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最後は映画と言うよりミュージック・ビデオみたいな感じの「ジャズ大名」。

「ジャズ大名 [DVD]」古谷一行(1944-2022.08.23/78歳没))/財津一郎/殿山泰司 「犬死にせしもの [DVD]」真田広之/佐藤浩市/安田成美
南北戦争が終り、解放された黒人奴隷のジョー(ロナルド・ネルソン)は、弟サム、従兄ルイ、叔父ボブの3人に再会した。彼らはニューオリンズから船に乗り故郷アフリカへ帰るはずが、メキシコ商人に騙されて香港行きの船に乗せられる。ある日、病気で死んだボムを残し、大嵐の中ボートで脱出を図った3人は駿河湾の庵原藩に助けられる。海郷亮勝(古谷一行)が藩主の庵原藩は、薩摩藩と幕府の中間に位置しているため、家老の石出九郎左衛門(財津一郎)は薩摩
か幕府のどちらにつくべきか悩んでいる。しかし亮勝はどこかうわの空。そんな時、黒人3人が流れ着いたとの一報が入る。亮勝は興味津々で彼らに会いたいと言うが、それを許そうとしない九郎左衛門は、医者の玄斎(殿山泰司)に作らせた眠り薬を使い、彼らを地下牢に閉じ込める。下手な篳篥を演奏するのが趣味の亮勝は、彼らは楽隊ではないかと玄斎から伝え聞き、何とか彼らと会うよう画策する。そして、念願を果たすや、音楽好きの亮勝は彼らの演奏するジャズの虜となり―。
岡本真実/財津一郎
『エロチック街道』['81年]『エロチック街道 (新潮文庫)』['84年]『ジャズ大名 (新潮文庫)』



岡本喜八監督の1986(昭和61)年公開作で、原作は筒井康隆の短編集『エロチック街道』('81年/新潮社)の1篇(文庫化後、映画化の際に書名が『ジャズ大名』に改められて表題作となった)。製作会社は大映、配給会社は松竹で、同年キネマ旬報ベストテンで10位となり、映画化困難といわれる筒井原作の映画では初のランクインとなっています。
藩主役の古谷一行と家老役の財津一郎のやり取りが楽しい。原作にある庵原藩の屋敷の特異な形状もしっかり再現されており、百畳敷以上の大広間(これが街道上に位置するため、伊勢参りや敗れた幕府軍、追う官軍などが行き来することになる)のセットは東宝スタジオに建てられ、音楽監督とプロデューサーを除くメ
インスタッフ全員が東宝から起用されたとのことです。
終盤は、藩主以下一同数十名(数百名?)は地下室で大ジャムセッション。三味線・琵琶・和太鼓・尺八・桶・ソロバンなどで即興演奏を繰り広げ、気がついたら地上では明治維新になっていた―。原作のシュールな展開が活かされており、維新なって行進する官軍の「トンヤレ節」を鼻で笑い飛ばしてジャムセッションを再開するラスト
に、戦争なんて馬鹿らしいというメッセージが込められていたように思います。
狂乱の大演奏がラスト2、30分続きますが、一応、原作も果てしなく演奏が続くという設定などでこれも"原作通り"。唐十郎が薩摩藩士役で出演しているほか、ジャムセッションでは山下洋輔はおもちゃのピアノを弾きまくり、タモリはラーメンの屋台を引きチャルメラを吹くという、最後は映画と言うより、ちょっと変わったミュージック・ビデオみたいな感じでした(併映は次に挙げる「犬時にせしもの」)。
真田広之/佐藤浩市 in「犬死にせしもの」
昭和23年。ビルマ戦線から復員した重左こと宗重左衛門(真田広之)は、戦友の鬼庄こと鬼松庄一(佐藤浩市)と遊郭で再会し、仲間の伝次郎(堀弘一)と共に海賊して瀬戸内海を股にかけていた。ある日、三人が襲撃した船に洋子(安田成美)という名の少女が乗っており、鬼庄は彼女を色街に売って金を得ようとしていた。しかし重左は影のある彼女に惹かれ、鬼庄の計画を思いとどまらせることに成功する。洋子の嫁ぎ先は瀬戸内海を牛耳る新興やくざ・花万に捜索を依頼。そして、花万の番頭・火つけ柴(蟹江敬三)が五貫島に現われ、3日後に洋子を渡すように要求してきた。大分・竹田津の実家まで送り届けると洋子に約束した重左は、高松の元やくざ・阿波政(西村晃)に助けを求めに行くが、その間洋子は火つけ紫に連れ去られてしまう。闇ブローカーの岩テコ(平田満)から火つけ紫の妾の居場所を聞いた重左たちは、その女・千佳(今井美樹)を攫って人質交換を目論み、小型船の梵天丸で西枯木島にある火つけ紫の本拠地に乗り込むが―。
井筒和幸監督作で、荒れ狂う海の上での真田広之と佐藤浩市の活躍が観られます(この二人のW主演はある種"貴重映像"かも。「道頓堀川」('82年/松竹)でも共演はしていたが、W主演ではなかった)。ただ、二人とも復員者には見えないのが難ですが。加えて、洋子役の安田成美がヒロインなのは分かりますが、色街に売られそうになりながらもどこかお嬢さんっぽい安田成美の役どころと、火つけ柴の妾・千佳役の新人・今井美樹との扱われ方の差があまりに大きいのがどうかなという感じでした。

今井美樹が唯一ヌードになった映画がこの作品とのことです。ホンダ・トゥデイのCM('85年)に出ていた彼女。個人的には、新車発表会で"ナマ今井美樹"見たこともあり思い入れがあったのですが、その彼女をこうした使い方をして大丈夫なのかなあと、当時思ったりもしました。しかしながら、今井美樹自身は、引き続きNEWトゥデイのCM('88年)にも'91年まで出ていて('93年に2代目イメージガール・牧瀬里穂にバトンタッチ)、その後も歌手、女優として幅広く活躍しています(1999年に布袋寅泰と結婚)。
井筒和幸監督自身は当時のことをどう振り返っているのかと思ったら、「日刊ゲンダイDIGITAL」の連載コラム(2020年9月26日配信)に《新人の今井美樹嬢を丸裸にさせたり、船上で尻をまくって海にオシッコさせたり、キスを何十回と連続でテークしたりした。彼女は耐えに耐えて夢中で演じた。熱い時代だった。今はキスも嫌う女優もどきがいる。ご清潔なものだ》と書いていて、この発言が今年['22年]になってツイッター民により引用・拡散されたことで物議を醸しているようです。
井筒和幸監督
映画撮影現場でのセクハラ、パワハラが問題視されている昨今の状況からすると「熱い時代だった」では済まされないように思いますが、2020年の時点でこうした発言をしていることを考えると、井筒和幸監督はまだ昭和の感覚をまだ引き摺っているのではないでしょうか。本人は今月['22年7月]、湧き起こった映画界の性加害報道を受けて、「役者に配慮するのは今まで通りだろうし。なのに、監督がセクハラするなんて、それこそこの世の終わり」と発言していますが、何かコメンテーター調だけど、自分のことではないかと思ってしまいます。実際に井筒監督は報道番組のコメンテーターのようなことをしており、その映画観だけでなく、政治・歴史的主張も含めさまざまな発言をしていて、個人的にはそれらを全否定するわけではなくむしろ賛同することが多いくらいですが、この件に関しては都合よく逃げている印象を受けました。
「ジャズ大名 [DVD]」

