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ルイ・マルの冒険活劇コメディ。「鬼火」があったからこそ撮られたセラピー的作品。女性讃歌。

「ビバ、マリア [DVD]」ブリジット・バルドー/ジャンヌ・モロー
アイルランドの刑務所で生まれたマリー(ブリジット・バルドー)は、アナーキストの父のもとで幼い頃からテロ活動を続けてきた。中米での作戦中に父を亡くし、ひとりで逃亡生活を始めた彼女は、ある旅芸人一座に遭遇。一座の花形である歌手マリア(ジャンヌ・モロー)は、同じ名を持つコンビの相方を亡くしたばかりだった。一座はマリーをスペイン語式に「マリア」と呼んでペアを復活させ、2人はたちまち人気者となる。悪政に耐えかねた民衆の不満が高まるなか、一座は偶然にも革命軍を率いるフローレス(ジョージ・ハミルトン)と出会うが、やがてフローレスは銃弾に倒れてしまう。2人のマリアはフローレスの遺志を継ぎ、壮絶な戦いに身を投じていく―。
1965年公開の、ルイ・マル監督がブリジット・バルドーとジャンヌ・モローを主演とし、革命に揺れる20世紀初頭の中米を舞台に、同じマリアという名を持つ2人の女性の活躍をアクション映画や西部劇のパロディ満載で活写したコメディ。ルイ・マル監督による冒険活劇コメディというのが意外ですが、「鬼火」('63年)完成後、スタッフ間に蔓延していた自殺願望、厭世的な雰囲気を一掃すべく、ルイ・マルが異国情緒豊かな中南米を舞台にしたコメディを構想したのがこの作品だそうです(それにしても「鬼火」の影響力、スゴイ。「鬼火」があったからこそ撮られた、ある種セラピー的な作品とも言える)。
ルイ・マル監督は一応、「地下鉄のザジ」('60年)のようなコメディ色の濃い作品も前に撮っていることは撮っています。フィリップ・ド・ブロカ監督、ジャン=ポール・ベルモンド出演の南米を舞台にした活劇コメディ「リオの男」('64年)が公開された翌年の作品でもあります。
ブリジット・バルドー演じるマリーは元々はIRAの戦士みたいですが、ひょんなことから旅芸人の一座に加わり、ジャンヌ・モロー演じる踊り子マリアと共に、ストリッパーとして2人で客を沸かせるという流れは、当時31歳のブリジット・バルドーを迎え撃つ当時37歳ジャンヌ・モローという感じもしなくはないですが、16週間もの長く厳しい撮影期間を通して2人の間には戦友意識が生まれ、この作品で生涯の盟友となったそうです。
元々は戦いなどに興味のなかったジャンヌ・モローの演じるマリアが恋に落ち、いつの間にか立派な闘争集団のドンになる流れと、そこに手を貸す元バリバリの反体制派テロリストのブリジット・バルドー演じるマリア(元マリー)。女性の力が男性を凌駕するものとして描かれている作品であり(タイトルそのものが女性讃歌)、ルイ・マルらしいと言うよりジャンヌ・モローらしいと言えるかもしれません。ジャンヌ・モローはこの作品で「英国アカデミー賞海外女優賞」を受賞し、ブリジット・バルドーもノミネートされました。
ジャンヌ・モローが恋に落ちる闘争集団のリーダーを演じているのは、様々な女優と浮名を流したプレイボーイとして知られる米国俳優のジョージ・ハミルトン(1939年生まれ)(この映画は仏・伊合作映画だが、米国資本で製作されている)。後に「ドラキュラ都へ行く」('79年)のようなコメディ映画にも出ていて、映画でも実生活を地でいくキザでニヤけたジゴロ役が多い俳優ですが、この「ビバ!マリア」では、革命の道半ばで斃れ、ジャンヌ・モローに後を託すというシリアスな役柄。全編ドタバタではなく、シリアスなところはシリアスに作っているのが功を奏しています。
BB(バルドー)の健康的なセクシーさとジャンヌ・モローの知的な美しさの対照、2人が歌って踊るショーシーン、馬に乗ってのアクション、ピエール・カルダンが担当した衣装など、愉しみどころ盛沢山ですが、しかし、この映画は一体何人エキストラを使ったのだろうか。火薬の量
も半端じゃないね。どうしてもルイ・マル監督作というイメージが湧かない(笑)。
「ビバ!マリア」●原題:VIVA MARIA!●制作年:1965年●制作国:フランス・イタリア●監督:ルイ・マル●製作:オスカル・ダンシヘルス●脚本:ルイ・マル/オスカル・ダンシヘルス●撮影:アンリ・ドカエ●音楽:ジョルジュ・ドルリュー●時間:122分●出演: ジャンヌ・モロー/ブリジット・バルドー/ジョージ・ハミルトン/クラウディオ・ブルック/カルロス・ロペス・モクテズマ/ポーレット・デュボスト●日本公開:1966/04●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:新宿武蔵野館(24-10-01)(評価:★★★☆)



第1章のミニシアターというものが未知数だった「80年代」のトップは新宿「シネマスクエアとうきゅう」(81年12月、歌舞伎町「東急ミラノビル」3Fにオープン)。企業系ミニシアターの第1号で、1席7万円の椅子が売り物でした。柳町光男のインディペンデント作品「
が16週上映(コピーは"中世は壮大なミステリー"。教養映画風だが実はエンタメ映画)、今で言うストーカーが主人公で、買い手がつかなかったのを買い取ったというパトリス・ルコントの「
六本木「俳優座シネマテン」(81年3月、「俳優座劇場」内にオープン)の「テン」は夜10時から映画上映するためだけでなく、ブレイク・エドワーズのコメディ「テン」(79)から
とったとのこと。トリュフォーの、フランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーの次女アデルの狂気的な恋の情念を描いた「アデルの恋の物語」(75)はここでした。ルキノ・ヴィスコンティが看板監督で、「地獄に堕ちた勇者ども」(69)や「
81年オープンのもう1館は、渋谷「パルコ・スペース・パート3」。ヴィスコンティの「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(43)(ヴィスコンティの処女作。原作はアメリカのハードボイルド作家ジェームズ・M・ケイン。映画での舞台は北イタリア、ポー河沿いのドライブイン・レストランに。ファシスト政権下でオールロケ撮影を敢行した作品)、「
行機でやってきて、ホテルに泊まり1週間通い詰めた人もいたとのこと。カルトムービーとインディーズのメッカでもあり、日本では長年オクラだった「ピンク・フラミンゴ」(72)は、86年に初めてここで正式上映されたとのこと、個人的には84年に「アートシアター新宿」で観ていましたが、その内容は正直、個人的理解を超えていました。99年に映画常設館「CINE QUINTO(シネクイント)」となり、これは第2章で「シネクイント」として取り上げられています。個人的には、初期の頃観た作品では、フランスの女流監督コリーヌ・セローの「彼女と彼たち-なぜ、いけないの-」(77)、チェコスロバキアのカレル・スミーチェクの「少女・少女たち」(79)、台湾の侯孝賢(ホウ・シャオシェン)の「
「シネヴィヴァン六本木」(83年11月「WAVEビル」地下1階にオープン)は、オープン2本目でゴッドフリー・レジオ監督の「コヤニスカッティ」(82)を上映、アメリカの大都市やモニュメントバレーなどを映したイメージビデオ風ドキュメンタリー。コヤニスカッティとはホピ族の言葉で「平衡を失った世界」。延々と続いた早回しシーンがスローモーションに転じた途端に眠気に襲われました。アンドレイ・タルコフスキー監督の「ノスタルジア」(83)が84年に7週間上映、ビクトル・エリセ監督の「
監督の「
「ユーロスペース」(82年、渋谷駅南口桜丘町「東武富士ビル」2Fにオープン)は、85年6月のデヴィッド・クローネンバーグ監督の「
ーヴン・キング原作の「
「シャンテ・シネ」(87年、日比谷映画跡地にオープン)は、今の
「TOHOシネマズ シャンテ」。ここの大ヒット作は何と言っても88年公開の「ベルリン・天使の詩」(87)で、30週のロングランという単館ロード全体の記録を打ち立てたとのこと(動員数は16.6万人)。侯孝賢(ホウ・シャオシェン)の「
「シネスイッチ銀座」(87年にオープン)は、個人的には前身の「銀座文化劇場・銀座ニュー文化」さらに「銀座文化1・2」の頃から利用していましたが、"シネスイッチ"は、洋画と邦画の2チャンネルを持つという意味でのネーミングだそうで、ジェームズ・アイヴォリーの「
第2章のブームの到来の「90年代」のトップは渋谷「シネマライズ」(86年6月、渋谷 スペイン坂上「ライズビル」地下1階にオープン)。劇場の認知度を上げたのは86年7月公開のトニー・リチャードソンの「
2011年に閉館した「シネセゾン渋谷」 (85年11月、渋谷道玄坂「ザ・プライム渋谷」6Fにオープン)はリバイバル上映に個性があり、市川崑の「
「ル・シネマ」(89年9月、渋谷道玄坂・Bunkamura6階にオープン)の方は東急系で、92年にかけられたジャック・リヴェット監督(原作はバルザック)のフランス映画「
主演の「花の影」(96)も17週上映、今世紀に入ってからは、張藝謀(チャン・イーモウ)監督、チャン・ツィイー主演の「
「恵比寿ガーデンシネマ」(94年10月、恵比寿ガーデンテラス弐番館内にオープン)は、ポール・オースター原作、ウェイン・ワン監督の、ニューヨークのタバコ屋の人間模様を描いた「スモーク」(95)のような渋い作品をやっていました。個人的には、ロイ・アンダーソンの「
第2章の最後は、「岩波ホール」(68年オープン、74年から映画常設館に)。サタジット・レイ「
4年2月にロードショー。4週間後にホールは満席になったといいます(因みに、サタジット・レイの「大地のうた三部作」のうち「大河のうた」は結末がハッピーエンドでないため、インドでも興行上は振るわなかった)。その後も、75年にルネ・クレールの「

