【3212】 ○ 東野 圭吾 『真夏の方程式 (2011/06 文藝春秋) ★★★☆(○ 西谷 弘 「真夏の方程式 (2013/06 東宝) ★★★☆)

「●ひ 東野 圭吾」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1570】 東野 圭吾 『マスカレード・ホテル
「●た‐な行の日本映画の監督」の インデックッスへ 「●前田 吟 出演作品」の インデックッスへ「●風吹 ジュン 出演作品」の インデックッスへ「●永島 敏行 出演作品」の インデックッスへ「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ

原作・映画ともいろいろケチをつけたくなるが、それなりに面白かった。

『真夏の方程式』文庫.jpg「真夏の方程式]2013.jpg 「真夏の方程式」0.jpg
真夏の方程式 (文春文庫)』「真夏の方程式 DVDスタンダード・エディション」福山雅治

 夏休みのある日から両親の都合で一人、親戚が経営する旅館で過ごすことになった小学4年生の恭平は、玻璃ヶ浦へ向かう電車の中で湯川に出会う。湯川は海底鉱物資源開発の説明会にアドバイザーとして出席するために玻璃ヶ浦へ行くことになっており、湯川は気まぐれから恭平の親戚の旅館に泊まることにする。そんな中、同じ旅館に泊まっていた客の塚原正次が夜中に姿を消し、翌朝海辺で変死体となって発見される。県警は現場検証を行い、堤防から誤って転落した事故死の線が濃厚と判断していた。同じ頃、草薙は多々良管理官から直々に特命の捜査を依頼される。玻璃ヶ浦の事件の被害者の塚原は元警視庁捜査一課所属の刑事で、その死に疑問を抱く多々良は、同じ旅館に湯川が泊まっていることを知り、草薙を連絡係にして独自の捜査を命じたのだ。草薙は内海とともに、湯川と連絡を取りながら捜査を行う。捜査を進めるうち、塚原は殺害された後に、海岸に遺棄された可能性が高くなってゆく。塚原は、何のために玻璃ヶ浦に来たのか。湯川は「ある人物の人生が捻じ曲げられる」ことを防ぐために、真相に挑んでいく。鍵を握るのは、16年前に塚原が担当した元ホステス殺人事件。そして、その裏には緑岩荘を営む川畑家が隠していたある重大な秘密があった―。
真夏の方程式
『真夏の方程式』単行本.jpg 2011年6月に文藝春秋より刊行されたガリレオシリーズ第6弾、シリーズ3作目の長編で、2013年6月29日に、「ガリレオ」シリーズの劇場版第2作として映画化・公開され、累計興収33.1億円で2013年度の邦画実写第1位となっています。シリーズでは『容疑者Xの献身』に次いで映画化された作品の原作であり、それなりに面白かったように思います。

 と言うか、世評の高い『容疑者Xの献身』の方を個人的にはあまり高く評価しておらず、なぜならば殺人の隠蔽のために別の殺人を犯すのはどうかと思ったからで、浮浪者だからと殺してしまっていいのかという点がどうしても引っ掛かるためです(これについては北村薫氏が、ミステリあるいは小説を道徳論で論ずるべきでないとの立場を示しているが)。

 この『真夏の方程式』も、まったく問題がないわけではなく、業務上過失致死を装って殺害された元刑事の塚原に何か非かあったのではないのに、彼の命が軽く扱われている気がするし、子どもに、本人が知らずにとは言え、殺人の手助けをさせていいのかというのもあります。ただ、複雑な人間関係の中、最後の最後まで読めない展開に引き込まれたので、一応○としました。

「真夏の方程式」4.jpg 映画化作品の方は、比較的原作に忠実に作られていたように思います。原作にある、川畑成実(杏)の高校時代の同級生で今は地元で警官をやっている西口や、フリーライターで環境保護活動家の沢村が割愛されていましたが、却ってスッキリしたかも(沢村が割愛されたおかげで、死体を運ぶのがたいへんそうだったが(笑))。

 ただ、宿に泊まった塚原(塩見三省)が元刑事であることを仄めかして川畑節子(風吹ジュン)に仙波の名前を出して話を聴きたいと言い、それによって節子が激しく動揺するという場面が早々にあるため、川畑家に何か重大な秘密があって、そのため塚原が殺されたことが早くから判ってしまい、「刑事コロンボ」ではないですが、半ば「倒叙式」みたいになってしまったのはいかがなものかと思いました。

「真夏の方程式]相関図jpg.jpg ラストで、湯川(福山雅治)が成実に、「きみは恭平君を守ってほしい」と言うのも、前後の脈絡からしてどうしてこうなるの?という疑問はありますが、これは原作では「きみの務めは人生を大切にすることだ」となっています。どちらにしても、事件はこれで終わりにしようということですが、この映画を観る限り、恭平君は「いつか」ではなく「明日にでも」自分が事件当日にやったことの意味に気づきそうな感じでした。

「真夏の方程式」3.jpg いろいろケチをつけましたが、原作「真夏の方程式]201前田3.jpgを読んでよくわからなかった、カメラ付きケータイ入りのペットボトル・ロケットを何度も海に向かって打ち上げる実験の全容が理解できたのと(かなりの尺をとっていた)、湯川と対峙した旅館の主人・川畑重治を演じた前田吟が、(これで事件を落着させたいという)重要な場面でベテランの演技力を見せていたので、映画も一応○としました。

「真夏の方程式」p2.jpg「真夏の方程式」●制作年:2013年●監督:西谷弘●製作:鈴木吉弘/稲葉直人●脚本:福田靖●撮影:柳島克己●音楽:菅野祐悟/福山雅治●原作:東野圭吾●時間:129分●出演:福山雅治/吉高由里子/北村一輝/杏/豊嶋花/青木珠菜/前田吟/風吹ジュン/白竜/塩見三省/山﨑光/西田尚美/田中哲司/永島敏行/根岸季衣/神保悟志/綾田俊樹/筒井真理子●公開:2013/06●配給:東宝(評価:★★★☆)

杏(川畑成実)

「真夏の方程式」永島敏行.jpg永島敏行(多々良管理官)/ 北村一輝(草薙俊平)

【2013年文庫化[文春文庫]】

About this Entry

This page contains a single entry by wada published on 2022年11月 2日 00:55.

【3211】 ○ 松尾 昭典 (原作:松本清張) 「松本清張の坂道の家」 (1983/02 日本テレビ) ★★★★ was the previous entry in this blog.

【3213】 ○ 西谷 弘 (原作:東野圭吾) 「沈黙のパレード」 (2022/09 東宝) ★★★☆ is the next entry in this blog.

Find recent content on the main index or look in the archives to find all content.

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1