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ミュージカルの映画化だが原作に近いテイストも。怪人がイケメン過ぎる?

オペラ座の怪人 2004 dvd.jpg オペラ座の怪人 2004 01.jpg オペラ座の怪人 2004 02.jpg
オペラ座の怪人 通常版 [DVD]」 ジェラルド・バトラー/エミー・ロッサム

オペラ座の怪人 2004s.jpg 1870年、パリ・オペラ座。「ファウスト」の上演を控える中、劇場への不満を抱えるスター歌手のカルロッタ(ミニー・ドライヴァー)が主役を降板する。スターのドタキャンに関係者全員が浮き足立つ中、急遽、若き歌姫クリスティーヌ・ダーエ(エミー・ロッサム)がその代役を射止めるが、稀代の美声を披露したクリスティーヌは関係者の不安も一掃し、一躍スターの座に上り詰める。そんな中、劇場のパトロンで幼馴染の美青年の子爵ラウル(パトリック・ウィルソン)との再会に心を弾ませるクリスティーヌだったが、実は彼女の成功にはある秘密が隠されていたのだった―。

オペラ座の怪人5.jpg フランスの作家ガストン・ルルーによって1909年に発表された『オペラ座の怪人』の9回目の映画化作品で(ブライアン・デ・パルマ監督の「ファントム・オブ・パラダイス」('74年/米)など"翻案映画化作品を除く)、アンドリュー・ロイド・ウェバー版のミュージカルをベースにした作品であり、ミュージカルの映画化と言った方が正しいのかもしれません(アンドリュー・ロイド・ウェバーはこの映画の製作者でもあり、音楽も担当、更に脚本にも参加している)。

オペラ座の怪人 ブロードウェイ.jpg ブロードウェイ・ミュージカルの方は1988年初演で、個人的には1995年に観ましたが(野茂秀雄が大リーグに移籍した年だった)、当時で、「キャッツ」(14年目)、「レ・ミゼラブル」(9年目)に次ぐ8年目というロングランで、一方で、シガニー・ウィーバー主演のミュージカルが客の不入りで2週間で打ち切られるような出来事もあって、やはり厳しい舞台の世界の中でのロングランというのはスゴイことなのだなあと実感した記憶があります。結局、「オペラ座の怪人」の舞台は、「キャッツ」「レ・ミゼラブル」を抜いて今も続いており(今年['16年]で19年目)、ブロードウェイ・ミュージカルのロングラン記録を更新中。追いかける「シカゴ」(1996年初演)、「ライオン・キング」(1997年初演)を大きく引き離しているため、当分はこれを抜くロングランは出てこないでしょう。

オペラ座の怪人 2004 08.jpg 映画の方は、モノクロの現在(1919年)において、パリ・オペラ座で1870年に起こった惨事の遺品オークションが開かれ、当時の支援者であったラウル子爵とバレエ教師のマダム・ジリーがペルシャの衣装を纏ったサルのオルゴールを競った後、競りは昔に天井から落下して大参事を引き起こしたシャンデリアへと移り、道具方がシャンデリアを天井へ吊り上げると、子爵の記憶の中で、シャンデリアが劇場の天井に燦然と輝き、当時の記憶が甦っていくという流れでカラーの物語当時(1870年)に移っていき、多くの踊子たちが今まさに舞台稽古をする活気ある劇場の場面になるという、このモノクロからカラーに切り替わって、風化した劇場がみるみる当時の輝きを取り戻してく場面は圧巻でした。

iオペラ座の怪人 2004 09.jpg アンドリュー・ロイド・ウェバーは舞台ミュージカル「オペラ座の怪人」の作曲家であり製作者でもあって(2006年に「オペラ座の怪人」に抜かれるまでのロングラン記録を持っていた「キャッツ」も彼が手がけた)、原作をミュージカルにする際に、それまでのホラー映画的な脚本をラブロマンスに改変したことで知られています。従って、「ミュージカルの映画化」であるこの作品も、殆どロマンチック映画と言ってもよい作品なっているのと、あと、映画化される度に、怪人(ファントム)が美男子になっていく傾向にあり、この作品の怪人(ジェラルド・バトラー)で頂点に達した印象もあります。

オペラ座の怪人 2004 05.jpg 但し、クリスティーヌとラウルの素性や馴れ初めといった背景は原作から変わっておらず、映画でも原作の雰囲気を保っています。ミュージカルの映画化でありながら、原作のテイストも保っている映画化作品と言えるでしょう。原作と異なるのは、怪人の過去を知るペルシャ人のダロガ(実は元秘密警察署長で、原作では後半の主役的存在)を登場させず、マダム・ジリー(ミランダ・リチャードソン)にその役割を吸収させていることで、これは、アンドリュー・ロイド・ウェバーによってミュージカル化された際のオペラ座の怪人 2004es.jpg改変ですが、怪人、クリスティーヌ、ラウルの3者の関係を際立たせるために、ややアクのあるダロガを省いたのでしょう。マダム・ジリーが怪人の過去を知っていて(かつて怪人を匿ったのもマダム・ジリーになっている。原作ではダロガが怪人の全てを知っていて、ペルシャで彼を救ったのもダロガ)、マダム・ジリーはラウルを怪人の隠れ家の手前まで導きますが、あとは、ラウルにこの先は自分一人でお行きなさいという感じでした(原作では、ダロガはクリスティーヌを救い出そうとするラウルに最後まで付き合い、ラウルと一緒に散々危険な目に遭う)。

 そしてラストでモノクロ(1919年)に戻って、1917年に61歳で他界したクリスティーヌの墓を怪人が訪れた事を示唆するカットで終わります(ダロガの役割を兼ねたマダム・ジリーが語り部的位置づけであることも、ダロガが語り部的位置づけにある原作を一部踏襲していることなる)。

オペラ座の怪人 2004 light.jpg 大掛かりな仕掛けもあって映像的には楽しませてくれますが(落下するシャンデリアはスワロフスキー社の製作費1億2千万円のガラス製で、"一発撮り"だった)、やはり、怪人を演じたジェラルド・バトラーのイケメンぶりが一番目立っていました。マスクを外してもあまり醜い感じがしませんでしたが(原作では唇の跡も残っていないことになっている)、終盤のクリスティーヌが怪人にキスをするシーンに観客を感情移入させるにはやむを得ないのでしょうか。そのキスが、怪人が無駄な抵抗や殺戮を止める契機となるわけだし(但し、原作では怪人は連続殺人を犯すのに対し、映画ではカルロッタの恋人の歌手が唯一の犠牲者だったのでは)。

オペラ座の怪人 2004 03.jpg クリスティーヌを演じたエミー・ロッサムの歌唱は良かったように思います。他の歌唱部分もそれぞれの役者が吹き替え無しで歌っています(カルロッタ役のミニー・ドライヴァーのみ吹き替えであったが、ドライヴァーも歌唱力を生かしてエンディング・テーマを歌った)。ただ、歌とセリフが重なってしまっている部分もあって、そのことに対する否定的評価もあったようです。これは、この作品に限らずミュージカル映画の場合、歌の部分を先に収録して、それに合わせて後で演じる姿を撮る手法が一般的であるため、そうしたことが起きることがあるようですが、最近では「レ・ミゼラブル」('12年/英)のように、撮影時にピアニストを常駐させて仮の伴奏をする中で、俳優たちがその場で歌い、演技をするという手法なども用いられているようです(これなら歌とセリフが重なることはない)。

オペラ座の怪人 bw.jpg 因みに、ブロードウェイでミュージカルを観る時はきちんとした服装で観るようにと人から言われていましたが、90年代当時からバミューダ・パンツなどラフな格好で来ているニューヨーカーは多かったです。但し、カーテンコールで正装の客もラフな格好の客も全員が立ち上がって「ブラボー」と叫びながら拍手する様は圧巻でした。そうした幕が降りた後の盛り上がりは映画館では体感できませんが、映画としては充分に愉しめます。本来は悲劇なのだけど、「レ・ミゼラブル」のように泣けるという感じにはならない作品、ストーリーよりもパッションを堪能する作品でしょうか。

オペラ座の怪人 2004 tx.jpg「オペラ座の怪人」●原題:THE PHANTOM OF THE OPERA●制作年:2004年●制作国:アメリカ●監督:ジョエル・シュマッカー●製作:アンドルー・ロイド・ウェバー●脚本:ジョエル・シューマカー/アンドリュー・ロイド・ウェバー●撮影:ジョン・マシソン●音楽:アンドルー・ロイド・ウェバー●原作:ガストン・ルルー●時間:143分●出演:ジェラルド・バトラー/エミー・ロッサム/パトリック・ウィルソン/ミランダ・リチャードソン/ミニー・ドライヴァー/キーラン・ハインズ/サイモン・キャロウ●日本公開:2005/01●配給:ギャガ・コミュニケーションズ●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(15-09-01)(評価:★★★★)

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1925年に作られた映画とは思えないくらい今風なスぺクタルシーンを見せてくれる。

オペラ座の怪人 1925 dvd1.jpg オペラ座の怪人 1925 dvd2.jpg オペラ座の怪人 1925 vhs.jpg オペラ座の怪人 1925 02.jpg
IVC BEST SELECTION オペラ座の怪人 [DVD]」['13年]/「オペラ座の怪人 【サイレント】 [DVD] FRT-302」['08年]/「オペラ座の怪人【字幕版】(淀川長治 名作映画ベスト&ベスト) [VHS]」['98年] Lon Chaney

オペラ座の怪人 1925 0.jpg 1880年、パリ・オペラ座には恐ろしい幽霊が現われるという評判が立ち、舞姫や道具方らは恐怖に見舞われる。折しも道具方の一人が縊死し、これも幽霊の仕業だと益々人々は恐れる。オペラ座の支配人引退興行の夜、プリマドンナのカルロッタ(ヴァージニア・ペアソン)が突然の病気のため、無名の歌手クリスティーヌ・ダーエ(メアリー・フィルビン)が「ファウスト」のマルグリットを演じて大成功を博す。子爵ラウル(ノーマオペラ座の怪人 1925 181.jpgン・ケリー)は彼女に思いを寄せ、彼女の仕度部屋を訪れると部屋の中には何者とも知れぬ男の声がし、クリスティーヌの哀訴の声が聞えたため、ラウルは嫉妬する。新しい支配人は幽霊などいないと冷笑し、怪人の警告を無視してカルロッタを舞台に立たせると、天井に吊したシャンデリアが墜ちて多くの人々が死傷する。クリスティーヌは愛するラウルに、怪人というのはオペラ座の地下の湖に棲むエリック(ロン・チェイニー)であることを告げる。ある晩の開演中、エリックはクリスティーヌを連れ去る。ペルシャ人レドー(アーサー・エドモンド・カリュー)を案内としてラウルは愛人を助けに地下湖へ向かう―。

オペラ座の怪人 1925 01.jpg フランスの作家ガストン・ルルーによって1909年に発表された『オペラ座の怪人』の、2004年までに9回映画化されたうちの2回目の映画化作品で、「ノートルダムのせむし男」('23年)などでも知られ「千の顔を持つ男(MAN OF A THOUSAND FACES)」と称されたロン・チェイニー(1888-1930)が"怪人"を演じています。"怪人"エリックが音楽と奇術に明るい、脱獄した猟奇犯罪者に設定が変更されていますが(ビデオジャケット(旧版)には、解雇された元オペラ座の楽団員とある)、全体としては原作に比較的忠実な映画化作品とされています。

オペラ座の怪人 1925 178.jpg 原作がアンドリュー・ロイド・ウェバーによってミュージカル化(1986年10月のロンドンが初演)された際に、ホラー調のストーリーがラブ・ロマンス風に改変されていますが、原作でも一応クリスティーヌは最後は怪人に対して真心で接します。しかし、この映画化作品では、クリスティーヌが一瞬は怪人に寄り添うかのように見えた場面もあったものの、結局彼女にとって怪人はあくまでも「怪人」であり、その分、怪人の方はストーカー的存在に終始しています。

オペラ座の怪人1925    .jpg 原作のペルシャ人の元秘密警察ダロガは、該当する人物(レドー)は登場しますが、過去にエリックとの間であった経緯は描かれておらず、そもそも出て来るなり何だか怪しげです。しかし、ラウルがエリックに連れ去られたクリスティーヌを奪回しようとするに際しては、積極的にラウルをエリックの隠れ家である地下湖に導き、その結果、ラウルと共に散々危険な目に遭います。一方、2004年版の映画や劇団四季版などでダロガの役割まで併せて担わせている元バレイ教師、現案内係りのマダム・ジリは登場しません。

オペラ座の怪人 ブロードウェイ .jpgオペラ座の怪人 1925 03.jpg オペラ座のセットが大掛かりで、仮面舞踏会のシーンなどは圧巻、しかも、この部分はカラーです。登場する怪人はドクロの仮面を被っていますが、これはブロードウェイ・ミュージオペラ座の怪人 1925 04.jpgカル(上右)でも同じです。シャンデリアがオペラ座の怪人G.jpg墜ちるシーンも、ジョエル・シュマッカー監督の2004年版みたいにスローモーションではなく、ドスンと墜ちる分、リアリティがありました。警告を無視してカルロッタを舞台に立たせたことへの怪人の〈報復〉としてシャンデリアが墜ちるという、後に引き継がれていく解釈は、この映画が最初のようです。更に、地下湖のセットもこれまた大掛かりで、怪人エリックとラウル、レドーの攻防を、熱責めあり、水責めありで、これでもかこれでもかというぐらいアクション映画風に描いていて、かなり愉しめます。

iオペラ座の怪人1925K7.jpg 怪人エリックは奇術師の才能も持ち合わせている訳ですが、奇術師というより地下に秘密基地を築いたマッド・サイエンティストといった感じでしょうか。クリスティーヌとの婚礼を迫り、小箱の中にあるバッタとサソリの細工を見せてクリスティーヌに選択を求めるのも原作と同じ。バッタを回せばノー、サソリを回せばイエスのサインであると説明をしますが、バッタを選ぶとオペラ座の地下の火薬庫を爆発させるいうことです。クリスティーヌがやむなくサソリを選ぶと、地下に閉じ込められたラウル、レドーが水没の危機に晒されるという展開で、先にも述べた通り、1925年に作られた映画とは思えないくらい今風なスぺクタルシーンを見せてくれます。
     
オペラ座の怪人009.jpgロン・チェニー.jpg とにかく、ロン・チェイニーの怪人のメイクの異様さが際立っていて、原作もミュージカルも、ジョエル・シュマッカー版をはじめとする近年の映画化作品も、顔の一部のみをマスクで覆っているのに対し、ここではほぼフルフェイスのマスクを被っており、それを外オペラ座の怪人1925 2.jpgすと顔全体が凄いことになっています(さっきまで一部覗いていたかのように見えた目までメイクが変化している)。

 原作のホラーなテイストを継承しているとも言えるし、ある意味、ロン・チェイニーという怪優を介して、おぞましさをより強調している印象も受けました。ただ、強調され過ぎて、やや漫画的になっている印象も受けなくはありませんでしたが、その分、逆に同情を誘う効果も狙ったのでしょうか。群衆に集団リンチされ、川に投げ込まれるというこの映画オリジナルのラストと考え合わせると、これはこれで、エリックを"悲劇的人物"として描いた作品であるようにも思えました。

The-Phantom-of-the-Opera-6400_5.jpg この作品、VHSはパートカラーだったのに、最初に出たDVDは廉価版だったせいか全編モノクロになっています(その後出たDVDはパートカラーに)。とりわけパートカラーの部分は出来るだけ綺麗な映像で観たいところですが、アメリカではBlu-ray Discが発売されているものの、日本ではまだのようです。

「オペラ座の怪人」●原題:THE PHANTOM OF THE OPERA●制作iオペラ座の怪人1925X.jpg年:1925年●制作国:アメリカ●監督:ルパート・ジュリアン●製作:カール・レムリ●脚本:エリオット・J・クローソン/レイモンド・L・シュロック●原作:ガストン・ルルー●時間:(最長版)107分・(短縮版)75分●出演:ロン・チェイニー(エリック)/メアリー・フィルビン(クリスティーヌ)/ノーマン・ケリー(ラウル)/ヴァージニア・ペアソン(カルロッタ)/アーサー・エドモンド・カリュー(レドー)●日本公開:1925/09●配給:ユニバーサル・ピクチャーズ(評価:★★★★)

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最初観た時はこんなのアリ?という気もしたが、観る度に良いと思えるように。意外と深いかも。

華麗なる賭け.jpg華麗なる賭けdvd.jpg 華麗なる賭け 00.jpg  
華麗なる賭け [DVD]

華麗なる賭け 01.jpg華麗なる賭け 03.jpg ハンサムで裕福な実業家でありながら、実は裏の顔を持つクラウン(スティーヴ・マックィーン)。彼は、満ち足りた生活では得られないスリルを求めて銀行強盗を計画、ボストンの自社ビル前の銀行を5人の男に襲わせて見事に成功、260万ドルの現金を手中にする。事件後、ボストン市警も手がかりを掴めずお手上げとなる中、マローン警部補(ポール・バーク)とともに捜査していた銀行の保険会社華麗なる賭け 07.jpgの調査員ビッキー・アンダーソン(フェイ・ダナウェイ)はクラウンに目をつけ、彼が黒幕であることを確信する。彼女は正体を暴こうとクラウンに近づくが、徐々に彼の大胆不敵な姿に心惹かれてしまう。こうして2人のスリリングで奇妙な関係が始まる―。

華麗なる賭け_V1_.jpgTHE THOMAS CROWN AFFAIR.jpg 監督のノーマン・ジュイソンは前作「夜の大捜査線」('67年)でアカデミー作品賞を受賞、主演のスティーヴ・マックイーンも前作「砲艦サンパブロ」('66年)でアカデミー主演男優賞候補にノミネート、フェイ・ダナウェイも前年「俺たちに明日はない」('67年)でやはりアカデミー主演女優賞にノミネートされているなど、当時脂が乗り切っていたメンバー構成。但し、クラウン役はショーン・コネリーにオファーされたのが、彼がそれを断ったためにスティーヴ・マックイーンに回ってきたものだったとか。

華麗なる賭け   マックィーン.jpg華麗なる賭け 04.jpg 世界的に有名な大実業家が、何の苦労もないのにただスリルだけのために銀行襲撃を指揮し、しかも捕まらないという贅沢極まりないお話で、最初観た時はこんなのアリ?という気もしましたが、スティーヴ・マックィーンが亡くなってからテレビで観て、これ、スティーヴ・マックィーンのファンには彼のカッコよさを堪能するには格好の作品だなあと(撮影前は「スーツを着たマックィーンなんて見たくない」との声もあったというが、公開後にはそうした声は殆ど聞かれなくなったという)。また、ラブストーリーとしても楽しめる作品ではないかと思うようになりました。
   
華麗なる賭け チェス.jpg華麗なる賭け 05.jpg 最近劇場で改めて観直して、導入部のマルチスクリーンもいいし、フェイ・ダナウェイもいいし(色香際立つチェス・シーン!)、「シェルブールの雨傘」('64年)の華麗なる賭け 06.jpgミシェル・ルグランによる音楽もいいなあと(テーマ曲「風のささやき」(唄: ノエル・ハリソン)はアカデミー主題歌賞受賞)。主人公は、グライダーで優雅に空を翔け、バギーで浜を走らせ、ゴルフをし、ボロをしとスポーティですが、フランスの街並み風のカットがあったりして、何となくヨーロッパ的な感じがしなくもなく、フェイ・ダナウェイのファッションも楽しめて、全体としてはたいへんお洒落な作りになっていると言っていいのではないでしょうか。

華麗なる賭け マっクィーン.jpg華麗なる賭け ダナウェイ.jpg こうしたストレートな娯楽映画が観る度に良いと思えるようになるのは、「目が肥えた」と言うよりも年齢がいったせいかもしれませんが、やはりスティーヴ・マックィーンとフェイ・ダナウェイという2人のスター俳優に支えられている部分は大きいのだろうと思います。ラスト、空を飛ぶスティーヴ・マックィーンと地を行くフェイ・ダナウェイという対比で捉えると、男と女の生き方の違いを描いた映画とも言えるかもしれません。意外と深いかも...。1999年には、この作品を愛するピアース・ブロスナンの製作・主演で同名(邦題は「トーマス・クラウン・アフェアー」)のリメイク版も制作されていて、フェイ・ダナウェイも客演していますが、ラストを少し変えていたように思います(終わり方としてはオリジナルの方がいい)。

 スティーヴ・マックィーンはこの年はピーター・イェーツ監督の「ブリット」('68年/米)にも出演していて、大スター・マックィーンがそのカッコよさを極めた年だったなあと思います。
The Thomas Crown Affair(1968)
The Windmills Of Your Mind(風のささやき)- Michel Legrand ミシェル・ルグラン
Karei naru kake (1968)
Karei naru kake (1968).jpg
華麗なる賭け 02.jpg華麗なる賭け ダナウェイ2.jpg華麗なる賭けAL_.jpg「華麗なる賭け」●原題:THE THOMAS CROWN AFFAIR●制作年:1968年●制作国:アメリカ●監督:ノーマン・ジュイソン●製作:ノーマン・ジュイソン●脚本:アラン・R・トラストマン●撮影:ハスケル・ウェクスラー●音楽:ミシェル・ルグラン●時間:102分●出演:スティーヴ・マックィーン/フェイ・ダナウェイポール・バーク/ジャック・ウェストン/ヤフェット・コットー/トッド・マーティン/サム・メルビル/アディソン・ポウエル●日本公開:1968/06●配給:ユナイテッド・アーチス●最初に観た場所:池袋・文芸坐(80-07-16)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ(15-03-24)(評価:★★★★☆)●併映(1回目):「ブリット」(ピーター・イェイツ)

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マックイーンのチャレンジ度は高い。演技陣が充実しているだけに、ラストがやや惜しい。

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シンシナティ・キッド [DVD]

シンシナティ・キッドa0-s.jpg ニューオーリンズの町に、その世界で30年も君臨するポーカー・プレイヤーの大物"ザ・マン"ことランシー・ハワード(エドワード・G・ロビンソン)がやって来た。自身もポーカーの名手であるシンシナティ・キッドことエリック・ストーナー(スティーブ・マックイーン)は、いつかランシーと手合わせをと考えていた。キッドは早速この社会の長老格シューター(カール・マルデン)にその機会を頼むが、シューターはキッドの自信過剰をたしなめる。かくしてキッドはランシーとの対戦に臨むが―。

 リチャード・ジェサップ原作の小説の映画化作品で1965年公開。監督は、後に「夜の大捜査線」('67年)やこの作品と同じくスティーブ・マックイーン(1930-1980)主演の「華麗なる賭け」('68年)「屋根の上のバイオリン弾き」('71年)や、「ジーザス・クライスト・スーパースター」('73年)、「ローラー・ボール」('75年)を撮ることになるノーマン・ジュイソン(1926年生まれ)です。

シンシナティ・キッド 02.jpg 同じく勝負事を主人公にした作品として、ポール・ニューマン(1925-2008)が英国アカデミー賞主演男優賞を受賞した「ハスラー」('61年)がありますが、、アクターズ・スタジオを経てブロードウェイにデビューしている点で両者は共通するものの、既に「熱いトタン屋根の猫」('58年)など文芸作品にも出ていたポール・ニューマンに比べ、「荒野の七人」('60年)や「大シンシナティ・キッド 03.jpg脱走」('63年)など西部劇やアクション映画への出演がそれまで多かったスティーブ・マックイーンにとっては、ポーカー・ゲームの場面が多くを占めるこの作品へのシンシナティ・キッド1ef-s.jpg出演は、演技力が試される挑戦ではなかったのではないでしょうか。しかも、相手が「キー・ラーゴ」('48年)「十戒」('57年)などで既に名優の名を欲しいままにしていたエドワード・G・ロビンソンですから、チャレンジ度は高かったと言えるのでは(緊張感を醸すため、撮影には本物の紙幣が使われたという)。

シンシナティ・キッド 01.jpg ストーリー展開は、ポール・ニューマン演じる主人公が最初は全然歯が立たなかったベテランの相手を最後に破る「ハスラー」とはちょうど真逆で、スティーブ・マックイーン演じる自信に満ちた若手の主人公が、最後にベテランを追い詰め勝利と栄光を手にするかと思いきや―というもの。これ、封切時に初めて観た人は、スティーブ・マックイーンが演じてきた役柄の全能感のあるイメージもあって、すとーんと落とされたようなギャップがあっただろうなあと思われます。

シンシナティ・キッド 04 (2).jpg エドワード・G・ロビンソンは余裕綽々の名演という感じですが、スティーブ・マックイーンの演技もそれに拮抗すると言っていいのではないでしょうか。キッドを誘惑しようとするシューターの妻メルバを演じたアン・マーグレットも、キッドが自分にはクリスチャン(チューズデイ・ウェルド)という恋人がありながら、ふらっとそっちへ靡いてしまうのが分からなくもないような蠱惑的ムードを醸し、レディ・フィンガーズを演じたジョーン・ブロンデルも名演で、演技が手な下手な人は殆ど出ていなかったような映画のように思えました。

シンシナティ・キッド es.jpg 但し、最後、勝負に敗れ全てを失ったキッドの前に、キッドとメルバの関係を目の当たりにして一旦はキッドの下を去っていたクリスチャンが再び現れるのは、やや甘い結末と言えるでしょうか。一旦すとーんと落としておいて、救ってしまっているので、衝撃緩衝剤みたいになってしまった感じがするなあと思っていたら、これは監督の意向ではなく、スタジオの意向でそうしたシーンが付け加えられたとのことで、ちょっと勿体ない気もします。クリスチャンは安定志向なので、仮にキッドが財政面で彼女に助けてもらうならば、引き換えに勝負師として生きる道は閉ざされるのかなとか、余計な憶測を生む結果にもなっているように思いました(ラストの落ち着きが悪い。子供にも賭けで負けてしまうところで終わっていた方が良かった)。ノーマン・ジュイスン自身も、後に「無用で有害ですらあるセンチメンタルなラストが追加されているのは申し訳ない」と述べているそうです。まだ、当時はそれほど実績が無く、スタジオの意向を聞かざるを得なかったのでしょうが、惜しい気がします。

 エドワード・G・ロビンソンは「キー・ラーゴ」でもカードをやっていたなあ(その時の相手はハンフリー・ボガードだった)。

The Cincinnati Kid (1965).jpgThe Cincinnati Kid (1965) .jpgシンシナティ・キッド poster.pngThe Cincinnati Kid (1965) 「シンシナティ・キッド」●原題:THE CINCINNATI KID●制作年:1965年●制作国:アメリカ●監督:ノーマン・ジュイソン●製作:マーティン・ランソホフ●脚本:リング・ラードナー・ジュニア/テリー・サザーン●撮影:フィリップ・H・ラスロップ●音楽:ラロ・シフリン(主題歌:レイ・チャールズ)●原作:リチャード・ジェサップ●103分●出シンシナティ・キッド s.jpg演:スティーブ・マックイーン/エドワード・G・ロビンソン/アン=マーグレット/カール・マルデン/チューズデイ・ウェルド/チューズデイ・ウェルド/ジョーン・ブロンデル/ジェフ・コーリー/リップ・トーン/ジャック・ウェストン/キャブ・キャロウェイ●日本公開:1965/10●配給:MGM映画(評価:★★★☆)


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独特のセンスとメッセージ性。「大感動」というより「心地よい読後感」といった感じ。

アメリ dvd.jpgアメリ dvd3.jpg アメリ m.jpg アメリ 原作.jpg
アメリ【期間限定スペシャル版】 [DVD]」「アメリ [レンタル落ち]」「AMELIE FROM MONTMARTRE 「アメリ」オリジナル・サウンドトラック」『アメリ

アメリ 4.jpg 神経質で元教師の母親と冷淡な元軍医の父親を持つアメリはあまり構ってもらえず、両親との身体接触は父親による彼女の心臓検査時だけ。いつも父親に触れてもらうのを望んでいたが、稀なことなので心臓が高揚し、心臓に障害があると勘違いした父親は、学校には登校させず周りから子供たちを遠ざけてしまう。その中で母親を事故で亡くし、孤独の中で彼女は想像力の豊かな、しかし周囲と満足なコミュニケーションがとれない不器用な少女になっていく。そのまま成長して22歳となったアメリ(オドレイ・トトゥ)は実家を出てアパートに住み、モンマルトルにある元サーカス団員経営のカフェで働き始める。ある日、偶然に自室から小さな箱を発見し、中に入っていた子供の宝物を持ち主に返そうとした彼女は、探偵の真似事の末に前の住人を探し、箱を持ち主に返して喜ばれたことで、彼女は人を幸せにすることに喜びを見出すようになる―。

アメリ01.jpg 2001年のジャン=ピエール・ジュネ監督作で、原題"Le Fabuleux Destin d'Amélie Poulain"は「アメリ・プーランの素晴らしい運命」の意。フランスではそれなりにヒットしたはずの作品ですが、日本ではゲテモノ映画と間違えられたとの話もあります(イポリト・ベルナールの原作の翻訳刊行は映画公開後)。当時低予算のB級映画を専門としていたアルバトロスによって配給され、渋谷・シネマライズで単館上映され観客約18万人を動員し、シネマライズの歴代ナンバーワン映画興行収入作品となりました。全体興行収入では16億円を突破してアルバトロス初のヒット作品となり、それ以降、同社が再びアート作品を配給するきっかけとなります(この配給会社は1980年代の創業時は、主にヨーロッパやアジアの良質な映画も取り扱っていた)。2001年アカデミー賞外国語映画賞、美術賞、撮影賞、音響賞、脚本賞ノミネート作品です。
アメリ02.jpg
 個性的なセンスと独特のビジュアル、エスプリとユーモアに溢れた作品で(結構ブラックユーモアが多いためゲテモノ映画と間違えられたのか?)、こんなの今まで見たことないという感じでした。敢えて言えば、駅のスピード証明写真機のボックスに定期的に現れる男は一体何者かといったミステリ風味を効かせている点で、ジャン=ジャック・ベネックスの「ディーバ」('81年/仏)を想起しましたが、やはり作品全体がこの監督のオリジナリティを色濃く反映したものとなっているように思います。

アメリ04.jpg そして何よりもオドレイ・トトゥ演じるアメリがいいです。クレーム・ブリュレの表面をスプーンで割ったり、パリを散歩しサン・マルタン運河で石を投げ水切りをするなど、ささやかな一人遊びと空想にふける毎日を送っていたアメリは、子供時代の宝箱を持主に届けて喜ばれたことで、「この時、初めて世界と調和が取れた気がし」、以降、父親の庭の人形を父親に内緒で世界旅行をさせ父親に旅の楽しさを思い出させるなど、様々な人に関与するようになります。

アメリ03.jpg そうした彼女にも気になる男性が現れ、それはスピード写真のボックス下に捨てられた他人の証明写真を収集する趣味を持つ若者でしたが、気持ちをどう切り出してよいのかわからず、他人を幸せにしてきた彼女も自分が幸せになる方法は見つからない―でも最後は、アパートの同居人で絵描きである老人らに励まされて...。

 観終わってみれば、単に独特のセンスの作品であるということだけでなく、運命は変えられるという強いメッセージ性を含んだ作品であり、コアなファンがいる作品ですが、「大感動」というより「心地よい読後感」といった感じでしょうか(全体にナレーションが多く物語調で話は展開されている)。「世界を旅する人形」の謎と「駅の証明写真機に定期的に現れる男」の正体がそれぞれ解った時は、思わずクスリとさせられました。

アメリ maruti.jpg「アメリ」●原題:TLE FABULEUX DESTIN D'AMELIE POULAIN●制作年:2001年●制作国:フランス●監督:ジャン=ピエール・ジュネ●製作:クロディー・オサール●脚本:ジャン=ピエール・ジュネ/ギヨーム・ローラン●撮影:ブリュノ・デルボネル●音楽:ヤン・ティルセン●原作:イポリト・ベルナール●時間:122分●出演:オドレイ・トトゥ/マチュー・カソヴィッツ/セルジュ・マーリン/ジャメル・ドゥブーズ/ヨランド・モロー/クレア・モーリア/ドミニク・ピノン/クロディルデ・モレ/リュファス/イザベル・ナンティ/アータス・デ・ペンクアン/(ナレーション)アンドレ・デュソリエ●日本公開:2001/11●配給:アルバトロス・フィルム●最初に観た場所(再見):北千住・シネマブルースタジオ(15-03-25)(評価:★★★★)

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ここまで三島の作品と人生を再現していれば立派なもの。

Mishima dvd.jpgMishima dvd  .jpg Mishimages.jpg  三島由紀夫と一九七〇年.jpg
MISHIMA : LIFE IN FOUR CHAPTERS」/緒形 拳/『三島由紀夫と一九七〇年
Mishima - A Life in Four Chapters

MISHIMA:A LIFE IN FOUR CHAPTERS .jpg  三島由紀夫の生涯を四つの章に分け、3つの章でその作品等を通して三島文学を描き、第4章で自決に至るまでを描くことで、三島の文学や生き方、そして死に方を探った作品で、監督と脚本は「タクシードライバー」('76年/米)の脚本のポール・シュレイダー(「晩春」など小津安二郎監督作品の読み解きでも知られる)、製作総指揮はフランシス・フォード・コッポラとジョージ・ルーカス、公開に至らなかった日本版はロイ・シャイダーによる英語ナレーション付き、米国版は緒形拳による日本語ナレーション付きです(1985年度の第38回カンヌ国際映画祭最優秀芸術貢献賞受賞作)。

Mishima 01 Ken Ogata Yukio Mishima.gif 「今現在」を「1970年11月25日」に置いて、三島(緒形拳)が自決した当日の起床からの経過を現在進行形でカラー・ドキュメンタリー風に描き、その「今現在」の時の流れをベースに、三島の幼少期から「楯の会」結成までの半生をモノクロームで描いた「フラッシュバック(回想)」シーンを交える一方、第1章「美(beauty)」で『金閣寺』、第2章「芸術(art)」で『鏡子の家(Kyoko's House)』、第3章「行動(action)」で『奔馬(Runaway Horses)』(『豊饒の海』第2部)の各作品をダMISHIMA1-1.jpgイジェストで映像化しており、最後の第4章「文武両道(harmony of pen and sword)」で、三石岡瑛子 mishima.jpg島が市ヶ谷駐屯地に到着した場面から自決に至るまでを描いています。こうなるとかなり複雑な印象を与石岡瑛子.jpgえますが、回想部分はモノクロで、作品部分は「劇中劇」として極めて演劇的に作られているため(石岡瑛子(1938-2012)が美術担当)、観ていてたいへん分かり易いものとなっています。

Mishima 02 Naoko Otani.gif 冒頭で、三島が母(大谷直子)や祖母(加藤治子)との特異な幼少期を経て、思春期から同性愛的指向を自覚したことなどを紹介、第1章では簡略化された『金閣寺』が劇中劇として描かれ、ドモリでコンプレックスのMishima01 金閣寺.jpg塊のような学生(ある意味、三島のペルソナである)で金閣寺の住職になることを目指して修行する溝口(五代目 坂東八十助=十代目 坂東三津五郎)が、障害者でありながらをそれを逆手にとって高い階級の女を籠絡している柏木(佐藤浩市)と出会い、そのMishima 11 Yasosuke Bando Mizoguchi.gifMishima 12 Koichi Sato.gifMishima01 金閣寺s.jpg手ほどきで女性に接するも臆して何もできなかった後(ここでフラッシュバックで青年期の三島(利重剛)が病弱だったために戦争の徴兵を逃れ得たことなどが描かれる)、今度は老師(笠智衆)から施されたMISHIMA  ryu.jpg金で遊郭で遊女(萬田久子)を抱き、女に「どでかいことをする」と言うが、それは金閣寺を燃やすことだった―といMishima 13 Hisako Manda Mariko.gifうもの(ここで三島が自邸を出て「盾の会」のメンバーと市ヶ谷駐屯地へ向かうため車に乗り込む"現在"のシーンに切り替わり、更に今度は、モノクロで『潮騒』などの作品で作家として高い評価を得た頃の三島を描く)。

Mishima 21 Kenji Sawada Osamu.gifMishima 22 Setsuko Karasuma.gif 第2章では『鏡子の家』を演劇化しており、原作では鏡子というある種"巫女"的な女性を軸に、恵まれた結婚をし将来が嘱望されるエリート会社員・清一郎、拳闘家でボクシングで王座を獲る俊MISHIMA:A LIFE IN FOUR CHAPTERS sachiko hidari.jpg吉、美貌の無名俳優でボディビルで鋼の肉体を得る収、天分豊かな童貞の日本画家で画壇での名声を博す夏雄の4人が登場しますが(それぞれが三島のペルソナと言える)、ここでは収(沢田研二)にフォーカスして、母親(左幸子)や恋人(烏丸せつこ)との関係を描いています(ここでまたモノクロのMISHIMA:4X1.jpgフラッシュバックになり、男とダMISHIMA:A LIFE IN FOUR CHAPTERS kurata.jpgMishima 23 Tadanori Yokoo Natsuo.gifンスし―ダンス相手のモデルは美輪明宏か―同性愛者として美醜にこだわり、ボディビルによって肉体改造に励む三島の姿が描かれる)。次に、ラーメン屋台のような所に収、俊吉(倉田保昭)、夏雄(横尾忠則)がいて芸術談義をしていると思ったら、収は清美(李麗仙)という女社長に会って母親の負債を相殺するためのある種"奴隷契約"を結ばされ(その間、三島のセミヌード写真の撮影模様や出演したMishima kyoko no ie2.jpgMishima kyoko no ie.jpg映画のポスターなどがフラッシュバックで入る)、母親にはいい役がついたと報告し、最後はピンク色の部屋でその清美に自分の肉体をマゾヒスティックに傷つけられている―(ここで市ヶ谷に向かう車中の三島と「盾の会」のメンバーのシーンに切り替わる)。

Mishima 31 Toshiyuki Nagashima Isao.gif 第3章は、『奔馬』の主人公・飯沼勲(永島敏行)を描いた劇中劇で、剣道3段の飯島青年が政界Mishima honmaU.jpgの黒幕を倒すべく陸軍中尉(勝野洋)や同志らとクーデターを謀るという二・二六事件をモチーフにした原作通りMISHIMA:A LIFE IN FOUR CHAPTERS17.jpgの展開で(フラッシュバックで日本刀を振るって剣術に精進する三島が描かれる)、彼が首謀者となって同じ学生仲間らと決行を誓い合いますが(そこでまたフラッシュバックで「盾の会」の結成やその閲兵式の模様が描かれ、更に、'69年の東大全共闘との討論会の様子が描かれる)、事を起こす前に飯島らは逮捕され、飯島は聴取にあたった尋問官(池部良)に拷問してくれとミシマ ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ2.jpgMishima 32 Ryô Ikebe.gif頼むが叶わない。その後、飯島は脱獄に成功し、政界の黒幕・蔵原(根上淳)を暗殺Mishima honma.jpgすると、海を見渡す断崖へと直行し、暁の太陽を背に割腹自殺を図る―(ここでいきなり、映画「憂国」の切腹シーンを撮影中の三島のモノクロ・フラッシュバックになる。そして、映画「憂国」の完成記者会見の模様が入る)。

MISHIMA:A LIFE IN FOUR CHAPTERS.jpg 第4章は、これまで「今現在」として描かれてきた「1970年11月25日」の部分の続きで、三島らが市ヶ谷駐屯地に到着してから自決に至るまでが描かれており(間にフラッシュバックで「盾の会」の自衛隊体験入隊の模様が描かれる)、自決前のバルコニーでの演説をはじめ、「三Mishima4.jpg島事件」を克明に描いています(更に間に、ロッキードF104戦闘機に試乗した際の模様が描かれる)。最後に三島が切腹して雄叫びする場面に続いて、第1部から第3部の小説のラストMishimaR.jpgシーンがワンカットずつ描かれ、『奔馬』の最後の一行のナレーションと共に、冒頭のタイトルバックにあった太陽が正面に昇っている風景でエンドロールとなります。なお、「フラッシュバック」で描かれる半生の挿話やナレーションには、自伝的小説『仮面の告白』や随筆『太陽と鉄』などからの引用が使用されています。

 ポール・シュレイダーの実兄の故レナード・シュレーダー(同じく脚本家で、同志社大学と京都大学で英文学の講師をしていた)が生前の三島由紀夫と親交があり、10年間の構想を経て弟と共に脚本を書き始めたのが契機のようですが、よく出来ていると思いました(ハリウッドの知性派女ジョディ・フォスターs.jpg優として知られ、2013年のゴールデングローブ賞授賞式において、自身が同性愛者であることをほぼ公表したジョディ・フォスターが絶賛している)。主人公の三島の役は、最初は高倉健にオファー高倉健G.jpgされていたらしいのですが(高倉健はポール・シュレイダー脚本、シドニー・ポラック監督の「ザ・ヤクザ」('74年/米)に出演している)、右翼などの妨害や誹謗が危惧されて、一度は受けたものの降りてしまい、緒形拳になったったとか。撮影直前までの脚本では、第4章に『天人五衰』(『豊饒の海』第4部)が含まれていたのが、構成が複雑になりすぎるとの理由で割愛されたそうです。更に、ポール・シュレイダー監督は第2章で『禁色』を使うことを希望していたのが、三島の遺族側の承諾が得られず、『鏡子の家』になったとのこと。結局、全体4章の内、作品を再現したのは第1~第3章であり、また、『鏡子の家』で4人の登場人物の内1人のみにフォーカスするという形にはなったMishima irie.jpgものの、ここまで三島の作品と人生を再現していれば立派なものだと思います(それが理解できるかどうかはまた別の問題として)。細かい点で事実と異なるとの指摘もあるようですが(第2章のフラッシュバックに写真集『薔薇刑』の撮影模様があるが、三島はこの映画のように撮影の際に自らカメラのアングルを指示するようなことはなく、完全に「被写体」に徹していたという当のカメラマン細江英公氏の指摘など)、そうした細かい指摘がされるというのは、逆に言えばドキュメンタリーとしても一定の水準を満たしているからであるように思います(ジョディ・フォスターは「作品部分の凝った構成と、生涯の部分のドキュメンタリー・タッチの対比が絶妙」だと評価している)。

三島由紀夫と一九七〇年  .jpg 結局、上映自体が遺族側の了解が得られず、作品は日本では劇場公開されなかったわけで、惜しいことです(同性愛を示唆する場面は結構あったが、それ以外に政治的な理由があったともされている)。長年ビデオ・DVD化されない「幻の作品」であっため、自分自身も、中身がよく分からないのでやや"色物"的な作品ではないかとの先入観が以前はありましたが、近年しばしばネットで見かけ、更に"ゲリラ・リリース"された『三島由紀夫と一九七〇年』('10年/鹿砦社)付録の米国版DVDを観直して観ると、映像も綺麗だし、演技陣も錚々たるメンバーであり、また、よく演出したものだと思いました。作家とその作品の関係性を描くという意味でも非常に大胆な試みであり、それは100%成功しているわけではないですが、分かり易いというだけでも評価できるのではないでしょうか。

Chishu Ryu, Paul Schrader, and Yasosuke Bando on the set of Mishima: A Life in Four Chapters. MISHIMA_500.jpg
「MISHIMA:A LIFE IN FOUR CHAPTERS」●制作年:1985年●制作国:アメリカ・日本●監督:ポール・シュレイダー●製作:山本又一朗/トム・ラディ●脚本:ポール・シュレイダー/レナード・シュレイダー/チエコ・シュレイダー●撮影:ジョン・ベイリー/栗田豊通●音楽:フィリップ・グラス●美術:石岡瑛子●原作:三島由紀夫●120分●出演:●[フラッシュバック(回想)]緒形拳/利重剛/大谷直子/加藤治子/小林久三/北詰友樹/新井康弘/細川俊夫/水野洋介/福原秀雄 [1970年11月25日]緒形拳/塩野谷正幸/三上博史/立原繁人(徳井優)/織本順吉/江角英明/穂高Mishima A Life in Four Chapters (1985).jpg坂東三津五郎.jpg稔 [第1章・金閣寺]坂東八十助/佐藤浩市/萬田久子/沖直美/高倉美貴/辻伊万里/笠智衆(米国版のみ) [第2章・鏡子の家]沢田研二/左幸子/烏丸せつこ/倉田保昭/横尾忠則/李麗仙/平田満 [第3章・奔馬]永島敏行/池部良/誠直也/勝野洋/根上淳/井田弘樹●米国公開:1985/10●DVD発売:2010/11●発売元:鹿砦社(『三島由紀夫と一九七〇年』附録)(評価:★★★★)
十代目 坂東三津五郎(五代目 坂東八十助)(1956-2015.2.21/享年59)
Mishima: A Life in Four Chapters (1985)

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「愚なる妻」、凄い映画だなあ。同じ年(1914年)デビューのシュトロハイムとチャップリン。

シュトロハイム「愚かなる妻・グリード」.jpg愚かなる妻 映画dvd.jpg    Cruel, Cruel Love (1914).jpg One A.M. (1916 film).jpg
愚なる妻《IVC BEST SELECTION》 [DVD]」「Cruel, Cruel Love」「One A.M.」
シュトロハイム狂気のツインパック [DVD]」(「愚なる妻」「グリード」)

愚かなる妻 映画 02.jpg 様々な種類の人間が集まる国際都市モナコに、ロシア貴族カラムジン伯爵と称する軍人風の男が、従妹2人と滞在していたが、実は彼らは詐欺師で、上流階級に取り入り金銭を騙し取ったり、贋Erich Von Stroheim foolish wives 0.jpg金を作ったりしていた。モナコへの米公使来訪の報を目にした彼らは、公使夫人をカラムジンの手管で篭絡し、金を巻き上げようと企む―。

 完璧主義者だったことで知られるエーリッヒ・フォン・シュトロハイム(Erich Von Stroheim、1885‐1957)監督の1922年に公開された長編サレント映画で(原題:Foolish Wives、日本公開は1923(大正12)年2月)、冒頭に少しだけ映画のメイキングシーンが流れますが、膨大な製作費でMonte Carlo @ Universal Studios. Built to scale.jpgカジノやホテル等、モンテカルロの街並みごと再現し(無声映画なのにホテルのどの部屋のベルもちゃんと鳴ったという)、豪華な食事を俳優たちに食べさせて、雰囲気から徹底的に作り込んだそうです。そのうえで、人間の性に対する露わな欲望を、カラムジンなる怪物的人物を通して描いたリアリズム作品であり(監督・主演のほかに脚本・衣装もシュトロハイムが担当)、シュトロハイムは、ハリウッドに初めてリアリズム演出を持ち込んだ天才監督と評されています。
Monte Carlo @ Universal Studios.