「隣の女」●原題:LA FEMME DA'COTE(英:THE WOMAN NEXT DOOR)●制作年:1981年●制作国:フランス●監督:フランソワ・トリュフォー●製作:フランソワ・トリュフォー/シュザンヌ・シフマン●脚本:フランソワ・トリュフォー/シュザンヌ・シフマン/ジャン・オーレル●撮影:ウィリアム・ルプシャンスキー●音楽:ジョルジュ・ドルリュー●時間:107分●出演:ジェラール・ドパルデュー/ファニー・アルダン/アンリ・ガルサン/ミシェル・ボートガルトネル/ヴェロニク・シルヴェール/ロジェ・ファン・ホール/オリヴィエ・ベッカール●日本公開:1982/12●配給:東映ユニバースフィルム●最初に観た場所:五反田TOEIシネマ(83-10-01)(評価:★★★)●併映:「アメリカの夜」(フランソワ・トリュフォー)/「終電車」(フランソワ・トリュフォー)
「アメリカの夜(映画に愛をこめて アメリカの夜)」●原題:LA NUIT AMERICAINE(英:DAY FOR NIGHT)●制作年:1973年●制作国:フランス●監督・脚本:フランソワ・トリュフォー●製作:マルセル・ベルベール●撮影:ピエール=ウィリアム・グレン●音楽:ジョルジュ・ドルリュー●時間:115分●出演:ジャクリーン・ビセット/ヴァレンティナ・コルテーゼ/ジャン=ピエール・オーモン/ジャン=ピエール・レオ/アレクサンドラ・スチュワルト/フランソワ・トリュフォー/ジャン・シャンピオン/ナタリー・バイ/ダニ/ベルナール・メネズ●日本公開:1974/09●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:五反田TOEIシネマ(83-10-01)(評価:★★★☆)●併映:「隣の女」(フランソワ・トリュフォー)/「終電車」(フランソワ・トリュフォー)
「終電車」●原題:LE DERNIER METRO(英:THE LAST METRO)●制作年:1980年●制作国:フランス●監督:フランソワ・トリュフォー●製作:マルセル・ベルベール●脚本:フランソワ・トリュフォー/シュザンヌ・シフマン●撮影:ネストール・アルメンドロス●音楽:ジョルジュ・ドルリュー●時間:134分●出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/ジェラール・ドパルデュー/ジャン・ポワレ/ハインツ・ベネント/サビーヌ・オードパン/ジャン=ルイ・リシャール/アンドレア・フェレオル/モーリス・リッシュ/ポーレット・デュボスト/マルセル・ベルベール●日本公開:1982/04●配給:東宝東和●最初に観た場所:五反田TOEIシネマ(83-10-01)(評価:★★★)●併映:「アメリカの夜」(フランソワ・トリュフォー)/「終電車」(フランソワ・トリュフォー)
「薔薇の名前」●原題:LE NOM DE LA ROSE●制作年:1986年●制作国:フランス・イタリア・西ドイツ●監督:ジャン=ジャック・アノー●製作:ベルント・アイヒンガー●脚本:アンドリュー・バーキン●撮影:トニーノ・デリ・コリ●音楽:ジェームズ・ホーナー●原作:ウンベルト・エーコ●時間:132分●出演:ショーン・コネリー/クリスチャン・スレーター/F・マーリー・エイブラハム/ロン・パールマン/フェオドール・シャリアピン・ジュニア/エリヤ・バスキン/ヴォルカー・プレクテル/ミシェル・ロンスダール/ヴァレンティナ・ヴァルガス●日本公開:1987/12●配給:ヘラルド・エース●最初に観た場所(再見):新宿武蔵野館(23-04-18)(評価:★★★)
「赤い影」●原題:DON'T LOOK NOW●制作年:1973年●制作国:イギリス・イタリア●監督: ニコラス・ローグ●製作:ピーター・カーツ●脚本:アラン・スコット/クリス・ブライアント●撮影:アンソニー・B・リッチモンド●音楽:ピノ・ドナッジオ●原作:ダフニ・デュ・モーリエ「いまは見てはだめ」●時間:110分●出演:ドナルド・サザーランド/ジュリー・クリスティ
/ヒラリー・メイソン/クレリア・マタニア/マッシモ・セラート/レナート・スカルパ/ジョルジョ・トレスティーニ/レオポルド・トリエステ●日本公開:1983/08●配給:ヘラルド・エース●最初に観た場所:新宿・シネマスクエアとうきゅう(83-09-11)(評価:★★★)
「マーラー」●原題:MAHLER●制作年:1974年●制作国:イギリス●監督・脚本:ケン・ラッセル●製作:ロイ・ベアード●撮影:ディック・ブッシュ●音楽:グスタフ・マーラー/リヒャルト・ワーグナー/ダナ・ブラッドセル●時間:115分●出演:ロバート・パウエル/ジョージナ・ヘイル/リー・モンタギュー/ロザリー・クラチェリー●日本公開:1987/06●配給:俳優座シネマテン=フジテレビ●最初に観た場所:新宿・シネマスクエアとうきゅう(87-06-21)(評価:★★★)
「ケレル(ファスビンダーのケレル)」●原題:QUERELLE●制作年:1982年●制作国:西ドイツ/フランス●監督:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー●脚本:
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー/ブルクハルト・ドリースト●撮影: クサファー・シュヴァルツェンベルガー/ヨーゼフ・バブラ●音楽:ペール・ラーベン●原作:ジャン・ジュネ『ブレストの乱暴者』●時間:108分●出演:ブラッド・デイヴィス/ジャンヌ・モロー/フランコ・ネロ/ギュンター・カウフマン/ハンノ・ポーシェル●日本公開:1985/05●配給:人力飛行機舎=デラ●最初に観た場所:新宿・シネマスクエアとうきゅう(88-05-28)(評価:★★★?)
「アデルの恋の物語」●原題:L'HISTOIRE D'ADELE H.(英:THE STORY OF ADELE H.)●制作年:1975年●制作国:フランス●監督・製作:フランソワ・トリュフォー●脚本:フランソワ・トリュフォー/ジャン・グリュオー/シュザンヌ・シフマン●撮影:ネストール・アルメンドロス●音楽:モーリス・ジョベール●原作:フランセス・ヴァーノア・ギール『アデル・ユーゴーの日記』●時間:96分●出演:イザベル・アジャーニ/ブルース・ロビンソン/シルヴィア・マリオット/ジョゼフ・ブラッチリー/イヴリー・ギトリス●日本公開:1976/04●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:大塚名画座(78-12-08)(評価:★★★★)●併映:「二十歳の恋」(フランソワ・トリュフォー/ロベルト・ロッセリーニ/石原慎太郎/マックス・オフュルス/アンジェイ・ワイダ)
「地獄に堕ちた勇者ども」●原題:THE DAMNED(独:Götterdämmerung)●制作年:1969年●制作国:イタリア・西ドイツ・スイス●監督:ルキノ・ヴィスコンティ●製作:アルフレッド・レヴィ/エヴェール・アギャッグ●脚本:ルキノ・ヴィスコンティ/ニコラ・バダルッコ/エンリコ・メディオーリ●撮影:アルマンド・ナンヌッツィ/パスクァリーノ・デ・サンティス●
音楽:モーリス・ジャール●時間:96分●出演:ダーク・ボガード/イングリッド・チューリン/ヘルムート・バーガー/ラインハルト・コルデホフ/ルノー・ヴェルレー/アルブレヒト・シェーンハルス/ウンベルト・オルシーニ/シャーロット・ランプリング/ヘルムート・グリーム/フロリンダ・ボルカン●日本公開:1970/04●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:大塚名画座(79-02-07)(評価:★★★★)●併映:「ベニスに死す」(ルキノ・ヴィスコンティ)
「カッコーの巣の上で」●原題:ONE FLEW OVER THE CUCKOO'S NEST●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:ミロス・フォアマン●製作:ソウル・ゼインツ/マイケル・ダグラス●脚本:ローレンス・ホーベン/ボー・ゴールドマン●撮影:ハスケル・ウェクスラー●音楽:ジャック・ニッチェ●原作:ケン・キージー『カッコウの巣の上で』●時間:133分●出演:
ジャック・ニコルソン/ルイーズ・フレッチャー/マイケル・ベリーマン/ウィリアム・レッドフィールド/ブラッド・ドゥーリフ/クリストファー・ロイド/ダニー・デヴィート/ウィル・サンプソン●日本公開:1976/04●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:テアトル吉祥寺(82-03-13)(評価:★★★★)●併映:「ビッグ・ウェンズデー」(ジョン・ミリアス)
「光と影のバラード」●原題:Свой среди чужих, чужой среди своих(英題:AT HOME AMONG STRANGERS)●制作年:1974年●制作国:ソ連●監督:ニキータ・ミハルコフ●脚本:エドゥアルド・ボロダルスキー/ニキータ・ミハルコフ●撮影:パーベル・レベシェフ●音楽:エドゥアルド・アルテミエフ●時間:95分●出演:ユーリー・ボガトィリョフ/アナトリー・ソロニーツィン/セルゲイ・シャクーロフ/アレクサンドル・ポロホフシコフ/ニコライ・パストゥーホフ/アレクサンドル・カイダノフスキー/ニキータ・ミハルコフ●日本公開:1982/10●配給:日本海映画●最初に観た場所:六本木・俳優座シネマテン(82-11-21)(評価:★★★☆)
「郵便配達は二度ベルを鳴らす」●原題:OSSESSIONE●制作年:1943年●制作国:イタリア●監督:ルキノ・ヴィスコンティ●製作:カミッロ・パガーニ●脚本:ルキノ・ヴィスコンティ/マリオ・アリカータ/ジュゼッペ・デ・サンティス/ジャンニ・プッチーニ●撮影:アルド・トンティ/ドメニコ・スカーラ●音楽:ジュゼッペ・ロゼーティ●原作:ジェームズ・M・ケイン●時間:140分●出演:マッシモ・ジロッティ/クララ・カラマイ/ファン・デ・ランダ/ディーア・クリスティアーニ/エリオ・マルクッツォ/ヴィットリオ・ドゥーゼ●日本公開:1979/05●配給:インターナショナル・プロモーション●最初に観た場所:池袋・文芸坐(79-09-24)(評価:★★★★)●併映:「家族の肖像」(ルキノ・ヴィスコンティ)
「ピンク・フラミンゴ」●原題:PINK FLAMINGOS●制作年:1972年●制作国:アメリカ●監督・製作・脚本・撮影:ジョン・ウォーターズ●時間:93分●出演:ディヴァイン/ディビッド・ロチャリー/メアリ・ヴィヴィアン・ピアス●日本公開:1986/06●配給:東映=ケイブルホーグ●最初に観た場所:渋谷・アートシアター新宿(84-08-01)(評価:★★★?)●併映:「フリークス・神の子ら(怪物団)」(トッド・ブラウニング)
「彼女と彼たち-なぜ、いけないの-」●原題:POURQUOI PAS!●制作年:1977年●制作国:フランス●監督・脚本:コリーヌ・セロー●製作:ミシェル・ディミトリー●撮影:ジャン=フランソワ・ロバン●音楽:ジャン=ピエール・マス●時間:97分●出演:サミー・フレイ/クリスチーヌ・ミュリロ/マリオ・ゴンザレス/ニコル・ジャメ●日本公開:1980/11●配給:フランス映画社●最初に観た場所:渋谷・パルコスペース3(84-06-17)(評価:★★★★)
「寡婦(やもめ)の舞」●原題:과부춤(英:WIDOW DANCING)●制作年:1984年●制作国:韓国●監督:李長鍋(イー・チャンホ)●脚本:李長鍋(イー・チャンホ)/李東哲(イ・ドンチョル)/イム・ジンテク●撮影:ソ・ジョンミン●原作:李東哲(イ・ドンチョル)『五人の寡婦』●時間:114 分●出演:イ・ボイ(李甫姫)/パク・ウォンスク(朴元淑)/パク・チョンジャ(朴正子)/キム・ミョンコン(金明坤)/パク・ソンヒ/チョン・ジヒ/ヒョン・ソク/クォン・ソンドク/ソ・ヨンファン/イ・ヒソン●日本公開:1985/09●配給:発見の会●最初に観た場所:渋谷・パルコスペース3(「東京国際映画祭」)(85-06-02)(評価:★★★☆)
「ビジル」●原題:VIGIL●制作年:1984年●制作国:ニュージーランド●監督:ヴィンセント・ウォード●製作:ジョン・メイナード●脚本:ヴィンセント・ウォード/グレーム・テットリー●撮影:アルン・ボリンガー●音楽:ジャック・ボディ●時間:114 分●出演:ビル・カー/フィオナ・ケイ/ペネロープ・スチュアート/ゴードン・シールズ●日本公開:1988/02●配給:ギャガ・コミュニケーションズ●最初に観た場所:渋谷・パルコスペース3(85-06-02)(評価:★★★☆)
「コヤニスカッティ(コヤニスカッツィ)」●原題:KOYANISQATSI●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:ゴッドフリー・レッジョ●製作:
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「暗殺の森」●原題:CONFORMISTA●制作年:1970年●制作国:イタリア・フランス・西ドイツ●監督・脚本:ベルナルド・ベルトリッチ●撮影:ヴィットリオ・ストラーロ●音楽:ジョルジュ・ドルリュー●原作:アルベルト・モラヴィア『孤独な青年』●時間:115分●出演:ジャン=ルイ・トランティニャン/ステファニア・サンドレッリ/ドミニク・サンダ/エンツォ・タラシオ●日本公開:1972/09●配給:パラマウント映画=CIC●最初に観た場所:シネヴィヴァン六本木(84-06-21)(評価:★★★☆)
「闇のカーニバル」●制作年:1981年●●監督・脚本・撮影:山本政志●製作:伊地知徹生/山本政志●時間:118分●出演:太田久美子/桑原延亮/中島稔/太田行生/じゃがたら/遠藤ミチロウ/伊藤耕/中島稔/前田修/山口千枝●公開:1981/12●配給:CBC=斜眼帯●最初に観た場所:渋谷・ユーロスペース(83-07-16)●2回目:渋谷・ユーロスペース(88-07-09)(評価:★★★★)
「ブラザー・フロム・アナザー・プラネット」●原題:THE BROTHER FROM ANOTHER PLANET●制作年:1984年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ジョン・セイルズ●製作:ペギー・ラジェスキー/マギー・レンジー●撮影:アーネスト・ディッカーソン●音楽:メイソン・ダーリング●時間:110分●出演:ジョー・モートン/ダリル・エドワーズ/スティーヴ・ジェームズ/レナード・ジャクソン/ジョン・セイルズ/キャロライン・アーロン/デヴィッド・ストラザーン●日本公開:1986/05●配給:ユーロスペース●最初に観た場所:ユーロスペース(86-06-14)(評価:★★★★)
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「避暑地の出来事」●原題:A SUMMER PLACE●制作年:1959年●制作国:アメリカ●監督・製作・脚本:デルマー・デイヴィス●撮影:ハリー・ストラドリング●音楽:マックス・
スタイナー●原作:スローン・ウィルソン『避暑地の出来事』●時間:131分●出演:リチャード・イーガン/ドロシー・マクガイア/トロイ・ドナヒュー/ サンドラ・ディー/アーサー・ケネディ●日本公開:1960/04●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:銀座文化劇場(84-06-21)(評価:★★★☆)
「酒とバラの日々」●原題:DAYS OF WINE AND ROSES●制作年:1962年●制作国:アメリカ●監督:ブレイク・エドワーズ●製作:マーティン・マヌリス●脚本:J・P・ミラー●撮影:フィル・ラスロップ●音楽:
「シャレード」●原題:CHARADE●制作年:1963年●制作国:アメリカ●監督:スタンリー・ドーネン●製作:マーティン・マヌリス●脚本:J・P・ミラー●撮影:フィル・ラスロップ●音楽:
ー・マッソー/ジョージ・ケネディ/ネッド・グラス●日本公開:1963/12●配給:ユニバーサル・ピクチャーズ●最初に観た場所:銀座文化劇場(88-04-16)(評価:★★★☆)

