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個人的な思い出の記録でありながらも、記録・資料データが充実していた(貴重!)。

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ミニシアター再訪〈リヴィジテッド〉: 都市と映画の物語 1980-2023 』['24年]

 1980年代初頭に大きく花開いた「ミニシアター」を、同時代を並走してきた映画評論家が、劇場や配給会社など当時の関係者たちの証言を集め、彼らの情熱と映画への愛、数々の名画の記憶とともに、都市と映画の「物語」を辿ったもので、取材がしっかりしいて(映画買い付け時のエピソードなどがあり興味深い)、情報面でも充実していました。

「シネマスクエアとうきゅう」.jpg 第1章のミニシアターというものが未知数だった「80年代」のトップは新宿「シネマスクエアとうきゅう」(81年12月、歌舞伎町「東急ミラノビル」3Fにオープン)。企業系ミニシアターの第1号で、1席7万円の椅子が売り物でした。柳町光男のインディペンデント作品「さらば愛しき大地」(82)が成功を収め10週上映、自分もここで観ました。さらにフランソワ・トリュフォー監督の隣家同士に住む男女の情愛を描いた、彼が敬愛したヒッチコックの影響が強い作品「隣の女」(81)が82年に12週上映(個人的には「五反田TOEIシネマ」のフランソワ・トリュフォー監督特集で、映画撮影の裏側を製作の進行と作製中の映画のストーリーをシンクロさせて描き、さらにその映画の監督役をトリュフォーが自ら演じるという3重構造映画「アメリカの夜」(73)(「アカデミー外国語映画賞」受賞作)、「隣の女」の前年作で、同じくジェラール・ドパルデューが出ていて、こちらはカトリーヌ・ドヌーヴと共演した「終電車」(80)と併せて観た)、ショーン。コネリー主演の「薔薇の名前」(87)「シネマスクエアとうきゅう」8.jpgが16週上映(コピーは"中世は壮大なミステリー"。教養映画風だが実はエンタメ映画)、今で言うストーカーが主人公で、買い手がつかなかったのを買い取ったというパトリス・ルコントの「仕立て屋の恋」(89)が92年に16週上映、「青いパパイヤの香り」(93)が94年に14週上映だったと。個人的には、初期の頃にここで観た作品としては、本書にもある、カメラマン出身で「ベニスに死す」の監督ニコラス・ローグが、またもベニスを舞台に撮ったオカルト風サスペンの"幻の傑作"(本書。おそらく製作から本邦公開まで10年かかったからだろう)「赤い影」(74)(原作は「鳥」「レベッカ」などで知られるダフネ・デュ・モーリア)や、ケン・ラッセルの作曲家グスタフ・マーラーを題材にした「マーラー」(74)(この作品も製作から本邦公開まで10年以上の間がある。伝記映画だが内容はかなり恣意的解釈?)、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーのゲイ・ムービー「ファスビンダーのケレル」(82)(男色作家ジャン・ジュネの長編小説「ブレストの乱暴者」を、30歳代で他界したドイツの若手監督ファスビンダーが映画化した遺作。ヴェルナー・シュレーターやベルナルド・ベルトリッチもこの作品の映画化を企画したが実現しなかったという難解作で、個人的にも評価不能な面があった)などがあります。

「俳優座シネマテン」.jpg 六本木「俳優座シネマテン」(81年3月、「俳優座劇場」内にオープン)の「テン」は夜10時から映画上映するためだけでなく、ブレイク・エドワーズのコメディ「テン」(79)から「俳優座シネマテン」8.jpgとったとのこと。トリュフォーの、フランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーの次女アデルの狂気的な恋の情念を描いた「アデルの恋の物語」(75)はここでした。ルキノ・ヴィスコンティが看板監督で、「地獄に堕ちた勇者ども」(69)や「ベニスに死す」(79)のリバイバルもここでやり、ビデオが普及していない時代だったために成功、さらに「カッコーの巣の上で」(75)のリバイバルも。精神異常を装って刑務所での強制労働を逃れた男が、患者の人間性までを統制しようとする病院から自由を勝ちとろうと試みる物語でした(ニコルソンが初めてオスカーを手にした作品。冷酷な婦長を演じたルイーズ・フレッチャーも主演女優賞を受賞)。同じ六本木で2年遅れて開館したシネ・ヴィヴァンがダニエル・シュミットの「ラ・パロマ」をかけたのに対し、こちらはファッショナブルで官能的な「ヘカテ」(82)を上映、そして、この劇場の最大のヒットとなったのが、ジェームズ・アイヴォリーの「眺めのいい部屋」(86)で、87年に10週間のロングランになったとのことです。個人的には、ニキータ・ミハルコフのソ連版西部劇(?)「光と影のバラード」(74)やゴンザロ・スアレスの「幻の城/バイロンとシェリー」(88)などもここで観ました。

「パルコ・スペース・パート3」.jpg 81年オープンのもう1館は、渋谷「パルコ・スペース・パート3」。ヴィスコンティの「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(43)(ヴィスコンティの処女作。原作はアメリカのハードボイルド作家ジェームズ・M・ケイン。映画での舞台は北イタリア、ポー河沿いのドライブイン・レストランに。ファシスト政権下でオールロケ撮影を敢行した作品)、「若者のすべて」(60)、「イノセント」(76)などの上映で人気を博し、「若者のすべて」は九州から飛「パルコ・スペース・パート3」8.jpg行機でやってきて、ホテルに泊まり1週間通い詰めた人もいたとのこと。カルトムービーとインディーズのメッカでもあり、日本では長年オクラだった「ピンク・フラミンゴ」(72)は、86年に初めてここで正式上映されたとのこと、個人的には84年に「アートシアター新宿」で観ていましたが、その内容は正直、個人的理解を超えていました。99年に映画常設館「CINE QUINTO(シネクイント)」となり、これは第2章で「シネクイント」として取り上げられています。個人的には、初期の頃観た作品では、フランスの女流監督コリーヌ・セローの「彼女と彼たち-なぜ、いけないの-」(77)、チェコスロバキアのカレル・スミーチェクの「少女・少女たち」(79)、台湾の侯孝賢(ホウ・シャオシェン)の「坊やの人形」(83)、スイスのブルーノ・モールの「わが人生」(83)、韓国の李長鍋(イー・チャンホー)の「寡婦の舞」(84)、ニュージーランドのビンセント・ウォードの「ビジル」(84)などがあります(これだけでも国が多彩)。「彼女と彼たち」は、男2人女1人の3人組で、女が唯一の稼ぎ手で、男が家事を担当し、3人で一つのベッドに眠るというややアブノーマルな生活を、繊細な演出でごく自然に描いてみせた、パルコらしい上映作品であり佳作、「寡婦の舞」は、東京国際映画祭の一環としてパルコで上映された韓国映画で、生活苦など諸々の不幸から"踊る宗教"へ傾倒する未亡人を中心に、韓国の日常をユーモラスに描いた作品、「ビジル」は、ニュージーランドの辺境に両親・祖父と暮らす少女の無垢な感受性をナイーブな映像表現で伝えた作品でした(佳作だが、やや地味か)。

「シネヴィヴァン六本木」.jpg 「シネヴィヴァン六本木」(83年11月「WAVEビル」地下1階にオープン)は、オープン2本目でゴッドフリー・レジオ監督の「コヤニスカッティ」(82)を上映、アメリカの大都市やモニュメントバレーなどを映したイメージビデオ風ドキュメンタリー。コヤニスカッティとはホピ族の言葉で「平衡を失った世界」。延々と続いた早回しシーンがスローモーションに転じた途端に眠気に襲われました。アンドレイ・タルコフスキー監督の「ノスタルジア」(83)が84年に7週間上映、ビクトル・エリセ監督の「ミツバチのささやき」(73)が製作から12年遅れの上映で、12週間上映のヒットに。フレディ・M・ムーラー「シネヴィヴァン六本木」8.jpg監督の「山の焚火」(85)も86年に7週間上映されたとのことで、個人的にもここで観ました。さらに、エリック・ロメール監督の「満月の夜」(84)(ユーロスペース配給)や「緑の光線」(86)(シネセゾン配給)など一連の作品の上映も注目を集めたとのことです。個人的には、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)の「童年往時-時の流れ-」(89)、ベルナルド・ベルトリッチの「暗殺の森」(70)、ピーター・グリーナウェイの「数に溺れて 悦楽の夫殺しゲーム」(88)などもここで観ました。ベルトリッチの「暗殺の森」は、「暗殺のオペラ」とほぼ同時期に作られましたが、日本での公開はこちらの方が先で、六本木シネヴィヴァンでの上映は「リバイバル上映」です。

「ユーロスペース」.jpg 「ユーロスペース」(82年、渋谷駅南口桜丘町「東武富士ビル」2Fにオープン)は、85年6月のデヴィッド・クローネンバーグ監督の「ヴィデオドローム」(82)の上映から映画だけ上映する常設館になったとのこと(その前から、キートンの映画などをよくここで観た。欧日協会の旅行代理店が入っていた)、並行してレイトショー公開されたルネ・ラルー監督の「ファンタスティック・プラネット」(73)もヒットし、クローネンバーグ監督が続いて撮ったが行き場を失っていたスティ「ユーロスペース」8.jpgーヴン・キング原作の「デッドゾーン」(83)もここで上映され、1か月強の限定公開にもかかわらず8000人を動員、個人的にも85年の6月と7月に、ここでそれぞれ「ヴィデオドローム」と「デッドゾーン」を観ました。でも何と言ってもこの劇場の名を世間に知らしめたのは、原一男の「ゆきゆきて、神軍」(87)で、26週間の記録的なロングランに。張藝謀(チャン・イーモウ)監督のデビュー作「紅いコーリャン」(87)を観たのもここでした。山口百恵の「赤い疑惑」が中国で大ヒットし、コン・リーが中国の"山口百恵"と呼ばれていた頃です。ここではそのほかに、本書でも紹介されている山本政志監督の「闇のカーニバル」(81)(「ロビンソンの庭」(87)の山本政志監督が高い評価を受けるきっかけとなったモノクロ16ミリの意欲作。子どもを男友達に預けて、夜の新宿をトリップする女性ロック歌手を演じた太田久美子は、本業もロック歌手。「ロビンソンの庭」の原点的なパアフル作品で、個人的にはユーロスペースでの5年後の再上映の際も観に行った)や「バグダッド・カフェ」(87)、奴隷狩りから逃れ、地球に不時着した異星人"ブラザー"がNYに辿り着くというところから話が始まる、ジョン・セイルズの「ブラザー・フロム・アナザー・プラネット」(84)などもここでした(ジョン・セイルズ監督自身が異星人を追う賞金稼ぎの異星人(白人に化けている)の1人の役で出演している)。

「シャンテ・シネ」.jpg 「シャンテ・シネ」(87年、日比谷映画跡地にオープン)は、今の「シャンテ・シネ」6.jpg「TOHOシネマズ シャンテ」。ここの大ヒット作は何と言っても88年公開の「ベルリン・天使の詩」(87)で、30週のロングランという単館ロード全体の記録を打ち立てたとのこと(動員数は16.6万人)。侯孝賢(ホウ・シャオシェン)の「悲情城市」(89)は90年に17週間上映され、シャンテの歴代興行第11位、ジム・ジャームッシュの「ナイト・オン・ザ・プラネット」(91)は92年に21週のロングランで歴代興行第4位、ジェーン・カンピオン監督の「ピアノ・レッスン」(93)は、公開30周年記念の4K版を今年[24年]ここで観ました。「ドゥ・ザ・ライト・シング」(89)も興行的に成功し、「日の名残り」(93)は94年に17週間上映で歴代興行第6位と、これもまた人気を呼んだとのことです。でも、2018年に東京ミッドタウン日比谷がオープンしてからここって「TOHOシネマズ日比谷」の付帯映画施設みたいなイメージになってるなあ、名称も「TOHOシネマズシャンテ」であるし。

「シネスイッチ銀座」.jpg 「シネスイッチ銀座」(87年にオープン)は、個人的には前身の「銀座文化劇場・銀座ニュー文化」さらに「銀座文化1・2」の頃から利用していましたが、"シネスイッチ"は、洋画と邦画の2チャンネルを持つという意味でのネーミングだそうで、ジェームズ・アイヴォリーの「モーリス」(87)や滝田洋二郎の「木村家の人々」(88)はここでした。「モーリス」は88年に15週のロングランを記録したそうですが、シネスイッチ銀座の歴代興行の金字塔は「ニュー・シネマ・パラダイス」(88)で、都内では1館だけ(東京に限って言えば"単館")で40週上映(観客動員26万人)、この記録はミニシアターの歴史上で破られていないとのことです。個人的には「運動靴と赤い金魚」(97)などもここで見ました。実は、地下1階の「銀座文化」が「シネスイッチ銀座」になったとき、3階の「銀座文化2」は「銀座文化劇場」の名に戻っていて(97年4月に「シネスイッチ銀座1・2」としてリニューアルするまで)、主に古い洋画のリバイバル上映をしていました。個人的には、例えば88年だけでも「サンセット大通り」(50)、「ヘッドライト」(56)、「避暑地の出来事」(59)、「酒とバラの日々」(62)、「シャレード」(63)をここで観ていますが、当時の館名に沿えば、「シネスイッチ」ではなく「銀座文化劇場」で観たことになります。「避暑地の出来事」は、マックス・スタイナー作曲のテーマ音楽をパーシー・フェイスがカバーし発売された「夏の日の恋(Theme from A Summer Place)」が有名、「酒とバラの日々」と「シャレード」はヘンリー・マンシーニの音楽で知られています。

「シネマライズ」.jpg 第2章のブームの到来の「90年代」のトップは渋谷「シネマライズ」(86年6月、渋谷 スペイン坂上「ライズビル」地下1階にオープン)。劇場の認知度を上げたのは86年7月公開のトニー・リチャードソンの「ホテル・ニューハンプシャー」(84)で、89年には「バグダッド・カフェ」(87)、93年には「レザボア・ドッグス」(92)がかっています。「レザボア・ドッグス」は公開当時は大コケだったそうです。「バグダッド・カフェ」は地下1階で観ましたが、「レザボア・ドッグス」はビデオで観て(ミニシアターブームの到来とビデオの普及時期が重なる)、最近、映画館(早稲田松竹)で観直しました。96年に、2階の劇場(元渋谷ピカデリー)もオープンし、オープニング作品は、エミール・クストリッツァ監督がカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞した快作(怪作?)「アンダーグラウンド」(95)。その後、ウォン・カーウァイの「ブエノスアイレス」(97)が26週上映、ジャン=ピエール・ジュネの「アメリ」(01)は35週上映で、シネマライズの歴代ナンバーワン興行収入作品となりました。さらには、ソフィア・コッポラ「ロスト・イン・トランスレーション」(03)(17週上映)、アン・リー「ブロークバック・マウンテン」(05)(15週上映)なども。第3章の方で出てきますが、「ロッキー・ホラー・ショー」(75)を80年代に本来の「観客体験型」ムービーとしてリバイバル上映したのもシネマライズでした(地下1階で、上映中結婚式の場面でライスシャワー、雨の場面で水シャワーがかけられた。あれ、あとの掃除が大変だったろうなあ)。

「シネセゾン渋谷」.jpg「シネセゾン渋谷」2.jpg 2011年に閉館した「シネセゾン渋谷」 (85年11月、渋谷道玄坂「ザ・プライム渋谷」6Fにオープン)はリバイバル上映に個性があり、市川崑の「黒い十人の女」(61)をレイトショーで97年11月から13週上映、その前、92年には、リュック・ベッソンの「グラン・ブルー」(88)(88年に英語版で上映された「グレート・ブルー」に48分の未公開シーン(変な日本人ダイビング・チームとかも出てくる)を加えて再編集した168分のフランス語版)が独占公開され、ヒットしています。

 「ル・シネマ」.jpg 「ル・シネマ」(89年9月、渋谷道玄坂・Bunkamura6階にオープン)の方は東急系で、92年にかけられたジャック・リヴェット監督(原作はバルザック)のフランス映画「美しき諍い女」(91)に代表されるヨーロッパ系の映画が強い劇場ですが、アジア系も強く、陳凱歌(チェン・カイコー)の「さらば、わが愛/覇王別姫」(93)を94年に26週上映、陳凱歌(チェン・カイコー)監督、レスリー・チャン、コン・リー 「ル・シネマ」5.jpg主演の「花の影」(96)も17週上映、今世紀に入ってからは、張藝謀(チャン・イーモウ)監督、チャン・ツィイー主演の「初恋のきた道」(99)を00年末から24週上映(歴代5位)していますが、個人的いちばんは、ウォン・カーウァイ監督の「花様年華」(00)です。ウォン・カーウァイ監督作は「ブエノスアイレス」などがシネマライズで上映されていましたが、「花様年華」は女性層狙いだったので、シネマライズから回ってきたそうです。近年では、休館前に濱口竜介監督の一連の作品を観ました。

「恵比寿ガーデンシネマ」.jpg 「恵比寿ガーデンシネマ」(94年10月、恵比寿ガーデンテラス弐番館内にオープン)は、ポール・オースター原作、ウェイン・ワン監督の、ニューヨークのタバコ屋の人間模様を描いた「スモーク」(95)のような渋い作品をやっていました。個人的には、ロイ・アンダーソンの「散歩する惑星」(00年)などをここで見観ました。本書にもある通り、11年1月28日をもって休館し、15年3月、今度はサッポロビールとユナイテッドシネマの共同経営で「YEBISU GARDEN CINEMA」として再オープンしています。

「岩波ホール」.jpg 第2章の最後は、「岩波ホール」(68年オープン、74年から映画常設館に)。サタジット・レイ「大樹のうた」(59)が本格オープン作で、ATGの「大河のうた」の興行成績が厳しく、次作上映ができなかったところへ、高野悦子総支配人が手をさしのべ、7「岩波ホール」16.jpg4年2月にロードショー。4週間後にホールは満席になったといいます(因みに、サタジット・レイの「大地のうた三部作」のうち「大河のうた」は結末がハッピーエンドでないため、インドでも興行上は振るわなかった)。その後も、75年にルネ・クレールの「そして誰もいなくなった」(45)、衣笠貞之助の「狂った一頁」(26)、76年に「フェリーニの道化師」(70)、77年にアンドレイ・タルコフスキーの「惑星ソラリス」(72)、78年にゲオルギー・シェンゲラーヤの「ピロスマニ」(69)などの上映がありましたが、78年から79年にかけてルキノ・ヴィスコンティの「家族の肖像」 (74)を上映したら10週間超満員が続く盛況ぶりだったとのこと(岩波ホールといえばコレという感じか)。79年にエルマンノ・オルミの「木靴の樹」(78)(北イタリアの貧しい農村の生活をエピソードを重ねながら丹念に描く、ネオレアリズモの継承者と呼ばれるにふさわしい佳作。カンヌ映画祭パルムドール受賞作)や、テオ・アンゲロプロスの「旅芸人の記録」(75)が上映され、80年にはヴィスコンティ の「ルートヴィヒ/神々の黄昏」(72)が。歴代興行第1位は、98年に封切られたメイベル・チャンの「宋家の三姉妹」(97)(高野悦子も三姉妹でこの作品にひかれたのではとのこと)、岩波ホール創立30周年記念作品でもあり、31週上映だったそうです(アンコール上映も併せると45週、18.7万人を動員)。アンジェイ・ワイダの「大理石の男」(77)(ワイダは初期作品の方がインパクトがあった)など、社会的テーマの作人も多く上映されました。個人的には、カール・テオドア・ドライヤー監督の「奇跡」(56)やジュールス・ダッシン監督の「女の叫び」(78)(「日曜日はダメよ」のメリナ・メルクーリと「アリスの恋」のエレン・バースティンの演技派女優の競演はバーンスティンに軍配を上げたい)、アンドレイ・タルコフスキーの「」(80)をここで観ましたが、ルキノ・ヴィスコンティ監督(アルベール・カミュ原作)の「異邦人」は、「岩波シネサロン」(岩波ホール9F)で観ました。

