヴィオラ●最初に観た場所:ヒューマントラストシネマ有楽町(シアター2)(23-02-17)((評価:★★★★)

人生を謳歌していた85歳のアンドレ(アンドレ・デュソリエ)は脳卒中で倒れて体が不自由になり、娘のエマニュエル(ソフィー・マルソー)に人生を終わらせる手助けをしてほしいと頼む。戸惑う彼女は父の考えが変わることを期待しつつも、合法的な安楽死を支援するスイスの協会と連絡を取り合う。一方、リハビリによって順調に回復するアンドレは積極的に日々を楽しみ、生きる希望を取り戻したかのようだった。しかし、彼は自ら定めた最期の日を娘たちに告げ、娘たちは葛藤しながらも父の決断を尊重しようとする―。
長女エマニュエルを「
さらに、オゾン監督作の常連シャーロット・ランプリング(「まぼろし」の主演でもあった)がアンドレの妻、エマニュエル姉妹の母を演じ、安楽死を支援する協会から派遣されてくるスイス人女性(ちょっと怪しげ?)を、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の「マリア・ブラウンの結婚」('79年/西独)のドイツ人俳優ハンナ・シグラが演じています(年齢を経ていて最初は分からなかった)。
因みに、フランソワ・オゾン監督はゲイであることを公言していますが、この映画のアンドレ・デュソリエ演じる父親アンドレもゲイであり(その元カレが"クソ野郎"と呼ばれていたジェラルドだが、彼もアンドレを愛している)、シャーロット・ランプリング(1946年生まれ)演じる母親はゲイだとわかっていても夫を愛していたから別れなかったという設定のようです(娘ソフィー・マルソーが母がシャーロット・ランプリングになぜ別れなかったのか問い詰める場面がある)。シャーロット・ランプリングの常に憂いを秘めた表情に、そのあたりの経緯が込められていたでしょうか。
ソフィー・マルソー(1966年生まれ)の演技も悪くなかったです。「
「すべてうまくいきますように」●原題:TOUT S'EST BIEN PASSÉ(英:EVERYTHING WENT FINE)●制作年: 2021年●制作国:フランス/ベルギー●監督・脚本:フランソワ・オゾン●製作:エリック・アルトメイヤー/ニコラス・アルトメイヤー●撮影:イシャーム・アラウィエ●音楽:ニコラス・コンタン●原作:エマニュエル・ベルンエイム●時間:113分●出演:ソフィー・マルソー/アンドレ・デュソリエ/ジェラルディーヌ・ペラス/シャーロット・ランプリング/エリック・カラヴァカ/ハンナ・シグラ/グレゴリー・ガドゥボワ/ジャック・ノロ/ジュディット・マーレ/ダニエル・メズギッシュ/ナタリー・リシャール●日本公開:2023/02●配給:キノフィルムズ●最初に観た場所:ヒューマントラストシネマ有楽町(シアター2)(23-02-17)(評価:★★★★)

1923年、アイルランドの小さい平和な孤島・イニシェリン島に暮らすパードリック(コリン・ファレル)はある日、親友のコルム(ブレンダン・グリーソン)から突然絶縁を告げられる。「ただお前が嫌いになった」と言い放たれ、長年友情を育んできたはずだった彼が何故突然そんなことを言い出したのか理解出来ないパードリックは、賢明な妹シボーン(ケリー・コンドン)や風変わりな隣人ドミニク(バリー・コーガン)の力を借りて事態を好転させようとするが、コルムから「これ以上自分に関わると自分の指を切り落とす」と恐ろしい宣言をされてしまう―。
ブラック・コメディ映画とされていますが、確かに二人のオジサンによる喧嘩はユーモラスでもあり、「陽気な悲劇」と言えるかも。ただし、個人的にはブラックの要素の方が強かった気がします。特に、コルムが実際に自分の指を切り落としてパードリックの家の扉に投げつけたりした辺りから、ホラー的にさえなってきました(指切ってしまったら、楽器の演奏ができなくなって、パードリックとの関係を断ってまでも自分の残りの人生を注ごうとしている音楽創作にも差し障るのでは? そう考えると、ある意味で狂気である)。
ちょっとしたことから始まる人と人との関係の齟齬を描いた作品ともとれます。舞台である架空の島イニシェリン島の対岸のアイルランド本土では内戦の戦火が絶えず、砲撃音が平和な孤島にも聞こえてきますが、評論家と思しき人たちによれば、まさに二人の諍いがその象徴であるとのことです。
結局、"精霊"って"死神"のことだったのか。実際、その"悪魔"を体現したような老女が出てきて、二つの死を予言し、この辺りはミステリっぽい感じも。二つの死の内の一つはロバのジェニーだったけれど(この映画、ロバだけでなく、カラス、馬、乳牛、ボーダーコリー犬など様々な動物を象徴的に使っている)、もう一つの死は...。
島の唯一の知性の象徴は、パードリックの妹のシボーン(ケリー・コンドン)なのでしょう(バリー・コーガン演じる風変わりな隣人ドミニクも意外と賢かったが)。パードリックとコルムが芸術の遺産について口論を繰り広げ、無学者のパードリックが口負かされた後、シボーンはコルムが言ったモーツァルトの話は17世紀ではなく18世紀の話だと彼の間違いを冷静に指摘して颯爽と島を去っていきました(コルムの芸術的素養もそれほどのものではないということだろう)。そして、残された男たちはいつまで争いを続けるのか。「戦争は女の顔をしていない」という言葉を思い出しました(やっぱり、この話は戦争のメタファー?)

2022年・第79回「ヴェネツィア国際映画祭」においてコリン・ファレルが「ボルピ杯(最優秀男優賞)」を受賞し(彼はアイルランド人である)、さらにコリン・ファレルは
「イニシェリン島の精霊」●原題:THE BANSHEES OF INISHERIN●制作年: 2022年●制作国:アイルランド・イギリス・アメリカ●監督・脚本:マーティン・マクドナー●製作:グレアム・ブロードベント/ピーター・チャーニン/マーティン・マクドナー●撮影:ベン・デイヴィス●音楽:カーター・バーウェル●時間:109分●出演:コリン・ファレル/ブレンダン・グリーソン/ ケリー・コンドン/ バリー・コーガン●日本公開:2023/01●配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン●最初に観た場所:日比谷・TOHOシネマズシャンテ(スクリーン1)(23-02-05)(評価:★★★☆)


2021(令和3)年・第18回「本屋大賞」(翻訳小説部門)第1位作品。
ノースカロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられたときから、カイアはたったひとりで生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女を置いて去ってゆく。以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく―。
オリヴィア・ニューマン監督の起用で昨年[2022年]に映画化され、女性監督だからやはり女性映画っぽくなるのだろうと思いましたが、予想どおりでした。原作は、幼いころから事件が起きるまでの少女の歩み(ドラマ部分とも言える)と、事件が起きた後の捜査の進捗や裁判の様子(ミステリ部分とも言える)が、あざなえる縄のように交互に描かれていますが、映画はほとんど少女の生きざまと成人するまでを中心に描いていて、特に、成人してから恋愛の方に重点が置かれています。ただ、それが何だか「学園ドラマ」を観ているような感じで、深まりがないまま話がだらだらと続く印象を受けました。
ミステリ部分ももっと描いてほしかったように思います。深夜でもバスは走っているのだなあ(高速バスみたいな路線バスか)。映像で再現する必要はなですが、省き過ぎです。この監督、ミステリには関心がないのかな。
沼地の自然は美しく撮っていて、それはそれで良かったのですが、ドラマ部分含め全体に明るすぎる印象で、少女の沼地での生活や服装、身の回りなども小綺麗すぎて、原作の重くてダークなイメージとの間にギャップを感じました。Amazonプライムで有料視聴したのですが、原作の評価★★★★に対して、映画は評価★★★となりました。
「ザリガニの鳴くところ」●原題:WHERE THE CRAWDADS SING●制作年:2022年●制作国:アメリカ●監督:オリヴィア・ニューマン●製作:リース・ウィザースプーン/ローレン・ノイスタッタ●脚本:ルーシー・アリバー●撮影:ポリー・モーガン●音楽:マイケル・ダナ●原作:ディーリア・オーウェン●時間:126分●出演:デイジー・エドガー=ジョーンズ/テイラー・ジョン・スミス/ハリス・ディキンソン/マイケル・ハイアット/スターリング・メイサー・Jr/デヴィッド・ストラザーン/ジェイソン・ワーナー・スミス/ギャレット・ディラハント/アーナ・オライリー/エリック・ラディン●日本公開:2022/11●配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(評価:★★★)