澤登翠氏.jpg マツダ映画社の「無声映画鑑賞会」(日暮里サニーホール・コンサートサロン)で澤登翠氏の活弁で鑑賞しましたが、108分の長尺の活弁はお疲れ様でしたという感じ。但し、オリジナルは上映時間が8時間あったのが長すぎるということで、それが最終的に1時間50分ほどに短縮させられたものが今日あるものであるとのことです(同監督の「グリード」('24年)も9時間超のオリジナルを100分に縮めたものしか残っていない)。

愚なる妻 2.jpg 「グリード」と比べると、シュトロハイム本人が主演しているという点でその多才ぶりがより強く印象づけられます(この前に「悪魔の合鍵」('19年)という監督・出演・原案・美術を担当した長編もあるがフィルムが現存していない)。いやあ、凄い話だなあ。シュトロハイム演じるカラムジンは貴婦人だけでなくメイドまで誑かすし(結局彼女は自殺に追い込まれる)、最後は高跳びする前に贋金作りのやや頭の弱い娘まで襲おうとErich Von Stroheim foolish wives 1.jpgしてその父親に惨殺され下水に捨てられるのですが(殺される場面はフィルムが紛失しているが活弁で補足説明されていた)、自分がその役をやる映画で普通こんな脚本を書くかねえ。しかも、この部分もフィルムが現存していませんが、オリジナルでは死体がネズミの餌になっている場面があったそうな(これぞリアリズム)。

愚かなる妻 映画 03.jpg 作品全体のテーマは、タイトルに表象されるように、上流階級の欺瞞や空疎、浅薄さを揶揄したものでしょうが、カラムジン伯爵の人物造型があまり強烈であり、プロセスにおいてはある種ピカレスクロマンになっています。カラムジンがニセモノの涙を流すところなどはやや演出過剰な感もありましたが、当時の基準からすれば、こうしたシーンもリアリズムの範囲内ということになるのか。 カラムジン中心にみれば人間の飽くなき「性欲」を描いているとも言え、人間の「金銭欲」を描いた「グリード」との対比で、そうした捉え方の方がすっきりするかもしれません。

 「無声映画鑑賞会」での併映は、チャールズ・チャップリン(Charles Chaplin、1889 - 1977)主演の短編「チャップリンの恋のしごき」('14年)と「チャップリンの大酔(たいすい)」('16年)で、それぞれ澤登翠氏のお弟子さんである山内菜々子氏と山城秀之氏が活弁を担当。先にこの2作を観て、場内を「お煎にキャラメル」を売って歩く「中入り」の後に大作「愚なる妻」が始まるという、大体この映画鑑賞会では定着している上映パターンでした。

CRUEL CRUEL LOVE Chaplin 1.jpg 「チャップリンの恋のしごき」は1914年3月公開作。チャップリンがデビューした年の作品で(原題:Cruel, Cruel Love、「痛ましの恋」の邦題で公開されたこともある)、但しチャップリンはこの年だけで40本近くの短編に出ていて、この作品はデビュー作「成功争い」から数えて第8作です。因CRUEL CRUEL LOVE Chaplin 2.jpgみに、エーリッヒ・フォン・シュトロハイムの映画デビューも100年前のチャップリンのデビューと同じ年の1914年です(D・W・グリフィスの「國民の創生」('14年)で監督助手兼エキストラ出演)。
 恋の行き違いを描いたような話で、ドタバタの部分もありますが、ストーリー自体はさほどヒネリがないように思いました(まあ、最後は誤解が解けてハッピーエンドだろうなあと)。むしろ、チャップリンのちょび髭にタキシードという定番スタイルが未だ出来上がる前の作品である点で興味深いかもしれまん。髪型などもちょっと違っているなあ。

ONE A.M.  Chaplin 01.jpg 「チャップリンの大酔(たいすい)」は1916年8月公開作。酔っぱらったチャップリンがタクシーから降りて我が家に入り寝室に行き着こうとするまでを描いた(結局最後はバスタブに行き着いてしまうのだが)純粋なドタバタコメディで(原題:One A.M.、そのまま「午前一時」の邦題で公開されたこともある)、しかも冒頭のタクシー運転手を除いては実質チャップリンONE A.M.  Chaplin 02.jpgの完全な一人芝居です。ここにきて、ようやくと言うか、既にすっかりチャップリンのコメディスタイルが出来上がっているなあという感じで、それをずっと一人芝居でじっくり観ることが出来るという意味では貴重な作品とも言えるかもしれせん。

 ストーリー性のある「チャップリンの恋のしごき」よりも、ストーリー性のない「チャップリンの大酔」の方がむしろ完成度としては高くなっているわけですが、両作品を見比べることで、チャップリンのあのスタイルが出来上がった時期やプロセスが大まかに推し量れる―その辺りが主催者側が両作品を揃えた狙いではないでしょうか。
Foolish Wives(1922)
Foolish Wives(1922).jpg
foolish wives.jpg「愚なる妻」●原題:FOOLISH WIVES●制作年:1921年(公開1922年)●制作国:アメリカ●監督・原作・脚本:エーリ無声映画鑑賞会6.JPGッヒ・フォン・シュトロハイム●製作:カール・レムリ●撮影:ベン・レイノルズ/ウィリアム・ダニエルズ●時間:108分●出演:エリッヒ・フォン・シュトロハイム/ルドルフ・クリスチャンズ/ミス・デュポン/モード・ジョージ/メエ・ブッシュ/デイル・フラー/セザール・グラヴィーナ/マルヴィン・ポーロ●日本公開:1923/02/01●最初に観た場所:日暮里サニーホール・コンサートサロン (14-09-30) (評価★★★★)●併映:「チャップリンの恋のしごき」(ジョージ・ニコルズ)/「チャップリンの大酔」(チャールズ・チャップリン)
日暮里サニーホール.jpg日暮里サニーホール 2.jpg日暮里サニーホール 1989年3月、日暮里駅東口ホテルラングウッド開業と併せてオープン(ホテルラングウッド/コンサートサロン)


CRUEL CRUEL LOVE Chaplin 2-2.jpg「チャップリンの恋のしごき(痛ましの恋)」●原題:CRUEL, CRUEL LOVE●制作年:1914年●制作国:アメリカ●監督:ジョージ・ニコルズ●製作:マック・セネット●脚本:クレイグ・ハッチンソン●撮影:フランク・D・ウィリアムズ●時間:現存9分(オリジナル18分)●出演:チャールズ・チャップリン/エドガー・ケネディ/ミンタ・ダーフィ/アリス・ダヴェンポート/グレン・カーヴェンダー●最初に観た場所:日暮里サニーホール・コンサートサロン (14-09-30) (評価★★★)●併映:「チャップリンの大酔」(チャールズ・チャップリン)/「愚なる妻」(エーリッヒ・フォン・シュトロハイム)」

チャップリン・アーリー・コレクション1.jpgONE A.M.  Chaplin 03.jpg「チャップリンの大酔(たいすい)(午前一時)」●原題:ONE A.M.●制作年:1916年●制作国:アメリカ●監督・製作・脚本:チャールズ・チャップリン●撮影:ローランド・トザロー●時間:12分(オリジナル32分)●出演:チャールズ・チャップリン/アルバート・オースチン●最初に観た場所:日暮里サニーホール・コンサートサロン (14-09-30) (評価★★★☆)●併映:「チャップリンの恋のしごき」(ジョージ・ニコルズ)/「愚なる妻」(エーリッヒ・フォン・シュトロハイム)」
「チャップリン・アーリー・コレクション」(第1巻/全10巻)「チャップリンの消防夫」「午前一時」「三つ巴事件」「チャップリンの移民」 「チャップリン アーリー・コレクション 【限定セット】(DVD10枚組み) [Box set]

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観客参加型ムービー「ロッキー・ホラー・ショー」。同じくアナーキーな雰囲気を醸す「ベルリンブルース」。

ロッキー・ホラー・ショー チラシ.jpg THE ROCKY HORROR SHOW 1975.jpg   ベルリンブルース 英字.jpg Stadt der Verlorenen Seelen 0.jpg
ロッキー・ホラー・ショー [DVD]」ティム・カリー(左)/スーザン・サランドン(右手前) 「ベルリンブルース」STAD DER VERLORENEN SEELEN, BERLIN BLUES(CITY OF LOST SOULS)

THE ROCKY HORROR SHOW 1975.jpg  恩師スコット博士に婚約の報告に出かけた恋人同士のブラッド(バリー・ボストウィック)とジャネット(スーザン・サランドン)は、嵐の中で道に迷った末に山中で車がパンクしてしまい、電話を借りようと近くの古城を訪ねるが、そこでは奇怪なパーティーが開かれていた。城主フランクン・フルター(ティム・カリー)は変わった人物で、彼自身が作った人造人間、ブロンドで筋肉質の美男子「ロッキー」を披露する。そしてフルターとロッキーは、結婚するような演出でベッドのある部屋へと向かうが、ジャネットがロッキーの虜になってしまう。さらに、バイセクシュアルのフルターは、ジャネットとブラッドの両方と関係を持ってしまう―。

 ジム・シャーマン監督の「ロッキー・ホラー・ショー」('75年/英)は、最初に名画座で観た時はロック・オペラってこんなのもあるのかという感じで(元々はロンドンで初演された劇場ミュージカル)、併映のロマン・ポランスキーの「ファントム・オブ・パラダイス」('74年/米)の方がミュージカル調の場面は少ないにも関わらずそれらしく感じられ、この作品はよく分らんという印象でした。

シネマライズd.JPG それが2度目に渋谷のシネマライズ渋谷(当時、地下1階にあったスクリーン)で観た時には、米国からシネセゾンが招聘したと思われるコスプレ軍団が来日していて(日本でもパフォーマンス参加者を募集した)、映画館の最前列で映画に合わせて踊ったり、紙吹雪や米を撒いたり、雨のシーンでは如雨露で水を撒いたりして観客も大ノリでした。その時初めて、ああ、これ、こうやってパーティ形式で観るものなんだと初めて知りました。本国でも公開当初は不評だったのですが、深夜興行されるようになって「観客体験型」ムービーとしてカルト化したようです。日本でもシネマライズ渋谷での上映期間中に自発的にパフォーマンスに参加する人がどんどん増えていったとのことですが、それ以前から、英字新聞にパブなどでの深夜興行の広告が出ていた記憶があります(今はAmazonでコスプレ衣裳が買える)。

ベルリンブルース 1.gif ベルリンにあるハンバベルリンブルース03.jpgーガー・ショップ「バーガー・クイーン」は、NYのハーレム出身ダンサーでトランスベイター(性転換者)のアンジー・スターダストが経営する店であり、類が友を呼んで世間のはみ出し者の米国人たちの溜まり場になっている。"バーガー・クイーン・ブルース"を歌うライラは、売春街から東ドイツへ渡って成功したパンク・スター、エロチックな空中ブランコ・ショウを見せるためにやって来たジュディスとパートナーのトロンは、アンジーの"スターダスト・ペンション"に棲むことになるが、隣部屋の売れない黒人ダンサーのゲイリーが魔術や妖術に凝っていて、自室に火をつけてしまう。ストリッパーのタラもトランスベイター(日本流に言えばニューハーフ)で、夜毎、違う男をベッドに連れ込んで同居人のロレッタを困らせる。「バーガー・クイーン」の店員ヨアキンも、ショービジネスのスターをめざす両性具有者(アンドロギュヌス)である―。

ベルリンブルース 0.jpg 「ベルリンブルース」('83年/西独)は、公開された時に「ロッキー・ホラー・ショー」の再来と言われた、西ドイツの異色監督ローザ・フォン・ブラウンハイムの1986年作品で、ドイツらしいアナーキーな雰囲気に満ちたカルト・ムービーですが、不快感とかは無く最後まで楽しめました(むしろ最後の大合唱は、マイノリティの人たちが誇り高く生き続けることを宣言しているようで感動させられた)。ブラウンハイム監督自身もホモセクシュアルであることを公言し、同性愛者や性的倒錯をテーマに撮りまくっていて、出演者たちも実在のベルリン在住アメリカ人グループで、実名で出ていて現実の仕事と同じ役どころを演じています(つまり皆、本人役で出ているということ)。

BAGDAD CAFE 2.jpg 後にパーシー・アドロン監督の「バグダッド・カフェ」('87年/西独)を観た時、ドイツから米国に旅行に来た女性が、様々な人々がいる多国籍風カフェの周辺に棲み込んでしまうという点で、この米国人がドイツのバーガー・ショップ付近に棲みつく「ベルリンブルース」と丁度真逆だなあと思ったことがありますが、「バグダッド・カフェ」も「バーガー・クイーン」ほどお下劣ではないですが、そこに暮らす人たちがショーみたいなことをやっていて、それが無国籍風と言うか、ややアナーキーな雰囲気も醸していました。
BAGDAD CAFE

 この作品「ベルリンブルース」が公開された時は、ライザ・ミネリの「キャバレー」('72年/米)のベルリン版とも言われましたが、もっとキッチュな感じのパンク系ミュージカル(仕立て)と言うか、雰囲気的にやはり「ロッキー・ホラー・ショー」に近いように思われます。

ロッキー・ホラー・ショー_1.jpgロッキー・ホラー・ショーs.jpgロッキー・ホラー・ショー (1976).jpg「ロッキー・ホラー・ショー」●原題:THE ROCKY HORROR SHOW●制作年:1975年●制作国:イギリス●監督:ジム・シャーマン●製作:作 マイケル・ホワイト●脚本:ジム・シャーマン/リチャード・オブライエン●撮影:ピーター・サシツキー●音楽:リチャード・ハートレイ●時間:99分●出演:ティム・カリー/バリー・ボストウィック/スーザン・サランドン/リチャード・オブライエン/パトリシア・クイン/ジョナサン・アダムス/ミート・ローフ/チャールズ・グレイ●日本公開:1978/02●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:五反田TOEIシネマ(83-02-06)●2回目:シネマライズ渋谷(地下1階)(88-07-17)(評価:★★★?)●併映(1回目):「ファントム・オブ・パラダイス」(ブライアン・デ・パルマ)
シネマライズ2.jpgシネマライズ.bmpシナマライズ 地図.jpgシネマライズ渋谷1986年6月、渋谷 スペイン坂上「ライズビル」地下1階に1スクリーン(220席)でオープン。1996年、2階の飲食店となっていた場所に2スクリーン目を増設。「シネマライズBF館」「シネマライズシアター1(後のシネマライズ(2F))(303席)」になる。2004年、3スクリーン目、デジタル上映劇場「ライズX(38席)」を地下のバースペースに増設。地下1階スクリーン「(元)シネマライズ渋谷」2010年6月20日閉館(地下2階「ライズⅩ」2010年6月18日閉館、地上2階「シネマライズ」2016年1月7日閉館

「ベルリンブルース」●原題:STAD DER VERLORENEN SEELEN, BERLIN BLUES(CITY OF LOST SOULS)●制ベルリンブルース vhs.jpgベルリンブルース 輸入.jpg作年:1983年●制作国:西ドイツ●監督・脚本・製作:ローザ・フォン・ブラウンハイム●撮影:シュテファン・ケスター●音楽:ホルガー・ミュンツァー/アレクサンダー・クロート●美術:インゲ・スティボルスキー●時間:91分●出演:レアンジー・スターダスト/ジェイン・カウンティ/ジュディス・フレックス/ロン・フォン・ハリウッド●日本公開:1986/10●配給:ユーロスぺース●最初に観た場所:渋谷・ユーロスペース(86-12-06)(評価:★★★★)ベルリン・ブルース [VHS]

《読書MEMO》
絶対に見たほうがいいカルト映画30選 コタク・ジャパン
1.『ロッキー・ホラー・ショー』
2.『ドニー・ダーコ』
3.『イレイザーヘッド』
4.『ゴーストハンターズ』
5.『ZOMBIO(ゾンバイオ)/死霊のしたたり』
6.『地球に落ちてきた男』
7.『裸のランチ』
8.『プライマー』
9.『ゼイリブ』
10.『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』
11.『レポマン』
12.『アルタード・ステーツ/未知への挑戦』
13.『チェリー2000』
14.『ブラザー・フロム・アナザー・プラネット』
15.『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』
16.『死霊のはらわたll』
17.『バンデットQ』
18.『バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー 』
19.『スリザー』
20.『ダーク・スター』
21.『プラン9・フロム・アウタースペース』
22.『ハンガー』
23.『デス・レース2000年』
24.『Tales from the Hood』
25.『シャークトパス』
26.『Born in Flames』
27.『ロストボーイ』
28.『ウォリアーズ』
29.『トレマーズ』
30.『未来惑星ザルドス』

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ニューヨークという大都会を舞台にしたダスティン・ホフマン主演'69年作品2作。

ジョンとメリー [VHS].jpgジョンとメリー [DVD].jpg 真夜中のカーボーイ dvd.jpg 卒業 [DVD] L.jpg
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ジョンとメリー 1.jpg マンハッタンに住む建築技師ジョン(ダスティン・ホフマン)のマンションで目覚めたメリー(ミア・ファロー)は、自分がどこにいるのか暫くの間分からなかった。昨晩、独身男女が集まるバーで2人は出会い、互いの名前も聞かないまま一夜を共にしたのだった。メリーは、整頓されたジョンの家を見て女の影を感じる。ジョンはかつてファッションモデルと同棲していた過去があり、メリーはある有力政治家と愛人関係にあった。朝食を食べ、昼食まで共にした2人は、とりとめのない会話をしながらも、次第に惹かれ合っていくが、ちょっとした出来事のためメリーは帰ってしまう―。

 ピーター・イエーツ(1929-2011/享年81)監督の「ジョンとメリー」('69年)は、行きずりの一夜を共にした男女の翌朝からの1日を描いたもので、男女の出会いを描いた何とはない話であり、しかも基本的に密室劇なのですが、2人のそれぞれの回想と現在の気持ちを表す独白を挟みながらストーリーが巧みに展開していき、2人の関係はどうなるのだろうかと引き込まれて観てしまう作品でした。

ジョンとメリー 4.jpg 脚本は「シャレード」('63年)の原作者ジョン・モーティマーですが、構成の巧みさもさることながら、演じているダスティン・ホフマンとミア・ファローがそもそも演技達者、とりわけダスティン・ホフマン演じるジョンの、そのままメリーに居ついて欲しいような欲しくないようなその辺りの微妙に揺れる心情が可笑しく(ジョンの方に感情移入して観たというのもあるが)ホントにこの人上手いなあと思いました(でも、ミア・ファローも良かった)。

ジョンとメリー 2.jpg 最後に互いの気持ちを理解し合えた2人が、そこで初めて「ぼくはジョンだ」「私はメリーよ」という名乗り合う終わり方もお洒落(その時大方の観客は初めて、そっか、2人はまだ名前も教え合っていなかったのかと気づいたのでは)。観た当時は、これが日本映画だったら、もっとウェットな感じになってしまうのだろうなあと思って、ニューヨークでの一人暮らしに憧れたりもしましたが、逆に、ニューヨークのような大都会で恋人も無く一人で暮らすということになると、(日本以上に)とことん"孤独"に陥るのかも知れないなあとも思ったりして。

真夜中のカーボーイ1.jpg そうした大都会での孤独をより端的に描いた作品が、ダスティン・ホフマンがこの作品の前に出演した同年公開のジョン・シュレシンジャー(1926-2003/享年77)監督の「真夜中のカーボーイ」('69年)であり、ジョン・ヴォイトが、"いい男ぶり"で名を挙げようとテキサスからニューヨークに出てきて娼婦に金を巻き上げられてしまう青年ジョーを演じ、一方のダスティン・ホフマンは、スラム街に住む怪しいホームレスのリコ(一旦は、こちらもジョーから金を巻き上げる)役という、その前のダスティン・ホフマンの卒業 ダスティン・ホフマン .jpg主演作であり、彼自身の主演第1作だったマイク・ニコルズ監督の「卒業」('67年)の優等生役とはうって変った役柄を演じました(「卒業」で主人公が通うコロンビア大学もニューヨーク・マンハッタンにある)。

卒業 ダスティン・ホフマン/キャサリン・ロス.jpg 映画デビューした年に「卒業」でアカデミー主演男優賞ノミネートを受け(この作品、今観ると「サウンド・オブ・サイレンス」をはじめ「スカボロ・フェアー」「ミセス・ロビンソン」等々、サイモン&ガー卒業(1967).jpgファンクルのヒット曲のオン・パレードで、そちらの懐かしさの方が先に立つ)、主演第2作・第3作が「真夜中のカーボーイ」(これもアカデミー主演男優賞ノミネート)と「ジョンとメリー」であるというのもスゴイですが、ゴールデングローブ卒業 1967 2.jpg賞新人賞を受賞した「卒業」の、その演技スタイルとは全く異なる演技をその後次々にみせているところがまたスゴイです(「卒業」で英国アカデミー賞新人賞を受賞し、「真夜中のカーボーイ」と「ジョンとメリー」で同賞主演男優賞を受賞している)。

真夜中のカーボーイQ.jpg 3作品共にアメリカン・ニュー・シネマと呼ばれる作品ですが、その代表作として最も挙げられるのは「真夜中のカーボーイ」でしょう。ニューヨークを逃れ南国のフロリダへ旅立つ乗り合いバスの中でリコが息を引き取るという終わり方も、その系譜を強く打ち出しているように思われます。「真夜中のカーボーイ」も「ジョンとメ真夜中のカーボーイs.jpgリー」も傑作であり、ダスティン・ホフマンはこの主演第2作と第3作で演技派としての名声を確立してしまったわけですが、個人的には「ジョンとメリー」の方が、ラストの明るさもあってかしっくりきました。一方の「真夜中のカーボーイ」の方は、ジョーとリコの奇妙な友情関係にホモセクシュアルの臭いが感じられ、当時としてはやや引いた印象を個人的には抱きましたが、2人の関係を精神的なホモセクシュアルと見る見方は今や当たり前のものとなっており、その分だけ、今観ると逆に抵抗は感じられないかも。

ミスター・グッドバーを探して [VHS].jpg 「ジョンとメリー」に出てくる"Singles Bar"(独身者専門バー)を舞台としたものでは、リチャード・ブルックス(1912-1992/享年72)監督・脚本、ダイアン・キートン主演の「ミスター・グッドバーを探して」('77年)があり、こちらはジュディス・ロスナーが1975年に発表したベストセラー小説の映画化作品です。
ミスター・グッドバーを探して [VHS]

ミスター・グッドバーを探して1.jpg ダイアン・キートン演じる主人公の教師はセックスでしか自己の存在を確認できない女性で、原作は1973年にニューヨーク聾唖学校の28歳の女性教師がバーで知り合った男に殺害された「ロズアン・クイン殺人事件」という、日本における「東電OL殺人事件」(1997年)と同じように、当時のアメリカ国内で、殺人事件そのものよりも被害者の二面的なライフスタイルが話題となった事件を基にしており、当然のことながら結末は「ジョンとメリー」とは裏腹に暗いものでした。主人公の女教師は最後バーで拾った男(トム・ベレンジャー)に殺害されますが、その前に女教師に絡むチンピラ役を、当時全く無名のリチャード・ギアが演じています(殺害犯役のトム・ベレンジャーも当時未だマイナーだった)。

恋におちて 1984.jpg 何れもニューヨークを舞台にそこに生きる人間の孤独を描いたものですが、ニューヨークを舞台に男女の出会いを描いた作品がその後は暗いものばかりなっているかと言えばそうでもなく、ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープの演技派2人が共演した「恋におちて」('84年)や、メグ・ライアンとトム・ハンクスによるマンハッタンのアッパーウエストを舞台にしたラブコメディ「ユー・ガット・メール」('98年)など、明るいラブストーリーの系譜は生きています(「ユー・ガット・メール」は1940年に製作されたエルンスト・ルビッチ監督の「街角/桃色(ピンク)の店」のリメイク)。
「恋におちて」('84年)

ユー・ガット・メール 01.jpg 「恋におちて」はグランド・セントラル駅の書店での出会いと通勤電車での再会、「ユー・ガット・メール」はインターネット上での出会いと、両作の間にも時の流れを感じますが、前者はクリスマス・プレゼントとして買った本を2人が取り違えてしまうという偶然に端を発し、後者は、メグ・ライアン演じる主人公は絵本書店主、トム・ハンクス演じる男は安売り書店チェーンの御曹司と、実は2人は商売敵だったという偶然のオマケ付き。そのことに起因するバッドエンドの原作を、ハッピーエンドに改変しています。
「ユー・ガット・メール」('98年)

めぐり逢えたら 映画 1.jpg トム・ハンクスとメグ・ライアンは「めぐり逢えたら」('93年)の時と同じ顔合わせで、こちらもレオ・マッケリー監督、ケーリー・グラント、デボラ・カー主演の「めぐり逢い」('57年)にヒントを得ている作品ですが(「めぐり逢い」そのものが同じくレオ・マッケリー監督、アイリーン・ダン、シャルル・ボワイエ主演の「邂逅」('39年)のリメイク作品)、エンパイア・ステート・ビルの展望台で再開を約するのは「めぐり逢い」と同じ。但し、「めぐり逢い」ではケーリー・グラント演じるテリーの事故のため2人の再会は果たせませんでしたが、「めぐり逢えたら」の2人は無事に再開出来るという、こちらもオリジナルをハッピーエンドに改変しています。
「めぐり逢えたら」('93年)

 最近のものになればなるほど、男女双方または何れかに家族や恋人がいたりして話がややこしくなったりもしていますが、それでもハッピーエンド系の方が主流かな。興業的に安定性が高いというのもあるのでしょう。「恋におちて」は、古典的ストーリーをデ・ニーロ、ストリープの演技力で引っぱっている感じですが、2人とも出演時点ですでに大物俳優であるだけに、逆にストーリーの凡庸さが目立ち、やや退屈?(もっと若い時に演じて欲しかった)。但し、「恋におちて」「めぐり逢えたら」「ユー・ガット・メール」の何れも役者の演技はしっかりしていて、ストーリーに多分に偶然の要素がありながらも、ディテールの演出や表現においてのリアリティはありました。しかしながら、物語の構成としては"定番の踏襲"と言うか、「ジョンとメリー」を観て感じた時のような新鮮味は感じられませんでした。

 こうして見ると、ニューヨークという街は、「真夜中のカーボーイ」や「ミスター・グッドバーを探して」に出てくる人間の孤独を浮き彫りにするような暗部は内包してはいるものの、映画における男女の出会いや再会の舞台として昔も今もサマになる街でもあるとも言えるのかもしれません(ダスティン・ホフマンは同じ年に全く異なるキャラクターで、ニューヨークを舞台に孤独な男性の「明・暗」両面を演じてみせたわけだ。これぞ名優の証!)。

ジョンとメリー [VHS]
JOHN AND MARY 1969.jpgジョンとメリーdvd3.jpg「ジョンとメリー」●原題:JOHN AND MARY●制作年:1969年●制作国:アメリカ●監督:ピーター・イェーツ●製作:ベン・カディッシュ●脚本:ジョン・モーティマー●撮影:ゲイン・レシャー●音楽:クインシー・ジョーンズ●原作:マーヴィン・ジョーンズ「ジョンとメリー」●時間:92分●出演:ダスティン・ホフマン/ミア・ファロー/マイケル・トーラン/サニー・グリフィン/スタンリー・ベック/三鷹オスカー.jpgタイン・デイリー/アリックス・エリアス●日本ジョンとメリーe.jpg公開:1969/12●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:三鷹東映(78-01-17)(評価:★★★★☆)●併映:「ひとりぼっちの青春」(シドニー・ポラック)/「草原の輝き」(エリア・カザン)三鷹東映 1977年9月3日、それまであった東映系封切館「三鷹東映」が3本立名画座として再スタート。1978年5月に「三鷹オスカー」に改称。1990(平成2)年12月30日閉館。

Dustin Hoffman and Mia Farrow/Photo from John and Mary (1969)

「真夜中のカーボーイ」●原題:MIDNIGHT COWBOY●制作年:1969年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・シュレシンジャー●製作:ジェローム・ヘルマン●脚本:ウォルド・ソルト●撮影:アダム・ホレンダー●音楽:ジョン・バリー●原作:ジェームズ・レオ・ハーリヒー「真夜中のカーボーイ」●時間:113真夜中のカーボーイ2.jpg真夜中のカーボーイ 映画dvd.jpg分●出演:ジョン・ヴォイト/ダスティン・ホフマン/シルヴィア・マイルズ/ジョン・マクギヴァー/ブレンダ・ヴァッカロ/バーナード・ヒューズ/ルース・ホワイト/ジェニファー・ソルト/ボブ・バラバン●日本公開:1969/10●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:早稲田松竹(78-05-20)(評価:★★★★)●併映:「俺たちに明日はない」(アーサー・ペン)
真夜中のカーボーイ [DVD]

「卒業」●原題:THE GRADUATE●制作年:1967年●制作国:アメリカ●監督:マイク・ニコルズ●製作:ローレンス・ター卒業 1967 pster.jpgマン●脚本:バック・ヘンリー/カルダー・ウィリンガム●撮影:ロバート・サーティース●音楽:ポール・サイモン卒業 1967 1.jpg/デイヴ・グルーシン●原作:チャールズ・ウェッブ●時間:92分●出演:ダスティン・ホフマン/アン・バンクロフト/キャサリン・ロス/マーレイ・ハミルトン/ウィリアム・ダリチャr-ド・ドレイファス 卒業.jpgニエルズ/エリザベス・ウィルソン/バック・ヘンリー/エドラ・ゲイル/リチャード・ドレイファス●日本公開:1968/06●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:池袋・テアトルダイヤ(83-02-05)(評価:★★★★)●併映:「帰郷」(ハル・アシュビー)
卒業 [DVD]

映画パンフレット 「ミスターグッドバーを探して」.jpg「ミスター・グッドバーを探して」●原題:LOOKING FOR MR. GOODBAR●制作年:1977年●制作国:アメリカ●監督・脚本:リチャード・ブルックス●製作:フレディ・フィールズ●撮影:ウィリアム・A・フレイカー●音楽:アーティ・ケイン●原作:ジュディス・ロスナー「ミスター・グッドバーを探して」●時間:135分●出演:ダイアン・キートン/アラン・フェインスタイン/リチャード・カイリー/チューズデイ・ウェルド/トム・ベレンジャー/ウィリアム・アザートン/リチャード・ギア●日本公開:1978/03●配給:パラマウント=CIC●最初に観た場所:飯田橋・佳作座(79-02-04)(評価:★★☆)●併映:「流されて...」(リナ・ウェルトミューラー)
映画パンフレット 「ミスターグッドバーを探して」監督リチャード・ブルックス 出演ダイアン・キートン

FALLING IN LOVE 1984.jpg恋におちて 1984 dvd.jpg「恋におちて」●原題:FALLING IN LOVE●制作年:1984年●制作国:アメリカ●監督:ウール・グロスバード●製作:マーヴィン・ワース●脚本:マイケル・クリストファー●撮影:ピーター・サシツキー●音楽:デイヴ・グルーシン●時間:106分●出演:ロバート・デ・ニーロ/メリル・ストリープ/ハーヴェイ・カイテル/ジェーン・カツマレク/ジョージ・マーティン/デイヴィッド・クレノン/ダイアン・ウィースト/ヴィクター・アルゴ●日本公開:1985/03●配給:ユニヴァーサル映画配給●最初に観た場所:テアトル池袋(86-10-12)(評価:★★★)●併映:「愛と哀しみの果て」(シドニー・ポラック)
恋におちて [DVD]

YOU'VE GOT MAIL.jpgユー・ガット・メール dvd.jpg「ユー・ガット・メール」●原題:YOU'VE GOT MAIL●制作年:1998年●制作国:アメリカ●監督:ノーラ・エフロン●製作:ノーラ・エフロン/ローレン・シュラー・ドナー●脚本:ノーラ・エフロン/デリア・エフロン●撮影:ジョン・リンドリー●音楽:ジョージ・フェントン●原作:ミクロス・ラズロ●時間:119分●出演:トム・ハンクス/メグ・ライアン/グレッグ・キニア/パーカー・ポージー/ジーン・ステイプルトン/スティーヴ・ザーン/ヘザー・バーンズ/ダブニー・コールマン/ジョン・ランドルフ/ハリー・ハーシュ●日本公開:1999/02●配給:ワーナー・ブラザース映画配給(評価:★★★)ユー・ガット・メール [DVD]

SLEEPLESS IN SEATTLE.jpgめぐり逢えたら 映画 dvd.jpg「めぐり逢えたら」●原題:SLEEPLESS IN SEATTLE●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:ノーラ・エフロン●製作:ゲイリー・フォスター●脚本:ノーラ・エフロン/デヴィッド・S・ウォード●撮影:スヴェン・ニクヴィスト●音楽:マーク・シャイマン●原案:ジェフ・アーチ●時間:105分●出演:トム・ハンクス/メグ・ライアン/ビル・プルマン/ロス・マリンジャー/ルクランシェ・デュラン/ルクランシェ・デュラン/ギャビー・ホフマン/ヴィクター・ガーバー/リタ・ウィルソン/ロブ・ライナー●日本公開:1993/12●配給:コロンビア映画(評価:★★☆)めぐり逢えたら コレクターズ・エディション [DVD]

「●あ行外国映画の監督」の インデックッスへ Prev|NEXT⇒ 【2440】 ビレ・アウグスト 「レ・ミゼラブル
「●さ行の外国映画の監督②」の インデックッスへ 「●か行外国映画の監督」の インデックッスへ 「●ま行の外国映画の監督」の インデックッスへ 「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「○都内の主な閉館映画館」の インデックッスへ(旧・丸の内松竹/京王地下(京王2)/新宿ローヤル劇場) 「○都内の主な閉館映画館」の インデックッスへ(三軒茶屋映画劇場)「○都内の主な閉館映画館」の インデックッスへ(新宿ジョイシネマ/新宿プラザ劇場)

やはり感動させられる「ロッキー」のシリーズ第1作。スタローンは自分で監督しない方がいい?