「レザボア・ドッグス」●原題:RESERVOIR DOGS●制作年:1992年●制作国:アメリカ●監督・脚本:クエンティン・タランティーノ●製作:ローレンス・ベンダー●撮影:アンジェイ・セクラ●音楽:カリン・ラクトマン●時間:100分●出演:ハーヴェイ・カイテル/ティム・ロス/マイケル・マドセン/クリス・ペン/スティーヴ・ブシェミ/ローレンス・ティアニー/クエンティン・タランティーノ●日本公開:1993/04●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所(再見):早稲田松竹(24-05-20)(評価:★★★★)●併映:「バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト」(アベル・フェラーラ)

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ダー●音楽:レイチェル・ポートマン●原作:ポール・オースター『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』●時間:113分●出演:ハーヴェイ・カイテル/ウィリアム・ハート/ハロルド・ペリノー・ジュニア/フォレスト・ウィテカー/ストッカード・チャニング/アシュレイ・ジャッド/エリカ・ギンペル/ジャレッド・ハリス/ヴィクター・アルゴ●日本公開:1995/10●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:新宿武蔵野館(24-06-05)((評価:★★★★)
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ルディーノ・ザッポーニ●撮影:ダリオ・ディ・パルマ●音楽:ニーノ・ロータ●時間:110分●出演:フェデリコ・フェリーニ/アニタ・エクバーグ/ピエール・エテックス/ジョセフィン・チャップリン/グスターブ・フラッテリーニ/バティスト●日本公開:1976/12●配給:東宝東和●最初に観た場所:池袋・文芸坐(78-02-07)(評価:★★★★)●併映:「フェリーニのアマルコルド」(フェデリコ・フェリーニ)

「木靴の樹」●原題:L'ALBERO DEGLI ZOCCOLI(米:THE TREE OF WOODEN CLOGS)●制作年:1978年●制作国:イタリア●監督・脚本・撮影:エルマンノ・オルミ●音楽:J・S・バッハ●時間:186分●出演:ルイジ・オルナーギ/フランチェスカ・モリッジ/オマール・ブリニョッリ/テレーザ・ブレシャニーニ/バティスタ・トレヴァイニ/ルチア・ベシォーリ●日本公開:1979/04●配給:フランス映画社●最初に観た場所:有楽町・スバル座(80-12-02)(評価:★★★★)
「大理石の男」●原題:CZLOWIEK Z MARMURU●制作年:1977年●制作国:ポーランド●監督:アンジェイ・ワイダ●製作:バルバラ・ペツ・シレシツカ●脚本:アレクサンドル・シチボ
ル・リルスキ●撮影:エドワルド・クウォシンスキ●音楽:アンジェイ・コジンスキ●時間:165分●出演:イエジー・ラジヴィオヴィッチ/クリスティナ・ヤンダ/タデウシ・ウォムニツキ/ヤツェク・ウォムニツキ/ミハウ・タルコフスキ/ピョートル・チェシラク/ヴィエスワフ・ヴィチク/クリスティナ・ザフヴァトヴィッチ/マグダ・テレサ・ヴイチク/ボグスワフ・ソプチュク/レオナルド・ザヨンチコフスキ/イレナ・ラスコフスカ/スジスワフ・ラスコフスカ●日本公開:1980/09●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:飯田橋・佳作座(81-05-24)(評価:★★★☆)●併映:「水の中のナイフ」(ロマン・ポランスキー)

「女の叫び」●原題:A DREAM OF PASSION●制作年:1978年●制作国:アメリカ・ギリシャ●監督・脚本:ジュールス・ダッシン●撮影:ヨルゴス・アルヴァニティズ●音楽:ヤアニス・マルコプロス●時間:110分●出演:メリナ・メルクーリ/エレン・バースティン/アンドレアス・ウツィーナス/デスポ・ディアマンティドゥ/ディミトリス・パパミカエル/ヤニス・ヴォグリス/フェドン・ヨルギツィス/ベティ・ヴァラッシ●日本公開:1979/12●配給:東宝東和●最初に観た場所:岩波ホール(80-02-04)(評価:★★★★)



