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ラストに救いがあっても全体としては暗いが、その暗さのため回想シーンが対比的に眩い。

夏の遊び ベルイマン   .jpg夏の遊びVHS.jpg夏の遊び dvd1.jpg 夏の遊び dvd.jpg
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Sommarlek (1951)

夏の遊び ベルイマン01.jpg 王立オペラ座のバレリーナのマリー(マイ・ブリット・ニルソン)は新聞記者の恋人ダヴィッド(アルフ・チェリン)の求愛に迷っていた。ある日届いた1冊の古い日記に13年前の思い出を呼び起こされ、電気設備の事故でリハーサルが中断されたのを機に、毎夏を過ごした伯母の別荘を訪れる。今彼女の中で、初恋の人ヘンリック(ビルイェル・マルムステーン)との出会いと、"毎日が金の糸に連なった真珠のような輝き"のひと夏が甦る。13年前の夏、別荘に行ったマリーは学生のヘンリックと恋に落ちた。伯母の友人エ夏の遊び ベルイマン05.jpgルランド(ゲオルグ・フンキースト)もマリーに関心を持っていたが、彼女にとってエルランドは"おじさん"であり、ヘンリックとの海辺での抱擁こそが永遠のものと思われた。しかしヘンリックは、彼女にいい所を見せようと崖から海に飛び込んで全身打撲で危篤に陥り、彼女とエルランドに看取られて死ぬ。ヘンリックの日記を密かにポケットにしまい込んだエルランドは、マリーを抱いて求夏の遊び ベルイマン02.jpg愛する。そして再び現在。マリーは自分を訪ねたエルランドに会うが、彼との愛人関係は既に終わっているものであることが窺える。彼は復縁を望んで日記を送ってマリーを呼び寄せたのだが、彼女はそれを拒んで劇場へ戻る。また楽屋の鏡を前にぽつねんと座る彼女。同僚が化粧を落とすのが怖いのかと冷やかし、舞台監督が彼女のバレリーナとしての衰えを容赦なく指摘する。そこへ、現在の恋人ダヴィッドが現れ、彼と口論しながらも彼女は、自分を理解してくれ、とヘンリックの日記を渡す。晴れ晴れした気持ちで化粧をぬぐった彼女。そして、翌日の出番前、舞台袖に現れたダヴィッドは無言で彼女を抱く。キスするためつま先立ちした彼女はそのまま舞台に出ていく―。

夏の遊び ベルイマン 00.jpg イングマール・ベルイマン(1918-2007/享年89)の1951年公開作で、この頃から映画監督ベルイマンとしてのスタイルが確立したとされています。映画の構成は、主人公のバレリーナの現在の意識の流れの中に、彼女の過去の記憶がフラッシュバック的に挿入されていくという点で、後の「野いちご」('57年)を思わせるものがありますし、過去の思い出を光輝く美しさの中に描いている点でも「野いちご」を思わせます(醜悪で気難しい老婆が出てくるところもだが)。

 ベルイマン自身は後に、「自分の作品の中で一番好きなのは『夏の遊び』だ。『第七の封印』は頭で作ったが、これは心で作ったのだ。この映画には私自身の青春の一部が反映されている」と述べていて、ベルイマン本人の記憶と経験を基に作られた映画であり(16歳の夏に家族と過ごした島で経験した初恋がモチーフになっているという)、学生時代の書いた小説「マリー」を自らが脚色したものです。主人公のマリーのモデルはベルイマンが知っていた少女で、実際には彼女は死ぬのですが、映画では少女の相手の青年が事故死する設定になっています。つまり、女性が主人公になっているところが、そして、映画における主観的存在を自分からと切り離した独自のキャラクターとしているところが、後に続くベルイマンの「女性映画」の原点であると言われるのと同時に、「映画監督ベルイマンとしてのスタイルが確立した」と言われる理由かと思います。

夏の遊び ベルイマン03.jpg 思い出の中の夏の別荘地での若い2人の恋が、北欧の太陽と森と湖面のまばゆい輝きを背景に美しく描かれており、それらのシーンの明るさは、暗いトーンを主体とした現在の彼女が置かれている状況―バレリーナである自分がプリマドンナとしてのピークをもう過ぎて、その座を明け渡す日が近いことが予感され、更に、過去を引き摺ったまま今の恋人とも一歩を踏み出せず口喧嘩ばかりで、そこへ、初恋の人の死の哀しみにつけ込まれかつて愛人関係を結んでしまった男が復縁を求めて訪ねてきたという状況(状況そのものがもうかなり暗い)―のシーンと対比的に描かれることで、更にその明るさを増して見えます(この瑞々しい明るさは、とても1950年代初めに作られた作品とは思えないほど)。

夏の遊び ベルイマン04.jpg 一方で、この眩い光に包まれた思い出も、初恋の人の事故死によって悲劇に終わるわけであって、光と影の強烈なコントラストにどこか不吉な予感が漂うとみてとれなくもなく、それは、「現在」における主人公の甘美な回想としての、そして、何度思い返しても悲劇に終わることが運命づけられている思い出であることを表しているのかもしれません(フラッシュバックの手法を取っているが、主人公の現在の意識の流れの一部としての回想であるということになる)。

 主人公はこれまで何度も何度もこの思い出を反芻してきたのでしょう。主人公が別荘を再訪したのは、そうした思い出にケリをつけるためだったのかもしれません。最後に主人公は、<思い出は甘美だが、発展のない遊びにすぎない。たとえ多少の問題があろうと、現在の幸せをつかむように努力すべきではないか>という考えになり、新聞記者の恋人を受け容れようとしており、その部分が映画的には救いになっているかと思いますが、そうした心境に至る理由づけがやや弱いようにも思いました。そのため、映画全体としては、最後に「救い」はあったものの、それまでの暗いトーンの方が勝っていて(「白夏の遊び640.jpg夏の遊び641.jpg鳥の湖」を踊るシーンなども明らかに意図的に暗い)、その「現在」のシーンの「暗さ」によって、思い出のシーンの「明るさ」がより一層に際立って印象に残った映画でした。ということで、結局シーンとしては「明るさ」が一番印象に残ったわけですが、それは眩いばかりの明るさであると同時に、儚(はかな)さのようなものを伴った明るさだったとも言えるかもしれません。

夏の遊び232.jpg夏の遊び636.jpg「夏の遊び」●原題:SOMMARLEK(英:SUMMERPLAY)●制作年:1951年●制作国:スウェーデン●監督:イングマール・ベルイマン●製作:アラン・エクルンド●脚本:イングマール・ベルイマン/ヘルベット・グレヴェーニウス●撮影:グンナール・フィッシェル●音楽:エリク・ノルドグレン●時間:90分●出演:マイ・ブリット・ニルソン/ビルイェル・マルムステーン/アルフ・チェリン/スティーグ・オリーン/ゲオルグ・フンキースト●日本公開:1992/09●配給:アルバトロス・フィルム●最初に観た場所:早稲田松竹(15-10-05)(評価:★★★★)●併映:「第七の封印」(イングマール・ベルイマン)

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話的であると同時に戯画的。ベルイマンは作中の宗教画家になろうとしたのか?

「第七の封印」(1957年製作、1963年日本公開).jpg第七の封印 dvd  .jpg第七の封印 dvd_.jpg 第七の封印8.jpg
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第七の封印4.jpg 十字軍の遠征が終わって間もないスウェーデン。騎士のアントニウス(マックス・フォン・シドー)とその従者ヨンス(グンナール・ビョルンストランド)は、十年に及んだ無益な遠征から帰国する。そこで彼らが見たのは、黒死病に蹂躙される祖第七の封印.jpg国と、神に救いを求め惑乱する民衆の姿だった。故郷に辿りつくと同時にアントニウスは、彼の後を追ってきた死神(ベント・エケロート)の存在に気付く。アントニウスに死を宣告する死神に対して、彼は自らの命を賭け、また神の存在を確かめるためにチェスでの対決を申し入れる。死神との勝負は長引き、その間の猶予を生かしてアントニウスは妻の待イングマール・ベルイマン 第七の封印.jpg第七の封印_002.jpgつ居城へと歩みを進める。道中でアントニウスは様々な人物に遭遇する。純朴な旅芸人ヨフ(ニルス・ポッペ)とその妻(ビビ・アンデショーン)の一家、妻に駆け落ちされた鍛冶屋(オーケ・フリーデル)、家族を疫病で失った少女(グンネル・リンドブロム)、下劣な犯罪者に成り下がった嘗ての聖職者ラヴァル(ベティル・アンデルベルイ)、魔女として火焙りの刑に処される女(モード・ハンソン)、疫病の蔓延を神の天罰だと考え自らを鞭打つ狂信者たち、破滅の予感に恐れ慄く人々など。その内の旅芸人一家、鍛冶屋第七の封印ド.jpg夫妻と少女を一行に加え、アントニウスは城への旅を続けるが、それは同時に彼に残された猶予期間が終わりつつあることを意味していた。城を目前としたある夜、アントニウスは死神相手にチェスの敗北を認める。結局自身の魂の救済も神との対話も達成できなかったアントニウスだが、旅芸人の第七の封印7.jpg一家を死神から守ることには成功する。荒れ果てた城で妻と再会し、晩餐をとるアントニウスとその一行の目の前に突然死神が現れ、その場に居た者全員の命を奪う。翌朝、死神の魔の手から無事逃げ出した旅芸人のヨフが見たのは、死神に先導され数珠繋ぎになって死の舞踏を踊るアントニウスら犠牲者たちの姿だった―。

第七の封印 5.jpg イングマール・ベルイマン(1918-2007/享年89)が、土着信仰とキリスト教信仰が混在する中世の北欧を舞台に、神の不在という実存主義的なテーマに挑んだ問題作。前年の「夏の夜は三たび微笑む」('55年)に続き、1957年度のカンヌ国際映画祭のパルム・ドールに2年連続でノミネートされ、受賞はならなかったものの、本作品は同映画祭の審査員特別賞を齎しました。

 「第七の封印」は、ベルイマンが子供の頃に、牧師であった父に連れられて行った教会の壁や天井に見た中世の宗教画にそのモチーフがあったとのことで、ベルイマンが記憶していたその図像の中に、森の中で死神が十字軍の騎士とチェスをしているものや、死神が黄泉の国へと向かう最後の踊りを踊る人々を導くものがあったといいます。また、別の天井には、よちよち歩きの御子の手を取って薔薇の園を行く聖母の絵があったといいます。

第七の封印 (1).jpg 当初、こうしたモチーフは、ベルイマンによって「木版の絵」という演劇学校の学生の練習用に書かれた一幕劇になり、それがラジオ劇として放送され、市立劇場でも公演されました。彼はこれを映画シナリオに書き換えて映画会社に送り、一旦はボツになったもののの、「夏の夜は三たび微笑む」のヒットを受けて映画化が決まりました。結果的に、ベルイマンの最大のヒット作の1つとなりまし第七の封印3.jpgたが、「木版の絵」から「第七の封印」になる時に、最後に生き残る旅芸人ヨフとその妻、そしてその幼子ミカエルの話が加わりました。先の宗教画に照らせば、ヨフはヨセフで、その妻はマリア、幼子ミカエルはイエスを表すことになります(但し、ヨフは夢想家として描かれ、その妻は生活に根ざした現実主義者として描かれていて、また、ヨフ自身が聖母マリアとイエスの姿をが幻視するという場面もある)。

 この作品を観ると、ベルイマンはキリスト教に対して反キリスト教的な立場をとっているわけではなく、キリスト教の問題性を主軸に据えているように思えます(この作品は、ベルイマンが初めてキリスト教を直接的に扱った作品でもあるが)。その問題性とはやはり、神の不在ということになるかと思います。

第七の封印_004.jpg 人それぞれにいろいろな見方が出来る映画であり、ペストが蔓延し世界が終末の不安に慄く中世ヨーロッパという背景は、当時の特殊な時代状況だとする見方がある一方、現代の不安に満ちた時代を反映していると見る向きもあります。また、ヨフの一家が生き延びることに宗教的な救いを探る人もいる一方、彼らが旅芸人の一家であることから、ベルイマンは芸術に救いを見出しているのではないかと見方もあります(何れにせよ、ヨフ一家が生き延びることが"映画的"な意味では救いになっていることには違いないと思う)。

第七の封印es.jpg ラストも含め、重い主題の映画でありながら、映画全体が寓話的な印象を受け、意外と軽妙感もあったりします。更に随所にコメディの要素も含まれていて、それまでのベルイマンの作品にも見られる艶笑喜劇的要素さえあります。死神の姿も過剰に戯画的であるし、死神がアントニウスの作戦に嵌りそうになって挽回の手を打つためズルをするという(教会の告解室でアントニウスは神への疑念と苦悩を語るが、聖職者のふりをした死神に騙されてチェスの作戦を教えてしまう)、人間と騙し騙されつつどっこいどっこいの勝負をしている死神というのも何だか可笑しいです。
Dai-nana no funin (1957)
Dai-nana no funin (1957).jpg
第七の封印 poster.jpg 映画の中に、教会の壁画(例の「死神の踊り」)を描いている男が出てきて、ヨンスが何故こんな無意味なものを描くのかと問うと、画家は、「人間は皆死ぬものだということを悟らせるためだ」と言い、また、「骸骨は裸の女よりも人々の関心を引く」とも言います。となると、この映画に出てくる死神も、そうした"目的"と"効果"のために描かれた絵の一つのパーツであるに過ぎないと言えるかもしれません。ベルイマンは作中の宗教画家になろうとしたのかも。そして、この映画が商業的な成功を収めたということは、そうしたベルイマンの意図が成功した言えなくもないかもしれません。ベルイマン自身が自作の中で最も気に入っている作品だそうです。

第七の封印images.jpg「第七の封印」●原題:DET SJUNDE INSEGLET(英:THE SEVENTH SEAL)●制作年:1957年●制作国:スウェーデン●監督・脚本:イングマール・ベルイマン●撮影:グンナール・フィッシェル●音楽:エリク・ノルドグ『第七の封印』を演出中のイングマール・ベルイマン.jpgレン●時間:96分●出演: マックス・フォン・シドー/グンナール・ビョルンストランド/ベント・エケロート/ニルス・ポッペ/ビビ・アンデショーン/グンネル・リンドブロム/ベティル・アンデルベルイ/オーケ・フリーデル/インガ・ジル/モード・ハンソン●日本公開:1963/11●配給:東和●最初に観た場所(再見):早稲田松竹(15-10-05)(評価:★★★★)●併映:「夏の遊び」(イングマール・ベルイマン)
「第七の封印」を演出中のイングマール・ベルイマン(1956)

《読書MEMO》
ウディ・アレンが選ぶベスト映画10(from 10 Great Filmmakers' Top 10 Favorite Movies)
『第七の封印』(イングマール・ベルイマン監督、1956年)
『市民ケーン』 (オーソン・ウェルズ監督、1941年)
『大人は判ってくれない』 (フランソワ・トリュフォー監督、1959年)
『8 1/2』 (フェデリコ・フェリーニ監督、1963年)
『フェリーニのアマルコルド』 (フェデリコ・フェリーニ監督、1974年)
『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』 (ルイス・ブニュエル監督、1972年)
『大いなる幻影』 (ジャン・ルノワール監督、1937年)
『突撃』 (スタンリー・キューブリック監督、1957年)
『羅生門』 (黒澤明監督、1950年)
『自転車泥棒』 (ヴィットリオ・デ・シーカ監督、1948年)

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ベルイマンの作品の中では分かりやすい。重くのしかかってくるテーマだが最後に救いが。

野いちご [DVD]0_.jpg野いちご 1957 DVD.jpg 野いちご1.jpg [野いちご]撮影中のベルイマン.jpg
野いちご [DVD]」/「野いちご」の1シーン/「野いちご」撮影中のベルイマン
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野いちご サーラ.jpg イサク(ヴィクトル・シェーストレム)は76歳の医師で、他人との接触を好まず、専ら書斎に引き籠っている。6月1日、彼は50 年に及ぶ医学への献身により、ルンドで行われる名誉博士号を受ける式典に出席することになっていた。息子エヴァルドの妻マリアンヌ(イングリッド・チューリン)が同乗した車でルンドへ向う途中、青年時代を過した邸に立ち寄る。草叢の野いちごはありし日の情景を甦らせる―野いちごを摘む可憐なサーラ(ビビ・アンデショーン)はイサクの許婚だったが、大胆なイサクの弟が野いちご 3.jpgサーラを奪う―。傷ついたイサクの心は未だに癒えない。ここからサーラと名乗る女学生(ビビ・アンデショーン、2役)と2人の男友達の3人組ヒッチハイカーを乗せる。若い彼等の溢れんばかりの天衣無縫さに接して、イサクは今更のように無為に過ごした年月を悔む。曲り角ですれ違う車と衝突しかけ、相手の車は野いちご 2.jpg転覆、乗っていた夫婦を同乗させたが、彼らはあたり構わず口論し互に蔑み、仕舞いには叩き合う。マリアンヌは2人を降ろす。廻り道をして、イサクは96歳の老母を訪ねる。彼女は他人にも自分にも厳しく、親族は誰も寄りつかない。車中、またしてもイサクは微睡(まどろ)む―暗い森の中に連れて行かれたイサクは、妻カリンと愛人の密会を野いちご ベルイマン.jpg見る。それはイサクがかつて目撃した光景そのままだった―。目覚めたイサクは、妻の告白を聞いて以来、自分が死を生きていることに気づく。マリアンヌは、エヴァルトも死を望んでいると話す。車はルンドに着き、ファンファーレと鐘の音に包まれて式典は荘重に行われ、授与式は無事終わる。イサクはその夜、マリアンヌと家族のことについて誠実に話し合う。寝室の外では昼間に出会ったヒッチハイカーたちがイサクの栄誉を祝福し、イサクはいつになく温かい感情に浸る。ベッドに横たわると夢の世界に入っていた―野いちごの森からサーラが現れてイサクを入江に連れて行く。イサクの父は静かに釣糸をたれ、傍では母が本を開いていた。イサクの心境をそのままにすべては安らかだった―。

野いちごs.jpg イングマール・ベルイマン(1918-2007/享年89)が自らの脚本を演出した、老医師の夢と現実を一種の回想形式で描く作品。「夏の夜は三たび微笑む」('55年)、「第七の封印」('57年)の成功で国際的名声を得たベルイマンが、その評価を不動のものとした作品であり、'58年ベルリン映画祭グランプリ、'59年アルゼンチンのマル・デル・プラタ映画祭グランプリ、ヴェネツィア国際映画祭での批評家賞(コンペティション外)、イギリス映画批評家大賞、米・ナショナル・ボード・オブ・レビュウ最優秀外国映画賞、ゴールデングローブ賞外国語映画賞などを受賞、また、アンドレイ・タルコフスキーやスタンリー・キューブリックがオールタイム・ベストの一本として挙げた作品でもあります。

 初めて観た時もいい映画だとは思いましたが(ベルイマンの作品の中では分かり易い方だと思う)、その時はまだ20代で、「よくできた映画」という印象であり、この映画の良さというのが実感としては十分には分かっていなかったかも。その後DVDなどで観直して、改めて技巧面などで気づいたこともあったり、或いはまた、「老い」や「死」を多少とも身近に感じるようになったりしていくうちに、奥深さを持った映画だと思うようになりました。

野いちご8a.jpg野いちご イサクの夢.jpg 舞台は「第七の封印」の中世から一転して現代に移っていますが、ロードームービーっぽいところが似ているかもしれません。道中の風景、初夏の光と影を美しく撮っていますが、リアリスティックであると同時にシュールでもあり、イサクが見る自らの「死」を象徴するかのような夢はまさにシュールレアリスムの影響を受けているのが窺えるとともに、イサクの過去の回想シーンの中に現在の自分がいるというのが、最近観直してみて改めて斬新に感じられました。フラッシュバックで描かれるイサクの過去の時間は、同時に、現在のイサクの意識の流れを表していることになります(それにしても、76歳になっても医学生の時の試験の夢を見るのだなあ。医学の権威で今まさに名誉博士号を受けようしている自分が、夢の中であるとは言え、医学の基本的な問題にさえ答えられないというのはキツイだろうなあ)。

野いちごビビ・アンデショーン03.jpg野いちごsmultronstallet.jpg ビビ・アンデショーンが、回想シーンにおけるイサクのかつての許婚サーラと、現在のシーンにおける3人組ヒッチハイカーの1人サーラの1人2役を演じていますが、片や婚約者の弟に唇を奪われ婚約者との結婚を諦める古風な女性であり、片や2人のボーイフレンドを引き連れヒッチハイクをするモダンな女性であるという、互いに対照的な役どころなのが興味深いです。

野いちご イングリッド・チューリン マリアンヌ.jpg野いちご イサクとマリアンヌ.jpg 一方、イサクの息子の妻マリアンヌを演じたイングリッド・チューリンは、ベルイマン映画の常連でありながらこの作品では一見脇役のようですが、イサクの心境を映し出す鏡のような役割も果たしていて、やはりそれなりに重いウェイトを占めていたようにも思います(「第七の封印」で主役だったマックス・フォン・シドーは、この作品では殆ど目立たない役)。
  
野いちご主役のヴィクトル・シェストレムとベルイマン-Bergman_Sjostrom_1957.jpg イサクを演じたヴィクトル・シェーストレムは、当時78歳と高齢で健康に優れず、撮影中にセリフを忘れることもしばしばで、屋外での撮影が予定されていた幾つかのシーンが、健康を考慮して屋内での撮影に変更されたといい、この作品が彼の遺作となったわけですが、ベルイマンはインタビューで、この映画の撮影そのものが「時」に対する闘い(つまりシェーストレムの老化と映画を完成させることとの時間的な競い合い)であったことを明かしています(小藤田千栄子(編)『世界の映画作家9 イングマル・ベルイマン』('71年/キネマ旬報社))。また、撮影中のシェストレムは非常に気難しく、監督であるベルイマンの演出に不平をこぼすことも少なくなかったそうで、まさに作中の気難し屋のイサクと重なります(ベルイマンは後に、「野いちご」は自分自身の映画ではなく、シェーストレムのものだと語るほど、彼の演技を高く評価している)。

ベルイマンとヴィクトル・シェーストレム

 ベルイマンの作品には難解なものもあるものの、何れも日本での評価も高く、この作品も'62年度のキネマ旬報外国語映画ベスト・テン第1位に選出されていますが、ベスト・テンで1位になったのは、先にも述べたように、この作品がベルイマンの作品の中では分かり易い方であるということもあるのではないでしょうか。もう1つの代表作「第七の封印」('57年)と同年の公開作であることを考えると、この頃に1つのベルイマンのピークがあったとみていいのではないかと思います(「野いちご」の前に作られ、日本では公開が1年後だった「第七の封印」は、'63年度のキネマ旬報外国語映画ベスト・テン第6位)。

野いちご サラと老イサクc.jpg 「第七の封印」は極めて直截的に「死」がモチーフでありテーマでもありましたが、この「野いちご」も「老い」がテーマであり、詰まるところ「死」がテーマと言えるかと思います。そうした重くのしかかってくるテーマを扱いながらも、「第七の封印」で最後に生き延びる家族があったように、この作品にもラストに救いがあるのがいいです。ただ、その「救い」の見せ方が、「第七の封印」と「野いちご」では異なり、ベルイマンという監督の幅の広さを感じさせます。

サーラ(ビビ・アンデショーン)とイサク(ヴィクトル・シェーストレム)
 
Smultronstället (1957).jpg どちらが好みか意見が分かれるかも知れませんが、個人的には、「頭で作った」とベルイマン自身が評した(それ故に理屈っぽい解釈が先立ちがちな)「第七の封印」よりも、「野いちご」の方がだんだん良く思えてくるのは、自分の年齢のせいかもしれません(昔は「第七の封印」の方が好きだったのだが、今は自分の中では同程度に優れた作品という位置づけになっている)。人は自らの過去に何らかの悔恨を抱いていて、人生がその終わりに近づいた時、何らかの形でその悔恨の情に折り合いをつけようとするものなのかもしれません。昔に観た時は、それが精神分析で言う"合理化"に見えた点がやや引っ掛かったのかもしれませんが、死ぬときに自分の人生良かったと思えればそれに越したことはないものの、実際にはそんな単純なものではなく、"合理化"とまでは言わないまでも、場合によってはそれに近いような心理的働きを促す作用が働くのではないでしょうか。そんなことを考えさせられる映画でもありました。
Smultronstället (1957)
野いちご スタンドの若い店主と.jpg「野いちご」●原題:SMULTRONSTALLET(英:WILD STRAWBERRIES)●制作年:1957年●制作国:スウェーデン●監督・脚本:イングマール・ベルイマン●撮影:グンナール・フィッシェル●音楽:エリク・ノルドグレン●時間:91分●出演:ヴィクトル・シェストレム/ビビ・アンデショーン/イングリッド・チューリン/グンナール・ビョルンストランド/マックス・フォン・シドー/グンネル・リンドブロム●日本公開:1962/12●配給:東宝東和●最初に観た場所:京橋フィルムセンター(80-07-11)●2回目:早稲田松竹(15-04-10)(評価:★★★★☆)●併映(2回目):「処女の泉」(イングマール・ベルイマン)

左:ヴィクトル・シェーストレム/右:マックス・フォン・シドー(ガソリンスタンドの店主)

《読書MEMO》
スアンドレイ・タルコフスキーが選ぶベスト映画10(from 10 Great Filmmakers' Top 10 Favorite Movies)
①『田舎司祭の日記』"Diary of a Country Priest"(1950/仏)監督:ロベール・ブレッソン
『冬の光』"Winter Light"(1962/瑞)監督:イングマール・ベルイマン
③『ナサリン』"Nazarin"(1958/墨)監督:ルイス・ブニュエル
④『少女ムシェット』"Mouchette"(1967/仏)監督:ロベール・ブレッソン
⑤『砂の女』"Woman in the Dunes"(1964/米)監督:勅使河原宏
『ペルソナ』"Persona"(1966/瑞)監督:イングマール・ベルイマン
⑦『七人の侍』"Seven Samurai"(1954/日)監督:黒澤明
⑧『雨月物語』"Ugetsu monogatari"(1953/日)監督:溝口健二
⑨『街の灯』"City Lights"(1931/米)監督:チャーリー・チャップリン
『野いちご』"Smultronstället"(1957/瑞)監督:イングマール・ベルイマン

スタンリー・キューブリックが選ぶベスト映画10(from 10 Great Filmmakers' Top 10 Favorite Movies)
1 『青春群像』(1953年/監督:フェデリコ・フェリーニ)
『野いちご』(1957年/監督:イングマール・ベルイマン)
3 『市民ケーン』(1941年/監督・主演:オーソン・ウェルズ)
4 『黄金』(1948年/監督:ジョン・ヒューストン /主演:ハンフリー・ボガート)
5 『街の灯』(1931年/監督・主演:チャールズ・チャップリン)
6 『ヘンリー五世』(1945年/監督・主演:ローレンス・オリヴィエ)
7 『夜』(1961年/監督:ミケランジェロ・アントニオーニ)
8 『バンク・ディック』(1940年/監督:エドワード・クライン)
9 『ロキシー・ハート』(1942年/監督:ウィリアム・ウェルマン)
10『地獄の天使』(1931年/監督:ハワード・ヒューズ)

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原作に忠実な文芸大作であるとともに、ジャン・ギャバンが圧倒的存在感を見せる。

レ・ミゼラブル 映画パンフレット.jpgレ・ミゼラブルdvd.jpg レ・ミゼラブル ニューマスター.jpg レ・ミゼラブル ニューマスター2.jpg
レ・ミゼラブル [DVD]」〔'02年〕/「レ・ミゼラブル ニューマスター版 [DVD]」〔'12年〕/「レ・ミゼラブルニューマスター版DVD ジャン・ギャバン主演」〔'15年〕
「レ・ミゼラブル」映画パンフレット(1959年6月1日)

les_miserables01jw.jpg 1815年のある日、ミリエル司教(フェルナン・ルドゥー)の司教館をジャン・バルジャン(ジャン・ギャバン)という名の男が訪れる。彼は、貧困からたった1本のパンを盗んだ罪で服役し、脱獄すること4回、都合19年の刑期を終え、ようやっと出所したばかりだった。行く先々で冷遇された彼を、司教は暖かく迎え入れる。しかし、その夜、大切にしていた銀の食器をバルジャンに盗まれてしまうles_miserables03jw.jpg。翌朝、彼を捕らえた憲兵に対して司教は「食器は私が与えたもの」だと告げて彼を放免させたうえに、2本の銀の燭台をも彼に差し出す。それまで人間不信と憎悪の塊だったバルジャンの魂は司教の信念に打ち砕かれ、迷いあぐねているうちに、サヴォワの少年の持っていた銀貨を結果的に奪ってしまうが、それを悔いて、正直な人間として生きていくことを誓う―。

les_miserables05jw.jpg 1819年、バルジャンはマドレーヌと名乗り、黒いガラス玉および模造宝石の事業で成功を収め、更に、その善良な人柄と言動が人々に高く評価されて町の市長になっていた。彼の営む工場でファンティーヌ(ダニエル・ドロルム)という女性が、3歳になる娘をモンフェルメイユのテナルディエ夫妻(ブールヴィル、エルフリード・フローリン)に預け女工として働にles_miserables05tw.jpgいていていたが、その後売春婦に身を落とし、あるいざこざが契機でバルジャン救われる。病に倒れた彼女の窮状を知ったバルジャンは、彼女の娘コゼットを連れて帰ることを約束する。テナルディエは養育費と称し、様々な理由をつけてはファンティーヌから金をせびっていた。モンフェルメイユへ行こうとした矢先、バルジャンは、自分と間違えられて逮捕された男のことをジャベール警部(ベルナール・ブリエ)から聞かされ、葛les_miserables06w.jpg藤の末、彼を救うことを優先し、自身の正体を公表して逮捕されるが、通算5度目となる脱獄を図る。1823年、亡きファンティーヌとの約束を果たすためモンフェルメイユにやって来たバルジャンは、村はずれの泉でコゼット(マーティン・ハーヴェット)に出会う。彼女は8歳で、テナルディエ夫妻の営む宿屋で女中としてただ働きさせられていた。バルジャンはテナルディエの要求どおり金を払い、コゼットを奪還してそのままパリへ逃亡、パリに赴任していたジャベールら警察の追っ手をかいくぐり、修道院で暮らし始める―。

les_miserables09jw.jpg パリのプリュメ通りにある邸宅に落ち着いたバルジャンとコゼット(ベアトリス・アルタリバ)は、よくリュクサンブール公園に散歩に来ていた。そんなふたりの姿をマリユスles_miserables05mw.jpg(ジャンニ・エスポジト)というの若者が見ていた。共和派の秘密結社ABC(ア・ベ・セー)のv友に所属する貧乏な学生である。ブルジョワ出身の彼は幼い頃に母を亡くし祖父に育てられたが、ナポレオン1世のもとで働いていた父の死がきっかけでボナパルティズムに傾倒し、王政復古賛成の祖父と対立、家出していた。マリユスは美しく成長したコゼットに一目惚れする。テナルディエの長女エポニーヌ(シルヴィア・モンフォール)の助けを得て彼女の住まいを見つけ、同じころ彼に惚れていたコゼットに、ようやく出逢うことが出来、互いを深く愛し合うようになるが、les_miserables07mw.jpgles_miserables01pw.jpgコゼットはバルジャンから、1週間後にイギリスへ渡ることを聞かされる。コゼットとジャン・バルジャンとマリユスの3人を中心とした運命の渦は、ジャベール、テナルディエ一家、マリユスの家族や親しい人々、ABCの友のメンバーまで巻き込んで大きくなっていき、七月革命の混沌にあるパリを駆け回り、やがて1832年の六月暴動へと向かって行く―。

les_miserables11jw.jpg 1957年のジャン=ポール・ル・シャノワ監督作で、原作は勿論ヴィクトル・ユゴーの同名小説。Wikipediaには、「数々の映画化作品の中で、最も原作を忠実に再現された作品として高く評価されており、約10億フランの巨額を賭けて製作された巨編映画である。今日でも、古典映画の中でも特に最高傑作として評価されており、根強いファンも少なくない」とあり、実際、Amazon.comのレビューなどを見てもそれは窺えます。レビューの中には、「他の映画化作品は、2012年のミュージカル映画も含めて、興業上の理由から短く話を端折って、その代わりに、脚本家や監督、俳優の"色"を濃く打ち出して独自の商品価値を出すスタイルと考えてよく、ユーゴーの作品に着想を得た"何か別のもの"だと考えたほうが良い」といったような"通"っぽいコメントもありました。

レ・ミゼラブル ps.jpg 個人的には、トム・フーパー監督によるミュージカル映画「レ・ミゼラブル」('12年/英)も良かったように思われ、原作を忠実に映画化しているとされる本作と、ミュージカルのオリジナル脚本を忠実に映画化しているとされるトム・フーパー版を観比べてみるのも面白いかもしれません。

 確かにトム・フーパー版は、バルジャンがサヴォワの少年の持っていた銀貨を奪うエピソードが無かったりしますが(原作では、元囚人である事を明かしたバルジャンは、少年の銀貨を奪った罪で逮捕される)、全体としてものすごく改変されて"何か別のもの"になっているというまでの印象は受けませんでした。

レ・ミゼラブルO.jpg 一方、このル・シャノワ版は、約3時間の大作ですが、派手な演出や作為的な盛り上げもなく、文芸作品路線とでも言うか、物語を淡々と読み進めていくように話が進んでいき、それでいて感動を惹き起こすのは、やはり原作の力でしょうか。それともう一つ大きいのは、やはり、ジャン・バルジャンを演じたジャン・ギャバン(当時53歳)の圧倒的な存在感でしょう。トム・フーパー監督のミュージカル映画「レ・ミゼラブル」が群像劇という印象を受けるのに対し、このル・シャノワ版「レ・ミゼラブル」はジャン・ギャバン演じるジャン・バルジャンを中心とした、まさに"ジャン・ギャバン版"といった印象を受けました。

レ・ミゼラブル vhs.jpg 過去4回脱獄を繰り返した囚人で、市長になった後に再び囚われの身となるもあっさり5回の脱獄を成し遂げるとか、犯罪者集団を相手に凄んでみせて逆に連中をビビらせるとかいった役どころは、ギャング映画で鳴らしたジャン・ギャバン向き(?)。一方で、幼い少女コゼットとの取り合わせなどは、前年作「へッドライト」('56年)を彷彿させ、これはこれで絵になるという、観る前に抱いていたイメージよりもずっと"はまり役"であったような気がします(バルジャンと間違えられて逮捕された男までジャン・ギャバンが演じているのは、ちょっとした"お遊び"的要素か。ビデオジャケットにもなっているけれど、この時の役どころはジャン・バルジャンではなく"ジャン・バルジャンに間違えられた男"である)。

レ・ミゼラブル ポスター.jpg 1957年公開という古い映画だけに、以前のDVD(2002年アイ・ヴィー・シー版)には画質にやや難がありましたが、2012年のトム・フーパー版「レ・ミゼラブル」の公開に合わせてか、同年にデジタルニューマスター版DVDが発売されており、更に今年['15年]5月にもデジタルニューマスター版DVDが発売されています。ミュージカル乃至ミュージカル映画を観る際の予習(または復習)として観るのもいいのではないでしょうか。

レ・ミゼラブル-2.jpg「レ・ミゼラブル」●原題:LES MISERABLES●制作年:1957年●制作国:フランス・イタリア●監督・製作:ジャン=ポール・ル・シャノワ●脚本:ルネ・バジャベル/ミシェル・オーディアール/ジャン=ポール・ル・シャノワ●撮影:ジャック・ナトー●音楽:ジョルジュ・バン・パリス●原作:ヴィクトル・ユゴー●時間:186分●出演:ジャン・ギャバン/ダニエル・ドロルム/ベルナール・ブリエ/セルジュ・レジアニ/ブールヴィル/エルフリード・フローリン/シルヴィア・モンフォール/ジャンニ・エスポジート/ベアトリス・アリタリバ/フェルナン・ルドゥー/マーティン・ハーヴェット●日本公開:1959/06●配給:中央映画社(評価:★★★★☆)

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'58年ニューポート・ジャズ・フェスティバルの記録。音楽と映像のマッチングを愉しめる。

真夏の夜のジャズ(1959)ps.jpg  真夏の夜のジャズ(1959)チラシ.jpg 真夏の夜のジャズ(1959)パンフレット.jpg  真夏の夜のジャズ(1959)dvd2.jpg
映画チラシ 読売ホール「真夏の夜のジャズ」監督 バート・スターン 出演 ルイ・アームストロング、マヘリア・ジャクソン」/チラシ/パンフレット(ルイ・アームストロング/アニタ・オディ)「真夏の夜のジャズ [DVD]

真夏の夜のジャズ(1959)0.jpg 1958年に行われた第5回ニューポート・ジャズ・フェスティバルの模様を収めたドキュメンタリーフィルムで、音楽を扱ったドキュメンタリーの中でも、、映像的には最高水準にある作品とされているようです。そうと知らずに初めて観た時は、映像と音楽をただただ愉しんだという感じでしたが、初めて観た時('86年)に既に作られてから四半世紀経っていたのだなあと(これは今になって意外に思う)。

 製作・監督のバート・スターンは当時28歳の真夏の夜のジャズA5.jpgカメラマンで、この記録映画をちょっと変わった撮り方をしていて、実際にはこのフェスティバルには100人以上のミュージシャンが出演したそうですが、ルイ・アームストロング、アニタ・オデイ、マヘリア・ジャクソン、ダイナ・ワシントン、セロニアス・モンク、ゲリー・モリガン、ジョージ・シェアリングなど40人くらいに絞り込み(その結果、マイルス・デイヴィス、デューク・エリントン、ソニー・ロリンズなどの出演場面がカットされ、その演奏が収められていない)、しかも、4日間のイベントをまるで1日のイベントであったかのように撮っています。

真夏の夜のジャズ243.jpg また、演奏会場の準備風景やバックステージ、観客の様子などもしっかり撮っていて、この手法は「ウッドストック」('70年/米)などに引き継がれるわけですが、歌い手真夏の夜のジャズ(1959)  .jpgや演奏者よりも観客の方を長く撮っていたりする時間帯もあり、仕舞いには、カメラはフェスティバル会場を飛び出し、同時期に当地で行われようとしていたヨットのアメリカズ・カップの準備の様子や練習風景、アメリカズ・カップが本来のお目当だったと思われる観光客まで撮っています。

真夏の夜のジャズ5.jpg ということで、演奏の音楽が流れている間、カメラは、熱心に聴き入る観客ばかりでなく、無心にアイスクリームを食べる女性を望遠レンズでそっと撮ったり、海面を走るヨットを俯瞰で撮ったりもしているわけですが、そうした映像が音楽と不思議とフィットしていて、「聖者が街にやってくる」ではないですが、「ニューポートの街にジャズ・フェスティバルがやってきた」という雰囲気がシズル感をもって伝わってきます(そもそもこの映画は、クラシックカーに乗った楽隊がニューオリンズ風の演奏を繰り広げながら街を走るシーンから始まる)。

真夏の夜のジャズ68.jpg 出演者の中では、終盤に登場するルイ・アームストロング(1901-1971/享年69)の貫禄とエンターテイナーぶりはさすがという感じでした。それ以外では、ラストのマヘリア・ジャクソンのゴスペルも良アニタ・オディ.jpgかったですが、最初の方に出てくる、「スウィート・ジョージア・ブラウン」「二人でお茶を」の2曲真夏の夜のジャズ(1959)輸入盤dbd.jpgを歌ったアニタ・オデイ(1919-2006/享年87)が印象的でした。この後の彼女は、60年代のヘロイン中毒及びアルコールの中毒期を経て70代にカムバックを遂げますが、やはりこの頃がベストだったのではないでしょうか。

 ジャズファンにはたまらない記録フィルム。また、単なる「記録」を超えて、ちゃんとした「映画」となっている作品であるとも言えます。個人的にはこの当時のジャズ界にそれほど精通しているわけでもないし、バート・スターンらがどういった基準でミュージシャンを選んだのかも判りかねるのですが、それでも、音楽と映像のマッチングを愉しめた作品でした。映像的には、映画の前半部分は前衛的だったけれど、後半はそうでもなかったかな(ルイ・アームストロングなどは楽器演奏、歌に加えて掛け合いなどもあるわけで、その分、カメラは固定せざるを得なかったのか)。
Jazz on a Summers Day [DVD] [Import]

「真夏の夜の真夏の夜のジャズ(1959)vhs.jpgジャズ」●原題:JAZZ ON A SUMMER'S DAY●制作年:1959年●制作国:アメリカ●監督:バート・スターン/アラム・アヴァキアン●製作:ハーヴェイ・カーン/バート・スターン●脚本:アーノルド・パール●撮影:バート・スターン/コートニー・ヘィフェラ/レイ・フェアラン●音楽:ジョージ・アヴァキン●時間:86分●出演:ルイ・アームストロング/セロニアス・モンク/アニタ・オディ/ダイナ・ワシントン/チャック・ベリー/ジェリー・マリガン/マハリア・ジャクソン/チコ・ハミルトン/ジャック・ティーガーデン/ゲリー・モリガン/ジョージ・シェアリング●日本公開:1960/08●配給:東和●最初に観た場所:新宿文化シネマ2(86-08-23)(評価:★★★★)●併映:「ストレンジャー・ザン・パラダイス」(ジム・ジャームッシュ) 「真夏の夜のジャズ [VHS]

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雄大な西部を背景とした様々な価値観の対立。ストーリー的に飽きさせずに最後まで見せる。

大いなる西部ps.jpg大いなる西部.jpg大いなる西部(テレビ吹替音声収録)HDリマスター版.jpg 大いなる西部001.jpg
「大いなる西部」ポスター「大いなる西部(テレビ吹替音声収録)HDリマスター版 [DVD]

大いなる西部9M.jpg大いなる西部1Y.jpg 1870年代のテキサスのある町に、東部から1人の紳士ジェームズ・マッケイ(グレゴリー・ペック)が、有力者テリル少佐(チャールズ・ビックフォード)の娘パット(キャロル・ベイカー)大いなる西部2HA.jpgと結婚するためにやって来る。出迎えた牧童頭のスティーブ・リーチ(チャールトン・ヘストン)は主人の娘を密かに恋しており、ヤサ男風のジェームズに敵意を抱く。パットは、ジェームズと父の牧場に向かう途中、ヘネシー家の息子大いなる西部5Y.jpgバック(チャック・コナーズ)たちの悪戯を受けるが、ジェームズは彼らの為すがままで抵抗しなかった。パットの父テリル少佐は大地主ルーファス・ヘネシー(バール・アイヴス)とこの地の勢力を二分して争っていた。両者が共に目をつけている水源地ビッグ・マディは、パットの親友の女教師ジュリー・マラゴン(ジーン・シモンズ)が所有していた。大いなる西部1A.jpg彼女は一方が水源を独占すれば必ず争いが起こると考え、どちらにも土地を売ろうとしなかった。少佐は娘婿にされた乱暴に対して、ヘネシーの集落を襲いヘネシーの息子たちにリンチを加えて復讐するが、ジェームズはそんな少佐に相大いなる西部S.jpg容れないものを感じる。彼は争いの元である水源地ビッグ・マディを見て女主人ジュリーに会い、中立の立場で誰にでも水を与え、自分でこの地に牧場大いなる西部JK.jpgを経営したいと申し出て売約契約を交わす。血気にはやるパットと父の少佐には、ジェームズの態度が不満だった。一方、ヘネシー父子は、水源地を手に入れて少佐に対抗するため、ジュリーを監禁する。ジェームズはメキシコ人牧童ラモン(大いなる西部E2.jpgアルフォンソ・ベドヤ)の案内で単身本拠に乗り込み、水源は自由にすると明言してジュリーを救出しようとする。ジュリーに横恋慕する息子バックは、父ルーファス・ヘネシーの計らいでジェームズと決闘することになるが、卑怯な振舞いから父に射殺される。やがて少佐の一隊が乗り込んできて戦いが始まり、1対1で対決したルーファスと少佐は相撃ちで共に死に、憎悪による対立と暴力の時代は終わりを告げる―。

大いなる西部 old poster.jpg ウィリアム・ワイラー監督の1958年作品で、まさに「大いなる西部」を雄大に描きつつ、その中に様々な価値観の対立を織り込み、また、ストーリー的にも2時間46分の長尺でありながら飽きさせずに最後まで見せるという、巨匠ならではの堂々たる娯楽大作です。グレゴリー・ペック(1916-2003/享年87)、チャールトン・ヘストン(1923-2008/享年84)、ジーン・シモンズ(1929-2010/享年80)、キャロル・ベイカー(1931- )の4大スターが共演していますが、テレビで初めて観た時は4人とも存命していたのが、今はキャロル・ベイカーしか生きていないのは、50年以上前の作品であるから仕方無いけれど、ちょっと寂しいです。

大いなる西部BL8.jpg チャールトン・ヘストンは「主演」ではなく、主演はこの映画の製作も兼ねたグレゴリー・ペックであり、チャールトン・ヘストンの方は「助演」ということで、年齢的にも、グレゴリー・ペックが当時42歳だったのに対し34歳と、相対的にはまだ若い感じか。ウィリアム・ワイラー監督は、グレゴリー・ペックの主演作では「ローマの休日」('53年)があり、一方、この作品の翌年には、チャールトン・ヘストン主演の「ベン・ハー」('59年)を撮ることになります。

大いなる西部Z.jpg この作品には、グレゴリー・ペック演じるジェームズ・マッケイのキャラクターが分かりにくいとの批評もあるようですが、物語の設定上も、周囲が煮え切らないようなものを感じるキャラだから、観ている側がそう感じるのもおかしくないかも。実際にはジェームズは勇気ある正義漢であり、決して"ヤサ男"でも"慎重居士"でもないわけですが大いなる西部D83.jpg(逆にいくら命があっても足りないくらい(?)勇敢)、ただ、そこまで「能ある鷹は爪を隠す」的行動をするかなあという感じは確かにあります(却ってイヤミっぽい?)。むしろ、チャールトン・ヘストン演じる牧童頭スティーブ・リーチのキャラクターの方が分かり易くて親近感が感じられました。チャールトン・ヘストンが屈折した役柄を演じているというのも興味深いですが、彼は同年のオーソン・ウェルズ監督の「黒い罠」('58年/米)では、主人公のメキシコ人麻薬捜査官を演じています(オーソン・ウェルズ演じる刑事の不正を探る役))。

ジーン・シモンズ.jpgバール・アイヴス.jpg大いなる西部-01.jpg それ以外の俳優陣では、ヘネシー家の父親を演じたバール・アイヴス(1909-1995、数多くのヒット曲を持つフォーク歌手でもあった)がアカデミー助演男優賞とゴールデングローブ賞の両方の助演男優賞を受賞していますが、個人的には、ジーン・シモンズ(1929-2010)演じる女教師が印象的でした。きりっとした美人でもありますが、自らの名誉を犠牲にしてジェームズを守ろうとするところが、名誉にこだわって争いを繰り返す周囲の愚か者たちとの対比で際立大いなる西部J.jpgっていました。最後は、ジェームズと結ばれることを暗示するような終わり方と取るのが妥当―というか、もう、それしかないだろうなあと思ったりもします。

チャック・コナーズ バスケ.jpgチャック・コナーズ mlb.jpg グレゴリー・ペックとチャールトン・ヘストンの延々と続く殴り合いのシーンも語り草になっていますが、確かにグレゴリー・ペック190㎝、チャールトン・ヘストン191㎝という両者の長身は荒野に映えます。但し、敵役バック・ヘネシーを演じたチャック・コナーズ(1921-1992/享年71)はそれらを上回る身長197㎝の長身で、俳優になる前はBAA(現NBA)とMLBの選手でした(つまりプロバスケットボールとメジャーリーグ大いなる西部B.jpgの選手を兼ねていたことになる)。1958年10月に公開されたこの映画の中では、ヘネシー家の不良息子で、ジェームズ、パットらにちょっかいを出し、ジュリーに横恋慕した挙句、最期はその卑怯な行為によりバール・アイヴス演じる自分の父親に射殺されてしまうという情けない男の役ですが、同じく1958年9月から米ABCで放送開始されたテレビ西部劇「ライフルマン」では、無法者の悪や暴力と闘う銃の達人にして、妻にライフルマン59.jpgライフルマン .jpgChuck_Connors_The_Rifleman_1959.JPG先立たれ男手で子どもを育てる、いわば「男やもめのヒーロー」ルーカス・マケインを演じ、日本でも1960年から1963年までTBS系列で156話が放映されて人気を博しています(つまり、テレビの西部劇でヒーロー役を演じながら、同時期に映画の方ではアウトローの不良かつダメ男役を演じていたことになる)。

