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各エピソードが丁寧に描かれていた。どこまでが「看取り」でどこからが「介護」か。でも、応援のつもりで◎。

『私は、看取り士。わがままな最期を支えます』['18年/佼成出版社]
「みとりし [DVD]」 出演:榎木孝明/村上穂乃佳/高崎翔太

つみきみほ/宇梶剛士
交通事故で娘を亡くした定年間際のビジネスマン・柴久生(榎木孝明)。家族ともバラバラになり、喪失感から自殺を図ろうとした彼の耳に聞こえた「生きろ」の声。それは切磋琢磨して一緒に仕事に励んだ友人・川島(宇梶剛士)の最期の声だったと、彼の"看取り士"だったという女性(つみきみほ)から聞かされる。看取り士という職業に興味を持った柴は彼女に訊ね、「医者から余命告知を受けた人が最期をできるだけ安らかに旅立つことが出来るよう手伝いすること」が看取り士の仕事だと知る。5年後、早期退職後セカンドライフの仕事として看取り士を選んだ柴の姿が、岡山県高梁市にあった。地元の唯一の診療所の清原医師(斉藤暁)と連携しながら、小さな看取りステーション「あかね雲」でボランティアスタッフたちと最期の時を迎える患者たちを支えている。そんなある日、新任の医者・早川奏太(高崎翔太)、23才の新人看取り士・高村みのり (村上穂乃佳)が着任してくる。みのりは、9歳の時に母を亡くしたという経験からこの職業を選ぶが、経験が浅く、緊張しながら最初の患者を柴と共に担当する。最初の患者は、「もう病院に戻りたくない」という希望を持つ83才の清水キヨ(大方緋紗
子)。息子 の洋一(仁科貴)は、嫁・千春(みかん)が義母の面倒を見ないということで、柴たちへ依頼をしてきた。日々弱っていくキヨに寄り添う洋一、そして柴とみのり。キヨの最期、柴は洋一を促し母の背中を支えさせるが、みのりは見守ることしかできなかった。みのりは、腎機能が低下して別の病院に転院しなければならないという東條勝治(石濱朗)を初めて一人で担当すること になる。息子は東京で仕事をしているので看護できないが、勝治は「家に帰りたい」と訴えていた。みのりは懸命にケアをし、心を通い合わせるが、ある日クスリの量を間違え、勝治は不眠でベッドから落ちる。自信喪失のみのりに、柴は「ただ黙って聞いて。そして優しく触れて気持ちを受け止めるんだよ」とアドバイスをする。勝治の最期、東京から駆けつけた 息子は「父さんの子供で良かったと思ってるよ」と父に語り掛ける。みのりが初めて看取り士として命のバトンを渡せた瞬間でもあった。乳がんの再発と肺への転移で清原病院に入院している山本良子(櫻井淳子)は、3人の子を持つ母親である。余命いくばく ない彼女の希望もやはり、自宅に帰ることだった。夫・幸平(藤重正孝)は、子3人の面倒を見ながら、妻・良子を献身的に看護していたが、子育てと看護の大変さから柴たちへ相談をしてきた。柴の指導の元、みのりが山本家の母親の最期と向き合う日々が始まる―。
白羽弥仁(しらは みつひと)監督による2019年9月13日公開作で、「おくりびと」('08年)のようなブームになってもおかしくない作品ですが、閉館前の有楽町スバル座(2019年10月20閉館)でのロード公開の後、不運にも間もなくコロナ禍となり、広がりをみせないままになってしまった作品です。最近は関係者の努力により、地域の看取り師などと連携して市区町村での上映会を繰り返しているようで、個人的にも区の施設での上映会で観ました。
柴田久美子・日本看取り士会会長の著書『私は、看取り士』(佼成出版社)がベースとなっており、かねてより柴田氏と親交のあった俳優の榎木孝明が(二人は十数年前に島根県の離島であり、柴田氏が「看取りの家」を開設した隠岐諸島・知夫里島で邂逅したそうだ)、柴田氏のガン告知を受け、彼女の27年間の看取り士としての集大成をしようと決意したことが映画製作のきっかけだとのこと(従って榎木孝明は企画段階から本作に参加してている)。
柴田久美子の直接的なモデルはつみきみほ演じる看取り士と思われますが、榎木孝明が演じる主人公の柴久生という名前から柴田久美子が反映されていることが窺えます(さらに、主人公はラストでがん告知を受けたことが示唆されている)。
「入退院を繰り返しててきた老母」「孤独死した老人男性」「人工透析をやめ自宅に戻った父親」「若くして乳がんとなった3人の子を持つ母」の4つのエピソードの1つ1つが丁寧に描かれ、それらの看取り経験を通して新人看取り士のみのりや新任医師の奏太が成長していくのがいいです。
4つのケースは、当人が病院で死ぬより自宅で死にたいと思っている点で共通しており、実際、病院にいた時より自宅に戻った時の方が元気に。家族と一緒にいられればなおさらのことで、2番目のケースだけ孤独死なのでそうではなかったですが、それ以外のケースでの別れの会話「お母ちゃんありがとう」「お父さんの子供でよかった」「ママ起きて」といった言葉には泣かさます(2番目のような悲惨なケースも敢えて描いているのも意義があると思う)。
主演の1人、村上穂乃佳はオーディション選考1200人の中から選ばれたそうですが、良かったと思うし(その後、奥田裕介監督の「誰かの花」('21年)でも主役の介護ヘルパー役を務めることに。この作品もミニシアター系でしか上映されなかった)、つみきみほ、宇梶剛士などのちらっとしか出てこない俳優の演技もしっかりしていました。劇場で上映しないのかなあ。
因みに、「看取り士」の仕事は、具体的には、どこでどのように最期を迎えるのか、葬儀や墓のことなど、本人の相談に応じ、医療保険、介護保険などの社会資源を充分に使えるようサポートするのが役割で、それに対し「看取り」とは、具体的に死が避けられない状況の人に対し、最期を迎えるそのときまで、食事や排せつの介護といった日常生活のケアをすることで、点滴を打つような医療行為や治療による延命は含まれないものの、「介護」は入ってくるようです(この映画では「本来の意味での看取り士は介護はしない」との前置きのもと、描き方としては「看取り士」に一部「介護」を含め、広く「看取り」の役割を負わせていたように思います。
であるので、どこまでが「看取り」でどこからが「介護」かわかりづらいという問題は孕んでいますが、応援するつもりで◎評価にしました。

「みとりし」●制作年:2019年●監督・脚本:白羽弥仁●製作:高瀬博行/柴田久美子(企画)/榎木孝明(企画)/嶋田豪(企画)●撮影:藍河兼一●音楽:妹尾武●原案:柴田久美子『私は、看取り士』●時間:110分●出演:榎木孝明/村上穂乃佳/高崎翔太/斉藤暁/つみきみほ/宇梶剛士/杉本有美/松永渚/大地泰仁/白石糸/大方斐紗子/仁科貴/みかん/堀田眞三/片桐夕子/石濱朗/西澤仁太/金山一彦/藤重政孝/櫻井淳子●公開:2019/09●配給:アイエス・フィールド●最初に観た場所:サンパール荒川(23-11-23)(評価:★★★★☆)



映画化作品の方は、比較的原作に忠実に作られていたように思います。原作にある、川畑成実(杏)の高校時代の同級生で今は地元で警官をやっている西口や、フリーライターで環境保護活動家の沢村が割愛されていましたが、却ってスッキリしたかも(沢村が割愛されたおかげで、死体を運ぶのがたいへんそうだったが(笑))。
ラストで、湯川(福山雅治)が成実に、「きみは恭平君を守ってほしい」と言うのも、前後の脈絡からしてどうしてこうなるの?という疑問はありますが、これは原作では「きみの務めは人生を大切にすることだ」となっています。どちらにしても、事件はこれで終わりにしようということですが、この映画を観る限り、恭平君は「いつか」ではなく「明日にでも」自分が事件当日にやったことの意味に気づきそうな感じでした。
いろいろケチをつけましたが、原作
を読んでよくわからなかった、カメラ付きケータイ入りのペットボトル・ロケットを何度も海に向かって打ち上げる実験の全容が理解できたのと(かなりの尺をとっていた)、湯川と対峙した旅館の主人・川畑重治を演じた前田吟が、(これで事件を落着させたいという)重要な場面でベテランの演技力を見せていたので、映画も一応○としました。
「真夏の方程式」●制作年:2013年●監督:西谷弘●製作:鈴木吉弘/稲葉直人●脚本:福田靖●撮影:柳島克己●音楽:菅野祐悟/福山雅治●原作:東野圭吾●時間:129分●出演:福山雅治/吉高由里子/北村一輝/杏/豊嶋花/青木珠菜/前田吟/風吹ジュン/白竜/塩見三省/山﨑光/西田尚美/田中哲司/永島敏行/根岸季衣/神保悟志/綾田俊樹/筒井真理子●公開:2013/06●配給:東宝(評価:★★★☆)
永島敏行(多々良管理官)/ 北村一輝(草薙俊平) 

「親密さ」という演劇を作り上げる過程を描いた劇映画と、実際の舞台「親密さ」の記録映像の2部構成。それぞれに虚構と現実が複雑、微妙に交錯し続ける。新作舞台の上演を控えた令子(平野鈴)と良平(佐藤亮)はコンビで演出を手がけているが、そのやり方に限界が見え始めてきていた―。
前半の舞台演劇を作り上げていく過程の部分は、そこまでが現実でどこまでが演技か分からない部分もあり、こうした作りは、同監督の「
演出の令子が舞台の出演者たちにいきなり政治的なインタビューをしたり、超長回しのシーンがあったりと、実験的な要素は多いです。舞台稽古の途中で主役の衛(まもる)役を託してした男性が去り、良平自身が主役を演じることになるというのはまさに「
そして、「短い第3部」とも言えるエピローグ。舞台劇「親密さ」の演出家だった令子は編集者になり、脚本家かつ主演俳優だった良平は(SF的設定のもと)韓国の義勇兵となり、軍楽隊に所属している。その2人が偶然再会し、それぞれの電車に乗り、車内を走り回り、投げキスを交わし合う。山手線と京浜東北線を走る電車が並走し、追いつき追い越し、最終的に二手に分かれて消えていく―。何だか青春映画っぽい結末にも見えますが、平行線で交わらない線路によって「親密さ」を表現するという発想自体が「視線」について考え抜いてきた濱口監督ならではの演出と言えるかと思います(このラストシーン、出演者はカメラがどこにあるかわからないまま演技したそうで、このあたりも濱口監督らしい)。