1962年公開のフランソワ・トリュフォー監督の長編第3作(原題はJules et Jim(ジュールとジム))。男2人女1人の関係がベースになっていて、このパターンは後の多くの映画に影響を与えたとされています。代表的なものでは、ロベール・アンリコ監督の「
ただし、映画の公開が、今に比べてまだ女性が抑圧されていて、ちょうど女性解放運動が盛り上がってきた時期と重なったということもあって、英米においてフランス映画としては異例のヒット作となり、監督のトリュフォーの元にも、「カトリーヌは私です」という女性からの手紙が世界中から届いたとのことです。しかしながら、トリュフォー自身はこの映画が「女性映画」と呼ばれることを嫌い、また、主人公を自己と同一視するような女性たちの映画の見方にも否定的だったようです(カトリーヌにポリティカルなメッセージを込めようとしたわけでなく、また、カトリーヌは誰かの代弁者であるわけでもなく、「ただ、ある女性を描いたにすぎない」というスタンスだったようだ)。
後半で、ジュールがジムをカトリーヌや娘と居る山小屋に呼び寄せるのは、自分がカトリーヌとベッドを共にできなくなったからでしょう。そのくせ、カトリーヌの気まぐれで時にカトリーヌとジュールでベッドでじゃれ合ったりするから、今度はジムの方が嫉妬に苦しむことになるのだなあ。ラストも含め、ジムには本当に「お気の毒」と思わざるをえません。傍から見ればどうしてこんな悪女に惹かれてしまうのかと思ってしまいますが、当事者の立場になれば、魅せられている時は冷静な判断ができなくなるのでしょう。男性たちにとってカトリーヌは偶像であり、ゆえにファム・ファタール(運命の女)となるのでしょう。
原作は、アンリ=ピエール・ロシェ(1879-1959)で、日本で発表されている小説は『突然炎のごとく』と『恋のエチュード』のみで、いずれもトリュフォーが映画化していることになります(トリュフォーは21歳の時に古本屋で偶然彼の作品に触れており、ある意味トリュフォーが発掘した作家と言えるかも)。自身の恋愛体験をもとにこの作品を書いており、登場人物的には「ジム」に当たりますが、本人は80歳近くまで生きており、また、カトリーヌのモデルとされた女性も、後に「私は死んでない」と言ったそうです。ジュールにもモデルがいるそうですが、映画においてオスカー・ウェルナーが演じる、文学オタクで女性にはあまりモテそうでないジュール像には、トリュフォー自身が反映されているようです(冒頭でジュールがマリー・デュボア演じる娘にさらっとフラれるエピソードがある)。どちらかと言うとずっとジルの視線で描かれているため、ラストはジュールが亡くなる側に回ってもよさそうな気がしましたが、カトリーヌとジムの死によって、ジュールは誰にも邪魔されずカトリーヌを永遠に自分のものとすることができた―という結末なのでしょう。
➀ カトリーヌがセーヌ川に飛び込むシーンは、スタントの女性がやりたがらなかったので、ジャンヌ・モロー自身が飛び込んだ。その結果、川の水の汚れがひどかったため、ジャンヌ・モローは喉を傷めた。
③ ジャン=リュック・ゴダール監督の「
「突然炎のごとく」●原題:JULES ET JIM(英:JULES AND JIM)●制作年:1962年●制作国:フランス●監督:フランソワ・トリュフォー●製作:ルキノ・ヴィスコンティ●脚本:フランソワ・トリュフォー/ジャン・グリュオー●撮影:ラウール・クタール●音楽:ジョルジュ・ドルリュー●原作:アンリ=ピエール・ロシェ●時間:107分●出演:ジャンヌ・モロー/オスカー・ウェルナー/アンリ・セール/マリー・デュボア/サビーヌ・オードパン/ヴァンナ・ウルビーノ/ボリス・バシアク/アニー・ネルセン●日本公開:1964/02●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所(再見):早稲田松竹(19-12-12)(評価:★★★★☆)●併映:「柔らかい肌」(フランソワ・トリュフォー)


パリの銀行で働くジャン・フルニエ(クロード・マン)は、同僚のキャロン(ポー
ル・ゲール)に連れられて行った市中のカジノで、一時間で給料の半年分を稼ぐ大当たりする。それを契機にギャンブルに取り憑かれた彼だったが、謹厳な時計修理職人の父親から「賭博師はごめんだ。出て行け」と勘当されると、ニースの安ホテルに居を移し、「天使の入江」のカジノ通いを始める。そんなある日、以前カジノで見かけたブロンド美女のジャッキー・ドメストル(
ジャンヌ・モロー)に偶然出会う。ジャンは彼女に惹かれると共に、意気投合した彼女とパートナーを組み、ますますギャンブルにのめり込んでいく。彼女は夫の懇願にもかかわらずギャンブルに熱中して離婚し、息子とは週に一回会えるだけだと言う。ボロ負けした日は「二度としない」と誓
うが口だけで、「軽率な自分に腹がたつ」と言いながらやめられない。ホテル代もなく駅のベンチで寝るというジャッキーを、ジャンは自分のホテルに泊まらせる。翌朝二人は別れるが、午後
海岸にいたジャンを探しに来たジャッキーは、女友だちに借金した金で賭
けてくると言い、別れるつもりだったジャンはカジノまでジャッキーを追っていく。そして、カジノで二人は勝ちまくり、「崖っぷちのドンデン返しね。モンテカルロに行きましょう」というジャッキーの誘いに車を買い、ドレスにタキシードを用意し、豪華ホテルに横付けし、海が見えるバルコニー付きのスイートルームにチェックインする。しかし、二人はカジノで今度は大敗し、結局有り金を全部使い果たしてしまう―。
作品を特集した「ドゥミとヴァルダ、幸福についての5つの物語」での上映が「初公開」だそうです。同じくニースのカジノを舞台にしたアンリ・ヴェルヌイユ監督の「
すでに、ルイ・マル監督の「
ただ、ジャッキーはギャンブルに対する弱さだけでなく、ギャンブルについての哲学も持っていて、「贅沢できなくても平気よ。お金のために賭けをやるのじゃない。十分あってもやるわ。賭けの魅力は贅沢と貧困の両方が味わえること。それに数字や偶然の神秘がある。もし数字が神様の思し召しなら、私は信者よ。カジノに初めて入ったとき、教会と同じ感動を覚えた。私にとって賭けは宗教よ。お金とは関係ない」「この情熱のおかげで私は生きていられるの。誰にも奪う権利はないわ」と言っています。ギャンブラーとしての凄みを感じさせながらも、強がっている部分も感じられ、その辺りがジャンヌ・モローならではの演技の機微であり、同じファム・ファタールを演じても、監督が違えば違ったタイプのそれを見せる演技の幅であると思いました。
「天使の入江」●原題:LA BAIE DES ANGES(英:BAY OF ANGELS)●制作年:1963年●制作国:フランス●監督・脚本: ジャック・ドゥミ●撮影:ジャン・ラビエ●音楽:ミシェル・ルグラン●時間:101分●出演:ジャンヌ・モ
ロー/クロード・マン/ポール・ゲール/アンナ・ナシエ●日本公開:2017/07●配給:ザジフィルムズ●最初に観た場所:渋谷・シアター・イメージフォーラム(特集「ドゥミとヴァルダ、幸せについての5つの物語」)(17-08-18)(評価★★★★)