ルーカス・マケイン(チャック・コナーズ)
WESTERN HEROES VOL.11 ライフルマン [DVD]」  


「ライフルマン」The Rifleman (ABC 1958~1963) ○日本での放映チャネル:TBS(1960ライフルマン.jpg~1963)


 
  
   
 
 
 

「大いなる西部」●原題:THE BIG COUNTRY●制作年:1958年●制作国:アメリカ●監督:ウィリアム・ワイラー●製作:ウィリアム・ワイラー/グレゴリー・ペック●脚本:ジェサミン・ウェスト(脚色)/ロバート・ワイラー(脚色)/ジェームズ・R・ウェッブ/サイ・バートレット/ロバート・ワイルダー●撮影:フランツ・F・プラナー●音楽:ジェローム・モロス●原作:ドナルド・ハミルトン●時間:166分●出演:グレゴリー・ペック/チャールトン・ヘストン/ジーン・シモンズ/キャロル・ベイカー/バール・アイヴス/チャールズ・ビックフォード/アルフォンソ・ベドヤ/チャック・コナーズ/チャック・ヘイワード/ドロシー・アダムズ●日本公開:1958/12●配給:松竹=ユナイテッド・アーチスツ●最初に観た場所(再見):北千住・シネマブルースタジオ(15-09-14)(評価:★★★★)

《読書MEMO》
●チャールトン・ヘストン 1958年出演作
Charlton Heston 1958 Touch of Evil poster .jpgCharlton Heston 1958  the big country.jpgCharlton Heston in 1958 "Touch of Evil" (「黒い罠」)& "The Big Country "(「大いなる西部」)

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ヒッチコック唯一のアクション・サスペンス映画。筋立ての旨さで飽きさせない。

北北西に進路を取れ ps.jpg北北西に進路を取れ チラシ.jpg北北西に進路を取れ7.jpg 北北西に進路を取れ dvd.jpg
北北西に進路を取れ 特別版 [DVD]

北北西に進路を取れ 022.jpg 広告会社の重役ロジャー・ソーンヒル(ケーリー・グラント)は、ホテルのロビーでの会合中、偶然別の人物に間違えられて誘拐され、広壮な邸宅に連れていかれる。そこにいたタウンゼントと名乗る男(ジェームズ・メイソン)は彼の事をキャプランというスパイだと決めつけ、ロジャーが否定すると、今度は泥酔運転に見せかけて殺されそうになる。窮地を脱したロジャーは、翌日、タウンゼントが国連で演説することを知り、真相を確かめようと国連ビルへ赴くが、そこに現れたタウンゼントは全くの別人だった。そして、タウンゼントの背中にナイフが突き立てられ、容疑はロジャーにかかってしまう。政府のスパイ機関の会議室では、教授(レオ・G・キャロル)と呼ばれる男を中心に、予想外の事態への対応を協議していた。タウンゼントに成りすました男は、実はヴァンダムという敵のスパイ一味の親北北西に進路を取れ auction.jpg玉で、教授たちは彼らヴァンダム一味の中に自分たちの側のスパイを送り込んでいた。キャプランは教授たちが創造した架空のスパイで、ヴァンダムの注意をキャプランに引き付けることで、味方のスパイを守ろうという作戦だった。スパイ合戦に巻き込まれたロジャーに対し教授たちは同情しつつも、味方のスパイの安全のHokuhokusei ni shinro wo tore (1959).jpgため敢えて何もしないことに決める。架空の人物とも知らずキャプランを追い求めるロジャーは、彼がシカゴに向かったと知ると駅から特急寝台列車に乗る。その車内でイヴ・ケンドール(エヴァ・マリー・セイント)という女性と親しくなる。彼女はロジャーがお尋ね者であることを知りながら、彼を自室に招き入れて匿う。ところが同じ列車にヴァンダム一味も乗っていて、実はイヴは彼らと通じていた―。
Hokuhokusei ni shinro wo tore (1959)

北北西に進路を取れ 09.jpg 1959年のアルフレッド・ヒッチコック作品で、小麦畑でのセスナシーンやラシュモア山のシーンなどで知られるように、ヒッチコック唯一のアクション・サスペンスムービーとも言われています。こうした作品は大味になりがちなところを、筋立てとその運びの旨さで飽きさせず、さすがアカデミー賞の脚本賞にノミネートされただけのことはあります。個人的には、アクションもさることながら、ラシュモア山麓に建っている敵のモダンな別荘だとか、ロジャーがオークション会場で敵に囲まれた際に、わざと無茶苦茶な値を付けて警備員に連れ出されることで難を逃れるといったシーンなどが意外と印象に残っていたりします。

北北西に進路を取れ 00.jpgジェームズ・ステュアート.jpg 主演のケーリー・グラント(1904-1986/享年82)は、ジェームズ・ステュアート(1908-1997/享年89)と並ぶヒッチコック映画の代表的俳優であり、「断崖」('41年)、「汚名」('46年)、「泥棒成金」('55年)でヒッチコック映画のまさに"顔"となりましたが、その後、「裏窓」('54年)、「知りすぎていた男」('56年)、「めまい」('58年)でジェームズ・ステュアートが台頭し、立場が逆転した印象もあったところにこの作品に出演し、再びジェームズ・ステュアートに並ぶか、或いは抜き返したという感じではないでしょうか。

 ジェームズ・ステュアートはこの作品のロジャー役を熱望していたそうですが、フランソワ・トリュフォー著『映画術 ヒッチコック/トリュフォー』(山田宏一・蓮實重彦訳、'81年/晶文社)によれば、ヒッチコックは、「めまい」がヒットしなかったのはジェームズ・ステュアートがラヴ・ストーリーを演じるには年を取り過ぎていたからと考えていたようで、「北北西に進路を取れ」はスパイ・アクション映画ではあるが、ラヴ・ストーリーが大きな位置を占映画術80.JPG映画術78.JPGめているため、ジェームズ・ステュアートよりも若々しいケーリー・グラントを選んだのだろうとトリュフォーは推察しています(実際にはケーリー・グラントの方が3つ年上なのだが)。因みに、当時ヒットしなかったという「めまい」は、"Sight & Sound"誌映画批評家による「オールタイム・ベスト250」の2012年版で第1位に選出されています(「北北西に進路を取れ」は52位)。
定本 映画術 ヒッチコック・トリュフォー』('90年/晶文社)

北北西に進路を取れ エヴァ・マリー・セイント.jpg 一方、謎の女性を演じている女優はエヴァ・マリー・セイント(1924- )で、当時すでに「波止場」('54年)でアカデミー助演女優賞を受賞していましたが(因みに「波止場」はグレースー・ケリー北北西に進路を取れ 05.jpgが「裏窓」出演のために役を断り、そのためエヴァ・マリー・セイントに役が回ってきた)、ヒッチコックはこの作品でしかエヴァ・マリー・セイントを使っていません。おそらく、従来のヒッチコ北北西に進路を取れ 06.jpgック作品のヒロイン像と違って、「007シリーズ」のボンドガールのような役回りであることも関係しているのでしょう。ラストのロジャーと2人で寝台車のベッドで抱き合うシーンなども「007シリーズ」の北北西に進路を取れ 07.jpgエンディングっぽいですが、「007シリーズ」の第1作「007 ドクター・ノオ」('62年)の公開は本作の3年後です。ロジャーとイヴが寝台車の中で抱き合った後、列車がトンネルの中に入っていくシーンについて先ほどの『映画術』の中でヒッチコックは、「あれはこれまで私が撮った映画のなかでも一番猥褻なショットだ...列車は男根のシンボルだ」とトリュフォーに語っています。

北北西に進路を取れ hichi.jpg 因みに、恒例のヒッチコック自身のカメオ出演は、この作品では冒頭のクレジットタイトルの最後に出てくるバスに乗り遅れる男性であり、探す上ではかなり分かりやすい部類ではないでしょうか(「裏窓」も分かりやすかったが、それ以上か)。

北北西に進路を取れ 英文ps.jpg「北北西に進路を取れ」●原題:NORTH BY NORTHWEST●制作年:1959年●制作国:アメリカ●監督・製作:アルフレッド・ヒッチコック●脚本:アーネスト・レーマン●撮影:北北西に進路を取れ 02.jpgロバート・バークス●音楽:バーナード・ハーマン●時間:136分●出演:ケーリー・グラント/エヴァ・マリー・セイント北北西に進路を取れ 03.jpgジェームズ・メイソン/マーティン・ランドー/ジェシー・ロイス・ランディス/レオ・G・キャロル/ジョセフィン・ハッチンソン/フィリップ・オバー●日本公開:1959/09●配給:メトロ・ゴールドウィン・メイヤー●最初に観た場所:高田馬場・ACTミニシアター(88-07-10)(評価:★★★★)●併映:「暗殺者の家」(アルフレッド・ヒッチコック)

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ウェルズの万能ぶりが発揮されたフィルム・ノワールの傑作(逸失部分があるのが残念)。

黒い罠 blueray.jpg 黒い罠 dvd.jpg 黒い罠    .jpg
黒い罠 完全修復版 [Blu-ray]」「黒い罠 [DVD]」オーソン・ウェルズ/チャールトン・ヘストン

黒い罠Q1.jpg黒い罠 O.jpg 米国とメキシコの国境で、町の有力者が車に仕掛けられた爆弾によって爆死する。新婚旅行で町に来ていたメキシコ人麻薬捜査官のバルガス(チャールトン・ヘストン)は米国側の刑事クインラン(オーソン・ウェルズ)やその相棒のメンジス(ジョゼフ・キャレイア)らと協力して捜査にあたる。クインランはメキシコ人の容疑者黒い罠H.jpgを逮捕するが、証拠の品はクインランが捏造したものだった。それに気付いたバルガスはクインランの扱った過去の事件を調査すると、過去にも同様にクインラン黒い罠 ジャネット・リー.jpgによって証拠が捏造されたと思われる事件があった。バルガスは警察上層部にクインランを告発するが逆に反論され、警察もクインランに味方する。バルガスの告発に危機を抱いたクイ黒い罠3P.jpgンランは、バルガスに敵対するギャングのグランディ(エイキム・タミロフ)にバルガスの妻スーザン(ジャネット・リー)を誘拐させ、ホテルの一室に連れ込ませる。クインランはその部屋 黒い罠h-7.jpgでグランディを絞殺し、スーザンに殺人の罪を着せようとす黒い罠 9.jpgる。しかしクインランが現場に置き忘れた杖をメンジスが発見し、彼はバルガスに協力することを決意する。メンジスは無線機を身に付けてクインランとの会話を録音し、証拠をつかもうとする。しかしそれを見破ったクインランはメンジスを射殺、後を付黒い罠 オーソン・ウェルズ.jpg黒い罠-44.jpgけていたバルガスをも撃とうとする。が、メンジスが最期にクインランを撃ち、録音された証拠のテープを聞きながらクインランは息絶える。しかしその頃、クインランが捏造した証拠で逮捕されたメキシコ人は、爆弾事件の犯人であることを自白していた―。

Touch of Evil1S.jpg 1958年に作られたこの映画は、当初オーソン・ウェルズは俳優としてのみの起用で、監督は別人に依頼する予定だったのが、ユニヴァーサルがチャールトン・ヘストンと出演交渉を行った際に、ウェルズの出演を知ったチャールトン・ヘストンが、ウェルズが監督も兼ねることを会社に強く要望したためにウェルズの監督が実現したとのことです。

 当時ハリウッドでは、完璧癖のあるウェルズは映画製作に金と時間をかけ過ぎる扱いにくい監督だとされており、ウェルズはそうした風評を払拭するため、ほぼ映画会社が設定した予算と期間内で映画を撮影しましたが(約90万ドルの制作費と僅か39日の撮影期間)、ストーリーが難解すぎるとの理由で映画会社がウェルズに無断で映画の脚本変更と追加撮影、再編集を行ったとのことです(「試写会版」109分)。ウェルズは映画会社の独断専行に激怒し、58ページに及ぶ意見書を映画会社に提出しますが無視され、逆に映画会社は、試写会で出た俗悪だとの一部の苦情に応えて一部をカットして劇場公開したとのことです(「劇場公開版」96分)。

黒い罠h-21.jpg 映画は2本立ての添え物の方の一本として公開され、興行的には惨憺たる失敗で、米国内の批評家からも黙殺され、結果的にウェルズにとって本作品がアメリカにおける最後の監督作品となりますが、同年のブリュッセル万国博覧会で上映された際には審査員のジャン=リュック・ゴダールやフランソワ・トリュフォーたちから絶賛され、万博での最高賞を与えられています。

 ウェルズ他界後13年を経た1998年に、彼の残したメモに忠実に再構成されたディレクターズ・カット版が上映され(「修復版」111分。既にウェルズは亡くなっているので正確にはディレクターズ・カットとは言えない)、今度は好評を博しますが、これまでDVDなどで観ることができたのは96分の「劇場公開Touch of Evil (1958).jpg版」でした。それが、'14年に111分の「修復版」(Blu-ray)がリリースされたとのことですが個人的には未見です。'15年にNHK-BSプレミアムで放映されたものも96分の「劇場公開版」でした(最初にカットされた部分が逸失しており、「劇場公開版」の方がオリジナルに近い方だとの見方も成り立つ。ゴダールやトリュフォーが観て絶賛したのもこの「劇場公開版」と思われる。何れにせよ、この作品の真の意味での完全版は存在しないことになる)。
Touch of Evil (1958)
 原作は1956年に出版されたホイット・マスターソンの探偵小説『黒い罠』(原題:Badge of Evil)で、原作ではクインランが「従」でメンジスが「主」と映画と逆の立場であったのを、シナリオではオーソン・ウェルズ演じる上司クインランを「主」、部下メンジスを「従」とにし、更には、爆弾事件の犯人をラストで変えています。この変更は大きいですが、単にプロットに捻りを加えるだけでなく、社会的背景と相俟って、クインランのキャラクターに深みを持たせることにもなったと思います。

Touch of EvilB.jpg黒い罠AZ.jpg 更に、オーソン・ウェルズが監督することになった段階で、原作ではメキシコ人の妻を持つアメリカ人地方検事補佐が主人公だったのを、夫婦の国籍を逆にし(つまり、チャールトン・ヘストンがメキシコ人で、ジャネット・リーがアメリカ人の妻ということにした)、物語の舞台をカリフォルニア州からアメリカとメキシコの国境地帯にするなどの様々な設定の変更をウェルズは行っています。

黒い罠0GDN.jpg黒い罠7A.jpg また更にウェルズは、実際の映画化(撮影)段階で、映画が始まってすぐの爆弾のクローズアップから爆発までの3分18秒をワンショットで見せることにし、その他にもこの作品には5分を超える長回しが複数回ありますが、とりわけ冒頭のこの長回しシーンは、作品自体の再評価を経て、今や映画史に残ると言ってもいいシークエンスとされています。

黒い罠A.jpg黒い罠 デートリッヒ.jpg それらに加えてウェルズは、当初予定していなかった2人の俳優、モーテルの夜勤係のデニス・ウィーバー(スティーヴン・スピルバーグ監督のTV映画「激突!」('71年)、TVシリーズ「警部マクロード」('70年~'77年))とジプシーで酒場の女主人のターニャを演じたマレーネ・ディートリッヒのためにシナリオを変更するなどしています。つまり、この作品には、原作、オリジナル脚本、ウェルズが改変した脚本、実際に全ての配役が決まった映画化(撮影)段階での最終シナリオという、基本的な流れを汲みながらも比較的明確な違いもある4つの段階があることになります。

 ゴダールやトリュフォーがこの作品を絶賛したのは、彼らが信奉する、芸術作品にそれぞれ「美術作家」「作曲家」「小説家」という個人作業の表現主体が存在するように、映画を、映画監督(作家)による個人の表現手段、表現物と見なすべきだとする「作家主義」の考えに合致する典型例としてこの作品を捉えたからだとされていますが、実際この作品にはこうした背景があったわけです。

黒い罠h-9.jpg 但し、作品として成功していなければ、どうにも評価のしようがないでしょう。この作品は、細部を見れば、足の悪いクインランが現場に杖を置き忘れるか?といった穴が無くもないし、作品そのものが部分的にカットされてしまったことで、ラストでの、メンジスに撃たれたクインランの死の間際の「これはおまえのために受けた2発目の銃弾だ」という言葉の意味が分かりにくくなっているということもあるかと思いますが、それでもやはり、ウェルズの万能ぶりが発揮されたフィルム・ノワール史上に残る傑作であると思います(逸失部分があるのが残念)。

黒い罠h-43.jpg黒い罠hP.jpg マレーネ・ディートリッヒは、ウェルズとの友情からノークレジット、ノーギャラでOKという事で出演を快諾したそうですが、2日間だけの撮影参加ながら、自前の衣装を着てウェルズが彼女を想定して書き加えたジプシー女ターニャを魅力たっぷりに好演(ラッシュ・フィルムを観て大物imagesXH2OY7TG.jpg女優の出演を初めて知った黒い罠LF7E.jpgスタジオの重役たちは、ディートリッヒの名前をクレジットに出すために彼女に出演料を支払った)、最後の方のセリフで、クインラインを愛していたのは私ではなく、彼を殺した部下の男メンジスだったと言うのは、この作品のテーマの1つ(クインラインとそれを支えた部下との愛憎)を端的に言い当てているように思いました。ディートリッヒ自身は後にこの場面を、自身の女優としてのキャリアの中で最高の演技だったと述べています。
Orson Welles and Marlene Dietrich
Orson Welles and Marlene Dietrich.jpg「黒い罠」●原題:TOUCH OF EVIL●制作年:1958年●制作国:アメリカ●監督・脚本:オーソン・ウェルズ●製作:アルバート・ザグスミス/リック・シュミドリン(修復版)●撮影:ラッセル・メ黒い罠 ポスター.jpgティ●音楽:ヘンリー・マンシーニ●原作:ホイット・マスターソン「黒い罠」●96分(劇場公開版)/109分(試写会版)/111分(修復版)●出演:オーソン・ウェルズ/チャールトン・ヘストン/ジャネット・リー/ジョセフ・カレイア/エイキム・タミロフ/マレーネ・ディートリッヒ/デニス・ウィーヴァー/ヴァレンティン・デ・ヴァルガス/モート・ミルズ/ヴィクター・ミリアン/ジョアンナ・ムーア/ザ・ザ・ガボール/ジョセフ・コットン(ノンクレジット)●日本公開:1958/07●配給:ユニヴァーサル・ピクチャーズ(評価:★★★★)

《読書MEMO》
●アントン・コービン監督(オランダ)の選んだオールタイムベスト10["Sight & Sound"誌・映画監督による選出トップ10 (Director's Top 10 Films)(2012年版)]
 ●勝手にしやがれ(ジャン=リュック・ゴダール)
 ●ケス(ケン・ローチ)
 ●ぼくの伯父さん(ジャック・タチ)
 ●ウエスタン(セルジオ・レオーネ)
 ●レイジング・ブル(マーティン・スコセッシ)
 ●裏窓(アルフレッド・ヒッチコック)
 ●七人の侍(黒澤明)
 ●ストーカー(アンドレイ・タルコフスキー)
 ●道(フェデリコ・フェリーニ)
 ●黒い罠(オーソン・ウェルズ)

●ポン・ジュノ監督(韓国)の選んだオールタイムベスト10[同上]
 ●悲情城市(ホウ・シャオシェン)
 ●CURE キュア(黒沢清)
 ●ファーゴ(ジョエル & イーサン・コーエン)
 ●下女(キム・ギヨン)
 ●サイコ(アルフレッド・ヒッチコック)
 ●レイジング・ブル(マーティン・スコセッシ)
 ●黒い罠(オーソン・ウェルズ)
 ●復讐するは我にあり(今村昌平)
 ●恐怖の報酬(アンリ=ジョルジュ・クルーゾー)
 ●ゾディアック(ディヴィッド・フィンチャー)

●チャールトン・ヘストン 1958年出演作
Charlton Heston 1958 Touch of Evil poster .jpgCharlton Heston 1958  the big country.jpgCharlton Heston in 1958 "Touch of Evil" (「黒い罠」)& "The Big Country "(「大いなる西部」)

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'読むだけでも楽しめるが、(巧みな語り口に乗せられて)まだ観ていない映画を観たくなる本。

私の映画の部屋_.jpg 私の映画の部屋.jpg  めぐり逢い dvd.jpg 魚が出てきた日 dvd.jpg
私の映画の部屋 (文春文庫)』「めぐり逢い [DVD]」「魚が出てきた日 [DVD]」 
私の映画の部屋―淀川長治Radio名画劇場 (1976年)

 この「私の映画の部屋」シリーズは、70年代にTBSラジオで月曜夜8時から1時間放送されていた「淀川長冶・私の映画の部屋」を活字化したもので、1976(昭和51年)刊行の本書はその第1弾です。著者の場合、1966(昭和41)年から始まったテレビ朝日系「日曜洋画劇場」(当初は「土曜洋画劇場」)の解説者として番組開始から死の前日までの32年間出演し続けたことでよく知られていますが、先行した当ラジオの方は、番組時間枠の内CM等を除く40分が著者の喋りであり、それを活字化した本書では、「日曜洋画劇場」でお馴染みの淀川長治調が、より長く、また、より作品中身に踏み込んだものとして楽しめます。

 本書の後、シリーズ的に、続、続々、新、新々と続きますが、この第1弾の単行本化時点で既に140回分が放送されており、その中から13回分を集めて本にしたとのことで、「チャップリンの世界」から始まって、かなりの選りすぐりという印象を受けます(但し、どの回を活字化するかは版元のTBSブリタニカが決めたとのこと)。

「めぐり逢い」1957G.jpg 個人的には、昔は淀川長冶ってそれほどスゴイとは思っていなかったのですが、今になってやはりスゴイ人だったんだなあと思ったりもします。作品解説もさることながら、作品を要約し、その見所となるポイントを抽出する技は絶妙という感じです。本書で言えば、例えば、レオ・マッケリー監督、ケーリー・グラント、デボラ・カー主演の「めぐり逢い」('57年、原題:An Affair to Remember)のラストシーンのエンパイアステートビルで出会えなかった2人が最後の最後に出会うシーンの解説などは、何だか今目の前に映画のスクリーンがあるような錯覚に陥りました。この映画、最初観た時はハーレクイン・ロマンスみたいと思ったけれど、今思えばよく出来ていたと(著者に指摘されて)思い直したりして...。これ自体が同じレオ・マッケリー監督作でシャルル・ボワイエ、アイリーン・ダン主演の「邂逅(めぐりあい)」('39年、原題:Love Affair)のリメイクで(ラストを見比べてみるとその忠実なリメイクぶりが窺える)、その後も別監督により何度かリメイクされています。トム・ハンクス、メグ・ライアン主演の「めぐり逢えたら」('98年)では、邂逅の場所をエンパイアステートビルがら貿易センタービルに変えていましたが、何とオリジナルにある行き違いはなく2人は出会えてしまいます。これでは著者の名解説ぶりが発揮しようがないのではないかと思ってしまいますが、でも、あの淀川さんならば、いざとなったらそれはそれで淀川調の解説をやるんでしょう。

Le bonheur 「幸福 [DVD]
幸福 DVD_.jpg 章ごとに見ていくと、「女の映画」の章のアニエス・ヴァルダ監督の「幸福(しあわせ)」('65年)、フランソワ・トリュフォー監督の「黒衣の花嫁」('68年)とトニー・リチャードソン監督「マドモアゼル」('66年)が、著者の解説によって大いに興味を惹かれました。「幸福」は、夫の幸福のために自殺する妻という究極愛を描いた作品。「黒衣の花嫁」は、結婚式の場で新郎を殺害された新婦の復讐譚。「マドモアゼル」は周囲からはいい人に見られているが、実は欲求不満の捌け口をとんでもない事に見出している女教師の話。「ルイ・マル」の章の「死刑台のエレベーター」('57年)、「黒衣の花嫁 DVD.jpgマドモアゼル DVD.jpg恋人たち」('58年)もいいけれど、「黒衣の花嫁」「マドモアゼル」共々ジャンヌ・モロー主演作で、ジャンヌ・モローっていい作品、スゴイ映画に出ている女優だと改めて思いました。
黒衣の花嫁 [DVD]」「マドモアゼル [DVD]

昨日・今日・明日.jpg昨日・今日・明日P.jpgひまわり ポスター.bmp イタリア映画では、ビットリオ・デ・シーカの「昨日・今日・明日」('63年)、「ひまわり」('70年)に出ているソフィア・ローレンがやはり華のある女優であるように思います(どちらも相方はマルチェロ・マストロヤンニだが、片や喜劇で片や悲劇)。
「昨日・今日・明日」輸入版ポスター

魚が出てきた日7.jpg魚が出てきた日ps2.jpg あと個人的には、「ギリシア映画」の章のマイケル・カコヤニス製作・脚本・監督の「魚が出てきた日」('68年)が懐しいでしょうか。スペイン沖で核兵器を積載した米軍機が行方不明になったという実際に起きた事件を基にした、核兵器を巡ってのギリシアの平和な島で起きた放射能汚染騒動(但し、島の地元の人たちは何が起きているのか気魚が出てきた日3.jpgづいていない)を扱ったブラックコメディで、ちょっと世に出るのが早すぎたような作品でもあります。
1968年初版映画パンフレット 魚が出てきた日 ミカエル・カコヤニス監督 キャンディス・バーゲン トム・コートネー コリン・ブレークリー
THE DAY THE FISH COME OUT 1967  c.jpg トム・コートネイ、サム・ワナメイカー、キャンディス・バーゲンが出演。キャンディス・バーゲンって映画に出たての頃からインテリっぽい役を地でやっていて、しかも同時に、健康的なセクシーさがありました。

Candice Bergen in 'The Day The Fish Came Out', 1967.

 読むだけでも楽しめますが、(巧みな語り口に乗せられて)まだ観ていない映画を拾って観たくなる、そうした本でした。

「めぐり逢い」1957ps.jpg「めぐり逢い」1957EO.jpg「めぐり逢い」●原題:AN AFFAIR TO REMEMBER●制作年:1957年●制作国:アメリカ●監督:レオ・マッケリー●製作:ジェリー・ウォルド●脚本:レオ・マッケリー/デルマー・デイヴィス/ドナルド・オグデン・ステュワート●撮影:ミルトン・クラスナー●音楽:ヒューゴ・フリードホーファー●原案:レオ・マッケリー/ミルドレッド・クラム●時間:119分●出演:ケーリー・グラント/デボラ・カー/リチャード・デニング/ネヴァ・パターソン/キャスリーン・ネスビット/ロバート・Q・ルイス/チャールズ・ワッツ/フォーチュニオ・ボナノヴァ●日本公開:1957/10●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:高田馬場・ACTミニシアター(85-11-03)(評価:★★★☆)●併映:「ティファニーで朝食を」(ブレイク・エドワーズ)

SLEEPLESS IN SEATTLE.jpgめぐり逢えたら 映画 dvd.jpg「めぐり逢えたら」●原題:SLEEPLESS IN SEATTLE●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:ノーラ・エフロン●製作:ゲイリー・フォスター●脚本:ノーラ・エフロン/デヴィッド・S・ウォード●撮影:スヴェン・ニクヴィスト●音楽:マーク・シャイマン●原案:ジェフ・アーチ●時間:105分●出演:トム・ハンクス/メグ・ライアン/ビル・プルマン/ロス・マリンジャー/ルクランシェ・デュラン/ルクランシェ・デュラン/ギャビー・ホフマン/ヴィクター・ガーバー/リタ・ウィルソン/ロブ・ライナー●日本公開:1993/12●配給:コロンビア映画(評価:★★☆)
めぐり逢えたら コレクターズ・エディション [DVD]

死刑台のエレベーター01.jpg死刑台のエレベーター.jpg「死刑台のエレベーター」●原題:ASCENSEUR POUR L'ECHAFAUD●制作年:1957年死刑台のエレベーター2.jpg●制作国:フランス●監督:ルイ・マル●製作:ジャン・スイリエール●脚本: ロジェ・ニミエ/ルイ・マル●撮影:アンリ・ドカエ●音楽:マイルス・デイヴィス●原作:ノエル・カレフ●時間:95分●出演:モーリス・ロネ/ジャンヌ・モロー/ジョルジュ・プージュリー/リノ・ヴァンチュラ/ヨリ・ヴェルタン/ジャン=クロード・ブリアリ/シャルル・デネ●日本公開:1958/09●配給:ユニオン●最初に観た場所:新宿アートビレッジ (79-02-10)●2回目:高田馬場・ACTミニシアター(82-10-03)●3回目:六本木・俳優座シネマテン(85-02-10)(評価:★★★★☆)●併映(1回目):「恐怖の報酬」(アンリ=ジョルジュ・クルーゾー)/(2回目):「大人は判ってくれない」(フランソワ・トリュフォー) 
死刑台のエレベーター [DVD]

LES AMANTS 1958 3.jpg恋人たち モロー dvd.jpg「恋人たち」●原題:LES AMANTSD●制作年:1958年●制作国:フランス●監督:ルイ・マル●製作:イレーネ・ルリッシュ●脚本:ルイ・マル/ルイ・ド・ヴィルモラン●撮影:アンリ・ドカエ●音楽:ヨハネス・ブラームス●原作:イヴァン・ドノン「明日はない」●時間:95分●出演:ジャンヌ・モロー/ジャン・マルク・ボリー/アラン・キュニー/ホセ・ルイ・ド・ビラロンガ/ジュディット・マーグル/ガストン・モド/ジュディット・マーレ●日本公開:1959/04●配給:映配●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(14-07-08)(評価:★★★★)
恋人たち【HDマスター】《IVC 25th ベストバリューコレクション》 [Blu-ray]
Himawari(1970)
Himawari(1970).jpg
「ひまわり」.jpg「ひまわり」●原題:I GIRASOLI(SUNFLOWER)●制作年:1970年●制作国:イタリア・フランス・ソ連●監督:ヴィッひまわり01.jpgトリオ・デ・シーカ●製作:カルロ・ポンティ/アーサー・コーン●脚本:チェザーレ・ザsunflower 1970.jpgバッティーニ/アントニオ・グエラ/ゲオルギス・ムディバニ●撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ●音楽:ヘンリー・マンシーニ●時間:107分●出演:マルチェロ・マストロヤンニ/ソフィア・ローレン/リュドミラ・サベーリエワ/アンナ・カレーナ/ジェルマーノ・ロンゴ/グラウコ・オノラート/カルロ・ポンティ・ジュニア●日本公開:1970/09●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:目黒シネマ(83-05-01)(評価:★★★★)●併映:「ワン・フロム・ザ・ハート」(フランシス・フォード・コッポラ)  
 
魚が出てきた日ps3.jpg魚が出てきた日4.jpg THE DAY THE FISH COME OUT 1967 .jpg魚が出て来た日lp.jpg「魚が出てきた日」●原題:THE DAY THE FISH COME OUT●制作年:1967年●制作国:アキャンディス・バーゲンM23.jpgメリカ●監督・製作・脚本:マイケル・カコヤニス●撮影:ウォルター・ラサリー●音楽:ミキス・テオドラキス●時間:110分●出演:トム・コートネイ/キャンディス・バーゲン/サム・ワナメーキャンディス・バーゲン ボストン・リーガル.jpgカー/コリン・ブレークリー/アイヴァン・オグルヴィ/中野武蔵野ホール.jpgディミトリス・ニコライデス/ニコラス・アレクション●日本公開:1968/06●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:中野武蔵野館(78-02-24)(評価:★★★☆)●併映:「地球に落ちてきた男」(ニコラス・ローグ) 中野武蔵野館 (後に中野武蔵野ホール) 2004(平成16)年5月7日閉館 
キャンディス・バーゲン in 「ボストン・リーガル」 Boston Legal (ABC 2004~2008) ○日本での放映チャネル:FOX CRIME(2007~2011)

【1985年文庫化[文春文庫(『私の映画の部屋』)]】
 

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A級、B級問わず映画を語る楽しくて充実した内容の鼎談。瀬戸川氏への哀悼の意が感じられる。

今日も映画日和 単行本2.jpg今日も映画日和 単行本.jpg  今日も映画日和 文庫.jpg
今日も映画日和』['99年] 『今日も映画日和 (文春文庫)』['02年]

 心から映画を愛する3人が、SF、法廷劇、スポーツものなど、12のテーマに沿って語り尽くした楽しい鼎談集です。「カピタン」1997年7月号から1998年6月号にかけて連載された際にページの都合で割愛された部分も、きちんと再録したロング・バージョンであるとのことで、脚注・写真も充実しています(文庫版は脚注のみ、写真無し)。

 単行本の刊行は、鼎談者の一人・瀬戸川猛資(1948 -1999/享年50)がその年の3月に肝臓がんで亡くなっていて氏の存命中に刊行を間に合わせられなかったのですが、脚注では話中に出てきた映画の情報の他に、川本三郎氏、和田誠氏が自らの発言内容に独自に補足するばかりでなく、瀬戸川氏の発言に関係するコメントを瀬戸川氏の著書の中から引用するなどしており、両人のこの鼎談集への思い入れと、瀬戸川氏への哀悼の意が感じられます。

 和田氏が1936年生まれ、川本氏が1944年生まれ、瀬戸川氏が1948年生まれで、和田氏によれば、川本氏は昭和の庶民を描く日本映画や映画のファッションに強く、瀬戸川氏はミステリに強いというようにお互いの守備範囲があるようですが、一方で、映画を、A級とかB級とか関係なく、分け隔てなく観てきたという点で共通するとのことで、それは本書を読めばよく分かります。

 取り上げているテーマは、まず「映画館」から始まって、SF、夏休み(ボーイズライフ)、サラリー★激しい季節(1959)2.jpgマン、野球、クリスマス、酒場、スポーツ、法廷、良妻・悪妻、あの町この町、大スターと続きますが、それらをモチーフとした映画がぽんぽん出てきて、もう誰が話しているのかあまり区別がつかないくらいです。

おもいでの夏 dvd.bmp 3人が若い頃に観た映画の話がかなりあって、「夏休み(ボーイズライフ)」のところで、川本三郎氏が、「激しい季節」('59年/伊)のエレオノラ・ロッシ・ドラゴがオッパイを見せていたのにショックを受けたとかあったりして、当時のアメリカ映画とイタリア映画の倫理コードの違いもあるのだろうなあ。「おもいでの夏」('71年/米)を瀬戸川氏はともかく和田氏も観ておらず(新しすぎるのか?)、川本氏の講釈を受けるという展開は意外でした。
ガン・ホー [DVD]
ガンホーdvd.jpg 「サラリーマン」の章のところで、瀬戸川氏がアメリカでヒットしたのに日本では未公開だった「ガン・ホー」('86年/米)について取り上げると、川本氏が「日本の企業をバカにしたやつですね」と言ったのに対し、「全然バカにしていないですよ。あの通りなんだから」と応えているのが興味深いです。アメリカ地方都市の日本資本の自動車会社("アッサン自動車"。漢字で「圧惨自動車」と表記する)の工場を舞台に、日米自動車経済摩擦を描いた作品ですが、アメリカ側のキャストに後に「バットマン」に出演することになるマイケル・キートンや、演技達者のジョン・タトゥーロまで出ているけれど、ケディ・ワタナベ演じる日本側主人公も好人物に描かれていて、最後、日系の自動車会社側の重役の山村聡が出てきて貫禄で問題を解決し、日米の企業人のカルチャーギャップを解消しているから、軽いノリの映画ではありますが、日本人をバカにした映画とまでは言えないでしょう。日本の企業経営を皮肉ったシーンガン・ホー1986 03.pngガン・ホー1986 01.jpgがあり、これを日本人をバカにしていると観客がとれば日本では受けないとして配給会社が配給を見送ったようですが、ちょっと世に出るのが早すぎたでしょうか。監督は後に「アポロ13」('95年)や「ダ・ヴィンチ・コード」('06年)を監督することになるロン・ハワードです(観た時の評価は星3つだが、グローバル人材がどうのこうの言われる今日において観直すと面白いかも―という観点から星半分プラス)。

黒い画集 あるサラリーマンの証言[1].jpg サラリーマン映画では、「失楽園」も川本氏しか観てなかったなあ。その川本氏が堀川弘通監督の「黒い画集 あるサラリーマンの証言」('60年/東宝、原作:松本清張)を傑作としていますが、当時の方が今よりも不倫に対する風当たりは強かったというのが川本氏の見方のようです。確かに小林桂樹、電話で不倫相手の原知佐子に向かって「はい、承りました」ってやっていたけれど。また、瀬戸川氏が、ワイルダーってアメリカ映画の中で異色なくらい会社を舞台にした作品が多いと指摘していますが(和田誠氏でなく瀬戸川氏が指摘しているのが興味深い)、「アパートの鍵貸します」は勿論のこと、「麗しのサブリナ」('54年/米)なども、確かに言われてみればそうだなあと。

アパートの鍵貸します2.jpg 「アパートの鍵貸します」('60年/米)は、アカデミー賞の作品賞、監督賞など5部門受賞した作品で、和田誠氏が『お楽しみはこれからだ』シリーズなどで何度も取り上げている作品でもあります。出世の足掛かりにと、上役の情事のためにせっせと自分のアパートを貸している会社員バドことC・C・バクスター(ジャック・レモン)でしたが、人事部長のJ・D・シェルドレイク(アパートの鍵貸します3.jpgフレッド・マクマレイ)が自分の部屋に連れ込んで来たのが、何と自身の意中の人であるエレベーターガールのフラン(シャーリー・マクレーン)だったというよく知られたApâto no kagi kashimasu (1960).jpgストーリーで、宮仕えのサラリーマンの哀愁を描く中で、ラストの急転は実に爽やかでした(こうした急展開は「麗しのサブリナ」などでも見られるが、こちらの方が洒落ている)。テニス・ラケットでパスタをすくったり、マテーニのオリーブを1つずつ時計のように並べたり、小道具をさりげなく使ったシーンにも旨さを感じられ、そもそも役者陣で下手な人は誰も出ていないような演出の見事さ。その中でもやはり、ジャック・レモンの演技が光ったし、シャーリー・マクレーンも良かったです。
Apâto no kagi kashimasu (1960)

野良犬 野球場.jpg 「野球」のところで、黒澤明の「野良犬」('49年/東宝)で後楽園球場が出てきて巨人の川上や青田がちゃんとプレーしているのが良かったと和田氏が言った野良犬 ビール.bmpのに対し、あの試合は巨人対南海線で、日本シリーズではなく1リーグ制の時の試合だと川本氏が指摘しているのがマニアックです。志村喬が野球監督を演じた「男ありて」('55年/東宝)を取り上げると、川本氏が「素晴らしい映画」だとすかさずフォローするのが嬉しいです。

「野良犬」の話は、続く「酒場」のところでも出てきて、川本氏が、志村喬が部下の三船敏郎を自分の家に連小津安二郎 秋刀魚の味 トリスバー.jpgれてきて飲ませるビールは"配給"だったとか(そう言えば、今日はたまたまビールが手に入ったようなことを志村喬が言ってたっけ)、一方、小津安二郎はサントリーと提携してい秋刀魚の味 東野2.jpgて、「秋刀魚の味」('62年/松竹)では、恩師の東野英治郎を教え子の笠智衆や中村伸郎たちが招待するシーンで、わざわざサントリー・オールドを映して「おいしいね、小津安二郎 秋刀魚の味 サッポロビール.jpgこのウィスキーは」と言わせているとか、岸田今日子がやっている店がトリスバーだとか。なるほどで。それでいて、冒頭の川崎球場の照明塔のシーンでサッポロビールとあるから、川本氏が言うように両方から金もらっていたのか(因みに、サントリーがビール事業に再進出したのは1963(昭和38)年で、この映画が公開された翌年)。小津映画では酒好きの中村伸郎のために、飲むシーンは実際に酒を飲ませ、肴もウニだったりしたというからスゴイね。笠智衆は下戸だったけれど、東野英治郎は本当に酔っぱらっていたわけかあ。

女競輪王00.jpg A級、B級問わずと言うことで、黒澤や小津といった巨匠ばかりでなく、前田葉子主演の「女競輪王」('56年/新東宝)なんて作品なんかも取り上げているのが何だか嬉しいです。

 鼎談の持ち味が出ていただけに、もう1冊分ぐらいやって欲しかった企画であり、瀬戸川氏の逝去が惜しまれます。

                   
Estate Violenta.jpgヴァレリオ・ズルリーニ★激しい季節(1959).jpg「激しい季節」●原題:ESTATE VIOLENTA●制作年:1959年●制作国:イタリア●監督:ヴァレリオ・ズルリーニ●製作:シルヴィオ・クレメンテッリ●脚本:ヴァレリオ・ズルリーニ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ/ジョルジョ・プロスペリ●撮影:ティノ・サントーニ●音楽:マリオ・ナシンベーネ●時間:93分●出演:ジャン・ルイ・トランティニャン/エレオノラ・ロッシ・ドラゴ/ジャクリーヌ・ササール/ラフ・マッティオーリ/フェデリカ・ランキ/リラ・ブリナン●日本公開:1960/04●配給:イタリフィルム●最初に観た場所:六本木・俳優座シネマテン(84-11-17)(評価:★★★★)

ガン・ホー1986 04.jpgガン・ホー1986 02.jpg「ガン・ホー」●原題:GUNG HO●制作年:1986年●制作国:アメリカ●監督:ロン・ハワード●製作:デボラ・ブラム/トニー・ガンツ●脚本:ローウェル・ガンツ/ババルー・マンデル●撮影:ドナルド・ピーターマン●音楽:トーマス・ニューマン●時間:111分●出演:マイケル・キートン/ゲディ・ワタナベ/ミミ・ロジャースガン・ホー02.jpgガン・ホー01.jpg/山村聰/クリント・ハワード/サブ・シモノ/ロドニー・カゲヤマ/ジョン・タトゥーロ/バスター・ハーシャイザー/リック・オーヴァートン●日本公開:(劇場未公開)VHS日本発売:1987/11●発売元:パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン(評価:★★★☆)     
証言2.bmp黒い画集 あるサラリーマンの証言.gif証言0.bmp「黒い画集 あるサラリーマンの証言」●制作年:1960年●監督:堀川弘通●製作:大塚和/高島幸夫●脚本:橋本忍●撮影:中井朝一●原作:松本清張「証言」●時間:95分●出演:小林桂樹/中北千枝子/平山瑛子/依田宣/原佐和子/江原達治/中丸忠雄/西村晃/平田昭彦/小池朝雄/織田政雄/菅井きん/小西瑠美/児玉清/中村伸郎/小栗一也/佐田豊/三津田健/西村晃/、平田昭彦●公開:1960/03●配給:東宝●最初に観た場所:池袋文芸地下 (88-01-23)(評価★★★☆)
黒い画集 あるサラリーマンの証言 [DVD]
                    「アパートの鍵貸します [DVD]
アパートの鍵貸します8.jpgアパートの鍵貸しますdvd.jpgアパートの鍵貸します1.bmp 「アパートの鍵貸します」●原題:THE APARTMENT●制作年:1960年●制作国:アメリカ●監督・製作:ビリー・ワイルダー●脚本:ビリー・ワイルダー/I・A・Lアパートの鍵貸します4.jpg・ダイアモンド●撮影:ジョセフ・ラシェル●音楽:アドルフ・ドイッチ●時間:120分●出演:ジャック・レモン/シャーリー・マクレーン/フレッド・マクマレイ/レイ・ウォルストン/ジャック・クラスチェン/デイビット・ホワイト/ホープ・ホリデイ/デイビット・ルイス/ジョアン・ショウリイ/エディ・アダムス/ナオミ・スティーブンス●日本公開:1960/10●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:銀座文化2(86-06-13) (評価:★★★★)
「銀座文化1・銀座文化2」「銀座文化/シネスイッチ銀座」
銀座文化1・2.png銀座文化・シネスイッチ銀座.jpg シネスイッチ銀座.jpg銀座文化 銀座文化劇場(1955年12月オープン)、60年代「銀座文化劇場/銀座ニュー文化」、70年代「銀座文化1・2」、1987年〜「銀座文化/シネスイッチ銀座」、1997年〜「シネスイッチ銀座1・2」
            
                     
                       
野良犬 1949  ポスター0.jpg野良犬 1949 0.jpg「野良犬」●制作年:1949年●監督:黒澤明●製作:本木荘二郎●製作会社:新東宝・映画芸術協会●脚本:菊島隆三/黒澤明●撮影:中井朝一●音楽:早坂文雄●時間:122分●出演:三船敏郎/志村喬/木村功/清水元/河村黎吉/淡路恵子/三好栄子/千石規子/本間文子/飯田蝶子/東野英治郎/永田靖/松本克平/岸輝子/千秋実/山本礼三郎●公開:1949/10●配給:東宝(評価:★★★★)

秋刀魚の味 チラシ.jpg秋刀魚の味 加東.jpg「秋刀魚の味」●制作年:1962年●監督:小津安二郎●脚本:野田高梧/小津安二郎●撮影:厚田雄春●音楽:斎藤高順●原作:里見弴●時間:113分●出演:笠智衆/岩下志麻/佐田啓二/岡田茉莉子/中村伸郎/東野英治郎/北竜二/杉村春子/加東大介/吉田輝雄/三宅邦子/高橋とよ/牧紀子/環三千世/岸田今日子/浅茅しのぶ/須賀不二男/菅原通済●公開:1962/11●配給:松竹●最初に観た場所:三鷹オスカー(82-09-12)(評価:★★★☆)●併映:「東京物語」(小津安二郎)/「彼岸花」(小津安二郎)

【2002年文庫化[文春文庫]】

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20年以上続いたシリーズの記念すべき単行本第1冊。著者はビリー・ワイルダーがお好き?