兵庫県神戸市で暮らす看護師のあかり(田中幸恵)、専業主婦の桜子(菊池葉月)、学芸員の芙美(三原麻衣子)、科学者の妻の純(川村りら)は、お互いに仲が良く、行動を共にすることが多い。彼女たちは、鵜飼(柴田修兵)が開催したワ
ークショップに参加する。打ち上げの席上、純が離婚調停を進めていると知ったあかりは、なぜ今まで話してくれなかったのかと怒り、その場を立ち去る。その夜、駅のプラットフォームで倒れた純を桜子は自宅に泊め
る。あかり、桜子、芙美、純は温泉へ出かける。あかりと純のあいだにあったわだかまりは消えて、彼女たちは旅行を満喫するが、芙美は、夫で編集者の拓也(三浦博之)と小説家のこずえ(椎橋怜奈)が連れ立って歩いている場面を目撃してしまう。翌日、純は1人だけバスで帰途につく。後日、あかり、桜子、芙美は、純の夫の公平(謝花喜天)からの連絡を受けて、カフェを訪れる。純の行方が分からなくなっているのだという。離婚を望んでいた純が裁判に敗れたこと、そして、純が公平との子を妊娠しているらしいことも、公平の口から語られる。桜子は、中学生の息子が恋人の女性を妊娠させてしまったと知らされ
る。夫の良彦(申芳夫)と話し合ったのち、良彦の母のミツ(福永祥子)と共に女性の家を訪ねた桜子は、女性の両親に土下座する。その帰り道、桜子は、自分と良彦の仲を取り持ってくれたのが純であった、と息子に話す。桜子の息子が、フェリー乗り場で恋人の女性を待っていたところ、偶然にも純と出会う。純は、感謝の言葉を告げる桜子の息子に見送られながら、フェリーに乗り込む。純を乗せたフェリーが、神戸の街から遠ざかって行く。こずえ
の小説の朗読会が開催される。トークセッションに登場する予定だった鵜飼が途中で退席するが、純を探して朗読会に来ていた公平がその役割を引き継いで、朗読会は無事に終わる。打ち上げでは、公平、桜子、芙美、拓也、こずえのあいだで口論が起こる。その場にいた者たちが次々と席を外し、こずえと拓也が残される。帰りの車中でこずえは拓也に好意を伝える。その言葉に拓也は戸惑うが、こずえとそのまま一晩を明かす。芙美とともに最終電車に乗った桜子は、夫とは久しく性的な関係を持っていないと芙美に告げる。やがて電車が駅に着き、桜子と芙美は電車を降りるが、ワークショップの参加者だった風間(坂庄基)の姿を車内に見つけた桜子は、再び電車に乗る。転倒により足を怪我しているあかりは、松葉杖をつきながら、鵜飼の妹の日向子(出村弘美)が働くバーに行き、鵜飼と打ち解ける。翌朝、芙美は拓也に離婚の意思を伝える。芙美の言葉を聞いた拓也は動揺するが、出社の時間が迫っていたため、家を出て車に乗り込む。同じ頃、桜子は良彦に、風間と性的な関係を持ったことを伝える。その後、職場へ向かった良彦は、交差点で泣き崩れる。一方、病院に出勤したあかりは、いつも失敗を叱っていた後輩の柚月(渋谷采郁)から、泣きながら感謝の言葉を告げられる。あかりは柚月をそっと抱擁する。交通事故にあった拓也は、あかりが勤める病院に運びこまれる。あかりは、廊下にいた芙美を誘って、病院の屋上に上がる。芙美は拓也のそばにいるつもりだという。また4人で旅行へ行こう、と語るあかりの目の前には、神戸の街と海と空が広がっているのであった―。(Wikipediaより)
2015年公開の濱口竜介監督作で、主演を務めた田中幸恵、菊池葉月、三原麻衣子、川村りらの4人は、第68回「ロカルノ国際映画祭」で「最優秀女優賞」を受賞しています(予備選考の段階でコンペ部門に正式には入っていなかったこの作品が最終的には賞を受賞し、同監督の「
脚本の改稿を重ねる中で、出演者と面談し、彼女たちが脚本に感じる違和感は修正されていったとのこと(第3稿)。さらに、「語りたいドラマを語ること」と「『演者が口にできないだろう』と思わないセリフを書いていくこと」という2点の課題に取り組むこととなった(第6稿)とのことで、とりわけ後者は、ドキュメンタリーを思わせるようなタッチとなって効いているように思いました。大袈裟に言えば、従来の日本映画の〈非リアリティ〉の壁を打ち破ったという感じでしょうか。個人的には、今までに観た日本映画で最もインパクトが大きかった今村昌平監督の「
当初は、家庭という守るものを持っている3人の中年男性が、急死した親友の葬儀後、家族や仕事を放り出し、人生を見つめなおす放浪を繰り返すという、ジョン・カサヴェテス監督の「ハズバンズ(Husbands)」('70年/米)という映画における「4人組がひとりを失い、他の3人が精神的な彷徨いを体験する」構造を使おうとしたそうで、(実際その構図は活かされている)、「ハズバンズ」の女性版で、かつ「かつての花嫁たち」という皮肉が込めて(実際4人ともかつて結婚していたか、今も結婚しているが夫婦の危機にあるという設定)「BRIDES」という仮題がつけられていたそうですが、濱口監督が偶々「HAPPY HOUR」という看板を見つけて、「ファニーな響きが、映画が進行するに従って皮肉な働きをす
る」「ラストをアンハッピーエンドと思わせない力をタイトルが持ち得るんじゃないか」と感じて、これを題名に選んだとのことです(製作段階において資金が底を尽きそうになったため、濱口竜介監督自らネットでクラウドファンディングを呼びかけたが、この時はまだ「BRIDES」という仮題のままだった)。
確かに、最初は4人ともフツーに日常を過ごしているアラフォーの女性たちに見えたのに、ワークショップの打ち上げの席上で純が離婚調停を進めていると告白したあたりから、それぞれが抱える容易ならぬ問題が浮き彫りになってきて、終盤になればなるほど何れもカタストロフィー(破局)に向かっていうように見えるけれども、アンハッピーエンドかというと、そんな印象も受けない不思議な作りになっているように思いました。
個人的には実家である神戸が舞台なので親近感がありましたが、今までにないニュータイプの日本映画を観たというか(リアリズムに立脚していることがニュータイプであるならば、今までの日本映画はなんだったのかというのはあるが)、ともかく、5時間17分を飽きさせないで見せる傑作であると思います。





産業スパイ組織・AN通信の諜報員・鷹野(藤原竜也)と、相棒の田岡竹内涼真)。彼らには、24時間ごとにAN通信へ定期連絡しなければ爆死する爆弾を埋め込まれている。彼らは今ある太陽光エネルギーの開発技術に関する国際的な争奪戦の最中にいた。他国のスパイや各国の権力者たちと対峙する中、鷹野の商売敵のデイビッド・キム(ピョン・ヨハン)や謎の女AYAKO(ハン・ヒョジュ)らが暗躍する―。
原作はスパイ合戦がかなり複雑に入り組んでいて、読んだのは8年くらい前なので、映画を観ながらストーリーの細部を思い出せるかなあと思ったけれども、結果的には、映画を観てもよく分からなかった部分が多かったという感じです。
ただ、映画というものはアクションだけでは成り立たず、ドラマ部分がしっかりしていてこそ印象に残るものとなるはずですが、ドラマ部分がやや弱かったでしょうか。と言うより、見始めてから、何か違うなあと思ったら、鷹野の生い立ちを巡るシリーズ第2作『森は知っている』も取り入れて2作を1本にまとめ、今起きていることと鷹野の過去の、高校時代や子ども時代のこととが交互に出てくる構成でした。
この構成自体が悪いとは思わないですが、本2冊分を1作に詰め込んだことで犠牲になったのが、プロット部分の描写だったように思います。説明的になり過ぎて全体のテンポが悪くなるのを避けるために敢えてそうしたのかもしれませんが、内容が飛び飛びになってサスペンス的な要素が抜けてしまったように思います。原作を読まずに観た人は、おそらく話の展開についけなかったのではないでしょうか。その分、鷹野の子ども時代や学校時代の描写がしっかりしていればまだいいのですが、どの演技シーンも何となく"作った"感があってイマイチでした(鷹野の学校時代の想い人・菊池詩織を演じた南沙良は、目下「演技修行中」といったところか)。
でも、大人の俳優陣が頑張った迫真のアクションシーンが思ったより良かったので、評価は「○」にしておきます。原作を読んだとき、鷹野やAYAKOの役を演じきれる役者はあまりいないように思いましたが、藤原竜也は意外と健闘したのではないかと思います("動"だけでなく"静"の演技もできるのが大きい)。この人は、以前にNHKのドラマ「海底の君へ」('16年)で演じた、中学の時に受けたいじめの後遺症に苦しみ、15年後に開かれた同窓会で爆弾を手に元いじめっ子へ復讐しようとする青年役のような、トラウマかな何かを負って、心に暗~い陰を持つ人間の役が似合うように思います。泳ぎが苦手な所謂"金槌"だったらしいけれど、あのドラマの時も今回も〈水〉と格闘していました(泳げるようになった?)。
一方、AYAKOの役は、原作が出たころ巷では「ルパン三世」の峰不二子が相応しいとの声を聞きましたが(いきなりアニメに行っちゃうのか)、誰が演じるのかと思ったら、日本人女優ではなく、映画「王になった男」('12年/韓国)でイ・ビョンホンと共演したハン・ヒョジュでした(日本人で見つからなかったのか、デイビッド・キムを演じたピョン・ヨハンとセット売りだったのか。それにしても、映画そものものに対してもそうだが、俳優の発掘・育成においても、今や韓国の方が日本より圧倒的にお金をかけている)。でも、ハン・ヒョジュの役名は原作通りAYAKOのままだったので、韓国語訛りの日本語が気になりました。
「海底の君へ」●演出:石塚嘉●作:櫻井剛●制作統括:中村高志●音楽:大友良英●出演:藤原竜也/成海璃子/水崎綾女/市瀬悠也/忍成修吾/淵上泰史/落合モトキ/近藤芳正/神戸浩/モロ師岡/麿赤兒●放映:2016/2/20(全1回)●放送局:NHK
「太陽は動かない」●制作年:2020年●監督:羽住英一郎●製作:武田吉孝/大瀧亮/森井輝/小出真佐樹/古屋厚●脚本:林民夫●撮影:江崎朋生●音楽:菅野祐悟(主題歌:King Gnu「泡」)●原作:吉田修一『太陽は動かない』『森は知っている』●時間:110分●出演:藤原竜也/竹内涼真/ハン・ヒョジュ/ピョン・ヨハン/市原隼人/南沙良/日向亘/加藤清史郎/横田栄司/翁華栄/八木アリサ/勝野洋/宮崎美子/鶴見辰吾/佐藤浩市●公開:20211/03●配給:ワーナー・ブラザース映画●最初に観た場所:TOHOシネマズ上野(スクリーン3)(21-03-06)(評価:★★★☆)