ロッキー 1976 dvd.jpg ロッキー2 dvd.jpg ロッキー3 dvd.jpg ロッキー4 dvd.jpg ステイン・アライブ dvd.jpg ランボー dvd.jpg
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ロッキー 1976 02.jpg 「ロッキー」('76年)は、シルヴェスター・スタローン(1946年生まれ)が当時、映画オーディションに50回以上落選し、ポルノ映画への出演や用心棒などをして日々の生活費を稼ぐ暮らしの中で、プロボクシングのヘビー級タイトルマッチ「モハメド・アリ対チャック・ウェプナー戦」をテレビで観てウェプナーの善戦に感激し、それに触発されて3日間で脚本を書き上げプロダクションに売り込んだもので、プロダクション側はその脚本に7万5千ドルという、当時としては破格の値をつけたということですから、脚本自体が良かったのでしょう。

ロッキー 1976 01.jpg プロダクション側は主演にポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、アル・パチーノなどの有名スターを想定していたのに対し(ジェームズ・カーンなども有力な主演候補だった)、スタローンはあくまで自分が主演することに固執したため、最終的に36万ドルまで高騰した脚本は、スタローンの主演と引き換え条件に2万ドルまで減額されたそうな。でも、結果的にスタローンは無名俳優から一躍スターダムに躍り出たわけで、主演に固執して良かった...(逆に言えば、窮乏生活に慣れていたので、カネには固執していなかった)。

ロッキー 03.jpg 日本でも公開当時、誰もがこの作品を観に映画館に押し掛ける状況で、アカデミー賞作品賞受賞、キネマ旬報でも年間1位と高評価。こうなると逆に事前に情報が入り過ぎてしまい、結局個人的にはロードでは観に行かなかったのですが、後で「ロッキー2」('78年)と併せて名画座に降りてきた頃になって遅ればせながら観て、筋書きは分かっていても、やはり感動させられました。

ロッキー4 01.jpg 但し、スタローン自身が監督した「ロッキー2」の方はイマイチ、更に、今度こそロードでと観に行った「ロッキー3」('82年)では、対戦相手クラバー(ミスター・T)が全然強そうに見えないのが難で、これもイマイチ。それに比べると、「ロッキー4 炎の友情」('85年)は、ドラゴ(ドルフ・ラングレン)の登場で、多少シリーズ最後を盛り上げたという印象で、個人的にはまあまあ許せるかなという感じでしたが、スタローン自身はこの「ロッキー4 炎の友情」で、ゴールデンラズベリー賞の最低主演男優賞を受賞しています。
レッド・スコルピオン 1.jpg 一方、ロッキーより強そうに見えたドラゴを演じたドルフ・ラングレンは、その後「レッド・スコルピオン」('88年/米)に主演。アフリカ南部の共産主義国家に潜入したソ連の特殊部隊兵士の活躍を描くアクション映画でしたが、何だか動きが鈍くなったような...。空手家としての実績もあり、6か国語を話すインテリでもあるそうですが、スタローンRed Scorpion -  Dolph Lundgren.jpgレッド・スコルピオン dvd.jpg同様に監督業に進出する傍ら併せて俳優業を続けているものの、B級映画ばかり出ているなあ。因みに、「レッド・スコルピオン」のプロデューサーのジャック・エイブラモフはその後共和党保守派のロビイストとなり、汚職事件でFBIに拘束されていますが、この映画自体にも当初から南アの極右派(アパルトヘイト推進派)が資金提供しているとの噂が囁かれていたとのこと、但し、映画の中にとりたてて人種差別的表現はありません。 
レッド・スコルピオン [DVD]」 ドルフ・ラングレンはローランド・エメリッヒ監督の「ユニバーサル・ソルジャー」('92年)で、べトナム戦争で戦死したものの25年後に軍の秘密兵器として甦る特殊部隊兵ユニバーサル・ソルジャー ps.jpgユニバーサル・ソルジャー 1992.jpg士を演じていますが、ジャン=クロード・ヴァン・ダム演じる同じく甦ったもう一人の兵士の方が善玉なのに対し、ドルフ・ラングレンの方はヒール役(悪玉)というのが相変わらずでした(まあ、ドルフ・ラングレンの方が見た目が強そうだというのもあるかもしれないが、妥当な配役か)。観た時は可もなく不可もない娯楽作品という印象でしたがそこそこ人気があったのか、その後「ユニバーサル・ソルジャー/ザ・リターン」('99年)、「ユニバーサル・ソルジャー:リジェネレーション」('09年)が作られ、ジャン=クロード・ヴァン・ダムは両方に主演、ドルフ・ラングレンは'09年の方に出ています(2人とも中年にして頑張っている?)。

 スタローンについても、シリーズ最後と謳った「ロッキー4」でロッキー・シリーズは実際には終わらず、「ロッキー5 最後のドラマ」(Rocky V、'90年)、そして更に16年後の「ロッキー・ザ・ファイナル」(Rocky Balboa、'06年)と続いたわけで(「ロッキー5」はスタローン自身が失敗作であったことを認め、だから"ザ・ファイナル"を作ったとのこと)、最後60歳でボクサー役でリングに上がったスタローンはすごいと言えばすごいけれど、やはり無理があったと言わざるを得ないのではないでしょうか(ボクシング関係者の一部には、ボクシングを冒涜しているとの声もあった)。

スタローン&シュワルツェネッガー.jpg 「ロッキー2」以降はスタローン自身が監督しているのですが、ボディビルダーから俳優に転じ、更には州知事も務めたアーノルド・シュワルツェネッガー(1947年生まれ)と比べると、スタローンという人は根っから映画が好きなんだなあという気がします。二人が本格共演を果たした「大脱出」('13年)のプレミアで、スタローンは シュワルツェネッガーについて「20年間、本当に互いを激しく嫌い合っていたんだ」と告白していますが、とはいえ、「それはいいライバルはなかなか見つからないということの証。次第にその存在に感謝するようになる。そうやって競い合ってきたから、こうして二人ここにいるのかも」と今は互いの存在を 認め合っていることを明かしています。個人的には、そもそも映画への関わり方が二人は違うのではないかと。シュワルツェネッガーが「俳優」であるのに対し、スタローンは「映画人」という印象であり、脚本を書くか書かないかの違いは大きいように思います。

ステイン・アライブ01.jpg 但し、スタローンの映画監督としての力量はどうなのかはやや疑問符も...。作品への思い入れが先行しているような感じもあり、ついていけない人もいるのではないでしょうか。「ロッキー」に関しては、シリーズを通しての熱烈なファンが多くいるようですが、「ロッキー3」と「ロッキー4」の間の時期に、「サタデー・ナイト・フィーバー」('77年)の続編としてスタローンが監督した「ステイン・アライブ」('83年、脚本もスタローン)は特に見るべきものの無い作品で、この映画に主演したジョン・トラボルタの長期低迷のきっかけになった作品とも言えるのではないかと思います。

ランボー ちらし.jpgランボー 01.jpg 因みに「ランボー」('82年)のシリーズ作も、全4作全てスタローンの脚本または彼が脚本参加しているものでしたが、第1作(「ロッキー3」と同じ年に作られている)の「ランボー1人 vs. 警官千人」に始まり、「ランボー/怒りの脱出」('85年)では「ランボー1人vs.ベトナム軍」、ランボー3/怒りのアフガン dvd.jpg「ランボー3/怒りのアフガン」('88年)では「ランボー1人vs.ソ連軍10万人」とスケール・アップするにつれて、当初のランボーのアウトローの孤独と哀しみは消え、すっかり超人ヒーローになってしまい、「ランボー3/怒りのアフガン」などは、見ていてちっともハラハラしない...。しかも、今思えば皮肉なことに、この作品は、ランボーがアフガン・ゲリラと協力してソ連軍と戦う内容になっていて、当時のアフガン・ゲリラの一派が後のタリバン内の過激武装勢力になっていくわけです。

 「ランボー3/怒りのアフガン」ではスタローン自身も'88年ゴールデンラズベリー賞の最低主演男優賞に選ばれてしまったぐらいで(実は'85年にも「ランボー/怒りの脱出」と「ロッキー4 炎の友情」の"合わせ技"で同賞の最低主演男優賞を受賞している)、20年ぶりの続編「ランボー/最後の戦場」('08年)でその汚名返上を図ったのか、このシリーズで初めて自らメガホンをとりますが、こちらは個人的には未見。でも、この人、あんまり自分で監督しないほうが...。

ロッキー パンフ.jpgrocky 1976 poster.jpg「ロッキー」●原題:ROCKY●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・G・アヴィルドセン●製作:アーウィン・ウィンクラー/ロバート・チャートフ●脚本:シルヴェスター・スタローン●撮影:ジェームズ・グレイブ●音楽:ビル・コンティ●時間:119分●出演:シルヴェスター・スタローン/タリア・シャイア/バート・ヤング/バージェス・メレディス/カール・ウェザース●日本公開:1977/04●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:池袋・文芸坐(81-01-22)(評価:★★★★)●併映:「ロッキー2」(シルヴェスター・スタローン)
「ロッキー」パンフレット

ROCKY2 1979.jpg「ロッキー2」●原題:ROCKYⅡ●制作年:1979年●制作国:アメリカ●監督:シルヴェスター・スタローン●製作:アーウィン・ウィンクラー/ロバート・チャートフ●脚本:シルヴェスター・スタローン●撮影:ビル・バトラー●音楽:ビル・コンティ●時間:119分●出演:シルヴェスター・スタローン/タリア・シャイア/バート・ヤング/カール・ウェザース/バージェス・メレディス●日本公開:1979/09●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:池袋・文芸坐(81-01-22)(評価:★★)●併映:「ロッキー」(シルヴェスター・スタローン)

ロッキー3 02.jpg「ロッキー3」●原題:ROCKYⅢ●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:シルヴェスター・スタローン●製作:アーウィン・ウィンクラー/ロバート・チャートフ●脚本:シルヴェスター・スタローン●撮影:ビル・バトラー●音楽:ビル・コンティ●時間:99分●出演:シルヴェスター・スタローン/タリア・シャイア/バート・ヤング/カール・ウェザース/ミスター・T/ハルク・ホーガン/バージェス・メレディス/トニー・バートン/イアン・フリード/ウォーリー・テイラー/ジム・ヒル/ドン・シャーマン●日本公開:1982/07●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:有楽町・丸の内松竹(82-10-22)(評価:★★)
marunouti syotiku.jpg旧丸の内松竹1.jpg旧丸の内松竹2.jpg丸の内松竹(初代).jpg旧・丸の内松竹 前身は1925年オープンの「邦楽座」(後の「丸の内松竹」)。1957年7月、旧朝日新聞社裏手に「丸の内ピカデリー」オープン(地下に「丸の内松竹」再オープン)。1984年10月2日閉館。1987年10月3日 有楽町マリオン新館5階に後継館として新生「丸の内松竹」(現:丸の内ピカデリー3)がオープン。


「ロッキー4 炎の友情」●原題:ROCKY1977年8月6日 新宿京王 京王地下.jpg京王新宿ビル3.jpg京王三丁目ビル - 2.jpgⅣ●制作年:1985年●制作国:アメリカ●監督:シルヴェスター・スタローン●製作:アーウィン・ウィンクラー/ロバート・チャートフ●脚本:シルヴェスター・スタローン●撮影:ビル・バトラー●音楽:ビル・コンティ●時間:91分●出演:シルヴェスター・スタローン/タリア・シャイア/バート・ヤング/カール・ウェザース/ドルフ・ラングレン/ブリジット・ニールセン/ジェームス・ブラウン●日本公開:1986/06●配給:メトロ・ゴールドウィン・メイヤー/UA=UIP●最初に観た場所:新宿・京王2(86-06-07)(評価:★★★) 新宿京王・京王地下(京王2)新宿3丁目伊勢丹はす向い京王新宿ビル(現・京王三丁目ビルの場所)。1980年代後半に閉館。

レッド・スコルピオン bl.jpgレッド・スコルピオン  映画前売半券.jpg「レッド・スコルピオン」●原題:RED SCORPION●制作年:1989年●制作国:アメリカ●監督:ジョセフ・ジトー●製作:ジャック・エイブラモフ●脚本:アーン・オルセン●撮影:ホアオ・フェルナンデス●音楽:ジェイ・チャタウェイ●時間:106分●出演:ドルフ・ラングレン/M・エメット・ウォルシュ、アル・ホワイト/T・P・マッケンナ/カーメン・アルジェンツィアノ/ブライオン・ジェームズ/ジョセフ・ビッグウッド/ジェイ・チャタウエイ●日本公開:1989/01●配給:日本ヘラルド●最初に観た場所:三軒茶屋映劇(89-07-01)(評価:★★)●併映:「ダイ・ハード」(ジョン・マクティアナン)レッド・スコルピオン HDマスター版(Blu-ray Disc)
三軒茶屋映劇 2.jpg三軒茶屋シネマ/中央劇場.jpg三軒茶屋付近.png三軒茶屋映画劇場 1925年オープン(国道246号沿い現サンタワービル辺り)。1992(平成4)年3月13日閉館(左写真)。菅野 正 写真展 「平成ラストショー hp」より 同系列の三軒茶屋中央劇場(右写真中央)は1952年、世田谷通りの裏通り「なかみち街」にオープン。(「三軒茶屋中央劇場」も2013年2月14日閉館)  ①三軒茶屋東映(→三軒茶屋シネマ) ②三軒茶屋映劇(映画劇場)(現サンタワービル辺り) ③三軒茶屋中劇(中央劇場)

ユニバーサル・ソルジャー dvd 1992.jpgユニバーサル・ソルジャー1992 1.jpg「ユニバーサル・ソルジャー」●原題:UNIVERSAL SOLDIER●制作年:1992年●制作国:アメリカ●監督:ローランド・エメリッヒ●製作:アレン・シャピロ/クレイグ・ボームガーテン/ジョエル・B・マイケルズ●脚本:リチャード・ロススタイン/クリストファー・レイッチ/ディーン・デヴリン●撮影:カール・W・リンデンローブ●音楽:クリストファー・フランケ●時間:102分●出演:ジャン=クロード・ヴァン・ダム/ドルフ・ラングレン/アリー・ウォーカー/ジョセフ・マローン/エド・オロス/ジーン・デイヴィス/レオン・リッピー/ランス・ハワード/リリアン・ショウバン/チコ・ウェルズ/ジェリー・オーバック●日本公開:1992/11●配給:東宝東和(評価:★★★)
ユニバーサル・ソルジャー [DVD]

ステイン・アライブ dvd.jpgSTAYING ALIVE.jpg「ステイン・アライブ」●原題:STAYING ALIVE●制作年:1983年●制作国:アメリカ●監督:シルヴェスター・スタローン●製作:シルヴェスター・スタローン/ロバート・スティグウッド●脚本:シルヴェスター・スタローン/ノーマン・ウェクスラー●撮影:ニック・マクリーン●音楽:ビージーズ/フランク・スタローン●時間:96分●出演:ジョン・トラボルタ/シンシア・ローズ/フィノラ・ヒューズ/スティーヴ・新宿ジョイシネマ .jpgインウッド/ジュリー・ボヴァッソ/チャールズ・ウォード●日本公開:1983/12●配給:パラマウント映画=CIC●最初に観た場所:新宿ジョイシネマ(84-04-07)(評価:★★★)
新宿ジョイシネマ さよならフェスティバル.jpg新宿ジョイシネマ.jpg新宿ジョイシネマ 1947年12月「新宿地球座」としてオープン。1958(昭和33)年12月「地球会館」新築・落成、「新宿座」オープン。1984年1月「新宿ジョイシネマ」と改称。1995年7月~「新宿ジョイシネマ1」。(新宿ジョイシネマ2 1958年12月「新宿地球座」→1983年~「歌舞伎町松竹」→1995年7月~「新宿ジョイシネマ2」) 2009年5月31日(新宿ジョイシネマ1・2(地球会館)・3(中台ビル))閉館。[中写真:新宿劇場(1970年閉館)]

ランボー 82.jpgランボー1982.jpg「ランボー」●原題:FIRST BLOOD●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:テッド・コッチェフ●製作:バズ・フェイシャンズ●脚本:マイケル・コゾル/ウィリアム・サックハイム/シルヴェスター・スタローン●撮影:アンドリュー・ラズロ●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●原作:ディヴィッド・マレル「一人だけの軍隊」●時間:97分●出演:シルヴェスター・スタローン/リチャード・クレンナ/ブライアン・デネヒー/デビッド・カルーソ/ジャック・スターレット/マイケル・タルボット/デビッド・クロウレイ●日本公開:1982/10●配給:東宝東和●最初に観た場所:新宿ローヤル(84-09-24)(評価:★★★)一人だけの軍隊 ランボー (ハヤカワ文庫)
新宿ローヤル 地図.jpg新宿ローヤル.jpg新宿ローヤル劇場 88年11月閉館 .jpg
新宿ローヤル劇場(丸井新宿店裏手) 1988年11月28日閉館[カラー写真:「フォト蔵」より/モノクロ写真:高野進 『想い出の映画館』('04年/冬青社)より]

rambo 3 1988 movie.jpgランボー3/怒りのアフガン チラシ.jpg「ランボー3/怒りのアフガン」●原題:RAMBO 3●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:ピーター・マクドナルド●製作:バズ・フェイシャンズ●脚本:シルヴェスター・スタローン/シェルドン・レティック●撮影:ジョン・スタニアー●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●原作:ディヴィッド・マレル●時間:97分●出演:シルヴェスター・スタローン/リチャード・クレンナ/カートウッド・スミス●日本公開:1988/06●配給:東宝東和●最初に観た場所:歌舞伎町・新宿プラザ(88-07-10)(評価:★★)
新宿プラザ 閉館上映チラシ.jpg新宿プラザ劇場200611.jpg新宿プラザ劇場内.jpg 新宿プラザ劇場 1969年10月31日オープン、コマ劇場隣り (1,044席) 2008(平成20)年11月7日閉館

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ディズニー・アニメ中心で、作品の選抜基準がかなり恣意的。内容の割には値段が高すぎる。

世界アニメーション歴史事典.jpg(26.2 x 23.8 x 3.8 cm) ダンボ.JPG 
世界アニメーション歴史事典』 (2012/09 ゆまに書房)

 100年にわたるアニメーションの歴史を、図版と解説とで紹介したアニメの歴史事典で、アニメ映画だけでなく、テレビ番組、ゲーム、インディペンデント系映画、インターネットのアニメにいたるまでフォローした、定価8,500円の豪華本です(重い!)

 年代順に整理されていて分かりやすく、何よりも図版の配置が贅沢。その分、400頁余というページ数の割には、取り上げられている作品数に制約があり、観て楽しむ分にはいいですが、「事典」としてはどうかなという思いも。

ファンタジア.JPG 掲載されているアニメ数は700余点とのことですが、芸術アニメからディズニーの大ヒットアニメまでカバーしている分、それぞれの分野で抜け落ちを多いような気もして、作品の選抜にやや恣意性を感じました。

 日本のアニメは、「白蛇伝」('58年)が片面で小さく図版が入っているのみなのに対し、「AKIRA」('88年)が見開き両面に図版を入れての紹介、映画「ファイナルファンタジー」が片面図版入りなのに対し、「鉄腕アトム」('63年)や「千と千尋の神隠し」('01年)が、まるで邦訳版のために後から加えたかのように、図版無しの簡単な文章のみの紹介となっています(これらも、"700余点"にカウントされているのか)。

ネオ・ファンタジア.JPG 「ファンタジア」('41年、日本公開'55年)の見開き4ページにわたる紹介を筆頭に(これ、確かに名作ではある。本書にも紹介されている「ネオ・ファンタジア」('76年/伊)の方が大人向きの芸術アニメで、「ファンタジア」がレオポルド・ストコフスキーならば「ネオ・ファンタジア」の方はヘルベルト・フォン・カラヤンで迫るが、「ネオ・ファンタジア」は「ファンタジア」より35年も後に作られた作品にしては残念ながらはアニメーション部分がイマイチ)、本書全体としてかなりディズニー偏重ではないかと思われ、イギリス映画である「イエロー・サブマリン」('68年/英)なども制作の経緯が結構詳しく記されているけれども、それらも含めアメリカにおいてメジャーであるかどうかという視座が色濃いとも言えます。

イエローサブマリン.JPG 個人的には「イエロー・サブマリンン」は、「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」('64年/英)、「ヘルプ!4人はアイドル」('65年/英)などとの併映で名画座で観ましたが、いつごろのことか記憶にありません。劇場(ロードショー)公開当初はそれほど話題にならなかったといいますが、今思えば、日本の70年代ポップカルチャーに与えた影響は大きかったかも。イラストレーターの伊坂芳太良なんて、影響を受けた一人では?(この人、1970年には亡くなっているが)。

 もちろんディズニー・アニメは歴史的にも先駆的であり、「白雪姫」('37年、日本公開'50年)はディズニーの最初の「長編カラー」アニメーションですが、1937年の作品だと思うとやはりスゴイなあと思うし、個人的には自分の子供時代の弁当箱の図柄だった「ダンボ」('41年、日本公開'54年)にも思い入れはあるし、「ファンタジア」のDVDなどは大型書店に行けば児童書のコナーで簡単に購入できるなど、今も世界的にもメジャーであることは間違いないのですが...。自分の子供時代に関して言えば、「ダンボ」は劇場で観たけれど、「ファンタジア」は観なかったなあ(リヴァイバルされる機会が少なかったのかも)。今観ても、「ファンタジア」はどこよなく"情操教育"っぽい雰囲気が無きにしもあらずで、個人的に懐かしい「ダンボ」の方がやや好みか。

FANTASIA 1941.jpgファンタジア dvd.jpg「ファンタジア」●原題:FANTASIA●制作年:1940年●制作国:アメリカ●監督:ベン・シャープスティーン●製作:ウォルト・ディズニー●脚本:ジョー・グラント/ディック・ヒューマー●音楽:チャイコフスキー/ムソルグスキー/ストラヴィンスキー/ベートーヴェン/ポンキェッリ/バッハ/デュカース/シューベルト(レオポルド・ストコフスキー指揮、フィラデルフィア管弦楽団演奏)●時間:オリジナル125分/1942年リバイバル版81分/1990年リリース版115分●出演:ディームス・テーラー/レオポルド・ストコフスキー●日本公開:1955/09●配給:RKO=大映(評価:★★★☆)ファンタジア [DVD]

ネオ・ファンタジア dvd.jpg「ネオ・ファンタジア」●原題:ALLEGRO NON TROPPO●制作年:1976年●制作国:イタリア●監督・製作:ブルーノ・ボツェット●脚本:ブルーノ・ボツェット/グイド・マヌリ/マウリツィオ・ニケッティ●アニメーション:アニメーション:ギゼップ・ラガナ/ウォルター・キャバゼッティ/ジョバンニ・フェラーリ/ジャンカルロ・セレダ/ジョルジョ・バレンティニ/グイド・マヌリ/パオロ・アルビコッコ/ジョルジョ・フォーランニ●実写撮影:マリオ・マシーニ●音楽:ドビュッシー/ドヴォルザーク/ラヴェル/シベリウス/ヴィヴァルディ/ストラヴィンスキー(ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、フィラデルフィアベルリン・フィルハーモニー管弦楽団)●時間:85分●出演:マウリツィオ・ニケッティ/ネストール・ガレイ/マウリツィオ・ミケーリ/マリア・ルイーザ・ジョヴァンニーニ●日本公開:1980/01●配給:アート・フォーラム●最初に観た場所:池袋文芸坐(82-03-21)(評価:★★★)●併映:「天井桟敷の人々」(マルセル・カルネ)ネオ・ファンタジア [DVD]

白雪姫 dvd.jpg「白雪姫」●原題:SNOW WHITE AND THE SEVEN DWARFS●制作年:1937年●制作国:アメリカ●監督:デイヴィッド・ハンド●製作:ウォルト・ディズニー●脚本:テッド・シアーズ/オットー・イングランダー/ アール・ハード/ドロシー・アン・ブランク/ リチャード・クリードン/メリル・デ・マリス/ディック・リカード/ウェッブ・スミス●撮影:ボブ・ブロートン●音楽:フランク・チャーチル/レイ・ハーライン/ポール・J・スミス●原作:グリム兄弟●時間:83分●声の出演:アドリアナ・カセロッティハリー・ストックウェル/ルシール・ラ・バーン/ロイ・アトウェル/ピント・コルヴィグ/ビリー・ギルバート/スコッティ・マットロー/オーティス・ハーラン/エディ・コリンズ●日本公開:1950/09●配給:RKO(評価:★★★★)白雪姫 スペシャル・エディション [DVD]

ダンボ dvd.jpgダンボ 1941.jpg「ダンボ」●原題:DUMBO●制作年:1941年●制作国:アメリカ●監督:ベン・シャープスティーン●製作:ウォルト・ディズニー●脚本:ジョー・グラント/ディック・ヒューマー/ビル・ピート/オーリー・バタグリア/ジョー・リナルディ/ジョージ・スターリング/ウェッブ・スミス/オットー・イングランダー●音楽:オリバー・ウォレス/フランク・チャーチル●撮影:ボブ・ブロートン●原作:ヘレン・アバーソン/ハロルド・パール●時間:64分●声の出演:エド・ブロフィ/ハーマン・ビング●日本公開:1954/03●配給:RKO=大映(評価:★★★★)ダンボ スペシャル・エディション [DVD]

イエロー・サブマリン dvd.jpgイエロー・サブマリン.jpg「イエロー・サブマリン」●原題:YELLOW SUBMARINE●制作年:1968年●制作国:イギリス●監督:ジョージ・ダニング/ジャック・ストークス●製作:アル・ブロダックス●撮影:ジョン・ウィリアムズ●編集:ブライアン・J・ビショップ●時間:90分●出演:(アニメ画像として)ザ・ビートルズ(ジョン・レノン/ポール・マッカートニー/ジョージ・ハリスン/リンゴ・スター)●日本公開:1969/07●配給:ユナイテッド・アーティスツ(評価:★★★☆)
イエロー・サブマリン [DVD]


ロジャー・ラビット.JPG ロバート・ゼメキス監督の「ロジャー・ラビット」('88年)のような「実写+アニメーション合成作品」も取り上げられていますが、確かにアカデミー視覚効果賞などを受賞していて、合成技術はなかなかののものと当時は思われたものの、合成を見せるためだけの映画になっている印象もあり、キャラクターが飛び跳ねてばかりいて観ていて落ち着かない...まあ、アメリカのトゥーン(アニメーションキャラクター)の典型的な動きなのだろうけれど、これもまたディズニー作品。但し、この作品以降、「リジー・マグワイア・ムービー」('03年)まで15年間、ディズニーは実写+アニメーション合成作品を作らなかったことになります(最も最近の実写+アニメーション合成作は「魔法にかけられて」('07年))。まあ、実写とアニメの合成は、作品全体のごく一部分としてならば、ジーン・ケリーがアニメ合成でトム&ジェリーと踊る「錨を上げて」('45年/米)の頃からあるわけだけれど。

ロジャー・ラビット dvd.jpg「ロジャー・ラビット」●原題:WHO FRAMED ROGER RABBIT●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・ゼメキス●アニメーション監督:リチャード・ウィリアムス●製作:フランク・マーシャル/ロバート・ワッツ●脚本:ジェフリー・プライス/ピーター・シーマン●撮影:ディーン・カンディ●音楽:アラン・シルヴェストリ●原作:ゲイリー・K・ウルフ●時間:113分●出演:デボブ・ホスキンス/クリストファー・ロイド/ジョアンナ・キャシディ/スタッビー・ケイ/アラン・ティルバーン/リチャード・ルパーメンティア●日本公開:1988/12●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場所:渋谷スカラ座(88-12-04)(評価:★★)ロジャー・ラビット [DVD]

錨を上げて アニメ.jpg錨を上げて.jpg「錨を上げて」●原題:ANCHORS AWEIGH●制作年:1945年●制作国:アメリカ●監督:ジョージ・シドニー●製作:ジョー・パスターナク●脚本:イソベル・レナート●撮影:ロバート・プランク/チャールズ・P・ボイル●音楽監督:ジョージー・ストール●原作:ナタリー・マーシン●時間:140分●出演:フランク・シナトラ/キャスリン・グレイソン/ジーン・ケリー/ホセ・イタービ /ディーン・ストックウェル●日本公開:1953/07●配給:MGM日本支社●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

 冒頭の地域別アニメ史の要約は「北米」「西欧」「ロシア・東欧」「アジア」という区分になっていますが、本文中ではアメリカがやはり圧倒的に多いです(著者のスティーヴン・キャヴァリアは、アニメ制作キャリア20年の英国人で、ディズニーの監督もしたことがあるとのことだが、何という作品を監督したのかよく分からない)。

雪の女王.jpg 芸術アニメに関して言えば、アレクサンドル・ペドロフの「老人と海」('99年/露・カナダ・日)は紹介されていますが、山村浩二監督の「頭山」('02年)は無く(加藤久仁生監督の「つみきのいえ」('08年)はある)、伝統的に芸術アニメの先進国であるチェコの作品などは、カレル・ゼーマンの「悪魔の発明」('58年)は入っていますが「水玉の幻想」('48年)などは入っておらず、ロシアの作品は、雪の女王 dvd.jpg「イワンと仔馬」('47年)は図版無しの文章のみの紹介で、「雪の女王」('57年)に至っては「イワンと仔馬」の解説文の中でその名が出てくるのみ、同じく、ユーリ・ノルシュテインの「霧の中のハリネズミ(霧につつまれたハリネズミ)」('75年)も、日本でも絵本にまでなっているくらい有名な作品ですが、「話の話」('79年)の解説文の中でその名が出てくるのみで、その「話の話」の図版さえもありません(「話の話」が「霧の中のハリネズミ」の"続編"として作られたと書いてあるが、それぞれ別作品ではないか)。これでは日本人だけでなく、東欧人やロシア人の自国のアニメを愛するファンも怒ってしまうのでは?

老人と海(99年公開).jpgアニメーション「The Old Man and the Sea(老人と海)」 by Alexandre Petrov(アレクサンドル・ペトロフ) 1999.jpg 「老人と海」●原題:THE OLD MAN AND THE SEA●制作年:1999年●制作国:ロシア/カナダ/日本●監督・脚本:アレクサンドル・ペドロフ/和田敏克●製作:ベルナード・ラジョア/島村達夫●撮影:セルゲイ・レシェトニコフ●音楽:ノーマンド・ロジャー●原作:アーネスト・ヘミングウェイ●時間:23分●日本公開:1999/06●配給:IMAGICA●最初に観た場所:東京アイマックス・シアター (99‐06‐16) (評価★★★☆)●併映:「ヘミングウェイ・ポートレイト」(アレクサンドル・ペトロフ)●アニメーション老人と海 [DVD]」('99年/ロシア/カナダ/日本)

雪の女王 dvd.jpg「雪の女王」●原題:Снежная королев(スニェージナヤ・カラリェバ)●制作年:1957年●制作国:ソ連●監督:レフ・アタマノフ●脚本:レフ・アタマノフ/G・グレブネル/N・エルドマン●音楽:A.アイヴァジャン●原作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン●時間:63分●声の出演:Y.ジェイモー/A.カマローワ/M.ババノーワ/G.コナーヒナ/V.グリプコーフ●公開:1960/01/1993/08 ●配給:NHK/日本海映画●最初に観た場所:高田馬場ACTミニシアター(84-01-14)(評価:★★★★)●併映:「せむしの仔馬」(イワノフ・ワーノ)

雪の女王 [DVD]」('57年/ソ連)


霧の中のハリネズミ.jpg「霧の中のハリネズミ(霧につつまれた霧の中のハリネズミ 1.jpgユーリ・ノルシュテイン作品集.jpgハリネズミ)」●原題:Ёжик в тумане / Yozhik v tumane●制作年:1975年●制作国:ソ連●監督:ユーリイ・ノルシュテイン●脚本:セルゲイ・コズロフ●音楽:ミハイール・メイェローヴィチ●撮影:ナジェージダ・トレシュチョーヴァ●原作:セルゲイ・コズロフ●時間:10分29秒●声の出演:アレクセーイ・バターロフ/マリヤ・ヴィノグラドヴァ/ヴャチェスラーフ・ネヴィーヌィイ●公開:2004/07(1988/10 ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント【VHS】)●配給:ふゅーじょんぷろだくと=ラピュタ阿佐ヶ谷(評価:★★★★)

ユーリ・ノルシュテイン作品集 [DVD]

 結果的には、アメリカのアニメ史、特にディズニー・アニメに絞って追っていく分にはいい本かも(と思ったら、版元の口上にも、「ディズニー主要作品も網羅した本格的な初のアニメファン必備書」とあった)。個人的には、懐かしいアニメもありましたが、一つ一つの作品解説がそう詳しいわけでもなく(但し、制作の裏話などではトリビアなエピソードも多くあったりする)、むしろアメリカ・アニメ史の中でのそれら作品の位置づけを確認できる、といった程度でしょう。内容的に見て、事典と言うより個人の著書の色合いが濃く、買うには値段が高すぎる本でした。

渋谷東宝会館2.jpg渋谷スカラ座 渋谷東宝会館4階(1階は渋谷東宝劇場)。1989年2月26日閉館。1991年7月6日、跡地に渋東シネタワーが開館。

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見ていると眠れなくなってしまいそうな本。美麗本であれば、ファンには垂涎の一冊。

怪奇SF映画大全2.jpg メトロポリス.JPG アマゾンの半漁人.JPG
怪奇SF映画大全』(30 x 23 x 2.4 cm) 「メトロポリス」('27年) 「アマゾンの半魚人」('54年)

図説ホラー・シネマ.jpgGraven Images 1992.jpgGraven Images 2.jpg 先に『図説 モンスター―映画の空想生物たち(ふくろうの本)』('07年/河出書房新社)を取り上げましたが、本書(原題"Graven Images" 1992)は怪奇映画だけでなくSFホラーまで領域を拡げた「映画ポスター+解説集」であり、「カリガリ博士」「キング・コング」から「吸血鬼ドラキュラ」「2001年宇宙の旅」まで怪奇・SF・ファンタジー映画の歴史をポスターの紹介と併せて解説したまさに永久保存版であり、1910~60年代まで450本の映画及びポスターが紹介されています。
"Graven Images: The Best of Horror, Fantasy, and Science-Fiction Film Art from the Collection of Ronald V. Borst"

 ポスターの紹介点数もさることながら、大型本の利点を生かしてそれらを大きくゆったりと配置しているためかなり見易く、また、迫力のあるものとなっています(表紙にきているのはボリス・カーロフ主演の(「フランケンシュタイン」ではなく)「ミイラ再生」('32年)のポスター)。

 「ふくろうの本」の方が映画そのものの解説が詳しいのに比べ、こちらはポスターそのものを見せることが主で、その余白に映画の解説が入るといった作りになっていますが、それでも解説も丁寧。「10年代と20年代」から「60年代」まで年代ごとの"編年体"の並べ方になっているため、時間的経緯を軸に怪奇SF映画の歴史を辿るのにはいいです。

 更に各章の冒頭に、ロバート・ブロック(「サイコ」の原作者)、レイブラッド・ベリ、ハーラン・エリスン、クライブ・パーカーなどの作家陣が、年代ごとの作品の解説を寄せていますが(序文はスティーヴン・キング)、それぞれエッセイ風の文章でありながら、作品解説としてもかなり突っ込んだものになっています。

「キング・コング」('33年)
kingkong 1933 poster.jpgキング・コング 1933.jpg ポスターに関して言えば、60年代よりも前のものの方がいいものが多いような印象を受けました。個人的には、「キング・コング」('33年)のポスターが見開き4ページにわたり紹介されているのが嬉しく、「『美女と野獣』をフロイト的に改作」したものとの解説にもナルホドと思いました。映画の方は、ストップ・アニメーションでの動きはぎこちないものであるにも関わらず、観ていてコングについ感情移入してしまいますが、意外とこの時のコングは小さかったかも...現代的感覚から見るとそう迫力は感じられません。但し、当時は興業的に大成功を収め(ポスターも数多く作られたが、本書によれば、実際の映画の中でのコングの復讐_1.jpgコングの姿を忠実に描いたのは1点[左上]のみとのこと)、その年の内に「コングの復讐」('33年)が作られ(原題は「SON OF KONG(コングの息子)」)公開されました。 「コングの復讐」('33年)[上]

紀元前百万年 ポスター.jpg
紀元前百万年 スチール.jpg 因みに、アメリカやイギリスでは「怪獣映画」よりも「恐竜映画」の方が主に作られたようですが、日本のように着ぐるみではなく、模型を使って1コマ1コマ撮影していく方式で、ハル・ローチ監督、ヴィクター・マチュア、キャロル・ランディス主演の「紀元前百万年」('40年)ではトカゲやワニに作り物の角やヒレをつけて撮る所謂「トカゲ特撮」なんていう方法も用いられましたが、何れにしても動きの不自然さは目立ちます。そもそも恐竜と人類が同じ時代にいるという状況自体が進化の歴史からみてあり得ない話なのですが...。
     
one million years b.c. poster.jpg この作品のリメイク作品が「恐竜100万年」('66年)で、"全身整形美女"などと言われたラクエル・ウェルチが主演でしたが(100万年前なのにラクェル・ウェルチ   .jpg彼女はバッチリ完璧にハリウッド風のメイキャップをしている)、やはりここでも模型を使っています。結果的に、ラクエル・ウェルチの今風のメイキャップでありながらも、何となくノスタルジックな印象を受けて、すごく昔の映画のように見えてしまいます(CGの出始めの頃の映画とも言え、なかなか微妙な味わいのある作品?)。

King Kong 02.jpg「キングコング」(1976年)1.jpg「キングコング」(1976年).jpg それが、その10年後の、ジョン・ギラーミン監督のリメイク版「キングコング」('76年)(こちらは邦題タイトル表記に中黒が無い)では、キング・コングの全身像が出てくる殆どのシーンは、リック・ベイカーという特殊メイクアーティストが自らスーツアクターとなって体当たり演技したものであったとのことで、ここにきてアメリカも、「ゴジラ」('54年)以来の日本の怪獣映画の伝統である"着ぐるみ方式"を採り入れたことになります(別資料によれば、実物大のロボット・コング(20メートル)も作られたが、腕や顔の向きを変える程度しか動かせず、結局映画では、コングがイベント会場で檻を破るワンシーンしか使われなかったという)。

フランケンシュタインの花嫁 poster.jpg 「フランケンシュタイン」('31年)「フランケンシュタインの花嫁」('35年)のポスターもそれぞれ見開きで各種紹介されていて、本書によれば、ボリス・カーロフは自分の演じる怪物にセリフがあることを不満に思っていたそうな(普通、逆だけどね)。その後も続々とフランシュタイン物のポスターが...。やはり、フランケンシュタインはSFまで含めても怪奇物の王者だなあと。

cat people 1942 poster.jpgthe thing 1951 poster.jpgforbbidden planet 1956 poster.jpg 40年代では「キャット・ピープル」('42年)や「ミイラ男」シリーズ、50年代では「遊星よりの物体X」('51年)「大アマゾンの半魚人」('54年)などのポスターがあるのが楽しく、50年代では日本の「ゴジラ」('54年)のポスターもあれば、「禁断の惑星」('56年)「宇宙水爆線」('55年)のポスターもそれぞれ見開きで各種紹介されています(50年代の最後にきているのはヒッチコックの「サイコ」('60年)のポスター)。

「キャット・ピープル」('42年)/「遊星よりの物体X」('51年)/「禁断の惑星」('56年)

 「キャット・ピープル」はポール・シュレイダー監督、ナスターシャ・キンスキー主演で同タイトル「キャット・ピープル」('81年)としてリメイクされ(オリジナルは日本では長らく劇場未公開だったが1988年にようやく劇場公開が実現したため、多くの人がリメイク版を先に観たことと思う)、「遊星よりの物体X」は、ジョン・カーペンター監督により「遊星からの物体X」('82年)としてリメイクされています。

cat people 1942 01.jpgcat people 1982.jpg 前者は、オリジナルでは、猫顔のシモーヌ・シモンが男性とキスするだけで黒豹に変身してしまう主人公を演じていますが、ストッキングを脱ぐシーンとか入浴シーン、プールでの水着シーンなどは当時としてはかなりエロチックな方だったのだろうなあと。実際に黒豹になるナスターシャ「キャット・ピープル」.jpg場面は夢の中で暗示されているのみで、それが主人公の妄想であることを示唆しているのに対し、リメイク版では、ナスターシャ・キンスキーが男性と交わると実際に黒豹に変身します。ナスターシャ・キンスキーの猫女(豹女?)はハマリ役で、後日「あの映画では肌を露出する場面が多すぎた」と述懐している通りの内容でもありますが、構成がイマイチのため、ストーリーがだらだらしている上に分かりにくいのが難点でしょうか。

the thing 1951.jpgthe thing 1982.jpg 後者「遊星からの...」は、オリジナル「遊星よりの...」の"植物人間"のモチーフを更に"擬態"にまで拡げてアレンジ、犬の顔がバナナの皮が剥けるように割けるシーンや、首を切られて落ちた頭に足が生えてカニのように逃げていくシーンのSFXはスゴかった...。これを観てしまうと、オリジナルはやや大人し過ぎるか。リメイクの方がむしろジョン・W・キャンベルの原作『影が行く』に忠実な面もあり、オリジナルを超えていたかも。SFXを駆使して逆にオリジナルの良さを損なう作品が多い中、誰が「偽人間」なのかと疑心暗鬼に陥った登場人物らの心理をドラマとして丁寧に描くことで成功しています。

フェイ・レイ.jpg2フェイ・レイ.jpgキング・コング 1976 ジェシカ・ラング.jpg 「キング・コング」('33年)のリメイク、ジョン・ギラーミン監督の「キングコング」('76年)は、オリジナルは、ヒロイン(フェイ・レイ)に一方的に恋したコングが、ヒロインをさらってエンパイアステートビルによじ登り、コングの手の中フェイ・レイは恐怖のあまりただただ絶叫するばかりでしたが(このため、フェイ・レイ"絶叫女優"などと呼ばれた)、King Kong 1976 03.jpgリメイク版のヒロイン(ジェシカ・ラング)は最初こそコングを恐れるものの、途中からコングを慈しむかのように心情が変化し、世界貿易センタービルの屋上でヘリからの銃撃を受けるコングに対して「私といれば狙われないから」と言うまでになるなど、コングといわば"男女間的コミュにケーション"をするようになっています(そうしたセリフ自体は観客に向けての解説か?)。但し、「美女と野獣」のモチーフが、それ自体は「キング・コング」の"正統的"なモチーフであるにしてもここまで前面に出てしまうと、もう怪獣映画ではなくなってしまっている印象も。個人的には懐かしい映画であり、郵便配達は二度ベルを鳴らす 1981.jpg興業的にもアメリカでも日本でも大ヒットしましたが、後に観直してみると、そうしたこともあってイマイチの作品のように思われました。ジェシカ・ラングも「郵便配達は二度ベルを鳴らす」('81年)で一皮むける前の演技であるし...2005年にナオミ・ワッツ主演の再リメイク作品が作られましたが、ナオミ・ワッツもジェシカ・ラング同様、以降の作品において"演技派女優"への転身を遂げています。
 因みに、ボブ・ラフェルソン監督、ジャック・ニコルソン、ジェシカ・ラング主演の「郵便配達は二度ベルを鳴らす」はジェームズ・M・ケインの原作の4度目の映画化作品でしたが(それまでに米・仏・伊で映画化されている)、その中で批評家の評価は最も高く、個人的もルキノ・ヴィスコンティ監督版('42年/伊、出演はマッシモ・ジロッティとクララ・カラマイ)を超えていたように思います。
ジェシカ・ラング in「郵便配達は二度ベルを鳴らす」('81年)

 「蠅男の恐怖」('58年)のリメイク、デヴィッド・クローネンバーグ監督の「ザ・フライ」('86年)などは、原作の"ハエ男"化していく主人公の哀しみをよく描いていたように思われ、こちらはもオリジナル以上と言えるのではないかと思います。ラストは、視覚的には"蠅男"が"蟹男"に見えるのが難点ですが、ドラマ的にはしんみりさせられるものでした。