第1話「名探偵アティカス・ピュント」...「名探偵アティカス・ピュント」シリーズで人気の推理作家アラン・コンウェイ(コンリース・ヒル)が、最新作『カササギ殺人事件』を書き上げて筆を折る。担当編集者スーザン(レスリー・マンヴィル)は、ドイツ出張から帰り週末に早速その原稿を読み進めるが、肝心の最終章が無い。上司であるクローヴァー・ブックス社の社長チャールズ(マイケル・マロニー)を訪ねると、アランが殺害されたとの知らせが彼女を待っていた―。
第2話「アランの真実」...『カササギ殺人事件』の最終章を捜すべく、スーザンはウッドブリッジを訪れる。近くに住む妹ケイティと久しぶりに再会した後、アランの弁護士や彼の恋人ジェイムズ(マシュー・ビアード)を訪ねるが原稿は見つからない。一方、名探偵アティカス・ピュント(ティム・マクマラン)は、助手のフレイザー(マシュー・ビアード、二役)と共に、サクスビー・オン・エイヴォンを訪れる。パイ屋敷で家主のマグナスが殺されたのだ。ピュントは、メアリの死とマグナスの死に関連があるとみる―。
第3話「疑惑の連鎖」...チャールズと共にシティワールド社を訪れたスーザンは、クローヴァー・ブックス社の買収の話を進めるために、早くCEOに就く決意を固めてほしいとせかされる。しかし、彼女はアランの消えた最終章と、彼を殺した犯人捜しに夢中だった。一方、ピュントはパイ屋敷で起きた連続死の真相を追っていた。転落死した家政婦メアリは息子ロバートと仲が悪く、パイ屋敷の家主マグナスは、周囲の人たちから恨みを買っていたことも判明する―。
第4話「パイ屋敷の暗い過去」...約2年前、ケイティは久しぶりにウッドブリッジでアランに遭遇しお茶に誘われる。カフェでアランに心を許した彼女は、家族の話を語りだす。そして現在、今後の身の振り方に迷うスーザンは過去に家族を捨てた父親に会いに行くが、やはり許すことが出来ない。一方、体調が悪化したピュントは、村の診療所に運ばれ、そこでメアリを事故死と判定した医師の話を聞く―。
第5話「偽りの真相」...スーザンは匿名で送られてきた写真から、恋人のアンドレアス(アレクサンドロス・ログーテティス)がアランの死に関わっているのではと疑い始め、彼に真相を問いただす。一方、ピュントに問い詰められたパイ屋敷の庭師ブレントは、屋敷から盗まれた銀のお宝2点を湖の傍で見つけ、うち一つを骨董品店に売ったと証言。また、ブラキストン一家の住んでいた家を訪れたピュントは、メアリの日記を発見する―。
第6話「笑顔の別れ」...スーザンは、出版社を突然辞めたジェマイマに会い、新作の原稿は木曜のディナーの席でチャールズが受け取ったのではなく、スーザンが出張でドイツにいた水曜に郵送で出版社に届いていたことを知る。そして、最終作のタイトルが『カササギ殺人事件』でなければならなかった理由を突き止める。一方、ロバートの父親から話を聞いたピュントは、事件の全貌を明らかにする―。
「週刊文春ミステリーベスト10」「ミステリが読みたい!」「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」の各海外部門4冠の達成や、「本屋大賞」翻訳小説部門第1位に選ばれるなどしたアンソニー・ホロヴィッツ原作の推理小説『
名探偵アティカス・ピュント役は、「刑事フォイル」の後半シリーズでに出ていたティム・マクマラン、人気作家アラン・コンウェイ役は、ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」でヴァリス役を演じたコンリース・ヒル、彼の担当編集者ミス・スーザン役は「ザ・クラウン」でマーガレット王女役を演じたレスリー・マンヴィルで、原作がいい上に、この3人の演技が手堅かったように思います。
以上3人やスーザンの恋人のアンドレアスなどの重要な役どころは別ですが、その他の多くの役は、同じ俳優が現実の世界の登場人物と作中小説『カササギ殺人事件』の登場人物との二役を兼ねている趣向となっています。例えば、作家アラン・コンウェイの同性の愛人で、彼の相続人となる青年は、『カササギ殺人事件』の中では名探偵ピュントの冴えない助手であり(現実世界の本人は、コンウェイに勝手にモデルにされたことをぼやいている)、また、かつてスーザンとケイティの姉妹を捨て、今は病床にある父親は、『カササギ殺人事件』の中では、殺害されるパイ屋敷の家主といった具合です。この趣向が楽しめました。また、作家アラン・コンウェイが自分の周囲の人物を、その人物の幸不幸に関わらず、勝手に自作の登場人物のモデルにしていたこととも呼応します。
こうして改めて映像化作品を観ると、作中作『カササギ殺人事件』の謎解きに比べると、現実世界の方の殺人事件は動機やプロット的にやや弱いかなという感じですが、これ以上求めるのはちょっと贅沢でしょうか(アガサ・クリスティへのオマージュとしての色合いは作中作『カササギ殺人事件』の方において色濃いが、現実世界の方の殺人事件ではあまり感じられない)。

世界的歌姫のカット・ヴァルデス(ジェニファー・ロペス)は、新曲「マリー・ミー」を携え、大観衆の前で音楽界の超新星バスティアン(マルーマ)と華々しく結婚式を挙げる予定だった。しかしショーの直前、婚約者バスティアンの浮気がスクープされる。失意のままステージに登壇した彼女は、観客の中から一人の男を指名、突然プロポーズするという驚きの行動に出る。新たなお相手は、平凡な数学教師とあって、前代未聞のギャップ婚に取り巻きのスタッフやマスコミ、ファンは大混乱となり、早くも離婚の噂が噴出する始末。お互いを知るところから始まった結婚生活は前途多難な道のりだった。そんな矢先、バスティアンとのデュエット曲だった「マリー・ミー」がグラミー賞にノミネートされたことで、カットとバスティアンの関係は、再び親密になっていくのだった―。
飯田橋の名画座ギンレイホールの閉館最終上映の1本目、カット・コイロ監督の「マリー・ミー」('22年/米)は、女優で歌手でもあるジェニファー・ロペスが製作・主演を務め、ポップスターと平凡な数学教師の恋の行方を描いたラブストーリーで、原作はボビー・クロスビーの同名グラフィックノベル。見方によっては、ご都合主義的な能天気映画ですが(ラブコメって大体がそうだが)、ハリウッド映画流に泣かせどころのツボは押さえていました。
ジェニファー・ロペス自身の恋愛遍歴と重なるような虚実皮膜を地で行く設定が面白く、しかも、この映画が日本公開された月[2022年4月]に、一度破局した俳優のベン・アフレックと20年の歳月を超えて再び婚約したことを発表しており、彼女の人生のプロモーション映画のような印象もあります。
妻を亡くしたばかりの90歳のトム・ハーパー(ティモシー・スポ―ル)は、50年暮らした家を離れ、ローカルバスのフリーパスを利用してイギリス縦断の壮大な旅に出ることを決意する。 目指すは愛する妻と出会い、二人の人生が始まった場所。 行く先々で様々な人と出会い、トラブルに巻き込まれながらも、妻と交わしたある"約束"を胸に時間・年齢・運命に抗い旅を続ける―。
飯田橋ギンレイホールの閉館最終上映の2本目、ギリーズ・マッキノン監督の「君を想い、バスに乗る」('21 年/ 英)は、これも「マリー・ミー」とはまた違った意味で泣ける作品でした。
これって実話なのかなと思いましたが、脚本を手掛けたジョー・エインズワースが、彼の父と義父の「高齢者向けの無料バス乗車券を使ってどこに旅をするか」という会話から着想を得て作った物語だそうです。因みに、本作で主人公トムが目指すのはイギリス旅行者憧れの聖地"ランズエンド"です。
結局、ギンレイホールの最終上映作品は、今年['22年]公開された米・英の泣かせの2本だったということになります。この映画を観た先月[2022年11月]の27日(日)をもって同館は1974(昭和49)年の創業以来48年間の歴史に幕を閉じました。個人的には最後から3回目と2回目の上映を観たのですが、行った時は8割程度の入りだったのが、その次の回は立ち見が出ていて、最終回は、付近の地下鉄飯田橋駅の地下階段の一番下まで入場待ちの列でした(全員入れたのかなあ)。