お楽しみはこれからだ  1 - コピー.jpg和田 誠 氏.jpg 和田 誠 氏 麗しのサブリナ bl.jpg 麗しのサブリナ 3.jpg 
お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ』「麗しのサブリナ [Blu-ray]」Humphrey Bogart, Audrey Hepburn, William Holden

 本書は、「キネマ旬報」に1973(昭和48)年から連載されたもので、単行本で全7冊あるシリーズの第1作目です。サブタイトルにあるように、映画の名セリフを素材に映画批評と言うよりエッセイ風に書いていますが、それにイラストを組み合わせるスタイルになっています。

 和田誠(1936年生まれ)氏は古い映画を非常によく観ていて(まあ、単行本初版が1975年であるため、それより以前の映画の話しか出てこないわけだが)、しかも、ビデオもそう普及していない時代に、よくセリフを記憶しているものだなあと感心させられます。

 一部シナリオに頼ったりしているそうですが殆ど自分の記憶頼みで、従って連載中に映画通の読者や評論家から誤りを指摘されることもあったとのことですが、単行本化に際して間違っているところは修正したとのこと。それにしてもやっぱりスゴイ記憶力だなあと。故・淀川長治なども尋常でない記憶力だったようですが、本当に映画が好きで、何回も観ているのでしょう。

 自分があまり面白いと思わなかった映画は、その理由も含め正直に書いているのもいいです。一方、この人の一番好きな監督は、表紙に「サンセット大通り」('50年)がきていることから、やはりビリー・ワイルダーでしょうか(自分も個人的に高く評価している監督なのだが)。しかしながら、この本で最も多く登場する作品は「カサブランカ」('43年)で、やはりあの作品は名セリフの宝庫だということなのでしょう。

麗しのサブリナ tirashi.png ボギーことハンフリー・ボガートが出演したビリー・ワイルダー作品では「麗しのサブリナ」('54年)があり、ここではボガートの「ぼくをみてください。神経痛の大学生だ」というセリフを取り上げていますが、堅物の兄ボガートが、遊び人の弟ウィリアム・ホールデンから女の子オードリー・ヘプバーンを引き離すために自分が代わりにデートする、その際に無理矢理若作りしている自分のことを自嘲気味に父親に言うセリフです。

麗しのサブリナ b&h.jpg この作品は、ボガートがコメディタッチの演技を見せ(しかもラストは女の子を追いかけるために飛んでいく)、三島由紀夫.jpgそれが彼にあまりに似合っていないのではないかということで、一般の評価はそう高くないように思いますが、本書では、三島由紀夫がこのセリフを言うボガートを評して、「これ以上の適役はなかろう」と当時の「スクリーン」誌に書いていることを取り上げ、「こんな文章を読むと、とてもあのような死に方をする人とは思えないのだ」と書いているが印象深かったです(和田氏がこの文章を書いている時は、三島の自決からまだ3年と経っていない)。

麗しのサブリナ32.jpg 「麗しのサブリナ」は、サミュエル・テイラーの舞台劇を映画化したもので、「ローマの休日」に続くヘプバーン主演第2作。運転手の娘が何故ジバンシィを着ているのかというのはあるけれ麗しのサブリナ02.jpgど(ジバンシィがヘプバーンのドレスを最初にデザインしたのがこの作品だが、ジバンシィはヘプバーンと顔を合わせるまで、自分が衣裳を担当する女優はキャサリン・ヘプバーンだと思っていた)、モノクロのせいか、ヘプバーンの美しさ、可憐さという点では「ローマの休日」と並んで一番の作品ではないかと思います。でも、ビリー・ワイルダーの演出も結構しっかりしていて、そこがまた見所だったのかも(因みに、ボガートは撮影中、ヘプバーンの演技の未熟さにややウンザリさせられていたという話もある(エドワード・ルケィア『ハリウッド・スキャンダル』より))。

 久しぶりの読み直しで、いろいろなことを思い出させてくれる本―と言うより、殆ど忘れてしまっていたなあという感じで実質的には初読に近かった? こういう本って、手元に置いておいて、時々ぱらぱらめくって楽しむのがいいのでしょう。ただ、回ごとの繋がりが良いせいもあって、読み始めると止まらなくなるという面もあります。

 一冊に連載30回分が纏められているそうで、連載1回につき8ページ(「キネ旬」誌上では4ページ)というのは結構きつかったのではないでしょうか。因みに第7巻(PART7)までの累計ページ数は1,757ページで、その第7巻は1995年刊行されていますから、第1巻である本書の刊行から20年、連載としては22年続いたことになりますが、連載を終える際に和田氏は、これでもう映画を観なくなってしまうのではと自分で心配したというから、連載が新たに映画を観たり古い映画を観直したりする動機づけになっていた面はあるのでしょう。

SABRINA 1954 08.jpg麗しのサブリナ dvd.jpg「麗しのサブリナ」●原題:SUBRINA●制作年:1954年●制作国:アメリカ●監督・製作:ビリー・ワイルダー●脚本:ビリー・ワイルダー/ サミュエル・テイラー/アーネスト・レーマン●撮影:チャールズ・ラング・Jr●音楽:フレデリック・ホランダー●原作:サミュエル・テイラー●時間:113分●出演:オードリー・ヘプバーン/ハンフリー・ボガート/ウィリアム・ホールデン/ジョン・ウィリアムズ/マーサ・ハイヤー/ジョーン・ヴォーンズ/ウォルター・ホールデン●日本公開:1954/09●配給:パラマウント映画●最初に観た場所:高田馬場・ACTミニシアター (85-04-27)(評価:★★★★)●併映「失われた週末」(ビリー・ワイルダー)
麗しのサブリナ [DVD]

お楽しみはこれからだ  vol1.jpg

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ポーランド現代文学の中では珍しく「徹底的に非政治的で官能的な小説」という見方に共感。

尼僧ヨアンナ―他 (東欧の文学).jpg尼僧ヨアンナ (岩波文庫).jpg        尼僧ヨアンナ [DVD].jpg 尼僧ヨアンナ ps デザイナー大島弘義.jpg
尼僧ヨアンナ (岩波文庫)』 「尼僧ヨアンナ [DVD]」/「尼僧ヨアンナ」ポスター(デザイン:大島弘義)
尼僧ヨアンナ 格子03.jpg尼僧ヨアンナ―他 (東欧の文学)』福岡 星児:訳(1967/07 恒文社)

 中世末期、ポーランドの辺境の町ルーディンで、修道院の若き尼僧長ヨアンナに悪魔がつき、悪魔祓いに派遣された若き神父スーリンはあれこれ手を尽くすが万策尽きる―。

イヴァシュキェヴィッチ.jpg ウクライナ出身のポーランド人作家ヤロスワフ・イヴァシュキェヴィッチ(1894-1980)が、1943年、作者49歳の時に執筆した作品で(1946年に中短編集の中で発表された)、フランスの小都市ルーダンで実際に行われた悪魔裁判を素材とした作品ですが、それを、中世末期のポーランドの辺境の町「ルーディン」に舞台を置き換えています。その他は、驚愕の結末を除いてはほぼ史実に忠実だそうです。
ルーダンの悪魔.jpgJarosław Iwaszkiewicz(1894-1980)

 実際に起きた事件は、1632年からフランスの小都市ルーダンで、ウルスラ会の修道女たちが悪魔憑きの症状を示し、神を冒涜する言葉、痙攣と硬直、淫らでショッキングな振舞い等が人々に衝撃を与えたため、悪魔祓いと原因究明の審査が行われ、ルーダンの教会の司祭であり、教養と魅力的な物腰で街の女を次々にものにし(その結果、多くの敵も作っていた)ウルバン・グランディエが、悪魔と契約を結んだとの罪状で生きながら火刑に処されれたいうもので、この事件を素材とした小説には、この作品のほかにイヴァシュキェヴィッチと同年生まれの英国の作家オルダス・ハックスリー(1894-1963)の『ルーダンの悪魔』(The Devils of Loudun 、1952)などがあります。               『ルーダンの悪魔

尼僧ヨアンナ パティオ.jpg この作品の原題は『尼僧長"天使たちの"ヨアンナ』(Matka Joanna od Aniołów)ですが、1961年にポーランドの映画監督イェジー・カヴァレロヴィッチ(1922-2007)によって「尼僧ヨアンナ」(英文タイトル:Mother Joanna of the Angels)として映画化されてから世界的に有名になったことから、岩波文庫版('96年)関口時正氏の訳でもこれをタイトルにしています。
 本邦初訳は『「東欧文学全集」第8巻‐イヴァシュキェヴィッチ集』(恒文社)の福岡星児訳('67年)でこれも映画化の後の刊行であり、映画が本邦公開された時点('62年)では原作の邦訳は無かったことになります。

イェジー・カヴァレロヴィチ.jpg 個人的にもイェジー・カヴァレロヴィッチの映画の方を先に観て(1962年に発足した日本アート・シアター・ギルド(ATG)の配給第1作でもある)、やや内容を忘れかけた頃に原作を読みましたが、そのことにより改めて映画のシーンが甦ってきました。映画を観た際は、ストーリー面で、ラストでスリン神父(ミエチスワフ・ウォイト)がヨアンナ(ルチーナ・ヴィニエツカ)を悪魔から守ることと引き換えに自らが悪魔を引きうけ殺戮を行うというのは、やや映画的な作り方をしているのではないかとも思いましたが、読んでみたら原作もその通りでした。
Jerzy Kawalerowicz(1922-2007)

ツイン・ピークス1.jpgツイン・ピークス3.jpg まるで、デイヴィッド・リンチが監督して90年代初頭に人気を博したTVドラマ「ツイン・ピークス」の、主人公のFBI捜査官が少女を守るために悪魔に魂を売り渡してしまうラストみたいです。デイヴィッド・リンチによると、あのラストはあくまでも第2シーズンの最終話に過ぎないとのことですが、その続きは作られていません。

尼僧ヨアンナ 08.jpg 個人的には「原作が映画と同じ展開だった」のがやや意外であり、岩波文庫版の翻訳者・関口時正氏の解説でも、スーリンに重罪を犯させる結末ではなく、"小説的筋書きとしての効果の成否"についてはともかく、自殺させることでも足りたのではないか(自殺も罪ではあるが)と書いているのは、文学作品を読んだつ尼僧ヨアンナ 05.jpgもりが結構"ホラー"だったかもしれないという自分の読後感をある部分、代弁してくれているのでしょうか(ヨアンナが突然表情を変え、悪魔の語り口で話し始めるのはまるで映画「エクソシスト」みたい)。

 但し、"ホラー"と言っても作者の筆致は冷静であり、むしろ、憑依現象を冷静に解析した情動力学的な"心理劇"ともとれるように思います。読んでいて、修道院で起きていることは、戒律による性的抑圧に起因する集団ヒステリーに類するものであることの察しがつくようになっています。また、ヨアンナの体の中に複数の悪魔がいて、それらが交互に姿を現すというのは、ダニエル・キイスの『24人のビリー・ミリガン』を想起させます(「複数の悪魔」は複数人格を呈す解離性障害として説明可能ではないか)。

尼僧ヨアンナ 07.jpg 因みに、小説は前任者の司祭が火刑に処せられ、若き神父スーリンが悪魔祓いのため派遣されるところから始まりますが、ヨアンナにはジャンヌという実在のモデルがいる一方、このスーリンにもスュランという実在のモデルがいて、1634年、34歳の時に悪魔祓いのため修道院に派遣されて、ジャンヌの悪魔をわが身に引き受けた結果としてボロボロになり、殺人を犯したり自殺したりするまでには至らなかったけれど(自殺未遂はあった)、20年近く闘病・治療生活を送って、60歳を過ぎてやっとジャンヌと過ごした濃密な時間を書き記したものを完成させたようです(内容は、宗教的な矩を超えない範囲で、神秘主義的色合いの濃いものらしい)。
ルチーナ・ヴィニエツカ (カヴァレロヴィッチ監督夫人)

尼僧ヨアンナ パティオ02.jpg 1961年に作られた映画「尼僧ヨアンナ」は、スターリン主義の抑圧を受けていた当時のポーランド情勢を、戒律下に置かれた修道尼らの性的抑圧として表したと解されることが多いようですが、イエジー・カヴァレロヴィッチ監督には、社会派サスペンス映画「影」('56年)など、ポーランドの政治情勢を反映させながらも娯楽性を含んだ作品も撮っており(この作品と「夜行列車」('59年)、「尼僧ヨアンナ」の3本が最高傑作とされている)、また、「尼僧ヨアンナ」において修道尼たちが一斉に地面に倒れ込むのを俯瞰で撮るなど、カメラワークにも非常に洗練されたものがあって、芸術的完成度は高いように思います(その分、"政治"が後退する? 少なくとも個人的にはあまりプロパガンダ性を感じなかった)。

尼僧ヨアンナ 04.jpg また、イヴァシュキェヴィッチの原作の方も、1943年という、ポーランドのユダヤ人や知識層が厳しい弾圧を受けていた時期に書かれたものですが(イヴァシュキェヴィッチは既にポーランドを代表する文人であったとともにレジスタンス運動を指揮していた)、岩波文庫版解説で関口時正氏は、「尼僧ヨアンナ」にしてもその他の作品にしても、彼の作品はポーランド現代文学の中では珍しく「徹底的に非政治的で、官能的な小説」であるとしています。

尼僧ヨアンナ_2.jpg この関口時正氏の本作に対する見方には痛く共感しました。イヴァシュキェヴィッチという人は政治と文学を分けて考えていたのではないか。そうして考えると、映画「尼僧ヨアンナ」も、いろいろと背景はあるのかもしれませんが、先ずは、観たままの通り感じればよい作品なのかもしれません。 
 
尼僧ヨアンナ0.jpg「尼僧ヨアンナ」●原題:MATKA JOANNA OD ANIOLOW(MOTHER JOAN OF THE ANGELS)●制作年:1960年●制作国:アメリカ●監督:イェジー・カヴァレロヴィッチ●脚本:タデウシュ・コンビッキ/イェジー・カヴァレロヴィッチ●撮影:イェジー・ウォイチック●音楽:アダム・ワラチニュスキー●原作:ヤロスワフ・イヴァシュキェヴィッチ●時間:110分●出演:ルチーナ・ウィンニッカ/ミエチスワフ・ウォイト/ミエチスワフ・ウォイト/アンナ・チェピェレフスカ/マリア・フヴァリブク/スタニスラフ・ヤシュキェヴィッチ●日本公開:1962/04●配給:東和/ATG(共同配給)●最初に観た場所:カトル・ド・シネマ上映会(79-04-18)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ(10-07-03)(評価:★★★★)●併映:「パサジェルカ」(アンジェイ・ムンク)

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戦争の悲劇を描いたマルグリット・デュラス原作(脚本)の映画化作。DVD化されていない名作。

かくも長き不在 ポスター.jpgかくも長き不在 vhs.jpg かくも長き不在 01.jpg かくも長き不在 ちくま.jpg
輸入版ポスター/「かくも長き不在」VHS/『かくも長き不在 (ちくま文庫)

UNE AUSSI LONGUE ABSENCE.jpg パリ郊外でカフェを営むテレーズ(アリダ・ヴァリ)はある日、店の前を通る浮浪者に目を止める。その男(ジョルジュ・ウィルソン)は16年前に行方不明になった彼女の夫アルベールにそっくりであった。テレーズはその男とコンタクトをとるが、その男は記憶喪失だった―。
 アンリ・コルピ(1921-2006/享年84)監督の1961年公開の作品で、この人は映画監督の他に雑誌編集者、脚本家、音楽家、編集技師として幅広く活動した人ですが、逆に単独監督した作品として有名なのはこの一作くらいではないでしょうか。但し、この作品でカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞しています。

 この作品もある種"企画"的側面があり、原作者のマルグリット・デュラス(1914-1996/享年81)は1960年にこの物語を、同じくデュラスマルグリット・デュラス.jpgの小説『モデラートカンタービレ』(原題:Moderato Cantabile, 1958年)を原作としジャンヌ・モロー、ジャン=ポール・ベルモンドが主演した「雨のしのび逢い」('60年/仏・伊)の脚本家ジェラール・ジャルロと共同でいきなり脚本から書き起こしていて、それは「ちくま文庫」に所収されています。
Marguerite Duras(1914 - 1996)
かくも長き不在 02.jpg
 戦争の悲劇を描いた感動作ですが、マルグリット・デュラスの作品の中でも分かり易く、また、件(くだん)の浮浪者は果たしてテレーズの夫であるのかどうかという関心から引き込まれます。そして、事実は結末で意外な形で示唆されますが(テレーズの呼んだ夫の名を街の人が次々と伝えていき、それに反応する形で浮浪者が降参するかのように両手を上げるのが悲しい)、その前のテレーズと浮浪者のダンスシーンなども、ぎこちなく二人が抱き合うところなどは逆にリアルで感動させられ、定番的な作り物にしてしまわない脚本と演出の上手さが感じられました。

UNE AUSSI LONGUE ABSENCE aridabari.jpg アリダ・ヴァリはキャロル・リード監督の「第三の男」('49年/英)が有名ですが、この作品を観ると、ミケランジェロ・アントニオーニ監督の「さすらい」('57年/伊)で夫と別れて暮らすことになった妻を演じていたのを思い出します。「さすらい」において、夫は疲弊して妻の元に戻りますが、アリダ・ヴァリ演じる妻は既に新たな生活を築いており、夫は妻の目の前で自死を遂げます。

UNE AUSSI LONGUE ABSENCE 1.jpg この「かくも長き不在」においても、アリダ・ヴァリ演じるテレーズには日常においては暗さは無く、16年前にゲシュタポに捕えられたまま消息を絶った夫の帰りを待ちながらも店を営んで逞しく生活しており、若い恋人までいるような様子であって、そこへ抜け殻のようになって現れた"夫かもしれない男"との対比が、逆に男の心的外傷によるトラウマの闇の深さを際立たせています。テレーズが男とぎこちないダンスをした際に、男の頭部の傷に気づく場面はぞっとさせられますが、一方で、そのことにより"夫かもしれない男"に憐れみと慈しみを覚えるテレーズの表情は、まさにアリダ・ヴァリにしか出来ないような演技であり、この作品の白眉と言えます。

 因みに、この映画を観て、いくら心的外傷を負ったとは言え、自分の夫と他人の区別がつかないものだろうかという慰問を抱く人がいますが、心的外傷だけでなく記憶中枢である海馬を損傷するなど脳に器質的障害を負った場合、その人の顔つきまでも全く変わってしまうことが見受けられるようで、個人的にもそうしたケースに接したことがあります。

「二十四時間の情事」1.jpg マルグリット・デュラスは多くの作品を残しながら自身も監督業を手掛けていますが、どちらかと言うと原作や脚本を書いたものを別の映画監督が映画化したものの方が知られており、有名なものでは原作・脚本を書き、アラン・レネが監督した「二十四時間の情事」('59年/仏・日)がありますが、こちらもモチーフとしてナチの収容所体験を持つ女性が出てきます。ヌーヴェル・ヴァーグの色合いを感じる作品で、観念的な原作の文脈でそのまま映像化するとこんな感じかなという作品ですが、これもオリジナルよりは分かり易くなっています。同じアラン・レネ監督の、後にノーベル文学賞を受賞する作家アラン・ロブ=グリエ(1922-2008/享年85)原作の「去年マリエンバートで」('61年/仏)ほどには前衛的ではなく、デュラスの小説の映画化作品は、小説より分かり易くなる傾向にあるように思います(それでもまだ難解な面もあるが、「去年マリエンバートで」のように観ていて眠くなる(?)ことはない)。デュラスの小説『ジブラルタルから来た水夫』を原作とするトニー・リチャードソン監督の「ジブラルタルの追想」('67年/英)なども、えーっ、原作ってこんなラブロマンスなの、というようなハーレクイン風の仕上がりで、ここまで噛み砕いてしまうとどうかなというのはありますが、さすがにこの作品は自身で脚本までは書いていないようです。

UNE AUSSI LONGUE ABSENCE 7.jpg 「かくも長き不在」のちくま文庫版の原作脚本を読むと、自身で監督したものに有名な作品は無いけれど、(脚本家の協力・示唆はあったにせよ)小説的効果と映画的効果の違いはわかっていた人ではないかという気がします。特に、この映画のラストの男を呼ぶ声が伝言のように街中を伝わっていく場面は、映画的シチュエーションの極致と言ってよいかと思います。

 しかし、この「かくも長き不在」、以前はビデオとLD(レーザーディスク)で発売されていたけれど、2014年現在DVD化はされていないようです。どうして?

かくも長き不在 シアターアプル.jpgUNE AUSSI LONGUE ABSENCE 3.jpg「かくも長き不在」●原題:UNE AUSSI LONGUE ABSENCE●制作年:1960年●制作国:フランス●監督:アンリ・コルピ●脚本:マルグリット・デュラス/ジェラール・ジャルロ●撮影:マルセル・ウェイス●音楽:ジョルジュ・ドルリュー●時間:98分●出演:アリダ・ヴァリ/ジョルジュ・ウィルソン/シャルル・ブラヴェット/ジャック・アルダン/アナ・レペグリエ●日本公開:1964/08●配給:東和●最初に観た場所:新宿シアターアプル(85-04-21)(評価:★★★★)[右]ポスター(イラスト:和田 誠

二十四時間の情事 02.jpg「二十四時間の情事」●原題:HIROSHIMA 二十四時間の情事_.jpgMON AMOUR●制作年:1959年●制作国:フランス・日本●監督:アラン・レネ●脚本:マルグリット・デュラス●撮影:サッシャ・ヴィエルニ/高橋通夫●音楽:ジョヴァンニ・フスコ(イタリア語版)/ジョルジュ・ドルリュー●時間:90分●出演:エマニュエル・リヴァ/岡田英次/ステラ・ダサス/ピエール・バルボー/ベルナール・フレッソン●日本公開:1959/06●配給:大映●最初に観た場所:京橋・フィルムセンター(80-07-15)(評価:★★★★)
二十四時間の情事 [DVD]

THE SAILOR FROM GIBRALTAR PERFORMER.jpg「ジブラルタルの追想」●原題:THE SAILOR FROM GIBRALTAR PERFORMER●制作年:1967年●制作国:イギリス●監督:トニー・リチャードソン●製作:オスカー・リュウェンスティン●脚本:クリストファー・イシャーウッド/ドン・マグナー/ジブラルタルの水夫.jpgトニー・リチャードソン●撮影:ラウール・クタール●音楽:アントワーヌ・デュアメル●原作:マルグリット・デュラス「ジブラルタルから来た水夫(ジブラルタルの水夫)」●時間:90分●出演:ジャンヌ・モロー/イアン・バネン/オーソン・ウェルズ/ヴァネッサ・レッドグレーヴ●日本公開:1967/11●配給:ユナイテッド・アーチスツ●最初に観た場所:大塚名画座(78-12-12)(評価:★★☆)●併映:「悪魔のような恋人」(トニー・リチャードソン)(原作:ウラジミール・ナボコフ)
ジブラルタルの水夫

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"正統派"ラブロマンス。若くして映画のセオリーをマスターし切っていることを見せつける作品。

恋人たち モロー dvd.jpg恋人たち dvd.png 恋人たち(1958) 00.jpg 
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恋人たち【HDマスター】《IVC 25th ベストバリューコレクション》 [Blu-ray]」['13年]

恋人たち(1958) 夫.jpg 1954年の仏ディジョン。新聞社主アンリ(アラン・キュニー)の妻ジャンヌ(ジャンヌ・モロー)は閉塞的な日常からの逃避を月に二度のパリ行きと愛人ラウール(ホセ・ルイ・ド・ビラロンガ)との密会に求めていた。妻の不倫を疑うアンリの思惑により、逆に、ラウール恋人たち(1958) kuruma.jpgたちを屋敷に迎えざるを得なくなったその当日、車が故障した所を若い考古学者ベルナール(ジャン・マルク・ボリー)に拾われ家に辿り着いた彼女。友人らを迎えたその晩、眠れずに戸外へ出ると、そこにベルナールの姿もあった。夢遊病者のように庭をさまよい歩き、いつしか二人恋人たち(1958) バス.jpgは、ジャンヌの寝室で愛を交わす。そして翌朝、驚く夫や愛人を後目に、彼女は新しい男と共に家を出る―。

 ルイ・マルの監督デビュー第2作目('58年)で、北千住・シネマブルースタジオのルイ・マル監督特集の一本として上映されたのを観ました。二週替わりで他に「死刑台のエレベーター」('57年)、「地下鉄のザジ」('60年)、「鬼火」('63年)を上映していましたが、この作品は個人的には今回が初めてでした。

LES AMANTS ジャンヌモロー.jpg 実業家の若い妻ジャンヌが、仕事人で嫉妬深い夫とスポーツマンで貴族的生活を送っているプレイボーイの愛人の間で揺れ動いていたと思ったら、偶然出会った若い考古学者と一夜にして突然の恋に落ちるという、ストーリーとしては意外な展開ですが、ラブロマンスとしてはむしろオーソドックスなタイプの1LES AMANTS 1958 2.jpgつ。むしろアンニュイな若妻を主人公とする(この頃ルイ・マルとジャンヌ・モローは恋人同士の関係にあったと思うが)この"正統派"ラブロマンスを26歳で真っ向から撮っているというのがスゴイなあと思うし、ちょっと背伸びしている感じもなくもないですが、既に「死刑台のエレベーター」という傑作を撮っているだけに、何か映画の文法というものを若くして体得してしまっている印象を受けます。

恋人たち(1958) ボート.jpg ジャンヌが夜中に偶然にベルナールと出くわして、そこから二人が結ばれるまでの映像の流れはまるで夢の世界のようであり(カメラは「死刑台のエレベーター」と同じくアンリ・ドカエだが、この夜のシーン、何となく〈道行〉のような印象を受けたのは自分だけか)、それに被るクラシック音楽も効いています。子どもに別れまで告げていることからジャンヌの強い決意が窺える一方で、ラストではどことなく未だ不安の表情を残しているというのがリアル。それでも、もう彼女は元の世界に戻ることはない...。

 二人が出会う夜のシーンの音楽は、ブラームスが27歳の時に作曲した「弦楽六重奏曲1番」を使っていますが、これはブラームスの作品の中で最も"甘い"とされている曲だそうです。「死刑台のエレベーター」でパリに公演に来ていたマイルス・デイヴィスにラッシュに合わせてトランペットを吹いてもらって、後に、映画が注目されたことの理由の1つとしてマイルス・デイヴィスの音楽が使われていることも当時あったことをトリュフォー自身認めていますが、そうしたこともあってここではクラシックを使ったのでしょうか。この物語の原作が、18世紀の作家イヴァン・ドノンの"ポワン・ド・ランドン"(明日はない)という古典であることも意識されているかと思われます。

恋人たち(1958) 6.jpg 「死刑台のエレベーター」のマイルス・デイヴィスの使われ方といい、「鬼火」のエリック・サティのピアノ曲の使われ方といい、この監督の映像と音楽の融和レベルの高さは他の追随を許さないものあるとこの作品を観ても思います。強いて言えば、自分が映画のセオリーというものをマスターし切っていることを見せつけるために撮った作品ともとれるのが難点と言えなくもないですが、(デビュー作がフロックでないことを証明するために?)敢えて古典に材を得つつ、クラシカルな優美さを現代に移し替えても損なわないのは、やはり巧みの技と言えるかと思いました。

LES AMANTS 1958 3.jpg
「恋人たち」●原題:LES AMANTSD●制作年:1958年●制作国:フランス●監督:ルイ・マル●製作:イレーネ・ルリッシュ●脚本: ルイ・マル/ルイ・ド・ヴィルモラン●撮影:アンリ・ドカエ●音楽:ヨハネス・ブラームス●原作:イヴァン・ドノン「明日シネマブルースタジオ1.jpgシネマブルースタジオ2.jpgはない」●時間:95分●出演:ジャンヌ・モロー/ジャン・マルク・ボリー/アラン・キュニー/ホセ・ルイ・ド・ビラロンガ/ジュディット・マーグル/ガストン・モド/ジュディット・マーレ●日本公開:1959/04●配給:映配●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(14-07-08)(評価:★★★★)

シネマブルースタジオ 2006年4月、北千住・東京芸術センター内にオープン。

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小津 安二郎 「お早よう」('59年/松竹)の大泉滉・泉京子夫婦の家の室内にあるポスターは「恋人たち」のもの

 
 

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検閲に脚本をズタズタにされながらも、ワイルダーの洒落たセリフとモンローの演技力でもってる「七年目の浮気」。

七年目の浮気 blue.jpg 七年目の浮気 スタジオ.jpg お熱いのがお好き dvd.jpg Some Like It Hot 01.jpg
七年目の浮気 [Blu-ray]」  映画スチール写真    「お熱いのがお好き(特別編) [DVD]

七年目の浮気 03.jpg 妻子を避暑に送り出した出版社に勤める中年サラリーマンのリチャード(トム・イーウェル)が、The Seven Year Itch 09.jpg自分のアパートの階上にマリリン・モンローそっくりの美女(モンロー)が引っ越してきたことを知って浮気の虫が疼き、彼女を映画に誘ったり、冷房のきいた涼しい部屋を提供して浮気を試みる―。

 マリリン・モンローは、このビリー・ワイルダー監督の「七年目の浮気」(原題:The Seven Year Itch、1955年)の頃は精神状態が不安定で、撮影時にはうつ状態になることが多く(コメディ映画を撮っているのにそれはマズイ)、セットでは集中力を欠いてセリフを忘れてしまい、撮影に遅れてくることも少なくなかったとのことです。更に、撮影期間中のジョー・ディマジオとの離婚により(この映画が離婚の一因になったとも言われる)、精神状態はますます悪化し、モンローの遅刻は頻度を増して、映画の完成が予定より遅れたそうです。

Photo by Documentary photographer George Zimbel

七年目の浮気 ロケ.jpgThe Seven Year Itch 07.jpg 因みに、例の地下鉄の風でスカートがまくれ上がるシーンは、深夜1時からの屋外ロケ撮影にもかかわらず数百人ものカメラマンや数千人とも言われる野次馬が集まったため、歓声や野次などの雑音がマイクに入り過ぎて本編では使われず、結局スタジオでセットで撮影し直したとのことです。但し、屋外ロケは、最初から映画の宣伝だけのためだったとの内輪話もあります。夫のディマジオは屋外ロケ撮影に立ち会って不快感を露わにしており、二人の離婚はその2週間後でした。この撮影が離婚の契機となったとすれば、罪作りな話かも。

Marilyn Monroe on location, "The Seven Year Itch", New York City 1954
(左上及び左写真は屋外ロケの際に報道カメラマンなどが撮ったもの、その右の写真はスタジオ内での撮影模様(左はモンローに演技をつけるビリー・ワイルダー監督))。

Marilyn Monroe in The Seven Year Itch.jpg スタジオ撮影でもモンローのセクシーさはとどまるところを知らなかったのか、実際の作品の中では顔だけのショットと足だけのショットに分かれてしまっています(映画スチール写真と七年目の浮気 6.jpgも異なる)。

 こうした撮り直しやショットの分割は、制作中に米国映倫の規制圧力により映画会社から撮影現場に修正要請が入り、脚本の中の際どいシーンが次々カットされるなどし、そうしたことの一環としてThe Seven Year Itch (1955).jpg七年目の浮気 09.jpg、地下鉄シーンでのスカート内の露出も最低限に抑えたということのようです(脚本には不貞行為の場面はなかったが、サラリーマン氏が自分のベッドでモンローのヘアピンを見つける描写など不貞を連想させるシーンは、映倫からの検閲を受けると考えた会社側がワイルダーに削除を命じたりした)。

The Seven Year Itch (1955)

Some Like It Hot 2.jpg モンローは同監督の「お熱いのがお好き」(原題:Some Like It Hot、1959年)の撮影の際にも精神不安定のために遅刻を繰り返しますが、トミー・カーティスとジャック・レモンがほぼ全編を通じて女装で登場する話であったため、ワイルダー監督がどぎつさを緩和するためにモノクロにしたのが、当然カラー作品だと思っていたモンローには気に入らなかったというのが元々あったようです。撮影中にちょっとでも気に障ることがあると助監督に当たり散らしたりなどして、「撮影現場でのトラブルの原因は99%はモンローにあった」と現場関係者に言わしめたほどでした。

 共演のトミー・カーティスはモンローとのキスシーンについて「ヒトラーとキスしたようなものだお熱いのがお好き001.jpgSome Like It Hot 4.jpg」とコメントしています(トミー・カーティス本人は後にこの発言を否定している)。一方、もう一人の共演者ジャック・レモンは催眠術の名手であり、ロケ宿泊地のホテルでその技法により彼女を催眠誘導してリラクゼーションに導き、何とかクランクアップに漕ぎ着けたという話もあります(藤本正雄『催眠術入門』('67年/カッパ・ブックス)など)。
    
テアトル東京 1955 七年目の浮気2.jpgテアトル東京 1955 七年目の浮気.jpg 興味深いのは、モンローのおかげですったもんだした撮影であったにも関わらず、それぞれ作品が公開されると、「七年目の浮気」の方は興業収入1,200万ドルの大ヒットを記録して、モンローの演技は批評家と観客の両方から高く支持され、彼女は更なる人気を博し(日本でも'55年11月の「テアトル東京」オープンの杮落とし上映がこの作品だった)、また「お熱いのがお好き」ではその演技でゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)を獲得、名実ともに大女優の地位を築き上げていることで、「お熱いのがお好き」では撮り直しをする度に演技が良くなっていき、撮影が終了して帰りかける頃には、彼女が誰よりも元気であったと言います。

The Seven Year Itch 08.jpg 「七年目の浮気」でもそんな感じだったのではなかったのでしょうか。元が舞台劇であるにも関わらず、先に述べたように検閲予防のため脚本がズタズタにされた作品で、初めて観た時の個人的評価はそう高くはなかったのですが(脚本も演出も「お熱いのがお好き」の方が上か)、今観ると、この作品は、ワイルダーの洒落たセリフと「モンローの演技力」でもってるような気がして、当初の評価に星1個分プラスしました。

お楽しみはこれからだ part3 - 2.jpg そういえば、イラストレーターの和田誠氏も、『お楽しみはこれからだ』で結構モンローを取り上げていたのではなかったかなあ。まあ、和田誠氏はビリー・ワイルダーがそもそも好きだからなあ。今、探してみたら『お楽しみはこれからだ PART3―映画の名セリフ』('80n年/文藝春秋)で、モンローが「大アマゾンの半魚人」('54年)を観た後の感想を言ったセリフ「半魚人は可哀そう。顔は怖いけれど悪者じゃないわ。愛情を求めているのよ」というのを取り上げていました。

お楽しみはこれからだ〈part 3〉―映画の名セリフ (1980年)

 ワイルダー監督はモンローを使っての撮影が終わる度に、彼女の情緒不安定と我儘にはもう懲り懲りしたと周囲に漏らしながらも、結局のところ彼女のコメディエンヌとしての才能は高く評価していたようで、三度(みたび)彼女を使って次回作を撮ることを考えていたといいますが、彼女の死によってそれは実現しませんでした。

 モンローの演技力については、錚々たる映画スターを輩出した俳優養成所「アクターズ・スタジオ」を主宰していたリー・ストラスバーグが、モンローとマーロン・ブランドが、彼の門下で最も優れた才能の持ち主であると言っていたそうです(亀井俊介 『アメリカでいちばん美しい人―マリリン・モンローの文化史』('04年/岩波書店))。

七年目の浮気 01.jpg 「七年目の浮気」の最後は、件(くだん)のサラリーマン氏は自らが妻を愛していたことを再認識するというコメディ映画らしい無難なオチですが、セックスシンボルとして多くの男性を魅了する一方で、"正妻"となるには落ち着きが悪く、彼女自身はいつまでたっても安定した境遇を得られないという、公私の両面に渡ってモンローに合致したヒロイン像だったように思います(ラストのモンローはやや寂しげか)。また、クレジットでモンローの役に名前が無く、単に「ザ・ガール」となっていることから、この女性自体が主人公のサラリーマン氏の妄想ではないかという見方もあるようです(川本三郎氏など)。 

:THE SEVEN YEAR ITCH.jpg「七年目の浮気」●原題:THE SEVEN YEAR ITCH●制作年:1955年●制「七年目の浮気」.jpg作国:アメリカ●監督:ビリー・ワイルダー●製作:ビリー・ワイルダー/チャールズ・K・フェルドマン●脚本:ビリー・ワイルダー/ジョージ・アクセルロッド●撮影:ミルトン・クラスナー●音楽:アルフレッド・ニューマン●原作:ジョージ・アクセルロッド●時間:七年目の浮気 dvd.jpg105分●出演:マリリン・モンロー/トム・イーウェル/イヴリン・キース/ソニー・タフツ/オスカー・ホモルカ/マルグリット・チャップマン/ロバート・ストラウス●日本公開:1955/11●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:高田馬場ACTミニシアター(84-01-14)(評ACTミニ・シアター.jpgACTミニ・シアター2.jpg早稲田通りビル.jpg価:★★★☆)●併映:「フロント・ページ」(ビリー・ワイルダー)/「アラビアのロレンス」(デビッド・リーン)/「せむしの仔馬」(イワノフ・ワーノ)/「雪の女王」(レフ・アタマノフ) 高田馬場(西早稲田)ACTミニシアター 1970年代開館。2000(平成12)年頃 閉館(活動休止)
七年目の浮気 特別編 [DVD]

お熱いのがお好き000.jpgお熱いのがお好き 5.jpg「お熱いのがお好き」●原題:SOME LIKE IT Hお熱いのがお好き dvd.jpgOT「お熱いのがお好き〈特別編〉 [DVD]」●制作年:1959年●制作国:アメリカ●監督:ビリー・ワイルダー●製作:ビリー・ワイルダー/チャールズ・K・フェルドマン●脚本:ビリー・ワイルダー/I・A・L・ダイアモンド●撮影:ミルトン・クラスナー●音楽:アルフレッド・ニューマン●原作:ロバート・ソーレン●時間:120分●出演:マリリン・モンロー/トニー・カーティス/ジャック・レモン/ジョージ・ラフト/パット・オブライエン/ジョー・E・ブラウン/ジョージ「お熱いのがお好き」.jpg・E・ストーン/ジョアン・ショーリー/ビリー・グレイ●日本公開:1959/04●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:高田馬場ACTミニシアター(84-02-25)(評価:★★★☆)●併映:「鉄道員」(ピエトロ・ジェルミ)/「カビリアの夜」(フェデリコ・フェリーニ)/「フェリーニの監督ノート」(フェデリコ・フェリーニ)/「聖メリーの鐘」(レオ・マッケリー)/「ふくろうの河」(ロベール・アンリコ)/「チャップリンのノックアウト」(チャールズ・チャップリン)
作品はモノクロ

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ルイ・マル25歳の時のヌーヴェル・ヴァーグの傑作。映像と音楽の融合が素晴らしい。

死刑台のエレベーター2.jpg死刑台のエレベーター パンフ.jpg死刑台のエレベーター【HDニューマスター版】.jpg 死刑台のエレベーター.jpg  Shikei dai no erebêtâ(1958).jpg
死刑台のエレベーター [DVD]」/パンフレット/「死刑台のエレベーター【HDニューマスター版】 [DVD]」/「死刑台のエレベーター」 CD/Shikei dai no erebêtâ(1958) Poster

死刑台のエレベーター ポスター.jpg 会社の技師ジュリアン・タベルニエ(モーリス・ロネ)と社長夫人フロランス・カララ(ジャンヌ・モロー)は愛し合っていて、社長のシモンを殺害する完全犯罪を計画する。実行の日、ジュリアンはバルコニーから錨付ロープをかけて上って社長室に入り、社長を射殺してその手に拳銃を握らせる。手摺から一階下の自屋に戻ってエレベーターで下に降り死刑台のエレベーター00.jpgて外に出る。手摺にロープを忘れて来たことに気付き、またエレベーターに乗るが、エレベーターは階の途中で止まってしまう(ビルの管理人が電源スイッチを切って帰ったため)。ジュリアンは脱出しょうとするが果たせず、フロランスとの約束の時間は過ぎていく。彼を待つフロランスは次第に不安にかられ、彼を求めて夜のパリを彷徨う―。一方、花屋の売り子ベロニック(ヨリ・ベルダン)とチンピラのルイ(ジョルジュ・プージュリー)は、ジュリアンの車を盗んで郊外に出る(車内には小型カメラ、拳銃がある)。前を走るスポーツカーの後についてあるモーテルに着くと、ジュリアン・タベルニエ夫婦と偽って投宿し、スポーツカーの持主のドイツ人夫婦と知り合ってパーティに呼ばれ、遊び半分にカメラで写真を撮った後、モーテルの現像屋へフィルムを出す。二人はスポーツカーを盗もうとして見つかり夫婦を射殺して逃げるが、アパートにも戻ってから怖くなり心中を図る―。

 先にスタンリー・キューブリック(1928-1999/享年70)監督の劇場デビュー作「現金に体を張れ」('56年/米)を取り上げましたが、この時キューブリックは28歳、これに対し、このルイ・マル(1932-1995/享年63歳)のノエル・カレフのサスペンス小説を原作とした「死刑台のエレベーター」(原題:Ascenseur pour l'échafaud)('56年/仏)は、彼が25歳の時の実質デビュー作で、ルイ・マル監督の出世作となりました。

 最初に観て以来ずっと傑作だと思っているのですが、ウェブなどで見ると必ずしも評価が高くなかったりもし、今回久しぶりに観直してみて、主人公が犯行時に凡ミスをしたりするプロット面でケチがつくのかなあと。更に、後半の若者たちの犯行の部分はかなり記憶が薄れていたのですが、今観ると、タイミングよく(折悪く)偶然が重なったり、状況証拠だけで殺人がバレたような終わり方になっていのも、ミステリとしての弱さがあるのかも。でも、個人的にはやはりヌーヴェル・ヴァーグ傑作だと思っています。

 後から付いてくる理屈はともかく、観ている間は、リアリスティックな映像によってサスペンスフルな雰囲気にどっぷり浸れます。それと何と言っても、モーリス・ロネとジャンヌ・モローが演じる主人公2人の描き方が良く、熱愛という感じではなく2人共人生に倦んでいるような感じでしょうか。もう一組の若者たちも、主人公らと対比的に描かれていると言うよりはむしろ同類かも。

Shikei dai no erebêtâ (1958).jpg死刑台のエレベーター01.jpg こうした緊迫感にアンニュイ感が入り交じったような映像世界にしっくり合っているのが、マイルス・デイヴィスのジャズトランペットで、特に、恋人モーリス・ロネからの連絡が無く、不安の裡にパリの街を彷徨うジャンヌ・モローの姿にマイルス・デイヴィスのトランペットが被るシーンは何とも言えないムードを醸していて素晴らしく、映像と音楽が旨く融合するとスゴイ訴求力になると改めて思いました。

Shikei dai no erebêtâ (1958)

死刑台のエレベーター マイルス.jpg この作品は超低予算映画ということでも知られていて、それにしては"帝王"マイルス・デイヴィスが演奏しているではないかと疑問に思われますが、マイルスがたまたまパリに演奏公演に来ていたのを、ルイ・マル監督が一晩借り受けて、ラッシュに合わせ即興で演奏してもらったということです。

新宿アートビレッジ3.png死刑台のエレベーター.jpg「死刑台のエレベーター」●原題:ASCENSEUR POUR L'ECHAFAUD●制作年:1957年●制作国:フランス●監督:ルイ・マル●製作:ジャン・スイリエール●脚本: ロジェ・ニミエ/ルイ・マル●撮影:アンリ・ドカエ●音楽:マイルス・デイヴィス●原作:ノエル・カレフ●時間:95分●出演:モーリス・ロネ/ジャンヌ・モロー/ジョルジュ・プージュリー/リノ・ヴァンチュラ/ヨリ・ヴェルタン/ジャン=クロード・ブリアリ/シャルル・デネ●日本公開:1958/09●配給:ユニオン●最初に観た場所:新宿アートビレッジ (79-02-10)●2回目:高田馬場・ACTミニシアター(82-10-03)●3回目:六本木・俳優座シネマテン(85-02-10)(評価:★★★★☆)●併映(1回目):「恐怖の報酬」(アンリ=ジョルジュ・クルーゾー)/(2回目):「大人は判ってくれない」(フランソワ・トリュフォー) 
新宿アートビレッジ (歌舞伎町ジャズ喫茶「タロー」3F、16ミリ専門の上映館・席数40) 1980(昭和55)年に活動停止

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スタンリー・キューブリック28歳の時のフィルム・ノワール作品。カットバック映画の第一級品。

THE KILLING 1956.jpgTHE KILLING 1956-2.jpg現金に体を張れ1.jpg  現金に体を張れ.jpg
現金(ゲンナマ)に体を張れ [DVD]
Gennama ni karada wo hare(1956)
現金に体を張れ02.jpg
 5年の刑期を終えて出所したジョニー・クレイ(スターリング・ヘイドン)は、恋人フェイ(コリーン・グレイ)との新たな生活のため、仲間を2THE KILLING 1956 .jpg集めて再び犯罪に手を染めようとしていた。それは、ダービーの行われる日に競馬場の売上金を強奪しようというもので、集まったのは、ジョニーの他に、軍資金を出すマーヴィン(ジェイ・C・フリッペン)、競馬場の馬券売場の現金係ジョージ(エライシャ・クック)、競馬場のバーのバーテンダーのマイク( ジョー・ソウヤー)、競馬場の整備を担当している悪徳警官ランディ(テッド・デコルシア)、元レスラーのモーリス(コーラ・クワリアーニ)の5人。ジョニーは更に射撃の名手ニッキを雇う。競馬場近くのモーテルの一室借りて犯行当日の根城とし、決行の前日、一味は最後の打合せをしたが、警官まで仲間に引き込んだ計画に隙はないように思われた。しかし、妻シェリー(マリー・ウィンザー)の尻に敷かれっぱなしのジョーが、妻から嘲りの言葉を浴びてプライドを踏みにじられTHE KILLING 1956.jpg、思わず計画のことを口にしてしまう。彼女からそれを聞いた彼女の不倫相手のヴァル(ヴィンス・エドワーズ)は、彼らが奪った金をさらに強奪する計画を立てる―。

『現金(げんなま)に体を張れ』(1956).jpg 決行の日、先ずモーリスがバーに来て飲物を注文、マイクの出した飲物に因縁をつけ暴れ始める。彼を押さえようとする警備員を大男のモーリスは次々と投げ飛ばして騒ぎは拡がり、競馬場の金庫室を見張っていた警官まで出てくる。一方、ニッキは競馬場の外側コースからレース中の馬を一発で倒してレースを混乱させるが、来合せた警官の銃弾に倒れる。競馬場の騒ぎの間にジョニーはジョージの合図で金庫室に入り、職員を機関銃で脅して200万ドルの紙幣を袋に詰込ませ、それを窓から投げて表へ出る。袋はランディが自分のパトカーに積んでモーテルの一室へ一旦放り込む。先に戻ったジョージら5人は別のホテルの一室で金を持って現れるはずのジョニーを待つが、そこへ現れたのは機関銃を構えたヴァルとその仲間で、その場で銃撃戦となり、重傷のジョージ以外は敵味方とも全員死んでしまう。ジョージは血まみれのまま車で自分のアパートへ戻り、ヴァルとの高跳びのための荷造りしていたシェリーを射殺、自身も息絶える。ジョージが血まみれになって車で行くのを、ホテルへ急ぐ途中で見つけたジョニーは、危険を覚ってフェイの待つ飛行場へ直行する―。

スタンリー・キューブリック.jpg スタンリー・キューブリック(1928-1999/享年70)監督の劇場公開第1作で(原題:THE KILLING)、この時彼は28歳でしたが、自ら脚本も手掛けたこの作品の完成度の高さには目を瞠るものがあります。前年作で同じくフィルム・ノワール系の「非情の罠」('55年、原題:THE KILLER'S KISS)も観ましたが、1年で格段の進歩という感じ(まあ、この「現金に体を張れ」は「非情の罠」より以前から彼が構想を暖めていたものだそうだが)。
Self-portrait taken from Stanley Kubrick : Photographs 1945-1950

 原作は、ライオネル・ホワイトの『見事な結末』("Clean Break")で(ゴダールの「気狂いピエロ」もこの人の『十一時の悪魔』が原作)、綿密なはずの現金強奪計画がちょっとした偶然から崩れていくその様を、同時に起きている出来事を、時間を繰り返し何度も戻してそれぞれの登場人物の立場から描いています。

『パルプ・フィクション』(1994) 2.jpgパルプ・フィクション.bmp こうしたカットバック方式の作品としては、後にクエンティン・タランティーノが自ら脚本を書き監督した「パルプ・フィクション」('94年)があり、これもアカデミー脚本賞受賞の傑作ですが、ジョン・トラヴォルタとサミュエル・L・ジャクソンの二人組がコーヒー・ショップで強盗を働く話であるのに対し、こちらの「現金に体を張れ」の強盗チームは6人組+狙撃犯で、スケールの大きさからみてもプロットの精緻さからみても、その上を行く第一級品だと思います("B級"ノワールと呼ぶには失礼かも)。

 カメラワークやプロットの見事さは勿論のこと、人間の弱さ、夢の儚さもしかっり描けていて(ラストはジャン・ギャバンとアラン・ドロンの「地下室のメロディ」('63年/仏)を想起させるが、「現金に体を張れ」の方が7年早く作られている)、エライシャ・クックをはじめ脇役陣も演技達者の性格俳優ばかり。28歳にしてこの演出力はさすがキューブリックという感じで、テンポの良さもあって、約1時間半の上映時間が短く感じられた作品でした。

 因みに、「フィルム・ノワール」作品の多くに共通する特徴として、主役乃至準主役の女性が明確に悪女(ファム・ファタール)であるか、そうでない場合でも、結果的に主人公の男を破滅させる原因を作ることの多い役柄であることだそうで、この作品の場合は当然のことながら、「悪女」はマリー・ウィンザー演じるシェリーということになります。