パリの小さな書店に勤める青年エミール(ジャン=クロード・ブリアリ)は、コペンハーゲンから来たばかりで、フランス語の「R」がうまく発
音できないストリップ・ダンサーのアンジェラ(アンナ・カリーナ)と一緒に暮らしていたが、ある日突然アンジェラが赤ちゃんが欲しいと言い出す。赤ちゃんは要らないし、正式な結婚などしない方が気
楽だと考えるエミールとは折り合わず、2人は喧嘩になる。仕舞にアンジェラは、それなら他の男に頼むと啖呵を切り、エミールは動揺す
るが、勝手にしろと答えてしまう。アンジェラもアンジェラで、自分たちの住むアパルトマンの下の階に住む、エミールの友人で以前よりアンジェラにちょっかいを出していた、駐車場のパーキングメーター係のアルフレード(ジャン=ポール・ベルモンド)に頼
むと宣言する。ならばとエミールはアルフレードを呼び出して、アンジェラにけしかけたりした揚句、アンジェラに去られる。エミールはやけになって別の女と寝て、一方
のアンジェラも、アルフレードと本当に寝てしまう。深夜、アンジェラがエミールと住むアパルトマンに戻り、2人はベッドで黙り込む。エミールは、試しに自分の子をつくってみようとアンジェラを抱く。フレッド・アステアのダンスミュージカルが幕を閉じて終わるように、アンジェラは寝室のカーテンを閉じてみせる―。
1961年製作・公開のジャン=リュック・ゴダール監督の長篇劇映画第3作であり、ゴダールのカラー映画第1作であるとともにミュージカル・コメディ第1作。「小さな兵隊」('60年)に次いでアンナ・カリーナが出演したゴダール作品の第2作で、カリーナとの結婚後第1作になります。ゴダールは「
音楽はミシェル・ルグランで、美術はベルナール・エヴァン。この2人は本作の2年後に製作されたジャック・ドゥミ監督の
なく、そのメロディも、コラージュのようなスクリーンプレイに合わせて度々寸断され、ミュージカルというスタイルを完全に換骨奪胎していると言えます。一方の美術面では、カラフルな原色の色彩が多用されていて、これは「シェルブールの雨傘」にも見られるし、ゴダール自身の監督作「
ジャン=クロード・ブリアリが室内で自転車を乗り回すシーンや、喧嘩して口をきかなくなったジャン=クロード・ブリアリとアンナ・カリーナが本のタイトルで会話をするなど、ちょっとお洒落なシーンが多くあり、また、アンナ・カリーナら登場人物が時折カメラに向けて語りかけるシーンなどがあったりするのがちょっと前衛的と言うか、ストーリー自体はたわいもない話ですが、その分肩肘張らずに楽しめるゴダール作品です。
ゴダールは本作でベルリン国際映画祭「銀熊賞」(審査員特別賞)を受賞し、これは前年の同映画祭での「勝手にしやがれ」による「銀熊賞」(監督賞)に続いて2年連続の受賞。映画のアンジェラと同じくコペンハーゲン出身のアンナ・カリーナは、本作で
受賞。彼女はジャン=ポール・ベルモンド、ジャン=クロード・ブリアリの両雄を(と言っても2人だって共に28歳とまだ若いのだが)振り回してまさに圧巻。アンナ・カリーナを観て楽しむ映画とも言えますが、個人的には、ゴダール自身が後に「本当の意味での自分の処女作」と述べているように、ゴダール作品の原点的要素が多く見られるという点で興味深い作品です。
「女は女である」●原題:UNE FEMME EST UNE FEMME/A WOMAN IS A WOMAN●制作年:1961年●制作国:フランス・イタリア●監督・脚本:ジャン=リュック・ゴ
ダール●製作:カルロ・ポンティ/ジョルジュ・ド・ボールガール●撮影:ラウール・クタール●音楽:ミシェル・ルグラン●原案:ジュヌヴィエーヴ・クリュニー●時間:84分●出演:アンナ・カリーナ/ジャン=ポール・ベルモンド/ジャン=クロード・ブリアリ/マリー・デュボワ/ジャンヌ・モロー/カトリーヌ・ドモンジョ●日本公開:1961/12●配給:新外映●最初に観た場所(再見):北千住・シネマブルースタジオ(16-09-16)(評価★★★★)


霧雨のヴェニスで水上を滑るゴンドラから過ぎゆく景色を眺めている女エヴァ(ジャンヌ・モロー)。彼女のために幾人もの男が身を滅していったのだが、作家のティヴィアン・ジョーンズ(スタンリー・ベイカー)もその一人だった。処女作が売れて一挙に富も名声を獲得し、あと婚約者フランチェスカ(ヴィルナ・リージ)と結婚するばかりだったある雨の夜、ティヴィアンの別荘にずぶ濡れになったエヴァと彼女の客が迷いこんで来る。それがティヴィアンとエヴァとの最初の出会いだったが、以来、ティヴィアンの脳裡にはエヴァの面影が焼きついて離れず、彼はエヴァの肉体に溺れていった。それから2年の月日を経て、今は乞食同然のティヴィアンだったが、彼はいまだにエヴァの面影を求めている。今日もヴェニスは雨に煙り、ゴンドラが漂う―。
英国の推理小説作家ジェームズ・ハドリー・チェイスの原作『悪女エヴァ』('45年)を、「コンクリート・ジャングル」('60年)のジョゼフ・ロージーが監督した1962年公開のフランス映画。撮影は「
ジャンヌ・モロー(当時34歳)が所謂〈ファム・ファタール〉(運命の女=悪女)を演じた映画として知られており、ジャンヌ・モローはジャン・コクトーに「いつかスターになったら、映画でこの役を演じなさい」と言われて『悪女エヴァ』の本を渡され、最初にジャン=リュック・ゴダールに監督を依頼するも製作サイドがゴダールの作風を嫌がったため、次にジョセフ・ロージーを推薦しています。そのジョセフ・ロージーは、ルイ・マル監督の「恋人たち」('58年)を観てフランス映画を崇拝するようになったといい、その「恋人たち」に主演したジャンヌ・モローで作品を自ら撮る機会が巡ってきたことになります。
ジャンヌ・モロー演ずるエヴァは、カジノで金のありそうな男を物色しては身ぐるみ巻き上げる高級娼婦であり、そこには愛だの恋だの感情的なものは一切関わりません。この作品でそのエヴァによって身を滅ぼされるのが、スタンリー・ベイカー演じる新進の売れっ子作家ティヴィアンですが、ティヴィアンに「世界中で一番好きなものはなんだい?」と訊かれて、エヴァは「ラルジャン(お金)」と即答しています。ヴィルナ・リージ演じるティヴィアンの恋人フランチェスカ
は、ティヴィアンとの結婚後も続くティヴィアンとエヴァのことを知って自殺しますが、そのことに対してもエヴァはどこ吹く風。決定的なのはラストで、新しい男をとギリシャ旅行に出かけるため早朝のヴェネチアの広場で船を待つエヴァ
のもとへ落魄したティヴィアンが現れ、ギリシャから戻ったらまた会ってくれとエヴァにすがると、エヴァはティヴィアンをじっと見つめ、「みじめな男」とのみ言い捨てて新しい男と旅立って行きます(ヴェニスをこれくらい暗く撮っている映画も珍しいが、その暗さと男の心境がマッチしているとも言える)。
男はどうしてこんな女に惹かれてしまうのかと、普通に考えれば醒めた目で捉えられがちなところを、ジャンヌ・モローの演技のお蔭で、ティヴィアンの悪女にずぶずぶ嵌っていく様が腑に落ちてしまうし(ビリー・ホリデイの曲に乗せたジャンヌ・モローの一人演技の蠱惑的な長回しショットがあるので注目)、男には元々そうした墜ちていくような願望があるのかもしれないとさえ思ってしまいます。
全てをエヴァに吸い取られてしまい、今は酒場に入り浸る日々のティヴィアンですが、彼は本当に不幸だったのか。実はティヴィアンは炭鉱夫あがりの作家ということで話題になったものの、その話題になった処女作は亡き兄が書いたもので、つまり「盗作」で作家の名を成してしまったわけで、それがこの度のエヴァとの間での手痛い経験が肥やしとなって、やがて「本物」の作家として大成するのではないか。そうした意味では、結果的にティヴィアンにとっては実りある体験であって、彼は将来において幸せであり、むしろ、永遠に愛の不毛を抱え続けるエヴァこそが不幸なのではないか―というこの作品の解釈もあるようで、やや穿ち過ぎた見方のようにも思えますが、なかなか興味深い解釈だと思います(暗いヴェニスの風景は、エヴァの心の虚無を表していたのかも)。
因みに、この映画におけるジャンヌ・モローのファッションは、彼女が当時交際していたピエール・カルダンで統一されています(それまではシャネル一色だったジャンヌ・モローは、以後はカルダン一色となる)。
また、自殺に至るフランチェスカを演じたヴィルナ・リージは、ハリウッドに渡ってジャック・レモン主演の「女房の殺し方教えます」('64年/米)などにも出たりしましたが、後にイタリアで熟女女優として活躍し、サルヴァトーレ・サンペリ監督の「
「エヴァの匂い」●原題:EVA●制作年:1962年●制作国:フランス●監督:ジョセフ・ロージー●製作:ロベール・アキム/レイモン・アキム●脚本:ヒューゴー・バトラー(脚色)/
エヴァ・ジョーンズ(脚色)●撮影:ジャンニ・ディ・ヴェナンツォ●音楽:ミシェル・ルグラン(挿入曲:ビリー
・ホリデイ)●原作:ジェームズ・ハドリー・チェイス「悪女エヴァ」●時間:166分●出演:ジャンヌ・モロー/スタンリー・ベイカー/ヴィルナ・リージ/ジェームズ・ヴィリアーズ/リッカルド・ガルローネ/ジョルジョ・アルベルタッツィ/リザ・ガストーニ/ケッコ・リッソーネ/エンツォ・フィエルモンテ/ノーナ・メディチ/ロベルト・パオレッティ●日本公開:1963/06●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所(再見):北千住・シネマブルースタジオ(16-03-20)(評価:★★★★)