「ジャズ大名」●制作年:1986年●監督:岡本喜八●脚本:岡本喜八/石堂淑朗●製作:室岡信明●撮影:加藤雄大●音楽:筒井康隆/山下洋輔●原作:筒井康隆●時間:85分●出演:古谷一行/財津一郎/神崎愛/岡本真実 /殿山泰司/本田博太郎/今福将雄/小川真司/利重剛/ミッキー・カーチス/唐十郎 (友情出演)/ロナルド・ネルソン/ファーレズ・ウィテッド/レニー・マーシュ/ジョージ
・スミス/六平直政/山下洋輔(特別出演)/タモリ(特別出演)●公開:1986/04●配給:松竹(評価:★★★☆)●最初に観た場所:渋谷松竹(86-05-04)(評価:★★★☆)●併映:「犬死にせしもの」(井筒和幸)
「犬死にせしもの」●制作年:1986年●監督:井筒和幸●脚本:井筒和幸/西岡琢也●撮影:藤井秀
男●音楽:武川雅寛(主題歌:桑名晴子)●原作:西村望「犬死にせしものの墓碑名」●時間:92 分●出演:真田広之/佐藤浩市/安田成美/平田満/堀弘一/梅津栄/今井美樹/風祭ゆき/水木薫/吉行和子/蟹江敬三/木之元亮/中村玉緒(特別出演)/西村晃/堤真一(チンピラ 役)●公開:1986/04●配給:松竹●最初に観た場所:渋谷松竹(86-05-04)(評価:★☆)●併映:「ジャズ大名」(岡本喜八)
蟹江敬三/真田広之



渋谷松竹 1938年、前身の松竹系「東京映画劇場」オープン。1990(平成2)年9月16日、隣接の「渋谷東映」と共に閉館 (1985年道玄坂「ザ・プライム」6Fにオープンしていた渋谷松竹セントラル(2003年~「渋谷ピカデリー」)が後継館となる(2009(平成21)年1月30日「渋谷ピカデリー」閉館))(⑦渋谷東映/⑨渋谷松竹/⑬全線座(1977年閉館))
今井美樹出演:ホンダ・トゥデイ(today)CM 1985年~
1985年:キャッチコピー「キミとなら、仲良くできる。」(CMソング「はぐれそうな天使」 作詞・作曲:来生えつこ、来生たかお/song by 来生たかお)
1986年:キャッチコピー「さりげない人が、素敵。」「お兄さんみたいな人に、憧れた。」(CMソング「はぐれそうな天使」song by 岡村孝子)
1987年:キャッチコピー「青山育ちのハンサムです。」「グッドデザインよ。」(CMソング「はぐれそうな天使」song by 岡村孝子)
〜
1988年:キャッチコピー「素敵と、トゥデイは素早くやってくる。」(CMソング「だいすき」作詞・作曲:岡村靖幸/by song 岡村靖幸)


2015年8月に84歳で亡くなった、イラストレーター、デザイナーで、船の画家でもあり、アンクルトリスの生みの親でもある柳原良平(1931-2015)の仕事集。このムック版が初めての本格的仕事集とのことですが、上記に加え、漫画家、文筆家としても知られたように、仕事の範囲がかなり広範に及び、また晩年まで活動していたため、本人が亡くなってやっとこうしたものが刊行されるということになるのでしょう。装丁、絵本、漫画にアニメーション、さらにはグッズやオリジナル作品まで、900点以上を図版に収めています。

まず最初に、アンクルトリス誕生の初期の作品を紹介しています。柳原良平はよく知られているように、サントリーの前身「寿屋」の社員だったわけですが、50年代の終わりから60年代にかけて、広告の変遷を通してアンクルトリスのキャラクターが確立されていく過程が見えて、なかなか興味深いです。
でも、1958(昭和33)年にはもうテレビコマーシャルになっているのだなあ(1981(昭和56)年までコマーシャルに採用、2003(平成15)年3月27日、「トリスウイスキー スクエア」の発売を機に、コマーシャルに再び登場する)。1960年に、久里洋二、真鍋博と「アニメーション3人の会」を結成していますが、その時点でアニメーション経験があったのは柳原良平だけで、「寿屋」に所属していたというのは大きかったと思います(「3人の会」上映会は'60年、'61年、'63年の3回行なわれ、'64年の第4回からは一般公募と海外からの招待作品も含めて上映する「
1978年から約20年続いた山口瞳(1926-1995)との新社会人を激励する新聞広告(全国紙の4月1日朝刊に掲載)も懐かしいです。広告代理店に入社して、4月1日の入社式が終わった後の研修で、講師である役員から「読んだか」と訊かれ、即答できず皆ぼーっとしていたら怒鳴られたのを覚えています(広告業界の者にとって必見の広告。ましてや自身が訴求ターゲットである新社会人であることからして、これを読まずに会社に来るなんてトンデモナイということか)。
全体を通してみると、やはり装丁の仕事が最も多いという印象で、全体的な仕事集としてはこのムックが初とのことですが、装丁集としては以前に『柳原良平の装丁』('03年/DANぼ)が出され
ており、柳原良平は当時72歳でしたが、それまでに装丁を手掛けた約300冊の内、50年代~2003年までの200冊以上の装丁を収録しています。


「池田屋騒動」●制作年:1961年●監督・製作:柳原良平●協力:大西清●脚本:酒井睦雄●音楽:吉住小勝郎/稀音家一志郎●時間:2分20秒●ナレーション:仲谷昇●公開:1961/12●配給:草月アートセンター(自主制作)(評価:★★★☆)