東京。殺し屋の木村雄一(アンドリュー・小路)は、何者かに息子の渉(ケヴィン・アキヨシ・チン)を屋上から突き落とされ意識不明の重体になり、見舞いにやって来た父のエルダー(真田広之)に復讐する旨を伝える。一方、復帰したばかりの殺し屋のレディバグ(ブラッド・ピット)は引退したいと考えていたが、ハンドラーのマリア・ビートル(サンドラ・ブロック)により引き戻され東京発・京都行の高速列車(東海道新幹線)にあるブリーフケースを回収する任務を遂行するために乗り込むこととなる。一方、木村は、犯人であるプリンス(ジョーイ・キング)を殺そうとするも返り討ちに遭い、脅される形で彼女とブリーフケースを奪う協力をするハメになってしまう。中国マフィアから、誘拐されたホワイト・デス(マイケル・シャノン)の息子(ローガン・ラーマン)を救出したタンジェリン(アーロン・テイラー=ジョンソン)とレモン(ブライアン・タイリー・ヘンリー)は終点の京都まで彼の護衛と身代金の入ったブリーフケースの見張りをしていた。ところがレディバグがそれをこっそり盗み出し、降りようとしたところに彼に恨みを持つウルフ(ベニート・A・マルティネス・オカシオ)が乗り込んで来てしまい、戦闘に発展するも何とか彼を退けたが、この襲撃はブリーフケースとそれぞれの私情が絡む大騒動の始まりに過ぎなかった―。


原作の東北新幹線が東海道新幹線に変わったり、原作で中学生の男の子だった〈王子〉が少女に変わったり、原作では二人組の殺し屋の両方が死ぬのに映画では片方が生き残ったりしていますが、何よりも全体の雰囲気がポップなハリウッド調のアクション映画になっていて、ハリウッドスタイルに改変するとこうなるのか、という見方で鑑賞できて興味深かったです。
観終わった瞬間はまあそれでも面白かったなあという印象でしたが、時間の経過とともに印象が薄れていく映画(要するに"残らない映画")でもあるように思いました。でも、こうした映画は、観る側も、観ているときに楽しいかどうかで観に来ていると思うので、本来ならば星3つくらい(△評価)ですが、オマケで星3つ半(何とか○)にしました(子どもと一緒に観に行ったというのもある)。
因みに、原作では登場人物は全て日本人ですが、この映画では、木村の家族以外の登場人物は全て外国人で、米国では、所謂「ホワイトウォッシング」であるとの批判が出たそうです。背景は原作通り日本であるという設定を維持しつつ、登場人物は外国人ばかりで主要な配役を占めていることがそうした非難を強めたようで、配役一つとっても、米国ではなかなか難しい問題があるのだなあと思いました(この映画を観た日本人の多くは、真田広之とかが出ているので、むしろ一定の配慮がされていると思うのではないか)。
「ブレット・トレイン」●原題:BULLET TRAIN●制作年: 2022年●制作国:アメリカ・日本・スペイン●監督:デヴィッド・リーチ●製作:ケリー・マコーミック/デヴィッド・リーチ/アントワーン・フークア●撮影: ジョナサン・セラ●音楽:ドミニク・ルイス●時間:126分●出演:ブラッド・ピット/ジョーイ・キング/アーロン・テイラー=ジョンソン/ブライアン・タイリー・ヘンリー/アンドリュー・小路/真田広之/マイケル・シャノン/サンドラ・ブロック/ベニート・A・マルティネス・オカシオ/ローガン・ラーマン/ザジー・ビーツ/マシ・オカ/福原かれん●日本公開:2022/09●配給:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント●最初に観た場所:TOHOシネマズ日比谷(22-09-26)(評価:★★★☆) 同日上映「

TOHOシネマズ日比谷(2018年オープン)
SCREEN 7 151+(2) 11.8×4.9m VIVEオーディオ

新婚旅行中の夫婦、そして彼らの招待客たちを乗せた豪華客船がナイル川を進んでいた。そんな中、船内で乗客が次々と何者かによって殺されていく。偶然船に乗っていた名探偵・ポアロは、謎に包まれたこの事件を解明し、犯人を探し出そうと奔走する―。

国:アメリカ●監督:ケネス・ブラナー●製作:ケネス・ブラナー/サイモン・キンバーグ/リドリー・スコット/マーク・ゴードン/ジュディ・ホフランド●脚本:マイケル・グリーン●撮影:ハリス・ザンバーラウコス●音楽:パトリック・ドイル●原作:アガサ・クリスティ●時間:127分●出演:トム・ベイトマン/アネット・ベニング/ケネス・ブラナー/ラッセル・ブランド/アリ・ファザル/ドーン・フレンチ/ガル・ガドット/アーミー・ハマー/ローズ・レスリー/エマ・マッキー/ソフィー・オコネドー/ジェニファー・ソーンダース/レティーシャ・ライト●日本公開:2022/02●配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン●最初に観た場所:上野・TOHOシネマズ上野(シアター3)(22-03-03)(評価:★★★)

TOHOシネマズ上野




「ナイル殺人事件」●原題:DEATH ON THE NILE●制作年:1978年●制作国:イギリス●監督:ジョン・ギラーミン●製作:ジョン・ブラボーン/リチャード・グッドウィン●脚本:アンソニー・シェーファー●撮影:ジャック・カーディフ●音楽:ニーノ・ロータ●原作:アガサ・クリスティ「ナイルに死す」●時間:140分●出演:ピーター・ユスティノフ/ミア・ファロー/ベティ・デイヴィス/アンジェラ・ランズベリー/ジョージ・ケネディ/オリヴィア・ハッセー/ジ
ョン・フィンチ/マギー・スミス/デヴィッド・ニーヴン/ジャック・ウォーデン/ロイス・チャイルズ/サイモン・マッコーキンデール/ジェーン・バーキン/サム・ワナメイカー/ハリー・アンドリュース●日本公開:1978/12●配給:東宝東和●最初に観た場所:日比谷映画劇場(78-12-17)(評価:★★★☆)