現金に体を張れ01.jpg現金に体を張れ03.jpg「現金に体を張れ」●原題:THE KILLING●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:スタンリー・キューブリック●製作:ジェームス・B・ハリス●脚本:スタンリー・キューブリック/ジム・トンプスン●撮影:ルシエン・バラード●音楽:ジェラルド・フリード●原作:ライオネル・ホワイト「見事な結末」●時間:83分●出演:スターリング・ヘイドン/ジェイ・C・フリッペン/メアリ・ウィンザー/コリーン・グレイ/エライシャ・クック/マリー・ウィンザー/テッド・デコルシア/ ジョー・ソウヤー/コーラ・クワリアーニ/ヴィンス・エドワーズ●日本シアターアプル・コマ東宝.jpg公開:1957/10●配給:ユニオン=映配●最初に観た場所:新宿シアターアプル (86-03-22) (評価:★★★★☆)
歌舞伎町・新宿シアターアプル・コマ東宝  2008(平成20)年12月31日閉館

ライオネル・ホワイト原作: 「現金に体を張れ」 ('56年/米)/「気狂いピエロ」 ('65年/仏)
現金に体を張れド.jpg 気狂いピエロ Pierrot Le Fou.jpg

パルプフィクション スチール.jpgパルプ・フィクション ポスター.jpg「パルプ・フィクション」●原題:PULP FICTION●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督・脚本:クエンティン・タランティーノ●製作:ローレンス・ベンダー●原案:クエンティン・タランティーノ/ロジャー・エイヴァリー●撮影:アンジェイ・セクラ●音楽:カリン・ラットマン●時間:155分●出演:ジョン・トラヴォルタ/サミュエル・L・ジャクソン/ユマ・サーマン/ハーヴェイ・カイテル/アマンダ・プラマー/ティム・ロス/クリストファー・ウォーケン/ビング・ライムス●日本公開:1994/09●配給:松竹富士 (評価:★★★★)

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見ていると眠れなくなってしまいそうな本。美麗本であれば、ファンには垂涎の一冊。

怪奇SF映画大全2.jpg メトロポリス.JPG アマゾンの半漁人.JPG
怪奇SF映画大全』(30 x 23 x 2.4 cm) 「メトロポリス」('27年) 「アマゾンの半魚人」('54年)

図説ホラー・シネマ.jpgGraven Images 1992.jpgGraven Images 2.jpg 先に『図説 モンスター―映画の空想生物たち(ふくろうの本)』('07年/河出書房新社)を取り上げましたが、本書(原題"Graven Images" 1992)は怪奇映画だけでなくSFホラーまで領域を拡げた「映画ポスター+解説集」であり、「カリガリ博士」「キング・コング」から「吸血鬼ドラキュラ」「2001年宇宙の旅」まで怪奇・SF・ファンタジー映画の歴史をポスターの紹介と併せて解説したまさに永久保存版であり、1910~60年代まで450本の映画及びポスターが紹介されています。
"Graven Images: The Best of Horror, Fantasy, and Science-Fiction Film Art from the Collection of Ronald V. Borst"

 ポスターの紹介点数もさることながら、大型本の利点を生かしてそれらを大きくゆったりと配置しているためかなり見易く、また、迫力のあるものとなっています(表紙にきているのはボリス・カーロフ主演の(「フランケンシュタイン」ではなく)「ミイラ再生」('32年)のポスター)。

 「ふくろうの本」の方が映画そのものの解説が詳しいのに比べ、こちらはポスターそのものを見せることが主で、その余白に映画の解説が入るといった作りになっていますが、それでも解説も丁寧。「10年代と20年代」から「60年代」まで年代ごとの"編年体"の並べ方になっているため、時間的経緯を軸に怪奇SF映画の歴史を辿るのにはいいです。

 更に各章の冒頭に、ロバート・ブロック(「サイコ」の原作者)、レイブラッド・ベリ、ハーラン・エリスン、クライブ・パーカーなどの作家陣が、年代ごとの作品の解説を寄せていますが(序文はスティーヴン・キング)、それぞれエッセイ風の文章でありながら、作品解説としてもかなり突っ込んだものになっています。

「キング・コング」('33年)
kingkong 1933 poster.jpgキング・コング 1933.jpg ポスターに関して言えば、60年代よりも前のものの方がいいものが多いような印象を受けました。個人的には、「キング・コング」('33年)のポスターが見開き4ページにわたり紹介されているのが嬉しく、「『美女と野獣』をフロイト的に改作」したものとの解説にもナルホドと思いました。映画の方は、ストップ・アニメーションでの動きはぎこちないものであるにも関わらず、観ていてコングについ感情移入してしまいますが、意外とこの時のコングは小さかったかも...現代的感覚から見るとそう迫力は感じられません。但し、当時は興業的に大成功を収め(ポスターも数多く作られたが、本書によれば、実際の映画の中でのコングの復讐_1.jpgコングの姿を忠実に描いたのは1点[左上]のみとのこと)、その年の内に「コングの復讐」('33年)が作られ(原題は「SON OF KONG(コングの息子)」)公開されました。 「コングの復讐」('33年)[上]

紀元前百万年 ポスター.jpg
紀元前百万年 スチール.jpg 因みに、アメリカやイギリスでは「怪獣映画」よりも「恐竜映画」の方が主に作られたようですが、日本のように着ぐるみではなく、模型を使って1コマ1コマ撮影していく方式で、ハル・ローチ監督、ヴィクター・マチュア、キャロル・ランディス主演の「紀元前百万年」('40年)ではトカゲやワニに作り物の角やヒレをつけて撮る所謂「トカゲ特撮」なんていう方法も用いられましたが、何れにしても動きの不自然さは目立ちます。そもそも恐竜と人類が同じ時代にいるという状況自体が進化の歴史からみてあり得ない話なのですが...。
     
one million years b.c. poster.jpg この作品のリメイク作品が「恐竜100万年」('66年)で、"全身整形美女"などと言われたラクエル・ウェルチが主演でしたが(100万年前なのにラクェル・ウェルチ   .jpg彼女はバッチリ完璧にハリウッド風のメイキャップをしている)、やはりここでも模型を使っています。結果的に、ラクエル・ウェルチの今風のメイキャップでありながらも、何となくノスタルジックな印象を受けて、すごく昔の映画のように見えてしまいます(CGの出始めの頃の映画とも言え、なかなか微妙な味わいのある作品?)。

King Kong 02.jpg「キングコング」(1976年)1.jpg「キングコング」(1976年).jpg それが、その10年後の、ジョン・ギラーミン監督のリメイク版「キングコング」('76年)(こちらは邦題タイトル表記に中黒が無い)では、キング・コングの全身像が出てくる殆どのシーンは、リック・ベイカーという特殊メイクアーティストが自らスーツアクターとなって体当たり演技したものであったとのことで、ここにきてアメリカも、「ゴジラ」('54年)以来の日本の怪獣映画の伝統である"着ぐるみ方式"を採り入れたことになります(別資料によれば、実物大のロボット・コング(20メートル)も作られたが、腕や顔の向きを変える程度しか動かせず、結局映画では、コングがイベント会場で檻を破るワンシーンしか使われなかったという)。

フランケンシュタインの花嫁 poster.jpg 「フランケンシュタイン」('31年)「フランケンシュタインの花嫁」('35年)のポスターもそれぞれ見開きで各種紹介されていて、本書によれば、ボリス・カーロフは自分の演じる怪物にセリフがあることを不満に思っていたそうな(普通、逆だけどね)。その後も続々とフランシュタイン物のポスターが...。やはり、フランケンシュタインはSFまで含めても怪奇物の王者だなあと。

cat people 1942 poster.jpgthe thing 1951 poster.jpgforbbidden planet 1956 poster.jpg 40年代では「キャット・ピープル」('42年)や「ミイラ男」シリーズ、50年代では「遊星よりの物体X」('51年)「大アマゾンの半魚人」('54年)などのポスターがあるのが楽しく、50年代では日本の「ゴジラ」('54年)のポスターもあれば、「禁断の惑星」('56年)「宇宙水爆線」('55年)のポスターもそれぞれ見開きで各種紹介されています(50年代の最後にきているのはヒッチコックの「サイコ」('60年)のポスター)。

「キャット・ピープル」('42年)/「遊星よりの物体X」('51年)/「禁断の惑星」('56年)

 「キャット・ピープル」はポール・シュレイダー監督、ナスターシャ・キンスキー主演で同タイトル「キャット・ピープル」('81年)としてリメイクされ(オリジナルは日本では長らく劇場未公開だったが1988年にようやく劇場公開が実現したため、多くの人がリメイク版を先に観たことと思う)、「遊星よりの物体X」は、ジョン・カーペンター監督により「遊星からの物体X」('82年)としてリメイクされています。

cat people 1942 01.jpgcat people 1982.jpg 前者は、オリジナルでは、猫顔のシモーヌ・シモンが男性とキスするだけで黒豹に変身してしまう主人公を演じていますが、ストッキングを脱ぐシーンとか入浴シーン、プールでの水着シーンなどは当時としてはかなりエロチックな方だったのだろうなあと。実際に黒豹になるナスターシャ「キャット・ピープル」.jpg場面は夢の中で暗示されているのみで、それが主人公の妄想であることを示唆しているのに対し、リメイク版では、ナスターシャ・キンスキーが男性と交わると実際に黒豹に変身します。ナスターシャ・キンスキーの猫女(豹女?)はハマリ役で、後日「あの映画では肌を露出する場面が多すぎた」と述懐している通りの内容でもありますが、構成がイマイチのため、ストーリーがだらだらしている上に分かりにくいのが難点でしょうか。

the thing 1951.jpgthe thing 1982.jpg 後者「遊星からの...」は、オリジナル「遊星よりの...」の"植物人間"のモチーフを更に"擬態"にまで拡げてアレンジ、犬の顔がバナナの皮が剥けるように割けるシーンや、首を切られて落ちた頭に足が生えてカニのように逃げていくシーンのSFXはスゴかった...。これを観てしまうと、オリジナルはやや大人し過ぎるか。リメイクの方がむしろジョン・W・キャンベルの原作『影が行く』に忠実な面もあり、オリジナルを超えていたかも。SFXを駆使して逆にオリジナルの良さを損なう作品が多い中、誰が「偽人間」なのかと疑心暗鬼に陥った登場人物らの心理をドラマとして丁寧に描くことで成功しています。

フェイ・レイ.jpg2フェイ・レイ.jpgキング・コング 1976 ジェシカ・ラング.jpg 「キング・コング」('33年)のリメイク、ジョン・ギラーミン監督の「キングコング」('76年)は、オリジナルは、ヒロイン(フェイ・レイ)に一方的に恋したコングが、ヒロインをさらってエンパイアステートビルによじ登り、コングの手の中フェイ・レイは恐怖のあまりただただ絶叫するばかりでしたが(このため、フェイ・レイ"絶叫女優"などと呼ばれた)、King Kong 1976 03.jpgリメイク版のヒロイン(ジェシカ・ラング)は最初こそコングを恐れるものの、途中からコングを慈しむかのように心情が変化し、世界貿易センタービルの屋上でヘリからの銃撃を受けるコングに対して「私といれば狙われないから」と言うまでになるなど、コングといわば"男女間的コミュにケーション"をするようになっています(そうしたセリフ自体は観客に向けての解説か?)。但し、「美女と野獣」のモチーフが、それ自体は「キング・コング」の"正統的"なモチーフであるにしてもここまで前面に出てしまうと、もう怪獣映画ではなくなってしまっている印象も。個人的には懐かしい映画であり、郵便配達は二度ベルを鳴らす 1981.jpg興業的にもアメリカでも日本でも大ヒットしましたが、後に観直してみると、そうしたこともあってイマイチの作品のように思われました。ジェシカ・ラングも「郵便配達は二度ベルを鳴らす」('81年)で一皮むける前の演技であるし...2005年にナオミ・ワッツ主演の再リメイク作品が作られましたが、ナオミ・ワッツもジェシカ・ラング同様、以降の作品において"演技派女優"への転身を遂げています。
 因みに、ボブ・ラフェルソン監督、ジャック・ニコルソン、ジェシカ・ラング主演の「郵便配達は二度ベルを鳴らす」はジェームズ・M・ケインの原作の4度目の映画化作品でしたが(それまでに米・仏・伊で映画化されている)、その中で批評家の評価は最も高く、個人的もルキノ・ヴィスコンティ監督版('42年/伊、出演はマッシモ・ジロッティとクララ・カラマイ)を超えていたように思います。
ジェシカ・ラング in「郵便配達は二度ベルを鳴らす」('81年)

 「蠅男の恐怖」('58年)のリメイク、デヴィッド・クローネンバーグ監督の「ザ・フライ」('86年)などは、原作の"ハエ男"化していく主人公の哀しみをよく描いていたように思われ、こちらはもオリジナル以上と言えるのではないかと思います。ラストは、視覚的には"蠅男"が"蟹男"に見えるのが難点ですが、ドラマ的にはしんみりさせられるものでした。

 見ていると眠れなくなってしまいそうな本であり、ファンには垂涎の一冊と言えますが、絶版中。発売時本体価格6,800円で、古本市場でも美麗本だとそう安くなっていないのではないかな。そこだけが難点でしょうか。

キングコング 髑髏島の巨神 日本ポスター.jpgキングコング 髑髏島の巨神 日本ポスター2.jpg (キングコングについては2017年に新進気鋭の監督ジョーダン・ヴォート=ロバーツによる「キングコング:髑髏島の巨神」('17年/米)が作られ、シリーズのスピンオフにあたる作品とのことだが、主役はあくまでキングコング。1973年の未知の島髑髏島がキングコング 髑髏島の巨神 01.jpg舞台で、一応、コングが島の守り神であったり、主人公の女性を救ったりと、オリジナルのコングに回帰している(一方で、随所にフランシス・フォード・コッポラ監督の「地獄の黙示録」('79年/米)へのオマージュが見られる)。コングのほかにいろいろな古代生物が出てくるが、コングも含め全部CG。コングはまずまずだが、天敵の大蜥蜴などは何だかアニメっぽかったように思えた(日本のアニメへのオマージュもキングコング 髑髏島の巨神 02.jpg込められているようだ)。本作のプレゼンテーションに参加した「シン・ゴジラ」('16年/東宝)の樋口真嗣監督は、本作のコングについて、'33年のオリジナル版キングコングのような人形劇の動きに近く、2005年版で描かれたような巨大なゴリラではなく、どちらかといえばリック・ベイカー(1976年版コングのスーツアクター)っぽいと語したそうだが、おそらくモーション・キャプチャを使っているせいだろう。同じCG主体でも、「ジュラシック・パーク」('93年/米)が登場した時のよう新奇性もなく(もうCG慣れしてしまった?)、その上、サミュエル・L・ジャクソンやオスカー女優のブリー・ラーソンが出ている割にはドラマ部分も弱くて、人間側の主人公が誰なのかはっきりしないのが痛い。)

キング・コング [DVD]
キング・コング 1933 dvd.jpgキング・コング 02.jpg「キング・コング」●原題:KING KONG●制作年:1933年●制作国:アメリカ●監督:メリアン・C・クーパー/アーネスト・B・シェードサキング・コング(オリジナル).jpgック●製作:マーセル・デルガド●脚本:ジェームス・クリールマン/ルース・ローズ●撮影:エドワード・リンドン/バーノン・L・ウォーカー●音楽:マックス・スタイナー●時間:100分●出演:フェイ・レイ/ロバート・アームストロング/ブルース・キャボット/フランク・ライチャー/サム・ハーディー/ノーブル・ジョンソン●日本公開:1933/09●配給:ユニヴァーサル映画●最初に観た場所:池袋・文芸座ル・ピリエ(84-06-30)(評価:★★★)●併映:「紀元前百万年」(ハル・ローチ&ジュニア)

紀元前百万年 dvd.jpg紀元前百万年 dvd.jpg「紀元前百万年」●原題:ONE MILLION B.C.●制作年:1940年●制作国:アメリカ●監督:ハル・ローチ&ジュニア●製作:マーセル・デルガド●脚本:マイケル・ノヴァク/ジョージ・ベイカー/ジョセフ・フリーカート●撮影:ノーバート・ブロダイン●音楽:ウェルナー・リヒャルト・ハイマン●時間:80分●出演:ヴィクター・マチュア/キャロル・ランディス/ロン・チェイニー・Jr/ジョン・ハバード/メイモ・クラーク/ジーン・ポーター●日本公開:1951/04●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:池袋・文芸座ル・ピリエ(84-06-30)(評価:★★★)●併映:「キング・コング」(ジュニアメリアン・C・クーパー/アーネスト・B・シェードサック) 「紀元前百万年 ONE MILLION B.C. [DVD]

恐竜100万年 [DVD]
恐竜100万年 dvd.jpg恐竜100万年 ラクエル・ウェルチ.jpg「恐竜100万年」●原ラクエルウェルチ71歳.jpg題:ONE MILLION YEARS B.C.●制作年:1966年●制作国:イギリス・アメリカ●監督:ドン・チャフィ●製作:マイケル・カレラス●脚本:ミッケル・ノバック/ジョージ・ベイカー/ジョセフ・フリッカート●撮影:ウィルキー・クーパー●音楽:マリオ・ナシンベーネ●時間:105分●出演:ラクエル・ウェルチ/ジョン・リチャードソン/パーシー・ハーバート/ロバート・ブラウン/マルティーヌ=ベズウィック/ジェーン・ウラドン●日本公開:1967/02●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:杉本保男氏邸 (81-02-06) (評価:★★★)  Raquel Welch age71

フランケンシュタインの花嫁 dvd.jpg「フランケンシュタインの花嫁」●原題:BRIDE OF FRANKENSTEIN●制作年:1935年●制作国:アメリカ●監督:ジェイムズ・ホエール●製作:カール・レームル・Jr●脚本:ギャレット・フォート/ロバート・フローリー/フランシス・エドワード・ファラゴー●撮影:ジョン・J・メスコール●音楽:フランツ・ワックスマン●時間:75分●出演:ボリス・カーロフ/エルザ・ランチェスター/コリン・クライヴ/アーネスト・セシガー●日本公開:1935/07●配給:ユニヴァーサル映画●最初に観た場所:渋谷ユーロ・スペース (84-07-21)(評価:★★★★)●併映:「フランケンシュタイン」(ジェイムズ・ホエール)
フランケンシュタインの花嫁[DVD]

CAT PEOPLE 1942 .jpgキャット・ピープル 1942 DVD.jpg 「キャット・ピープル」●原題:CAT PEOPLE●制作年:1942年●制作国:アメリカ●監督:ジャック・ターナー●製作:ヴァル・リュウトン●脚本:ドゥィット・ボディーン●撮影:ニコラス・ミュスラカ●音楽:ロイ・ウェッブ●時間:73分●出演:シモーヌ・シモン/ケント・スミス/ジェーン・ランドルフ/トム・コンウェイ/ジャック・ホルト●日本公開:1988/05●配給:IP●最初に観た場所:千石・三百人劇場(88-05-04)(評価:★★★)●併映:「遊星よりの物体X」(クリスチャン・ナイビー) 「キャット・ピープル [DVD]

シモーヌ・シモン(1910-2005)

「キャット・ピープル」●原題:CAT PEOPLE●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:ポール・シュレイダー●製作:チャールズ・フライズ●脚本:アラン・オームキャット・ピープル 1982.jpgズビー●撮影:ジョン・ベイリー●音楽:ジョルジキャット・ピープル dvd.jpgキャット・ピープル ポスター.jpgオ・モロダー(主題歌:デヴィッド・ボウイ(作詞・歌)●原作(オリジナル脚本):ドゥイット・ボディーン●時間:118分●出演:ナスターシャ・キンスキー/マルコムジョン・ハード/ アネット・オトウール/ルビー・ディー●日本公開:1982/07●配給:IP●最初に観た場所:新宿(文化?)シネマ2(82-07-18)(評価:★★☆)
キャット・ピープル [DVD]」/チラシ

禁断の惑星 dvd.jpg禁断の惑星 ポスター(東宝).jpg「禁断の惑星」●原題:FORBIDDEN EARTH●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:フレッド・マクラウド・ウィルコックス●製作:ニコラス・ネイファック●脚本:シリル・ヒューム●撮影:ジョージ・J・フォルシー●音楽:ルイス・アンド・ベベ・バロン●原作:アーヴィング・ブロック/アレン・アドラー「運命の惑星」●時間:98分●出演:ウォルター・ピジョン/アン・フランシス/レスリー・ニールセン/ウォーレン・スティーヴンス/ジャック・ケリー/リチャード・アンダーソン/アール・ホリマン/ジョージ・ウォレス●日本公開:1956/09●配給:MGM●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-04-29)(評価:★★★☆)
禁断の惑星 [DVD]」/パンフレット

宇宙水爆戦 dvd.jpg「宇宙水爆戦」.bmp「宇宙水爆戦」●原題:THIS ISLAND EARTH●制作年:1955年●制作国:アメリカ●監督:ジョセフ・ニューマン●製作:ウィリアム・アランド●脚本:フランクリン・コーエン/エドワード・G・オキャラハン●撮影:クリフォード・スタイン/デビッド・S・ホスリー●音楽:ジョセフ・ガ―シェンソン●原作: レイモンド・F・ジョーンズ●時間:86分●出演:フェイス・ドマーグ/レックス・リーズン/ジェフ・モロー/ラッセル・ジョンソン/ランス・フラー●配給:ユニバーサル・ピクチャーズ●日本公開:1955/12)●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-05-17)(評価:★★★☆)
宇宙水爆戦 -HDリマスター版- [DVD]

遊星よりの物体X3.jpg遊星よりの物体X dvd.jpg「遊星よりの物体X」●原題:THE THING●制作年:1951年●制作国:アメリカ●監督:クリスチャン・ナイビー●製作:ハワード・ホークス●脚本:チャールズ・レデラー●撮影:ラッセル・ハーラン●音楽:ディミトリ・ティオムキン●原作:ジョン・W・キャンベル「影が行く」●時間:87分●出演:マーガレット・シェリダン/ケネス・トビー/ロバート・コーンスウェイト/ダグラス・スペンサー/ジェームス・R・ヤング/デウェイ・マーチン/ロバート・ニコルズ/ウィリアム・セルフ/エドゥアルド・フランツ●日本公開:1952/05●配給:RKO●最初に観た場所:千石・三百人劇場(88-05-04)(評価:★★★)●併映:「キャット・ピープル」(ジャック・ターナー)
遊星よりの物体X [DVD]

遊星からの物体X.jpg遊星からの物体Xd.jpg遊星からの物体X dvd.jpg「遊星からの物体X」●原題:THE THING●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・カーペンター●製作:デイヴィッド・フォスター/ローレンス・ターマン/スチュアート・コーエン●脚本:ビル・ランカスター●撮影:ディーン・カンディ●音楽:エンニオ・モリコーネ●原作:ジョン・W・キャンベル「影が行く」●時間:87分●出演:カート・ラッセル/A・ウィルフォード・ブリムリー/リチャード・ダイサート/ドナルド・モファット/T・K・カーター/デイヴィッド・クレノン/キース・デイヴィッド●日本公開:1982/11●配給:ユニヴァーサル=CIC●最初に観た場所:三軒茶屋東映(84-07-22)(評価:★★★★)●併映:「エイリアン」(リドリー・スコット)
遊星からの物体X [DVD]
遊星からの物体X(復刻版)(初回限定生産) [DVD]

音楽:エンニオ・モリコーネ
    
King Kong 01.jpgking kong 1976.jpg「キングコング」●原題:KING KONG●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ギラーミン●製作:ディノ・デ・ラウレンティス●脚本:ロレンツォ・センプル・ジュニア●撮影:リチャード・H・クライン●音楽:ジョン・バリー●時間:134分●出演:ジェフ・ブリッジス/ジェシカ・ラング/チャールズ・グローディン/ジャック・オハローラン /ジョン・ランドルフ/ルネ・オーベルジョノワ/ジュリアス・ハリス/ジョン・ローン/ジョン・エイガー/コービン・バーンセン/エド・ローター ●日本公開:1976/12●配給:東宝東和●最初に観た場所:新宿プラザ劇場(77-01-04)(評価:★★★)

郵便配達は二度ベルを鳴らす [DVD].jpg郵便配達は二度ベルを鳴らす br.jpg「郵便配達は二度ベルを鳴らす」●原題:THE POSTNAN ALWAYS RINGS TWICE●制作年:1981年●制作国:アメリカ●監督:ボブ・ラフェルソン●製作:チャールズ・マルヴェヒル/ ボブ・ラフェルソン●脚本:デヴィッド・マメット●撮影:スヴェン・ニクヴィスト●音楽:マイケル・スモール●原作:ジェイムズ・M・ケイン「郵便配達は二度ベルを鳴らす」●時間:123分●出演:ジャック・ニコルソン/ジェシカ・ラング/ジョン・コリコス/マイケル・ラーナー/ジョン・P・ライアン/ アンジェリカ・ヒューストン/ウィリアム・トレイラー●日本公開:1981/12●配給:日本ヘラルド●最初に観た場所:三鷹オスカー (82-08-07)●2回目:自由ヶ丘・自由劇場 (84-09-15)(評価★★★★)●併映:(1回目)「白いドレスの女」(ローレンス・カスダン(原作:ジェイムズ・M・ケイン))●併映:(2回目)「ヘカテ」(ダニエル・シュミット)
郵便配達は二度ベルを鳴らす [DVD]」「郵便配達は二度ベルを鳴らす [Blu-ray]

ザ・フライ dvd.jpg「ザ・フライ」●原題:THE FLY●制作年:1986年●制作国:アメリカ●監督・脚本:デヴィッド・クローネンバーグ●製作:スチュアート・コーンフェルド●撮影:マーク・アーウィン●音楽:ハワード・ショア●原作:ジョルジュ・ランジュラン「蠅」●時間:87分●出演:ジェフ・ゴールドブラム/ジーナ・デイヴィス/ジョン・ゲッツ/ジョイ・ブーシェル●日本公開:1987/01●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:大井武蔵野舘 (87-07-19)(評価★★★★)●併映:「未来世紀ブラジル」(テリー・ギリアム)
ザ・フライ <特別編> [DVD]

キングコング 髑髏島の巨神24.jpgキングコング 髑髏島の巨神es.jpgキングコング 髑髏島の巨神 海外.jpg「キングコング:髑髏島の巨神」●原題:KONG:SKULL ISLAND●制作年:2017年●制作国:アメリカ●監督:ジョーダン・ヴォート=ロバーツ●脚本:ダン・ギルロイ/マックス・ボレンスタイン/デレク・コノリー●原案:ジョン・ゲイティンズ/ダン・ギルロイ●製作:トーマス・タル/ジョン・ジャシュー/アレックス・ガルシア/メアリー・ペアレント●撮影:ラリー・フォン●音楽:ヘンリー・ジャックマン●時間:118分●出演:トム・ヒドルストン/キングコング髑髏島の巨神ド.jpgブリー・ラーソン キング・コング.jpgサミュエル・L・ジャクソン/ジョン・グッドマン/ブリー・ラーソン/ジン・ティエン/トビー・ケベル/ジョン・オーティス/コーリー・ホーキンズ/ジェイソン・ミッチェル/シェー・ウィガム/トーマス・マン/テリー・ノタリー/ジョン・C・ライリー●日本公開:2017/03●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:OSシネマズ ミント神戸 (17-03-29)(評価★★☆)
旧神戸新聞会館9.jpgミント神戸6.jpgミント神戸.jpgOSシネマズ ミント神戸 神戸三宮・ミント神戸(正式名称「神戸新聞会館」。阪神・淡路大震災で全壊した旧・神戸新聞会館跡地に2006年10月完成)9F~12F。全8スクリーン総座席数1,631席。

阪神・淡路大震災で廃墟と化した旧・神戸新聞会館(1995.2.3大木本美通氏撮影)

Raquel Welch
Raquel Welch RPT 0005.jpgRaquel Welch RPT.jpgRaquel Welch RPT 0006.jpg




 
 
 
  
《読書MEMO》
●主な収録作品
【10~20年代】エッセイ=ロバート・ブロック
カリガリ博士/吸血鬼ノスフェラトゥ/巨人ゴーレム/ロスト・ワールド/猫とカナリヤ/メトロポリス/狂へる悪魔/ダンテ地獄篇/バット/オペラの怪人/真夜中すぎのロンドン/プラーグの大学生/他
【30年代】エッセイ=レイ・ブラッドベリ
魔人ドラキュラ/フランケンシュタイン/フランケンシュタインの花嫁/透明人間/モルグ街の殺人/悪魔スヴェンガリ/M/怪人マブゼ博士/倫敦の人狼/猟奇島/恐怖城/怪物団/肉の蝋人形/キング・コング/オズの魔法使/ミイラ再生/獣人島/バスカヴィル家の犬/他
【40年代】エッセイ=ハーラン・エリスン
狼男の殺人/バグダッドの盗賊/猿人ジョー・ヤング/キャット・ピープル/ミイラの復活/謎の下宿人/スーパーマン/夢の中の恐怖/凸凹フランケンシュタインの巻/美女と野獣/バッタ君町に行く/死体を売る男/猿の怪人/他
【50年代】エッセイ=ピーター・ストラウブ
遊星よりの物体X/地球最後の日/宇宙戦争/大アマゾンの半魚人/原子怪獣現わる/ゴジラ/放射能X/タランチュラの襲撃/禁断の惑星/宇宙水爆戦/海底二万哩/蠅男の恐怖/吸血鬼ドラキュラ/ミイラの幽霊/狩人の夜/空の大怪獣ラドン/ボディ・スナッチャー 恐怖の街/シンドバッド7回目の航海/戦慄!プルトニウム人間/他
【60年代】エッセイ=クライヴ・パーカー
サイコ/血だらけの惨劇/ローズマリーの赤ちゃん/忍者と悪女/血塗られた墓標/吸血狼男/テラー博士の恐怖/ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/タイム・マシン/恐竜100万年/猿の惑星/2001年宇宙の旅/怪談/鳥/何がジェーンに起ったか?/華氏451/バーバレラ/博士の異常な愛情/ミクロの決死圏/血の祝祭日/他

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往年の大物俳優のトリビア集。洋画ファンには気軽に楽しめる本。 

ハリウッド・スキャンダル.jpg 『ハリウッド・スキャンダル―ちょっと気になる話 (現代教養文庫)

 プレイボーイ誌に連載されたゴシップ欄の集大成の抄訳で(原題"CELEBRITY TRIVIA:A Collection of Little‐Known Facts About Well‐Known People"、原著刊行は1980年)、ハリウッド映画のスターを中心に、映画監督や歌手などのトリビアを、編訳者が選んだもの。

 この翻訳が出て間もなくして読んだのですが、振り返ってみれば、出てくるのは大物スター、それも「超大物クラス」ではあるものの、そうドロドロした話ばかりでなくいい話もあったりして、洋画ファンには気軽に楽しめる本でした(版元が無くなっているので、新たに入手しようとすれば古書市場からになるが)。

ピーター・フォーク2.jpg 個人的に一番印象に残った話は、ピーター・フォークのエピソードで、彼は3歳の時に悪性の腫瘍のため右目を取り、代わりに義眼を入れていたのですが、12歳の時、野球の試合で二塁打を三塁打にしようと三塁にかけ込んだらアンパイアがアウトにしたので、「どこ見てんだヨォ。お前のがよっぽどこれが必要じゃねぇかァ?」と、おもむろに義眼を取り出して怒鳴ったことがある―というもの。

 気が強かったんだなあ。因みに、ベテラン性格俳優のトーマス・ミッチェルが1962年にブロードウェイの舞台で「コロンボ副隊長」を演じたのを、TV作家のリチャード・レヴィンソンとウィリアム・リンクがTV「刑事コロンボ」にするため、歌手のビング・クロスビーにコロンボ役の白羽を立てたもののクロスビーの都合がつかず、それでピーター・フォークにコロンボ役が廻ってきたとのこと。

Gregory Peck/Gary Cooper
グレゴリー・ペック .jpgゲイリー・クーパー .jpg この手の話は本書の中で他にも幾つか紹介されていて、グレゴリー・ペックは「真昼の決闘」の主役を降りたが、「駅馬車」(1939)の主役を降りたゲイリー・クーパーが代わりに主役をやり、アカデミー主演男優賞を獲得した―。因みに、ウィキペディアによれば製作者のスタンリー・クレイマーはこの映画を「誰も守ろうとするガッツが無かったので滅んでいった町についての話だ」と語ったといい、別の本で、ジョン・ウェインなどは同じような理由でこの作品が好きではなかったというような話を読んだことがあります(作家の村上春樹氏が『村上さんのところ』('15年/新潮社)真昼の決闘 ド.jpgで「何度も観返している映画ベスト3はなんですか?」との問いに、「『静かなる男』と、フレッド・村上さんのところs.jpgジンネマンの『真昼の決闘』です。四面楚歌みたいな状況に置かれたときに(何度かそういうことがありました)、よく観ました。見終わると、「僕もがんばらなくちゃな」という気持ちになれます。どちらもとてもよくつくられた映画です。何度観ても飽きません」と答えていた。同氏によれば、アメリカのホワイトハウスの映画室で、もっとも数多く大統領に観られた映画は「真昼の決闘」だという話を聞いたことがあるそうな)

ユル・ブリンナー.jpg 「マイ・フェア・レディ」のヒンギス教授役で知られるレック・ハリスンは、ミュージカル「王様と私」の"王様"役を断り、代わりに初舞台を飾り、大成功を収めたのが新人ユル・ブリンナーとのこと。当然のことながら、そのまま映画でも"王様"を演じたユル・ブリンナーは、アカデミー主演男優賞を受賞しています("アンナ"役のデボラ・カーもゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞)。

 ジェームズ・ディーンはテレビ出演のために映画「銀の盃」(1955)の出演を断ったが、ポール・ニューマンがその代役をやり、ポール・ニューマンのデビュー作となったとのこと(この映画は海外ではDVD化されているが、日本では現在['12年]リリースされていない)。

East of Eden .jpg ポール・ニューマンは、「エデンの東」(1955)では逆にジェット・リンク役を(これは「シェーン」のアラン・ラッドが役を降りたために空いてしまっていたのだが)ジェームズ・ディーンにもって行かれ涙をのむが、一方、「傷だらけの栄光」(1956)はジェームズ・ディーンが主役をやるはずだったのが、'55年9月に彼が自動車事故死したため、ポール・ニューマンが代わりにやることになった―。

ロバート・レッドフォード.bmp ジョン・ガ―フィールドが「欲望という名の電車」(1951)のスタンリー・コワルスキー役を断ったために、その役が廻ってきたのが明日に向かって撃て 0 1.jpgマーロン・ブランド。そのマーロン・ブランドは、「明日に向かって撃て!」(1969)でポール・ニューマンと共演するはずだったが、当時起きたキング牧師暗殺事件に衝撃を受けてその気になれず、結局代わりに大役を射止めたのがロバート・レッドフォードであるとのこと(これとは別に、ポール・ニューマンと共同で脚本を買い取ったスティーブ・マックイーンがブッチ役で、ポール・ニューマンがサンダンス役の予定だったのが、スティーブ・マックイーンが都合により出演しなくなったため、ポール・ニューマンがブッチ役に回り、当時無名のロバート・レッドフォードがサンダンス役に抜擢されたとの話もある)。

『追憶』(1973) 13.jpg卒業 [DVD] 2L.jpg そのロバート・レッドフォード主演の三大作品「スティング」「追憶」「華麗なるギャツビー」の何れも、ウォーレン・ビーティが主演を断ってロバート・レッドフォードの所に廻されたもの。

 ロバート・レッドフォード自身も、「卒業」(1967)のベンジャミン・ブラッド役を断っていて、その役はダスティン・ホフマンに廻った―(ロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマンでは全然雰囲気違う感じがするけれど)。

 ロバート・レッドフォードは「バージニア・ウルフなんか恐くない」(1966)のニック役、「ローズマリーの赤ちゃん」(1968)のガイ・ウッドハウス役、「ある愛の詩」(1970)のジャッカルの日 パンフ2.jpgある愛の詩 1970.jpgRosemary's Baby2.jpgオリバー・バレット役、「ジャッカルの日」(1973)のジャッカル役を降りているとのことです(「ローズマリーの赤ちゃん」はジョン・カサヴェテス、「ある愛の詩」はライアン・オニール、「ジャッカルの日」はエドワード・フォックスがそれぞれ主演することになった)。

 最終的に主役俳優が決まるまでいろいろあったんだなあと、改めて思いました。

真昼の決闘.jpg「真昼の決闘」●原題:HIGH NOON●制作年:1952年●制作国:アメリカ●監督:フレッド・ジンネマン●製作:ス真昼の決闘 DVD.jpgタンリー・クレイマー/カール・フォアマン●脚本:カール・フォアマン●撮影:フロイド・クロスビー●音楽:ディミトリ・ティオムキン●原案:ジョン・W・カニンガム●85分●出演:ゲイリー・クーパー/グレイス・ケリー/トーマス・ミッチェル/ケティ・フラド/ロイド・ブリッジス/ロン・チェイニー・ジュニア/イアン・マクドナルド/シエブ・ウーリー/リー・ヴァン・クリーフ/ロバート・ウィルク/ジャック・イーラム●日本公開:1952/09●配給:ユナイテッド・アーチスツ日本支社=松竹●最初に観た場所:池袋・文芸座ル・ピリエ(83-01-10)(評価:★★★☆)
真昼の決闘 [DVD]

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娼婦たちの田舎行「メゾン テリエ」もいいが、「他三編」も短い中に人生を投影させていていい。

メゾン・テリエ モーパッサン 岩波文庫旧版.jpg メゾン テリエ.JPGメゾン・テリエ モーパッサン 岩波文庫 新版.jpg 快楽 Le plaisir.jpg
『メゾン テリエ―他三編』[岩波文庫・旧版]『メゾンテリエ 他3編 改版 (岩波文庫)』 「メゾン テリエ」―「快楽」(マックス・オフィルス監督)ジャン・ギャバン(中央)

 ノルマンディーの田舎町フェカンで、メゾンテリエ(テリエの家)というのは、つまりテリエ夫人が5人の女を使って営む娼家である。町の名士たちも毎晩のように通うという繁盛ぶり。ところがある晩のこと、「初聖体のため休業仕候」と貼り紙を出して突然の休業―。数あるモーパッサン(1850‐93)の中短篇小説のうち屈指の名作(「岩波ブックサーチャー」より抜粋).

 「メゾン テリエ」は1881年にモーパッサンが発表した中編小説で、娼家が閉まっていたのは、張り紙にあった通り、マダムが弟の娘で彼女が名付け親になっている少女の初聖礼拝受式に参席するため、家の女達を連れて故郷ルール県の村ヴィルヴィルへ出かけてしまったためです。

 フェカンも田舎町だが、ヴィルヴィルは田園地帯にある更なるド田舎。村の教会に突然の美しい(?)女達が現れたために、素朴な村人達は都会の貴婦人が参列したのかと勘違いし、一方、式において清楚な少女の姿を見た娼婦達は、過ぎし日を思い起して思わず泣き出してしまい、教会は、異様な感動に包まれ、それがまた、村人達の感激を引き起こすという―もともと、女達に店を任せておけないから、やむなく全員を引き連れて式に出ることになったのが、彼女らにとっても想い出深いイベントになったという展開がいいです。

 村人はマダムが町で成功していることは噂に知っていても、それが娼家の経営によるものとは知らず、また娼婦らを"貴婦人"と思い込んでしまったのは、現代以上に都会と田舎の情報格差が大きかったせいもあるのではないかと、再読して思いました(現代でも、田舎に帰れば実態とは異なり、「一流企業のOL」をしていることになっているというのはあるかもしれないが)。

 岩波文庫版はこの他に、「聖水授与者」「ジュール伯父」「クロシェット」の3篇の短篇を収めていますが(4篇とも挿絵入り)、「聖水授与者」は、5歳で行方不明になった息子を探す老夫婦を描いた話、「ジュール伯父」は、アメリカに渡った叔父が成功して戻って来ることに全ての希望を託す家族の話で、共に"邂逅"がモチーフになっているものの、結末は明暗を分けています。

 大人になった語り手が少年の頃の思い出を語るというスタイルで「ジュール伯父」と共通する「クロシェット」は、「私」に優しくしてくれていた"ばあや"が亡くなった直後に医師から聞かされた、彼女の若い頃の恋愛事件の話で、壮絶と言っていいくらいに純真な話ですが、何れも極々少ない紙数の中に、家族や個人の人生がくっきり投影されているのが素晴らしいです。

 訳者の河盛好蔵は「メゾン テリエ」に通底するものがあるということからこの3篇を選んだとのことですが、感動やペーソスある一方で「ジョゼフ・ダヴランシュが貧しい施しを求める老人に5フラン銀貨を恵む理由」といったエスプリも効いていて、河盛好蔵らしい選び方のように思いました。

 表題作「メゾン テリエ」は、マックス・オフュルス「快楽(Le Plaisir)」('52年/仏)という映画の中で映像化しており、娼婦達が田園地帯を行く様を撮った光と影の交錯する映像は、ジャン・ルノワール(印象派の画家ピエール=オーギュスト・ルノワールの次男)の「ピクニック」('36年/仏)の"中産階級版"ならぬ"娼婦版"という感じ(因みに、「ピクニック」の原作もモーパッサンの短篇(「野あそび」)。

メゾン テリエ 快楽 .jpgメゾン テリエ 快楽.jpg 「メゾン テリエ」では、唯一、一行の正体が娼婦達であることに気付いているっぽい馬丁をジャン・ギャバンが演じていますが、ギャバンのフォルム・ノワールのイメージとは裏腹に、小説以上に気のいい男として描かれています。

LE PLAISIR 1952 仮面の男.jpg 「快楽」は、「メゾン テリエ」の他に、「仮面」と「モデル快楽 モーパッサン.jpg」という、同じくモーパッサンの短篇を原作とした作品から成るオムニバス映画であり、「仮面(の男)」は、美男の仮面を付けてまでも終生女を漁ってきた老人と、この女好きの夫に一生を捧げてきた妻の話、「モデル」は、画家がモデル快楽 仮面4.jpgと深い仲になるも彼女に飽きてきて別れようとすると、モデルの方は自殺を仄めかし、その結果――(ここでも"脚を折る"までの一途の恋という「クロシェット」と同じモチーフが使われている)。
マックス・オフュルス「快楽」('52年/仏)

 「快楽」は'79年に日仏会館で、「ピクニック」は'80年に京橋フィルムセンターでそれぞれ観て、「快楽」に関して言えば、べルイマンの艶笑喜劇に通じるものを感じましたが、むしろ、ベルイマンよりモーパッサンの方が本家でしょうか。「メゾン テリエ」などのイメージが掴めたのは良かったのですが、本当はもっと綺麗な映像であるはずなのが、フィルムがやや劣化状態だったのが残念でした。

ジャン・ルノワール「ピクニック」.jpg 一方の「ピクニック」は、DVD版の冒頭には「1860年の夏の日曜日、パリの金物商デュフール氏は妻と義母と娘と未来の婿養子アナトールを連れて隣の牛乳屋から借りた馬車でピクニックに出かけた」というのが字幕が出ますが、これは未完の作品だから、説明的にこうした字幕が付いているのでしょう(DVD版は、40分(内、オリジナルは35分)の本編に86分の「NG集」と15分の「リハーサル」が付いている)。

ジャン・ルノワール「ピクニック」('36年/仏)

ジャン・ルノワール「ピクニック」2.jpg レストランを見つけた金物商(アンドレ・ガブリエロ)の一行は、そこでピクニックを楽しむことにし、レストランにはボート遊びに来たアンリ(ジョルジュ・ダルヌー)とルドルフ(ジャック・B・ブリピクニックqN.jpgュニウス)がいて、アンリはブランコをこぐ娘アンリエット(シルヴィア・バタイユ)に魅了され、父親と婿養子が釣りに行っている間に、ルドルフと共にアンリエットとその母親(ジャーヌ・マルカン)をそれぞれボートに誘い出して別々のボートで川に漕ぎ出し、陸に上がってそれぞれが関係を持つ―。

ルノワール「ピクニック」.jpg 数年後、アンリが思い出の場所を訪れるとアンリエットがいて、その傍らには夫となったアナトールが寝ている。二人は、お互いを忘れたことがないという短い会話を交わすが、アナトールが起きたために別れる―。

 映画では、夫婦であるアンリエットとアナトールが最後ボートで去っていく時に、ボートを漕いでいるのが女性であるアンリエットの方であったりと(逞しいアンリに比べアナトールはヤサ男)、原作のアイロニーを更に強めている感もありますが、一方で、映像化するピクニックain.jpgことによってどろっとしてしまいそうな話(考えてみれば結構エロチックな話でもある)を、父オーギュスト・ルノワールの印象派絵画をそのまモノクロ映像したような光と影の映像美で包み込み、美しく仕上げています(ヒロインのアンリエットを演じたシルヴィア・バタイユは哲学者で『眼球譚』の作者でもあるジョルジュ・バタイユの妻)。

ジャン・ルノワール「ピクニック」タイトル.bmp 映画にしてしまうとストーリーにはやや物足りなさもありますが(これでも短編である原作を相当膨らませてはいる)、ジャン・ルノワール自身、自伝の中でこの作品について、「私にとって理想は、まったく主題のない、ひとえに監督の感覚に基づく、その感覚を俳優たちが一般公衆にわかる形に表現してみせた、そんな映画であった」と述べているように(「水」抜きの映画など、私には考えられないとも言っている)、こうした映像美の追求ががこの作品の最大の狙いだったのかも知れません。
Le Plaisir/Le Plaisir (DVD, 2008, Criterion Collection)
Le Plaisir.jpgLE PLAISIR 1952.jpg快楽 輸入版dvd.jpg「快楽」●原題:LE PLAISIR●制作年:1952年●制作国:フランス●監督:マックス・オフュルス●脚本:ジャック・ナタンソン/マックス・オフュルス●撮影:クリスチャン・マトラ/フィリップ・アゴスティニ●音楽:ジョエ・エイオス●原作:ギ・ド・モーパッサン「仮面」「メゾン 快楽 ポスター.jpgテリエ」「モデル」●時間:99分●出演:クロード・ドーファン/ガビ・モルレ/マドレーヌ・ルノー/ジネット・ルクレール/ダニエル・ダリュー/ピエール・ブラッスール/ジャン・ギャバン/ジャン・セルヴェ/ダニエル・ジェラン/シモーヌ・池坊お茶の水学院.jpg日仏会館 旧建物 お茶の水 1960~1995.jpgシモン●日本公開:1953/01●配給:東宝●最初に観た場所:御茶ノ水・日仏会館(79-04-26)(評価:★★★) 旧・日仏会館 1960(昭和45)年、現JRお茶の水駅付近に竣工、1995(平成7)年閉館(現、池坊お茶の水学院)、恵比寿へ移転
 
ジャン・ルノワール「ピクニック」dvd.jpgピクニックelle.jpg「ピクニック」●原題:PARTIE DE CAMPAGNE●制作年:1952年●制作国:フランス●監督・脚本:ジャン・ルノワール●製作:ピエール・ブロンベルジェ●撮影:クロード・ルノワール●音楽:ジョゼフ・コスマ●原作:ギ・ド・モーパッサ「野あそび」●時間40分●出演:シルヴィア・バタイユ/ジョルジュ・ダルヌー(ジョルジュ・サン=サーンス)/ジャック・B・ブリュニウス/アンドレ・ガブリエロ/ジャーヌ・マルカン/ガブリエル・ファンタン/ポール・タン●日本公開:1977/03●配給:フランス映画社●最初に観た場所:京橋フィルムセンター(80-02-15)(評価:★★★★)●併映:「素晴しき放浪者」(ジャン・ルノワール)
ジャン・ルノワール「ピクニック [DVD]

【1940年文庫化・1976年改版[岩波文庫(『メゾン テリエ 他三編』(河盛好蔵:訳))]/1951年再文庫化[新潮文庫(『脂肪の塊・テリエ館』(青柳瑞穂:訳))]/1955年再文庫化[角川文庫(『メーゾン・テリエ―他三篇』(木村庄三郎:訳))]/1971年再文庫化[講談社文庫(『脂肪の塊・テリエ館』(新庄嘉章:訳))]】

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小市民的な役がハマっていた小林桂樹。「清張原作」と「橋本忍脚本」を比べてみるのもいい。

黒い画集 あるサラリーマンの証言.gif黒い画集 あるサラリーマンの証言 dvd.jpg  黒い画集 新潮文庫.jpg 黒い画集.jpg  黒い画集 あるサラリーマンの証言.jpg
黒い画集 あるサラリーマンの証言 [DVD]」『黒い画集 (新潮文庫)
「黒い画集 あるサラリーマンの証言」(VHS/絶版)

証言0.bmp ある会社の課長(小林桂樹)が妻に秘密で会社の同じ課の部下だった女性(原佐和子)を愛人として囲っていて、ある日、新大久保の愛人に住まわせているアパートでの密会の帰りに、自宅近所に住む保険外交員の男(織田政雄)と新大久保駅付近で偶然出会ってすれ違いざまについ目礼を交わしてしまうということがあった。その何日か後、その外交員は全く別の場所で起きた若妻殺しの容疑者として逮捕され、警察が課長のところに職質に来るが、課長は何も知らないとシラを切る―。

証言1.bmp その保険外交員が犯人でないことは、愛人との密会の際に(それがちょうど事件が起きた日でもあった)彼に出会った課長にはわかっているわけですが、保険外交員のアリバイ立証の求めにより法廷証言を求められても、課長は自らの保身のために外交員とは会わなかったと否認してしまったわけで、しかしながら、愛人についつい彼にはアリバイがあるとの事実を話したのが人づてに伝わり、事件を担当している弁護士の耳にそれが入ります。そして―。

証言2.bmp 映画の前半部分は原作と同じですが、原作は文庫で20ページほどしかなく、課長の秘密が外部に漏れた後の話は簡潔な後日譚で締め括られているのに対し、映画はその後の話として原作を膨らませており、愛人の若い恋人の男がヤクザに殺され、愛人との関係をネタに彼に強請られていた課長が若者殺害の容疑者になるという"原作には無い事件"を1つ絡ませています(愛人に恋人がいて、その恋人の男に愛人が課長の秘密を喋ってしまうのは原作と同じだが、第2の殺人事件は原作には無い)。

 昨年('10年)9月に亡くなった小林桂樹主演。小林桂樹はそれまでもサラリーマンものに多く出ているだけに、こうした小市民的な役がハマっているなあと("小市民"でも愛人を囲うことができる点に、古き良き(?)時代を思わせるが)。

 ヤクザ役の小池朝雄とか刑事役の西村晃とかも渋い演技を見せており、この作品はビデオも絶版になっていて観る機会が限られると思いますが、時々CS放送などで放映されることがあるので、一度、「松本清張の原作」と「橋本忍の脚本」との比較という意味で観てみるのもいいかと思います。

小林桂樹/原佐和子

「黒い画集 あるサラリーマンの証言」(VHS).jpg 因みに、松本清張本人が評価していた映画化作品は「張込み」('58年/松竹)、「黒い画集 あるサラリーマンの証言」、「砂の器」('78年/松竹)だけであったといい(3作とも脚本は橋本忍)、特に「張込み」と「黒い画集 あるサラリーマンの証言」については、 「映画化で一番いいのは『張込み』『黒い画集 あるサラリーマンの証言』だ。両方とも短編小説の映画化で、映画化っていうのは、短編を提供して、作る側がそこから得た発想で自由にやってくれるといいのができる。この2本は原作を超えてる。あれが映画だよ」と述べたとのことです。(白井佳夫・川又昴対談「松本清張の小説映画化の秘密」(『松本清黒い画集 あるサラリーマンの証言      .jpg張研究』第1号(1996年/砂書房)、白井佳夫・堀川弘通・西村雄一郎対談「証言・映画『黒い画集・あるサラリーマンの証言』」(『松本清張研究』第3号(1997年/砂書房))。

黒い画集 あるサラリーマンの証言    .jpg「黒い画集 あるサラリーマンの証言」●制作年:1960年●監督:堀川弘通●製作:大塚和/高島幸夫●脚本:橋本忍●撮影:中井朝一●原作:松本清張「証言」●時間:95分●出演:小林桂樹/中北千枝子/平山瑛子/依田宣/原佐和子/江原達治/中丸忠雄/西村晃/平田昭黒い画集 あるサラリーマンの証言」新大久保.jpg彦/小文芸坐.jpg池朝雄/織田政雄/菅井きん/小西瑠美/児玉清/中村伸郎/小栗一也/佐田豊/三津田健/西村晃/、平田昭彦●公開:1960/03●配給:東宝●最初に観た場所:池袋文芸地下 (88-01-23)(評価★★★☆)

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よくまあ18歳でこんなの書いたなあという感じはする。新訳は朝吹訳のトーンを継承?