漆場レンコ(田畑智子)は京都鴨川近くに住む小学6年生。両親が離婚を前提に別居することになり、父親のケンイチ(中井貴一)が家を出て行き、母・ナズナ(桜田淳子)との二人暮らしとなる。離婚というものが最初は実感としてピンとこなかったレンコだったが、新生活を始めようと契約書を作るナズナや、独り暮らしで寂しそうなケンイチを見て、その意味が少しずつ理解できてくるともに、そんな両親に挟まれ、彼女の心はざわついてくる。クラスの転校生"サリー"こと橘理佐(青木秋美〔現・遠野なぎこ〕)は関東から引っ越して来た少女で、レンコたち関西弁と言葉が異なり、級友たちはサリーを遠巻きにしていた。
を立てるが、実行前にナズナに露見して失敗する。ケンイチとナズナを元通り仲直りさせたいレンコは、去年も行った琵琶湖畔への家族旅行を今年も実行しようと、クレジットカードを使って電車の切符とホテルの手配を自力でする。現地のホテルに現れたケンイチは、ナズナに復縁を求めるが、ナズナは拒否する。レンコはその場を逃げ出し、子どもを亡くした砂原という老夫婦(森秀人・千原しのぶ)に会う。それでも仲良くやっている夫婦に力を得たレンコは、祭りの中を彷徨する。琵琶湖畔に辿り着いたレンコは、祭りの山車とかつて仲良しだった自分たち家族の幻影を見る。やがて山車は燃え、家族は水に沈み、それを見たレンコは、「おめでとうございます!」と何度も叫ぶ―。
1993年公開の相米慎二(1948‐2001/享年53)監督作で、相米慎二監督はこの作品で1993年度・第44回「芸術選奨」を受賞しています。原作は、1991年・第1回「椋鳩十児童文学賞」を受賞したひこ・田中の『
終盤のレンコが見る湖での幻影シーン(原作には琵琶湖行きの話そのものが無い)での、彼女の「おめでとうございます」という連呼に、監督の思いが込められていたように思いました。レンコはもう自分たち家族は修復できないと悟り、過去と決別するために、また新たな自分を得た自分自身に対して「おめでとうございます!」と言ったのでしょう。エンドロールでは、小学生のレンコがいつの間にか中学生の制服姿に変わり、さっぱりとした表情で街中を人々や家族と接しながら跳ねるように歩いています。相米監督のもう1本の佳作「台風クラブ」('85年)と同じような印象のラストで、作品そのものが少女の成長物語であったことを裏付けるものとなっています。
相米慎二監督は、当時17歳の薬師丸ひろ子主演の「セーラー服と機関銃」('81年)、当時19歳の斉藤由貴主演の「雪の断章‐情熱‐」('85年)、当時14歳の工藤夕貴主演の「
田畑智子の演技は、相米監督の長回しによく耐えていて、良かったと思います。特に前半部分の自然な演技が良く、逆に後半部分は「女優」であることを意識した演技になってしまった印象も受けました。後半部分に相米監督のオリジナルな考えが込められていることを考えると、彼女の演技力が相米監督の演出に耐えられるのを見て、相米監督がそうした演出をしたようにも思いました。後半の演技の方を高く評価する人もいておかしくないかもしれませんが、個人的には前半部分の彼女の演技の方がやっぱり良かったという印象です(彼女がやがて映画(「
人賞、毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞を受賞しましたが、母・ナズナ役の桜田淳子も、キネマ旬報助演女優賞、報知映画賞助演女優賞、毎日映画コンクール助演女優賞を受賞しています。桜田淳子の方は、歌手から女優に転向して、この時までに既に芸術選奨新人賞(大衆芸能部門)('86年)や菊田一夫演劇賞('87年)など数多くの賞を受賞しており、更なる飛躍をという矢先に統一教会の合同結婚式絡みの問題が報道され、この「お引越し」が最後の映画出演となり、芸能界からも身を引くことになりました。この作品での彼女の演技を見ると、惜しい気がします。
その他、助演として、父・ケンイチ役の中井貴一や先生役の笑福亭鶴瓶が出演していますが、中井貴一は田畑智子と桜田淳子の好演に隠れてやや影が薄かったでしょうか。中井貴一と笑福亭鶴瓶は「お引越し」の3年前の相米慎二監督作
品「東京上空いらっしゃいませ」('90年)にも出ていましたが、ストーリーがメルヘンチックで、相米慎二独特の粘り強いシーンの構成が見られない作品であった上に、当時の中井貴一は大根で、笑福亭鶴瓶も映画向きの配役とは思えませんでした。牧瀬里穂のみ
がやたら元気に演技していて、映画としては相米監督はこんな凡作も撮るのかと思わされましたが、前年(1989年)当時17歳でJR東海・クリスマス・エクスプレスのCM(第1作)で脚光を浴び、映画初出演で主役を演じた牧瀬里穂は、その後宮沢りえ・観月ありさと共に「3M」と呼ばれるまでに女優として開花しました(中井貴一は開花するのに時間がかかった?)。相米慎二監督の演出は厳しかったそうです。「若手女優育成型」監督といった感じだったのでしょうか。
「お引越し」●制作年:1993年●監督:相米慎二●脚本:奥寺佐
渡子/小此木聡●撮影:栗田豊通●音楽:三枝成彰●原作:ひこ・田中「お引越し」●時間:124分●出演:中井貴一/田畑智子/桜田淳子/須藤真里子/田中太郎/茂山逸平/森秀人/千原しのぶ/笑福亭鶴瓶/青木秋美(現:遠野なぎこ)●公開:1993/03●配給:ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画=アルゴプロジェクト●最初に観た場所(再見):北千住・シネマブルースタジオ(17-07-19)(評価:★★★★)

「東京上空いらっしゃいませ」●制作年:1990年●監督:相米慎二●脚本:榎祐平●撮影:稲垣涌三●音楽:村田陽一/小笠原みゆき(主題歌:井上陽水「帰れない二人」)●時間:109分●出演:中井貴一/牧瀬里穂/笑福亭鶴瓶/毬谷友子/出門英/竹田高利/藤村俊二/工藤正貴/谷啓/三浦友和/河内桃子/木之元亮/遠藤美佐子/斉藤暁/岸野一彦/モロ師岡/佐山雅弘/上野哲郎/礒見博/楠本卓司●公開:1990/06●配給:松竹(評価:★★☆)