旧作「ウエスト・サイド物語」は、アカデミー賞の作品賞をはじめノミネートされた11部門中10部門を受賞していて(この中には作品賞、監督賞とともにジョージ・チャキリスとリタ・モレノがそれぞれ助演男優賞と助演女優賞を受賞、ロバート・ワイズは4年後に「
ボ」「クール」「マリア」など、映画の中で歌われる曲も多くの人を魅了しました。「AFIアメリカ映画100年シリーズ」の、2004年の「アメリカ映画主題歌ベスト100」では「雨に唄えば」「サウンド・オブ・ミュージック」と並んで3曲が選ばれ、また2006年の「ミュージカル映画ベスト」では「雨に唄えば」続いて第2位(第3位が「オズの魔法使」、第4位が「サウンド・オブ・ミュージック」)にランクインしています。」このミュージカル映画史上の"名作"とされるオリジナルへのスピルバーグ監督の挑戦が注目されました。
前作のアニタ役のリタ・モレノ(アカデミー賞助演女優賞受賞)が、白人と結婚したプエルトリコ移民で、トニーが働きポーランド系の若者が集まる店(前作の"ドグの店"に該当)の店主役で出ているのが嬉しいです(1931年生まれ。製作総指揮も務め、米国でこの映画が公開された翌日に満90歳になった)。でも、前作でネッド・グラスが演じたポーランド系移民のドグは、ナチスの迫害を逃れて米国に来たということが暗示されていたので、抜け落ちてしまった部分もあり、まあ新旧、一長一短というところでしょうか。
イク・ファイスト/ジョシュ・アンドレス/コリー・ストール/リタ・モレノブライアン・ダーシー●日本公開:2022/02●配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン●最初に観た場所:上野・TOHOシネマズ上野(シアター2)(22-03-03)(評価:★★★★)
「ウエスト・サイド物語」●原題:WEST SIDE STORY●制作年:1961年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・ワイズ/ジェローム・ロビンズ●製作:ロバート・ワイズ●脚本:アーネスト・レーマン●撮影:ダニエル・L・ファップ●音楽:レナード・バーンスタイン/デヴィッド・ニューマン●原作:アーサー・ローレンツ●時間:152分●出演:ナタリー・ウッド/リチャード・ベイマー/ジョージ・チャキリス/リタ・モレノ/ラス・タンブリン/サイモン・オークランド/ネッド・グラス●日本公開:1961/12●配給: ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:吉祥寺・テアトル吉祥寺(82-09-23)(評価:★★★★)
【2018年・米アカデミー賞授賞式】1962年にミュージカル映画「ウエスト・サイド・ストーリー」でアカデミー助演女優賞を受賞したリタ・モレノ。56年後の2018年アカデミー賞授賞式にプレゼンターとして、同じドレスで登場した(当時86歳)。


後に「タイタニック」('97年公開)に抜かれるまで1位の記録だった)、'89年公開の「最後の聖戦」も、同年公開の「バック・トゥ・ザ・フューチャー パート2」の94.0億円に及ばず2位と、このシリーズ作は何れも年間トップを取ってはいなかったんだなあと、やや意外な思いもします。「最後の聖戦」公開時に「シリーズ最終作」と銘打っていたように思いますが、その後「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」('08年)が作られています(2008年の年間興業収入57.1億円で第3位。この年の第1位は「崖の上のポニョ」の155億円)。
物語は聖杯伝説をベースにしており、手に入れれば願いはすべて叶うという聖杯を巡ってのナチス連中とインディたちの争奪戦。ナチスに誘拐された考古学者である父親(ショーン・コネリー)を救出に向かったインディも捉えられ...と、本来ならばもっとハラハラドキドキさせられるような展開になるところが、ハリソン・フォード演じるインディのおとぼけぶりに輪をかけるようなショーン・コネリー演じる父親のおとぼけぶりで、コメディ映画みたいになっていました。
インディは馬に乗って軍用列車を追いかけたり、ナチスの一味と殴り合い、撃ち合いしたりと相変わらずアクション面でも頑張っていますが、前作に比べると派手さがなく、テンポもイマイチ。最後は、聖杯の守り主みたいな騎士が出てき
てなかなかシュールに盛り上げてくれましたが(それにしてはその手前の仕掛けがやたらメカニックだったりもする)、「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」のラストと被ってしまい、結果的に「ショーン・コネリーがとぼけた父親役をやっている映画」という印象のみが強く残ってしまった気がします。但し、ショーン・コネリーはこの作品
における「007シリーズ」のジェームズ・ボ
ンドのパロディ的要素を含む役どころを気に入っていたようで(敵か味方か途中までよく分からないボンドガール的な女性が出てくるのは007へのオマージュか)、2006年に俳優業を引退宣言していますが、もし映画界に戻ってくるとしたら「インディ・ジョーンズ」に出られるときだけとも語っています。
因みに、ショーン・コネリーがジェームズ・ボンドのパロディ的要素を含む人物設定の役柄として出演している作品の代表的なものとしては、アメリカ海兵隊員の英雄率いるテロリストと、制圧する特殊部隊との攻防を描いたマイケル・ベイ監督によるアクション映画「ザ・ロック」('96年/米)があります。かつて敵に包囲された末に救援も得られずに部下を見殺しにされ、それに対して何の補償もない国に憤りを抱くハメル准将(エド・ハリス)が、14人の部下と共に化学兵器を奪取して、ザ・ロックと呼
ジ)がアメリカ海軍特殊部隊SEALsに同行して島に潜入することになりますが、潜入にあたってアルカトラズ島からの唯一の脱獄成功者で、現在は刑務所に幽閉中の元イギリス情報局秘密情報部(SIS)部員・兼SAS大尉のメイソン(ショーン・コネリー)の協力を得るというもの。結局、SEALsは敵の前に全滅し、残されたのは元脱獄囚メイソンと化学兵器オタクのグッドスピードのみという、まあアクション映画のパターナルな展開ですが、ショーン・コネリー演じるメイソンが元SIS(SISの中にMI6がある)ということで、ジェームズ・ボンドが意
識されていることは明白でした。この映画公開の前年にサンフランシスコに行き、ゴールデン・ゲート・ブリッジからアルカトラズ島を観てきたところだったので懐かしかったですが、映画自体はやや大味でした。エド・ハリスの叛乱はかなり理不尽であるし(最後、自分でも作戦変更した)、FBIでありながら戦闘経験のない化学兵器オタクであるはずのニコラス・ケイジ(アクション映画の主役は初)が、カーチェイスをはじめ結構アクションしていました。化学兵器である毒ガスの溶剤が洗濯用の洗剤に見えてしまったのが難でした。
因みに、ショーン・コネリー演じるメイソンが刑務所から移送された後に滞在をリクエストし、その豪華なスウィートルームをしばし満喫するホテルは、サンフランシ
スコの「ザ フェアモント サンフランシスコ」で、ここは映画「
アドバイザー」が映画の舞台となったり重要なシーンに登場したホテルの中で、ユーザーからの評価が高いものをランキ
ング化した「
インディ・ジョーンズ シリーズ3作の個人的評価は、第1作「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」が★★★☆、第2作「魔宮の伝説」が★★★★、第3作「最後の聖戦」が★★★といったところです(第3作が星3つと厳しいのは、絶対評価と言うより、ややシリーズの中での相対評価になっているためで、普通の娯楽映画としてみれば十分楽しめる作品であると言える)。因みに「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」は、2000年代に入って、ソフト化作品のタイトルに"インディ・ジョーンズ"と付けるようになっており、これはこの作品がインディ・ジョーンズ シリーズの第1作であることを知らない年代層が増えてきたためでしょうか。
(●シリーズ第4作「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」('08年)年から15年を経て、シリーズ第5作でその続編である「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」('23年)が公開された。ルーカスフィルムがウォルト・ディズニー・カンパニーに買収されて以来、初となるシリーズ作品で、監督はジェームズ・マンゴールド。これまでのシリーズで監督を務めていたスティーヴン・スピルバーグは監督を降板してプロデューサーを務めている。
1944年、インディ(ハリソン・フォード)はナチスが略奪した秘宝「ロンギヌスの槍」を友人の考古学者バジル(トビー・ジョーンズ)と共に奪還しようとする最中、ナチスの科学者フォラー(マッツ・ミケルセン)が偶然見つけたもう一つの秘宝「アルキメデスのダイヤル」の片割れを手に入れる。時が経ち1969年。アメリカがアポロ計画の月面着陸成功に沸く中、定年を迎え長年勤めた大学教授の職を退いたインディはバジルの娘ヘレナ(-フィービー・ウォーラー=ブリッジ)からかつて手に入れた「アルキメデスのダイヤル」の調査を依頼される。同じ頃、アポロ計画の協力者となっていたフォラーもインディに奪われたダイヤルを取り戻すべく、ナチスの残党と共に動き出そうとしていた―。
ハリソン・フォードも歳をとったが、同じく続投したインディの友人で、エジプトの発掘屋サラー役のジョン・リス=デイヴィスや、インディの妻・マリオン役のカレン・アレも同様。ついでに、シリーズ初出演、インディの旧友で潜水士レナルドの役のアントニオ・バンデラスの現在の姿も。ただし、1944年のシーンでは、撮影時79歳のハリソン・フォードがAIよって37歳のインディに"ディエイジング"されています。ただ、そのためか、最初からCG過剰感は否めず、ほとんど〈マンガ〉みたいな感じで観ていたら、終盤にきてタイムスリップして今度は〈SF〉に。アルキメデスが出てきて、これはもう〈SFマンガ〉と言っていいか(笑)。息もつかせぬ勢いで続くジェットコースタームービーと言いたいところであるし、実際に見栄えはそうではあるのだが、観ていてどこかでジェットコースター的展開に飽きている自分もいたというのが正直なところ。過去のシリーズ作品へのオマージュが所々にあり、それは懐かしかった。評価は★★★。)