1954年の仏ディジョン。新聞社主アンリ(アラン・キュニー)の妻ジャンヌ(ジャンヌ・モロー)は閉塞的な日常からの逃避を月に二度のパリ行きと愛人ラウール(ホセ・ルイ・ド・ビラロンガ)との密会に求めていた。妻の不倫を疑うアンリの思惑により、逆に、ラウール
たちを屋敷に迎えざるを得なくなったその当日、車が故障した所を若い考古学者ベルナール(ジャン・マルク・ボリー)に拾われ家に辿り着いた彼女。友人らを迎えたその晩、眠れずに戸外へ出ると、そこにベルナールの姿もあった。夢遊病者のように庭をさまよい歩き、いつしか二人
は、ジャンヌの寝室で愛を交わす。そして翌朝、驚く夫や愛人を後目に、彼女は新しい男と共に家を出る―。
ルイ・マルの監督デビュー第2作目('58年)で、カンヌ国際映画祭「審査員特別賞」受賞作。実業家の若い妻ジャンヌが、仕事人で嫉妬深い夫とスポーツマンで貴族的生活を送っているプレイボーイの愛人の間で揺れ動いていたと思ったら、偶然出会った若い考古学者と一夜にして突然の恋に落ちるという、ストーリーとしては意外な展開ですが、ラブロマンスとしてはむしろオーソドックスなタイプの1
つ。むしろアンニュイな若妻を主人公とする(この頃ルイ・マルとジャンヌ・モローは恋人同士の関係にあったと思うが)この"正統派"ラブロマンスを26歳で真っ向から撮っているというのがスゴイなあと思うし、ちょっと背伸びしている感じもなくもないですが、既に「死刑台のエレベーター」という傑作を撮っているだけに、何か映画の文法というものを若くして体得してしまっている印象を受けます。
ジャンヌが夜中に偶然にベルナールと出くわして、そこから二人が結ばれるまでの映像の流れはまるで夢の世界のようであり(カメラは「死刑台のエレベーター」と同じくアンリ・ドカエだが、この夜のシーン、何となく〈道行〉のような印象を受けたのは自分だけか)、それに被るクラシック音楽も効いています。子どもに別れまで告げていることからジャンヌの強い決意が窺える一方で、ラストではどことなく未だ不安の表情を残しているというのがリアル。それでも、もう彼女は元の世界に戻ることはない...
「死刑台のエレベーター」のマイルス・デイヴィスの使われ方といい、「鬼火」のエリック・サティのピアノ曲の使われ方といい、この監督の映像と音楽の融和レベルの高さは他の追随を許さないものあるとこの作品を観ても思います。強いて言えば、自分が映画のセオリーというものをマスターし切っていることを見せつけるために撮った作品ともとれるのが難点と言えなくもないですが、(デビュー作がフロックでないことを証明するために?)敢えて古典に材を得つつ、クラシカルな優美さを現代に移し替えても損なわないのは、やはり巧みの技と言えるかと思いました。
ハネス・ブラームス●原作:イヴァン・ドノン「明日
はない」●時間:95分●出演:ジャンヌ・モロー/ジャン・マルク・ボリー/アラン・キュニー/ホセ・ルイ・ド・ビラロンガ/ジュディット・マーグル/ガストン・モド/ジュディット・マーレ●日本公開:1959/04●配給:映配●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(14-07-08)(評価:★★★★)






会社の技師ジュリアン・タベルニエ(モーリス・ロネ)と社長夫人フロランス・カララ(ジャンヌ・モロー)は愛し合っていて、社長のシモンを殺害する完全犯罪を計画する。実行の日、ジュリアンはバルコニーから錨付ロープをかけて上って社長室に入り、社長を射殺してその手に拳銃を握らせる。手摺から一階下の自屋に戻ってエレベーターで下に降り
て外に出る。手摺にロープを忘れて来たことに気付き、またエレベーターに乗るが、エレベーターは階の途中で止まってしまう(ビルの管理人が電源スイッチを切って帰ったため)。ジュリアンは脱出しょうとするが果たせず、フロランスとの約束の時間は過ぎていく。彼を待つフロランスは次第に不安にかられ、彼を求めて夜のパリを彷徨う。一方、花屋の売り子ベロニック(ヨリ・ベルダン)とチンピラのルイ(ジョルジュ・プージュリ
ー)は、ジュリアンの車を盗んで郊外に出る(車内には小型カメラ、拳銃がある)。前を走るスポーツカーの後についてあるモーテルに着くと、ジュリアン・タベルニエ夫婦と偽って投宿し、スポーツカーの持主のドイツ人夫婦と知り合ってパーティに呼ばれ、遊び半分にカメラで写真を撮った後、モーテルの現像屋へフィルムを出す。二人はスポーツカーを盗もうとして見つかり夫婦を射殺して逃げるが、アパートにも戻ってから怖くなり心中を図る―。
後から付いてくる理屈はともかく、観ている間は、リアリスティックな映像によってサスペンスフルな雰囲気にどっぷり浸れます。それと何と言っても、モーリス・ロネとジャンヌ・モローが演じる主人公2人の描き方が良く、熱愛という感じではなく2人共人生に倦んでいるような感じでしょうか。もう一組の若者たちも、主人公らと対比的に描かれていると言うよりはむしろ同類かも。
こうした緊迫感にアンニュイ感が入り交じったような映像世界にしっくり合っているのが、マイルス・デイヴィスのジャズトランペットで、特に、恋人モーリス・ロネからの連絡が無く、不安の裡にパリの街を彷徨うジャンヌ・モローの姿にマイルス・デイヴィスのトランペットが被るシーンは何とも言えないムードを醸していて素晴らしく、映像と音楽が旨く融合するとスゴイ訴求力になると改めて思いました。
この作品は超低予算映画ということでも知られていて、それにしては"帝王"マイルス・デイヴィスが演奏しているではないかと疑問に思われますが、マイルスがたまたまパリに演奏公演に来ていたのを、ルイ・マル監督が一晩借り受けて、ラッシュに合わせ即興で演奏してもらったということです。
(●2020年にシネマブルースタジオでニュープリント版で再見した。モーリス・ロネ演じる主人公ジュリアンが犯行に使ったロープを現場にそのままにしてしまうというミスは、犯行を終えたちょうどその時に自分の部屋の方の電話が鳴っていて、出ないと怪しまれると思って焦った結果、ロープの方が意識から飛んでしまったためだった。人間は緊張すると短期記憶が弱くなることがあるらしい。主人公は"密室殺人"を完成させたかに見えたが、元来は犯罪のプロではない素人であり、その意味では凡ミスだがリアリティがあったように思われた。そのようにして見ていくと、元々ミステリとして洗練されたものを目指しているのではなく、主人公らの計画が偶然により狂っていく過程をリアリティを重視しながら描いているように思えた。



作国:フランス●監督:ルイ・マル●製作:ジャン・スイリエール●脚本:ロジェ・ニミエ/ルイ・マル●撮影:アンリ・ドカエ●音楽:マイルス・デイヴィス●原作:ノエル・カレフ「死刑台のエレベーター」●時間:95分●出演:モーリス・ロネ/ジャンヌ・モロー/ジョルジュ・プージュリー/リノ・ヴァンチュラ/ヨリ・ヴェルタン/シャルル・デネ/ジャン=クロード・ブリアリ
(ノンクレジット)●日本公開:1958/09●配給:ユニオン●最初に観た場所:新宿アートビレッジ (79-02-10)●2回目:新宿アート