![鞍馬天狗 角兵衛獅子 [VHS].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E9%9E%8D%E9%A6%AC%E5%A4%A9%E7%8B%97%20%E8%A7%92%E5%85%B5%E8%A1%9B%E7%8D%85%E5%AD%90%20%5BVHS%5D.jpg)
嵐 寛寿郎
節分祭で賑わう壬生寺の境内の人波の中、子供角兵衛獅子の杉作(宗春太郎)と新吉(旗桃太郎)は財布を落としてしまう。角兵衛獅子の元締めで御用聞き(岡っ引き)隼の長七(瀬川路三郎)の所へ戻れば厳しい折檻を受けるのは明らかで、松月院の寺門の前で途方に暮れていると、通りがかった覆面の侍が二人に一両を恵んでくれた。子供達のその金を見た長七は子供達を問い詰め、その松月院の和尚(藤川三之祐)の所に居る倉田典膳を名乗る侍こそ、かねがね新撰組の近藤勇(河部五郎)、土方歳三(尾上華丈)らから居所を探るよう言われていた鞍馬天狗(嵐寛寿郎)だと確信する。長七はこれを近藤らに告げ、一味は松月院を襲撃する。敵をかわし、炎に包まれた松月院から脱出した天狗は、杉作と新吉を西郷吉之助(志村喬)の居る薩摩屋敷へ預ける。しかし子供達は長七らに捕らえられ、大坂城代屋敷の牢に入れられる。折しも大坂の浪士の手入れが迫っており、天狗は子供達を救うべく、また、浪士の人別帳を奪うべく、罠と知りながら大坂城代屋敷へ乗り込む―。
また、鞍馬天狗のことを仇だと誤解して新撰組の手先になって天狗を付け狙うものの、天狗に命を救われたことで最後は天狗に惹かれていく女性(この作品では"暗闇のお兼")を原駒子(1910-68)が演じていて(当時28歳)、これも雰囲気があって悪くなかったです。
1951年松竹版ではこの女性に相当する役("礫のお喜代")を山田五十鈴(1917-2012)が演じていますが、14歳の美空ひばり演じる杉作が34歳の山田五十鈴に天狗との関係において嫉妬心を覚える場面があります(あくまでも少年としての嫉妬心として描かれているが、もともと美空ひばり自体が若干"おませさん"に見えるため、そうした原作にはないニュアンスを盛り込んだのではないか)。
嵐寛寿郎の鞍馬天狗は、この1938年日活版の時に既にスタイルは完成されているように見えますが(刀を突きつけるだけで相手を後ずさりさせる迫力はピカイチ)、その後のシリーズの経過とともに、嵐寛寿郎の天狗も少しずつ変わってきているのも確かです。では、最初はどうだったのか。現在観ることの出来る最も古い「鞍馬天狗」は1928年の嵐寛寿郎プロダクションの第1作「鞍馬天狗」ですが(この頃はまだ無声映画)、天狗や杉作などはどのように描かれているのでしょうか。DVD化されていますが未見であり、個人的には今の時点ではこの1938年日活版が嵐寛寿郎版「鞍馬天狗」の原点的作品です。
因みに、自分が個人的に鞍馬天狗というものに初めて触れたのはそのパロディの方で、1959年9月2日から1960年12月24日までよみうりテレビ制作・日本テレビ系列で放送されていた、花登筺脚本、大村崑主演による「頓馬天狗」(とんまてんぐ)になります。コント的要素やスラップスティックによる笑いを多用し、毎回、大村崑扮する"頓馬天狗"の行く先々で敵役である"珍選組"の土方(土方大三:芦屋雁之助)、近藤(近藤勇造:芦屋小雁)が現れては頓馬天狗に斬られてしまい、再び繰り返すという、所謂"アチャラカもの"でした。「片手抜刀」など、大村崑のトリッキーで身軽な殺陣が人気となり、主人公の"頓馬天狗"の本名はスポンサー・大塚製薬のメイン
商品名「オロナイン軟膏」の読みを模して、決め台詞は「姓は尾呂内(オロナイン)、名は南公(軟膏)」、大村崑が番組内で生コマーシャ
ルをやっていました(後の「
「頓馬天狗」(お笑い珍勇伝 頓馬天狗⇒崑ちゃんのとんま天狗)●脚本:花登筺●演出:香坂信之●音楽:加納光記(オープニング:大村崑、かなりや子供会「とんとんとんまの天狗さん」(作詞:花登筺、作曲:加納光記))●出演:大村崑/芦屋雁之助/芦屋小雁/夢路いとし・喜味こいし/三木のり平●放映:1959/09~1960/12(全70回)●放送局:日本テレビ
「鞍馬天狗 角兵衛獅子の巻」●制作年:1938年●監督:マキノ正博/松田定次●脚本:比佐芳武●撮影:宮川一夫/松井鴻●音楽:高橋半●原作:大仏次郎●時間:66分(現存53分)●出演:嵐寛寿郎/原健作/瀬川路三郎/香川良介/藤川三之祐/尾上華丈/志村喬/団徳麿/阪東国太郎/宗春太郎(香川良介の息子)/旗桃太郎/深水藤子/原駒子/沢村国太郎/河部五郎●公開:1938/03/15●配給:日活京都(評価:★★★☆) 嵐寛寿郎・原駒子 in「鞍馬天狗 角兵衛獅子の巻」('38年)



仕事を辞めて何もせずに生活していた達夫(綾野剛)は、パチンコ屋で気が荒いもののフレンドリーな青年、拓児(菅田将暉)と出会う。拓児の住むバラックには、寝たきりの父親、かいがいしく世話をする母親、そして姉の千夏(池脇千鶴)がいた。達夫と千夏は互いに思い合うようになり、ついに二人は結ばれる。ところがある日、達夫は千夏の衝撃的な事実を知る―。
呉美保の2014年監督作で、モントリオール世界映画祭で最優秀監督賞(呉美保)を受賞しており(吉永小百合がプロデュース参画し主演した「