悲しみよこんにちは 新潮文庫.jpg 悲しみよこんにちは 新潮文庫 河野.jpg悲しみよこんにちは 映画0.bmp フランソワーズ・サガン 1.jpg
悲しみよこんにちは (新潮文庫)』(朝吹登水子:訳)『悲しみよこんにちは (新潮文庫)』(河野万里子:訳)/映画「悲しみよこんにちは」(1957)/Françoise Sagan (photographed above by Sabine Weiss, 1954)

悲しみよこんにちはbonjour-tristesse.jpg 主人公のセシルは、寡(やもめ)の父レーモンとコート・ダジュールの別荘で17歳の夏を過ごしていたが、その別荘に亡き母の友人のアンヌがやって来る。セシルも最初は聡明で美しいアンヌを慕うが、アンヌが父と結婚する気配を見せ始め、母親然としてセシルに勉強のことやボーイフレンドとのことを厳しく言い始めると、父との気楽な生活が続かなくなり、父をアンヌに取られるのではないかという懸念から、彼女はアンヌに反感を抱くようになる。やがて彼女は父とアンヌの再婚を阻止する計画を思いつく―。

 フランソワーズ・サガン(1935-2004)が1954年、18歳で発表したデビュー作で、父親と聡明で魅力的な女性との再婚を、父の愛人と自分の恋人を使って妨害し、最後はその相手の女性を死に追いやってしまうという、何だか陰湿な話であるようにも思えますが、ドロドロした恋愛小説と言うより、しゃれた青春小説のように読めた印象があります。

 新潮文庫の朝吹登水子(1917‐2005)の名訳で知られますが、2009年に河野万里子氏(1959- )の新訳が新潮文庫に加わり、これを読むと確かに現代的で読み易く、やはり朝吹訳はやや古風な感じがすることは否めないものの、それでも45年もの時間差はあまり感じられず、それだけ朝吹訳が当時としては"今風"にこなれていたということでしょうか(河野訳自体が朝吹訳のトーンを意識して継承しているようにも思えた)。

 今回読み直してみて、よくまあ18歳でこんなの書けるなあと改めて感心しました。大人の世界の出来事が子供から大人になりかけている少女に与える影響を描いているわけですが、大人たちの心理の内面には直接踏み込んでいないのが成功している理由かも。それにしても、18歳にして17歳の少女をここまで対象化して描いているのはやはり並の資質ではなかった...。

悲しみよこんにちは 映画 1957.jpg悲しみよこんにちは ちらし.jpg サスペンスフルであるとも言えるストーリーは、オットー・プレミンジャー監督の「天使の顔」(' 52年/仏)と似ているという話がありますが、そのオットー・プレミンジャー監督によって1957年にアメリカ映画化されています。
 映画は、現在の部分がモノクロで回想部分がカラーという作りなっていますが、南仏ニースの風景がたいん美しい(まるで観光映画)。監督が見出した新人ジーン・セバーグが主演、映画もヒットし、"セシルカット"と呼ばれるボーイッシュな髪形が流行したりもしました(その後ゴダール作品などで活躍したJ・セバーグだったが、1979年に自殺とみられる死を遂げている)。

「悲しみよこんにちは」1976年リバイバル公開時チラシ
Bonjour Tristesse [VHS] [Import]

ミレーヌ・ドモンジョ.jpg 映画では、恋多き父親をデイヴィッド・ニーヴン(戦争映画などとは違ったいい味出している。1983年に筋萎縮性側索硬化症で亡くなった)、前の愛人をミレーヌ・ドモンジョ(右写真:アメリカ映画にはこれが初出演)、新しい恋人をデボラ・カー(物語の結末上、個人的には、1982年にコート・ダジュールで自動車事故死したグレイス・ケリーと何となくダブる)が演じていますが、う~ん、役者は皆いいのですが、何となく原作悲しみよこんにちは r.jpgの雰囲気と違うような...(フランソワ・トリュフォーは、「映画がサガンを裏切っているかどうかなんて問題じゃない。プレミンジャーやセバーグにサガンが値するかどうかが問題なのだ」として、一方的に映画の方の肩を持っているが)。
デビッド・ニーブン/ミレーヌ・ドモンジョ/ジーン・セバーグ/デボラ・カー

フランソワーズ・サガン 2.jpg サガン自身はその後も佳作を産み出すものの、セレブとのパーティ三昧、生死を彷徨うスポーツカー事故、ドラッグ所持での有罪判決、ミッテラン元大統領との親密な交際、晩年の貧困の原因となったギャンブル等々、むしろゴシップ・メーカーとして目立った存在でした。

 そのサガンの人生を描いた「サガン―悲しみよこんにちは」('08年/仏)がディアーヌ・キュリス監督によって撮られ、個人的には観ていませんが、主演のシルヴィー・テステューは、サガンに雰囲気が似ていると評判のようです。

映画「悲しみよこんにちは」(1957)より
悲しみよこんにちは 映画10.bmp悲しみよこんにちは 映画3.jpg悲しみよこんにちは 映画4.jpg悲しみよこんにちは 映画5.jpg悲しみよこんにちは 映画6.jpg悲しみよこんにちは 映画7.jpg悲しみよこんにちは 映画8.jpg悲しみよこんにちは 映画2.jpg悲しみよこんにちは 映画1.jpg

悲しみよこんにちは 海外版ポスター.jpg悲しみよこんにちは 映画 1957 dvd.jpg「悲しみよこんにちは」●原題:BONJOUR TRISTESSE●制作年:1957年●制作国:アメリカ●監督・製作:オットー・プレミンジャー●脚本:アーサー・ローレンツ●撮影:ジョルジュ・ペリナール●音楽:ジョルジュ・オーリック●原作:フランソワーズ・サガン●時間:90分●出演:デボラ・カー/デイヴィッド・ニーヴン/ジーン・セバーグ/ミレーヌ・ドモンジョ/ジェフリー・ホーン/ジュリエット・グレコ/ワルター・キアーリ/ジーン・ケント●日本公開:1958/04●配給:コロムビア●最初に観た場所:有楽町・スバル座(80-06-06)(評価:★★★)●併映:「シベールの日曜日」(セルジュ・ブールギニョン)悲しみよこんにちは [DVD]

サガン 悲しみよこんにちは.jpg 「サガン―悲しみよこんにちは」(2008)

【2008年再文庫化(新潮文庫)】

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「外套・鼻」ともに先駆的。「外套」はロシアでは映画やアニメに。「鼻」もアニメやオペラに。

外套・鼻 岩波文庫.gif外套 岩波文庫 2.jpg 外套 ポスター.png 外套 バターロフ 1シーン.jpg アレクセイエフ 鼻.jpg 
外套・鼻 (岩波文庫)』/ソ連映画アレクセイ・バターロフ「外套」チラシ・1シーン/アレクサンドル・アレクセイエフ「鼻」

 下級官吏アカーキイ・アカーキエヴィッチ・バシマチキンは、出世栄達に無関係の世界で、周囲から蔑まれながらも役所仕事(文書の清書)に精を出す男で、傍から見れば冴えないその服装や外見も自身は気にとめていない。そんな彼がある日、着古した外套を新調せざるを得なくなり、最初は面倒に思った彼だったが、一念発起して新しい外套を手に入れた時からその人生観は変わり、それまで関心のなかった役所以外のニコラーイ・ヴァシーリヴィチ・ゴーゴリ(Nikolai Gogol).jpg世界も、外套と同様にきらきら輝いたものに見えてきたのだった。ところがその矢先―。

 「外套」はニコライ・ゴーゴリ(1809- 1852)の中編小説で、1840年に書かれ1842年に発表された作品。ある種"怪奇譚"でもあるこの作品の結末を知る人は多いと思います。

ニコラーイ・ヴァシーリヴィチ・ゴーゴリ(Nikolai Gogol)

 うだつの上がらない九等書記官を主人公に、疎外された人間の哀しみをペーソスたっぷりに、時にユーモアと怪奇を交えて描いていますが、やはり、それまで貴族社会を舞台にした小説が多かったロシアで、既存の小説の主人公のイメージとは程遠い、平々凡々たる下級官吏を主人公に据えたところが画期的だと思います。

 ドストエフスキーがこの作品に大きな影響を受けたとされており、処女作「貧しき人々」の発表は1846年、主人公のマカールは同じく九等書記官の小役人ですが、「外套」発表時、ドストエフスキーは既に「貧しき人々」に着手しており、「貧しき人々」の直後に発表した「二重人格」(「分身」)の方が、より強くゴーゴリの「外套」の影響を受けているように思えます(「二重人格」の主人公は九等文官、人間疎外から狂気に陥る)。

 また、トルストイも影響を受けているように思います。黒澤明監督が映画「生きる」の着想を得たとされている「イワン・イリッチの死」の主人公は、比較的裕福な出自のロシアの裁判官で、順調に出世していた中で突然の病に臥すという、設定はやや異なりますが、アカーキイと同じく公務員であることには違いありません。

 この「イワン・イリッチ」という名前は、「イワン・イリイチ」と呼ぶのが原語の発音に近いらしく(光文社古典新訳文庫の望月哲男氏の訳はそうなっている)、韻を踏んでいるのは役人のルーティン・ワークを象徴しているとされていますが、ならば、同じようなことを先にやったのは、この作品の主人公に「アカーキイ・アカーキエヴィッチ」と名付けたゴーゴリではなかったかと思われます。

 併録の「鼻」(1836年発表)のシュール且つナンセンスな感覚も面白く、今で言えば安部公房や筒井康隆がやっていたようなことを、150年も前にやってしまっているというのは、考えてみればスゴイことかも。

外套 輸入盤dvd.jpg外套 02.png 「外套」の方は、本国で何度か映画化されていて、「小犬を連れた貴婦人」('59年/ソ連)に俳優として出演していたアレクセイ・バターロフ(1928年生まれ)監督の作品('60年/ソ連)を観ましたが、原作に沿ってきっちり作られていて、作品全体としては悪くない出来だと思いました。但し、一方で、バシマチキン(アカーキイ)の人物造型はやや"戯画的"に描かれ過ぎていてるようにも思いました(一番劇画チックなのは、彼が幽霊になってからだが)。

「外套」輸入盤DVD

外套01.jpg まあ、原作がそもそも"戯画的"な性格を持っているというのはあるのですが、ペーソスより滑稽と怪奇の方が勝ち過ぎている気もしました。主演のロラン・ブイコフの演技の評価は高「外套」(実写版).jpgいですが、「名演技」であることには違いないですが、個人的印象としては「怪演」であるとも言えるように思います。ベタなウェット感を拭い去ることによって、最終的には逆にペーソスを引き出そうというのが狙いだったのかもしれませんが。

「外套」(実写版)●原題:Шинель(SHINELI)●制作年:1959年(公開:1960年)●制作国:ソ連●監督:アレクセイ・バターロフ●脚本:L・ソロヴィヨフ●撮影:ゲンリフ・マランジャン●音楽:ニコライ・シレリニコフ●原作:ニコライ・ゴーゴリ「外套」●時間:75分●出演:ロラン・ブイコフ/ユーリー・トルベーエフ/A・エジキナ●日本公開:1974/03●配給:日本海映画●最初に観た場所:池袋・文芸坐 (79-11-14)(評価:★★★☆)●併映:「開かれた処女地」(アレクサンドル・イワノフ)

外套(制作中)2.jpg外套(制作中)1.jpg外套 ノルシュテイン 作業風景.jpg この作品はまた、「霧の中のハリネズミ」「話の話」などで知られ、アレクセイ・バターロフとも親交のあるアニメーション作家ユーリー・ノルシュテイン(Yuriy Norshteyn、1941年生まれ)によってアニメ化もされています。
外套 ノルシュテイン 原画展ポスター 2009年10月 .jpg ユーリー・ノルシュテインは「老人と海」のアニメーションでアカデミー賞を受賞したアレクサンドル・ペトロフ(Alexander Petrov 、1957年生まれ)とは師弟関係にあり、気が遠くなるような手作業で原画を描くことで両者は共通しています(「外套」は30年かけて未だ制作中!)。

 ユーリー・ノルシュテインのアニメ「外套 (YouTube)」もアレクサンドル・ペトロフのアニメ「老人の海 (YouTube)」も共にウェブで視聴可能です。ノルシュテインの「外套」は出来上がっているところまでですが、日本語字幕がついています。アカーキイが文書を清書するところを、書いている文字まで丹念に描いており、これを手作りでやっていれば確かに時間がかかるのも無理ないと思います(他の作品の制作の合間をぬっての作業のようであるし)。

ユーリー・ノルシュテイン「外套」原画展ポスター(2009年10月)

アレクサンドル・アレクセイエフ「鼻」(ゴーリキー原作).jpg 「鼻」の方は、「禿山の一夜」「展覧会の絵」で知られるアニメーション界の巨人アレクサンドル・アレクセイエフ(Alexandre Alexeieff、1901-1982)が短編アニメ映画化していて(「鼻」(1963))、この人の作品はピンスクリーンという手法で知られています(これまた、ボードに立てた「25万本の針」を出したり引っ込めたりして光を当てながら1コマ1コマ撮っていくという、気の遠くなるような時間のかかかる技法)。このアレクセイエフの「鼻」もウェブで視聴可能、音楽のみでセリフは無く、最後はややブラックなオチになっています。

 アレクサンドル・アレクセイエフは17歳でロシアを離れ、二度と戻ることがなかったロシアに対する憧憬や情念を抱えながらアメリカやフランスで制作活動を続けた人で、実際、制作した作品のうち3作品がムソルグスキーの音楽を題材にしたものであり、1作品がゴーゴリの小説を題材にしたこの作品となっています。
 この作品はまず、メトロノームの速度に合わせて映像を制作し、次に、映像に合うように音楽を制作したそうで、冒頭の太陽の光の変化により時間の流れを表現したり、空間や場面が変化していく様子など、ピンスクリーンでなければ描けない、独特のシュールな映像世界を作り上げています。

アレクサンドル・アレクセイエフ「鼻」(ゴーリキー原作)2.jpgアレクサンドル・アレクセイエフ作品集.jpg鼻 アニメ アレクセイエフ.jpg「鼻」(アニメ版)●原題:Le Nez (The Nose)●制作年:1963年●制作国:フランス●監督:アレクサンドル・アレクセイエフ●共同監督:クレア・パーカー●原作:ニコライ・ゴーゴリ「鼻」●時間:11分●DVD発売:2006/03●発売元:ジェネオン エンタテインメント(評価:★★★★)
ニュー・アニメーション・アニメーションシリーズ アレクサンドル・アレクセイエフ作品集 [DVD]
(33年制作「禿山の一夜」、63年制作「鼻」、72年制作「展覧会の絵」ほか全5編)

 実写版でも映画化されているのかなあ。教会で"鼻"が何食わぬ様子でお祈りしていたり、その鼻に向かって持主が自分の顔に戻るよう説得するというぶっ飛んだ場面などは(アレクセイエフのアニメは、その時ですら主人公が鼻の無い顔を隠しているのが可笑しい)、少なくとも実写では無理だと思うけれど...と思っていたら、ショスタコーヴィチが作曲家自身及びエヴゲーニイ・ザミャーチン、ゲオルギー・イヨーニン、アレクサンドル・プレイスの台本でオペラにしていることを知りました(タイトルはそのものずばり「鼻」)。
ショスタコーヴィチのオペラ「鼻」.jpg これまでにロシアやヨーロッパのオペラハウスでは何度も上演されているようです(初演は1930年1月18日、レニングラード、マールイ劇場) 。

オペラ「鼻」(チューリッヒ歌劇場の公式サイトより)


【1933年文庫化[岩波文庫(『外套―他二篇』)]/1938年再文庫化・1965年・2006年改版[岩波文庫(平井肇:訳)]/1999年再文庫化[講談社文芸文庫(吉川宏人:訳)]/2006年再文庫化[光文社古典新訳文庫(『鼻/外套/検察官』浦雅春:訳)]】

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ヘンリー・フォンダ、ヴィクター・マチュアが良く、モノクロの味わいがある「荒野の決闘」。

my-darling-clementine.jpg 荒野の決闘 dvd.jpg     GUNFIGHT AT THE O.K. CORRAL.jpg OK牧場の決斗 dvd.jpg
「荒野の決闘」輸入版ポスター/「荒野の決闘 [DVD] ヘンリー・フォンダ/「OK牧場の決斗」輸入版ポスター/「OK牧場の決斗 [DVD]」バート・ランカスター/カーク・ダグラス

Henry Fonda in My Darling Clementine.bmp 牛追いの旅の途中で逗留した墓場の町トゥームストーンで、牛を盗まれ末弟を殺されたワイアット・アープ(ヘンリー・フォンダ)ら兄弟は、犯人を捜すべく町に留まり保安官職を引き受けるが、町には賭博師ドク・ホリディ(ヴィクター・マチュア)がいた。ワイアットは根っからの悪人ではないドクに一目置き、友情を抱く。やがてドクを追って東部からクレメンタイン(リンダ・ダーネル)という女性が来て、ワイアットは密かに恋心を抱くも彼女のドクへの想いを知り、その希望を叶えるためにも酒浸りのドクに酒を控えるよう忠告するが、は自らが病気であることを悟るドク、彼女につれない態度をとる―。
ヘンリー・フォンダ/リンダ・ダーネル

my darling clementine.jpg『荒野の決闘』(1946).jpg 「荒野の決闘」は1946年のジョン・フォード作品ですが、ヘンリー・フォンダの映画と言ってもいいかも(そもそも、ジョン・フォードがジョン・ウェインを使わずヘンリー・フォンダを起用している点が興味深い)。もの静かながらも正義感と責任感を裡に秘め、武骨ながらも時にユーモアも見せるヘンリー・フォンダ独特のワイアット・アープ像が印象的でした。

 '82年リヴァイバル公開時の「いとしのクレメンタイン」というタイトル(実はこれが原題)からしても、メロドラマ的要素の強い作品のように思われていますが、ワイアット・アープとドク・ホリディの男の友情(精神的なホモ・セクシュアルに近い感じも)が軸となっている作品であるとも言えるのでは。

 弟を殺した犯人がクラントン一家と分かり、残されたアープ3兄弟はドク・ホリディと共に、牧場主クラントンと4人の息子兄弟を相手に戦うことになりますが、これが有名な「OK牧場の決闘」―。

My Darling Clementine (1946).jpg この作品の他にも「OK牧場の決斗」('57年/ジョン・スタージェス監督、バート・ランカスター、カーク・ダグラス主演)をはじめ何度か映画の素材になっており、90年代に入ってもトゥームストーン('93年/ジョージ・P・コスマトス監督、カート・ラッセル、ヴァル・キルマー主演)、ワイアット・アープ('94年/ローレンス・カスダン監督、ケヴィン・コスナー、デニス・クエイド主演)と続きましたが、比べると細部においてそれぞれ筋立てが異なる部分があって興味深いです。

 実際には「決闘」ではなく、保安官が銃所持者を武装解除しようとした際に牧舎付近で発生した突発的な銃撃戦だったそうですが(タイトル的には「OK牧場の決斗」の原題(Gunfight at the O.K. Corral)が正しく、僅か2分間で決着したという点は「トゥームストーン」が史実に忠実に作られている)、但し、それまでにアープ兄弟やドク・ホリディとクライトン一家の間で様々な確執があったのは事実のようです。

ビクター・マチュア.jpg 「荒野の決闘」では、ワイアット・アープとドグ・ホリディは酒場で出会って意気投合し、ドク・ホリディに惚れていた酒場の女が銃で撃たれる事件が起きて、ドクがその時に彼女の手術をしたために、彼が元医者であることが初めて皆に知れるというようになっていますが、「OK牧場の決斗」「トゥームストーン」「ワイアット・アープ」では2人は以前から親友だったことになっています。

ビクター・マチュア

 この他に、「荒野の決闘」では、町の酒場で酒ですっかりダメになった役者が荒くれ男たちに絡まれて無理矢理「演劇芸」をさせられるものの「ハムレット」の台詞を忘れて絶句したところ、ドグ・ホリディがつぶやくように後を続けるという場面があり、彼が東部で教育を受けたインテリであることが示唆されています(西部育ちの武骨なワイアット・アープは、只々茫然とそれを見遣る)。

 「荒野の決闘」のワイアット・アープが憧憬を抱いたクレメンタインのような清楚なキャラクターの女性は、「トゥームストーン」でもドグに寄り添う恋人が一応は登場しますが「OK牧場の決斗」には登場せず、代わりに「OK牧場の決斗」ではドグ・ホリディの"情婦"ケイト(ジョー・ヴァン・フリート)が登場し、これはかなりのあばずれ女(「荒野の決闘」の酒場女がこれに該当か)、一方のワイアット・アープの方も、「OK牧場の決斗」では美貌の女賭博師ローラ(ロンダ・フレミング)と、「トゥームストーン」では聡明な舞台女優と、「ワイアット・アープ」では町の美しい踊子と結ばれており、この辺りにくるとどれが本当の話かよく分かりませんが、少なくともドグ・ホリディの恋人に想いを馳せるといった三角関係のようなことは他の3作にはありません。

お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ.jpg 何よりも「荒野の決闘」が他の作品と異なるのは、この決闘でドク・ホリディが自らの命をあっさり投げ出してしまうことで(ジョン・フォードによって美化されている?)、実在の彼は21歳で肺結核に罹り、医師から余命数カ月と宣告されていたため"死に場所"を探していた可能性は高いですが、ホントは「決闘」 後6年間生きていて、享年は36歳、と言うことは、「決闘」時は30歳。一方ワイアット・アープは、「決闘」時は33歳で、80歳まで生きています。

和田 誠 氏3.jpg 和田誠氏は『お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ』('75年/文藝春秋)の中で「OKコラルの決闘は明治14年、ドグ・ホリディが死んだのは明治20年、ワイアット・アープが死んだのは昭和4年だそうである」と、いつ頃のことか想像し易いよう和暦に置き換えて書いています。
お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ

「OK牧場の決闘」チラシ
OK牧場の決闘 チラシ.jpgGunfight at the O.K. Corral2.jpg 「OK牧場の決斗」も西部劇の傑作には違いなく、アクション味やカタルシスの度合いは「荒野の決闘」より上かも知れませんが、個人的には「荒野の決闘」の静かな雰囲気の方が好きかなあ(モノクロームの味わいもある)。

バート・ランカスター/カーク・ダグラス

OK牧場の決斗09.jpg "娯楽作品"vs."文芸作品"という感じで、比較するのにOK牧場の決斗7.jpg無理があるかも知れませんが、ワイアット・アープ像は、保安官然とした「OK牧場の決斗」のバ―ト・ランカスターよりも、じわっと人間味が出ている「荒野の決闘」のヘンリー・フォンダの方Dennis Hopper  in Gunfight at the O.K. Corral .jpgカーク・ダグラス.jpgが上、ドグ・ホリディは誰が演じても受ける"映画向き"のキャラクターという気はしますが、これもヴィクター・マチュアの存在感が、カーク・ダグラス(これも、この作品でのバ―ト・ランカスターと比べると悪くはないが)を上回っているように思います(但し、先に挙げた和田誠氏の『お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ』によると、この「荒野の決闘」でのヴィクター・マチュアの一般的評価はあまり高くないようだ)。

カーク・ダグラス

デニス・ホッパー/バート・ランカスター

 因みにワイアット・アープは晩年ジョン・フォードと親交を持ち、そのことがフォードの映画作りにも影響しているようであり(結局、「荒野の決闘」が最も創意を含んでいる?)、この作品のワイアット・アープ、と言うよりヘンリー・フォンダは、「アメリカ的騎士道」の体現者といった感じがしました(「駅馬車」('39年)のジョン・ウェインにもそれが当て嵌まる。タイプは"動"のジョン・ウェインと"静"のヘンリー・フォンダで異なるが)。

OK牧場の決闘 ディミトリ・ティオムキン.jpg 「荒野の決闘」のテーマ曲「いとしのクレメンタイン」は、歌詞に"a miner, forty-niner"とあるように、ゴールドラッシュ時代を回顧したアメリカ民謡で、"Clementine"は亡くなった恋人(抗夫の娘)の名、日本では探検・登山家の西堀栄三郎が作詞した「雪山讃歌」として知られています。

 一方の「OK牧場の決斗」のテーマ曲も、同じくジョン・スタージェス監督の「荒野の七人」('60年)のテーマ曲などと並んで、西部劇のテーマ曲としては超有名で、フランキー・レイン(連続TVドラマ「ローハイド」のテーマもこの人が歌っていた)の歌が作中の場面の変わり目に何度か挿入され、歌詞がドラマの語り手のような役割を果たして効果をあげています。
Frankie Laine :Gunfight At The OK Corral 

「荒野の決闘」パンフレット
リンダ・ダーネル.jpg荒野の決闘 パンフレット.jpgMY DARLING CLEMENTINE.jpg「荒野の決闘(いとしのクレメンタイン)」●原題:MY DARLING CLEMENTINE●制作年:1946年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・フォード●製作:サミュエル・G・エンゲル●脚本:サミュエル・G・エンゲル/ウィンストン・ミラー●撮影:ジョー・マクドナルド●音楽:シリル・モックリッジ/アルフレッド・ニューマン●原-自由ヶ丘劇場2.jpgヒューマックスパビリオン自由が丘.jpg作:サム・ヘルマン/スチュアート・N・レイク●時間:97分●出演:ヘンリー・フォンダ/ヴィクター・マチュア/リンダ・ダーネル/キャシー・ダウンズ/ ウォルター・ブレナン/ウォード・ボンド/ティム・ホルト/ジョン・アイアランド/ジェーン・ダーウェル/アラン・モーブレイ/ラッセル・シンプソン/メエ・マーシュ/フランシス・フォード●日本公開:1947/08●配給:20世紀フォックス=セントラル●最初に観た場所:自由が丘・自由が丘劇場(85-02-17)(評価:★★★★)●併映「わが谷は緑なりき」(ジョン・フォード)
自由が丘劇場 自由が丘駅北口徒歩1分・ヒューマックスパビリオン自由が丘(現在1・2Fはパチンコ「プレゴ」)1986(昭和61)年6月閉館

「OK牧場の決闘」パンフレット
ロンダ・フレミング1.jpgOK牧場の決斗 パンフレット.jpg「OK牧場の決斗」●原題:GUNFIGHT AT THE O.K. CORRAL●制作年:1957年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・スタージェス●製作:ハル・B・ウォリス●脚本:レオン・ウーリス●撮影:チャールズ・ラング・Jr●音楽:ディミトリ・ティオムキン●原案:ジョージ・スカリン●時間:122分●出演:バート・ランカスター/カーク・ダグラス/ロンダ・フレミング/ライル・ベトガー/ジョン・アイアランド/Gunfight at the O.K. Corral(1957).jpgジョー・ヴァン・フリート/リー・ヴァン・クリーフ/アール・ホリマン/デニス・ホッパー/ケネス・トビー/デフォレスト・ケリー/ジャック・イーラム/ブライアン・ハットン/フランク・フェイレン/マーティン・ミルナー/オリーヴ・ケリー/テッド・デ・コルシア●日本公開:1957/07●配給:パラマウント映画(評価:★★★☆)
Gunfight at the O.K. Corral(1957) 

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チャールズ・ブロンソンやジェームズ・コバーンの演じたバイプレーヤー的な役柄も良かった。

荒野の七人07.jpg荒野の七人 チラシ.jpg IMG_1891.JPG 荒野の七人 dvd.jpg
「荒野の七人」チラシ・パンフレット(1976年版)/「荒野の七人 アルティメット・エディション [DVD]

 ジョン・スタージェス監督の1960年作品で、黒澤明監督の「七人の侍」('54年/東宝)を翻案した作品であることは知られていますが、「七人の侍」がなかなかロードにかからず、名画座にも降りてこないIMG_1889.JPG時期があったので、個人的には、まだ見ぬ「七人の侍」への期待を高める契機となった作品です(エルマー・バーンスタインのテーマ曲も良かった)。

 ユル・ブリンナーが黒澤監督の「七人の侍」にすっかり惚れこみ、翻訳映画化権を買い取ったのが事の始まりだそうですが、「七人の侍」を観た後で再見すると、大まかなあらすじや登場人物の設定・台詞などを「七人の侍」へのオマージュを込めて再現しているのが窺荒野の七人 輸入版ポスター.jpgえ(黒澤監督はこの作品を観て、スタージェス監督に日本刀を贈ったとの逸話がある)、一方で、「七人の侍」の「七人」と、「荒野の七人」の「七人」を無理に重ねることはしていないのが分かりました。例えば、クリス(ユル・ブリンナー)は勘兵衛(志村喬)がモデルであるにしても多少キャラクターは異なるし、ビン(スティーブ・マックイーン)は五郎兵衛(稲葉義男)と七郎次(加東大介)の、チコ(ホルスト・ブッフホルツ)は勝四郎(木村功)と菊千代(三船敏郎)の、オレイリー(チャールズ・ブロンソンは平八(千秋実)と菊千代の、それぞれ"混合型"のキャラクターになっているそうですが、そう言われてもピンとこないようなキャラクターもいます(ビンには"菊千代"も入っているのではないか)。リー(ロバート・ヴォーン)やハリ―(ブラッド・デクスター)のようにオリジナルに無いキャラクターが造られている一方で、ナイフの名手ブリット(ジェームズ・コバーン)のように、久蔵(宮口精二)がモデルであることが比較的わかり易いものもあります(因みに、久蔵のモデルは宮本武蔵だそうな)。

『荒野の七人』(1960).jpg『荒野の七人』(1960)0.jpg 映画公開時の出演俳優らの知名度は、ユル・ブリンナーが断トツで、ホルスト・ブッフホルツがそれに続くものだったそうですが、同じくジョン・スタージェスが監督し、スティーブ・マックイーン、チャールズ・ブロンソン、ジェームズ・コバーンが共演した「大脱走」('63年)でスティーブ・マックイーンがIMG_1895.JPG先ず一気に抜け出て、チャールズ・ブロンソンが「さらば友よ」('68年)などで、ジェームズ・コバーンが「電撃フリント」シリーズなどで、それぞれ後に続いたという感じでしょうか(「荒野の七人」のパンフレットやチラシは、途中からスティーブ・マックィーンがメインまたは筆頭格のレイアウトになった)。

IMG_1900.JPG この作品でチャールズ・ブロンソンやジェームズ・コバーンの演じたバイプレーヤーチャールズ・ブロンソン .jpg的な役柄も良かったように思い、チャールズ・ブロンソンは村の子供に慕われる優しいオジさんという感じで(オレイリーの最期はややコミカルに描かれている。この人、日本では「マンダム」のコマーシャルでおコバーン「ラーク」 .jpg馴染みになった)、一方のジェームズ・コバーンは撃たれた後もナイフを投げて...こちらは渋い死に方でした(「ラーク」のコマーシャル においてもナイフ投げたりしていたなあ)。「電撃フリント」シリーズのほか、ダシール・ハメット原作のTVドラマ「The Dain Curse」(CBS 1978)に出たり、ロバート・アルトマン監督の「ザ・プレイヤー」('92年/米)にも本人役でカメオ出演していました。

荒野の七人」.jpg スティーブ・マックイーンが'80年に癌で50歳で亡くなり、ユル・ブリンナーも'85年に肺癌で65歳で亡くなった後、'02年から'03年にかけての僅か1年の間に、ジェームズ・コバーン(心筋梗塞)、ブラッド・デクスター(肺気腫)ロバート・ボーン    .jpg、ホルスト・ブッフホルツ(肺炎)、チャールズ・ブロンソン(肺炎)と「七人」のうち4人が相次いで亡くなったのが寂しかったです。現時点[2011年2月時点]で存命しているのはロバート・ヴォーンのみになってしまっています(2016年11月11日急性白血病のため逝去。これで「荒野の七人」にガンマン役で出演した7人の男優全員がこの世を去ったことになった))。


荒野の七人」ps.jpg「荒野の七人」002.jpg「荒野の七人」●原題:THE MAGNIFICENT SEVEN●制作年:1960年●制作国:アメリカ●監督・製作:ジョン・スタージェス●脚本:ウイリアム・ロバーツ●撮影:チャールズ・ラング●音楽:エルマー・バーンスタイン●原作:黒澤明/橋本忍/小国英雄(映画「七人の侍」)●時間:128分●出演:ユル・ブリンナー/スティーブ・マックイーン/チャールズ・ブロンソン/ロバート・ヴォーン/ジェームズ・コバーン/ホルスト・ブッフホルツ/ブラッド・デクスター/イーライ・ウォラック/ウラジミール・ソコロフ/ジョン・アロンゾ/ロゼンダ・モンテロス/ヨルグ・マルティネス・デ・ホヨス/リコ・アラニス●日本ジョン・スタージェス(John Sturges).jpg中野武蔵野ホール.jpg公開:1961/05●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:中野武蔵野館(78-01-19)(評価:★★★★)●併映「ビッグ・アメリカン」(ジョン・スタージェス)  中野武蔵野ホール
ジョン・スタージェス(John Sturges)
新宿ミラノ座 荒野の七人.jpg「荒野の七人」(1961年)公開中の新宿ミラノ座
 

「荒野の七人」(1961年).jpg

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骨太感のある娯楽映画。ボガートの好演を凌ぐエドワード・G・ロビンソンの悪役ぶり。

キー・ラーゴ dvd.jpg キー・ラーゴ ポスター.jpg KEY LARGO.jpg key largo movie.jpg
キー・ラーゴ [DVD]」/輸入版ポスター  ローレン・バコール、ハンフリー・ボガート

キー・ラーゴ2.jpg 第2次世界大戦の復員将校フランク(ハンフリー・ボガート)は、戦死した部下の遺族に会いにフロリダ半島南端の小島キー・ラーゴを訪ねるが、当地で部下の父親(ライオネル・バリモア)と未亡人ノーラ(ローレン・バコール)が経営するホテルは、ギャングの頭目ロッコ(エドワード・G・ロビンソン)とその一味らの隠れ家になっていた。大きな取引を控え、ハリケーンの接近に苛立つギャング達は横暴になっていき、ノーラや父親に暴力を奮い、遂には保安官助手を殺してしまうが、戦争のため虚脱感に陥っているフランクはそれを見て何の反応も示さず、ノーラはその腑甲斐なさを歯がゆく思う―。

「キー・ラーゴ」ローレン・バコール.jpg 1948年の作品。1939年にブロードウェイで上演されたマックスウェル・アンダーソンの戯曲「キー・ラーゴ」を、ジョン・ヒューストンとリチャード・ブルックスが映画用に脚色したもので、「脱出」('44年)「三つ数えろ」('46)、「潜行者」('47年)に続く、ボガートとバコールの4度目にして最後の夫婦共演作でもあります。

 オリジナルが戯曲であったことは後に知りましたが、それほど多くない登場人物、密室状態のホテル、フランクとロッコの心理的駆け引きやノーラのフランクに対する見方の変化など、確かに心理劇的要素が強い作品かも。

キー・ラーゴ 1.jpg それでいてスカッとしたカタルシスがあるのは、最初の内は"男気"をなかなか見せないフランクが、徐々にその本分を発揮し、最後に...というプロセスから結末までの描き方の上手さによるものでしょう。

 ロッコの情婦ゲイ(クレア・トレヴァー)が、アル中の元歌手か何かで、ロッコからそんなに酒が飲みたいなら歌えと言われて一生懸命歌いますがそんな下手なんじゃやれないと言われたりして、最後はフランクがロッコに逃亡用の船の操縦を命じられた際にそっとフランクにピストルを手渡すところなどは、定番と言えば定番なのですが、役者陣がしっかりしている分、シンプルなストーリーが活き、骨太感のある娯楽映画に仕上がっています(クレア・トレヴァーはこれら一連の演技でアカデミー助演女優賞受賞)。

「キー・ラーゴ」E・G・ロビンソン.jpg とりわけ、その演技が光るのはエドワード・G・ロビンソンで、その強面の悪役ぶりは、ボガートの好演をも喰ってしまっているほどです。エドワード・G・ロビンソン 十戒.jpg「十戒」('57年)でも、チャールトン・ヘストン演じるモーゼに逆らって民衆を堕落へと扇動する男を演じていましたが、こうした心理劇的要素の強い作品では、ますますその凄味が増してくる俳優だったように思います(スティーブ・マックイーンと共演した「シンシナティ・キッド」('65年)などもそう)。

キー・ラーゴ エドワード・G・ロビンソン.jpg エドワード・G・ロビンソン(1893-1973/享年79)という人は8カ国語を操るインテリだったそうで、そのリベラルな思想のため40年代後半はハリウッドでも冷遇され、この作品でも"後輩スター"であるハンフリー・ボガートの脇に回ることになりましたが、仕事と割り切って出演を承諾、ボガートの方もロビンソンに対し"先輩スター"として接し、他のスタッフもこれに倣うよう命じたという逸話があります。

 この作品は吉祥寺の「ジャヴ50」で観ましたが(当時は自主上映館としての色合いが強かった)、現在は「バウスタウン」内の「バウスシアター2」というミニシアター(席数50)になっています。当時の「ジャヴ50」の客席フロアは"個席"ではなく、長椅子(ビニール張りのソファー)が並べられているだけであり、「席数50」と言うより「収容観客数50」という意味でのネーミングだったのでしょう。
Key Largo (1948)
KEY LARGO3.jpgKey Largo (1948).jpg「キー・ラーゴ」ローレン・バコール2.jpg「キー・ラーゴ」●原題:KEY LARGO●制作年:1948年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ヒューストン●製作:ジェリー・ウォルド●脚本:リチャード・ブルックス/ジョン・ヒューストン●撮影:カール・フロイント●音楽:マックス・スタイナー●原作戯曲:マックスウェル・アンダーソン「キー・ラーゴ」●時間:138分●出演:ハンフリー・ボガート/エドワード・G・ロビンソン/ローレン・バコール/ライオネル・バリモア/クレア・トレヴァー/ジョン・リッジリー/モンテ・ブルー/トーマス・ゴメス●日本公開:1951/11●配給:セントラル●最初に観た場所:吉祥寺ジャヴ(JAⅤ)50(85-12-21)(評価:★★★★)
           
吉祥寺バウスシアター 映画から船出した映画館.jpgバウスシアター.jpg.png吉祥寺バウスシアター.jpg吉祥寺ジャヴ(JAⅤ)50 1951年~「ムサシノ映画劇場」、1984年3月~「吉祥寺バウスシアター」(現吉祥寺バウスシアター3.jpg・シアター1/218席)と「ジャヴ50」(現・シアター2/50席)の2館体制でリニューアルオープン。2000年4月29日~シアター3を新設し3館体制に。 2014(平成26)年5月31日閉館。

吉祥寺バウスシアター内(右)

吉祥寺バウスシアター映画から船出した映画館』(2014/05)

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共演の男優・女優を追悼。シェイクスピアを下敷きにした見所多い(?)作品「禁断の惑星」。

禁断の惑星 dvd.jpg 禁断の惑星 英語ポスター.jpg 禁断の惑星 ポスター.jpg 昆虫型ミュータントがアダムス博士を襲う.jpg
禁断の惑星 [DVD]」「禁断の惑星」輸入版ポスター/日本版ポスター 「宇宙水爆戦 -HDリマスター版- [DVD]
 
禁断の惑星 ポスター(東宝).jpg 宇宙移民が行われている2200年代、アダムス機長が率いる宇宙船は、20年前に移住して消息を絶った移民団の捜索のために、惑星第4アルテアへ着陸するが、アルテア移民団の生き残りは、モービアス博士と、アルテアで誕生した彼の娘アルティラの2人と、博士が作った万能ロボット・ロビーだけだった。博士によれば、アルテアにはかつて高度に進化し、発達した科学を創り上げた先住民族が存在したが、原因不明の滅亡を遂げ、そして移民団も正体不明の怪物に襲われて自分達以外は死んでしまったという―。

「禁断の惑星」パンフレット

アン・フランシス_3.jpgForbidden Planet2.jpgForbidden Planet.jpg アダムス機長を演じたレスリー・ニールセンが昨年('10年)11月に亡くなった(享年84)のに続いて、アルティラを演じたアン・フランシスも今年('11年)1月に亡くなり(享年80)、寂しい限りです。TV番組「ハニーにおまかせ」('56年~)の私立探偵役のアン・フランシスも、「裸の銃(ガン)を持つ男」('86年)のレスリー・ニールセンも、この映画では2人とも20代でしょうか。この作品を観ると、永遠に2人とも若いままでいるような錯覚に陥ります。

禁断の惑星 名画座ミラノ2.jpg 「禁断の惑星」がシェイクスピアの「テンペスト」を下敷きにしていることはよく知られていて、最初に劇場(名画座ミラノ、すでに「名画座料金」ではなくなっていた)で観た時も、同時期の作品「宇宙水爆戦」('55年)などに比べてよく出来ているように思いました。

宇宙水爆戦1.jpg 「宇宙水爆戦」の方は結構キッチュ趣味と言えるかも。惑星間戦争で絶滅の危機にある星の異星人の科学者が、地球の科学者に協力を依頼するが、実はその星の指導者は地球を支配して移り住むことを企んでいた―というストーリーですが、最後、事件が一見落着したかと思ったら、宇宙船内に潜んでいた宇宙昆虫人間みたいなミュータントに襲われそうになるという―このとってつけたように出現するミュータントがポスターなどではメインになっていて、それだけストーリーは印象に残らないといことでしょうか。ストーリー的にも怪物キャラクター的にも、当時流行ったSFパルプマガジンの影響を強く受けているようです(そのこともキッチュ感に繋がる要因か。でもこのキッチュ感こそが、この作品の根強い人気の秘密かも)。

宇宙家族ロビンソン3.jpg 一方、「禁断の惑星」に出てくる有名キャラクターは万能ロボット「ロビー」で、これを参照したのが60年代に作られたテレビ番組「宇宙家族ロビンソン」に出てくるロボット(愛称:フライデー)だったりし、先駆的な要素も結構あったわけです(「宇宙家族ロビンソン」には外にも「宇宙水爆戦」も参考にしている箇所が幾つかある)。

刑事コロンボ 愛情の計算2.png刑事コロンボ 愛情の計算.jpg 因みに、このロボットは、「刑事コロンボ」の第23話「愛情の計算」('74年)にも"ゲスト出演"してロビーとフライデー.jpgおり(下半身の造りが二本脚から台座型に変わっている)、人工知能研所の所長である犯人のアリバイ作りに一役買っていますが、ロボットのキー・ボードを叩く手つきの大雑把さを見ると、ちょっと所長の代役をさせるには無理な感じも。

ロビー(「禁断の惑星」)とフライデー(「宇宙家族ロビンソン」)

 事件の鍵を握る天才少年の名は、スティーブン・スペルバーグで、これは勿論、コロンボ・シリーズ第3話「構想の死角」を撮ったスピルバーグ監督の名前をもじったもの。息子を庇う親心を利用して犯人を自白に追い込むというのは、後のフェイ・ダナウェイが犯人役を演じた第62話「恋におちたコロンボ」('93年)でもFaye Dunaway & Peter Falk.jpg恋におちたコロンボ2.jpg(こちらは娘を庇ってだが)使われましたが、真犯人ではないと分かっていながら拘束するのはいかがなものでしょうか(「恋におちたコロンボ」の脚本はピーター・フォーク自身が手掛けている)。但し、フェイ・ダナウェイの演技力はさすが。70年代のシリーズ作に比べ見劣りがする90年代のシリーズ作(特に後期作品)の中では、ひときわ映える名犯人役と言っていいのではないでしょうか。 Faye Dunaway & Peter Falk

アン・フランシス「死の方程式」「溶ける糸
死の方程式 アン・フランシス.jpg溶ける糸3 アン・フランシス.jpg 因みに「刑事コロンボ」シリーズに出たのはロボットだけではなく、アン・フランシスも「刑事コロンボ」の第8話「死の方程式」('72年)にロディ・マクドウォール(「猿の惑星」)演じる犯人の秘書兼愛人役で、第15話「溶ける糸」('73年)にレナード・ニモイ(「スタートレック」)演じる犯人に殺されてしまう看護婦役で出ているし、レスリー・ニールセンも、第7話の「もう一つの鍵」で、犯人である広告会社役員役のスーザン・クラークの恋人役で、第34話「仮面の男」('75年)で、元同僚のスパイに殺害される被害者役仮面の男2.jpg刑事コロンボ 仮面の男2.jpgで出ています。

レスリー・ニールセン 「仮面の男

 レスリー・ニールセンはこの頃もまだ二枚目俳優で(コメディ初出演は「フライング・ハイ」('80年))、「禁断の惑星」や「刑事コロンボ」の演技と「裸の銃(ガン)を持つ男」('88年)の演技を比べてみるのも一興でしょうか。コメディ俳優としてブレイクするきっかけとなった「裸の銃を持つ男」ではエリザベス女王裸の銃(ガン)を持つ男(1988).jpgをはじめフセイン大統領、ホメイニなど様々な人物をコケにし、「裸の銃を持つ男PART2 1/2」('88年)では当時のアメリカ大統領裸の銃(ガン)を持つ男2.jpgジョージ・ブッシュをコケにしています。「裸の銃を持つ男PART33 1/3 最後の侮辱」('94年)までプリシラ・プレスリー、ジョージ・ケネディ、O・J・シンプソンという共演トリオは変わらず和気藹々といった雰囲気でしたが、O・J・シO・J・シンプソンs.jpgンプソンは'94年に発生した元妻の殺害事件(「O・J・シンプソン事件」)の被疑者となってしまいました(刑事裁判で殺人を否定する無罪判決となったが、民事裁判では殺人を認定する判決が下った)。


Forbidden Planet3.jpg 「禁断の惑星」という作品は、ストーリーも凝っているように思われ、「テンペスト」をなぞるだけでなく、「イドの怪物」という精神分析的な味付けがされていて、ファーザー・コンプレックスがモチーフになっているように、フロイディズムの影響も濃く滲んでいます。
 また、ロボット・ロビーが博士に怪物の攻撃を止めるよう命じられても出来ないのは、アイザック・アシモフの「ロボット3原則」が下敷きになっているわけですが、この「ロボット3原則」は「ロボコップ」('87年/米)のラストなどにも援用されていたなあ。

 「禁断の惑星」も、時代ものSFパルプマガジンをそのまま映像化したような雰囲気はあるものの、それでいて結構おシャレな、レトロ・モダン感満載の"未来"像が楽しめるし、アン・フランシスがパルプマガジンの表紙そのままに超ミニで歩き回るし、この作品が実質的には映画デビュー作であるアダムス機長を演じたレスリー・ニールセンは、多分大多数の日本人がイメージしキャプテンウルトラ222.jpgている彼の演技とは全く異なる演技をしているし(昔の怪獣映画の宝田明や夏木陽介の感じ、乃至は、背景も含めると「キャプテンウルトラ」('67年)の中田博久の方がより近いか)、いろいろと見所が多い作品です(「なぜウチの中にビオトープがあるのか?」とか、突っ込み所も含めて)。

キャプテンウルトラ ハック2.jpg 尚「キャプテンウルトラ」にも、「宇宙警察パトロール隊」と共に「宇宙船シュピーゲル号」(なぜかドイツっぽい名前)に乗り込み、バンデル星人や怪獣たちと戦い続ける万能ロボット「ハック」が登場しますが、こちらは「ゴジラ」以来の日本の"伝統"か(この番組の制作城野ゆき.jpg会社は東映)、着ぐるみっぽいロボットでした。このシリーズは、脚本が番組放送に追いつかなくなった「ウルトラQ」と、その後継番組として構想されていた「ウルトラマン」との間の所謂「つなぎシリーズ」だったので、書割りのような背景からも察せられる通り、番組制作予算は限られていたようです。その後ウルトラ・シリーズでお決まりとなる"紅一点"の女性隊員は、ここでは「アカネ隊員」ですが、「ウルトラマン」で桜井浩子が演じた「フジ・アキコ隊員」、「ウルトラセブン」で菱見百合子が演じた「アンヌ隊員」と並んで、この「キャプテンウルトラ」で城野ゆきが演じた「アカネ隊員」キャプテンウルトラ」第9話42.jpgアカネ隊員s.jpgアカネ隊員3s.jpgアカネ隊員5s.jpgも、今もって人気があるようです(フジ・アキコ隊員、アンヌ隊員のいわば先輩格になるわけだが、1度だけコスプレっぽい服を着ていたことがある。「禁断の惑星」のアン・フランシスを意識したのか)。

「キャプテンウルトラ」第9話「怪生物バンデルエッグあらわる」
 

禁断の惑星 11 アンフランシス.jpg SFパルプマガジン風ファッション

禁断の惑星 21 アン・ニールセン.jpg 万能ロボット・ロビー登場

禁断の惑星 20 アン.jpg なぜウチの中にビオトープがあるのか?