●製作:フランク・マーシャル●脚本:ローレンス・カスダン●撮影:ダグラス・スローカム●音楽:ジョン・ウィリアムズ●原案:ジョージ・ルーカス/フィリップ・カウフマン●時間:115分●出


グロリア・カッツ●撮影:ダグラス
・スローカム●音楽:ジョン・ウィリアムズ●原案:ジョージ・ルーカス●時間:118分●出演:ハリソン・フォード/ケイト・キャプショー/キー・ホイ・クァン/アムリッシュ・プリ/ロイ・チャオ/ロシャン・セス/リック・ヤン/デヴィッド・ヴィップ/チュア・カー・ジ



「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」●原題:INDIAN INDIANA JONES AND THELAST CRUSADE●制作年:1989年●制作国:アメリカ●監督:スティーヴン・スピルバーグ●製作:ロバート・ワッツ●脚本:ジェフリー・ボーム●撮影:ダグラス・スローカム●音楽:ジョン・ウィリアムズ●製作総指揮:ジョージ・ルーカス●時間:127分●出演:ハリソン・
フォード/ショーン・コネリー デン/ホルム・エリオット/アリソン・ドゥーディ/ジョン・リス=デイヴィス/ジュリアン・グローヴァー/
リヴァー・フェニックス/マイケル・バーン/ケヴォルク・マリキャン/リチャード・ヤング/ロバート・エディスン●日本公開:1989/07●配給:パラマウント・ピクチャーズ●最初に観た場所:歌舞伎町・新宿プラザ劇場(89-07-30)(評価:★★★)

リアム・フォーサイス/デヴィッド・モース/マイケル・ビーン/ザンダー・バークレー/ラルフ・ペデュート/デヴィッド・ボウ/ヴァネッサ・マーシル/ジェームズ・カヴィーゼル/ドワイト・ヒックス/ジョン・C・マッギンリー/ジョン・ラフリン/アンソニー・クラーク/デヴィッド・グラント/トニー・トッド/ボキーム・ウッドバイン/ダニー・ヌッチ/ショーン・スケルトン/スティーヴ・ハリス/インゴ・ノイハウス/グレゴリー・スポールダー/ブレンダン・ケリー/レイモンド・クルス/マーシャル・R・ティーグ/フィリップ・ベイカー・ホール/スタンリー・アンダーソン/スチュアート・ウィルソン/ハワード・プラット/ハリー・ハンフリーズ/レオナルド・マクマハン/クレア・フォーラニ/トッド・ルイーゾサム・ホイップル●日本公開:1996/09●配給:ブエナ・ビスタ・インターナショナル・ジャパン(評価:★★★)
「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」●原題:INDIANA JONES AND THE DIAL OF DESTINY●制作年:2023年●制作国:アメリカ●監督:ジェームズ・マンゴールド●製作:スティーヴン・スピルバーグ/キャスリーン・ケネディ/フランク・マーシャル/サイモン・エマニュエル●音楽:ジョン・ウィリアムズ●原案:ジョージ・ルーカス/フィリップ・カウフマン●時間:154分●出演:ハリソン・フォード/フィービー・ウォーラー=ブリッジ/アントニオ・バンデラス/ジョン・リス=デイヴィス/シャウネット・レネー・ウィルソン/トーマス・クレッチマン/トビー・ジョーンズ/ボイド・ホルブルック/オリヴィエ・リヒタース/イーサン・イシドール/マッツ・ミケルセン●日本公開:2023/06●配給: ウォルト・ディズニー・ジャパン(評価:★★★)![ジョンとメリー [VHS].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%A8%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%83%BC%20%5BVHS%5D.jpg)
![ジョンとメリー [DVD].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%A8%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%83%BC%20%5BDVD%5D.jpg)