2022年2月7日朝日新聞デジタル「ミニシアターの道、開いた岩波ホール 54年の歴史、7月に幕 コロナ影響」
岩波ホール 54年の歴史.jpg

 第3章は変化する「2000年代」で、このあたりから映画観ごとより全体の流れを追っていく感じで、その中で「ミニシアター最後の日」として、13年の銀座テアトルシネマ、14年の吉祥寺バウスシアター、16年のシネマライズの最後の日を取材したものを載せています。銀座テアトルシネマは伝説的な映画館テアトル東京の跡地に87年オープン、吉祥寺バウスシアターは84年に前身の武蔵野映画劇場(吉祥寺ムサシノ)がアート系映画館に生まれ変わったものでした。86年オープンのシネマライズもそうですが、いずれも30年前後の歴史があり、その閉館は寂しいものです。ただし、今後のミニシアターの展望も含め、著者の12年間もの長期に及ぶ取材がしっかり纏められており、懐かしさを掻き立てられるだけでなく、資料としても第一級のものになっていると思います。

 
フランソワ・トリュフォー「隣の女」.jpg隣の女 .jpg「隣の女」●原題:LA FEMME DA'COTE(英:THE WOMAN NEXT DOOR)●制作年:1981年●制作国:フランス●監督:フランソワ・トリュフォー●製作:フランソワ・トリュフォー/シュザンヌ・シフマン●脚本:フランソワ・トリュフォー/シュザンヌ・シフマン/ジャン・オーレル●撮影:ウィリアム・ルプシャンスキー●音楽:ジョルジュ・ドルリュー●時間:107分●出演:ジェラール・ドパルデュー/ファニー・アルダン/アンリ・ガルサン/ミシェル・ボートガルトネル/ヴェロニク・シルヴェール/ロジェ・ファン・ホール/オリヴィエ・ベッカール●日本公開:1982/12●配給:東映ユニバースフィルム●最初に観た場所:五反田TOEIシネマ(83-10-01)(評価:★★★)●併映:「アメリカの夜」(フランソワ・トリュフォー)/「終電車」(フランソワ・トリュフォー)

「アメリカの夜 1973.jpg「アメリカの夜 01.jpg「アメリカの夜(映画に愛をこめて アメリカの夜)」●原題:LA NUIT AMERICAINE(英:DAY FOR NIGHT)●制作年:1973年●制作国:フランス●監督・脚本:フランソワ・トリュフォー●製作:マルセル・ベルベール●撮影:ピエール=ウィリアム・グレン●音楽:ジョルジュ・ドルリュー●時間:115分●出演:ジャクリーン・ビセット/ヴァレンティナ・コルテーゼ/ジャン=ピエール・オーモン/ジャン=ピエール・レオ/アレクサンドラ・スチュワルト/フランソワ・トリュフォー/ジャン・シャンピオン/ナタリー・バイ/ダニ/ベルナール・メネズ●日本公開:1974/09●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:五反田TOEIシネマ(83-10-01)(評価:★★★☆)●併映:「隣の女」(フランソワ・トリュフォー)/「終電車」(フランソワ・トリュフォー)

「終電車 1980.jpg「終電車 00.jpg「終電車」●原題:LE DERNIER METRO(英:THE LAST METRO)●制作年:1980年●制作国:フランス●監督:フランソワ・トリュフォー●製作:マルセル・ベルベール●脚本:フランソワ・トリュフォー/シュザンヌ・シフマン●撮影:ネストール・アルメンドロス●音楽:ジョルジュ・ドルリュー●時間:134分●出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/ジェラール・ドパルデュー/ジャン・ポワレ/ハインツ・ベネント/サビーヌ・オードパン/ジャン=ルイ・リシャール/アンドレア・フェレオル/モーリス・リッシュ/ポーレット・デュボスト/マルセル・ベルベール●日本公開:1982/04●配給:東宝東和●最初に観た場所:五反田TOEIシネマ(83-10-01)(評価:★★★)●併映:「アメリカの夜」(フランソワ・トリュフォー)/「終電車」(フランソワ・トリュフォー)

「薔薇の名前」.jpg薔薇の名前 c.jpg「薔薇の名前」●原題:LE NOM DE LA ROSE●制作年:1986年●制作国:フランス・イタリア・西ドイツ●監督:ジャン=ジャック・アノー●製作:ベルント・アイヒンガー●脚本:アンドリュー・バーキン●撮影:トニーノ・デリ・コリ●音楽:ジェームズ・ホーナー●原作:ウンベルト・エーコ●時間:132分●出演:ショーン・コネリー/クリスチャン・スレーター/F・マーリー・エイブラハム/ロン・パールマン/フェオドール・シャリアピン・ジュニア/エリヤ・バスキン/ヴォルカー・プレクテル/ミシェル・ロンスダール/ヴァレンティナ・ヴァルガス●日本公開:1987/12●配給:ヘラルド・エース●最初に観た場所(再見):新宿武蔵野館(23-04-18)(評価:★★★)

赤い影1973.jpg赤い影[.jpg「赤い影」●原題:DON'T LOOK NOW●制作年:1973年●制作国:イギリス・イタリア●監督: ニコラス・ローグ●製作:ピーター・カーツ●脚本:アラン・スコット/クリス・ブライアント●撮影:アンソニー・B・リッチモンド●音楽:ピノ・ドナッジオ●原作:ダフニ・デュ・モーリエ「いまは見てはだめ」●時間:110分●出演:ドナルド・サザーランドジュリー・クリスティ「赤い影」サザーランド・クリスティ.jpg/ヒラリー・メイソン/クレリア・マタニア/マッシモ・セラート/レナート・スカルパ/ジョルジョ・トレスティーニ/レオポルド・トリエステ●日本公開:1983/08●配給:ヘラルド・エース●最初に観た場所:新宿・シネマスクエアとうきゅう(83-09-11)(評価:★★★)

 
マーラー 19.jpgマーラー 1974.jpg「マーラー」●原題:MAHLER●制作年:1974年●制作国:イギリス●監督・脚本:ケン・ラッセル●製作:ロイ・ベアード●撮影:ディック・ブッシュ●音楽:グスタフ・マーラー/リヒャルト・ワーグナー/ダナ・ブラッドセル●時間:115分●出演:ロバート・パウエル/ジョージナ・ヘイル/リー・モンタギュー/ロザリー・クラチェリー●日本公開:1987/06●配給:俳優座シネマテン=フジテレビ●最初に観た場所:新宿・シネマスクエアとうきゅう(87-06-21)(評価:★★★)

ケレル(ファスヴィンダー)1982.jpg「ケレル(ファスビンダーのケレル)」.jpg「ケレル(ファスビンダーのケレル)」●原題:QUERELLE●制作年:1982年●制作国:西ドイツ/フランス●監督:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー●脚本:「ケレル(ファスビンダーのケレル)」0.jpgライナー・ヴェルナー・ファスビンダー/ブルクハルト・ドリースト●撮影: クサファー・シュヴァルツェンベルガー/ヨーゼフ・バブラ●音楽:ペール・ラーベン●原作:ジャン・ジュネ『ブレストの乱暴者』●時間:108分●出演:ブラッド・デイヴィス/ジャンヌ・モロー/フランコ・ネロ/ギュンター・カウフマン/ハンノ・ポーシェル●日本公開:1985/05●配給:人力飛行機舎=デラ●最初に観た場所:新宿・シネマスクエアとうきゅう(88-05-28)(評価:★★★?)


「アデルの恋の物語」1975 2.jpg「アデルの恋の物語」1975.jpg「アデルの恋の物語」●原題:L'HISTOIRE D'ADELE H.(英:THE STORY OF ADELE H.)●制作年:1975年●制作国:フランス●監督・製作:フランソワ・トリュフォー●脚本:フランソワ・トリュフォー/ジャン・グリュオー/シュザンヌ・シフマン●撮影:ネストール・アルメンドロス●音楽:モーリス・ジョベール●原作:フランセス・ヴァーノア・ギール『アデル・ユーゴーの日記』●時間:96分●出演:イザベル・アジャーニ/ブルース・ロビンソン/シルヴィア・マリオット/ジョゼフ・ブラッチリー/イヴリー・ギトリス●日本公開:1976/04●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:大塚名画座(78-12-08)(評価:★★★★)●併映:「二十歳の恋」(フランソワ・トリュフォー/ロベルト・ロッセリーニ/石原慎太郎/マックス・オフュルス/アンジェイ・ワイダ)

「地獄に堕ちた勇者ども」 (69年.jpg「地獄に堕ちた勇者ども」2.jpg「地獄に堕ちた勇者ども」●原題:THE DAMNED(独:Götterdämmerung)●制作年:1969年●制作国:イタリア・西ドイツ・スイス●監督:ルキノ・ヴィスコンティ●製作:アルフレッド・レヴィ/エヴェール・アギャッグ●脚本:ルキノ・ヴィスコンティ/ニコラ・バダルッコ/エンリコ・メディオーリ●撮影:アルマンド・ナンヌッツィ/パスクァリーノ・デ・サンティス●「地獄に堕ちた勇者ども」1.jpg「地獄に堕ちた勇者ども」ランプリング.jpg音楽:モーリス・ジャール●時間:96分●出演:ダーク・ボガード/イングリッド・チューリン/ヘルムート・バーガー/ラインハルト・コルデホフ/ルノー・ヴェルレー/アルブレヒト・シェーンハルス/ウンベルト・オルシーニ/シャーロット・ランプリング/ヘルムート・グリーム/フロリンダ・ボルカン●日本公開:1970/04●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:大塚名画座(79-02-07)(評価:★★★★)●併映:「ベニスに死す」(ルキノ・ヴィスコンティ)

「カッコーの巣の上で」00.jpg「カッコーの巣の上で」●原題:ONE FLEW OVER THE CUCKOO'S NEST●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:ミロス・フォアマン●製作:ソウル・ゼインツ/マイケル・ダグラス●脚本:ローレンス・ホーベン/ボー・ゴールドマン●撮影:ハスケル・ウェクスラー●音楽:ジャック・ニッチェ●原作:ケン・キージー『カッコウの巣の上で』●時間:133分●出演:「カッコーの巣の上で」012.jpgジャック・ニコルソンルイーズ・フレッチャー/マイケル・ベリーマン/ウィリアム・レッドフィールド/ブラッド・ドゥーリフ/クリストファー・ロイド/ダニー・デヴィート/ウィル・サンプソン●日本公開:1976/04●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:テアトル吉祥寺(82-03-13)(評価:★★★★)●併映:「ビッグ・ウェンズデー」(ジョン・ミリアス)

「光と影のバラード」1974.jpg「光と影のバラード」00.jpg「光と影のバラード」●原題:Свой среди чужих, чужой среди своих(英題:AT HOME AMONG STRANGERS)●制作年:1974年●制作国:ソ連●監督:ニキータ・ミハルコフ●脚本:エドゥアルド・ボロダルスキー/ニキータ・ミハルコフ●撮影:パーベル・レベシェフ●音楽:エドゥアルド・アルテミエフ●時間:95分●出演:ユーリー・ボガトィリョフ/アナトリー・ソロニーツィン/セルゲイ・シャクーロフ/アレクサンドル・ポロホフシコフ/ニコライ・パストゥーホフ/アレクサンドル・カイダノフスキー/ニキータ・ミハルコフ●日本公開:1982/10●配給:日本海映画●最初に観た場所:六本木・俳優座シネマテン(82-11-21)(評価:★★★☆)


「郵便配達は二度ベルを鳴らす」1943年.jpg郵便配達は二度ベルを鳴らす (1943年.jpg「郵便配達は二度ベルを鳴らす」●原題:OSSESSIONE●制作年:1943年●制作国:イタリア●監督:ルキノ・ヴィスコンティ●製作:カミッロ・パガーニ●脚本:ルキノ・ヴィスコンティ/マリオ・アリカータ/ジュゼッペ・デ・サンティス/ジャンニ・プッチーニ●撮影:アルド・トンティ/ドメニコ・スカーラ●音楽:ジュゼッペ・ロゼーティ●原作:ジェームズ・M・ケイン●時間:140分●出演:マッシモ・ジロッティ/クララ・カラマイ/ファン・デ・ランダ/ディーア・クリスティアーニ/エリオ・マルクッツォ/ヴィットリオ・ドゥーゼ●日本公開:1979/05●配給:インターナショナル・プロモーション●最初に観た場所:池袋・文芸坐(79-09-24)(評価:★★★★)●併映:「家族の肖像」(ルキノ・ヴィスコンティ)

「ピンク・フラミンゴ」(72).jpg「ピンク・フラミンゴ」(1972).jpg「ピンク・フラミンゴ」●原題:PINK FLAMINGOS●制作年:1972年●制作国:アメリカ●監督・製作・脚本・撮影:ジョン・ウォーターズ●時間:93分●出演:ディヴァイン/ディビッド・ロチャリー/メアリ・ヴィヴィアン・ピアス●日本公開:1986/06●配給:東映=ケイブルホーグ●最初に観た場所:渋谷・アートシアター新宿(84-08-01)(評価:★★★?)●併映:「フリークス・神の子ら(怪物団)」(トッド・ブラウニング)

「彼女と彼たち」 1977.jpg「彼女と彼たち」 2.jpg「彼女と彼たち-なぜ、いけないの-」●原題:POURQUOI PAS!●制作年:1977年●制作国:フランス●監督・脚本:コリーヌ・セロー●製作:ミシェル・ディミトリー●撮影:ジャン=フランソワ・ロバン●音楽:ジャン=ピエール・マス●時間:97分●出演:サミー・フレイ/クリスチーヌ・ミュリロ/マリオ・ゴンザレス/ニコル・ジャメ●日本公開:1980/11●配給:フランス映画社●最初に観た場所:渋谷・パルコスペース3(84-06-17)(評価:★★★★)

寡婦(やもめ)の舞 84.jpg寡婦(やもめ)の舞 1984.jpg「寡婦(やもめ)の舞」●原題:과부춤(英:WIDOW DANCING)●制作年:1984年●制作国:韓国●監督:李長鍋(イー・チャンホ)●脚本:李長鍋(イー・チャンホ)/李東哲(イ・ドンチョル)/イム・ジンテク●撮影:ソ・ジョンミン●原作:李東哲(イ・ドンチョル)『五人の寡婦』●時間:114 分●出演:イ・ボイ(李甫姫)/パク・ウォンスク(朴元淑)/パク・チョンジャ(朴正子)/キム・ミョンコン(金明坤)/パク・ソンヒ/チョン・ジヒ/ヒョン・ソク/クォン・ソンドク/ソ・ヨンファン/イ・ヒソン●日本公開:1985/09●配給:発見の会●最初に観た場所:渋谷・パルコスペース3(「東京国際映画祭」)(85-06-02)(評価:★★★☆)

ビジル(84年/ニュージーラン.jpgビジル(84年/ニュージーランド).jpg「ビジル」●原題:VIGIL●制作年:1984年●制作国:ニュージーランド●監督:ヴィンセント・ウォード●製作:ジョン・メイナード●脚本:ヴィンセント・ウォード/グレーム・テットリー●撮影:アルン・ボリンガー●音楽:ジャック・ボディ●時間:114 分●出演:ビル・カー/フィオナ・ケイ/ペネロープ・スチュアート/ゴードン・シールズ●日本公開:1988/02●配給:ギャガ・コミュニケーションズ●最初に観た場所:渋谷・パルコスペース3(85-06-02)(評価:★★★☆)

コヤニスカッティ(82年.jpgコヤニスカッティ(82年).jpg「コヤニスカッティ(コヤニスカッツィ)」●原題:KOYANISQATSI●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:ゴッドフリー・レッジョ●製作:フランシス・フォード・コッポラ/ゴッドフリー・レッジョ●脚本:ロン・フリック/ゴッドフリー・レッジョ●撮影:ロン・フリッケ●音楽:フィリップ・グラス●時間:87分●日本公開:1984/01●配給:ヘラルド・エース●最初に観た場所:大森・キネカ大森(84-06-02)(評価:★★☆)

「ノスタルジア」(1983年) .jpgノスタルジア0.jpg「ノスタルジア」●原題:NOSTALGHIA●制作年:1983年●制作国:イタリア・ソ連●監督:アンドレイ・タルコフスキー●製作:レンツォ・ロッセリーニ/マノロ・ポロニーニ●脚本: アンドレイ・タルコフスキー/トニーノ・グエッラ●撮影:ジュゼッペ・ランチ●時間:126分●出演:オレーグ・ヤンコフスキー/エルランド・ヨセフソン/ドミツィアナ・ジョルダーノ/パトリツィア・テレーノ/ラウラ・デ・マルキ/デリア・ボッカルド/ミレナ・ヴコティッチ●日本公開:1984/03●配給:ザジフィルムズ●最初に観た場所:Bunkamura ル・シネマ渋谷宮下(24-02-13)(4K修復版)(23-02-08)(評価:★★★★)

「暗殺の森」ベルトリッチ.jpg暗殺の森 00.jpg「暗殺の森」●原題:CONFORMISTA●制作年:1970年●制作国:イタリア・フランス・西ドイツ●監督・脚本:ベルナルド・ベルトリッチ●撮影:ヴィットリオ・ストラーロ●音楽:ジョルジュ・ドルリュー●原作:アルベルト・モラヴィア『孤独な青年』●時間:115分●出演:ジャン=ルイ・トランティニャン/ステファニア・サンドレッリ/ドミニク・サンダ/エンツォ・タラシオ●日本公開:1972/09●配給:パラマウント映画=CIC●最初に観た場所:シネヴィヴァン六本木(84-06-21)(評価:★★★☆)

「闇のカーニバル」 (1981.jpg「闇のカーニバル」 (1981. 2.jpg「闇のカーニバル」●制作年:1981年●●監督・脚本・撮影:山本政志●製作:伊地知徹生/山本政志●時間:118分●出演:太田久美子/桑原延亮/中島稔/太田行生/じゃがたら/遠藤ミチロウ/伊藤耕/中島稔/前田修/山口千枝●公開:1981/12●配給:CBC=斜眼帯●最初に観た場所:渋谷・ユーロスペース(83-07-16)●2回目:渋谷・ユーロスペース(88-07-09)(評価:★★★★)
  
「ブラザー・フロム・アナザー・プラネット」84年.jpg「ブラザー・フロム・アナザー・プラネット」84.jpg「ブラザー・フロム・アナザー・プラネット」●原題:THE BROTHER FROM ANOTHER PLANET●制作年:1984年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ジョン・セイルズ●製作:ペギー・ラジェスキー/マギー・レンジー●撮影:アーネスト・ディッカーソン●音楽:メイソン・ダーリング●時間:110分●出演:ジョー・モートン/ダリル・エドワーズ/スティーヴ・ジェームズ/レナード・ジャクソン/ジョン・セイルズ/キャロライン・アーロン/デヴィッド・ストラザーン●日本公開:1986/05●配給:ユーロスペース●最初に観た場所:ユーロスペース(86-06-14)(評価:★★★★)