禁断の惑星 04 アン・レスリー.jpg アン・フランシス/レスリー・ニールセン
Forbidden Planet(1956)
Forbidden Planet(1956).jpg
「禁断の惑星」●原題:FORBIDDEN EARTH●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:フレッド・マクラウド・ウィルコックス●製作:ニコラス・ネイファック●脚本:シリル・ヒューム●撮影:ジョージ・J・フォルシー●音楽:ルイス・アンド・ベベ・バロン●原作:アーヴィング・ブロック/アレン・アドラー「運命の惑星」●時間:98しねまみらの.jpgシネマミラノ 劇場内.jpgシネマミラノ.jpg分●出演:ウォルター・ピジョン/アン・フランシスレスリー・ニールセン/ウォーレン・スティーヴンス/ジャック・ケリー/リチャード・アンダーソン/アール・ホリマン/ジョージ・ウォレス/ボブ・ディックス●日本公開:1956/09●配給:MGM●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-04-29)(評価:★★★☆)
名画座ミラノ 1971年11月、歌舞伎町「東急ミラノビル」4Fにオープン、→「シネマミラノ」(写真)、2006年6月1日~「新宿ミラノ3」 2014(平成26)年12月31日閉館。

宇宙水爆戦 dvd.jpg「宇宙水爆戦」.bmp「宇宙水爆戦」●原題:THIS ISLAND EARTH●制作年:1955年●制作国:アメリカ●監督:ジョセフ・ニューマン●製作:ウィリアム・アランド●脚本:フランクリン・コーエン/エドワード・G・オキャラハン●撮影:クリフォード・スタイン/デビッド・S・ホスリー●音楽:ジョセフ・ガ―シェンソン●原作: レイモンド・F・ジョーンズ●時間:86分●出演:フェイス・ドマーグ/レックス・リーズン/ジェフ・モロー/ラッセル・ジョンソン/ランス・フラー●配給:ユニバーサル・ピクチャーズ●日本公開:1955/12)●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-05-17)(評価:★★★☆)宇宙水爆戦 -HDリマスター版- [DVD]」 

宇宙家族ロビンソン dvd.jpg宇宙家族ロビンソン l.jpg「宇宙家族ロビンソン」Lost in Space (CBS 1965~68) ○日本での放映チャネル:TBS(1966~68)
(全3シーズン。第1シーズンはモノクロ、第2シーズンからカラー)

宇宙家族ロビンソン ファースト・シーズン DVDコレクターズ・ボックス 通常版」 

  

刑事コロンボ 愛情の計算 vhs.bmp「刑事コロンボ/愛情の計算」●原題:MIND OVER MAYHEM●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督:アルフ・ケリン●脚本:スティーブン・ボッコ/ディーン・ハーグローブ/ローランド・キビー刑事コロンボ 愛情の計算3.bmp●原案:ロバート・スペクト●音楽:ディック・デ・ベネディクティス●時間:74分●出演:ピーター・フォーク/ホセ・ファーラー/ロバート・ウォーカー/ジェシカ・ウォルター/リュー・エヤーズ/リー・H・モンゴメリー/アーサー・バタニデス/ジョン・ザレンバ/ウィリアム・ブライアント/ルー・ワグナー/バート・ホランド●日本公開:1974/08●放送:NHK総合(評価:★★★)特選 刑事コロンボ 完全版「愛情の計算」【日本語吹替版】 [VHS]

恋におちたコロンボ1.jpg「新・刑事コロンボ/恋におちたコ恋におちたコロンボ dvdブック.jpgロンボ」●原題:IT'S ALL IN THE GAME●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:ビンセント・マクビーティ●製作:クリストファー・セイター●脚本:ピーター・フォーク●音楽:ディック・デ・ベネディクティス●時間:74分●出演:ピーター・フォーク/フェイ・ダナウェイ/アルマンド・プッチ/クローディア・クリスチャン/ジョン・フィネガン/ビル・メイシー/シェリー・モリソン/ブルース・E・モロー/ジョニー・ガーデラ/ダグ・シーマン/ダニエル・T・トレント/トム・ヘンシェル日本公開:1999/05●放送:NTV(評価:★★★☆)
新刑事コロンボDVDコレクション 17号 (恋におちたコロンボ) [分冊百科] (DVD付)

裸の銃(ガン)を持つ男 dvd.jpg裸の銃(ガン)を持つ男 1.jpg「裸の銃(ガン)を持つ男」●原題:THE NAKED GUN:FROM THE FILES OF POLICE SQUAD!●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:デヴィッド・ザッカー●製作:ロバート・K・ウェイス●脚本:ジェリー・ザッカー/ジム・エイブラハムズ/デヴィッド・ザッカー/パット・プロフト●撮影:ロバート・スティーヴンス●音楽:アイラ・ニューボーン●時間:85分●出演:レスリー・ニールセン/プリシラ・プレスリー/ジョージ・ケネディ/O・J・シンプソン/リカルド・モンタルバン/ナンシー・マルシャン●配給:UIP映画配給●日本公開:1989/04(評価:★★★☆)
裸の銃(ガン)を持つ男 [DVD]

「キャプテンウルトラ」中田.jpgキャプテンウルトラ.jpg「キャプテンウルトラ」●演出:佐藤肇、田口勝彦/加島昭/竹本弘一/山田稔/富田義治●制作:平山亨/植田泰治●脚本:大津皓一/高久進/長田紀生/井口達/伊上勝●音楽:冨田勲●出演:中田博久/城野ゆき小林稔侍/伊沢一郎/安中滋/相馬剛三/都健二/田川恒夫●放映:1967/04~09(全24回)●放送局:TBキャプテンウルトラ」9.jpgキャプテンウルトラ」第9話61PQCFU.jpg 「キャプテンウルトラ Vol.2 [DVD]
中田博久(キャプテンウルトラ=本郷武彦)/城野ゆき(アカネ隊員)
 

「キャプテンウルトラ」第9話「怪生物バンデルエッグあらわる」 
城野ゆき(アカネ隊員)1_500.jpgアカネ隊員cp.jpg城野ゆき(アカネ隊員)










小林稔侍(キケロ星人ジョー)[当時26歳]/「シュピーゲル号」プラモデル
キャプテンウルトラ 小林稔侍.jpgシュピーゲル号.jpg

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入門書の体裁をとりながらも、北森神学の特徴が随所に。聖書の物語の映像化は難しい?

聖書の読み方 講談社現代新書.gif 『聖書の読み方 (講談社現代新書 266)』 ['71年] 聖書の読み方 講談社学術文庫.jpg 『聖書の読み方 (講談社学術文庫)』 ['06年]

kitamori.jpg聖書の読み方 .jpg 北森嘉蔵(きたもり・かぞう、1916‐1998/享年82)は、文芸評論家であり牧師でもある佐古純一郎・二松学舎大学名誉教授の言葉を借りれば、キリスト教が日本の社会で市民権をもつために決定的な貫献をなした人物とのことで、若かりし時から天才ぶりを発揮し、30歳そこそこで発表した『神の痛みの神学』('46年発表)は教会内外に波紋を投げかけ、この人の神学は「北森神学」とも呼ばれていますが、本書は、50代半ば頃に書かれた一般向けの聖書入門書、但し、「北森神学」の入門書になっている面もあるようです。

 著者が本書で提唱している初学者向けの聖書の読み方は、「新幹線から各駅停車へ」というもので、初めて聖書を読むとわからないところばかりで、感動して立ち止まるような箇所はなかなか無いだろうけれども、そういう箇所に出会うまではノン・ストップでひたすら読んでいって構わないと。そのうち、そうした感動出来る箇所に出会うだろうから、そうした時にだけじっくり読めばよく、「あらゆる箇所で感動して停止せねばならぬ」ことはない、但し、これを繰り返すと、次第に感動出来る箇所が増え「各駅停車」の読み方になってくるといことで、そのベースにある考え方は、感動は自発的なものであって、義務ではないということです。

奇跡.jpg 日本人が聖書を読んでよく引っ掛かるのが「奇跡」に関することですが、著者は、「奇跡」と「異象(異常な現象)」とは別であり、現象として信仰の有無に関係なく、誰にも認識できるものは(現象化されたもの)は「奇跡」ではなく「異常な現象」であり、「奇跡」とは認識の対象ではなく、現象の背後にあるものに対する信仰の対象であるとしていて、こうした見方を通して、処女降臨やキリストの復活をどう読むかが、分かり易く解説されています。

 この箇所を読んで思い出すのが、カール・テオドア・ドライヤー「奇跡」('54年/デンマーク)という映画で(原題"Ordet"の意味は「言葉」)、1930年頃のデンマークという比較的現代劇に近い状況設定において、それまでの家族間の愛憎を写実的に描いた流れの中で、実際に復活の奇跡が起きるというラストは、大いに感動させられる一方で、どこか別の部分で、奇跡を真面目に映像化するのは難しいなあと思ったりもしました。

奇跡 岩波ホール.jpgドライヤー奇跡.jpg '08年にBS2でも放映されましたが、同じような印象を再度受け、映画そのものは静謐なリアリズムを湛えた、恐ろしいほどの美しさのモノクロ映画で、まさに自分の好みでしたが、最後に奇跡を映像で目の当たりに見せられると、すごい冒険をやってのけたという感じはするものの、所詮、映画ではないかという思いがどこかでちらつく面もありました(これを北森嘉蔵流に言えば、事象を見ているからだということになるのか)。

 「奇跡」●原題:ORDET●制作年:1955年●制作国:デンマーク●監督・脚本:カール・テオドア・ドライヤー●製作:エーリク・ニールセン●撮影:ヘニング・ベンツセン●音楽:ポール・シーアベック●原作:カイ・ムンク ●時間:126分●出演:プレベン・レアドーフ・リュエ/ヘンリック・マルベア/ビアギッテ・フェザースピール/カイ・クリスチアンセン/エーミール・ハス・クリステンセン●日本公開:1979/02●配給:フランス映画社●最初に観た場所:岩波ホール (79-02-27) (評価:★★★★)

 本書の本編(2章「聖書そのものへ」)では、旧約・新約の主だった"立ち止まり所"を13箇所ほど紹介していますが、その選び方に著者の特徴がよく表れていてます。
 
 例えば、創世記17章17-19節で、アブラハムが神との契約により100歳近くなって妻サラとの間に子イサクを授かる前、サラは奴隷女のハガルを夫に遣わしてイシマエルを生ませるも、ハガルがサラを敬わなくなったためにハガル親子を放逐したという話は、まるで正妻と側室の三角関係のような話ですが、アブラハムもサラも神の恩寵を最初は信じていなかった(神の言葉を虚無と感じた)ことを大きなポイントとしながらも、ハガル親子に対する見方が、旧約と新約(パウロ)で異なる点に着眼しているのが興味深く(旧約では恩寵を得ているが、新約では悪役的)、新約の律法的性格を指摘するとともに、その必然性を解説しています。

 少なくとも旧約においてハガル親子はアラビア十二族の先祖となる恩寵に浴しているわけですが、続く土師記16章のサムソンとデリラの物語の解説においても、サムソンを「無明」の者の象徴とし、そうしたスキャンダラスで、本来は聖書に登場する資格のないような者まで登場させ、且つ、その者に最終的には救いを与えたとする点に、聖書という物語の特徴を見出すと共に、ここでも旧約と新約の関係性において、サムソンをイエス・キリストの"透かし模様"と見ているのが興味深いです。

Samson-and-Delilah.jpgサムソンとデリラ.jpg この物語は、セシル・B・デミル監督により「サムソンとデリラ」('49年/米)という映画作品になっていて、ジョン・フォード監督の「荒野の決闘」('46年/米)でドク・ホリデイを演じたヴィクター・マチュア(1913-1999)が主演しました。往々にして怪力男は純粋というか単純というか、デリサムソンとデリラ-s.jpgラのような悪女にコロっと騙されるというパターナルな話であり(アブラハム、サラ、ハガルの三角関係同様に?)、全体にややダルい感じがしなくも無いけれど、ヴィクター・マチュアの"コナン時代"のアーノルド・シュワルツネッガーのようなマッチョぶりは様になっていました。最後の方で、髪を切られて怪力を失ったサムソンが囚われの身となり神に嘆願するシーンはストレートに胸をうち、ラストの神から力を得て大寺院を崩壊させるスペクタルシーンは圧巻、それまで結構だらだら観ていたのに、最後ばかりは思わず力が入り、また、泣けました(カタルシスだけで終わってはマズイいんだろうけれど・・・。と言って、勝手にストーリーを変えたりすることも出来ないだろうし、聖書の物語の映像化は案外と難しい?)

安藤美姫.jpg これ、オペラにもなっていて、カミーユ・サン=サーンスが作曲したテーマ曲はフィギアスケートの安藤美姫選手が以前SP(ショート・プログラム)で使っていましたが、その時の衣装もこの物語をイメージしたものなのかなあ。

「サムソンサムソン&デリラ      30dvd.jpgサムソとデリラ 20dvd.jpgとデリラ」●原題:SAMSON AND DELILAH●制作年:1949年●制作国:アメリカ●監督・製作:セシル・B・デミル●脚本:ジェシー・L・ラスキー・ジュニア/フレドリック・M・フランク●撮影:ジョージ・バーンズ●音楽:ヴィクター・ヤング●原作:ハロルド・ラム●時間:128分●出演:ヴィクター・マチュア/ヘディ・ラマー/ジョージ・サンダース/アンジェラ・ランズベリー/ヘンリー・ウィルコクスン●日本公開:1952/02●配給:パラマウント日本支社(評価:★★★☆) 

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高評価作品が多い30年~50年代。40年~50年代の12作品の著者の評価を自分のと比べると...。

ミュージカル洋画 ぼくの500本.jpg     巴里のアメリカ人08.jpg バンド・ワゴン 映画poster.jpg 南太平洋 チラシ.jpg
ミュージカル洋画ぼくの500本 (文春新書)』 「巴里のアメリカ人」1シーン/「バンド・ワゴン」ポスター/「南太平洋」チラシ

 著者の外国映画ぼくの500本('03年4月)、『日本映画 ぼくの300本』('04年6月)、『外国映画 ハラハラドキドキぼくの500本』('05年11月)、『愛をめぐる洋画ぼくの500本』('06年10月)に続くシリーズ第5弾で、著者は1910年10月生まれですから、刊行年(西暦)の下2桁に90を足せば、刊行時の年齢になるわけですが、凄いなあ。

 本書で取り上げた500本は、必ずしもブロードウェイなどの舞台ミュージカルを映画化したものに限らず、広く音楽映画の全般から集めたとのことですが、確かに「これ、音楽映画だったっけ」というのもあるにせよ、500本も集めてくるのはこの人ならでは。何せ、洋画だけで1万数千本観ている方ですから(「たとえ500本でも、多少ともビデオやDVDを買ったり借りたりするときのご参考になれば幸甚である」とありますが、「たとえ500本」というのが何だか謙虚(?))。

天井桟敷の人々 パンフ.JPG『天井桟敷の人々』(1945).jpg 著者独自の「星」による採点は上の方が厳しくて、100点満点換算すると100点に該当する作品は無く、最高は90点で「天井桟敷の人々」('45年)と「ザッツ・エンタテインメント」('74年)の2作か(但し、個人的には、「天井桟敷の人々」は、一般的な「ミュージカル映画」というイメージからはやや外れているようにも思う)。
 85点の作品も限られており、やはり旧い映画に高評価の作品が多い感じで、70年代から85点・80点の作品は減り、85点は「アマデウス」('84年)が最後、以降はありません。
 これは、巻末の「ミュージカル洋画小史」で著者も書いているように、70年代半ばからミュージカル映画の急激な凋落が始まったためでしょう。

 逆に30年代から50年代にかけては高い評価の作品が目白押しですが、個人的に観ているのは40年代半ば以降かなあという感じで自分で、自分の採点と比べると次の通りです。(著者の☆1つは20点、★1つは5点)

①「天井桟敷の人々」 ('45年/仏)著者 ☆☆☆☆★★(90点)/自分 ★★★★(80点)
天井桟敷の人々1.jpg天井桟敷.jpg天井桟敷の人々 ポスター.jpg 著者は、「規模の雄大さ、精神の雄渾において比肩すべき映画はない」としており、いい作品には違いないが、3時間超の内容は結構「大河メロドラマ」的な要素も。占領下で作られたなどの付帯要素が、戦争を経験した人の評価に入ってくるのでは? 著者は「子供の頃に見た見世物小屋を思い出す」とのこと。実際にそうした見世物小屋を見たことは無いが(花園神社を除いて。あれは、戦前というより、本来は地方のものではないか)、戦後の闇市のカオスに通じる雰囲気も持った作品だし、ヌード女優から伯爵の愛人に成り上がる女主人公にもそれが体現されているような。

「天井桟敷の人々」●原題:LES ENFANTS DU PARADIS●制作年:1945年●制作国:フランス●監督:マルセル・カルネ●製作:フレッド・オラン●脚本:ジャック・プレヴェール●撮影:ロジェ・ユベール/マルク・フォサール●音楽:モーリス・ティリエ/ジョセフ・コズマ●時間:190分●出演:アルレッティ/ジャン=ルイ・バロー/ピエール・ブラッスール/マルセル・エラン/ルイ・サルー/マリア・カザレス/ピエール・ルノワール●日本公開:1952/02●配給:東宝●最初に観た場所:池袋文芸坐(82-03-21)●併映:「ネオ・ファンタジア」(ブルーノ・ボセット)

②「アメリカ交響楽」 ('45年/米)著者 ☆☆☆★★(70点)自分 ★★★☆(70点)
アメリカ交響楽 RHAPSODY IN BLUE.jpgアメリカ交響楽.jpg この映画の原題でもある「ラプソディー・イン・ブルー」や、「スワニー」「巴里のアメリカ人」「ボギーとベス」などの名曲で知られるガーシュウィンの生涯を描いた作品で、モノクロ画面が音楽を引き立てていると思った(著者は、主役を演じたロバート・アルダより、オスカー・レヴァント(本人役で出演)に思い入れがある模様)。因みに、日本で「ロード・ショー」と銘打って封切られた映画の第1号。

「アメリカ交響楽」 ●原題:RHAPSODY IN BLUE●制作年:1945年●制作国:アメリカ●監督:アーヴィン・クーパー●製作:フレッド・オラン●脚本:ハワード・コッホ●撮影:ソル・ポリート●音楽ジョージ・ガーシュウィン●時間:130分●出演:ロバート・アルダ/ジョーン・レスリー/アレクシス・スミス/チャールズ・コバーン/アルバート・バッサーマン/オスカー・レヴァント/ポール・ホワイトマン/ジョージ・ホワイト/ヘイゼル・スコット/アン・ブラウン、アル・ジョルスン/ジュリー・ビショップ●日本公開:1947/03●配給:ワーナー・ブラザース映画●最初に観た場所:テアトル新宿(85-09-23)

③「錨を上げて」 ('45年/米)著者 ☆☆☆★(65点)自分 ★★★(60点)
錨を上げて08.jpg錨を上げて2.jpg錨を上げて.jpgAnchors Aweigh.jpg 4日間の休暇を得てハリウッドへ行った2人の水夫の物語。元気のいい映画だけど、2時間20分は長かった。ジーン・ケリーがアニメ合成でトム&ジェリーと踊るシーンは「ロジャー・ラビット」の先駆けか(著者も、その技術を評価。ジーン・ケリーが呼び物の映画だとも)。
錨を上げて アニメ.jpg
「錨を上げて」●原題:ANCHORS AWEIGH●制作年:1945年●制作国:アメリカ●監督:ジョージ・シドニー●製作:ジョー・パスターナク●脚本:イソベル・レナート●撮影:ロバート・プランク/チャールズ・P・ボイル●音楽監督:ジョージー・ストール●原作:ナタリー・マーシン●時間:140分●出演:フランク・シナトラ/キャスリン・グレイソン/ジーン・ケリー/ホセ・イタービ /ディーン・ストックウェル/パメラ・ブリットン/ジョージ・シドニー●日本公開:1953/07●配給:MGM日本支社●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

④「夜も昼も」 ('46年/米)著者 ☆☆☆★(65点)自分 ★★★(60点)
NIGHT AND DAY 1946.jpg夜も昼も NIGHT AND DAY.jpgNight and Day Cary Grant.jpg アメリカの作曲家コール・ポーターの伝記作品。著者の言う通り、「ポーターの佳曲の数々を聴かせ唄と踊りの総天然色場面を楽しませる」のが目的みたいな作品(曰く「その限りにおいては楽しい」と)。

「夜も昼も」●原題:NIGHT AND DAY●制作年:1946年●制作国:アメリカ●監督:マイケル・カーティズ●製作:アーサー・シュワルツ●脚本:チャールズ・ホフマン/レオ・タウンゼンド/ウィリアム・バワーズ●撮影:ペヴァレル・マーレイ/ウィリアム・V・スコール●音楽監督:レオ・F・フォーブステイン●原作:ナタリー・マーシン●時間:116分●出演:ケーリー・グラント/アレクシス・スミス/モンティ・ウーリー/ジニー・シムズ/ジェーン・ワイマン/カルロス・ラミレス●日本公開:1951/01●配給:セントラル●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

⑤「赤い靴」('48年/英)著者 ☆☆☆☆(80点)自分 ★★★(60点)
赤い靴 ポスター.jpg赤い靴.jpg赤い靴2.jpg ニジンスキーとロシア・バレエ団の主宰者ディアギレフとの関係がモデルといわれているバレエもの(ハーバート・ロス監督の「ニジンスキー」('79年/英)は両者の確執にフォーカスした映画だった)だが、主人公が女性になって、「仕事か恋か」という今も変わらぬ?テーマになっている感じ。著者はモイラ・シアラーの踊りを高く評価している。ヨーロッパには「名人の作った赤い靴をはいた者は踊りの名手になれるが、一生踊り続けなければモイラ・シアラー.jpgならない」という「赤い靴」の伝説があるそうだが、「赤い靴」と言えばアンデルセンが先に思い浮かぶ(一応、そこから材を得ているとのこと)。

「赤い靴」 ●原題:THE RED SHOES●制作年:1948年●制作国:イギリス●監督:エメリック・プレスバーガー●製作:マイケル・パウエル/エメリック・プレスバーガー●脚本:マイケル・パウエル/エメリック・プレスバーガー●撮影:ジャック・カーディフ●音楽演奏:ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ●原作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン●時間:136分●出演:アントン・ウォルブルック/マリウス・ゴーリング/モイラ・シアラー/ロバート・ヘルプマン/レオニード・マシーン●日本公開:1950/03●配給:BCFC=NCC●最初に観た場所:高田馬場パール座(77-11-10)●併映:「トリュフォーの思春期」(フランソワ・トリュフォー)
モイラ・シアラー

⑥「イースター・パレード」('48年/英)著者 ☆☆☆☆(80点)自分 ★★★☆(70点)
Easter Parade (1949).jpgイースター・パレード dvd.jpg ジュディ・ガーランドとフレッド・アステアのコンビで、ショー・ビズものとも言え、一旦引退したアステアが、骨折のジーン・ケリーのピンチヒッター出演で頑張っていて、著者の評価も高い(戦後、初めて輸入された総天然色ミュージカルであることも影響している?)。

「イースター・パレード」●原題:EASTER PARADE●制作年:1948年●制作国:アメリカ●監督:チャールズ・ウォルターズ●製作:アーサー・フリード●脚色:シドニー・シェルダン/フランセス・グッドリッチ/アルバート・ハケット●撮影:ハリー・ストラドリング●音楽演奏:ジョニー・グリーン/ロジャー・イーデンス●原作:フランセス・グッドリッチ/アルバート・ハケット●時間:136分●出演:ジュディ・ガーランド/フレッド・アステア/ピーター・ローフォード/アン・ミラー/ジュールス・マンシュイン●日本公開:1950/02●配給:セントラル●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

⑦「踊る大紐育」('49年/米)著者 ☆☆☆☆★(85点)自分 ★★★☆(70点)
踊る大紐育.jpg 24時間の休暇をもらった3人の水兵がニューヨークを舞台に繰り広げるミュージカル。3人が埠頭に降り立って最初に歌うのは「ニューヨーク、ニューヨーク」。振付もジーン・ケリーが担当した。著者はヴェラ=エレンの踊りが良かったと。

踊る大紐育(ニューヨーク) dvd.jpg「踊る大紐育」●原題:ON THE TOWN●制作年:1949年●制作国:アメリカ●監督:スタンリー・ドーネン●製作:アーサー・フリード●脚本:ベティ・カムデン/アドルフ・グリーン●撮影:ハロルド・ロッソン●音楽:レナード・バーンスタイン●原作:ベティ・カムデン/アドルフ・グリーン●時間:98分●出演:ジーン・ケリー/フランク・シナトラ/ジュールス・マンシン/アン・ミラー/ジュールス・マンシュイン/ベティ・ギャレット/ヴェラ・エレン●日本公開:1951/08●配給:セントラル●最初に観た場所:テアトル新宿(85-09-23)

巴里のアメリカ人 ポスター.jpg⑧「巴里のアメリカ人」 ('51年/米)著者 ☆☆☆☆★(85点)自分 ★★★★(80点)
巴里のアメリカ人2.jpg巴里のアメリカ人 dvd.jpg 音楽はジョージ・ガーシュイン。踊りもいいし、ストーリーも良く出来ている。著者の言う様に、舞台装置をユトリロやゴッホ、ロートレックなど有名画家の絵に擬えたのも楽しい。著者は「一番感心すべきはジーン・ケリー」としているが、アクロバティックな彼の踊りについていくレスリー・キャロンも中国雑伎団みたいで凄い(1951年アカデミー賞作品)。

ジーンケリーとレスリーキャロン.jpg巴里のアメリカ人09.jpg「巴里のアメリカ人」●原題:AN AMERICAN IN PARIS●制作年:1951年●制作国:アメリカ●監督:ヴィンセント・ミネリ●製作:アーサー・フリード●脚本:アラン・ジェイ・ラーナー●撮影:アルフレッド・ギルクス●音楽:ジョージ・ガーシュイン●時間:113分●出演:ジーン・ケリー/レスリー・キャロン/オスカー・レヴァント/ジョルジュ・ゲタリー/ユージン・ボーデン/ニナ・フォック●日本公開:1952/05●配給:MGM日本支社●最初に観た場所:高田馬場パール座(78-05-27)●併映:「シェルブールの雨傘」(ジャック・ドゥミ)

⑨「バンド・ワゴン」('53年/米)著者 ☆☆☆☆★(85点)自分 ★★★★(80点)
バンド・ワゴン08.jpgバンド・ワゴン2.jpgバンド・ワゴン.jpgバンド・ワゴン 特別版 [DVD].jpgシド・チャリシー.jpg 落ち目のスター、フレッド・アステアの再起物語で、「イースター・パレード」以上にショー・ビズもの色合いが強い作品だが、コメディタッチで明るい。ストーリーは予定調和だが、本書によれば、ミッキー・スピレーンの探偵小説のパロディが織り込まれているとのことで、そうしたことも含め、通好みの作品かも。但し、アステアとシド・チャリシーの踊りだけでも十分楽しめる。シド・チャリシーの踊りも、レスリー・キャロンと双璧と言っていぐらいスゴイ。

THE BANDO WAGON.jpg「バンド・ワゴン」●原題:THE BANDO WAGON●制作年:1953年●制作国:アメリカ●監督:ヴィンセント・ミネリ●製作:アーサー・フリード●脚本:ベティ・コムデン/アドルフ・グリーン●撮影:ハリー・ジャクソン●音楽:アドルフ・ドイッチ/コンラッド・サリンジャー●時間:112分●出演:フレッド・アステア/シド・チャリシー/オスカー・レヴァント/ナネット・ファブレー●日本公開:1953/12●配給:MGM●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

⑩「パリの恋人」('53年/米)著者 ☆☆☆☆(80点)自分 ★★★☆(70点)
パリの恋人dvd.jpg『パリの恋人』(1957).jpgパリの恋人 映画ポスター.jpg 著者曰く「すばらしいファション・ミュージカル」であり、オードリー・ヘプバーンの魅力がたっぷり味わえると(原題の「ファニー・フェイス」はもちろんヘップバーンのことを指す)。
Funny Face.jpg 衣装はジバンシー、音楽はガーシュウィンで、音楽と併せて、女性であればファッションも楽しめるのは確か。
'S Wonderful.bmp ちょっと「マイ・フェア・レディ」に似た話で、「マイ・フェア・レディ」が吹替えなのに対し、こっちはオードリー・ヘプバーン本人の肉声の歌が聴ける。それにしても、一旦引退したこともあるはずのアステアが元気で、とても57才とは思えない。結局、更に20余年、「ザッツ・エンタテインメント」('74年)まで活躍したから、ある意味"超人"的。

『パリの恋人』(1957) 2.jpgパリの恋人 パンフ.jpg「パリの恋人」●原題:FUNNY FACE●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:スパリの恋人 パンフ.jpgタンリー・ドーネン●製作:アーサー・フリード●脚本:レナード・ガーシェ●撮影:レイ・ジューン●音楽:ジョージ・ガーシュウィン/アドルフ・ドイッチ●時間:103分●出演:オードリー・ヘプバーン/フレッド・アステア/ケイ・トンプスン/ミシェル・オークレール●日本公開:1957/02●配給:パラマウント映画●最初に観た場所:高田馬場ACTミニシアター(85-11-03)●併映:「リリー・マルレーン」(ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー) 
南太平洋パンフレット.jpg
⑪「南太平洋」('58年/米)著者 ☆☆☆★(65点)自分 ★★★☆(70点)
  1949年初演のブロードウェイ版の監督であるジョシュア・ローガンが映画版でもそのまま監督したもので、ハワイのカウアイ島でロケが行われた(一度だけ行ったことがあるが、火山活動によって出来た島らしい、渓谷や湿地帯ジャングルなど、野趣溢れる自然が満喫できる島だった)。
 著者は「戦時色濃厚な」作品であるため、あまり好きになれないようだが、それを言うなら、著者が高得点をつけている「シェルブールの雨傘」などは、フランス側の視点でしか描かれていないとも言えるのでは。超エスニック、大規模ロケ映画で、空も海も恐ろ「南太平洋」(自由が丘武蔵野館).jpgしいくらい青い(カラーフィルターのせいか?)。トロピカル・ナンバーの定番になった主題歌「バリ・ハイ」や「魅惑の宵」などの歌曲もいい。

「南太平洋」映画チラシ/期間限定再公開(自由が丘武蔵野館) 1987(昭和62)年7月4日~7月31日 
       
                                             
南太平洋(87R).jpg南太平洋.jpg「南太平洋」●原題:SOUTH PACIFIC●制作年:1958年●制作国:アメリカ●監督:ジョシュア・ローガン●製作:バディ・アドラー●脚本:ポール・オスボーン●撮影:レオン・シャムロイ●音楽:リチャード・ロジャース●原作:ジェームズ・A・ミッチェナー ●原作戯曲:オス自由が丘武蔵野館.jpgカー・ハマースタイン2世/リチャード・ロジャース/ジョシュア・ローガン●時間:156分●出演:ロッサノ・ブラッツィ/ミッチー・ゲイナー/ジョン・カー/レイ・ウォルストン/フランス・ニューエン/ラス・モーガン●日本公開:1959/11●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:自由が丘武蔵野館(87-07-05)(リバイバル・ロードショー) 自由が丘武蔵野館 (旧・自由が丘武蔵野推理) 1951年「自由が丘武蔵野推理」オープン。1985(昭和60)年11月いったん閉館し改築、「自由が丘武蔵野館」と改称し再オープン。2004(平成16)年2月29日閉館。

⑫「黒いオルフェ」('59年/仏)著者 ☆☆☆☆(80点)自分 ★★★★(80点)
黒いオルフェ2.jpg黒いオルフェ (1959).jpg黒いオルフェ dvd.jpg 娯楽作品と言うより芸術作品。ジャン・コクトーの「オルフェ」('50年)と同じギリシア神話をベースにしているとのことだが、ちょっと難解な部分も。著者も言うように、リオのカーニヴァルの描写が素晴らしい。

「黒いオルフェ」●原題:ORFEO NEGRO●制作年:1959年●制作国:フランス●監督:マルセル・カミュ●製作:バディ・アドラー●脚本:マルセル・カミュ/ジャック・ヴィオ●撮影:ジャン・ブールゴワン●音楽:アントニオ・カルロス・ジョビン/ルイス・ボンファ●原作:ヴィニシウス・デ・モライス●時間:107分●出演:ブレノ・メロ/マルペッサ・ドーン/マルセル・カミュ/ファウスト・グエルゾーニ/ルルデス・デ・オリベイラ/レア・ガルシア/アデマール・ダ・シルバ●日本公開:1960/07●配給:東和●最初に観た場所:八重洲スター座(79-04-15)

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「●は行の外国映画の監督①」の インデックッスへ 「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「○都内の主な閉館映画館」の インデックッスへ(三軒茶屋映画劇場/歌舞伎町シネマ1) インデックッスへ(新宿アカデミー)

「裏窓」×「めまい」+α。B級と言う人も多いが、個人的には好きな「ボディ・ダブル」。

ボディ・ダブル2.jpg 『ボディ・ダブル』(1984)2.jpg  殺しのドレス.jpg めまい.jpg 
ブライアン・デ・パルマ「ボディ・ダブル [DVD]」「殺しのドレス スペシャル・エディション [DVD]」  アルフレッド・ヒッチコック「めまい (ユニバーサル・セレクション2008年第5弾) 【初回生産限定】 [DVD]

BODY DOUBLE.jpgBODY  DOUBLE.jpg B級映画俳優のジェイク(クレイグ・ワッソン)は、ドラキュラ映画の主演で棺に入るシーンで閉所恐怖症の発作を起こしてクビになり、失意のまま帰宅したところ、同棲中の恋人が男と情事にふけっているという散々な有様。家は彼女のものであり、意気消沈のまま家を出た彼は、あるオーディション会場で、サム(グレッグ・ヘンリー)という男と知り合い彼の家へ招かれる。そこはモBODY DOUBLE● 1984 3.jpgBODY DOUBLE● 1984 1.jpgダンな豪邸で、サムはジェイクに留守中の家の管理を頼むとともに、望遠鏡越しに見える魅惑的な隣人(デボラ・シェルトン)の存在を教える―。

 ヒッチコックの「裏窓」('54年)と「めまい」('58年)を足して2で割ったような作品ですが、そうしたこともあって評価の割れる作品かも。

DRESSED TO KILL Angie Dickinson.jpg  ブライアン・デ・パルマ監督の同系統のサスペンス作品では「殺しのドレス」('80年)が知られてますが、確かに面白い作品で、美術館でのなめまわすようなカメラワークや、「サイコ」を意識したアンジー・ディキンソンのシャワーシーン(「サイコ」同様、ボディショットは代役らしい)などが印象的でしたが、但し、観ている間はすごくのめり込まされるのですが、その分、終わってみるとな〜んだみたいな面もややありました(評価は星4つ。映画全体としては決して悪くなく、むしろ佳作の部類)。
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 ただ個人的には、「ボディ・ダブル」の方が、観終わったあとの印象も含めると「殺しのドレス」より良かったように思え、他の同監督の作品と比べても、最も自分の好みに近い作品です。

 意図的にあまり有名ではない俳優を使って撮っていて(メラニー・グリフィスも当時まだ売り出し中)、エロチックMelanie Griffith.jpgなシーンもふんだんにあり、この映画自体もB級の雰囲気を醸していますが、そこが却ってキッチュでいい。

 ヒッチコックへのオマージュを込めながらも、ミステリとしてのオリジナリティは十分にあるように思われ、個人的には「裏窓」×「めまい」+アルファという評価ですが、観る人によっては、最後が"マイナス"になる人もいるかも。

Melanie Griffith 「ボディ・ダブル」より

ワーキング・ガール チラシ.jpgワーキング・ガール 86米.jpgメラニー・グリフィス in  ワーキング・ガール.jpg 映画後半に出てくるポルノ女優を演じたメラニー・グリフィスは、ヒッチコック監督作品「鳥」('63年)のヒロイン役を演じたティッピ・ヘドレンの娘で、この作品で彼女は演技開眼し、マイク・ニコルズ監督の「ワーキング・ガール」('88年)では、シガニー・ウィーバー、ハリソン・フォードらに伍する演技で、アカデミー主演女優賞にノミネートされています。
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ワーキング・ガール 2.jpg ウォール街の投資銀行のM&A部門で働く秘書(メラニー・グリフィス)が、尊大な女性上司(シガニー・ウィーバー)がスキー休暇中に骨折し職場復帰するまでの間に、上司の愛人(ハリソン・フォード)と共に進行中の合併話を期せずして進行させることになるというサクセス・ストーリーですが、メラニー・グリフィス、シガニー・ウィーバー共にいい味出していて、映画自体もまあまあ楽しめました。冒頭にワールドトレードセンター(WTC)の空撮が出てきますが、この作品自体WTCで撮影されています。因みに、"ワーキング・ガール"というタイトルには「キャリア・ウーマン」の他に「娼婦」という意味もあります。

ヒチコック監督「めまい」より
『めまい』.jpgKim Novak.jpg映画「めまい」1958 より.jpg 「ボディ・ダブル」の作品ベースとなっているヒッチコックの「裏窓」('54年)「めまい」('58年)では、(一般的には「裏窓」は評価が安定していて、「めまい」の方は評価の割れることが多いように思われるものの)個人的には「めまい」の方が優れているように思うのですが、「めまい」.jpgこの「めまい」という作品はそのカメラワークにおいて、ズームアウトしながらカメラを前方へ動かすことで被写体のサイズが変わらずに広角になる映し方(逆ズーム)で墜落感を表す手法や、カメラが被写体の周りを回る映し方(360°パン)でキスシーンなどの陶酔感を表す手法などが用いられていることでも有名で、デ・パルマ監督もこの作品でそうした技法をしっかり採り入れています。
 キム・ノヴァクの妖しげな魅力が印象に残った映画でもありました。 
 

BODY DOUBLE● 1984 F.jpgBODY DOUBLE.jpg「ボディ・ダブル」●原題:BODY DOUBLE●制作年:1984年●制作国:アメリカ●監督・製作:ブライアン・デ・パルマ●脚本:ロバート・J・アヴレッチ/ブライアン・デ・パルマ●撮影:スティーヴン・H・ブラム●音楽:ピノ・ドナッジオ●時間:114分●出演:クレイグ・ワッソン/グレッグ・ヘンリー/デボラ・シェルトン/メラニー・グリフィス/ガイ・ボイド/デヴィッド・ハスケル/デニス・フランツ/アル・イズラエル/レベッカ・ スタンリー/ダグラス・ワーヒット/B・J・ジョーンズ/ラス・マリン/レーン・デイヴィース●日本公開:1985/02●配給:コロムビア映画●最初に観た場所:三軒茶屋映劇 (85-09-15)(評価:★★★★☆)●併映:「聖女アフロディーテ」(ロバート・フュースト)/「ブレスレス」(ジム・マクブライド)
三軒茶屋映劇 2.jpg三軒茶屋シネマ/中央劇場.jpg三軒茶屋付近.png三軒茶屋映画劇場 1925年オープン(国道246号沿い現サンタワービル辺り)。1992(平成4)年3月13日閉館(左写真左)。菅野 正 写真展 「平成ラストショー hp」より 同系列の三軒茶屋中央劇場(上右写真中央並びに下写真)は1952年、世田谷通りの裏通り「なか三軒茶屋中央劇場0.jpg三軒茶屋中央劇場入口s.jpgみち街」にオープン。 ①三軒茶屋東映(→三軒茶屋シネマ)2014(平成26)年7月20日閉館 ②三軒茶屋映劇(映画劇場)(現サンタワービル辺り)1992(平成4)年閉館 ③三軒茶屋中劇(中央劇場))2013(平成25)年2月14日閉館


三軒茶屋中央劇場入口:桑原甲子雄の写真集より
三軒茶屋中央劇場:「東京遺産な建物たち」より

『殺しのドレス』(1980) 2.jpg「殺しのドレス」●原題:DRESSED TO KILL●制作年:1980年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ブライアン・デ・パルマ●製作:ジョージ・リットー●撮影:ラルフ・ボード●音楽:ピノ・ドナッジオ●時間:114分●出演:マイケル・ケイン/アンジー・ディキンソン/ナンシー・アレン/キース・ゴードン/デニス・フランツ/デヴィッド・ マーグリーズ/ブランドン・マガート●日本公開:1981/04●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:六本木・俳優座シネマテン(81-04-03)●2回目:テアトル吉祥寺 (86-02-15)(評価:★★★★)●併映(2回目):「デストラップ 死の罠」(シドニー・ルメット)/「日曜日が待ち遠しい!」(フランソワ・トリュフォー)/「ハメット」(ヴィム・ヴェンダース)

新宿アカデミー.jpgワーキング・ガール .jpg「ワーキング・ガール」●原題:WORKING GIRL●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:マイク・ニコルズ●製作:ダグラス・ウィック●脚本:ケヴィン・ウェイド●撮影:ミハエル・バルハウス●音楽:カーリー・サイモン●時間:115分●出演:ハリソン・フォード/シガニー・ウィーバー/メラニー・グリフィス/アレック・ボールドウィン/オリバー・プラット/ケヴィン・スペーシー/ジョーン・キューザック●日本公開:1989/05●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:新宿アカデミー (89-07-08)(評価:★★★☆) 新宿アカデミー 1975年12月「第一東亜会館」新装に伴い2Fにオープン。2009(平成21)年11月30日閉館。
 

キム・ノヴァク4.jpgめまい パンフ.jpg「めまい」●原題:VERTIGO●制作年:1958年●制作国:アメリカ●監督・製作:アルフレッド・ヒッチコック●脚本:アレック・コペル/サミュエル・テイラー●撮影:ロバート・「めまい」●vertigob.jpgバークス●音楽:バーナード・ハーマン●原作:ピエール・ボワロー/トマ・ナルスジャック「死者の中から」●時間:128分●出演:ジェイムズ・スチュアート/キム・ノヴァク(Kim Novak)/バーバラ・ベル・ゲデス/トム・ヘルモア/ヒューマックスパビリオン 新宿歌舞伎町.jpgヘンリー・ジョーンズ/レイモンド・ベイリー/エレン・コービイ/リー・パトリック●日本公開:1958/10●配給:パラマウント映画●最初に観た場所:歌舞伎町シネマ1(84-03-31)(評価:★★★★) 
歌舞伎町シネマ1・歌舞伎町シネマ2 1985年、コマ劇場左(グランドオヲデオンビル隣り)「新宿ジョイパックビル」(現「ヒューマックスパビリオン新宿歌舞伎町」)2Fにオープン→1995年7月~新宿ジョイシネマ3・新宿ジョイシネマ4。1997(平成9)年11月閉館。