TOHOシネマズ上野


昭和11年、田舎から出てきた純真な娘・布宮タキ(黒木華)は、東京郊外に建つモダンな赤い三角屋根の小さな家で暮らす一家の元で女中として働き始める。若く美しい奥様の時子(松たか子)、家の主人で玩具会社に勤める平井雅樹(片岡孝太郎)、5歳になる息子の恭一とともに穏やかな日々を送っていたある日、雅樹の部下で板倉正治(吉岡秀隆)という青年が現れ、時子の心は揺れていく。タキは複雑な思いを胸に、その行方を見つめ続ける。それから60数年後、晩年のタキ(倍賞千恵子)が大学ノートに綴った自叙伝を読んだタキの親類・荒井健史(妻夫木聡)は、それまで秘められていた真実を知る―。
2010(平成22)年上半期・第143回直木賞を受賞した中島京子の原作『小さいおうち』の映画化作品で、当時82歳の山田洋次監督は、本作が通算82作目となるとのこと。昭和初期からの時代を背
景に、赤い屋根の小さな家で起きた密やかな"恋愛事件"を巡る物語で、時子役を松たか子、晩年のタキを倍賞千恵子が演じましたが、若き日のタキに扮した黒木華(「クラシックな顔立ち」が決め手となり起用されたという)が、第64回ベルリン国際映画祭で
本作は、黒木華が演じる「女中」タキ、松たか子が演じる「奥様」時子、吉岡秀隆演じる「青年」板倉の三人が主要登場人物で、タキの視点で語る時子と板倉の不倫関係が物語の中心になりますが、ネットでの映画評の中には、この三人が三角関係にあり、それゆえにタキは、出征することになった板倉に会いに行こうとする時子に、板倉と会う代わり、板倉の方から訪ねるよう手紙を書かせておきながら、その時子の手紙を板倉に渡さなかったのだという解釈のものがありました(中には、タキと板倉はすでに肉体関係があり、時子を裏切ったという思いから、二人は生涯結婚をせずに通したのだというのもあった)。
老齢となったタキが、甥っ子の健史に今書き綴っている回想録を読まれていることを意識しているため、タキが回想録に書いていることが必ずしもすべて本当ではないという可能性はもともとあったわけですが、三人が三角関係にあったというのはちょっと穿ち過ぎた見方のように思いました。個人的は、タキは、自分が奉公する平井家の崩壊を見たくなかったということが、手紙を板倉に渡さなかった理由かと思いましたが、そうした極端
な説に出くわすと、ちょっとこれでは理由としては弱いかなとも思ってしまいます(自信なさ過ぎ?)。
ところが、原作を読むと、タキの時子への思いが滔々と綴られていて、それだけでは「奥様」に憧れる「女中」というだけにすぎないのですが、時子の友人で婦人誌(女性誌)の編集者であるいわば職業婦人(キャリアウーマン)の女性が、そういう関係もあっていいと言って、タキと時子が精神的な同性愛関係にあることを示唆していました。従って、この同性愛論は、原作を読んだ人から出てきたのではないかと思います。映画だけではわからないように思いました。というか、「山田洋次監督は同性愛の物語を男女の不倫物語に確信犯的に改変してしまった」と言っている人もいます。
映画では、板倉は時子に会わずに出征し(時子からみれば会えずに終わり)、それはタキが時子からの手紙を板倉に渡さなかったためで、そのことをタキは一生悔やみ続け、未開封の手紙を生涯持ち続けるととれる作りになっていますが、原作では、板倉は出征のため弘前に行く前に"小さいおうち"にやって来て時子と話をし、その間タキは庭仕事をしていたと回想録にあります(それでこの小さな恋愛事件は終わったと)。実際にはタキは板倉に手紙を渡さなかったため、板倉がやってくるはずはなく、この部分はタキがによるウソの記述ということいなります。映画では、板倉が最後に"小さいおうち"にやって来た〈偽エピソード〉を描くと"映像のウソ"になるため描いてはいませんでした。原作では、最後に健史は、渡されなかった手紙を見つけ、タキの回想録にあるその日の記録は虚偽であると知って、タキは時子に恋をしていたのかもしれないと悟ります。
「小さいおうち」●制作年:2014年●監督:山田洋次●脚本:平松恵美子/山田洋次●撮影:近森眞史●音楽:久石譲●原作:中島京子「小さいおうち」●時間:137分●出演 松たか子/黒木華/片岡孝太郎/吉岡秀隆/妻夫木聡/倍賞千恵子/橋爪功/吉行和子/室井滋/中嶋朋子/林家正蔵/ラサール石井/あき竹城
/松金よね子/螢雪次朗/市川福太郎/秋山聡/笹野高史/小林稔侍/夏川結衣/木村文乃/米倉斉加年●公開:2014/01●配給:松竹(評価:★★★☆) 






従来は「武士の倫理観」という視点で分析されがちだった「忠臣蔵」を、その倫理観の陰に隠れて見過ごされがちな「経済的側面」から分析した本。主君の刃傷事件によって藩がお取り潰しになった際、旧藩士はどの程度の退職金を得たのか、浪人生活の苦しさとは具体的にどのようなものだったのか、生活費に窮した時はどうしたかなどについて書かれています。好評だった前著『これが本当の「忠臣蔵」』('12年4月/小学館101新書―江戸検新書)から、「忠臣蔵」の経済・財政面にフォーカスし、深堀りしたものとも言えます。
新潮ドキュメント賞を受賞した歴史学者・磯田道史氏の『武士の家計簿-「加賀藩御算用者」の幕末維新』('03年/新潮新書)が、森田芳光監督、堺雅人主演で「武士の家計簿」('10年/松竹)として7年超しで映画化され、同じように小説ではない本書もこの度、「殿、利息でござる!」('16年/松竹)(これも原作は磯田道史氏)の中村義洋監督、堤真一主演で「決算!忠臣蔵」('19年/松竹)として7年超しで映画化されました(中村義洋監督自身による小説化作品がある)。
嫁入り持参金)だったようです。この「軍資金」が討入りの計画・準備・実行にどのように使われたかが『預置候金銀受払書』に沿って諸々解説されているのが本書の中核となっています。そして、最終的な使用内訳は、次の通りとなっています。
映画化作品は、堤真一演じる大石内蔵助に加えて、岡村隆史演じる(本書にもその名がある)勘定人・矢頭(やとう)長助をダブル主人公にし、諸経費を現在の金額に置き換えて、その時々でいくらかかったかをユーモラスに分かりやすく解説していました。内蔵助が武器輸送に際して危機に陥る「大石東下り」の段もなければ、瑤泉院が内蔵助と別れた後でその真意を知る「南部坂雪の別れ」の段もない「忠臣蔵」ですが、そうした後世の作り話はこの際入れなくて正解でした(石原さとみが瑤泉院を演じていて、討ち入り直前に内蔵助の勘定報告は目にするが、袱紗に包んだ紙包みを開けるとそこには「討入同志連名血判状」の題字が...といった「忠臣蔵」お決まりのシーンはない)。
ずっとコメディタッチできていたので、個人的には、途中で矢頭長助を大石内蔵助の代わりに死なせることをしなくてもよかったのではないかと思います(絶叫型の演技が多い中で、岡村隆史のぽつりぽつりと喋る演技は効いていた。矢頭長助をヒーローにしないと気が済まなかったのか?)。史実では矢頭長助は病に伏して1702(元禄15)年9月に45歳で亡くなっており、その年の討入りには息子の矢頭教兼(のりかね)が加わっています(教兼が切腹した時の年齢が18歳で、四十七士の中では大石主悦の16歳に次いで若かった。美少年とされ、討入り後い世間に「義士の中に男装の女がいた」という噂話が流れたとも伝わる)。
映画では"討入りプロジェクト"は終盤、討入り装備費の試算の段階で、あの武器も必要、この防具も必要と喧々諤々やっているうちに赤字見通しになり(つまり資金不足になったということ)、それが、吉良上野介が確実に在宅している日が事前情報として分かったことで、討入りが当初予定より3カ月早まり、それだけ家賃等生計維持費が浮くことになって、何とか「予算内で」討入りができるようになったという流れになっていますが、先の軍資金の資質配分を映画と突き合わせてみると、討入り装備費は全体の2%弱で、その前の旅費・江戸逗留費などの支出の方がずっと大きかったことがわかります。この支出配分を念頭に置いて映画を見てみるのも、なかなか面白いのではないかと思います。
「決算!忠臣蔵」●制作年:2019年●監督・脚本:中村義洋●製作:池田史嗣/古賀俊輔中居雄太/木本直樹●撮影:相馬大輔●音楽:髙見優●時間:125分●出演:堤真一/岡村隆史/濱田岳/横山裕/荒川良々/妻夫木聡/大地康雄/西村まさ彦/木村祐一/小松利昌/沖田裕樹/橋本良亮/寺脇康文/千葉雄大/桂文
珍/村上ショージ/板尾創路/滝藤賢一/笹野高
史/竹内結子/西川きよし/石原さとみ/阿部サダヲ●公開:2019/11●配給:松竹●最初に観た場所:新宿ピカデリー(19-12-16)(評価:★★★☆)●併映(同日上映):「

山本 博文(東京大学史料編纂所 教授)(1957-2020.3.29/63歳没)


2018年「本屋大賞」の第1位が『かがみの孤城』(651.0点)、第2位が『盤上の向日葵』(283.5点)、第3位が『屍人荘の殺人』(255.0点)です。因みに、「週刊文春ミステリーベスト10」(2017年)では、『屍人荘の殺人』が第1位、『盤上の向日葵』が第2位、『かがみの孤城』が第10位、別冊宝島の「このミステリーがすごい!」では『屍人荘の殺人』が第1位、『かがみの孤城』が第8位、『盤上の向日葵』が第9位となっています。『屍人荘の殺人』は、第27回「鮎川哲也賞」受賞作で、探偵小説研究会の推理小説のランキング(以前は東京創元社主催だった)「本格ミステリ・ベスト10」(2018年)でも第1位であり、東野圭吾『

埼玉県天木山山中で発見された白骨死体。遺留品である初代菊水月作の名駒を頼りに、叩き上げの刑事・石破と、かつてプロ棋士を志していた新米刑事・佐野のコンビが捜査を開始した。それから四か月、二人は厳冬の山形県天童市に降り立つ。向かう先は、将棋界のみならず、日本中から注目を浴びる竜昇戦の会場だ―。(『盤上の向日葵』)
神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、曰くつきの映画研究部の夏合宿に加わるため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねた。合宿一日目の夜、映研のメンバーたちは肝試しに出かけるが、想像しえなかった事態に遭遇し紫湛荘に立て籠もりを余儀なくされる。緊張と混乱の一夜が明け、部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。しかしそれは連続殺人の幕開けに過ぎなかった―。(『屍人荘の殺人』)
先にも紹介した通り、「週刊文春ミステリー ベスト10」「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」の"ミステリランキング3冠"作(加えて「本格ミステリ大賞」も受賞)ですが、殺人事件が起きた山荘がクローズド・サークルを形成する要因として、山荘の周辺がテロにより突如発生した大量のゾンビで覆われるというシュールな設定に、ちょっとついて行けなかった感じでしょうか。謎解きの部分だけ見ればまずまずで、本格ミステリで周辺状況がやや現実離れしたものであることは往々にしてあることであり、むしろ周辺の環境は"ラノベ"的な感覚で読まれ、ユニークだとして評価されているのかなあ。個人的には、ゾンビたちが、所謂ゾンビ映画に出てくるような典型的なゾンビの特質を有し、登場人物たちもそのことを最初から分かっていて、何らそのことに疑いを抱いていないという、そうした"お約束ごと"が最後まで引っ掛かりました。
(●『屍人荘の殺人』は2019年に木村ひさし監督、神木隆之介主演で映画化された。原作でゾンビたちが大勢出てくるところで肌に合わなかったが、後で考えれば、まあ、あれは推理物語の背景または道具に過ぎなかったのかと。映画はもう最初からそういうものだと思って観
ているので、そうした枠組み自体にはそれほど抵抗は無かった。その分ストーリーに集中できたせいか、原作でまあまあと思えた謎解きは、映画の方が分かりよくて、原作が多くの賞に輝いたのも多少腑に落ちた(原作の評価★★☆に対し、映画は取り敢えず星1つプラス)。但し、ゾンビについては、エキストラでボランティアを大勢使ったせいか、ひどくド素人な演技で、そのド素人演技のゾンビが原作よりも早々と出てくるので白けた(星半分マイナス。その結果、★★★という評価に)。)
「屍人荘の殺人」●制作年:2019年●監督:木村ひさし●製作:臼井真之介●脚本:蒔田光治●撮影:葛西誉仁●音楽:Tangerine House●原作:今村昌弘『屍人荘の殺人』●時間:119分●出演:神木隆之介/浜辺美波/葉山奨之/矢本悠馬/佐久間由衣/山田杏奈/大関れいか/福本莉子/塚地武雅/ふせえり/池田鉄洋/古川雄輝/柄本時生/中村倫也●公開:2019/12●配給
:東宝●最初に観た場所:新宿ピカデリー(19-12-16)(評価:★★★)●併映(同日上映):「

