【2492】 △ 中島 貞夫 「真田幸村の謀略 (1979/09 東映) ★★☆

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片岡千恵蔵の真田昌幸、萬屋錦之介の徳川家康、高峰三枝子の淀君。超豪華「B級」時代劇。

真田幸村の謀略ps.jpg 真田幸村の謀略ns.jpg 真田幸村の謀略 1979.jpg 真田幸村の謀略 松方.jpg
「真田幸村の謀略」チラシ・ポスター・パンフレット/「真田幸村の謀略 [DVD]」松方弘樹(1942-2017/享年74

真田幸村の謀略O.jpg 慶長15年、天下統一を図る家康(萬屋錦之介)は、大坂城の豊臣秀頼(小倉一郎)一党を討つための準備を進めている。一方、真田昌幸(片岡千恵蔵)・幸村(松方弘樹)父子も九度山で戦いの決意を固めていたが、昌幸は家康の間者に殺害され、幸村の妻・綾(萩尾みどり)は自刃を遂げる。幸村は穴山小助(火野正平)のみ残して他の家臣を上田城へ帰し、家康側についた兄・信幸(梅宮辰夫)と決別、亡父の遺志を継ぎ、家康の首をとる決心をする。家康の送った服部半蔵(曽根晴美)に殺された戸沢白雲斎(浜村純)の残した人名帖から、猿飛佐助(あおい輝彦)、霧隠才蔵(寺田農)、海野真田幸村の謀略 00.jpg六郎(ガッツ石松)、望月六郎(野口貴史)、筧十蔵(森田健作)、由利鎌之助(岩尾正隆)、根津甚八(岡本富士太)、三好伊三入道(真田広之)、三好清海入道(秋野暢子)などの草の者を集める。フランキー砲試射を見に来る家康を暗殺するために幸村と十勇士は出発するが、計画を見抜いた家康配下の半蔵の忍者部隊に幸村は片目を射抜かれる。家康は幸村達を豊臣が雇っ真田幸村の謀略 02.jpgた牢人と決めつけ、豊臣氏に叛逆の意図ありと口実を作り、徳川連合軍40万を大坂へ向けて進撃、1614年10月大坂冬の陣が始まる。報償金目当ての者、ひと旗上げようとする者が大坂に集まり、幸村と十勇士も大坂へ向かう。大坂城では徳川を迎え打つ軍議が開かれ真田幸村の謀略 38.jpg、籠城を主張する豊臣譜代衆と、野戦を主張する幸村達牢人衆が対立するが、淀君(高峰三枝子)の一言で籠城と決定、幸村は鉄壁の出城「真田丸」を作る。幸村は、小助に天竺渡来の麻薬を持たせ遊女たちと共に前田軍に送り込んで前田軍を骨抜きにし、翌日の合戦で真田軍が圧勝する。家康は和議の交渉を進め、フランキー砲の偶発に驚愕した淀君も和議に応じてしまうが、和議が済むと家康は大坂城の堀を埋めつくし、裸同然の無防備な城に一変させてしまう。そして、1615年4月大坂夏の陣が始まる―。

真田幸村の謀略 01.jpg 1979(昭和54)年公開の中島貞夫監督による東映"何でもあり"時代劇。冒頭、いきなり夜空から巨大隕石が落下してくる場面があり(「妖星ゴラス」('62年/東宝)かと思った真田幸村の謀略71.jpgけれど、映画会社が違ったか)。この星に乗ってやってきたのがどうやら猿飛佐助だったらしく、最後は独りまた宇宙へ帰っていきます。超能力が使えるならばそれをもっと使えばいいのに、刀や徒手空拳で東映時代劇の殺陣の流儀に沿って闘っているというのもおかしいし、と思ったら、「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前」と思い出したように九字を切る(とても宇宙から来たとは思えない)―という具合に、突っ込みどころは多く、穿った見方をすれば、そうした突っ込みどころを愉しむ映画なのかもしれません。

真田幸村の謀略 608.jpg真田幸村の謀略19.jpeg その外にも、真田昌幸(片岡千恵蔵)が、家康の間者が放った猫にひっかかれて死んでしまったり(猫の爪に毒が塗ってあった)、三好清海入道が朝鮮から連れてこられた姫君で切支丹のジュリアおたあ(秋野暢子)の変名であって、しかも真田幸村の謀略 0259.jpg加藤清正(丹波哲郎nXnh.jpgテレパシスト能力を有し、人の心を読み取ることが出来るという設定になっいていたり(三好清海入道の弟・三好伊三入道役は真田広之)、幸村が敵に片目を射抜かれて途中から"独眼竜政宗"みたいに眼帯をしていたり、加藤三好伊三入道(真田広之).jpg真田幸村の謀略ド.jpg清正(丹波哲郎)が大阪城内の座敷牢みたいなところでトラを飼っていたり...。幸村が十勇士だけ引き連れて徳川の大軍と戦っているのも非現実的ですが、極めつけはラストで、幸村が家康との一騎打ちの末その首を刎ね、家康の首が空高くぶっ飛びます(公開当時は「家康の首が50メートル飛ぶ!」という宣伝がなされていた)。

片岡千恵蔵(真田昌幸)/秋野暢子(三好清海入道)/松方弘樹(真田幸村)/丹波哲郎(加藤清正)/真田広之(三好伊三入道)