![卒業 [DVD] L.jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E5%8D%92%E6%A5%AD%20%5BDVD%5D%20L.jpg)
マンハッタンに住む建築技師ジョン(ダスティン・ホフマン)のマンションで目覚めたメリー(ミア・ファロー)は、自分がどこにいるのか暫くの間分からなかった。昨晩、独身男女が集まるバーで2人は出会い、互いの名前も聞かないまま一夜を共にしたのだった。メリーは、整頓されたジョンの家を見て女の影を感じる。ジョンはかつてファッションモデルと同棲していた過去があり、メリーはある有力政治家と愛人関係にあった。朝食を食べ、昼食まで共にした2人は、とりとめのない会話をしながらも、次第に惹かれ合っていくが、ちょっとした出来事のためメリーは帰ってしまう―。
脚本は「シャレード」('63年)の原作者ジョン・モーティマーですが、構成の巧みさもさることながら、演じているダスティン・ホフマンとミア・ファローがそもそも演技達者、とりわけダスティン・ホフマン演じるジョンの、そのままメリーに居ついて欲しいような欲しくないようなその辺りの微妙に揺れる心情が可笑しく(ジョンの方に感情移入して観たというのもあるが)ホントにこの人上手いなあと思いました(でも、ミア・ファローも良かった)。
最後に互いの気持ちを理解し合えた2人が、そこで初めて「ぼくはジョンだ」「私はメリーよ」という名乗り合う終わり方もお洒落(その時に大方の日本人の観客は初めて、そっか、2人はまだ名前も教え合っていなかったのかと気づいたのでは。アメリカ人だったら普通は最初に名乗るけれど、アメリカ人が見たらどう感じるのだろうか)。観た当時は、これが日本映画だったら、もっとウェットな感じになってしまうのだろうなあと思って、ニューヨークでの一人暮らしに憧れたりもしましたが、逆に、ニューヨークのような大都会で恋人も無く一人で暮らすということになると、(日本以上に)とことん"孤独"に陥るのかも知れないなあとも思ったりして。
そうした大都会での孤独をより端的に描いた作品が、ダスティン・ホフマンがこの作品の前に出演した同年公開のジョン・シュレシンジャー(1926-2003/享年77)監督の「真夜中のカーボーイ」('69年)であり、ジョン・ヴォイトが、"いい男ぶり"で名を挙げようとテキサスからニューヨークに出てきて娼婦に金を巻き上げられてしまう青年ジョーを演じ、一方のダスティン・ホフマンは、スラム街に住む怪しいホームレスのリコ(一旦は、こちらもジョーから金を巻き上げる)役という、その前のダスティン・ホフマンの
主演作であり、彼自身の主演第1作だったマイク・ニコルズ監督の「卒業」('67年)の優等生役とはうって変った役柄を演じました(「卒業」で主人公が通うコロンビア大学もニューヨーク・マンハッタンにある)。
映画デビューした年に「卒業」でアカデミー主演男優賞ノミネートを受け(この作品、今観ると「サウンド・オブ・サイレンス」をはじめ「スカボロ・フェアー」「ミセス・ロビンソン」等々、サイモン&ガー
ファンクルのヒット曲のオン・パレードで、そちらの懐かしさの方が先に立つ)、主演第2作・第3作が「真夜中のカーボーイ」(これもアカデミー主演男優賞ノミネート)と「ジョンとメリー」であるというのもスゴイですが、ゴールデングローブ
賞新人賞を受賞した「卒業」の、その演技スタイルとは全く異なる演技をその後次々にみせているところがまたスゴイです(「卒業」で英国アカデミー賞新人賞を受賞し、「真夜中のカーボーイ」と「ジョンとメリー」で同賞主演男優賞を受賞している)。
3作品共にアメリカン・ニュー・シネマと呼ばれる作品ですが、その代表作として最も挙げられるのは「真夜中のカーボーイ」でしょう。ニューヨークを逃れ南国のフロリダへ旅立つ乗り合いバスの中でリコが息を引き取るという終わり方も、その系譜を強く打ち出しているように思われます。「真夜中のカーボーイ」も「ジョンとメ
リー」も傑作であり、ダスティン・ホフマンはこの主演第2作と第3作で演技派としての名声を確立してしまったわけですが、個人的には「ジョンとメリー」の方が、ラストの明るさもあってかしっくりきました。一方の「真夜中のカーボーイ」の方は、ジョーとリコの奇妙な友情関係にホモセクシュアルの臭いが感じられ、当時としてはやや引いた印象を個人的には抱きましたが、2人の関係を精神的なホモセクシュアルと見る見方は今や当たり前のものとなっており、その分だけ、今観ると逆に抵抗は感じられないかも(但し、原作者のジェームズ・レオ・ハーリヒー自身はゲイだったようだ)。![ミスター・グッドバーを探して [VHS].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B0%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%92%E6%8E%A2%E3%81%97%E3%81%A6%20%5BVHS%5D.jpg)
ダイアン・キートン演じる主人公の教師はセックスでしか自己の存在を確認できない女性で、原作は1973年にニューヨーク聾唖学校の28歳の女性教師がバーで知り合った男に殺害された「ロズアン・クイン殺人事件」という、日本における「東電OL殺人事件」(1997年)と同じように、当時のアメリカ国内で、殺人事件そのものよりも被害者の二面的なライフスタイルが話題となった事件を基にしており、当然のことながら結末は「ジョンとメリー」とは裏腹に暗いものでした。主人公の女教師は最後バーで拾った男(トム・ベレンジャー)に殺害されますが、その前に女教師に絡むチンピラ役を、当時全く無名のリチャード・ギアが演じています(殺害犯役のトム・ベレンジャーも当時未だマイナーだった)。
何れもニューヨークを舞台にそこに生きる人間の孤独を描いたものですが、ニューヨークを舞台に男女の出会いを描いた作品がその後は暗いものばかりなっているかと言えばそうでもなく、ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープの演技派2人が共演した「恋におちて」('84年)や、メグ・ライアンとトム・ハンクスによるマンハッタンのアッパーウエストを舞台にしたラブコメディ「ユー・ガット・メール」('98年)など、明るいラブストーリーの系譜は生きています(「ユー・ガット・メール」は1940年に製作されたエルンスト・ルビッチ監督の「街角/桃色(ピンク)の店」のリメイク)。
「恋におちて」はグランド・セントラル駅の書店での出会いと通勤電車での再会、「ユー・ガット・メール」はインターネット上での出会いと、両作の間にも時の流れを感じますが、前者はクリスマス・プレゼントとして買った本を2人が取り違えてしまうという偶然に端を発し、後者は、メグ・ライアン演じる主人公は絵本書店主、トム・ハンクス演じる男は安売り書店チェーンの御曹司と、実は2人は商売敵だったという偶然のオマケ付き。そのことに起因するバッドエンドの原作を、ハッピーエンドに改変しています。
トム・ハンクスとメグ・ライアンは「めぐり逢えたら」('93年)の時と同じ顔合わせで、こちらもレオ・マッケリー監督、ケーリー・グラント、デボラ・カー主演の
(●今度は韓国系の男女を主人公にした、ニューヨークでの再会物語が作られた。海外移住のため離れ離れになった幼なじみの2人が、24年の時を経てニューヨークで再会する7日間を描いた、セリーヌ・ソン監督のラブストーリー作品「パスト ライブス/再会」('23年)である。
とソウルでそれぞれの人生を歩んでいた。2人はオンラインで再会を果たすが、互いを思い合っていながらも再びすれ違ってしまう。そして12年後の36歳、ノラは作家のアーサー(ジョン・マガロ)と結婚していた。ヘソンはそのことを知りながらも、ノラに会うためにニューヨークを訪れ、2人はやっと巡り合うのだが―。


公開:1969/12●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:三鷹東映(78-01-17)(評価:★★★★☆)●併映:「ひとりぼっちの青春」(シドニー・ポラック)/「草原の輝き」(エリア・カザン)三鷹東映 1977年9月3日、それまであった東映系封切館「三鷹東映」が3本立名画座として再スタート。1978年5月に「三鷹オスカー」に改称。1990(平成2)年12月30日閉館。
「真夜中のカーボーイ」●原題:MIDNIGHT COWBOY●制作年:1969年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・シュレシンジャー●製作:ジェローム・ヘルマン●脚本:ウォルド・ソルト●撮影:アダム・ホレンダー●音楽:ジョン・バリー(主題曲「真夜中のカーボーイ」ハーモニカ演奏:トゥーツ・シールマンス)●原作:ジェームズ・レオ・ハーリヒー「真夜中のカーボーイ」●時間:113分●出演:ジョン・ヴ
ファー・ソルト/ボブ・バラバン●日本公開:1969/10●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:早稲田松竹(78-05-20)(評価:★★★★)●併映:「俺たちに明日はない」(アーサー・ペン)
マン●脚本:バック・ヘンリー/カルダー・ウィリンガム●撮影:ロバート・サーティース●音楽:ポール・サイモン
ニエルズ/エリザベス・ウィルソン/バック・ヘンリー/エドラ・ゲイル/リチャード・ドレイファス●日本公開:1968/06●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:池袋・テアトルダイヤ(83-02-05)(評価:★★★★)●併映:「帰郷」(ハル・アシュビー)


キー●音楽:デイヴ・グルーシン●時間:106分●出演:ロバート・デ・ニーロ/メリル・ストリープ/ハーヴェイ・カイテル/ジェーン・カツマレク/ジョージ・マーティン/デイヴィッド・クレノン/ダイアン・ウィースト/ヴィクター・アルゴ●日本公開:1985/03●配給:ユニヴァーサル映画配給●最初に観た場所:テアトル池袋(86-10-12)(評価:★★★)●併映:「愛と哀しみの果て」(シドニー・ポラック)




「パスト ライブス/再会」●原題:PAST LIVES●制作年:2023年●制作国:アメリカ●監督・脚本:セリーン・ソン●製作:デイヴィッド・イノヨーサ/クリス
チン・ヴァション/パメラ・コフラー●撮影:シャビエル・キーシュナー●音楽:クリストファー・ベア/ダニエル・ローセン●時間:106分●出演:グレタ・リー/ユ・テオ/ジョン・マガロ/ユン・ジヘ/チェ・ウォニョン●日本公開:2024/04●配給:ハピネットファントム・スタジオ●最初に観た場所:Bunkamura ル・シネマ渋谷宮下(24-05-06)((評価:★★☆)