アニメ映画「かがみの孤城」('22年/松竹)監督:原恵一
●2019年ドラマ化(「盤上の向日葵」) 【感想】 2019年9月にNHK-BSプレミアムにおいてテレビドラマ化(全4回)。主演はNHK連続ドラマ初主演となる千葉雄大。原作で埼玉県警の新米刑事でかつて棋士を目指し奨励会に所属していた佐野が男性(佐野直也)であるのに対し、ドラマ
では蓮佛美沙子演じる女性(佐野直子)に変更されている。ただし、最近はNHKドラマでも原作から大きく改変されているケースが多いが、これは比較的原作に沿って
丁寧に作られているのではないか。原作通り諏訪温泉の片倉館でロケしたりしていたし(ここは映画「テルマエ・ロマエⅡ」('14年/東宝)でも使われた)。主人公の幼い頃の将棋の師・唐沢光一朗を柄本明が好演(子役も良かった)。竹中直人の東明重慶はややイメージが違ったか。「竜昇戦」の挑戦相手・壬生芳樹が羽生善治っぽいのは原作も同じ。加藤一二三は原作には無いドラマ用ゲスト出演か。
「盤上の向日葵」●演出:本田隆一●脚本:黒岩勉●音楽:佐久間奏(主題歌:鈴木雅之「ポラリス」(作詞・作曲:アンジェラ・アキ))●原作:柚月裕子●出演:千葉雄大/大江優成/
『かがみの孤城』...【2021年文庫化[ポプラ社文庫](上・下)】









小学生の時のトラウマを高校生になっても引き摺っているわけですが(PTSDと言えるか。但し、離婚は主人公のせいとは言えず、父親が間違っているのは明白ではないか)、それにしても主人公がいろんな局面でそれを引っ張りすぎている印象もあり、これだと周りの方が疲れてしまうのではないかなあ。時にはちょっと突き放した方が、お互いにとって良かったりもするのではないでしょうか。ジュニア向けの作品ですが、個人的にはあまりいいとは思いませんでした(『お引越し』の11歳の小学生レンコの方がずっと逞しいと言えるか)。
「お引越し」●制作年:1993年●監督:相米慎二●脚本:奥寺佐渡子/小此木聡●撮影:栗田豊通●音楽:三枝成彰●原作:ひこ・田中「お引越し」●時間:124分●出演:中井貴一/田畑智子/桜田淳子/須藤真里子/田中太郎/茂山逸平/森秀人/千原しのぶ/笑福亭鶴瓶/青木秋美(現:遠野なぎこ)●公開:1993/03●配給:ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画=アルゴプロジェクト●最初に観た場所(再見):北千住・シネマブルースタジオ(17-07-19)(評価:★★★★)
「心が叫びたがってるんだ。」●制作年:2015年●監督:長井龍雪●製作:斎藤俊輔●脚本:岡田麿里●撮影:森山博幸●音楽:ミト/横山克(主題歌:乃木坂46「今、話したい誰かがいる」)●原作:超平和バスターズ(長井龍雪・岡田麿里・田中将賀)●時間:119分●声の出演:水瀬いのり/内山昂輝/雨宮天/細谷佳正/藤原啓治/吉田羊●公開:2015/09●配給:アニプレックス●最初に観た場所:シネマサンシャイン池袋(15-09-21)(評価★★★)


泰鵬大学医科学研究所では、研究員・葛原(戸次重幸)が危険な細菌を
利用した生物兵器「K-55」という炭疽菌が開発してしまったことで、葛原を解雇する。葛原はその腹いせに「K-55」を研究所から持ち出し、ある場所に埋め目印として近くに木にテディベアを張り付ける。その後、所長の東郷(柄本明)宛てに3億円を要求した脅迫の内容のメールが届き、メールにはテディベ
アの写った写真が添付されていた。テディベアには発信機がつけられており、その受信機は葛原が持っている。研究主任の栗林(阿部寛)は警察に届けることを主張するが、所長は生物兵器を秘密裏に探すよう栗林に命じる。栗林は何の手がかりも無い中で捜索を始めるが、そこへ警察から葛原が事故で亡くなったという電話があり、葛原の遺体確認の際に荷物の中にデジカメと受信機を発見、そのデジカメのデータの中から「ある場所」がスキー場だと考える。スノーボードが好きな息子(濱田龍臣)の力を借り、そこは野沢温泉スキー場だと分かるが、野沢温泉スキー場は日本最大級の広さを持つスキー場だった―。
「疾風ロンド」の原作は東野圭吾の長編サスペンスで、 '13年11月実業之日本社から文庫書き下ろしで発刊され、作者の書き下ろしの文庫本での発売は17年ぶりだったそうですが、発売10日で100万部を突破したとのこと。同じく実業之日本社から'10年10月に実業之日本社文庫の創刊第1弾として、雑誌連載後これもいきなり文庫で刊行された『白銀ジャック』も発売から1か月余りで100万部を突破していますが、それを上回るスピードでの100万部達成ということになります('16年12月には雪山シリーズの3作目『雪煙チェイス』がこれもいきなり文庫で刊行された)。
原作はユーモア・サスペンス小説で、軽いとの批判もあったようですが、二転三転するストーリー展開の面白さを支持する声も結構あったみたいです。映画も、実写でありながらも割り切ってユーモア・サスペンス風に仕上げており(ムロツヨシとか変に可笑しい)、そのことが二転三転する展開と相俟って"軽く"楽しめるものになっていたように思います。仮に、大真面目な演出にしていたら、「炭疽菌」と言われても普通はイメージが湧かないだけに映画自体が持たなかったでしょう。因みに、原作を端折っている部分もありますが、ラストは明らかに原作を「改変」しています。
主要燃料が石炭だった当時から、石油の将来性を予感していた若き日の国岡鐵造(岡田准一)は、北九州・門司で石油業に乗り出すが、その前には国内の販売業者、欧米の石油会社(石油メジャー)など様々な壁が立ち塞がり、行く手を阻ぶ。しかし、鐵造は諦めず、それまでの常識を覆す奇想天外な発想と型破りな行動力、自らの店員(部下)を大切にするその愛情で、新たな道を切り拓いてく。その鐵造の姿は、敗戦後の日本において逆風にさらされても変わることはなかった。そしてついに、敗戦の悲嘆にくれる日本人の大きな衝撃を与える"事件"が発生する。石油メジャーから敵視され圧倒的な包囲網によりすべての石油輸入ルートを封鎖された国岡鐵造が、唯一保有する石油タンカー「日承
丸」を、秘密裏にイランに派遣するという"狂気"の行動に打って出たのだ。イランの石油を直接輸入することは、イランを牛耳るイギリスを完全に敵に回すこと。しかし、イギリスの圧力により貧困にあえぐイランの現状と自らを重ね合わせた鐵造は、店員の反対を押し切り、石油メジャーとの最大の戦いに挑む―。
「海賊と呼ばれた男」の原作は百田尚樹による第10回本屋大賞受賞作品であり、こちらも'16年12月現在、上下巻累計で420万部というベストセラーです。出光興産創業者の出光佐三(いでみつ さぞう、1885-1981)をモデルにした歴史経済小説ですが、原作の段階から、出光佐三→国岡鐵造、出光興産→国岡商会、日章丸→日承丸、などと改変されています。映画では、60歳の鐵造を起点にそれまでの彼の歩みをカットバック風に振り返りながら、次第に60歳以降の出来事が多く描かれるようになり、その生涯を終えるまでを追っています。
このように時系列が多少前後しますが、伝記映画としてはオーソドックスな作りになっているように思いました。ただ、一企業の草創期からの歴史を描いた作品でもあるため、その分、「プロジェクⅩ」などにおける再現映像の"拡大版"を観ているような印象も。出演者の演技が何となくワンパターンであるし、主演の岡田准一の演技も力入りすぎという感じでした(老け役になってから良くなった。助演の吉岡秀隆も、同じ山崎貴監督の「
。しかも、日承丸が英国艦隊とぶつかりそうになる場面とか、VFXがふんだんに使われていて、思った以上に見応えがありました(VFXは、「ALWAYS 三丁目の夕日」や、庵野秀明監督の
「
「疾風ロンド」●制作年:2016年●監督:吉田照幸●脚本:ハセベバクシンオー/吉田照幸●撮影:佐光朗●音楽:三澤康広(主題歌:B'z)●原作:東野圭吾●時間:109分●出演:阿部寛/大倉忠義/大島優子/ムロツヨシ/堀内敬子/戸次重幸/濱田龍臣/志尊淳/野間口徹/麻生祐未/生瀬勝久/望月歩/前田旺志郎/久保田紗友/鼓太郎/堀部圭亮/中村靖日/田中要次/菅原大吉/でんでん/柄本明●公開:2016/11●配給:東映●最初に観た場所:TOHOシネマズ日本橋(16-12-22)(評価:★★★☆)
「海賊と呼ばれた男」●制作年:2016年●監督:山崎貴●脚本:山崎貴●撮影:柴崎幸三●音楽:佐藤直紀●VFX:山崎貴●原作:百田尚樹●時間:109分●出演:岡田准一/吉岡秀隆/染谷将太/鈴木亮平/野間口徹/ピエール瀧/綾瀬はるか/小林薫/光石研/堤真一/近藤正臣/國村
隼/黒木華/須田邦裕/小林隆●公開:2016/12●配給:東宝●最初に観た場所:TOHOシネマズ日本橋(16-12-22)(評価:★★★☆)
小林薫(甲賀治作(油販売会社「国岡商店」創業時からの店員 ))
TOHOシネマズ日本橋(日本橋「コレド室町2」3F)
SCREEN 2 110+(2) 9.1×3.8m 

ゴジラシリーズの第29作で、『ゴジラ FINAL WARS』('04年/東宝)以来約12年ぶりの日本製作のゴジラシリーズ作。公開前は、コアな映画ファン、ゴジラファンの間ではともかく、一般にはそれほど話題にもなっていなかったのが、7月29日の公開後にネットや口コミでどんどん客足を伸ばし、前作で目標としていたものの果たせなかった'54年からスタートしたシリーズの累計観客動員数1億人突破を公開4日で果たし、公開1か月で累計動員360万人、累計興行収入53億円を突破、11月16日までの公開111日間で、観客動員551万人、興行収入が80億167万円を記録するなど、興行面で成功を収めています(2017年(2016年度)「芸術選奨」受賞作)。
映画がヒットした要因としてまず挙げられることは、完璧とまでは言えないもののゴジラ映画の原点に回帰した点であり、観る前は全編CGでどうなのかなと思いましたが、観てみたら、ゴジラならではの重々しさや生々しさ、無敵の暴れん坊ぶりはなかなかのものでした。ゴジラのテーマや自衛隊のテーマなどお馴染みの伊福部BGMも使われていて、シリーズのオールドファンには懐かしいのではないでしょうか。個人的には、「
庵野秀明監督は、脚本の執筆段階から防衛省・自衛隊に協力を依頼し、「実際にゴジラが現れた場合、自衛隊はどのように対処するのか」「ゴジラに対して武器の使用が認められるのか」などミーティングを繰り返し行い、事実に即した脚本に仕上げていったとのことで、それが怪獣映画にしては比較的豪勢な役者陣の演技と相俟って、緊迫感とテンポの良さを生み出しています(時にコミカルな風刺も効かせていて、これもまたいい)。この映画から、自衛隊の強みと弱みが窺えるという人もいるくらいで、「機能的」脚本とでも言うか、こうした映画に挿入されがちな、恋人がどうしたとか妻子がどうしたといった人情ドラマは殆ど混ざり込む余地のない作りになっているのがいいです(石原さとみの"バイリンガルの米国大統領特使"だけが浮いていた)。
ここまで殆ど褒めっ放しで、では欠点は無いのかと言うと、概ねゴジラ映画の原点に回帰したとは言え、ゴジラ自体が核開発の犠牲者であるという悲劇的要素がやや
抜け落ちた印象も受けました(従って、ゴジラの雄叫びにオリジナルのような悲壮感があまり感じられない)。加えて、ゴジラが1個体で4段階もの変態を繰り返すというのは、本当に必要なアレンジだったのかやや疑問に思いました(CGで出来るからやったという印象も)。
特に第2変態の段階で、最初に上陸してその顔が正面から捉えられたと思ったら、ウーパールーパーみたいな顔に見えたのが拍子抜けしたと言うか、オリジナル特有の悲壮感から更に遠くなり残念に思いました(深海サメの一種「ラブカ」をモチーフにしたらしいが、ラブカはあんなピンポン玉みたいな目ではない。ほとんどぬいぐるみの世界)。
ゴジラを倒すための血液凝固剤って結局何だったのか、単なる液体窒素だったのか、それならば、牧悟郎(岡本喜八が写真のみの出演)博士の「ゴジラの元素変換機能を阻害する極限環境微生物の分子式」を解読する作業なんてあまり意味が無さそうにも思えるし、そもそも博士がなぜ資料をわざわざ暗号化したのかも、分かった人には分かったのかもしれないけれど、自分にはイマイチぴんときませんでした。この辺りについては、「シン・ゴジラを読み解くこと」がある種ブームのようになっていて、一般的な映画ファンだけでなく、例えば朝日新聞などは論説委員が新聞に読み解きを書いており、興味がある人はそうした記事も読んだ覚えがあるかも(政治の無能に対して行政の有能、日本型組織の強みがある種「美談」として描かれている一方、初代ゴジラに見られたような、ゴジラを生み出した文明のありように対する疑念や苦悩は殆ど描かれていないという指摘は的を射ていると思った)。
ゴジラを倒しておいて、取り敢えず首都は大阪に移して、ゴジラは凍らせたまま東京駅傍に放置しておくなんてあり得るのかなあという気がしますが、おそらく、ゴジラは「原発」のメタファーであり、ゴジラ(原発)を管理し続けるという宿命を負った日本の未来を表しているのでしょう。ならば、博士の「好きにしろ」という「遺言」の意味は何なのか?-とか、ラストのゴジラの尾に蠢く人影は何を意味するのか?-とか、確かにいろいろ読み解きを促す作りにはなっています。
今度ゴジラが動き出したら、熱核攻撃のカウントダウンが再開するということで、次回作は東京駅から始まるのでしょうか。都心を汚染したゴジラの放射性物質は半減期が短く、2、3年で影響がなくなるとの設定なので、やがて避難先から360万人の住民が帰還することになったとして、スカイツリーじゃないのだから、立ち尽くすゴジラを見ながら半恒久的に生活を送るというのはちょっと考えにくく、やはり次回作を想定した終わり方なのでしょう(これで、次回作でゴジラがまたいきなり海の中から出てきたら、あの東京駅傍のゴジラはどうなったと突っ込みたくもなるだろう)。

「シン・ゴジラ」●制作年:2016年●総監督・脚本:庵野秀明●監督・特
技監督:樋口真嗣●撮影:山田康介●音楽:鷺巣詩郎/伊福部昭●時間:119分●出演:長谷川博己/竹野内豊/石原さとみ/高良健吾/大杉漣/柄本明/余貴美子/國村隼/市川実日子/ピエール瀧/斎藤工/小出恵介/古田新太/前田敦子/犬童一心/緒方明/片桐はいり/神尾佑/KREVA/黒田大輔/小出恵介/小林隆/嶋田久作/諏訪太朗/高橋
一生/塚本晋也/津田寛治/鶴見辰吾/手塚とおる/中村育二/野間口徹/橋本じゅん/浜田晃/原一男/平泉成/藤木孝/松尾諭/松尾ス
ズキ/三浦貴大/光石研/森廉/モロ師岡/矢島健一/渡辺哲/(ゴジラのモーションキャプチャ)野村萬斎●公開:2016/07●配給:東宝●最初に観た場所:TOHOシネマズ新宿(16-08-29)(評価:★★★☆)
スクリーン 座席数(車椅子用) スクリーンサイズ
SCREEN 1 86+(2) 3.2×7.6m
映画「ゴジラ」シリーズ全29作
(●2023年、「
出来ていた(最後、「アルマゲドン」みたいにならなくて良かった)。主演の神木隆之介・浜辺美波は「
「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」●英題:GODZILLA MINUS ONE●制作年:2023年●監督・脚本:山崎貴●監督・特技監督:山田兼司/岸田一晃/阿部豪/守屋圭一郎●撮影:柴崎幸三●音楽:佐藤直紀/伊福部昭●時間:125分●出演:神木隆之介/浜辺美波/山田裕貴/田中美央/遠藤雄弥/飯田基祐/永谷咲笑/須田邦裕/谷口翔太/鰐渕将市/三濃川陽介/日下部千太郎/赤妻洋貴/千葉誠太郎/持永雄恵/市川大貴/吉岡秀隆/藤田啓介/苅田裕介/松本誠/伊藤亜斗武/保里ゴメス/阿部翔平/仲城煎時/青木崇高/安藤サクラ/佐々木蔵之介●公開:2023/11●配給:東宝●最初に観た場所:TOHOシネマズ日本橋(23-12-20)(評価:★★★★)



1913年、27歳で単身フランスへ渡ったフジタ(オダギリジョー)は、「乳白色の肌」で裸婦を描き、エコール・ド・パリの寵児となる。そして1940年に帰国し、戦時下で戦争協力画を描くことになったフジタは、日本美術界の中で重鎮として登り詰めていくが、疎開先の村で敗戦を迎える―。
小栗康平監督が10年ぶりに手がけた長編監督作で、1920年代からフランスを中心に活躍した日本人画家・藤田嗣治の半生を映画化したもの。日本とフランスの合作映画として製作され(フランス側のプロデューサーは、「アメリ」のクローディー・オサール)、第28回東京国際映画祭のコンペティション部門出品作。前半は、フジタのパリにおける社交生活や芸術生活などが断片的なスケッチを繋げていくように描かれ、後半は、戦時下の日本における彼の生活が描かれています。
前半のパリ時代のフジタを演じるオダギリジョーはちょっと軽い感じがしましたが、実際、フランスで人気を博していた頃の藤田嗣治は、「FouFou(フランス語でお調子者の意)」と呼ば
れていたとのことで、それに沿ったのでしょうか。ただ、オダギリジョーは喋らないでじっとしている方がよく、動いたりフランス語を喋ったりすると、周囲がフランス人ばかりで、非常に浮いている印象を受けました。パリ時代の最後を飾る「フジタ・ナイト」でのフランス風「花魁道中」におけるフジタも、観ていて痛々しい印象すらありました。
後半は、何の説明もなく舞台は日本に切り替わり(但し、戦争が始まって日本に戻ってきたのだなということは理解に難くはないが)、フジタは陸軍美術協会理事長に就き(やや受身的に描かれている)、戦争画を手掛け、「決戦美術展」には彼の作品「アッツ島玉砕」が展示されています。ここでは主に、5番目の妻の君江(中谷美紀)との疎開先での静かな生活が描かれ、疎開で世話になった家の息子・治郎(加瀬亮)の出征などがエピソードとして織り込まれています。出征を前にした治郎が語る、狐が人間を騙そうとして見破られてしまう話に軽く噴き出すフジタは、パリ時代の彼とは対極にいるようにも思えました。
「アッツ島玉砕」などは、戦意高揚作品の形をとりつつ、実はピカソの「ゲルニカ」などと同じく「反戦」絵画として描かれたものではないかと思わせるものがあるのですが、映画の中でそうした藤田嗣治の作品世界をじっくり見せることは敢えてしていないように思えました。フランスで描かれた諸作品の「素晴らしき乳白色」の世界もそうですが、ドラマ部分の薄暗いトーンを(ラストの「シャペル・フジタ」を除いて)作品にまでも被せてしまっていたのが残念。
藤田嗣治のことをある程度知っている人も知らない人もこの映画を観るわけでしょう。藤田がスケープゴートに近い形で戦争協力の罪を被せられたことについては、彼の実力と国際的名声が日本画壇の重鎮たちにとっては脅威となり、仕組まれたうえでの'異物'排除であったとの説もあるようです(ちょうどオーソン・ウェルズがその'天才'を警戒されて、ハリウッドでは不遇だったように)。藤田はパリに立つ際に、「絵描きは絵だけ描いて下さい。仲間喧嘩をしないで下さい。日本画壇は早く国際水準に到達して下さい」との言葉を残しています。
ただ、映画内ではこうした藤田嗣治が当時置かれていた背景事情を殆ど割愛しているか、または説明していません。そのことと、藤田嗣治の「波乱の生涯を描いた」という映画の口上との間にギャップを感じたのは自分だけでしょうか。
批評家の浅田彰氏が、昨日(2016.1.7)
ユーロスペース 2006(平成18)年1月、渋谷・円山町・KINOHAUSビル(当時は「Q-AXビル」)にオープン(1982(昭和57)年渋谷・桜丘町にオープン、2005(平成17)年11月閉館した旧・渋谷ユーロスペースの後継館。旧ユーロスペース跡地には2005年12月「シアターN渋谷」がオープンしたが2012(平成24)年12月2日閉館)。


1995年8月8日、最新鋭の超巨大ヘリ《ビッグB》が、突然動き出し、子供を一人乗せたまま、福井県にある原子力発電所「新陽」の真上に静止した。遠隔操縦によるハイジャックという手口を使った犯人は〈天空の蜂〉と名乗り、"全国すべての原発の破棄"を要求、従わなければ、大量の爆発物を搭載したヘリを原子炉に墜落させると宣言する。機内の子供の父
親であり《ビッグB》を開発したヘリ設計士・湯原(江口洋介)と、原子力発電所の設計士・三島(本木雅弘)は、上空に取り残された子供の救出と、日本消滅の危機を止めるべく奔走するが、政府は原発破棄を回避しようとする。燃料が尽きてヘリが墜落するまで残された時間は8時間―。その頃愛
知県では、《ビッグB》と原発を開発した錦重工業本社に、家宅捜索が入っていた。総務課に勤める三島の恋人・赤嶺(仲間由紀恵)は、周囲に捜査員たちが押し寄せる中、密かに恋人の無事を祈る。一方、事件現場付近で捜査にあたる刑事たちは、《ビッグB》を奪ったと思われる謎の男・雑賀(綾野剛)の行方を追う―。
分かりにくかったように思われ、138分は少し長く感じられたでしょうか。全部アクションシーンで撮るわけにもいかないでしょうが、ドラマ部分がちょっとダルく感じられ、むしろ、三島と雑賀の繋がりなど、プロットに関わる部分をもっとしっかり描いて欲しかったように思います(結果として、やはり、やや大味だったというところか)。
江口洋介、本木雅弘は初共演ということで、まずまずの"競演"ぶりでしたが、ややオーバーアクション気味のところもあって、逆にイマイチ胸に響かない面も。更には、綾野剛、仲間由紀恵などの演技も何となくワンパターンに感じられ、むしろ、刑事役の手塚とおる、落合モトキなどの"脇の脇"の演技が光ったかも。ラストで、湯原の子供が自衛官(向井理)になっていて2011年3月13日、東日本大震災の2日後に現地で支援活動任務に服しているという設定は、当然のことながら原作には

ありません。自衛隊のリクルートも兼ねたシーンかと思いきや、自衛隊はこの映画には協力していないようです。自衛隊どころか、川崎重工業 富士重工業といった国産ヘリコプター・メーカーも協力しておらず(協力はエアバス社)、やはり、国からの受注企業は原発は危険というイメージが伴う作品には協力出来ないのでしょう(原発で頑張っている人も描いているのだけど)。
ラスト近くで、仮に《ビッグB》が原子炉建屋に墜落して建屋が壊れても格納容器までは壊れないだろうという犯人の読みが明かされていたように思いましたが(その理屈に従って、緊急時の格納容器内への避難を提案している場面が既にあった)、むしろ、使用済み核燃料庫の上に墜落する方が危険であるならば、ヘリ落下の際にリモコンで位置をずらすのも、落下に要する時間が数秒しかないということからみて、それなりに危険なのではないでしょうか。
「天空の蜂」●制作年:2014年●監督:堤幸彦●製作:大角正/木下直哉/古川公平/坂本健/宮本直人●脚本:楠野一郎●撮影:唐沢悟●音楽:リチャード・プリン●原作:東野


1番館:234席


仕事を辞めて何もせずに生活していた達夫(綾野剛)は、パチンコ屋で気が荒いもののフレンドリーな青年、拓児(菅田将暉)と出会う。拓児の住むバラックには、寝たきりの父親、かいがいしく世話をする母親、そして姉の千夏(池脇千鶴)がいた。達夫と千夏は互いに思い合うようになり、ついに二人は結ばれる。ところがある日、達夫は千夏の衝撃的な事実を知る―。
呉美保の2014年監督作で、モントリオール世界映画祭で最優秀監督賞(呉美保)を受賞しており(吉永小百合がプロデュース参画し主演した「

観る前は、綾野剛(達夫)、池脇千鶴(千夏)、菅田将暉(拓次)という配役を聞いて、原作の登場人物のイメージに比べて「線が細い」感じで「お子様っぽい
」のではないかとの印象を受けたのですが、実際に観てみたら、それなりに持ち味を出していたように思います。個人的感想で言えば、綾野剛の演じる達夫は、どちらかと言うと"観る側"であるから、綾野剛の演技が受身的であるのはいいとして、イメージ的に一番改変されていたのは菅田将暉が演じる拓次だったでしょうか。"幼い"と言うより"軽い"感じがしました。
そして、肝腎の千夏ですが、やはりどうしても"肉感的"な女性でなければならないのでは...と。それも、日中、イカをさばく工場で働いて、夜は売春で生計を立て、弟の勤め先の社長の愛人であり、要介護の父親の性欲処理を母親に代わってしているという、そうしたものを全て背負った上での"肉感的"な女性であるわけで、小柄な池脇千鶴ではイメージが弱いか或いは違うのではないかと思われたのですが、蓋を開けてみれば思った以上に役柄に嵌った"肉感的"ぶりだったと言うか、芯が強く、それでいて、ふと見せる優しい女性の顔もあり、いい意味で予想を裏切られました。
池脇千鶴(1981年生まれ。三井不動産リアルティの第8代"リハウスガール"('97-'98年)やNHK朝の連続テレビ小説「ほんまもん」('01年)の頃と随分変わった)はこの演技で、TAMA映画賞最優秀女優賞、毎日映画コンクール女優助演賞、日本映画批評家大賞助演女優賞などを受
賞、「日本アカデミー賞」では優秀主演女優賞を受賞しましたが、"最優秀" 主演女優賞は「
「そこのみにて光輝く」●制作年:2014年●監督:呉美保(お・みぽ)●製作:永田守/菅原和博●脚本:高田亮●撮影:藤龍人●音楽:田中拓人●原作:佐藤泰志「そこのみにて光輝く」●時間:120分●出演:綾野剛/池脇千鶴/菅田将暉/高橋和也/火野正平/伊佐山ひろ子/田村泰二郎●公開:2014/04●配給:東京テアトル・函館シネマアイリス(評価:★★★★)


2012(平成24)年度・第25回「柴田錬三郎賞」受賞作。2012(平成24)年度「『本の雑誌』編集部が選ぶノンジャンル・ベスト10」第2位。
2014年にNHKで原田知世主演でテレビドラマ化され(全5回)、個
人的には未見ですが、原作者も絶賛するほどの出来栄えだったとか。更に同年に「桐島、部活やめるってよ」('12年)の吉田大八監督作として映画化され、こちらは宮沢りえが梅澤梨花を演じました。
宮沢りえは7年ぶりの映画主演ということですが、ブランクを感じさせない上手さでした(舞台で鍛えられている?)。その演技については、原作者である角田光代氏も、「度肝を抜かれた。どんどん悪い行動に走っていくのに反比例して透明な美しさが増していくのがすごい迫力で素晴らしかった」と絶賛のコメントを述べたとのこと。宮沢りえはこの作品で、映画の一般公開前に第27回東京国際映画祭で最優秀女優賞を受賞したほか(しかも審査員の満場一致で)、日本アカデミー賞主演女優賞受賞をはじめ多くの賞を受賞しています。
映画の作りとしては、原作にある主人公の2人の同級生の現在は省いてしまい、代わりに、厳格なベテランとリアリストである若手の異なるタイプの銀行事務員2人(小林聡美・大島優子)を登場させていましたが、小林聡美はやはり安定した演技の上手さでした。主人公の文書偽造の様子なども再現されていて(映画を観た某銀行元行員によれば、映画の舞台になっている90
年代であれば、こうした犯行の実現可能性はあったとのこと)、主人公とその疑惑を追及するベ
テラン行員の宮沢vs.小林の演技対決もなかなかでした。但し、ラスト近くの2人が対峙する場面で、主人公がビルのガラス窓に椅子を投げつけるようなシーンは必要なかったように思います。

「紙の月」●制作年:2014年●監督:吉田大八●製作総
指揮:大角正●脚本:早船歌江子●撮影:シグママコト●音楽プロデューサー:緑川徹●時間:126分●原作:角田光代「紙の月」●出演:宮沢りえ/池松壮亮/大島優子/田辺誠一/小林聡美/近藤芳正/石橋蓮司/佐々木勝彦/天光眞弓/中原ひとみ/伊勢志摩●公開:2014/11●配給:松竹(評価:★★★★)





成島出監督、永作博美(希和子)、井上真央(恵理菜)主演で映画化され、第35回「日本アカデミー賞」の最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀主演女優賞(井上真央)・最優秀助演女優賞(永作博美)・最優秀脚本賞など「10冠」を獲得しました。さらに、「芸術選奨文部科学大臣賞」も受賞、第66回「日本放送映画藝術大賞」でも、最優秀作品賞・最優秀脚本賞・最優秀助演女優賞(小池栄子=安藤千草役)など「7冠」を獲得しています。井上真央の日本アカデミー賞最優秀主演女優賞は"ぶっちぎりの前評判通り"だったものと記憶し、永作博美と小池栄子はそれぞれ第85回「キネマ旬報ベスト・テン」主演女優賞と助演女優賞も受賞していて、「女性の映画」らしく女優陣が賞を総なめした感じでした。
原作のラストで、そうとは知らずに恵理菜と希和子の2人が偶然フェリー乗り場で居合わせるのは、ちょっと話が出来過ぎな気もしますが、映像化した場合の効果まで狙っているのかと思ったら、映画では「互いに相手を認識しない偶然のすれ違い」はカットされていました。全体として、[2章]が"現在"で、そこへ[1章]の"過去"の話をカットバック的に挟むという構成で、フェリー乗り場の"現在"と"過去"も、そういう重ね方をしています。
原作が[1章]の方が量的なウェイトが大きいのに対し、映画の方は[2章]のウェイトが大きくなっています。その分、小池栄子演じる安藤千草の存在の比重が大きくなっていて、恵理菜と2人で島に渡って過去を巡る(但し、エンジェルホームは廃墟になっている)といった原作にない展開がありますが、そもそも、最初の2人の出会いから最後のそこに至るまでの2人のやりとりは殆ど全て原作に無いオリジナルの脚本(セリフ)であり、結果的に、映画全体がオリジナル色が濃かったという印象です(登場人物によっては原作のままのセリフもあるが)。
」('10年)に続く4年連続4度目の映画主演とあって、安定した演技という感じでした。昨年['15年]のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」でも主役の杉文(吉田松陰(伊勢谷友介)の妹で久坂玄瑞(東出昌大)の妻、後に楫取素彦(大沢たかお)の妻)を演じていますが、歴史的にマイナーな人物だったためか、最終回の視聴率は「平清盛」('12年)と並ぶ12.0%という過去最低でした(個人的には、応援するような気持で観ていたのだが)。千草役の小池栄子(1980年生まれ)は頑張って演技していたという感じでしょうか(彼女も後にNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」('22年)で北条政子という準主役級の役を得ることになった)。
「八日目の蝉」●制作年:2011年●監督:成島出●製作総指揮:佐藤直樹●脚本:奥寺佐渡子●撮影:藤澤順一●音楽:安川午朗●時間:147分●原作:角田
光代「八日目の蝉」●出演:井上真央/永作博美/小池栄子/森口瑤子/田中哲司/渡邉このみ/吉本菜穂子/市川実和子/余貴美子/平田満/風吹ジュン/劇団ひとり/田中泯/相築あきこ/別府あゆみ/安藤玉恵/安澤千草/ぼくもとさきこ/畠山彩奈/宮田早苗/徳井優/吉田羊/瀬木一将/広澤草勲●公開:2011/04●配給:松竹(評価:★★★☆)

「花燃ゆ」●脚本:大島里美/宮村優子/金子ありさ/小松江里子●演出:渡邊良雄 ほか●音楽:川井憲次●出演:井上真央/(以下五十音順)相島一之/麻生祐未/井川遥/石原良純/石丸幹二/伊勢谷友介/板垣李光人/伊原剛志/上杉祥三/江口のりこ/江守徹/大野拓朗/尾上寛之/大沢たかお/奥田瑛二/音尾琢真/賀来賢人/かたせ梨乃/香音/要潤/
/銀粉蝶/劇団ひとり/黒島結菜/佐藤二朗/佐藤隆太/春風亭昇太/鈴木杏/瀬戸康史/大東駿介/高橋英樹/高橋由美子/高良健吾/宅間孝行/田中要次/田中麗奈/檀ふみ/津田寛治/内藤剛志/長塚京三/羽場裕一/浜田学/原田泰造/東出昌大/東山紀之/平田満/堀井新太/本田博太郎/




死刑判決を受けて上訴中だった元暴力団組員の後藤良次被告人が、本書の著者である雑誌「新潮45」の編集長を介して、自分が関与した複数事件(殺人2件と死体遺棄1件)の上申書を提出したことにより、後藤が「先生」と慕っていた不動産ブローカーが3件の殺人事件の首謀者として告発された、所謂「上申書殺人事件」のドキュメント。雑誌「新潮45」が2005年に報じたことによって世間から大きく注目されるようになり、2007年に単行本化され、2009年に文庫化、文庫では、「先生」が関与した1つの殺人事件が刑事事件化し、この不動産ブローカーに無期懲役の判決が下ったというその後の経緯が書き加えられています(ここで初めて、三上静雄という「先生」の本名が明かされている)。
死刑囚である元ヤクザの後藤が、自らの死刑判決がますます揺るぎないものになるかもしれないのに隠された犯罪を明るみに出すのは、自分を裏切った「先生」に対する復讐であり、自らの減刑に一縷の望みを懸けるよりも、のうのうと娑婆で生き続けている「先生」への復讐を遂げなければ、死んでも死にきれないという気持ちなのでしょう。著者の接見によれば、三上を死刑に追い込めなかったのは残念だったが、二度と社会に出られない状況に追いやったことで、一定の満足感は得ているようです(後藤本人は現在、死刑確定囚としての再審請求中)。
本作は2013年に映画化されました。スクープ雑誌「明潮24」に、東京拘置所に収監中の死刑囚・須藤(ピエール瀧)から手紙が届き、記者の藤井(山田孝之)は上司から須藤に面会して話を聞いて来るように命じられる―。白石和彌監督によるこの映画化作品「凶悪」の方は、後藤(映画内では"須藤")をピエール瀧が、三上(映画内では"木村")をリリー・フランキーが演じましたが、元々俳優が出自ではなかった2人を主役に配したことで逆にドキュメンタリー感が出て、配役で半分は成功が決まったようなものだったかも(と言ってもこの2人だからこそ、のことだが)。ピエール瀧、リリー・フランキーと日本アカデミー優秀助
演男優賞を受賞、リリー・フランキーは、本作品の翌週に公開された是枝裕和監督の「
個人的には、2人の演技は悪くないと思いましたが、記者の家族とか上司の女性など原作では描かれていない人物が出てきて、それなりにサイドストーリーを成しているのが却って邪魔に感じられました。映画では、ピエール瀧(須藤)とリリー・フランキー(木村)が拮抗していますが、この事件の怖さは、文庫版の終わりの方にそれぞれ写真がある、どう見てもヤクザにしか見えない後藤よりも、ごく普通のどこにでもいそうな初老の男性にしか見えない三上の方にあるのでしょう。記者の周辺人物を描く余裕があれば、それよりも、三上(映画内では"木村")の方をじっくり描いて欲しかった気がします。
映画では"木村"はシリアルキラーであるとともにサイコパス的な残忍さも持っているような描かれ方で、殺人を楽しんでいるような印象さえ受けますが、原作で著者は、三上の最初の殺人は衝動的なものであり、その結果に自分でもパニくって、後藤に後の処理を頼んだところ上手くいったので、それで他人の土地資産を搾取するために後藤を手先に使うようになったというのが実態のようです。
映画では、ラストで記者に対して"木村"が、自分が死刑にならず無期懲役で済んだことについて勝ち誇ったような挑発的態度を取る場面がありましたが、これは先に述べたように、間違いなく多重殺人の計画犯であり首謀者でありながら、その罰が無期懲役で済んでいることに対して観客が感じる理不尽さをひっくり返して代弁しているような映画的な設定乃至は人物造型であり、実際の三上は、控訴していることからも窺えるように、どうすれば"娑婆"に戻れるかを依然として模索し、犯した罪については最後までシラを切り通すタイプではないかという気がします。
「凶悪」●制作年:2013年●監督:白石和彌●製作:鳥羽乾二郎/ 十二村幹男/赤城聡/千葉善紀/永田芳弘/齋藤寛朗●脚本:高橋泉/白石和彌●撮影:今井孝博●音楽:安川午朗●原作:新潮45編集部編「凶悪―ある死刑囚の告発」●時間:128分●出
演:山田孝之/ピエール瀧/リリー・フランキー/池脇千鶴/白川和子/吉村実子/小林且弥/斉藤悠/米村亮太郎/松岡依都美/ジジ・ぶぅ/村岡希美/外波山文明/廣末哲万/九十九一/原扶貴子●公開:2013/09●配給:日活(評価:★★★☆)





(●2016年に監督が「
原作にほぼ忠実だったように思う。但し、愛子の父・洋平(渡辺謙)が比較的
前面に出て、北見刑事(三浦貴大)は後退し、美佳も出てこない。それと、"伏線"が無かった原作に対し、犯人の「壊れていた」感を出すためか、途中で原作に無いエピソードを入れている。また、愛子の物語をハッピーエンドにしているのは原作と同じだが、泉は何か気の毒なまま終わったように思えた。ただ、原作を読んでなくて犯人を知らないで観た人にとっては、プロセスにおいては結構面白かったのではないか。行定勲監督により映画化された「
「怒り」●制作年:2016年●監督・脚
本:李相日(リ・サンイル)●製作:市川南●撮影:笠松則通●音楽:坂本龍一●原作:吉田修一●時間:142分●出演:渡辺謙/森山未來/松山ケンイチ/綾野剛/宮崎あおい/佐久本宝/ピエール瀧/三浦貴大/高畑充希/原日出子/池脇千鶴/広瀬すず/妻夫木聡●公開:2016/09●配給:東宝(評価:★★★☆)






是枝裕和監督の「そして父になる」('13年/ギャガ)は、夫(福山雅治)と妻(尾野真千子)の間にいる6歳の一人息子が、実は出生時に子どもの取り違えがあって実の息子ではなかったことが判明し、そこから始まるその夫婦の苦悩と、取り違えられた子を育ててきたもう1つの夫婦(リリー・フランキー・真木よう子)とのやり取りを描いた作品(2014年「芸術選奨」受賞作)。
子どもの取り違えが判明してからその次にどういう手順になるのかがきっちり取材されていて、加えて、河瀬直美監督に見出され「萌の朱雀」('97年)でデビューしたd尾野真千子、「無名塾」出身の真木よう子、スピルバーグがその演技を絶賛したリリー・フランキーなど、演技陣も充実していました。
員賞(パルムドール、(審査員特別)グランプリに次ぐ賞)を受賞した作品ですが、国内では、尾野真千子、真木よう子の2人はそれぞれ第37回「日本アカデミー賞」の優秀主演女優賞、最優秀助演女優賞を受賞、福山雅治、リリー・フランキーもそれぞれ優秀主演男優賞、最優秀助演男優賞を受賞しています(電気屋夫婦の方が「最優秀」を獲っていることになる。因みに真木よう子は、同年の「さよなら渓谷」での最優秀主演女優賞とのW受賞)。
(●是枝裕和監督の「万引き家族」('18年)が、
ヌ国際映画祭
ったかあ。でも彼は「そして父になる」以上の演技だった。この映画、Amazon.comのレビューなどでみると「どこがおもしろいのか、わからない」という人も結構多いようだが、個人的には良かったと思った。「お父さん」「お母さん」と呼んでほしいと願う主人公の想いが核になっていて、終わり方も良
かった。家族っていなくなると切ないものである。これで、是枝監督にとって「家族」というのが大きなテーマであることがよく分かった。それでは小津安二郎や山田洋次と変わらないと思われるフシもあるかもしれないが、ステップファミリーを通して「家族」というものを描いているのが大きな特徴であり、「そして父になる
」からの流れで見ると繋がっている。ハッピーエンドにせず、問題投げかけ型で終わるのも同じ。今回は中流家庭ではなく、下流家庭(疑似家族)を描いている点で、明らかに小津安二郎の後期作品とも異なる。何となく是枝監督のスタンスが見えてきた気がする。パルム・ドールは、ベルギー移民の少女や若者の貧困を描いたダルデンヌ兄弟の作品が2度受賞しているなど、格差社
会を描いたものが近年では賞を獲り易い傾向にあり、「万引き家族」の受賞も意外性はなかった(「万引き家族」の翌年2019年には、ポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」がパルム・ドール受賞。やっぱりという感じ)。因みに本作は、2019年・第13回アジア・フィルム・アワードも作品賞と作曲賞(細野晴臣)を受賞しているほか(この賞の作品賞受賞は日本映画では初)、
犬童一心、樋口真嗣共同監督の「のぼうの城」('12年/東宝)は、北条氏の支城で、周囲を湖に囲まれ浮城とも呼ばれる忍城(おしじょう)の領主・成田氏一門の成田長親(野村萬斎)と、その城を攻め落とそうとする豊臣方・石田三成(上地雄輔)の攻防を描いた作品で、2時間超ですがあまり長さを感じさせず、予想以上に面白かったです(この面白さは、和田竜氏の直木賞候補となった原作の面白さによるものではないかとも思うが、原作を読んでいないので、素直に「面白かった」としておきたい。台詞が一部、「○○的」など現代語になっているのが気になったが、脚本も原作者によるもの)。
歌舞伎や狂言の俳優が、日頃その世界で伝統芸能の継承・研鑽に励みつつも、現代劇や時代劇に出てすんなりそれにフィットした演技が出来てしまうのにはいつも感心させられますが、この映画の野村萬斎の場合、狂言の演技をそのまま成田長親のキャラに活かしていることにより、映画を自分の作品にしている点で、起用に充分応えているように思いました。また、近習の正木丹波守利英を演じた佐藤浩市の演技がオーソドックスな映画的演技であることも、対比的な効果を醸しているように思われます。この2人はそれぞれ第36回「日本アカデミー賞」の優秀主演男優賞、優秀助演男優賞を受賞しています。
ストーリー的には、最後は、北条氏の本城である小田原城が落城してしまうことから、支城を巡って争う理由がなくなり、これ以上は戦わずして成田氏は忍城を豊臣方・石田三成に明け渡すことになってしまうという点では、これもまた、アンチ・カタルシス的な作品と言えるかもしれません(M&Aで大企業に吸収される関係会社みたい)。それでも「こういう武将もいたのだ」という面白さによってさほどカタルシス不全を感じさせないのは、これはやはり、原作の目の付け所の良さに拠るものかと思われます。
僅か500の兵で2万の大軍から城を守り和議に持ち込んだというのはやはりスゴイことだと思われ、今までほとんど時代小説の素材になっていないのが不思議なくらい(風野真知雄の『水の城 いまだ落城せず』では主人公の成田長親は、際立った武勇や才覚はなく、捉えどころのない人物として描かれているそうだ)。近年の研究では、もともと水攻めに向かない城に対して水攻めに固執した秀吉のミスだったとの説が有力なようで、実戦経験の乏しい石田三成に配慮した作戦が裏目に出たのか。逆に三成が書状の中で「諸将は完全に水攻めと決め込んで全く攻め寄せる気がない」と嘆く事態となったわけですが、水攻めの決定に三成軍の武将たちのモチベーションががたんと低下する場面はこの作品の中でも描かれています。
敢えて長年二番館として営業してきた三茶シネマらしいラインアップを選んだらしい)。ラストショーと思って思い入れを込めて観た分、評価はやや甘くなっているかもしれません。昨年['13年]5月に亡くなった夏八木勲(1939-2013/享年73)が両方の作品に脇役で出ています('12年の秋から膵癌を患い、闘病を続けていた)。

「そして父になる」●英題:LIKE FATHER,LIKE SON●制作年:2013年●監督・脚本:是枝裕和●製作:亀山千広/畠中達郎/依田翼●撮影:瀧本幹也●音楽:松本淳一/森敬/松
原毅●時間:120分●出演:福山雅治/尾野真千子/真木よう子/リリー・フランキー/二宮慶多/黄升炫/中村ゆり/高橋和也/田中哲司/井浦新/ピエール瀧/大河内浩/風吹ジュン/國村隼/樹木希林/夏八木勲●公開:2013/09●配給:ギャガ●最初に観た場所:三軒茶屋シネマ(14-07-20)(評価:★★★★)●併映:「のぼうの城」(犬童一心/樋口真嗣)
風吹ジュン(野々宮のぶ子(良多の義母)) 
「万引き家族」●英題:SHOPLIFTERS●制作年:2018年●監督・脚本・原案:是枝裕和●製作:石原隆/依田巽/中江康人●撮影:近藤龍人●音楽:細野晴臣●美術:三ツ松けいこ●衣裳デザイン:黒澤和子●時間:120分●出演:リリー・フランキー/安藤サクラ/松岡茉優/池松壮亮/城桧吏/佐々木みゆ/高良健吾/池脇千鶴/樹木希林/緒形直人/森口瑤子/山田裕貴/片山萌美/柄本明/笠井信輔(ニュースキャスター)/三上真奈(ニュースキャスター)●公開:2018/06●配給:ギャガ(評価:★★★★☆)



「のぼうの城」●制作年:2012年●監督:犬童一心/樋口真嗣●製作:久保田修●脚本:和田竜●撮影:瀧本幹也●音楽:松本淳一/森敬/松原毅●時間:145分●出演:野村萬斎/榮倉奈々/成宮寛貴/佐藤浩市/山口智充/上地雄輔/前田吟/中尾明慶/尾野真千子/ピエール瀧/前田吟/山田孝之/平岳大/市村正親/西村雅彦/鈴木保奈美/平泉成/夏八木勲●公開:2012/11●配給:東宝●最初に観た場所:三軒茶屋シネマ(14-07-20)(評価:★★★★)●併映:「そして父になる」(是枝裕和)





大手総合電機会社ソニックの子会社である中堅電機メーカー東京建電で住宅関連商品を扱う営業4課の課長・原島万二(45)は、名前通りの万年二番手でたいした実績がない平凡なサラリーマンだったが、一方、原島と対照的に花形部署の営業1課に38歳という最年少で昇進しメキメキと業績を上げていた坂戸宣彦が、万年係長と揶揄される八角民夫(50)(通称ハカック)からパワハラを訴えられて突然更迭される。やる気のない八角に対し、10歳以上年下である坂戸は課員の面前で罵倒し続けたのだった。営業部のエースは失脚で、代わりに一課長に就任したのが原島だったが、坂戸がパワハラで訴えられたことには"裏"があったのだ。それは、東京建電にとって会社存続をかけた死活問題であり、親会社のソニックにしても子会社の不祥事と連結決算で受けるダメージは底知れない重大事件だった―。
ドラマでは、原作の最後にある調査委員会の聴取を冒頭に持ってきて、常にそこからの振り返りという形でストーリー展開しているせいもあって、このこと
がかなり全体のトーンを重苦しく暗いものにしている感じがしました。しかし、役者陣は、東山紀之(原島)の周りを、同時期にスタートしたTBS日曜劇場「
われます。「半沢直樹」のような派手さはないけれど、こちらの方を評価する人もいたみたいです(個人的には「半沢直樹」の方が面白かったが、反面、「半沢」には引っ掛かる部分もあった)。「半沢直樹」は個人に起因する不正融資を描いていますが、こちらは企業ぐるみのリコール隠しなわけで、民放でやってもスポンサーが嫌うかも。その意味ではNHKらしいと言えばNHKらしいドラマ。2つの内部告発が出てきますが、最初のカスタマー室長・佐野の社内での内部告発は、グループ企業内で秘密にされ、原島もその方針に従う―こうなるともう、八角(ハカック)のようなマスコミを使ったやり方しかないのか(「半沢」も同じ手を使っていたが)。

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(●2019年映画化。監督は「半沢直樹」「下町ロケット」などの演出を務めた福澤克雄であり、主演の八角役の野村萬斎は目新しいが、あとは香川照之、及川光博、片岡愛之助といった「半沢直樹」の顔ぶれが並ぶ。トーンも完全に娯楽性とテンポを重視した「半沢直樹」の作りと同じで、「半沢直樹」の再現みたいだ。NHKドラマのシリアスな作りもいいが、このような劇画調も、映画になっても愉しめることがわかった。野村萬斎の「八角」は、テレビで吉田鋼太郎が演じた「八角」とは違った味があった(映画「
における極端に狂言調の彼とも違う)。原作は「原島」から始まって「八角」で終わっている印象だが、ドラマは東山紀之演じる「原島」から始まって「原島」で終わっている印象を受けた。それに対し、映画は、野村萬斎演じる「八角」で始まって「八角」で終わっている印象で、及川光博演じる「原島」はやや後退している感じ。狂言師 vs.歌舞伎役者の"顔芸"対決になったが、なぜか立川談春、春風亭昇太といった落語家も参戦(笑)、オリラジの藤森慎吾まで出ていたなあ。
「七つの会議」●制作年:2019年●監督:福澤克雄●脚本:丑尾健太郎/李正美●音楽:服部隆之(主題歌:ボブ・ディラン「メイク・ユー・フィール・マイ・ラヴ」●原作:池井戸潤●時間:119分●出演:野村萬斎/香川照之/及川光博/片岡愛之助/音尾琢真/藤森慎吾/朝倉あき/岡田浩暉/木下ほうか/土屋太鳳/小泉孝太郎/溝端淳平/
春風亭昇太/立川談春/勝村政信/世良公則/鹿賀丈史/橋爪功/役所広司/北大路欣也●公開:20219/02●配給:東宝(評価:★★★★)




(●2013年に石井裕也監督、松田龍平主演で映画化され、第37回日本アカデミー賞で最優秀作品賞をはじめ6部門の最優秀賞を受賞、石井裕也監督は芸術選奨新人賞も受賞したほか、主演の松田龍平をはじめとするキャストやスタッフも多くの個人賞を得た。原作では年代を特定していないが、映画では松田龍平演じる主人公・馬締が辞書編集部に配転になったのが1995年で、原作で後日譚として扱われている部分が

その12年後となっている。細部での改変はあるが、全体としては原作のストーリーを比較的忠実に追っている感じで、松田龍平、宮﨑あおい、オ
ダギリジョー、黒木華といった若手の俳優陣も頑張っているが、加藤剛、小林薫、伊佐山ひろ子、八千草薫といったベテランが脇を固めているのが大きく、特に、加藤剛の「先生」は印象的だった。そもそも、原作が、その後数多く世に出た"お仕事系"小説のどれと比べても優れているため、原作の良さに助けられている部分もあるが、少なくとも原作の持ち味を損なわずに活かしているという点で良かったと思う。)
「舟を編む」●制作年:2013年●監督:石井裕也●プロデューサー:土井智生/五箇公貴/池田史嗣/岩浪泰幸●脚本:渡辺謙作●撮影:藤澤順一●音楽:渡邊崇●時間:133分●出演:松田龍平/宮﨑あおい/オダギリジョー/黒木華/渡辺美佐子/池脇千鶴/鶴見辰吾/伊佐山ひろ子/八千草薫/小林薫/加藤剛/宇野祥平/森岡龍/又吉直樹/斎藤嘉樹/波岡一喜/麻生久美子●公開:2013/04●配給:松竹=アスミック・エース(評価:★★★★)
●2024年ドラマ化 【感想】2024年2月18日から4月21日まで、NHK-BSプレミアム4Kの「プレミアムドラマ」枠で池田エライザと野田洋次郎の主演でドラマ化(この枠で前回は、篠田節子の2008年刊行の『
マ向きではないかも)。その馬締を演じてた野田洋次郎はロックバンド「RADWIMPS」のボーカル&ギターだが、まずまずの演技だった。





これを読み、マーチン・スコセッシ監督の「アフター・アワーズ」('85年/米)という、若いサラリーマンが、ふとしたことから大都会ニューヨークで悪夢のような奇妙な一夜を体験する、言わば「巻き込まれ型」ブラック・コメディの傑作を思い出しました(スコセッシが大学生の書いた脚本を映画化したという。カンヌ国際映画祭「監督賞」、インディペンデント・スピリット賞「作品賞」受賞作)。
グリフィン・ダン演じる主人公の青年がコーヒーショップでロザンナ・アークェット演じる美女に声を掛けられたきっかけが、彼が読んでいたヘンリー・
ミラーの『北回帰線』だったというのが、何となく洒落ているとともに、主人公のその後の災厄に被って象徴的でした(『北回帰線』の中にも、こうした奇怪な一夜の体験話が多く出てくる)。映画「アフター・アワーズ」の方は、そのハチャメチャに不条理な一夜が明け、主人公がボロボロになって会社に出社する(気がついたら会社の前にいたという)ところで終わる"ワンナイト・ムービー"です。
作に忠実だが、より漫画チックにデフォルメされている。星野源吹き替えの男性主人公よりも、花澤香菜吹き替えのマドンナ役の"黒髪の乙女"の方が実質的な主人公になっている
。モダンでカ
ラフルでダイナミックなアニメーションは観ていて飽きないが、アニメーションの世界を見せることの方が主となってしまった感じ。一応、〈ワン・ナイト・ムービー(ストーリー)〉のスタイルは原作を継承(第1章だけでなく全部を"一夜"に詰め込んでいる)しているが、ストーリーはなぜかあまり印象に残らないし、京風情など原作の独特の雰囲気も弱まった。映画の方が好きな人もいるようだが、コアな森見登美彦のファンにとっては、映画は原作とは"別もの"に思えるのではないか。因みに、この作品は、「オタワ国際アニメーション映画祭」にて長編アニメ部門グランプリを受賞している。)

「アフター・アワーズ」●原題:AFTER HOURS●制作年:1985年●制作国:アメリカ●監督:マーチン・スコセッシ●製作:エイミー・ロビンソン/グリフィン・ダン/ロバート・F・コールズベリー●脚本:ジョセフ・ミニオン●撮影:ミハエル・バルハウス●音楽:ハワード・ショア●時間:97分●出演:グリフィン・ダン/ロザンナ・アークェット/テリー・ガー/ヴァーナ・ブルーム/リンダ・フィオレンティ
ーノ/ジョン・ハード/キャサリン・オハラ/ロバート・プランケット/ウィル・パットン/ディック・ミラー●日本公開:1986


「夜は短し歩けよ乙女」●●制作年:2017年●監督:湯浅政明●脚本:上田誠●キャラクター原案:中村佑介●音楽:大島ミチル(主題歌:ASIAN KUNG-FU GENERATION「荒野を歩け」)●原作:森見登美彦●時間:93分●声の出演:星野源/花澤香菜/神谷浩史/秋山竜次(ロバート)/中井和哉/甲斐田裕子/吉野裕行/新妻聖子/諏訪部順一/悠木碧/檜山修之/山路和弘/麦人●公開:2017/04●配給:東宝映像事業部●最初に観た場所:TOHOシネマズ西新井(17-04-13)(評価:★★★)
SCREEN 1 106+(2) 3.5×8.3m デジタル5.1ch






(●2011年、佐々部清(1958-2020/62歳没)監督により宮﨑あおい、堺雅人主演で映画化された。タイトルは同じ「ツレがうつになりまして。」だが、原作は「その後のツレがうつになりまして。」「イグアナの嫁」からもエピソードをとっている。宮﨑あおい、堺雅人とも、TV版の藤原紀香、原田泰造より演技は上手い。宮﨑あおいはNHK大河ドラマ「篤姫」('08年)で主人公の篤姫を演じており(放送開始時の年齢22歳1か月は、大河ドラマ
の主演としては歴代最年少)、堺雅人はTBS「
「ツレがうつになりまして。」●制作年:2011年●監督:佐々部清●脚本:青島武●撮影:浜田毅●音楽:加羽沢美濃(主題歌:矢沢洋子「アマノジャク」)●時間:121分●出演:宮﨑あおい/堺雅人/吹越満/津田寛治/犬塚弘/田村三郎/中野裕太/梅沢富美男/田山涼成/吉田羊/大杉漣/余貴美子●公開:2011/10●配給:東映●最初に観た場所:丸の内TOEI1(11-11-03)(評価:★★★☆)
余貴美子/大杉漣(ハルさん(宮﨑あおい)の実家・栗田家(栗田理髪店)の両親)