 見ていると眠れなくなってしまいそうな本であり、ファンには垂涎の一冊と言えますが、絶版中。発売時本体価格6,800円で、古本市場でも美麗本だとそう安くなっていないのではないかな。そこだけが難点でしょうか。

キングコング 髑髏島の巨神 日本ポスター.jpgキングコング 髑髏島の巨神 日本ポスター2.jpg (キングコングについては2017年に新進気鋭の監督ジョーダン・ヴォート=ロバーツによる「キングコング:髑髏島の巨神」('17年/米)が作られ、シリーズのスピンオフにあたる作品とのことだが、主役はあくまでキングコング。1973年の未知の島髑髏島がキングコング 髑髏島の巨神 01.jpg舞台で、一応、コングが島の守り神であったり、主人公の女性を救ったりと、オリジナルのコングに回帰している。コングのほかにいろいろな古代生物が出てくるが、コングも含め全部CG。コングはまずまずだが、天敵の大蜥蜴などは何だかアニメっぽかったように思えた(日本アニメへのオマージュがキングコング 髑髏島の巨神 02.jpg込められているようだ)。本作のプレゼンテーションに参加した「シン・ゴジラ」('16年/東宝)の樋口真嗣監督は、本作のコングについて、'33年のオリジナル版キングコングのような人形劇の動きに近く、2005年版で描かれたような巨大なゴリラではなく、どちらかといえばリック・ベイカー(1976年版コングのスーツアクター)っぽいと語したそうだが、おそらくモーション・キャプチャを使っているせいだろう。同じCG主体でも、「ジュラシック・パーク」('93年/米)が登場した時のよう新奇性もなく(もうCG慣れしてしまった?)、その上、サミュエル・L・ジャクソンやオスカー女優のブリー・ラーソンが出ている割にはドラマ部分も弱くて、人間側の主人公が誰なのかはっきりしないのが痛い。)

キング・コング [DVD]
キング・コング 1933 dvd.jpgキング・コング 02.jpg「キング・コング」●原題:KING KONG●制作年:1933年●制作国:アメリカ●監督:メリアン・C・クーパー/アーネスト・B・シェードサキング・コング(オリジナル).jpgック●製作:マーセル・デルガド●脚本:ジェームス・クリールマン/ルース・ローズ●撮影:エドワード・リンドン/バーノン・L・ウォーカー●音楽:マックス・スタイナー●時間:100分●出演:フェイ・レイ/ロバート・アームストロング/ブルース・キャボット/フランク・ライチャー/サム・ハーディー/ノーブル・ジョンソン●日本公開:1933/09●配給:ユニヴァーサル映画●最初に観た場所:池袋・文芸座ル・ピリエ(84-06-30)(評価:★★★)●併映:「紀元前百万年」(ハル・ローチ&ジュニア)

紀元前百万年 dvd.jpg紀元前百万年 dvd.jpg「紀元前百万年」●原題:ONE MILLION B.C.●制作年:1940年●制作国:アメリカ●監督:ハル・ローチ&ジュニア●製作:マーセル・デルガド●脚本:マイケル・ノヴァク/ジョージ・ベイカー/ジョセフ・フリーカート●撮影:ノーバート・ブロダイン●音楽:ウェルナー・リヒャルト・ハイマン●時間:80分●出演:ヴィクター・マチュア/キャロル・ランディス/ロン・チェイニー・Jr/ジョン・ハバード/メイモ・クラーク/ジーン・ポーター●日本公開:1951/04●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:池袋・文芸座ル・ピリエ(84-06-30)(評価:★★★)●併映:「キング・コング」(ジュニアメリアン・C・クーパー/アーネスト・B・シェードサック) 「紀元前百万年 ONE MILLION B.C. [DVD]

恐竜100万年 [DVD]
恐竜100万年 dvd.jpg恐竜100万年 ラクエル・ウェルチ.jpg「恐竜100万年」●原ラクエルウェルチ71歳.jpg題:ONE MILLION YEARS B.C.●制作年:1966年●制作国:イギリス・アメリカ●監督:ドン・チャフィ●製作:マイケル・カレラス●脚本:ミッケル・ノバック/ジョージ・ベイカー/ジョセフ・フリッカート●撮影:ウィルキー・クーパー●音楽:マリオ・ナシンベーネ●時間:105分●出演:ラクエル・ウェルチ/ジョン・リチャードソン/パーシー・ハーバート/ロバート・ブラウン/マルティーヌ=ベズウィック/ジェーン・ウラドン●日本公開:1967/02●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:杉本保男氏邸 (81-02-06) (評価:★★★)  Raquel Welch age71

フランケンシュタインの花嫁 dvd.jpg「フランケンシュタインの花嫁」●原題:BRIDE OF FRANKENSTEIN●制作年:1935年●制作国:アメリカ●監督:ジェイムズ・ホエール●製作:カール・レームル・Jr●脚本:ギャレット・フォート/ロバート・フローリー/フランシス・エドワード・ファラゴー●撮影:ジョン・J・メスコール●音楽:フランツ・ワックスマン●時間:75分●出演:ボリス・カーロフ/エルザ・ランチェスター/コリン・クライヴ/アーネスト・セシガー●日本公開:1935/07●配給:ユニヴァーサル映画●最初に観た場所:渋谷ユーロ・スペース (84-07-21)(評価:★★★★)●併映:「フランケンシュタイン」(ジェイムズ・ホエール)
フランケンシュタインの花嫁[DVD]

CAT PEOPLE 1942 .jpgキャット・ピープル 1942 DVD.jpg 「キャット・ピープル」●原題:CAT PEOPLE●制作年:1942年●制作国:アメリカ●監督:ジャック・ターナー●製作:ヴァル・リュウトン●脚本:ドゥィット・ボディーン●撮影:ニコラス・ミュスラカ●音楽:ロイ・ウェッブ●時間:73分●出演:シモーヌ・シモン/ケント・スミス/ジェーン・ランドルフ/トム・コンウェイ/ジャック・ホルト●日本公開:1988/05●配給:IP●最初に観た場所:千石・三百人劇場(88-05-04)(評価:★★★)●併映:「遊星よりの物体X」(クリスチャン・ナイビー) 「キャット・ピープル [DVD]

シモーヌ・シモン(1910-2005)

「キャット・ピープル」●原題:CAT PEOPLE●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:ポール・シュレイダー●製作:チャールズ・フライズ●脚本:アラン・オームキャット・ピープル 1982.jpgズビー●撮影:ジョン・ベイリー●音楽:ジョルジキャット・ピープル dvd.jpgキャット・ピープル ポスター.jpgオ・モロダー(主題歌:デヴィッド・ボウイ(作詞・歌)●原作(オリジナル脚本):ドゥイット・ボディーン●時間:118分●出演:ナスターシャ・キンスキー/マルコムジョン・ハード/ アネット・オトウール/ルビー・ディー●日本公開:1982/07●配給:IP●最初に観た場所:新宿(文化?)シネマ2(82-07-18)(評価:★★☆)
キャット・ピープル [DVD]」/チラシ

禁断の惑星 dvd.jpg禁断の惑星 ポスター(東宝).jpg「禁断の惑星」●原題:FORBIDDEN EARTH●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:フレッド・マクラウド・ウィルコックス●製作:ニコラス・ネイファック●脚本:シリル・ヒューム●撮影:ジョージ・J・フォルシー●音楽:ルイス・アンド・ベベ・バロン●原作:アーヴィング・ブロック/アレン・アドラー「運命の惑星」●時間:98分●出演:ウォルター・ピジョン/アン・フランシス/レスリー・ニールセン/ウォーレン・スティーヴンス/ジャック・ケリー/リチャード・アンダーソン/アール・ホリマン/ジョージ・ウォレス●日本公開:1956/09●配給:MGM●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-04-29)(評価:★★★☆)
禁断の惑星 [DVD]」/パンフレット

宇宙水爆戦 dvd.jpg「宇宙水爆戦」.bmp「宇宙水爆戦」●原題:THIS ISLAND EARTH●制作年:1955年●制作国:アメリカ●監督:ジョセフ・ニューマン●製作:ウィリアム・アランド●脚本:フランクリン・コーエン/エドワード・G・オキャラハン●撮影:クリフォード・スタイン/デビッド・S・ホスリー●音楽:ジョセフ・ガ―シェンソン●原作: レイモンド・F・ジョーンズ●時間:86分●出演:フェイス・ドマーグ/レックス・リーズン/ジェフ・モロー/ラッセル・ジョンソン/ランス・フラー●配給:ユニバーサル・ピクチャーズ●日本公開:1955/12)●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-05-17)(評価:★★★☆)
宇宙水爆戦 -HDリマスター版- [DVD]

遊星よりの物体X3.jpg遊星よりの物体X dvd.jpg「遊星よりの物体X」●原題:THE THING●制作年:1951年●制作国:アメリカ●監督:クリスチャン・ナイビー●製作:ハワード・ホークス●脚本:チャールズ・レデラー●撮影:ラッセル・ハーラン●音楽:ディミトリ・ティオムキン●原作:ジョン・W・キャンベル「影が行く」●時間:87分●出演:マーガレット・シェリダン/ケネス・トビー/ロバート・コーンスウェイト/ダグラス・スペンサー/ジェームス・R・ヤング/デウェイ・マーチン/ロバート・ニコルズ/ウィリアム・セルフ/エドゥアルド・フランツ●日本公開:1952/05●配給:RKO●最初に観た場所:千石・三百人劇場(88-05-04)(評価:★★★)●併映:「キャット・ピープル」(ジャック・ターナー)
遊星よりの物体X [DVD]

遊星からの物体Xd.jpg遊星からの物体X dvd.jpg「遊星からの物体X」●原題:THE THING●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・カーペンター●製作:デイヴィッド・フォスター/ローレンス・ターマン/スチュアート・コーエン●脚本:ビル・ランカスター●撮影:ディーン・カンディ●音楽:エンニオ・モリコーネ●原作:ジョン・W・キャンベル「影が行く」●時間:87分●出演:カート・ラッセル/A・ウィルフォード・ブリムリー/リチャード・ダイサート/ドナルド・モファット/T・K・カーター/デイヴィッド・クレノン/キース・デイヴィッド●日本公開:1982/11●配給:ユニヴァーサル=CIC●最初に観た場所:三軒茶屋東映(84-07-22)(評価:★★★★)●併映:「エイリアン」(リドリー・スコット)
遊星からの物体X(復刻版)(初回限定生産) [DVD]

King Kong 01.jpgking kong 1976.jpg「キングコング」●原題:KING KONG●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ギラーミン●製作:ディノ・デ・ラウレンティス●脚本:ロレンツォ・センプル・ジュニア●撮影:リチャード・H・クライン●音楽:ジョン・バリー●時間:134分●出演:ジェフ・ブリッジス/ジェシカ・ラング/チャールズ・グローディン/ジャック・オハローラン /ジョン・ランドルフ/ルネ・オーベルジョノワ/ジュリアス・ハリス/ジョン・ローン/ジョン・エイガー/コービン・バーンセン/エド・ローター ●日本公開:1976/12●配給:東宝東和●最初に観た場所:新宿プラザ劇場(77-01-04)(評価:★★★)

郵便配達は二度ベルを鳴らす [DVD].jpg郵便配達は二度ベルを鳴らす br.jpg「郵便配達は二度ベルを鳴らす」●原題:THE POSTNAN ALWAYS RINGS TWICE●制作年:1981年●制作国:アメリカ●監督:ボブ・ラフェルソン●製作:チャールズ・マルヴェヒル/ ボブ・ラフェルソン●脚本:デヴィッド・マメット●撮影:スヴェン・ニクヴィスト●音楽:マイケル・スモール●原作:ジェイムズ・M・ケイン「郵便配達は二度ベルを鳴らす」●時間:123分●出演:ジャック・ニコルソン/ジェシカ・ラング/ジョン・コリコス/マイケル・ラーナー/ジョン・P・ライアン/ アンジェリカ・ヒューストン/ウィリアム・トレイラー●日本公開:1981/12●配給:日本ヘラルド●最初に観た場所:三鷹オスカー (82-08-07)●2回目:自由ヶ丘・自由劇場 (84-09-15)(評価★★★★)●併映:(1回目)「白いドレスの女」(ローレンス・カスダン(原作:ジェイムズ・M・ケイン))●併映:(2回目)「ヘカテ」(ダニエル・シュミット)
郵便配達は二度ベルを鳴らす [DVD]」「郵便配達は二度ベルを鳴らす [Blu-ray]

ザ・フライ dvd.jpg「ザ・フライ」●原題:THE FLY●制作年:1986年●制作国:アメリカ●監督・脚本:デヴィッド・クローネンバーグ●製作:スチュアート・コーンフェルド●撮影:マーク・アーウィン●音楽:ハワード・ショア●原作:ジョルジュ・ランジュラン「蠅」●時間:87分●出演:ジェフ・ゴールドブラム/ジーナ・デイヴィス/ジョン・ゲッツ/ジョイ・ブーシェル●日本公開:1987/01●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:大井武蔵野舘 (87-07-19)(評価★★★★)●併映:「未来世紀ブラジル」(テリー・ギリアム)
ザ・フライ <特別編> [DVD]

キングコング 髑髏島の巨神24.jpgキングコング 髑髏島の巨神es.jpgキングコング 髑髏島の巨神 海外.jpg「キングコング:髑髏島の巨神」●原題:KONG:SKULL ISLAND●制作年:2017年●制作国:アメリカ●監督:ジョーダン・ヴォート=ロバーツ●脚本:ダン・ギルロイ/マックス・ボレンスタイン/デレク・コノリー●原案:ジョン・ゲイティンズ/ダン・ギルロイ●製作:トーマス・タル/ジョン・ジャシュー/アレックス・ガルシア/メアリー・ペアレント●撮影:ラリー・フォン●音楽:ヘンリー・ジャックマン●時間:118分●出演:トム・ヒドルストン/キングコング髑髏島の巨神ド.jpgブリー・ラーソン キング・コング.jpgサミュエル・L・ジャクソン/ジョン・グッドマン/ブリー・ラーソン/ジン・ティエン/トビー・ケベル/ジョン・オーティス/コーリー・ホーキンズ/ジェイソン・ミッチェル/シェー・ウィガム/トーマス・マン/テリー・ノタリー/ジョン・C・ライリー●日本公開:2017/03●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:OSシネマズ ミント神戸 (17-03-29)(評価★★☆)
旧神戸新聞会館9.jpgミント神戸6.jpgミント神戸.jpgOSシネマズ ミント神戸 神戸三宮・ミント神戸(正式名称「神戸新聞会館」。阪神・淡路大震災で全壊した旧・神戸新聞会館跡地に2006年10月完成)9F~12F。全8スクリーン総座席数1,631席。

阪神・淡路大震災で廃墟と化した旧・神戸新聞会館(1995.2.3大木本美通氏撮影)

Raquel Welch
Raquel Welch RPT 0005.jpgRaquel Welch RPT.jpgRaquel Welch RPT 0006.jpg




 
 
 
  
《読書MEMO》
●主な収録作品
【10~20年代】エッセイ=ロバート・ブロック
カリガリ博士/吸血鬼ノスフェラトゥ/巨人ゴーレム/ロスト・ワールド/猫とカナリヤ/メトロポリス/狂へる悪魔/ダンテ地獄篇/バット/オペラの怪人/真夜中すぎのロンドン/プラーグの大学生/他
【30年代】エッセイ=レイ・ブラッドベリ
魔人ドラキュラ/フランケンシュタイン/フランケンシュタインの花嫁/透明人間/モルグ街の殺人/悪魔スヴェンガリ/M/怪人マブゼ博士/倫敦の人狼/猟奇島/恐怖城/怪物団/肉の蝋人形/キング・コング/オズの魔法使/ミイラ再生/獣人島/バスカヴィル家の犬/他
【40年代】エッセイ=ハーラン・エリスン
狼男の殺人/バグダッドの盗賊/猿人ジョー・ヤング/キャット・ピープル/ミイラの復活/謎の下宿人/スーパーマン/夢の中の恐怖/凸凹フランケンシュタインの巻/美女と野獣/バッタ君町に行く/死体を売る男/猿の怪人/他
【50年代】エッセイ=ピーター・ストラウブ
遊星よりの物体X/地球最後の日/宇宙戦争/大アマゾンの半魚人/原子怪獣現わる/ゴジラ/放射能X/タランチュラの襲撃/禁断の惑星/宇宙水爆戦/海底二万哩/蠅男の恐怖/吸血鬼ドラキュラ/ミイラの幽霊/狩人の夜/空の大怪獣ラドン/ボディ・スナッチャー 恐怖の街/シンドバッド7回目の航海/戦慄!プルトニウム人間/他
【60年代】エッセイ=クライヴ・パーカー
サイコ/血だらけの惨劇/ローズマリーの赤ちゃん/忍者と悪女/血塗られた墓標/吸血狼男/テラー博士の恐怖/ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/タイム・マシン/恐竜100万年/猿の惑星/2001年宇宙の旅/怪談/鳥/何がジェーンに起ったか?/華氏451/バーバレラ/博士の異常な愛情/ミクロの決死圏/血の祝祭日/他

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ピロスマニの人と生涯、その作品を思い入れたっぷりに解説。作品集と併せて読むのにいい。

放浪の画家ニコ・ピロスマニ2.jpg   ニコ・ピロスマニ 1862‐1918.jpg(29.8 x 21.2 x 3 cm) ピロスマニ dvd.jpg
放浪の画家 ニコ・ピロスマニ』 作品集『ニコ・ピロスマニ 1862‐1918』  「ピロスマニ [DVD]

ニコ・ピロスマニ 1862‐19183664.JPG 「百万本のバラ」という歌のモデルとして以前から知られ、更に、ゲオルギー・シェンゲラーヤ(Georgy Shengelaya)監督の映画「ピロスマニ」('69年/グルジア共和国)で広く知られるようになった画家ニコ・ピロスマニ(Niko Pirosmani、1862-1918)について、岩波ホールに入社してこの映画の公開に携わり、岩波ホールの企画・広報の仕事をしながら、自らの創作絵本を発表、絵本の背景にピロスマニの絵画イメージを用いるなどして国際的な絵本画家の賞をも受賞している著者が、ピロスマニを生んだグルジアという国の歴史と文化、ピロスマニの人と生涯、その作品について解説した本であり、また、そうした著者であるだけに、ピロスマニに対する思い入れに満ちた本でもあります。

作品集『ニコ・ピロスマニ 1862‐1918』より

 本書によれば、ピロスマニは、貧しいながらも家族の愛に包まれた幼年時代を送っていたようですが、これもその作品からの想像であり、8歳で孤児になったから後の少年時代がどのようであったかはよく分かっていないらしいです(そもそも生まれた年も不確か)。絵を描くことにのみ生きがいを見出し、一つの仕事に長くとどまることが出来ず、20代半ばで路上で一人になってからは、生涯を通して殆ど放浪生活のような暮らしを送り、その間、気分の高揚と沈滞を繰り返していたようです。

 放浪の先々で、居酒屋など絵を描いて(時に看板なども描いて)収入を得て暮らし(画材も絵具も店の人が買い与えていたりしたらしい)、生涯に描いた作品は2000点以上と言われているけれど、現存が確認されているものは200点余りに過ぎず、一方、グルジアの古い料理店などに行くと、今でも彼の作品があったりするらしいですが、ピロスマニの絵は、グルジアの人々にとっては精神文化的な支えになっているとのことです(ピロスマニの肖像と共に紙幣のデザインにもなっている)。

ピロスマニ3654.JPG 本書の後半は、彼の作品ひとつひとつの作品の解説になっていて、アンリ・ルソーに近いとされたり、"へたうま"などと言われる彼の作品ですが、この部分を読むと、彼の孤独な人生を投射させつつ、グルジアの土地と文化もしっかり反映させたオリジナリティ性の高い作品群であることが窺えます(著者は、作風としてはルオーの絵画やイコンに描かれる宗教画に近いとも)。

ニコ・ピロスマニ 1862‐19183658.JPG 作品集としては、本書にも紹介されている『ニコ・ピロスマニ 1862‐1918』('08年/文遊社)が定番でしょうか。カラー図版で189点収録、ということは、存が確認されている217点のほぼ9割近くを網羅していることになり、1頁に複数の作品は載せないという贅沢な作りです。

ニコ・ピロスマニ 1862‐1918_3660.JPG 動物画が多く、次に多いのが「女優マルガリータ」のような単独人物という印象ですが、宴会の模様を描いたり、静物を描いたりと題材は豊富、人物を描いたものは、グルジアの民族衣装を着ているなど、土地の文化を色濃く反映しているのがむしろ共通の特徴でしょうか。
 巻末に寄せられている解説やエッセイも15本と豊富で(その中には著者のものある)、但し、この作品集を鑑賞するにしても、やはり併せて本書も読むといいのではないかと思います。

ピロスマニ ポスター.jpgPIROSUMANI .jpg 映画「ピロスマニ」では、祭りの日なのに暗い納屋で横たわっているピロスマニを見つけた知人が「何してる」と問うと、「これから死ぬところだ」と答えたラストが印象的でしたが、実際、彼の最期は衰弱死に近いものだったらしいく、但し、病院にそれらしき男が担ぎ込まれて数日後に亡くなった記録があるものの、それが本当に彼だったかどうかは分からないらしいです(酒を愛したというイメージがあるが、一般に流布している大酒飲みだったという印象に反して、それほどの酒飲みでもなかったという証言もあるという)。

岩波ホール 公開時パンフレット/輸入版ポスター

ピロスマニ 映画1.jpg 映画「ピロスマニ」は、ピロスマニの作品をその人生に重ねる手法をとっており(グルジアの民族音楽もふんだんに組み込まれているが、最初観た当時は無国籍っぽい印象も受けた)、孤高と清貧の芸術家を描いた優れた伝記映画でしたが、正直、普通の凡人にこんな生活は送れないなあと思ったりもして...(だからこそ、この映画を観て憧憬のような感情を抱くのかもしれない)。この作品は、陶芸家の女性に薦められて観ました。

高野悦子.jpg 日本では上映されることの少ないこうした名画を世に送り続けてきた岩波ホール支配人の高野悦子氏が今月('13年2月)9日に亡くなり、謹んでご冥福をお祈りします。この「ピロスマニ」は、エキプ・ド・シネマがスタートして5年目、ルキノ・ヴィスコンティ監督の「家族の肖像」の1つ前に公開されましたが、「家族の肖像」の大ヒットした陰で当時はあまり話題にならなかったように思います(その後、ピロスマニ展などが日本でも開かれ、映画の方も改めて注目されるようになった)。

 映画を観て思うに、精神医学的に見ると、ピロスマニという人は統合失調質(シゾイド・タイプ)のようにも思えます。このタイプの人は、無欲で孤独な人生を送ることが多いそうで、病跡学のテキストではよく哲学者のヴィトゲンシュタインが例として挙げられたりしていましたが、ヴィトゲンシュタインの伝記を読むと、親しい友人もいて、その家族とも長期に渡って親しく付き合っていたらしく、どちらかと言うと、自分の頭の中では、ピロスマニの方がよりこの「シゾイド・タイプ」に当て嵌まるような気がしました。

放浪の画家ピロスマニ52.jpg放浪の画家ピロスマニ2.jpg「ピロスマニ(放浪の画家ピロスマニ)」●原題:PIROSUMANI●制作年:1969年●制作国:グルジア共和国●監督:ゲオルギー・シェンゲラーヤ●脚本:エルロム・アフヴレジアニ/ゲオルギー・シェンゲラーヤ●撮影:コンスタンチン・アプリャチン●音楽:V・クヒアニーゼ●時間:87分●出岩波ホール.jpg演:アフタンジル・ワラジ(Pirosmani)/岩波ホール 入口.jpgアッラ・ミンチン (Margarita)/ニーノ・セトゥリーゼ/マリャ・グワラマーゼ/ボリス・ツィプリヤ/ダヴィッド・アバシーゼ/ズラブ・カピアニーゼ/テモ・ペリーゼス/ボリス・ツィプリヤ ●日本公開:1978/09●配給:日本海映画=エキプ・ド・シネマ●最初に観た場所:岩波ホール(78-10-18)(評価:★★★★)
岩波ホール 1968年2月9日オープン、1972年2月12日、エキプ・ド・シネマスタート(以後、主に映画館として利用される)

2015年11月、37年ぶりにデジタルリマスター&グルジア語オリジナル版で岩波ホールにて劇場公開(邦題:「放浪の画家ピロスマニ」、監督クレジット:ギオルギ・シェンゲラヤ)
「放浪の画家ピロスマニ」ポスター01.jpg

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往年の大物俳優のトリビア集。洋画ファンには気軽に楽しめる本。 

ハリウッド・スキャンダル.jpg 『ハリウッド・スキャンダル―ちょっと気になる話 (現代教養文庫)

 プレイボーイ誌に連載されたゴシップ欄の集大成の抄訳で(原題"CELEBRITY TRIVIA:A Collection of Little‐Known Facts About Well‐Known People"、原著刊行は1980年)、ハリウッド映画のスターを中心に、映画監督や歌手などのトリビアを、編訳者が選んだもの。

 この翻訳が出て間もなくして読んだのですが、振り返ってみれば、出てくるのは大物スター、それも「超大物クラス」ではあるものの、そうドロドロした話ばかりでなくいい話もあったりして、洋画ファンには気軽に楽しめる本でした(版元が無くなっているので、新たに入手しようとすれば古書市場からになるが)。

ピーター・フォーク2.jpg 個人的に一番印象に残った話は、ピーター・フォークのエピソードで、彼は3歳の時に悪性の腫瘍のため右目を取り、代わりに義眼を入れていたのですが、12歳の時、野球の試合で二塁打を三塁打にしようと三塁にかけ込んだらアンパイアがアウトにしたので、「どこ見てんだヨォ。お前のがよっぽどこれが必要じゃねぇかァ?」と、おもむろに義眼を取り出して怒鳴ったことがある―というもの。

 気が強かったんだなあ。因みに、ベテラン性格俳優のトーマス・ミッチェルが1962年にブロードウェイの舞台で「コロンボ副隊長」を演じたのを、TV作家のリチャード・レヴィンソンとウィリアム・リンクがTV「刑事コロンボ」にするため、歌手のビング・クロスビーにコロンボ役の白羽を立てたもののクロスビーの都合がつかず、それでピーター・フォークにコロンボ役が廻ってきたとのこと。

Gregory Peck/Gary Cooper
グレゴリー・ペック .jpgゲイリー・クーパー .jpg この手の話は本書の中で他にも幾つか紹介されていて、グレゴリー・ペックは「真昼の決闘」の主役を降りたが、「駅馬車」(1939)の主役を降りたゲイリー・クーパーが代わりに主役をやり、アカデミー主演男優賞を獲得した―。因みに、ウィキペディアによれば製作者のスタンリー・クレイマーはこの映画を「誰も守ろうとするガッツが無かったので滅んでいった町についての話だ」と語ったといい、別の本で、ジョン・ウェインなどは同じような理由でこの作品が好きではなかったというような話を読んだことがあります(作家の村上春樹氏が『村上さんのところ』('15年/新潮社)真昼の決闘 ド.jpgで「何度も観返している映画ベスト3はなんですか?」との問いに、「『静かなる男』と、フレッド・村上さんのところs.jpgジンネマンの『真昼の決闘』です。四面楚歌みたいな状況に置かれたときに(何度かそういうことがありました)、よく観ました。見終わると、「僕もがんばらなくちゃな」という気持ちになれます。どちらもとてもよくつくられた映画です。何度観ても飽きません」と答えていた。同氏によれば、アメリカのホワイトハウスの映画室で、もっとも数多く大統領に観られた映画は「真昼の決闘」だという話を聞いたことがあるそうな)

ユル・ブリンナー.jpg 「マイ・フェア・レディ」のヒンギス教授役で知られるレック・ハリスンは、ミュージカル「王様と私」の"王様"役を断り、代わりに初舞台を飾り、大成功を収めたのが新人ユル・ブリンナーとのこと。当然のことながら、そのまま映画でも"王様"を演じたユル・ブリンナーは、アカデミー主演男優賞を受賞しています("アンナ"役のデボラ・カーもゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞)。

 ジェームズ・ディーンはテレビ出演のために映画「銀の盃」(1955)の出演を断ったが、ポール・ニューマンがその代役をやり、ポール・ニューマンのデビュー作となったとのこと(この映画は海外ではDVD化されているが、日本では現在['12年]リリースされていない)。

East of Eden .jpg ポール・ニューマンは、「エデンの東」(1955)では逆にジェット・リンク役を(これは「シェーン」のアラン・ラッドが役を降りたために空いてしまっていたのだが)ジェームズ・ディーンにもって行かれ涙をのむが、一方、「傷だらけの栄光」(1956)はジェームズ・ディーンが主役をやるはずだったのが、'55年9月に彼が自動車事故死したため、ポール・ニューマンが代わりにやることになった―。

ロバート・レッドフォード.bmp ジョン・ガ―フィールドが「欲望という名の電車」(1951)のスタンリー・コワルスキー役を断ったために、その役が廻ってきたのが明日に向かって撃て 0 1.jpgマーロン・ブランド。そのマーロン・ブランドは、「明日に向かって撃て!」(1969)でポール・ニューマンと共演するはずだったが、当時起きたキング牧師暗殺事件に衝撃を受けてその気になれず、結局代わりに大役を射止めたのがロバート・レッドフォードであるとのこと(これとは別に、ポール・ニューマンと共同で脚本を買い取ったスティーブ・マックイーンがブッチ役で、ポール・ニューマンがサンダンス役の予定だったのが、スティーブ・マックイーンが都合により出演しなくなったため、ポール・ニューマンがブッチ役に回り、当時無名のロバート・レッドフォードがサンダンス役に抜擢されたとの話もある)。

『追憶』(1973) 13.jpg卒業 [DVD] 2L.jpg そのロバート・レッドフォード主演の三大作品「スティング」「追憶」「華麗なるギャツビー」の何れも、ウォーレン・ビーティが主演を断ってロバート・レッドフォードの所に廻されたもの。

 ロバート・レッドフォード自身も、「卒業」(1967)のベンジャミン・ブラッド役を断っていて、その役はダスティン・ホフマンに廻った―(ロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマンでは全然雰囲気違う感じがするけれど)。

 ロバート・レッドフォードは「バージニア・ウルフなんか恐くない」(1966)のニック役、「ローズマリーの赤ちゃん」(1968)のガイ・ウッドハウス役、「ある愛の詩」(1970)のジャッカルの日 パンフ2.jpgある愛の詩 1970.jpgRosemary's Baby2.jpgオリバー・バレット役、「ジャッカルの日」(1973)のジャッカル役を降りているとのことです(「ローズマリーの赤ちゃん」はジョン・カサヴェテス、「ある愛の詩」はライアン・オニール、「ジャッカルの日」はエドワード・フォックスがそれぞれ主演することになった)。

 最終的に主役俳優が決まるまでいろいろあったんだなあと、改めて思いました。

真昼の決闘.jpg「真昼の決闘」●原題:HIGH NOON●制作年:1952年●制作国:アメリカ●監督:フレッド・ジンネマン●製作:ス真昼の決闘 DVD.jpgタンリー・クレイマー/カール・フォアマン●脚本:カール・フォアマン●撮影:フロイド・クロスビー●音楽:ディミトリ・ティオムキン●原案:ジョン・W・カニンガム●85分●出演:ゲイリー・クーパー/グレイス・ケリー/トーマス・ミッチェル/ケティ・フラド/ロイド・ブリッジス/ロン・チェイニー・ジュニア/イアン・マクドナルド/シエブ・ウーリー/リー・ヴァン・クリーフ/ロバート・ウィルク/ジャック・イーラム●日本公開:1952/09●配給:ユナイテッド・アーチスツ日本支社=松竹●最初に観た場所:池袋・文芸座ル・ピリエ(83-01-10)(評価:★★★☆)
真昼の決闘 [DVD]

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乾いた演出と映像詩のようなトーンが新鮮な「スト・パラ」。ラストが爽やかな「ダウン・バイ・ロー」。
ストレンジャー・ザン・パラダイスdvd.jpg 『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(1984)2.jpg ダウン・バイ・ローdvd.jpg DOWN BY LAW01.jpg
ストレンジャー・ザン・パラダイス [DVD]」 「ダウン・バイ・ロー コレクターズ・エディション [DVD]

ストレンジャー・ザン・パラダイス1.jpg ニューヨークに住むウィリー(ジョン・ルーリー)は、クリーブランドに住む叔母が入院する間、ハンガリー出身の16歳の従妹エヴァ(エスター・バリント)を預かることになり、エヴァ、ウィリー、ウィリーの賭博友達エディ(リチャード・エドソン)の3人の奇妙な生活が始まる―。
 最初、ニューヨークを舞台にする「The New World」が短編作品として制作され、ヴィム・ヴェンダースに才能を認められたジム・ジャームッシュが彼から生フィルムを譲り受け、ジョン・ルーリーとの共同脚本で、続くクリーブランドを舞台とする「One Year Later」、フロリダを舞台とする「Paradise」を撮影したという3部作。

ストレンジャー・ザン・パラダイス2.jpg というわけで、ジム・ジャームッシュの前作「パーマネント・バケーション」('80年)もそうですが、自主制作フィルムの雰囲気を保っていて、それを3本繋ぎ合せたという感もあり、ストーリーはあって無いようなシンプルなもの。

『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(1984).jpg 一応はロード・ムビーのような体裁をとっていて(途中からか)、ウィリーとエディがエヴァを誘って雪のエリー湖に行ったり、南国フロリダに行ったりしていますが、ストーリーよりも3人の、ぎこちないようで自然体でもあるように見える不思議な関係を、淡々としたモノクロームのカメラワークで描いており(殆どワンシーン・ワンショットで撮られている)、その演出と映像のトーンそのものが新鮮でした(時に映像詩のような印象も)。

 映画データベースで「コメディ」に分類されていましたが、確かにドッグレースや競馬などに入れあげる男2人は浮いたり沈んだりで、一方で、エトランゼであるエヴァの下にひょんなことから大金が入るというのは確かに可笑しい。でも、最初からストーリーで見せようという作品ではなく、3人の演技しているのか演技していなのかよく分からないような遣り取りの細部においてクスッと笑わせるような作品であり、何とも言えない不思議な仕上がりです。それでいて、ウィリーのエヴァに寄せる仄かな想い(妹を想いやるような感情)が伝わって来て、観終わった後の余韻もいいです。

 次作「ダウン・バイ・ロー」('86年)もモノクロでしたが、3人の刑務所仲間の男の脱獄劇をユーモラスに描いていて、こちらの方がストーリー性は前面に出ている分(映画らしくなった分?)、原石の魅力はやや減少しましたが、これはこれでファンキーな味わいがあります。

ダウン・バイ・ロー1.jpg タイトルは「はみ出し者仲間」の意。刑務所仲間の超ノン気な脱獄道中で、今回も音楽も担当のジョン・ルーリーが演技でも相変わらず良く、そのジョン・ルーリーと、映画初出演のシンガーソングライター、トム・ウェイツのクールな2人に、後に「ライフ・イズ・ビューティフル」('98年)を監督・脚本・主演し、アカデミー賞主演男優賞・外国映画作品賞を受賞する、ロベルト・ベニーニが陽気に絡みます。

ダウン・バイ・ロー2.bmp 登場人物の行動が行き当たりばったりだったり、予期せぬ偶然に流されたりするのと、登場人物相互の関わり合いがカラッと乾いた感じで描かれているのは「スト・パラ」と同じで、最後に男達が、ごく当たり前のようにそれぞれの道へ別れていくのは、日本映画ではちょっと考えられないようなドライ且つ爽やかなエンディングでした。

ジョン・ルーリー.jpg ジョン・ルーリー(イイ男にも見えるし、ハ虫類系の顔にも見える)も、本職は役者ではなくサックス奏者で、両作品の音楽も担当していますが、多才な人だなあと。90年代にライム病という難病を発症して生死の境を彷徨い、音楽活動からは身を引きましたが、画家としての活動に創作意欲の捌け口を見出し、昨年('10年)には日本でも個展が開かれています(作品は夢の世界を描いたような水彩画が多く、画風は子供の描いた絵のように見えるものもあれば、幽玄な水墨画に近いものもある。やはり、大病したためただろうか)

Stranger Than Paradise(1984).jpg「ストレンジャー・ザン・パラダイス」●原題:STRANGER THAN PARADISE●制作年:1984年●制作国:アメリカ・西ドイツ●監督:ジム・ジャームッシュ●製作:サラ・ドライヴァー●脚本:ジム・ジャームッシ/ジョン・ルーリー●撮影:トム・ディチロ●音楽:ジョン・ルーリー●時間:90分●出演:ジョン・ルーリー/エスター・バリント/リチャード・エドソン/セシリア・スターク/ダニー・ローゼン/ラメルジー/トム・ディチロ/リチャード・ボーズ/ロケッツ・レッドグレア/ハーヴェイ・パー/ブライ新宿文化シネマ2.jpgアン・J.バーチル/サラ・ドライヴァー/ポール・スローン●日本公開:1986/04●配給:フランス映画社●最初に観た場所:新宿文化シネマ2(86-08-23)(評価:★★★★☆)●併映「真夏の夜のジャズ」(バート・スターン) Stranger Than Paradise(1984)
新宿文化シネマ2 2006(平成18)年9月15日閉館、2006(平成18)年12月9日〜文化シネマ1・4が「新宿ガーデンシネマ1・2」としてオープン(2006(平成18)年6月14日「角川シネマ館」に改称)、文化シネマ2・3が「シネマート新宿1・2」としてオープン

スバル座.jpgDOWN BY LAW02.jpg「ダウン・バイ・ロー」●原題:DOWN BY LAW●制作年:1986年●制作国:アメリカ・西ドイツ●監督・脚本:ジム・ジャームッシュ●製作:アラン・クラインバーグ●撮影:ロビー・ミューラー●音楽:ジョン・ルーリー●時間:107分●出演:トム・ウェイツ/ジョン・ルーリー/ロベルト・ベニーニ/ニコレッタ・ブラスキ/エレン・バーキン●日本公開:1986/11●配給:フランス映画社●最初に観た場所:有楽町・スバル座(86-12-14)(評価:★★★★)

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逆境からスターになったマックイーンに相応しい作品。肉食系人種の強さを感じた。

パピヨン ポスター.jpgパピヨン 半券.jpgパピヨン パンフレット2.jpgパピヨン dvd.jpgパピヨン  タイムライフ社 1974 .jpg
映画ポスター/チケット/「映画パンフレット 「パピヨン」監督フランクリン・J・シャフナー 出演スティーブ・マックイーン」/「パピヨン-製作30周年記念特別版- [DVD]」/『パピヨン (1970年) (タイムライフブックス)

パピヨン縦1.JPG 実在の脱獄囚アンリ・シャリエール(1906-1973)が自らの数奇な半生を綴ったベストセラー小説のフランクリン・J・シャフナー監督による'73年の映画化作品。

 脚本はダルトン・トランボ(1905-1976)の遺作で、ハリウッドの赤dalton trumbo.jpg狩りで映画界から干され、「ジョニーは戦場へ行った」('71年/米)を匿名で書いたという気骨の脚本家兼映画監督ですが(「ローマの休日」('53年/米)の原作者・脚本家でもある)、映画の冒頭でDalton Trumbo PAPILLON.jpgギアナに送られる囚人達に「お前たちは祖国に見捨てられたのだ!」と威圧的に訓示する刑務所長役で出演しています(極めてアイロニカルな"お遊び"か)。

パピヨン1シーン.jpg パピヨン(スティーブ・マックイーン)が護送船上で債権偽造犯ドガ(ダスティン・ホフマン)に接近したのは、脱獄資金が要ると考えたためで(この時からもう脱獄を考えていた)、ドガは金を金属筒に入れて直腸内に隠し持っており、それを狙ってドガを殺そうとした囚人達からドガを救ったことで両者の絆は強まります。

パピヨン横2.JPG パピヨンが何度も逃亡を図って重禁固刑になる一方、ドガは隠し金を用いて一時は刑務所長代理のような立場にも就きますが、パピヨンの脱獄を助けようとした際に看守を殴ったため、成り行き上パピヨンと共に脱獄をすることになり、結局は捕まってしまい、パピヨンと同じく悪魔島に送られます。パピヨンの悪魔島からの最後の脱出では、ドガは土壇場で彼と行動を共にすることを躊躇し、そこに2人の生き方の違いが浮き彫りになっていますが、2人が強い友情で結ばれていることには変わりありません。

 ラストでパピヨンを見送るドガの、ダスティン・ホフマンの演技が良かったですが、実在のドガは1度も脱獄には参加することなく、悪魔島で15年の刑期を終えたそうです(しかし、アンリ・シャリエールの特赦活動をするなど、実際に友情関係にあった)。

パピヨン横3.JPG 一方、映画で2人と共に脱獄に加わったゲイの美男子マチュレットは、実際に1933年のアンリ・シャリエールの9度目の脱獄に、クルジオ(映画の中では看守との格闘に斃れる)と共に参加したそうで、映画ではマチュレットはその後の独房生活で獄死したことになっていますが、実際に獄死したのはクルジオであり、マチュレットは1944年のアンリ・シャリエールの悪魔島からの脱出(10度目)にも同行し成功しているので、ドガ、マチュレット、クルジオのそれぞれの役回りが部分的に置き換えられていることになります。