《読書MEMO》
"Sight & Sound"誌映画批評家によるオールタイム・ベスト50 (The Top 50 Greatest Films of All Time)(2012年版)[姉妹版:映画監督による選出トップ10 (Director's Top 10 Films)(2012年版)の上位100作品)
めまい_m.jpg 1.『めまい』"Vertigo"(1958/米) 監督:アルフレッド・ヒッチコック 191票
 2.『市民ケーン』"Citizen Kane"(1941/米) 監督:オーソン・ウェルズ 157票
 3.『東京物語』"Tokyo Story"(1953/日) 監督:小津安二郎 107票
 4.『ゲームの規則』"La Règle du jeu"(1939/仏) 監督:ジャン・ルノワール 100票
 5.『サンライズ』"Sunrise: A Song of Two Humans"(1927/米) 監督:F・W・ムルナウ 93票
 6.『2001年宇宙の旅』"2001: A Space Odyssey"(1968/米・英) 監督:スタンリー・キューブリック 90票
 7.『捜索者』"The Searchers"(1956/米) 監督:ジョン・フォード 78票
 8.『カメラを持った男』"Man with a Movie Camera"(1929/ソ連) 監督:ジガ・ヴェルトフ 68票
 9.『裁かるゝジャンヌ』"The Passion of Joan of Arc"(1927/仏)  監督:カール・ドライヤー 65票
 10.『8½』"8½"(1963/伊) 監督:フェデリコ・フェリーニ 64票
 11.『戦艦ポチョムキン』"Battleship Potemkin"(1925/ソ連) 監督:セルゲイ・エイゼンシュテイン 63票
 12.『アタラント号』"L'Atalante"(1934/仏) 監督:ジャン・ヴィゴ 58票
 13.『勝手にしやがれ』"Breathless"(1960/仏) 監督:ジャン=リュック・ゴダール 57票
 14.『地獄の黙示録』"Apocalypse Now"(1979/米) 監督:フランシス・フォード・コッポラ 53票
 15.『晩春』"Late Spring"(1949/日) 監督:小津安二郎 50票
 16.『バルタザールどこへ行く』"Au hasard Balthazar"(1966/仏・スウェーデン)監督:ロベール・ブレッソン49票
 17.『七人の侍』"Seven Samurai"(1954/日) 監督:黒澤明 48票
 17.『仮面/ペルソナ』"Persona"(1966/スウェーデン) 監督:イングマール・ベルイマン 48票
 19.『鏡』"Mirror"(1974/ソ連) 監督:アンドレイ・タルコフスキー 47票
 20.『雨に唄えば』"Singin'in the Rain"(1951/米) 監督:スタンリー・ドーネン & ジーン・ケリー 46票
 21.『情事』"L'avventura"(1960/伊) 監督:ミケランジェロ・アントニオーニ 43票
 21.『軽蔑』"Le Mépris"(1963/仏・伊・米) 監督:ジャン=リュック・ゴダール 43票
 21.『ゴッドファーザー』"The Godfather"(1972/米) 監督:フランシス・フォード・コッポラ 43票
 24.『奇跡』"Ordet"(1955/ベルギー・デンマーク) 監督:カール・ドライヤー 42票
 24.『花様年華』"In the Mood for Love"(2000/香港) 監督:ウォン・カーウァイ 42票
 26.『羅生門』"Rashomon"(1950/日) 監督:黒澤明 41票
 26.『アンドレイ・ルブリョフ』"Andrei Rublev"(1966/ソ連) 監督:アンドレイ・タルコフスキー 41票
 28.『マルホランド・ドライブ』"Mulholland Dr."(2001/米) 監督:デイヴィッド・リンチ 40票
 29.『ストーカー』"Stalker"(1979/ソ連) 監督:アンドレイ・タルコフスキー 39票
 29.『SHOAH』"Shoah"(1985/仏) 監督:クロード・ランズマン 39票
 31.『ゴッドファーザー PartⅡ』"The Godfather Part II"(1974/米) 監督:フランシス・フォード・コッポラ 38票
 31.『タクシー・ドライバー』"Taxi Driver"(1976/米) 監督:マーティン・スコセッシ 38票
 33.『自転車泥棒』"Bicycle Thieves"(1948/伊) 監督:ヴィットリオ・デ・シーカ 37票
 34.『キートンの大列車追跡』"The General"(1926/米) 監督:バスター・キートン&クライド・ブラックマン35票
 35.『メトロポリス』"Metropolis"(1927/独) 監督:フリッツ・ラング 34票
 35.『サイコ』"Psycho"(1960/米) 監督:アルフレッド・ヒッチコック 34票
 35."Jeanne Dielman, 23 quai du Commerce 1080 Bruxelles"(ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマン)(1975/ベルギー・仏) 監督:シャンタル・アケルマン 34票
 35.『サタンタンゴ』"Sátántangó"(1994/ハンガリー・独・スイス) 監督:タル・ベーラ 34票
 39.『大人は判ってくれない』"The 400 Blows"(1959/仏) 監督:フランソワ・トリュフォー 33票
 39.『甘い生活』"La dolce vita"(1960/伊) 監督:フェデリコ・フェリーニ 33票
 41.『イタリア旅行』"Journey to Italy"(1954/伊) 監督:ロベルト・ロッセリーニ 32票
 42.『大地のうた』"Pather Panchali"(1955/印) 監督:サタジット・レイ 31票
 42.『お熱いのがお好き』"Some Like It Hot"(1959/米) 監督:ビリー・ワイルダー 31票
 42.『ガートルード』"Gertrud"(1964/デンマーク) 監督:カール・ドライヤー 31票
 42.『気狂いピエロ』"Pierrot le fou"(1965/仏・伊) 監督:ジャン=リュック・ゴダール 31票
 42.『プレイタイム』"Play Time"(1967/仏) 監督:ジャック・タチ 31票
 42.『クローズ・アップ』"Close-Up"(1990/イラン) 監督:アッバス・キアロスタミ 31票
 48.『アルジェの戦い』"The Battle of Algiers"(1966/伊・アルジェリア) 監督:ジッロ・ポンテコルヴォ 30票
 48.『映画史』"Histoire(s) du cinéma"(1998/仏) 監督:ジャン=リュック・ゴダール 30票
 50.『街の灯』"City Lights"(1931/米) 監督:チャーリー・チャップリン 29票
 50.『雨月物語』"Ugetsu monogatari"(1953/日) 監督:溝口健二 29票
 50.『ラ・ジュテ』"La Jetée"(1962/仏) 監督:クリス・マルケル 29票

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●52位以降250位(235位)まで
 52.『北北西に進路を取れ』"North By Northwest"(1959/米) 監督:アルフレッド・ヒッチコック
 53.『裏窓』"Rear Window"(1954/) 監督:アルフレッド・ヒッチコック
 53.『レイジング・ブル』"Raging Bull"(1980/米) 監督:マーティン・スコセッシ
 56.『M』"M"(1931/独) 監督:フリッツ・ラング
 57.『山猫』"The Leopard"(1963/伊・仏) 監督:ルキノ・ヴィスコンティ
 57.『黒い罠』"Touch Of Evil"(1958/米) 監督:オーソン・ウェルズ
 59.『キートンの探偵学入門』"Sherlock Jr"(1924/米) 監督:バスター・キートン
 59.『バリー・リンドン』"Barry Lyndon"(1975/英・米) 監督:スタンリー・キューブリック
 59.『ママと娼婦』"La Maman et la putain"(1973/仏) 監督:ジャン・ユスターシュ
 59.『山椒太夫』"Sansho Dayu"(1954/日) 監督:溝口健二
 63.『野いちご』"Wild Strawberries"(1957/スウェーデン) 監督:イングマール・ベルイマン
 63.『モダン・タイムス』"Modern Times"(1936/米) 監督:チャーリー・チャップリン
 63.『サンセット大通り』"Sunset Blvd."(1950/米) 監督:ビリー・ワイルダー
 63.『狩人の夜』"The Night of the Hunter"(1955/米) 監督:チャールズ・ロートン
 63.『スリ』"Pickpocket"(1959/仏) 監督:ロベール・ブレッソン
 63.『リオ・ブラボー』"Rio Bravo"(1958/米) 監督:ハワード・ホークス
 69.『ブレードランナー』"Blade Runner"(1982/米) 監督:リドリー・スコット
 69.『ブルー・ベルベット』"Blue Velvet"(1986/米) 監督:デイヴィッド・リンチ
 69.『サン・ソレイユ』"Sans Soleil"(1982/仏) 監督:クリス・マルケル
 69.『抵抗( レジスタンス)/死刑囚の手記より』"A Man Escaped"(1956/仏) 監督:ロベール・ブレッソン
 73.『第三の男』"The Third Man"(1949/英) 監督:キャロル・リード
 73.『太陽はひとりぼっち』"L'eclisse"(1962/伊・仏) 監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
 73.『天井桟敷の人々』"Les enfants du paradis"(1945/仏) 監督:マルセル・カルネ
 73.『大いなる幻影』"La Grande Illusion"(1937/仏) 監督:ジャン・ルノワール
 73.『ナッシュビル』"Nashville"(1975/米) 監督:ロバート・アルトマン
 78.『チャイナタウン』"Chinatown"(1974/米) 監督:ロマン・ポランスキー
 78.『美しき仕事』"Beau Travail"(1998/仏) 監督:クレール・ドゥニ
 78.『ウエスタン』"Once Upon a Time in the West"(1968/伊・米) 監督:セルジオ・レオーネ
 81.『偉大なるアンバーソン家の人々』"The Magnificent Ambersons"(1942/米) 監督:オーソン・ウェルズ
 81.『アラビアのロレンス』"Lawrence Of Arabia"(1962/英) 監督:デイヴィッド・リーン
 81.『ミツバチのささやき』"The Spirit of the Beehive"(1973/西) 監督:ヴィクトル・エリセ
 84.『ファニーとアレクサンデル』"Fanny and Alexander"(1984/スウェーデン) 監督:イングマール・ベルイマン
 84.『カサブランカ』"Casablanca"(1942/米) 監督:マイケル・カーティス
 84.『ざくろの色』"The Colour of Pomegranates"(1968/ソ連) 監督:セルゲイ・パラジャーノフ
 84.『グリード』"Greed"(1925/米) 監督:エーリッヒ・フォン・シュトロハイム
 84.『クーリンチェ少年殺人事件』"A Brighter Summer Day"(1991/台湾) 監督:エドワード・ヤン
 84.『ワイルドバンチ』"The Wild Bunch"(1969/米) 監督:サム・ペキンパー
 90.『ピクニック』"Partie de campagne"(1936/仏) 監督:ジャン・ルノワール
 90.『アギーレ 神の怒り』"Aguirre, Wrath of God"(1972/西独) 監督:ヴェルナー・ヘルツォーク
 90.『天国への階段』"A Matter of Life and Death"(1946/英) 監督:マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー
 93.『第七の封印』"The Seventh Seal"(1957/スウェーデン) 監督:イングマール・ベルイマン
 93.『アンダルシアの犬』"Un chien andalou"(1928/仏) 監督:ルイス・ブニュエル
 93.『イントレランス』"Intolerance"(1916/米) 監督:D・W・グリフィス
 93.『ヤンヤン 夏の想い出』"A One and a Two"(1999/台湾・日) 監督:エドワード・ヤン
 93.『老兵は死なず』"The Life and Death of Colonel Blimp"(1943/英) 監督:マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー
 93.『トゥキ・ブゥキ / ハイエナの旅』"Touki Bouki"(1973/セネガル) 監督:ジブリル・ジオップ・マンベティ(Djibril Diop Mambéty)
 93.『不安と魂』"Fear Eats the Soul"(1974/西独) 監督:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
 93.『悲しみは空の彼方に』"Imitation of Life"(1959/米) 監督:ダグラス・サーク
 93.『たそがれの女心』"Madame de..."(1953/仏・伊) 監督:マックス・オフュルス
 102."Wavelength"(1967/カナダ・米) 監督:マイケル・スノウ(Michael Snow)
 102.『暗殺の森』"The Conformist"(1970/伊・仏・西独) 監督:ベルナルド・ベルトルッチ
 102.『旅芸人の記録』"The Travelling Players"(1975/ギリシャ) 監督:テオ・アンゲロプロス
 102.『午後の網目』"Meshes of the Afternoon"(1943/米) 監督:マヤ・デレン、アレクサンダー・ハミッド
 102.『彼女について私が知っている二、三の事柄』"Two or Three Things I Know About Her..."(1967/仏・伊) 監督:ジャン=リュック・ゴダール
 102.『ツリー・オブ・ライフ』"The Tree of Life"(2010/米) 監督:テレンス・マリック
 102.『イワン雷帝』"Ivan the Terrible"(1945/ソ連) 監督:セルゲイ・エイゼンシュテイン
 102.『去年マリエンバードで』"Last Year At Marienbad"(1961/仏・伊) 監督:アラン・レネ
 110.『レディ・イヴ』"The Lady Eve"(1941/米) 監督:プレストン・スタージェス
 110.『忘れられた人々』"Los Olvidados"(1950/メキシコ) 監督:ルイス・ブニュエル
 110.『赤ちゃん教育』"Bringing Up Baby"(1938/米) 監督:ハワード・ホークス
 110.『パフォーマンス』"Performance"(1970/英) 監督:ドナルド・キャメル、ニコラス・ローグ
 110.『さすらいの二人』"The Passenger"(1974/米) 監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
 110.『ビリディアナ』"Viridiana"(1961/西・メキシコ) 監督:ルイス・ブニュエル
 110.『黄金時代』"L' Age d'Or"(1930/仏) 監督:ルイス・ブニュエル
 117."A Canterbury Tale"(1944/英) 監督:マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー
 117.『少女ムシェット』"Mouchette"(1966/仏) 監督:ロベール・ブレッソン
 117.『博士の異常な愛情』"Dr. Strangelove"(1964/米・英) 監督:スタンリー・キューブリック
 117.『吸血鬼ノスフェラトゥ』"Nosferatu"(1922/独) 監督:F・W・ムルナウ
 117.『赤い靴』"The Red Shoes"(1948/英) 監督:マイケル・パウエル & エメリック・プレスバーガー
 117.『極楽特急』"Trouble in Paradise"(1932/米) 監督:エルンスト・ルビッチ
 117.『悲情城市』"A City Of Sadness"(1989/台湾) 監督:ホウ・シャオシェン
 117.『フェリーニのアマルコルド』"Amarcord"(1973/伊・仏) 監督:フェデリコ・フェリーニ
 117.『リバティ・バランスを射った男』"The Man Who Shot Liberty Valance"(1962/米) 監督:ジョン・フォード
 117.『天国の日々』"Days of Heaven (1978/米) 監督:テレンス・マリック
 127.『小城之春』"Spring in a Small Town"(1948/中) 監督:費穆(Fei Mu)
 127.『ドゥ・ザ・ライト・シング』"Do The Right Thing"(1989/米) 監督:スパイク・リー
 127.『アウト・ワン』"Out 1"(1990/仏) 監督:ジャック・リヴェット
 127.『トロピカル・マラディ』"Tropical Malady"(2004/タイ・仏・伊・独) 監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン
 127.『河』"The River"(1951/米) 監督:ジャン・ルノワール
 127.『突然炎のごとく』"Jules Et Jim"(1962/仏) 監督:フランソワ・トリュフォー
 127.『パルプ・フィクション』"Pulp Fiction"(1994/米) 監督:クエンティン・タランティーノ
 127.『若草の頃』"Meet Me In St. Louis"(1944/米) 監督:ヴィンセント・ミネリ
 127.『ラルジャン』"L' argent"(1983/仏・スイス) 監督:ロベール・ブレッソン
 127.『生きる』"Ikiru"(1952/日) 監督:黒澤明
 127.『トリコロール/青の愛』"Three Colors Blue"(1993/仏・ポーランド) 監督:クシシュトフ・キェシロフスキ
 127.『赤い影』"Don't Look Now"(1973/英・伊) 監督:ニコラス・ローグ
 127.『セリーヌとジュリーは舟で行く』"Celine and Julie Go Boating"(1974/仏) 監督:ジャック・リヴェット
 127.『アニー・ホール』"Annie Hall"(1977/米) 監督:ウディ・アレン
 127.『アパートの鍵貸します』"The Apartment"(1960/米) 監督:ビリー・ワイルダー
 127.『最後の人』"The Last Laugh"(1924/独) 監督:F・W・ムルナウ
 127.『二十四時間の情事』"Hiroshima Mon Amour"(1959/日・仏) 監督:アラン・レネ
 144.『欲望』"Blow Up"(1966/英) 監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
 144.『独裁者』"The Great Dictator"(1940/米) 監督:チャーリー・チャップリン
 144.『低開発の記憶 -メモリアス-』"Memories of Underdevelopment"(1968/キューバ) 監督:トマス・グティエレス・アレア
 144.『田舎司祭の日記』"Diary of a Country Priest"(1951/仏) 監督:ロベール・ブレッソン
 144.『恋する惑星』"Chungking Express"(1994/香港) 監督:ウォン・カーウァイ
 144.『生きるべきか死ぬべきか』"To Be Or Not To Be"(1942/米) 監督:エルンスト・ルビッチ
 144.『こわれゆく女』"A Woman Under the Influence"(1974/米) 監督:ジャン・カサヴェテス
 144.『ナポレオン』"Napoleon"(1927/仏) 監督:アベル・ガンス
 144.『女と男のいる舗道』"Vivre sa vie"(1962/仏) 監督:ジャン=リュック・ゴダール
 144.『オズの魔法使い』"The Wizard of Oz"(1939/米) 監督:ヴィクター・フレミング
 154.『マルケータ・ラザロヴァ』"Marketa Lazarová"(1967/チェコスロヴァキア) 監督:フランチシェク・ヴラーチル
 154.『隠された記憶』"Hidden"(2004/仏・オーストリア・伊・独) 監督:ミヒャエル・ハネケ
 154.『シャイニング』"The Shining"(1980/英) 監督:スタンリー・キューブリック
 154.『惑星ソラリス』"Solaris"(1972/ソ連) 監督:アンドレイ・タルコフスキー
 154.『オーソン・ウェルズのフォルスタッフ』"Chimes at Midnight"(1966/西・スイス) 監督:オーソン・ウェルズ
 154.『黄金狂時代』"The Gold Rush"(1925/米) 監督:チャーリー・チャップリン
 154.『忘れじの面影』"Letter From an Unknown Woman"(1948/米) 監督:マックス・オフュルス
 154.『逢びき』"Brief Encounter"(1945/英) 監督:デイヴィッド・リーン
 154.『孤独な場所で』"In a Lonely Place"(1950/米) 監督:ニコラス・レイ
 154.『黒水仙』"Black Narcissus"(1947/英) 監督:マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー
 154.『となりのトトロ』"My Neighbour Totoro"(1988/日) 監督:宮崎駿
 154.『コンドル』"Only Angels Have Wings"(1939/米) 監督:ハワード・ホークス
 154.『吸血鬼』"Vampyr"(1932/仏・独) 監督:カール・ドライヤー
 154.『炎628』"Come And See"(1985/ソ連) 監督:エレム・クリモフ
 154.『遠い声、静かな暮らし』"Distant Voices, Still Lives"(1988/英) 監督:テレンス・デイヴィス
 154.『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』"Once Upon A Time In America"(1984/米) 監督:セルジオ・レオーネ
 154.『叫びとささやき』"Cries and Whispers"(1957/スウェーデン) 監督:イングマール・ベルイマン
 171.『キング・コング』"King Kong"(1933/米) 監督:メリアン・C・クーパー、アーネスト・B・シェードザック
 171.『ヴェルクマイスター・ハーモニー』"The Werckmeister Harmonies"(2000/ハンガリー・独・仏) 監督:タル・ベーラ
 171.『スター・ウォーズ』"Star Wars"(1997/米) 監督:ジョージ・ルーカス
 171.『汚名』"Notorious"(1946/米) 監督:アルフレッド・ヒッチコック
 171.『ヒズ・ガール・フライデー』"His Girl Friday"(1940/米) 監督:ハワード・ホークス
 171.『グッドフェローズ』"Goodfellas"(1990/米) 監督:マーティン・スコセッシ
 171.『シェルブールの雨傘』"The Umbrellas of Cherbourg"(1964/仏・西独) 監督:ジャック・ドゥミ
 171.『月世界旅行』"A Trip to the Moon"(1902/仏) 監督:ジョルジュ・メリエス
 171.『成功の甘き香り』"Sweet Smell of Success"(1957/米) 監督:アレクサンダー・マッケンドリック
 171.『カインド・ハート』"Kind Hearts and Coronets"(1949/英) 監督:ロバート・ハーメル
 171.『タブウ』"Tabu"(1931/米) 監督:F・W・ムルナウ
 171.『大地』"Earth"(1930/ソ連) 監督:アレクサンドル・ドヴジェンコ
 183.『奇跡の海』"Breaking the Waves"(1996/デンマーク) 監督:ラース・フォン・トリアー
 183.『怒りの葡萄』"The Grapes of Wrath"(1940/米) 監督:ジョン・フォード
 183.『パリ、テキサス』"Paris, Texas"(1984/西独・仏) 監督:ヴィム・ヴェンダース
 183.『E.T.』"E.T."(1982/米) 監督:スティーヴン・スピルバーグ
 183.『無防備都市』"Rome Open City"(1945/伊) 監督:ロベルト・ロッセリーニ
 183.『フェイシズ』"Faces"(1968/米) 監督:ジョン・カサヴェテス
 183.『音楽サロン』"The Music Room"(1958/インド) 監督:サタジット・レイ
 183.『残菊物語』"The Story of the Late Chrysanthemums"(1939/日) 監督:溝口健二
 183.『侠女』"A Touch of Zen"(1969/台湾) 監督:キン・フー
 183.『英国に聞け』"Listen to Britain"(1942/英) 監督:ハンフリー・ジェニングス、Stewart McAllister
 183.『怒りの日』"Day of Wrath"(1943/デンマーク) 監督:カール・ドライヤー
 183.『シン・レッド・ライン』"The Thin Red Line"(1998/米) 監督:テレンス・マリック
 183.『イレイザーヘッド』"Eraserhead"(1976/米) 監督:デイヴィッド・リンチ
 183.『悪魔のいけにえ』"The Texas Chainsaw Massacre"(1974/米) 監督:トビー・フーパー
 183.『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』"The Discreet Charm Of The Bourgeoisie"(1972/仏) 監督:ルイス・ブニュエル
 183.『カンバセーション...盗聴...』"The Conversation"(1974/米) 監督:フランシス・フォード・コッポラ
 183.『過去を逃れて』"Out of the Past"(1947/米) 監督:ジャック・ターナー
 183.『生まれてはみたけれど』"I Was Born, But..."(1932/日) 監督:小津安二郎
 183.『うずまき』"I Know Where I'm Going!"(1945/英) 監督:マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー
 202."The Death of Mr Lazarescu"(2005/ルーマニア) 監督:Cristi Puiu
 202.『赤い砂漠』"Red Desert"(1964/伊・仏) 監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
 202.『チェルシー・ガールズ』"Chelsea Girls"(1966/米) 監督:アンディー・ウォーホル、ポール・モリセイ
 202.『地獄の逃避行』"Badlands"(1973/米) 監督:テレンス・マリック
 202.『さすらい』"Kings of the Road"(1976/西独) 監督:ヴィム・ヴェンダース
 202.『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』"There Will Be Blood"(2007/米) 監督:ポール・トーマス・アンダーソン
 202.『ウォーリー』"WALL-E"(2008/米) 監督:アンドリュー・スタントン
 202.『ベルリン・アレクサンダー広場』"Berlin Alexanderplatz"(1980/伊・西独) 監督:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
 202.『ヴィデオドローム』"Videodrome"(1983/カナダ) 監督:デイヴィッド・クローネンバーグ
 202.『ひなぎく』"Daisies"(1966/チェコスロヴァキア) 監督:ヴェラ・ヒティロヴァ
 202.『ブンミおじさんの森』"Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives"(2010/タイ・英・仏・独・西) 監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン
 202.『マンハッタン』"Manhattan"(1979/米) 監督:ウディ・アレン
 202.『5時から7時までのクレオ』"Cleo from 5 to 7"(1962/仏) 監督:アニエス・ヴァルダ
 202.『鉄西区』"West of the Tracks"(2002/中・オランダ) 監督:ワン・ビン
 202.『エルミタージュ幻想』"Russian Ark"(2002/ロシア・独) 監督:アレクサンドル・ソクーロフ
 202.『話の話』"A Tale of Tales"(1979/ソ連) 監督:ユーリ・ノルシュテイン
 202.『千と千尋の神隠し』"Spirited Away"(2001/日) 監督:宮崎駿
 202.『道』"La Strada"(1954/伊) 監督:フェデリコ・フェリーニ
 202.『戦火のかなた』"Paisà"(1946/伊) 監督:ロベルト・ロッセリーニ
 202.『街角/桃色(ピンク)の店』"The Shop Around the Corner"(1940/米) 監督:エルンスト・ルビッチ
 202.『三つ数えろ』"The Big Sleep"(1946/米) 監督:ハワード・ホークス
 202."Killer of Sheep"(1977/米) 監督:チャールズ・バーネット
 202.『ワンダ』"Wanda"(1970/米) 監督:バーバラ・ローデン
 202.『ドイツ零年』"Germany Year Zero"(1948/伊) 監督:ロベルト・ロッセリーニ
 202.『西鶴一代女』"The Life of Oharu"(1952/日) 監督:溝口健二
 202.『影の軍隊』"Army of Shadows"(1969/仏) 監督:ジャン=ピエール・メルヴィル
 202.『ソドムの市』"Salo, or The 120 Days of Sodom"(1975/伊・仏) 監督:ピエル・パオロ・パゾリーニ
 202.『我輩はカモである』"Duck Soup"(1933/米) 監督:レオ・マッケリー
 202.『たぶん悪魔が』"The Devil Probably"(1977/仏) 監督:ロベール・ブレッソン
 202.『ニーチェの馬』"The Turin Horse"(2011/ハンガリー・仏・スイス・独) 監督:タル・ベーラ
 202.『ラブ・ストリームス』"Love Streams"(1984/米) 監督:ジャン・カサヴェテス
 202.『皆殺しの天使』"The Exterminating Angel"(1962/メキシコ) 監督:ルイス・ブニュエル
 202.『浮雲』"Floating Clouds"(1955/日) 監督:成瀬巳喜男
 235.『ピアノ・レッスン』"The Piano"(1992/オーストラリア) 監督:ジェーン・カンピオン
 235.『風と共に去りぬ』"Gone with the Wind"(1939/米) 監督:ヴィクター・フレミング
 235.『メランコリア』"Melancholia"(2011/デンマーク・スウェーデン・仏・独) 監督:ラース・フォン・トリアー
 235.『あの家は黒い』"The House is Black"(1962/イラン) 監督:フォルーグ・ファッロフザード(Forough Farrokhzad)
 235.『カリガリ博士』"The Cabinet of Dr Caligari"(1919/) 監督:ローベルト・ヴィーネ
 235.『赤い河』"Red River"(1947/米) 監督:ハワード・ホークス、アーサー・ロッスン
 235.『時計じかけのオレンジ』"A Clockwork Orange"(1971/米) 監督:スタンリー・キューブリック
 235.『断絶』"Two-Lane Blacktop"(1971/米) 監督:モンテ・ヘルマン
 235.『秋刀魚の味』"An Autumn Afternoon"(1962/日) 監督:小津安二郎
 235."The Thin Blue Line"(1989/米) 監督:エロール・モリス
 235.『大樹のうた』"The World of Apu"(1958/インド) 監督:サタジット・レイ
 235.『怪人マブゼ博士』"The Testament of Dr Mabuse"(1933/独) 監督:フリッツ・ラング
 235.『荒野の決闘』"My Darling Clementine"(1946/米) 監督:ジョン・フォード
 235.『ふたりのベロニカ』"The Double Life of Veronique"(1991/仏・ポーランド) 監督:クシシュトフ・キェシロフスキ
 235.『ケス』"Kes"(1969/英) 監督:ケン・ローチ
 235.『トリコロール/赤の愛』"Three Colors Red"(1994/仏・ポーランド) 監督:クシシュトフ・キェシロフス

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ラストの鮮烈なコントラストによる象徴表現には充分な説得力と余韻がある。
甘い生活09.jpg
甘い生活 1シーン.jpg甘い生活.jpg 甘い生活 ポスター.jpg
甘い生活 デジタルリマスター版 [DVD]」/ 「甘い生活」 チラシ/「甘い生活」 スチール

「甘い生活」02.jpg 作家志望の夢を抱いてローマに出てきたマルチェロだったが、夢破れて今はしがないゴシップ記者に。エンマ(イヴォンヌ・フルノー)という娘と同棲しながらも、ナイトクラブで富豪娘(アヌーク・エーメ)と出会ってホテルで一夜を明かしたり、ハリウッドのグラマー女優(アニタ・エクバーグ)を取材がてら、彼女と野外で狂騒したりし、エンマは彼の言動を嘆く―。マルチェロ・マストロヤンニ(Marcello Mastroianni、1924-1996/享年72)の名声を一気に高めた作品で、主人公の"マルチェロ"をその名の通り演じているけれども、まさにハマリ役でした。

「甘い生活」paparatti.jpgフェデリコ・フェリーニ 「甘い生活」.jpg "マルチェロ"の仕事は、ゴシップ・カメラマン「パパラッチ」の"記者版"のようなもので(「パパラッチ」の通称はこの映画に登場するゴシップ・カメラマン「パパラッツォ」の名前に由来する)、乱痴気と頽廃に支配された街ローマを象徴するような仕事であり、同時に、主人公である彼が、爛熟したローマの現況の「語り部」的役割も果たしているようです。

 冒頭にある、キリスト像をヘリコプターで吊るして低空飛行するというカトリック主催のイベント(このシーン、ローマカトリックの猛抗議に遭ったそうだ)の取材から始まり、場末の村で子供が「聖母を見た」という"現代の奇蹟"話があれば、多くのマスコミ取材陣と共に現場へ駆けつける、という何か騒がしいばかりで中身のない日々。

Anita Ekberg 2.jpg甘い生活 パンフレット.jpgAnita Ekberg.jpg 主人公のマルチェロは元々プレイボーイなのですが、虚しい仕事ばかりで心身は疲れきっている―。それでも、仕事絡みで深夜にアニタ・エクバーグみたいな女優とトレビの泉で戯れたりすることが出来るのであれば、結構"役得"ではないかとも、そのような僥倖に巡り合ったことの無い自分などは傍目に思ったりするのですが、マルチェロの場合はそれでもどこか満たされない思いがあるようで、実際、彼の周囲の人も幸せになる人は少なくなり、彼自身も"甘い生活"に浸れば浸るほど不幸になっていきます。
アニタ・エクバーグ/パンフレット(日映・1960)

アラン・キュニー.jpg マルチェロにもメンター的存在であった友人(アラン・キュニー)がいて、マルチェロもいつかは彼らのような安寧の生活を送りたいと思っていたのですが、その友人夫婦がある日突然に自分達の子供を道連れに一家心中したという事件があり、このことが彼にとってあまりにショックであったために、自らの人生を見直させる契機にはならず、むしろ虚無感を増幅させたと言えるかと思います。

少女.jpgei.jpg マルチェロが海辺の別荘で仲間らと遊び耽り、翌朝、享楽に疲れ果てた体のほてりを醒ますために出かけた浜辺に、醜悪な怪魚(エイ?)が打ち上げられていて悪臭を放っている。小さな浅干潟を隔てたその向こうに、顔見知りの可憐な少女がいて、マルチェロは声かけるが潮風にかき消されて彼女には届かない―。

「甘い生活」last.jpgMarcello Mastroianni in La dolce vita.jpg 腐りつつある「醜悪な怪魚」はマルチェロ自身の今の姿であり、少女がいる「静謐な世界」は、自分がそこに行くことを望んでももはや達し得なくなってしまった場所であるという、ラストシーンの、鮮烈なコントラストを以って示した象徴表現には充分な説得力と余韻があり、自分自身もマスコミ業界にいたことがありますが、そうした"ギョーカイ"の人がこのラストを観たら、なおのことグッと迫るものがあるのかも知れません。逆に言えば、干潟を渡って少女の所へは行かず、また仲間達の所へ戻ってしまうであろう(戻っていくしかない)マルチェロだからこそ、我々俗人の目から見て、その哀しみに共鳴できるのかもしれないとも思いました。
 
「甘い生活」パンフレット (2001年リバイバル公開時)/輸入版ポスター Amai seikatsu(1960)
甘い生活 .png甘い生活 輸入版ポスター.jpgAmai seikatsu(1960).jpg「甘い生活」●原題:LA DOLCE VITA●制作年:1959年●制作国:イタリア・フランス●監督:フェデリコ・フェリーニ●製作:ジュゼッペ・アマト/アンジェロ・リッツォーリ●脚本:フェデリコ・フェリーニ/エンニオ・フライアーノ/トゥリオ・ピネッリ/ブルネッロ・「甘い生活」01.jpgロンディ●撮影:オテッロ・マルテッリ●音楽:ニーノ・ロータ●時間:174分●出演:マルチェロ・マストロヤンニ/アニタ・エクバーグ/アヌーク・エーメ/バーバラ・スティール/ナディア・グレイ/ラウラ・ベッティ/イヴォンヌ・フルノー/マガリ・ノエル/アラン・キュニー/ニコ●日本公開:1960/09●配給:イタリフィルム●最初に観た場所:カトル・ド・シネマ (81-06-06)●2回目:六本木・俳優座シネマテン(82-07-20)●3回目:飯田橋ギンレイホール(83-07-10)(評価:★★★★☆)●併映(3回目):「情事」(ミケランジェロ・アントニオーニ)

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トランティニャン未亡人相手2作。ロッシ・ドラゴが"凄い"「激しい季節」とCFを観ているような「男と女」。
激しい季節 ポスター 2.jpg ヴァレリオ・ズルリーニ★激しい季節(1959).jpg Estate Violenta2.jpg 男と女 DVD.jpg 「男と女」2.jpg
「激しい季節」ポスター/ビデオ(絶版)/「ESTATE VIOLENTA(激しい季節)」 ビデオ(輸入版)/「男と女 [DVD]」/輸入版ポスター

「激しい季節」2.jpgEstate Violenta.jpg 「激しい季節」(Estate Violenta、'59年/伊)の舞台は1943年のアドリア海に面した高級避暑地。別荘に滞在する上流階級の娘(ジャクリーヌ・ササール)が、パーティーの場に現れたファシスト党高官の息子(ジャン・ルイ・トランティニャン)に恋をするが、彼の方は浜辺で知り合った海軍将校の未亡人(エレオノラ・ロッシ・ドラゴ)に惹かれ、2人は深い関係に―。

Jean-Louis Trintignant & Eleonora Rossi Drago

「激しい季節」1.jpg それを知った娘ジャクリーヌ・ササールは泣きながら去り、後半は、ムッソリーニ政権の崩壊、新政権の誕生、イタリアの降伏という動乱の戦局の下、刹那的な恋に激しく燃える高官の息子トランティニャンと未亡人ロッシ・ドラゴの愛と別離が描かれています。

 とにかく、未亡人役のエレオノラ・ロッシ・ドラゴの魅力(色香)がその眼差しからボディに至るまで凄く、それまであまり脱がない女優だったそうですが、この映画に関しては、検閲でカットされている部分もあるぐらいで、彼女は'07年12月に82歳で亡くなっており、考えてみれば相当旧い映画なのですが、何か"今風"のセクシーさを醸す女優でした(この映画に出演した時は33、4歳ぐらい)。

Valerio Zurlini Estate violenta 2.jpgValerio Zurlini Estate violenta.jpg 2人の「出会い」は海岸で、独軍機の威嚇飛行に人々が怯え逃げる際に、転んで泣いていた幼子をトランティニャンが助けたのが、ロッシ・ドラゴの娘だったというもの、「別れ」は、トランティニャンが兵役逃れを図りロッシ・ドラゴと逃避行を図る際に、列車が米軍機の爆撃を受け大勢の死者が出て、その中にその娘の亡骸を見つけて、彼女が現実に(乃至"罪の意識"に)目覚めるという、「出会い」も「別れ」も共に「爆撃機」と「娘」が絡んだものです。

 戦時下の恋の物語ですが、当時のイタリアの上流階級の一部は、そうした戦局の最中に合コンみたいなパーティーをやったり、海水浴に興じたりしていたというのは、実際の話なのだろうなあと(集団的な"刹那主義"的傾向?)。
 この作品は日本ではDVD化されていないし、元々ビデオにもなっていないけれど、なぜだろう。

「男と女」(1966年) ポスター/パンフレット①/パンフレット②
男と女 ポスター.bmp男と女 パンフ.jpg男と女 パンフレット.png「男と女」(Un homme et une femme、'66年/仏)もジャン・ルイ・トランティニャンが未亡人(スタントマンの夫を目の前で失った女アヌーク・エーメ)に絡むもので、こちらはトランティニャン自身も妻に自殺された男寡のカーレーサーという設定で、2人が知り合ったのは互いの子供が通う寄宿学校の送り迎えの場という、「激しい季節」同様に子供絡みです。

「男と女」3.bmp「男と女」4.jpg 一作品の中でモノクロ、カラ―、セピア調を使い分けるといった凝った映像のつくりです。但し、ストーリーそのものは個人的には結構俗っぽく感じられ、トランティニャンが鬱々として煮えたぎらずしょぼい恋愛モノという印象しか受けないのフランシス・レイ.jpgですが、フランシス・レイ(1932- )のボサノバ調のテーマ曲と共に間に挿入されるイメージフィルムのような映像が美しいです。クロード・ルルーシュ(1937- )はコマーシャルフィルムのカメラマンから映画監督に転身した人ですが、この作品自体がプロモーションフィルムまたはコマーシャルフィルムであるような印象も受けました。当時としては非常に斬新だったのだと思いますが、今観るとそれほどでないと思われるかも。しかし、そのことは、それだけ後の多くの映像作家がこの映画から様々な技法を吸収したということの証であるのかもしれません(でもやっぱり音楽は今でもいい。音楽だけの評価だと★★★★★)。

 最初から映像美と音楽を調和させることが最大の狙いで、ストーリーの方は意図的に通俗であることを図っていたのかも。ルイ・マル監督の「恋人たち」('58年/仏)などがその典型例ですが、「通俗」を繊細かつ美しく撮るのも映画監督の技量の1つでしょう。でも、この監督、この後に大した作品がないんだよなあ(一応、知られているところでは「愛と哀しみのボレロ」('81年)があるが)。仮に「男と女」だけ撮って夭折していたらフランス映画史上の天才と呼ばれていたに違いないとの声もある監督です。

 「激しい季節」「男と女」共にジャン・ルイ・トランティニャン主演の作品ですが、トランティニャン自身は、繊細な演技が出来る、日本人が感情移入しやすい俳優であるとは思うものの、この2作については、片や相方のエレオノラ・ロッシ・ドラゴの突き刺すような魅力が圧倒的で、片や映像美と音楽の魅力が圧倒的な作品であるような気がしました。

「激しい季節」ポスター(1960年劇場用初版)/VHSカバー
激しい季節 ポスター.jpgヴァレリオ・ズルリーニ★激しい季節(1959).jpg
                    
 
Estate violenta(1959)
Estate violenta(1959).jpg「激しい季節」●原題:ESTATE VIOLENTA●制作年:1959年●制作国:イタリア●監督:ヴァレリオ・ズルリーニ●製作:シルヴィオ・クレメンテッリ●脚本:ヴァレリオ・ズルリーニ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ/ジョルジョ・プロスペリ●撮影:ティノ・サントーニ●音楽:マ激しい季節 パンフ.jpgリオ・ナシンベーネ●時間:93分●出演:ジャン・ルイ・トランティニャン/エレオノラ・ロッシ・ドラゴ/ジャクリーヌ・ササール/ラフ・マッティオーリ/フェデリカ・ランキ/リラ・ブリナン●日本公開:1960/04●配給:イタリフィルム●最初に観た場所:六本木・俳優座シネマテン(84-11-17)(評価:★★★★)

六本木駅付近.jpg六本木・俳優座シネマテン2.jpg俳優座劇場.jpg六本木・俳優座シネマテン(六本木・俳優座劇場内) 1981年3月20日オープン。2003年2月1日休映(後半期は「俳優座トーキーナイト」として不定期上映)。
 
 

 
  

男と女24.jpg「男と女」1.jpg男と女  66仏.jpg「男と女」●原題:UN HOMME ET UNE FEMME●制作年:1966年●制作国:フランス●監督・製作:クロード・ルルーシュ●脚本:クロード・ルルーシュ/ピエール・ユイッテルヘーヴェン●撮影:クロード・ルルーシュ●音楽:フランシス・レイ●時間:103分●出演:ジャン・ルイ・トランティニャン/アヌーク・エーメ/エヴリーヌ・ブイックス/マリー・ソフィー・ポシャ/リチャード・ベリー/ロベール・オッセン●日本公開:1966/10●配給: ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:高田馬場パール座(78-10-02)(評価:★★★☆)●併映:「さよならの微笑」(ジャン・シャルル・タッシェラ)

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女に捨てられた男の放浪と悲劇的結末を描く。男の孤独と絶望がひしひしと伝わってきた。

IL GRIDO.jpgさすらい2.jpg さすらい.jpg 「さすらい」1.jpg
「さすらい」パンフレット/「さすらい [DVD]」  

 北イタリア、ポー河流域の工場労働者アルド(スティーヴ・コクラン)は、夫が外国に行ったきりのイルマ(アリダ・ヴァリ)と同棲し、2人の間には6歳になる娘のロジナまでいたが、その夫が死んだとの知らせがあり、これでイルマ正式に結婚できるかと思いきや、彼女から愛は冷めた、別に好きな人がいると言われてしまい、娘を連れてあてのない旅に出る―。

 内縁の妻に捨てられた男の放浪と悲劇的結末を淡々と描いた作品で、主人公の男が独白するでもなく説明的な描写があるわけでもないのに、ポー平野の荒涼たる風景と重なるかのように、男の孤独と絶望がひしひしと伝わってきました。

 元々一工場労働者に過ぎない彼がそんなに金を持っているわけではなく、時には親切な他人から毛布をあてがわれて、娘のロジナ(可愛い!)と野外で添い寝するような、そんな旅を続けます。

Il_grido2.jpg そうしながらも、行く先で土地の女と接し、一旦は同棲のような状態にもなったりし、しかし、結局は自分を捨てたイルマのことが忘れず、心の空洞は埋まらない。娘をイルマの元に戻してからは更に孤独を募らせ、結局、満たされぬ想いを抱いたまま元の町に舞い戻ってきてしまうが、家の窓から覗き見えたのは、夫と幸せそうに暮らすイルマと、新たに生まれたらしい赤ん坊のオムツを変えるロジナの姿だった―。

ミケランジェロ・アントニオーニ 「さすらい」.jpg 工場内の高い鉄塔に登り投身自殺を図ろうとするアルドと、それに気づき下から不安げに見守るイルマ。力なくイルマに手を振る男。ふらふら揺れる男の身体はやがてスローモーションのように前傾し、叫び声を上げるイルマ―。この一場面に7分間を費やしているそうですが、時間をかけている分リアルな緊張が続き、こんなに釘付けにされた映画シーンはそれまでもその後も殆ど無いです。

 鉄塔を巡る螺旋階段を登り始めた時、もう既に男の心は空っぽになっていて、あとは、この苦しい「さすらい」の旅を終わらせるべく、自分をこのIL GRIDO3.jpgIl Grido4.jpg世から消滅させる手続きが残っているだけに過ぎない―、夢遊病者のようになった彼を見てそんな印象を持ち、結末自体は悲劇的ではあるものの、ある種のカタルシスさえ覚えました(元来、「悲劇」と「カタルシス」はセットのようなものとも言えるが)。

 ミケランジェロ・アントニオーニ(1912‐2007)の作品で日本に最初に紹介されたものであるとのことですが(彼自身の監督作品としては6作目)、ストーリーが単純なだけに却ってストレートに心に響き、個人的にはアントニオーニ作品で最も好きな作品です

さすらい 03.jpgさすらい 02.jpgさすらい 01.jpg




 アリダ・ヴァリ(1921-2006、Alida Valli)はキャロル・リード監督の「第三の男」('49年/英)などでお馴染みですが、スティーヴ・コクラン(1917-1965、Steve Cochran)はアメリカの俳優でギャング映画などによく出ていた人であり、結局この作品が彼の出演作の中では最高傑作になったのでは。アントニオーニの演出力を感じる作品でもあります。
Il grido(1957)
Il grido(1957).jpgスティーヴ・コクラン/アリダ・ヴァリ.jpg「さすらい」●原題:IL GRIDO●制作年:1957年●制作国:イタリア●監督:ミケランジェロ・アントニオーニ●脚本:エンニオ・デ・コンチーニ/エリオ・バルトリーニ/ミケランジェロ・アントニオーニ●撮影:ジャンニ・ディ・ヴェナンツォ●音楽:ジョヴァンニ・フスコ●時間:102分●出演:スティーヴ・コクラン/アリダ・ヴァリ/ドリアン・グレイ/ベッツ新宿アートビレッジ3.pngィ・ブレア/リン・ショウ/ガブリエラ・パロッティ●日本公開:1959/04●配給:イタリフィルム=新外映●最初に観た場所:新宿アートビレッジ (79-02-03)●2回目:高田馬場ACTミニシアター(83-11-26)(評価:★★★★★)●併映(1回目):「欲望」(ミケランジェロ・アントニオーニ)
新宿アートビレッジ (歌舞伎町ジャズ喫茶「タロー」3F、16ミリ専門の上映館・席数40) 1980(昭和55)年に活動停止

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リアルで気迫のこもった演出。モノクロ映画の特性を充分に生かしている。

ルキノ・ヴィスコンティ 「若者のすべて」俳優座.jpgROCCO E I SUOI FRATELLI1.jpg若者のすべて DVD.jpg 若者のすべて パンフレット2.jpg Rocco e i suoi fratelli2.jpg 
1982年リバイバル公開時チラシ/「若者のすべて [DVD]」/パンフレット/「Rocco and His Brothers [DVD] [Import]
 ルキノ・ヴィスコンティ(1906‐1976)監督というと"貴族"映画みたいなイメージがすぐ浮かびますが、イタリア南部から北部ミラノへ移住した家族の崩壊を4人兄弟(一番下の幼い弟も含めると5人兄弟)の確執を通して描いたこの映画は、イタリアの南北の格差問題を背景とした社会派作品とも言え、グラムシに共感するという彼の思想を映し出すものでもあります。

ルキノ・ヴィスコンティ 「若者のすべて」.jpg 原題は「ロッコとその兄弟たち」(原作はジョヴァンニ・テストーリの『ギゾルファ橋』)。近親相互間の人間臭い葛藤が凄まじく、三男のロッコ(アラン・ドロン)がボクサー志望の次男(レナート・サルヴァトーリ)の恋人ナディア(アニー・ジラルド)に横恋慕したとして、兄一味が彼女を強姦するのを目の当たりにさせられ絶叫するシーンなどは心底痛々しく感じられ、ジュゼッペ・ロトゥンノのカメラワークも含め、ヴィスコンティのリアルで気迫のこもった演出に改めて驚嘆させられます。

若者のすべて アランドロン.jpg 兄のために、自分に求婚するナディアを振り切って身を引き、家族を経済的苦境から救うために好きではないのにボクサーなるロッコは、どこまで純粋なキャラクターなのだろうか。リアリティが欠如しているとすれば、アラン・ドロンがボクサーとしてはあまりに美男過ぎる点はともかくとして、旧恋人を殺めてしまった兄さえも暖かく迎えるこのロッコの善人ぶりぐらいかなと。でも、そのロッコがいなければ全く救いの無いような映画であり、貧しいがゆえに兄は弟を妬み、同じ貧しさのゆえに弟は兄への兄弟愛に飢えるという―ということになるのでしょうか。

"ドゥオーモ"に登ったロッコ(A・ドロン)とナディア(A・ジラルド)
rocco e i suoi fratelli.jpg 最初に、ロッコとその一家が列車から降り立ったのは「ミラノ中央駅」で、これは、後にヴィットリオ・デ・シーカ監督の「ひまわり」('70年/伊)でも別れのシーンのロケ場所になっていますが、絵になる駅だなあと。