観る前は、綾野剛(達夫)、池脇千鶴(千夏)、菅田将暉(拓次)という配役を聞いて、原作の登場人物のイメージに比べて「線が細い」感じで「お子様っぽい
」のではないかとの印象を受けたのですが、実際に観てみたら、それなりに持ち味を出していたように思います。個人的感想で言えば、綾野剛の演じる達夫は、どちらかと言うと"観る側"であるから、綾野剛の演技が受身的であるのはいいとして、イメージ的に一番改変されていたのは菅田将暉が演じる拓次だったでしょうか。"幼い"と言うより"軽い"感じがしました。
そして、肝腎の千夏ですが、やはりどうしても"肉感的"な女性でなければならないのでは...と。それも、日中、イカをさばく工場で働いて、夜は売春で生計を立て、弟の勤め先の社長の愛人であり、要介護の父親の性欲処理を母親に代わってしているという、そうしたものを全て背負った上での"肉感的"な女性であるわけで、小柄な池脇千鶴ではイメージが弱いか或いは違うのではないかと思われたのですが、蓋を開けてみれば思った以上に役柄に嵌った"肉感的"ぶりだったと言うか、芯が強く、それでいて、ふと見せる優しい女性の顔もあり、いい意味で予想を裏切られました。
池脇千鶴(1981年生まれ。三井不動産リアルティの第8代"リハウスガール"('97-'98年)やNHK朝の連続テレビ小説「ほんまもん」('01年)の頃と随分変わった)はこの演技で、TAMA映画賞最優秀女優賞、毎日映画コンクール女優助演賞、日本映画批評家大賞助演女優賞などを受
賞、「日本アカデミー賞」では優秀主演女優賞を受賞しましたが、"最優秀" 主演女優賞は「
「そこのみにて光輝く」●制作年:2014年●監督:呉美保(お・みぽ)●製作:永田守/菅原和博●脚本:高田亮●撮影:藤龍人●音楽:田中拓人●原作:佐藤泰志「そこのみにて光輝く」●時間:120分●出演:綾野剛/池脇千鶴/菅田将暉/高橋和也/火野正平/伊佐山ひろ子/田村泰二郎●公開:2014/04●配給:東京テアトル・函館シネマアイリス(評価:★★★★)
あんかけの時次郎(藤田まこと)は、喧嘩は弱いがハッタリをきかすのは得意な浪花っ子ヤクザ。非力ゆえにヤクザ連中から干された際に、口八丁・手八丁の小坊主・珍念(白木みのる)と知り合う。当時の殺し屋連中の間では、清水次郎長を斬って日本一になろうという気運が盛んで皆が清水を目指していたため、時次郎らも清水へ向かう。途中ハッタリで殺し屋連中の首領となった時次郎だったが、次第に怖くなって金を持って逃げようとしたのがバレる。運良く追手の殺し屋を斬ることが出来て難を逃れたと思いきや、今度はすっかりカラ自信を回復してしまった時次郎、珍念の止めるのも聞かず、次郎長を斬るため再び徒党を組んで清水へ向かう。ところが清水に来てみると、次郎長一家は食中毒に見舞われていて、次郎長を斬るつもりがその助太刀をするはめに―。
TVコメディ番組「てなもんや三度笠』は、1962(昭和37)年5月から1968(昭和43)年3月までTBS系列で放送され(制作はABC朝日放送)、平均視聴率は関東地区26.6%、関西地区37.5%、最高視聴率は関東地区42.9%、関西地区64.8%('66年2月20日放送)と「西高東低」でしたが、何れにせよスゴイ数字。
TVドラマの方は藤田まこと(1933-2010/享年76)の出世作で、藤田まことが番組のオープニングで、小コントの
後「"俺がこんなに強いのも、あたり前田のクラッカー!"」というフレーズを発しながら、テレビカメラの前に前田製菓のクラッカーを差し出すCMで、そのクラッカーも人気商品となりました(後に「あたり前田のクラッカー」という商品名になった)。
映画版は、セット撮影だけでなく自然を背景としたロケも行っていて、スケールは大きくなっており、黒澤明の「
たいな箇所がある)。しかしながら、逆に、舞台劇としての軽妙な面白さは削がれている印象も受けます。TVアニメの劇場版作品などにもありがちですが、TVで観ている分には乾いた笑いが楽しめるところを、最後、無理矢理ウエットな気持ちにさせられてしまうというのはシンドイかな(時次郎と珍念の互いを思い合う気持ちのようなものがラストで強調されていている)。全体としては、キレイに纏めすぎてパンチ力不足という感じでしょうか。
但し、当時の関西喜劇人が多く出演しているという点で、ああ、こんな人も出ているのか、という意味での見所は多いです。財津一郎はまだ登場していませんが、平参平、大村崑、芦屋雁之助、芦屋小雁、茶川一郎、トニー谷、堺駿二(堺正章の父)、夢路いとし・喜味こいし等々、それぞれの演技やギャグも賑やかしい限りです。そんな中、花菱アチャコが清水次郎長役を、ノーギャグで時代劇の親分そのままに演じているのが印象的でした。
「てなもんや三度笠」(映画版)●制作年:1963年●監督:内出好吉●脚本:野上龍雄●撮影:羽田辰治●原作:香川登志緒●時間:81分●出演:藤田まこと/白木みのる/平参平/大村崑/大泉滉/芦屋雁之助/芦屋小雁/トニー谷/花菱アチャコ/茶川一郎/若水ヤエ子/夢路いとし/喜味こいし/秋田Aスケ/秋田Bスケ/坂本スミ子/鉄砲光三郎/赤木春恵/香山武彦●公開:1963/06●配給:東映●最初に観た場所:京橋フィルムセンター(05-02-18)(評価:★★★) 





春桜の季節、男(伊武雅刀)は、桜の樹々をトラックの荷台に積み、それらを移植するための場所を探して田舎を旅している。トラックの前に突如、日傘をさした桜模様の着物の女(風吹ジュン)が現れ、どうやら彼女は目が不自由なようだ。自分も桜を追う旅の途中だと話す女に、男は、女人禁制のトラックには乗せられないと一度は断るが、結局は女を乗せてしまう。その女と旅するうち、男はだんだん彼女の妖気に嵌ってゆく―。
鈴木清順(1923年生まれ)が、満開桜を追って小淵沢、河口湖、御殿場などでロケを敢行して撮り上げたという、劇場公開を前提としないOⅤであり、1984 (昭和59)年に「ラフォーレ原宿」で上映された後は、ロードにかからないのは勿論のこと殆ど再上映されることはありませんでしたが、2003年にやっと劇場公開されました(その後、2008年にDVD化)。
それまでの鈴木清順作品と言うと、ウエット感のあるフィルム映像、計算され尽くしたセットという印象があったので、乾いた印象のビデオ映像は、新鮮と言えば新鮮でした(ロケハンの多用は、「
途中、男が女に桜湯を飲ませると、花びらを飲み込んでしまった女の目が見えるようになり(と言っても、実はそれまで盲人のふりをしていたのだが)、男は女に桜の樹の移植を請け負った経緯を話す。男は、桜を驚かしてはいけないと言って、夜は荷台に乗せた棺桶に入って寝る―この監督独特の浪漫的傾向が感じあられますが、シュール過ぎてちょっとついていけない面もあったかな。いきなり女が踊りだしたりして...。
風吹ジュン(1952年生まれ)は'73年に初代ユニチカマスコットガールに選ばれ、'74年に「愛がはじまる時」で歌手デビューすると人気が爆発(ただし、本人は歌を苦手としていたとのこと)、'74年アサヒ飲料「三ツ矢サイダー」のCMなどでもさらに人気上昇し、'75年に女優デビューしていますが、CMタレントして一世風靡した分、ドラマに出ていても女優というよりCMタレントが出ている印象が暫くはありました。'77年「白熱デッドヒート」で映画初出演すると、'79年の「蘇える金狼」で松田優作とフルヌードで激しい濡れ場を演じ、'81年の「
今年('13年)のNHKの大河ドラマ「
「春桜(はるさくら)ジャパネスク」●制作年:1984年●監督:鈴木清順●製作