アンリ・シャリエール.jpg 原作にはこの他にもアンリ・シャリエールと友情関係にあり、彼を助ける多くの人物が登場し、アンリ・シャリエールという人はかなり律儀と言うか粘着気質ではなかったのかと思わせる記述の細かさで(単行本で上下巻2段組み各300ページ超、悪魔島から脱出する場面でまだ全体の3分の1を残している)、一方で、夢の中での審問官との遣り取りやインディオの部落での幻想的な体験がシュールに描かれていて、この部分は"小説"的な印象を受けますが、映画ではその部分も含め映像化されています(インディオの娘との恋物語とか、話を膨らませている部分もある。一夜にしてインディオ達がいなくなってしまうという話は原作には無く、こうした改変を加えるということは、原作に元々"小説"的要素があることを示唆しているのではないか)。

アンリ・シャリエール夫妻とスティーブ・マックイーン夫妻

Papillon (1973).jpgパピヨン _.jpgパピヨン縦2.JPG 貧しく不幸な家庭に生まれ、逆境から這い上がって大物スター俳優になったスティーブ・マックイーンに相応しい作品であり(この作品への彼の出演料は6億円!)、また、暗く狭い重禁固監獄で、腕立て伏せをして体力を保ち、ムカデやゴキブリまでスープに入れて栄養を摂って生き延びる主人公に、日本人とは異質の肉食系人種的な強さが感じられた作品でもありました。

 音楽はジェリー・ゴールドスミス。テーマ曲も良かったなあと思います(昔、学校の音楽の教科書に載っていた)。

Papillon (1973)            

「パピヨン」●原題:PAPILLON●制作年:1973年●制作国:アメリカ●監督:フランクリン・J・シャフナー●製作:ロベール・ドルフマン/フランクリン・J・シャフナー●脚本:ダルトン・トランボ/ロレンツォ・センプル・ジュニア●撮影:フレッド・J・キーネカンプ●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●原作:アンリ・シャリエール●時間:150分●出演:スティーブ・マックイーン/ダスティン・ホフマンパピヨンのテーマ.jpg/ロバパピヨン3.jpgート・デマン/ウッドロー・パーフリー/ドン・ゴードン/アンソニー・ザーブ/ヴィクター・ジョリー/ラトナ・アッサン/ウィリアム・スミザーズ/バーバラ・モリソン/ドン・ハンマー●日本公開:1974/03●配給:東宝東和●最初に観た場所:高田馬場パール座(77-12-10)(評価:★★★★☆)●併映「ゲッタウェイ」(サム・ペキンパー)
"パピヨン"がココナッツ筏に乗っているのを下から安定させているダイバーが見える。

パール座入口(写真共有サイト「フォト蔵」)①②高田馬場東映/高田馬場東映パラス ③高田馬場パール座 ④早稲田松竹
高田馬場パール座2.jpg高田馬場パール座 地図.pngパール座.jpg高田馬場パール座4.JPGパール座1.jpg高田馬場パール座(高田馬場駅西口、早稲田通り・スーパー西友地下) 1951(昭和26) 年封切館としてオープン。1963(昭和38)年の西友ストアー開店後、同店の地下へ。1989(平成元)年6月30日閉館。

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「穢れを知らない無垢な天使と肉感的な美の象徴であるヴィーナスが出会えばどうなるのか」

継母礼讃 (中公文庫).jpg継母礼讃 リョサ.jpg  Emmanuelle video.jpg 夜明けのマルジュ チラシ2.jpg 夜明けのマルジュ dvd.jpg
継母礼讃 (モダン・ノヴェラ)』「エマニエル夫人 [DVD]」「夜明けのマルジュ [DVD]
継母礼讃 (中公文庫)

Elogio de La Madrastra.jpg バルガス=リョサが1988年に発表した作品で(原題:Elogio de La Madrastra)、父親と息子、そして継母という3人家族が、息子であるアルフォンソ少年が継母のルクレシアに性愛の念を抱いたことで崩壊していく、ある種アブノーマル且つ"悲劇"的なストーリーの話。

candaules.jpg 当時からガルシア=マルケス、ホルヘ・ルイス・ボルヘス、フリオ・コルタサルと並んでラテンアメリカ文学の四天王とでもいうべき位置づけにあった作家が、こうしたタブーに満ちた一見ポルノチックともとれる作品を書いたことで、発表時は相当に物議を醸したそうですが、バルガス=リョサの描く官能の世界は、その高尚な文学的表現のため、どことなく宗教的な崇高ささえ漂っており、「神話の世界」の話のようでもあります。そのことは、現在の家族の物語と並行して、ヘロドトスの『史記』にある、自分の妻の裸を自慢したいがために家臣に覗き見をさせ、そのことが引き金となって家臣に殺され、妻を奪われた、リディア王カンダウレスの物語や、ギリシャ神話の「狩りの女神」の物語が挿入されていることでより強まっており、更に、物語の展開の最中に、関連する古典絵画を解説的に挿入していることによっても補強されているように思いました。

Candaules, rey de Lidia, muestra su mujer al primer ministro Giges, de Jacob Jordaens(「カンダウレス王室のギゲス」ヤコブ・ヨルダーエンス(1648)本書より)

Mario Vargas Llosa Julia Urquidi.jpg ただ、個人的には、バルガス=リョサの他の作品にもこうした熟女がしばしば登場し、また、彼自身、19歳の時に義理の叔母と結婚しているという経歴などから、この人の"熟女指向"が色濃く出た作品のようにも思いました。それがあまりにストレートだと辟易してしまうのでしょうが、「現代の物語」の方は、ルクレシアの視点を中心に、第三者の視点など幾つかに視点をばらして描いていて、少年自身の視点は無く、少年はあくまでも無垢の存在として描かれており、この手法が、「穢れを知らない無垢な天使と肉感的な美の象徴であるヴィーナスが出会えばどうなるのか」というモチーフを構成することに繋がっているように思いました。

Mario Vargas Llosa y Julia Urquid Illanes,París, 7 de junio de 1964

 しかし、帯には「無垢な天使か、好色な小悪魔か!?」ともあり、父親にとってこの息子は、好色な小悪魔であるに違いなく、また、継母が去った後、今度は召使を誘惑しようとするところなど、ますます悪魔的ではないかと...。「現代の物語」と、挿入されている「リディア王の話」(家臣に自分の眼の前で妻と交情するよう命じ、これを拒んだ家臣の首を刎ねた)とは、それぞれ異質の性愛を描いているように思えました。

 強いて言えば、「現代の物語」の方は、エディプス・コンプレックスの変型であり(バルガス=リョサ型コンプレックス?)、「リディア王の話」は、エマニュエル・アルサン(1932-2005)原作、ジュスト・ジャカン監督の「エマニエル夫人」('74年/仏)のアラン・キュニーが演じた老紳士マリオの"間接的性愛"のスタンスに近いと言えるでしょうか。性に対してある種の哲学(「セックスから文明社会の意味を取り除いた部分にしか、性の真理はない」という)を持つマリオにとって、エマニエルはそうした哲学を実践するにまたとない素材だった―。

エマニエル夫人 アラン・キュニ―.jpg エマニエル夫人 チラシ.jpg 華麗な関係.jpg 夜明けのマルジュ チラシ.jpg
「エマニエル夫人」の一場面(A・キュニー)/「エマニエル夫人」/「華麗な関係」/「夜明けのマルジュ」各チラシ

エマニエル夫人の一場面.jpg 「エマニエル夫人」はいかにもファッション写真家から転身した監督(ジュスト・ジャカン)の作品という感じで、モデル出身のシルヴィア・クリステルが、演技は素人であるにしても、もう少し上手ければなあと思われる凡作でしたが、フランシス・ジャコベッティが監督した「続エマニュエル夫人」('75年)になっても彼女の演技力は上がらず、結局は上手くならないまま、シリーズ2作目、3作目(「さよならエマニュエル夫人」('77年))と駄作化していきました。内容的にも、第1作にみられた性に対する哲学的な考察姿勢は第2作、第3作となるにつれて影を潜めていきます。その間に舞台はタイ → 香港・ジャワ → セイシェルと変わり「観光映画」としては楽しめるかも知れないけれども...。でもあのシリーズがある年代の(男女問わず)日本人の性意識にかなりの影響を及ぼした作品であることも事実なのでしょう。

華麗な関係 1976ド.jpg華麗な関係lt.jpg 同じくシルヴィア・クリステル主演の、ロジェ・ヴァディムが監督した「華麗な関係」('76年/仏)も、かつてジェラール・フィリップ、ジャンヌ・モロー、ジャン=ルイ・トランティニャンを配したロジェ・ヴァディム自身の「危険な関係」('59年/仏)のリメイクでしたが、原作者のラクロが墓の下で嘆きそうな出来でした。

「華麗な関係」('76年/仏)

夜明けのマルジュの一場面.jpg 同じ年にシルヴィア・クリステルは、ヴァレリアン・ボロヴズィック監督の「夜明けのマルジュ」('76年/仏)にも出演していて(実はこれを最初に観たのだが)、アンドレイ・ピエール・マンディアルグ(1909 -1991)のゴンクール賞受賞作「余白の街」が原作で、1人のセールスマンが、出張先のパリで娼婦と一夜を共にした翌朝、妻と息子の急死の知らせを受け自殺するというストーリー。メランコリックな脚本やしっとりしたカメラワーク自体は悪くないのですが、「世界一美しい娼婦」という触れ込みのシルヴィア・クリステルが、残念ながら演技し切れていない...。

「エマニエル夫人」●1.jpg「エマニエル夫人」●2.jpg 何故この女優が日本で受けたのかよく解らない...と言いつつ、自分自身もブームからやや遅れながらもシルヴィア・クリステルの作品を5本ぐらい観ているわけですが、個人的には公開から3年以上経って観た「エマニエル夫人」に関して言えば、シルヴィア・クリステルという女優そのものが受けたと言うより、ピエール・バシュレの甘い音楽とか(「続エマニュエル夫人」ではフランシス・レイ、さよならエマニュエル夫人」ではセルジュ・ゲンズブールが音楽を担当、セルジュ・ゲンズブールは主題歌歌唱も担当)、女性でも観ることが出来るポルノであるとか、商業映画として受ける付加価値的な要素が背景にあったように思います(合計320万人の観客のうち女性が8割を占めたという(『ビデオが大好き!365夜―映画カレンダー』('91年/文春文庫ビジュアル版)より))。
「続エマニュエル夫人」('75年/仏) 音楽:フランシス・レイ

A Man for Emmanuelle (1969) L.jpg バルガス=リョサの熟女指向から始まって、殆どシルヴィア・クリステル談義になってしまいましたが、シルヴィア・クリステルの「エマニュエル夫人」はエマニュエル・シリーズの初映像化ではなく、実際はこの作品の5年前にイタリアで作られたチェザーレ・カネバリ監督、エリカ・ブラン主演の「アマン・フォー・エマニュエル(A Man for Emmanuelle)」('69年/伊)が最初の映画化作品です(日本未公開)。
A Man for Emmanuelle(1969)

 因みに、「エマニュエル夫人」「続エマニュエル夫人」はエマニュエル・アルサンが原作者ですが、最後エマニュエルが男性依存から抜け出して自立することを示唆した終わり方になっている「さよならエマニュエル夫人」は、オリジナル脚本です。一方で、エマニュエル・アルサン原作の他の映画化作品では、女流監督ネリー・カプランの「シビルの部屋」('76年/仏)というのもありました。

シビルの部屋 旧.jpgシビルの部屋 pabnnhu.jpg 「シビルの部屋」のストーリーは、シビルという16歳の少女がポルノ小説を書こうと思い立って、憧れの中年男に性の手ほどきを受け、その体験を本にしたところベストセラーになってしまい、執筆に協力してくれた男を真剣に愛するようになった彼女は、今度は手を切ろうとする男に巧妙な罠をしかけて陥落させようとする...というもので、原作はエマニュエル・アルサンの半自伝的小説であり、アルサンは実際にこの作品に出てくる「ネア」という小説も書いている-と言うより、この映画の原作が「ネア」であるという、ちょっとした入れ子構造。映画化作品は、少女の情感がしっとりと描かれている反面、目的のために手段を選ばないやり方には共感しにくかったように思います。

エマニエル夫人00.jpg「エマニエル夫人」●原題:EMMANUELLE●制作年:1974年●制作国:フランス●監督:ジュスト・ジャカン●製作:イヴ・ルッセ=ルアール●脚本:ジャン=ルイ・リシャール●撮影:リシャール・スズキ●音楽:ピエール・バシュレ●原作:エマニュエル・アルサン「エマニュエル」●時間:91分●出演:シルヴィア・クリステル/アラン・キューリー/ダニエル・サーキー/クリスティーヌ・ボワッソン/マリカ・グリーン●日本公開:1974/12●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:三鷹オスカー(78-07-17)(評価:★★)●併映:「続・エマニエル夫人」(フランシス・ジャコベッティ)/「さよならエマニエル夫人」(フランソワ・ルテリエ)

続エマニエル夫人 ド.jpg続エマニエル夫人 vhs.jpg「続エマニエル夫人」●原題:EMMANUELLE, L'ANTI VIERGE/EMMANUELLE: THE JOYS OF A WOMAN●制作年:1975年●制作国:フランス●監督:フランシス・ジャコベッティ●製作:イヴ・ルッセ=ルアール●脚本:フランシス・ジャコベッティ/ロベール・エリア/ジェラール・ブラッシュ●撮影:ロベール・フレース●音楽:フランシス・レイ●原作:エマニュエル・アルサン●時間:91分●出演:シルヴィア・クリステル/ウンベルト・オルシーニ/カトリーヌ・リヴェ/カロライン・ローレンス/フレデリック・ラガーシュ/ラウラ・ジェムサー●日本公開:1975/12●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:三鷹オスカー(78-07-17)(評価:★☆)●併映:「エマニエル夫人」(ジュスト・ジャカン)/「さよならエマニエル夫人」(フランソワ・ルテリエ)
続エマニエル夫人 [DVD]

さよならエマニエル夫人1977.jpg「さよならエマニエル夫人」●原題:GOOD-BYE, EMMANUELLE●制作年:1977年●制作国:フランス●監督:フランソワ・ルテリエ●製作:イヴ・ルッセ=ルアール●脚本:さよならエマニエル夫人 dvd .jpgフランソワ・ルテリエ/モニク・ランジェ●撮影:ジャン・バダル●音楽:セルジュ・ゲンズブール●時間:98分●出演:シルヴィア・クリステル/ウンベルト・オルシーニ/アレクサンドラ・スチュワルト/ジャン=ピエール・ブーヴィエ/ジャック・ドニオル=ヴァルクローズ/オルガ・ジョルジュ=ピコ/シャルロット・アレクサンドラ●日本公開:1977/12●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:三鷹オスカー(78-07-17)(評価:★☆)●併映:「エマニエル夫人」(ジュスト・ジャカン)/「続エマニエル夫人」(フランシス・ジャコベッティ)
さよならエマニエル夫人 [DVD]

UNE FEMME FIDELE 1976.jpgUNE FEMME FIDELE.jpg華麗な関係 チラシ2.jpg「華麗な関係」●原題:UNE FEMME FIDELE●制作年:1976年●制作国:フランス●監督:ロジェ・ヴァディム●製作:フランシス・コーヌ/レイモン・エジェ●脚本:ロジェ・ヴァディム/ダニエル・ブーランジェル●撮影:クロード・ルノワ●音楽:モルト・シューマン/ピエール・ポルト●原作:ピエール・コデルロス・ド・ラクロ「危険な関係」●時間:91分●出演:シルヴィア・クリステル/ジョン・フィンチ/ナタリー・ドロン/ジゼール・カサドジュ/ジャック・ベルティエ/アンヌ・マリー・デスコット/セルジュ・マルカン●日本公開:1977/05●配給:東宝東和●最初に観た場所:三鷹東映(78-01-16)(評価:★☆)●併映:「エーゲ海の旅情」(ミルトン・カトセラス)/「しのび逢い」(ケビン・ビリングトン)

夜明けのマルジュの一場面2.jpg「夜明けのマルジュ」●原題:LA MARGE●制作年:1976年●制作国:フランス●監督:ヴァレリアン・ボロヴズィック●製作:ロベール・アキム/レイモン・アキム●撮影:ベルナール・ダイレ夜明けのマルジュ 09.jpgンコー●音楽:ロベール・アキム●原作:アンドレイ・ピエール・ド・マンディアルグ「余白の町」●時間:93分●出演:シルヴィア・クリステル/ジョー・ダレッサンドロ/ミレーユ・オーディベル/アンドレ・ファルコン/ドニス・マニュエル/ノルマ・ピカデリー/ルィーズ・シュヴァリエ/ドミニク・マルカス/カミーユ・ラリヴィエール●日本公開:1976/10●配給:富士映画●最初に観た場所:中野武蔵野館(77-12-15)(評価:★★☆)●併映:「続 個人教授」(ジャン・バチスト・ロッシ)

NEA 1976_01.jpgシビルの部屋 新.jpg「シビルの部屋」●原題:NEA●制作年:1976年●制作国:フランス●監督:ネリー・カプラン ●製作:ギー・アッジ●脚本:ネリー・カプラン/ジャン・シャポー●撮影:アンドレアス・ヴァインディング●音楽:ミシェル・マーニュ●原作:エマニュエル・アルサン「少女ネア」●時間:106分●出演:アン・ザカリアス/サミー・フレイ/ミシュリーヌ・プレール/フランソワーズ・ブリオン/ハインツ・ベネント/マルタン・プロボスト●日本公開:1977/09●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:池袋・テアトルダイヤ(77-12-24)(評価:★★☆)●併映:「さすらいの航海」(スチュアート・ローゼンバーグ)シビルの部屋 [DVD]

【2012年文庫化[中公文庫]】

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「女が愛しているのは快楽だけだという事実」を突き付け、「愛の行為の果て」を描いた映画。

Hécate(1982).jpgヘカテ/ダニエル・シュミット.jpg ヘカテ/エレンディラ.jpg
Hécate(1982) 輸入版DVDジャケット「ヘカテ [DVD]」/VHS「エレンディラ/ヘカテ」

 1930年代、フランスの植民地である北アフリカの地に赴任した外交官のジェラール(ベルナード・ジロドー)は、熱い太陽の下で退屈な日々を送っヘカテ パンフ.JPGていたが、あるパーティでテラスで風に吹かれていたクロチルドという女性(ローレン・ハットン)に出会い、その魔性の魅力に溺れていく―。

エレンディラ サンリオ文庫.png かつてレンタルビデオで「エレンディラ」と「ヘカテ」の2本組みというのがありましたが、何だか凄い組み合わせだなあと(エレンディラの祖母とヘカテことクロチルドの"魔女"セットか)。「エレンディラ」はガルシア=マルケス原作、「ヘカテ」はポール・モラン(1888-1976/享年88)原作で、この作家は外交官としてアフリカに赴任していたこともあり、亡命先のスイスでの、ココ・シャネル(1883-1971/享年87)へのインタヴュー取材などでも知られています。

HECATE by  Daniel Schmid.jpgHecate.jpg 「ヘカテ」というのは、ギリシャ神話に出てくる、男を、子供を、更に世界をも支配する巨大な魔力を持つ、神秘的で残酷な女神のことだそうで、主人公の男にとってクロチルドはまさに「ヘカテ」であり、パンフレットにある批評の「恋とは永遠に不確か」(映画評論家・渡辺祥子)、「恋に乱れる男たちの愚かさよ」(画家・合田佐和子)と言うよりむしろ、「女が愛しているのは快楽だけだという事実」(翻訳家・小沢瑞穂)を突き付け、「愛の行為の果て」(作家・辻邦生)を描いた映画とも言えるかも。

Hécate(1982) 2.jpg クロチルド役のローレン・ハットン(Lauren Hutton、1943年生まれ)は、アローレン・ハットン.bmpメリカン・ヴォーグの専属モデル出身の女優で、特別にグラマーでも美人でもないですが、服の着こなしがいいのか、ダニエル・シュミット(1941-2006/享年64)のカメラ指示がいいのか、シュミットの映像美にマッチしており、この作品では、アンニュイなセクシーさを充満させています。
 後に、61歳でヌードになったことで話題になり、更に、'08年には、65歳にして、スペイン大手ファッションチェーン、マンゴのアルジェリアで新規ショップのオープンに際して、親善大使並びにイメージ・キャラクターに起用されています(やはり、この人も"魔女"か)。

マンゴの広告キャンペーンに登場したローレン・ハットン(2008年・65歳)

HECATE 1982.jpg この映画で、ベルナール・ジロドー演じる外交官が赴任した国は同じ北アフリカでもモロッコのようですが、いずれにせよ、辺境の地で無聊を託っている折に、目の前にこんな女性が現れ、その女性が、恋人、愛人、情婦、更には貴婦人としても完璧であれば、男はずぶずぶ深みに嵌っていくだろうなあと思わせるものがあり、実際、この映画の主人公の男は次第に嫉妬心のコントロールが出来なくなって、狂気に駆られていきます。

 後に狂気から覚めた男が、シベリアの地で今は世捨て人同様となった彼女の夫と見(まみ)え、「君も、僕と同類さ。あれに噛まれた犬なんだ」と言われる場面は、何とも怖いと言うか、しんみりさせられると言うか...(原作の原題は「ヘカテとその犬たち」)。

異邦人パンフレット.jpg 映画の、北アフリカの砂漠の町という舞台設定が、何と言ってもいいです。パンフレットにある、筈見有弘(1937-1997/享年59)の、映画における「文化果つる辺境のロマンチシズム」というのは、マレーネ・デートリッヒ主演の「モロッコ」('30年)、ジャン・ギャバン主演の「望郷」('37年)あたりから連綿とあって、マルチェロ・マストロヤンニ主演の「異邦人」('68年)などもそうであり、この作品も、その系譜にあるとの解説に頷かされました。
 

Hécate(1982) 1.jpg「ヘカテ」●原題:HECATE●制作年:1982年●制作国:フランス/スイス●監督:ダニエル・シュミット●製作:ベルント・アイヒンガー●脚本:ダニエル・シュミット/パスカル・ジャルダン●撮影:レナート・ベルタ●音楽:カルロス・ダレッシオ●原六本木駅付近.jpg俳優座劇場.jpg作:ポール・モラン「ヘカテとその犬たち」●時間:108分●出演:役 - ベルナール・ジロドー/ローレン・ハットン/ジャン・ブイーズ/ジャン=ピエール・カルフォン/ジュリエット・ブラシュ●日本公開:1983/08●配給:ヘラルド・エース●最初に観た場所:六本木・俳優座シネマテン(83-10-17)●2回目:自由が丘・自由劇場(84-09-15)(評価:★★★★)●併映(2回目):「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(ボブ・ラフェルソン)
六本木・俳優座シネマテン(六本木・俳優座劇場内) 1981年3月20日オープン。2003年2月1日休映(後半期は「俳優座トーキーナイト」として不定期上映)。

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限りある生を超え、"伝説"として人々の記憶に生き続ける―芸術家の究極の姿か。

猫を抱いて象と泳ぐ.jpg  『ブリキの太鼓』(1979)3.jpg ブリキの太鼓.jpg
猫を抱いて象と泳ぐ』(2009/01 文藝春秋) 映画「ブリキの太鼓 HDニューマスター版 [DVD]

 唇が閉じて生まれ、切開手術で口を開いたという出生の経緯を持つ寡黙な少年は、体が大きくなりすぎて屋上動物園で生涯を終えた象と、壁の隙間に挟まり出られなくなった女の子を架空の友とし、7歳で廃バスにポーンという名の猫と暮らす巨漢の男と遇って、彼を師匠にチェスを習い、その才能を開花させる。男が象と同様にその巨体のために亡くなると、彼は自らの意思で11歳のまま身体の成長を止め、名棋士アリョーヒンに因んでリトル・アリョーヒンと名づけられたチェスのカラクリ人形の中に入り、人知れず至高の対戦を繰り広げる―。

 作者の『博士の愛した数式』('03年/新潮社)が"数式"をモチーフにしていたのに対して、今度は"チェス"がモチーフということで、そうした独自の素材が物語にうまく溶け込んでいるという点では、『博士の愛した数式』を凌いでいるかも。
『ブリキの太鼓』(1979).jpg飛ぶ教室 実業之日本社.gif 自らの意思で成長を止めた少年というのは、ギュンター・グラスの『ブリキの太鼓』(フォルカー・シュレンドルフ監督の映画「ブリキの太鼓」('79年/西独・仏))の"オスカル少年"のようでもあり、廃バスに住むマスターは、エーリッヒ・ケストナーの『飛ぶ教室』の学校近くの廃車となった禁煙車両に住む"禁煙先生"をも想起させます。

「ブリキの太鼓」('79年/西独・仏)

 個人的には『博士の愛した数式』のような母子モノの話には感動させられ易いのですが、現実を描いている風でありながら大人のメルヘン的要素を醸した『博士の...』に比べると、こちらは、最初から「物語」乃至「寓話」であることがフレームとして読者の前に提示されている感じで、いったん物語の中に入り込めてしまえば、よりすんなり感動できるかも知れません(実際、感動した。自分は「母子モノ」に弱いと言うより、このタイプの「小川作品」に弱いのかも)。

 主人公の師匠である巨漢男だけでなく、優しい祖母や老人ホームに住まう往年の名プレーヤーたちなど、印象に残る登場人物が多く、彼らはやがて死んでいきますが、それぞれに生きている者の中に記憶として生きていると言えます。
 そして、主人公の最期もまたあっけないものですが、彼は"伝説"として人々の記憶に生き続けることになる―、ある意味、人間の限りある生を超えられるものは何かを問いかけるような作品でもあります。

 主人公はチェスプレーヤーですが、「ビショップの奇跡」と呼ばれる1枚の棋譜と1葉のスナップ写真のみを残したその生き方は、芸術家の究極の姿でもあるように思えました。
 そのことは、「もし彼がどんな人物であったかお知りになりたければ、どうぞ棋譜を読んで下さい。そこにすべてのことが書かれています」という、この作品の最後のフレーズにも象徴されているかと思います。

Bobby Fischer.jpgBOBBY FISCHER 2.jpg 実際、チェスの世界は伝説的な話には事欠かないようで、'08年にアイスランドで亡くなったボビー・フィッシャー(米国)みたいに、何度も世界チャンピオンになりながら何度も消息不明になった人などもいて、ボビー・フィッシャーの再来といわれた天才少年ジョシュ・ウェイツキンを主人公にした「ボビー・フィッシャーを探して」('93年/米)という映画も作られるなどしました(Photo:Bobby Fischer: (1958)He wins US Chess Championship at age 14)。

羽生善治.jpg ボビー・フィッシャーは日本に潜伏していた時期もあったらしく、無効パスポート保持で成田で拘束されたこともあり、米国に強制送還される恐れがあったため、チェスが"趣味"の羽生善治氏が、彼に日本国籍を与えるよう当時の小泉首相に嘆願メールを出したということもありました。

チェス部が小川洋子氏の取材を受ける.jpg 作者が取材した麻布高校のチェスサークルは、在学中に全日本チャンピオンとなり、'08年度まで4年連続タイトルを保持した小島慎也氏('09年度は、アイルランドのIM(インターナショナル・マスター)サム・コリンズに敗れ準優勝だった)の出身サークルでもありますが、小島氏に言わせれば、日本チェス界で一番強いのは羽生善治であるとのこと、羽生は主に海外で対局していて、国際レイティングは今も('09年)日本人トップで、羽生を倒せるようになるのが"全日本チャンピオン"の座に4度輝いた小島氏の目標だそうです(羽生ってスゴイなあ。まるで、生ける"伝説"みたいな感じ...)。

 「ボビー・フィッシャーを探して」('93年/米)と同様、チェスの世界大会を舞台にした映画では、カール・シュンケル監督の「美しき獲物」('93年/米・独)があり、チェスの世界選手権に絡んで起きた猟奇殺人事件を描くサスペンス・サイコ・スリラーで、ストーリーそのものは悪くないのですが、主演のクリストファー・ランバートとダイアン・レイン(私生活で当時は恋人同士)の2人とも、それぞれに「チェスの天才」にも「女性心理学者」にも見えないのが難、「ボビー・フィッシャーを探して」に出演した子役は賢そうに見えたけれど...。

ブリキの太鼓2.jpgブリキの太鼓 ポスター.jpg「ブリキの太鼓」●原題:DIE BLECHTROMMEL●制作年:1979年●制作国:西ドイツ・フランス●監督:フォルカー・シュレンドルフ●製作:アナトール・ドーマン/フランツ・ザイツ●脚本:ジャン=クロード・カリエール/ギュンター・グラス/フォルカー・シュレンドルフ/フランツ・ザイツ●撮影:イゴール・ルター●音楽:モーリス・ジャール●原作:ギュンター・グラス●時間:142分●出演:ダーフィト・ベンネント/マリオ・アドルフ/アンゲラ・ヴィンクラー/カタリーナ・タールバッハ/ダニエル・オルブリフスキ/ティーナ・エンゲル/ローラント・トイプナー●日本公開:1981/04●配給:フランス映画社●最初に観た場所:有楽町スバル座(81-04-26)(評価:★★★★)

SEARCHING FOR BOBBY FISCHER (1993).jpgボビー・フィッシャーを探して.jpg「ボビー・フィッシャーを探して」●原題:SEARCHING FOR BOBBY FISCHER●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督・脚本:スティーヴン・ザイリアン●製作総指揮:シドニー・ポラック●撮影:コンラッド・ホール●音楽:ジェームズ・ホーナー●原作:フレッド・ウェイツキン●時間:110分●出演:マックス・ポメランツ/ジョー・マンティーニャ/ジョアン・アレン/ローレンス・フィッシュバーン/ベン・キングズレー/マイケル・ニーレンバーグ●日本公開:1994/02●配給:パラマウント映画=UIP (評価★★★☆)

美しき獲物.png美しき獲物 チラシ.jpgKnight Moves (1992).jpg「美しき獲物」●原題:KNIGHT MOVES●制作年:1992年●制作国:アメリカ/ドイツ●監督:カール・シェンケル●製作:クリストファー・ランバート/ジアド・エル・カウリー ●脚本:ブラッド・ミルマン●撮影:ディートリッヒ・ローマン●音楽:アン・ダッドリー●時間:116分●出演:クリストファー・ランバート/ダイアン・レイン/トム・スケリット/ダニエル・ボールドウィン/アレックス・ディアクン/フェルディ・メイン/キャスリーン・イソベル/アーサー・ブラウス●日本公開:1992/11●配給:アスキー(評価★★★)

【2011年文庫化[文春文庫]】

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自分が大人になる頃にはこうなっていると信じていた時期があった"懐かしい未来"。

昭和少年SF大図鑑 カバー.jpg 昭和少年SF大図鑑.jpg   「エア・カー時代」 小松崎 茂(雑誌「少年」昭和36年1月号.jpg
昭和少年SF大図鑑 (らんぷの本)』 ['09年] 「エア・カー時代」 小松崎 茂(雑誌「少年」昭和36年1月号口絵)

 昭和20年代から40年代の少年向け雑誌やプラモデルの箱を飾った空想未来絵図を集めたもので、本郷の弥生美術館で展覧会も行われましたが、その弥生美術館で学芸員をしている女性による編集及び本文解説。

 この方面での画家と言えば、個人的には小松崎茂(1915-2001/享年86)の印象がかなり強いのですが、本書を見ると、小松崎茂が第一人者であったことは間違いないようですが、中島章作、伊藤展安、梶田達二、高荷義之、中西立太、南村喬之と、多彩な人たちがいたのだなあと。

 今見ると、これらの概ね楽天的な、時には物理の法則を逸脱したようなイラストには微笑ましい印象も受けますが、子供時代の一時期においては、自分たちが大人になる頃にはほぼ間違いなくこういう時代が来るのだと、「予測図」より「予定図」みたいな感じで半ば信じていて、素敵な夢を見させて貰いました。

 本書は、そうした夢を描いていた頃の自分を思い出させる、"懐かしい"未来図とでも言えるでしょうか。

Fifth Element Cars.jpg 自動車に代わってエアカーが飛び交う様など、リドリー・スコット監督の「ブレードランナー」('82年/米)やリュック・ベッソン監督の「フィフス・エレメント」('97年/仏)など、映画の中ではお目にかかれていますが、実現はいつのことやら。

Fifth Element Cars (1997)

ゲイリー・オールドマン.jpg 「ブレードランナー」のデッカートが操るポリススピナーに比べて、15年後に作られた「フィフス・エレメント」のパトカーやコーベンが運転するタクシーの方がキッチュに描かれているのが興味深いです(映画自体も、変てこな悪役ゲイリー・オールドマンやラジオDJ役のクリス・タッカーの怪演が楽しめた、肩の凝らない娯楽作品。この作品でも「ディーバ」(歌姫)がモチーフになっているなあ、リュック・ベンソンは)。

 ただ、この本にある、当時描かれた未来図の全てが荒唐無稽だったとは言えず、臨海副都心構想に近いアイデアやリニアモーターカーの原型など、かなり"いい線"いっているものあります。

 "明るい未来図"ばかりでなく、昭和40年代に入ると、公害問題などの世相を反映して"恐ろしい未来図"も結構出てきて、小松崎茂などは、地球温暖化で極地の氷が溶けて関東地方の大部分が水没する想像図なんてのも描いていて先見性を感じますが、だからと言って人間がエラ呼吸器を手術で植え付け、水中生活に適した身体に変えていくというのは、ちょっと行き過ぎ?

Minority Report.jpgTom Cruise  in Minority Report.jpg 同じくネガティブな未来図として描かれている類で、コンピュータに人間の生が支配されたり、コンピュータによって人間の思考や行動が監視される社会などというのは、ウォシャウスキー兄弟の映画「マトリックス」('99年/米)やスティーヴン・スピルバーグ監督の「マイノリティ・リポート」('02年/米)など、近年のSF映画にも類似したモチーフを看て取れます。
 Minority Report (2002)

 但し、「マイノリティ・リポート」(原作は「ブレードランナー」と同じくフィリップ・K・ディック )は、プリコグと呼ばれるヒト個人に予知能力が備わっていることが前提となっていますが(この映画、今思うとあのタッチ・センサーのヴィジュアルには、Windows8の予告編的要素もあった?)。

マイノリティ・リポート06.jpg「マイノリティ・リポート」●原題:MINORITY REPORT●制作年:2002年●制作国:アメリカ●監督:スティーヴン・スピルバーグ●製作:ボニー・カーティス/ジェラルド・R・モーレン/ヤン・デ・ボン/ウォルター・F・パークス●脚本:ジョン・コーエン/スコット・フランク ●撮影:ヤヌス・カミンスキー●音楽:ジョン・ウィリアムズ●原作:フィリップ・K・ディック ●時間:145分●出演:トム・クルーズ/コリン・ファレル/サマンサ・モートン/マックス・フォン・シドー/ロイス・スミス/スティーヴン・スピルバーグ●日本公開:2002/12●配給:20世紀フォックス (評価:★★★)
 
 今、若者たちが映画で受身的に観ている様な仮想未来社会を、かつての子供たちは、少年雑誌のイラストで見て、自ら想像力を働かせイメージを膨らませていたのだろうなあ(彼らにとって、これらのイラストの乗り物などは、頭の中では映画のように動いていたに違いない)、そして、その中には、今、科学技術の最前線で研究開発に勤しんでいる科学者や技術者もいるのだろうなあと思いました。

「ブレードランナー」●原題:BLADE RUNNER●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:リドリー・スコット●製作:マイケル・ディーリー ●脚本:ハンプトン・フィンチャー/デイヴィッド・ピープルズ●撮影:ジョーダン・クローネンウェス●音楽:ヴァンゲリス●時間:117分●出演:ハリソン・フォード/ルトガー・ハウアー/ショーン・ヤング ●日本公開:1982/07●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:二子東急(83-06-05)(評価:★★★★☆)

フィフス・エレメント.jpgクリス・タッカー.jpg「フィフス・エレメント」●原題:THE FIFTH ELEMENT(Le Cinquie`me e'le'ment)●制作年:1997年●制作国:フランス●監渋谷パンテオン.jpg督・脚本:リュ渋谷パンテオン 2.jpgック・ベッソン●撮影:ティエリー・アルボガスト●音楽:エリック・セラ●時間:126分●出演:ブルース・ウィリス/ミラ・ジョヴォヴィッチ/ゲイリー・オールドマン/イアン・ホルム/クリス・タッカー/ルーク・ペリー●日本公開:1997/09●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:渋谷パンテオン(97-10-24) (評価:★★★★)フィフス・エレメント [DVD]
渋谷パンテオン 東急文化会館1F、1956年オープン。2003(平成15)年6月30日閉館。

【2014年新装版】

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高評価作品が多い30年~50年代。40年~50年代の12作品の著者の評価を自分のと比べると...。

ミュージカル洋画 ぼくの500本.jpg     巴里のアメリカ人08.jpg バンド・ワゴン 映画poster.jpg 南太平洋 チラシ.jpg
ミュージカル洋画ぼくの500本 (文春新書)』 「巴里のアメリカ人」1シーン/「バンド・ワゴン」ポスター/「南太平洋」チラシ

 著者の外国映画ぼくの500本('03年4月)、『日本映画 ぼくの300本』('04年6月)、『外国映画 ハラハラドキドキぼくの500本』('05年11月)、『愛をめぐる洋画ぼくの500本』('06年10月)に続くシリーズ第5弾で、著者は1910年10月生まれですから、刊行年(西暦)の下2桁に90を足せば、刊行時の年齢になるわけですが、凄いなあ。

 本書で取り上げた500本は、必ずしもブロードウェイなどの舞台ミュージカルを映画化したものに限らず、広く音楽映画の全般から集めたとのことですが、確かに「これ、音楽映画だったっけ」というのもあるにせよ、500本も集めてくるのはこの人ならでは。何せ、洋画だけで1万数千本観ている方ですから(「たとえ500本でも、多少ともビデオやDVDを買ったり借りたりするときのご参考になれば幸甚である」とありますが、「たとえ500本」というのが何だか謙虚(?))。

天井桟敷の人々 パンフ.JPG『天井桟敷の人々』(1945).jpg 著者独自の「星」による採点は上の方が厳しくて、100点満点換算すると100点に該当する作品は無く、最高は90点で「天井桟敷の人々」('45年)と「ザッツ・エンタテインメント」('74年)の2作か(但し、個人的には、「天井桟敷の人々」は、一般的な「ミュージカル映画」というイメージからはやや外れているようにも思う)。
 85点の作品も限られており、やはり旧い映画に高評価の作品が多い感じで、70年代から85点・80点の作品は減り、85点は「アマデウス」('84年)が最後、以降はありません。
 これは、巻末の「ミュージカル洋画小史」で著者も書いているように、70年代半ばからミュージカル映画の急激な凋落が始まったためでしょう。

 逆に30年代から50年代にかけては高い評価の作品が目白押しですが、個人的に観ているのは40年代半ば以降かなあという感じで自分で、自分の採点と比べると次の通りです。(著者の☆1つは20点、★1つは5点)

①「天井桟敷の人々」 ('45年/仏)著者 ☆☆☆☆★★(90点)/自分 ★★★★(80点)
天井桟敷の人々1.jpg天井桟敷.jpg天井桟敷の人々 ポスター.jpg 著者は、「規模の雄大さ、精神の雄渾において比肩すべき映画はない」としており、いい作品には違いないが、3時間超の内容は結構「大河メロドラマ」的な要素も。占領下で作られたなどの付帯要素が、戦争を経験した人の評価に入ってくるのでは? 著者は「子供の頃に見た見世物小屋を思い出す」とのこと。実際にそうした見世物小屋を見たことは無いが(花園神社を除いて。あれは、戦前というより、本来は地方のものではないか)、戦後の闇市のカオスに通じる雰囲気も持った作品だし、ヌード女優から伯爵の愛人に成り上がる女主人公にもそれが体現されているような。

「天井桟敷の人々」●原題:LES ENFANTS DU PARADIS●制作年:1945年●制作国:フランス●監督:マルセル・カルネ●製作:フレッド・オラン●脚本:ジャック・プレヴェール●撮影:ロジェ・ユベール/マルク・フォサール●音楽:モーリス・ティリエ/ジョセフ・コズマ●時間:190分●出演:アルレッティ/ジャン=ルイ・バロー/ピエール・ブラッスール/マルセル・エラン/ルイ・サルー/マリア・カザレス/ピエール・ルノワール●日本公開:1952/02●配給:東宝●最初に観た場所:池袋文芸坐(82-03-21)●併映:「ネオ・ファンタジア」(ブルーノ・ボセット)

②「アメリカ交響楽」 ('45年/米)著者 ☆☆☆★★(70点)自分 ★★★☆(70点)
アメリカ交響楽 RHAPSODY IN BLUE.jpgアメリカ交響楽.jpg この映画の原題でもある「ラプソディー・イン・ブルー」や、「スワニー」「巴里のアメリカ人」「ボギーとベス」などの名曲で知られるガーシュウィンの生涯を描いた作品で、モノクロ画面が音楽を引き立てていると思った(著者は、主役を演じたロバート・アルダより、オスカー・レヴァント(本人役で出演)に思い入れがある模様)。因みに、日本で「ロード・ショー」と銘打って封切られた映画の第1号。