ナイト・オン・ザ・プラネットv.jpg「ナイト・オン・ザ・プラネット」●原題:NIGHT ON EARTH●制作年:1991年●制作国:アメリカ●監督・製作・脚本:ジム・ジャームッシュ●撮影:フレデリック・エルムス●音楽:トム・ウェイツ●時間:129分●出演:(ロサンゼルス)ウィノナ・ライダー/ジーナ・ローランズ/(ニューヨーク)アーミン・ミューラー=スタール/ジャンカルロ・エスポジート/アンジェラ - ロージー・ペレス/(パリ) イザック・ド・バンコレ/ベアトリス・ダル/(ローマ)ロベルト・ベニーニ/パオロ・ボナチェリ/(ヘルシンキ) マッティ・ペロンパー/カリ・ヴァーナネン/サカリ・クオスマネン/トミ・サルミラ●日本公開:1992/04●配給:フランス映画社(評価:★★★★)●最初に観た場所(再見):シネマート新宿(スクリーン2)(24-03-08)
「ナイト・オン・ザ・プラネット」00.jpg
    
「ピアノ・レッスン」000.jpg「ピアノ・レッスン」●原題:OPPENHEIMER●制作年:1993年●制作国:オーストラリア/ニュージーランド/仏●監督・脚本:ジェーン・カンピオン●製作:ジェーン・チャップマン●撮影:スチュアート・ドライバーグ●音楽:マイケル・ナイマン●時間:121分●出演:ホリー・ハンターハーヴェイ・カイテル/サム・ニール/アンナ・パキン/ケリー・ウォーカー/ジュヌヴィエーヴ・レモン/トゥンギア・ベイカー/イアン・ミューン●日本公開:1994/02●配給:フランス映画社●最初に観た場所(再見):TOHOシネマズシャンテ(24-04-08)(評価:★★★★)

「避暑地の出来事」1959年.jpg「避暑地の出来事」00.jpg「避暑地の出来事」●原題:A SUMMER PLACE●制作年:1959年●制作国:アメリカ●監督・製作・脚本:デルマー・デイヴィス●撮影:ハリー・ストラドリング●音楽:マックス・銀座文化・シネスイッチ銀座.jpgスタイナー●原作:スローン・ウィルソン『避暑地の出来事』●時間:131分●出演:リチャード・イーガン/ドロシー・マクガイア/トロイ・ドナヒュー/ サンドラ・ディー/アーサー・ケネディ●日本公開:1960/04●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:銀座文化劇場(84-06-21)(評価:★★★☆)

「酒とバラの日々」00.jpg「酒とバラの日々」1962.jpg「酒とバラの日々」●原題:DAYS OF WINE AND ROSES●制作年:1962年●制作国:アメリカ●監督:ブレイク・エドワーズ●製作:マーティン・マヌリス●脚本:J・P・ミラー●撮影:フィル・ラスロップ●音楽:ヘンリー・マンシーニ●時間:117分●出演:ジャック・レモン/リー・レミック/チャールズ・ビックフォード/ジャック・クラグマン/アラン・ヒューイット●日本公開:1963/05●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:銀座文化劇場(88-07-20)(評価:★★★★)
 
  
 
  
 
「シャレード」1963年.jpg「シャレード」1963 2.jpg「シャレード」●原題:CHARADE●制作年:1963年●制作国:アメリカ●監督:スタンリー・ドーネン●製作:マーティン・マヌリス●脚本:J・P・ミラー●撮影:フィル・ラスロップ●音楽:ヘンリー・マンシーニ●時間:117分●出演:ケイリー・グラントオードリ・ヘップバーン/ジェームズ・コバーン/ウォルタコバーン「シャレード」.jpgー・マッソー/ジョージ・ケネディ/ネッド・グラス●日本公開:1963/12●配給:ユニバーサル・ピクチャーズ●最初に観た場所:銀座文化劇場(88-04-16)(評価:★★★☆)
ジェームズ・コバーン/ジョージ・ケネディ
 
 

「レザボア・ドッグス」0.jpg「レザボア・ドッグス」dr.jpg「レザボア・ドッグス」dr2.jpg「レザボア・ドッグス」●原題:RESERVOIR DOGS●制作年:1992年●制作国:アメリカ●監督・脚本:クエンティン・タランティーノ●製作:ローレンス・ベンダー●撮影:アンジェイ・セクラ●音楽:カリン・ラクトマン●時間:100分●出演:ハーヴェイ・カイテル/ティム・ロス/マイケル・マドセン/クリス・ペン/スティーヴ・ブシェミ/ローレンス・ティアニー/クエンティン・タランティーノ●日本公開:1993/04●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所(再見):早稲田松竹(24-05-20)(評価:★★★★)●併映:「バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト」(アベル・フェラーラ)
「レザボア・ドッグス」早稲田松竹.jpg


「花の影」.jpg「花の影」0.jpg「花の影」●原題:風月(英: TEMPTRESS MOON)●制作年:1996年●制作国:香港・中国●監督:陳凱歌(チェン・カイコー)●製作:湯君年(タン・チュンニェン)/徐楓(シュー・フォン)●脚本:舒琪(シュウ・チー)●撮影: クリストファー・ドイル(杜可風)●音楽: 趙季平(チャオ・チーピン)●原案: 陳凱歌/王安憶(ワン・アンイー)●時間:128分●出演:張國榮(レスリー・チャン)鞏俐(コン・リー)/林健華(リン・チェンホア)/何賽飛(ホー・サイフェイ)/呉大維(デヴィッド・ウー)/謝添(シェ・ティェン)/周野芒(ジョウ・イェマン)/周潔(ジョウ・ジェ)/葛香亭(コー・シャンホン)/周迅(ジョウ・シュン)●日本公開:1996/12●配給:日本ヘラルド映画(評価:★★★☆)●最初に観た場所[4K版]:池袋・新文芸坐(24-02-26)

「スモーク」01.jpg「スモーク」●原題:SMOKE●制作年:1995年●制作国:アメリカ・日本・ドイツ●監督:ウェイン・ワン●製作:ピーター・ニューマン/グレッグ・ジョンソン/黒岩久美/堀越謙三●脚本:ポール・オースター●撮影:アダム・ホレン「スモーク」02.jpgダー●音楽:レイチェル・ポートマン●原作:ポール・オースター『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』●時間:113分●出演:ハーヴェイ・カイテルウィリアム・ハート/ハロルド・ペリノー・ジュニア/フォレスト・ウィテカー/ストッカード・チャニング/アシュレイ・ジャッド/エリカ・ギンペル/ジャレッド・ハリス/ヴィクター・アルゴ●日本公開:1995/10●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:新宿武蔵野館(24-06-05)((評価:★★★★)

「フェリーニの道化師」1970年.jpg「フェリーニの道化師」●原題:FELLINI:I CROWNS●制作年:1970年●制作国:イタリア●監督:フェデリコ・フェリーニ●製作:エリオ・スカルダマーリャ/ウーゴ・グエッラ●脚本:フェデリコ・フェリーニ/ベルナフェリーニの道化師」01.jpgフェリーニの道化師」02.jpgルディーノ・ザッポーニ●撮影:ダリオ・ディ・パルマ●音楽:ニーノ・ロータ●時間:110分●出演:フェデリコ・フェリーニ/アニタ・エクバーグピエール・エテックス/ジョセフィン・チャップリン/グスターブ・フラッテリーニ/バティスト●日本公開:1976/12●配給:東宝東和●最初に観た場所:池袋・文芸坐(78-02-07)(評価:★★★★)●併映:「フェリーニのアマルコルド」(フェデリコ・フェリーニ)

フェリーニの道化師」アニタ.jpg
    
「木靴の樹」1978.jpg「木靴の樹」00.jpg「木靴の樹」●原題:L'ALBERO DEGLI ZOCCOLI(米:THE TREE OF WOODEN CLOGS)●制作年:1978年●制作国:イタリア●監督・脚本・撮影:エルマンノ・オルミ●音楽:J・S・バッハ●時間:186分●出演:ルイジ・オルナーギ/フランチェスカ・モリッジ/オマール・ブリニョッリ/テレーザ・ブレシャニーニ/バティスタ・トレヴァイニ/ルチア・ベシォーリ●日本公開:1979/04●配給:フランス映画社●最初に観た場所:有楽町・スバル座(80-12-02)(評価:★★★★)

「大理石の男」 (77年/ポーランド.jpg「大理石の男」 1.jpg「大理石の男」●原題:CZLOWIEK Z MARMURU●制作年:1977年●制作国:ポーランド●監督:アンジェイ・ワイダ●製作:バルバラ・ペツ・シレシツカ●脚本:アレクサンドル・シチボ「大理石の男」 2.jpgル・リルスキ●撮影:エドワルド・クウォシンスキ●音楽:アンジェイ・コジンスキ●時間:165分●出演:イエジー・ラジヴィオヴィッチ/クリスティナ・ヤンダ/タデウシ・ウォムニツキ/ヤツェク・ウォムニツキ/ミハウ・タルコフスキ/ピョートル・チェシラク/ヴィエスワフ・ヴィチク/クリスティナ・ザフヴァトヴィッチ/マグダ・テレサ・ヴイチク/ボグスワフ・ソプチュク/レオナルド・ザヨンチコフスキ/イレナ・ラスコフスカ/スジスワフ・ラスコフスカ●日本公開:1980/09●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:飯田橋・佳作座(81-05-24)(評価:★★★☆)●併映:「水の中のナイフ」(ロマン・ポランスキー)
 
「女の叫び」1.jpg「女の叫び」1978年.jpg「女の叫び」1978.jpg「女の叫び」●原題:A DREAM OF PASSION●制作年:1978年●制作国:アメリカ・ギリシャ●監督・脚本:ジュールス・ダッシン●撮影:ヨルゴス・アルヴァニティズ●音楽:ヤアニス・マルコプロス●時間:110分●出演:メリナ・メルクーリ/エレン・バースティン/アンドレアス・ウツィーナス/デスポ・ディアマンティドゥ/ディミトリス・パパミカエル/ヤニス・ヴォグリス/フェドン・ヨルギツィス/ベティ・ヴァラッシ●日本公開:1979/12●配給:東宝東和●最初に観た場所:岩波ホール(80-02-04)(評価:★★★★)

「●あ行外国映画の監督」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【3022】 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 「バベル
「●さ行の外国映画の監督①」の インデックッスへ「●た‐な行の外国映画の監督」の インデックッスへ「●は行の外国映画の監督①」の インデックッスへ「●か行外国映画の監督」の インデックッスへ 「●さ行の外国映画の監督②」の インデックッスへ「●ダスティン・ホフマン 出演作品」の インデックッスへ(「ジョンとメリー」「真夜中のカーボーイ」「卒業」)「●ジョン・ヴォイト 出演作品」の インデックッスへ(「真夜中のカーボーイ」)「●ロバート・デ・ニーロ 出演作品」の インデックッスへ(「恋におちて」)「●メリル・ストリープ 出演作品」の インデックッスへ(「恋におちて」)「●ハーヴェイ・カイテル 出演作品」の インデックッスへ(「恋におちて」)「●トム・ハンクス 出演作品」の インデックッスへ(「ユー・ガット・メール」「めぐり逢えたら」)「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ「○都内の主な閉館映画館」の インデックッスへ(三鷹東映)

ニューヨークという大都会を舞台にしたダスティン・ホフマン主演'69年作品2作。

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ジョンとメリー 1.jpg マンハッタンに住む建築技師ジョン(ダスティン・ホフマン)のマンションで目覚めたメリー(ミア・ファロー)は、自分がどこにいるのか暫くの間分からなかった。昨晩、独身男女が集まるバーで2人は出会い、互いの名前も聞かないまま一夜を共にしたのだった。メリーは、整頓されたジョンの家を見て女の影を感じる。ジョンはかつてファッションモデルと同棲していた過去があり、メリーはある有力政治家と愛人関係にあった。朝食を食べ、昼食まで共にした2人は、とりとめのない会話をしながらも、次第に惹かれ合っていくが、ちょっとした出来事のためメリーは帰ってしまう―。

 ピーター・イエーツ(1929-2011/享年81)監督の「ジョンとメリー」('69年)は、行きずりの一夜を共にした男女の翌朝からの1日を描いたもので、男女の出会いを描いた何とはない話であり、しかも基本的に密室劇なのですが、2人のそれぞれの回想と現在の気持ちを表す独白を挟みながらストーリーが巧みに展開していき、2人の関係はどうなるのだろうかと引き込まれて観てしまう作品でした。ピーター・イエーツは英国人で、映画監督になる前にプロのレーシング・ドライバーだったこともあり、この作品が監督第3作ですが、第1作が犯罪サスペンス映画「大列車強盗団」('67年/英)で、この作品でのアクション・シーンの手腕が買われ、ハリウッドで第2作、スティーブ・マックイーン主演のアクション映画「ブリット」('67年/米)を撮っていますが、今度はがらっと変って男女の出会いを描いた作品に。

ジョンとメリー 4.jpg 脚本は「シャレード」('63年)の原作者ジョン・モーティマーですが、構成の巧みさもさることながら、演じているダスティン・ホフマンとミア・ファローがそもそも演技達者、とりわけダスティン・ホフマン演じるジョンの、そのままメリーに居ついて欲しいような欲しくないようなその辺りの微妙に揺れる心情が可笑しく(ジョンの方に感情移入して観たというのもあるが)ホントにこの人上手いなあと思いました(でも、ミア・ファローも良かった)。

ジョンとメリー 2.jpg 最後に互いの気持ちを理解し合えた2人が、そこで初めて「ぼくはジョンだ」「私はメリーよ」という名乗り合う終わり方もお洒落(その時に大方の日本人の観客は初めて、そっか、2人はまだ名前も教え合っていなかったのかと気づいたのでは。アメリカ人だったら普通は最初に名乗るけれど、アメリカ人が見たらどう感じるのだろうか)。観た当時は、これが日本映画だったら、もっとウェットな感じになってしまうのだろうなあと思って、ニューヨークでの一人暮らしに憧れたりもしましたが、逆に、ニューヨークのような大都会で恋人も無く一人で暮らすということになると、(日本以上に)とことん"孤独"に陥るのかも知れないなあとも思ったりして。

真夜中のカーボーイ1.jpg そうした大都会での孤独をより端的に描いた作品が、ダスティン・ホフマンがこの作品の前に出演した同年公開のジョン・シュレシンジャー(1926-2003/享年77)監督の「真夜中のカーボーイ」('69年)であり、ジョン・ヴォイトが、"いい男ぶり"で名を挙げようとテキサスからニューヨークに出てきて娼婦に金を巻き上げられてしまう青年ジョーを演じ、一方のダスティン・ホフマンは、スラム街に住む怪しいホームレスのリコ(一旦は、こちらもジョーから金を巻き上げる)役という、その前のダスティン・ホフマンの卒業 ダスティン・ホフマン .jpg主演作であり、彼自身の主演第1作だったマイク・ニコルズ監督の「卒業」('67年)の優等生役とはうって変った役柄を演じました(「卒業」で主人公が通うコロンビア大学もニューヨーク・マンハッタンにある)。

卒業 ダスティン・ホフマン/キャサリン・ロス.jpg 映画デビューした年に「卒業」でアカデミー主演男優賞ノミネートを受け(この作品、今観ると「サウンド・オブ・サイレンス」をはじめ「スカボロ・フェアー」「ミセス・ロビンソン」等々、サイモン&ガー卒業(1967).jpgファンクルのヒット曲のオン・パレードで、そちらの懐かしさの方が先に立つ)、主演第2作・第3作が「真夜中のカーボーイ」(これもアカデミー主演男優賞ノミネート)と「ジョンとメリー」であるというのもスゴイですが、ゴールデングローブ卒業 1967 2.jpg賞新人賞を受賞した「卒業」の、その演技スタイルとは全く異なる演技をその後次々にみせているところがまたスゴイです(「卒業」で英国アカデミー賞新人賞を受賞し、「真夜中のカーボーイ」と「ジョンとメリー」で同賞主演男優賞を受賞している)。

真夜中のカーボーイQ.jpg 3作品共にアメリカン・ニュー・シネマと呼ばれる作品ですが、その代表作として最も挙げられるのは「真夜中のカーボーイ」でしょう。ニューヨークを逃れ南国のフロリダへ旅立つ乗り合いバスの中でリコが息を引き取るという終わり方も、その系譜を強く打ち出しているように思われます。「真夜中のカーボーイ」も「ジョンとメ真夜中のカーボーイs.jpgリー」も傑作であり、ダスティン・ホフマンはこの主演第2作と第3作で演技派としての名声を確立してしまったわけですが、個人的には「ジョンとメリー」の方が、ラストの明るさもあってかしっくりきました。一方の「真夜中のカーボーイ」の方は、ジョーとリコの奇妙な友情関係にホモセクシュアルの臭いが感じられ、当時としてはやや引いた印象を個人的には抱きましたが、2人の関係を精神的なホモセクシュアルと見る見方は今や当たり前のものとなっており、その分だけ、今観ると逆に抵抗は感じられないかも(但し、原作者のジェームズ・レオ・ハーリヒー自身はゲイだったようだ)。

ミスター・グッドバーを探して [VHS].jpg 「ジョンとメリー」に出てくる"Singles Bar"(独身者専門バー)を舞台としたものでは、リチャード・ブルックス(1912-1992/享年72)監督・脚本、ダイアン・キートン主演の「ミスター・グッドバーを探して」('77年)があり、こちらはジュディス・ロスナーが1975年に発表したベストセラー小説の映画化作品です。
ミスター・グッドバーを探して [VHS]

ミスター・グッドバーを探して1.jpg ダイアン・キートン演じる主人公の教師はセックスでしか自己の存在を確認できない女性で、原作は1973年にニューヨーク聾唖学校の28歳の女性教師がバーで知り合った男に殺害された「ロズアン・クイン殺人事件」という、日本における「東電OL殺人事件」(1997年)と同じように、当時のアメリカ国内で、殺人事件そのものよりも被害者の二面的なライフスタイルが話題となった事件を基にしており、当然のことながら結末は「ジョンとメリー」とは裏腹に暗いものでした。主人公の女教師は最後バーで拾った男(トム・ベレンジャー)に殺害されますが、その前に女教師に絡むチンピラ役を、当時全く無名のリチャード・ギアが演じています(殺害犯役のトム・ベレンジャーも当時未だマイナーだった)。

恋におちて 1984.jpg 何れもニューヨークを舞台にそこに生きる人間の孤独を描いたものですが、ニューヨークを舞台に男女の出会いを描いた作品がその後は暗いものばかりなっているかと言えばそうでもなく、ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープの演技派2人が共演した「恋におちて」('84年)や、メグ・ライアンとトム・ハンクスによるマンハッタンのアッパーウエストを舞台にしたラブコメディ「ユー・ガット・メール」('98年)など、明るいラブストーリーの系譜は生きています(「ユー・ガット・メール」は1940年に製作されたエルンスト・ルビッチ監督の「街角/桃色(ピンク)の店」のリメイク)。
「恋におちて」('84年)

ユー・ガット・メール 01.jpg 「恋におちて」はグランド・セントラル駅の書店での出会いと通勤電車での再会、「ユー・ガット・メール」はインターネット上での出会いと、両作の間にも時の流れを感じますが、前者はクリスマス・プレゼントとして買った本を2人が取り違えてしまうという偶然に端を発し、後者は、メグ・ライアン演じる主人公は絵本書店主、トム・ハンクス演じる男は安売り書店チェーンの御曹司と、実は2人は商売敵だったという偶然のオマケ付き。そのことに起因するバッドエンドの原作を、ハッピーエンドに改変しています。
「ユー・ガット・メール」('98年)