 他にも、ミラノのドゥオーモ(大聖堂)など、映像美溢れるシークエンスが少なからずあり、モノクロ映画の特性を充分に生かしている感じがしました(北イタリアの寒村風景やロッコの心象風景にはモノクロ―ムが合っている)。

ROCCO E I SUOI FRATELLI 2.jpg 作中では、アニー・ジラルドは元カレのレナート・サルヴァトーリに殺されてしまうのですが(レナート・サルヴァトーリは「スキャンドール」('80年/伊)でも母娘の両方と寝る男を演じていた)、実生活ではこの 「若者のすべて」での共演を機に2人は結クラウディア・カルディナーレ 若者のすべて.jpg婚し、アニー・ジラルドはレナート・サルヴァトーリが亡くなるまで添い遂げています。

 また、それほど出番は多くありませんが、長男ヴィンチェンツォの婚約者ジネッタ役でクラウディア・カルディナーレが出ていてます。このように、今思うと、アラン・ドロンを筆頭に結構豪華な役者陣だったわけですが、ヴィスコンティ作品の中では1948年に発表のネオ・レアリスモ作品「揺れる大地」の第二部のように位置づけられることが多いことからも窺えるように、それらの役者がリアルな生活感の中に自然と嵌っていて、違和感を感じさせないところがいいです(「いい」と言うより「スゴイ」と言うべきか)。一方で、ヴィスコンティ的壮麗美として、アラン・ドロンの美貌、ミラノの町並み、大聖堂のビジュアルなどもちゃんと鏤(ちりば)められているわけで、そうした意味ではしっかり"映画的"でもあるのですが。

クラウディア・カルディナーレ in 「若者のすべて」

Wakamono no subete(1960)
Wakamono no subete(1960).jpg
「若者のすべて」●原題:(伊)ROCCO E I SUOI FRATELLI/(仏)ROCCO ET SES FRERE/(英)ROCCO AND HIS BROTHERS●制作年:1960年●制作国:イタリア・フランス●監督:ルキノ・ヴィスコンティ●脚本:ルキノ・ヴィスコンティ/パスクァーレ・フェスタ・カンパニーOn set of Rocco and His Brothers .jpgレ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ/マッシモ・フランチオーザ/エンリコ・メディオーリ●撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ●音楽:ニーノ・ロータ●原作:ジョヴァンニ・テストーリ「ギゾルファ橋」●時間:168分●出演:アラン・ドロン/アニー・ジラルド/レナート・サルヴァトーリ/クラウディア・カルディナーレ/カティーナ・パクシヌー/ロジェ・アンナ/パオロ・ストッパ/スピロス・フォーカス/マックス・カルティエール/ロッコ・ヴィドラッツィ/コラド・パーニ/アレッサンドラ・パナーロ/アドリアー ナ・アスティ/シュジー・ドレール/クラウディア・モーリ●日本公開:1960/12●配給:イタリフィルム●最初に観た場所:カトル・ド・シネマ上映会(81-06-20)●2回目:飯田橋佳作座(83-04-17)(評価:★★★★☆)●併飯田橋佳作座.jpg映(2回目):「山猫」(83-04-17)
On set of Rocco and His Brothers directed by Luchino Visconti, 1960

飯田橋佳作座 (神楽坂下外堀通り沿い) 1988(昭和63)年4月21日閉館

「●フェデリコ・フェリーニ監督作品」の インデックッスへ Prev|NEXT⇒ 【1089】フェリーニ「甘い生活
「●ニーノ・ロータ音楽作品」の インデックッスへ 「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「○都内の主な閉館映画館」の インデックッスへ(新宿アートビレッジ)

人間の原罪を抉った作品であるとともに、旅芸人たちに対する共感が込められている。

道.jpg 道1.jpg 道 ポスター.jpg
道 [DVD]」  「道 [DVD]」   「道」パンフレット(1965)  La Strada-The Road 1954-道- Gelsomina

フェリーニ「道」.bmp 旅芸人のザンパノ(アンソニー・クイン)は芸の手伝いをする女が死んでしまったため、その妹のジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)を幾ばくかのお金で買い取った。粗野で暴力を振るうザンパノと、頭が弱いが心の素直なジェルソミーナは一緒に旅に出る旅に出る―。

 フェデリコ・フェリーニ(1920‐1993/享年73)監督のあまりも有名な作品ですが、本国と日本での公開の間に3年の歳月があり、旅芸人という地味なモチーフ、美男美女が出てくるわけでもなく、当初は日本では受けないと思われたのかな? 日本での公開時もさほど宣伝もされず、口コミで人気が拡がり、やがて映画ファンのみでなく、広く一般に知られる作品になったとのこと。

『道』(1954).jpg アンソニー・クイン(1915‐2001)が亡くなった際にも、新聞ではこの作品のスチールと共に報じられていました。彼の出演作品の中でも代表作になるのでしょうが、監督の奥さんであるジェルソミーナ役のジュリエッタ・マシーナ(1921‐1994)の演技が、これまた素晴らしいと思いました。フェリーニの作品の中でも一番好きな映画で、初めて観た時は、次の日また観に行きました。

 この映画には幾つかの謎があり、例えばジェルソミーナがいつも口ずさむ歌(音楽の教科書に「ジェルソミーナ」というタイトルで出ていた)は、物語の中では一体誰が作曲したことになっているのか、ザンパノと彼が殺した綱渡り芸人は以前にはどういう関係にあったのか、といったものから、ジェルソミーナが家族と別れる時、実は絶望よりも希望の方が勝っていたのか、何故ジェルソミーナは修道尼の誘いを断り修道院を後にしてザンパノについていったのか等々です。

道4.jpg この映画でのジェルソミーナの表情は、1つの場面においてもめまぐるしく変化し、一般に彼女は「頭が弱い」とされていますが、必ずしもそうとは言えないような気もし、例えば、「頭が弱い」からザンパノに虐げられても彼についていってしまう("ストックホルム症候群"説?)のではなく、一見粗暴に見える彼の弱さと優しさを見抜き、また、綱渡り芸人からも言われたように、自分しかザンパノを支える人間はいないということがわかっていたのでしょう。

道 10.jpg ザンパノ自身の方はそのことに気づかずに、彼が綱渡り芸人を殺したことを知って泣き続け心を閉ざしたままの彼女を置いていってしまい、何年か経た後に、彼女の死を聞いて号泣する自分を通して、自分が彼女を愛していたことをやっと知り、また、その彼女を見捨てた過ちに気づく―、そして今、自分は彼女に何もしてやれなかったという思いを抱いて残りの人生を送らなければならないという、これが彼にとっての"罰"になっていて、その罰を通して、かつて自分が犯した数々の罪をも知る―という構造になっているように思いました。

Michi(1954).jpg道3.jpg 綱渡り芸人が殺されてジェルソミーナが泣いたのは、優しかった彼が死んだということもありますが、むしろ、ザンパノの犯した罪に対する慄きからのものでしょう。人間の原罪を抉った作品であり、バックにキリスト教的な宗教観の影響も見てとれなくもないですが、但し、あまりそのことに引き寄せて解釈すると、ジェルソミーナが単なる"聖性"のシンボルになってしまうような気もしなくもありません。旅芸人たちの笑顔の底にある生身の人間としての悲哀-それに対する洞察と共感が込められていることは、「フェリーニの道化師」('70年)などの作品と併せて観るとよく解るかと思います。

Michi(1954)

新宿アートビレッジ3.png「道」●原題:LA STRADA●制作年:1954年●制作国:イタリア●監督:フェデリコ・フェリーニ●製作:カルロ・ポンティ/ディノ・デ・ラウレンティス●脚本:フェデリコ・フェリーニ/エンニオ・フライアーノ/トゥリオ・ピネッリ●撮影:オテッロ・マルテッリ●音楽:ニーノ・ロータ●時間:115分●出演:ジュリエッタ・マシーナ/アンソニー・クイン/リチャード・ベースハート/アルド・シルヴァーニ/マルセーラ・ロヴェーレ●日本公開:1957/05●配給:イタリフィルム=NCC●最初に観た場所:新宿アートビレッジ(79-05-01)●2回目:新宿アートビレッジ(79-05-02)(評価:★★★★★
新宿アートビレッジ (歌舞伎町ジャズ喫茶「タロー」3F、16ミリ専門の上映館・席数40) 1980(昭和55)年に活動停止

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最後まで楽しめる法廷劇。個人的評価は、短編小説:70点、戯曲:80点、映画:90点。

検察側の証人1.bmp  検察側の証人2.bmp Witness for the Prosecution(1957).jpg Agatha Christie.jpg Agatha Christie
検察側の証人(ハヤカワ・ミステリ文庫(クリスティー戯曲集 2)』 ['80年]『検察側の証人(クリスティ文庫)』['04年(戯曲)] Witness for the Prosecution(1957)

「情婦」.jpg 金持ちの老婦人がある晩撲殺され、彼女と親しくし金銭的事務を任されていたことから嫌疑をかけられた青年レナードを腕利きの老弁護士ウィルフリッドロバーツ卿は弁護することになるが、金目当てだとすれば動機も充分な上に状況証拠は青年に不利なものばかり。しかも、彼を救えるはずの外国人妻ローマインが、あろうことか"検察側の証人"として出廷し、夫の犯行を裏付ける証言を―。

情婦.jpg 1953年に初めて上演された戯曲『検察側の証人 (Witness for the Prosecution)』は、1933年に刊行された短編集『死の猟犬』の中にある同名の短編小説を、アガサ・クリスティ(1890‐1976/享年85)自身が戯曲化したもので、1957年にビリー・ワイルダー監督によって映画化もされています(邦題「情婦」)。

Marlene Dietrich.jpg 自分自身が接した順番は、映画→戯曲→短編という逆時系列であり、戯曲と短編ではトリックそのものは同じなのですが、戯曲の方が法廷劇としてのテンポの良さや愛憎劇としての深みに勝っていて面白く、何よりも短編の最後のドンデン返しに加えて、戯曲の方は更にもう1回どんでん返しがあります(短編を訳している茅野美ど里氏は、「クリスティ作品で原作以上に映画の方が面白いと思ったのはこれひとつ」と述べている)。

Marlene Dietrich (1901‐1992)

「情婦」1.jpg「情婦」2.jpg 映画は戯曲にほぼ忠実に作られており、初めて観たときにはすっかりトリックに騙されましたが、短編→映画と進んだ人の中には、2回目のドンデン返しは、ストリーテラーであるビリー・ワイルダー監督の創意であると思った人もいたようです(実はクリスティ自身のアイデア)。

「情婦」3.jpg 映画では、弁護士役の舞台出身俳優チャルールズ・ロートンの演技が高く評価されたようですが、外国人妻ローマイン役のマレーネ・デートリッヒも良かったと思います(演技もさることながら、当時56歳ですから、あの美貌と脚線美には脱帽)。
 
WITNESS FOR THE PROSECUTION.jpg 短編と戯曲と映画をそれぞれ比べると、短編では外国人妻はオーストリア人になっているのに、戯曲と映画ではドイツ人になっている(デートリッヒを想定した?)といった細かい違いもさることながら、戯曲では老弁護士はあまり事の急進展に疑問を感じておらず、裁判に勝つことしか眼中に無いのに対し、映画でのチャルールズ・ロートンは、「何だかおかしい」感を抱き続けているように見え、短編では具体的に、外国人妻の仕草の癖から老弁護士がある時出会った女性を想起するまでに至っています。

マレーネ・ディートリッヒ(1901-1992).jpg 映画の圧巻の1つは、デートリッヒが老弁護士チャルールズ・ロートンに(かなり高飛車に)謎解きをする場面で、あの太っちょのチャルールズ・ロートンが冷や汗を流して縮み上がる―にも関わらず、第2のドンデン返しの後で、彼女のためにこの老弁護士はある決心をするのですが、この"決意表明"は短編にも戯曲にも無いため、ビリー・ワイルダーの創意なのではないかと思います。

マレーネ・ディートリッヒ2.jpgマレーネ・ディートリッヒ(1901-1992)
 
 




情婦 和田誠ポスター.jpg「情婦」ポスター(和田 誠
情婦 パンフ.jpg「情婦」●原題:WITNESS FOR THE PROSECUTION●制作年:1957年●制作国:アメリカ●監督:ビリー・ワイルダー●製作:アーサー・ホーンブロウ・ジュニア●脚本:ビリー・ワイルダー/ハリー・カーニッツ●撮影:ラッセル・ハーラン●音楽:マティ・マルネック/ラルフ・アーサー・ロバーツ●原作戯曲:アガサ・クリスティ●時間:116分●出演:タイロン・パワー/マルレーネ・ディートリッヒ/チャールズ・ロートン/エルザ・ランチェスター/ジョン・ウィリアムス/ヘンリー・ダニエル/ノーマ・ヴァーデン●日本公開:1958/03●配給:松竹=ユナイトシアタあぷる1.JPG新宿シアターアプル2.jpg●最初に観た場所:新宿シアターアプル(85-10-20)(評価:★★★★☆)
歌舞伎町・新宿シアターアプル・コマ東宝 2008(平成20)年12月31日閉館     

 
戯曲...1969年文庫化[角川文庫(『情婦』)]/1980年再文庫化[ハヤカワ・ミステリ文庫(『検察側の証人(クリスティー戯曲集2)』)〕/2004年再文庫化[ハヤカワ文庫〕/短編...1960年文庫化[新潮文庫(『クリスティ情婦 角川文庫.jpgクリスティ短編集1.jpg短編集1』)〕/1966年再文庫化・1992年改版[創元推理文庫(『検察側の証人(クリスティ短編全集1)』)]/1971年再文庫化[ハヤカワ・ミステリ(『死の猟犬』)〕/1979年再文庫化[ハヤカワ・ミステリ(『死の猟犬(クリスティ短編集7』)〕/1997年再文庫化[偕成社文庫(『検察側の証人(アガサ・クリスティ推理コレクション5)』)〕/2004年再文庫化[早川書房・クリスティー文庫(『死の猟犬』)]】
情婦 (1969年) (角川文庫)』 『クリスティ短編集 (1) (新潮文庫)

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"quick read but strong "。スタインベックに「文学の神様」が宿った時期の作品。

『ハツカネズミと人間』.JPGハツカネズミと人間.jpg   二十日鼠と人間 新潮文庫.jpg     二十日鼠と人間.jpg 
ハツカネズミと人間 (新潮文庫)』['94年/'53年]/映画「二十日鼠と人間 [DVD]

Of Mice and Men.jpg 小さな家と農場を持ち、そこでウサギを飼い、土地のくれる一番いいものを食べて暮らすこと夢見るジョージとレニーは、共に農場を渡り歩く期間労働者で、ジョージは小柄ながら知恵者、一方のレニーは巨漢だがちょっと頭が鈍いという具合に対照的ながらも、いつも助け合って生きてきた―この2人がある日また新たな農場にたどり着くが、そこには思わぬ悲劇が待ち受けていた―。

 1937年に出版された米国人作家ジョン・スタインベック(John Steinbeck、1902‐1968/享年66)の中編小説で、以前読んだ大門一男訳に対し、入れ替わりで新潮文庫に入った大浦暁生訳は題名の「二十日鼠」の表記がカタカナになっているなどの違いはありますが、文庫で約150ページと再読するにも手頃で、それでいて、初読の際の時の衝撃が甦ってくるものでした(洋書の書評に"quick read but strong "とあったが、まさにその通り)。

 1930年代の大恐慌時代のカリフォルニア州が舞台なのですが、スタインベック自身の季節労働者としての経験がベースになっており、寓話的でありながらも細部にリアリティがあるし、ラマ使いの名人で農場労働者のリーダー格のスリムや厩に住む黒人クルックスなど、短い物語の中に、極めて印象に残る人物が見事に配置されているように思いました(特にスリム、このキャラクターは渋い!)。

 ラストのジョージの苦渋の行動は、知恵遅れのレニーがいつも問題を起こすための2人で農場を転々としてきた過去の経緯があり、その上で、今度こそはもう手の打ちようがないという判断の末でのことでしょう。
 キャンディという老人が、自らが可愛がっていた老犬の処分を他人に委ね、後で「あの犬は自分で撃てばよかった」と悔いるエピソードが、伏線として効いています。

『怒りの葡萄』(1940).jpg怒りの葡萄 ポスター.jpg怒りの葡萄.gif スタインベックはこの作品でその名を知られるようなり、2年後に発表した、旱魃と耕作機械によって土地を奪われた農民たちのカリフォルニアへの旅を描いた『怒りの葡萄』('39年)でピューリツァー賞を受賞しますが、共に映画化されており、「二十日鼠と人間」は'39年と'92年に映画化されているものの未見、ジョン・フォード監督の「怒りの葡萄」('40年/米)は吉祥寺の「ジャヴ50」で深夜に観ましたが、電車の座席みたいな長椅子の客席に集った客の半分が外国人でした(同劇場でその少し前に「わが谷は緑なりき」('41年/米)を観た時もそうだった)。

 刑務所帰りの貧農の息子をヘンリー・フォンダが好演しており(彼はこの作品で"もの静かに不正に向かって闘う男"というイメージを確立)、母親とまた別れなければならないという結末のやるせなさが「Red River Valley」のテーマと共に心に残りましたが、アメリカ人は、こうした作品に日本人以上に郷愁を感じるのでしょう(個人的には、小津安二郎や山田洋次の家族モノに通じるものを感じたりもしたのだが)。

EAST OF EDEN 1955 dvd.bmpエデンの東ポスター.jpgEast of Eden.jpg ジェームズ・ディーンがその演技への評価を確立したとされるエリア・カザン監督の「エデンの東」('55年)も、スタインベックの『エデンの東』('50年)がベースになっているのですが、原作が南北戦争から第1次世界大戦までの60年間の2つの家族の3代にわたる歴史を綴った4巻56章から成る膨大な物語であるのに対し、映画の中で描かれているのは最後のほんの一時期のみで1家族2世代の話に圧縮されており、実質的には、父に好かれたいがそれが叶わないケイレブ(キャル)・トラスク (ジェームズ・ディーン)の苦悩の物語となっています。「エデンの東」の原作は読んでいませんが、スタインベックは後期作品ほど大味の嫌いがあるらしく(エリア・カザンの翻案は当然の選択だったのだろう)、そうした意味では『二十日鼠と人間』は、スタインベックに「文学の神様」が宿った時期の作品であると言えるかと思います。

「怒りの葡萄」ポスター(和田 誠
THE GRAPES OF WRATH 1940.jpg怒りの葡萄 和田誠ポスター.jpg「怒りの葡萄」●原題:THE GRAPES OF WRATH●制作年:1940年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・フォード●製作:ダリル・F・ザナック●脚本:ナナリー・ジョンソン●撮影:グレッグ・トーランド●音楽:アルフレッド・ニューマン●原作:ジョン・スタインベック●時間:128分●出演:ヘンリー・フォンダ/ジェーン・ダーウェル/ジョン・キャラダイン/チャーリー・グレイプウィン/ドリス・ボードン/ラッセル・シンプソン/メエ・マーシュ/ウォード・ボンド●日本公開:1963/01●配給:昭映フィルム●最初に観た場所:吉祥寺ジャヴ50(84-07-14)(評価:★★★★)
  
「エデンの東」 公開時ポスター/1977年公開時チラシ
east of eden  1955.jpg「エデンの東」ps.jpgエデンの東 1977年公開時チラシ.bmp「エデンの東」●原題:EAST OF EDEN●制作年:1955年●制作国:アメリカ●監督・製作:エリア・カザン●脚本:ポール・オスボーン●撮影:テッド・マッコード●音楽:レナード・ローゼンマン●原作:ジョン・スタインベック●時間:115分●出演:ジェームズ・ディーン/ジュリー・ハリス/レイモンド・マッセイ/バール・アイヴス/リチャード・ダヴァロス/ジュー・ヴェン・フリート/エデンの東<サントラ盤>.jpgEAST OF EDEN3.jpgアルバート・デッカー/ロイス・スミス/バール・アイヴス●日本公開:1955/10●配給:ワーナジュリー・ハリス_3.jpgー・ブラザース●最初に観た場所:池袋文芸坐(79-02-18)●2回目:テアトル吉祥寺(82-09-23)(評価:★★★☆)●併映(1回目):「理由なき反抗」(ニコラス・レイ)●併映(2回目):「ウェストサイド物語」(ロバート・ワイズ)

Julie Harris(1925-2013)
           
"Of Mice and Men" from Iron Age Theatre(舞台劇「二十日鼠と人間」)
Of Mice and Men 1.jpg Of Mice and Men 3.jpg

 【1953年文庫化[新潮文庫(大門一男訳)]/1994年再文庫化[新潮文庫(『ハツカネズミと人間』大浦暁生訳)]】

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青春映画の原点とされる作品。主演3人がそれぞれに夭逝しているだけに複雑な思いも。

理由なき反抗 輸入版ポスター.jpg  理由なき反抗パンフレット.jpg 理由なき反抗.jpg Rebel Without A Cause.jpg
「理由なき反抗」輸入版ポスター/パンフレット 「理由なき反抗 特別版 [DVD]
Co-stars Natalie Wood and Sal Mineo
Co-stars Natalie Wood and Sal Mineo.jpg ジェームズ・ディーンが補導されて警察署いる場面のパンフレットが懐かしいこの映画は、「理由なき反抗」1.jpgマーロン・ブランドが出演を断った脚本が、ジョージ・スティーブンス監督の「ジャイアンツ」('56年)の撮影がエリザベス・テーラーの妊娠により中断し時間的余裕のあったジェームズ・ディーンに回ってきて、急遽彼を使うことにした低予算映画だったそうですが、当初はモノクロの予定が、エリア・カザン監督の「エデンの東」('55年)のヒットでカラーに計画変更されたとのことです。ジェームズ・ディーンの演技が良く、結果として青春映画の原点みたいな位置づけの作品になりました(ディーンは撮影の途中からノッてきて、ナイフでの喧嘩シーンでは本物のナイフを使ったりしている)。

理由なき反抗・Rebel Without a Cause.jpg「理由なき反抗」 2.jpg この映画でのジム(ジェームズ・ディーン)とプレイトウ(サル・ミネオ)の関係はよく同性愛だと言われていますが、17歳という設定ですから思春期的なものであると思われ、それでも当初はジムがプレイトウにキスしようとするシーンもあったそうですが、米国内の検閲でカットされたとのこと。個人的には、カットされて良かったと思います。もしそのシーンがあると、BL色が濃くなって、ジュディ(ナタリー・ウッド)を含めた3人の関係のバランスが壊れていたのではないかと思われるからです。

『理由なき反抗』(1955).jpg 一方で、この映画の脚本には、当時の若者の声を聞いたアンケートが反映されていて、そのため、世間の親への教唆的要素が多分に含まれているようにも思います(「理由なき反抗」というタイトルからして)。

 ジムが"チキン・ラン"レースに臨む前に小心者の父親にナイフで切られた血のついたシャツをわざと見せて、これから自分がする事の危険について話したにも関理由なき反抗 Jディーン・Nウッド.jpgわらず、父親は叱ることも止めることも出来ずジムをガッカリさせる場面な理由なき反抗 ディーン.jpgどは、当時言われるようになっていた"父権の失墜"に対する警告ともとれるのではないでしょうか。

 この作品については、こうした作品の意図とは別に、主演の3人の俳優が何れも不慮の死を遂げたこともあって、やや複雑な感慨があります(よく知られるように、ジェームズ・ディーンはこの作品の公開の1ヵ月前に事故死していている(享年24)。アカデミー賞に死後ノミネートされた俳優は何人かいるが、2度ノミネートされたのはジェームズ・ディーンのみである(「理由なき反抗」と「ジャイアンツ」)。

Sal Mineo(1936-1976)/Natalie Wood(1938-1981)
サル・ミネオ.jpgサル・ミネオes.jpg「理由なき反抗」3.jpgNatalie Wood.jpgNATALIE WOOD  (1938 - 1981).jpg '75年にレイ・コノリー監督により「ジェームズ・ディーンのすべて-青春よ永遠に」(James Dean:The First American Teenager)という記録映画(TV用ドキュメンタリー)が作られていて、その中でナタリー・ウッドもサル・ミネオもジェームズ・ディーンの思い出を語っていますが、その翌年の'76年にサル・ミネオは強盗に刺殺され(享年38、生前はピーター・フォークと知己の関係にあり、「刑事コロンボ」の「ハッサン・サラーの反逆」('75年)に、アラブのある国の大使館員の役で出演していた。犯人役はヘクター・エリゾンド(最近では「名探偵モンク」でモンクの新しいかかりつけの精神分析医役を演じている)で、犯人に協力させられて、結局口封じのため殺されてしまう役だった)、更にそのハッサン・サラーの反逆720.jpgハッサン・サラーの反逆 2.jpgハッサン・サラーの反逆 サル・ミネオ.jpg5年後の'81年には、ナタリー・ウッドが撮影中にボートの転覆事故で亡くなっています(享年43、その死因には、事故説以外に他殺説、自殺説もある)。

サル・ミネオ、ヘクター・エリゾンド in「刑事コロンボ(第33話)/ハッサン・サラーの反逆」

Marlon Brando and James Dean.bmp この記録映画の中では、ジェームズ・ディーンがマーロン・ブランドの演技を意識していたことが窺えたのが興味深かったです(演技ばかりでなく、自分はパーティ嫌いでバーティを避けていたのに、パーティに出ていたマーロン・ブランドがどういった様子だったかを人に聞くなど、普段の立ち振る舞いにも強い関心を示していた)。もし、もっと長生きしていたら、どんな作品に出ていただろうかと、ついつい考えてしまいますが、オヤジになったジェームズ・ディーンなんて見たくないという人も結構いるだろうなあ。

James Dean and Marlon Brando
 
James Dean in「エデンの東」('55年)(ケイレブ(キャル)・トラスク)/「ジャイアンツ」('56年)(ジェット・リンク)
iエデンの東H.jpgGiant is best known as Dean's last film.jpg         
James Dean and Natalie Wood
nwood-0730-06.jpg「理由なき反抗」 ちらし.jpgJAMES DEAN REBEL WITHOUT A CAUSE.jpg「理由なき反抗」●原題:REBEL WITHOUT A COUSE●制作年:1955年●制作国:アメリカ●監督・原案:ニコラス・レイ●製作:デヴィッド・ワイスバート●脚本:スチュワート・スターン
/アーヴィング・シュルマン●撮影:アーネスト・ホーラー●音楽:レーナード・ローゼンマン●時間:105分●出演:ジェームズ・ディーン/ナタリー・ウッド/サル・ミネオ/デニス・ホッパー/ジム・バッカス/ロシェル・ハドソン/コーレイ・アレン/ウィリア理由なき反抗08.jpgム・ホッパー/ニック・アダムス/エドワード・プラット/アン・ドーラン/フランク・マッゾラ●日本公開:1956/04●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:高田馬場・早稲田松竹(77-12-21)●2回目:池袋文芸坐(79-02-18)(評デニス・ホッパー 理由なき反抗.jpg価★★★★)●併映(1回目):「ジャイアンツ」(ジョージ・スティーブンス)●併映(2回目):「エデンの東」(エリア・カザン」

デニス・ホッパー(左から2人目)
 

ジェームズ・ディーンのすべて パンフ.jpgJAMES DEAN THE FIRST AMERICAN TEENAGER.jpg「ジェームズ・ディーンのすべて 青春よ永遠に」●原題:JAMES DEAN:THE FIRST AMERICAN TEENAGER●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監ジェームズ・ディーンのすべて 青春よ永遠に00.jpg督:レイ・コノリー●製作:デイヴィッド・パトナム/サンディ・リーバーマン●時間:80分●出演:ジェームズ・ディーン/ナタリー・ウッド/サル・ミネオ/デニス・ホッパー/サミー・デイビスJr./キャロル・ベイカー●日本公開:1977/09●配給:東宝東和●最初に観た場所:テアトル新宿(78-01-13)(評価★★★) ●併映:「サスペリア」(ダリオ・アルジェント)●記録映画
「ジェームズ・ディーンのすべて 青春よ永遠に」 パンフレット

テアトル新宿 tizu.jpgテアトル新宿13.jpgテアトル新宿3.jpgテアトル新宿 1968年12月5日、靖国通り沿いに名画座としてオープン、1989年12月に封切り館としてニューアル・オープン(新宿伊勢丹メンズ館の隣、新宿テアトルビルの地下一階)
  
ハッサン・サラーの反逆9.jpgハッサン・サラーの反逆 00.jpg「刑事コロンボ(第33話)/ハッサン・サラーの反逆」●原題:A CASE OF IMMUNITY●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:テッド・ポスト●製作:エドワード・K・ドッズ●脚本:ルー・ショウ●撮影:リチャード・C・グローナー●音楽:ベルナルド・セガール/ハル・ムーニー●時間:73分●出演:ピーター・フォーク/ヘクター・エリゾンド/サル・ミネオ/ケネス・トビー/バリー・ロビンス/ビル・ザッカート/ハンク・ロビンソン/ハーヴェイ・ゴールド/アンドレ・ローレンス/ネイト・エスフォームス/ジョージ・スカフ/ジェフ・ゴールドブラム(ノンクレジト(デモ隊の男))●日本公開:1976/12●放送:NHK:★★★☆)
ヘクター・エリゾンド in「名探偵モンク」(2008)
ヘクター・エリゾンド モンク.jpg 名探偵モンク1.jpg

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「シェーン」.jpg 「父親は強い男でなければならない」ということか。アラン・ラッドが降りて役を得たジェームズ・ディーン。
ジャイアンツ.jpg ジャイアンツ3.jpg エドナ・ファーバー「ジャイアンツ(上・下)」早川書房.jpg
ジャイアンツ [DVD]」/エドナ・ファーバー『ジャイアンツ(上・下)』 [56年/早川書房]/「シェーン [DVD]

ジャイアンツ パンフ.jpgジャイアンツ ポスター.jpg  「ジャイアンツ」('56年)はエドナ・ファーバー女史のベストセラー小説の映画化作品ですが、完成3日後にジェームズ・ディーンが事故死するという不幸もあって話題を呼び、当時アメリカでも日本でも大ヒットしたとのこと。
GIANT 1956.jpg ジェームズ・ディーンの老け役の演技には批評家の間で賛否があったものの、ディーンのスタニフラフスキー流演技が、ロック・ハドソンの古典派演技と好対照を成している点でも興味深い作品です。

 その他にも実に色々な見方ができる映画です。以前観た際には、アメリカン・ドリームの光と影を体現したジェームズ・ディーン演じるところのジェット・リンクにばかり目がいっていましたが、実はこの作品は、ロック・ハドソン、エリザベス・テーラーが夫婦役を演じる家族ドラマだったのだと思いました(当初は夫役をウイリアム・ホールディンがやる予定だったが、監督の気が変ってロック・ハドソンに。妻役も、グレース・ケリーに決めていたが、彼女がモナコ大公と結婚したために、オードリー・ヘップバーンなどが候補としてあがり、最終的にエリザベス・テーラーに決まった。一方、ジェームズ・ディーンは、ジョージ・スティーブンス監督にこのジェット・リンク役をやらせてほしいと直訴していた)。

シェーン.jpgSHANE.jpg ある家族の前に突然現れた流れ者という設定は、同じジョージ・スティーブンス監督の前作「シェーン」('53年)と似ていますが、流れ者の"シェーン"を演じたアラン・ラッドが、実は「ジャイアンツ」の同じく"流れ者"であるジェット・リンク役に予定されていたのが、アラン・ラッドが役を降りたために、監督に直訴していたジェームズ・ディーンの願いが叶い、ジェット・リンク役が彼に回ってきたという経緯があります。

Shane (1953).jpg 「シェーン」に出てくる家族の父親は、シェーンに一方的に助けられ何とか悪徳牧畜業者から家族を守りますが、これでは家長としての面目は丸つぶれではないでしょうか。奥さんはシェーンに惹かれ、シェーンも奥さんに惹かれている―その想いを断ち切るかのようにシェーンは去っていきますが、この後の夫婦の関係という観点から考えると、ハッピーエンドとは言い切れないモヤモヤしたものが残ります。

 但し、この映画、日本で西部劇の人気投票をすると必ず上位にくるだけでなく、しばしばトップに選ばれる作品で、映画評論家に言わせれば、日本の股旅物のストーリーと見事に重なるため、日本人の心情に合いやすい作品であるとのこと。

 一方、この「ジャイアンツ」の一家の父親(ロック・ハドソン)は、流れ者(ジェームズ・ディーン)に対し、家長としての威厳を賭して対抗し、ジェット・リンクに惹かれそうになる奥さん(エリザベス・テーラー)の気持ちを自らの元に繋ぎとめているように思えます。

 ジョージ・スティーブンス監督には幼い頃に母親喪失の不安感があったそうですが、自身の不安の克服が「父親は母親を守ることができる強い男でなければならない」というアメリカ的な信条に沿った内容に結実したということなのでしょうか。

 撮影中にジェームズ・ディーンは、自分の役の影が薄いことをジョージ・スティーブンス監督に何度も抗議したものの、監督にことごとく却下されたそうです。

Jaiantsu(1956).jpg 何よりも、タイトルに表される舞台スケールの大きさ(「ジャイアンツ」はテキサス州のことを表すと同時に、原題「ジャイアント」は巨大油田を表す)に惹かれます。ここが日本の家族ドラマと一番違うところであり、あの石油が噴き出すシーンなどはマネできない。なにせ、テキサス1州だけで日本の国土の総面積の1.8倍ぐらいの広さがありますから、まさに"ジャイアンツ"。

Jaiantsu(1956)

 ところで、「シェーン」で主役を演じたアラン・ラッド(1913-1964)は、それまでも二枚目俳優としてそこそこ人気はありましたが、ダシール・ハメット原作、スチュアート・ヘイスラー監督の「ガラスの鍵」('42年)などにアラン・ラッド.jpgシェーン002.jpgおいても、原作における主人公の役を演じているのに映画の中では準主役級にされてしまっていたように、大スターと言えるほどの俳優ではなかったのが、この「シェーン」1作で一気にハリウッドの大スターとなります。ところが、その後は大した作品に出ておらず、60年代を過ぎて人気にも陰りが出てからはノイローゼになり、最後は睡眠薬の多用が原因で亡くなっています(享年50)

Alan Ladd in SHANE(1953) 

Jack Palance  in SHANE(1953)/in Bagdad Cafe(1987)
ジャック・パランス1.jpgOUT OF ROSENHEIM.jpg 一方のシェーンの敵役の殺し屋のウィルソン(酒場でコーヒーしか飲まないところが却って凄味があった)を演じたジャック・パランス(1919-2006)は、その後も性格俳優として活躍し、どちらかと言うと相変わらず悪役が多かったですが、パーシー・アドロン監督のバグダッド・カフェ」('87年/西独)で"老い楽の恋"に静かな情念を燃やす老画家役を好演し、個人的には、あの映画では、ジェヴェッタ・スティールが歌うテーマ曲「コーリング・ユー」と並んで最も印象に残りました(「あのジャック・パランスが」という想いで観たということもあるが)。

 しかし、その後も娯楽映画で"しっかり"悪役を演じ続け(「デッドフォール」('89年)でシルヴェスター・スタローン、カート・ラッセルを相手に犯罪組織のボスを演じていた)、一方、コメディ映画「シティ・スリッカーズ」('91年)ではアカデミー賞助演男優賞、ゴールデングローブ賞助演男優賞 をダブル受賞しています。「シティ・スシティ・スリッカーズ dvd.jpgリッカーズ」は、ビリー・クリスタルらが演じる3人の中年男シティ・スリッカーズ パランス.jpgが「カウボーイ体験ツアー」に軽い気持ちで参加し、予期せずにもそこで自らを見つめ直し、自己を取り戻していくという話で(当時のアメリカの不況を反映している面もあったのかも)、「カウボーイ体験ツアー」なるものがあるのを初めて知りましたが、ジャック・パランスはツアーの教官役の老齢のカウボーイを演じ、当時72歳でしたが、老境に達していい味を出していました。「シティ・スリッカーズ [DVD]」Jack Palance & Billy Crystal in City Slickers(1991)
ジャック・パランス.jpg 映画の中でジャック・パランス演じるベテラン・カウボーイは心臓病で急死し、残された3人は、素人のまま「牛追い」の旅をすることになるわけですが(ジョン・ウェインの「赤い河」を意識したかのような牛追いシーンがあった)、実際のジャック・パランス本人は'06年に87歳で老衰のため亡くなっています。

 「役者」としての足跡はアラン・ラッドの方が大きいのかもしれないけれど、「人生」としてはジャック・パランスの方が恵まれていたかも。

Elizabeth_Taylor_in_Giant.jpgRock_Hudson_in_Giant.jpgGiant is best known as Dean's last film.jpg「ジャイアンツ」●原題:GIANT●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:ジョージ・スティーブンス●製作:ジョージ・スティーヴンス/ヘンリー・ジンスバーグ●脚本:フレッド・ジュイオル/アイヴァン・モファット●撮影:ウィリアム・C・メラー/エドウィン・デュパー●音楽:デミトリー・ティオムキン/レイ・ハインドーフ●原作:エドナ・ファーバー「ジャイアンツ」●時間:201分●出演:ジェームズ・ディーン/エリザベス・テーラー/ロック・ハドソン/ジェーDennis Hopper Giant (1956).jpgン・ウィザース/キャロル・ベイカー/チル・ウィリス/メーセデス・マッキャンブリッジ/サル・ミネオ/ロッド・テイラー/ナポレオン・ホワイティング/ジュディス・エヴリン/ポール・フィックス/エルザ・カルデナス/フラン・ベネット/デニス・ホッパー/マーセデス・マッケンブリッジ●日本公開:1956/12●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場所:早稲田松竹(77-12-21) (評価★★★★)●併映:「理由なき反抗」(ニコラス・レイ)

デニス・ホッパー(ジョーダン3世)[中央]

シェーン001.jpgシェーン jパランス.jpg「シェーン」●原題:SHANE●制作年:1953年●制作国:アメリカ●監督:ジョージ・スティーブンス●製作:ジョージ・スティーヴンス●脚本:A・B・ガスリー・Jr●撮影:ロイヤル・グリグス●音楽:ヴィクター・ヤング●原作:ジャック・シェーファー「シェーン」●時間:118分●出演:アラン・ラッド/ヴァン・ヘフリン/ジーン・アーサー/ブランドン・デ・ワイルド/ジャック・パランス/ペン・ジョンスン/エドガー・ブキャナン/エミール・メイヤー/エリシャ・クック・Jr./ダグラス・スペンサー/ジョン・ディエルケス●日本公開:1953/10●配給:パラマウント映画●最初に観た場所:高田馬場パール座(77-12-20) (評価★★★☆)●併映:「駅馬車」(ジョン・フォード)          
パール座入口(写真共有サイト「フォト蔵」)①②高田馬場東映/高田馬場東映パラス ③高田馬場パール座 ④早稲田松竹
高田馬場パール座2.jpg高田馬場パール座 地図.pngパール座.jpg高田馬場パール座4.JPGパール座1.jpg高田馬場パール座(高田馬場駅西口、早稲田通り・スーパー西友地下) 1951(昭和26) 年封切館としてオープン。1963(昭和38)年の西友ストアー開店後、同店の地下へ。1989(平成元)年6月30日閉館。


「シティ・スリッカーズ」●原題:CIシティ・スリッカーズ 2.jpgTY SLICKERS●制作年:1991年●制作国:アメリカ●監督:ロン・アンダーウッド●製作:アービー・スミス●脚本:ローウェル・ガンツ/ババルー・マンデル●撮影:ディーン・セムラー●音楽:マーク・シェイマン●時間:112分●出演:ビリー・クリスタル/ダニエル・スターン/ブルーノ・カービー/ヘレン・スレイター/ジャック・パランス●日本公開:1992/03●配給:東宝東和 (評価★★★)

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「参審制」裁判員制度で大丈夫か。考えさせられる「12人の優しい日本人」。

「12人の優しい日本人」2.png 12人の優しい日本人.jpg 12人の優しい日本人 3.jpg  12人の浮かれる男 筒井康隆劇場.jpg
12人の優しい日本人 [DVD]」/「12人の優しい日本人」豊川悦司/『12人の浮かれる男―筒井康隆劇場(1979年)

 「12人の優しい日本人」は、筒井康隆の『12人の浮かれる男』を原作とする劇団東京サンシャインボーイズの舞台戯曲の映画化作品で、もしも日本に陪審員制が導入されたら...という前提でのコメディです。 ストーリーはちょうど、シドニー・ルメット監督の「十二人の怒れる男」('57年/米)を裏返しにしたようなもので、尚且つ一ひねり入れています。

12 ANGRY MEN.jpg 「十二人の怒れる男」は、ナイフで実父を殺害した容疑がかかる少年の裁判における12人の陪審員の討議において、唯一人、少年の犯行だという意見に疑問を感じた陪審員(ヘンリー・フォンダ)が、残り11人の有罪説の根拠の脆弱を順番に暴いていくものです。圧倒的に被告に不利だった数々の証拠が全て崩され、結局、全員一致で「無罪」の評決が下されるまでの展開は息をもつかせぬものですが、この作品のテーマは、「議論による民主主義の勝利」と言うよりも、その議論の中核を成す「事実に基づく強固な論理」そのものにあるとも言え、推理劇としての楽しさを満喫できるものでした(企業の社員研修などで使われることもあるようだ。ロジカル・シンキングの強化が狙い?)。

 原作者のレジナルド・ローズは、実際に殺人事件の陪審員を務めたことがこの話を書くきっかけになったとのことで、舞台劇の脚本のイメージがありますが、元々のオリジナルはテレビドラマ用に書かれたものでした(当時は生放送で連続ドラマをやっていた。演出はCBS社員だったフランクリン・J・シャフナー(後の「パピヨン」('73年/米)の監督))。

12人の優しい日本人(映画).jpg  「12人の優しい日本人」は、12人の陪審員のうち11人までが被告を無罪だと考えていたところ...という「十二人の怒れる男」とは逆の状況から始まり、その後の展開も含め明らかに「十二人の怒れる男」のパロディなのですが、一人の若い男の陪審(相島一之)が有罪を主張して周囲を一人ずつ論理的に説得し、ほぼ有罪で固まりかけたところへ、それまで黙っていた男の陪審員(豊川悦司)が口を開き始めて、但し、自分が主張するだけでなく、他の陪審員に自らの考三谷幸喜s.jpgえも言わせつつ、再び一人ずつ無罪支持に導いて最初の状況に戻してしまう、という―三谷幸喜の凝った脚本もいいし(東京サンシャインボーイズは'83年、三谷が大学3年の時に結成)、役者も全員が一定の水準以上にあって下手な人がおらず、自然に笑えると言うか、むしろテンポのいい緊張感を持って最後まで観続けることができます。

「12人の優しい日本人」3.jpg どちらかと言えば良識派だが、ちょっと偏屈なところもある歯科医(村松克己、当初「銀行員」と称していた)、うず潮1.jpg「難しいことは私には分かりません」と繰り返すばかりの主婦(林美智子、NHKの朝の連ドラ「うず潮」('64年度、原作は林芙美子)の主人公・林フミ子役だった。平均視聴率30.2%、最高視聴率47.8%。林美智子は'65年の「NHK紅白歌合戦」の紅組司会にも抜擢された)、論理的には有罪の証拠をも提示しながら、自らの心証としての無罪を主張し続ける初老の男性(二瓶鮫一、これこそ「優しい日本人」!)、徹底したメモ魔で、裁判でのやり取りの事実だけを並べているが、自分個人の意見は全くないというキャリアウーマン(中村まり子、中村伸郎の娘)、とにかく早く終わらせて帰ることしか考えていないセールスマン(大河内浩)、べらんめえ口調で気性が激しく途中でひねくれてしまう独身男(梶原善)..etc.多種多様な12人ですが、やはり豊川悦司の「実は○○○のふりをしていた△△」は良かったです。

リー・J・コッブ.jpg28歳の会社員の2号(相島一之).jpg ネタばれになりますが、ヘンリー・フォンダに相当する役は相島一之ではなく、実は豊川悦司の役であり、一見ヘンリー・フォンダに相当する役み見えた相島一之は実はリー・J・コッブに相当する役だったんだなあと。このあたりのネジレさせ方もパロディとして上手いと思いました。

「12人の優しい日本人」.jpg 豊川悦司はこの作品が本格的映画デビューでしたが(内容的には殆ど舞台劇だが)、元々はシェイクスピア劇で知られる演劇集団「円」出身で、演技の基礎はしっかりしているし、この作品の役はハマリ役12人の優しい日本人 江口洋介版_.jpgだったと思います(最近の舞台では、江口洋介がこの役をやっていて、江口洋介にとっての舞台デビュー作となっている)。

江口洋介版

 「陪審制」は市民だけで有罪・無罪を決める裁判方式で、それに対し裁判官と市民が合議して判決を導き出すのが「参審制」。この映画で描かれているのは市民のみの討議だから「陪審制」で(但し、米国等の陪審制は有罪・無罪を決めるもので、量刑判断はしない)、日本でも昭和3年から昭和18年まで「陪審制」がありました(因みに、司法制度改革で今回導入される裁判員制度は「参審制」である)。

「十二人の怒れる男」.jpg 「十二人の怒れる男」に対しては、日本に陪審制がないのは、体制側がこういう結果を恐れているからだ、という説もあるようです(ヘンリー・フォンダに対してではなく、残り11人の陪審員について言っているのだろうが、逆説的にはヘンリー・フォンダも含めた"場"または"座"として言えるかも)。日本人は会議などで権威者や専門家の意見に靡(なび)きやすいと言われますが、そうした専門家または専門家っぽい人に対して過剰な敬意を抱いてしまいやすい傾向にあるらしいです。

12人の優しい日本人5.jpg  「12人の優しい日本人」は「十二人の怒れる男」と同様「陪審制」における話ですが、専門家(裁判官)が討議に加わる「参審制」の裁判員制度であればなおのこと、この映画のままとは言わないまでも類似のことが(つまり裁判官の意見に市民がどんどん引っ張られるようなことが)ありうるのではと、この映画の豊川悦司の役にすっかりダマされた自分をふりかえって思うのです。

12人の優しい日本人5.jpg「12人の優しい日本人」●制作年:1991年●製作:ニュー・センチュリー・プロデューサーズ●監督:中原俊●脚本:三谷幸喜●原作:筒井康隆「12人の浮かれる男」●時間:116分●出演:塩見三省/相島一之/上田耕一/二瓶鮫一/中村まり子/大河内浩/梶原善/山下容莉枝/村松克己/林美智子/豊川悦司/加藤善博●劇場公開:1991/12●配給:アルゴプロジェクト (評価★★★★)

尾道みなと祭.jpgうず潮(1964).jpgうずしお タイトル.jpg「うず潮」●演出:関口象一郎●脚本:田中澄江●音楽:田中正史●原作:林芙美子●出演:林美智子/日高澄子/永野達雄/大塚国夫/雪代敬子/津川雅彦/桜田千枝子/池田和歌子/茅島うずしお 林・津川1.jpg成美/渡辺文雄/紅新子/永野達雄●放映:1964/04~1965/04(全310回)●放送局:NHK
「うずしお」 林美智子/津川雅彦

1969(昭和44)年・尾道みなと祭 /「うず潮」主演の林美智子(中央パレード・カー)[山陽日日新聞]

                                          
十二人の怒れる男3.jpg「十二人の怒れる男」●原題:12 ANGRE MEN●制作年:1957年●制作国:アメリカ●監督:シドニー・ルメット●製作:レジナルド・ローズ/ヘンリー・12 Angry Men(1957).jpgフォンダ●脚本:レジナルド・ローズ●撮影:ボリス・カウフマン●音楽:ケニヨン・ホプキンス●原作:レジナルド・ローズ(TVドラマ)●時間:96分●出演:ヘンリー・フォンダ/リー・J・コッブ/エド・ベグリー/ E・G・マーシャル/ジャック・ウォーデン/マーティン・バルサム/ジョン・フィードラー/ジャック・クラグマン/エドワード・ビンズ●日本公開:1959/08●配給:ユナイテッド・アーティスツ (評価★★★★)
12 Angry Men(1957)

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