農民が地主の横暴に苦し
められた19世紀末のアイルランド、農夫ジョセフ(トム・クルーズ)の父も、厳しい地代の取立ての混乱で事故死する。更に地主の配下に家を焼かれ、怒ったジョセフは地主を射殺しようと地主邸に向かうが失敗、銃の暴発のため負傷し、復
讐相手の邸で介抱を受けるという間抜けな結果となる。そこには、放火の張本人で地主令嬢と結婚を図るスティーブン(トーマス・ギブソン)がいて、ジョセフは彼を襲うも再度失敗し、彼と決闘させられることに。そこへ、実はスティーブンのお高くとまった性格が嫌いで、堅苦しい生活を捨てアメリカ行きを望む地主令嬢のシャノン(ニコール・キッドマン)が現れ、ジョセフを攫うように連れ去り、二人のアメリカ行きの旅が始まる―。
アイルランド系移民の苦労を描いたロン・ハワード監督の'92年作品で、トム・クルーズとニコール・キッドマンが仲良かった頃、と言うか、結婚したての頃の作品ですが、映画の中に出てくる「オクラホマ・ランドラッシュ」というのが印象深かったです。
1889年4月22日の正午を境にオクラホマへの白人の入植が認められた。同年同月日には15ドルの入植手続き料を支払った人々がオクラホマとの境界に集まり、正午を告げる号砲が鳴ると一斉にオクラホマへと乗り込んでいった。彼らは一人当たり160エーカー(65ヘクタール)の土地を手に入れることができた――これは、新大陸のフロンティア時代の入植者に土地を無料で配るというもので、移民たちが白線に並んで「用意ドン!」で駆けっこして、ここからここまでは自分の土地だと主張した範囲の土地が与えられるというスゴイものなのですが(当然、そこで醜い争いも生じる)、お嬢さんだが気が強いシャノンと、自分の土地を得るにはこの方法しかないと考えるジョセフは、このレースに参加する―。
ロン・ハワードにはアイルランド人の血が流れていて、祖先にはこのオクラホマのランド・ラッシュに実際に参加した人もいたとのことで、随分前からこの映画の構想は練っていたそうです。ニコール・キッドマンをヒロインに想定していたところに、トム・クルーズが出演の名乗りを上げたそうですが、ロン・ハワードは当時二人が交際していることを知らなかったそうです。因みに、トム・クルーズ自身にもアイルランド人の血が流れています。
2人ともいい演技をしています。特に、上流意識を持ち、気位が高いながらも、ボディガード代わりに連れてきたトム・クルーズに内心では惹かれていくニコール・キッドマンの演技がいい(トム・クルーズはこの映画の随所で、状況の急な変化に振り回される、三枚目的な味を出している)。
移民たちが駆けっこして奪い合っている土地は、元々は北米原住民のものであるはずという批判的な見方も出来ますが、この映画が日本でも本国でもあまりヒットしなかったことを思うと、もう少し注目されても良かったのでないかと。ロン・ハワードは両親とも俳優だったので、子役の頃から多くのテレビドラマや映画に出演していましたが(「

一方のトム・クルーズは、それ以前に「トップガン」('86年)で一躍世界的なスターになっていたわけで、日本でもこの映画は大ヒットしました。まあ、米海軍が協力を惜しまない "USネイビィのリクルート戦略"の一環のような映画でした。「
ヴァル・キルマー、メグ・ライアン、ティム・ロビンスら若手俳優の出世作としても知られ、「ER 緊急救命室」の"グリーン先生"ことアンソニー・エドワーズがトム・クルーズの同僚パイロット役で出てましたが、出ていた記憶が薄いのはまだ髪の毛が濃かったせいでしょうか。ともかく、トム・クルーズ人気を一気に高めた作品であって、その分だけ相対的に他の俳優の影が薄い? 後になって、あの人も出ていた、この人も出ていたと言われる映画です(当時まだ皆さほど名が知れてなかったということもあるが)。
トム・クルーズの当時の人気はすさまじく、その勢いで「トップガン」と同年にマーティン・スコセッシ監督の「ハスラー2」('86年)に出演、翌々年にはロジャー・ドナルドソン監督の「カクテル」('88年)、バリー・レヴィンソン監督の「
ューマンに初のアカデミー主演男優賞をもたらし、ダスティン・ホフマンと共演した「レインマン」は第61回アカデミー賞と第46回ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)、さらに第39回ベルリン国際映画祭においてそれぞれ作品賞を受賞しました。一方、トム・クルーズのスマイルと、フレアバーテンディングによるカクテル作りの派手なパフォーマンスでヒットを博した「カクテル」は、(一応"原作"はあるようだが)完全なトム・クルーズ・ファンのためのアイドル映画でした。これ、ビデオパーティで観た(90-04-01)のですが(自分で選んではいない)、当時の日本のバブリーな雰囲気にマッチしていた面もあったかも。

ケリー・マクギリスは1982年に映画デビューしていますが、彼女を一躍有名にしたのは、ハリソン・フォードと共演し、アーミッシュの女性を演じた「刑事ジョン・ブック 目撃者」('85年)でしょう(これも知人宅でのビデオパーティで観た(89-05-03))。ハリソン・フォード演じる警察の不正を知ったために警察に追われること
になった刑事が主人公で、警察を舞台にした犯罪サスペンスかと思ったら、そのジョン・ブック刑事が匿われたアーミッシュの村の暮らしぶり(と言うより、アーミッシュの人々の考え方)が描かれていて、ある種カルチャーショック映画のようになっていました。ハリソン・フォードはアカデミー主演男優賞にノミネートされましたが、来日した時に、今まで出演した中で一番印象に残っている作品として、この「刑事ジョン・ブック 目撃者」を挙げていました。この作品でのハリソン・フォードの演技の延長上に、後の「
ました。女性がアレクサンドル・ゴドゥノフ演じる許嫁候補(?)と仮に結婚したとしても、ずっとジョン・ブックのことを思い続けるのでしょう(「シェーン」にも同じことが言えるが、旦那または許
嫁は"立場ない"なあ)。それにしてもケリー・マクギリス、最初の主演作がハリソン・フォードの相手役で、次がトム・クルーズの相手役であったわけで、当時の圧倒的な美貌のせいもあってか、キャリアの最初の方がとりわけ華々しかったです。
(●2022年にジョセフ・コジンスキー監督による「トップガン マーヴェリック」('22年/米)が公開され
た。「トップガン」から36年ぶりの続編で、トム・クルーズが前回同様マーヴェリック役を演じ、米海軍パイロットのエリート養成学校、通称"トップガン"に教官として戻ってくることになるも、結局、自らチームを率いて敵地へウラン濃縮施設撃破のために飛ぶことになるというもの。トム・クルーズは60歳で頑張っているなあという感じで、映画もヒットしているようだ。日本でも世代を問わず絶賛する声が多い。ただ、前作と異なり、映画評論家までが褒めていたりするのには違和感を感じる。俳優のミッキー・ロークが、トム・クルーズが「トップガン マーヴェリック」で米国
で興行収入1位になったことについてどう思うかとの質問に、「あいつは35年間あんな同じ役を演じてるんだ。尊敬に値しないね」と言っており、そちらの方がまともなマトモな見方とも言える。ヒロイン役はジェニファー・コネリー(51歳)。ケリー・マクギリスは、自分のところには出演オファーが無かったと言っている(笑)。気になったのはストーリーで、教官が部下を救い、今度は部下が教官を救うという話は美しいが、敵地に不時着して、"たまたま近くあった"敵の戦闘機を強奪して帰還するというのはあまりに話が出来過ぎているように思った。かつて、クリント・イーストウッドが監督・主演した「ファイヤーフォックス」('82年)で、イーストウ