真田幸村の謀略 pannhu.jpg こうした荒唐無稽な内容でありながらも、ベースはNHK大河ドラマ「真田丸」などでもお馴染みの展開であり(ある意味、ラストの家康の死を除いては、後の「将軍家光の乱心 激突」('89年/東映)などよりは"史実逸脱度"は低いかも)、その「真田丸」もしっかり作られ、合戦シーンはかなり大掛かりなものとなっています。そして何よりも、片岡千恵蔵「真田幸村の謀略」横尾1.jpgの昌幸、萬屋錦之介の家康、高峰三枝子の淀君と、配役が超豪華です(思えば、片岡千恵蔵が「赤穂浪士」('61年/東映)で大石内蔵助を演じた時に松方弘樹はその息子の大石主悦役で出ており、当時18歳で映画デビュー2作目だった)。また、十勇士が初登場する際にストップ・モーションとなってイラスト化されますが、そのイラストを描いているのは横尾忠則です。

真田幸村の謀略   .jpg 難点の1つは、その十勇士達の個性がそれほど活かされておらず、真田の郷にいる時でも訓練行動の時から同じようなユニフォームで動き回っていて、何だかレインジャー部隊にしか見えない点でしょうか。正直、後でスチール写真で誰が誰だったか確認した次第(「将軍家光の乱心 激突」のように千葉真一こそ出ていないが、JACの面々は出ているみたい)。ただ動き回っているだけで、あまり演技させてもらっていない俳優達が可哀そうです。強いて言えば、三好清海入道を女性にしたことで、秋野暢子にドラマ部分を担わせた印象もありますが、これもちょっと弱かったか。別に難点は1つではなく、他に難点はと言われれば幾つでもありますが、むしろ突っ込みどころがあり過ぎてコメントし辛いという、超豪華「B級」時代劇、といった感じの作品でした。

 因みに、この作品で徳川家康を演じた萬屋錦之介は、13年前の1966(昭和41)年のTBS連続ドラマ「戦国太平記 真田幸村」(全52回)では真田幸村を演じており(当時、中村錦之助)、真田幸村を演じた松方弘樹(1942-2017)は、19年後の1998(平成10)年1月2日にテレビ東京で放送された12時間超ワイドドラマ「家康が最も恐れた男 真田幸村」でも真田幸村を演じています。

真田幸村の謀略 title.jpg「真田幸村の謀略」●制作年:1989年●監督:中島貞夫●特撮監督:矢島信男●脚本:笠原和夫/松本功/田中陽造/中島貞夫●撮影:赤塚滋●音楽:佐藤勝●時間:148分●出演:松方弘樹/寺田農/あおい輝彦/ガッツ石松/野口貴史/森田健作/火野正平/岩尾正隆/岡本富士太/真田広之/秋野暢子/片岡千恵蔵梅宮辰夫/萩尾みどり/北村英三/村居京之輔/和田昌也/橘麻紀/谷川みゆき/浜村純/丹阿弥谷津子/小泉美由記/木村英/岡麻美/田中みき/市川好朗/志茂山高也/勝野賢三/タンクロウ/萬屋錦之介/小坂和之/進藤盛裕/茂山千五郎/金子信雄/香川良介/小林昭二/林彰太郎/江波杏子/川浪公次郎/壬生新太郎/曽根晴美/笹本清三/春田純一/福本清三/大矢敬典/木谷邦臣/平河正雄/奔田陵/志賀勝/丸平峰子/小峰隆司/池田謙治/司裕介/畑中伶一/山田良樹/藤沢徹夫/平沢彰/唐沢民賢/波多野博/阿波地大輔/宮城幸生/大城泰/秋山勝俊/高並功/泉好太郎/五十嵐義弘/小倉一郎/高峰三枝子/上月左知子/桜町弘子/松村康世/富永佳代子/星野美恵子/森愛/戸浦六加藤清正(丹波哲郎mN.jpg真田幸村の謀略 梅宮.jpg宏/梅津栄/野口元夫/白井滋郎/疋田泰盛/土橋勇/成田三樹夫/遠藤征慈/宮内洋/丘路千/中村錦司/丹波哲郎●公開:1979/09●配給:東映(評価:★★☆) 


丹波哲郎(トラに餌をやる加藤清正)/梅宮辰夫(徳川家康陣中の真田信幸)


中島貞夫.jpg中島貞夫(なかじま・さだお)映画監督。2023年6月11日死去(88歳没)
京都・太秦の東映京都撮影所を拠点に活躍し、63本もの監督作品を生むなど、京都映画界の顔だった映画監督。東京大文学部卒後、東映に入社。「日本映画の父」と呼ばれた牧野省三の息子であるマキノ雅弘、今井正両監督らに師事し、64年に「くノ一忍法」で監督デビューした。菅原文太主演の「木枯し紋次郎」(72年)などの時代劇、「日本の首領(ドン)」シリーズなどのヤクザ映画など数多くの作品を手がけた。近年は京都国際映画祭で映画の振興に尽力し、立命館大学の客員教授も務めた。他の代表作に「真田幸村の謀略」「制覇」「序の舞」「瀬降り物語」など。

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松方弘樹 … 2016年1月21日、脳リンパ腫のため死去。74歳。

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This page contains a single entry by wada published on 2016年12月18日 22:05.

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