「アメリカ交響楽」 ●原題:RHAPSODY IN BLUE●制作年:1945年●制作国:アメリカ●監督:アーヴィン・クーパー●製作:フレッド・オラン●脚本:ハワード・コッホ●撮影:ソル・ポリート●音楽ジョージ・ガーシュウィン●時間:130分●出演:ロバート・アルダ/ジョーン・レスリー/アレクシス・スミス/チャールズ・コバーン/アルバート・バッサーマン/オスカー・レヴァント/ポール・ホワイトマン/ジョージ・ホワイト/ヘイゼル・スコット/アン・ブラウン、アル・ジョルスン/ジュリー・ビショップ●日本公開:1947/03●配給:ワーナー・ブラザース映画●最初に観た場所:テアトル新宿(85-09-23)

③「錨を上げて」 ('45年/米)著者 ☆☆☆★(65点)自分 ★★★(60点)
錨を上げて08.jpg錨を上げて2.jpg錨を上げて.jpgAnchors Aweigh.jpg 4日間の休暇を得てハリウッドへ行った2人の水夫の物語。元気のいい映画だけど、2時間20分は長かった。ジーン・ケリーがアニメ合成でトム&ジェリーと踊るシーンは「ロジャー・ラビット」の先駆けか(著者も、その技術を評価。ジーン・ケリーが呼び物の映画だとも)。
錨を上げて アニメ.jpg
「錨を上げて」●原題:ANCHORS AWEIGH●制作年:1945年●制作国:アメリカ●監督:ジョージ・シドニー●製作:ジョー・パスターナク●脚本:イソベル・レナート●撮影:ロバート・プランク/チャールズ・P・ボイル●音楽監督:ジョージー・ストール●原作:ナタリー・マーシン●時間:140分●出演:フランク・シナトラ/キャスリン・グレイソン/ジーン・ケリー/ホセ・イタービ /ディーン・ストックウェル/パメラ・ブリットン/ジョージ・シドニー●日本公開:1953/07●配給:MGM日本支社●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

④「夜も昼も」 ('46年/米)著者 ☆☆☆★(65点)自分 ★★★(60点)
NIGHT AND DAY 1946.jpg夜も昼も NIGHT AND DAY.jpgNight and Day Cary Grant.jpg アメリカの作曲家コール・ポーターの伝記作品。著者の言う通り、「ポーターの佳曲の数々を聴かせ唄と踊りの総天然色場面を楽しませる」のが目的みたいな作品(曰く「その限りにおいては楽しい」と)。

「夜も昼も」●原題:NIGHT AND DAY●制作年:1946年●制作国:アメリカ●監督:マイケル・カーティズ●製作:アーサー・シュワルツ●脚本:チャールズ・ホフマン/レオ・タウンゼンド/ウィリアム・バワーズ●撮影:ペヴァレル・マーレイ/ウィリアム・V・スコール●音楽監督:レオ・F・フォーブステイン●原作:ナタリー・マーシン●時間:116分●出演:ケーリー・グラント/アレクシス・スミス/モンティ・ウーリー/ジニー・シムズ/ジェーン・ワイマン/カルロス・ラミレス●日本公開:1951/01●配給:セントラル●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

⑤「赤い靴」('48年/英)著者 ☆☆☆☆(80点)自分 ★★★(60点)
赤い靴 ポスター.jpg赤い靴.jpg赤い靴2.jpg ニジンスキーとロシア・バレエ団の主宰者ディアギレフとの関係がモデルといわれているバレエもの(ハーバート・ロス監督の「ニジンスキー」('79年/英)は両者の確執にフォーカスした映画だった)だが、主人公が女性になって、「仕事か恋か」という今も変わらぬ?テーマになっている感じ。著者はモイラ・シアラーの踊りを高く評価している。ヨーロッパには「名人の作った赤い靴をはいた者は踊りの名手になれるが、一生踊り続けなければモイラ・シアラー.jpgならない」という「赤い靴」の伝説があるそうだが、「赤い靴」と言えばアンデルセンが先に思い浮かぶ(一応、そこから材を得ているとのこと)。

「赤い靴」 ●原題:THE RED SHOES●制作年:1948年●制作国:イギリス●監督:エメリック・プレスバーガー●製作:マイケル・パウエル/エメリック・プレスバーガー●脚本:マイケル・パウエル/エメリック・プレスバーガー●撮影:ジャック・カーディフ●音楽演奏:ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ●原作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン●時間:136分●出演:アントン・ウォルブルック/マリウス・ゴーリング/モイラ・シアラー/ロバート・ヘルプマン/レオニード・マシーン●日本公開:1950/03●配給:BCFC=NCC●最初に観た場所:高田馬場パール座(77-11-10)●併映:「トリュフォーの思春期」(フランソワ・トリュフォー)
モイラ・シアラー

⑥「イースター・パレード」('48年/英)著者 ☆☆☆☆(80点)自分 ★★★☆(70点)
Easter Parade (1949).jpgイースター・パレード dvd.jpg ジュディ・ガーランドとフレッド・アステアのコンビで、ショー・ビズものとも言え、一旦引退したアステアが、骨折のジーン・ケリーのピンチヒッター出演で頑張っていて、著者の評価も高い(戦後、初めて輸入された総天然色ミュージカルであることも影響している?)。

「イースター・パレード」●原題:EASTER PARADE●制作年:1948年●制作国:アメリカ●監督:チャールズ・ウォルターズ●製作:アーサー・フリード●脚色:シドニー・シェルダン/フランセス・グッドリッチ/アルバート・ハケット●撮影:ハリー・ストラドリング●音楽演奏:ジョニー・グリーン/ロジャー・イーデンス●原作:フランセス・グッドリッチ/アルバート・ハケット●時間:136分●出演:ジュディ・ガーランド/フレッド・アステア/ピーター・ローフォード/アン・ミラー/ジュールス・マンシュイン●日本公開:1950/02●配給:セントラル●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

⑦「踊る大紐育」('49年/米)著者 ☆☆☆☆★(85点)自分 ★★★☆(70点)
踊る大紐育.jpg 24時間の休暇をもらった3人の水兵がニューヨークを舞台に繰り広げるミュージカル。3人が埠頭に降り立って最初に歌うのは「ニューヨーク、ニューヨーク」。振付もジーン・ケリーが担当した。著者はヴェラ=エレンの踊りが良かったと。

踊る大紐育(ニューヨーク) dvd.jpg「踊る大紐育」●原題:ON THE TOWN●制作年:1949年●制作国:アメリカ●監督:スタンリー・ドーネン●製作:アーサー・フリード●脚本:ベティ・カムデン/アドルフ・グリーン●撮影:ハロルド・ロッソン●音楽:レナード・バーンスタイン●原作:ベティ・カムデン/アドルフ・グリーン●時間:98分●出演:ジーン・ケリー/フランク・シナトラ/ジュールス・マンシン/アン・ミラー/ジュールス・マンシュイン/ベティ・ギャレット/ヴェラ・エレン●日本公開:1951/08●配給:セントラル●最初に観た場所:テアトル新宿(85-09-23)

巴里のアメリカ人 ポスター.jpg⑧「巴里のアメリカ人」 ('51年/米)著者 ☆☆☆☆★(85点)自分 ★★★★(80点)
巴里のアメリカ人2.jpg巴里のアメリカ人 dvd.jpg 音楽はジョージ・ガーシュイン。踊りもいいし、ストーリーも良く出来ている。著者の言う様に、舞台装置をユトリロやゴッホ、ロートレックなど有名画家の絵に擬えたのも楽しい。著者は「一番感心すべきはジーン・ケリー」としているが、アクロバティックな彼の踊りについていくレスリー・キャロンも中国雑伎団みたいで凄い(1951年アカデミー賞作品)。

ジーンケリーとレスリーキャロン.jpg巴里のアメリカ人09.jpg「巴里のアメリカ人」●原題:AN AMERICAN IN PARIS●制作年:1951年●制作国:アメリカ●監督:ヴィンセント・ミネリ●製作:アーサー・フリード●脚本:アラン・ジェイ・ラーナー●撮影:アルフレッド・ギルクス●音楽:ジョージ・ガーシュイン●時間:113分●出演:ジーン・ケリー/レスリー・キャロン/オスカー・レヴァント/ジョルジュ・ゲタリー/ユージン・ボーデン/ニナ・フォック●日本公開:1952/05●配給:MGM日本支社●最初に観た場所:高田馬場パール座(78-05-27)●併映:「シェルブールの雨傘」(ジャック・ドゥミ)

⑨「バンド・ワゴン」('53年/米)著者 ☆☆☆☆★(85点)自分 ★★★★(80点)
バンド・ワゴン08.jpgバンド・ワゴン2.jpgバンド・ワゴン.jpgバンド・ワゴン 特別版 [DVD].jpgシド・チャリシー.jpg 落ち目のスター、フレッド・アステアの再起物語で、「イースター・パレード」以上にショー・ビズもの色合いが強い作品だが、コメディタッチで明るい。ストーリーは予定調和だが、本書によれば、ミッキー・スピレーンの探偵小説のパロディが織り込まれているとのことで、そうしたことも含め、通好みの作品かも。但し、アステアとシド・チャリシーの踊りだけでも十分楽しめる。シド・チャリシーの踊りも、レスリー・キャロンと双璧と言っていぐらいスゴイ。

THE BANDO WAGON.jpg「バンド・ワゴン」●原題:THE BANDO WAGON●制作年:1953年●制作国:アメリカ●監督:ヴィンセント・ミネリ●製作:アーサー・フリード●脚本:ベティ・コムデン/アドルフ・グリーン●撮影:ハリー・ジャクソン●音楽:アドルフ・ドイッチ/コンラッド・サリンジャー●時間:112分●出演:フレッド・アステア/シド・チャリシー/オスカー・レヴァント/ナネット・ファブレー●日本公開:1953/12●配給:MGM●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

⑩「パリの恋人」('53年/米)著者 ☆☆☆☆(80点)自分 ★★★☆(70点)
パリの恋人dvd.jpg『パリの恋人』(1957).jpgパリの恋人 映画ポスター.jpg 著者曰く「すばらしいファション・ミュージカル」であり、オードリー・ヘプバーンの魅力がたっぷり味わえると(原題の「ファニー・フェイス」はもちろんヘップバーンのことを指す)。
Funny Face.jpg 衣装はジバンシー、音楽はガーシュウィンで、音楽と併せて、女性であればファッションも楽しめるのは確か。
'S Wonderful.bmp ちょっと「マイ・フェア・レディ」に似た話で、「マイ・フェア・レディ」が吹替えなのに対し、こっちはオードリー・ヘプバーン本人の肉声の歌が聴ける。それにしても、一旦引退したこともあるはずのアステアが元気で、とても57才とは思えない。結局、更に20余年、「ザッツ・エンタテインメント」('74年)まで活躍したから、ある意味"超人"的。

『パリの恋人』(1957) 2.jpgパリの恋人 パンフ.jpg「パリの恋人」●原題:FUNNY FACE●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:スパリの恋人 パンフ.jpgタンリー・ドーネン●製作:アーサー・フリード●脚本:レナード・ガーシェ●撮影:レイ・ジューン●音楽:ジョージ・ガーシュウィン/アドルフ・ドイッチ●時間:103分●出演:オードリー・ヘプバーン/フレッド・アステア/ケイ・トンプスン/ミシェル・オークレール●日本公開:1957/02●配給:パラマウント映画●最初に観た場所:高田馬場ACTミニシアター(85-11-03)●併映:「リリー・マルレーン」(ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー) 
南太平洋パンフレット.jpg
⑪「南太平洋」('58年/米)著者 ☆☆☆★(65点)自分 ★★★☆(70点)
  1949年初演のブロードウェイ版の監督であるジョシュア・ローガンが映画版でもそのまま監督したもので、ハワイのカウアイ島でロケが行われた(一度だけ行ったことがあるが、火山活動によって出来た島らしい、渓谷や湿地帯ジャングルなど、野趣溢れる自然が満喫できる島だった)。
 著者は「戦時色濃厚な」作品であるため、あまり好きになれないようだが、それを言うなら、著者が高得点をつけている「シェルブールの雨傘」などは、フランス側の視点でしか描かれていないとも言えるのでは。超エスニック、大規模ロケ映画で、空も海も恐ろ「南太平洋」(自由が丘武蔵野館).jpgしいくらい青い(カラーフィルターのせいか?)。トロピカル・ナンバーの定番になった主題歌「バリ・ハイ」や「魅惑の宵」などの歌曲もいい。

「南太平洋」映画チラシ/期間限定再公開(自由が丘武蔵野館) 1987(昭和62)年7月4日~7月31日 
       
                                             
南太平洋(87R).jpg南太平洋.jpg「南太平洋」●原題:SOUTH PACIFIC●制作年:1958年●制作国:アメリカ●監督:ジョシュア・ローガン●製作:バディ・アドラー●脚本:ポール・オスボーン●撮影:レオン・シャムロイ●音楽:リチャード・ロジャース●原作:ジェームズ・A・ミッチェナー ●原作戯曲:オス自由が丘武蔵野館.jpgカー・ハマースタイン2世/リチャード・ロジャース/ジョシュア・ローガン●時間:156分●出演:ロッサノ・ブラッツィ/ミッチー・ゲイナー/ジョン・カー/レイ・ウォルストン/フランス・ニューエン/ラス・モーガン●日本公開:1959/11●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:自由が丘武蔵野館(87-07-05)(リバイバル・ロードショー) 自由が丘武蔵野館 (旧・自由が丘武蔵野推理) 1951年「自由が丘武蔵野推理」オープン。1985(昭和60)年11月いったん閉館し改築、「自由が丘武蔵野館」と改称し再オープン。2004(平成16)年2月29日閉館。

⑫「黒いオルフェ」('59年/仏)著者 ☆☆☆☆(80点)自分 ★★★★(80点)
黒いオルフェ2.jpg黒いオルフェ (1959).jpg黒いオルフェ dvd.jpg 娯楽作品と言うより芸術作品。ジャン・コクトーの「オルフェ」('50年)と同じギリシア神話をベースにしているとのことだが、ちょっと難解な部分も。著者も言うように、リオのカーニヴァルの描写が素晴らしい。

「黒いオルフェ」●原題:ORFEO NEGRO●制作年:1959年●制作国:フランス●監督:マルセル・カミュ●製作:バディ・アドラー●脚本:マルセル・カミュ/ジャック・ヴィオ●撮影:ジャン・ブールゴワン●音楽:アントニオ・カルロス・ジョビン/ルイス・ボンファ●原作:ヴィニシウス・デ・モライス●時間:107分●出演:ブレノ・メロ/マルペッサ・ドーン/マルセル・カミュ/ファウスト・グエルゾーニ/ルルデス・デ・オリベイラ/レア・ガルシア/アデマール・ダ・シルバ●日本公開:1960/07●配給:東和●最初に観た場所:八重洲スター座(79-04-15)

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わかり易くよく纏まっている。入門書として手頃なわりには"上質"。

図説 地図とあらすじでわかる!聖書.jpg  JESUS CHRIST SUPERSTAR.jpg ジーザス・クライスト・スーパースター.jpgジーザス・クライスト・スーパースター2.jpg
図説 地図とあらすじでわかる!聖書 (青春新書INTELLIGENCE)』「ジーザス・クライスト・スーパースター [VHS]

 旧約・新約新書のあらすじや解説を新書1冊に収めるのはもともと無理があるのではないかとも思いましたが、本書を手にしてぱらぱらめくってみると、2色刷りで体系的にわかり易く纏められており、ああ、これは聖書の複雑な構成を理解するにはいいなあと感じ、また、実際に読んでみて、「あらすじ」自体が大変面白ので、すらすら読めました。

 旧約聖書の壮大な「物語性」が抜け落ちてしまうことが危惧されましたが、確かに参考書を読んでいるような感じがしなくもない面もあったものの、全体としては物語性を排除しないよう、解説とあらすじのバランスに気配りがされているような印象を受けました。

 図説もよく整理されていて、また、情報の密度も濃いと思われ、諸説ある部分については、本文とは別に表などに纏めて再整理してあり、近年の研究成果や解釈なども入れ(キリストが両親に対して親子の情が薄かったことや、磔刑の際に十字架に腰掛けがあったことなどは新たな知識だった)、全体として偏りがなく、入門書として手頃なわりには"上質"であると言えるのではないでしょうか。

 地図による図説が多用されているのも、個人的には知識ニーズに適っていたように思え、また、物語の背景にある歴史的・政治的背景にも言及されていることで、簡潔な解説の中にもシズル感がありました。


 ハリウッドにはユダヤ系の才能も資本も集まってきたため、旧約聖書に材を得た映画が盛んに作られたようで、「サムソンとデリラ」('49年/米)、「十戒」('57年/米)、「ソドムとゴモラ」('62年/伊・米)、「天地創造」('66年/米・伊)など多くがありますが、新約聖書に材を得た映画では、リチャード・バートン主演の「聖衣」('53年/米)やロックオペラの映画化作品「ジーザス・クライスト・スーパースター」('73年/米)があり、後者は、背景に現在と過去が交錯して(キリストがロックミュージックのスターみたいに描かれている)ヴィジュアル的にも時代背景をぼかした感じでしたが、ストーリー自体は聖書をきちんとなぞっていたのではないかと。

 BSの再放映('09年6月)で久しぶりに観ましたが、ローマ総督のピラトが最初はイエスに刑を科すことを躊躇するくだりなどは、聖書及び本書の解説にもある通りに描かれていいます(それはそうでしょう、本国には聖書に精通している人が一般国民の中にも多くいるわけだし)。

 監督のノーマン・ジュイソンはユダヤ人で、「屋根の上のバイオリン弾き」('71年/米)なども撮っていますが、どちらかと言うと、万人受けするような映画を作るタイプ?(音楽はブロードウェイ・ミュージカル「キャッツ」や「オペラ座の怪人」を手掛けたアンドリュー・ロイド・ウェバー)
 この作品は舞台ほど過激でないにしても(ブロードウェイの舞台では、イエスがユダと口と口でキスする場面があり物議を醸したそうだが、この映画では普通に頬にキスするだけ)、彼の作品の中では異色の方かも知れません。

ジーザス・クライスト.jpg ジーザス・クライスト1.jpg ジーザス・クライスト2.jpg ジーザス・クライスト3.jpg ジーザス・クライスト4.jpg ジーザス・クライスト5.jpg ジーザス・クライスト6.jpg ジーザス・クライスト7.jpg 

「ジーザス・クライスト・スーパースター」●原題:JESUS CHRIST SUPERSTAR●制作年:1973年●制作国:アメリカ●監督:ノーマン・ジュイソン●製作:ノーマン・ジュイソン/ロバート・スティグウッド●脚本:ノーマン・ジュイソン/メルヴィン・ブラッグ●撮影:ダグラス・スローカム●音楽:アンドリュー・ロイド・ウェバー/アンドレ・プレヴィン/ハーバート・スペンサー●原作:ティム・ライス●時間:106分●出演:テッド・ニーリー/カール・アンダーソン/イボンヌ・エリマン/バリー・デネン/ボブ・ビンガムド●日本公開:1973/12●配給:CIC●最初に観た場所:中野武蔵野館(77-10-29)(評価:★★★☆)●併映:「ブラザー・サン シスター・ムーン」(フランコ・ゼッフィレッリ)

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"熟年女優"ぶりが印象的だったリザ・ガストーニとヴィルナ・リージ。

「スキャンダル」.jpg スキャンダル ポスター.jpg スキャンダル.jpg  スキャンドール ポスター.jpg LA CICALA 1.jpg
スキャンダル [DVD]」       「スキャンドール ~禁じられた体験~ [VHS]」 
「スキャンダル」(監督:サルバトーレ・サンペリ/出演:リザ・ガストーニ)チラシ
Lisa Gastoni LO SCANDALO.jpgLisa Gastoni & Franco Nero in Lo Scandalo
Lisa Gastoni & Franco Nero in Lo Scandalo.jpg「スキャンダル」('76年/伊)は(イタリア映画なのだが)第2次大戦下の南フランス・プロヴァンスが舞台で、大学教授の妻エリアーヌ(リザ・ガストーニ)が、自らが営む薬局で働く雑役夫アルマン(フランコ・ネロ)に、女店員と間違えられて抱きつかれたことを契機に、彼と性交渉を持つようになり、上流階級への怨念を抱く雑役夫のもと、彼の肉体の奴隷となっていくというもの。雑役夫は、女店主の15歳の娘ジュスティーヌ(クラウディオ・マルサーニ)にも手を出すが、大学教授の妻はむしろそれに嫉妬する有様で、雑役夫の命令でどんな辱めも受けるという完全な主従逆転状態に―。

●リザ・ガストーニ Lisa Gastoni
Lisa Gastoni2.jpgLisa Gastoni2.jpgLisa Gastoni.jpg サルヴァトーレ・サンペリの演出とヴィットリオ・ストラーロのカメラは「青い体験」('73年/伊)と同じコンビで、主演のリザ・ガストーニ(Lisa Gastoni 、1935年生まれ)が美しく高貴な人妻が堕ちていく様を身体を張って演じており、マカロニ・ウェスタンの俳優というイメージがあったフランコ・ネロもネクラかつサディステックな雑役夫をしっかり演じていて、"イタリアン・エロス"映画とか言われるけれども、ある種、家族の崩壊を描いた文芸作品と言えるかもしれません(充分にエロチックでもあるが)。

クラウディオ・マルサーニ5375.jpg 女店主エリアーヌは、彼女の15歳の娘まで雑役夫アルマンに差し出してしまい、しかもその2人に嫉妬するといった有様で、最後には絶望の淵に追い込まれるわけですが、雑役夫との関係がスキャンダルにクラウディア・マルサーニ 家族の肖像.jpgなろうとも性愛の道を突き進むその姿は、一時のこととは言え、退屈なインテリである夫からの束縛を逃れ、自らの解放を果たしたというふうにもとれるかと思います。一方の雑役夫アルマンは、母だけでなく娘も籠絡したわけですが、そこには階級克服的な動機も色濃くあるように思われました(因みに、15歳の娘ジュスティーヌを演じたクラウディオ・マルサーニは、本作の2年前、ルキノ・ヴィスコンティの「家族の肖像」('74年/伊)にもシルヴァーナ・マンガーノの娘役で出ていた)。

●クラウディア・マルサーニ Claudia Marsani /with シルヴァーナ・マンガーノ in 「家族の肖像」 by ルキノ・ヴィスコンティ

 サルヴァトーレ・サンペリは"ネオ・レジスタ"グループの代表格ともされており、この作品には上流階級の脆弱・崩壊というものがバックテーマとしてあるようです。妻のすべての告白を聞いてもただ涙を流すしかない大学教授の夫(そのくせ、自分のコレクションを妻が誤って壊すと怒る)には、"知識人階級"への批判も込められているように思えました。

●クリオ・ゴールドスミス Clio Goldsmith 「スキャンドール(LA CICALA)」
LA CICALA 2.jpgLa Cicala2.jpgLA CICALA.jpg "イタリアン・エロス"系では、少し似たようなタイトルで「スキャンドール」('80年/伊)というものもあり、行きずりの少女チカラ(クリオ・ゴールドスミス)と共に旅していた歌手(ヴィルナ・リージ)が、旅先で知り合ったレストラン経営者と結婚しガソリンスタンドをLA CICALA2.jpg切り盛りするようになLA CICALA1.jpgり、そこに呼び寄せた娘(バーバラ・デ・ロッシ)と共に男1人女3人の生活を始めるが、やがて男を巡って娘と骨肉の争いをするというもので、「スキャンダル」と少し似ているかもしれません。この映画も、エロチックですが、演出はしっかりしています。
●バーバラ・デ・ロッシ Barbara De Rossi
"La cicala" - Regia Alberto Lattuada - 1980 - Barbara De Rossi

LA CICALA3.jpg クリオ・ゴールドスミスとバーバラ・デ・ロッシの同性愛的関係もあって、ストーリー的にはもうこの家族は一体どうなってるのという感じです。まあ、とことんやってくれる点がイタリアっぽくていいとも言えるのですが...。

 原題"チカラ"はイタリア語で「蝉」の意。クリオ・ゴールドスミス演じるところの、ガソリンスタンドの住み込み店員となって、こうした出来事の推移を目の当たりにし、自らもその異常事態に巻き込まれている少女チカラですが、この映画に出てくる「男1人女3人」の中では唯一ノーマルと言えるかも。最後は彼女が、蝉が木から飛び立つように店から逃げ出すところで終わります。

●ヴィルナ・リージ Virna Lisi
ヴィルナ・リージ.bmpVirna Lisi2.jpgVirna Lisi 1937.jpg 主演のヴィルナ・リージ(Virna Lisi、1937年生まれ)は、若い頃はジャック・レモン主演の「女房の殺し方教えます」('64年/米)などにも出たりしましたが、演技派指向なのに英語の話せないイタリア人の役をあてがわれ、結局、自分をセクシー女優としてしか見ないハリウッドに見切りをつけ、主にヨーロッパで"演技派"兼"セクシー女優"として活躍した人。

 ヴィルナ・リージは「スキャンドール」にはノーメークで出ていますが、当時43歳だったけれども美貌は健在で(役柄上、少し怖さもあったが)、「スキャンダル」に出た時41歳だったリザ・ガストーニと並び、強烈な印象を抱かされたイタリア"熟年"女優でした。実はこの2人はもっと若い新人時代の頃に、ジョセフ・ロージー監督の「エヴァの匂い」('62年/仏)に共に出演しています。主役はジャンヌ・モロー(1928年生まれ)で、これが男を惑わすファム・ファタール役、ヴィルナ・リージは彼女に主人公である恋人を奪われ自殺する女性というかなり重要な役回りで、一方のリザ・ガストー二の方はやや端役っぽい役だったと思います。

LO SCANDALO 1976.jpg「スキャンダル」●原題:LO SCANDALO(SCANDAL/SUBMISSION)●制作年:1976年●制作国:イタリア●監督:サルヴァトーレ・サンペリ●製作:シルヴィオ・クレメンテッリ●脚本:オッタヴィオ・ジェンマ/サルヴァトーレ・サンペリ●撮影:ヴィットリオ・ストラーロLisa Gastoni (Scandalo, 1976).jpgスキャンダル [DVD] リザ.png●音楽:リズ・オルトラーニ●時間:107分●出演:リザ・ガストーニフランコ・ネロ/レイモン・ペルグラン/ク三鷹オスカー.jpgラウディオ・マルサーニ/アンドレア・フェレオル●日本公開:1977/06●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:三鷹東映(78-02-04)●2回目:五反田TOEIシネマ(83-09-18)(評価:★★★★)●併映(1回目):「ラストタンゴ・イン・パリ」(ベルナルド・ベルトリッチ)/「O嬢の物語」(ジュスト・ジャキャン)
Lisa Gastoni (Scandalo, 1976) 「スキャンダル [DVD]
三鷹東映 1977年9月3日、それまであった東映系封切館「三鷹東映」が3本立名画座として再スタート。1978年5月に「三鷹オスカー」に改称。1990(平成2)年12月30日閉館。

スキャンドール ポスター2.jpg「スキャンドール 禁じられた体験」●原題:LA CICALA●制作年:1980年●制作国:イタリア●監督・脚本:アルベルト・ラットゥアーダ●製作:イブラヒム・ムーサ●撮影:フレッド・ボンガスト●音楽:ダニロ・デジデリ●原作:ナターレ・プリネット/マリナ・デ・レオ●時間:99分●出演:アンソニー・フランシオーサ/ヴィルナ・リージ/レナート・サルSet del film ヴァトーリ/クリオ・ゴールドスミスバーバラ・デ・ロッシ/マイケル・コビー●日本公開:1982/02●配給:ジョイパックフィルム●最初に観た場所:池袋日勝地下劇場(82-05-03)●2回目:新橋文化劇場(83-09-17)(評価:★★★☆)●併映(2回目):「ホテル」(カルロ・リッツァーニ)
「スキャンドール」撮影風景 "La cicala" - Alberto Lattuada - 1980 - le attrici Clio Goldsmith e Barbara De Rossi

日勝地下.jpgビックカメラ池袋.jpg池袋.jpg池袋スカラ座・日勝地下.jpg池袋スカラ座・池袋日勝地下劇場・池袋日勝映画劇場・池袋日勝文化劇場(現・池袋東口ビックカメラ池袋本店付近)1995(平成7)年6月25日閉館
③池袋東急 ④池袋スカラ座 ⑮池袋日勝地下劇場 ⑬池袋日勝映画劇場 ⑭池袋日勝文化劇場

  
池袋日勝 日勝文化 6月25日.jpg池袋日勝 日勝文化2.jpg池袋スカラ座 池袋日勝 日勝文化 日勝地下 - コピー.jpg

 
 
 
 
 


   
     
菅野 正 写真展 「平成ラストショー hp」より
  
日勝映画.png・1937年 池袋日勝映画館オープン
・1946年10月 - 池袋日勝映画劇場として再オープン
・1951年12月 - 池袋日勝地下劇場オープン
・1960年前後 - 池袋日勝文化劇場、池袋松竹劇場オープン
・1963年 - 池袋松竹劇場を池袋スカラ座と改称
・1995年 - 4館ともすべて閉館

imagesCA9GCJE5.jpg新橋文化劇場 内.jpg新橋文化劇場.jpg新橋文化劇場・新橋ロマン劇場 1957年ニュース映画の専門館として新橋駅烏森口JR浜松町方向ガード下にオープン、1958年に洋画の「新橋文化劇場」と邦画の「新橋第三劇場」が新設、1979年~洋画の「新橋文化劇場」邦画の「新橋ロマン劇場」に。
2014(平成26)年8月31日閉館

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最後まで枯れることのなかったヴィスコンティ。L・アントネッリ、J・オニールを使いこなす。

イノセント ポスター.jpgイノセント.jpg Malizia1.jpg 思い出の夏summer42.JPG
イノセント 無修正版 デジタル・ニューマスター [DVD]」「青い体験〈無修正版〉 [DVD]」(Laura Antonelli) 「おもいでの夏」(Jennifer O'Neill)

ヴィスコンティ生誕百年祭特集.jpgイノセント パンフ.jpg 「イノセント」は1976年のイタリア・フランス合作映画で、ルキノ・ヴィスコンティ(1906‐1976)の最後の監督作品(公開されたのは没後)。

 2006年に新宿のテアトルタイムズスクエアで開催された「ヴィスコンティ生誕100年祭」で、「山猫」、「ルートヴィヒと共にその完全版が上映されましたが、「祭」と言いつつたった3作しか上映しないのか、以前は名画座などでもっと気軽に観られたのに―という思いもあるものの、3作に限るならばこのラインアップはかなりいい線いってるように思いました。

L'INNOCENTE 輸入盤dvd.jpgL'INNOCENTE 2.jpg 「イノセント」は、19世紀ローマの貴族男性(ジャンカルロ・ジャンニーニ)が主人公で、その彼が妻と愛人の間で揺れ動く様が描かれているのですが、〈妻〉が「青い体験」(Malizia、'73年/伊)、「続・青い体験」(Peccato veniale、'74年/伊)のラウラ・アントネッリで、〈愛人〉が「おもいでの夏」(Summer of '42、'71年/米)のジェニファー・オニールなので、初めて見に行った時は、この2人を老ヴィスコンティがどう撮ったのかという興味もありました。貴族男性が愛人のもとへ行く際、妻に「君は昔から可愛い妹だった」などと言い訳して、それを妻ラウラ・アントネッリが許すというそれぞれのお気楽ぶりと従順ぶりにやや呆れるものの、最後になってみれば、実は女イノセントd.jpg性の心と肉体は男が思っているほど単純なものではなかったということか。

インノセント2.jpg  ラウラ・アントネッリ(あの「青い体験」の...)が妻でいながら、浮気などするなんて何というトンデモナイ奴かと思わせる部分も無きにしもあらずですが、浮気相手はジェニファー・オニール(あの「おもいでの夏」の...)だし...。

Laura Antonelli Giancarlo Giannini in L'Innocente

L'INNOCENTE5.jpg ジャンカルロ・ジャンニーニが演じる貴族は、自分の気持ちに純粋に従い過ぎるのかも。何となく憎めないキャラクターです(ジャンカルロ・ジャンニーニは、リナ・ウェルトミューラー監督の「流されて...」('75年/伊)の日本公開('78年)の時だったかに来日して舞台で挨拶していたが、意外と小柄だった印象がある)。結局、妻ラウラ・アントネッリの方も、義弟から紹介された作家に惚れられて自身も浮気に走り、そのことで夫は今さらのように自身の妻への愛着を再認識する―。

Jennifer O'Neill in L'Innocente          
ジェニファー・オニール2.jpg でもやはり気持ちはふらふらしていて、最後には作家の子を身籠った妻からの反撃を食い、愛人にも逃げられ、(自業自得とも言えるが)かなり惨めなことに...という、没落過程にある貴族層に個人のデカダン指向を重ね合わせたような、ヴィスコンティらしい結末へと繋がっていきます。

LINNOCENTE2.jpg 冒頭の「赤」を基調とした絢爛たる舞踏会シーンから映像美で魅せ、話の筋を追っていけば"貴族モノ"とは言え結構俗っぽい展開なのに、それでいて、ラウラ・アントネッリやジェニファー・オニールが、ヴィスコンティ映画の登場人物として"貴族然"として見えるのは、やはりヴィスコンティの演出のなせる業でしょうか(大河ドラマに出る女優が皆同じように見えるのとは似て非なるものか)。

イノセント1シーン.jpg 精神的かつ性的に抑圧されることで更にその魅力を強めていくラウラ・アントネヴィスコンティs.jpgッリが、(期待に反することなく?)充分エロチックに描かれていました(この〈妻〉の役は〈夫〉に勝るとも劣らず人物造形的にかなり複雑なキャラクターのように思える)。この映画の撮影の時ヴィスコンティは既に車椅子での演出でしたが、う〜ん、70歳、死期を悟りながらも、随分こってりした作品を作っていたんだなあと思わされます(そこがまたいい)。

Laura Antonelli  in L'Innocente  
                                             Inosento(1976)
イノセント .jpgInosento(1976).jpg「イノセント」●原題:L'INNOCENTE●制作年:1976年●制作国:イタリア・フランス●監督:ルキノ・ヴィスコンティ●製作:ジョヴァンニ・ベルトルッチ●脚本:スーゾ・チェッキ・ダミーコ/エンリコ・メディオーリ/ルキノ・ヴィスコンティ●撮影:パスクァリーノ・デ・サンティス●音楽:フランコ・マンニーノ●原作:ガブリエレ・ダヌンツィオ「罪なき者」●時間:129分●出演:ジャンカルロ・ジャンニーニ/ラウラ・アントネッリ/ジェニファー・オニール/マッシモ・ジロッティ/ディディエ・オードパンテアトルタイムズスクエア閉館.jpgタカシマヤタイムズスクエア.jpg/マルク・ポレル/リーナ・モレッリ/マリー・デュボア/ディディエ・オードバン●日本公開:1979/03●最初に観た場所:池袋文芸坐 (79-07-13)●2回目:新宿・テアトルタイムズスクエア (06-10-13) (評価★★★★☆)●併映(1回目):「仮面」(ジャック・ルーフィオ)
テアトルタイムズスクエア0.jpgテアトルタイムズスクエア内.jpgテアトルタイムズスクエア 新宿駅南口の新宿タカシマヤタイムズスクエア12Fに2002年4月27日オープン。2009年8月30日閉館。 
     
 
「青い体験」パンフレット/「青い体験〈無修正版〉 [DVD]
青い体験 パンフレット.jpg青い体験(無修正版).jpg「青い体験」●原題:MALIZIA●制作年:1973年●制作国:イタリア●監督:サルヴァトーレ・サンペリラウラ・アントネッリ.jpg●製作:シルヴィオ・クレメンテッリ●脚本:オッタヴィオ・ジェンマ/アレッサンドロ・パレンゾ/サルヴァトーレ・サンペリ●撮影:ヴィットリオ・ストラーロ●音楽:フレッド・ボンガスト●時間:Malizia2.jpg98分●出演:ラウラ・アントネッリ(Laura Antonelli)/アレッサンドロ・モモ/テューリ・フェッロ/アンジェラ・ルース/ピノ・カルーソ/ティナ・オーモン/ジャン・ルイギ・チリッジ●日本公開:1974/10●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:三鷹オスカー(80-04-05) (評価★★★★)●併映:「続・青い体験」(サルヴァトーレ・サンペリ)/「新・青い体験」(ベドロ・マソ)
ラウラ・アントネッリ            アレッサンドロ・モモ/ティナ・オーモン     Tina Aumont
Tina Aumont .jpg青い体験(2).jpgアレッサンドロ・モモ/ティナ・オーモン.jpg

 
 
 


 
 


青い体験 新dvd.jpg青い体験/続・青い体験 Blu-ray セット<無修正版>
青い体験 新dvd2.jpg 
  
 
 
 

 
 
続・青い体験_.jpg続・青い体験01.jpg「続・青い体験」●原題:PECCATO VENIALE●制作年:1974年●制作国:イタリア●監督:サルヴァトーレ・サンペリ●製作:シルヴィオ・クレメンテッリ●脚本:オッタヴィオ・ジェンマ/アレッサンドロ・パレンゾ●撮影:トニーノ・デリ・コリ●音楽:フレッド・ボンガスト●時間:98分●出演:ラウラ・アントネッリ/アレッサンドロ・モモ/オラツィオ・オルランド/リッラ・ブリグノン/モニカ・ゲリトーレ/リノ・バンフィ●日本公開:1975/08●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:三鷹オスカー(80-04-05) (評価★★★☆)●併映:「青い体験」(サルヴァトーレ・サンペリ)/「新・青い体験」(ベドロ・マソ)

「おもいでの夏」●原題:THE SUMMER OF '42●制作年:1971年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・マリガン●製作:リチャード・ロス●脚本:ジェニファー・オニール1.jpgおもいでの夏 dvd.bmpハーマン・ローチャー●撮影:ロバート・サーティーおもいでの夏.pngス●音ジェニファー・オニール.bmp楽:ミシェル・ルグラン●原作:ハーマン・ローチャー●時間:105分●出演:ジェニファー・オニール/ゲイリー・グライムス/ジェリー・ハウザー/オリヴァー・コナント/キャサリン・アレンタック/クリストファー・ノリス/ルー・フリッゼル●日本公開:1971/08●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:三鷹オスカー(80-11-03)(評価:★★★☆)●併映:「フォロー・ミー」(キャロル・リード)/「ある愛の詩」(アーサー・ヒラー) ジェニファー・オニール(Jennifer O'Neill)

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人間の強欲を皮肉をこめて描く完璧主義者シュトロハイムらしい作品(オリジナルは9時間半)。

グリード ポスター.jpgエーリッヒ・フォン・シュトロハイム 「グリード」.jpgグリード.jpg greed 1.jpg Erich von Stroheim.bmp
「グリード」クラシック・ポスター/「グリード《IVC BEST SELECTION》 [DVD]」 「グリード [DVD]」Erich von Stroheim

GREED 1924 poster2.png.jpgグリード 01.jpg サンフランシスコでヤミ歯科医をしている主人公マクティーグは、友人マーカスの恋人トリーナに横恋慕し、マーカスから彼女を譲って貰って妻にしたのだが、そのトリーナがある日5千ドルの宝くじを当てたため、マーカスはこれを妬んでマクティーグが無許可医であることを告発、一方、トリーナは5千ドルを守ろうと極端に倹約に走り、失職したマクティーグは妻のそうした態度に我慢できずに彼女を殺して金を奪い死の谷へ逃走。それを追うマーカスと灼熱の谷で5千ドルを奪い合う―。

GREED 1924 4.jpg 人間の強欲さ(greed)を描いた作品で、何だか、「三つの願い」を叶えて貰えることになった欲の張った夫婦が欲にかまけてそのチャンスを全て無駄にしてしまうという昔話を思い出しましたが、フランク・ノリスの原作小説『マクティーグ』は実話に基づいているとのこと。

greed 2.jpg 最後の男2人の死の谷での死闘は、モノクロ画面のお陰で却って灼熱感があり壮絶で、その後の「莫大な金はあっても一杯の水が無い」という "落ち"は確かに皮肉が効いていますが、映画全体としてはむしろ、大金を手にした妻トリーナが、それを無駄遣いしてはならない思いから、いつの間にか常軌を逸した吝嗇家になっていく様の方が印象的で、こっちの方が人間心理の怖さを表しているかも知れないと感じました(この監督は女性をシニカルに描く傾向にある?)。

 完璧主義者エーリッヒ・フォン・シュトロハイム(Erich Von Stroheim、1885‐1957)監督の長編サレント映画作品はどれも途方もない長編で、現存しているのはすべて極端に短縮されているものばかりであり、この作品も、完成時は9時間半あったそうですが、知人宅で8mmフィルムで観たものは約100分の短縮版で、どうしても話が飛び飛びになってしまうきらいはありました(一般向けにビデオ化、DVD化されているものも、同じく短縮版)。

 シュトロハイムはスタジオセットを用いずオール・ロケでこの映画を撮っていますが、死の谷の場面の撮影では、暑さに耐えかねて体調を悪くするスタッフが続出し、死人も出たというから、そこまでやるかという感じ。

GREED 1924.jpg その他にも、無声映画なのに出演者に台詞を全部暗記させたとか、この映画のために自宅や自家用車を抵当に入れたとか、完璧主義者らしい逸話に事欠かない作品ですが、如何せん長すぎて、映画会社上層部の意向でどんどん短縮編集されていったのは彼にとって気の毒なことでした(但し9時間半全部を観たいかというと、個人的にもさすがにそんな気は起きないのだが)。
 こうした仕打ちに本人も嫌気がさしたのかどうかは知りませんが、むしろ映画会社の方で彼に映画を撮らせると金がかかり過ぎるということで彼を敬遠するようになった結果、1920年代後半には監督としてのキャリアに終止符を打ち、以降は俳優として活躍することに(それまでも自身の監督作「愚なる妻」('22年)に主演するなどしてはいたが、以降は俳優一本に)。ジャン・ルノワールの「大いなる幻影」('37年)の貴族出身のドイツ将校役、ビリー・ワイルダーのサンセット大通り」('50年)の執事役の名優ぶりはよく知られているところです。人間の「性欲」を描いた「愚なる妻」と「金銭欲」を描いた「グリード」、映画監督としての力量からすると、俳優だけさせておくのは惜しかった...。