第2章では、'74(昭和49)年に起きた「千葉・市原の両親殺し事件」が扱われていて、当件は、中上健次の小説『蛇淫』や、長谷川和彦の第1回監督作の「青春の殺人者」('76年/ATG)のモデルになった事件であり、ある家の22歳の長男が、女性との付き合いを両親に反対され、両親を登山ナイフでめった突きにして殺害した(とみなされた)事件。被告人は公判で「父は母により殺され、母は第三者により殺された」と冤罪を主張をしましたが、捜査中の自白の中に「秘密の暴露」(被疑者が真犯人でしか知るはずのない事項を自白すること)があったことが重視され、最高裁で死刑が確定し、こちらも再審請求中です。
論理の枠組みがしっかりしているだけでなく、文章も上手。2番目の「千葉・市原の両親殺し事件」については、事件の時代背景を描き出すのと併せて、長谷川和彦監督の「青春の殺人者」('76年)について思い入れを込めて描写していますが(著者は1959年生まれとのこと)、一方で、この映画により「青春の殺人者」のイメージの方が事件の裁判よりも先行して定着してしまったとするとともに、事件―原作―映画の3つの違いを整理しています。
一方、実際に事件を取材した長谷川和彦監督は、事件と同じく舞台を都市近郊に戻し、その他の部分でも警察発表等に沿って事件の背景や経過をなぞるとともに、主役にTVドラマ「傷だらけの天使」で本格デビューして人気の出た水谷豊(当時22歳で事件の被告とほぼ同年齢)を起用することで、原作の土着的ムードを払拭するなど、より実際の事件に引き付けて映画を撮っているようです(タイトルバックでは「原作:中上健次『蛇淫』より」となっていたと思う)。
著者によれば、映画と実際の事件で大きく違うところは、主人公が父親に交際を反対された相手女性(原田美枝子(当時17歳)が演じた)が主人公の幼馴染みになっている点と(実際は風俗嬢であり内縁の夫がいた)、事件では本人が裁判で冤罪を主張した点であるとのことで、映画は主人公が「殺人者」であることが前提となっているため、今の時代であれば人権侵害で問題になっているだろうと(一審死刑判決が出たのは事件の10年後で、裁判中は推定無罪の原則の適用となるため)。実際、裁判で被告は、この映画のイメージの世間への影響について言及し、自分は「青春の殺人者」ではないという訴え方をしたようです。
この「青春の殺人者」については、個人的にはやはりどろっとした感じで馴染みにくさがありましたが、今また観ると、長谷川和彦監の演出はいかにも70年代という感じで、むしろノスタルジー効果を醸し、主人公である息子が父親を殺したことを知って、どうやっ
て死体を隠そうかオタオタするうちに、それを見かねた主人公に殺されてしまう母親役(映画では近親相姦的に描かれている)の市原悦子(1936-2019/享年82)の演技が秀逸、そもそも出ている役者がそう多くはないけれど、主役の若い2人を除いて、脇は皆上手い人ばかりだったなあと。水谷豊には「
長谷川和彦監督(当時30歳)は、この監督デビュー作で'76年の「キネマ旬報ベスト・テン」日本映画ベスト・ワンに輝いていますが、そもそもピンク映画のようなものも含めたシナリオ書きだった彼のところへ、自身の監督作を撮らないかと持ちかけたのはATGの方で、最初はそんなお堅い映画は撮れませんと断ったところを、好きに撮っていいからとプロデューサーに口説かれて撮ったのがこの作品だったとか。
「青春の殺人者」●制作年:1976年●監督:長谷川和彦●製作:今村昌平/大塚和●脚本:田村孟●撮影:鈴木達夫●音楽:ゴダイゴ●原作:中上健次●時間:132分●出演:水谷豊/内田良平/市原悦子/原田美枝子/白川和子/江藤潤/桃井かおり/地井武男/高山千草/三戸部スエ●公開:1976/10●配給:ATG(評価:★★★☆) 






また、番組のエンディングテーマ「レオのうた」の作曲者は、後にシンセサイザー音楽作家として名を馳せる冨田勲(1932-2016)で、弘田三枝子(1947-2020)のパンチの効いた歌唱力により、アニメのエンディングテーマとしては人々の記憶に最も残るものの1つとなりました。弘田三枝子は、伊東ゆかりらと同様、少女時代から米軍キャンプで唄っていた経歴の持ち主で、このテーマを唄っている頃の彼女はややふっくら体型でしたが、自分で作ったカロリーブックをもとに、1日の食事を2000キロカロリー以内に抑えて半年間で17キロのダイエットに成功、1969年に「人形の家」がブレイクして第11回日本レコード大賞の歌唱賞を受賞し、1970年には『ミコのカロリーBOOK』を出版し150万部を超えるベストセラーになりました。
「ジャングル大帝」は、本書の手塚治虫自身の談によれば視聴率40%を超えたとのことで、その翌年に映画化され、主人公のレオが大人になってからの物語「新ジャングル大帝 進めレオ!」も引き続きテレビ放映されました。




「ジャングル大帝」(劇場版)●制作年:1966年●監督:山本暎一●脚本:辻真先●音楽:冨田勲●原作:手塚治虫●時間:75分●声の出演:太田淑子/明石一/勝田久/松尾佳子/田村錦人/緑川稔●公開:1966/07●配給:東宝(評価:★★★★)









清水 勲(1939-2021)