LE FEU FOLLET (輸入版DVD)
アランは、治療院を一時出てパリに
行き、旧友と再会したりしますが、彼らはあまりに凡庸なマイホーム主義の中に自己を埋没させていて、彼はその凡庸さを嫌悪します。或いは、かつての恋人エヴァ(ジャンヌ・モロー)の場合だと、彼を受け容れはするものの、彼女自身が麻薬漬けの退廃生活に陥ってしまっていて、やはり、アランに生き方の指針を示すようなものではありませんでした。
彼の厭世観と孤独は深まるばかりで、医者に禁じられているアルコールにも手を出し、そうしながらも、昔馴染みのソランジュ(アレクサンドラ・スチュワルト)が催す晩餐会に出たりもしますが、誰も彼の話すことを理解しようとはせず、一層疎外感を募らせるだけで、この映画の登場人物で最もアランのことを理解していると思われるソランジュさえも、「気の毒な人」という感じでアラン見送るほかありません。
アランが自殺したのは7月23日で、これは冒頭の治療院の場面で壁の鏡に書かれていた日と同じで
あり、彼は最初から自殺を決意していたことがわかります。確かにアランの抱える虚無感は根深いものがあります。但し、この作品を観て先ず思ったことは、自殺をする人というのは、自分で自分が自殺するというストーリーの「脚本」を書いているという面があるのではないかということです。この映画ぐらい、そのことがよくわかる映画は無く、個人的には、もしも自殺を考えている人がこの映画を観たら逆に踏みとどまるのではないかという気もします。
エリック・サティ(1866-1925)のピアノが、淡々とした描写を自然に繋いでいて、時にそれは死への甘美なる誘いを醸しているようにも思えます。モーリス・ロネ(1927-1983/享年55)の抑制の効いた演技も素
晴らしく、アランという複雑な性格の主人公を、驚異的な集中力をもって演じていたように思います。
「鬼火」●原題:LE FEU FOLLET(英:THE FIRE WITHIN)●制作年:1963年●制作国:フランス●監督・脚本:ルイ・マル●撮影:ギスラン・クロケ●音楽:エリック・サティ●原作:ピエール・ドリュ・ラ・ロシェル「ゆらめく炎」●時間:108分●出演:モーリス・ロネ/ベ





Alan Sillitoe
新潮文庫版は、1958年に発表された「長距離走者の孤独」(The Loneliness of the Long Distance Runner)をはじめ、アラン・シリトー(Alan Sillitoe、1928‐2010)の8編の中短編を収めていますが、貧しい家庭で育ち、盗みを働いて感化院に送られた少年の独白体で綴られた表題作が、内容的にも表現的にも群を抜いています。
っているし、トニー・リチャードソン(Tony Richardson、1928-1991)監督の映画化作品「長距離ランナーの孤独」('62年/英)も有名です。主人公を演じたのはトム・コートネイで、舞台出身ですが、映画はこの作品が実質初出演で初主演でした(後に、「
トニー・リチャードソンは、文芸作品の映画化の名手で、ジョン・アーヴィング原作の映画化作品「ホテル・ニューハンプシャー」('84年/米・英・カナダ) もこの監督によるものであり、これはホテルを経営する家族の物語ですが、ジョディーフォスター、ロブ・ロウ、ナスターシャ・キンスキーという取り合わせが今思
えば豪華。少なくとも1人(J・フォスター演じるフラニー)乃至2人(N・キンスキー演じる"熊のスージー")の女性登場人物がレイプされて心の傷を負っており、また家族が次々と死んでいく話なのに、観終わった印象は暗くないという、不思議な映画でした(「ガープの世界」もそうだが、ジョン・アーヴィング作品の登場人物は、何かにつけてモーレツと言うか極端な人が多い)。

トニー・リチャードソンは、女優のヴァネッサ・レッドグレイヴと結婚し、2人の娘がいましたが、「

マルグリット・デュラス
原作の「ジブラルタルの追想」は、イタリア旅行中の青年がジブラルタルででアンナ(ジャンヌ・モロー)という女性と出会い、アランの方は彼女を真剣に愛し始めるが、アンナは楽しさだけでアランに身を任せている印象で、そんな


一方、ナボコフ原作の「悪魔のような恋人」は、金持ちの画商が小悪のような少
アラン・シリトー原作の『長距離走者の孤独』のストーリー自体はシンプルで、書けば"ネタばれ"になってしまうのですが(もう一部書いてしまったが、と言っても、広く知られているラストだが)、ラスト以外でのこの作品の優れた点は、主人公の少年コリンが友人と共にパン屋に強盗に入ったために捕まる場面で、刑事が自宅に捜索に来た時の主人公の心理などは、作者の体験談ではないかと思われるぐらい目いっぱいの臨場感があります。
「長距離ランナーの孤独」●原題:THE LONELINESS OF THE LONG DISTANCE RUNNER●制作年:1962年●制作国:イギリス●監督・製作:トニー・リチャードソン●脚本:スタンリー・ワイザー/アラン・シリトー●撮影:ウォルター・ラサリー●音楽:ジョン・アディソン●原作:アラン・シリトー●時間:104分●出演:トム・コートネイ/マイケル・レッドグレイヴ/ピーター・マッデン/ウィリアム・フォックス/トプシー・ジェーン/ジュリア・フォスター/フランク・フィンレイ●日本公開:1964/06●配給:昭映(評価:★★★)



間:110分●出演:トム・コートネイ/キャンディス・バーゲン/サム・ワナメーカー/コリン・ブレークリー/アイヴァン・オグルヴィ/ディミトリス・ニコライデス/ニコラス・アレクション●日本公開:1968/06●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:中野武蔵野館(78-02-24)(評価:★★★☆)●併映:「地球に落ちてきた男」(ニコラス・ローグ)
「ホテル・ニューハンプシャー」●原題:THE HOTEL NEW HAMPSHIRE●制作年:1984年●制作国:アメリカ・イギリス・カナダ●監督:トニー・リチャードソン●製作:ニール・ハートレイ/ピーター・クルーネンバーグ/デヴィッド・J・パターソン●脚本:トニー・リチャードソン●撮影:デイヴィッド・ワトキン●音楽:レイモンド・レッパード●原作:ジョン・アーヴィング「ホテル・ニューハンプシャー」●時間:109分●出演:ジョディーフォスター/ロブ・ロウ/ボー・ブリッジス/ナスターシャ・キンスキー/フィルフォード・ブリムリー/ポール・マクレーン/マシュー・モディン●日本公開:1986/07●配給:松竹富士●最初に観た場所:三軒茶屋東映(87-01-25)(評価:★★★★)●併映:「プレンティ」(フレッド・スケピシ) 「
「ジブラルタルの追想」●原題:THE SAILOR FROM GIBRALTAR●制作年:1967年●制作国:イギリス●監督:トニー・リチャードソン●製作:オスカー・リュウェンスティン●脚本:クリストファー・イシャーウッド/ドン・マグナー/トニー・リチャードソン●撮影:ラウール・クタール●音楽:アントワーヌ・デュアメル●原作:マルグリット・デュラス「ジ


間:90分●出演:ジャンヌ・モロー/イアン・バネン/オーソン・ウェルズ/ヴァネッサ・レッドグレーヴ/ヒュー・グリフィス/ウンベルト・オルシーニ/ジョン・ハート●日本公開:1967/11●配給:ユナイテッド・アーチスツ●最初に観た場所:大塚名画座(78-12-12)(評価:★★☆)●併映:「悪魔のような恋人」(トニー・リチャードソン)
ン/アンナ・カリーナ/ジャン=クロード・ドルオ/ピーター・ボウルズ/シアン・フィリップス/セバスチャン・ブレイク/ケイト・オトゥール/エドワード・ガードナー/シーラ・バーレル/ウィロビー・ゴダード/バジル・ディグナム/フィリッパ・ウルクハート(●日本公開:1969/05●配給:ユナイテッド・アーチスツ●最初に観た場所:大塚名画座(78-12-12)(評価:★★★★)●併映:「ジブラルタルの追想」(トニー・リチャードソ