Greed(1924).jpgGREED 1924 3.jpgGREED 1924 poster1.jpg「グリード」●原題:GREED●制作年:1924年●制作国:アメリカ●監督:エーリッヒ・フォン・シュトロハイム●製作:MGMスタジオ●製作総指揮:ルイス・B・メイヤー●脚本:エーリッヒ・フォン・シュトロハイム/ジューン・メイシス●撮影:ベン・レイノルズ/ウィリアム・ダニエルズ/アーネスト・シュードサック●原作:フランク・ノリス「マクティーグ」●時間:100分●出演:ギブソン・ゴウランド/ザス・ピッツ/ジーン・ハーショルト/チェスター・コンクリン●日本公開:1926年11月5日●配給:ヤマニ洋行●最初に観た場所:杉本保男氏邸 (80-12-27) (評価★★★☆) Greed(1924)

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オリジナルな着想は素晴らしいが、ミステリとしての「掟破り」が瑕疵となり、映画に劣る。

気ちがい〔サイコ〕.png  サイコ  ロバート・ブロック.jpg サイコ ハヤカワ文庫.jpg     PSYCHO2.jpg
気ちがい (1960年) (世界ミステリシリーズ)』『サイコ (ハヤカワ文庫)』 ['82年旧版/新装版] 映画「サイコ」

Psycho.jpgPSYCHO 3.jpg 1959年発表のアメリカ人作家ロバート・ブロック Robert Bloch(1917‐1994/享年77)の『気ちがい(Psycho)』('60年4月/ハヤカワ・ミステリ)は、アルフレッド・ヒッチコック監督(1899‐1980/享年80)の映画「サイコ」('62年)の原作として有名になり、同じ福島正実訳のものがハヤカワ文庫に納められたとき('82年5月)に、『サイコ』という表題に改変されています(この小説や映画のお陰で、他の映画の字幕などでも「この"サイコ野郎"め」といった翻訳表現が使われるようになった)。

 ロバート・ブロックは、エド・ケインという男が起こした実際の犯罪事件をヒントにこの作品を書いており、父と兄に続いて母親を亡くしたエドは、とりわけ絶対的な影響力を占めていた母親が死んでから、オカルトや解剖、屍体への性的執着、カニバリズムに耽溺、1957年に女性殺害容疑で逮捕されて家宅捜索を受けた際に、自宅から全部で15人の女性の死体が見つかりましたが、死体はどれも細かく解体されており、その一部は上着や食器・家具に加工され、また一部は食用として保存されていたといいます(裁判では精神障害(性的サイコパス)として無罪に)。

 小説の主人公ノーマンの人格造型に、今で言う"解離性障害"のようなものを持ち込んだのは作者のオリジナルだと思われ、その着想は素晴らしいものの、「ノーマンは母さんを面と向かって見られなかった」とか「彼は母さんのスカートに頭をうずめ、しゃくりあげながら、話しはじめた」、「母さんは窓のほうに行くと、降りしきる雨足をじっと眺めた」などといった表現は、ミステリとしては所謂「掟破り」になるかと思われます。

映画術 フランソワ トリュフォー.jpg 映画監督のフランソワ・トリュフォーもこの点を批判していて、『映画術―ヒッチコック・トリュフォー』('81年/晶文社)でのヒッチコックへのインタビューにおいて、こうした"禁じ手"を使わずに原作を映像化したヒッチコックの技法を讃えています。

ユージュアル・サスペクツ.jpg 例えば、アカデミー賞脚本賞受賞映画の「ユージュアル・サスペクツ」('95年/米)なども、傑作ミステリ映画と言われながらも、途中で実在しない人物を映像化するという"禁じ手"を用いて自ら瑕疵を生じせしめているように思います。コカインの密輸船が爆破され大量のコカインと金が消えた事件の黒幕と目される大物ギャング、カイザー・ソゼとは何者なのかを巡る心理サスペンスで、ラストもさることながら、その少し前の尋問場面で、観ていてアッと言わせる、確かに傑作でした。本来なら星5つ乃至4つ半ぐらい献上したい、にもかかわらず、この"禁じ手"を用いていることで、個人的には星1つ分は減らさざるを得ない...まさに「残念な映画」と言えます。  「ユージュアル・サスペクツ [DVD]

Psycho (1960).jpg 『映画術』ではこの外に、「サイコ」においてヒッチコックがいかに緻密な計算の上に、セオリー通りの手法やセオリーを外れた実験的手法を用いサイコ7.jpgて効果を上げているかを、トリュフォーが本人から巧みに聞き出していて、例えば後者(セオリー外)で言えば、最初の被害者にジャネット・リーを起用した点などもそうです(ヒッチコック映画で女優がブラジャー姿で出てくるのはこの作品だけ。因みにジャネット・リーは、ポスターを見ると、特別出演のような扱いに)。

Psycho(1960)

 自らがこの作品の監督だとして、普通は映画の半ばで殺される女性に有名女優を用いようとは思わないでしょう。物語の最後まで観客の興味を牽引していくと思われた主演クラスの女優が演じる役を途中で被害者にしてしまい、観客の感情移入に見事に肩透かしを食わせ、アンソニー・パーキンスが演じる孤独な青年に一気に感情移入の対象を移行させる―やはり、こうした計算され尽くした「映画術」から見ても、ヒッチコックの映画監督としての才能が原作の名を高めたというべきでしょう。

『サイコ』(1960) 0.jpg『サイコ』(1960).jpg ヒッチコックがこの小説の映画化に踏み切った理由は、ただ1つ、「シャワーを浴びていた女性が突然に殺されるという悲惨さ」にショックを受けたからとのことで(匿名で、極めて安値で原作の映画化権を買い取っている)、45秒のシャワーシーンに200カット詰めみ7日間もかけて撮ったという話は有名。但し、このシーンの撮影の際にアンソニー・パーキンスは舞台出演中で撮影現場にはいなかったことを、映画公開の20年後にアンソニー・パーキンス自身が告白しています。

サイコ1.jpg その外にも、ジャネット・リーの手と肩と顔だけが本物で、あとは全てスタンドインのモデルを使っているとか、エロティックかつ残酷な場面という印象があるにも関わらず、女性の乳房さえ映っておらず、ナイフが肉に刺さるショットも無い(そうした印象は全てモンタージュ効果によるものである)とか、このシーンだけでもネタは尽きません。

Janet Leigh2.jpgジャネット・リー(Janet Leigh、本名:Jeanette Helen Morrison、1927年7月6日 - 2004年10月3日)は、カリフォルニア州マーセド出身。アメリカの女優。15歳で駆け落ちしたが4ヶ月で破局、19歳で大学の同級生と再婚した。休暇中、写真のモデルとして写った写真を、女優ノーマ・シアラーが偶然見て、「この顔は絶対映画に出るべきよ」と映画関係者にスカウトを勧めたという。20歳で当時若く素朴な田舎の少女を捜していたメトロ・ゴールドウィン・メイヤーと契約する。彼女の最も有名な出演作は、アルフレッド・ヒッチコックの『サイコ』(1960年)である。同作での演技でアカデミー主演女優賞にノミネートされ、ゴールデングローブ賞を受賞した。また、有名なシャワーシーンの演技から、今日では「絶叫クイーン」の1人として挙げられることがある。娘のジェイミー・リー・カーティスもまた、『ハロウィン』(1978年)での演技が評価され、同様に称される。(「音楽映画関連没年データベース」より)

サイコ dvd.jpg「サイコ」●原題:PSYCHO●制作年:1960年●制作国:アメリカ●監督・製作:アルフレッド・ヒッチコック●音楽:バーナード・ハーマン●原作:ロバート・ブロック「気ちがい(サイコ)」●時間:108分●出演:アンソニー・パーキンス/ジャネット・リー/ベラ・マイルズ/マーチン・バルサン/ジャン・ギャヴィン●日本公開:1960/09●配給:パラマウント●最初に観た場所:六本木・俳優座シネマテン(97-09-19) (評価★★★★)

ユージュアル・サスペクツ2.jpg「ユージュアル・サスペクツ」●原題:THE USUAL SUSPECTS●制作年:1995年●制作国:アメリカ●監督:ブライアン・シンガー●製作:ハンス・ブロックマン他●脚本:クリストファー・マッカリー●撮影:ニュートン・トーマス・サイジェル●音楽:ジョン・オットマン●時間:106分●出演:ケヴィン・スペイシー/ガブリエル・バーン/スティーヴン・ボールドウィン/ベニチオ・デル・トロ/ケヴィン・ポラック/チャズ・パルミンテリ/ピート・ポスルスウェイト●日本公開:1996/04●配給:アスミック●最初に観た場所:銀座テアトル西友(96-04-29) (評価★★★☆)
ル テアトル銀座1.jpgル テアトル銀座2.jpg銀座セゾン劇場・銀座テアトル西友/ル テアトル銀座・銀座テアトルシネマ
1987年7月「銀座テアトルビル」3階に「銀座セゾン劇場」、5階に「銀座テアトル西友」オープン。1999年一時閉館。2000年4月~「ル テアトル銀座」(座席数770席)(2007年3月~「ル テアトル銀座 by PARCO」)、「銀座テアトルシネマ」(座席数150席) 。2013年5月31日共に閉館。

 【1982年文庫化[ハヤカワ文庫 NV (『サイコ』(福島正実訳))]/1999年再文庫化[創元推理文庫(『サイコ』(夏来健次訳))]】

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複雑な問題をわかり易く説明することのプロが、時間をかけて書いた本だけのことはあった。

まんが パレスチナ問題.jpg 『まんが パレスチナ問題 (講談社現代新書)』 ['05年]    sadat.jpg アラファト.jpg

 旧約聖書の時代から現代まで続くユダヤ民族の苦難とパレスチナ難民が今抱える問題、両者の対立を軸とした中東問題全般について、その宗教の違いや民族を定義しているものは何かということについての確認したうえで、複雑な紛争問題の歴史的変遷を追ったもので、周辺諸国や列強がどのようなかたちでパレスチナ問題に関与したか、それに対しイスラエルやパレスチナはどうしたかなどがよくわかります。

 最初のうちは、マンガ(と言うより、イラスト)がイマイチであるとか、解説が要約され過ぎているとか、地図の一部があまり見やすくないとか、心の中でブツブツ言いながら読んでいましたが、結局、読み出すと一気に読めてしまい、振り返ってみれば、確かに史実説明が短い文章で切られているため因果関係が見えにくくなってしまい、歴史のダイナミズムに欠ける部分はあるものの、全体としては、わかり易く書かれた本であったという印象です。

 ユダヤの少年ニッシムとパレスチナの少年アリによるガイドという形式をとっていて、(会話体の割には教科書的な調子の記述傾向も一部見らるものの)双方のパレスチナ問題に関する歴史的事件に対する見解の違いを浮き彫りにする一方で、ちょっと工夫されたエンディングも用意されています。

 著者は、広告代理店の出身で、教育ビデオの制作などにも携わった経験の持ち主ですが、複雑な問題をわかり易く説明することにかけてのプロなわけで、そのプロが、2年半もの時間をかけて書いた本、というだけのことはありました。

 読み終えて、ロンドンのロスチャイルドのユダヤ人国家建国の際の政治的影響力の大きさや、'48年、'56年、'67年、'73年の4度の中東戦争の経緯などについて新たに知る部分が多かったのと、サダト・元エジプト大統領に対する評価がよりプラスに転じる一方で、アラファト・元PLO議長に対する評価のマイナス度が大きくなりました。


 要所ごとに、「十戒」「クレオパトラ」「チャップリンの独裁者」「アラビアのロレンス」「夜と霧」「屋根の上のバイオリン弾き」「栄光への脱出」といった関連する映画がイラストで紹介されているのも馴染み易かったです。

屋根の上のバイオリン弾き.jpg屋根の上のバイオリン弾き2.jpg 「屋根の上のバイオリン弾き」('71年)は、もともと60年代にブロードウェイ・ミュージカルとして成功を収めたもので、ウクライナ地方の小さな村で牛乳屋を営むユダヤ人テヴィエの夫婦とその5人の娘の家族の物語ですが、時代背景としてロシア革命前夜の徐々に強まるユダヤ人迫害の動きがあり、終盤でこの家族たちにも国外追放が命じられる―。

Topol in Fiddler On the Roof
『屋根の上のバイオリン弾き』(1971).jpg 映画もミュージカル映画として作られていて、テーマ曲のバイオリン独奏はアイザック・スターン。ラストの「サンライズ・サンセット」もいい。

 主演のトポルはイスラエルの俳優で、舞台で既にテヴィエ役をやっていたので板についていますが、森繁の舞台を先に見た感じでは、やはりこの作品は映画より舞台向きではないかという気がしました("幕間"というものが無い映画で3時間は結構長い)。

Katharine Ross in Voyage Of The Damned
Katharine Ross Voyage Of The Damned.jpgさすらいの航海(VOYAGE OF THE DAMNED).jpg 事件的にはややマイナーなためか紹介されていませんが、第2次大戦前夜、ドイツから亡命を希望するユダヤ人937名を乗せた客船が第二の故郷を求めて旅する実話の映画化「さすらいの航海」('76年/英)なども、ユダヤ人の流浪を象徴する映画だったと思います。

 船に乗っているのは比較的裕福なユダヤ人たちですが、ナチスVoyage of the Damned1.jpgの策略で国を追い出されアメリカ大陸に向かったものの、キューバ、米国で入港拒否をされ(ナチス側もそれを予測し、ユダヤ人差別はナチスだけではないことを世界にアピールするためわざと出航させた)、結局また大西洋を逆行するという先の見えない悲劇に見舞われます。

Voyage of the Damned2.jpg この映画はユダヤ人資本で作られたもので、マックス・フォン・シドーの船長役以下、オスカー・ヴェルナーとフェイ・ダナウェイの夫婦役、ネヘミア・ペルソフ、マリア・シェルの夫婦役、オーソン・ウェルズやジェームズ・メイソンなど、キャストは豪華絢爛。今思うと、フェイ・ダVOYAGE OF THE DAMNED Faye Dunaway.jpgナウェイのような大物女優からリン・フレデリック、キャサリン・ロスのようなアイドル女優まで(キャサリン・ロスは今回は両親を養うために娼婦をしている娘の役だが)、よく揃えたなあと。さすがユダヤ人資本で作られた作品。但し、グランドホテル形式での人物描写であるため、どうしても1人1人の印象が弱くならざるを得なかったという映画的な弱点も見られたように思います。

FIDDLER ON THE ROOF 1971.png『屋根の上のバイオリン弾き』(1971)2.jpg「屋根の上のバイオリン弾き」●原題:FIDDLER ON THE ROOF●制作年:1971年●制作国:アメリカ●監督・製作:ノーマン・ジュイスン●脚本:ジョセフ・スタイン●撮影:オズワルド・モリス●音楽:ジョン・ウィリアムス●原作:ショーレム・アレイヘム「牛乳屋テヴィエ」●時間:179分●出演:トポル/ノーマ・クレイン/ロザリンド・ハリス/スカラ座.jpg新宿スカラ座22.jpgミシェル・マーシュ/モリー・ピコン/レナード・フレイ/マイケル・グレイザー/ニーバ・スモール/レイモンド・ラヴロック/ハワード・ゴーニー/ヴァーノン・ドブチェフ●日本公開:1971/12●配給:ユナイト●最初に新宿スカラ座.jpg観た場所:新宿ビレッジ2(88-11-23)(評価:★★★☆)

新宿ビレッジ1・2 新宿3丁目「新宿レインボービル」B1(新宿スカラ座・新宿ビレッジ1・2→新宿スカラ1・2・3) 2007(平成19)年2月8日閉館

 

吉祥寺スカラ座・吉祥寺オデヲン座・吉祥寺セントラル・吉祥寺東宝
吉祥寺東亜.jpg「さすらいの航海」●原題:VOYAGE OF THE DAMNED●制作年:1976年●制作国:イギリス●監督・製作:スチュアート・ローゼンバーグ●撮影:オズワルド・モリス●音楽:ラロ・シフリン●原作:ゴードン・トマス/さすらいの航海 リン・フレデリック4.jpgマックス・モーガン・ウィッツ「絶望の航海」●時間:179分●出演:フェイ・ダナウェイ/オスカー・ヴェルナー/リン・フレデリック/マックス・フォン・シドー/マルコム・マクダウェル/リー・グラント/キャサリン・ロス/オーソン・ウェルズさすらいの航海 ウェルズ2.jpg/ジェームズ・メイソン吉祥寺セントラル・吉祥寺スカラ座.jpg/マリア・シェル/ネヘミア・ペルソフ/ホセ・フェラー/フェルナンド・レイ●日本公開:1977/08●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:吉祥寺スカラ座 (77-12-24)(評価:★★★)●併映:「シビルの部屋」(ネリー・カフラン) 
吉祥寺スカラ座 1954(昭和29)年、吉祥寺駅東口付近に「吉祥寺オデヲン座」オープン。1978(昭和53)年10月、吉祥寺オデヲン座跡に竣工の吉祥寺東亜会館3階にオープン(5階「吉祥寺セントラル」、2階「吉祥寺アカデミー」(後に「吉祥寺アカデミー東宝」→「吉祥寺東宝」)、B1「吉祥寺松竹オデヲン」(後に「吉祥寺松竹」→「吉祥寺オデヲン座」)。 2012(平成24)年1月21日、同会館内の全4つの映画館を「吉祥寺オデヲン」と改称、同年8月31日、地下の前・吉祥寺オデヲン座(旧・吉祥寺松竹)閉館。 

吉祥寺東亜会館
吉祥寺オデオン.jpg 吉祥寺オデヲン.jpg

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重症うつ病の"現場"を見てきているという自信が感じられる内容。「うつ病」の怖さを痛感。

うつ病.jpgうつ病―まだ語られていない真実 (ちくま新書 690)岩波 明.jpg 岩波 明 氏(精神科医/略歴下記)

Hemingway.bmpMargaux Hemingway.jpgMargaux Hemingway in Lipstick.jpg 自殺したヘミングウェイが晩年うつ病でひどい被害妄想を呈していたとは知らなかったし、近親者にうつ病が多くいて、彼の父も拳銃自殺しているほか、弟妹もそれぞれ自殺し、孫娘のマーゴ・ヘミングウェイ(映画「リップスティック」に主演)までも薬物死(自殺だったとされてる)しているなど、強いうつ病気質の家系だったことを本書で知りましたが、うつ病を「心のかぜ」などというのは、臨床を知らない人のたわごとだと著者は述べています。
Ernest Hemingway/Margaux Hemingway

 ただし本書によれば、こうした遺伝的気質などによる「内因性うつ病」と、心因的な「反応性うつ病」を区分する従来の二分法は症状面からの区別が困難で、内因性うつ病でも近親者の死など身近な出来事が誘引として発症することがあるため、DSM‐Ⅳではこれらは大うつ病という用語で一括りにされており、一方、軽症うつも、「神経症性うつ病」と従来呼ばれていたのが気分変調症(ディスサイミア)」と呼ぶようになっているとのこと。こうした病名は時代とともに変わるようでややこしい。
 実際、「軽症うつ」という概念は、「大うつ病」「気分変調症」を除く"軽いタイプのうつ病"という意味で最近まで用いられており(時に「気分変調症」も含む)、本書はどちらかと言うと、「軽症うつ」を除くディスサイミア以上の重い症状を扱った本と言えるのでは。

 うつ病(ディスサイミア)の症例として、被害妄想から自宅に放火し、自らの家族4人を死に至らしめた女性患者の例が詳しく報告されていて、うつ病(ディスサイミア)の怖さを痛感させられショッキングであるとともに、その供述があまりに不確かで、(このケースもそうだが)抗うつ剤を大量服用したりして事故に至るケースも多いようで、こうした事件の事実究明の難しさを感じました(この事件についても著者は"失火"の可能性を捨てていない)。

 こうした犯罪と精神疾患の関係も著者の研究テーマであり、そのため著者の本は時に露悪的であると評されることもあるようですが、無理心中事件などの中には、実際こうしたうつ病に起因するものがかなり多く含まれていて、周囲が異常を察知し、また薬の服用を過たなければ防げたものも多いのではないかと改めて考えさせられました。

 現在治療を受けたり通院したりしている人にも自分がどんな治療を受けているのかがわかる様に、抗うつ剤の種別や副作用について専門医の立場から詳しく書かれている一方、素人や専門医でない人の書いたうつ病や抗うつ剤に関する著書の記述の危うさに警鐘を鳴らし(高田明和、生田哲の両氏は名指しで批判されている)、更に、精神科医であっても重症例の臨床に日常的に携わっていない学者先生のものもダメだとしていて、重症のうつ病の"現場"を見てきているという自信とプライドが感じられる内容です。

リップ・スティック.jpg 因みに、冒頭で取り上げられているマーゴ・ヘミングウェイが主演した映画「リップスティック」は、レイプ被害に遭った女性モデル(マーゴ・ヘミングウェイ)が犯人の男を訴えるも敗訴し、やがて今度は妹(マリエル・ヘミングウェイ)も同じ男レイプされるという事件が起きたために、自分と妹の復讐のためにそのレイプ犯を射殺し、裁判で今度は彼女の方が無罪になるというもの。

マーゴ・ヘミングウェイ リップスティック 映画パンフ.jpg あまり演技力を要しないようなB級映画でしたが(マーゴ・ヘミングウェイが演じている主人公は、うつ気味というよりはむしろ神経症気味)、大柄でアグレッシブな印象のマーゴ・ヘミングウェイを襲うレイプ犯を演じていたのが、ヤサ男の音楽教師ということで(「狼たちの午後」('75年/米)でオカマ男性を演じてアカデミー助演男優賞にノミネートされたクリス・サランドンが演じてている)、このキャラクター造型は、今風のストーカーのイメージを先取りしていたように思います。

Killer Fish.jpg マーゴ・ヘミングウェイは、この後、B級映画「キラーフィッシュ」(別題「謎の人喰い魚群」または「恐怖の人食い魚群」、'78年/伊・ブラジル)とかにも出ていますが(劇場未公開、'07年にテレビ放映)、B級映画専門で終わった女優だったなあ。

 彼女が自殺した日は、祖父アーネスト・ヘミングウェイが自殺した日から35年後の、同じ7月2日だったそうです。

リップスティック.jpglipstick.jpg 「リップスティック」●原題:LIPSTICK●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:ラモント・ジョンソン●製作:フレディ・フィールズ●脚本:デヴィッド・レイフィール●撮影:ビル・バトラー●音楽:ミッシェル・ポルナレフ●時間:89分●出演:マーゴ・ヘミングウェイ/クリス・サランドン/アン・バンクロフト/ペリー・キング/マリエル・ヘミングウェイ/ロビン・ガンメル/ジョン・ベネット・ペリー●日本公開:1976/09●配給:東宝東和●最初に観た場所:高田馬場パール座 (77-12-16) (評価:★★)●併映:「わが青春のフロレンス」(マウロ・ポロニーニ)

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岩波明 イワナミ・アキラ
1959昭和34)年、横浜市生れ。東京大学医学部卒。精神科医。医学博士。東京都立松沢病院を始めとして、多くの精神科医療機関で診療にあたり、東京大学医学部精神医学教室助教授を経て、ヴュルツブルク大学精神科に留学。現在、埼玉医科大学精神医学教室助教授を務める。著書に『狂気という隣人』『狂気の偽装』『思想の身体 狂の巻』(共著)、訳書に『精神分析に別れを告げよう』(H.J.アイゼンク著・共訳)などがある。

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著者の手づくりへのこだわり。手づくりアニメは純粋芸術化していくのか?
アニメーションの世界へようこそ.jpg Atama Yama (Mt. Head).jpg 頭山」山村浩二作品集 1.jpg  雪の女王 dvd.jpg  水玉の幻想 INSPIRACE.jpg
アニメーションの世界へようこそ (岩波ジュニア新書)』「「頭山」山村浩二作品集 [DVD]」「雪の女王 [DVD]」「カレル・ゼーマン作品集 [DVD]

アニメ「頭山」.jpg ケチな男が拾ったサクランボを種ごと食べてしまったため、種が男の頭から芽を出して大きな桜の木になる。近所の人たちは大喜びで男の頭に上って、その頭を「頭山」と名づけて花見で大騒ぎ、男は頭の上がうるさくて苛立ちのあまり桜の木を引き抜き、頭に大穴が開く。この穴に雨水がたまって大きな池になり、近所の人たちが船で魚釣りを始め出し、釣り針をまぶたや鼻の穴に引っ掛けられた男は怒り心頭に発し、自分で自分の頭の穴に身を投げて死んでしまう―。
 
ほら吹き男爵の冒険 サクランボ.jpg落語 頭山.jpg 江戸落語「頭山」(上方落語では「さくらんぼ」)を基にした短編アニメ「頭山」('02年)、シュールな展開が面白かったです。このタイプのナンセンスは個人的好みでもありました。徒然草の「堀池の僧正」が元ネタであるという説があるそうですが、西洋でも、ビュルガー原作の小説「ほら吹き男爵の冒険」の中に、男爵が大鹿めがけて撃ったサクランボの種が鹿の額に命中し、後日、男爵はあたま山 アニメ.jpg頭からサクランボの木を生やしたその鹿と遭遇してこれを射止め、シカ肉とサクランボソースの両方を堪能する―という話があり、サクランボという点で符合しているのが興味深いです。ユーリー・ノルシュテインなどの影響も感じられ、一方で語りは浪曲師の国本武春が弁士を務めているジャパネスク風というこのアニメ作品、世界4大アニメーション映画祭(アヌシー・ザグレブ・オタワ・広島)のうちアヌシー、ザグレブ、広島でグランプリを獲得し、第75回アカデミー賞短編アニメーション部門にもノミネートされ、内外23の映画祭で受賞・入賞を果たしたそうです。

 本書は、その「頭山」の作者であるアニメーション作家・山村浩二氏が、ジュニア向けに書き下ろしたアニメーション入門書(山村氏は今年['07年]、「カフカ 田舎医者」('07年)で、オタワ国際アニメーション映画祭で日本人初のグランプリを獲得し、これで4大アニメーション映画祭のすべてにグランプリを獲得したことになる)。

アルタミラ洞窟画.jpg アニメーションの誕生から現代に至るまでの歴史を辿り、「頭山」のメーキングから、アニメーションの作り方までを、編集・録音、発表・公開まで含めて(この辺りは職業ガイド的)紹介しています。

 アニメーションの発想が、アルタミラの洞窟画の牛の絵などにも見られるというのが面白く(疾走感を表すために前脚が3本描かれているものがある)、法隆寺の玉虫厨子(日本橋高島屋に立派なレプリカがありましたが、今どうなったか?)の「捨身飼虎図」(しゃしんしこのず)なども、ナルホド、アニメーションの発想なのだなあ。  
 
雪の女王.jpg アニメの歴史は映画の歴史とほぼ同時に始まっていて、東欧圏とかに結構いい作品があるのを知りました。

 ロシアン・アニメはレフ・アタマノフ監督の「雪の女王」('57年/ソ連)(アンデルセン原作)など、何本か観たことがありましたが、ディズニーのものとはまた違った趣きがあって良かったです(「三鷹の森ジブリ美術館」の館主・宮崎駿監督が監修した新訳版が来月('07年12月)公開予定)。

水玉の幻想1.jpg 本書はカラー版なので写真が美しく、カレル・ゼマン(或いはカレル・ゼーマン)(KAREL ZEMAN 1910-1989/チェコ)「水玉の幻想」(Inspiration 1948年)などは、動いているところをまた見たくなります(これも手づくり作品の極致)。物語は、ガラス細工職人が、創作にちょっと行き詰ったある日、窓の外の雨の中に見た幻想という形をとっており、木の葉を伝う雨の一雫の中に幻想の世界が広がり、踊り子とピエロの儚い愛の物語が展開するガラス人形アニメーションで、人や動物、草や木、湖や海まで全てガラスで作られており、それらをコマ撮りしてここまでの高度な芸術世界を創り上げているのは、ボヘミアンガラスのお膝元とは言え、驚嘆させられるものがあります。長さ10分強の短編ですが、ゼマンにはこの他に、ジュール・ヴェルヌの小説などを映像化した長編作品もあります(代表作は「盗まれた飛行船(Ukradená vzducholoď)」(原作『十五少年漂流記』 88分、1966年))。 

 本書の全編を通じて、著者の手づくりへのこだわりが感じられます。「頭山」も長さ10分ほどの作品ですが、原画は1万6千枚だそうで、構想から完成までの期間は6年! アニメの作り方も「霧の中のハリネズミ」('75年/ソ連)のユーリー・ノルシュテインなどに似ています。作者(著者)は、自分が今生きているとはどういううことなのか、という哲学を、この作品で描きたいと思ったそうです。

 '06年にディズニーがCGアニメのピクサー社の買収を発表しましたが(ピクサーCEOスティーブ・ジョブズはディズニーの筆頭株主に)、今後ますます世界の商業アニメのCG化は進むだろうと思われ、こうした手づくりアニメは純粋芸術化していくような気もしました。

頭山es.jpg 「頭山」●英題:MT. HEAD●制作年:2002年●監督・演出・アニメーション・編集・製作:山村浩二●脚本:米村正二 ●原作:落語「頭山」●時間:10分●声の出演:国本武春/ブルーノ・メッカー●公開:2003/04●配給:スローラーナー=ヤマムラアニメーション(評価:★★★★)

雪の女王es.jpg雪の女王ド.jpg 「雪の女王」●原題:Снежная королев(スニェージナヤ・カラリェバ)●制作年:1957年●制作国:ソ連●監督:レフ・アタマノフ●脚本:レフ・アタマノフ/G・グレブネル/N・エルドマン●音楽:A.アイヴァジャン●原作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン●時間:63分●声の出演:Y.ジェイモー/A.カマローワ/M.ババノーワ/G.コナーヒナ/V.グリプコーフ●公開:1960/01/1993/08 ●配給:NHK/日本海映画●最初に観た場所:高田馬場ACTミニシアター(84-01-14)(評価:★★★★)●併映:「せむしの仔馬」(イワノフ・ワーノ)

カレル・ゼマン 水玉の幻想 dvd.jpgカレル・ゼマン 水玉の幻想 .jpg mizutama.jpg 「水玉の幻想」●原題:INSPIRACE●制作年:1948年●制作国:チェコスロバキア●監督:カレル・ゼマン(ゼーマン)●時間:12分●公開:1955/06●配給:独立映画(評価:★★★★)
  
 
幻想の魔術師 カレル・ゼマン コレクターズBOX [DVD]」所収作品:「クラバート」「彗星に乗って」「鳥の島の財宝」「前世紀探検」「シンドバッドの冒険」「狂気のクロニクル」「ホンジークとマジェンカ」「クリスマスの夢」「プロコウク氏 映画製作の巻」「プロコウク氏 家作りの巻」「プロコウク氏 靴屋はいやだの巻」「プロコウク氏 発明の巻」「王様の耳はロバの耳」「ハムスター」「幸運の蹉跌」

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傭兵部隊の男たちをリアルに描く。映画でも原作の"男の美学"をキッチリ描いて欲しかった。

戦争の犬たち 上.jpg 戦争の犬たち下.jpg  戦争の犬たち.jpg The Dogs of War (1980)2_.jpg ジャッカルの日2.jpg Jakkaru no hi (1973)2_.jpg
戦争の犬たち (上) (角川文庫)』『 (下) (角川文庫)』「戦争の犬たち [DVD]」 「ジャッカルの日 [DVD]
戦争の犬たち (海外ベストセラー・シリーズ)
戦争の犬たち (海外ベストセラー・シリーズ)_.jpgTHE DOG OF WAR 1974.jpg 英国の富豪が、西アフリカ某国に傭兵部隊を送り込んで独裁政権打倒クーデターを起こし、傀儡政権を樹立しようとするが、その真の目的は鉱物資源の採掘権を得るためである。傭兵隊長のシャロンは、傭兵となる腕ききの男たちを集めるが、シャロンも含め、傭兵となって危険な地に赴く男たちの目的は、多額の報酬だけなのだろうか―。

 1974年に発表されたイギリス人作家フレデリック・フォーサイスの第3作で(原題"The Dogs of War")、1971年発表の彼の出世作『ジャッカルの日(The Day of the Jackal)』('73年・角川書店)、1972年発表の第2作『オデッサ・ファイル(The Odessa File)』('74年・角川書店)に続くものです。

ジャッカルの日 (1973年) .jpgジャッカルの日.jpg 『ジャッカルの日』では暗殺の準備に明け暮れるスナイパーをリアルに描きましたが、目的の達成に向けて優雅かつ周到に計画を進めて行く"ジャッカル"ことスナイパーに対し、計画を察知したフランスの官憲側のちょっと見かけは野暮な警視が、スナイパーの動向を何度も見失いながらも、ギリギリのところで急速に彼との距離を詰めいく様が、手に汗握るタッチで描かれていました(評価 ★★★★)。

 本作『戦争の犬たち』では、クーデターの準備に明け暮れる傭兵の"日常"が、これもまた丹念に描かれていて、内外の政治や経済を巡る権謀術数もあり、う〜ん、リアルではあるが、前半は少し地味だなあと。でも、読み進むうちに、これもまたどんどんハマっていくから、やはり上手いんだろうなあ、この作家。

「戦争の犬たち」0.jpgThe Dogs of War.jpg フォーサイスは実際に、赤道ギニアの独裁政権打倒クーデターを、私費を投じて(『ジャッカルの日』が世界的ベストセラーになり、大金持ちになっていた)傭兵部隊を結成したりして支援もしたそうで、その際に「傭兵」に志願する人間というものに関心を抱いたのではないでしょうか。

第四の核.jpg フォーサイスの原作で映画化されたものは、作品の内容と主人公の配役がマッチしている気がします。「ジャッカルの日」('73年/米)でスナイパーを演じたエドワード・フォックスや、「オデッサ・ファイル」('74年/米)のルポライター役のジョン・ヴォイト、さらには「第四の核」('86年/英、劇場未公開)でソ連工作員を演じたピアーズ・ブロスナン(ボンド俳優)までも、どういうわけかピッタリはまっていました。

THE DOG OF WAR.jpg「戦争の犬たち」1.jpg そして「戦争の犬たち」('80年/米)のクリストファー・ウォーケンも、彼自身は良い、と言うか、頑張ってはいるのですが...。

 原作の静けさの中でのラストは衝撃的であり、"男の美学"と言うとやや陳腐ですが、シャロンが傭兵部隊に身を投じた気持ちを解するヒントが示されています。それが、映画になると、色恋に破れた男みたいな感じで、しかもラストは原作を捻じ曲げたドタバタ劇で少々ガッカリさせられました。

「ジャッカルの日」パンフレット
「ジャッカルの日」1.jpgジャッカルの日 パンフ.jpg フォーサイスの原作の映画化作品で、最も成功しているのは、やはりフレッド・ジンネマン監督の「ジャッカルの日」だと思いますが、フランスで'60年代初め、アルジェリア戦争を終結させてしまったシャルル・ド・ゴール大統領の暗殺を企てる戦争推進派のテロリストグループがあったことは事実であり、"ジャッカル"も実在のテロリスト「カルロス」(通称、カルロス・ザ・ジャッカル)がモデルとも言われています。

「ジャッカルの日」3.jpg 当時、フランスに特派員として駐在していたフォーサイスの経験がよく反映されている一方、巧みに虚構を織り交ぜていて、こうしたやり方は『戦争の犬たち』に通じるものがありますが、この小説でも、暗殺者はイギリス人"らしい"ということになっていて、エドワード・フォックスは"小説のジャッカル"のイメージにピッタリ(本物のカルロス・ザ・ジャッカルはベネズエラ人)。結局、彼が何者だったのかは、小説でも映画でも明かされませんが、フランス人でなかったことは確かで、フランス式儀礼の仕方を知らなかったがために...。 

 映画を観て思ったのですが、ジャッカルって、クルマを事故ったり、女性をナンパしたり、(プロとしてどうかというもはあるが)結構人間臭く、こうした部分が、観る者を彼に感情移入させて、それが、ラストの無名墓地のシーンの哀切さに繋がるのだろうなあ、と。

「戦争の犬たち」('80年/米).jpg戦争の犬たち .jpg「戦争の犬たち」●原題:THE DOG OF WAR●制作年:1980年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・アー中野名画座.jpgヴィン●製作:ノーマン・ジュイソン他●脚本:ゲイリー・デヴォア他●音楽:ジョフリー・バーゴン●原作: フレデリック・フォーサイス 「戦争の犬たち」●時間:163分●出演:クリストファー・ウォーケン/トム・ベレンジャー/コリン・ブレークリー/ヒュー・ミレース中野駅南口.jpgnakano.jpg/ポール・フリーマン/ジャン・フランソワ・ステヴナン/ジョージ・W・ハリス●日本公開:1981/03●配給:ユナイト映画 ●最初に観た場所:中野名画座 (81-09-05)(評価★★★) 中野名画座 中野駅南口駅前ロータリー地下(80席) 1989(平成元)年8月27日閉館。
菅野 正 写真展 「平成ラストショー hp」より

Jakkaru no hi (1973)
Jakkaru no hi (1973).jpg
「ジャッカルの日」2.jpgジャッカルの日 73米.jpg「ジャッカルの日」●原題:THE DAY OF THE JACKAL●制作年:1973年●制作国:イギリス/フランス●監督:フレッド・ジンネマン●製作:ジョン・ウォルフ●音楽:ジョルジュ・ドルリュー●原作:フレデリック・フォーサイス●時間:142分●出演:エドワード・フォックス/エリック・ポーター/ミシェル・ロンスダール/デルフィーヌ・セイリグ/シリル・キューザック/オルガ・ジョルジュ・ピコ/アラン・バデル/デレク・ジャコビ/ミシェル・オールレール/バリー・インガム/ロナルド・ピカップ●日本公開:1973/07●配給:CIC ●最初に観た池袋テアトルダイア s.jpg池袋テアトルダイア  .jpgテアトルダイア.jpg場所:池袋テアトルダイア (77-12-24)(評価★★★★)●併映:「ダラスの熱い日」(デビッド・ミラー)/「合衆国最後の日」(ロバート・アルドリッチ)/「鷲は舞いおりた」(ジョン・スタージェス)(オールナイト) テアトルダイア3.jpg池袋テアトルダイア  1956年12月オープン、1982年12月1日~サンシャイン60通り沿い「池袋ビル」地下、2009年8月~2スクリーン。2011(平成23)年5月29日閉館。

 『戦争の犬たち』...【1981年文庫化[角川文庫]】/『ジャッカルの日』...【1979年文庫化[角川文庫]】

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巨船引き揚げのほかにも、映画では味わえない数多い魅力。
レイズ・ザ・タイタニック tirasi.jpg
クライヴ・カッスラー「タイタニックを引き揚げろ」(パシフィカ).jpg タイタニックを引き揚げろ〔旧〕.jpg タイタニックを引き揚げろ.jpg Clive Cussler.jpg Clive Cussler
タイタニックを引き揚げろ(1977年)』『タイタニックを引き揚げろ』新潮文庫 〔'81年/'07年〕「【映画チラシ】レイズ・ザ・タイタニック/監督・ジェリー・ジェームソン

Raise the Titanic!.jpg アメリカが秘密裡に進める超強力ミサイル防衛システムの計画において、どうしても必要だとされる希少鉱物ビザニウムが、かつてのロシアのノバスゼムリヤで採掘された後、1912年に沈没したタイタニック号に積まれていたらしいということがわかり、タイタニック号の引き揚げ計画の実行者として、NUMA(国立海中海洋機関)の空軍少佐ダーク・ピットがその命を受けるが、当然のことながら情報を察知した敵国「ソ連」が邪魔立てに入る―。

 1976年に発表されたクライブ・カッスラー(Clive Cussler)の海洋サスペンスシリーズ第4弾で、シリーズの中でも人気が高く、'80年に映画化もされています。4千メートルの深海に沈む全長268.8メートル、総トン数46,328トンという巨大なタイタニック号をどうやって引き揚げるかだけでも充分引き込まれますが、スパイチェイスやマスコミ対策、結末をどう持っていくのかなど興味は尽きません。

 しかし何よりもこのシリーズ、ダーク・ピットというキャラクターが魅力的で、海にいるときは命を賭して平和のために戦う(必ずしもイコール命令に従うということにはならない)精神的にも肉体的にも強い男ですが、陸に上がると心理的で少し屈折した面も見せ、女性にはモテるけれども、ジェームズ・ボンドなどよりはずっと女性に対しても自分に対してもセンシティブな面があります。

Raise the Titanic (1980)
Raise the Titanic.jpgRaise the Titanic 1980.jpg 映画化作品「レイズ・ザ・タイタニック」('80年/米・英)をテレビで見ましたが、ダーク・ピット役のリチャード・ジョーダンは原作の雰囲気を全く醸しておらず、映画そのものも、約15億円かけて漁船を改造し、それを使って撮影したというタイタニックの浮上シーンぐらいしか見せ場のないシロモノでした(そのシーンも、ジェームズ・キャメロン監督が「タイタニック」('97年/米)を撮ってしまったので、それと比べると霞む)。
                       Raise the Titanic (輸入版VHS)

