2008年に樋口真嗣監督によるリメイク作品「隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS」(東宝)が撮られていますが、2人の百姓の内の一人を主役にして、アイドルグループ嵐の松本潤がそれを演じています(真壁六郎太役は阿部寛、雪姫役は長澤まさみ)。個人的には未見ですが、あまり観たいとも思いません。先の宇多丸氏も、オリジナルが"経年劣化"している(あくまで氏の見方だが)からこそリメイクの入り込む余地があったはずなのに、前半と後半で登場人物のキャラクターに一貫性の無い(おそらく松本潤の役柄のこと)駄作になってしまったと酷評していました。(映画雑誌「映画秘宝」主宰2008年度・第2回HIHOはくさい映画賞「最低監督賞」(樋口真嗣)受賞)。リメイクとオリジナルで格差が激しいのも、(相対評価ではあるが)オリジナルがまだ"経年劣化"していないことの一つの証しと言えるようにも思います。
「秋日和」●制作年:1960年●監督:小津安二郎●脚本:野田高梧/小津安二郎●撮影:厚田雄春●音楽:斎藤高順●原作:里見弴●時間:128分●出演:原節子/司葉子/佐分利信/岡田茉莉子/佐田啓二/中村伸郎/北竜二/桑野みゆき/三宅邦子/沢村貞子/三上真一郎/渡辺文雄/高橋とよ/十朱久雄/南美江/須賀不二男/桜むつ子/笠智衆/田代百合子/設楽幸嗣/千之赫子/岩下志麻●公開:1960/11●配給:松竹●最初に観た場所(デジタルリマスター版):神保町シアター(13-12-21)●2回目:(デジタルリマスター版):北千住・シネマブルースタジオ(19-06-04)(評価:★★★★) Akibiyori(1960)
A widow tries to marry off her daughter with the help of her late husband's three friends.
桑野みゆき(宗一(佐分利信)の娘・間宮路子)
渡辺文雄(アヤ子(司葉子)の同僚で遊び仲間・杉山常男)
Tôkyô monogatari(1953) An old couple visit their children and grandchildren in the city; but the children have little time for them.
Poster for Yasujiro Ozu Season at BFI Southbank (1 January - 28 February 2010)
(「BFIサウスバンク」は2007年まではナショナル・フィルム・シアター(National Film Theatre)の名称で知られていたイギリス映画教会(British Film Institute)が運営するロンドンの映画館)
第17作「ゴジラ vs ビオランテ」('89年)は、バイオテクノロジーによってゴジラとバラの細胞を掛け合わせて造られた超獣ビオランテが登場し、一般公募ストーリー5千本から選ばれたものだそうですが(選ばれたのは「帰ってきたウルトラマン」第34話「許されざるいのち」の原案者である小林晋一郎の作品。一般公募と言ってもプロではないか)、確かに植物組織を持った怪獣は、「遊星よりの物体X」('51年/米)(「遊星からの物体X」('82年/米)のオリジナル)の頃からあるとは言え、随分と荒唐無稽なストーリーを選んだものだと...。
第18作「ゴジラ vs キングギドラ」('91年)は、南洋の孤島に生息していた恐竜が核実験でゴジラに変身したという新解釈まで採り入れており(ここに来てゴジラの出自を変えるなんて)、ゴジラが涙ぐんでいるような場面もあって、また同じ道を辿っているなあと(この映画、敵役の未来人のUFOが日本だけを攻撃対象とするのも腑に落ちないし、タイム・パラドックスも破綻気味)。
第17、第18作は大森一樹監督で、いくらか期待したのですが、かなり脱力させられました(第18作「ゴジラ vs キングギドラ」で怪獣映画の中での土屋嘉男を見たのがちょっと懐かしかったくらいか。山村聰も内閣総理大臣役で出ていたけれど)。この監督は商業映画色の強い作品を撮るようになって、はっきり言ってダメになった気がします。大森一樹監督の最高傑作は自主映画作品「暗くなるまで待てない!」('75年/大森プロ)ではないでしょうか。神戸を舞台に大学生の若者たちが「暗くなるのを待てないで昼間から出てくるドラキュラの話」の映画を撮る話で、モノクロで制作費の全くかかっていない作品ですが、むしろ新鮮味がありました(今年['08年]3月に、大森監督によってリメイクされた)。
結局、ゴジラ・シリーズは'04年の第28作をもって終了しますが、「ゴジラ」シリーズ全体での観客動員数は9,925万人で、「男はつらいよ」シリーズ全48作の合計観客動員数7,957万人を上回り、歴代で最も観客動員数多い劇場映画シリーズとされています('16年7月29日に「ゴジラ」シリーズの第29作、国内では「ゴジラ FINAL WARS」('04年/東宝)以来約12年ぶりの日本製作のゴジラ映画として「シン・ゴジラ」が公開され、8月1日までに観客動員71万人となり、「ゴジラ」シリーズが累計観客動員数で1億人突破した)。
「ゴジラ vs ビオランテ」●制作年:1989年●監督・脚本:大森一樹●製作:田中友幸●音楽:すぎやまこういち(ゴジラテーマ曲:伊福部昭)●時間:97分●出演:三田村邦彦/田中好子/小高恵美/峰岸徹/高嶋政伸/高橋幸治/沢口靖子(特別出演)/永島敏行(友情出演)/久我美子(友情出演)●公開:1989/12●配給:東宝(評価:★☆)「ゴジラvsビオランテ [DVD]」
久我美子(大和田圭子官房長官 ※友情出演)/永島敏行(山本精一技術部長 ※友情出演)/沢口靖子(白神源壱郎博士の一人娘・白神英理加 ※特別出演)
「ゴジラ vs キングギドラ」●制作年:1991年●監督・脚本:大森一樹●製作:田中友幸●音楽:伊福部昭●特技監督:川北紘一●原作:香山滋●時間:103分●出演:中川安奈/豊原功補/小高恵美/西岡徳馬/土屋嘉男/山村聰/佐原健二/時任三郎/原田貴和子/小林昭二/佐々木勝彦/チャック・ウィルソン/ケント・ギルバート/ダニエル・カール/ロバート・スコットフィールド●公開:1991/12●配給:東宝 (評価:★☆)
本書『邦画ベスト150』には、赤瀬川順・長部日出雄・藤子不二雄A氏らの座談会や、映画通が選んだジャンル別のマイベスト、井上ひさしの「たったひとりでベスト100選出に挑戦する!」といった興味深い企画もありますが、メインの「ベスト150」は、1位が「七人の侍」で、以下「東京物語」「生きる」「羅生門」「浮雲」と続く"まともな"ラインアップとなっています。また、井上ひさしの「たったひとりでベスト100選出に挑戦する!」も、第1位が「七人の侍」で、あと「天国と地獄」「生きる」と黒澤作品が続きます(因みに「七人の侍」は、1954年度「キネマ旬報ベストテン」第3位だったが、本書の10年後発表の「キネマ旬報オールタイムベスト・ベスト100日本映画編(1999年版)」では第1位(下段参照))。 Shichinin no samurai(1954) 「七人の侍」('63年/東宝)