ッド演じる元米空軍パイロットがNATOの秘密ミッションでソ連に潜入し、最新鋭戦闘機「MiG-31 ファイヤーフォックス」を盗み出すという映画があったが、あれは最初から周到な計画のもとに敵地に潜入しているわけであって、しかも、
当時の〈東西冷戦〉状況を背景としているとはいえ戦闘機自体はパイロットの意志を感知してオートマチックに敵を攻撃する機能を搭載しているといった半ばSF仕立てでもあった(この機能は実際に研究されているが、まだ実現していない)。苦心惨憺の末に敵戦闘機に辿り着いたイーストウッドとの比較でみると、トム・クルーズの、不時着した付近にたまたま敵の戦闘機があったというのは、あまりにご都合主義的な話だったように思う。
「トップガン マーヴェリック」には、トム・クルーズが前作と同じ"マーヴェリック"役で出ているほかに、ヴァル・キルマーが前作と同じ"アイスマン"役で出ていて、個人的には「
「遥かなる大地へ」●原題:FAR AND AWAY●制作年:1992年●制作国:アメリカ●監督:ロン・ハワード●製作:ブライアン・グレイザー/ロン・ハワード●脚本:ボブ・ドルマン●撮影:ミカエル・サロモン●音楽:ジョン・ウィリアムズ●時間:140分●出演:トム・クルーズ/ニコール・キッドマン/トーマス・ギブソン/バーバラ・バブコック/シリル・キューザック/ロバート・プロスキー/コルム・ミーニー/アイリーン・ポロック/ミシェル・ジョンソン/ダグラス・ジリソン/ウェイン・グレイス/バリー・マクガヴァン●日本公開:1992/07●配給:ユニヴァーサル映画=UIP(評価:★★★☆)
「トップガン」●原題:TOP GUN●制作年:1986年●制作国:アメリカ●監督:トニー・スコット●製作:ドン・シンプソン/ジェリー・ブラッカイマー●脚本:ジム・キャッシュ/ジャック・エップス・Jr●撮影:ジェフリー・キンボール●音楽:ハロルド・ファルターメイヤー/ジョルジオ・モロダー●時間:110分●出演:トム・クルーズ/ケリー・マクギリス/ヴァル・キルマー/アンソニー・エドワーズ/トム・スケリット/マイケル・ アイアンサイド/ジョン・ストックウェル/リック・ロソビ


「カクテル」●原題:COCKTALEN●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:ロジャー・ドナルドソン●製作:テッド・フィールド/ロバート・W・コート●脚本:ヘイウッド・グールド●撮影:ディーン・セムラー●音楽:ピーター・ロビンソン(主題歌:ザ・ビーチ・ボーイズ「ココモ」)●原作:ヘイウッド・グールド●時間:104分●出演:トム・クルーズ/ブライアン・ブラウン/エリザベス・シュー/ケリー・リンチ●日本公開:1989/03●配給:ワーナー・ブラザース(評価:★★★)

「刑事ジョン・ブック 目撃者」●原題:WITNESS●制作年:1985年●制作国:アメリカ●監督:ピーター・ウィアー●製作:エドワード・S・フェルドマン●脚本:ウィリアム・ケリー/アール・W・ウォレス●撮影:ジョン・シール●音楽:モーリス・ジャール●時間:113分●出演:ハリソン・フォード/ケリー・マクギリス/ルーカス・ハース/ジョセフ・ソマー/ダニー・グローヴァー/ヤン・ルーベス/アレクサンドル・ゴドゥノフ/パティ・ルポーン/ブレント・ジェニングス/アンガス・マッキネス/フレデリック・ロルフ/ヴィゴ・モーテンセン●日本公開:1985/06●配給:UIP(評価:★★★☆)
「トップガン マーヴェリック」●原題:TOP GUN: MAVERICK●制作年:2022年●制作国:アメリカ●監督:ジョセフ
・コシンスキー●製作:ジェリー・ブラッカイマー/トム・クルーズ/クリストファー・マッカリ
ー/デヴィッド・エリソン●脚本:アーレン・クルーガー/エリック・ウォーレン・シンガー/クリストファー・マッカリー●撮影:クラウディオ・ミランダ●音楽:ハロルド・フォルターメイヤー/レディー・ガガ/ハンス・ジマー●時間:131分●出演:トム・クルーズ/マイルズ・テラー/ジェニファー・コネリー/ジョン・ハム/グレン・パウエル/ルイス・プルマン/エド・ハリス/ヴァル・キルマー●日本公開:2022/05●配給:東和ピクチャーズ●最初に観た場所:TOHOシネマズ上野(スクリーン2)(22-07-12)(評価:★★☆)




二子東急 1957年9月30日 開館(「二子玉川園」(1985年3月閉園)そば) 1991(平成3)年1月15日閉館 




本書によれば、11億の人口を抱えるインドは、その平均年齢がたいへん若く、毎年1200万人の新たな労働人口が生じているとのこと(高齢化の進む日本とは違いすぎ!)、しかも、彼らの多くが英語を能くし、数学に強く、IT(情報技術)力が高い―。
本書を読んで、インドという大国の今後の台頭を予感させられましたが、この国が多民族・多宗教・多言語国家であることも再認識させられたことの1つで、言語で言えば、地方言語を含めると300近くあるとのこと、国会議員が議場では同時通訳のヘッドフォンをしていて、紙幣には17の言語で金額が表記されているというのにはビックリしました。
しかし映画女優は美人が多く、例えば本書でも紹介されている1994年ミス・ワールドのアイシュワリヤー・ラーイ(1973年年生まれ)という女優は、いつまでも奇麗だと思います(ニックネームはアイシュ。ロレアルのLUX Super Rich のCMに出ていた。ダンスも上手い)。過去に出演している映画はともかく("ボリウッド"系娯楽映画が殆ど)、ビジュアル的にはインドの自信とプライドを体現しているような女優だと思います。

この他にもインド映画界には、シュリヤ・サラン(1982年生まれ)、ヴァルシャといった美人女優が数多くいて、この辺りの女優は"ボリウッド"だけでなく"ハリウッド"にも進出していて、最近では20世紀最後のミス・ワールド優勝者で女優のプリヤンカー・チョープラー(1982年生まれ)のハリウッド進出が見込まれているそうです。
シュリヤ・サラン
(●2022年のS・S・ラージャマウリ監督のインド・テルグ語叙事詩的ミュージカルアクション映画「RRR」が、「ムトゥ 踊るマハラジャ」(1995年)が保持していた記録を塗り替え、日本で公開されたインド映画の中で最も高い興行収入を記録し、第46回「日本アカデミー賞」で優秀外国作品賞も受賞した。映画そのものは娯楽映画として大いに楽しめた。
舞台は1900年代前半のインド。当時のインドは大英帝国の植民地であり、現地の人々は白人の権力者から差別的な扱いを受けていた。そんなインドに生きるビーム(N・T・ラーマ・ラオ・ジュニア)は、インド総督のバクストン(レイ・スティーヴンソン)に誘拐された少女・マッリを救うため、大英帝国の本拠地・デリーに潜入する。しかし、バクストンが住む総督公邸は警備が固く、安易に侵入できなかった。ビームは総督公邸に侵入するべく、スコットの姪・ジェニー(オリヴィア・モリス)に接近していく。一方、大英帝国に忠誠を誓うインド人の警察官・ラーマ(ラーム・チャラン)は、デリーのどこかに潜んでいるビームを追っていた。思想も立場も異なるふたりが出会うとき、インドの歴史が大きく動き出す―。
1920年の英領インド帝国が舞台で、大英帝国が悪者になっているが、背後にあるのは政治的なものより宗教的なものだろう。この映画に、
上記のシュリヤ・サランが主人公の母親役で出ていた。女優として大成して良かったと思う。因みに、大英帝国側の総督夫人をアリソン・ドゥーディ(「007 美しき獲物たち」('85年)、「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」('89年))が演じていた。「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」と同じ悪役だが、こちらも相変わらずの美貌で何より。エンディングはヒーローもヒロインも、悪者である提督らも出てきて長々と踊る。これぞインド娯楽映画という感じだった。)
「RRR」●原題:RRR●制作年:2022年●制作国:インド●監督:S・S・ラージャマウリ●製作:D・V・V・ダナイヤー●脚本:S・S・ラージャマウリ/サーイ・マーダヴ・ブッラー●撮影:K・K・センティル・クマール●音楽:M・M・キーラヴァーニ●時間:182分●出演:N・T・ラーマ・ラオ・ジュニア/ラーム・チャラン/アジャイ・デーヴガン/アーリヤー・バット/シュリヤ・サラン/サムドラカニ/レイ・スティーヴンソン/アリソン・ドゥーディ/オリヴィア・モリス●日本公開:2022/10●配給:ツイン●最初に観た場所:シネマート新宿(23-10-24)(評価:★★★★)