 監督は「エアポート'77/バミューダからの脱出」('77年/米)のジェリー・ジェームソンで(原作は『大空港』のアーサー・ヘイリー)、「エアポート'77」の方は劇場で観ました(水中に沈んだ飛行機を引き上げるというモチーフは、クライブ・カッスラーの次作『QD弾頭を回収せよ』('78年発表)と重なるが、この映画の方が先)。
 実際に海中に旅客機が墜落した場合にとられる救出方法をベースにしているとのことですが、配役が豪華な割には内容はイマイチ(何故か"ドラキュラ役者"クリストファー・リーの土左衛門姿だけが印象に残った)。
 「レイズ・ザ・タイタニック」へのこの監督の起用は、そもそも「引き揚げ」経験のみに基づく抜擢?という人選自体が安易だったのかも。

Raise the Titanic.bmpレイズ・ザ・タイタニック1.jpg クライブ・カッスラーは映画「レイズ・ザ・タイタニック」の不評に懲りたのか、以降は自作の映画化を断り続け、'05年にやっと11作目の『死のサハラを脱出せよ』の映画化を許可しました(映画タイトル「サハラ」)。

Raise the Titanic (輸入版DVD)

「レイズ・ザ・タイタニック」●原題:RAISE THE TITANIC!●制作年:1980年●制作国:アメリカ・イギリス●監督:ジェリー・ジェームソン●製作:マーティン・スターガー/ウィリアム・フライ●脚本:アダム・ケネディ/エリック・ヒューズ●撮影:マシュー・F・レオネッティ●音楽:ジョン・バリー●原作:クライブ・カッスラー●時間:115分●出演:リチャード・ジョーダン/ジェイソン・ロバーズ/アン・アーチャー/アレック・ギネス/デイヴィッド・セルビー/J・D・キャノン/ボー・ブランディン●日本公開:1980/12●配給:東宝東和 (評価:★☆)

エアポート77.jpgエアポート'77/バミューダからの脱出.jpg「エアポート'77/バミューダからの脱出」●原題:AIRPORT'77●制作年:1977年●制作国:アメリカ・イギリス●監督:ジェリー・ジェームソン●製作:ウィリアム・フライ有楽シネマ 1991頃.jpg<●脚本:デビッド・スペクター●撮影:フィリップ・ラスロップ●音楽:ジョン・カカバス●原作:アーサー・ヘイリー●時間:113分●出演:ジャック・レモン/リー・グラント/ブレンダ・バッカロ/ジョセフ・コットン/オリビア・デ・ハビランド/ジェームズ・スチュアート/ダーレン・マッギャビン/クリストファー・リー/ジョージ・ケネディ●日本公開:1977/04●配給:ユニバーサル映画●最初に観た場所:有楽シネマ(77-12-13) (評価:★★)●併映:「スティング」(ジョージ・ロイ・ヒル)

 【1981年文庫化・2007年改版[新潮文庫]】

《読書MEMO》
●クライブ・カッスラーの"ダーク・ピット"シリーズ
『スターバック号を奪回せよ』(Pacific Vortex)
『海中密輸ルートを探れ』(The Mediterranean Caper)
『氷山を狙え』(Iceberg)
『タイタニックを引き揚げろ』(Raise The Titanic)
『QD弾頭を回収せよ』(Vixen 03)
『マンハッタン特急を探せ』(Night Probe!)
『大統領誘拐の謎を追え』(Deep Six)
『ラドラダの秘宝を探せ』(Cyclops)
『古代ローマ船の航跡をたどれ』(Treasure)
『ドラゴンセンターを破壊せよ』(Dragon)
『死のサハラを脱出せよ』(Sahara)
『インカの黄金を追え』(Inca Gold)
『殺戮衝撃波を断て』(Shock Wave)
『暴虐の奔流を止めろ』(Flood Tide)
『アトランティスを発見せよ』(Atlantis Found)
『マンハッタンを死守せよ』(Valhalla Rising)
『オデッセイの脅威を暴け』(Trojan Odyssey)
『極東細菌テロを爆砕せよ』(Black Wind)
『ハーンの秘宝を奪取せよ』(TREASURE OF KHAN, 2008)
『北極海レアメタルを死守せよ』(Arctic Drift, 2008)

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罪と罰 1970 ちらし.jpgミステリとしても味わえ、現代に繋がるテーマもふんだんに。

パンフレット.jpgカラマーゾフの兄弟.jpg カラマーゾフの兄弟 中巻.jpg カラマーゾフの兄弟 下巻.jpg
カラマーゾフの兄弟 上 新潮文庫 ト 1-9』『カラマーゾフの兄弟〈中〉 (新潮文庫)』『カラマーゾフの兄弟 下  新潮文庫 ト 1-11』「罪と罰(1970) [DVD]」 ('70年/ソ連)チラシ

映画「カラマーゾフの兄弟 [DVD]」('68年/ソ連)パンフレット['07年]                                    

Братья Карамазовы.jpg  1880年、ドストエフスキーが59歳の時に完結したこの小説は、ドストエフスキー作品自体が最近の若者に読まれなくなったとよく言われる中、かつて作家の村上春樹 09.jpg村上春樹氏が自らのサイトフォーラムで「全日本『カラマーゾフの兄弟』読了クラブ」(後にバー「スメルジャコフ」と改称)なるものを立ち上げ、読了者に〈会員番号〉を発行しますと宣言すると若い人のレスポンスが結構たくさんあって、そういうのを見ると結構読まれているのかなあという気もします(寄せられた感想が『海辺のカフカ』などの感想文と同じトーンなのがちょっと面白かった)。[右:ロシア語版ペーパーバックス]

 しかし、村上氏自身は結構真面目なのかも。 と言うのは、読者からの、オウム真理教に入るような人達も『カラマーゾフの兄弟』を一度読んでいたらオウムに入らなかったかもという感想に対し、「『カラマーゾフ』を読み通せる人の数は極めて限られている。一度でも読めば確かにオウムに入ろうとする人たちの大部分を阻止することはできるだろうけれど、とにかく『カラマーゾフ』は難しすぎるし長すぎる。自分がいつか成し遂げたいと思っていることは、もっとやさしくて読みやすい現代の『カラマーゾフ』を書くことだ。それは途方もなく難しいのだが」と答えていたから。

電子書籍版(グーテンベルグ21)
karamazov1.jpg 個人的には、ミステリの要素があり、しかも最後は泣ける(?)ので、精神的に構えて読む必要は全然ないのではとも思うのですが、時間的・体力的には準備が必要かもしれません。

 この大長編小説の前半3分の2ぐらいまでが僅か数日の間に起きた出来事であり、それは従来の歴年的文学長編と異なる特徴の1つだと思うのですが、加えて、挿話やカットバックが多く、それらが1つ1つの物語になっています(ほとんど"爆発的"に脇道へ逸れていく)。
 神の不在を問うた「大審問官」もその1つと見ることができますが、同時に主テーマの1つでもあり、また、その中に幼児虐待の問題が出てくるなど、常に現代と繋がる何かがあります。
 '06年からは亀山郁夫氏による新訳の刊行も始まり、まだまだ読まれ続けられるであろう作品だと思います。

 この作品は、作者であるドストエフスキーが時間(締め切り)に追われつつ書いた雑誌連載小説であり、確か、妻アンナ・ドストエフスカヤの回想記に書いてあったのではないかと思いますが、原稿を出版社に渡した後でストーリーが破綻していることに気づいて、慌てて印刷のストップをかけるなどし(間に合わないこともあった)、ドストエフスキーは自らを何度も罵倒したりしていたそうです。

カラマーゾフの兄弟 ロシア版ポスター.jpg 映画や芝居でも観ましたが、イワン・プィリエフ(Ivan Pyryev)監督の「カラマーゾフの兄弟」('68年)は堂々たる本場モノで、4時間近い上映時間の長さを感じさせないものでした。
 リチャード・ブルックス監督のアメリカ版「カラマーゾフの兄弟」('57年)もあり、テレビで一部だけ観ましたが、ユル・ブリンナーがドミートリイ、マリア・シェルがグルーシェニカという異色の取り合わせで、何だか国籍不明映画みたいな感じでした。

 但し、本場物であればいいというものではなく、トルストイの小説の映画化作品である「復活」('61年・ミハイル・シヴァイツェル監督)「アンア・カレーニナ」('67年・アレクサンドル・ザルヒ監督)は、何となくメロドラマみたいになってしまっています(「アンア・カレーニナ」のタチアナ・サモイロワはいい女優なのだが...)。
映画「カラマーゾフの兄弟」輸入版ポスター

THE BRATYA KARAMAZOVY 1968 1.jpg プィリエフの「カラマーゾフ」にもそのキライが無いわけではないですが、「復活」や「アンナ...」と比べると骨太であると思いました。ストーリー的には原作を読んでいないとキツイかもしれませんが、ミステリとしても成立していて、キャスティングも原作のイメージにほぼ沿ったものでした(この映画の撮影中にプィリエフ監督は急死し、ドミトリ役のミハエル・ウリャーノフらが監督の遺志を引き継いで映画を完成させた)。

THE BRATYA KARAMAZOVY 1968 2.jpgカラマーゾフの兄弟  dvd.jpg ただ1つ難を言えば、ドミートリーなどを演じている俳優が若干老けて見えることで、ロシア人が髭などのせいで大体そう見えてしまうのか、それとも、この物語で主役級を演じようとすると、相当に役者としての年季を踏まなければならないということだったのかなどと、色々憶測していますが、それも許容範囲内か。
Directed by: Ivan Pyr'ev, Mikhail Ulyanov, Kirill Lavrov Cast: Mikhail Ulyanov, Kirill Lavrov, Andrei Myagkov Mark Prudkin, Olga Kobeleva, Viktor Kolpakov
カラマーゾフの兄弟 [DVD]」 ['07年]

罪と罰 1970 dvd.jpg 因みに、ドストエフスキー作品を映画化したもの中で原作の雰囲気をよく伝えているものと言えば、個人的にはレフ・クリジャーノフ 脚本・監督のソビエト映画「罪と罰」('70年)ではないかと思います。こちらも3時間40分もの長尺ですが、その分本格的です。倒叙型ミステリとも言え(ドストエフスキーの長編は全て現代に繋がるテーマを孕むとともに、ミステリの形態を模しているとも言われる)、ゲPRESTUPLENIE I NAKAZANIE 1.jpgオルギー・タラトルキン(当時新人)のラスコーリニコもタチアナ・ベドーワのソーニャも良かったように思います(ソーニャはマルメラードフ老人の前妻の子で、家計を助けるために躰を売っているのだが、どう見ても娼婦には見えない。それだけに痛々しさはある)。
罪と罰(1970) [DVD]

 ラスコーリニコフと、老婆殺人事件担当の予審判事ポルフィーリ(インノケンティ・スモクトノフスキー)との神の存在めぐる論戦は、舌鋒鋭い禿頭ポルフィーリが優勢でしょうか。漠然とした神学論争ではなく、ちゃんと事件に被せた議論になっています。ラスコーリニコフの妹PRESTUPLENIE I NAKAZANIE 2.jpgドゥーニャ(ヴィクトリア・フョードロワ)に執拗に迫るスビドリガイロフ(エフィム・コベリヤン)のぎらついた感じも生々しく、最後にドゥーニャが涙を流しながらスビドリガイロフに拳銃を向ける場面はややメロドラマ調ですが(この2人の話のウェイトが2部構成の第2部のかなりを占め、原作より比重が重い)、これもまあヴィクトリア・フョードロワの美しさで許してしまおうかという感じ。
 公開されて暫くのうちに観て、その後ずっと記憶の上ではかなり古い映画だと勘違いしていたのですが、その割にはスローモーションとか使って映像が洗練されていたなあと思ったら、意外と新しい作品でした。この作品の場合、敢えてモノクロで撮っているのが成功しているように思えます。

THE BRATYA KARAMAZOVY 1968 iwan.jpg『カラマーゾフの兄弟・完全版』.jpg「カラマーゾフの兄弟」●原題:THE BRATYA KARAMAZOVY●制作年:1968年●制作国:ソ連●監督:イワン・プィリエフ●撮影:セルゲイ・ウルセフスキー●原作:: フェードル・M・ドストエフスキー●時間:227分●出演:ミハエル・ウリャーノフ/リオネラ・プイリエフ/マルク・プルードキン/ワレンチン・ニクーリン/スベトラーナ・コルコーシコ ●日本公開:1969/07●配給:東和●最初に観た場所:池袋文芸坐(79-11-21) (評価★★★★☆)

復活 トルストイ dvd.jpgVoskresenie(復活).jpg「復活」●原題:VOSKRESENIE(Resurrection)●制作年:1961年●制作国:ソ連●監督:ミハイル・シヴァイツェル●撮影:エラ・サベリエフ/セルゲイ・ポルヤノフ●音楽:G・スビリドフ●原作:レフ・トルストイ●時間:208分●出演:タマーラ・ショーミナ/エフゲニー・マトベェフ/パウエル・マッサリスキー/ヴィ・クラコフ●日本公開:1965/03●配給:ATG●最初に観た場所:池袋文芸坐(86-04-20) (評価★★★)●併映:「アンア・カレーニナ」(アレクサンドル・ザルヒ)復活 [DVD]」 ['03年]

アンナ・カレーニナ dvd.jpgアンナ・カレーニナ スチール.jpg「アンナ・カレーニナ」●原題:ANNA KARENINA●制作年:1967年●制作国:ソ連●監督・脚本:アレクサンドル・ザルヒ●撮影:レオニード・カラーシニコフ●音楽:ロジオン・シチェドリン/モスクワ室内オーケストラ●原作:レフ・トルストイ●時間:144分●出演:タチアナ・サモイロワ/ワシリー・ラノボイ/ニコライ・グリツェンコ/アナスタシア・ヴェルチンスカヤ/イヤ・サーヴィナ●日本公開:1968/05●配給:東和●最初に観た場所:池袋文芸坐(86-04-20) (評価★★★)●併映:「復活」(ミハイル・シヴァイツェル)アンナ・カレーニナ [DVD]」 ['04年]

「罪と罰」●原題:ПРЕСТУПЛЕНИЕ и НАКАЗАНИЕ(PRESTUPLENIE I NAKAZANIE)●制作年:1970年●制作国:ソ連●監督:レフ・クリジャーノフ●脚本:レフ・クリジャーノフ/ニコライ・フィグロフスキ罪と罰 tirasi.jpgー●撮影:ヴァチェスラフ・シュムスキー●音楽:ミハイル・ジフ ●原作:フョードル・ドストエフスキー●時間:219分●出演:ゲオル罪と罰 [DVD] 2.jpgギー・タラトルキン/タチアナ・ベドーワ/インノケンティ・スモクトゥノフスキー/ヴィクトリア・フョードロワ/アレクサンドル・パブロフ/エフィム・コベリヤン/エフゲニー・レベチェフ/ウラジミール・バソフ●日本公開:1971/03●配給:東和●最初に観た場所(再見):池袋文芸坐(79-11-11) (評価★★★★)●併映:「貴族の巣」(アンドレ・ミハルコフ=コンチャロフスキー)

罪と罰 [DVD]」 ['98年]

 【1927年文庫化・1957年改版版[岩波文庫(全4巻)(米川正夫:訳)]/1961年再文庫化[新潮文庫(『カラマアゾフの兄弟』(全5冊))(原久一郎:訳)]/1972年再文庫化[講談社文庫(全3冊))(北垣信行:訳)]/1978年再文庫化[新潮文庫(全3冊))(原卓也:訳)]/1978年再文庫化[中公文庫(『カラマゾフの兄弟』(全5冊))(池田健太郎:訳)]/2006年再文庫化[光文社古典新訳文庫(全4分冊)(亀山郁夫:訳)]】 

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圧倒的な重層構造で迫ってくるものの、結末には消化不良感が残る。

リヴィエラを撃て.jpgリヴィエラを撃て』(1992/10 新潮社)リヴィエラを撃て 上巻.jpg リヴィエラを撃て下巻.jpg 新潮文庫(上・下)

 1993(平成5)年度・第46回「日本推理作家協会賞」受賞作で、「日本冒険小説協会大賞」も併せて受賞。

 首都高速トンネル内で1人の外国人男性の遺体が発見され、その男はジャック・モーガンという元IRAのテロリストだったとわかりますが、彼が〈リヴィエラ〉なる人物に殺されると予め警察通報してきた東洋人女性も、自宅アパートで射殺されており、そのアパートからは世界的ピアニストのノーマン・シンクレアのレコードが多数発見される―。

 警視庁外事1課の刑事・手島は、ジャックが〈リヴィエラ〉を追っていたと推察し(「公安部」の刑事が小説に登場するというのが自分にとっては新鮮だった)、やがて事件の背後にはCIA、MI5までが絡む国際機密問題があるらしいことがわかりますが、肝心の〈リヴィエラ〉とは一体何なのかが掴めないまま、真相は混迷の度を深めていきます。

 硬質の文体で語られるストーリーはかなり複雑で、日本を舞台にしたスパイ小説ということもありイメージが掴みにくい部分もありました(公安というのもデモ行進の際にデモ参加者をチェックしているところぐらいしか見たことないし...)。
 ただし舞台が14年前のアイルランドへと跳ぶと、何だかイメージしやすくなったのは、スパイ物語=洋モノというイメージが自分の中にあるためでしょうか(実は日本ほどスパイが自由に出入りしている"スパイ天国"の国はないと言われてるけど)。

『クライング・ゲーム』(1992)2.jpgTHE CRYING GAME.jpgクライング・ゲーム.jpg ニール・ジョーダン「クライング・ゲーム」('92年/英)という元IRA兵士の男を描いた映画を思い出し、スティーヴン・レイ(渋かった!)のイメージが作中の登場人物に重なりました。
 スティーヴン・レイ演じるIRAのテロリストが、人質のイギリス軍兵士の死に責任を感じながらも、彼の恋人に惹かれていくという話で、ニール・ジョーダンはこの作品でアカデミー賞オリジナル脚本賞を獲っています。

 「クライング・ゲーム」●原題:THE CRYING GAME●制作年:1992年●制作国:イギリス●監督・脚本:ニール・ジョーダン●音楽:アン・ダッドリー●時間:112分●出演:スティーヴン・レイ/ジェイ・デイヴィッドソン/ミランダ・リチャードソン/フォレスト・ウィテカー●日本公開:1993/06●配給:日本ヘラルド映画 (評価★★★★) 
クライング・ゲーム DTSスペシャル・エディション [DVD]

 高村薫小説らしく、暗い情念を持った男たちが登場し、それでいて最後はヒューマンなドラマに仕上げていますが、ミステリという観点からは、圧倒的な重層構造で迫ってくるものの、結末がやや消化不良気味で欲求不満が残りました。

 【1997年文庫化[新潮文庫(上・下)]】

「●映画」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1780】 江藤 努 (編) 『映画イヤーブック 1994
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古典重視でマニアックな選択傾向に見えるが、なかなかの"本物志向"。

映画の魅惑・ジャンル別ベスト1000.jpg                                 ジャンル別映画ベスト1000.jpg
映画の魅惑―ジャンル別ベスト1000』「リテレール」別冊『ジャンル別映画ベスト1000』(学研M文庫)

 スーパーエディターと呼ばれ、'03年にガン死したヤスケンこと安原顕の編集からなる本書は、彼が編集長をしていた雑誌リテレールの別冊の1つ。文芸映画、青春映画、音楽映画など20ジャンルの映画のベスト50を、蓮實重彦、辻邦生など大家や曲者(?)20人が分担して選び評しています。
 ただし担当ジャンルの定義は担当した執筆者に任されているようで(ある意味、読者に対しては不親切ですが)、読者におもねることなく、執筆者はみな本当に好きな映画、見てもらいたい映画について真摯に語っています。

アンドレイ・タルコフスキー/鏡.jpgルシアンの青春2.jpg鬼火.jpgラルジャン1.jpg白夜2.jpg 個人的には、ブレッソンの「白夜」「ラルジャン」、ルイ・マルの「鬼火」「ルシアンの青春」、タルコフスキーの「鏡」などの評があるのが嬉しい。キューブリックの「現金に体を張れ」「バリー・リンドン」、ヴィスコンティの「夏の嵐」「若者のすべて」、ヘルツォークの「アギーレ・神の怒り」「フィッツカラルド」が入っているのもいい。

イワン雷帝(DVD).jpg世界名作映画全集 99 キートンの大列車追跡.jpgグリード.jpg若者のすべて DVD.jpg現金(ゲンナマ)に体を張れ.jpg シュトロンハイムの「グリード」、キートンの「将軍」、エイゼンシュタインの「イワン雷帝」などの古典もあれば、ホークスの「脱出」「三つ数えろ」、ヒューストンの「キー・ラーゴ」といったハードボイルドやオルドリッチの「ロンゲスト・ヤード」「カリフォルニア・ドールズ」、サム・ライミの「ダークマン」などB級アクション映画もあります。

フリークス dvd.jpgアフター・アワーズ.jpgBurt Reynolds THE LONGEST YARD.jpg三つ数えろ.jpg脱出2.jpg スコセッシは「アフター・アワーズ」がミステリー部門にあります。「フリークス」「快楽殿の創造」などは"アートシアター新宿"の定番カルトでした。「ロッキー・ホラー・ショー」は楽しい参加型カルト(映画館でびしょ濡れになった思い出がある)。'06年に亡くなったダニエル・シュミットの「今宵限りは...」は、音楽映画とアヴァンギャルドの2部門に登場。ファスビンダーの「ケレル」っていうのもジャン・ジュネ原作で結構アブナイ映画...。

 これらの中で「B級」作品で自分の好みは、 ロバート・アルドリッチ監督の「カリフォルニア・ドールズ」('81年/米)と、サム・ライミ監督の「ダークマン」('90年/米)でしょうか。

カリフォルニア・ドールス.jpg 「カリフォルニア・ドールズ」は、男臭い世界を描いて定評のあるアルドリッチが女子プロレスの世界を描いた作品で、さえない女子プロのタッグ「カリフォルニア・ドールズ」のプロモーターを「刑事コロンボ」 のピーター・フォーク が好演しており、彼と2人の女性選手との心の通い合いが結構泣けます。

「カリフォルニア・ドールズ」●原題:...All THE MARBLES a.k.a. THE CALIFORNIA DOLLS●制作年:1981年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・アルドリッチ●製作:ウィリアム・アルドリッチ●脚本:メル・フローマン●撮影中野武蔵野ホール.jpg:ジョセフ・バイロック●音楽:フランク・デ・ヴォール●時間:113分●出演:ピーター・フォーク/ヴィッキー・フレデリック/ローレン・ランドン/バート・ヤング/クライド・クサツ/ミミ萩原●日本公開:1982/06●配給:コロムビア映画●最初に観た場所:中野武蔵野館(83-02-06)(評価:★★★★)●併映「ベストフレンズ」(ジョージ・キューカー)

THE DARKMAN 1990.jpgダークマン.jpg 「ダークマン」は、「死霊のはらわた」('81年/米)などのスプラッター映画で知られ、後に「スパイダーマン」('02年/米)を撮るサム・ライミ監督が、事故で全身に大やけどを負った男の復讐を描いたもので、「神経を切られているため痛覚は無く、怒りによって超人的な力を発揮し、人工皮膚を駆使して他人に変身する、黒マントに身を包んだ"異形のヒーロー"」というコミック調ですが、悪を倒しても元の自分には結局戻れないわけで、その孤独と哀しみが切々と伝わってきました。

ダークマン 1990.jpg「ダークマン」●原題:THE DARKMAN●制作年:1990年●制作国:アメリカ●監督・原作:サム・ライミ●製作:ロバート・タパート●脚本:チャック・ファーラー/サム・ライミ/アイヴァン・ライミ/ダニエル・ゴールディン/ジョシュア・ゴールディン●撮影:ビル・ポープ●音楽: ダニー・エルフマン●時間:96分●出演:リーアム・ニーソン/フランシス・マクドーマンド/ラリー・ドレイク/コリン・フリールズ/ネルソン・マシタ/ジェシー・ローレンス・ファーガソン/ラファエル・H・ロブレド/ダン・ヒックス/テッド・ライミ/ジョン・ランディス/ブルース・キャンベル●日本公開:1991/03●配給:ユニヴァーサル=UIP(評価:★★★★)
 
 変わった映画というか、最初観た時はよく分らなかった映画と言えば、 ジム・シャーマン監督の「ロッキー・ホラー・ショー」('75年/英)と、ダニエル・シュミット監督の「今宵かぎりは...」('72年/スイス)でしょうか。

 「ロッキー・ホラー・ショー」は、最初に名画座で観た時は、ロック・オペラってこんなのもあるのかという感じで(スーザン・サランドンが出てたなあ)よく分らんという印象だったのですが、2度目に渋谷のシネマライズ渋谷(地下1階スクリーン)で観た時には、アメリカからシネセゾンが招聘したと思われるコスプレ軍団が来日していて、映画館の最前列で映画に合わせて踊ったり、紙吹雪や米を撒いたり、雨のシーンでは如雨露で水を撒いたりして観客も大ノリ、ああ、これ、こうやってパーティ形式で観るものなんだと初めて知りました。

ロッキー・ホラー・ショー (1976).jpg「ロッキー・ホラー・ショー」●原題:THE ROCKY HORROR SHOW●制作年:1975年●制作国:イギリス●監督:ジム・シャーマン●製作:作 マイケル・ホワイト●脚本:ジム・シャーマン/リチャード・オブライエン●撮影:ピーター・サシツキー●音楽:リチャード・ハートレイ●時間:99分●出演:ティム・カリー/バリー・ボストウィック/スーザン・サランドン/リチャード・オブライエン/パトリシア・クイン/ジョナサン・アダムス/ミート・ローフ/チャールズ・グレイ●日本公開:1978/02●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:五反田TOEIシネマ(83-02-06)●2回目:シネマライズ渋谷(地下1階)(88-07-17)(評価:★★★?)●併映(1回目):「ファントム・オブ・パラダイス」(ブライアン・デ・パルマ)

今宵限りは  シュミット.jpg今宵限りは.jpg 「今宵かぎりは...」は、つい先だって('06年8月5日)亡くなった「ラ・パロマ」や「ヘカテ」の監督ダニエル・シュミットの最初の長編映画ですが(この人、大分の湯布院に行った時、自分と同じ旅館「亀の井別荘」に泊まっていた)、日本公開は制作の14年後でした。大きな屋敷の広間で夜中に宴会が行われていて、クラシック音楽が流れる中、殆ど台詞もなく淡々と、赤外線カメラで撮ったような粗い映像でその模様が映し出されているのですが、宴会の客たち以上にそれに仕える召使の方が陶然としている―実はこれ、年に一夜だけ、主人と召使たちが入れ替わる宴で、召使いのために主人が旅芸人たちと芝居などの余興を披露していたのだったという、そのことを映画を観た後で知り、しかしその後はなかなか観直す機会がない作品です。

今宵かぎりは .jpgHeute nacht oder nie (1972).jpg「今宵かぎりは...」●原題:HEUTE HACHT ODER NIE●制作年:1972年●制作国:スイス●監督・脚本:ダニエル・シュミット●製作:イングリット・カーフェン●脚本:メル・フローマン●撮影:レナート・ベルタ ●時間:90分●出演:ペーター・カーダニエル・シュミット.jpgン/イングリット・カーフェン/フォリ・ガイラー/ローズマリー・ハイニケル●日本公開:1986/11●配給:シネセゾン●最初に観た場所:シネヴィヴァン六本木(86-12-01)(評価:★★★?)
Daniel Schmid(1941- 2006/享年65)

 もちろん、もっと最近の映画や(といっても本書が'93年の刊行ですが)メジャーな映画(「スター・ウォーズ」など)も入っていますが、全体としてはいい意味で"本物志向" だけど古典重視でマニアックにも見えるかも。教養主義的な雑誌リテレールもほどなく廃刊となりましたが、この別冊のスタイルは'96年に学研から出た同じ編者の『ジャンル別映画ベスト1000』に引き継がれ、その後文庫にもなっています(学研M文庫)。

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「マイベスト10にはヨーロッパ映画が似合い、最初テレビで見たものは入れにくい」に納得。

大アンケートによる洋画ベスト150.jpg    『禁じられた遊び』(1952).jpg「禁じられた遊び」(1952)
大アンケートによる洋画ベスト150』 文春文庫 〔'88年〕 (表紙イラスト:安西水丸

 1988年の出版で、映画通366人の選んだベスト10を集計しています。年齢の高い選者が多く(今や物故者となった人も多い)、個々の選択も結構まっとうという感じですが、映画産業に限らず様々な分野の人が「マイベスト10」を寄せているので、それはそれで面白いです。

天井桟敷の人々 パンフ.JPG天井桟敷の人々.jpg 総合ベスト10も、「天井桟敷の人々」「第三の男」「市民ケーン」「風と共に去りぬ」「大いなる幻影」「ウェストサイド物語」「2001年宇宙の旅」「カサブランカ」「駅馬車」「戦艦ポチョムキン」と"一昔前のオーソドックス"といった感じでしょうか(今でも名画であることには違いありませんが)。

風と共に去りぬ パンフ.JPG 間に挿入されている赤瀬川準、長部日出雄、中野翠の3氏の座談がいいです。

 自分のベスト10に赤瀬川氏、長部氏は「天井桟敷の人々」を入れていますが、戦後生まれの中野氏には入れていません。それを彼女は、「最初にテレビで見た負い目」と説明していますが、その気持ち何だかわかるな〜(「天井桟敷の人々」は自分は劇場で観たが、個人的なベスト10には入ってこない)。
 テレビで観たものがベスト10に入りにくいのは、観ている時は感動していても、その後すぐに日常生活に戻ってしまうからではないかなあ(映画館で観終わった後、余韻を胸に抱きながら帰路につく時間というのは結構大事なのかも)。中野氏が、好きなアメリカ映画がいっぱいあるのに、「ヨーロッパ映画がどうしてもベスト10に似合っちゃう」と言っているのも何となくわかります。

 映画と音楽(奏者と楽器)の不可分な、他に置き換えようがない繋がりというのも感じます。「第三の男」(2位)のアントン・カラスのチター、「禁じられた遊び」(11位)のナルシソ・イエペスのギター、「大地のうた」(39位)のラヴィ・シャンカールのシタール、「死刑台のエレベーター」(48位)のマイルス・デイヴィスのトランペット。
ナルシソ・イエペス/禁じられた遊び.jpg  禁じれた遊び パンフ.jpg 「禁じられた遊び」
禁じられた遊び2.jpg ルネ・クレマン監督の「禁じられた遊び」('52年/仏)は戦争孤児の物語ですが、テーマ曲の効果も相俟って本当にストレートに泣けました(原曲はスペイン民謡「愛のロマンス」)。
 「第三の男」の"ハリー・ライムのテーマ"を奏でたアントン・カラスは、ハンガリー系オーストリア人で、これは映画の舞台がウィーンであるということもあるかと思いますが、「禁じられた遊び」の舞台はフランス郊外なのに、(同じラテン系ではあるが)スペイン人のギター奏者ナルシソ・イエペス(ロドリーゴのアランフェス協奏曲の演奏でも知られる)を起用していて、撮影に金を使い過ぎてオーケストラ演奏する費用が無くなってしまったため、全編を通して彼のギターだけで通したということですが、逆にそれがいい結果となっているように思えます。

フランスの思い出.jpg「フランスの思い出」.jpg 本書刊行の頃の公開作品ですが、田舎での少年と少女の交流という点では、ジャン・ルー・ユベール監督の「フランスの思い出」('87年/仏)なども、パリ育ちの少年が夏休みに田舎で過ごした経験を描いたもので、ちょっとこの作品を意識したような雰囲気がありました。

「フランスの思い出」

 とりわけ、田舎育ちの少女役のヴァネッサ・グジがいいです。そのお転婆ぶりは、「禁じられた遊び」でブリジッド・フォッセーが演じた都会の少女ポーレットとは対照的ですが、ポーレットも一面においては、動物のお墓作りをリードしている部分があったと言えるかも。

 小さな悪の華 チラシ.jpg「小さな悪の華」チラシ
Mais ne nous délivrez pas du mal (1971).jpg小さな悪の華 ポスター.jpg 一方、ジョエル・セリア監督の「小さな悪の華」('70年/仏)という作品は、早熟で魔性を持つ2人の15歳の少女が、ボードレールの「悪の華」を耽読し、農夫に裸を見せつけ、行きずりの男を誘拐して殺し、最後に焼身自殺するという衝撃的なものでしたが、祭壇作りにハマる少女たちには、「禁じられた遊び」の"十字架マニア"の少女ポーレットの"裏ヴァージョン"的なものを感じました。この作品は、"少女ポルノ"的描写であるともとれる場面があるため、製作当時、フランス本国では上映禁止となったとのことです。
Mais ne nous délivrez pas du mal (1971)

                                    
「大地のうた」 (1955)
「大地のうた」 (1955).jpg大地のうた2.jpg『大地のうた』 (1955).jpg 「大地のうた」('55年/インド)はサタジット・レイ監督の「オプー3部作」の第1作で、ベンガル地方の貧しい家庭の少年オプーの幼少期が描かれ、何と言っても、貧困のため雨中に肺炎で斃れたオプーの姉の挿話が哀しかったです。
 第2作の「大河のうた」('56年)では、学業に優れたオプーが故郷を捨てカルカッタへ向かうところで終わりますが、これは家族(親族)離散の結末であり、インドの人はハッピーエンドでないと満足しない?ということでもないと思いますが、インド国内での興行成績は第1作ほど良くはなかったとのことです。
大地のうた 《IVC BEST SELECTION》 [DVD]

黒澤明 .jpg しかし、「大河のうた」は世界的には前作を上回る評価を得、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞、サタジット・レイは黒澤明を尊敬していましたが、黒澤明の「蜘蛛巣城」をコンペで破ったことになります。その黒澤は、「サタジット・レイに会ったらあの人の作品が判ったね。眼光炯炯としていて、本当に立派な人なんだ。『蜘蛛巣城』がヴェネチア国際映画祭で『大河のうた』に負けた時、これはあたりまえだと思ったよ」と語っています。世界から喝采を浴びたサタジット・レイは、この作品を3部作とすることを決意、第3作「大樹のうた」('58年)は、青年となったオプーと、亡き妻の間に生まれ郷里に置いてきた息子との再会の物語になっています。
                            「大河のうた」 (1956) /「大樹のうた」 (1958)
 『大樹のうた』 (1955).jpg『大河のうた』 (1956).jpgアヌーシュカ・シャンカール.jpg 3作を通じてノラ・ジョーンズ.jpg音楽にラヴィ・シャンカールのシタールが使われていることが、3部作に統一性を持たせることに繋がっていてるように思います。因みに、ラヴィ・シャンカールの2人の娘は、姉がジャズ歌手のノラ・ジョーンズ、妹がシタール奏者のアヌーシュカ・シャンカールで、この2人は異母姉妹です。

死刑台のエレベーター2.jpg 「死刑台のエレベーター」('57年/仏)は、ルイ・マル25歳の時の実質的な監督デビュー作で、主人公のモーリス・ロネとジャンヌ・モローが不倫関係の末、殺人を犯すというもので、サスペンス映画としても良く出来ていると思いますが、恋人モーリス・ロネからの連絡が無く、不安の裡にパリの街を彷徨うジャンヌ・モローの姿にマイルス・デイヴィスのトランペットが被り、何とも言えないムードを醸しています。同じルイ・マル監督の「鬼火」における、エリック・サティのピアノも良く(この作品はベスト150には入ってませんが)、映像と音楽を結びつける才能があった監督でした。


禁じられた遊び  .jpg禁じられた遊び3.jpg「禁じられた遊び」●原題:JEUX INTERDITS●制作年:1952年●制作国:フランス●監督:ルネ・クレマン●脚本:ジャン・オーランシュ/ピエール・ポスト●撮影:ロバート・ジュリアート●音楽:ナルシソ・イエペス●原作:フランソワ・ボワイエ●時間:86分●出演:ブリジッド・フォッセー/ジョルジュ・プージュリー/スザンヌ・クールタル/リュシアン・ユベール/ロランヌ・バディー/ジャック・マラン●日本公開:1953/09●配給:東和●最初に観た場所:早稲田松竹 (79-03-06)●2回目:高田馬場・ACTミニシアター (83-09-15)(評価:★★★★☆)●併映(1回目):「鉄道員」(ピエトロ・ジェルミ)●併映(2回目):「居酒屋」(ルネ・クレマン)

五反田TOEIシネマ 2.jpg五反田TOEI9.jpg五反田TOEIシネマ.jpg五反田TOEIシネマ 3.jpg「フランスの思い出」●原題:LE GRAND CHEMIN●制作年:1987年●制作国:フランス●監督・脚本:ジャン=ルー・ユベール●製作:パスカル・オメ/ジャン・フランソワ・ルプティ ●撮影:クロード・ルコント●音楽:ジョルジュ・グラニエ●時間:91分●出演:アネモーネ/リシャール・ボーランジェ/アントワーヌ・ユベール●日本公開:1988/08●配給:巴里映画●最初に観た場所:五反田TOEIシネマ (89-08-26)(評価:★★★★)●併映:「人生は長く静かな河」(エティエンヌ・シャティリエ)
五反田TOEIシネマ/五反田東映 (跡地=右岸) 1977(昭和52)年11月オープン、1990(平成2)年9月30日「五反田TOEIシネマ」閉館(1991年「五反田東映」閉館)

小さな悪の華.jpg小さな悪の華2.jpg中野武蔵野ホール.jpg「小さな悪の華」●原題:MAIS NE NOUS DELIVREZ PAS DU MAL●制作年:1970年●制作国:フランス●監督・脚本:ジョエル・セリア●撮影:マルセル・コンブ●音楽:ドミニク・ネイ●時間:103分●出演:ジャンヌ・グーピル/カトリーヌ・ワグナー/ベルナール・デラン/ミシェル・ロバン●日本公開:1972/03●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:中野武蔵野館 (77-12-12)(評価:★★★☆)●併映:「ザ・チャイルド」(ナルシソ・イバネ・セッラドール) 中野武蔵野館 (後に中野武蔵野ホール) 2004(平成16)年5月7日閉館

Pather Panchali(1955)
Pather Panchali(1955).jpg「大地のうた」●原題:PATHER PANCHALI●制作年:1955年●制作国:インド●監督・脚本:サタジット・レイ●撮影:スブラタ・ミットラ●音楽:ラヴィ・シャンカール●原作:ビブーティ・ブーション・バナージ●時間:125分●出演:カヌ・バナールジ/コルナ・バナールジ/スピール・バナールジ●日本公開:1966/10●配給フィルムセンター旧新 .jpg京橋フィルムセンター.jpg:ATG●最初に観た場所:京橋フィルムセンター (80-07-08)●2回目:池袋テアトルダイヤ (85-11-30)(評価:★★★★☆)●併映(2回目)「大河のうた」「大樹のうた」(サタジット・レイ) 旧・京橋フィルムセンター(東京国立近代美術館フィルムセンター) 1970年5月オープン、1984(昭和59)年9月3日火災により焼失、1995(平成7)年5月12日リニューアル・オープン。
 
「大河のうた」.jpg大河のうた.jpg 「大河のうた」●原題:APARAJITO●制作年:1956年●制作国:インド●監督・脚本:サタジット・レイ●撮影:スブラタ・ミットラ●音楽:ラヴィ・シャンカール●原作:ビブーティ・ブーション・バナージ●時間:110分●出演:ピナキ・セン・グプタ/スマラン・ゴシャール/カヌ・バナールジ/コルナ・バナールジ ●日本公開:1970/11●配給:ATG●最初に観た場所:池大樹のうた.jpg袋テアトルダイヤ (85-11-30)(評価:★★★★☆)●併映「大地のうた」「大樹のうた」(サタジット・レイ)

「大樹のうた」●原題:APUR SANSAR●制作年:1958年●制作国:インド●監督・脚本:サタジット・レイ●撮影:スブラタ・ミットラ●音楽:ラヴィ・シャンカール●原作:ビブーティ・ブーション・バナージ●時間:105分●出演::ショウミットロ・チャテルジー /シャルミラ・タゴール/スワパン・ムカージ/アロク・チャクラバルティ●日本公開:1974/02●配給:ATG●最初に観た場所:池袋テアトルダイヤ (85-11-30)(評価:★★★★☆)●併映「大地のうた」「大河のうた」(サタジット・レイ)

「死刑台のエレベーター」『死刑台のエレベーター』 CD
死刑台のエレベーター パンフ.jpg死刑台のエレベーター.jpg「死刑台のエレベーター」●原題:ASCENSEUR POUR L'ECHAFAUD●制作年:1957年●制作国:フランス●監督:ルイ・マル●製作:ジャン・スイリエール●脚本: ロジェ・ニミエ/ルイ・マル●撮影:アンリ・ドカエ●音楽:マイルス・デイヴィス●原作:ノエル・カレフ●時間:95分●出演:モーリス・ロネ/ジャンヌ・モロー/ジョルジュ・プージュリー/リノ・ヴァンチュラ/ヨリ・ヴェルタン/ジャン=クロード・ブリアリ/シャルル・デネ●日本公開:1958/09●配給:ユニオン●最初に観た場所:新宿アートビレッジ (79-02-10)●2回目:高田馬場・ACTミニシアター(82-10-03)(評価:★★★★☆)●併映(1回目):「大人は判ってくれない」(トリュフォー) 

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