そして、それ以前
の「変身するヒロイン」の系譜として、著者が造詣の深い女剣劇のスターに着目し、こちらは松山容子(60年代は「琴姫七変化」のイメージが強いが、70年代は"ボンカレー"のCMのイメージか...。今でも「元祖ボンカレー」という商品にそのキャラクターが使われている)、更には志穂美悦子などへと連なっていくとのこと。著者によれば、こうしたヒロインが愛されるのは、「日本人は性の垣根が低く、人間でないものとの境界もないに等しい」という背景があり、それが手塚作品の特異なヒロイン像にも繋がっているとしています。
尚、本書第1章で解説されいる手塚治虫以前のマンガの歴史は、本書にも名前の挙がっている漫画研究家・清水勲氏(帝京平成大学教授)の『四コマ漫画―北斎から「萌え」まで』('09年/岩波新書)に四コマ漫画の歴史が詳しく書かれています。清水氏の『四コマ漫画』によると、手塚治虫のメディア(新聞)デビューも、新聞の四コマ漫画であったことがわかります。

「バンパイヤ」●演出:山田健/菊地靖守●制作:疋島孝雄/西村幹雄●脚本:山浦弘靖/辻真先/藤波敏郎/久谷新/安藤豊弘/雪室俊一/中西隆三/宮下教雄/今村文人/三芳加也/石郷岡豪●音楽:司一郎/林光●原作:手塚治虫●出演:水谷豊/佐藤博/渡辺文雄/戸浦六
宏/山本善朗/左ト全/上田吉二郎/岩下浩/平松淑美/鳳里砂/嘉手納清美/桐生かおる/市川ふさえ/館敬介/中原茂男/原泉/日高ゆりえ/本間文子/手塚治虫●放映:1968/10~1969/03(全26回)●放送局:フジテレビ

井譲二/手
塚茂夫/花村菊江/乗松ひろみ(扇ひろ子)/朝倉彩子●放映:1960/12~1962/12(全105回)●放送局:読売テレビ
「ボンカレー」(1984)(沖縄限定) 
伊勢丹とか資生堂の広告コピーは、一時この人の独壇場だったなあ。竹内まりやのデビューシングルにもなった伊勢丹の「戻っておいで・私の時間」(1978年11月25日にRCA(現:ソニー・ミュージックレーベルズ)より発売 )、アリスの堀内孝雄によりヒットした資生堂の「君のひとみは10000ボルト」(1978年8月5日に堀内孝雄がソロとしてリリース)など、CMソングがヒットチャートの上位を占める現象のハシリもこの人の作品でした。
"ひらめき"と"思いつき"はやはり違うわけで、本書によれば、「唐突に、頭の中の風にやってくるものは、浜べに打ち寄せられる、あの、とりとめのない浮遊物と同じであって、すべては単なる思いつきのたぐいにすぎないのだ」と。
「ひらめきだって結局は頭の中に、ぱっとやってくることは、やってくるのだ。ただ、その現われたものが、ほかの浮遊物とちがうところは、それの到着をこちら側で待ちのぞんでいたものがやってくる、という、このところでありますね。ひらめきとは、じつに、『待っていた人』なのである」とのこと。何となく分る気がします。




雑誌に連載され、水川淳三監督、乙羽信子主演による映画「おかあさんのばか」('64年/松竹)にもなり(個人的には小学校の課外授業で観たのだが、DVD化されておらずその後観る機会がないため、評価はやや曖昧)、彼女の詩をもとにした「おかあさんのばか」という合唱曲まで出来ましたが、写真集としては、'65年に英語版("Why, Mother, Why?")で海外で刊行されました。映画では、彼女の母親が水泳大会
で泳ぎ切ったあと脳出血で倒れて亡くなる前の、成長期の娘と母親のふれあいが描かれているのに対し、40年を経て刊行されたこの写真集は、母親の死後1ヵ月、家族にぽっかり「大きな穴」があいたところから始まります。
幸さんの詩も、最初は亡き母へ怒りにも似た想い、そして生活をしなければという現実感、さらに父親や世間への眼差しと、少しずつ変化していますが、個人的には、教師をしている父親(所々で短い本人コメントが入っている)の娘へのこころ遣いがすごく感じられ、それは写真そのもからのものでもありました。写真家が娘を撮っているのに、それが時として父親の眼になっていて、今は故人となった父の娘への想いが伝わってくるのを感じました(一番感じているのは、今は結婚して子供もいるという幸さんだろう)。
写真家・細江英公(ほそえ えいこう)2024年9月16日、左副腎腫瘍のため東京都の病院で死去。91歳。三島由紀夫を撮った1963年刊行の写真集「薔薇刑」などで知られた。


ます。写真作品が明治生命(現在の明治安田生命)のコマーシャルに採用されたのが出版の契機となり、'04年には松田聖子、船越栄一郎主演でドラマ化(単発)されました(ドラマ平均視聴率 30.1%)。
「おかあさんのばか」●制作年:1964年●監督:水川淳三●製作:樋口清●脚本:水川淳三/南豊太郎●撮影:堂脇博●音楽:真鍋理一郎●時間:87分●出演:下絛正巳/乙羽信子/深堀義一/加納
美栄子/高野真二/加代キミ子/織賀邦江/榊ひろみ/長門勇/中村雅子/城戸卓/藤本三重子/朝海日出男/秩父晴子/中新井俊介/林家珍平●公開:1964/06●配給:松竹(評価:★★★☆) 



新潮文庫 映画タイアップカバー(2009年映画化)
花火大会の夜、長峰は一人娘の絵摩の帰りを待っていた。同じ頃、中井誠はアツヤとカイジの命令で父の車を運転していたが、浴衣姿で独り歩いている娘に目をつけた2人は、娘にクロロホルムを嗅がせて車に引き摺り込む。中井は、車を返せという父からの電話で自宅へ帰る。数日後、長峰の元に刑事が来て荒川に浮かんでいた死体を確認してくれと言われ、それは娘の無惨な姿だった。悶絶する長峰の元に、「絵摩さんはトモザキアツヤとスガノカイジの2人に殺されました」という密告電話が入り、アツヤの住所と合鍵の場所も教える。長峰はそのマンションに向かい、部屋に忍び込みアツヤにレイプされた絵摩の映像を見つける。絵摩はレイプ後、覚醒剤の大量摂取で死んだのだ。長峰は、マンションに帰ってきたアツヤを近くにあった包丁で泣きながら何度も刺し、彼の死に際に、相棒のカイジが長野のペンションに逃げていると聞き出すと、今度はカイジの行方を追うために長野に向かう。自分が逮捕されることを厭わない長峰は、警察に思いの丈をぶつけた手紙を送り、それはニュースでも報道され、世間と警察を大きく揺るがすことになった―。