めぐり逢えたら 映画 1.jpg トム・ハンクスとメグ・ライアンは「めぐり逢えたら」('93年)の時と同じ顔合わせで、こちらもレオ・マッケリー監督、ケーリー・グラント、デボラ・カー主演の「めぐり逢い」('57年)にヒントを得ている作品ですが(「めぐり逢い」そのものが同じくレオ・マッケリー監督、アイリーン・ダン、シャルル・ボワイエ主演の「邂逅」('39年)のリメイク作品)、エンパイア・ステート・ビルの展望台で再開を約するのは「めぐり逢い」と同じ。但し、「めぐり逢い」ではケーリー・グラント演じるテリーの事故のため2人の再会は果たせませんでしたが、「めぐり逢えたら」の2人は無事に再開出来るという、こちらもオリジナルをハッピーエンドに改変しています。
「めぐり逢えたら」('93年)

 最近のものになればなるほど、男女双方または何れかに家族や恋人がいたりして話がややこしくなったりもしていますが、それでもハッピーエンド系の方が主流かな。興業的に安定性が高いというのもあるのでしょう。「恋におちて」は、古典的ストーリーをデ・ニーロ、ストリープの演技力で引っぱっている感じですが、2人とも出演時点ですでに大物俳優であるだけに、逆にストーリーの凡庸さが目立ち、やや退屈?(もっと若い時に演じて欲しかった)。但し、「恋におちて」「めぐり逢えたら」「ユー・ガット・メール」の何れも役者の演技はしっかりしていて、ストーリーに多分に偶然の要素がありながらも、ディテールの演出や表現においてのリアリティはありました。しかしながら、物語の構成としては"定番の踏襲"と言うか、「ジョンとメリー」を観て感じた時のような新鮮味は感じられませんでした。

 こうして見ると、ニューヨークという街は、「真夜中のカーボーイ」や「ミスター・グッドバーを探して」に出てくる人間の孤独を浮き彫りにするような暗部は内包してはいるものの、映画における男女の出会いや再会の舞台として昔も今もサマになる街でもあるとも言えるのかもしれません(ダスティン・ホフマンは同じ年に全く異なるキャラクターで、ニューヨークを舞台に孤独な男性の「明・暗」両面を演じてみせたわけだ。これぞ名優の証!)。


パスト ライブス 再会0.jpgパスト ライブス 再会1.jpg(●今度は韓国系の男女を主人公にした、ニューヨークでの再会物語が作られた。海外移住のため離れ離れになった幼なじみの2人が、24年の時を経てニューヨークで再会する7日間を描いた、セリーヌ・ソン監督のラブストーリー作品「パスト ライブス/再会」('23年)である。

 韓国・ソウルに暮らす12歳の少女ノラと少年ヘソンは、互いに恋心を抱いていたが、ノラの海外移住により離れ離8れになってしまう。12年後、24歳になったノラ(グレタ・リー)とヘソン(ユ・テオ)は、ニューヨークパスト ライブス 再会4.jpgとソウルでそれぞれの人生を歩んでいた。2人は、オンラインで再会を果たすが、互いを思い合っていながらも再びすれ違ってしまう。そして12年後の36歳、ノラは作家のアーサー(ジョン・マガロ)と結婚していた。ヘソンはそのことを知りながらも、ノラに会うためにニューヨークを訪れ、2人はやっと巡り合うのだが―。

昔の恋人が訪ねて来て再会を果たすのはいいが、わざわざ今の旦那に会わせる必要もないように思った。「旦那の気持ちにもなってみたら」と主人公に言いたい。)


ジョンとメリー [VHS]
JOHN AND MARY 1969.jpgジョンとメリーdvd3.jpg「ジョンとメリー」●原題:JOHN AND MARY●制作年:1969年●制作国:アメリカ●監督:ピーター・イェーツ●製作:ベン・カディッシュ●脚本:ジョン・モーティマー●撮影:ゲイン・レシャー●音楽:クインシー・ジョーンズ●原作:マーヴィン・ジョーンズ「ジョンとメリー」●時間:92分●出演:ダスティン・ホフマン/ミア・ファロー/マイケル・トーラン/サニー・グリフィン/スタンリー・ベック/三鷹オスカー.jpgタイン・デイリー/アリックス・エリアス●日本ジョンとメリーe.jpg公開:1969/12●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:三鷹東映(78-01-17)(評価:★★★★☆)●併映:「ひとりぼっちの青春」(シドニー・ポラック)/「草原の輝き」(エリア・カザン)三鷹東映 1977年9月3日、それまであった東映系封切館「三鷹東映」が3本立名画座として再スタート。1978年5月に「三鷹オスカー」に改称。1990(平成2)年12月30日閉館。

Dustin Hoffman and Mia Farrow/Photo from John and Mary (1969)
   
MIDNIGHT COWBOY.jpg「真夜中のカーボーイ」●原題:MIDNIGHT COWBOY●制作年:1969年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・シュレシンジャー●製作:ジェローム・ヘルマン●脚本:ウォルド・ソルト●撮影:アダム・ホレンダー●音楽:ジョン・バリー(主題曲「真夜中のカーボーイ」ハーモニカ演奏:トゥーツ・シールマンス)●原作:ジェームズ・レオ・ハーリヒー「真夜中のカーボーイ」●時間:113分●出演:ジョン・ヴ真夜中のカーボーイ 映画dvd.jpgォイト/ダスティン・ホフマン/シルヴィア・マイルズ/ジョン・マクギヴァー/ブレンダ・ヴァッカロ/バーナード・ヒューズ/ルース・ホワイト/ジェニ真夜中のカーボーイ2.jpgファー・ソルト/ボブ・バラバン●日本公開:1969/10●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:早稲田松竹(78-05-20)(評価:★★★★)●併映:「俺たちに明日はない」(アーサー・ペン)
真夜中のカーボーイ [DVD]


「卒業」●原題:THE GRADUATE●制作年:1967年●制作国:アメリカ●監督:マイク・ニコルズ●製作:ローレンス・ター卒業 1967 pster.jpgマン●脚本:バック・ヘンリー/カルダー・ウィリンガム●撮影:ロバート・サーティース●音楽:ポール・サイモン卒業 1967 1.jpg/デイヴ・グルーシン●原作:チャールズ・ウェッブ「卒業」●時間:92分●出演:ダスティン・ホフマン/アン・バンクロフト/キャサリン・ロス/マーレイ・ハミルトン/ウィリアム・ダリチャr-ド・ドレイファス 卒業.jpgニエルズ/エリザベス・ウィルソン/バック・ヘンリー/エドラ・ゲイル/リチャード・ドレイファス●日本公開:1968/06●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:池袋・テアトルダイヤ(83-02-05)(評価:★★★★)●併映:「帰郷」(ハル・アシュビー)
卒業 [DVD]
  
映画パンフレット 「ミスターグッドバーを探して」.jpg「ミスター・グッドバーを探して」●原題:LOOKING FOR MR. GOODBAR●制作年:1977年●制作国:アメリカ●監督・脚本:リチャード・ブルックス●製作:フレディ・フィールズ●撮影:ウィリアム・A・フレイカー●音楽:アーティ・ケイン●原作:ジュディス・ロスナー「ミスター・グッドバーを探して」●時間:135分●出演:ダイアン・キートン/アラン・フェインスタイン/リチャード・カイリー/チューズデイ・ウェルド/トム・ベレンジャー/ウィリアム・アザートン/リチャード・ギア●日本公開:1978/03●配給:パラマウント=CIC●最初に観た場所:飯田橋・佳作座(79-02-04)(評価:★★☆)●併映:「流されて...」(リナ・ウェルトミューラー)
映画パンフレット 「ミスターグッドバーを探して」監督リチャード・ブルックス 出演ダイアン・キートン

FALLING IN LOVE 1984.jpg恋におちて 1984 dvd.jpg「恋におちて」●原題:FALLING IN LOVE●制作年:1984年●制作国:アメリカ●監督:ウール・グロスバード●製作:マーヴィン・ワース●脚本:マイケル・クリストファー●撮影:ピーター・サシツDe Niro and  Keitel in 恋におちて.jpgキー●音楽:デイヴ・グルーシン●時間:106分●出演:ロバート・デ・ニーロ/メリル・ストリープ/ハーヴェイ・カイテル/ジェーン・カツマレク/ジョージ・マーティン/デイヴィッド・クレノン/ダイアン・ウィースト/ヴィクター・アルゴ●日本公開:1985/03●配給:ユニヴァーサル映画配給●最初に観た場所:テアトル池袋(86-10-12)(評価:★★★)●併映:「愛と哀しみの果て」(シドニー・ポラック)
恋におちて [DVD]
Meryl Streep and Robert De Niro/Harvey Keitel and Robert De Niro in 恋におちて (1984)
1984 Falling in Love.jpg

YOU'VE GOT MAIL.jpgユー・ガット・メール dvd.jpg「ユー・ガット・メール」●原題:YOU'VE GOT MAIL●制作年:1998年●制作国:アメリカ●監督:ノーラ・エフロン●製作:ノーラ・エフロン/ローレン・シュラー・ドナー●脚本:ノーラ・エフロン/デリア・エフロン●撮影:ジョン・リンドリー●音楽:ジョージ・フェントン●原作:ミクロス・ラズロ●時間:119分●出演:トム・ハンクス/メグ・ライアン/グレッグ・キニア/パーカー・ポージー/ジーン・ステイプルトン/スティーヴ・ザーン/ヘザー・バーンズ/ダブニー・コールマン/ジョン・ランドルフ/ハリー・ハーシュ●日本公開:1999/02●配給:ワーナー・ブラザース映画配給(評価:★★★)ユー・ガット・メール [DVD]

SLEEPLESS IN SEATTLE.jpgめぐり逢えたら 映画 dvd.jpg「めぐり逢えたら」●原題:SLEEPLESS IN SEATTLE●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:ノーラ・エフロン●製作:ゲイリー・フォスター●脚本:ノーラ・エフロン/デヴィッド・S・ウォード●撮影:スヴェン・ニクヴィスト●音楽:マーク・シャイマン●原案:ジェフ・アーチ●時間:105分●出演:トム・ハンクス/メグ・ライアン/ビル・プルマン/ロス・マリンジャー/ルクランシェ・デュラン/ルクランシェ・デュラン/ギャビー・ホフマン/ヴィクター・ガーバー/リタ・ウィルソン/ロブ・ライナー●日本公開:1993/12●配給:コロンビア映画(評価:★★☆)めぐり逢えたら コレクターズ・エディション [DVD]

パスト ライブス 再会3.jpg「パスト ライブス/再会」●原題:PAST LIVES●制作年:2023年●制作国:アメリカ●監督・脚本:セリーン・ソン●製作:デイヴィッド・イノヨーサ/クリスパスト ライブス 再会2.jpgチン・ヴァション/パメラ・コフラー●撮影:シャビエル・キーシュナー●音楽:クリストファー・ベア/ダニエル・ローセン●時間:106分●出演:グレタ・リー/ユ・テオ/ジョン・マガロ/ユン・ジヘ/チェ・ウォニョン●日本公開:2024/04●配給:ハピネットファントム・スタジオ●最初に観た場所:Bunkamura ル・シネマ渋谷宮下(24-05-06)((評価:★★☆)

 

「●映画」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1779】 江藤 努 (編) 『映画イヤーブック 1993
「●さ行の外国映画の監督②」の インデックッスへ 「●か行外国映画の監督」の インデックッスへ 「●や‐わ行の外国映画の監督①」の インデックッスへ 「●「ロンドン映画批評家協会賞 作品賞」受賞作」の インデックッスへ(「テルマ&ルイーズ」)「●「サターンSF映画賞」受賞作」の インデックッスへ(「ターミネーター」「ターミネーター2」)「●スーザン・サランドン 出演作品」の インデックッスへ(「テルマ&ルイーズ」)「●ハーヴェイ・カイテル 出演作品」の インデックッスへ(「テルマ&ルイーズ」)「●ブラッド・ピット 出演作品」の インデックッスへ(「テルマ&ルイーズ」)「●デヴィッド・ボウイ 出演作品」の インデックッスへ(「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間」) 「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ(「テルマ&ルイーズ」)「●TV-M (その他)」の インデックッスへ(「ツイン・ピークス(全30話)」)「●海外のTVドラマシリーズ」の インデックッスへ (「ツイン・ピークス」) 「○都内の主な閉館映画館」の インデックッスへ(文化シネマ2)

'91年公開作品で個人的◎は「テルマ&ルイーズ」。この年は「ツイン・ピークス」の年だった。

映画イヤーブック 1992 1.JPG映画イヤーブック 1992.jpg  テルマ&ルイーズ dvd.jpg ターミネーター2 dvd.jpg ツイン・ピークス dvd.jpg映画イヤーブック〈1992〉 (現代教養文庫)』「テルマ&ルイーズ (スペシャル・エディション) [DVD]」「ターミネーター2 特別編 [DVD]」「ツイン・ピークス ファーストシーズン [DVD]

 現代教養文庫の『映画イヤーブック』の1992年版で、1991年に劇場公開された洋画413本、邦画151本。計564本のデータを収めるほか、映画祭、映画賞の記録、オリジナル・ビデオムービー、未公開ビデオデータなども網羅しています(付録の部分が充実して、前年版より約50ページ増の470ページに)。

 本書での最高評価になる「四つ星」作品は、「わが心のボルチモア」「ワイルド・アット・ハート」「ニキータ」「マッチ工場の少女」「ダンス・ウィズ・ウルブス」「羊たちの沈黙」「エンジェル・アット・マイ・テーブル」「ターミネーター2」「コルチャック先生」「テルマ&ルイーズ」「真実の瞬間(とき)」「ボイジャー」「髪結いの亭主」「トト・ザ・ヒーロー」など、一方、邦画で四つ星は、大林宣彦監督の「ふたり」、山田洋次監督の「息子」、北野武監督の「あの夏、いちばん静かな海」、竹中直人監督の「無能の人」の4本だけで、分母数が違うけれどこの頃は概ね「洋高邦低」が続いた時期だったのかもしれません。

テルマ&ルイーズ ジーナ・デイビス.jpgテルマ&ルイーズ1.bmp 個人的なイチオシは、リドリー・スコット監督の「テルマ&ルイーズ」('91年/米)で、専業主婦のテルマ(ジーナ・デイヴィス)とレストランでウエイトレスとして働く独身女性のルイーズ(スーザン・サランドン)の親友同士が週末旅行に出掛けた先で、自分たちをレイプしようとした男を射殺したことから、転じて逃走劇になるという話(ロンドン映画批評家協会賞「作品賞」「女優賞(スーザン・サランドン)」受賞作)。

テルマ&ルイーズ2.bmp リドリー・スコットが女性映画を撮ったという意外性もありましたが、ジーナ・デイヴィスとスーザン・サランドンが、どんどん破局に向かいつつも、その過程においてこれまでの束縛や因習から解放され自由になっていく女性を好演し、彼女ら追いつつも彼女らの心情を理解し、何とか連れ戻したいとテルマ&ルイーズ ハーヴェイ・カイテル.jpgテルマ&ルイーズ ブラッド・ピット.jpg思う警部役のハーベイ・カイテルの演技も良かったです(まださほど知られていない頃のブラッド・ピットが、彼女らの金を持ち逃げするヒッチハイカー役で出ていたりもした)。
ハーヴェイ・カイテル(全米映画批評家協会賞「助演男優賞」受賞)/ブラッド・ピット

 逃避行の背景となる西部の大自然を、映像に凝るリドリー・スコット監督らしく美しく撮っていて、最後は何台ものパトカーによりグランドキャニオンの絶壁に2人は追いつめられるのですが、こうなると結末は見えてしまうものの(「明日に向かって撃て!」の現代女性版だね)、からっとした爽快感があって、ある種、日常生活や夫の面倒にかまけ、生きることに飽いている女性の「夢」を描いた作品と言えるかも(アメリカの女性ってそんなに鬱々とした日常を生きているのか?―でも、ある層はそうかもしれないなあ)。


ターミネーター2 01.jpg 「ダンス・ウィズ・ウルブス」といったアカデミー賞受賞作品と並んで「羊たちの沈黙」や「ターミネーター2」が星4つの評価を得ているというのがこの年の特徴でしょうか。

ターミネーター2L.jpg ジェームズ・キャメロン監督の「ターミネーター2」('91年/米)は、形状記憶疑似合金でできたT1000型ターミネーターが登場したものでしたが、この作品の前に「アビス」('89年)を撮り、ずっと後に「アバター」('09年)を撮ることになるターミネーター2 t1000.jpgジェームズ・キャメロン監督らしい特撮CGが冴えていたように思われ、T1000型を演じるロバート・パトリックも、華奢なところがかえって凄味がありました。一方、アーノルド・シュワルツネッガーが演じる旧タイプのT800型ターミネーターを善玉にまわしてヒューマンにした分、前作「ターミネーター」に比べ甘さがあるように思いました(これ、本書において山口猛氏が書いている批評とほぼ同じなのだが、山口氏の評価は最高評価になる星4つ)。IMDb評価は、「ターミネーター」が[8.1]、「ターミネーター2」が[8.6]で、「2」が上になっています。後からまとめて観た人は「2」の方がいいのかもしれないけれど、それぞれリルタイムで観た自分の場合、「1」のインパクトが大きかったです。

 「ターミネーター」('84年/米・英)はアーノルド・シュワルツネッガーを一気にスターダムに押し上げた作品でしたが、ジェームズ・キャメロン監督にとっても監ターミネーター14.png督デビュー作「殺人魚ターミネーター00.jpgフライング・キラー」(81年)に続く監督2作目であり、彼の出世作と言えます。ジェームズ・キャメロン監督はシュワルツネッガーと1度会食をしただけで、キャリアが浅く当初脇役で出演の予定だった彼をT800型ターミネーター役に抜擢することを決めたそうですが、シュワルツネッガーの全裸での登場シーンから始まって、そのストロングタイプのヒールぶりは今振り返ってもターミネーター    .jpg強烈なインパクトがあったように思います。ただ、この作品の後、「ターミネーター2」との間の7年間の間隔があり(ヒットしたB級映画にありがちだが、すぐにでも続編を撮りたいところが版権が複数社に跨っており、撮ろうにもなかなか撮れなかった)、その間にターミネーター01.pngシュワルツネッガーは「レッドソニア」「コマンドー」「ゴリラ」「プレデター」「バトルランナー」「レッドブル」「ツインズ」「トータル・リコール」「キンダガートン・コップ」といった作品に主演しており、こうなるともう悪役には戻れない...。特に「ツインズ」や「キンダガートン・コップ」といったコメディもそつなくこなしているのが大きいと思われ、人気面だけでなく演技面でも、「コナン・ザ・グレート」('82/米)でラジー賞の"最低男優賞"になってしまった人とは思えない成長ぶりでした(このことが「ターミネーター2」の"ヒューマンなターミネーター"役につながっていくわけか)。 

ツイン・ピークス dvd2.jpgツイン・ピークス1.jpg 因みに、91年は、これも映像表現に特徴のあるデイヴィッド・リンチ監督のテレビ・シリーズ「ツイン・ピークス」が6月にWOWOWで日本で初公開、9月にビデオがリリースされており、日本中のレンタルビデオ店が「ツイン・ピークス」入荷&予約待ち状態になるという大ブームになりましたが、この作品もある意味「脱日常」的な作品だったなあと(まあ、「Xファイル」にしろ「LOST」にしろ、どれもみんな「脱日常」なのだが)。

ツイン・ピークス2.jpg ビデオ14巻、全29話(パイロット版(「序章」)を含めると30話)、25時間強のサスペンス・ミステリーですが、毎回毎回いつもいいところで終わるので、続きを観るまで禁断症状になるという(あの村上春樹も米国でリアルタイムでハマったという)―ラストは腑に落ちなかったけれども(「えーっツイン・ピークス31.jpg、これが結末?」という感じか)、そのことを割り引いてもテレビ・ムービーの金字塔と言えるのでは(デイヴィッド・リンチによると、このラストはあくまでも第2シーズンの最終話に過ぎず、「ツイン・ピークス」という物語そのものの結末ではないとのことだが、続編は未だ作られていない)。(●その後、2017年に物語の25年後を描いた「リミテッド・イベント・シリーズ(全18話)」(邦題「ツイン・ピークス The Return」)が作られた。)

 この作品のパイロット版は、もともとTVシリーズの第1話として作られたものですが、ヨーロッパへの輸出用に作られた、それ自体で映画として完結するインターナショナル・ヴァージョンが当時リリースされており、本編の「謎とき」とまではいかないですが、背景の説明としてガイド的役割を果たしています(ウィキペディアでは本作には「2種類の序章」があるとの言い方をしている)。
  
ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間.jpg また、'92年に「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間」という劇場版が作られ、本編との矛盾もあるものの、こちらも本編の解説的役割を果たしています(と言っても、到底一筋縄で解るといったものではないけれど)。
ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間 [DVD]
 TV版の雰囲気をしっかり引き継いでいるし(むしろデイヴィッド・リンチ的な雰囲気はより前面に出ている)、"壊れゆくローラ"を演じたシェリル・リーの演技も悪くない。ある意味、TV版の結末よりも正統派的な展開なのかもしれないけれど、メタファーの大部分が理解不能だったなあ。《ツイン・ピークス・フリークス》と言われる人のサイトを見て、なるほどそういうことなのかと理解した次第(登場人物そのものがメタファーだったりしてるわけだ)。まあ、TVシリーズを最後まで観てから映画を観た方がいいに違いはありません(それでも、よく解らないところが多かったのだが)。

THELMA & LOUISE 2.jpgTHELMA & LOUISE.jpg「テルマ&ルイーズ」●原題:THELMA & LOUISE●制作年:1989年●制作国:アメリカ●監督:リドリー・スコット●製作:リドリー・スコット/ミミ・ポーク●脚本:カーリー・クーリ●撮影:エイドリアン・ビドル●音楽:ハンス・ジマー●時間:129分●出演:スーザン・サランドン/ジーナ・デイヴィス/ハーヴェイ・カイテル/マイケル・マドセン/ブラッド・ピット●日本公開:1991/10●配給:松竹富士(評価:★★★★☆)

ターミネーター2-15.jpg「ターミネーター2」●原題:TERMINATOR2:JUDGMENT DAY●制作年:1991ターミネーター2 02.jpg年●制作国:アメリカ●監督・製作:ジェームズ・キャメロン●脚本ジェームズ・キャメロン/ウィリアム・ウィッシャー●撮影:アダム・グリーンバーグ●音楽:ブラッド・フィーデル●時間:137分(公開版)/154分(完全版)●出演:アーノルド・シュワルツェネッガー/リンダ・ハミルトン/エドワード・ファーロング/ロバート・パトリック/アール・ボーエン/ジョー・モートン/ジャネット・ゴールドスタイン●日本公開:1991/08●配給:東宝東和(評価:★★★)

ターミネーター ps.jpgターミネーター25.jpg「ターミネーター」●原題:THE TERMINATOR●制作年:1984年●制作国:アメリカ/イギリス●監督:ジェームズ・キャメロン●製作:ゲイル・アン・ハード●脚本:ジェームズ・キャメロン/ゲイル・アン・ハードターミネーター03.png●撮影:アダム・グリーンバーグ●音楽:ブラッド・フィーデル●時間:108分●出演:新宿文化シネマ2.jpgアーノルド・シュワルツェネッガー/マイケル・ビーン/リンダ・ハミルトン/ポール・ウィンフィールド/ランス・ヘンリクセン/リック・ロッソヴィッチ/ベス・マータ/ディック・ミラー●日本公開:1985/05●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場所:新宿・文化シネマ2 (85-05-26) (評価:★★★☆)
新宿文化シネマ2 2006(平成18)年9月15日閉館、2006(平成18)年12月9日〜文化シネマ1・4が「新宿ガーデンシネマ1・2」としてオープン(2008(平成20)年6月14日「角川シネマ館」に改称)、文化シネマ2・3が「シネマート新宿1・2」としてオープン

Twin Peaks (1990)
Twin Peaks (1990).jpg
Twin Peaks (ABC 1990).jpgツイン・ピークス.jpg「ツイン・ピークス(全30話)」●原題:TWIN PEAKS●制作年:1990~1991年●制作国:アメリカ●監督:デヴィッド・リンチ 他●時間:24時間(全30回)●出演:カイル・マクラクラン/ミゲル・フェラー/マイケル・オントキーン/ジョアン・チェン/シェリル・リー/シェリリン・フェン/ララ・フリン・ボイル/メッチェン・エイミック/ペギー・リプトン/レイ・ワイズ/ラス・タンブリン/ミゲル・ファーラー/デヴィッド・リンチ●日本放映:1991/04 WOWOW 初公開/1991/06~ TBS(評価★★★★☆)
ツイン・ピークス ゴールド・ボックス アンコール [DVD]」(2016)25時間3分
ツイン・ピークス4.bmp「ツイン・ピークス」 Twin Peaks (ABC 1990/04~1991/06) ○日本での放映チャネル: WOWWOW(1991)
                                
【ツイン・ピークス主要登場人物】
ツイン・ピークス登場人物.jpg(1段目)デイル・クーパー捜査官(カイル・マクラクラン)/ローラ・パーマー(シェリル・リー)/アルバート・ローゼンフィールド捜査官(ミゲル・フェラー)/ハリー・S・トルーマン保安官(マイケル・オントキーン)/ハリーの部下、アンディ・ブレナン(ハリー・ゴアズ)/(2段目)ホーク保安官補佐(マイケル・ホース)/署の受付嬢ルーシー(キミー・ロバートソン)/ローラの同級生ドナ・ヘイワード(ララ・フリン・ボイル)/ローラの同級生オードリー・ホーン(シェリリン・フェン)/シェリー・ジョンソン(メッチェン・アミック)/(3段目)製材所経営者の未亡人ジョスリン・パッカード(ジョアン・チェン)/ボビー・ブリッグス(ダナ・アッシュブルック)/マイク・ネルソン(ゲイリー・ハーシュバーガー)/ローラの同級生ジェームズ・ハーレイ(ジェームズ・マーシャル)/シェリーの夫レオ・ジョンソン(エリック・ダ・レー)/(4段目)小さな男(マイケル・アンダーソン)/片腕の男(アル・ストロベル)/丸太おばさん(キャサリーン・コウルソン)/ネィディーン・ハーレイ(ウェンディ・ロビー)/謎の男ボブ(フランク・シルバ)

ジョアン・チェン3.jpgジョアン・チェン/ベルナルド・ベルトルッチ監督「ラストエンペラー」('87年/伊・中国・英)・デヴィッド・リンチ監督「ツイン・ピークス」('90/英)・アン・リー監督「ラスト、コーション」('07年/米・中国・台湾・香港)

      
「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間」●原題:TWIN PEAKS THE LUST SEVEN DAYS OF LAURA PALMER(Twin Peaks:Fire Walk With Me)●制作年:1TWIN PEAKS THE LUST SEVEN DAYS OF LAURA PALMER21.jpgTWIN PEAKS THE LUST SEVEN DAYS OF LAURA PALMER1.jpg992年●制作国:アメリカ●監督:デイヴィッド・リンチ●製作:グレッグ・ファインバーグ●脚本:デイヴィッド・リンチ/ロバート・エンゲルス●撮影:ロン・ガルシア●音楽:アンジェロ・バダラメンティ●時間:135分●出演:シェリル・リー/レイ・ワイツイン・ピークスローラ・パーマー最期の7日間.jpgズ/メッチェン・アミック/カイル・マクラクラン/デヴィッド・ボウイ/ミゲル・フェラー/キーファー・サザーランド/ダナ・アシュブルック/フィービー・オーガスティン●日本公開:1992/05●配給:日本ヘラルド映画(評価:★★★?)

カイル・マクラクラン(デイル・クーパーFBI捜査官)/デヴィッド・ボウイ(フィリップ・ジェフリーズFBI捜査官...映画版のみ出演)/ミゲル・フェラー(アルバート・ローゼンフィールドFBI捜査官)

 
デビッド・リンチ.jpgデイヴィッド・リンチ(映画監督)2025年1月15日逝去。78歳。人気ドラマシリーズ「ツイン・ピークス」や、映画「マルホランド・ドライブ」など、カルト的人気を得た多くの作品で知られる。
「朝日新聞」2025年1月18日朝刊
リンチ死去.jpg

ラッキー 映画02.jpgラッキー」 (17年/米)ジョン・キャロル・リンチ監督
デヴィッド・リンチ(ペットの陸ガメ"ルーズベルト"の失踪を嘆く白い帽子の男)/ハリー・ディーン・スタントン(ブラッディ・マリーを手にする男)

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「初体験/リッジモント・ハイ」 (82年/米)2.jpg 主役を食ったロバート・デ・ニーロ、映画を食ってしまったショーン・ペン。

ミーン・ストリート dvd.jpg Mean Streets.jpg 初体験リッジモント・ハイ dvd.jpg 初体験/リッジモント・ハイ dvd.jpg
ミーン・ストリート [DVD]」Harvey Keitel(ハーヴェイ・カイテル),Robert De Niro「初体験 リッジモント・ハイ [DVD]」/「初体験リッジモント・ハイ コレクターズ・エディション [DVD]」Phoebe Katz(フィービー・ケイツ)

「ミーン・ストリート」_1.jpgMEAN STREETS 2.jpg 「ミーン・ストリート」('73年/米)は、マーティン・スコセッシ 監督の初期の映画で、しがないヤクザ者のチャーリー(ハーヴェイ・カイテル)が、組織に対する忠誠心や自分の生き方に自信を持てないでいる一方、気分によって仕事をし、酒・博打・女による借金で首が回らなくなっている親友のジョニーボーイ(ロバート・デニーロ)をかばい続けるがばかりに、共に窮地に追い詰められていく―という話。

MEAN STREETS.jpg  本来の主役はハーヴェイ・カイテルであり、親友を巡って葛藤する青年を見事に演じているのですが、それを凌いでいるのが、ジョニーボーイという無頼のキャラクターを演じているロバート・デ・ニーロ(当時29歳)の演技で、そのハチャメチャぶりと破滅型人格の底に滲む哀感には、当時スゴい役者が現れたものだと思わせるものがあったのではないでしょうか。

 ロバート・デ・ニーロはその後、「ゴッドファーザーPARTII」('74年/米)に出演し、「タクシードライバー」('76年/米)では、ハーヴェイ・カイテルと主演・助演が入れ替わっていますが、「ミーン・ストリート」の時点で、すでに主役を食っていたなあと(「タクシードライバー」の3年前に作られたこの映画の日本での公開は、「タクシードライバー」公開の4年後だった)。

RIDGEMONT HIGH.jpgフィービー・ケイツ リッチモンドハイ.bmp 「初体験/リッジモント・ハイ」('82年/米)は(故・伊藤計劃の『虐殺器官』('07年/早川書房)を読んでいたら、この映画のことがちらっと出imagesI35HWSBZ.jpgてきた)、アメリカの高校生達の恋と青春を描いた作品で、当時人気のフィービー・ケイツ(Phoebe Cates、中初体験/リッジモント・ハイ   .jpg学生のようなルックスと大学生のような肉体の持ち主である彼女には、ロシア系、中国系などの血が混ざっている)を中心に据えたアイドル映画ですが(ストーリー上の主人公はジェニファー・ジェイソン・リーJennifer Jason Leigh)、学生になりすまして母校リッジモント・ハイに潜入し若者たちの生態を観察したキャメロン・クロウの同名原作が元になっており、高校生の実態を世の大人たちに知らしめる啓蒙的意図を持った作品でもあったようです。

グレムリン 00.jpgPhoebe Cates in Gremlins.jpgフィービー・ケイツ ロードショー.jpg フィービー・ケイツはこの作品の2年後、ジョー・ダンテ監督の「グレムリン」('84年/米)に主演し、日本でもその年(昭和59年)のクリスマス映画として公開されましたが大ヒットし(そもそも"モグワイ"という珍獣は、クリスマス・プレゼントだった。どうしてグレムリン  dvd.jpgアメリカでは6月公開だったのか)、彼女の日本での人気も一気に高まりました。あの中で、彼女演じる少女がクリスマスが嫌いだと言って、その理由が、自分の父親がクリスマスにいなくなって、1年後に煙突掃除したらサンタクロースの格好をした父親が出てきた、途中で詰まって死んじゃったんだという話を、可愛い顔してさらっとしてみせるのにはややビックリしました(ジョー・ダン監督特有のブラックユーモアだったのだろなあ)。

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RIDGEMONT HIGH 1.jpg フィービー・ケイツが日本でホントにブレイクしたのは、やはり「グレムリン」ではないでしょうか。個人的には、この「初体験/リッジモント・ハイ」を観て最も印象に残ったのは、教室内の不良少年の1人で、その悪ガキぶりは演技を超えて本物の不良に見え、しかも、本当に少しキレてしまっているような感じさえありました。この不良少年を演じたのがショーン・ペンで(Sean Penn、当時22歳と高校生役にしては結構老けていた)、ちょっと狂った若者を映画に出させたわけではなく、やはり類稀なる演技力の賜物だったのだと、後で思いました(前年の「タップス」('81年/米)にも出ていたらしいが、坊主頭のトム・クルーズ(当時19歳)の方が印象深い)。

Fast-Times-at-Ridgemont-High.jpg その後、ショーン・ペンの方は、デ・ニーロを超える2度のアカデミー主演男優賞を受賞するまでの俳優になっていますが、「リッジモント・ハイ」に関して言えば、こんなたわいもないアイドル映画(乃至は"啓蒙映画")の中に置くにはあまりに"規格外"な存在であり、作品そのものの予定調和を掻き乱し、結果として映画そのものを食ってしまったという印象があります。

FAST TIMES AT RIDGEMONT HIGH.jpg 映画公開時は準主役というより脇役に近かったと思いますが(ポスターの右上に小さく写真が出ているだけ)、最近のDVDカバーなどでは彼の写真が前面に使われていて、「無名時代のショーン・ペンを観ることが出来る作品」というのがウリになっているのかも(売り出し前のニコラス・ケイジフォレスト・ウィッテカー、後の「ER」のグリーン先生ことアンソニー・エドワーズなども高校生役で出ている)。

『ミーン・ストリート』(1973).jpg「ミーン・ストリート」●原題:MEAN STREETS●制作年:1973年●制作国:アメリカ●監督:マーティン・スコセッシ●製作:マーティン・スコセッシ/ジョナサン・T・タプリン●脚本:マーティン・スコセッシ/マーディック・マーティン●撮影:ケント・ウェイクフォード●時三鷹オスカー.jpg間:115分●出演:ロバート・デ・ニーロ/ハーヴェイ・カイテル/デヴィッド・プローヴァル/エイミー・ロビンソン/ロバート・キャラダイン/デヴィッド・キャラダイン/リチャード・ロマナス●日本公開:1980/11●配給:ワーナー・ブラザース映画●最初に観た場所:三鷹オスカー(81-03-18)(評価:★★★★)●併映「アリスの恋」(マーティン・スコセッシ)

初体験/リッジモント・ハイ2.jpg「初体験/リッジモント・ハイ」●原題:FAST TIMES AT RIDGEMONT HIGH●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:エイミー・ヘッカーリング●製作:アート・リンソン/アーヴィング・エイゾフ●脚本:キャメロン・クロウ●撮影:マシュー・F・レオネッティ●音楽:アーヴィング・エイゾフ●原作:キャメロン・クロウ●時間:90分●出演:ジェニファー・ジェイソン・リー/フィービー・ケイツ/ショーン・ペン/ジャッジ・ラインホールド/ニコラス・コッポラ/ニコラス・ケイジ/フォレスト・ウィッテカー/ブライア初体験/リッジモント・ハイ ポスター.jpgン・ベッカー/ヴィンゼント・スキャベリ/アンソニー・エドワーズ/エリック・ストルツ●日本公開:1982/11●配給:ユニヴァーサル=CIC●最初に観た場所:中中野武蔵野ホール.jpg野武蔵野館(83-07-02)(評価:★★☆)●併映「マイ・ライバル」(ロバート・タウン) 
[上左]「初体験/リッジモント・ハイ」映画公開時ポスター(ショーン・ペンの写真は右上丸囲み内)

「グレムリン」ザック・ギャリガン/フィービー・ケイツ
「グレムリン」ザック・ギャリガン/フィービー・ケイツ.jpgグレムリン000.jpg「グレムリン」●原題:GREMLINS●制作年:1984年●制作国:アメリカ●監督:ジョー・ダンテ●製作:マイケル・フィネル●脚本:クリス・コロンバス●撮影:ジョン・ホラ●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●時間:106分●出演:ザック・ギャリガン/フィービー・ケイツ/ホイト・アクストン/フランシス・リー・マッケイン/ポリー・ホリデイ/コリー・フェルドマン●日本公開:1984/12●配給:ワーナー・ブラザース映画●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(84-12-29)(評価:★★★)

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危うい偶然に支えられた主人公のブレークスルー。何と言ってもロバート・デ・ニーロの演技。
taxi driver 1976 poster.jpg
タクシードライバー2.jpgタクシードライバー1.jpg  タクシードライバー パンフレット.jpg
タクシードライバー コレクターズ・エディション [DVD]」 /パンフレット
Taxi Driver(1976) マーティン・スコセッシ/ロバート・デ・ニーロ
Taxi Driver(1976).jpgマーティン・スコセッシ 「タクシードライバー」.jpg 海兵隊上がりの不眠症の男トラヴィス(ロバート・デ・ニーロ)がタクシードライバーの仕事に就く場面から始まるこの映画は、ニューヨークという大都会の中で、運転手仲間ともうちとけず、女性(シビル・シェパード)にもフラれ、孤独に生きる彼が、社会に対する漠たる憤りや自らの無力感、虚しさを募らせ、徐々に精神が病んでいく様が見事に描かれていたように思います。やがて彼は、独自の腐敗浄化計画のようなものに傾倒し、自らの身体を鍛え、銃器を購入し、まず、彼が偽善的だと感じた大統領候補の暗殺を図るも果たせず、今度は、たまたま知り合った少女(ジョディ・フォスター)がヒモ男(ハーヴェイ・カイテル)に囲われている、腐敗と搾取に満ちた売春宿を襲撃して、その結果、街のヒーローになる―。

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TD3.jpg 「大統領候補の暗殺」と「売春窟の掃討」という行動が、トラヴィスの中では同じベクトル上にあるというのが、必ずしも説明的に描かれているのではないのに観ていてよくわかるというのが、この映画のスゴイところかも。「大統領候補の暗殺」を果たしてしまえば、彼は「凶悪犯」になっていたわけで、それが、最終的には「ヒーロー」になってしまうというある意味の逆説が、鮮やかに描かれているように思えました。

 近年は日本でも、本来は1人で行う自殺行為が自己顕示的な形に置き代わって周囲を巻き込んだと言えるのではないかと思われるタイプの犯罪が見られるようになりましたが、「売春窟の掃討」を果たした彼が拳銃自殺をイメージしている(ように見えた)場面には、こうした行為の予兆的なものを感じます。

「タクシードライバー」3.jpgTaxi Driver (Martin Scorsese).jpg しかし、銃弾が尽きていたためトラヴィスは自殺もせず、結果として生き残り、以前と同じようにタクシーで街を流しますが、前に自分のことをフッた女性(シビル・シェパード)をたまたま客として乗せても、ゆったりとした気持ちで彼女を迎えることができる―。

「タクシードライバー」7.jpg 1人の男のレベルで見れば、ある種のブレークスルー・ムービーであり"ハッピーエンド"になっているわけですが、そこに至るまでに、「大統領候補の暗殺」の失敗と「自殺」の未遂という2つの偶然があったというのが、いかにも危ういのではないでしょうか(個人的にはラストをブレークスル―と解したが、実は主人公は事件で死んでおり、ラストはその死の前に主人公が見た白日夢であるとの解釈もあるらしい)。

ハーヴェイ・カイテル/ロバート・デ・ニーロ
   
ジョディ・フォスター タクシードライバー.jpgタクシードライバー3.jpg この作品はアカデミー賞の作品賞や主演男優賞などにノミネートされましたが、作品賞は「ロッキー」という有力候補があったために獲れなかったのは仕方なかったのかもしれないけど、結局アカデミー賞に関してはどの賞も獲っていないのが意外です(ロバート・デ・ニーロは'80年の「レイジング・ブル」で主演男優賞淀川長治2.jpgを受賞)。「タクシードライバー」におけるロバート・デ・ニーロの演技について故・淀川長治が当時、「ああいう演技をするにはとてつもない集中力が必要なはず」と言っていたのが印象的でした。

タクシードライバー」02.jpgタクシードライバー」03.jpg 共演のジョディ・フォスターは後にアカデミー主演女優賞を2度受賞するまでの女優になっていますが(「告発の行方」('88年)と「羊たちの沈黙」('96年))、彼女も、この作品でのロバート・デ・ニーロの演技を見て(当時まだ13歳だったのだが) "演技開眼"したと後に述べています(ロバート・デ・ニーロはこの作品で、ニューヨーク、全米、ロサンゼルスの3大映画批評家協会賞の「主演男優賞」を受賞しているが、ジョディ・フォスターもこの作品で全米映画批評家協会賞の「助演女優賞」を受賞している)。

Cybill Shepherd in TAXI DRIVER/MOONLIGHTING
シビル・シェパード 1.jpgこちらブルームーン探偵社.jpg 作中でトラヴィスがアタックをかける女性を演じたシビル・シェパードは、その後テレビシリーズ「こちらブルームーン探偵社」(1985-1989)で主役に抜擢され、「タクシー・ドライバー」の中ではクールなキャリア・ウーマンという感じでしたが、「こちらブルームーン探偵社」ではコメディタッチのドラマ展開の中でその演技の幅を見せて、1986年、1987年と連続してゴールデン・グローブシビル・シェパード.jpg賞(テレビシリーズ・コメディー・ミュージカル部門)のこちらブルームーン探偵社 dvd.jpg最優秀女優賞を獲得、共演のシリーズ当初は無名だったブルース・ウィルスも1987年に最優秀男優賞を獲得し(エミー賞・ドラマシリーズ部門の主演男優賞も獲得)、それが彼の「ダイ・ハード」('88年)の主役の座へのオファーに繋がっています。

「こちらブルームーン探偵社」MOONLIGHTING (ABC 1985~1989) ○日本での放映チャネル:NHK(1986~1993)

タクシードライバー」01.jpgタクシー・ドライバー チラシ.jpg「タクシードライバー」●原題:TAXI DRIVER●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:マーティン・スコセッシ●製作:マイケル・フィリップス/ジュリア・フィリップス●脚本:ポール・シュレイダー●撮影:マイケル・チャップマン●音楽:バーナード・ハーマン●時間:114分●出演:ロバーTAXI DRIVER.PETER BOYLE AND ROBERT DE NIRO.jpgト・デ・ニーロ/シビル・シェパード/ジョディ・フォスター/ハーヴェイ・カイテル/ピーター・ボイル/アルバート・ブルックス/マーティン・スコセッシ/ジョー・スピネル/ダイアン・アボット/レナード・ハリス/ヴィクター・アルゴ/ガース・エイヴァリー/リチャード・ヒッグス/ロバート・マルコフ、/ハリー・ノーサップ/スティーブン・プリンス●日本公開:1976/09●配給:コロムビア映画●最初に観た場所:早稲田松竹(77-11-05)●2回目:池袋文芸坐(79-02-11)●3回目:三鷹オスカー(81-03-18)●4回目:早稲田松竹(85-03-23)(評価:★★★★★)●併映(1回目):「アメリカングラフィティ」(ジョ早稲田松竹 予定表.jpg早稲田松竹.jpgージ・ルーカス)早稲田松竹内.jpg●併映(2回目):「ローリング・サンダー」(ジョン・フリン)●併映(3回目):「アリスの恋」(マーティン・スコセッシ)/「ミーン・ストリート」(マーティン・スコセッシ)●併映(4回目):「ミッドナイト・エクスプレス」(アラン・パーカー) 早稲田松竹 1951年封切館としてオープン、1975年からいわゆる「名画座」に。2002年4月1日閉館、有志の手で2002年12月21日再建、2003年1月25日から本格的再開。

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「●か行外国映画の監督」の インデックッスへ 「●ま行の外国映画の監督」の インデックッスへ「●エンニオ・モリコーネ音楽作品」の インデックッスへ(「ディスクロージャー」)「●武満 徹 音楽作品」の インデックッスへ(「ライジング・サン」) 「●ドナルド・サザーランド 出演作品」の インデックッスへ(「ディスクロージャー」「大列車強盗」) 「●ショーン・コネリー 出演作品」の インデックッスへ(「大列車強盗」「ライジング・サン」)「●ハーヴェイ・カイテル 出演作品」の インデックッスへ(「ライジング・サン」)「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「●く マイケル・クライトン」の インデックッスへ 「○海外サスペンス・読み物 【発表・刊行順】」の インデックッスへ「●ハヤカワ・ノヴェルズ」の インデックッスへ(『ディスクロージャー』『大列車強盗』)

多才な人だったマイケル・クライトン。年下の女性上司からの強烈な「逆セクハラ」を描いた「ディスクロージャー」。
ディスクロージャー.jpg デミ・ムーア DISCLOSURE.bmp ディスクロージャー〈上〉 (ハヤカワ文庫NV).jpgディスクロージャー〈下〉 (ハヤカワ文庫NV).jpg  「大列車強盗」3.jpg
ディスクロージャー [DVD]」 マイケル・ダグラス、デミ・ムーア/マイケル・クライトン『ディスクロージャー〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)』『ディスクロージャー〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)』/マイケル・クライトン原作・脚本・監督「大列車強盗」('78年/米)ショーン・コネリー/レスリー=アン・ダウン
DISCLOSURE 2.jpg「ディスクロージャー」.jpg ハイテク企業に勤めるトム・サンダース(マイケル・ダグラス)は、自分に内定していた副社長ポストに、社の創設者ボブ・ガーヴィン(ドナルド・サザーランド)が目をかけてきた野心溢れる女性メレディス(デミ・ムーア)が就任したことを知らされ唖然とする。彼女はかつてのトムの恋人だったのだ。そしてトムは就任したばかりの彼女に部屋に呼び出されて誘惑され、その誘いに負けそうになるも、かろうじて踏み止まり部屋を出る。しかし今度は、彼女から部屋でレイプをされそうになったと訴えられる―。

DISCLOSURE 1994 1.jpgDisclosure 1994.bmp 「レインマン」('88年)のバリー・レヴィンソン監督作で、原作は今月('08年11月)亡くなったマイケル・クライトン.jpgイケル・クライトン(Michael Crichton、1942‐2008/享年66)です。この人の著作で最初に映画化され『ディスクロージャー』単行本.jpgたのが『アンドロメダ病原体』('69年)であり、『ジュラシック・パーク』('90年)などのバイオ・サスペンスや、ハーバード・メディカルスクールの出身でもあるだけに、TVドラマ「ER」のようなメディカル系に強かった印象があります(1994年にはテレビ(「ER」)、映画(「ジュラシック・パーク」)、書籍(『ディスクロージャー』)で同時に1位となる3冠を成し遂げた)。ただし、その著作には『大列車強盗』('75年)などのミステリもあれば、『ライジング・サン』('92年)のようなビジネスドラマ(ビジネス・サスペンス)もあり、何でもござれといった多才さというか、守備範囲の広さを感じさせ、まだバリバリの現役であっただけに、66歳でのガン死は、壮絶な戦死といった印象も受けます。
 

『ディスクロージャー』単行本
   
 この作品もビジネスドラマ(ビジネス・サスペンス)であり、年下の女性上司による「逆セクハラ」を扱っていますが、日本では「セクシャル・ハラスメント」が「新語・流行語大賞」の"新語"部門金賞に選ばれたのが'89年です(この段階ではまだ"新モノ"扱いか)。男女雇用機会均等法に「性的嫌がらせへの配慮」が盛り込まれたのが8年後の'97年改正に於いてであり、「男性への性的嫌がらせ」も配慮の対象となったのが更に10年後の'07年4月ですから、この作品の原作が1993年に発表され'94年に映画化されたことを思うと、向こうは随分と先を行っていたなあと。但し、米国では、原著発表時点で既に「テーマが古い」との批評もあったとのこと...。

音楽:エンニオ・モリコーネ

 セクハラ事件を契機に主人公は、野望渦巻く企業のパワーゲームに巻き込まれていきますが、映画におけるマイケル・ダグラスは、「ウォール街」('87年)で若僧チャ-リー・シーンを翻弄するやり手の投資銀行家ゲッコー氏のイメージよりも、「危険な情事」('87年)で不倫相手のグレン・クローズに翻弄される弁護士のイメージに近いかも。

ドナルド・サザーランド ディスクロージャー .jpg 映画としては凡作になってしまったと思いますが、マイケル・クライトンへの追悼と、「ライジング・サン」よりはまだ映画らしい映画になっているということで本作品を取り上げました。DISCLOSURE film.gif上司デミ・ムーアの誘いを断った主人公に対する上司の仕打ちの1つに、会社のサーバーへのアクセス権を奪ってしまうというのがあって、そのことで主人公は仕事が完全にストップしてしまいパニックに陥るというのが当時としてはすごく"現代風"の恐怖だなあと思われ、印象的に残りました。

大列車強盗 (1976年)1.jpg「大列車強盗」1.jpg「大列車強盗」図11.jpg マイケル・クライトン原作のその他の映画化作品では、マイケル・クライトン自身の脚本・監督で、ショーン・コネリーが主演した「大列車強盗」('78年/米).jpg「大列車強盗」('78年/米)が面白かったです。ヴィクトリア朝時代のイギリスで実際に起きた事件を基に、怪盗とその仲間たちが厳重管理で列車輸送している莫大な金塊の強奪に挑むさまを描いた犯罪サスペンスで、ストーリーはいいし(1975年に出版された原作『大列車強大列車強盗 (1976年).jpg大列車強盗 (ハヤカワ文庫.jpg盗』('76年/早川書房、'81年/早川書房)は、今回取り上げた『ディスクロージャー』よりはっきり言って面白い)、怪盗ピアースを演じるショーン・コネリーをはじめ役者もいいです。ショーン・コネリー(当時48歳)は、桁の低い陸橋が何本も接近してくる中、それをよけながら疾走する列車の屋根を這い進んで行くというアクションをスタントなしでこなしています。
大列車強盗 (ハヤカワ文庫 NV 256)
大列車強盗 (1976年) (Hayakawa novels)

「ライジング・サン1.jpg「ライジング・サン3.jpg 「大列車強盗」と同じショーン・コネリー主演でフィリップ・カウフマンが監督した「ライジング・サン」('93年/米)は、ロサンゼルスに進出した日本企業のビルで殺人事件が発生し、ショーン・コネリー演じる刑事ジョン・コナーが捜査を進めるうち、文化の違いという壁にぶち当たるという、コネリーが製作総指揮と主演を兼ねたサスペンス・アクション。ネタバレになりますが、偽造ディスクを解明した女性がコナー刑事の愛人だったというオチは、裏ストーリーを暗示させるものの、あまりに説明不足。日本人の社員が黒服にサングラスだったり、日本語の使い方がヘンテコリンで笑わせます(もっと以前よりは良くはなっているが、この時点でまだ日本文化の認識の違いが窺えるのは仕方のないことか)。因みに、武満徹が劇中音楽を担当し、そのキャリアの中で唯一の外国映画音楽作品となりました。

「コンゴ」1.jpg「コンゴ」3.jpg あともう1本、フランク・マーシャル監督の「コンゴ」('95年)というのもありました。映画的展開の狭い「ライジング・サン」や「ディスクロージャー」の失敗を反省材料にしたのか、今度は旧作('80年発表)ながら派手な見せ場のある『失われた黄金都市』を映画化したもので、アフリカ奥地で、レーザー通信の核となるダイヤモンドの鉱脈を調べていたトラヴィコム社の先発隊が全滅し、手掛かりは通信画面に映し出された"灰色の猿人"らしきものだけだった...というもの。この監督はあまり上手くない(本業は映画プロデューサー。妻のキャスリーン・ケネディと共に、多くのスピルバーグ作品を手がけている)。観終わって時間が無駄だったと思いましたが(一緒に観た人間と「もう今後(こんご)は観ない」と冗談を言い合った)、amazonのレビューでは高い評価を得ているみたいで、自分たちだけ違う映画を観たのかなあ(笑)。


ディスクロージャー マイケル・ダグラス.jpg「ディスクロージャー」●原題:DISCLOSURE●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督:バリー・レヴィンソン●製作:バリー・レヴィンソン/マイケル・クライトン●脚本:ポール・アタナシオ●音楽:エンニオ・モリコーネ●撮影:アンソニー・ピアース=ロバーツ●原作:マイケル・クライトン●時間:128分●出演:マイケル・ダグラス/デミ・ムードナルド・サザーランド/キャロライン・グッドオール/デニス・ミラー/ロマ・マフィア/ドナルド・サザーランド ディスクロージャー.jpgニコラス・サドラー/ローズマリー・フォーサイス/ディラン・ベイカー/ジャクリーン・キム/ドナル・ローグ/アラン・リッチ/ スージー・プラクソン●日本公開:1995/02●配給:ワーナー・ブラザース (評価★★★)

ドナルド・サザーランド
      
   
     
ドナルド・サザーランド/ショーン・コネリー
「大列車強盗」2.jpg「大列車強盗」4.jpg「大列車強盗」●原題:THE GREAT TRAIN ROBBERY/THE FIRST GREAT TRAIN ROBBER●制作年:1979年●制作国:アメリカ●監督・脚本:マイケル・クライトン●製作:ジョン・フォアマン●撮影:ジェフリー・アンスワース●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●原作:マイケル・クライトン●時間:111分●出演:ショーン・コネリー/ドナルド・サザーランド/レスリー=アン・ダウン/アラン・ウェッブ/ロバート・ラング/マイケル・エルフィック/パメラ・セイラム/ガブリエル・ロイド/ジェームズ・コシンズ/ブライアン・グローヴァー/マルコム・テリス/ウェイン・スリープ●日本公開:1979/11●配給: ユナイト映画(評価★★★★)

「ライジング・サン」2.jpg「ライジング・サン」4.jpg「ライジング・サン」●原題:RISING SUN●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:フィリップ・カウフマン●製作:ピーター・カウフマン●脚本:マイケル・クライトン/フィリップ・カウフマン/マイケル・バックス●撮影:マイケル・チャップマン●音楽:武満徹●原作:マイケル・クライトン●時間:125分●出演:ショーン・コネリー/ウェズリー・スナイプス/ハーヴェイ・カイテル/ケイリー=ヒロユキ・タガワ/ケヴィン・アンダーソン/マコ/レイ・ワイズ/スタン・イーギー/ティア・カレル/タジャナ・パティッツ/ヴィング・レイムス/スティーヴ・ブシェミ/サム・ロイド●日本公開:1993/11●配給:20世紀フォックス(評価★★★)
ウェズリー・スナイプス/ショーン・コネリー/ハーヴェイ・カイテル
「ライジング・さん」.gif

「コンゴ」2.jpg「コンゴ」●原題:CONGO●制作年:1995年●制作国:アメリカ●監督:フランク・マーシャル●製作:キャスリーン・ケネディ/サム・マーサー●脚本:ジョン・パト「コンゴ」4.jpgリック・シャンリー●撮影:アレン・ダヴィオー●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●原作:マイケル・クライトン●時間:109分●出演:ショーン・コネリー/ウェズリー・スナイプス/ハーヴェイ・カイテル/ケイリー=ヒロユキ・タガワ/ケヴィン・アンダーソン/マコ/レイ・ワイズ/スタン・イーギー/ティア・カレル/タジャナ・パティッツ/ヴィング・レイムス/スティーヴ・ブシェミ/サム・ロイド●日本公開:1995/10●配給:UIP(評価★★)
  
 【1994年単行本〔早川書房〕/1995年文庫化[ハヤカワ文庫NV(上・下)]】

「●映画」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1785】 文藝春秋 『ビデオが大好き!365夜
「●ルネ・クレマン監督作品」の インデックッスへ「●キャロル・リード監督作品」の インデックッスへ「●か行外国映画の監督」の インデックッスへ 「●た‐な行の外国映画の監督」の インデックッスへ 「●は行の外国映画の監督①」の インデックッスへ 「●は行の外国映画の監督②」の インデックッスへ 「●ま行の外国映画の監督」の インデックッスへ 「●シドニー・ルメット監督作品」の インデックッスへ>「●「カンヌ国際映画祭 パルム・ドール」受賞作」の インデックッスへ(「第三の男」「恐怖の報酬」「パルプ・フィクション」)「●「ベルリン国際映画祭 金熊賞」受賞作」の インデックッスへ(「恐怖の報酬」) 「●「フランス映画批評家協会賞(ジョルジュ・メリエス賞)」受賞作」の インデックッスへ(「恐怖の報酬」)「●「ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞 作品賞」受賞作」の インデックッスへ(「パルプ・フィクション」) 「●「全米映画批評家協会賞 作品賞」受賞作」の インデックッスへ(「パルプ・フィクション」)「●「インディペンデント・スピリット賞 作品賞」受賞作」の インデックッスへ(「パルプ・フィクション」)「●「全米映画批評家協会賞 作品賞」受賞作」の インデックッスへ(「パルプ・フィクション」)「●「ロサンゼルス映画批評家協会賞 作品賞」受賞作」の インデックッスへ(「パルプ・フィクション」)「●ニーノ・ロータ音楽作品」の インデックッスへ(「太陽がいっぱい」) 「●アラン・ドロン 出演作品」の インデックッスへ(「太陽がいっぱい」)「●ハーヴェイ・カイテル 出演作品」の インデックッスへ(「パルプ・フィクション」)「●マイケル・ケイン 出演作品」の インデックッスへ (「デス・トラップ 死の罠」)「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「○都内の主な閉館映画館」の インデックッスへ(千代田劇場)インデックッスへ(文芸坐ル・ピリエ )インデックッスへ(大塚名画座)

シリーズ中、特に充実した内容。回答者のコメントを読むのが楽しい。

ミステリーサスペンス洋画ベスト150.jpg大アンケートによるミステリーサスペンス洋画ベスト15074.JPG  『現金(げんなま)に体を張れ』(1956).jpg
大アンケートによるミステリーサスペンス洋画ベスト150 (文春文庫―ビジュアル版)』['91年]表紙イラスト:安西水丸/「現金(げんなま)に体を張れ」(1956).

 映画通と言われる約400人からとったミステリー・サスペンス洋画のアンケート集計で、『洋画ベスト150』('88年)の姉妹版とも、専門ジャンル版とも言えるもの('91年の刊行)。

 1つ1つの解説と、あと、スチール写真が凄く豊富で、一応、"ベスト150"と謳っていますが、ランキング200位まで紹介しているほか、監督篇ランキングもあり、個人的に偏愛するがミステリーと言えるかどうかというものまで、「私が密かに愛した映画」として別枠で紹介しています。また、エッセイ篇として巻末にある、20人以上の映画通の人たちによる、テーマ別のランキングも、内容・写真とも充実していて、このエッセイ篇だけで150ページあり、全体では600ページを超えるボリュームで、この文春文庫の「大アンケート」シリーズの中でもとりわけ充実しているように思えます。                                                         
第三の男.gif『恐怖の報酬』(1953) 2.jpg太陽がいっぱい.jpg 栄えある1位は「第三の男」、以下、2位に「恐怖の報酬」、3位に「太陽がいっぱい」、4位「裏窓」、5位「死刑台のエレベーター」、6位「サイコ」、7位「情婦」、8位「十二人の怒れる男」...と続き、この辺りのランキングは順当過ぎるぐらい順当ですが、どんな人が票を投じ、どんなコメントを寄せているのかを読むのもこのシリーズの楽しみで、時として新たな気づきもあります。因みに、ベスト150の内、ヒッチコック作品は17で2位のシドニー・ルメット、ビリー・ワイルダーの6を大きく引き離し、監督部門でもヒッチコックは1位です。
第三の男
第三の男2.jpg第三の男 観覧車.jpg 「第三の男」1949年・第3回カンヌ国際映画祭「パルム・ドール」受賞作)はグレアム・グリーン原作で、大観覧車、下水道、ラストの並木道シーン等々、映画史上の名場面として語り尽くされた映画ですが、個人的にも、1位であることにとりあえず異論を挟む余地はほとんどないといった感じ。この映画のラストシーンは、映画史上に残る名シーンとされていますが、男女の考え方の違いを浮き彫りにしていて、ロマンチックとかムーディとか言うよりも、ある意味で強烈なシーンかもしれません。オーソン・ウェルズが、短い登場の間に強烈な印象を残し(とりわけ最初の暗闇に光が差してハリー・ライムの顔が浮かび上がる場面は鮮烈)、「天は二物を与えず」とは言うものの、この人には役者と映画監督の両方が備わっていたなあと。この若くして過剰なまでの才能が、映画界の先達に脅威を与え、その結果彼はハリウッドから締め出されたとも言われているぐらいだから、相当なものです。
恐怖の報酬
恐怖の報酬3.jpg『恐怖の報酬』(1953).jpg恐怖の報酬1.bmp 「恐怖の報酬」1953年・第6回カンヌ国際映画祭「パルム・ドール」、1953年・第3回ベルリン国際映画祭「金熊賞」受賞作)は、油田火災を消火するためにニトログリセリンをトラックで運ぶ仕事を請け負った男たちの話ですが、男たちの目の前で石油会社の人間がそのニトロの1滴を岩の上に垂らしてみせると岩が粉微塵になってしまうという、導入部の演出が効果満点。イヴ・モンタンってディナー・ショーで歌っているイメージがあったのですが、この映画では汚れ役であり、粗野ではあるが渋い男臭さを滲ませていて、ストーリーもなかなか旨いなあと(徒然草の中にある「高名の木登り」の話を思い出させるものだった)。この作品は、'77年にロイ・シャイダー主演でアメリカ映画としてリメイクされています。
太陽がいっぱい」(音楽:ニーノ・ロータ
太陽がいっぱい PLEIN SOLEIL.jpg 「太陽がいっぱい」は、原作はパトリシア・ハイスミス(1921- 1995)の「才能あるリプレイ氏」(『リプリー』(角川文庫))で、'99年にマット・デイモン主演で再映画化されています(前作のリバイバルという位置づけではない)。『太陽がいっぱい』(1960).jpgこの淀川長治2.jpg映画の解釈では、淀川長治のホモ・セクシュアル映画説が有名です(因みに、原作者のパトリシア・ハイスミスはレズビアンだった)。あの吉行淳之介も、淀川長治のディテールを引いての実証に驚愕した(吉行淳之介『恐怖対談』)と本書にありますが、ルネ・クレマンが来日した際に淀川長治自身が彼に確認したところ、そのような意図は無いとの答えだったとのことです(ルネ・クレマン自身がアラン・ドロンに"惚れて"いたとの説もあり、そんな簡単に本音を漏らすわけないか)。(●2016年にシネマブルースタジオで再見。トムがフィリップの服を着て彼の真似をしながら鏡に映った自分にキスするシーンは、ゲイ表現なのかナルシズム表現なのか。マルジュがフィリップに「私だけじゃ退屈?そうなら船をおりるわ」とすねるのは、フィリップの恋人である彼女が、男性であるトムをライバル視してのことか。再見していろいろ"気づき"があった。) 
            
 個人的に、もっと上位に来てもいいかなと思ったのは(あまり、メジャーになり過ぎてもちょっと...という気持ちも一方であるが)、"Body Heat"という原題に相応しいシズル感のある「白いドレスの女」(27位)、コミカルなタッチで味のある「マダムと泥棒」(36位)、意外な場面から始まる「サンセット大通り」(46位)、カットバックを効果的に用いた強盗劇「現金(げんなま)に体を張れ」(51位)、「大脱走」を遥かに超えていると思われる「第十七捕虜収容所」(55位)、これぞデ・パルマと言える「殺しのドレス」(70位)(個人的には「ボディ・ダブル」がランクインしていないのが残念)、チャンドラーの原作をボギーが演じた「三つ数えろ」(92位)、脚本もクリストファー・リーブの演技も良かった「デス・トラップ/死の罠」(94位)、ミステリーが脇に押しやられてしまっているため順位としてはこんなものかも知れないけれど「ディーバ」(101位)、といった感じでしょうか、勝手な見解ですが。

kathleen-turner-body-heat.jpg白いドレスの女1.jpg白いドレスの女2.jpg白いドレスの女.jpg 「白いドレスの女」は、ビリー・ワイルダーの「深夜の告白」('48年)をベースにしたサスペンスですが、共にジェイムズ・M・ケインの『殺人保険』(新潮文庫)が原作です(ジェイムズ・ケインは名画座でこの作品と併映されていた「郵便配達は二度ベルを鳴らす」の原作者でもある)。この映画では暑さにむせぶフロリダが舞台で、主人公の弁護士の男がある熱帯夜の晩に白いドレスの妖艶な美女に出会い、彼女の虜になった彼は次第に理性を奪われ、彼女の夫を殺害計画に加担するまでになる―という話で、ストーリーもよく出来ているし、キャスリーン・ターナーが悪女役にぴったり嵌っていました。 kathleen-turner-body-heat(1981)

マダムと泥棒1.jpgマダムと泥棒.jpg 「マダムと泥棒」は、老婦人が営む下宿に5人の楽団員の男たちが練習部屋を借りるが、実は彼らは現金輸送車を狙う強盗団だった―という話で、これもトム・ハンクス主演で'04年に"The Ladykillers"(邦題「レディ・キラーズ」)というタイトルのまま再映画化されています。イギリス人の監督と役者でないと作り得ないと思われるブラック・ユーモア満載のサスペンス・コメディですが、この作品でマダムこと老婦人を演じて、アレック・ギネスやピーター・セラーズといった名優と渡り合ったケイティ・ジョンソンは、後にも先にもこの映画にしか出演していない全くの素人というから驚き。この作品は、本書の姉妹版の『洋・邦名画ベスト150 〈中・上級篇〉』('92年/文春文庫ビジュアル版)では、洋画部門の全ジャンルを通じての1位に選ばれています。

現金に体を張れ.jpg 「現金に体を張れ」(原題:THE KILLING)は、刑務所を出た男が仲間を集めて競馬場の賭け金を奪うという、これもまた強盗チームの話ですが、綿密なはずの計画がちょっとした偶然から崩れていくその様を、同時に起きている出来事を時間を繰り返カットバック方式でそれぞれの立場から描いていて、この方式のものとしては一級品に仕上がっており、また、人間の弱さ、夢の儚さのようなものもしかっり描けています。 スタンリー・キューブリック (原作:ライオネル・ホワイト) 「現金(ゲンナマ)に体を張れ」 (56年/米) ★★★★☆

『パルプ・フィクション』(1994) 2.jpgPulp Fiction(1994) .jpg 本書刊行後の作品ですが、同じくカットバックのテクニックを用いたものとして、ボスの若い妻(ユマ・サーマン)と一晩だけデートを命じられたギャング(ジョン・トラヴォルタ)の悲喜劇を描いたクエンティン・タランティーノ監督の1994年・第47回カンヌ国際映画祭「パルム・ドール」受賞作「パルプ・フィクション」があり(インディペンデント・スピリット賞作品賞も受賞)、テンポのいい作品でしたが(アカデミー脚本賞受賞)、カットバック方式に限って言えば、「現金に体を張れ」の方が上だと思いました(競馬場強盗とコーヒー・ショップ強盗というスケールの違いもあるが)。

Pulp Fiction(1994)

deathtrap movie.jpgdeathtrap movie2.jpg 「デス・トラップ 死の罠」の原作は「死の接吻」「ローズマリーの赤ちゃん」のアイラ・レビンが書いたブロードウェイの大ヒット舞台劇。落ち目の劇作家(マイケル・ケイン)の許に、かつてのシナリオライター講座の生徒クリフ(クリストファー・リーヴ)が書いた台本「デストラップ」が届けられ、作家は、金持ちの妻マイラ(ダイアン・キャノン)に「この劇はクリストファー・リーブ superman.jpg傑作だ」と話し、盗作のアイデアと青年の殺害を仄めかし、青年が郊外の自宅を訪れる際に殺害の機会を狙う―(要するに自分の作品にしてしまおうと考えた)。ドンデン返しの連続は最後まで飽きさせないもので、「スーパーマン」のクリストファー・リーブが演じる劇作家志望のホモ青年も良かったです(この人、意外と演技派俳優だった)。
「デス・トラップ 死の罠」00.jpg クリストファー・リーブ/マイケル・ケイン

映画「ディーバ].jpgディーバ.jpg 「ディーバ」は、ジャン=ジャック・ベネックス監督の長編第1作で、オペラを愛する18歳の郵便配達夫が、レコードを出さないオペラ歌手のコンサートを密かに録音したことから殺人事件に巻き込まれるというもので、1981年12月にユニフランス・フィルム主催の映画祭「新しいフランス映画を見るフェスティバル」での上映5作品中の1本目として初日にThe Space (Hanae Mori ビル5F)で上映されるも、その時はすぐには日本配給には結びきませんでした。しかし、'81年シカゴ国際映画祭シルヴァー・ヒューゴー賞を受賞し、'82年セザール賞で最優秀新人監督作品賞(ジャン=ジャック・ベネックス)のほかに、撮影賞(フィリップ・ルースロ)、Jean-Jacques Beineix's Diva.jpgディーバ_5455.JPG音楽賞(ウラディミール・コスマ)など4部門で受賞したことなどもあり、日本でも遅ればせながらフランス映画社配給で'83年11月にロードショーの運びとなりました('82年4月にアメリカでも公開)。個人的には'84年に名画座(大井武蔵野館)で観て、'94年に俳優座シネマテンでのリバイバル上映を観ました。デラコルタ(スイス人作家ダニエル・オディエのペンネーム)の原作は、ジグゾーパズル好きで、波を止めようと考えているゴロディッシュという不思議な男と、彼にくっついて回るアルバ(原作では13歳のフレンチガール)という少女を主人公にしたセリノアール6部作になっているそうで、「ディーバ」はその中の一篇です(この作品のみが翻訳あり)。新潮文庫に翻訳のある原作と映画を比べてみるのも面白いかと思います。


POWER PLAY OPERATION OVERTHROW.jpgパワー・プレイ.jpgPower Play by Peter O'Toole.jpg「パワー・プレイ (1978).jpg 「私が密かに愛した映画」で「パワー・プレイ」を推した橋本治氏が、「すっごく面白いんだけど、これを見たっていう人間に会ったことがない」とコメントしてますが、見ましたよ。

Power Play (1978).jpg ヨーロッパのある国でテログループによる大臣の誘拐殺人事件が起き、大統領がテロの一掃するために秘密警察を使ってテロリスト殲滅を実行に移すもののそのやり方が過酷で(名脇役ドナルド・プレザンスが秘密警察の署長役で不気味な存在感を放っている)、反発した軍部の一部が戦車部隊の隊長ゼラー(ピーター・オトゥール)を引き入れクーデターを起こします。クーデターは成功しますが、宮殿の大統領室にいたのは...。「漁夫の利」っていうやつか。最後、ピーター・オトゥールがこちらに向かってにやりと笑うのが印象的でした。

「パワー・プレイ」輸入版ポスター(上)/輸入盤DVD(右)
                            

第三の男 ポスター.jpg「第三の男」●原題:THE THIRD MAN●制作年:194日比谷映画・みゆき座.jpg日比谷映画.jpg9年●制作国:イギリス●監督:キャロル・リード●製作:キャロル・リード/デヴィッド・O・セルズニック●脚本:グレアム・グリーン●撮影:ロバート・クラスカー●音楽:アントン・カラス●原作:グレアム・グリーン●時間:104分●出演:ジョセフ・コットン/オーソン・ウェルズ/トレヴァー・ハワード/アリダ・ヴァリ/バーナード・リー/ジェフリー・キーン/エルンスト・ドイッチュ●日本公開:1952/09●配給:東和●最初に観た場所:千代田映画劇場(→日比谷映画) (84-10-15) (評価:★★★★☆)
千代田映画劇場 東京オリンピック - コピー.jpg
日比谷映画内.jpg
千代田映画劇場(日比谷映画) 1957年4月東宝会館内に「千代田映画劇場」(「日比谷映画」の前身)オープン、1984年10月、「日比谷映画劇場」(1957年オープン(1,680席))閉館に伴い「日比谷映画」に改称。2005(平成17)年4月8日閉館。

千代田劇場 「東京オリンピック」('65年/東宝)封切時
                                                     
「恐怖の報酬」.bmp恐怖の報酬.jpg恐怖の報酬3.jpg「恐怖の報酬」●原題:LE SALAIRE DELA PEUR●制作年:1953年●制作国:フランス●監督・脚本:アンリ・ジョルジュ・クルーゾー●撮影:アルマン・ティラール●音楽:ジョルジュ・オーリック●原作:ジョルジュ・アルノー●時間:131分●出演:イヴ・モンタン/シャルル・ヴァネル/ヴェラ・クルーゾー/フォルコ・ルリ/ウィリアム・タッブス/ダリオ・モレノ/ジョー・デスト●日本公開:1954/07●配給:東和●最初に観た場所:新宿アートビレッジ (79-02-10) (評価:★★★★)●併映:「死刑台のエレベーター」(ルイ・マル)

太陽がいっぱい 和田誠.jpg「ポスター[左](和田 誠
太陽がいっぱい15.jpg太陽がいっぱい ポスター2.jpg太陽がいっぱい ポスター.jpg「太陽がいっぱい」●原題:PLEIN SOLEIL●制作年:1960年●制作国:フランス●監督:ルネ・クレマン●製作:ロベール・アキム/レイモン・アキム●脚本:ポール・ジェゴフ/ルネ・クレマン●撮影:アンリ・ドカエ●音楽:ニーノ・ロータ●原作:パトリシア・ハイスミス 「才能あ文芸坐.jpg文芸坐ル・ピリエ.jpgるリプレイ氏」●時間:131分●出演:アラン・ドロン/マリー・ラフォレ/モーリス・ロネ/ エルヴィール・ポペスコ/エルノ・クリサ/ビル・カーンズ/フランク・ラティモア/アヴェ・ニンチ●日本公開:1960/06●配給:新外映●最初に観た場所:文芸坐ル・ピリエ (83-02-21)●2回目:北千住シネマブルー・スタジオ(16-02-23) (評価:★★★★)
文芸坐ル・ピリエ (11979(昭和54)年7月20日、池袋文芸坐内に演劇主体の小劇場としてオープン)1997(平成9)年3月6日閉館

「白いドレスの女」.jpg「白いドレスの女」●原題:BODY HEAT●制白いドレスの女8.jpg作年:1981年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ローレンス・カスダン●製作:フレッド・T・ガロ●撮影:リチャード・H・クライン●音楽:ジョン・バリー●原作:ジェイムズ・M・ケイン 「殺人保険」●時間:113分●出演:ウィリアム・ハート/BODY HEAT.bmpキャスリーン・ターナー/リチャード・クレンナ/テッド・ダンソン/ミッキー・ローク/J・A・プレストン/ラナ・サウンダース/キム・ジマー●日本公開:1982/02●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:三鷹オスカー (82-08-07) ●2回目:飯田橋ギンレイホール(86-12-13)(評価:★★★★☆)●併映(1回目):「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(ボブ・ラフェルソン)

THE LADYKILLERS 1955.jpgマダムと泥棒2.jpg「マダムと泥棒」●原題:THE LADYKILLERS●制作年:1955年●制作国:イギリス●監督:アレクサンダー・マッケンドリック●製作:セス・ホルト●脚本:ウィリアム・ローズ●撮影:オットー・ヘラー●時間:97分●出演:アレック・ギネス/ピーター・セラーズ/ハーバート・ロム/ケイティ・ジョンソン/シル・パーカー/ダニー・グリーン/ジャック・ワーナー/フィリップ・スタントン/フランキー・ハワード●日本公開:1957/12●配給:東和 (評価:★★★★)

現金に体を張れ01.jpgthe killing.jpg現金に体を張れ1.jpg「現金に体を張れ」●原題:THE KILLING●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:スタンリー・キューブリック●製作:ジェームス・B・ハリス●脚本:スタンリー・キューブリック/ジム・トンプスン●撮影:ルシエン・バラード●音楽:ジェラルド・フリード●原作:ライオネル・ホワイト 「見事な結末」●時間:83分●出演:スターリング・ヘイドン/ジェイ・C・フリッペン/メアリ・ウィンザー/コリーン・グレイ/エライシャ・クック/マリー・ウィンザー/ヴィンス・エドワーズ●日本公開:1957/10●配給:ユニオン=映配●最初に観た場所:新宿シアターアプル (86-03-22) (評価:★★★★☆)

パルプフィクション5E.jpegパルプ・フィクション4.jpg「パルプ・フィクション」●原題:PULP FICTION●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督・脚本:クエンティン・タランティーノ●製作:ローレンス・ベンダーパルプフィクション スチール.jpg●原案:クエンティン・タランティーノ/ロジャー・エイヴァリー●撮影:アンジェイ・セクラ●音楽:カリン・ラットパルプ・フィクション ジョン トラボルタ.jpgマン●時間:155分●出演:ジョン・トラヴォルタ/サミュエル・L・ジャクソン/ユマ・サーマン/ハーヴェイ・カイテル/アマンダ・プラマー/ティム・ロス/クリストファー・ウォーケン/ビング・ライムス/ブルース・ウィリス/エリック・ストルツ/ロザンナ・アークエット/マリア・デ・メディロス/ビング・ライムス●日本公開:1994/09●配給:松竹富士 (評価:★★★★)
ジョン トラボルタ(1994年・第20回ロサンゼルス映画批評家協会賞「主演男優賞」
「パルプ・フィクション」カイテル.jpg ハーヴェイ・カイテル(掃除屋"ザ・ウルフ")
   
「デス・トラップ 死の罠」8.jpegDEATHTRAP 1982 2.jpg「デス・トラップ 死の罠」●原題:DEATHTRAP●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:シドニー・ルメット●製作:バート・ハリス●脚本:ジェイ・プレッソン・アレン●撮影:アンジェイ・バートコウィアク●音楽:ジョニー・マンデル●原作:アイラ・レヴィン●時間:117分●出演デス・トラップ 死の罠.jpg「デストラップ」ケイン.jpg:マイケル・ケイン/クリストファー・リーヴ/ダイアン・キャノン/アイリーン・ワース/ヘンリー・ジョーンズ/ジョー・シルヴァー●日本公開:1983/09●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:テアトル吉祥寺 (86-02-15) (評価:★★★☆)●併映「殺しのドレス」(ブライアン・デ・パルマ)


ディーバ  チラシ.jpgディーバ 1981.jpg「ディーバ」●原題:DIVA●制作年:1981年●制作国:フランス●監督:ジャン=ディーバ dvd.jpgジャック・ベネックス●製作:イレーヌ・シルベルマン●脚本:ジャン=ジャック・ベネックス/セルジュ・シルベルマン●撮影:フィリップ・ルースロ●音楽:ウラディミール・コスマ●原作:デラコルタ●時間:117分●出演:フレデリック・アンドレイ/ウィルヘルメニア=ウィンギンス・フェルナンデス/リシャール・ボーランジェ/シャンタル・デリュアズ/ジャック・ファブリ/チュイ=アン・リュー●日本公開:1981/12●配給:フランス映画社●最初に観た場所:大井武蔵野館 (84-06-16)●2回目:六本木・俳優座シネマテン(97-10-03) (評価:★★★★)●併映(1回目):「パッション」(ジャン=リュック・ゴダール)
 
「パワー・プレイ 参謀たちの夜」  .jpgPOWER PLAY OPERATION OVERTHROW 1978 .jpg「パワー・プレイ 参謀たちの夜」●原題:POWER PLAY OPERATION OVERTHROW●制作年:1978年●制作国:イギリス/カナダ●監督:マーティン・バーク●製作:クリストファー・ダルトン●撮影:オウサマ・ラーウィ●音楽:ケン・ソーン●時間:110分●出演:ピーター・オトゥール/デヴィッド・ヘミングス/バリー・モース/ドナルド・プレザンス/ジョン・グラニック/チャック・シャマタ/アルバータ・ワトソン、/マーセラ・セイント・アマント/オーガスト・シェレンバーグ●日本公開:1979/11●配給:ワールド映画●最初に観大塚駅付近.jpg大塚名画座 予定表.jpg大塚名画座4.jpg大塚名画座.jpgた場所:大塚名画座 (80-02-21) (評価:★★★☆)●併映:「Z」(コスタ・ガブラス)

大塚名画座(鈴本キネマ)(大塚名画座のあった上階は現在は居酒屋「さくら水産」) 1987(昭和62)年6月14日閉館

《読書MEMO》
- 構成 -
○座談会 それぞれのヒッチコック
○作品編 ここに史上最高最強の151の「面白い映画」がある
○監督編 人をハラハラさせた人たち
○エッセイ集-映画を見ることも、映画について読むことも楽しい(一部)
 ・原作と映画の間に (山口雅也)
 ・どんでん返しの愉楽 (筈見有弘)
 ・ぼくの採点表 (双葉十三郎)
 ・映画は見るもの、ビデオは読むもの (竹市好古)
 ・わたしの「推理映画史」 (加納一朗)
 ・法廷映画この15本- 13人目の陪審員 (南俊子)
 ・襲撃映画この15本-なにがなんでも盗み出す (小鷹信光)
 ・ユーモア・パロディ映画この20本-笑うサスペンス (結城信孝)
 ・10人のホームズ、10人のワトソン、10人のモリアティ、そして8人のハドソン夫人 (児玉数夫)
 ・世界の平和を守った10人の刑事 (浅利佳一郎)
 ・世界を震えあがらせた10人の悪党 (逢坂剛)
 ・サスペンス映画が似合う女優10人 (渡辺祥子)
 ・フランス人はなぜハドリー・チェイスが好きなのか (藤田宜永)
 ・主題曲は歌い、叫ぶ (岩波洋三)
 ・『薔薇の名前』と私を結んだ赤い糸 (北川れい子)
 ・マイケル・ケインはミステリー好き (松坂健)
 ・TV界のエラリー・クイーン (小山正)
 ・394のアンケートを読んで (赤瀬川準)

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読んでいる間は面白いけれど、読み終えると、何だったのみたいな感じ。

ダ・ヴィンチ・コード 上.jpg ダ・ヴィンチ・コード(下).jpg ダ・ヴィンチ・コード愛蔵版.jpg ダ・ヴィンチ・コード dvd.jpg ダ・ヴィンチ・コード   .jpg ナショナル・トレジャー dvd.jpg
ダ・ヴィンチ・コード〈上〉〈下〉』〔'04年〕『ダ・ヴィンチ・コード ヴィジュアル愛蔵版』〔'05年/角川書店〕「ダ・ヴィンチ・コード (1枚組) [SPE BEST] [DVD]」トム・ハンクス「ナショナル・トレジャー 特別版 [DVD]

ダ・ヴィンチ・コード4.jpg 2003年に発表されたダン・ブラウンのベストセラー小説で、2004 (平成16) 年度「週刊文春ミステリー ベスト10」(海外部門)第1位作品であり、映画化もされたのであらすじを知る人は多いと思いますが、著者自身の説明によると―、「高名なハーヴァード大学の象徴学者が警察によってルーヴル美術館へ呼び出され、ダ・ヴィンチの作品にまつわる暗号めいた象徴を調べるよう依頼されます。その学者は暗号を解読し、史上最大の謎のひとつを解き明かす手がかりを発見するのですが...追われる身となります」ということで、実はその前に、ルーヴル美術館の館長が異様な死体で発見されるという出来事があるのですが...。

 館長の孫娘が象徴学者と協力して祖父のダイイング・メッセージを説こうとするが、そこに立ちはだかる謎の宗教団体がいて、ハラハラドキドキの展開。一度は聞いたことがあるようなキリストにまつわる有名な謎を孕んだ宗教的背景、美術館の中を探索しているような芸術の香り高い味付け。謎解きだけでもグイグイ読者を引っぱっていく上にこれだから、読者の色んな欲求を満たしてくれます。海外ではillustrated edition という「愛蔵版」が出ていましたが、日本でもすぐに出版され、小説の中に登場する美術作品や建築物、場所、象徴などを数多く収録した豪華カラー版!美術本としては楽しめるが洋書より値が高い。1冊1万2千円の皮装版まで出て、ここまでくるとちょっとスノッブではないかと...。

 ただし、作品の最大の魅力であるはずの謎解き(暗号解読)も、鍵穴の向こうにまた鍵穴がありそれを開けるとそのまた向こうに鍵穴があるような展開がずっと続くと、少し食傷気味となります。こんな複雑なダイイング・メッセージ残して、残された者が解けなかったらどうするのだろうという素朴な疑問も覚えました(娘は一応優秀な「暗号解読官」であるという設定になってはいるが)。

 著者は、小説の構築においてロバート・ラドラムの影響を受けたそうですが、言われなくともよく似ているあという感じで、読んでいる間は面白いけれど、読み終えると、何だったのみたいな感じもします。エンタテインメントはそれでいいのだという考え方もありますが...。

 冒頭の、「この小説における芸術作品、建築物、文書、秘密儀式に関する記述はすべて事実に基づいている」という記述も、小説の一部であると見た方がいいと思います。

Tom Hanks in "The Da Vinci Code"(2006)
ダ・ヴィンチ・コード.png「ダ・ヴィンチ・コード」 2005 トム・ハンクス.jpg ロン・ハワード監督、トム・ハンクス主演の映画「ダ・ヴィンチ・コード」('06年/米)も同じような感じで、原作のストーリーを丁寧になぞったために展開がかなりタイトになった上に(上映時間は2時間半と長いのだが)、「トンデモ学説」をホイホイ素直に信じる登場人物たちを見ていて「こんなの、あり得ない」という気持ちにさせられ、ああ、これは「インディ・ジョーンズ」などと同じで、ハナから真面目に考えてはいけなかったのかと改めて思いました(どうせ映像化するなら、ルーヴル美術館の中をもっとしっかり撮って欲しかった)。 「ダ・ヴィンチ・コード (1枚組) [DVD]

ダイアン・クルーガー/ニコラス・ケイジ in「ナショナル・トレジャー」('04年/米)
ナショナル・トレジャー dvd.jpgナショナル・トレジャー1.jpg 同じような「お宝探し」系の作品では、ジョン・タートルトーブ監督の「ナショナル・トレジャー」('04年/米)があり、これは、歴史学者にして冒険家の主人公(ニコラス・ケイジ)が、合衆国独立宣言書に署名した最後の生存者が自分の先祖に残した秘宝の謎を女性公文書館員(ダイアン・クルーガー)らとともに追うもので、こちらもフリーメイソンとかテンプル騎士団とか出てきますが、そもそもアメリカの建国来の歴史が200年そこそこであるため、「ダ・ヴィンチ・コード」ほどの重々しさがなく、しかも、予算の都合なのか、「ダ・ヴィンチ・コード」以上に殆どの展開が都会の真ん中で繰り広げられています。 「ナショナル・トレジャー 特別版 [DVD]

 但し、作っている側も敢えて大仰に構えるのではなく、謎解きとアクションに徹している感じで、娯楽映画としてはフラストレーションの残る「ダ・ヴィンチ・コード」よりは、プロセスにおいてテンポ良く、結末においてカタルシスのあるこちらの方が楽しめたかも(まあ、「ダ・ヴィンチ・コード」の方は、原作を読んで結末が分かった上で観ているわけだからその分ハンディがあり、比較にならないかも知れないが)。
 
 「ダ・ヴィンチ・コード」より公開は早く、男女が組んでのお宝探しや都会の真ん中にそのお宝の秘密があったことなど、「ダ・ヴィンチ・コード」の原作のパクリではないかとも言われたそうですが、「ダ・ヴィンチ・コード」風に変に重々しく作ってしまうと、却ってアメリカ人の歴史コンプレックスの表れみたいな作品になっていたかも。純粋娯楽映画としてはまあまあの出来でしょうか。本国でもそれなりに人気があったらしく、続編「ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記」('07年)も作られています。

ダ・ヴィンチ・コードs.jpgダ・ヴィンチ・コード09.jpg「ダ・ヴィンチ・コード」●原題:THE DA VINCI CODE●制作年:2006年●制作国:アメリカ●監督:ロン・ハワード●製作:ブライアン・グレイザー/ジョン・コーリー●脚本:ダン・ブラウン/アキヴァ・ゴールズマン●撮影:サルヴァトーレ・トチノ●音楽:ハンス・ジマー●原作:ダン・ブラウン「ダ・ヴィンチ・コード」●時間:150分●出演:トム・ハンクス/オドレイ・トトゥ/ジャン・レノ/イアン・マッケラン/ポール・ベタニー/アルフレッド・モリーナ/ユルゲン・プロホノフ●日本公開:2006/05●配給:ソニー・ピクチャーズ(評価:★★☆)

ナショナル・トレジャー』.jpg「ナショナル・トレジャー」●原題:NATIONAL TREASURE●制作年:2004年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・タートルトーブ●製作:ジェリー・ブラッカイマー/ジョン・タートナショナル・トレジャー2.jpgルトーブ●脚本:コーマック・ウィバーリー/マリアンヌ・ウィナショナル・トレジャー ジョン・ヴォイト.jpgバーリー/ジム・カウフ●撮影:キャレブ・デシャネル●音楽:トレヴァー・ラビン●時間:131分●出演:ニコラス・ケイジ/ダイアン・クルーガー/ジャスティン・バーサ/ショーン・ビーン/ハーヴェイ・カイテルジョン・ヴォイト/クリストファー・プラマー/オレッグ・タクタロフ/マーク・ペルグリノ/ロン・カナダ●日本公開:2005/03●配給:ブエナ・ビスタ(評価:★★★☆)

ジョン・ヴォイト(ベン( ニコラス・ケイジ)の父親、暗号学者)
ハーヴェイ・カイテル(ピーター・セダスキーFBI捜査官)
「ナショナル・トレジャー」カイテル.jpg

ダイアン・クルーガー              「ナショナル・トレジャー」('05年/米)
ダイアン・クルーガー.jpeg ナショナル・トレジャー ダイアン・クルーガー.jpg
女は二度決断する」('17年/独)[カンヌ国際映画祭女優賞]女は二度決断する ド.jpg女は二度決断する 32 0.jpg

 【2006年文庫化[角川文庫(上・中・下)]】

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原作者のポール・オースターらしさが活かされた映画。

「スモーク」01.jpg「スモーク」02.jpg
スモーク デジタルリマスター版 [Blu-ray]
ハーヴェイ・カイテル/ウィリアム・ハート(1950-2022)
スモーク 4.jpg ブルックリンの街角で小さな煙草店を営むオーギー・レン(ハーヴェイ・カイテル)は、10年以上毎日同じ時刻の同じ場所で写真を撮影していた。煙草屋の常連で、オーギーの親友でもあるポール・ベンジャミン(ウィリアム・ハート)は、作家であるが数年前に銀行強盗の流れ弾で妻を亡くして以来、仕事が手につかず悩んでいた。閉店間際の店に駆け込んだポールは、見せてもらったオーギーの写真集から亡き妻のありし姿を見つけ号泣する。ポールはボンヤリとして自動車に轢かれそうになったのを助けられ、ラシード(ハロルド・ペリノー・ジュニア)と出会う。その怪しい少年に感謝し、ポールは彼を自分の家に泊めてやる。2晩泊まった後にラシードは家を出て行ったが、その数日後にラシードの叔母を名乗る女性が現れた。ラシードの本名はトーマス・コールといい、偽名を使って各地を転々としていたのだ。その頃トーマスは生き別れた父親のサイラス(フォレスト・ウィテカー)に会いに、サイラスが営む小さなガレージを訪れた。トーマスはサイラスのガレージのスケッチをしているが、追い払われても退かず、そこでトーマスは以前世話になったポールの名前を偽名として用い、無理やり雇わせる。後日、トーマスはポールの元を再訪。ポールは先日トーマスの叔母が自分の元を訪れた経緯を述べ、本名を問い詰める。トーマスを追うギャングに押し入られ、ポールはトーマスのヤバさを知る。ルビー(ストッカード・チャニング)は戦争中、オーギーを裏切り他の男と結婚したが、娘がピンチだと金の工面に訪れる。ポールはトーマスの隠した6000ドルを自宅で見つけるが、その金はトーマスがタバコ屋のバイトでドジした賠償に当てられ、さらにルビーに渡される。トーマスはサイラスに本当の名を名乗り、息子であることを伝えるが、混乱から乱闘になる。オーギーは作家に昼食をとりながら過去にあったクリスマスの話をする。昔、万引き犯を追いかけるが逃げられ、落としていった財布には写真だけがあった。家を訪ねるとそこには盲目のおばあさんが一人で住んでいて、自分のことを孫だと思い込んだ。だから話を合わせて一緒にクリスマスを過ごしてきたという。それにポールは「本当にいいことをしたな。人を幸せにした。生きていることの価値だ」と言う。オーギーはその言葉に心から満足する。ポールはその話の原稿を書き始める―。

ポール・オースター.jpgウェイン・ワン.jpg 香港出身のウェイン・ワン監督の1995年公開作で、同年・第45回 「ベルリン国際映画祭」の銀熊賞(審査員特別賞)受賞作。原作は今年['24年]4月30日に77歳で没したポール・オースターが、ニューヨーク・タイムズ紙から依頼されて書いた短編小説。ポール・オースターは、事実を載せるはずの新聞に虚構を書けというアイデアが気に入って引き受けたそうで、そのタイムズ紙を読んでウェイン・ワン監督が感激して映画化をポール・オースターに持ちかけたということだったようです。ポール・オースターはウェイン・ワン監督と親交を深め、映画「スモーク」の脚本を書き下ろし、ハーヴェイ・カイテルやフォレスト・ウィテカーなどのキャストの選定もポール・オースターが行ったそうです。

スモーク p.jpg オーギーがポールにクリスマス・ストーリー(盲目のおばあさんとの話)を語る店は実在する惣菜屋で、この店での撮影に3日間もかかり、ポール・オースターはハーヴェイ・カイテルにセリフの一字一句変えることを禁じたとのこと。結果、このクリスマス・ストーリーを語るシーンが、ハーヴェイ・カイテルの演技の見せ処となったように思います。

 ラストで回想でそのオーギーの最後の話が演じられますが、実はおばあさんは声を聞いてすぐに別人だと分かっていたことは、オーギーの話の中で明かされていて、要するに、二人は互いに演技し合っていたということになります。また、オーギーがタバコ屋の前で撮影しているカメラは、そのとき去り際に盗んだものだった(箱に「キヤノン AE-1」とあった)という、ちょっと「オチ」っぽい終わり方で、このあたりはオースターらしいです。映画全体を通しても、原作者のポール・オースターらしさが活かされた映画と言えるかもしれません。

映画パンフレット(タバコ店の店名は「Brooklin CIGAR CO.」とある)

 「スモーク」を撮り終えた頃、余ったフィルムでスピンオフ作「ブルー・イン・ザ・フェイス」が即興で撮られ、6日間で撮り終えられたこの作品には、「スモーク」に出演したハーヴェイ・カイテル(同じく煙草屋の役)はもとより数多くの俳優が集まり、その中にはルー・リード、マイケル・J・フォックス、マドンナなどがいます(ポール・オースターはこの作品の脚本執筆&副監督を務めている)。

オーギー・レンのクリスマス・ストーリー0.jpg また、原作(Auggie Wren's Christmas Story 1992)は、柴田元幸訳、タダジュン絵で『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』('21年/スイッチパブリッシング)としオーギー・レンのクリスマス・ストーリー2.jpgて翻訳されています(絵本だが、原文は全部生かしている)。タダジュン氏のモノクロの絵がいい感じです。原作はポールの視点で描かれており、ニューヨーク・タイムズからクリスマスの朝刊に載せる短編を書かないかといわれ引き受けたものの、「クリスマス・スートリー」なんて書けないと悩んでいたという、作家ポール・オースター自身の経験を裏返しにして活かしています(「銀行強盗の流れ弾で妻を亡くした」とかはもちろん創作だが)。因みに、原作では「銀行強盗の流れ弾で妻を亡くした」という話そのものが無く、これは映画のオリジナルです(ラシード少年の話なども原作には無い話で、原作では少年そのものが登場しない)。

オーギー・レンのクリスマス・ストーリー3.jpg 物語の中で、最後は、ポールはオーギーの盲目のおばあさんとの話は全部でっち上げではないかとも思いますが、彼の話を信じることにし、「誰か一人でも信じる人間がいる限り、本当でないない物語などありはしないのだ」として、小説のネタをくれたオーギーに感謝します。ある意味、「虚構」が入れ子構造になっているとも言え、「虚構の中にこそ真実がある」という作家のメッセージのように思いました。

翻訳夜話.jpg村上柴田.jpg 因みに、村上春樹・柴田元幸共著の『翻訳夜話』('00年/文春新書)に、訳者によって翻訳がどう変わってくるかという見本として、両者それぞれの翻訳による「オーギー・レンのクリスマス・ストーリー」の抜粋とその原文が収録されているので、村上春樹訳と比べてみるのもいいかと思います。


スモーク 3.jpg「スモーク」●原題:SMOKE●制作年:1995年●制作国:アメリカ・日本・ドイツ●監督:ウェイン・ワン(王穎)●製作:ピーター・ニューマン/グレッグ・ジョンソン/黒岩久美/堀越謙三●脚本:ポール・オースター●撮影:アダム・ホレンダー●音楽:レイチェル・ポートマン●原作:ポール・オースター『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』●時間:113分●出演:ハーヴェイ・カイテル/ウィリアム・ハート/ハロルド・ペリノー・ジュニア/スモーク 2.jpgフォレスト・ウィテカー/ストッカード・チャニング/アシュレイ・ジャッド/エリカ・ギンペル/ジャレッド・ハリス/ヴィクター・アルゴ●日本公開:1995/10●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:新宿武蔵野館(24-06-05)((評価:★★★★)

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