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からっとしたカプリ島で繰り広げられるじめっとした夫婦の愛憎劇。分かりやすい。

「軽蔑」ポスター「軽蔑 [DVD]」ブリジット・バルドー
女優カミーユ・ジャヴァル(ブリジット・バルドー)と脚本家ポール・ジャヴァル(ミシェル・ピッコリ)は夫婦である。夜、二人のアパルトマンの寝室での会話は無意味だが、夫婦らしいものでもあった。翌朝、ポールは米国から来た映画プロデューサー、ジェレミー・プロコシュ(ジャック・パランス)と会った。ジェレミーはフリッツ・ラング(本人)が現在撮影中の映画「オデュッセイア」があまりにも難解だとし、脚本のリライトをポールに発注してきた。昼になって、カミーユが現れ、夫妻はジェレミーに自宅に誘われた。自宅でジェレミーは、カミーユをカプリ島でのロケ撮影に来ないかと言う。それは夫が決めること、とカミーユは答える。アパルトマンに帰った後のポールとカミーユは、なぜかしっくりこない。夜、ふたりは別々の部屋で寝ることになる。ジェレミーから再び、カミーユへのロケのオファーの電話があった。ポールはポールで、本人次第だと答えてしまう。電話の後で激したカミーユは、ポールを軽蔑すると言い放つ。ジェレミーの誘いで映画館に行った後、カミーユはオファーを承諾した。カプリ島。ここにはジェレミーの別荘がある。撮影現場でラング監督とはやはりうまくいかないジェレミーは、カミーユに別荘へ戻ろうと言う。カミーユはポールを一瞥するが、ポールは、カミーユがジェレミーと別荘に帰ることを軽く承諾した。ポールは、それよりも、ラング監督との映画「オデュッセイア」の問題について議論を続けたいのだ。遅れて別荘に着いたポールは、
カミーユに、あの日ポールに言い放った「軽蔑」という言葉の真意を問いただす。答えは無かった。翌朝、ポールにカミーユからの手紙が届き、ジェレミーとローマへ発つと書かれていた。同じ頃、ハイウェイで派手な衝突事故が起きていた。大型車にぶつかり大破したスポーツカーには、ジェレミーとカミーユの血まみれの死体があった―。

1963年公開のゴダールの長篇劇映画第6作です。イタリアの作家アルベルト・モラヴィアの同名小説を原作に、当時、2年前に結婚したばかりの妻アンナ・カリーナとの愛の問題に苦悩したゴダールが、自己を投影し、愛の不可能性を描いたとされている作品です。60周年を記念した4Kレストア版が、2023年カンヌ国際映画祭のクラシック部門で上映されました。個人的には、ずっと昔に『ゴダール全シナリオ集〈ゴダール全集〉』('71年/竹内書店)で脚本を読んで以来、何十年の時を経てやっと見(まみ)えた作品になります。
2023年カンヌ国際映画祭ポスター
からっとしたカプリ島の太陽の下で、じめっとした愛憎劇が繰り広げられるこの対比は、やはり映像化された作品を実際に観て初めて分かるように思いました。室内シーンも少なからずありますが、こちらもポップアート調でカラフルな「デザイナーズマンション」のような別荘だったりします(デザイナーズマンションの先駆とも言われるカプリ島にある「マラパルテ邸」を使用)。こうしたことも含め、重苦しいテーマの中にも、ゴダールのセンスや遊び心さえも感じられる作品です。
「Le Mepris (60th Anniversary) (Vintage World Cinema) [Blu-ray]」
ジャック・パランス/ブリジット・バルドー
ブリジット・バルドー演じるカミーユがミシェル・ピッコリ演じる夫ポールに軽蔑の気持ちを抱いた決定的瞬間の1つはやはり、米国から来た映画プロデューサーが自分のアメ車に彼女を乗せる
のを、「じゃあ先に帰っていてくれ」とでも言わんばかりに制止する様子が無かった時だろうなあ。脚本のリライトのことで頭がいっぱいだったのは分かるけれど、女性には男性に毅然とした態度をとって欲しいという気持ちがあるのだろうなあ。なぜ、カミーユが夫を軽蔑するようになったのか分からないという人がいるけれど、個人的には、ゴダール作品の中ではかなり分かりやすい部類ではないかと思います(先にシナリオを読んでいたせいもあるかもしれないが)。昔観た「勝手にしやがれ」('59年)や 「気ちがいピエロ」('65年)の個人的評価が★★★★であるのに対し、それらを上回る★★★★☆評価にしたのは、その分りやすさもあったかもしれません(この映画、以前はゴダールにしては分りやす過ぎたために評価が割れ、あまり高い評価を得られなかったのではないか)。
その米国から来た映画プロデューサーを演じているのは、あの「シェーン」('53年)でアラン・ラッド演じるシェーンの敵役のアクの強いガンマンを演じたジャック・パランスです。1970年代には、刑事物のTVドラマ「刑事ブロンク」シリーズで主演するものの、やがて低迷し、B級作品やビデオ映画、チープホラーなどに出ていたのが、パーシー・アドロン監督の「バグダッド・カフェ」('87年/西独・米)で久々に復活した俳優でした。この作品では、当時の日本同様、斜陽化著しいヨーロッパの映画産業における、やがてハリウッド一辺倒の世界になるのではないかという不安を背景に、欧州に進出する米国資本の脅威の象徴として描かれているともとれます。
それに呼応するように、ドイツのサイレント映画の巨匠で、戦後アメリカのB級映画作家となったフリッツ・ラングが本人役で出演し、ただし、愛の問題にも映画産業の問題にも的確な言説を吐いています。アメリカ人プロデューサーとの撮影が頓挫するフリッツ・ラングは、現実世界では1920年代には「死滅の谷」「ニーベルンゲン」「メトロポリス」などの大作を撮っていますが、1960年の「怪人マブゼ博士」(1933年の「怪人マブゼ博士」のリメイク)以降の監督作はありません(ゴダール本人がラングの助監督役で本作に出演している)。
夫婦が不仲になるという設定と古代ギリシャ時代の彫刻のコピーの石膏像が作品に頻繁に出てくるのは、作中にそれを上映している映画館が出てくるロベルト・ロッセリーニの「イタリア旅行」('54年/伊・仏)へのオマージュであるとのこと(ロッセリーニもこの時、当時の妻イングリット・バーグマンの不仲に悩んでいた)。ただし「イタリア旅行」の夫婦はラストで劇的に和解するのですが、本作は和解はナシ。それどころか、最後にカミーユとジェレミーが事故死するのは(ロッセリーニはこの結末に不満だったらしい)、ポールの怨念から来る"念力"の結果? と言うことで、最後、役の上では死んじゃうけれど、ブリジッド・バルドーを最も美しく撮っている映画の1つです。



「軽蔑」●原題:LE MEPRIS(英:CONTEMPT)●制作年:1963年●制作国:フランス●監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール●製作:ジョルジュ・ドゥ・ボールガー/カルロ・ポンティ/ジョーゼフ・E・レヴィーン●撮影:ラウール・クタール●音楽:ジョルジュ・ドルリュー●原作:アルベルト・モラヴィア●時間:102分●出演:ブリジット・バルドー/ミシェル・ピコリ/ジャック・パランス/ジョルジア・モル/フリッツ・ラング/ジャン=リュック・ゴダール/ラウール・クタール/リンダ・ベラス●日本公開:1964/11●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:池袋・新文芸坐(24-08-13)(評価:★★★★) font>