因みに映画「ロサンゼルス」の方は、犯人が次々とブロンソンおやじに殺されていきますが、1人だけは警察によって逮捕され精神鑑定で無罪になります。しかしブロンソンは諦めず、医者に化けて精神病院に潜入し、最後の1人を射殺するというものでした(カタルシス重視でいくならば、ここまでやっちゃっていいのかも)。同じ「復讐に憑かれた男」でも、肉食動物と草食動物ぐらい違いますが、途中で警官が犯人に殺られて、死に際にブロンソンに「必ずお前が奴を殺れ」みたいなことを言っており、ここが『さまよう刃』と一番違う点だったかも知れません(強いて言えば、密告電話の主がこれに近いか。映画自体は、冒頭の娘が殺される場面があまりに残虐で、評価△)。
この映画「ロサンゼルス」('81年、原題:Death Wish Ⅱ)は「狼よさらば」('74年、原題:Death Wish)の続編にあたり、前作でもブロンソン演じる主人公の平凡な開発技師ポール・カージーは、妻を殺害され、娘を凌辱されたことで、犯罪者を見つけ次第自らの手で処刑する「一人自警団」に変貌しています。この主人公が愛する家族をチンピラに殺されたことをきっかけに、街をうろつくダニどもを容赦なく射殺する死刑執行人となったという"デス・ウィッシュ"シリーズは、その後「スーパー・マグナム」('85年、原題:Death Wish Ⅲ)、「バトルガンM-16」('87年、原題:Death Wish Ⅳ: The Crackdown)、「DEATHWISH/キング・オブ・リベンジ」('93年、原題:DEATH WISH V: THE FACE OF DEATH)と第5作まで作られ、ブロンソン=ポール・カージーのダニ射殺数は計100を超えており、チャールズ・ブロンソンの総劇中「"殺し"数の25%を稼ぐ」と言われる代表作となっています。
チャールズ・ブロンソン(Charles Bronson、1921‐2003/享年81)はリトアニア系移民の子として生まれ、タタール人の
血をひく俳優であり(確かにアジア系っぽい感じも少しある)、家庭は貧しくて、少年の頃から炭鉱夫として働いていたこともある苦労人でした。
画監督として活躍している
CMだっとのこと。CM並びに商品のヒットにより、「丹頂」という社名だった化粧品会社(代表的商品に「丹頂チック」があり、今もレトロ商品として販売されている)が、自社名を一商品名にすぎなかった「マンダム」に改めた(1972年)という経緯もありました。
「ロサンゼルス」●原題:DEATH WISH 2●制作年:1981年●制作国:アメリカ●監督:マイケル・ウィナー●製作:メナハム・ゴーラン/ヨーラン・グローバス●脚本:デヴィッド・エンゲルバック/マイケル・ウィナー●撮影:リチャード・H・クライン●音楽:
ジミ-・ペイジ●時間:92分●出演:チャールズ・ブロンソン/ジル・アイランド/ビンセント・ガーディア/マイケル・プリンス/ベン・フランク/ロビン・シャーウッド/アンソニー・フランシオサ/J・D・キャノン/ケヴィン・メイジャー・ハワード/




Those Who Know How To Appreciate It,1980)。
「ギネス・ブック」の客観的・量的ベストに対し、本書は主観的・質的ベストを追求していて、「絵画のベスト」とか「病院のベスト」などマトモなものから、「死体を強奪する方法のべスト」「上流階級に仲間入りできる場所のベスト」といったものまで何でもありなのが楽しいです。

芸術関連もヨーロッパ中心に「ベスト」が選出されている傾向はありますが、その中で「挿絵画家のベスト」に「北斎」が、「フラッシュバック映画のベスト」に「羅生門」が選ばれています(「日本の小説のベスト」には谷崎潤一郎の『瘋癲老人日記』が選ばれているが、「古今東西の小説のベスト」にはジェイムス・ジョイスの『ユリシーズ』が選ばれている)。
三浦雄一郎がエベレスト滑降に挑んだのは'70年5月6日で、「エベレスト大滑降」('70年/松竹)という記録映画になりましたが(昔、学校の課外授業で観た)、これを観ると、当初エベレスト8000メートルのサウスコルから(そもそもここまで来るのが大変。シェルパ6名が遭難死している)3000メートルを滑走する予定だったのが、2000メートルぐらい滑って転倒したままアイスバーンに突入(何せスタートから5秒で時速150キロに達したという)、パラシュートの抑止力が効かないまま150メートルほど滑落し、露岩に激突して止まっています。
3000メートル滑るところを2000メートルで転倒してこれを「成功」と言えるかどうか分かりませんが、標高6000メートルの急斜面でアイスバーンに突っ込んで転倒して更に露岩にぶつかって死ななかったのは「奇跡」とも言えます。この「エベレスト大滑降」を再編集した英語版作品"The Man Who Skied Down Everest"('75年/石原プロ・米→カナダ)は、カナダの映画会社が石原プロから版権を買い取り台本・音楽等を再編
したもので、'75年に米ア
一方、渡辺長武の「186戦無敗」はギネスブックにも掲載されたことがあり(ウィキペディアでは189戦189勝となっている)、無敗記録としてみれば、後に柔道において、山下泰裕の「203戦無敗」という記録が生まれますが、山
下泰裕の「203戦無敗」には7つの引き分けが含まれているため、渡辺長武の記録はそれ以上に価値があるかもしれません。世界選手権を連覇し('62年・'63年)、東京オリンピック('64年)でも金メダルを獲得しています(後に、女子レスリングで吉田沙保里の、2016年のリオ五輪決勝で敗れるまでの206連勝、オリンピック・世界選手権16連覇という記録が生まれることになるが)。
その渡辺長武は『アニマル1』(アニマルワン)というレスリング・アニメのモデルになりました(原作は「川崎のぼる」のコミック)。アニメ主題歌を、一昨年('04年)亡くなった朱里エイコが歌っていましたが、歌唱力のある人でした。「あの鐘を鳴らすのはあなた」を歌うと、このヒトがイチバン、相良直美が2番か3番、和田アキ子はそれらより落ちるという感じでした(個人的には)。
「エベレスト大滑降」●制作年:1970年●監督:銭谷功●製作:中井景/銭谷功●撮影:金宇満司●音楽:
